吸音パネルセット
【課題】 吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易とする。
【解決手段】 吸音パネルセットは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23を備えている。吸音パネル20Aのパネル本体部21の縦方向の両側辺部にはワイヤ挿入枠部22が設けられ、この中に支持ワイヤ11を挿入してワイヤアンカー部材23により固定する。これにより、上方から吊り下げられた支持ワイヤ11により複数枚の吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連続して配列できる。さらに、連結部位に装着され、吸音パネル20Aの連結部位を支持したり横方向で連結したりするパネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を備えていれば、設置後の吸音パネルの拡張性を向上することができる。
【解決手段】 吸音パネルセットは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23を備えている。吸音パネル20Aのパネル本体部21の縦方向の両側辺部にはワイヤ挿入枠部22が設けられ、この中に支持ワイヤ11を挿入してワイヤアンカー部材23により固定する。これにより、上方から吊り下げられた支持ワイヤ11により複数枚の吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連続して配列できる。さらに、連結部位に装着され、吸音パネル20Aの連結部位を支持したり横方向で連結したりするパネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を備えていれば、設置後の吸音パネルの拡張性を向上することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音間仕切り、防音壁等に用いられる吸音パネルを含む吸音パネルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面より音を吸収して透過させる音吸収板(吸音材)と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層(吸音層)と、音波を反射させる反射板(遮音材)とを、表面(吸音面)側から裏面(遮音面)側に向け3層構造に配設し、型枠で保持した構成の吸音パネルが開示されている。
この吸音パネルは、音吸収板を表面側に向けて進退動自在に付勢支持しているため、音波による音吸収板の振動が円滑となるので、音吸収板により音波を十分に吸収することができる。さらに、音波干渉空気層では、入射する音波と反射板から反射される音波を干渉、減衰作用によって吸音することができる。それゆえ、表面側の音波の反射、あるいは裏面側からの反響音を良好に抑制することができ、優れた吸音性能を実現することができる。
さらに、この吸音パネルは、前記3層構造を型枠で保持したパネルであるため、設置が容易である。それゆえ、一般的な工場の騒音対策、大規模設備用の大型防音壁、小型設備用の小規模な防音壁、工事現場等で用いられる簡易騒音対策等といったさまざまな用途に好適に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3522583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで近年では、騒音対策に要求されるレベルが高くなっており、また、コストの軽減の要求も強くなっている。それゆえ、従来では容易に設置し難かった箇所に前記吸音パネルを設置したり前記吸音パネルをより簡素な手法で設置したりする必要性が生じつつある。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吸音パネルセットは、前記の課題を解決するために、一方の面が吸音面であり他方の面が遮音面であるパネル本体部と、当該パネル本体部の縦方向の両側辺部に設けられ、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔を有するワイヤ挿入枠部と、から少なくとも構成されている吸音パネルと、前記ワイヤ挿入孔内のワイヤを固定可能とするように、前記ワイヤ挿入枠部に取り付けられるワイヤアンカー部材と、を備えており、上方から吊り下げられた前記ワイヤを前記ワイヤ挿入孔に挿入した状態で、当該ワイヤを前記ワイヤアンカー部材で固定することにより、複数枚の前記吸音パネルを少なくとも縦方向に連続して配列可能とする構成である。
前記構成によれば、複数枚の吸音パネルを上方から吊り下げるだけで一面に配設することができる。それゆえ、吸音パネルを壁面に固定したり、吸音パネルを据え付けるための骨格構造を設置したりする必要がなく、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易とすることができる。
前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル本体部が、表面より音を吸収して透過させる音吸収板と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層と、音波を反射させる反射板と、を吸音面側から遮音面側に向け3層構造に配設し、これらを型枠で保持するとともに、この型枠に対して前記音吸収板を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットは、前記吸音パネルおよび前記ワイヤアンカー部材と、縦方向に隣接する前記吸音パネルの前記ワイヤ挿入枠部同士の間に挿入することで、前記吸音パネルの間に装着される、平板状のパネル支持板部材と、を備え、当該パネル支持板部材は、前記装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出するパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
前記構成によれば、複数の吸音パネルを配列させた後、縦方向に隣接する吸音パネルの間にパネル支持板部材を挿入して装着することがきるので、パネル露出部に支持部材等を取り付ければ、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。それゆえ、設置状態に応じて吸音パネルの連結部位を適宜支持することができるため、設置の容易性だけでなく設置後の吸音パネルの拡張性を向上することができる。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記装着された状態で横方向に隣接する一対の前記パネル支持板部材を互いに接続することによって、横方向に隣接する前記吸音パネルを連結する、平板状のパネル連結板部材を、さらに備えている構成であってもよい。
前記構成によれば、複数の吸音パネルを配列させた後、縦方向に隣接する吸音パネルの間に前記パネル支持板部材を挿入し、さらに一対のパネル支持板部材をパネル連結板部材で接続することになる。それゆえ、横方向に隣接する吸音パネル同士を、パネル支持板部材およびパネル連結板部材で連結することができるとともに、パネル連結板部材の取付孔に他の支持部材を取り付けることで、縦横に隣接する4枚の吸音パネルの連結部位を支持して、連結部位の振れ等をより一層有効に抑制することができる。それゆえ、設置後の吸音パネルの拡張性をより一層向上することができる。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に単独で挿入されることで、当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に、当該吸音パネルの両面からそれぞれ挿入されることで、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とする半円切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材の前記パネル露出部の外側となる辺は、前記パネル支持板部材を重ねる面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部となっている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル本体部の代わりに少なくとも透光性材料で構成されている透光板部が設けられている透光パネルを、さらに備えている構成であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明では、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易にできる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態1に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)は、図1に示す吸音パネルセットに用いられる吸音パネルの構成の一例を示す縦断面図であり、(b)は、(a)に示す吸音パネルの横断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【図4】(a)は、図3に示す吸音パネルセットに用いられる吸音パネルの構成の一例を示す縦断面図であり、(b)は、(a)に示す吸音パネルの横断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態3に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0009】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る吸音パネルおよび吸音パネルセットの一例について、図1および図2(a),(b)を参照して具体的に説明する。
図1に示すように、本発明に係る吸音パネル20Aは、その両側辺を上方から吊り下げられた一対の支持ワイヤ11に固定することにより、少なくとも縦方向に連続して配列可能となっている。ここで、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位には、図2(a),(b)に示すように、パネル支持板部材31が挿入されている。また、図1に示すように、複数枚の吸音パネル20Aは、縦方向だけでなく横方向にも配列可能であり、図2(b)に示すように、横方向に隣接する吸音パネル20Aは、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32により連結固定されている。
なお、図1の中央の平面図では、吸音パネル20Aの設置の一例として、縦横3枚ずつ合計9枚のパネルから構成される「防音壁50」を図示している。この防音壁50においては、周囲の8枚のパネルは吸音パネル20Aであり、中央部の1枚は吸音パネル20Aではなく透光パネル40に差し替えられている。また、図1における向かって左側の図が平面図に対応する縦断面図であり、図1における上側の図が平面図に対応する横断面図である。さらに、図2(a)は、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位の拡大縦断面図に相当し、図2(b)は、横方向に隣接する吸音パネルの連結部位の拡大横断面図に相当する。
【0010】
[吸音パネルの構成]
まず、吸音パネル20Aの具体的構成について説明する。吸音パネル20Aは、図2(a),(b)に示すように、パネル本体部21Aとワイヤ挿入枠部22とを備えており、さらに、ワイヤアンカー部材23が取り付けられている。このうちパネル本体部21Aは、一方の面が吸音面21aであり他方の面が遮音面21bとなっている。そして、本実施の形態では、パネル本体部21Aは、表面より音を吸収して透過させる音吸収板211と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層212と、音波を反射させる反射板213と、これらを保持する型枠214とから少なくとも構成されている。
パネル本体部21Aは、音吸収板211、音波干渉空気層212および反射板213をこの順で吸音面21a側から遮音面21b側に向け3層構造に配設することにより構成されており、これら3層構造は両端で型枠214により保持されている。さらに、音吸収板211は、型枠214に対して表面(吸音面21a)側に向けて進退動自由に付勢支持されている。
音吸収板211、音波干渉空気層212、反射板213および型枠214の具体的な構成は、いずれも特に限定されない。それぞれ代表的な一例を挙げると、音吸収板211としては、例えば、板状の金属繊維群の両面に一対のアルミニウム製の網目状金属プレートを重ね合わせ、これらを一体化して形成した構成を挙げることができる。また、音波干渉空気層212としては、グラスウールまたは多数の連続気泡を有する発泡樹脂等を均質に充填した多孔質層と、紙、アルミニウム、セラミックス等をハニカム状に配したハニカム構造層とが重ね合わせられた構成を挙げることができる。また、反射板213としては、肉厚が比較的小さいアルミニウム製のハニカム構造板または、アルミニウム製の平板、樹脂製の平板、スチール製の平板等の板材の両面に一対のアルミニウム製の平板を重ね合わせ、これらを一体化して形成した構成を挙げることができる。また、型枠214としては、これら3層構造を支持可能なアルミニウム製の枠体を挙げることができる。
