説明

吸込口体

【課題】吹付管の増加に頼ることなく樹脂粉体に対する回収効率を上げられる構造を得られるようにする。
【解決手段】先端面に開口部1を有すると共に後端面2に吸引管3を接続された負圧発生用筒体4と、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5と、外気導入孔5から導入された外気6を、負圧発生用筒体4の内部を通して開口部1の近傍へと導く吹付管7とを備えると共に、負圧発生用筒体4の内部に、後端面2との間で所要の導入外気分配空間17を画成可能な仕切板16を配置し、この仕切板16に対して、吹付管7を取付けると共に、仕切板16に外気導入孔5から負圧発生用筒体4の内部へ導入された外気6を負圧発生用筒体4の内壁15にほぼ沿って開口部1の近傍へと導く空気分配用スリット部18を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸込口体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に使用される樹脂部品には、粉体成形装置(パウダースラッシュ装置)によって成形されたものが存在する。この粉体成形装置は、樹脂粉体を貯留するリザーバ(粉体容器)を、高温に保持された転写用金型と衝合させると共に、リザーバと転写用金型とを反転させて、リザーバ内の樹脂粉体を転写用金型上に落下させることにより、転写用金型の熱で樹脂粉体を溶融させると共に転写用金型に付着させて、樹脂部品を成形するようにしたものである。
【0003】
このような粉体成形装置では、成形を繰返すうちに、リザーバと転写用金型との衝合面に付着した樹脂粉体が、熱によって、焦げたり、溶けて固まったり、糸を引いて延びたりするなどによりゴミが発生する。
【0004】
このようなゴミを放置したまま成形を行うと、樹脂部品に巣や凹凸などができて製品の品質が低下するため、定期的に清掃を行う必要がある。
【0005】
そこで、リザーバ内の樹脂粉体を回収してゴミを分離し得るようにした成形用粉体回収装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この成形用粉体回収装置は、吸引装置と、この吸引装置に吸引管を介して接続された吸込口体とを備えている。吸引管の途中には、空気と樹脂粉体とを分離可能なサイクロン装置が設けられている。
【0007】
上記吸込口体は、図5に示すように、先端面に開口部1を有すると共に後端面2に吸引管3を接続された負圧発生用筒体4と、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5と、外気導入孔5から導入された外気6を、負圧発生用筒体4の内部を通して開口部1の近傍へと導く吹付管7とを備えている。
【0008】
また、負圧発生用筒体4の開口部1には、ゴミを捕集すると共に、篩としての機能および潜り込み防止機能を有する金網8が取付けられている。
【0009】
この成形用粉体回収装置では、吸引装置を作動させると、図6に示すように、吸引管3を介して吸込口体の負圧発生用筒体4内部の空気が吸込まれ、負圧発生用筒体4内部が負圧となるため、負圧発生用筒体4内外の圧力差が等しくなるように負圧発生用筒体4先端面の開口部1から金網8を介して外気6が吸引される。この時の負圧発生用筒体4内部の空気の流れは、先端面側から後端面2側への一方向となっている。
【0010】
この状態で、負圧発生用筒体4先端面の開口部1をリザーバ内の樹脂粉体9の表面に当接させると、図5に示すように、開口部1が樹脂粉体9で塞がれて負圧発生用筒体4の内部がほぼ密閉空間となり、開口部1からの外気6の吸引ができなくなるため、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5から外気6が導入されることとなる。
【0011】
こうして、導入された外気6は、吹付管7を通って開口部1の近傍へと導かれ、金網8越しに樹脂粉体9の表面へ局所的に吹付けられる。その結果、吹付管7から吹出した空気は、直下部の金網8付近の樹脂粉体9やゴミを吹乱ししつつ、樹脂粉体9の表面よりも深い位置まで到達した後、反転され、金網8の上記直下部の外側部分を再通過して負圧発生用筒体4の内部へと戻される。この時、上記直下部周辺で吹乱された樹脂粉体9は反転する空気によって巻上げられ、金網8で篩われた後、負圧発生用筒体4の内部へ入って舞上げられる。この際、樹脂粉体9に混入していたゴミは、金網8にて捕集される。負圧発生用筒体4内で舞上げられている樹脂粉体9は、反転された空気に同伴されて、吸引管3を介しサイクロン装置へと搬送されて、サイクロン装置で空気と分離されて回収される。
