説明

吸音材料

【課題】本発明の課題は、軽量でかつ吸音性能に優れた吸音材料を提供することにある。
【解決手段】叩解度がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度15°SR〜30°SRのパルプ繊維からなり、合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されていることによって通気抵抗が0.05〜3.0kPa・s/mの範囲に調整されている紙(3)を、多孔質シート(2)内に内挿した構成を有し、該紙(3)は騒音が入射する表面から該多孔質シート(2)の厚さの6/10〜9/10奥側に配置されることによって該多孔質シート(2)の吸音性能を向上せしめる吸音材料(1)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の床材、家屋の壁材等の吸音材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の価格の高騰や温暖化等の問題により、特に自動車産業において燃費の向上が急務の課題となっている。また、一方では、性能向上のため、自動車車内及び車外に対しての防音対策が必要となり各種の吸音材が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、単層フェルトからなる吸音フェルトが記載されている。また、特許文献2には、樹脂バインダ付着繊維ウェブからなる自動車用内装材が記載されている。また、特許文献3には、繊維集合体からなる吸音層と発泡材からなる表皮層との積層体から構成される自動車用インシュレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195989号公報
【特許文献2】特開2004−325973号公報
【特許文献3】特開2003−081028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来発明は、以下の問題点があった。例えば自動車又は建築壁材用の吸音材料は、繊維シートやプラスチック発泡体等の多孔質材料からなるが、吸音性能を確保するためには、厚みを増大させる必要がある。そのため、当該吸音材料の重量は相当大きなものとなる。このことは、重量増による作業性の悪化を招き、特に自動車用の場合、省燃費化、軽量化を図る上で不利となる。具体的に、上記特許文献1の発明は、フェルトの片側表層と反対側表層との空気流れ抵抗値をバインダー樹脂の塗布量の差により連続的に変化させたものであるが、重量が1500g/mと大きくなってしまう。また、上記特許文献2の発明も、内装材として1750g/mの重量となってしまう。また、上記特許文献3の発明は、軽量化はされているが、発泡層が表面となるため表面強度が弱い問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、好適な吸音性能を保持しつつ、軽量化を図ることができる吸音材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、叩解度がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度10°SR〜30°SRのパルプ繊維からなり、合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されていることによって通気抵抗が0.05〜3.0kPa・s/mの範囲に調整されている紙(3)が多孔質シート(2)に内挿された吸音材料(1)であって、該紙(3)は、該吸音材料(1)の騒音入射表面より該多孔質シート(2)の厚さの6/10〜9/10奥側に内挿されている吸音材料(1)を提供するものである。
上記吸音材料(1)の通気抵抗は0.1〜5.0kPa・s/mであることが望ましく、上記紙(3)はクレープ加工および/またはエンボス加工を施すことによって表面に多数の凹凸が形成されていることが望ましい。
に上記多孔質シート(2)には合成樹脂および/または合成樹脂前駆体が塗布および/または含浸および/または混合されていることによって上記吸音材料(1)の通気抵抗が調節されていることが望ましく、上記多孔質シート(2)は2枚の単位多孔質シートの複層物からなり、上記紙(3)は上記単位多孔質シート間に挿入されていることが望ましい。
また更に、上記紙(3)と上記単位多孔質シートとは通気性接着層によって接着されていることが望ましく、上記吸音材料(1)は所定形状に成形されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
〔作用〕
パルプ繊維を機械的に叩き磨砕することを叩解と云う。パルプ繊維を叩解すると、繊維は枝状に分岐してフィルム化し、あるいは同心円状に緩んで繊維は多孔質になり、このような叩解されたパルプ繊維を使用して紙を抄造した場合、得られる紙の多孔質パルプ繊維間の細孔を大きくでき、低密度で吸音特性に優れた紙が得られる。しかし上記パルプ繊維の叩解度がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度30°SRを超えるとパルプ繊維のフィブリル化が進み、微細繊維が増加して紙の密度が高くなり、吸音特性が低下する。一方上記パルプ繊維の叩解度が15°SRを下回るとパルプ繊維の多孔質化や同心円状の緩みが不充分となり、空隙率が低下して吸音特性が悪くなる。
【0009】
このような紙(3)を多孔質シート(2)に内挿すると、吸音材料(1)の吸音性が向上し、該多孔質シート(2)の厚みを薄く出来るが、特に騒音入射表面側に内挿されている該紙(3)が該表面より該多孔質シート(2)の厚さの6/10〜9/10奥側に内挿されていると、該吸音材料(1)の厚みが10mm以上であっても軽量で、しかも特定音域のみの吸音性能ではなく、中音域から高音域までの広い音域で安定して吸音性能に優れた吸音材料(1)が提供される。
【0010】
上記紙(3)および/または上記多孔質シート(2)には合成樹脂および/または合成樹脂前駆体が塗布および/または含浸および/または混合されているので、上記紙3および/または上記多孔質シート(2)の剛性が向上し、また通気抵抗を0.1〜5.0kPa・s/mの範囲で任意に調節出来る。
