説明

吸音性積層体およびその製造法

【課題】中程度の領域周波数の吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れ、自動車内装用などに好適な吸音性積層体およびその製造法を提供する。
【解決手段】緻密な構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合してなる吸音性積層体であって、該表面材が、平均繊維径10〜3 0μmの連続長繊維層と、平均繊維径0.5〜7μm、目付1〜30g/m2 のメルトブロー微細繊維層とを積層し、熱圧着により一体化した積層不織布で、該積層不織布の目付けが20〜250g/m2 、嵩密度が0.1〜0.8g/cm3 および通気度が100cc/cm2 /sec以下であり、前記裏面材が、平均繊維径10〜30μmおよび嵩密度0.005〜0.15g/cm3 である合成繊維不織布であり、かつ前記吸音性積層体の厚みが5〜50mm、目付けが100〜1000g/m2 および周波数4000Hzの吸音率が50%以上であることを特徴とする吸音性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸音性積層体に関し、特に中程度の周波数、特に周波数4000Hzの吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れた自動車内装用などに好適な吸音性積層体およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車や住宅の内装には、吸音材として、グラスウール、ロックウール、アルミ繊維、多孔性セラミック、屑綿などが使用されている。しかし、これらの吸音材は、施工性、人体への障害、リサイクル、環境などの点で問題があるため、近年では不織布を用いた種々の吸音材が提案されている。
例えば、特許文献1には、密度0.013〜0.05g/cm3 のメルトブローン極細繊維不織布を用いた防音シート材料が提案されている。しかし、このシート材料は厚みの変形が生じ易く、取扱性に劣り、さらに耐熱性が不足するなどの問題がある。
特許文献2には、融点差を有する2種以上の混綿繊維で構成された、難燃性を有する吸音材が提案されている。しかし、この吸音材は、難燃性、リサイクル性に優れるが、0.01〜0.1g/cm3 の密度で厚み変形が生じ易く、取扱性などに問題がある。
特許文献3には、繊維径が6μm以下の極細繊維を含有し、目付け30〜200g/m2 の不織布と、繊維径が7〜40μmで目付け50〜2000g/m2 の短繊維不織布とを流体交絡法またはニードルパンチ法により一体化した吸音材が提案されている。しかし、このような方法で一体化処理を行うと極細繊維が切断され、穴が開いた構成となり、吸音性、形態安定性が低下し易いという欠点がある。
特許文献4には、平均繊維径10μm以下、平均みかけ密度0.1〜0.4g/cm3 および目付け5〜30g/m2 のメルトブローン不織布と、みかけ密度0.01〜0.10g/cm3 および目付け50〜2000g/m2 の繊維集合体とからなる吸音材が提案されている。しかし、この吸音材は、メルトブローン不織布面の強度が低く、形態安定性、取扱性などに問題がある。
さらに特許文献5には、繊維径6μm以下の極細繊維を含み、目付け20〜100g/m2 のメルトブローン不織布と、繊維径7〜40μm、目付け50〜2000g/m2 、厚み5〜30mm基布入り短繊維不織布とが積層一体化された吸音材が提案されている。しかし、この吸音材でもメルトブローン不織布面の強度が低く、形態安定性、取扱性、価格などに問題があった。
このように従来技術では、メルトブロー繊維を吸音材に用いる場合、充分な吸音効果を得るために大量の微細繊維が必要であり、通常その目付を50〜200g/m2 とする必要があり、低目付でも吸音効果に優れ、かつ薄くて軽量な吸音材が望まれていた。
【特許文献1】特開平06−212546号公報
【特許文献2】特開平10−268871号公報
【特許文献3】特開2001−279567号公報
【特許文献4】特開2002−69824号公報