【0012】
そして、上記吸込口体をリザーバ内で適宜動かすことにより、リザーバの全体に亘って樹脂粉体9の回収・清掃を行う。
【0013】
このように、負圧発生用筒体4に外気導入孔5および吹付管7を設けて、金網8越しに空気の流れを反転させて樹脂粉体9を舞上げさせるようにしたことにより、飛散を防止しつつ効率良く樹脂粉体9を回収することができる。また、空気の流れの反転現象を利用しているため、風圧や風量を変えなくても良いので、省エネルギー効果を得ることができる。
【特許文献1】特開2005−153302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記吸込口体では、吹付管7が設置された部分で局所的にしか樹脂粉体9を舞上げさせることができないので、樹脂粉体9に対する回収効率を上げるには、吹付管7を増やす必要が生じるが、吹付管7の設置可能本数には限度があるので、この構造のままだと、回収効率の向上にも限界が生じるという問題があった。
【0015】
また、樹脂粉体9に混入したゴミを捕集する手段が金網8しか備えられていないというのも問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、先端面に開口部を有すると共に後端面に吸引管を接続された負圧発生用筒体と、該負圧発生用筒体の後端面に形成された外気導入孔と、該外気導入孔から導入された外気を、負圧発生用筒体の内部を通して開口部の近傍へと導く吹付管とを備えると共に、負圧発生用筒体の内部に、後端面との間で所要の導入外気分配空間を画成可能な仕切板を配置し、この仕切板に対して、前記吹付管を取付けると共に、仕切板に外気導入孔から負圧発生用筒体の内部へ導入された外気を負圧発生用筒体の内壁にほぼ沿って開口部の近傍へと導く空気分配用スリット部を設けた吸込口体を特徴としている。
【0017】
請求項2に記載された発明では、仕切板を、駆動装置を介して回転可能に支持した吸込口体を特徴としている。
【0018】
請求項3に記載された発明では、仕切板の駆動装置が、吸引管を流れる空気流を駆動源として回転するエアモータである吸込口体を特徴としている。
【0019】
請求項4に記載された発明では、負圧発生用筒体の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部を全周に亘って設けた吸込口体を特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、先端面に開口部を有すると共に後端面に吸引管を接続された負圧発生用筒体と、該負圧発生用筒体の後端面に形成された外気導入孔と、該外気導入孔から導入された外気を、負圧発生用筒体の内部を通して開口部の近傍へと導く吹付管とを備えると共に、負圧発生用筒体の内部に、後端面との間で所要の導入外気分配空間を画成可能な仕切板を配置し、この仕切板に対して、前記吹付管を取付けると共に、仕切板に外気導入孔から負圧発生用筒体の内部へ導入された外気を負圧発生用筒体の内壁にほぼ沿って開口部の近傍へと導く空気分配用スリット部を設けたことにより、吹付管による舞上げ効果に加えて、負圧発生用筒体の内壁に沿った部分での舞上げ効果も期待できるようになり、よって、吹付管の増加に頼ることなく回収効率を上げることが可能となる。
【0021】
請求項2の発明によれば、仕切板を、駆動装置を介して回転可能に支持したことにより、吹付管から吹出される空気を回転させることが可能となり、吹付管による空気の吹出位置が固定されている場合に比べて、高い舞上げ効果を得ることができるようになり、少ない吹付管でも回収効率を上げることが可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、仕切板の駆動装置を、吸引管を流れる空気流を駆動源として回転するエアモータとしたことにより、電動モータなどの特別な駆動装置を用いずに仕切板を回転させることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、負圧発生用筒体の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部を全周に亘って設けたことにより、ブラシ部のゴミを浮かし取ったり絡め取ったりする機能により、高いゴミ捕集効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
