説明

吸音材用表皮

【課題】撥水性、マスキング性及び成型時の追随性に優れ、特に嵩だか吸音材の保護に適した吸音材用表皮を提供すること。
【解決手段】メルトブロー繊維から構成された不織布からなり、エンボスによる圧接面積が7%以上である吸音材用表皮。さらには、メルトブロー繊維がポリアミド成分を主とする繊維であることや、メルトブロー繊維の直径が10μmを超えるものであること、メルトブロー繊維が非ハロゲン系難燃剤を含有するものであること、メルトブロー繊維が顔料を含有するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材用表皮に関し、さらに詳しくは撥水性及びマスキング性に優れる吸音材用表皮に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気製品、建築用壁材、車両など多くの機械製品には吸音材が用いられている。特に車両、その中でも自動車においては、車外加速騒音、アイドリング音、排気音などを防止する目的で、あるいは車室内への騒音の侵入を防止する目的に吸音材が幅広く用いられている。その吸音材の主な材料としては繊維からなる嵩高性原反が挙げられるが、そのままでは低密度で水等を浸透しやすく耐久性にも劣るため、その表面を覆うために吸音材用表皮が用いられている。また、コストを低減するために、吸音材の材料としては衣類等を解繊したリサイクルの繊維、いわゆる雑反毛が使用されることが多いが、この吸音材用表皮材には、その表面をマスキングし審美性を向上させる目的も要求されている。
【0003】
このような吸音材用表皮として、例えばニードルパンチング不織布やスパンボンド不織布を用いた場合、必要な撥水性やマスキング性を得るためには、その斑の多さから高目付けにしなければならないという問題があった。部分的に散在する低目付けの部分が、表皮に使用した場合に欠点となるからである。しかし、特に自動車用途については燃費向上のために軽量化が求められており、低目付けでありながら高品質の表皮が要求されていた。
【0004】
そこで例えば特許文献1では、メルトブロー製法による低密度のポリプロピレン製不織布が用いられているが、低密度であって吸音性こそ優れるものの耐熱性等に劣り、表皮材としては不十分なものであった。また特許文献2では、繊度が0.5dtex以下のメルトブロー不織布を、吸音材である熱接着性有機繊維不織布の表面に熱処理により積層した複合不織布が開示されている。しかしここでの熱処理はドライヤー等による弱いものであり、このようなメルトブロー不織布では、吸音材を十分に保護することはできず、吸音材用表皮としての性能は、まだ不満足なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−203268号公報
【特許文献2】特開2009−184296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、撥水性、マスキング性及び成型時の追随性に優れ、特に嵩だか吸音材の保護に適した吸音材用表皮を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸音材用表皮は、メルトブロー繊維から構成された不織布からなり、エンボスによる圧接面積が7%以上であることを特徴とする。
さらには、メルトブロー繊維がポリアミド成分を主とする繊維であることや、メルトブロー繊維の直径が10μmを超えるものであること、メルトブロー繊維が非ハロゲン系難燃剤を含有するものであること、メルトブロー繊維が顔料を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撥水性、マスキング性及び成型時の追随性に優れ、特に嵩だか吸音材の保護に適した吸音材用表皮が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸音材用表皮は、メルトブロー繊維から構成された不織布から構成される。
ここでメルトブロー繊維とは、熱可塑性重合体を溶融紡糸しながら、口金ノズルの直下にて高速加熱気流を噴射させて繊維を細化して得られる繊維である。メルトブロー繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレンなど各種の重合体を用いることができ、繊維形成性があれば2種以上の熱可塑性樹脂を混合したものであってもよい。中でも熱可塑性樹脂としてはポリアミド樹脂であることが好ましく、メルトブロー繊維がポリアミド成分を主とする繊維であることが好ましい。ポリアミド成分を主とする場合には、50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上の成分が、ポリアミド樹脂であることが好ましい。特にはこのポリアミド樹脂としては、ナイロン6やナイロン66を選択することが、融点が高くかつ取り扱い性に優れており好ましい。