【特許文献5】特開2002−161464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、中程度の領域周波数の吸音性に優れ、薄く、軽量で、形態安定性に優れ、自動車内装用などに好適な吸音性積層体およびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の連続長繊維層とメルトブロー微細繊維層を積層して得られる、特定の密度、目付、通気度を有する緻密構造の積層不織布とを表面材とし、これに粗な構造の裏面材をホットメルト接着剤等により接合することにより、少量のメルトブロー微細繊維の使用でも大幅な吸音性の向上が図れることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
【0005】
(1)緻密な構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合してなる吸音性積層体であって、該表面材が、平均繊維径10〜3 0μmの連続長繊維層と、平均繊維径0.5〜7μm、目付1〜30g/m2 のメルトブロー微細繊維層とを積層し、熱圧着により一体化した積層不織布で、該積層不織布の目付けが20〜250g/m2 、嵩密度が0.1〜0.8g/cm3 および通気度が100cc/cm2 /sec以下であり、前記裏面材が、平均繊維径10〜30μmおよび嵩密度0.005〜0.15g/cm3 である合成繊維不織布であり、かつ前記吸音性積層体の厚みが5〜50mm、目付けが100〜1000g/m2 および周波数4000Hzの吸音率が50%以上であることを特徴とする吸音性積層体。
(2)前記表面材の積層不織布が、ポリエステル系繊維またはポリエステル系共重合体繊維からなることを特徴とする(1)に記載の吸音性積層体。
(3)前記メルトブロー微細繊維の溶液粘度(ηsp/c)が0.2〜0.8であることを特徴とする(2)に記載の吸音性積層体。
(4)前記メルトブロー微細繊維層の目付が3〜20g/m2 であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の吸音性積層体。
(5)前記裏面材の合成繊維不織布が、ポリエステル系短繊維またはポリエステル系共重 合短繊維からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の吸音性積層体。
(6)前記裏面材の合成繊維不織布が、熱融着繊維および/または熱可塑性樹脂を5〜50重量%含有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の吸音性積層体。
(7)平均繊維径10〜3 0μmの連続長繊維層と、平均繊維径0.5〜7μm、目付1〜30g/m2 のメルトブロー微細繊維層とを熱圧着により一体化した、目付けが20〜250g/m2 、嵩密度が0.1〜0.8g/cm3 および通気度が100cc/cm2 /sec以下である積層不織布からなる表面材と、平均繊維径が10〜30μmおよび嵩密度が0.005〜0.15g/cm3 である合成繊維不織布からなる裏面材とを接合して吸音性積層体を製造するに際し、該表面材と裏面材の間に接着剤または熱融着繊維を介在させて熱処理することを特徴とする吸音性積層体の製造法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸音性積層体によれば、表面材が、連続長繊維層とメルトブロー微細繊維層の積層体からなり、メルトブロー微細繊維層が連続長繊維層の隙間を埋めるように積層されるため、メルトブロー微細繊維の使用量が少なくしても緻密な構造を確保でき、薄くて軽量な吸音材を得ることができる。また該表面材が、極少量の通気性を有し、繊維構造的には小さな繊維空隙を有する緻密な構造の積層不織布であり、進入する音の波長が細孔中の摩擦抵抗で小さくなり、繊維空隙を進入するため、優れた吸音性を発現する。さらに裏面材が、大きな空隙を有する粗な構成からなる不織布であり、表面材から進入した音波を受け、粗な組織で繊維自由度の大きな繊維単糸が振動し、音エネルギーを吸収して効率よく熱エネルギーに変換させることができるため、優れた吸音効果を発現することができる。
また表面材と裏面材をホットメルト接着剤等により接合することにより、特定の厚みや目付等を有する吸音性積層体を得ることができるため、極細繊維の切断や貫通孔の形成等がなく、優れた吸音効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、表面材には、連続長繊維層とメルトブロー微細繊維層とを熱圧着により積層一体化した積層不織布が用いられる。
