説明

吸血シラミの駆除

【解決手段】本発明は、吸血シラミ寄生の治療および予防のための医薬としての処方製剤の製造における、1以上の細菌、例えばバチルス属の微生物製剤の使用を記載する。該医薬は吸血シラミを駆除するため、体毛、羽毛または毛髪に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この新規な発明は、寄生性吸血シラミ群の駆除組成物および方法に関し、特に、ヒト、動物および鳥類の寄生性吸血シラミの駆除に関する。
【0002】
寄生性吸血シラミは、宿主の血液、血清およびリンパ液を餌とし、刺激、痒みおよび疾病を引き起こす。いくつかの種は重篤な疾病の媒介昆虫であり、全ては概して望ましくない。例えば、一般的なヒトのアタマジラミ:ペディキュラス・カピティス(Pediculus capitis = Pediculus humanus capitis)、およびヒトケジラミ:フチラス・プビス(Phthirus pubis)は、シラミ寄生症を引き起こす吸血外寄生性生物であり、寄生患者に蕁麻疹様の刺激および痒みを引き起こす。コロモジラミ:ぺディキュラス・ヒューマヌス・コルポリス(Pediculus humanus corporis = P. humanus)は、刺激および痒みを引き起こし、致命的な疾病となり得るチフスの媒介昆虫でもある。
【0003】
他の種類の外寄生性吸血シラミも、病原体のキャリアとなる可能性があり、家畜、特に集中的動物生産単位である家畜小屋および鶏舎等内の家畜に対し、依然として脅威である。
【0004】
外寄生性吸血シラミは、寄生された動物および鳥類に苦痛を与え、死に至ることもあり、畜産業において重い経済的コストとなる。
【0005】
例えば、ラパージ(Lapage) (1962年)*によれば、
「宿主に対する吸血シラミの最も重要な影響は、それらが引き起こす刺激による。冬季には、宿主が風邪を患うためにより接近する可能性があり、摂食が低下することもシラミの蔓延に好都合であることから、シラミの影響は冬に最も甚大である。宿主は落ち着きがなくなり、充分に摂食および睡眠せず、体の吸血シラミに刺激された部分を咬んだり掻いたりすることによって、自身を傷つけたり、羽毛、体毛または羊毛を損傷する可能性がある。
【0006】
その結果、健康状態が損なわれ、宿主は細菌性疾病および他の疾病により感染しやすくなる可能性がある。鶏卵の生産量および牛乳の生産量は低下し得る。宿主が哺乳類の場合、掻くことによって体に創傷や打撲傷ができる可能性があり、羊の場合、羊毛が損傷し、また吸血シラミの糞便で汚くなる。毛は粗くなり、毛羽立ち、刺激が重篤な場合は、毛がもつれて固まる可能性もある。
【0007】
子牛が過剰に舐めると、胃に毛の塊ができることがある。羊の足シラミ(foot louse)は、狼爪の周囲にもっとも頻繁に見つかるが、重篤な感染により歩行困難になることもある。ブタジラミ(Haematopinus suis)は死亡豚より健常体に移行することにより、豚コレラが蔓延する可能性がある。」
【0008】
ラパージ、ジオッフレイ(Lapage, Geoffrey)(1962年)。モンニッヒ家畜寄生虫学および昆虫学(Monnig's Veterinary Helminthology and Entomology)。第5版。バリーレ(Balliere)、ティンダール(Tindall)およびコックス(Cox)、7 & 8 ヘンリエッタ(Henrietta)通り、ロンドン。600頁。
【0009】
ここでは、「ヒトシラミ」という用語は、シラミ目(Phthiraptera)、より具体的にはシラミ亜目(Anoplura)のヒトジラミ科(Pediculidae)の一構成員を指し、コロモジラミ(Pediculus humanus corporis)、ケジラミ(Pthirus pubis)、およびアタマジラミ(Pediculus humanus capitis)を含む。
【0010】
特にアタマジラミ(Pediculus humanus capitis)は、高率の繁殖能を有し、メスは多数の卵を産むことが可能である。シラミの蔓延は衛生基準が低水準である地域において最も深刻であるが、衛生基準が高い場合であっても、特に子供の遊び仲間、幼稚園および寄宿制学校において、アタマジラミはなお重大な問題を引き起こす。
【背景技術】
【0011】
化学的方法
従来用いられている吸血ジラミ駆除の先行技術法は、部分的にのみ有効であることが判っている。現在、これらの方法は、有毒の有機リン酸化合物(マルディソン(maldison)、マラチオン)、合成ピレスロイド、相乗的ピレスリン、ニームおよび/または他の植物油の種々の製剤を、シラミが寄生したヒト、動物または鳥類に適用することからなるが、これらは全て種々の効力の化学殺虫剤である。薬剤を適用した宿主に対する皮膚発疹、刺激または痒み等の直接的毒性効果に加えて、これらの化学物質のいくつかは、シラミが寄生した人の家族、および化学物質を使用する保管者、農業従事者および殺虫駆除職員に対して深刻な健康被害を及ぼす可能性がある。アタマジラミ(Pediculus humanus capitis)の寄生率は、典型的には体重が50kg未満の低学齢の子供で最も高いことから、これらの有毒な化学物質の適用が、用いる処置方法として好ましくないことは明らかであろう。
【0012】
従来技術のヒトの寄生性吸血シラミの駆除方法は、マラチオン、ペルメトリン、ピペロニルブトキシドによって相乗するピレトリン類、およびビオアレスリン等の化学的殺虫剤に患者を曝すことを含む。(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report)(2003年)「オーストラリアにおけるアタマジラミ治療規則総説(A Review of the Regulation of Head Lice Treatments in Australia)」オーストラリア政府医薬品行政局(Australian Government Therapeutic Goods Administration)、オーストラリア、キャンベル)。これらの治療法の欠点および不利点は、上記の刊行物に挙げられており、また以下に記載する。
【0013】
