説明

吸音性繊維シート

【課題】本発明の課題は、軽量かつ吸音性に優れた繊維成形物を与える表面材料を提供することを課題とする。
【解決手段】繊維シートの通気抵抗を0.08〜3.00kPa・s/mに設定した表面材料を提供する。このような繊維シートを繊維基材表面に積層すると、該基材の目付量が少なくても良好な吸音性を有する積層材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車吸音材の繊維基材の表面に積層される表面材料および該表面材料を表面に積層した繊維基材からなる成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の吸音材や建築物の壁、床、天井等の吸音材として、繊維シートあるいは繊維マットが使用されている。該繊維シートあるいは繊維マットの表面には、意匠性、平滑性の付与あるいは毛羽立ちやほぐれ防止の点から不織布からなる表面材料が積層されることが多い。
上記吸音材は特に自動車に使用される場合には軽量であることが要求される。しかしながら軽量化のために該繊維シートあるいは繊維マットの目付けを減らせば吸音特性は当然悪化する。
そこで従来、上記繊維シートまたは繊維マットに合成樹脂発泡体シートを積層する構成が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−19930
【特許文献2】特開2003−81028
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂発泡体シートは良好な吸音性を有するが、剛性が不足しているので、繊維シートまたは繊維マットに該合成樹脂発泡体シートを積層したものを成形した場合、成形形状安定性が充分でなく、成形物は取り扱いにくいと云う問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、通気抵抗が0.08〜3.00kPa・s/mである繊維シートからなることを特徴とする吸音性表面材料を提供するものである。この場合、該繊維シートにはポリリン酸アンモニウムおよび/または膨張黒鉛が含有されていることが望ましく、更に該繊維シートには融点180℃以下の低融点繊維が混合されていることが望ましい。更に該繊維シートは合成樹脂バインダーおよび/またはニードリングによって繊維が結着および/または結合されている不織布であることが望ましい。この場合、該合成樹脂バインダーはフェノール系樹脂であることが望ましく、また該フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されていることが望ましい。
本発明では更に、上記吸音性表面材料を繊維基材の片面または両面に重合した積層材を所定形状に成形したことを特徴とする成形物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
請求項1の発明
通気抵抗が0.08〜3.00kPa・s/mである繊維シートからなることを特徴とする吸音性表面材料を繊維シートあるいは繊維マットである繊維基材に積層すると、該繊維基材の目付けを減らしても、特に中周波数から高周波数領域での良好な吸音性が確保される。
【0007】
請求項2の発明
該繊維シートにポリリン酸アンモニウムおよび/または膨張黒鉛が含有されていると難燃性に優れた表面材料が得られる。
【0008】
請求項3の発明
該繊維シートに融点180℃以下の低融点繊維が混合されていると、該繊維シートを加熱して該低融点繊維を軟化させ、軟化した該低融点繊維で繊維を結着することによって、剛性を向上させることが出来る。
【0009】
請求項4の発明
該繊維シートは合成樹脂バインダーおよび/またはニードリングによって繊維が結着および/または結合されている不織布であると、高剛性の表面材料が提供される。
【0010】
請求項5の発明
該合成樹脂バインダーはフェノール系樹脂であると、更に高剛性の表面材料が提供される。
【0011】
請求項6の発明
該フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されていると、該フェノール系樹脂水溶液は広いpH範囲で安定になるから、種々の硬化剤や添加剤が添加出来る。
【0012】
請求項7の発明
上記吸音性表面材料を繊維基材の片面または両面に重合した積層材を所定形状に成形したことを特徴とする成形物は、上記吸音性表面材によって吸音性が向上せしめられており、繊維基材の目付け量を減らすことが出来る。
【0013】
〔効果〕
したがって、本発明では高剛性かつ吸音性に優れた軽量な吸音材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔繊維〕
本発明において使用される繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ、蚕糸、キワタ、ガマ繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維、アバカ繊維等の天然繊維、とうもろこし等のデンプンから得られる乳酸を原料とした生分解性繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、これらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維等である。これらの繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。