本発明に用いられる連続長繊維層の形成には、延伸により充分な強力を発現させるため、紡糸速度等を適切な設定するのが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、紡糸速度3000m/min以上で延伸紡糸するのが好ましい。連続長繊維ウェブは、スパンボンドのような紡糸方法により、摩擦帯電やコロナ帯電などにより糸条を均一に分散させる公知の方法で作製するのが好ましい。この方法によれば、未結合状態のウェブを生成しやすく、かつ経済性に優れる。また連続長繊維ウェブは単層でも複数を重ねた層でもよい。
連続長繊維の平均繊維径は、カバーリング性、強度、紡糸安定性等の点から、10〜3 0μm、好ましくは12〜25μmの範囲である。
【0008】
本発明に用いられるメルトブロー微細繊維層の平均繊維径は0.5〜7μm、好ましくは1〜5μmである。メルトブロー法で0.5μm未満の繊維径に紡糸するには過酷な条件が必要となり、安定した繊維が得られず、また7μmを超えると連続長繊維の繊径に近くなり、連続長繊維層の隙間に微細繊維として入り込んで該隙間を埋める作用が得られず、緻密な構造が得られない。またメルトブロー微細繊維層の目付は、低目付で充分な吸音性を得る点から1〜30g/m2 、好ましくは2〜25g/m2 、より好ましくは3〜20g/m2 の範囲とされる。
【0009】
連続長繊維層およびメルトブロー微細繊維層の繊維素材には、例えば、ポリエステルまたはその共重合体もしくはこれらの混合物などの熱可塑性樹脂、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またイソフタル酸やフタル酸等が重合されたものが用いられる。PETまたはその共重合体の場合には、メルトブロー微細繊維の溶液粘度(ηsp/c)は0.2〜0.8が好ましく、より好ましくは0.2〜0.6の範囲である。またPETのメルトブロー微細繊維では、他の合繊に比較して結晶化が遅く、低結晶の流動性のある状態で連続長繊維層の隙間に侵入でき、その結果、連続長繊維層の繊維間隙を埋めて緻密な構造が得られる。また連続長繊維およびメルトブロー微細繊維の繊維断面の形状には特に限定はないが、偏平糸などの異型断面糸が小さな空隙を有する高密度構造を得る点から好ましい。
【0010】
また熱可塑性樹脂として、ポリアミドまたはその共重合体もしくはこれらの混合物であってもよく、またポリオレフィンまたはその共重合体もしくはこれらの混合物であってもよい。例えば、ポリエチレン、ホモポリプロピレン、α−オレフィン、エチレンなどをランダム共重合したポリプロピレンなどであってもよい。またポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂、オレフィン類の樹脂を混合した樹脂からなってもよい。特にポリエステル素材の使用により、優れた強力の発現とともに、良好な耐候性や耐熱性等の特徴が得られる。また本発明の目的を阻害しない範囲で、着色剤、酸化チタン、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等の任意の添加剤が添加されてもよい。
【0011】
本発明において、連続長繊維層とメルトブロー微細繊維層とを積層する方法には特に限定はなく、公知の方法で行うことができる。例えば、連続長繊維ウエブ(S)と、メルトブロー微細繊維ウエブ(M)とを未結合状態で積層する方法、または連続長繊維不織布とメルトブロー微細繊維不織布を形成した後、積層する方法が挙げられる。積層形態にも特に限定はなく、SM型、SMS型の構造が挙げられるが、特に連続長繊維ウエブ(S)とメルトブロー微細繊維ウエブ(M)を未結合状態で積層する場合には、連続長繊維層の上下層の間にメルトブロー微細繊維層を形成したSMS型とするのが好ましい。このような構成により、微細繊維を連続長繊維層の隙間に効率よく埋め込むませて緻密な構造を容易に形成でき、かつメルトブロー微細繊維の少ない使用で優れた吸音効果が得られる。
【0012】
上記積層不織布は熱圧着により一体化して得られる。該熱圧着は、部分熱圧着率5〜30%で行うのが好ましいが、後述する通気度が得られるように全面に熱圧着してもよい。部分熱圧着の柄に特に制限はなく、メルトブロー微細繊維層を傷めるような大きな押し込み量をつけたエンボス等の使用は避けるのが好ましい。
部分熱圧着率が5%未満では充分な布強力が得られず、30%超えると、非部分圧着部分が少なくなり、音の進入できる空隙が少なくなる。部分熱圧着は、基本的には、凹凸金属エンボスロール/金属フラットロールで1回通しで行われるが、金属エンボス/ゴム、、ペーパー、コットンロールなどで2回通しし、両面を熱圧着してもよい。