このように、パネル本体部21Aは、アルミニウム等の軽金属で構成されていることが好ましいが、吸音パネル20Aの設置し易さ、あるいは設置後に支持ワイヤ11で吊下げた状態での安定性等を妨げない限り、軽金属以外の素材で構成されてもよい。例えば、ステンレス等のスチール材、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂材、もしくは、これら樹脂材と各種繊維材料とを組み合わせた繊維強化複合材料等を用いて、パネル本体部21Aを製造することができる。
なお、パネル本体部21Aに関する具体的な技術は、本出願人による先行する特許出願の公開特許公報である特開2000−309989号公報に見出される。この公開特許公報に記載される吸音パネル20A(あるいはパネル本体部21A)に関する内容は、本明細書で参照することにより本明細書の記載の一部として援用される。
【0011】
ワイヤ挿入枠部22は、図1に示すように、パネル本体部21Aの縦方向の両側辺部に設けられ、図2(b)に示すように、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔22aを有している。このワイヤ挿入孔22a内に支持ワイヤ11が挿入される。したがって、吸音パネル20Aは、その両側部が一対の支持ワイヤ11によって支持されることになる。なお、図1および図2(a)では、吸音パネル20A内に位置するワイヤ挿入枠部22と支持ワイヤ11とは、いずれも破線で図示している。
ワイヤ挿入枠部22の具体的な構成は特に限定されず、内部にワイヤ挿入孔22aとなる溝状あるいは管状の空間を有するものであれば、公知の様々な加工部材を用いることができる。なお、前述したように、パネル本体部21Aがアルミニウム等の軽金属で構成されれば、ワイヤ挿入枠部22も同様に軽金属で構成されてもよいし、前述したスチール材、樹脂材、もしくは複合材料等で構成されてもよい。
【0012】
ワイヤアンカー部材23は、ワイヤ挿入孔22a内の支持ワイヤ11を固定可能とするように、ワイヤ挿入枠部22に取り付けられるものであり、本実施の形態では、図2(a),(b)に具体的に示すように、ボルト部材を用いている。このボルト部材は、吸音パネル20Aの吸音面21a側からワイヤ挿入孔22a内の支持ワイヤ11に当接するように螺合されて取り付けられる。
この構成を採用することで、支持ワイヤ11はボルト部材の先端とワイヤ挿入孔22aの内壁面との間で挟持される。それゆえ、ボルト部材(ワイヤアンカー部材23)を締め付けるだけで、支持ワイヤ11を吸音パネル20Aに固定することができ、ボルト部材を緩めるだけで、支持ワイヤ11の固定状態を解除することができる。その結果、吸音パネル20の設置、あるいは設置後の位置の再調整等を容易に行うことができる。
なお、ワイヤアンカー部材23として用いられるボルト部材の具体的な構成は特に限定されず、支持ワイヤ11に当接して固定可能な直径を有していれば、一般的に市販されているものを好適に用いることができる。あるいは、ワイヤアンカー部材23としては、ボルト部材以外に、機械的に支持ワイヤ11を挟み込むような構成、あるいは、支持ワイヤ11を係合させるような構成等、構造物にワイヤを固定するために用いられる公知の種々の構成も好適に用いることができる。
さらに、吸音パネル20Aは、パネル本体部21Aおよびワイヤ挿入枠部22以外の部品等を備えていてもよいし、ワイヤアンカー部材23以外の部品が取り付けられてもよいことは言うまでもない。
【0013】
[吸音パネルの設置構成]
次に、前記構成の吸音パネル20Aを複数配列して防音壁50を設置する構成について具体的に説明する。まず、図1に示すように、吸音パネル20Aを支持するための支持ワイヤ11は、上方から下方に吊下げられた状態で設置される。例えば、吸音パネル20Aの設置場所が工場であれば、当該工場の上方に位置する梁材51等にワイヤ吊下げ部材12を取り付け、このワイヤ吊下げ部材12から支持ワイヤ11を下方に吊下げればよい。本実施の形態では、ワイヤ吊下げ部材12として、梁材51の一部を挟み込む万力が用いられている。
支持ワイヤ11の一端(上端)はワイヤ吊下げ部材12により支持されているが、その他端(下端)は、図1に示すように、ワイヤ引張り固定部材14により張力が付与された状態(引っ張られた状態)で床面54に固定されている。なお、図1に示す例では、ワイヤ引張り固定部材14は、床面54に埋められるアンカーとその上面に設けられるリング部材とにより模式的に図示している。
また、支持ワイヤ11に固定される複数の吸音パネル20Aのうち、最下部となる吸音パネル20Aの下端にはパネルストッパー部材13が取り付けられている。このパネルストッパー部材13は、最下部の吸音パネル20Aの下端でワイヤ挿入孔22aから露出する支持ワイヤ11に取り付けられている。これにより、最下部の吸音パネル20Aが下方へずれて移動しないように固定支持することができるので、防音壁50全体が下方に位置ずれすることなく安定して保持することができる。
なお、支持ワイヤ11、ワイヤ吊下げ部材12、パネルストッパー部材13、ワイヤ引張り固定部材14の具体的な構成はそれぞれ特に限定されない。支持ワイヤ11として特別なものを用いる必要がなく、従来公知のワイヤを好適に用いることができる。また、ワイヤ吊下げ部材12も前記万力に限定されず、支持ワイヤ11の一端(上端)を、設置場所の上方で固定して吊り下げることができるものであれば、公知のさまざまな部材または機器等を用いることができる。パネルストッパー部材13も同様であり、一般的なワイヤに取り付け可能な公知のストッパー部材を好適に用いることができる。ワイヤ引張り固定部材14も同様であり、支持ワイヤ11の他端(下端)を設置場所の下方で引っ張った状態で固定することが可能なものであれば、公知のどのような構成でも好適に用いることができる。
【0014】
また、図1に示すように、吸音パネル20Aの縦方向の連結部位には、連結部位支持部材15が取り付けられている。この連結部位支持部材15は、図2(a),(b)に示すように、その一端は、支持ワイヤ11に係合する後述のパネル支持板部材31の取付孔31dまたはパネル連結板部材32の取付孔32dに取り付け可能に構成される取付端15aとなっている。一方、その他端は、近接する構造物の表面に当接する当接面15cを有する当接端15bとなっている。
それゆえ、例えば壁面53等のように、吸音パネル20Aに近接して位置する構造物の表面に当接面15cを当接させるだけで、連結部位の遮音面21b側すなわち防音壁50の裏面側を好適に支持することができる。したがって、吸音パネル20Aを壁面53に直接固定しなくても、複雑な構造物を用いることなく、吸音パネル20Aを容易に安定して設置することができる。
【0015】
ここで、図1に示す防音壁50においては、中央の透光パネル40の四隅は、いずれも隣接する4枚の吸音パネル20A(または透光パネル40)が互いに角部を突き合わせて連結する連結部位となっている。説明の便宜上、このように縦横4枚の吸音パネル20Aが連結している構造を、「4枚パネル連結支持構造30A」と称する。また、防音壁50の左右両端において、上下2枚の吸音パネル20Aが互いに角部を突き合わせて連結する連結部位の構造を、説明の便宜上、「2枚パネル連結支持構造30B」と称する。なお、図1および図2(a),(b)では、4枚パネル連結支持構造30Aおよび2枚パネル連結支持構造30Bのいずれも破線で囲んで示している。
【0016】
吸音パネル20Aは、前述したように、その縦方向の両側辺部にワイヤ挿入枠部22を備えている。それゆえ、上から吊下げられた支持ワイヤ11をワイヤ挿入孔22a(図2(b)参照)に挿入した状態で、当該支持ワイヤ11をワイヤアンカー部材23で固定するだけで、複数枚の吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連続して配列可能とすることが可能となっている。
また、横方向についても、後述するように、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を用いることで、連結した状態で配列することが可能となっている。それゆえ、縦横の連結部位(4枚パネル連結支持構造30A、2枚パネル連結支持構造30b)に連結部位支持部材15等を取り付けることで、吸音パネル20Aを壁面53に直接固定したり、吸音パネル20Aを据え付けるための骨格構造を設置したりしなくても、複数の吸音パネル20Aからなる防音壁50を設置することができるので、吸音パネル20Aの設置を従来よりも容易とすることができる。
なお、防音壁50を構成する9枚のパネルのうち透光パネル40の具体的な構成は特に限定されないが、吸音パネル20Aと同様の構成を有していればよい。例えば、吸音パネル20Aのパネル本体部21Aの代わりに、少なくとも透光性材料で構成されている透光板部を備える構成を挙げることができる。この透光板部の具体的な構成は特に限定されず、本実施の形態では、例えば、ポリカーボネート板が用いられているが、公知の他の透光性樹脂であってもよいし、ガラス板であってもよい。
透光パネル40は、防音壁50を構成する複数の吸音パネル20Aの一つと差し替えることで、当該防音壁50に明かり取り用の窓を形成することができる。したがって、明かり取り用の窓が必要なければ、防音壁50を全て吸音パネル20Aで構成してもよいし、明かり取り用の窓が複数必要であれば、所望の箇所の吸音パネル20Aを透光パネル40に差し替えればよい。
【0017】
[吸音パネルセットの構成]
次に、前記構成の吸音パネル20Aを備える、本発明に係る吸音パネルセットの一例について具体的に説明する。本実施の形態に係る吸音パネルセットは、図1に示す防音壁50を構成するためのセットであり、複数の吸音パネル20Aと、各吸音パネル20Aに設けられているワイヤアンカー部材23と、吸音パネル20Aの角部同士を連結する連結部位に装着されるパネル支持板部材31と、吸音パネル20A同士を横方向に連結する連結部位に装着されるパネル連結板部材32と、連結部位支持部材15と、吸音パネル20A同士の間に配置される緩衝部材16と、を備えている。
【0018】
パネル支持板部材31は、図2(a),(b)に示すように長方形の平板状であり、縦方向に隣接する吸音パネル20Aのワイヤ挿入枠部22同士の間に挿入することで、これら吸音パネル20Aの間に装着される。ここで、図2(b)の上段は、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の構成例を示す平面図であり、下段は、前述したように横方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位を示す断面図であり、下段における向かって右下には、連結部位を吸音面21aから見た状態である部分正面図が示されている。そして、上段の平面図、下段の断面図および部分正面図は、それぞれの対応関係を示すために互いを二点鎖線でつないで表示している。
図2(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材31は、パネル間介在部31aとパネル露出部31bとに少なくとも区分されている。パネル間介在部31aは、吸音パネル20Aの間に装着された状態で当該吸音パネル20Aの間に位置する部位であり、パネル露出部31bは、装着された状態で吸音パネル20Aの間から露出する部位である。なお、図2(b)の上段平面図では、パネル間介在部31aとパネル露出部31bとの境界線を点線で図示している。また、後述するが、パネル支持板部材31の寸法は、パネル連結板部材32の寸法に合わせたものとなっている。
パネル間介在部31aには、支持ワイヤ11を挿入可能とするU字状切り込み部32cが形成されている。U字状切り込み部32cは、パネル支持板部材31の長手方向に直交するように(本実施の形態では左右方向へ)、一方の長辺から中央部まで切り込むように、短辺の長さの略半分程度の長さで形成されている。また、パネル露出部31bには、その短辺方向の略中央部に取付孔31dが設けられている。
この取付孔31dは、パネル支持板部材31にパネル連結板部材32を固定する固定部材(ボルト部材)を挿入するために用いられるとともに、前述した連結部位支持部材15を取り付けるためにも用いられる。それゆえ、例えば、2枚パネル連結支持構造30Bでは、パネル支持板部材31の取付孔31dと、連結部位支持部材15の取付端15aに設けられる図示しない取付孔と、を重ね合わせて、取付ボルト301を挿入して取付ナット302により締結することにより、パネル支持板部材31に連結部位支持部材15が取り付けられる。
ここで、パネル支持板部材31は、吸音パネル20Aのワイヤ挿入枠部22の間に挿入し、さらにU字状切り込み部32cの奥まで支持ワイヤ11を挿入させる。このとき、図2(b)の下段断面図に示すように、パネル露出部31bを吸音パネル20Aの遮音面21b(裏面)側に露出させる。このような挿入のみで、パネル支持板部材31は、吸音パネル20Aの間で相対的に安定した状態で装着することができる。
具体的には、下側の吸音パネル20Aは、上側の吸音パネル20Aの自重により押さえ付けられることになる。そこで、これら吸音パネル20Aの間にパネル支持板部材31を挟みこんでU字状切り込み部31cに支持ワイヤ11を通す(あるいは係合する)だけで、当該パネル支持板部材31を安定して装着することができる。