マラチオンによる治療は、シラミが寄生したヒトまたは子供を殺虫剤に数時間の長期に及び曝すことが必要であり、重篤な副作用が観察され、また、おそらくマラチオンに対するシラミ個体群の耐性による、効力不足の可能性も記録された(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年)。
【0014】
ヒトアタマジラミ駆除のための、ペルメトリン、相乗したピレスリン類およびビオアレスリンによる治療は、主として痒みまたは皮膚発疹の副作用の発症率が低いことがわかっているが、これらの化学品の治療効果が低いのは、おそらくシラミ個体群における殺虫剤耐性によることが懸念される(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年) 。
【0015】
オーストラリアでは、ヒトアタマジラミの寄生を減らすため、薬草抽出物およびエッセンシャルオイルのブレンド品(メラレウカ油、ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油、ゼラニウム油、タイム油、シトロネラ油、アニス油、レモン油、レモングラス油の単独、またはエキナシア(Echinacea)、サラレイシ(purpura)、アドハトーダバシカ(Adhatoda vasica)、ステモナセッシフォリア(Stemona sessifolia)抽出物とのブレンド)等が発売されており、20を超える薬草ブレンド製品がオーストラリア医薬品行政局(Australian Therapeutic Goods Administration)でリストされている。しかしながら、これらの薬草ブレンド品は容認できるレベルのアタマジラミの駆除効果を実証する根拠が不十分である(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年) 。さらに、上記の油のいくつかは、高濃度で皮膚刺激、刺痛または灼熱感を起こすことがあり、これらの薬草製品は自動的に安全であると見なすことはできない(医薬審査委員会報告(2003年) 。
【0016】
上記の治療の欠点および不利点はよく知られていることから、患者に有効かつ安全な代替治療の探索が世界的に行われてきた。新しい頭ジラミ治療の探索には、以下が挙げられる。
【0017】
1.アタマジラミを、動物用ノミ治療薬であるイミダクロプリドおよびフィプロニルに2時間曝す効果についてのインビトロ研究。これらの研究の結果、濃度0.25%のフィプロニルであっても、2時間曝した後の死亡率は97%しかなかった。研究者は、アタマジラミ個体群においてリンダン耐性が実証されたことから、効果の不足は、おそらくフィプロニルとリンダンとの間の交差耐性のためであろうと提言した(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年)。
【0018】
2.別の研究において、7〜12歳の女子28人に3.5 mg/kgのレバミソール(駆虫薬)を一日一回、10日間経口投与した。高投与量の薬品に長期間、曝したにもかかわらず、効果は67%だけであった。(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年)
【0019】
3.患者10人に対し、アタマジラミの駆除に容認可能な効果を達成するためには、最小でトリメトプリム80mg/スルファメトキサゾール400mgを一日二回、少なくとも3日間経口投与する必要があった。別の研究において、10mg/kg/dayのトリメトプリムに相当する割合のトリメトプリム/スルファメトキサゾールの10日間の経口投与を、1%ペルメトリンで局所処置し7日後に再処置する方法、またはアタマジラミ駆除のための両方の処置方法の組み合わせと比較した。4週間の追跡検査で測定したところ、トリメトプリム/スルファメトキサゾール処置では78%の効果しか得られず、ペルメトリン処置では72%、組み合わせの処置では92.5%の効果であった。トリメトプリム/スルファメトキサゾールによって引き起こされる、アレルギー反応、悪心、嘔吐および一過性掻痒を含む、重篤な副作用があった。(医薬審査委員会報告(Medicines Evaluation Committee Report) (2003年)
【0020】
4.アタマジラミ駆除の効果について、8mg/kg/dayのトリメトプリムに相当する割合のトリメトプリム/スルファメトキサゾールの12日間の経口投与と1%リンダンシャンプーの局所適用との組み合わせを、リンダンシャンプー単独と比較した。2週間の追跡で、アタマジラミの駆除効果は、リンダン処置で76.8%であり、組み合わせの処置では86.7%であり、再処置では有効率はそれぞれ91.3%および97.8%であった。
【0021】
これらの実験的処置において実証された効果不足および患者の不利な反応は別として、親または世話人が、自分の子供にかなりの量の化学的殺虫剤を12日にわたって経口投与する必要があることを歓迎するとは思えない。
【0022】
先行技術である吸血シラミ駆除の化学的方法の上記の制限に加えて、これらの化学的殺虫剤による防御が不完全かつ短期であること、および、これら化学品の毒性効果に対して吸血シラミの耐性が発現することにより、これらの化学的殺虫剤の使用は、一般的に芳しくない。
【0023】
吸血シラミ駆除の他の方法として、感電死によってシラミを殺す電気櫛の使用が挙げられる。これは、ヒトアタマジラミPediculus humanus capitisの治療において一般的に使用される。この方法を中程度に有効にするためでさえ、櫛かけは熱心かつ継続的でなければならず、また櫛に接触したシラミしか除去または殺せないことは明らかである。
【0024】
微生物法
豪州特許AU-B-52488/86号公報により、ヒツジシラミBovicola (Damalinia) ovisの駆除のための微生物製剤の使用が以前より明らかであるが、ヒツジシラミは吸血シラミとは完全に異なる生き物である。
【0025】
この文脈において、普通の表現である「シラミ」は規定的ではなく、単に小さな外部寄生虫が大きな宿主に寄生する言及であること容易に理解しなければならない。「シラミ」という用語は、議論されているケースによって、昆虫、甲殻類および刺胞動物門のクラゲのような広範な外部寄生性生物を含み得る。殆どの例において、一般的用語の「シラミ:lice」は、外部寄生虫が存在する宿主または環境の記載で修飾される。いくつかの例を挙げる:
【0026】