吹付管の増加に頼ることなく樹脂粉体に対する回収効率を上げられる構造を得られるようにするという目的を、外気導入孔から負圧発生用筒体の内部へ導入された外気を負圧発生用筒体の内壁に沿い開口部の近傍へと導く仕切板を設ける、という手段で実現した。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施例を示すものである。
【0027】
まず、構成について説明すると、自動車などの車両に使用される樹脂部品には、粉体成形装置(パウダースラッシュ装置)によって成形されたものが存在する。この粉体成形装置は、樹脂粉体を貯留するリザーバ(粉体容器)を、高温に保持された転写用金型と衝合させると共に、リザーバと転写用金型とを反転させて、リザーバ内の樹脂粉体を転写用金型上に落下させることにより、転写用金型の熱で樹脂粉体を溶融させると共に転写用金型に付着させて、樹脂部品を成形するようにしたものである。
【0028】
このような粉体成形装置では、成形を繰返すうちに、リザーバと転写用金型との衝合面に付着した樹脂粉体が、熱によって、焦げたり、溶けて固まったり、糸を引いて延びたりするなどによりゴミが発生する。
【0029】
このようなゴミを放置したまま成形を行うと、樹脂部品に巣や凹凸などができて製品の品質が低下するため、定期的に清掃を行う必要がある。
【0030】
そこで、リザーバ内の樹脂粉体を回収してゴミを分離し得るようにした成形用粉体回収装置が開発されている。
【0031】
この成形用粉体回収装置は、吸引装置と、この吸引装置に吸引管を介して接続された吸込口体とを備えている。吸引管の途中には、空気と樹脂粉体とを分離可能なサイクロン装置が設けられている。
【0032】
上記吸込口体は、図1に示すように、先端面(図中下端面)に開口部1を有すると共に後端面2(図中上端面)に吸引管3を接続された負圧発生用筒体4と、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5と、外気導入孔5から導入された外気6を、負圧発生用筒体4の内部を通して開口部1の近傍へと導く吹付管7とを備えている。
【0033】
ここで、負圧発生用筒体4の外径形状は、適宜、円筒形状や截頭円錐形状や多角形状や截頭多角錐形状などとすることができる。吸引管3は、負圧発生用筒体4のほぼ閉口された後端面2のほぼ中心位置に、ほぼ垂直に接続される。また、外気導入孔5は、吸引管3の接続部を中心とする同心円状に所要の間隔を有して複数設置される。吹付管7は、その先端部(図中下端部)が負圧発生用筒体4の開口部1よりも若干高くなるように設定される。即ち、吹付管7の先端部が、後述する金網8や樹脂粉体9に直接接触しないようにする。
【0034】
また、負圧発生用筒体4の開口部1には、ゴミを捕集すると共に、篩としての機能および潜り込み防止機能を有する金網8が取付けられている。ここで、金網8の目の粗さについては、吸引する物や捕集する物の粒径や大きさなどに応じて適宜選定することができる。
【0035】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、負圧発生用筒体4の内部に、後端面2との間で所要の導入外気分配空間17を画成可能な仕切板16を配置する。そして、この仕切板16に対して、上記した吹付管7を取付けるようにする。また、この仕切板16に外気導入孔5から負圧発生用筒体4の内部へ導入された外気6を負圧発生用筒体4の内壁15にほぼ沿って開口部1の近傍へと導く空気分配用スリット部18を設ける。
【0036】
より具体的には、この仕切板16は、負圧発生用筒体4の後端面2に対して、所要の間隔17aを有して対向配置される。また、この仕切板16を、上記後端面2に対して一回り小さな相似形状とすることにより、その側面と負圧発生用筒体4の内壁15との間に、所要の間隙で全周に亘る空気分配用スリット部18が形成されるようにする。なお、仕切板16は、上記空気分配用スリット部18が空気の流れをガイド可能な程度の厚みとするのが好ましい。
【0037】
この仕切板16は、吸引管3によって支持させるようにする。そのために、負圧発生用筒体4の後端面2に、吸引管3を貫通可能な貫通孔21を形成すると共に、仕切板16の対応する位置に取付孔22を形成して、貫通孔21に貫通固定させた吸引管3の先端を取付孔22へ挿通固定させる。この際、貫通孔21と取付孔22は、吸引管3の先端とほぼ同径とすると共に、貫通孔21と取付孔22との間の部分に対し、リング状の弾性シール体23を介在させて、シールを行わせ得るようにする。なお、吸引管3の少なくとも先端は、軸線が直線状に延びると共に、径寸法が一定となるようにする。