それゆえ、本発明によれば、先に吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連結して設置してから、パネル支持板部材31を容易に取り付けることが可能となる。そして、パネル支持板部材31には、連結部位支持部材15等を後から容易に取り付けることができる。それゆえ、設置後の吸音パネル20Aの拡張性を向上することができる。
【0019】
次に、パネル連結板部材32は、図2(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材31よりも大きな長方形の平板状であり、本実施の形態では、パネル支持板部材31と同様に、装着状態で吸音パネル20Aの間に位置するパネル間介在部32aと、吸音パネル20Aの間から露出する部位であるパネル露出部32bと、に少なくとも区分されている。パネル間介在部32aにもU字状切り込み部32cが設けられており、パネル露出部32bには取付孔33dが3つ設けられている。
図2(b)に示す例では、パネル連結板部材32の一方の長辺側(パネル間介在部32a側)に一対のU字状切り込み部32cが設けられている。このU字状切り込み部32cは、一方の長辺から他方の長辺に向かって(本実施の形態では前後方向へ)平行に延伸しており、その長さは、パネル間介在部32aの幅の約半分程度である。一対のU字状切り込み部32cの位置は、パネル連結板部材32の端部に近接した位置となっている。
また、パネル連結板部材32の他方の長辺(パネル露出部32b側の長辺)側には、当該長辺に沿って3つの取付孔32dが一列に並んで設けられている。このうち中央の取付孔32dは、パネル連結板部材32の長手方向の中央部に位置している。また、両端の2つの取付孔32dは、それぞれU字状切り込み部32cに対向して位置している。さらに、図2(a),(b)に示すように、パネル連結板部材32のパネル露出部32b側の長辺は、一方の面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部32eとなっている。
さらに、図2(b)の上段平面図に示すように、パネル連結板部材32の短辺の寸法は、パネル支持板部材31の長辺の寸法に略一致するようになっている。また、パネル連結板部材32のパネル間介在部32aの幅とパネル支持板部材31のパネル間介在部31aの幅とも略一致し、パネル露出部32bの幅とパネル露出部31bの幅も略一致している。加えて、パネル間介在部32aに設けられるU字状切り込み部32c(本実施の形態では前後方向に延伸)は、その先端が、パネル間介在部31aに設けられるU字状切り込み部31cの延伸方向(本実施の形態では左右方向)に重なるような長さとなっている。
このパネル連結板部材32は、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31の間であり、かつ、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの間となる位置、すなわち4枚パネル連結支持構造30Aに対応する位置に単独で挿入される。挿入されたパネル連結板部材32は、当該パネル連結板部材32の両端の上側に、一対のパネル支持板部材31がそれぞれ重なるように位置することになる。また、パネル連結板部材32の一対のU字状切り込み部32cは、前述したパネル支持板部材31と同様に、隣接する吸音パネル20Aの支持ワイヤ11それぞれが挿入される。
【0020】
この挿入状態では、図2(b)の下段断面図において向かって左側に示す吸音パネル20Aの右方の支持ワイヤ11には、一方のパネル支持板部材31のU字状切り込み部31cが係合しているとともに、パネル連結板部材32の一方のU字状切り込み部32cが係合している。また、向かって右側に示す吸音パネル20Aの左方の支持ワイヤ11には、他方のパネル支持板部材31のU字状切り込み部31cが係合しているとともに、パネル連結板部材32の他方のU字状切り込み部32cが係合している。
すなわち、左右方向へ延伸するU字状切り込み部31cと前後方向へ延伸するU字状切り込み部32cとが組み合わせられることにより、上下方向にのみ開口する貫通孔が形成され、そこに支持ワイヤ11が通るようになっている。なお、一対のパネル支持板部材31は、U字状切り込み部32cが互いに対向するように、4枚パネル連結支持構造30Aに挿入されており、さらに、パネル連結板部材32を後から挿入すれば、パネル露出部32bの長辺に設けられている支持板ストッパー部32eが、先に挿入されたパネル支持板部材31の外辺に当接して位置合わせされることになる。
このような指示板ストッパー部32eによる位置合わせでは、U字状切り込み部31cおよびU字状切り込み部32cを適切な位置関係で組み合わせられるだけでなく、パネル連結板部材32のパネル露出部32bと、各パネル支持板部材31のパネル露出部31bとが、互いの取付孔32d,31dの位置を略一致させるよう重ね合わせられることになる。重なった取付孔32d,31dには、取付ボルト301が挿入されて取付ナット302により締結される。これにより、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31をパネル連結板部材32により互いに接続することができ、その結果、横方向に隣接する吸音パネル20A同士を連結することができる。
また、パネル連結板部材32を4枚の吸音パネル20Aの間に装着した状態では、パネル露出部32bの中央に位置する取付孔32dは、図2(b)の下段部分正面図に示すように、吸音パネル20Aの側辺同士の連結位置に略一致する。そして、図2(a),(b)に示すように、この取付孔32dと連結部位支持部材15の取付端15aに設けられる図示しない取付孔とを重ね合わせて、取付ボルト301を挿入して取付ナット302により締結することにより、パネル連結板部材32に連結部位支持部材15が取り付けられる。
パネル連結板部材32に取り付けられた連結部位支持部材15は、吸音パネル20A同士の側辺同士の連結位置の裏面を支持することになる。図1に示す防音壁50では、4枚パネル連結支持構造30Aの全てを裏面で支持することができる。それゆえ、縦横に隣接する4枚の吸音パネル20Aの連結部位を裏面から好適に支持することができ、連結部位の振れ等をより一層有効に抑制することができる。
さらに、例えば先に縦方向のみ吸音パネル20Aを複数枚配列して、2枚パネル連結支持構造30Bに対応する連結部位にパネル支持板部材31を装着した後であっても、その横に、同様に縦方向の配列した複数枚の吸音パネル20Aを隣接させ、パネル連結板部材32を4枚パネル連結支持構造30Aに対応する連結部位に後から装着することができる。それゆえ、大きな面積の防音壁50を設置する場合であっても、1列ずつ順次設置していくことができるので、吸音パネル20Aの設置をより容易にできるとともに、設置後の吸音パネル20Aの拡張性をより一層向上することができる。
なお、本実施の形態では、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの間に少なくともパネル支持板部材31が挿入されるので、これら吸音パネル20Aの間に、パネル支持板部材31の厚み、または、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の厚み分か、それ以上の隙間が生じる。そこで、図2(a),(b)に示すように、吸音パネル20A同士の連結部位に緩衝部材16を挿入することが好ましい。この緩衝部材16は、ゴム等の弾性材料により形成されている角柱状であればよく、その太さは想定される隙間よりも少し大きくなる程度であればよい。これにより、吸音パネル20A同士のつなぎ目を緩衝部材16で埋めることができるので、図1に示す防音壁50の吸音面21aの平坦性を向上することができる。
【0021】
以上のように、本実施の形態によれば、吸音パネル20Aの縦方向の両端に一対の支持ワイヤ11を挿入して固定することにより、少なくとも縦方向に吸音パネル20Aを容易に設置することができる。しかも、吸音パネル20Aの間の連結部位にパネル支持板部材31を後から容易に装着できるので、このパネル支持板部材31のパネル露出部31bに連結部位支持部材15等を取り付ければ、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。特に、吸音パネル20Aが、音吸収板211、音波干渉空気層212、反射板213の3層構造であり、音吸収板211を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成のパネル本体部21Aを備えていれば、軽量かつ高性能の吸音パネル20Aをさまざまな場所に容易かつ安定的に設置することができる。
加えて、隣接する4枚の吸音パネル20Aの連結部位に、パネル連結板部材32を挿入し、これにパネル支持板部材31を固定すれば、横方向に隣接する吸音パネル20Aを容易かつ適切に連結固定することができる。これにより、連結部位の振れ等を有効に抑制できるだけでなく、吸音パネル20Aの設置の拡張性を向上することができる。また、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32は、いずれも寸法が合わせられ、かつ、パネル連結板部材32には支持板ストッパー部32eが設けられているので、これらを連結部位に挿入するだけで容易に位置合わせすることができる。それゆえ、拡張時の設置性も向上することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、吸音パネルセットの一例として、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31、パネル連結板部材32、連結部位支持部材15、および緩衝部材16を備える構成を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されず、少なくとも、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、およびパネル支持板部材31を備える構成であればよく、好ましくは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を備える構成であればよい。
それゆえ、吸音パネルセットは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31、パネル連結板部材32等だけで構成されてもよいし、さらに透光パネル40、連結部位支持部材15および緩衝部材16の少なくともいずれかが含まれてもよいし、さらに支持ワイヤ11、ワイヤ吊下げ部材12、パネルストッパー部材13、ワイヤ引張り固定部材14の少なくともいずれかが含まれてもよいし、本発明の技術分野において公知の他の構造体または部材等が含まれてもよい。
また、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の材質、寸法等の諸構成は特に限定されない。例えば材質については、吸音パネル20A(パネル本体部21A)がアルミニウム等の軽金属で構成されれば、同様に軽金属で構成されてもよいし、前述したスチール材、樹脂材、もしくは複合材料等で構成されてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、両面が吸音面となる吸音パネルを用い、かつ、連結部位支持部材15を用いずに4枚パネル連結支持構造を構成する点が、前記実施の形態1とは異なっている。本発明の実施の形態2に係る吸音パネルおよび吸音パネルセットについて図3および図4(a),(b)を参照して具体的に説明する。なお、図3は、図1における向かって左側の縦断面図に対応する縦断面図である。また、図4(a)は図2(a)に対応する拡大縦断面図であり、図4(b)は図2(b)に対応する拡大横断面図である。なお、図4(b)の下段断面図には、図2(b)の下段部分正面図に対応する図面は含まれていない。
本実施の形態では、前記実施の形態1と同様に9枚のパネルにより単一の防音壁50を構成しているが、当該防音壁50は、図3に示すように、支持ワイヤ11で支持されているだけでなく、上側の4枚パネル連結支持構造30Cでは、両吸音面21a側において、一対の副支持ワイヤ17によっても支持されている。なお、それぞれの副支持ワイヤ17は、支持ワイヤ11と同様に、その一端(上端)がワイヤ吊下げ部材12(万力)によって梁材51に固定されている。
【0024】
防音壁50を構成する吸音パネル20Bは、図4(a)に示すように、両面が吸音面21aとなっている構成を有している。具体的には、吸音パネル20Bは、反射板213がパネル本体部21Bの厚み方向の中央に位置し、音吸収板211が、パネル本体部21bの両面に位置しているが、それ以外は前記実施の形態1における吸音パネル20Aと同様の構成を有している。
さらに、吸音パネル20B同士を連結する連結部位には、図4(b)の上段平面図に示すように、両吸音面21a側に露出するパネル露出部32bを有するパネル支持板部材33と、互いに同じ形状を有する一対のパネル連結板部材34とが挿入されて装着される。
具体的には、パネル支持板部材33は、前記実施の形態1のパネル支持板部材31と同様に、略長方形の平板状であり、パネル間介在部33aとパネル露出部33bとに区分され、パネル間介在部33aにU字状切り込み部33cが設けられ、パネル露出部33bに取付孔33dが設けられているが、その中央部がパネル間介在部33aとなっており、その両端部がパネル露出部33bとなっている。それゆえ、図4(b)の下段断面図に示すように、吸音パネル20Bの間に挿入すれば、両端部のパネル露出部33bが、両吸音面21aからそれぞれ露出することになる。