「羽ジラミ:Feather Lice」は一般に、メノポン・スタラミネウス(Menopon stramineus)等のフチラプテランス(phthirapterans)昆虫を言う。
「ウオジラミ:Fish Lice」は一般に、エラオ目(Argulus sp.)等のブランキウラン(branchiuran)甲殻類を言う。
「フナムシ:Sea Lice」は、リヌケ・ウンクイクラタ(Linuche unquiculata)等の刺胞動物門のクラゲをいう。
【0027】
「鳥アタマジラミ:Poultry Head Lice」は一般に、ククロトガステル・ヘテログラファ(Cuclotogaster heterographa)等のマロファガンス(mallophagans)を言う。
「鮭ジラミ:Salmon Lice」は一般に、レペオフテイルス・サルモニス(Lepeophtheirus salmonis)等の等脚類の甲殻類を言う。
「ニワトリハジラミ:Chicken Lice」は一般に、メナカンサス・ストラミネウス(Menacanthus stramineus)等のマロファガンス(mallophagans)を言う。
【0028】
「アブラムシ:Plant Lice」は一般に、アブラムシ、例えばチューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)等の同翅類の昆虫を言う。
「鱈シラミ:Cod Lice」は、フタスジタマガシラ(Scolopsis bilineatus)等のカイアシ類の甲殻類を言う。
「羊ジラミ:Sheep Lice」は一般に、ヒツジハジラミ(Bovicola ovis)等のマロファガンス(mallophagans)を言う。
【0029】
本出願の主題である「吸血ジラミ」は極めて異なり、別の生物であり、従って、別の亜目であるシラミ亜目に分類され、血液を餌にする。吸血ジラミが他の「シラミ」と明らかに異なる群の生物であることは一般的に認められており、その結果、別の科学的分類となっている(例えば、ビンセント(Vincent)S,スミス(Smith)、Entomologische Abhandlungen 61 : (2) 150?151による概説および論及)。
【0030】
本書において、「吸血シラミ」という用語はシラミ亜目の構成員を言い、限定しないがヒトジラミ科(Pediculidae)を含み、この科には、ヒトの体のシラミであるコロモジラミ(Pediculus humanus humanus)、アタマジラミ(Pediculus humanus capitis)、およびヒトの陰部のシラミであるケジラミ(Pthirus pubis)が含まれる。
【0031】
本発明は、より詳細には、吸血シラミがヒトに寄生することによって起こる疾病であるシラミ寄生症、および吸血シラミによって起こる動物および鳥類の疾病の抑制を目的とするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、従来技術の不利点のいくつかを克服し、害虫である外部寄生性吸血シラミ群、特にヒトに刺激、痒みおよびシラミ寄生症を起こすものの駆除に有効な、新規な方法を指示することである。
【0033】
本発明の目的は、吸血シラミ駆除のための上述の先行技術の不利点および欠点を克服することである。
【0034】
本発明において開示される微生物製剤は、有効かつ人間および他の脊椎動物に無害であり、従って、治療下の人間の患者、動物および鳥類、および施術者に安全である。寄生性吸血シラミは、生物的、即ち微生物的手段で駆除されるので、寄生性吸血シラミ個体群における耐性発現の危険性が大きく低下する。本発明の方法は、このような寄生の予防または治療に有効である。本発明の他の有利点は、以下の記述より明らかになり、以下では説明および実施例によって、本発明の具体例が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0035】
定義
「微生物製剤」という用語は、細胞と、タンパク質、胞子、膜、膜結合タンパク質、膜酵素および/またはその代謝産物、細菌の1以上の培養物に由来し、寄生性吸血シラミを病気および死亡させるのに有益な非病原性代謝産物を含む細胞成分との、あらゆる組み合わせを意味する。
【0036】
「(処方)製剤」という用語は、賦形剤、添加剤、および共力剤を伴うか伴わず、かつ液体または固体担体またはフィラーを伴うか伴わない上記の微生物製剤を含む、最終産物を意味する。
【0037】
本発明によれば、決して本発明を限定するように理解されるべきではないが、本発明の例として、吸血シラミ寄生の治療および予防のための医薬としての製剤の製造における、1以上の細菌、例えばバチルス属の、微生物製剤の使用が提供される。例えば、前記の医薬は、ヒト頭ジラミの駆除のため、患者の毛髪および頭皮に適用することによって投与してもよく、または動物または鳥類宿主の吸血シラミの駆除のため、それらの毛または羽毛に適用してもよい。
【0038】
好ましくは、シラミは、シラミ目(Phthiraptera)の吸血シラミである。
好ましくは、吸血シラミは、シラミ亜目(Anoplura)またはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)(Rhynchophthirina)のものである。
好ましくは、吸血シラミの科は、ヒトジラミ科である。
【0039】
好ましくは、吸血シラミの種は、アタマジラミ:ペディキュラス・ヒューマヌス・カピティス(Pediculus humanus capitis)、ヒトケジラミ:フチラス・プビス(Phthirus pubis)、およびコロモジラミ:ぺディキュラス・ヒューマヌス・コルポリス(Pediculus humanus corporis)である。
【0040】
好ましくは、細菌の培養物は、バチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)(Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、またはバチルス・モリタイ(Bacillus moritai)種の細菌である。
【0041】
好ましくは、医薬は、もう1つの細菌に由来する微生物製剤の処方製剤からなる。
好ましくは、微生物製剤は、以下のもの:生存または非生存細菌細胞、酵素およびタンパク質を含む細菌代謝産物、膜または他のものが結合しているか、全く結合していない、シラミ病原性化合物、生存または非生存細菌胞子:のいくつかまたは全てを含んでもよい。
