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吸音性能を有する芯鞘型中空複合繊維
説明

吸音性能を有する芯鞘型中空複合繊維

【課題】音による振動エネルギーを、中空部の内部に存在する熱可塑性重合体が動くことにより熱エネルギーに効率よく変換し、優れた吸音性を奏する芯鞘型中空複合繊維を提供する。
【解決手段】鞘成分1が熱可塑性重合体(A)、芯成分2,3が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)と熱可塑性重合体(C)とが複合または混合されてなり、該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が熱可塑性重合体(C)の周りに配置されている芯鞘型複合繊維およびこれから得られる芯鞘型中空複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯鞘型複合繊維および該繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維に関する。より詳細には、鞘成分の熱可塑性重合体の内に中空部を有し、さらにその内部に熱可塑性重合体からなる芯成分が配置されてなるいわゆる鈴型断面を有する芯鞘型中空複合繊維に関する。本発明の芯鞘型中空複合繊維を用いた不織布は、特に吸音材として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、生活様式の変化に伴い、静かさに対する要求が注目されるようになり、より優れた吸音材が必要になってきた。吸音効果は、音による振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで発現する。そこで、吸音材を構成する不織布として、熱エネルギーへの変換効率を高めて吸音性を上げるために、構成する繊維成分を特殊なものにするもの(特許文献1参照)や、繊維の断面構造を工夫して中空繊維を用いたもの(特許文献2参照)、極細繊維を用いたもの(特許文献3参照)などが開発されている。
しかしながら、これら吸音材はある特定の周波数については、良好な吸音性能を示すものの、低周波数から高周波数といった幅広い範囲における吸音性能が不十分であるという問題がある。一方で、低周波から高周波の広い範囲において、さらに吸音性能の高いものを求められるようになってきた。
【0003】
ところで、上記した中空繊維や極細繊維の製法として、アルカリ減量速度の速いポリエステル系重合体を一成分として用い、アルカリ減量する方法が提案されている。しかしこの場合、他の成分にポリエステル系重合体を使用すると、アルカリ減量時に損傷を受けてしまう。また、アルカリ減量時に廃液を多く排出することになる。
また、ポリエステル系重合体のかわりにナイロン系重合体を使用し、ギ酸などの処理により減量する方法も考えられるが、この場合も有機系の廃液を多量に排出してしまうという問題が依然として残る。
【0004】
【特許文献1】特開2002−004130号公報
【特許文献2】特開平5−186947号公報
【特許文献3】特開2005−76144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の課題を解決するものであり、その目的は、吸音性に優れた芯鞘型中空複合繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分から構成される芯鞘型複合繊維から水溶性可塑性ポリビニルアルコールを溶解除去し、鈴型の断面を有する繊維とすることで音による振動エネルギーを、中空部の内部に存在する熱可塑性重合体が動くことにより熱エネルギーに効率よく変換し、優れた吸音性を奏することを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、芯鞘型複合繊維において、鞘成分が熱可塑性重合体(A)、芯成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)と熱可塑性重合体(C)とが複合または混合されてなり、該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が熱可塑性重合体(C)の周りに配置されていることを特徴とする芯鞘型複合繊維である。
また、本発明は、該芯鞘型複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)を溶解除去して得られる芯鞘型中空複合繊維である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、音による振動エネルギーを効率よく熱エネルギーに変換することによって、優れた吸音性を有する繊維、および不織布を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芯鞘型中空複合繊維は、特定の断面構造を有する芯鞘型複合繊維から、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)を溶解することで得られるいわゆる鈴型断面を有する複合繊維である。本発明の芯鞘型中空複合繊維のいわば前駆体となる芯鞘型複合繊維は、鞘成分が熱可塑性重合体(A)、芯成分が熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)と熱可塑性重合体(C)とが複合または混合してなり、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が熱可塑性重合体(C)の周りに配置されている断面を有する芯鞘型複合繊維である。
【0010】