また部分熱圧着した後、一対の金属フラットロール/金属フラットロール、金属フラットロール/ペーパーロール、金属フラットロール/コットンロール、金属フラットロール/樹脂ロールなどで2段に分け、全面を熱圧着することが緻密化の点から好ましい。
【0013】
熱圧着の条件としては、連続長繊維の樹脂融点から15〜80℃程度低い温度範囲で、線圧100〜1000N/cmの範囲で選定するのが好ましい。圧力や温度が低いと連続長繊維間の接合やメルトブロー繊維の軟化による連続長繊維間隙への進入および接合が生じないために容易に層間が剥離したり、連続長繊維繊維が綿状に剥離し、十分な布強度が得られない場合がある。容易に層間剥離することがなく、強度や取扱性を考慮すると、学振摩耗試験機で荷重250gで100回磨耗したときの毛羽指数が毛羽立ちの少ない3級以上となるように熱圧着条件を選択するのが好ましい。
上記の熱圧着により、メルトブロー微細繊維が、連続長繊維層の隙間に入り込み易くなり、その隙間を埋める作用が得られ、結果として、繊維隙間の微小な繊維構造が形成されると考えられる。
【0014】
本発明に用いられる積層不織布は、目付けが20〜250g/m2 、好ましくは50〜200g/m2 である。目付けが20g/m2 未満では、不織布の均一性および緻密性が低下し、小さな空隙が得られない。一方、250g/m2 を超えると、小さな空隙の緻密構造が得られるが、剛性が高くなり、裁断性、取扱性が低下し、さらにコスト高となる。
また積層不織布の嵩密度は0.1〜0.8g/cm3 、好ましくは0.15〜0.75g/cm3 である。嵩密度が大きいと、繊維の充填密度が高くなり、小さな空隙の緻密構造となる。従って、嵩密度が0.1g/cm3 未満では、不織布の緻密性が低下し、音の減少する効果が低下する。一方、0.8g/cm3 を超えると、不織布の緻密性が高過ぎ、空隙が少なくなり、加工性が低下する。
さらに積層不織布の通気性は100cc/cm2 /sec以下、好ましくは、70cc/cm2 /sec以下、より好ましくは0.5〜50cc/cm2 /secである。100cc/cm2 /secを超えると進入する音の波長を小さくすることができず、音エネルギーの減少効果が得られない。
【0015】
本発明には上記した積層不織布に積層する裏面材が用いられる。
本発明に用いられる裏面材は、比較的大きい空隙を有する粗な構造の合成繊維不織布で構成され、上記積層不織布から伝達された音波により該不織布の繊維単糸が振動し、熱エネルギーに変えられ、吸音性の効果を発揮する。該合成繊維不織布の作用効果を得るために、その平均繊維径は10〜30μm、好ましくは12〜25μmμm、嵩密度は0.005〜0.15g/cm3 、好ましくは0.01〜0.12g/cm3 であることが必要である。また裏面材としての厚みは4〜45mmが好ましく、より好ましくは5〜40mmであり、また、目付けは80〜800g/m2 が好ましく、より好ましくは100〜600g/m2 である。
【0016】
合成繊維不織布を構成する繊維には特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどの組み合わせからなる芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの繊維などを用いることができる。これらの繊維は単独または2種以上混合して用いてよく、また偏平糸などの異型断面繊維、捲縮繊維、割繊繊維などを混合または積層して用いることができる。特に断熱性、難燃性などからはポリエステル系繊維が好ましい。
【0017】
合成繊維不織布は、短繊維または短繊維と長繊維を積層して公知のニードルパンチ法などで交絡して得られる。また不織布の繊維相互の結合を行って剛性を付与させるために、例えば、熱融着性繊維、難燃性繊維または水分散性の合成樹脂接着剤を5〜50重量%、好ましくは7〜30重量%含有させるのが好ましい。また難燃性などの機能を付与するために、アクリル系難燃繊維、エステル系難燃繊維などの難燃繊維、またはリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、チオ尿素系難燃剤を5〜50重量%、好ましくは7〜30重量%含有させるのが好ましい。