ここで、パネル支持板部材33のU字状切り込み部33cは、前記実施の形態1のパネル支持板部材31と同様に、その長手方向に直交するように延伸しているが、その位置は、パネル支持板部材33の長手方向の中間となっている。また、パネル露出部33bの取付孔33dの位置は、U字状切り込み部33cから見て等距離となっている。したがって、図4(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材33は、取付孔33dの位置も含め、U字状切り込み部33cを基準として線対称の形状となっている。
このような構成のパネル支持板部材33を、2枚パネル連結支持構造30Bに対応する連結部位に挿入すれば、パネル露出部33bが両吸音面21aに露出する以外は、前記実施の形態1で説明したパネル支持板部材31と同様に装着することができる。
【0025】
次に、パネル連結板部材34も、前記実施の形態1のパネル連結板部材32と同様に、パネル間介在部34aとパネル露出部34bとに区分され、パネル露出部34bに取付孔34dおよび支持板ストッパー部34eが設けられているが、パネル間介在部34aには、U字状切り込み部の代わりに支持ワイヤ11の直径に応じた半円切り込み部34cが設けられている。
パネル連結板部材34は、図4(b)の下段断面図に示すように、縦横4枚の吸音パネルが隣接する連結位置に、当該吸音パネル20Bの両面からそれぞれ挿入され、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネル20Bの間に装着される。この状態では、一対のパネル連結板部材34のパネル間介在部34aに設けられている半円切り込み部34c同士が対向して位置合わせされ、実質的に一つの円形孔を形成し、支持ワイヤ11は、この円形孔内に位置することになる。
さらに、図4(b)に示すように、パネル連結板部材34の短辺の寸法は、パネル支持板部材33の長辺の寸法に半分に略一致するようになっている。また、パネル連結板部材34のパネル間介在部34aの幅は、パネル支持板部材33のパネル間介在部33aの幅の半分に略一致する。一方、パネル連結板部材34のパネル露出部34bの幅とパネル支持板部材33のパネル露出部31bの幅とは略一致している。このような寸法関係では、パネル支持板部材33のパネル間介在部33aに設けられるU字状切り込み部33c(本実施の形態では左右方向に延伸)は、その先端が、パネル連結板部材34のパネル間介在部34aに設けられる半円切り込み部34cの形成位置に重なることになる。
また、それぞれのパネル連結板部材34のパネル露出部34bには、3つの取付孔34dが設けられている。両端の取付孔34dは、パネル支持板部材33の固定に用いられ、中央の取付孔34dは、図4(a)に示すように、副支持ワイヤ17の他端(下端)を支持する。なお、この副支持ワイヤ17の下端の固定に用いられる固定部材は、取付ボルト301および取付ナット302でよいが、他の固定部材を用いてもよい。
【0026】
このような構成のパネル連結板部材34をパネル支持板部材33とともに、4枚パネル連結支持構造30Cに対応する連結部位に重ねて挿入すれば、左右方向へ延伸するU字状切り込み部33cと半円切り込み部34c同士が対向してなる一つの円形孔とが組合せられることにより、上下方向にのみ開口する貫通孔が形成され、そこに支持ワイヤ11が通るようになっている。
しかも、前記実施の形態1と同様に、一対のパネル連結板部材34を後から挿入すれば、それぞれのパネル露出部34bの長辺に設けられている支持板ストッパー部34eが、先に挿入されたパネル支持板部材33の外辺に当接して位置合わせされる。これにより、U字状切り込み部33cおよび各半円切り込み部34cを適切な位置関係で組み合わせられるだけでなく、各パネル連結板部材34のパネル露出部34bと、各パネル支持板部材33のパネル露出部33bとが、互いの取付孔34d,33dの位置を略一致させるよう重ね合わせることができる。
このように、本実施の形態では、両面が吸音面21aとなる防音壁50を構成することができる。それゆえ、例えば、上方から支持ワイヤ11および副支持ワイヤ17を吊下げて吸音パネル20Bにより防音壁50を形成し、この防音壁50により工場内を複数の区画に区分する等の用途に有効に用いることができる。
また、パネル支持板部材33およびパネル連結板部材34は、前記実施の形態1と同様の構成を有するため、前記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。加えて、それぞれのパネル露出部33b,34bが両面に露出しているので、副支持ワイヤ17ではなく、前記実施の形態1と同様に連結部位支持部材15等を取り付ければ、天井または屋根の柱等から副支持ワイヤ17を張って連結部位を支持するだけでなく、連結部位を柱等で支持することも可能となる。さらに4枚パネル連結支持構造30Cは両面から支持されるので、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。
なお、パネル連結板部材32または34の具体的構成は、前記実施の形態1または2で説明したような、パネル間介在部32aまたは34aに限定されず、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31を互いに接続することによって、横方向に隣接する吸音パネル20Aまたは20Bを連結できる構成であれば、他のどのような構成であっても好適に用いることができる。具体的には、例えば、パネル露出部34bのみからなる構成であってもよい。この場合、パネル連結板部材を吸音パネル20Aまたは20Bの間に挿入しなくても、一対のパネル支持板部材31のパネル露出部31b同士を連結するだけでよい。ただし、連結状態を安定させるためには、本実施の形態のように、両面でパネル露出部31b同士を接続する場合に適用することが好ましい。
【0027】
(実施の形態3)
前記実施の形態1および2では、吸音パネル20Aまたは20Bは、支持ワイヤ11により複数枚配列して防音壁50として用いていたが、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、1枚のみを他の構造物に取り付けることもできる。また、本発明に係る吸音パネルセットは、1枚のみを取り付けるための部材等を備えていてもよい。この点について、図5(a)〜(c)を参照して具体的に説明する。
図5(a)に示すように、本実施の形態に係る吸音パネル20Aは、壁用設置金具35により1枚のみ壁面53に取り付けられてもよい。この壁用設置金具35は、L字型の断面を有する折れ曲がった板状部材であり、ほぼ同程度の大きさを有する2枚の板部が直角につながった形状を有している。一方の板部は吸音パネル20Aの上端または下端に金具取付用ビス303で固定される。そして他方の板部は、壁設置用ボルト304により壁面53に直接設置される。
あるいは、図5(b)に示すように、本実施の形態に係る吸音パネル20Aは、フェンス用設置金具36により、フェンス55に設置することもできる。このフェンス用設置金具36もL字型の断面を有する折れ曲がった板状部材であるが、壁用設置金具35とは異なり、一方の端部が折れ曲がったストッパー部となっており、他の部分はフェンス55の端面および吸音パネル20Aの端面に当接する当接部となっている。
例えば、フェンス55の上端面と吸音パネル20Aの上端面とを略同一面となるように位置合わせし、これにフェンス用設置金具36の当接部を重ねる。このとき、端部のストッパー部は、フェンス55の背面側に係合するように下に向いている。そして、当接部の外側から金具取付用ビス303により吸音パネル20Aの上端面にフェンス用設置金具36を取り付ければ、フェンス55の上部にフェンス用設置金具36を介して吸音パネル20Aを引っ掛けるようにして設置することができる。なお、図5(b)に示すように、吸音パネル20Aの下端面にも同様にフェンス用設置金具36を取り付けてフェンス55に係合させてもよい。
【0028】
このように、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、支持ワイヤ11で支持可能な程度に軽量で設置性に優れているので、支持ワイヤ11を用いることなく、壁用設置金具35またはフェンス用設置金具36等のパネル設置金具を用いて、壁面53またはフェンス55等の垂直面に簡単に設置することができる。なお、吸音パネル20Aまたは20Bにおいて、これらパネル設置金具を取り付ける端面の位置は、ワイヤ挿入枠部22の端面となる箇所であればよい。
したがって、本発明に係る吸音パネルセットは、支持ワイヤ11により吸音パネル20Aまたは20Bを支持するための部材だけでなく、単独で垂直面に取り付けるための部材を含んでいてもよい。
さらに、本発明には、他のさまざまな変形例が含まれる。例えば、図5(c)に示すように、ワイヤ吊下げ部材18として、前記実施の形態1の万力(ワイヤ吊下げ部材12)ではない単管キャッチを用いることもできる。この構成であれば、配管等の管材52に支持ワイヤ11あるいは副支持ワイヤ17の上端を取り付けることができる。
また、本発明に係る吸音パネルセットは、前記実施の形態1で説明したワイヤ引張り固定部材14を備えていなくてもよい。例えば、図示しないが、吸音パネル20Aを支持する支持ワイヤ11の下端はパネルストッパー部材13で固定し、最下部で横方向に隣接する吸音パネル20A同士を連結するパネル連結板部材32または34に、連結部位支持部材15を取り付けるだけでもよい。
さらに、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、前記実施の形態1また2、あるいは本実施の形態の図5(a),(b)に示すように、垂直方向に設置するだけでなく、他の様々な設置態様にも適用することができる。例えば、吸音パネル20Aまたは20Bを平板形状とせずに、湾曲板状に形成することもできる。この場合、例えば、トンネルの内壁に支持ワイヤ11を張り巡らせ、この支持ワイヤ11を用いてトンネルの内壁に必要に応じて拡張的に吸音パネル20Aまたは20Bを順次設置することもできる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、吸音パネルの分野だけでなく、吸音パネルを設置して利用する様々な分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
11 支持ワイヤ
12 ワイヤ吊下げ部材
13 パネルストッパー部材
14 ワイヤ引張り固定部材
15 連結部位支持部材
20A,20B 吸音パネル
21A,21B パネル本体部
30A,30C 4枚パネル連結支持構造
30B 2枚パネル連結支持構造
31,33 パネル支持板部材
32,34 パネル連結板部材
32e,34e 支持板ストッパー部
40 透光パネル
50 防音壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音間仕切り、防音壁等に用いられる吸音パネルを含む吸音パネルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面より音を吸収して透過させる音吸収板(吸音材)と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層(吸音層)と、音波を反射させる反射板(遮音材)とを、表面(吸音面)側から裏面(遮音面)側に向け3層構造に配設し、型枠で保持した構成の吸音パネルが開示されている。
この吸音パネルは、音吸収板を表面側に向けて進退動自在に付勢支持しているため、音波による音吸収板の振動が円滑となるので、音吸収板により音波を十分に吸収することができる。さらに、音波干渉空気層では、入射する音波と反射板から反射される音波を干渉、減衰作用によって吸音することができる。それゆえ、表面側の音波の反射、あるいは裏面側からの反響音を良好に抑制することができ、優れた吸音性能を実現することができる。
さらに、この吸音パネルは、前記3層構造を型枠で保持したパネルであるため、設置が容易である。それゆえ、一般的な工場の騒音対策、大規模設備用の大型防音壁、小型設備用の小規模な防音壁、工事現場等で用いられる簡易騒音対策等といったさまざまな用途に好適に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3522583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで近年では、騒音対策に要求されるレベルが高くなっており、また、コストの軽減の要求も強くなっている。それゆえ、従来では容易に設置し難かった箇所に前記吸音パネルを設置したり前記吸音パネルをより簡素な手法で設置したりする必要性が生じつつある。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吸音パネルセットは、前記の課題を解決するために、一方の面が吸音面であり他方の面が遮音面であるパネル本体部と、当該パネル本体部の縦方向の両側辺部に設けられ、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔を有するワイヤ挿入枠部と、から少なくとも構成されている吸音パネルと、前記ワイヤ挿入孔内のワイヤを固定可能とするように、前記ワイヤ挿入枠部に取り付けられるワイヤアンカー部材と、を備えており、上方から吊り下げられた前記ワイヤを前記ワイヤ挿入孔に挿入した状態で、当該ワイヤを前記ワイヤアンカー部材で固定することにより、複数枚の前記吸音パネルを少なくとも縦方向に連続して配列可能とする構成である。