本発明に用いる水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)(以下、単にPVA(B)と略記する場合がある。)は、溶融紡糸が可能であり、かつ120℃以下の水に溶解するものであれば、特に限定されない。また、ビニルアルコール単位のホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後変性により官能基を導入した変性ポリビニルアルコール系重合体も用いることができる。
【0011】
本発明に用いるPVA(B)は、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオン含有量が3〜10000ppmの水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体を用いることが望ましく、さらに融点が160〜230℃であることがより好ましい。
【0012】
該PVA(B)は、その粘度平均重合度が200〜500であることにより、溶融紡糸によって本発明の複合繊維を製造する際の繊維化工程が良好になる。PVA(B)の粘度平均重合度が低過ぎると、十分な曳糸性が得られず、一方、高すぎると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルから重合体を吐出することが困難になる場合がある。PVA(B)の粘度平均重合度は230〜480であることが好ましく、250〜450であることが特に好ましい。
ここで、該PVA(B)の粘度平均重合度は、JIS K6726に従って測定される粘度平均重合度を意味する。すなわち、PVA(B)を再ケン化して精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から、式:P=([η]×10/8.29)(1/0.62)から求められる重合度Pをいう(以下、粘度平均重合度を単に「重合度」ということがある)。
【0013】
本発明では、該PVA(B)のケン化度が90〜99.9モル%であることにより、良好な熱安定性を示し、本発明の複合繊維を溶融紡糸により円滑に製造することができる。PVA(B)のケン化度が90モル%未満であると、熱安定性が悪く、溶融紡糸時に重合体の熱分解やゲル化を生じ、溶融紡糸を円滑に行なうことができなくなる場合がある。一方、ケン化度が99.99モル%よりも高いビニルアルコール系重合体は、重合体自体を安定に製造することができず、また安定して繊維化することが困難となる場合がある。
PVA(B)のケン化度は、96〜99.98モル%であることが好ましく、97.5〜99.96モル%であることが更に好ましい。
【0014】
また、本発明に使用するPVA(B)の融点が160〜230℃であることにより、溶融紡糸時に良好な熱安定性を維持しながら、繊維強度に優れる複合繊維を製造することができる。PVA(B)の融点が160℃未満であると、結晶性が低下して、得られる繊維の強度が低くなり、しかもPVA(B)の熱安定性が低下して溶融紡糸による繊維化が困難になることがある。一方、PVA(B)の融点が230℃より高いと、ポリビニルアルコール系重合体の分解温度に近い温度で溶融紡糸を行なうこととなり、それに伴って溶融紡糸時にPVA(B)系重合体の分解が生じ、本発明の複合繊維を安定して製造することができなくなる場合がある。
PVA(B)の融点は、170〜227℃であることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましい。
ここで、本発明でいうPVA(B)の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載する通りである。
【0015】
本発明に用いるPVA(B)は、アルカリ金属イオンを、ナトリウム換算で該PVA(B)の質量に対して3〜10000ppm[PVA(B)100質量部に対して0.0003〜1質量部]の割合で含有していることにより、溶融紡糸時に分解およびゲル化が生じず、しかも得られる繊維の水に対する親和性を高く維持することができる。
PVA(B)におけるアルカリ金属イオンの含有量が、前記した3ppm未満であると、得られる繊維の水に対する親和性が不十分になり、一方、10000ppmよりも多いと、溶融紡糸時にPVA(B)の分解やゲル化が生じて繊維化工程性が不良になる場合がある。
PVA(B)におけるアルカリ金属イオンの含有量は、ナトリウムイオン換算で3〜8000ppmであることが好ましく、5〜6000ppmであることがより好ましく、5〜5000ppmであることが更に好ましい。
アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオンおよび/またはナトリウムイオンが挙げられ、そのうちでもナトリウムイオンを用いることが好ましい。
ここでPVA(B)中のアルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求められた値を意味し、その詳細は、以下の実施例に記載する通りである。
【0016】
本発明に用いるPVA(B)は、前記した特性を備えている限りは、すでに述べたようにビニルアルコール単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、またはビニルアルコール単位と共重合性単量体に由来する構造単位(共重合単位)を有する変性ポリビニルアルコール系重合体であっても良い。そのうちでも、溶融紡糸性、水との親和性、得られる繊維の物性などの観点から、共重合単位を有する変性ポリビニルアルコール系重合体であることが好ましい。
【0017】