熱融着性繊維としては、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合エステルなどで、芯がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの複合繊維、低融点の共重合エステル繊維などが挙げられる。水分散性の合成樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、合成ゴム系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂などを単独でまたは難燃性樹脂と混合して用いられる。
【0018】
本発明の吸音性積層体は、上記した緻密構造の表面材と粗な構造の裏面材を接合して得られる。表面材と裏面材の接合は、例えば、熱融着繊維を接合面に介在させ、熱処理する方法、ホットメルト系樹脂や接着剤を塗布した後、熱処理する方法、ホットメルト系樹脂をカーテンスプレー方式で塗布する方法などにより行うことができる。
【0019】
本発明の吸音性積層体は、厚みが5〜50mm、好ましくは8〜40mm、より好ましくは10〜30mmであり、目付けが100〜1000g/m2 、好ましくは120〜800g/m2 、より好ましくは140〜600g/m2 であり、また周波数4000Hzの吸音率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
中程度の周波数領域(2000〜4000Hz)における吸音率は、吸音材の厚みを大きくし、表面材の嵩密度を増加させることによって向上させることができるが、一方においてコスト高、嵩高になるなどの問題を生じるが、本発明では、吸音材の厚みおよび目付を上記範囲とすることにより、周波数4000Hzの吸音率を50%以上に確保しつつ、巻取加工性、裁断加工性、重ね梱包や運搬時等の取扱性および経済性に優れた吸音性積層体を得ることができる。従って、本発明の吸音性積層体は、取り扱い時の端部や全体の厚みのへたりが少なく、施工後において安定した吸音性を得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、各特性値は、下記の方法により測定した。
1)目付け(g/m2 ) :JIS−1913に準ずる。
2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
3)嵩密度(g/cm3 ):(目付け)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求める。
4)厚み(mm) :JIS−L−1913−B法に準ずる。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、そ平均値で示す。ただし、表面材の厚みは、荷重20kPaで測定した。
5)吸音性(%) :JIS−1405に準じ、垂直の入射法の測定機で周波数2000〜4000HZを測定する。
6)通気性 :JIS−L−1906フラジュール形法で測定する。
【0021】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
連続長繊維は、ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77)を用い、公知のスパンボンド法により、紡糸温度300℃で表1に示すそれぞれ未結合ウェブ(S1 )を捕集ネット上に形成し、該連続長繊維ウエブ(S1 )上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50)を用い、紡糸温度300℃、加熱エアは320℃で1000Nm3 /hrで糸条を直接に噴出させ、表1に示すメルトブロー微細繊維ウエブ(M)を形成した。
メルトブローノズルから連続長繊維ウェブまでの距離は100mmとし、メルトブロー直下の吸引風速を約7m/secに設定した。この方法より、メルトブロー微細繊維が連続長繊維集合体へ進入した積層体を得ることができた。
さらにメルトブロー微細繊維ウエブ(M)上に同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウエブ(S2 )を積層した積層ウエブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃、線圧300N/cmで部分熱圧着し、表1に示す(実施例1、3、4、7〜10)嵩密度の表面材用不織布を得た。さらに一対の金属フラットロール/金属フラットロールで温度235℃、線圧500N/cmでカレンダー加工して表1に示す(実施例2、5、6)嵩密度の表面材用不織布を得た。ただし、実施例10は、連続長繊維とメルトブロー微細繊維との2層(S1 /M)を積層し、部分熱圧着し、表1に示す嵩密度の表面材用不織布を得た。