【0038】
また、仕切板16の各外気導入孔5とほぼ対応する位置に、吹付管取付孔24をそれぞれ形成し、各吹付管取付孔24に吹付管7の対応する端部(上端部)を挿通固定する。なお、吹付管取付孔24と各外気導入孔5とは、位置を完全に合致させるようにしても、意図的に位置をずらせるようにしても良い。この場合には、吹付管取付孔24と各外気導入孔5との数を異ならせても良い。また、吹付管取付孔24と各外気導入孔5との径寸法は、同じとしても、異ならせても良い。
【0039】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0040】
上記した成形用粉体回収装置では、吸引装置を作動させると、吸引管3を介して吸込口体の負圧発生用筒体4内部の空気が吸込まれ、負圧発生用筒体4内部が負圧となるため、負圧発生用筒体4内外の圧力差が等しくなるように負圧発生用筒体4先端面の開口部1から金網8を介して外気6が吸引される。この時の負圧発生用筒体4内部の空気の流れは、先端面側から後端面2側への一方向となっている。
【0041】
この状態で、負圧発生用筒体4先端面の開口部1をリザーバ内の樹脂粉体9の表面に当接させると、図1に示すように、開口部1が樹脂粉体9で塞がれて負圧発生用筒体4の内部がほぼ密閉空間となり、開口部1からの外気6の吸引ができなくなるため、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5から導入外気分配空間17へと外気6が導入されることとなる。
【0042】
こうして、導入外気分配空間17に導入された外気6は、仕切板16により、吹付管取付孔24へ入るものと、空気分配用スリット部18を通るものとに分配される。
【0043】
先ず、吹付管取付孔24へ入った外気6は、吹付管7を通って開口部1の近傍へと導かれ、金網8越しに樹脂粉体9の表面へ局所的に吹付けられる。その結果、吹付管7から吹出した空気は、直下部の金網8付近の樹脂粉体9やゴミを吹乱しつつ、樹脂粉体9の表面よりも深い位置まで到達した後、反転され、金網8の上記直下部の外側部分を再通過して負圧発生用筒体4の内部へと戻される。
【0044】
一方、空気分配用スリット部18を通った外気6は、負圧発生用筒体4の内壁15にほぼ沿って開口部1の近傍へと導かれ、金網8越しに樹脂粉体9の表面へ広く環状に吹付けられる。その結果、負圧発生用筒体4の内壁15にほぼ沿って導かれた空気は、直下部の金網8付近の樹脂粉体9やゴミを吹乱しつつ、樹脂粉体9の表面よりも深い位置まで到達した後、反転され、金網8の上記直下部の周辺部分を再通過して負圧発生用筒体4の内部へと戻される。
【0045】
なお、吹付管取付孔24側と、空気分配用スリット部18側への外気6の配分は、吹付管取付孔24の大きさと、空気分配用スリット部18の大きさとによって設定・調節される。
【0046】
そして、上記直下部周辺で吹乱された樹脂粉体9は反転する空気によって巻上げられ、金網8で篩われた後、負圧発生用筒体4の内部へ入って舞上げられる。この際、樹脂粉体9に混入していたゴミは、金網8にて捕集される。負圧発生用筒体4内で舞上げられている樹脂粉体9は、反転された空気に同伴されて、吸引管3を介しサイクロン装置へと搬送されて、サイクロン装置で空気と分離されて回収される。
【0047】
そして、上記吸込口体をリザーバ内で適宜動かすことにより、リザーバの全体に亘って樹脂粉体9の回収・清掃を行う。
【0048】
負圧発生用筒体4に外気導入孔5および吹付管7を設けて、金網8越しに空気の流れを反転させて樹脂粉体9を舞上げさせるようにしたことにより、樹脂粉体9の飛散を防止しつつ効率良く樹脂粉体9を回収することができる。また、空気の流れの反転現象を利用しているため、風圧や風量を変えなくても良いので、省エネルギー効果を得ることができる。
【0049】
更に、吹付管7と、負圧発生用筒体4の内壁15との2通りの経路で空気を樹脂粉体9へ吹付けることにより、負圧発生用筒体4で囲われた部分の樹脂粉体9を、より多くより均一に舞上げさせることができる。
【0050】