共重合単位を形成する共重合性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類、(メタ)アクリル酸、その塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有ビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有α−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボキシル基(無水カルボン酸基)を有する単量体、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン基を有する単量体、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどのカチオン基を有する単量体などを挙げることができる。
該PVA(B)は、前記した共重合性単量体の1種または2種以上に由来する構造単位(共重合単位)を有していることが好ましい。
また、PVA(B)における前記した共重合性単量体に由来する共重合単位の含有割合は、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることが更に好ましい。
【0018】
そのうちでも、PVA(B)は、共重合単位として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有ビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有α−オレフィン類に由来する共重合単位を有する変性ポリビニルアルコール系重合体が、入手の容易性などの点から好ましい。
【0019】
特に、変性ポリビニルアルコール系重合体の入手の容易性、溶融紡糸性などの点から、PVA(B)は、共重合単位として、エチレン、プロピレン、1−ブテンまたはイソブテンからなる炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類に由来する構造単位(共重合単位)を有することが好ましい。その場合に、炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテルに由来する構造単位(共重合単位)の割合(2種以上の共重合単位を有する場合はその合計割合)は、0.1〜20モル%であることが好ましく、4〜15モル%であることがより好ましく、6〜13モル%であることが更に好ましい。
PVA(B)が共重合単位としてエチレン単位を有する場合は、エチレン単位の割合は、4〜15モル%、特に6〜13モル%であると、繊維物性が高くなるので好ましい。
【0020】
本発明の複合繊維を構成するPVA(B)の製造方法は特に制限されない。例えば、ビニルエステル化合物を必要に応じて上記した共重合性単量体の1種または2種以上と共に用いて、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法、好ましくは塊状重合法または溶液重合法により重合を行なって、ビニルエステル化合物の単独重合体またはビニルエステル化合物と共重合性単量体との共重合体を製造した後、重合体中のビニルエステル化合物に由来するエステル結合をケン化して水酸基にすることによって製造することができる。
【0021】
該ビニルエステル化合物の重合体の製造に当たっては、ビニルエステル化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、パーサティック酸ビニルなどを挙げることができ、そのうちでも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0022】
ビニルエステル化合物を用いて溶液重合を行なう際の溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが好ましく用いられる。
また、ビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体の製造に用いる重合開始剤としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤などを挙げることができる。
重合温度は特に制限されないが、一般に、0〜150℃の範囲が適当である。
【0023】
上記で得られるビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体のビニルエステル化合物に由来するエステル基を、アルカリ金属イオンを含有するアルカリ性物質、特に水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いてケン化処理し、それにより生成したビニルアルコール系重合体を洗浄液で洗浄して、本発明の芯鞘型複合繊維に用いるPVA(B)を得ることができる。
【0024】
ケン化の終了した重合体を、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などの洗浄液を用いて洗浄する際には、メタノール、酢酸メチルおよび水を単独で用いて洗浄するか、これらの2種または3種の混合液を用いて洗浄することが好ましい。洗浄液の使用量を調整することによって、最終的に得られるPVA(B)中のアルカリ金属イオンの含有量を、3〜10000ppmに調整することができる。一般的には、ビニルアルコール系重合体100質量部に対して、洗浄液を300〜10000質量部、特に500〜5000質量部の割合で用いて洗浄処理を行なうことが好ましい。洗浄温度は、一般に5〜80℃、特に20〜70℃が好ましく、また洗浄時間は20分間〜10時間、特に1〜6時間が好ましく採用される。
【0025】