【0022】
裏面材には、実施例1〜5、8〜10では、ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径18μm、繊維長51mm)30%を公知のカード法でウエブを形成し、ニードルパンチ加工で交絡したものを用いた。また実施例6、7では、ポリエステル短繊維(繊維径12μm、25μm、繊維長51mm)不織布に芳香族リン酸エステル系水分散性難燃剤20%含有させた水溶性アクリル樹脂をスプレー方式で20重量%付着させたものを用いた。
次いで、上記表面材と裏面材を共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/m2 塗布して加熱処理で接合した。
また、比較例1では厚みの薄い表面材のみとし、比較例2では粗の構成からなる裏面材のみとし、さらに比較例3ではメルトブロー微細繊維ウエブ(M)を積層させない表面材と裏面材とを接合したものを用いた。
得られた吸音性積層体の特性を表1に示したが、本発明の吸音性積層体は、メルトブロー微細繊維の割合が少ないにもかかわらず、いずれも吸音性に優れたものであった。これに対し、比較例1〜3では吸音性の低いものであった。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の吸音性積層体は、少ないメルトブロー微細繊維の使用で優れた吸音性が得られるため、低コストであり、また取扱時の厚み変化が少なく、断裁加工が容易で、設置後の吸音性が変化し難いため、自動車内装用、建築材料などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密な構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合してなる吸音性積層体であって、該表面材が、平均繊維径10〜3 0μmの連続長繊維層と、平均繊維径0.5〜7μm、目付1〜30g/m2 のメルトブロー微細繊維層とを積層し、熱圧着により一体化した積層不織布で、該積層不織布の目付けが20〜250g/m2 、嵩密度が0.1〜0.8g/cm3 および通気度が100cc/cm2 /sec以下であり、前記裏面材が、平均繊維径10〜30μmおよび嵩密度0.005〜0.15g/cm3 である合成繊維不織布であり、かつ前記吸音性積層体の厚みが5〜50mm、目付けが100〜1000g/m2 および周波数4000Hzの吸音率が50%以上であることを特徴とする吸音性積層体。
【請求項2】
前記表面材の積層不織布が、ポリエステル系繊維またはポリエステル系共重合体繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の吸音性積層体。
【請求項3】
前記メルトブロー微細繊維の溶液粘度(ηsp/c)が0.2〜0.8であることを特徴とする請求項2に記載の吸音性積層体。
【請求項4】
前記メルトブロー微細繊維層の目付が3〜20g/m2 であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸音性積層体。
【請求項5】
前記裏面材の合成繊維不織布が、ポリエステル系短繊維またはポリエステル系共重合短繊維からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸音性積層体。
【請求項6】
前記裏面材の合成繊維不織布が、熱融着繊維および/または熱可塑性樹脂を5〜50重量%含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸音性積層体。
【請求項7】
平均繊維径10〜3 0μmの連続長繊維層と、平均繊維径0.5〜7μm、目付1〜30g/m2 のメルトブロー微細繊維層とを熱圧着により一体化した、目付けが20〜250g/m2 、嵩密度が0.1〜0.8g/cm3 および通気度が100cc/cm2 /sec以下である積層不織布からなる表面材と、平均繊維径が10〜30μmおよび嵩密度が0.005〜0.15g/cm3 である合成繊維不織布からなる裏面材とを接合して吸音性積層体を製造するに際し、該表面材と裏面材の間に接着剤または熱融着繊維を介在させて熱処理することを特徴とする吸音性積層体の製造法。