このように、この実施例によれば、先端面に開口部1を有すると共に後端面2に吸引管3を接続された負圧発生用筒体4と、負圧発生用筒体4の後端面2に形成された外気導入孔5と、外気導入孔5から導入された外気6を、負圧発生用筒体4の内部を通して開口部1の近傍へと導く吹付管7とを備えると共に、負圧発生用筒体4の内部に、後端面2との間で所要の導入外気分配空間17を画成可能な仕切板16を配置し、この仕切板16に対して、吹付管7を取付けると共に、仕切板16に外気導入孔5から負圧発生用筒体4の内部へ導入された外気6を負圧発生用筒体4の内壁15にほぼ沿って開口部1の近傍へと導く空気分配用スリット部18を設けたことにより、吹付管7による舞上げ効果に加えて、負圧発生用筒体4の内壁15に沿った部分での舞上げ効果も期待できるようになり、よって、吹付管7の増加に頼ることなく樹脂粉体9などに対する回収効率を上げることが可能となる。
【0051】
更に、上記に加えて、図2に示すように、負圧発生用筒体4の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部31を全周に亘って設けるようにすることもできる。
【0052】
このブラシ部31は、負圧発生用筒体4の軸線方向へ向けて延びる多数の毛状部を有している。この毛状部は、負圧発生用筒体4の先端部周辺の樹脂粉体9に接触することにより、樹脂粉体9に混入されたゴミを浮かし取ったり絡め取ったりし得るようなものとする。なお、このブラシ部31の長さや毛状部の硬さなどについては状況に応じて適宜設定する。
【0053】
この際、吹付管7は、その先端部(図中下端部)が負圧発生用筒体4の先端部よりも若干位置が高くなるように設定する。即ち、吹付管7の先端部が直接金網8や樹脂粉体9に接触しないようにする。そして、この負圧発生用筒体4の先端部に対してブラシ部31を取付けるようにする。
【0054】
このように、負圧発生用筒体4の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部31を全周に亘って設けることにより、金網8とブラシ部31という互いに補完的関係にある2重の捕集手段を備えることとなり、より効率的且つ確実にゴミを捕集できるようになる。即ち、ブラシ部31は、積極的にゴミを浮かし取ったり絡め取ったりする機能を有しているので、主に壁際などで高い清掃効果を発揮し、また、金網8は、ゴミを篩い分ける機能を有しているので、主にその他の部分で高い清掃効果を発揮する。また、仕切板16を設けて、負圧発生用筒体4の内壁15に沿い開口部1の近傍へと空気を導かせるようにしたことにより、樹脂粉体9がブラシ部31と接触する機会が増えるので、ブラシ部31によるゴミ捕集効果を一層高めることができる。
【0055】
なお、金網8を設けずにブラシ部31のみを単独で設けることも構造的には可能であり、この場合には、捕集手段を2重に設ける場合よりは劣るものの、ブラシ部31のゴミを浮かし取ったり絡め取ったりする機能により、或る程度以上のゴミ捕集効果が期待できる。
【実施例2】
【0056】
図3は、この発明を具体化した実施例2を示すものである。なお、この実施例2のものは上記実施例1とほぼ同等の構成を備えているため、実施例1の全ての記載をこの実施例2の記載として流用できるものとする。以下は、この実施例2に特有の構成のみについて記載する。
【0057】
この実施例2のものでは、仕切板16を、駆動装置35を介して回転可能に支持する。
【0058】
そのために、仕切板16(回転仕切板)の取付孔22に吸引管3の先端よりも径が大きい短筒体36を、その上端部が仕切板16の図中上面よりも上方へ突出するように挿入固定して、この短筒体36の下端部と吸引管3の先端との間に軸受37を介装する。なお、短筒体36と吸引管3とは同心状に配設する。そして、短筒体36の上端側外周面全周にタイミングギヤ38を取付ける。
【0059】
そして、このタイミングギヤ38に、駆動装置35を駆動力伝達手段47を介し接続して仕切板16を回転駆動し得るようにする。この駆動装置35には、電動モータなどを用いることもできるが、ここでは、吸引管3を流れる空気流を駆動源として回転するエアモータ40を用いるようにする。
【0060】
即ち、吸引管3途中の負圧発生用筒体4に近接した部分に、モータハウジング41を付設し、このモータハウジング41内に、回転羽根42を配設する。この際、回転羽根42の一部が吸引管3内を流れる空気流に晒されるようにする。この回転羽根42の回転軸43を負圧発生用筒体4の内部へ挿入し、回転軸43の先端にタイミングプーリー45を取付ける。そして、このタイミングプーリー45と短筒体36のタイミングギヤ38との間にタイミングベルト46を掛渡すことにより駆動力伝達手段47を構成する。
【0061】
なお、モータハウジング41からの回転軸43の突出部分などには、シール機能を有する軸受部44を設けるのが好ましい。また、回転軸43は、吸引管3の軸線と平行にするのが好ましい。更に、回転軸43は、外気導入孔5を利用して負圧発生用筒体4の内部へ挿入するのが好ましい。