本発明に用いるPVA(B)は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、結晶化速度遅延剤などを重合反応時またはその後の工程で添加含有させることができる。特に、PVA(B)中に熱安定剤として、ヒンダードフェノールなどの有機系安定剤、ヨウ化銅などのハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属化合物を含有させると、溶融紡糸時に、溶融温度下に比較的長い時間にわたって曝されてもその安定性が良好に維持される。
【0026】
更に、該PVA(B)は、必要に応じて平均粒径が0.01〜5μmの微粒子を0.05〜10質量%の割合で含有していてもよい。微粒子は重合工程またはその後の工程で添加することができる。微粒子の種類は特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。特に、平均粒径0.02〜1μmの無機微粒子をPVA(B)に含有させると、紡糸性および延伸性が向上する。
【0027】
本発明の芯鞘型複合繊維を構成する熱可塑性重合体(A)および熱可塑性重合体(C)は、融点が240℃以下の熱可塑性重合体であると好適に使用可能である。繊維を構成する場合、熱可塑性重合体(A)と熱可塑性重合体(C)は同じものであっても、異なるものであってもよい。熱可塑性重合体(A)および(C)の融点が240℃よりも高いと、複合繊維を製造するための溶融紡糸を240℃以上の温度で行なうことが必要になり、その場合には溶融紡糸温度がPVA(B)の分解温度に極めて近いかまたは分解温度を超えることとなって、溶融紡糸時にPVA(B)の分解を生じ、目的とする芯鞘型複合繊維を円滑に製造できなくなる場合がある。熱可塑性重合体(A)および(C)の融点は、80〜240℃であることが好ましく、80〜230℃であることがより好ましい。
【0028】
なお本明細書でいう熱可塑性重合体(A)および(C)の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載する通りである。
【0029】
熱可塑性重合体(A)および(C)として用い得る熱可塑性重合体としては、融点が240℃以下のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、変性ポリビニルアルコール(例えばエチレン単位を25〜70モル%有するエチレン−ポリビニルアルコール共重合体)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、ジエン系、塩素系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、アミド系、フッ素系の熱可塑性エラストマー)などを挙げることができる。そのうちでも、熱可塑性重合体(A)および(C)としては、融点が240℃以下であり、繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、変性ポリビニルアルコールが特に好ましく用いられる。
【0030】
融点が240℃以下のポリオレフィン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、またはプロピレン、エチレン、ブテン、メチルペンテンの1種または2種以上に由来する構造単位を有する共重合体などが挙げられる。
【0031】
融点が240℃以下のポリエステル系重合体の好ましい例としては、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、ヘキサメチレンテレフタレート単位のうちの1種または2種以上の単位を主たる構造単位とし、これに少量の他の共重合単位を有する共重合ポリエステルなどを挙げることができる。
【0032】
熱可塑性重合体(A)および(C)が、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、ヘキサメチレンテレフタレート単位のうちの1種または2種以上の単位を主たる構造単位とし、これに少量の他の共重合単位を有する共重合ポリエステルからなる場合は、他の共重合単位の割合は、20モル%以下であることが好ましい。その際の他の共重合単位としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸、またはこれらのエステル形成成分に由来する構造単位、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどに由来する構造単位などを挙げることができる。共重合ポリエステルは、前記した共重合単位の1種または2種以上を有していてもよい。
【0033】
熱可塑性重合体(A)および(C)がポリアミド系重合体である場合は、例えば、ナイロン6、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12などを挙げることができる。
【0034】
本発明の芯鞘型複合繊維を構成する熱可塑性重合体(A)および(C)は、必要に応じて、無機微粒子、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤およびその他の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0035】
本発明の芯鞘型複合繊維は、鞘成分である熱可塑性重合体(A)の質量と、芯成分であるPVA(B)と熱可塑性重合体(C)とを合計した質量の比、すなわちA:(B+C)が、10:90〜90:10の範囲にあることが好ましい。熱可塑性重合体(A)の質量比が10より小さい場合は、PVA(B)を減量した後、熱可塑性重合体(A)の横断面における厚みが薄くなって潰れてしまい、熱可塑性重合体(C)が中空部の中で動きにくくなってしまう。一方、熱可塑性重合体(A)の質量比が90より大きい場合には、減量後において熱可塑性重合体(C)が動く範囲が少なくなり、吸音性が不十分となる場合がある。好ましくは、20:80〜80:20の範囲であり、30:70〜70:30に範囲にあることがより好ましい。