【0015】
更に本発明にあっては、上記繊維の一部または全部に融点が180℃以下である低融点繊維を使用してもよい。該低融点繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点繊維は、単独あるいは2種以上組合わせて使用される。
【0016】
更に好ましい低融点繊維としては、芯成分が通常繊維であり、鞘成分が上記低融点繊維の材料である低融点樹脂である芯鞘型繊維がある。該芯鞘型繊維は芯成分が通常繊維であるから高剛性でかつ耐熱性を有する繊維シートを与える。
該低融点繊維の繊度は、0.1dtex〜60dtexの範囲である。
上記低融点繊維は通常上記繊維に1〜50質量%混合される。
【0017】
〔繊維シートの製造〕
本発明の繊維シートは、上記繊維が熱可塑性繊維の場合には、該繊維の材料である熱可塑性樹脂を溶融し、ノズルから糸状に吐出させ絡合融着せしめるスパンボンド法、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法、あるいは繊維のウェブのシートあるいはマットに低融点繊維が混合されている場合には、該シートあるいはマットを加熱して該低融点繊維を軟化せしめることによって繊維を結着する方法、該シートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合して結着する方法、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で合成樹脂バインダーを含浸して結着する方法、繊維を編織する方法等によって製造される。
【0018】
〔合成樹脂バインダー〕
上記繊維のバインダーとして使用される合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の熱可塑性合成樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等のような熱硬化性合成樹脂等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体がしようされてもよい。上記合成樹脂は単独あるいは2種以上併用してもよく、通常粉末、エマルジョン、ラテックス、水溶液、有機溶剤溶液等として使用される。
【0019】
本発明で使用される合成樹脂バインダーとして望ましいのは、フェノール系樹脂である。以下、本発明で使用するフェノール系樹脂について説明する。
フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0020】
〔フェノール系化合物〕
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0021】
〔一価フェノール〕
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0022】
〔多価フェノール〕
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0023】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
【0024】
〔ホルムアルデヒド供与体〕
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0025】
〔フェノール系樹脂の製造〕
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常粉末で提供される。
本発明に使用されるフェノール系樹脂にあっては、まず上記フェノール系化合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて初期縮合物とし、該初期縮合物を繊維シートに付着させた後、硬化触媒および/または加熱によって樹脂化する。
上記縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0026】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。 上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0027】
例えば、上記(a) 一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0028】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0029】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0030】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0031】
〔フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0032】
〔スルホメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0033】
〔スルフィメチル化剤〕