前記構成によれば、複数枚の吸音パネルを上方から吊り下げるだけで一面に配設することができる。それゆえ、吸音パネルを壁面に固定したり、吸音パネルを据え付けるための骨格構造を設置したりする必要がなく、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易とすることができる。
前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル本体部が、表面より音を吸収して透過させる音吸収板と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層と、音波を反射させる反射板と、を吸音面側から遮音面側に向け3層構造に配設し、これらを型枠で保持するとともに、この型枠に対して前記音吸収板を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットは、前記吸音パネルおよび前記ワイヤアンカー部材と、縦方向に隣接する前記吸音パネルの前記ワイヤ挿入枠部同士の間に挿入することで、前記吸音パネルの間に装着される、平板状のパネル支持板部材と、を備え、当該パネル支持板部材は、前記装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出するパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
前記構成によれば、複数の吸音パネルを配列させた後、縦方向に隣接する吸音パネルの間にパネル支持板部材を挿入して装着することがきるので、パネル露出部に支持部材等を取り付ければ、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。それゆえ、設置状態に応じて吸音パネルの連結部位を適宜支持することができるため、設置の容易性だけでなく設置後の吸音パネルの拡張性を向上することができる。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記装着された状態で横方向に隣接する一対の前記パネル支持板部材を互いに接続することによって、横方向に隣接する前記吸音パネルを連結する、平板状のパネル連結板部材を、さらに備えている構成であってもよい。
前記構成によれば、複数の吸音パネルを配列させた後、縦方向に隣接する吸音パネルの間に前記パネル支持板部材を挿入し、さらに一対のパネル支持板部材をパネル連結板部材で接続することになる。それゆえ、横方向に隣接する吸音パネル同士を、パネル支持板部材およびパネル連結板部材で連結することができるとともに、パネル連結板部材の取付孔に他の支持部材を取り付けることで、縦横に隣接する4枚の吸音パネルの連結部位を支持して、連結部位の振れ等をより一層有効に抑制することができる。それゆえ、設置後の吸音パネルの拡張性をより一層向上することができる。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に単独で挿入されることで、当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に、当該吸音パネルの両面からそれぞれ挿入されることで、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とする半円切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル連結板部材の前記パネル露出部の外側となる辺は、前記パネル支持板部材を重ねる面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部となっている構成であってもよい。
また、前記吸音パネルセットにおいては、前記パネル本体部の代わりに少なくとも透光性材料で構成されている透光板部が設けられている透光パネルを、さらに備えている構成であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明では、吸音パネルの設置を従来よりもさらに容易にできる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態1に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)は、図1に示す吸音パネルセットに用いられる吸音パネルの構成の一例を示す縦断面図であり、(b)は、(a)に示す吸音パネルの横断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【図4】(a)は、図3に示す吸音パネルセットに用いられる吸音パネルの構成の一例を示す縦断面図であり、(b)は、(a)に示す吸音パネルの横断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態3に係る吸音パネルセットの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0009】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る吸音パネルおよび吸音パネルセットの一例について、図1および図2(a),(b)を参照して具体的に説明する。
図1に示すように、本発明に係る吸音パネル20Aは、その両側辺を上方から吊り下げられた一対の支持ワイヤ11に固定することにより、少なくとも縦方向に連続して配列可能となっている。ここで、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位には、図2(a),(b)に示すように、パネル支持板部材31が挿入されている。また、図1に示すように、複数枚の吸音パネル20Aは、縦方向だけでなく横方向にも配列可能であり、図2(b)に示すように、横方向に隣接する吸音パネル20Aは、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32により連結固定されている。
なお、図1の中央の平面図では、吸音パネル20Aの設置の一例として、縦横3枚ずつ合計9枚のパネルから構成される「防音壁50」を図示している。この防音壁50においては、周囲の8枚のパネルは吸音パネル20Aであり、中央部の1枚は吸音パネル20Aではなく透光パネル40に差し替えられている。また、図1における向かって左側の図が平面図に対応する縦断面図であり、図1における上側の図が平面図に対応する横断面図である。さらに、図2(a)は、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位の拡大縦断面図に相当し、図2(b)は、横方向に隣接する吸音パネルの連結部位の拡大横断面図に相当する。
【0010】
[吸音パネルの構成]
まず、吸音パネル20Aの具体的構成について説明する。吸音パネル20Aは、図2(a),(b)に示すように、パネル本体部21Aとワイヤ挿入枠部22とを備えており、さらに、ワイヤアンカー部材23が取り付けられている。このうちパネル本体部21Aは、一方の面が吸音面21aであり他方の面が遮音面21bとなっている。そして、本実施の形態では、パネル本体部21Aは、表面より音を吸収して透過させる音吸収板211と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層212と、音波を反射させる反射板213と、これらを保持する型枠214とから少なくとも構成されている。
パネル本体部21Aは、音吸収板211、音波干渉空気層212および反射板213をこの順で吸音面21a側から遮音面21b側に向け3層構造に配設することにより構成されており、これら3層構造は両端で型枠214により保持されている。さらに、音吸収板211は、型枠214に対して表面(吸音面21a)側に向けて進退動自由に付勢支持されている。
音吸収板211、音波干渉空気層212、反射板213および型枠214の具体的な構成は、いずれも特に限定されない。それぞれ代表的な一例を挙げると、音吸収板211としては、例えば、板状の金属繊維群の両面に一対のアルミニウム製の網目状金属プレートを重ね合わせ、これらを一体化して形成した構成を挙げることができる。また、音波干渉空気層212としては、グラスウールまたは多数の連続気泡を有する発泡樹脂等を均質に充填した多孔質層と、紙、アルミニウム、セラミックス等をハニカム状に配したハニカム構造層とが重ね合わせられた構成を挙げることができる。また、反射板213としては、肉厚が比較的小さいアルミニウム製のハニカム構造板または、アルミニウム製の平板、樹脂製の平板、スチール製の平板等の板材の両面に一対のアルミニウム製の平板を重ね合わせ、これらを一体化して形成した構成を挙げることができる。また、型枠214としては、これら3層構造を支持可能なアルミニウム製の枠体を挙げることができる。
このように、パネル本体部21Aは、アルミニウム等の軽金属で構成されていることが好ましいが、吸音パネル20Aの設置し易さ、あるいは設置後に支持ワイヤ11で吊下げた状態での安定性等を妨げない限り、軽金属以外の素材で構成されてもよい。例えば、ステンレス等のスチール材、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂材、もしくは、これら樹脂材と各種繊維材料とを組み合わせた繊維強化複合材料等を用いて、パネル本体部21Aを製造することができる。
なお、パネル本体部21Aに関する具体的な技術は、本出願人による先行する特許出願の公開特許公報である特開2000−309989号公報に見出される。この公開特許公報に記載される吸音パネル20A(あるいはパネル本体部21A)に関する内容は、本明細書で参照することにより本明細書の記載の一部として援用される。
【0011】
ワイヤ挿入枠部22は、図1に示すように、パネル本体部21Aの縦方向の両側辺部に設けられ、図2(b)に示すように、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔22aを有している。このワイヤ挿入孔22a内に支持ワイヤ11が挿入される。したがって、吸音パネル20Aは、その両側部が一対の支持ワイヤ11によって支持されることになる。なお、図1および図2(a)では、吸音パネル20A内に位置するワイヤ挿入枠部22と支持ワイヤ11とは、いずれも破線で図示している。
ワイヤ挿入枠部22の具体的な構成は特に限定されず、内部にワイヤ挿入孔22aとなる溝状あるいは管状の空間を有するものであれば、公知の様々な加工部材を用いることができる。なお、前述したように、パネル本体部21Aがアルミニウム等の軽金属で構成されれば、ワイヤ挿入枠部22も同様に軽金属で構成されてもよいし、前述したスチール材、樹脂材、もしくは複合材料等で構成されてもよい。
【0012】
ワイヤアンカー部材23は、ワイヤ挿入孔22a内の支持ワイヤ11を固定可能とするように、ワイヤ挿入枠部22に取り付けられるものであり、本実施の形態では、図2(a),(b)に具体的に示すように、ボルト部材を用いている。このボルト部材は、吸音パネル20Aの吸音面21a側からワイヤ挿入孔22a内の支持ワイヤ11に当接するように螺合されて取り付けられる。
この構成を採用することで、支持ワイヤ11はボルト部材の先端とワイヤ挿入孔22aの内壁面との間で挟持される。それゆえ、ボルト部材(ワイヤアンカー部材23)を締め付けるだけで、支持ワイヤ11を吸音パネル20Aに固定することができ、ボルト部材を緩めるだけで、支持ワイヤ11の固定状態を解除することができる。その結果、吸音パネル20の設置、あるいは設置後の位置の再調整等を容易に行うことができる。
なお、ワイヤアンカー部材23として用いられるボルト部材の具体的な構成は特に限定されず、支持ワイヤ11に当接して固定可能な直径を有していれば、一般的に市販されているものを好適に用いることができる。あるいは、ワイヤアンカー部材23としては、ボルト部材以外に、機械的に支持ワイヤ11を挟み込むような構成、あるいは、支持ワイヤ11を係合させるような構成等、構造物にワイヤを固定するために用いられる公知の種々の構成も好適に用いることができる。
さらに、吸音パネル20Aは、パネル本体部21Aおよびワイヤ挿入枠部22以外の部品等を備えていてもよいし、ワイヤアンカー部材23以外の部品が取り付けられてもよいことは言うまでもない。
【0013】
[吸音パネルの設置構成]
次に、前記構成の吸音パネル20Aを複数配列して防音壁50を設置する構成について具体的に説明する。まず、図1に示すように、吸音パネル20Aを支持するための支持ワイヤ11は、上方から下方に吊下げられた状態で設置される。例えば、吸音パネル20Aの設置場所が工場であれば、当該工場の上方に位置する梁材51等にワイヤ吊下げ部材12を取り付け、このワイヤ吊下げ部材12から支持ワイヤ11を下方に吊下げればよい。本実施の形態では、ワイヤ吊下げ部材12として、梁材51の一部を挟み込む万力が用いられている。
支持ワイヤ11の一端(上端)はワイヤ吊下げ部材12により支持されているが、その他端(下端)は、図1に示すように、ワイヤ引張り固定部材14により張力が付与された状態(引っ張られた状態)で床面54に固定されている。なお、図1に示す例では、ワイヤ引張り固定部材14は、床面54に埋められるアンカーとその上面に設けられるリング部材とにより模式的に図示している。