【0036】
また、該芯鞘型複合繊維から芯鞘型中空複合繊維を得るためには、減量前の芯鞘型複合繊維の芯部において、熱可塑性重合体(C)の周りに、PVA(B)が配置されていることが重要である。そのためには、芯成分を構成する熱可塑性重合体全体を100質量部としたとき、PVA(B)と熱可塑性重合体(C)との質量成分比が95:5〜20:80の範囲にあることが好ましい。
PVA(B)の質量比が95を超える場合には、減量後の熱可塑性重合体(C)が少なく、音による振動エネルギーを熱エネルギーに変化する効率が悪くなり、吸音性が不十分となる場合がある。一方、PVA(B)の質量比が20より少なくなると、熱可塑性重合体(C)の周りに十分にPVA(B)が配置されない場合があり、その結果減量後の熱可塑性重合体(C)が動くスペースが小さくなり、吸音性が不十分となる場合がある。
【0037】
本発明の複合繊維において、芯部のPVA(B)と熱可塑性重合体(C)は、互いに複合した複合紡糸形態であるか、またはPVA(B)と熱可塑性重合体(C)が互いに非相溶状態で混合した混合紡糸形態であってもよい。
【0038】
ここで複合形態とは、2種以上の重合体の各々が繊維の長さ方向に途中で途切れることなく連続した状態で互いに接合して1本の繊維(複合形態)を形成している場合を意味する。
また、混合紡糸形態とは、互いに均一に混ざり合わない2種以上の重合体を紡糸口金から紡出する以前の段階で混合して紡糸することによって形成される場合であり、2種以上の重合体の1種または2種以上が繊維の長さ方向に途中で途切れながら互いに接合している形態を示す。
ただし、本発明の芯鞘型複合繊維において、芯部が混合紡糸の形態をとる場合には、PVA(B)と、熱可塑性重合体(C)の粘度バランス、両重合体の使用比率によっては、海と島が逆転して、PVA(B)の周りに熱可塑性重合体(C)が配置されることがあるので、PVA(B)が海成分となるように、粘度バランスおよび両重合体の使用比率を調整することが重要である。
【0039】
図1に本発明の芯鞘型複合繊維の一例を示す断面模式図を示す。該芯鞘型複合繊維は、熱可塑性重合体(A)1からなる鞘成分と、熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)2と熱可塑性重合体(C)3とが複合されてなる鞘成分から構成されており、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が熱可塑性重合体(C)の周りに配置されていることがわかる。
また、図3及び図5に示すように、熱可塑性重合体(A)1からなる鞘成分と、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)2と熱可塑性重合体(C)3とが複合されており、熱可塑性重合体(C)3が複数の芯成分を形成する、いわゆる多島の形状となっていても良い。熱可塑性重合体(C)が多島の形状となっていることで、得られる芯鞘型中空複合繊維は複数の小径の芯を有することとなり、小径であることで個々の芯成分の運動が起こりやすく、また運動する芯成分が多いためにエネルギーを吸収しやすくなるので、吸音性を高める上で有利である。芯成分の好ましい数に特に制限はないが、多すぎると製造が困難となる場合があるので、通常は1〜500であり、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100である。
本発明の芯鞘型複合繊維は、図1、図3、図5に示す断面形状を有するものに何ら限定されない。
【0040】
本発明の芯鞘型複合繊維における熱可塑性重合体(A)の横断面形状は特に制限されず、丸型、偏平型、繭型、三角形型、多葉型などのいずれの横断面形状であってもよい。
【0041】
本発明の芯鞘型複合繊維、すなわち減量前の複合繊維の単繊維繊度は、0.1dtex以上であれば任意に繊度を設定することができる。0.1dtexより細い場合には、その繊維の紡糸時に糸切れが発生する場合がある。より優れた吸音性を確保する観点、及び製造の観点から、好ましくは0.5〜10dtexである。
【0042】
本発明の芯鞘型複合繊維の製造方法については、従来から採用されている溶融紡糸法を採用でき、従来公知の溶融紡糸装置および方法を採用することができる。
溶融紡糸を行うにあたっては、PVA(B)の熱分解を防ぐために、PVA(B)の融点から融点+30℃の範囲の溶融温度を採用するのがよく、一般的には200〜250℃の溶融温度が好ましく採用される。
溶融紡糸時における各重合体の紡出量は、製造する芯鞘型複合繊維の単繊維繊度、紡糸口金における紡糸孔数、芯鞘型複合繊維における熱可塑性重合体(A)、PVA(B)および熱可塑性重合体(C)の複合形態や、混合形態、引き取り速度などに応じて調節することができる。
また、紡糸口金より紡出して得られた紡糸原糸は、一般に2〜6倍の延伸倍率で延伸することが好ましい。延伸は、紡糸に引き続いて行なってもよいし、または紡糸した糸を一旦巻き取った後に巻き戻しながら延伸を行なってもよい。
【0043】
上記の方法にて得られた紡糸原糸の延伸加熱方法として、
(1)溶融紡糸した繊維を、湿分が70%以下、好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下で、炉内温度が110〜200℃の範囲にある乾燥した加熱炉内を、繊維の炉内での滞在時間が0.5〜1800秒間になるようにして連続的に通過させながら延伸させた後、加熱炉から取り出す方法;
(2)溶融紡糸した繊維を、湿分70%以下、好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下で、乾燥した室内を通過させ、その際に室内で温度110〜200℃の延伸ローラまたは加熱プレートに、繊維の延伸ローラまたは加熱プレートへの接触時間が0.5〜1800秒間になるように接触させて延伸させた後、室から取り出す方法;