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0034】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0035】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0036】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0037】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0038】
本発明で使用する合成樹脂バインダーは液状、溶液、あるいはエマルジョン等の形で提供されるが、該合成樹脂バインダーには、更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂等の難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタール酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0039】
上記繊維シートに上記合成樹脂バインダーを含浸するには、通常液状合成樹脂あるいは合成樹脂溶液あるいは合成樹脂エマルジョンである合成樹脂バインダーに該繊維シートを浸漬するか、あるいは液状合成樹脂あるいは合成樹脂溶液を該繊維シートにスプレーするか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
合成樹脂バインダーを含浸または混合した繊維シート中の合成樹脂量を調節するには、合成樹脂バインダー含浸または混合後、繊維シートを絞りロールやプレス盤を使用して絞る。該繊維シートに低融点繊維が含まれている場合には、該繊維シートを加熱して低融点繊維を軟化させ、繊維を該軟化物によって結着しておくことが望ましい。そうすると該繊維シートは強度および剛性が更に向上し、合成樹脂含浸の際の作業性が向上し、また絞り後の厚みの復元も顕著になる。
【0040】
上記合成樹脂バインダーがノボラック型フェノール系樹脂の場合には、一般に粉末状の初期縮合物として繊維に混合されそしてシート化され、また初期縮合物の水溶液(初期縮合物液)の場合には該繊維シートに含浸あるいは塗布される。該初期縮合物液は、所望により、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、トリメチルノニルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アビエチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の上記グリコール類のエステル類やその誘導体、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジエチルセロルブ、ジエチルカルビトール、エチルラクテート、イソプロピルラクテート、ジグリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド等の水溶性有機溶剤が使用されてもよい。
【0041】
該繊維シートに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合した後、該繊維シートを乾燥する。該繊維シートに含まれる合成樹脂バインダーの合成樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、該樹脂をB状態にすると長期保存が可能になり、かつ低温短時間の成形が可能になる。
【0042】
〔難燃性の付与〕
本発明の繊維シートに難燃性を付与するには、難燃剤としてポリリン酸アンモニウムおよび/または膨張黒鉛を使用する。
【0043】
本発明に使用されるポリリン酸アンモニウムは水に難溶あるいは不溶性のものである。この種のポリリン酸アンモニウムとしては、重合度が10以上40以下のものが望ましい。こゝにポリリン酸アンモニウムの重合度nとは、下記の式から算出されたものである。
【数1】

こゝにPmolとはポリリン酸アンモニウムに含まれるリンのモル数、Nmolとは窒素のモル数であり、PmolおよびNmolは次式から算出される。
【数2】

【数3】

P含有量の分析は、例えばICP発光分光分析法、N含有量の分析は、例えばCHN計法によって行われる。
重合度が10以上であれば、ポリリン酸アンモニウムは殆ど水に不溶となる。しかし重合度が40を越えるとポリリン酸アンモニウムを水あるいは水性分散媒に分散させた時に分散液の粘度が異常に増大するので、繊維シート等に塗布あるいは含浸させる場合に均一な塗布あるいは含浸が困難となり、塗布量あるいは含浸量にむらが出来、結果として充分な難燃性が得られなくなる。
【0044】
本発明で使用される膨張黒鉛は、天然黒鉛を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸に浸漬し、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の酸化剤を添加して処理することによって得られるものであり、膨張開始温度が250℃〜300℃程度である。該膨張黒鉛の膨張容積は30〜300ml/g程度であり、粒径は300〜30メッシュ程度である。
【0045】