また、支持ワイヤ11に固定される複数の吸音パネル20Aのうち、最下部となる吸音パネル20Aの下端にはパネルストッパー部材13が取り付けられている。このパネルストッパー部材13は、最下部の吸音パネル20Aの下端でワイヤ挿入孔22aから露出する支持ワイヤ11に取り付けられている。これにより、最下部の吸音パネル20Aが下方へずれて移動しないように固定支持することができるので、防音壁50全体が下方に位置ずれすることなく安定して保持することができる。
なお、支持ワイヤ11、ワイヤ吊下げ部材12、パネルストッパー部材13、ワイヤ引張り固定部材14の具体的な構成はそれぞれ特に限定されない。支持ワイヤ11として特別なものを用いる必要がなく、従来公知のワイヤを好適に用いることができる。また、ワイヤ吊下げ部材12も前記万力に限定されず、支持ワイヤ11の一端(上端)を、設置場所の上方で固定して吊り下げることができるものであれば、公知のさまざまな部材または機器等を用いることができる。パネルストッパー部材13も同様であり、一般的なワイヤに取り付け可能な公知のストッパー部材を好適に用いることができる。ワイヤ引張り固定部材14も同様であり、支持ワイヤ11の他端(下端)を設置場所の下方で引っ張った状態で固定することが可能なものであれば、公知のどのような構成でも好適に用いることができる。
【0014】
また、図1に示すように、吸音パネル20Aの縦方向の連結部位には、連結部位支持部材15が取り付けられている。この連結部位支持部材15は、図2(a),(b)に示すように、その一端は、支持ワイヤ11に係合する後述のパネル支持板部材31の取付孔31dまたはパネル連結板部材32の取付孔32dに取り付け可能に構成される取付端15aとなっている。一方、その他端は、近接する構造物の表面に当接する当接面15cを有する当接端15bとなっている。
それゆえ、例えば壁面53等のように、吸音パネル20Aに近接して位置する構造物の表面に当接面15cを当接させるだけで、連結部位の遮音面21b側すなわち防音壁50の裏面側を好適に支持することができる。したがって、吸音パネル20Aを壁面53に直接固定しなくても、複雑な構造物を用いることなく、吸音パネル20Aを容易に安定して設置することができる。
【0015】
ここで、図1に示す防音壁50においては、中央の透光パネル40の四隅は、いずれも隣接する4枚の吸音パネル20A(または透光パネル40)が互いに角部を突き合わせて連結する連結部位となっている。説明の便宜上、このように縦横4枚の吸音パネル20Aが連結している構造を、「4枚パネル連結支持構造30A」と称する。また、防音壁50の左右両端において、上下2枚の吸音パネル20Aが互いに角部を突き合わせて連結する連結部位の構造を、説明の便宜上、「2枚パネル連結支持構造30B」と称する。なお、図1および図2(a),(b)では、4枚パネル連結支持構造30Aおよび2枚パネル連結支持構造30Bのいずれも破線で囲んで示している。
【0016】
吸音パネル20Aは、前述したように、その縦方向の両側辺部にワイヤ挿入枠部22を備えている。それゆえ、上から吊下げられた支持ワイヤ11をワイヤ挿入孔22a(図2(b)参照)に挿入した状態で、当該支持ワイヤ11をワイヤアンカー部材23で固定するだけで、複数枚の吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連続して配列可能とすることが可能となっている。
また、横方向についても、後述するように、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を用いることで、連結した状態で配列することが可能となっている。それゆえ、縦横の連結部位(4枚パネル連結支持構造30A、2枚パネル連結支持構造30b)に連結部位支持部材15等を取り付けることで、吸音パネル20Aを壁面53に直接固定したり、吸音パネル20Aを据え付けるための骨格構造を設置したりしなくても、複数の吸音パネル20Aからなる防音壁50を設置することができるので、吸音パネル20Aの設置を従来よりも容易とすることができる。
なお、防音壁50を構成する9枚のパネルのうち透光パネル40の具体的な構成は特に限定されないが、吸音パネル20Aと同様の構成を有していればよい。例えば、吸音パネル20Aのパネル本体部21Aの代わりに、少なくとも透光性材料で構成されている透光板部を備える構成を挙げることができる。この透光板部の具体的な構成は特に限定されず、本実施の形態では、例えば、ポリカーボネート板が用いられているが、公知の他の透光性樹脂であってもよいし、ガラス板であってもよい。
透光パネル40は、防音壁50を構成する複数の吸音パネル20Aの一つと差し替えることで、当該防音壁50に明かり取り用の窓を形成することができる。したがって、明かり取り用の窓が必要なければ、防音壁50を全て吸音パネル20Aで構成してもよいし、明かり取り用の窓が複数必要であれば、所望の箇所の吸音パネル20Aを透光パネル40に差し替えればよい。
【0017】
[吸音パネルセットの構成]
次に、前記構成の吸音パネル20Aを備える、本発明に係る吸音パネルセットの一例について具体的に説明する。本実施の形態に係る吸音パネルセットは、図1に示す防音壁50を構成するためのセットであり、複数の吸音パネル20Aと、各吸音パネル20Aに設けられているワイヤアンカー部材23と、吸音パネル20Aの角部同士を連結する連結部位に装着されるパネル支持板部材31と、吸音パネル20A同士を横方向に連結する連結部位に装着されるパネル連結板部材32と、連結部位支持部材15と、吸音パネル20A同士の間に配置される緩衝部材16と、を備えている。
【0018】
パネル支持板部材31は、図2(a),(b)に示すように長方形の平板状であり、縦方向に隣接する吸音パネル20Aのワイヤ挿入枠部22同士の間に挿入することで、これら吸音パネル20Aの間に装着される。ここで、図2(b)の上段は、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の構成例を示す平面図であり、下段は、前述したように横方向に隣接する吸音パネル20Aの連結部位を示す断面図であり、下段における向かって右下には、連結部位を吸音面21aから見た状態である部分正面図が示されている。そして、上段の平面図、下段の断面図および部分正面図は、それぞれの対応関係を示すために互いを二点鎖線でつないで表示している。
図2(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材31は、パネル間介在部31aとパネル露出部31bとに少なくとも区分されている。パネル間介在部31aは、吸音パネル20Aの間に装着された状態で当該吸音パネル20Aの間に位置する部位であり、パネル露出部31bは、装着された状態で吸音パネル20Aの間から露出する部位である。なお、図2(b)の上段平面図では、パネル間介在部31aとパネル露出部31bとの境界線を点線で図示している。また、後述するが、パネル支持板部材31の寸法は、パネル連結板部材32の寸法に合わせたものとなっている。
パネル間介在部31aには、支持ワイヤ11を挿入可能とするU字状切り込み部32cが形成されている。U字状切り込み部32cは、パネル支持板部材31の長手方向に直交するように(本実施の形態では左右方向へ)、一方の長辺から中央部まで切り込むように、短辺の長さの略半分程度の長さで形成されている。また、パネル露出部31bには、その短辺方向の略中央部に取付孔31dが設けられている。
この取付孔31dは、パネル支持板部材31にパネル連結板部材32を固定する固定部材(ボルト部材)を挿入するために用いられるとともに、前述した連結部位支持部材15を取り付けるためにも用いられる。それゆえ、例えば、2枚パネル連結支持構造30Bでは、パネル支持板部材31の取付孔31dと、連結部位支持部材15の取付端15aに設けられる図示しない取付孔と、を重ね合わせて、取付ボルト301を挿入して取付ナット302により締結することにより、パネル支持板部材31に連結部位支持部材15が取り付けられる。
ここで、パネル支持板部材31は、吸音パネル20Aのワイヤ挿入枠部22の間に挿入し、さらにU字状切り込み部32cの奥まで支持ワイヤ11を挿入させる。このとき、図2(b)の下段断面図に示すように、パネル露出部31bを吸音パネル20Aの遮音面21b(裏面)側に露出させる。このような挿入のみで、パネル支持板部材31は、吸音パネル20Aの間で相対的に安定した状態で装着することができる。
具体的には、下側の吸音パネル20Aは、上側の吸音パネル20Aの自重により押さえ付けられることになる。そこで、これら吸音パネル20Aの間にパネル支持板部材31を挟みこんでU字状切り込み部31cに支持ワイヤ11を通す(あるいは係合する)だけで、当該パネル支持板部材31を安定して装着することができる。
それゆえ、本発明によれば、先に吸音パネル20Aを少なくとも縦方向に連結して設置してから、パネル支持板部材31を容易に取り付けることが可能となる。そして、パネル支持板部材31には、連結部位支持部材15等を後から容易に取り付けることができる。それゆえ、設置後の吸音パネル20Aの拡張性を向上することができる。
【0019】
次に、パネル連結板部材32は、図2(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材31よりも大きな長方形の平板状であり、本実施の形態では、パネル支持板部材31と同様に、装着状態で吸音パネル20Aの間に位置するパネル間介在部32aと、吸音パネル20Aの間から露出する部位であるパネル露出部32bと、に少なくとも区分されている。パネル間介在部32aにもU字状切り込み部32cが設けられており、パネル露出部32bには取付孔33dが3つ設けられている。
図2(b)に示す例では、パネル連結板部材32の一方の長辺側(パネル間介在部32a側)に一対のU字状切り込み部32cが設けられている。このU字状切り込み部32cは、一方の長辺から他方の長辺に向かって(本実施の形態では前後方向へ)平行に延伸しており、その長さは、パネル間介在部32aの幅の約半分程度である。一対のU字状切り込み部32cの位置は、パネル連結板部材32の端部に近接した位置となっている。
また、パネル連結板部材32の他方の長辺(パネル露出部32b側の長辺)側には、当該長辺に沿って3つの取付孔32dが一列に並んで設けられている。このうち中央の取付孔32dは、パネル連結板部材32の長手方向の中央部に位置している。また、両端の2つの取付孔32dは、それぞれU字状切り込み部32cに対向して位置している。さらに、図2(a),(b)に示すように、パネル連結板部材32のパネル露出部32b側の長辺は、一方の面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部32eとなっている。
さらに、図2(b)の上段平面図に示すように、パネル連結板部材32の短辺の寸法は、パネル支持板部材31の長辺の寸法に略一致するようになっている。また、パネル連結板部材32のパネル間介在部32aの幅とパネル支持板部材31のパネル間介在部31aの幅とも略一致し、パネル露出部32bの幅とパネル露出部31bの幅も略一致している。加えて、パネル間介在部32aに設けられるU字状切り込み部32c(本実施の形態では前後方向に延伸)は、その先端が、パネル間介在部31aに設けられるU字状切り込み部31cの延伸方向(本実施の形態では左右方向)に重なるような長さとなっている。
このパネル連結板部材32は、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31の間であり、かつ、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの間となる位置、すなわち4枚パネル連結支持構造30Aに対応する位置に単独で挿入される。挿入されたパネル連結板部材32は、当該パネル連結板部材32の両端の上側に、一対のパネル支持板部材31がそれぞれ重なるように位置することになる。また、パネル連結板部材32の一対のU字状切り込み部32cは、前述したパネル支持板部材31と同様に、隣接する吸音パネル20Aの支持ワイヤ11それぞれが挿入される。
【0020】
この挿入状態では、図2(b)の下段断面図において向かって左側に示す吸音パネル20Aの右方の支持ワイヤ11には、一方のパネル支持板部材31のU字状切り込み部31cが係合しているとともに、パネル連結板部材32の一方のU字状切り込み部32cが係合している。また、向かって右側に示す吸音パネル20Aの左方の支持ワイヤ11には、他方のパネル支持板部材31のU字状切り込み部31cが係合しているとともに、パネル連結板部材32の他方のU字状切り込み部32cが係合している。
すなわち、左右方向へ延伸するU字状切り込み部31cと前後方向へ延伸するU字状切り込み部32cとが組み合わせられることにより、上下方向にのみ開口する貫通孔が形成され、そこに支持ワイヤ11が通るようになっている。なお、一対のパネル支持板部材31は、U字状切り込み部32cが互いに対向するように、4枚パネル連結支持構造30Aに挿入されており、さらに、パネル連結板部材32を後から挿入すれば、パネル露出部32bの長辺に設けられている支持板ストッパー部32eが、先に挿入されたパネル支持板部材31の外辺に当接して位置合わせされることになる。
このような指示板ストッパー部32eによる位置合わせでは、U字状切り込み部31cおよびU字状切り込み部32cを適切な位置関係で組み合わせられるだけでなく、パネル連結板部材32のパネル露出部32bと、各パネル支持板部材31のパネル露出部31bとが、互いの取付孔32d,31dの位置を略一致させるよう重ね合わせられることになる。重なった取付孔32d,31dには、取付ボルト301が挿入されて取付ナット302により締結される。これにより、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31をパネル連結板部材32により互いに接続することができ、その結果、横方向に隣接する吸音パネル20A同士を連結することができる。