【0010】
また、熱可塑性樹脂中には難燃剤が含有されていることが好ましい。好ましく用いられる難燃剤としては、ノンハロゲン系難燃剤であることが好ましく、特には窒素系の難燃剤であることが好ましい。含有量としては1重量%〜35重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%であることが最適である。難燃剤を添加する時期としては、後処理よりも紡糸前の溶融段階の熱可塑樹脂中に混入することにより、より斑の少ない安定した難燃効果をもたらすことができ好ましい。
【0011】
吸音材用表皮として隠蔽性(マスキング性)を高め審美性を向上させるには、熱可塑樹脂が顔料を含有するものであることも好ましい。含有量としては0.1重量%〜35重量%の範囲であることが、さらには0.3〜10重量%であることが好ましい。例えば顔料を高濃度に含有するマスターバッチを用意しておき、熱可塑性樹脂に混入させることで容易に好みの含有量に調整することができる。さらに隠蔽性(マスキング性)を高めるためには、顔料がカーボンブラックであることが好ましい。
【0012】
メルトブロー繊維から構成された不織布とは、例えば前述のような熱可塑性樹脂からなるメルトブロー繊維を、メッシュスクリーン上に捕集することにより得ることができるものである。このメルトブロー不織布は、メッシュスクリーン上などの捕集面上に平面状に均一にそして高密度で集積されるため、嵩だか吸音材の保護に特に適したものとなる。メルトブロー繊維からなる不織布は一般的なニードルパンチング法などのように3次元交絡した短繊維不織布とは異なり、二次元的に配列した長繊維不織布であるために、比較的交絡密度は低くても必要強度を得ることができるのである。また本発明のような長繊維からなるメルトブロー不織布は、厚さ方向の配列が少ないために高密度不織布となりやすく、本質的に遮音性や保護性能に優れるものとなる。
【0013】
また本発明のメルトブロー繊維は、高圧の空気流により網状繊維となり、ほとんど延伸を施されていない未延伸状態の繊維から構成される。したがって多くの未配向部分を含み、比較的低温でも軟化することから、ガラス転移点温度以上でエンボス処理することにより、バインダー成分を含まなくとも、未配向部分が軟化、接着したノーバインダータイプのシート状物が容易に得られるのである。
【0014】
本発明にて用いられるメルトブロー繊維の繊維径としては10μm以上が好ましく、平均値として10〜25μmの範囲であることが、特には12〜15μmの範囲であることが好ましい。このような繊維径は、顕微鏡による画像から容易に計測することができる。メルトブロー繊維は一般にはもっと細繊度のものが用いられることが多いが、本発明においては細すぎる場合には耐水性、耐油性などに劣る傾向にある。逆に太すぎると若干均一性に劣り、また隠蔽性も低下する傾向にあり、本発明においては通常のメルトブロー繊維よりも太い繊維であることが、吸音材用表皮として総合物性が好ましいものとなる。このようなメルトブロー繊維の繊維径は、口金のノズル径や吐出量によって調整することが可能である。
【0015】
さらに本発明の吸音材用表皮は、上記のようなメルトブロー繊維からなる不織布をエンボス処理によって圧接したものであることが必要である。ここでエンボス処理とは、不織布をエンボスロールを用いて熱プレス処理するものであり、通常は表面が平滑なロールとエンボス柄を有する加熱ロールの2本のロールによってプレスされる。プレス時の線圧としては1〜50kg/cmであることが好ましく、線圧が低すぎる場合には十分な強度が付与できず、線圧が高すぎる場合には不織布を構成する繊維がフィルム化してしまい、遮音性が上がりすぎ、音の反響や音の篭りににより吸音材の効果を阻害し、吸音材用表皮として好ましくない傾向にある。また不織布の伸度が低下し、成型時の追随性が低下する傾向にある。
【0016】