【0042】
好ましくは、医薬は、上述の他の成分の中でグラム当たり約2×108〜2×1012個の生存胞子または生存細胞を含んでもよい、有効量の微生物製剤を含む処方製剤である。
好ましくは、医薬は、グラム当たり約2×1010個の生存胞子または生存細胞を含んでもよい、有効量の微生物製剤を含む処方製剤である。
【0043】
本発明は、種々の処方製剤に存し、例えば、有効成分として上記の微生物製剤の有効量を、ローション、コンディショナーまたはシャンプーを製造するための種々の賦形剤と共に含む、殺シラミ・ヘアコンディショナーまたは抗シラミローション製剤に存する。次に、処方製剤は、吸血シラミを除去するため、シラミ寄生症患者の毛髪および頭皮に容易に適用することができ、および/または、寄生した毛髪に櫛を入れることができる。微生物処置の後、慣用のシラミ取りの櫛を使用することにより、死んだ吸血シラミおよび幼虫(卵)を除いてもよい。この手段により、シラミ寄生症が治療され、患者は従来技術の治療計画に付随するきつい化学物質の悲惨な副作用を免れる。
【0044】
本発明のさらなる具体例には、1以上の細菌、例えばバチルス属またはその代謝産物の微生物製剤を含む、動物または鳥類の吸血シラミおよび/またはそれらの幼虫(卵)を殺す方法があり、ここで微生物製剤は、吸血シラミおよび/またはその卵を殺す有効量を、シラミが寄生した動物または鳥類の毛または羽毛に局所適用するための液体または粉末担体と共に含む。
【0045】
本発明は、ある微生物の吸血シラミに対する殺虫効果についての出願者の発見に端を発する。吸血シラミおよびその幼虫を殺す複雑な生化学的作用機序形態は、現在のところ一部しか知られていない。微生物代謝産物、即ち、生存または非生存細菌細胞、酵素およびタンパク質を含む細菌代謝産物、膜または他のものが結合しているか、結合せずに存在する、シラミ病原性化合物、生存または非生存細菌胞子が、シラミの食べ物と共に摂取される。消化された代謝産物は、多数の致死的細胞病理を引き起こし、シラミの代謝を乱すので、続く作用機序では、消化された生存胞子はシラミにおいて成長し始め、致死的腸炎を起こすか、血リンパに浸透して、致死的敗血症を引き起こす。
【0046】
広くは、本発明によれば、シラミ亜目Anoplura(=シラミ目Siphunculata)およびゾウハジラミ亜目(長吻亜目)Rhynchophthirinaの種等の関連する寄生性吸血シラミの個体群は、以下に述べる通り、バチルス属の細菌またはその代謝産物を含有するか、それらに由来する、殺虫性の微生物製剤の有効量で、寄生されたヒト、動物または鳥類を処理することによって駆除される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、上記の実施および/または適用方法および/または、バチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)Bacillus thuringiensisおよび/またはバチルス・セレウスBacillus cereusおよび/またはバチルス・モリタイBacillus moritai株に由来する、1以上の微生物製剤のうちの、1以上の組み合わせである。このような組み合わせは、2以上の寄生性吸血シラミの種または病期および/または2以上の宿主種に対する寄生性吸血シラミの駆除に本発明を用いる場合に、有利である。最も有効な組み合わせは、以下に述べるバイオアッセイによって決定する。
【0048】
より詳しくは、ヒト、動物または鳥類に対する寄生性吸血シラミの寄生の予防または駆除方法であって、バチルス属の細菌の好適な種、より詳細には、バチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritai種に由来するか、これらを含む、微生物製剤の有効量を、寄生された宿主に適用することを含む方法が提供される。
【0049】
好ましくは、シラミは、シラミ目Phthirapteraのものである。
好ましくは、亜目は、シラミ亜目Anopluraまたはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)Rhynchophthirinaである。
好ましくは、科は、ヒトジラミ科Pediculidaeである。
好ましくは、バチルス菌は、バチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)Bacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereus、またはバチルス・モリタイBacillus moritai種のものである。
【0050】
背景−バチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)Bacillus thuringiensis
バチルス属の上記の種は、一般に、好気性のグラム陽性芽胞形成性細菌である。バチルス・チューリンゲンシスは、胞子形成の間に、1以上の中性pHで不溶性の副芽胞結晶性毒素を産生することによって、近縁種であるバチルス・セレウスBacillus cereusと区別される。
【0051】
バチルス・チューリンゲンシスの多数の菌株または血清型において、副芽胞結晶性毒素は、結晶性毒素の溶解に必要な高アルカリ性の消化管(gut)pHおよびタンパク質分解酵素、および適合性受容体部位を有する昆虫によって消化された場合、それら昆虫に対して毒性が高い可能性がある。これらの結晶性毒素は、ある著者によって、バチルス・チューリンゲンシス「δ内毒素」または「バチルス・チューリンゲンシス毒素」と呼ばれてきた。これらの「バチルス・チューリンゲンシス毒素」は、単に、バチルス・チューリンゲンシスの胞子形成と同時に起こる結果である。それらはバチルス・セレウスでは産生されず、殺シラミ性はない。
【0052】
微生物製剤の製造
下記の例により、微生物製剤製造の詳細を説明する。以下で説明する具体的な材料および技術は単なる例であり、環境によって変わる可能性があることから、以下は本発明の実例として挙げられるものであり、限定するものではないことを理解すべきである。
【0053】