また、パネル連結板部材32を4枚の吸音パネル20Aの間に装着した状態では、パネル露出部32bの中央に位置する取付孔32dは、図2(b)の下段部分正面図に示すように、吸音パネル20Aの側辺同士の連結位置に略一致する。そして、図2(a),(b)に示すように、この取付孔32dと連結部位支持部材15の取付端15aに設けられる図示しない取付孔とを重ね合わせて、取付ボルト301を挿入して取付ナット302により締結することにより、パネル連結板部材32に連結部位支持部材15が取り付けられる。
パネル連結板部材32に取り付けられた連結部位支持部材15は、吸音パネル20A同士の側辺同士の連結位置の裏面を支持することになる。図1に示す防音壁50では、4枚パネル連結支持構造30Aの全てを裏面で支持することができる。それゆえ、縦横に隣接する4枚の吸音パネル20Aの連結部位を裏面から好適に支持することができ、連結部位の振れ等をより一層有効に抑制することができる。
さらに、例えば先に縦方向のみ吸音パネル20Aを複数枚配列して、2枚パネル連結支持構造30Bに対応する連結部位にパネル支持板部材31を装着した後であっても、その横に、同様に縦方向の配列した複数枚の吸音パネル20Aを隣接させ、パネル連結板部材32を4枚パネル連結支持構造30Aに対応する連結部位に後から装着することができる。それゆえ、大きな面積の防音壁50を設置する場合であっても、1列ずつ順次設置していくことができるので、吸音パネル20Aの設置をより容易にできるとともに、設置後の吸音パネル20Aの拡張性をより一層向上することができる。
なお、本実施の形態では、縦方向に隣接する吸音パネル20Aの間に少なくともパネル支持板部材31が挿入されるので、これら吸音パネル20Aの間に、パネル支持板部材31の厚み、または、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の厚み分か、それ以上の隙間が生じる。そこで、図2(a),(b)に示すように、吸音パネル20A同士の連結部位に緩衝部材16を挿入することが好ましい。この緩衝部材16は、ゴム等の弾性材料により形成されている角柱状であればよく、その太さは想定される隙間よりも少し大きくなる程度であればよい。これにより、吸音パネル20A同士のつなぎ目を緩衝部材16で埋めることができるので、図1に示す防音壁50の吸音面21aの平坦性を向上することができる。
【0021】
以上のように、本実施の形態によれば、吸音パネル20Aの縦方向の両端に一対の支持ワイヤ11を挿入して固定することにより、少なくとも縦方向に吸音パネル20Aを容易に設置することができる。しかも、吸音パネル20Aの間の連結部位にパネル支持板部材31を後から容易に装着できるので、このパネル支持板部材31のパネル露出部31bに連結部位支持部材15等を取り付ければ、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。特に、吸音パネル20Aが、音吸収板211、音波干渉空気層212、反射板213の3層構造であり、音吸収板211を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成のパネル本体部21Aを備えていれば、軽量かつ高性能の吸音パネル20Aをさまざまな場所に容易かつ安定的に設置することができる。
加えて、隣接する4枚の吸音パネル20Aの連結部位に、パネル連結板部材32を挿入し、これにパネル支持板部材31を固定すれば、横方向に隣接する吸音パネル20Aを容易かつ適切に連結固定することができる。これにより、連結部位の振れ等を有効に抑制できるだけでなく、吸音パネル20Aの設置の拡張性を向上することができる。また、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32は、いずれも寸法が合わせられ、かつ、パネル連結板部材32には支持板ストッパー部32eが設けられているので、これらを連結部位に挿入するだけで容易に位置合わせすることができる。それゆえ、拡張時の設置性も向上することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、吸音パネルセットの一例として、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31、パネル連結板部材32、連結部位支持部材15、および緩衝部材16を備える構成を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されず、少なくとも、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、およびパネル支持板部材31を備える構成であればよく、好ましくは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32を備える構成であればよい。
それゆえ、吸音パネルセットは、吸音パネル20A、ワイヤアンカー部材23、パネル支持板部材31、パネル連結板部材32等だけで構成されてもよいし、さらに透光パネル40、連結部位支持部材15および緩衝部材16の少なくともいずれかが含まれてもよいし、さらに支持ワイヤ11、ワイヤ吊下げ部材12、パネルストッパー部材13、ワイヤ引張り固定部材14の少なくともいずれかが含まれてもよいし、本発明の技術分野において公知の他の構造体または部材等が含まれてもよい。
また、パネル支持板部材31およびパネル連結板部材32の材質、寸法等の諸構成は特に限定されない。例えば材質については、吸音パネル20A(パネル本体部21A)がアルミニウム等の軽金属で構成されれば、同様に軽金属で構成されてもよいし、前述したスチール材、樹脂材、もしくは複合材料等で構成されてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、両面が吸音面となる吸音パネルを用い、かつ、連結部位支持部材15を用いずに4枚パネル連結支持構造を構成する点が、前記実施の形態1とは異なっている。本発明の実施の形態2に係る吸音パネルおよび吸音パネルセットについて図3および図4(a),(b)を参照して具体的に説明する。なお、図3は、図1における向かって左側の縦断面図に対応する縦断面図である。また、図4(a)は図2(a)に対応する拡大縦断面図であり、図4(b)は図2(b)に対応する拡大横断面図である。なお、図4(b)の下段断面図には、図2(b)の下段部分正面図に対応する図面は含まれていない。
本実施の形態では、前記実施の形態1と同様に9枚のパネルにより単一の防音壁50を構成しているが、当該防音壁50は、図3に示すように、支持ワイヤ11で支持されているだけでなく、上側の4枚パネル連結支持構造30Cでは、両吸音面21a側において、一対の副支持ワイヤ17によっても支持されている。なお、それぞれの副支持ワイヤ17は、支持ワイヤ11と同様に、その一端(上端)がワイヤ吊下げ部材12(万力)によって梁材51に固定されている。
【0024】
防音壁50を構成する吸音パネル20Bは、図4(a)に示すように、両面が吸音面21aとなっている構成を有している。具体的には、吸音パネル20Bは、反射板213がパネル本体部21Bの厚み方向の中央に位置し、音吸収板211が、パネル本体部21bの両面に位置しているが、それ以外は前記実施の形態1における吸音パネル20Aと同様の構成を有している。
さらに、吸音パネル20B同士を連結する連結部位には、図4(b)の上段平面図に示すように、両吸音面21a側に露出するパネル露出部32bを有するパネル支持板部材33と、互いに同じ形状を有する一対のパネル連結板部材34とが挿入されて装着される。
具体的には、パネル支持板部材33は、前記実施の形態1のパネル支持板部材31と同様に、略長方形の平板状であり、パネル間介在部33aとパネル露出部33bとに区分され、パネル間介在部33aにU字状切り込み部33cが設けられ、パネル露出部33bに取付孔33dが設けられているが、その中央部がパネル間介在部33aとなっており、その両端部がパネル露出部33bとなっている。それゆえ、図4(b)の下段断面図に示すように、吸音パネル20Bの間に挿入すれば、両端部のパネル露出部33bが、両吸音面21aからそれぞれ露出することになる。
ここで、パネル支持板部材33のU字状切り込み部33cは、前記実施の形態1のパネル支持板部材31と同様に、その長手方向に直交するように延伸しているが、その位置は、パネル支持板部材33の長手方向の中間となっている。また、パネル露出部33bの取付孔33dの位置は、U字状切り込み部33cから見て等距離となっている。したがって、図4(b)の上段平面図に示すように、パネル支持板部材33は、取付孔33dの位置も含め、U字状切り込み部33cを基準として線対称の形状となっている。
このような構成のパネル支持板部材33を、2枚パネル連結支持構造30Bに対応する連結部位に挿入すれば、パネル露出部33bが両吸音面21aに露出する以外は、前記実施の形態1で説明したパネル支持板部材31と同様に装着することができる。
【0025】
次に、パネル連結板部材34も、前記実施の形態1のパネル連結板部材32と同様に、パネル間介在部34aとパネル露出部34bとに区分され、パネル露出部34bに取付孔34dおよび支持板ストッパー部34eが設けられているが、パネル間介在部34aには、U字状切り込み部の代わりに支持ワイヤ11の直径に応じた半円切り込み部34cが設けられている。
パネル連結板部材34は、図4(b)の下段断面図に示すように、縦横4枚の吸音パネルが隣接する連結位置に、当該吸音パネル20Bの両面からそれぞれ挿入され、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネル20Bの間に装着される。この状態では、一対のパネル連結板部材34のパネル間介在部34aに設けられている半円切り込み部34c同士が対向して位置合わせされ、実質的に一つの円形孔を形成し、支持ワイヤ11は、この円形孔内に位置することになる。
さらに、図4(b)に示すように、パネル連結板部材34の短辺の寸法は、パネル支持板部材33の長辺の寸法に半分に略一致するようになっている。また、パネル連結板部材34のパネル間介在部34aの幅は、パネル支持板部材33のパネル間介在部33aの幅の半分に略一致する。一方、パネル連結板部材34のパネル露出部34bの幅とパネル支持板部材33のパネル露出部31bの幅とは略一致している。このような寸法関係では、パネル支持板部材33のパネル間介在部33aに設けられるU字状切り込み部33c(本実施の形態では左右方向に延伸)は、その先端が、パネル連結板部材34のパネル間介在部34aに設けられる半円切り込み部34cの形成位置に重なることになる。
また、それぞれのパネル連結板部材34のパネル露出部34bには、3つの取付孔34dが設けられている。両端の取付孔34dは、パネル支持板部材33の固定に用いられ、中央の取付孔34dは、図4(a)に示すように、副支持ワイヤ17の他端(下端)を支持する。なお、この副支持ワイヤ17の下端の固定に用いられる固定部材は、取付ボルト301および取付ナット302でよいが、他の固定部材を用いてもよい。
【0026】
このような構成のパネル連結板部材34をパネル支持板部材33とともに、4枚パネル連結支持構造30Cに対応する連結部位に重ねて挿入すれば、左右方向へ延伸するU字状切り込み部33cと半円切り込み部34c同士が対向してなる一つの円形孔とが組合せられることにより、上下方向にのみ開口する貫通孔が形成され、そこに支持ワイヤ11が通るようになっている。
しかも、前記実施の形態1と同様に、一対のパネル連結板部材34を後から挿入すれば、それぞれのパネル露出部34bの長辺に設けられている支持板ストッパー部34eが、先に挿入されたパネル支持板部材33の外辺に当接して位置合わせされる。これにより、U字状切り込み部33cおよび各半円切り込み部34cを適切な位置関係で組み合わせられるだけでなく、各パネル連結板部材34のパネル露出部34bと、各パネル支持板部材33のパネル露出部33bとが、互いの取付孔34d,33dの位置を略一致させるよう重ね合わせることができる。
このように、本実施の形態では、両面が吸音面21aとなる防音壁50を構成することができる。それゆえ、例えば、上方から支持ワイヤ11および副支持ワイヤ17を吊下げて吸音パネル20Bにより防音壁50を形成し、この防音壁50により工場内を複数の区画に区分する等の用途に有効に用いることができる。
また、パネル支持板部材33およびパネル連結板部材34は、前記実施の形態1と同様の構成を有するため、前記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。加えて、それぞれのパネル露出部33b,34bが両面に露出しているので、副支持ワイヤ17ではなく、前記実施の形態1と同様に連結部位支持部材15等を取り付ければ、天井または屋根の柱等から副支持ワイヤ17を張って連結部位を支持するだけでなく、連結部位を柱等で支持することも可能となる。さらに4枚パネル連結支持構造30Cは両面から支持されるので、連結部位の振れ等を有効に抑制することができる。