上記ポリリン酸アンモニウム、膨張黒鉛または熱膨張性粒体は、通常該繊維をシートまたはマット化する前に繊維に混合されるか、あるいは上記シートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸、あるいは塗布、あるいは繊維に混合する場合には、該合成樹脂バインダーに混合しておいてもよい。混合比率は任意でよいが、通常繊維に対して該ポリリン酸アンモニウムは0.5〜50質量%、該膨張黒鉛を使用する場合には0.5〜50質量%、該熱膨張性粒体を使用する場合には該粒体を0.1〜50質量%添加する。
【0046】
上記合成樹脂バインダーが水溶液である場合、該水溶液には水溶性樹脂を溶解させておくことが望ましい。上記水溶性樹脂としては例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース等が例示されるが、更にアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸との共重合体あるいは該共重合体の微架橋物等のアルカリ可溶性樹脂が使用されてもよい。上記共重合体や微架橋共重合体は通常エマルジョンとして提供される。
【0047】
上記合成樹脂水溶液に上記水溶性樹脂を添加溶解させておくと、その増粘効果あるいは分散効果によって該水溶液に分散させたポリリン酸アンモニウムや膨張黒鉛が沈降しにくゝなり、均一な含浸液が得られる。更に該水溶性樹脂はポリリン酸アンモニウムや膨張黒鉛の繊維に対する付着力を高め、該繊維シートから該ポリリン酸アンモニウムや該膨張黒鉛が離脱するのを有効に防止する。
上記水溶性樹脂は通常上記水溶液中に固形分として0.1〜20質量%程度使用される。
【0048】
更に該ポリリン酸アンモニウムおよび/または該膨張黒鉛の該繊維シートへの添加は、該合成樹脂バインダーやポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性樹脂の水溶液や、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルと、アクリル酸および/またはメタクリル酸との共重合体あるいは該共重合体の微架橋物等のアルカリ可溶性樹脂等のエマルジョンに該ポリリン酸アンモニウムおよび/または該膨張黒鉛を分散させた分散液を調製し、これらを該繊維シートへ塗布、含浸しても良い。
【0049】
該ポリリン酸アンモニウムおよび/または該膨張黒鉛の合成樹脂バインダーのエマルジョン、水溶液への分散は、ホモミキサー、超音波乳化装置等を使用することが望ましい。
超音波乳化装置を使用した場合、該ポリリン酸アンモニウムおよび/または該膨張黒鉛は上記水溶液あるいは上記エマルジョン中に均一に分散される。とりわけ該膨張黒鉛は超音波によって細分化され、このように細分化された膨張黒鉛を均一に分散した合成樹脂バインダーのエマルジョンあるいは水溶液を繊維シートに含浸させると、膨張黒鉛は繊維シートの内部にまで浸透し易くなり、繊維シートの難燃性を向上せしめる。
【0050】
本発明の繊維シートの通気抵抗は、0.08〜3.00kPa・s/mに設定する。
ここで通気抵抗R(Pa・s/m)とは通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗Rの測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
(式)R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m3/m2・s)である。なお通気抵抗R(Pa・s/m)は通気度C(m/Pa・s)とC=1/Rの関係にある。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
通気抵抗が0.08〜3.00kPa・s/mの範囲にある繊維シートからなる表面材料は吸音性に優れる。
更に本発明の繊維シートの目付けは、通常15〜200g/mに設定される。
【0051】
〔繊維基材〕
本発明の表面材料が片面または両面に積層される繊維基材としては、上記表面材料である繊維シートと同一材料でかつ同一の製造方法によって製造されたものが使用される。但し該繊維基材の目付けは通常100〜2000g/mに設定される。本発明の表面材料は優れた吸音性を有するので、該繊維基材の目付は軽量なもので充分である。
【0052】
〔積層材〕
本発明の繊維シートと上記繊維基材との接着は、ホットメルトシート、ホットメルト接着剤粉末を介して行なうか、該繊維シートあるいは該繊維基材に合成樹脂バインダーが塗布あるいは含浸されている場合には該合成樹脂バインダーにより接着させてもよい。
該ホットメルトシートやホットメルト接着剤粉末は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂の変性物を含む)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体等の1種または2種以上の混合物等の低融点樹脂を材料とする。
ホットメルトシートを接着に使用する場合には、例えば、Tダイより押し出されたホットメルトシートを本発明の繊維シートにラミネートし、更に該繊維シートを該繊維基材に積層して積層材とする。
【0053】