バチルスの選択された菌株は、標準的または慣用の発酵方法、例えば、攪拌式発酵機において好適な液体培地中で細胞を成長させることによって、産生し得る。発酵による製造の間、例えば、以下のパラメータを維持する:pH = 7.2; pO2 = 70-90%; 温度=32.5℃。一般に、上記のバチルス種は、栄養的に厳密ではなく、広範な慣用の細菌発酵培地および発酵パラメータを使用し得る。
【0054】
微生物製剤の製造は、2つの経路のうちの1つに従い得る:
製造経路1
バチルス細胞が、胞子形成の前の増殖状態にあるときに、発酵ブロスまたは培地を採取する。採取のタイミングは、培養中のバチルス株および使用する発酵培地およびパラメータによる。一般に、細胞個体群が発酵の「プラトー」または静止段階に達したときに採取を行うが、代表的には、1ml当り5×109個の細胞を含む、発酵機容量の10%の接種材料を用いる場合には、接種7〜10時間後に行う。採取した材料は、バチルス細胞、細胞膜および、遊離体であるか膜が結合した発酵ブロス代謝産物および細菌代謝産物を含む。
【0055】
採取は、遠心分離、濾過、共沈または膜濃縮等の、1以上の標準的方法によって達成され得る。スラリーまたはケーキ形態の採取材料は、増殖性バチルス細胞および発酵ブロス代謝産物等を含み、微生物製剤の有効成分を構成するが、これは、後に慣用の賦形剤と共に製剤化して、水性、非水性または乳化可能な濃縮物またはローション、分散性懸濁液、またはシャンプー等の処方製剤を形成する。
【0056】
あるいは、採取した細菌材料は、真空乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥等の1以上の慣用法によって乾燥するか、または、2倍容量のアセトンを添加して共沈した後に採取材料を空気乾燥することによって乾燥する。乾燥材料を均質化して微粉末にした後、微生物製剤の有効成分を構成する材料を慣用の賦形剤と共に製剤化して、水性、非水性または乳化可能な濃縮物またはローション、分散性懸濁液、シャンプー、または水和剤等の処方製剤を形成する。
【0057】
あるいは、上述の採取した乾燥材料は、微生物製剤の有効成分を構成するが、微粉末タルク、ベントナイト、カオリンまたはセライト等の担体粉末および他の賦形剤または添加物と共に、充分に混合するか、製粉するかまたはブレンドして、シラミが寄生した宿主の毛髪、毛または羽毛に適用するための微粉または粉体製剤を製造する。
【0058】
製造経路2
約28〜30時間の発酵および続く胞子形成の後、例えば、遠心分離、濾過、共沈または膜濃縮等の1以上の標準的方法によって、細菌培養物を採取する。採取した材料は、胞子形成したバチルス細胞、細胞膜、胞子、タンパク質、酵素および、遊離体であるか膜が結合した発酵ブロス代謝産物および細菌代謝産物を含む。
【0059】
採取は、遠心分離、濾過、共沈または膜濃縮等の、1以上の標準的方法によって達成され得る。スラリーまたはケーキ形態の採取材料は、胞子形成したバチルス細胞、細胞膜、胞子、タンパク質、酵素および、遊離体であるか膜が結合した発酵ブロス代謝産物および細菌代謝産物を含み、微生物製剤の有効成分を構成するが、これは、後に慣用の賦形剤と共に製剤化して、水性、非水性または乳化可能な濃縮物またはローション、分散性懸濁液、またはシャンプー等の処方製剤を形成する。
【0060】
あるいは、採取した細菌材料は、真空乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥等の1以上の慣用法によって乾燥するか、または、2倍容量のアセトンを添加して共沈した後に採取材料を空気乾燥することによって乾燥する。乾燥材料を均質化して微粉末にした後、微生物製剤の有効成分を構成する材料を慣用の賦形剤と共に製剤化して、水性、非水性または乳化可能な濃縮物またはローション、分散性懸濁液、シャンプー、または水和剤等の処方製剤を形成する。
【0061】
あるいは、採取した乾燥材料は、微生物製剤の有効成分を構成するが、微粉末タルク、ベントナイト、カオリンまたはセライト等の担体粉末および他の賦形剤または添加物と共に、充分に混合するか、製粉するかまたはブレンドして、シラミが寄生した宿主の毛髪、毛または羽毛に適用するための微粉または粉体製剤を製造する。
【0062】
本発明の作用形態
製造経路1
選択された菌株のバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereus、およびバチルス・モリタイBacillus moritaiは、栄養成長段階において、タンパク質、タンパク質分解酵素およびヌクレオチド等の代謝産物の複合体を産生する。これらの代謝産物のいくつかは膜に結合し、多くはバイオアッセイによって吸血シラミに対する病原性を検出し得る。いくつかの場合では、昆虫病原性アデニンヌクレオチド・チューリンゲンシンが産生されるかもしれない。ヌクレオチド・チューリンゲンシンは、シラミの必須酵素であるRNAポリメラーゼの強力な阻害剤であり、これが存在する場合、微生物製剤の殺シラミ効果の寄与因子となり得る。しかしながら、本書でも提供される通り、チューリンゲンシンを含まない微生物製剤もまた、吸血シラミの殺虫に有効である。
【0063】
害虫である吸血シラミが摂取する場合、遊離体であるか膜が結合したこれらの代謝産物および細菌性代謝産物の殺シラミ効果に加えて、殺シラミ効果が生じるところでは、バチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereus、またはバチルス・モリタイBacillus moritaiがシラミ消化管へ侵入して、代謝の失調、腸炎または敗血症で死ぬ。この方法では、寄生した吸血シラミは死ぬので、吸血シラミによる疾病、痒みおよび刺激は抑制される。
【0064】
本発明の作用形態
製造経路2
微生物製剤の成分には、胞子形成細胞;胞子;残存する増殖性細胞;細胞膜;タンパク質分解および糖分解酵素、ヌクレオチド、および細胞膜に結合する細胞溶解性ペプチドおよび酵素等の、タンパク質および代謝産物が含まれる。種々の組み合わせにおいて、これらの成分は吸血シラミ駆除用の強力な殺シラミ剤である。
【0065】