【0062】
次に、この実施例2に特有の作用について説明する。
【0063】
吸引装置を作動させ、吸引管3を介して吸込口体の負圧発生用筒体4内部の空気を吸込ませると、吸引管3を流れる空気流によって、回転羽根42が回転され、回転羽根42の回転が、回転軸43、タイミングプーリー45、タイミングベルト46、タイミングギヤ38、を介して伝達され、短筒体36と仕切板16とが、吸引管3の軸心を中心として回転駆動される。
【0064】
このように、仕切板16を、駆動装置35を介して回転可能に支持したことにより、吹付管7から吹出される空気を回転させることが可能となり、吹付管7による空気の吹出位置が固定されている場合に比べて、高い舞上げ効果を得ることができるようになり、少ない吹付管7でも樹脂粉体9などの回収効率を上げることが可能となる。
【0065】
また、仕切板16の駆動装置35を、吸引管3を流れる空気流を駆動源として回転するエアモータ40としたことにより、電動モータなどの特別な駆動装置35を用いずに仕切板16を回転させることができる。
【0066】
更に、上記に加えて、図4に示すように、負圧発生用筒体4の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部31を全周に亘って設けるようにすることもできる。このようにすることにより、図2のものと、同等の作用・効果を得ることができる。
【0067】
なお、これ以外の構成・作用・効果については、上記実施例1のものと同じである。
【0068】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、これらの可能な組合せが含まれることは勿論である。
【0069】
例えば、この吸込口体は、成形用粉体回収装置などのような専用の集塵機に限らず、一般掃除機に対しても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1にかかる吸込口体の側方断面図である。
【図2】図1の変形例にかかる吸込口体の側方断面図である。
【図3】本発明の実施例2にかかる吸込口体の側方断面図である。
【図4】図3の変形例にかかる吸込口体の側方断面図である。
【図5】従来例にかかる吸込口体の側方断面図である。
【図6】図5の吸込口体が宙に浮いている状態を示す側方断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 開口部
2 後端面
3 吸引管
4 負圧発生用筒体
5 外気導入孔
6 外気
7 吹付管
15 内壁

16 仕切板
17 導入外気分配空間
18 分配用スリット部
31 ブラシ部
35 駆動装置
40 エアモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面に開口部を有すると共に後端面に吸引管を接続された負圧発生用筒体と、該負圧発生用筒体の後端面に形成された外気導入孔と、該外気導入孔から導入された外気を、負圧発生用筒体の内部を通して開口部の近傍へと導く吹付管とを備えると共に、
負圧発生用筒体の内部に、後端面との間で所要の導入外気分配空間を画成可能な仕切板を配置し、この仕切板に対して、前記吹付管を取付けると共に、仕切板に外気導入孔から負圧発生用筒体の内部へ導入された外気を負圧発生用筒体の内壁にほぼ沿って開口部の近傍へと導く空気分配用スリット部を設けたことを特徴とする吸込口体。
【請求項2】
前記仕切板を、駆動装置を介して回転可能に支持したことを特徴とする請求項1記載の吸込口体。
【請求項3】
前記仕切板の駆動装置が、吸引管を流れる空気流を駆動源として回転するエアモータであることを特徴とする請求項2記載の吸込口体。
【請求項4】
前記負圧発生用筒体の先端部に、ゴミを捕集可能なブラシ部を全周に亘って設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の吸込口体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−331237(P2007−331237A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165965(P2006−165965)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロン
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】