などを採用することができる。
そのうちでも、熱処理時間を必要十分に取れる点、生産性の向上の点から、上記(1)の方法が好ましく採用される。
【0044】
本発明の芯鞘型複合繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維を特定量、具体的には5〜100質量%を用いて乾式不織布、湿式不織布とすることで吸音材として好適なシートが得られる。湿式不織布または乾式不織布を得る際に、本発明の複合繊維と混合する他の繊維の種類は特に制限されず、用途に応じて選ぶことができる。例えば、各種の天然パルプ、セルロース繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、全芳香族ポリアミド繊維などを挙げることができる。
【0045】
湿式不織布、乾式不織布を得る場合は、減量する前の芯鞘型複合繊維を用いて不織布を製造し、その後にPVA(B)を抽出除去してもよいし、先に該芯鞘型複合繊維からPVA(B)を減量して芯鞘型中空複合繊維とした後に、不織布を製造してもよい。不織布を製造する場合は、上述したように芯鞘型中空複合繊維を5〜100%含有することが望ましい。5%未満では、吸音性が不十分である。
【0046】
本発明において、該複合繊維からPVA(B)を水で抽出する方法に関しては特に制約はないが、該繊維からなる不織布等のシートを作製し、サーキュラー、ビーム、ジッカー、ウィーンス等の染色機やバイブロウォッシャー、リラクサー等の熱水処理設備により処理する方法、高圧水流を噴射する方法等、任意の方法を適宜選択することができる。抽出水は界面活性剤等を添加した水溶液であってもよい。
【0047】
溶解処理温度は目的に応じて適宜調整すればよいが、熱水を用いて抽出する場合には、40〜120℃で処理するのが好ましく、60〜110℃で処理するのがより好ましく、80〜100℃で抽出処理を行うのが特に好ましい。処理温度が40℃より低い場合、PVA(B)の抽出性が十分でなく、生産性が低下する場合がある。
【0048】
抽出処理時間についても、目的や使用する装置、処理温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性等を考慮すると、バッチ処理を行う場合には合計で10〜200分であることが好ましく、連続処理の場合は1〜20分であることが好ましい。
【0049】
上記の方法で得られる本発明の芯鞘型中空複合繊維の一例を図2に示す。具体的に図2は、図1に示した芯鞘型複合繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維の断面模式図である。
図1に示した芯鞘型複合繊維から、PVA(B)2が抽出除去されることにより中空部4が形成され、熱可塑性重合体(A)1と熱可塑性重合体(C)3との間に空隙(中空部)を有するいわゆる鈴型断面の構造(図2)を有しているのがわかる。
同様に、図3に示した芯鞘型複合繊維から、PVA(B)2が除去されることにより中空部4が形成され、図4に示した断面となる。さらに、図5に示した芯鞘型複合繊維から、PVA(B)2が除去されることにより中空部4が形成され、図6に示した断面となる。
【0050】
乾式不織布を得るためには、繊維同士が絡合しやすくなるように、延伸後に捲縮を付与する必要がある。捲縮を付与する方法としては、繊維に一般に捲縮を付与する方法を採用することができ、押込型の捲縮機を用いる方法、機械的に捲縮を付与する方法などを任意に選ぶことができる。また、捲縮が掛かりやすくするために、捲縮機に入る前に予熱する方法や、もしくは捲縮機の中で捲縮付与時に、繊維のトウを加熱するなどの方法を取ることも出来る。
【0051】
上記の方法にて得られた不織布は、優れた吸音材を有するので、自動車に取り付ける内装材やエンジンルームに用いる吸音材、または住宅における壁、天井、床下に用いる吸音材等の各種用途に用いることが可能である。
【0052】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各評価は以下の方法にて行った。
【0053】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)の融点]
PVA(B)を水に溶解して5%水溶液を調製し、それを基体上にキャストしてキャストフィルム(乾燥前の厚さ10μm)を作製し、該キャストフィルムを80℃で、減圧条件下で24時間乾燥して、乾燥した熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体フィルムを準備した。このフィルムを用いて、DSC(示差走査熱量計)(メトラー社製「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップをPVA(B)の融点(℃)とした。
【0054】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)の粘度平均重合度]
JIS K6726に従って測定した。
【0055】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)のケン化度]
JIS K6726に準じて測定した。
【0056】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)におけるアルカリ金属イオンの含有量]
PVA(B)の一部を採取し、それを完全に灰化し、その灰化した試料を硝酸に溶解し、その溶液を用いて、原子吸光光度計(日立製作所社製、「Z−5300」)を使用して、アルカリ金属の含有量を測定した。