上記紙(3)にクレープ加工および/またはエンボス加工を施し、表面に多数の凹凸を形成すると、音波が及ぼされた場合に上記紙(3)はそれに共鳴して振動し、その結果音波は減衰されるので、吸音特性が向上する。
【0011】
通常、本発明の吸音材料(1)において、上記多孔質シート(2)は2枚の単位多孔質シートの複層物からなり、上記紙(3)は上記単位多孔質シート間に挿入されている。このような構成において、上記紙(3)と上記単位多孔質シートとを、通気性接着剤層によって接着すると、通気性が接着剤層によって阻害されず、通気抵抗が0.1〜5.0kPa・s/mの範囲に容易に確保される。
【0012】
〔効果〕
本発明にあっては、厚みが大きくても軽量で吸音特性に優れた吸音材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】突起高さhを説明する説明図である。
【図2】通気抵抗Rの測定方法を説明する説明図である。
【図3】成形吸音材料の配置構成を示す図である。
【図4】吸音材料No.1、No.2の周波数に対する吸音率を示すグラフである。
【図5】吸音材料No.11、No.12、No.13の周波数に対する吸音率を示すグラフである。
【図6】吸音材料No.21、No.22、No.23の周波数に対する吸音率を示すグラフである。
【図7】吸音材料No.24、No.25の周波数に対する吸音率を示すグラフである。
【図8】吸音材料No.16、No.26の周波数に対する吸音率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔紙〕
本発明において使用される紙は、針葉樹や広葉樹のチップを原料とし、叩解度がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度15°SR〜30°SRの範囲のパルプ繊維からなる。
上記叩解は通常コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等によって行われる。パルプ繊維の叩解度が15°SRに満たない場合には、パルプ繊維の多孔質化や同心円状の緩みが不充分となり、空隙率が低下して吸音材料の吸音性能に悪影響が及ぼされる。一方30°SRを上回るとパルプ繊維のフィブリル化が進み、微細繊維が増加して紙の密度が高くなり、吸音材料の吸音特性に悪影響が及ぼされる。
上記紙の通気抵抗は0.05〜3.0kPa・s/mになるように設定する。上記通気抵抗が0.05kPa・s/mを下回ると紙の密度が低くなり過ぎ、紙の強度や剛性が低下する。また上記通気抵抗が3.0kPa・s/mを上回ると紙の密度が高くなり、吸音特性が不充分になる。
上記紙には所望なればクレープ加工および/またはエンボス加工を施して表面に縮緬状の皺状凹凸や多数の突起を形成してもよい。
【0015】
上記クレープ加工には、湿紙の状態でプレスロールやドクターブレード等を用いて縦方向(抄造方向)に圧縮して皺付けを行なうウェットクレープと、シートをヤンキードライヤーやカレンダーで乾燥した後、ドクターブレード等を用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうドライクレープとがある。例えばクレープ加工された紙は、クレープ率が10〜50%であることが望ましい。
ここで、該クレープ率は、
クレープ率(%)=(A/B)×100(Aは紙製造工程における抄紙速度、Bは紙の巻き取り速度)
換言すれば、該クレープ率はパルプ繊維からなるペーパーウェブがクレーピングで縦方向(抄造方向)に圧縮される割合である(参考:特開2002-327399、特表平10-510886)。
ここで、クレープ率が10%に満たないとクレープ加工によるの吸音性能の向上が顕著でなくなり、一方、該クレープ率が50%を越えると、成形時に皺が入り易くなる。
上記エンボス加工紙は、表面に多数の凹凸が彫られたロール(エンボスロール)やプレート(エンボスプレート)を原紙に押圧して紙の表面に多数の突起を形成したものであり、該突起の突起高さが0.02〜2.00mmであり、かつ、突起数が20〜200個/cmであることが望ましい。該突起高さが0.02mmに満たないと、エンボス加工による吸音性能の向上が顕著でなくなり、また、突起高さが2.00mmを越えた場合には、成形時に皺が入り易い。また、突起数が20個/cmに満たないと、エンボス加工による吸音性能の向上が顕著でなくなり、突起数が200個/cmを越えた場合には、エンボス加工紙の吸音性能の向上が見られなくなる。なお、図1において、エンボス加工紙1aには突起pが多数形成されており、突起高さは、図1に示す「h」に相当する。
なお、上記エンボス加工工程において、原紙にクレープ加工紙を用いれば、エンボスクレープ加工紙が得られる。
【0016】
上記紙の目付量は10〜50g/mが望ましい。該目付量が10g/mに満たない場合には成形性が低下して成形時に皺が生じ易くなり、一方、目付量が50g/mを越えると質量が増大しかつ成形性が低下する。
【0017】
また、上記紙の通気抵抗は、0.05〜3.0kPa・s/mとする。
ここで、上記の通気抵抗(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗の測定は定常流差圧測定方式により行われる。図2に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
【0018】
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
【0019】
なお、本発明の紙の通気抵抗は、最終製品において必要となる周波数に応じて適宜設定される。該通気抵抗の調整は、紙のパルプ繊維の叩解度、繊維相互の絡みや目付量ならびに塗布および/または含浸および/または混合される合成樹脂および/または合成樹脂前駆体の塗布量で調整することができる。
【0020】
〔多孔質シート〕
本発明で使用される多孔質シートとしては、通常繊維シートが使用される。
〔繊維シート〕
