説明

吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法

【課題】強度発現性を向上することが可能となる吹付け材料を提供すること。
【解決手段】(1)セメントコンクリートと(2)下記の(2−1)と(2−2)を含有してなる急結剤スラリーを含有してなる吹付け材料。(2−1)カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩2.5〜40部、セッコウ20〜60部、保水性物質0.1〜5.0部を含有してなる急結剤、(2−2)アルミニウム、イオウを含有してなるスラリー水。スラリー水の使用量が、急結剤100部に対して、100〜400部である該吹付け材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特許文献1参照)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
【0003】
また、従来より使用されている急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩等との混合物、並びに、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等の混合物や、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物等が知られている(特許文献2〜5参照)。
【0004】
これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもセメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、粉塵量が多くなる方法であった。そのため、作業環境が悪化する場合があり、吹付け時には保護眼鏡や防塵マスクなどを着用して作業する必要があり、粉塵量のより少ない工法が求められていた。
【0005】
粉塵発生量が少ない工法として、急結剤をスラリー化してセメントコンクリートに添加混合した後、さらに、アルカリ金属アルミン酸塩の溶液を別途圧送し、混合し、吹付け施工する方法が提案されている(特許文献6参照)。しかしながら、この方法は、高アルカリの液体を使用するため、取り扱いにくく、吹付け時には保護眼鏡や手袋等が必要となり、作業性が低下するという課題があり、スラリー急結剤自体の粉塵が発生する場合があった。
【0006】
これに対して、急結剤をスラリー化し、かつ、セメントコンクリートにミョウバン類を配合することにより、作業環境を改善する急結施工方法が提案されている(特許文献7参照)。
【0007】
しかしながら、工期短縮の面で、強度発現性をさらに向上することが求められるようになった。
【0008】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−27457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開平05−139804号公報
【特許文献7】特開平05−097491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吹付け工法において、強度発現性をさらに向上することが可能となる吹付け材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、
(1)セメントコンクリートと
(2)下記の(2−1)と(2−2)を含有してなる急結剤スラリー
(2−1)カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩2.5〜40部、セッコウ20〜60部、保水性物質0.1〜5.0部を含有してなる急結剤
(2−2)アルミニウム、イオウを含有してなるスラリー水
を含有してなる吹付け材料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吹付け材料を使用することにより、強度発現性を向上するといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートの総称である。また、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0013】
本発明で使用する急結剤スラリーは、急結剤とスラリー水を含有する。
【0014】
本発明で使用する急結剤は、カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩2.5〜40部、セッコウ20〜60部、保水性物質0.1〜5.0部を含有する。
【0015】
本発明で使用するカルシウムアルミネートは、例えば、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlを主成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaOやAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlとを主成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであっても使用可能である。これらの中では、反応活性の面で、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましく、12CaO・7Al(以下、C12という)組成に対応する熱処理物を急冷した非晶質のカルシウムアルミネートがより好ましい。
【0016】
カルシウムアルミネートの粒度は、急結性や初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)3,000cm/g以上が好ましく、5,000cm/g以上がより好ましい。3,000cm/g未満では、急結剤と吹付けセメントコンクリートを混合した急結性吹付けセメントコンクリートの急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0017】
本発明で使用するアルカリ金属硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等が挙げられる。アルカリ金属硫酸塩は、特に限定されないが、無水品が好ましい。ブレーン値は500cm/g以上が好ましく、1,000cm/g以上がより好ましい。500cm/g未満では、急結剤と吹付けセメントコンクリートを混合した急結性吹付けセメントコンクリートの急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0018】