エンボス処理に用いられるエンボス柄を有するエンボスロールは、そのエンボスパターン部に存在する繊維同士を部分的に熱融着させるものであるが、本発明ではそのときのエンボスロールの圧接面積率は7%以上が必要である。さらには10%〜70%であることが、特には20%〜40%であることが好ましい。通常のメルトブロー不織布のように圧接面積が5%程度未満と少ない場合、本発明の主目的である高い撥水性を確保することはできない。本発明においては、エンボスロールの圧接面積率が7%以上と大きいために、高い撥水性を確保することが可能となったのであり、さらには、耐酸性や耐アルカリ性などの薬品、特に水溶性の薬品に対する高い防護性能を持った防音材用表皮となったのである。本発明と異なりエンボス圧接面積が少ない場合には、繊維の融着部分である高密度部分の面積が少なくなり、吸音性こそある程度確保されるものの、遮音性が大きく低下したものとなる。加えてエンボス柄の凹凸の間隔が大きくなり、表面凹凸による撥水性や耐薬品性の向上効果が発揮されず、それらの性能も低下する。さらに融着区域が少ない場合は当然のことながら機械的強度は低下し、毛羽等が発生し外観の品質が低下するばかりでなく、良好な寸法安定性を確保することが困難になる。
【0017】
従来、メルトブロー繊維不織布にエンボス処理を行うことは、品質や風合いを低下させるものとして通常は避けられてきた手法であった。一部においてエンボスを行い最低強度を確保する場合こそあったものの、メルトブロー繊維の強度が極端に弱い欠点を補うために仕方なく採用された技術との認識であった。また圧接面積が5%を超えるとエンボス処理による強度向上効果が低下するため、せいぜい5%程度のエンボスが通常採用される条件であった。
【0018】
本発明の吸音材用表皮は、これらエンボスを行わないあるいは圧接面積が少ない従来のメルトブロー繊維不織布では満足し得ない特性を得るために、あえてエンボスロールの圧接面積を高め、吸音材用表皮としての物性を確保することに成功したのである。
【0019】
ただしエンボスによる圧着面積があまりにも多すぎると、表皮全体がフィルム化し、反響音が太鼓現象、すなわち反響、音の篭り、共鳴などを起こす傾向にある。またその後の成型時に繊維が破損し、毛羽等が発生する傾向が見られる。このような傾向は特に繊維径が細い場合に顕著化するため、本発明においては先に述べたように繊維径が10μm以上の比較的太い繊維であることが好ましい。また、エンボスをかけすぎると繊維の伸度が低下し、得られた表皮の成型性や加工時の追随性が低下する傾向にある。特にこの伸度に関しては、ロールの接圧よりも圧接面積の影響が大きく働く傾向にあるため注意が必要である。
【0020】
エンボスの形状は限定されるものではなく、丸型、楕円形、菱形、三角型、T字型、井型等の任意の形状が用いられるが、特には均一性が確保しやすい菱形(ダイヤ型)であることが好ましい。
【0021】
エンボス時の処理温度としては、用いるメルトブロー繊維のガラス転移点温度以上、融点以下の温度であることが好ましい。例えばメルトブロー繊維としてポリアミド繊維を用いる場合には50℃〜200℃であることが好ましい。メルトブロー繊維は十分な延伸がされていないため、このようなエンボス熱処理により結晶構造が変化し、耐熱性や耐薬品性、撥水性等が著しく向上するのである。
【0022】
本発明の吸音材用表皮としては、その目付けは20〜200g/mの範囲であることが好ましく、さらには30〜100g/m、特には55〜65g/mの範囲であることが好ましい。厚さとしては0.1〜0.7mmの範囲であることが好ましく、さらには0.2〜0.4mm、特には0.25〜0.35mmの範囲であることが好ましい。目付けが少なすぎたり、薄すぎたりすると所望の性能を得ることが困難となる傾向にあり、目付けが多すぎたり、厚すぎたりする場合には、軽量化の目的に反するため、実用的には採用されにくい。
【0023】
このような目付けや厚さは、遮音性能に深く関与しており、代用特性としては通気度が相関する。通気度としては5〜100cm/cm・秒の範囲であることが好ましく、できれば10〜50cm/cm・秒、特には20〜45cm/cm・秒の範囲であることが好ましい。本発明の吸音材用表皮は、メルトブロー繊維不織布であるために高密度であるにもかかわらず、目付けに比較して低い通気度、言い換えると「高い遮音性」が達成された。またメルトブロー不織布であるために適度に音を通過させ、吸音材用の表皮に適するものとなった。フィルムのように通気度が全く確保されずに、太鼓現象が発現することが無いので有る。
【0024】