上記積層材の通気性を確保するためには、該ホットメルトシートは多孔性であることが望ましい。該ホットメルトシートを多孔性にするには、該ホットメルトシートに予め多孔を設けるか、あるいは該難燃性繊維シートに該ホットメルトシートをラミネートしてからニードル等によって多孔を設けるか、あるいは該繊維シートに例えば、Tダイより押出された加熱軟化状態のホットメルトシートをラミネートし、押圧すると該フィルムに微細な多孔が形成される。該多孔は、繊維シート表面の毛羽によって形成されるものである。この方法ではホットメルトシートを予め多孔にする工程を必要としないし、また微細な多孔は製品の吸音性にとって良い影響を及ぼす。上記ホットメルト接着剤粉末を接着に使用する場合には、積層物の通気性は確保される。
上記積層材を所定形状に成形して得られる成形物の通気抵抗は0.1〜100kPa・s/mであることが望ましい。通気抵抗が0.1〜100kPa・s/mの範囲にある成形物は吸音性に優れる。
【0054】
〔積層材の成形〕
本発明の積層材は平板状あるいは所定形状に成形されるが、通常成形にはホットプレス成形が適用される。該繊維シートおよび/または繊維基材に熱硬化性樹脂バインダーが含浸されている場合には、該ホットプレス温度は該熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上に設定され、該繊維シートおよび/または繊維基材に低融点繊維や熱可塑性樹脂バインダーが含浸されている場合には、ホットプレス温度は該低融点繊維や該熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に設定される。上記積層材において表面材料である繊維シートおよび/または上記繊維基材に膨張黒鉛が付着されている場合には、ホットプレス温度は該膨張黒鉛の膨張開始温度以下に設定され、また該繊維シートおよび/または上記繊維基材に熱膨張性粒体が含有されている場合には、該熱膨張性粒体の加熱膨張は上記プレス成形時に該積層材の厚みを規制しつゝ行われる。該積層材を厚みを規制しつゝ含有する該熱膨張性粒体の膨張温度以上に加熱すると、該熱膨張性粒体が膨張する。該積層材は上記したように厚みを規制されているから、繊維シートや繊維基材において該粒体の膨張によって周りの繊維は圧縮され、繊維部分の密度は高くなって剛性が向上する。しかし繊維シートや繊維基材全体としては、空隙率は変わらず、したがって重量も変わらない。本発明の積層材はホットプレスにより平板状に成形した後、熱圧プレスにより所定形状に成形されてもよく、また低融点繊維や熱可塑性樹脂バインダーが含まれている場合には、加熱して該低融点繊維や熱可塑性樹脂バインダーを軟化させてからコールドプレスによって所定形状に成形してもよい。本発明の積層材においては繊維シートあるいは繊維基材は、それぞれ複数枚重ねて使用してもよい。本発明の成形物は、例えば、自動車の天井材、ダッシュサイレンサ、フードサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、フロアマット、ダッシュボード、ドアトリアム等の内装材の基材、あるいは基材に積層する補強材あるいは、吸音材、断熱材、建築材料等として有用である。
本発明の成形物を製造するには、先ず繊維基材を成形し、次いで表面材料である繊維シートを接着してもよい。
【0055】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお本発明は以下に示される実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
フェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(60質量%固形分の水溶液)40質量部、水60質量部からなる樹脂水溶液を調整し、該樹脂水溶液にスパンボンド法によるポリエステル長繊維不織布(目付量30g/m)を浸積し、該不織布に該樹脂水溶液を固形分として30質量%の含浸量となるように含浸させた後、該不織布の裏面にアクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)40質量部と平均重合度n=30のポリリン酸アンモニウム(粒子径:50〜75μm)20質量部およびポリビニルアルコール(5質量%固形分の水溶液)40質量部からなる混合分散液をスプレーにて固形分として20g/mの塗布量で塗布し、120℃の乾燥機にて10分間乾燥させプレキュアーすることによって繊維シート(1)を得た。
該繊維シート(1)の通気抵抗は0.08kPa・s/mであった。
【0056】
〔実施例2〕
実施例1において、該混合液の塗布量を60g/mとした以外は同様にして繊維シート(2)を得た。
該繊維シート(2)の通気抵抗は0.91kPa・s/mであった。
【0057】
〔比較例1〕
実施例1において、アクリル樹脂エマルジョン/ポリリン酸アンモニウム/ポリビニルアルコールからなる混合分散液のスプレーを省略し、同様にプレキュアーして繊維シート(イ)を得た。
該繊維シート(イ)の通気抵抗は0.02kPa・s/mであった。
【0058】
〔比較例2〕
実施例1において、該混合液の塗布量を5g/mとした他は同様にして繊維シート(ロ)を得た。
該繊維シート(ロ)の通気抵抗は0.05kPa・s/mであった。
【0059】
〔比較例3〕
実施例1において、該混合液の塗布量を200g/mとした他は同様にして繊維シート(ハ)を得た。
該繊維シート(ハ)の通気抵抗は3.50kPa・s/mであった。
【0060】
〔実施例3〕
スルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(40質量%固形分の水溶液)40質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)2質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)3質量部、および水55質量部からなる樹脂混合液を調整し、該樹脂混合液にスパンボンド法によるポリエステル長繊維不織布(目付量50g/m)を浸積し、該不織布に該樹脂混合液を固形分として40質量%の含浸量になるように含浸させた後、該不織布の裏面にアクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)40質量部と平均重合度n=40のポリリン酸アンモニウム(粒子径:50〜75μm)20質量部、膨張黒鉛(粒子径:70〜80μm、膨張開始温度:300℃、膨張率:300ml/m)5質量部および水35質量部からなる混合分散液をスプレーにて固形分として40g/mの塗布量で塗布し、120℃の乾燥機にて10分間乾燥させ、プレキュアーさせた繊維シート(3)を得た。
該繊維シート(3)の通気抵抗は1.51kPa・s/mであった。
【0061】
〔比較例4〕
実施例3において、該混合分散液を固形分として10g/mの塗布量で塗布した他は同様にして繊維シート(ニ)を得た。
該繊維シート(ニ)の通気抵抗は0.04kPa・s/mであった。
【0062】
〔実施例4〕
ポリエステル繊維80質量部、および芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘成分の融点:130℃)20質量部からなる混合繊維のウェブにニードルパンチングを施した後、片面にカレンダー加工処理を行い、目付量80g/mの不織布を作成した。次にスルフィメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)2質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)3質量部、および水65質量部からなる樹脂混合液を調整し、該樹脂混合液に該不織布を浸積し、該不織布に該樹脂混合液を固形分として30質量%の含有量になるように含浸させた後、該不織布の裏面にアクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)50質量部とリン酸エステル系難燃剤(40質量%固形分)5質量部、膨張黒鉛(粒子径:70〜80μm、膨張開始温度:300℃、膨張率:300ml/m)5質量部および水40質量部からなる混合分散液をスプレーにて固形分として80g/mの塗布量で塗布し、120℃の乾燥機にて10分間乾燥させ、プレキュアーさせた繊維シート(4)を得た。
該繊維シート(4)の通気抵抗は2.01kPa・s/mであった。
【0063】
〔比較例5〕
実施例4において、該混合分散液の塗布量を15g/mとした他は同様にして繊維シート(ホ)を得た。
該繊維シート(ホ)の通気抵抗は0.06kPa・s/mであった。
【0064】
〔比較例6〕
実施例4において、該混合分散液の塗布量を250g/mとした他は同様にして繊維シート(ヘ)を得た。
該繊維シート(ヘ)の通気抵抗は10.5kPa・s/mであった。
【0065】
〔比較例7〕
実施例4においてアクリル樹脂エマルジョン/リン酸エステル系難燃剤/膨張黒鉛/水からなる混合分散液のスプレーを省略し、同様にプレキュアーさせた繊維シート(ト)を得た。
該繊維シート(ト)の通気抵抗は0.04kPa・s/mであった。
【0066】
吸音試験結果
基材として未硬化フェノール樹脂が塗布された目付量が各々500,800,1000g/mのガラスウール原綿シートを用い、該ガラスウールシートの単体、および該ガラスウールシートの片面に上記該実施例(1)〜(4)および比較例(イ)〜(ト)による繊維シートを重合して200℃で60秒間、熱圧プレス成形で得られた厚さ10mmの成形シートを試料として用い、それぞれの垂直入射吸音率(%)を測定した結果を表1〜3に示す。
該成形シートに含まれるガラスウールシート、不織布、熱硬化樹脂、およびその他の樹脂の合計重量(成形シート重量)を表4に示す。
【0067】
表1 (基材:ガラスウールシート目付量500g/m
【表1】

【0068】
表2 (基材:ガラスウールシート目付量800g/m
【表2】

【0069】
表3 (基材:ガラスウールシート目付量1000g/m
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
〔試験結果〕
表1、表2、表3のガラスウールシート単体の結果より、ガラスウールシート単体の吸音性能はガラスウールシートの目付量により左右される事が判り、目付量が増えるにしたがい吸音性能が向上する。
表1、表2、表3の比較例1、比較例7から、ガラスウールシート単体に熱硬化性樹脂を含浸させただけの不織布の通気抵抗は0.02〜0.04kPa・s/m程度であり、該樹脂含浸シートを用いて成形してもガラスウールシート単体と比較してあまり吸音性能が向上していないことが判る。