本発明に用いられる繊維シートの繊維材料としては、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、とうもろこしやサトウキビ等の植物から抽出された澱粉からなる生分解繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維が使用されるが、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維、ステンレス繊維等の無機繊維やポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリアリレート繊維、アルミナ繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の望ましくは融点が250℃以上の耐熱性合成繊維を使用すれば、耐熱性の極めて高い吸音性表皮材が得られる。その中でも炭素繊維は焼却処理が可能で細片が飛散しにくい点で有用な無機繊維であり、アラミド繊維は比較的安価で入手し易い点で有用な合成繊維である。
【0021】
また、繊維シートには、上記繊維の全部または一部として、融点が180℃以下である低融点熱可塑性繊維を使用することができる。
上記低融点熱可塑性繊維としては、例えば融点180℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点熱可塑性繊維は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。該低融点熱可塑性繊維の繊度は、0.1〜60dtexの範囲であることが好ましい。本発明に使用する望ましい低融点熱可塑性繊維としては、例えば上記通常繊維を芯部分とし、該低融点熱可塑性繊維の材料樹脂である融点100〜180℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘型繊維がある。該芯鞘型繊維を使用すると、得られる繊維シートの剛性や耐熱性が低下しない。
【0022】
本発明の繊維シートは、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法やスパンボンド法、あるいは上記繊維のウェブのシートあるいはマットが上記低融点熱可塑性繊維からなるか、あるいは上記低融点熱可塑性繊維が混合されている場合には上記繊維のウェブのシートあるいはマットを加熱して該低融点熱可塑性繊維を軟化せしめることによって結着するサーマルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合して結着するケミカルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で該低融点熱可塑性繊維を加熱軟化せしめて結着するか、あるいは糸で縫い込むステッチボンド法や高圧水流で絡ませるスパンレース法、上記ニードルパンチングを施したシートまたはマットに上記合成樹脂バインダーを含浸して結着する方法、更に上記繊維を編織する方法等によって製造される。
【0023】
上記繊維シートの他、本発明にあっては、例えば通気性ポリウレタン発泡体、通気性ポリエチレン発泡体、通気性ポリプロピレン発泡体、通気性フェノール樹脂発泡体、通気性メラミン樹脂発泡体等の通気性プラスチック発泡体からなるシートが用いられても良い。
なお、本発明に係る多孔質シートの目付量、厚みは原則任意に設定可能であるが、望ましくは、目付量150〜800g/m、厚み10〜100mm程度に設定され得る。
【0024】
〔合成樹脂〕
前記したように、本発明に係る吸音材料にあっては、上記紙に、合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合される。上記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂がある。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、エチレンビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリブタジエン(BDR)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)、酢酸繊維素(セルロースアセテート:CA)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリオキシメチレン(=ポリアセタール)(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、全芳香族ポリエステル(POB)等が例示される。
上記熱可塑性樹脂は、上記紙に含浸または塗布されて、成形形状保持性および剛性に優れた熱可塑性シートを与える。
上記熱可塑性樹脂は、2種以上混合使用されてもよく、また熱可塑性樹脂を阻害しない程度で若干量の熱硬化性樹脂の1種または2種以上を混合使用してもよい。該熱可塑性樹脂は取り扱いが容易な点から水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、特に加熱によりエステル結合を形成して硬化する熱硬化性アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が使用される。該熱硬化性樹脂も取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂は二種以上が混合使用されてもよい。
上記合成樹脂、特に熱硬化性樹脂の添加は、紙の成形形状保持性と剛性を共に向上せしめる。
【0025】
〔合成樹脂および/または合成樹脂前駆体〕
前記したように、本発明に係る吸音材料にあっては、多孔質シートに、合成樹脂および/または合成樹脂前駆体を塗布および/または含浸させてもよい。合成樹脂および/または合成樹脂前駆体としては、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、合成樹脂前駆体が例示される。
【0026】