吸音材の保護を行う観点からは、吸音材用表皮としてはその強度も重要であり、5N/5cm以上あることが好ましい。さらには10N/5cm以上、特には30〜60N/5cmの範囲であることが好ましい。また、安定的に生産するためにも縦横の強度バラツキが一定範囲内にあることが好ましい。縦/横の強度比としては0.5〜2の範囲であることが好ましい。本発明の吸音材用表皮では、メルトブロー法を採用することにより、このような均一な不織布を安定的に生産することができるようになり、例えばその後の工程でのカールや反りなどの発生を有効に防止することが可能となった。さらに本発明ではエンボス処理を行っているが、エンボス処理では一般的に強度の弱い横方向に特に有効であり、本発明の必須要件である圧接面積の大きなエンボス処理は、得られた表皮の縦/横バランスを向上させる効果がある。
【0025】
伸度としてはさまざまな形態に追従させるために一定以上高い値であることが好ましく、5%以上、できれば10%以上であることが好ましい。特には40%〜60%の範囲であることが好ましい。どのような部品にでも適用するためには、この伸度の縦横方向のバラツキは少ない方が好ましく縦/横の伸度バランスとしては0.6〜1.2の範囲であることが、特には0.9〜1.1の範囲内にあることが好ましい。
【0026】
また、使用する部位に対する吸音材用表皮の形状の追随性については、不織布としての伸度以外に、繊維の伸度もある程度高いことが必要であり、その観点からはナイロン6などのポリアミド繊維であることが好ましい。
【0027】
審美性や耐久性の観点からは表面には毛羽が発生しないことが好ましく、繊度を高くしたり、エンボス条件を厳しくすることにより、より毛羽の少ない吸音材用表皮となる。
このような本発明の吸音材用表皮は、十分なエンボス処理が行われたメルトブロー繊維不織布であるために、特段の防燃処理や撥水処理を後加工工程において行わなくとも十分な性能を有し、経済的にも極めて優れた吸音材用表皮となる。
【0028】
本発明の吸音材用表皮は、吸音材の表面に用いるものであり、例えば吸音材が嵩だか不織布の場合、不織布を製造する際に繊維に接着剤成分となるフェノール樹脂を混入して嵩だか不織布とし、その表面に本発明の吸音材用表皮を積層し、加熱接着することで表皮のついた吸音材とすることができる。特に吸音材の本体として、いわゆる衣料用等に使用されていた織布を開繊してできる雑反毛を用いた場合には、本発明の吸音材用表皮としてカーボンブラックにて原着されたものを使用することにより、内部が透けないために高い審美性も確保することができ最適である。
【0029】
このような本発明の吸音材用表皮を表面に有する複合吸音材は、撥水性、難燃性、耐薬品性を有しながら、追随性、審美性に優れるものとなる。また各種加工形状への追随性も高く、自動車のダッシュパネル、天井、カーペット部などの車両用内装材やエンジンフードインシュレーターをはじめ各種の吸音用の部材に用いることが可能となる。また電気製品や建築資材、土木資材用の吸音材としても好適に用いられる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各測定値は次の方法により測定した。
【0031】
(1)目付け
JIS−L1906(1994)に準拠し、試料を30cm×30cmの試験片をカットし、その重量を測定し、平方メートル当たりの重さに換算した。標準偏差は幅方向に3箇所ずつ長さ方向にカットし、計100箇所測定して求めた。
【0032】
(2)厚さ
JIS−L1906(1994)に準拠し、厚み計デジタルリニアゲージ(加圧子;直径0.79cm,測定力10kPa(100gf/cm))で測定した。標準偏差は幅方向に9箇所ずつ長さ方向に計100箇所測定して求めた。
【0033】
(3)強伸度
JIS−L1906(1994)に準拠し、幅5cm、長さ30cmの試験片縦、横共に3枚とり、間隔200mm、引張速度100mm/分の条件にて測定し、3枚の各最高値の平均値を強度及び伸度とした。
【0034】
(4)撥水性
表面に、ピペットを使用して約0.05〜0.1mlに調整した水滴を10ヵ所滴下し、3時間放置して染み込まなかった場合は○、一箇所でも染み込んだ場合は×とした。
【0035】
(5)耐薬品性
表面に薬品(エンジンオイル、ガソリン、冷却液、ウォッシャー液、ブレーキオイル)を一定量(ピペット又はガラス棒を用い、約0.05〜0.1ml滴下)付着させ、24時間放置後、未使用のガーゼで薬品を拭き取り、表面状態に異常が無いか調べた。全ての薬品で表面状態に異常がない場合を○、一部薬品に溶解等している場合を×とした。
【0036】
(6)燃焼性