表1、表2の実施例1〜4および表3の比較例7から、不織布の通気抵抗を好ましい範囲に調整(0.08〜3.00kPa・s/m)することにより、ガラスウールシートの目付量が500g/mの試料でも表3の比較例7のガラスウールシート試料(目付量1000g/m)と同等な吸音性能が発揮出来ることが判る。また、800g/mのガラスウールシートを用いると、該ガラスウールシートの目付量1000g/mより更に向上することが判る。
またこの場合、表4から判るように成形シートの重量がガラスウールシートの1000g/mの試料より軽くても同程度あるいはそれ以上の吸音性能が達成されることが判る。
表1、表2、表3の比較例1,2,4,5,7より、不織布の通気抵抗が0.08kPa・s/m未満の場合は、吸音性能があまり向上しないことが判る。
また、表1、表2、表3の比較例3,6より、不織布の通気抵抗が3.00kPa・s/mを超える場合は、周波数(Hz)が1000〜3000の部分は向上するがそれ以上の周波数(Hz)では極端に低下することが判る。
上記の結果から、基材上に適当に調整された通気抵抗を有する本発明の繊維シートを積層することにより、従来の成形シートの吸音性能を維持しつつ基材重量を軽くすることが出来る。
【0072】
〔実施例5〕
ケナフ繊維(繊度:12〜15dtex、繊維長:70mm)70質量%とポリエステル繊維(繊度:4.4dtex、繊維長:55mm)10質量%および低融点芯鞘型ポリエステル繊維(繊度:6.6dtex、鞘成分融点130℃、繊維長:50mm)20質量%からなる混合物を解繊機にて解繊ミキシングし、目付量350g/mのフリースを形成した後、135℃の熱風を10〜30秒間該フリースにあて該低融点芯鞘型ポリエステル繊維の鞘成分を溶融し、厚さ30mmの繊維シートを得た。
次にスルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、平均重合度n=20のポリリン酸アンモニウム10質量部、水60質量部からなる樹脂混合液を該繊維シートを該樹脂混合液に含浸させロールにて絞り、該繊維シートに目付量の50質量%になるように含浸塗布し、110℃で乾燥しプレキュアーさせた難燃性繊維シートを得た。該難燃性繊維シートを基材とし、実施例1で得られた繊維シート(1)を該難燃性繊維シート片面に重合し、200℃で70秒間所定形状に熱圧プレス成形したところ吸音性に優れ、軽量で剛性の良好な難燃性がUL94規格のV−0の成形品が得られた。
【0073】
〔実施例6〕
竹繊維(繊度:10〜12dtex、繊維長:70mm)30質量%とケナフ繊維(繊度:12〜15dtex、繊維長:70mm)40質量%と炭素繊維(繊度:6dtex、繊維長:60mm)15質量%および低融点芯鞘型ポリエステル繊維(繊度:6.6dtex、鞘成分融点130℃、繊維長:55mm)15質量%からなる混合物を解繊機にて解繊ミキシングし、目付量400g/mのフリースを形成した後、135℃の熱風を10〜30秒間該フリースにあて該低融点芯鞘型ポリエステル繊維の鞘成分を溶融し、厚さ30mmの繊維シートを得た。
次にスルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)30質量部、平均重合度n=30のポリリン酸アンモニウム10質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)2質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)2質量部、水56質量部からなる樹脂混合液を調整し、該繊維シートを該樹脂混合液に含浸させロールにて絞り、該繊維シートに目付量の40質量%になるように含浸塗布し、110℃で乾燥しプレキュアーさせた難燃性繊維シートを得た。該難燃性繊維シートを基材とし、実施例3で得られた繊維シート(3)を表皮材として両面に重合し、200℃で70秒間所定形状に熱圧プレス成形したところ吸音性に優れ、軽量で剛性の良好な難燃性がUL94規格のV−0の成形品が得られた。
【0074】
〔実施例7〕
繊維屑を再生して得られた再生繊維(繊度:5〜15dtex、繊維長:20〜70mm)50質量部とポリエステル繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:65mm)40質量部とポリプロプレン繊維(繊度:4.5dtex、繊維長:75mm)10質量%からなる混合繊維に、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミン入りノボラック型フェノール樹脂粉末(粒子径:60〜80μm)70質量部、膨張黒鉛(粒子径:70〜80μm、膨張開始温度:300℃)5質量部、平均重合度n=30のポリリン酸アンモニウム(粒子径:50〜75μm)25質量部からなる樹脂混合液を該混合繊維に対し30質量%になるように混合したフリースを乾燥炉内でプレキュアーさせ厚さ25mm、目付量500g/mの難燃性シートを得た。該難燃性シートを基材とし、実施例4で得られた繊維シート(4)の裏面にホットメルト接着剤として融点110℃のポリアミド粉末(粒子径:150〜200μm)を10g/mの塗布量で塗布し、120℃で10秒間加熱して該ポリアミド粉末を該難燃性シート裏面に重合し、200℃で90秒間、所定形状に熱圧プレス成形した。この試料は吸音性に優れ、軽量で剛性の良好な難燃性がUL94規格のV−0の成形品が得られた。
【0075】
〔比較例8〕
実施例5において、繊維シート(1)を該難燃性シートの中間に重合し同様にして成形物を得た。この物は、難燃性は良好であったが、吸音特性が特別に向上しなかった。