【0057】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合(変性割合)]
合成の途中段階で得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体またはエチルビニルエーテル/酢酸ビニル共重合体(ビニルアルコール共重合体にケン化する前の酢酸ビニル共重合体)を測定用試料とし、その試料についてH−NMR(日本電子社製、「JEOL GX−500」、500MHz)を使用して、80℃の条件下で測定して、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合(変性割合)(モル%)を求めた。エチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合は、合成途中段階で得られた前記酢酸ビニル共重合体とそれをケン化して最終的に得られるポリビニルアルコール系重合体とで変わらないので、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合をもって、最終的に得られたPVA(B)におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合とした。
【0058】
[熱可塑性重合体(A)および(C)の融点]
熱可塑性重合体(A)および(C)(ペレット状)を用いて、DSC(示差走査熱量計;メトラー社製、「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップを熱可塑性重合体(A)および(C)の融点(℃)とした。
【0059】
[紡糸工程性]
以下の実施例、および比較例における紡糸工程において、紡糸によって100kgの繊維を連続生産する際に生じた断糸回数を数え、断糸回数が3回以内の場合は良好(○)、断糸回数が4〜7回の場合はやや不良(△)、断糸回数が8回以上の場合は不良(×)として評価した。
【0060】
[吸音率測定用の不織布の製造方法]
得られた芯鞘型複合繊維と、芯鞘型複合繊維を固定するバインダー繊維(鞘/芯=共重合ポリエステル/ポリエステル、接着温度110℃品)を所定の割合で混合する。これらの繊維をカード処理した後、ウエッブを得る。このウエッブを、熱風炉に入れて、不織布を作製し、できた不織布を熱水に入れてPVA(B)を溶出除去し、目的とする吸音率測定用の不織布を得る。なお、該不織布は、PVA(B)を溶出除去後の目付が200g/mになるように調節しておいた。
【0061】
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体の溶出方法]
まず、上記の方法にて得られた不織布を容器に入れ、さらに不織布質量に対して30倍の質量の水を加える。この水にユニソルトMT(明成化学工業社製);1g/L、炭酸ナトリウム;1g/Lになるように加えて溶かす。
次いで不織布の入った液を50℃から100℃まで25分かけて昇温した後、100℃で40分間加熱保持し、その後70℃まで10分かけて降温する。不織布を取り出して水洗した後、再び容器に戻して、不織布質量に対して30倍の質量の水を加える。これを70℃から90℃に10分間かけて昇温し、90℃で20分間加熱した後、60℃まで降温する。その後不織布を取り出して、水洗した後に乾燥して芯鞘型中空複合繊維を含む不織布を得る。
【0062】
[吸音率の測定]
ブリュエル&ケアー(B&K)社製、2マイクロフォンインピーダンス測定管4206型を使用し、A管;50〜1.6kHz、B管;500〜6.4kHzの波長を使用した。これに上記の方法で作製した不織布を取り付けて、周波数における吸音率を測定し、1000Hzと1500Hzの吸音率を比較した。
【0063】
実施例1
重合度200、エチレン含有量8.5%、ケン化度98.5、ナトリウム金属イオン含有率300ppmのPVA(B)を準備し、鞘成分(A)にポリプロピレン、芯成分に前記のPVA(B)とポリプロピレン(C)のチップを質量比で50/50混合して、鞘成分と芯成分を質量比50/50の割合で供給して、240℃で口金から紡出して巻き取った。100kgを紡糸したところ、断糸は2回であり、紡糸調子は良好であった。紡糸後の繊度は10.0dtexであった。結果を表1に示す。
【0064】
実施例2〜14
重合度、ケン化度、ナトリウム金属イオン含有率を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法にて紡糸を行なった。結果を表1に示す。
【0065】
実施例15
重合度200、ケン化度98.5、ナトリウム金属イオン含有率300ppmのPVA(B)を用いて、鞘成分(A)にポリプロピレン、芯成分に前記のPVA(B)とポリプロピレン(C)のチップを質量比で50/50混合して、鞘成分と芯成分を質量比10/90の割合で供給して、240℃で口金から紡出して巻き取った。この紡糸原糸を、1段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度90℃)に導いて3倍に延伸し(1段目の熱風炉での糸の滞在時間6秒)、次に第1段目の熱風炉に隣接して設けた2段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度140℃、炉内湿度0%)に導いて140℃で熱処理し(2段目の熱風炉での糸の滞在時間2.6秒)、70m/分で巻きとって、芯鞘型複合繊維を得た。該複合糸を通常の方法により捲縮を付与した後、51mmにカットした。得られた複合繊維を用いて上記の方法で不織布を製造した後、前記の方法によりPVA(B)を溶出除去して、芯鞘型中空複合繊維を含有する不織布を得た。得られた不織布の吸音率を測定したところ、周波数1000Hzにおいて0.32、1500Hzにおいて0.50を示し、吸音性の優れた不織布を得ることができた。結果を表2に示す。
