説明

吸音特性複合シート

【課題】2000Hz以下の周波数で優れた吸音性能を示す吸音材を提供する。
【解決手段】発泡倍率が10〜40倍のポリオレフィン系発泡体2からなるハニカム構造の基材の上下に不燃性のポリオレフィン系発泡体シート3を積層することにより、垂直入射吸音率のピークが500〜2000Hzの範囲内になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性に優れ、不燃性、断熱性及び軽量である吸音特性複合シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や列車等の車両や産業機械、電気製品等には種々の構成の吸音材が知られており、繊維状不織布を用いた物やハニカム吸音材等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−285086号公報
【特許文献2】特開2006−160197号公報
【特許文献3】特開2007−137045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献記載の吸音材は、周波数2000〜5000Hzの範囲内に吸音率のピークがあり、それより低い2000Hz以下の周波数では吸音性能が劣っていた。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決する吸音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸音性、断熱性に優れるハニカム構造のポリオレフィン系発泡体の上下に、不燃性を有するポリオレフィン系発泡体シートを熱融着した複合シートを開発した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸音特性複合シートは、周波数1000Hzにおける吸音率が80%であり、不燃性、断熱性及び軽量であり、自動車や列車等の車両や産業機械、電気製品等の吸音断熱材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の吸音特性複合シートの一例の水平方向の断面図である。
【図2】本発明の吸音特性複合シートの一例の垂直方向の断面図である。
【図3】本発明の吸音特性複合シートの吸音特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る吸音特性複合シートの実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1及び図2は、それぞれ本発明の実施の形態である吸音特性複合シートを示すものであり、図1は、水平方向の断面図であり、図2は、垂直方向の断面図である。
【0011】
本発明の吸音特性複合シートは、ポリオレフィン系発泡体2で構成されたハニカム構造の基材の上下に、不燃性を有するポリオレフィン系発泡体シート3を積層した構造を有する。
【0012】
ポリオレフィン系発泡体2は、ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤を添加して発泡させて得られる。発泡倍率は10〜40倍であることが好ましい。発泡倍率が10倍未満の場合は、発泡体が硬く、複合シートの重量が重くなり、吸音性、断熱性も劣る。発泡倍率が40倍を超える場合は、均一な発泡体が得られない。
【0013】
ポリオレフィン系発泡体シート3は、ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤、金属水和物を添加して発泡させて得られる、発泡倍率20〜30倍の発泡シートである。また必要に応じて、ハロゲン系やリン系の難燃剤や三酸化アンチモン等の難燃助剤を添加することもある。ポリオレフィン系発泡体シート3は、不燃性を有しており、国土交通省の不燃材の認定を受けている。
【0014】
本発明でいうポリオレフィンとは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を除く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体を挙げることができる。
【0015】
本発明でいう発泡剤とは、ポリオレフィン樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0016】
本発明でいう架橋剤とは、ポリエチレン系樹脂中において少なくともポリエチレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0017】
本発明でいう金属水和物とは、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等がある。
【0018】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【実施例】
【0019】
次に本発明の吸音性複合シートについて図面に基づいてその好適な態様を具体的に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための吸音性複合シートを例示するものであって、下記の構造に何等限定されるものではない。
なお、本発明の吸音特性複合シートの評価は、以下の方法で測定した数値を採用した。
【0020】
(吸音率)JIS A−1409に従って、垂直入射吸音率を測定した。
【0021】
(断熱性)JIS A1412−2(熱流計法)により熱伝導率を測定した。
【0022】
厚み20mmのポリオレフィン樹脂からなる発泡体(商品名:サンペルカL−2500、発泡倍率30倍、三和化工株式会社製)を6角形の形状で打ち抜きハニカム構造に加工した。加工した発泡体の上下に厚み5mmの不燃性を有するポリオレフィン系発泡体シート(商品名:フネンエース、古河電気工業株式会社製)
を融着して、吸音特性複合シートを作成した。
【0023】
作成した吸音特性複合シートの吸音率を測定したところ、図3に示すとおり、周波数1000Hzにおける吸音率が80%であり、優れた吸音特性を有していた。
【0024】
作成した吸音特性複合シートの熱伝導率を測定したところ、0℃における熱伝導率が0.045W/m・Kであり、優れた断熱性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の吸音特性複合シートは、2000Hz以下の低周波数における吸音率に優れ、不燃性、断熱性及び軽量であり、自動車や列車等の車両や産業機械、電気製品等の吸音断熱材として用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 吸音特性複合シート
2 ポリオレフィン系発泡体
3 ポリオレフィン系発泡体シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系発泡体からなるハニカム構造の基材の上下にポリオレフィン系発泡体シートを積層したことを特徴とする吸音特性複合シート。
【請求項2】
垂直入射吸音率のピークが500〜2000Hzの範囲内にある請求項1記載の吸音特性複合シート。
【請求項3】
ポリオレフィン発泡体の発泡倍率が10〜40倍である請求項1記載の吸音特性複合シート。
【請求項4】
ポリオレフィン系発泡体シートが不燃性である請求項1記載の吸音特性複合シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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