上記熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、エチレンビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリブタジエン(BDR)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)、酢酸繊維素(セルロースアセテート:CA)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリオキシメチレン(=ポリアセタール)(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、全芳香族ポリエステル(POB)等が例示される。このような熱可塑性樹脂は、上記多孔質シートに含浸または塗布されて、成形形状保持性および剛性に優れた熱可塑性シートを与える。
【0027】
上記熱可塑性樹脂は、2種以上混合使用されてもよく、また熱可塑性シートの熱可塑性樹脂を阻害しない程度で若干量の熱硬化性樹脂の1種または2種以上を混合使用してもよい。該熱可塑性樹脂は取り扱いが容易な点から水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
【0028】
上記熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、特に加熱によりエステル結合を形成して硬化する熱硬化性アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体が使用されてもよい。該熱硬化性樹脂も取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂あるいは合成樹脂前駆体は二種以上混合使用されてもよい。
上記合成樹脂、特に熱硬化性樹脂の添加は、紙および多孔質シートの成形形状保持性と剛性を共に向上せしめる。
【0029】
また、特に本発明で上記多孔質シートに塗布および/または含浸される樹脂として望ましいのは、フェノール系樹脂である。該フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0030】
(フェノール系化合物)
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0031】
(一価フェノール)
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0032】
(多価フェノール)
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0033】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
なお上記多価フェノールのうち、レゾルシンおよびアルキルレゾルシン等のレゾルシノール系化合物の一種または二種以上の混合物(エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物を含む)と、アルデヒド及び/又はアルデヒド供与体からなるレゾルシノール系樹脂は、本発明のフェノール系樹脂として使用されることが望ましい。
【0034】
(ホルムアルデヒド供与体)
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0035】
(フェノール系樹脂の製造)
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常粉末で提供される。
本発明に使用されるフェノール系樹脂にあっては、まず上記フェノール系化合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて初期縮合物とし、該初期縮合物を繊維シートに付着させた後、硬化触媒および/または加熱によって樹脂化する。
上記縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0036】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。
上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0037】
例えば、上記(a) 一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0038】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0039】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0040】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0041】
(フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0042】
(スルホメチル化剤)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0043】
(スルフィメチル化剤)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0044】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0045】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0046】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0047】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0048】
〔難燃剤〕
また、上記紙および/または多孔質シートには、難燃剤が添加されてもよい。上記難燃剤としては、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系難燃剤、アミノ樹脂系難燃剤、膨張黒鉛等がある。