【0076】
〔実施例8〕
両面にカレンダー加工処理を施した目付量80g/mのポリエステル繊維からなる不織布をスルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(45質量%固形分の水溶液)40質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)5質量部、ポリビニルアルコール(5質量%固形分の水溶液)10質量部、および水44質量部からなる樹脂混合分散液に含浸し、該樹脂混合分散液が該不織布に対し固形分として20質量%の含浸量となるようにロールにて塗布後、該不織布の裏面にホットメルト接着剤としてポリアミド(融点:130℃、粒子径:70〜80μmの30質量%固形分の水分散液)10質量部、平均重合度n=20のポリリン酸アンモニウム(粒子径:50〜75μm)15質量部、リン酸エステル系難燃剤(50質量%固形分)5質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、および水69質量部からなる混合分散液をスプレーにて固形分として20g/mの塗布量で塗布し、150℃の乾燥機にて4分間乾燥させ、繊維シートを得た。該繊維シートの通気抵抗値は1.4kPa・s/mであった。次に実施例5で得られた難燃性繊維シートを基材とし、該繊維シートを表面材料とし、該混合分散液のスプレー塗布面を該基材に重合し、200℃で60秒間所定形状に熱圧プレス成形したところ吸音性に優れ、意匠性の良好な、難燃性がUL94規格V−0の成形品が得られた。
【0077】
〔実施例9〕
スルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分の水溶液)50質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)2質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)3質量部、アクリル樹脂エマルジョン(5質量%固形分)15質量部、および水30質量部からなる樹脂混合分散液を調整し、該樹脂混合分散液にスパンボンド法によるポリエステル長繊維不織布(目付量50g/m)を浸漬し、該不織布に対し、固形分として25質量%の含浸量になるように含浸後、該不織布の裏面にホットメルト接着剤としてポリエステル(融点:130℃、粒子径:50〜60μmの40質量%固形分の水分散液)5質量部、平均重合度n=20のポリリン酸アンモニウム(粒子径:50〜75μm)20質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、および水74質量部からなる混合分散液をスプレーにて固形分として20g/mの塗布量で塗布し、140℃の乾燥機にて3分間乾燥させ、繊維シートを得た。該繊維シートの通気抵抗は2.5kPa・s/mであった。次に実施例5で得られた難燃性繊維シートを基材とし、該繊維シートを表面材料とし、該混合分散液のスプレー塗布面を該基材に重合し、200℃で60秒間所定形状に熱圧プレス成形したところ吸音性に優れ、軽量で剛性の良好な難燃性がUL94規格V−0の成形品が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の表面材料を使用すれば、高剛性かつ吸音性に優れた成形物が得られ、該成形物は例えば自動車や建築物の内装材料等に極めて有用であるから産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】通気抵抗の測定原理の説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気抵抗が0.08〜3.00kPa・s/mである繊維シートからなることを特徴とする吸音性表面材料。
【請求項2】
該繊維シートにはポリリン酸アンモニウムおよび/または膨張黒鉛が含有されている請求項1に記載の吸音性表面材料。
【請求項3】
該繊維シートには融点180℃以下の低融点繊維が混合されている請求項1および請求項2のいずれか一つに記載の吸音性表面材料。
【請求項4】
該繊維シートは合成樹脂バインダーおよび/またはニードリングによって繊維が結着および/または結合されている不織布である請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の吸音性表面材料。
【請求項5】
該合成樹脂バインダーはフェノール系樹脂である請求項4に記載の吸音性表面材料。
【請求項6】
該フェノール系樹脂はスルホメチル化および/またはスルフィメチル化されている請求項5に記載の吸音性表面材料。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の吸音性表面材料を繊維基材の片面または両面に重合した積層材を所定形状に成形したことを特徴とする成形物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−12783(P2008−12783A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186228(P2006−186228)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】