なお、パネル連結板部材32または34の具体的構成は、前記実施の形態1または2で説明したような、パネル間介在部32aまたは34aに限定されず、横方向に隣接する一対のパネル支持板部材31を互いに接続することによって、横方向に隣接する吸音パネル20Aまたは20Bを連結できる構成であれば、他のどのような構成であっても好適に用いることができる。具体的には、例えば、パネル露出部34bのみからなる構成であってもよい。この場合、パネル連結板部材を吸音パネル20Aまたは20Bの間に挿入しなくても、一対のパネル支持板部材31のパネル露出部31b同士を連結するだけでよい。ただし、連結状態を安定させるためには、本実施の形態のように、両面でパネル露出部31b同士を接続する場合に適用することが好ましい。
【0027】
(実施の形態3)
前記実施の形態1および2では、吸音パネル20Aまたは20Bは、支持ワイヤ11により複数枚配列して防音壁50として用いていたが、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、1枚のみを他の構造物に取り付けることもできる。また、本発明に係る吸音パネルセットは、1枚のみを取り付けるための部材等を備えていてもよい。この点について、図5(a)〜(c)を参照して具体的に説明する。
図5(a)に示すように、本実施の形態に係る吸音パネル20Aは、壁用設置金具35により1枚のみ壁面53に取り付けられてもよい。この壁用設置金具35は、L字型の断面を有する折れ曲がった板状部材であり、ほぼ同程度の大きさを有する2枚の板部が直角につながった形状を有している。一方の板部は吸音パネル20Aの上端または下端に金具取付用ビス303で固定される。そして他方の板部は、壁設置用ボルト304により壁面53に直接設置される。
あるいは、図5(b)に示すように、本実施の形態に係る吸音パネル20Aは、フェンス用設置金具36により、フェンス55に設置することもできる。このフェンス用設置金具36もL字型の断面を有する折れ曲がった板状部材であるが、壁用設置金具35とは異なり、一方の端部が折れ曲がったストッパー部となっており、他の部分はフェンス55の端面および吸音パネル20Aの端面に当接する当接部となっている。
例えば、フェンス55の上端面と吸音パネル20Aの上端面とを略同一面となるように位置合わせし、これにフェンス用設置金具36の当接部を重ねる。このとき、端部のストッパー部は、フェンス55の背面側に係合するように下に向いている。そして、当接部の外側から金具取付用ビス303により吸音パネル20Aの上端面にフェンス用設置金具36を取り付ければ、フェンス55の上部にフェンス用設置金具36を介して吸音パネル20Aを引っ掛けるようにして設置することができる。なお、図5(b)に示すように、吸音パネル20Aの下端面にも同様にフェンス用設置金具36を取り付けてフェンス55に係合させてもよい。
【0028】
このように、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、支持ワイヤ11で支持可能な程度に軽量で設置性に優れているので、支持ワイヤ11を用いることなく、壁用設置金具35またはフェンス用設置金具36等のパネル設置金具を用いて、壁面53またはフェンス55等の垂直面に簡単に設置することができる。なお、吸音パネル20Aまたは20Bにおいて、これらパネル設置金具を取り付ける端面の位置は、ワイヤ挿入枠部22の端面となる箇所であればよい。
したがって、本発明に係る吸音パネルセットは、支持ワイヤ11により吸音パネル20Aまたは20Bを支持するための部材だけでなく、単独で垂直面に取り付けるための部材を含んでいてもよい。
さらに、本発明には、他のさまざまな変形例が含まれる。例えば、図5(c)に示すように、ワイヤ吊下げ部材18として、前記実施の形態1の万力(ワイヤ吊下げ部材12)ではない単管キャッチを用いることもできる。この構成であれば、配管等の管材52に支持ワイヤ11あるいは副支持ワイヤ17の上端を取り付けることができる。
また、本発明に係る吸音パネルセットは、前記実施の形態1で説明したワイヤ引張り固定部材14を備えていなくてもよい。例えば、図示しないが、吸音パネル20Aを支持する支持ワイヤ11の下端はパネルストッパー部材13で固定し、最下部で横方向に隣接する吸音パネル20A同士を連結するパネル連結板部材32または34に、連結部位支持部材15を取り付けるだけでもよい。
さらに、本発明に係る吸音パネル20Aまたは20Bは、前記実施の形態1また2、あるいは本実施の形態の図5(a),(b)に示すように、垂直方向に設置するだけでなく、他の様々な設置態様にも適用することができる。例えば、吸音パネル20Aまたは20Bを平板形状とせずに、湾曲板状に形成することもできる。この場合、例えば、トンネルの内壁に支持ワイヤ11を張り巡らせ、この支持ワイヤ11を用いてトンネルの内壁に必要に応じて拡張的に吸音パネル20Aまたは20Bを順次設置することもできる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、吸音パネルの分野だけでなく、吸音パネルを設置して利用する様々な分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
11 支持ワイヤ
12 ワイヤ吊下げ部材
13 パネルストッパー部材
14 ワイヤ引張り固定部材
15 連結部位支持部材
20A,20B 吸音パネル
21A,21B パネル本体部
30A,30C 4枚パネル連結支持構造
30B 2枚パネル連結支持構造
31,33 パネル支持板部材
32,34 パネル連結板部材
32e,34e 支持板ストッパー部
40 透光パネル
50 防音壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が吸音面であり他方の面が遮音面であるパネル本体部と、当該パネル本体部の縦方向の両側辺部に設けられ、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔を有するワイヤ挿入枠部と、から少なくとも構成されている吸音パネルと、前記ワイヤ挿入孔内のワイヤを固定可能とするように、前記ワイヤ挿入枠部に取り付けられるワイヤアンカー部材と、を備えており、上方から吊り下げられた前記ワイヤを前記ワイヤ挿入孔に挿入した状態で、当該ワイヤを前記ワイヤアンカー部材で固定することにより、複数枚の前記吸音パネルを少なくとも縦方向に連続して配列可能とすることを特徴とする、吸音パネルセット。
【請求項2】
前記パネル本体部が、表面より音を吸収して透過させる音吸収板と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層と、音波を反射させる反射板と、を吸音面側から遮音面側に向け3層構造に配設し、これらを型枠で保持するとともに、この型枠に対して前記音吸収板を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の吸音パネルセット。
【請求項3】
前記吸音パネルおよびワイヤアンカー部材と、縦方向に隣接する前記吸音パネルの前記ワイヤ挿入枠部同士の間に挿入することで、前記吸音パネルの間に装着される、平板状のパネル支持板部材と、を備え、当該パネル支持板部材は、前記装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出するパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸音パネルセット。
【請求項4】
前記装着された状態で横方向に隣接する一対の前記パネル支持板部材を互いに接続することによって、横方向に隣接する前記吸音パネルを連結する、平板状のパネル連結板部材を、さらに備えていることを特徴とする、請求項3に記載の吸音パネルセット。
【請求項5】
前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に単独で挿入されることで、当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項4に記載の吸音パネルセット。
【請求項6】
前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に、当該吸音パネルの両面からそれぞれ挿入されることで、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネルの間に装着されるとともに、
当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とする半円切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項4に記載の吸音パネルセット。
【請求項7】
前記パネル連結板部材の前記パネル露出部の外側となる辺は、前記パネル支持板部材を重ねる面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部となっていることを特徴とする、請求項5または6に記載の吸音パネルセット。
【請求項8】
前記パネル本体部の代わりに少なくとも透光性材料で構成されている透光板部が設けられている透光パネルを、さらに備えていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の吸音パネルセット。
【請求項1】
一方の面が吸音面であり他方の面が遮音面であるパネル本体部と、当該パネル本体部の縦方向の両側辺部に設けられ、当該縦方向に沿って貫通するワイヤ挿入孔を有するワイヤ挿入枠部と、から少なくとも構成されている吸音パネルと、前記ワイヤ挿入孔内のワイヤを固定可能とするように、前記ワイヤ挿入枠部に取り付けられるワイヤアンカー部材と、を備えており、上方から吊り下げられた前記ワイヤを前記ワイヤ挿入孔に挿入した状態で、当該ワイヤを前記ワイヤアンカー部材で固定することにより、複数枚の前記吸音パネルを少なくとも縦方向に連続して配列可能とすることを特徴とする、吸音パネルセット。
【請求項2】
前記パネル本体部が、表面より音を吸収して透過させる音吸収板と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層と、音波を反射させる反射板と、を吸音面側から遮音面側に向け3層構造に配設し、これらを型枠で保持するとともに、この型枠に対して前記音吸収板を表面側に向けて進退動自由に付勢支持した構成であることを特徴とする、請求項1に記載の吸音パネルセット。
【請求項3】
前記吸音パネルおよびワイヤアンカー部材と、縦方向に隣接する前記吸音パネルの前記ワイヤ挿入枠部同士の間に挿入することで、前記吸音パネルの間に装着される、平板状のパネル支持板部材と、を備え、当該パネル支持板部材は、前記装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出するパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸音パネルセット。
【請求項4】
前記装着された状態で横方向に隣接する一対の前記パネル支持板部材を互いに接続することによって、横方向に隣接する前記吸音パネルを連結する、平板状のパネル連結板部材を、さらに備えていることを特徴とする、請求項3に記載の吸音パネルセット。
【請求項5】
前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に単独で挿入されることで、当該吸音パネルの間に装着されるとともに、当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とするU字状切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項4に記載の吸音パネルセット。
【請求項6】
前記パネル連結板部材は、横方向に隣接するパネル支持板部材の間であり、かつ、縦方向に隣接する前記吸音パネルの間となる位置に、当該吸音パネルの両面からそれぞれ挿入されることで、2枚が互いに対向した状態で当該吸音パネルの間に装着されるとともに、
当該装着された状態で当該吸音パネルの間に位置し、前記ワイヤを挿入可能とする半円切り込み部を有するパネル間介在部と、前記装着された状態で当該吸音パネルの間から露出する部位であるパネル露出部と、に少なくとも区分されていることを特徴とする、請求項4に記載の吸音パネルセット。
【請求項7】
前記パネル連結板部材の前記パネル露出部の外側となる辺は、前記パネル支持板部材を重ねる面に向かって折れ曲がって構成される支持板ストッパー部となっていることを特徴とする、請求項5または6に記載の吸音パネルセット。
【請求項8】
前記パネル本体部の代わりに少なくとも透光性材料で構成されている透光板部が設けられている透光パネルを、さらに備えていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の吸音パネルセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−79538(P2013−79538A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220564(P2011−220564)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(596179885)株式会社鐡工社ブル (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(596179885)株式会社鐡工社ブル (1)
【Fターム(参考)】
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