害虫である吸血シラミが摂取する場合、遊離体であるか膜が結合したこれらの代謝産物および細菌性代謝産物の殺シラミ効果に加えて、殺シラミ効果が生じるところでは、バチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereus、またはバチルス・モリタイBacillus moritaiおよび発芽胞子がシラミ消化管へ侵入して、代謝の失調、腸炎または敗血症で死ぬ。この方法では、寄生した吸血シラミは死ぬので、吸血シラミによる疾病、痒みおよび刺激は抑制される。
【0066】
バイオアッセイによる好適な細菌の選択
好適な細菌は、抗吸血シラミ活性を有するものである。抗吸血シラミ活性についての上記のバチルス種の候補株は、以下に述べる通りの好適なバイオアッセイによって選択される。
【0067】
本発明において用いられる微生物株は、バイオアッセイによって決定する。微生物製剤および/または処方製剤の連続的濃縮物または希釈物を、以下に述べる例のような、1以上の適当なバイオアッセイ系において標的の吸血シラミに投与する。バイオアッセイは、多数の害虫・吸血シラミよりなる複製サンプルを、候補の微生物株に由来する微生物製剤またはその成分または処方製剤の段階的レンジの希釈物または投与物で処理するか、またはそれらに曝すことよりなる。一般に、複製サンプル当り、1投与当り60匹以上の吸血シラミを用い、5段階以上の投与量を、各投与当り最低2つ、好ましくは4つの複製サンプルで試験する。
【0068】
同様のサンプル数の吸血シラミは、微生物製剤で処置または曝さず、同一のバイオアッセイ条件下におく。これらの非処置吸血シラミは対照を構成して、損傷または不適当なバイオアッセイ条件を扱った結果である不当な吸血シラミの死亡が起こらなかったことを確実にする。
【0069】
得られる吸血シラミの死亡率のデータから、修正したLD50、LD99、LC50、LC99および/またはLT50、およびLT99を必要に応じて計算する。例えばアボット(Abbott)の式によるこれらの修正、および死亡率の計算は、一般的で広く用いられており、バイオアッセイに詳しい者にはよく知られていると思われる。
【0070】
一般に、あるシラミ種では、最も高い効力を示す細菌株、即ち、最も低いLD50、LD99、LC50、LC99および/または最も迅速な吸血シラミ死亡率、即ち、最も低いLT50、およびLT99を、吸血シラミ種駆除のための本発明の実施に使用される、微生物製剤またはその成分または処方製剤として選択する。
【0071】
吸血シラミの各標的種について、予備的バイオアッセイおよびその後のバイオアッセイを、同様の方針で、異なる好適な基質および好適な宿主に対して実施する。例えば、これらのバイオアッセイにおいて、候補の細菌株由来の投与量を、カプセル化血液、それぞれに見合った毛髪、体毛または羽毛を有するか有しない人工皮膚、または宿主の皮膚剥離物等の基質上に生息する吸血シラミに投与してもよい。吸血シラミの標的種によって、血清をバイオアッセイ系に添加して、餓死による死亡率を低下させてもよいが、これも別な点で結果を複雑にする可能性がある。上記の通り、吸血シラミ死亡率を測定し、修正したLD50、LD99、LC50、LC99および/またはLT50、およびLT99を計算し、一般に、最も有力な細菌株を、宿主上の吸血シラミ種駆除のための本発明の実施に使用する。
【0072】
適当である場合、人口食物、および、模擬カプセル化血液、体毛、羊毛または羽毛のバイオアッセイにおける実施の成功に続いて、微生物製剤を、宿主のヒト、動物または鳥類についてバイオアッセイする。これは一般に、吸血シラミが寄生したヒト、動物または鳥類を試験下で微生物製剤または処方製剤で局所処置することを含む。吸血シラミの数または濃度を、ヒトまたは宿主の微生物製剤または処方製剤での処置前および後に記録する。結果は、その後、修正したLD50、LD99、LC50、LC99および/またはLT50として読み、寄生再構築の阻止時間または期間にわたる吸血シラミの死亡率のLT99の割合も記録する。この手段によって、およびバイオアッセイの結果をふまえて、微生物製剤を選択し、その有効量を決定する。
【0073】
本発明の適用方法
処置を達成するために使用される適用方法は、駆除される吸血シラミの種および発育段階、宿主種、および吸血シラミ寄生部位、環境条件または状況および使用される微生物製剤の物理的性質に従って変わってもよい。
【0074】
必要とされる広範囲の適用方法に対応するため、微生物製剤は、水性または非水性濃縮物、乳剤、ローションまたは液体シャンプーとして、または、シャンプー、スプレー、噴射または浸漬液体として、または粉剤または粉末剤として、希釈を要するか要しない適用に好適な水和剤として、処方することができる。例えば、以下に教示したとおり、ヒトアタマジラミのペディキュラス・ヒューマヌス・カピティス(Pediculus humanus capitis)を駆除する場合、微生物製剤は、ローションまたはシャンプーとしてまたはスプレー式処方として、処方し、毛髪および頭皮に適用することができる。他の適用には、例えば鳥類の吸血シラミの駆除には、微生物製剤を不活性担体に組み込み、粉剤または粉末剤の形態で適用してもよい。
【0075】
本発明をさらに説明するために、本発明の方法の具体例に言及する。
第一の態様において、ヒトアタマジラミ、ペディキュラス・ヒューマヌス・カピティス(Pediculus humanus capitis)が寄生したヒトの毛髪および頭皮を、バチルス属の1以上の選択された菌株、特にバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、またはバチルス・モリタイ(Bacillus moritai)に由来する微生物製剤の有効濃度を含有する液体を含む、ローション、シャンプーまたはスプレー式処方製剤で処置する。液体処方製剤は、1以上の上記の微生物製剤を単独で、または添加剤および/または賦形剤で増補したものを含有するか、それらの全体または部分に由来する。
【0076】
例えば、微生物製剤は、シラミが感染したヒトに対する微生物製剤の適用に便利な媒体として機能するローション基剤と共に処方してもよい。本発明の態様を制限しないが、このような処方基剤の例は、ステアリン酸グリセリルまたはイソステアリン酸ソルビトール等の乳化剤、ポリグリコールエステル、ポリグリコールエーテルまたはセチルアルコール等の担体、および塩化ベヘントリモニウム等の添加剤を含有してもよい。毛髪および頭皮を洗浄するため、硫酸ラウリルアンモニウム等の中性洗剤が含まれていてもよい。処置した毛髪の櫛通りを向上させるため、最終的な処方製剤に小麦胚種油または小麦ふすまの脂質(バイオブラニル(登録商標)(Biobranil))等の良質の脂質が含まれていてもよい。有効量の微生物製剤を含む、得られるローションまたはシャンプーは、シラミが寄生したヒトの毛髪および頭皮に適用され、毛髪を櫛で溶かすことによって全体に充分に行きわたる。