【0066】
実施例16〜29
熱可塑性重合体(A)および(C)の種類、鞘部と芯部の熱可塑性重合体の質量比、芯部のPVA(B)と熱可塑性重合体(C)の質量比、さらに不織布における芯鞘型中空複合繊維の含有割合を表2に示す条件に変更したこと以外は、実施例15と同様にして紡糸を行い、芯鞘型複合繊維を得た。また、得られた芯鞘型複合繊維を用いて表2に示す条件にて不織布を作製し、実施例15と同様に吸音率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0067】
比較例1
重合度200、ケン化度98.5、ナトリウム金属イオン含有率300ppmのPVA(B)を用いて、鞘成分(A)にポリプロピレン、芯成分に前記のPVA(B)を、鞘成分と芯成分を質量比50/50の割合で供給して、240℃で口金から紡出して巻き取った。この紡糸原糸を、1段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度90℃)に導いて3倍に延伸し(1段目の熱風炉での糸の滞在時間6秒)、次に第1段目の熱風炉に隣接して設けた2段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度140℃、炉内湿度0%)に導いて140℃で熱処理し(2段目の熱風炉での糸の滞在時間2.6秒)、70m/分で巻きとって、芯鞘型複合繊維を得た。該複合糸を通常の方法により捲縮を付与した後、51mmにカットした。得られた複合繊維を用いて上記の方法で不織布を製造した後、前記の方法によりPVA(B)を溶出除去して、PP中空繊維を含有する不織布を得た。得られた不織布の吸音率を測定したところ、周波数1000Hzにおいて0.16、1500Hzにおいて0.26を示した。結果を表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の芯鞘型複合繊維の一例を示す断面模式図
【図2】図1に示した芯鞘型複合繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維の断面模式図
【図3】本発明の芯鞘型複合繊維の一例を示す断面模式図
【図4】図3に示した芯鞘型複合繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維の断面模式図
【図5】本発明の芯鞘型複合繊維の一例を示す断面模式図
【図6】図5に示した芯鞘型複合繊維から得られる芯鞘型中空複合繊維の断面模式図
【符号の説明】
【0071】
1:熱可塑性重合体(A)
2:水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)
3:熱可塑性重合体(C)
4:中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合繊維において、鞘成分が熱可塑性重合体(A)、芯成分が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)と熱可塑性重合体(C)とが複合または混合されてなり、該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が熱可塑性重合体(C)の周りに配置されていることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
【請求項2】
該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)が、粘度平均重合度200〜500、ケン化度90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量3〜10000ppmである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体から構成される請求項1記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項3】
鞘成分と芯成分との質量成分比が10:90〜90:10である請求項1または2記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項4】
芯成分を構成する熱可塑性重合体を100質量部としたとき、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)および熱可塑性重合体(C)の質量成分比が、95:5〜20:80である請求項1〜3のいずれか1項に記載の芯鞘型複合繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の芯鞘型複合繊維を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(B)を溶解除去して得られる、鞘部を構成する熱可塑性重合体(A)と芯成分を構成する熱可塑性重合体(C)との間に中空部を有する芯鞘型中空複合繊維。
【請求項6】
請求項5記載の芯鞘型中空複合繊維を5〜100質量%含有する湿式不織布。
【請求項7】
請求項5記載の芯鞘型中空複合繊維が捲縮を有しており、かつ該芯鞘型中空複合繊維を5〜100質量%含有する乾式不織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−221627(P2009−221627A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67414(P2008−67414)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】