本発明においては特に水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤が使用されることが望ましい。水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤は吸音性表皮材及び吸音材に耐水性、耐久性に優れた難燃性を付与する。特に本発明の繊維シートおよび通気性多孔質材料は粗構造を有しているから、上記粉末状の固体難燃剤が内部にまで円滑に浸透して高度な難燃性ないし不燃性を付与する。
【0049】
また本発明にあっては、上記多孔質シートである繊維シートの繊維として金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維、石綿繊維等の鉱物繊維、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、羊毛(天然ウール)等の獣毛繊維などといった不燃・難燃・防炎繊維を使用した場合、後述する難燃剤を使わずとも、吸音性表皮材、吸音材に不燃・難燃・防炎性を付与することが可能となる。
【0050】
本発明で使用する合成樹脂あるいは合成樹脂前駆体には、更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ、雲母、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂等の難燃剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタル酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0051】
また、本発明に係る撥水撥油剤としては、天然ワックス、合成ワックス、フッ素樹脂、シリコン系樹脂等がある。
【0052】
上記紙または多孔質シートに上記合成樹脂を塗布あるいは含浸するには、通常上記合成樹脂の水性エマルジョンあるいは水性ディスパーションをスプレー塗布するか、あるいは該紙または多孔質シートを浸漬するか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
上記樹脂を含浸または塗布した紙または多孔質シート中の樹脂量を調節するには、樹脂を含浸または塗布後、該紙または多孔質シートを絞りロールやプレス盤を使用して絞る。この場合、該紙または多孔質シートはその厚みを減少させるが、該多孔質シートが繊維シートの場合には該繊維シートが低融点繊維からなるか、あるいは低融点繊維が含まれている場合には、上記樹脂含浸前に該繊維シートを加熱して低融点繊維を溶融させ、繊維を該溶融物によって結着しておくことが望ましい。そうすると該繊維シートは強度および剛性が更に向上し、樹脂含浸の際の作業性が向上し、また絞り後の厚みの復元も顕著になる。
上記繊維シートに上記樹脂を含浸または塗布した後は、上記繊維シートを常温または加熱して乾燥させる。
【0053】
〔吸音材料〕
本発明の吸音材料(1)を製造する一般的な方法は、図3D、Eに示すように上記多孔質シート(2)を2枚の単位多孔質シート(2A1)、(2A2)に分割し、該単位多孔質シート(2A1)、(2A2)間に紙(3)を内挿する方法である。この際騒音入射表面側の単位多孔質シート(2A1)の厚みを吸音材料(1)全体の厚みの6/10〜9/10に設定する。
【0054】
上記紙(3)を上記多孔質シート(2A1)、(2A2)間に内挿して吸音材料(1)とする場合、通常の溶液型や水性エマルジョン型の接着剤、粉末状、くもの巣状、溶液型、あるいは水性エマルジョン型のホットメルト接着剤等が使用される。粉末状、くもの巣状のホットメルト接着剤の場合には通気性接着剤層となるため通気性を確保でき、積層材の通気性を阻害しない。
溶液型あるいは水性エマルジョン型の接着剤の場合にはスプレー塗装あるいはシルク印刷塗装、オフセット印刷塗装等によって点状に接着剤を塗布し、積層材の通気性を確保することが望ましい。
なお、上記吸音材料(1)の通気抵抗は0.1〜5.0kPa・S/mの範囲に設定することが望ましい。該通気抵抗が5.0kPa・s/mを超えると、吸音特性および成形性が低下する。
【0055】
本発明の吸音材料(1)の通気抵抗は、必要となる周波数に応じて適宜設定される。該通気抵抗の調整は、紙(3)のパルプ繊維の叩解度、該パルプ繊維相互の絡みや目付量ならびに塗布および/または含浸および/または混合される樹脂の、あるいは多孔質シート(2)の密度や通気抵抗、塗布および/または含浸および/または混合される樹脂の量で調整することができる。なお、塗布および/または含浸および/または混合される樹脂が接着性を有する場合は、特別に接着剤を用いて上記接着層を形成しなくてもよい。
【実施例】
【0056】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載するが、本発明は該実施例にのみ限定されるものではない。
【0057】
[紙と多孔質シートの製造]
<紙3A>
木材パルプ80質量%、非木材パルプ20質量%からなる原料パルプをディスクリファイナーによりJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度が10°SRで叩解し抄紙後、通常のヤンキードライヤー方式により目付量20g/m、クレープ率が28%、通気抵抗0.031kPa・s/mのクレープ加工紙を得た。次に該クレープ加工紙の表面にアクリル酸エステル樹脂エマルジョンをスプレー方式により固形分として50g/mで塗布し乾燥させ通気抵抗0.630kPa・s/mの紙(3A)を得た。
<紙3B>
木材パルプ80質量%、非木材パルプ20質量%からなる原料パルプをディスクリファイナーによりJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度が35°SRで叩解し抄紙後、通常のヤンキードライヤー方式により目付量20g/m、クレープ率が28%、通気抵抗3.34kPa・s/mのクレープ加工紙である紙(3B)を得た。
【0058】
<多孔質シート2A>
ポリエステル繊維(繊度:15dtex)70質量%および低融点ポリエステル繊維(繊度:4.4dtex、融点:120℃)30質量%からなる目付量300g/mの繊維ウェブを多孔質シート(2A)とした。
<多孔質シート2B>
ポリプロピレンマイクロファイバー繊維(平均直径2μm)65質量%、およびポリエステル繊維(繊度:2.2dtex)35質量%からなる目付量400g/mのウェブシートからなる極細繊維主体の厚さ20mmのものを多孔質シート(2B)とした。