【0077】
本発明の実施方法
1以上の以下の本発明の実施方法に従って、微生物製剤中のバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritaiの殺虫性物質および代謝産物に、寄生性吸血シラミを曝す。
【0078】
実施方法1−代謝物質製剤の使用
上述の通り、ヒト、動物または鳥類宿主に適用される微生物製剤または処方製剤は、上述の遊離体であるか膜が結合した活性代謝産物の有効量を含有するので、寄生性吸血シラミに摂取された場合、吸血シラミは死滅および/または生殖不能になる。これらの殺虫代謝産物は、選択されたバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritai株と共に採取される発酵ブロスに由来する。ある実施において、代謝産物の殺虫効果は、処方製剤中に存在するかまたは処方製剤中に存在する胞子に由来するバチルス細胞が侵入することによる、吸血シラミ消化管および血体腔への侵入によって増大し得る(以下参照)。寄生性吸血シラミの死滅およびそれ故の排除は、寄生を駆除し、疾病−ヒトの場合はシラミ寄生症−を治療する手段である。
【0079】
実施方法2−増殖性細胞製剤の使用
微生物製剤または処方製剤は、実施方法1の成分に加えて、1以上の選択されたバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritai株の生存能力のある増殖性細胞を含有する。上述の通りのヒト、動物または鳥類への適用の後、これらの生存細胞は、適用される処方製剤に添加された栄養分を利用して、または利用せず、宿主上に存在する。これらの生存細胞は、寄生性吸血シラミの摂食部位に非常に近いところに適用され、その場で殺虫性代謝産物、即ち、酵素および上述の他の代謝産物を産生する。
【0080】
その後、これらの代謝産物は、寄生性吸血シラミが摂取する摂食部位に拡散または移動し、シラミを殺す。ある実施において、代謝産物の殺虫効果は、致死的な敗血症を引き起こすバチルス細胞による、吸血シラミの消化管および血体腔への侵入によって増大し得る。寄生性吸血シラミの死滅およびそれ故の排除は、寄生を駆除し、疾病−ヒトの場合はシラミ寄生症−を治療する手段である。
【0081】
実施方法3−胞子製剤の使用
微生物製剤または処方製剤は、実施方法1および2の成分に加えて、1以上の選択されたバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritai株の生存能力のある胞子を含有する。これらの胞子は、濡らした場合に、ある程度の割合が適当な誘導剤の存在下で迅速に成長し始めるように、熱処理によって「強化」してもよい。寄生されたヒト、動物または鳥類への適用に先立ち、胞子が迅速に成長し始め、処置される宿主上で増殖性細胞を産生するように、胞子発芽誘導剤、例えば、L−アラニン、アデノシン、グルコースまたはジピコリン酸カルシウム等を、所望により微生物製剤または処方製剤に添加してもよい。
【0082】
上記の実施方法2の通り、その後、これらの増殖性細胞は成長し、殺虫性代謝産物を産生して、寄生性吸血シラミを殺す。ある実施において、代謝産物の殺虫効果は、致死的な敗血症を引き起こすバチルス細胞、または成長した胞子に由来する細胞による、吸血シラミの血体腔への侵入によって増大し得る。寄生性吸血シラミの死滅およびそれ故の排除は、寄生を駆除し、疾病−ヒトの場合はシラミ寄生症−を治療する手段である。
【0083】
実施方法4−胞子および殺虫性タンパク質製剤の使用
微生物製剤または処方製剤は、選択されたバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringiensis、バチルス・セレウスBacillus cereusまたはバチルス・モリタイBacillus moritai株の、生存能力のある胞子、および遊離体であるか膜が結合した殺虫性ペプチド酵素またはタンパク質を含有する。これらの成分は、吸血シラミに摂食された場合、激しく消化管を損傷することによって吸血シラミを殺す、殺虫性がある。胞子は、濡らした場合に、吸血シラミの消化管において迅速に成長し始めるように、熱処理によって「強化」してもよく、胞子は血体腔へ侵入し、敗血症によって吸血シラミを殺し、疾病、−ヒトの場合はシラミ寄生症−を治療する。
【0084】
この態様の実例では、アタマジラミの持続的寄生による急性シラミ寄生症の病歴を持つ11歳の男児を、上記の実施方法4に記載した通りに処方したシャンプーで2回処置した。この処置は10日間おいて適用した。二回目の処置の目的は、一回目の処置の時点で卵の段階だったアタマジラミを駆除することであった。この子供は全く副作用を経験せず、子供の頭ジラミ寄生は完全に除去され、彼のシラミ寄生症は治療された。
【0085】
本書で示し、記載した本発明の具体例が最も実用的かつ好ましい態様であると思われるものの一つであるにもかかわらず、本発明の範囲内で逸脱することは可能であると認められ、本発明の範囲は本書に記載された詳細に限定されないが、あらゆる全ての同等の態様を包含するように添付した特許請求の範囲の全範囲が許容されるので、本発明の範囲および領域から逸脱することなく、方法、操作パラメータ等の詳細において、種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、アデニンヌクレオチド・チューリンゲンシンの分子構造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス属の細菌、または、その細胞と、タンパク質、胞子、膜、膜結合タンパク質、膜酵素および/またはその代謝産物、非病原性代謝産物を含む細胞成分とのあらゆる組み合わせの、患者の吸血シラミ寄生の治療および予防のための医薬の製造における使用であって、該医薬が哺乳類または鳥類の毛または羽毛に施される、使用。
【請求項2】
請求項1の医薬であって、シラミがシラミ目のものである、医薬。