1000g/mの雑綿を固めた片面に基布をおき、20mm以下にプレス成型した。その後、常温(23℃×50%)中にて24時間以上冷却し、FMVSS No.302(水平)法により、基布面を下向きにして測定を行った。試験回数は縦5回行い、全ての測定値が100mm/分以下の場合を○、例え1サンプルでも超える場合を×とした。
【0037】
(7)マスキング性
雑綿と接着し、下地が透けて見えるかどうかで判断した。×が最も透けており、遮蔽性(マスキング性)が優れる順に、○、△、×と評価した。
【0038】
(8)通気度
JIS−L1906(1994)に準拠し、フラジール法にて測定した。単位はcm/cm・秒とした。
【0039】
[実施例1]
ポリアミド樹脂(ナイロン6、融点225℃)100重量部に難燃剤(窒素系難燃剤)8重量部、顔料(カーボンブラック)0.35重量部を含有する樹脂を用い、メルトブロー製法にて平均繊維径13μmのメルトブロー繊維からなる、目付け60g/mのメルトブロー不織布を作成した。
得られた不織布を圧着面積30%(頂上面積1.2mmのダイヤ柄、ロール軸方向ピッチ2.24mm、ロール円周方向ピッチ1.9mm、深さ0.37mm)、温度150℃のエンボスロールにて、ローラー線圧力3.0MPaの条件にてエンボス処理を行い吸音材用表皮を得た。
得られた吸音材用表皮には明確にエンボス柄が刻印されており、目付け60g/m(標準偏差0.1)、厚さ0.30mm(標準偏差0.03)の均一な厚さのシート状物であった。また通気度は44cm/cm・秒、強度は縦30N/5cm、横20N/5cm、伸度は縦横共に40%と縦横物性バランスに優れたものであった。また撥水性は3時間放置後も染み込みが無い優れたものであり、耐薬品性も十分なものであった。表1に物性を示した。
この吸音材用表皮を、フェノール樹脂を含む雑反毛と加熱接着して吸音材を作成したところ、裏側が透視されること無く審美性に優れた黒色吸音材であり、吸音性にも優れたものであった。
【0040】
[実施例2,3]
目付けを50g/mと40g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして吸音材用表皮を得た。表1に物性を併せて示す。
【0041】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂70重量部とポリプロピレン樹脂30重量部からなる繊維径35μmのバーストファイバーと、直径14μmのポリエチレンテレフタレート繊維を用いて積層延展し、薬品による難燃加工及び撥水処理を後処理にて行って、目付け60g/m、厚さ0.15mmのシート状物を得た。後処理により難燃性や撥水性は確保できたものの、強度が10N/5cmと低く、また不織布に密度斑があり部分的に裏面が透けており、また通気度も高く遮音性に劣り、全体に表皮としての物性に劣るものであった。表1に物性を併せて示す。
【0042】
[比較例2]
エンボス処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして目付け60g/mのシート状物を得た。厚さが厚いにもかかわらずマスキング性に劣り、撥水性は実施例1よりかなり劣るものであった。表1に物性を併せて示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブロー繊維から構成された不織布からなり、エンボスによる圧接面積が7%以上であることを特徴とする吸音材用表皮。
【請求項2】
メルトブロー繊維が、ポリアミド成分を主とする繊維である請求項1記載の吸音材用表皮。
【請求項3】
メルトブロー繊維の直径が10μmを超えるものである請求項1または2記載の吸音材用表皮。
【請求項4】
メルトブロー繊維が非ハロゲン系難燃剤を含有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の吸音材用表皮。
【請求項5】
メルトブロー繊維が顔料を含有するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の吸音材用表皮。

【公開番号】特開2013−14856(P2013−14856A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148266(P2011−148266)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(391014435)ユニセル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】