【0059】
[試料の作製]
【0060】
〔実施例1〕
上記の紙(3A)と多孔質シート2Aとを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3Dの配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.1を得た。
【0061】
〔実施例2〕
上記の紙(3A)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3Eの配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.2を得た。
【0062】
〔比較例1〕
上記の多孔質シート(2A)のみを用い150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて板状に成形して図3Aの配置構成で厚さ20mmの成形吸音材料No.11を得た。
【0063】
〔比較例2〕
上記の紙(3A)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A)とを接着しかつ板状に成形して図3Bの配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.12を得た。
【0064】
〔比較例3〕
上記の紙(3A)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3Cの配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.13を得た。
【0065】
〔比較例4〕
上記の多孔質シート(2B)のみからなる成形吸音材料No.21を製造した(図3A´の配置構成)。
【0066】
〔比較例5〕
上記の紙(3A)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3A)と上記多孔質シート2Aとの間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3A)と上記多孔質シート(2A)とを接着しかつ板状に成形して図3Fの配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.16を得た。
【0067】
〔比較例6〕
上記の紙(3B)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A)とを接着しかつ板状に成形して図3B´の配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.22を得た。
【0068】
〔比較例7〕
上記の紙(3B)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3C)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3C´´の配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.33を得た。
【0069】
〔比較例8〕
上記の紙(3B)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3D´の配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.24を得た。
【0070】
〔比較例9〕
上記の紙(3B)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A1)、(2A2)とを接着しかつ板状に成形して図3E´の配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.25を得た。
【0071】
〔比較例10〕
上記の紙(3B)と多孔質シート(2A)とを用い、通気性接着剤として目付量10g/mの共重合ポリアミド(融点:130℃)からなる蜘蛛の巣状のホットメルト接着剤を上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A)との間に介在せしめ、150℃で1分間加熱した後、冷却プレス成形機にて上記紙(3B)と上記多孔質シート(2A)とを接着しかつ板状に成形して図3F´の配置構成を有し厚さ20mmの成形吸音材料No.26を得た。
【0072】
表1に各実施例および比較例における成形吸音材料中の紙の積層位置を、図3A、B、C、D、E、F、A´、B´、C´、D´、E´、F´に各実施例および比較例における成形吸音材料の配置構成の説明図を示す。
【0073】
【表1】



【0074】
上記表1および図3A、B、C、D、E、F、A´、B´、C´、D´、E´、F´、に示す吸音材料の各々についての通気抵抗と垂直入射吸音率による吸音率の測定結果を表2に示す。なお、垂直入射吸音率の測定は図3に示すような配置で行った。またNo.1、No.2を図4に、No.11、No.12、No.13を図5に、No.21、No.22、No.23を図6に、No.24、No.25を図7に、No.16、No.26を図7に、それぞれ周波数に対する吸音率としてグラフで示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2および図4〜図8を参照すれば次のことが判る。
No.1、No.2については、吸音材料製造時における叩解度が10°SRのパルプ繊維を用いた紙に、樹脂を塗布することによって、通気抵抗が0.05〜3.0kPa・s/mとなるように調整した紙3Aを使用したものであり、略全体的に良好な吸音率を示す。
No.11では、成形物自体の通気抵抗が低いため吸音率は極端に悪い。
No.12、No.13は、No.1、No.2と同じ紙3Aおよび多孔質シート2Aを材料とする吸音材料を用いても、紙を内挿する位置により成形物の通気抵抗が同程度であっても周波数が3000Hz以上の吸音率が悪くなる。