【請求項3】
請求項2の医薬であって、亜目がシラミ亜目またはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)のいずれかである、医薬。
【請求項4】
請求項3の医薬であって、科がヒトジラミ科である、医薬。
【請求項5】
請求項4の医薬であって、バチルス属がバチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)、バチルス・セレウス、またはバチルス・モリタイ種のものである、医薬。
【請求項6】
請求項5の医薬であって、医薬がグラム当たり約2×108〜2×1012個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、医薬。
【請求項7】
請求項6の医薬であって、医薬がグラム当たり約2×1010個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、医薬。
【請求項8】
バチルス属の細菌、または、その細胞と、タンパク質、胞子、膜、膜結合タンパク質、膜酵素および/またはその代謝産物、非病原性代謝産物を含む細胞成分とのあらゆる組み合わせを含む、ヒトシラミおよび/またはその卵の殺組成物であって、バチルス属の細菌またはその代謝産物が、ヒトシラミおよび/またはその卵を殺虫する有効量存在し;かつ、局所適用のための担体が存在する、組成物。
【請求項9】
請求項8の組成物であって、シラミがシラミ目のものである、組成物。
【請求項10】
請求項9の組成物であって、亜目がシラミ亜目またはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)のいずれかである、組成物。
【請求項11】
請求項10の組成物であって、科がヒトジラミ科である、組成物。
【請求項12】
請求項11の組成物であって、バチルス属がバチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)、バチルス・セレウス、またはバチルス・モリタイ種のものである、組成物。
【請求項13】
請求項12の組成物であって、医薬がグラム当たり約2×108〜2×1012個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、組成物。
【請求項14】
請求項13の組成物であって、医薬がグラム当たり約2×1010個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、組成物。
【請求項15】
バチルス属の細菌またはその代謝産物の有効量、添加物および液体担体を含む、抗シラミローション。
【請求項16】
請求項15のローションであって、シラミがシラミ目のものである、ローション。
【請求項17】
請求項16のローションであって、亜目がシラミ亜目またはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)のいずれかである、ローション。
【請求項18】
請求項17のローションであって、科がヒトジラミ科である、ローション。
【請求項19】
請求項18のローションであって、バチルス属がバチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)、バチルス・セレウス、またはバチルス・モリタイ種のものである、ローション。
【請求項20】
請求項19のローションであって、医薬がグラム当たり約2×108〜2×1012個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、ローション。
【請求項21】
請求項20のローションであって、医薬がグラム当たり約2×1010個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、ローション。
【請求項22】
成熟および未成熟の両形態における吸血シラミ寄生の治療方法であって、
(a)バチルス属の細菌、または、その細胞と、タンパク質、胞子、膜、膜結合タンパク質、膜酵素および/またはその代謝産物、非病原性代謝産物を含む細胞成分とのあらゆる組み合わせを含む組成物を、寄生部位に局所適用すること;および
(b)組成物を寄生部位に、少なくとも約5分、留めること
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、シラミがシラミ目のものである、方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、亜目がシラミ亜目またはゾウハジラミ亜目(長吻亜目)のいずれかである、方法。
【請求項25】
請求項24の方法であって、科がヒトジラミ科である、方法。
【請求項26】
請求項25の方法であって、バチルス属がバチルス・チューリンゲンシス(土壌細菌)、バチルス・セレウス、またはバチルス・モリタイ種のものである、方法。
【請求項27】
請求項26の方法であって、医薬がグラム当たり約2×108〜2×1012個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、方法。
【請求項28】
請求項27の方法であって、医薬がグラム当たり約2×1010個の生存胞子または生存細胞を含有することをさらなる特徴とする、方法。
【請求項29】
有効成分として有効量のバチルス属の細菌またはその代謝産物、添加物および水を含む、殺シラミ・ヘアコンディショナー処方製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2008−533054(P2008−533054A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501104(P2008−501104)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000286
【国際公開番号】WO2006/096905
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507308452)マイクロビアル プロダクツ プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】