No.16は、紙層が音源からの距離として9/10を超える位置(10/10、つまり多孔質シートの音源側とは反対の面)にきては、吸音性能は向上しないことが判る。また、No.26も同様である。
また、No.22、No.23、No.24、No.25は叩解度が30°SR以上で、通気抵抗も大きく(5.0kPa・s/m以上)、1500Hz以上では吸音性能が低下することが判る。
No.21の極細繊維からなる多孔質シート(2B)のみからなるものは通気抵抗も適度であり概ね吸音率は良好であるが本発明の実施例と比較すると減衰的な吸音性能は劣る。これは、本発明の紙に使用されるパルプ繊維がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度10°SR〜30°SRになるように叩解されることによってパルプ表面に微細な多数の細孔を生じ、この細孔によって本発明の吸音材料に適度な通気抵抗および良好な吸音性能が及ぼされると考えられる。
また、この紙を多孔質シートに配置する場合、音源側から6/10〜9/10奥の位置に配置すると3000Hz以上で吸音性能が低下しにくくなる。
【0077】
〔実施例3〕
ケナフ繊維60質量%、ポリエステル繊維25質量%、低融点ポリエステル繊維(融点:140℃)15質量%からなる繊維ウェブに、スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期共縮合物樹脂水溶液を繊維に対し25質量%の塗布量になるようにスプレー塗布した後、150℃で加熱し該樹脂をB状態とし、厚さ15mmで目付量150g/mの多孔質シート(2E)を得た。
また同様にして厚さ5mm、目付量50g/mの多孔質シート(2F)を得た。
次に、木材パルプからなる原料パルプをディスクリファイナーによりJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度が18°SRからなる紙(3E)(通気抵抗:0.087kPa・s/m、目付量16g/m)を上記の多孔質シート(2E)に重合し、その上にアクリルエマルジョンを固形分として30g/mの塗布量で塗布し、乾燥後の重合シートの通気抵抗が0.698kPa・s/mになるように調節した。さらにその上に上記の多孔質シート(2F)を重合し、200℃で所定形状に成形して成形吸音材料No.4を得た。
【0078】
この成形吸音材料No.4は成形部分により違いがあるが、厚さは12〜18mmで通気抵抗は0.850〜1.147kPa・s/m程度の範囲であり、軽量で吸音性能が良好であった。この成形吸音材料No.4は騒音源側に多孔質シート(2E)がくるように配置され、自動車のフードサイレンサ、ダッシュサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、フェンダーライナサイレンサ、カウルサイドサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ等に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の吸音材料は軽量で吸音性能に優れており、自動車の内装材料として特に有用であるから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 吸音材料
1a エンボス加工紙
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F 多孔質シート
3、3A、3B、3C、3D、3E 紙
p 突起
h 突起高さ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
叩解度がJIS P 8121−1995 5.ショッパーろ水度試験方法に規定されるショッパーろ水度10°SR〜30°SRのパルプ繊維からなり、合成樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されていることによって通気抵抗が0.05〜3.0kPa・s/mの範囲に調整されている紙が多孔質シートに内挿された吸音材料であって、該紙は、該吸音材料の騒音入射表面より該多孔質シートの厚さの6/10〜9/10奥側に内挿されていることを特徴とする吸音材料。
【請求項2】
上記多孔質シートの厚みは10mm以上である請求項1に記載の吸音材料。
【請求項3】
上記吸音材料の通気抵抗は0.1〜5.0kPa・s/mである請求項1または請求項2に記載の吸音材料。
【請求項4】
上記紙はクレープ加工および/またはエンボス加工を施すことによって表面に多数の凹凸が形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸音材料。
【請求項5】
上記多孔質シートには合成樹脂および/または合成樹脂前駆体が塗布および/または含浸および/または混合されていることによって上記吸音材料の通気抵抗が調節されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吸音材料。
【請求項6】
上記多孔質シートは2枚の単位多孔質シートの複層物からなり、上記紙は上記単位多孔質シート間に挿入されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の吸音材料。
【請求項7】
上記紙と上記単位多孔質シートとは通気性接着層によって接着されている請求項6に記載の吸音材料。
【請求項8】
上記吸音材料は所定形状に成形されている請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の吸音材料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54379(P2013−54379A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−250567(P2012−250567)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2008−267514(P2008−267514)の分割
【原出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】