アルカリ金属硫酸塩の使用量は、特に限定されないが、カルシウムアルミネート100部に対して2.5〜40部が好ましく、10〜30部がより好ましい。2.5部未満では、コンクリートの中期、長期強度が得られにくい場合があり、40部を超えると、急結性が弱くなり、リバウンド率や粉塵量といった付着性状が低下する場合がある。
【0019】
本発明で使用するセッコウとしては、無水セッコウ、半水セッコウ、及び二水セッコウ等が挙げられ、使用する目的に応じてこれらのうちの一種又は二種以上を併用することが可能である。これらの中では、急結性を十分に得られる面や初期強度発現性や現場施工に適している面で、無水セッコウの使用が好ましい。
【0020】
セッコウの使用量は、特に限定されないが、カルシウムアルミネート100部に対して、20〜60部が好ましく、30〜50部がより好ましい。20部未満では、強度発現性が十分に得られない場合があり、60部を超えると、急結性が弱くなり、急結性が弱くなり、リバウンド率や粉塵量といった付着性が低下する場合がある。
【0021】
本発明で使用する保水性物質は、特に限定されないが、ベントナイト及びシリカゲル等の無機物、水ガラスと塩化ナトリウムやアルミン酸ナトリウムなどの水ガラスのゲル化剤、さらには、デン粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロ二トリル加水分解物及び一般式RO(AO)H(Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、特に十分な粉塵抑制を発揮するには、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロ二トリル加水分解物及び一般式RO(AO)H(Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質の原料のうちの一種又は二種以上を含有することが好ましく、強度発現性も良好な点で、ポリエチレンオキサイドがより好ましい。ポリエチレンオキサイドの重量平均分子量は、100万〜500万が好ましい。
【0023】
保水性物質の使用量は、特に限定はされないが、カルシウムアルミネート100部に対して、0.1〜5.0部が好ましく、0.3〜3.0部がより好ましく、1.0〜2.0部が最も好ましい。0.1部未満では、吹付け時の急結剤スラリー自体のリバウンド率や粉塵量が多く発生してしまう場合があり、2.0部を超えると、セメントコンクリートとの混合性が悪くなる場合があり、急結性が弱くなり、リバウンド率や粉塵量といった付着性が低下する場合がある。
【0024】
本発明で使用するスラリー水は、アルミニウム、イオウを含有する。
【0025】
本発明で使用するアルミニウムの供給原料は、特に限定されないが、アルミニウムの硫酸塩、アルミン酸塩、及びその他の無機アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物、並びに、アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0026】
アルミニウムの硫酸塩としては、ナトリウム明礬、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ヒドロキシ硫酸、アルミニウム、及び硫酸アルミニウム等が挙げられ、アルミン酸塩としては、アルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウム、及びアルミン酸マグネシウム等が挙げられ、その他の無機アルミニウム化合物については、ボーキサイト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、炭酸水酸化アルミニウム、合成ヒドロサルタイト、及びメタケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
本発明では、これらのアルミニウムの供給原料のうちの一種又は二種以上が使用可能であり、イオウの供給原料ともなるアルミニウムの硫酸塩が好ましく、硫酸アルミニウムがより好ましい。
【0028】
本発明で使用するイオウの供給原料は、特に限定されないが、イオウやイオウ華等の元素状態のイオウの他に、硫化物、硫酸又はその塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び有機イオウ化合物などが挙げられる。
【0029】
硫化物としては、硫化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化鉄、及び五硫化リンなどが挙げられ、硫酸塩としては、硫酸アニリン、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ナトリウム明礬、カリウム明礬、アンモニウム明礬、及び硫酸ヒドロキシルアミン等が挙げられ、亜硫酸塩としては、亜硫酸水素アンモニウムや亜硫酸カルシウム等が挙げられ、チオ硫酸塩としては、チオ硫酸アンモニウムやチオ硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0030】
本発明では、これらのイオウの供給原料のうちの一種又は二種以上が使用可能であり、水への溶解性が高く、凝結性状をより向上させる面、アルミニウム、イオウの両者を供給できる面で、アンモニウム明礬と硫酸アルミニウムのうちの一種又は二種以上が好ましく、硫酸アルミニウムがより好ましい。
【0031】
本発明で使用するスラリー水は、急結剤の粉塵低減効果を有するものが好ましく、急結剤のアルカリ量を抑える面から、アルミニウム、イオウ等を含有するものであればいずれのものにおいても使用可能である。
【0032】
スラリー水中の固形分濃度は、15〜50%が好ましく、20〜40%がより好ましい。15%部未満では強度発現性が低下する場合があり、50部を超えるとスラリー水自体の粘性が増し、施工性が低下する場合がある。
【0033】
本発明で使用するスラリー水の使用量は、急結剤100部に対して、100〜400部が好ましく、200〜300部がより好ましい。100部未満では急結剤スラリーの粘度が上がり、セメントコンクリートとの混合性が悪くなり、初期強度発現性が低下し、リバウンド率が大きくなり、粉塵量が多くなる場合があり、400部を超えると凝結性や強度発現性が低下する場合がある。
【0034】
急結剤スラリーの使用量は、セメント100部に対して、固形分換算で4〜30部が好ましく、6〜24部がより好ましく、8〜17部が最も好ましい。4部未満では吹付けセメントコンクリートの初期凝結を促進しにくい場合があり、30部を超えると長期強度発現性を阻害する場合があり、コスト面からも好ましくない場合がある。
【0035】
ここでセメントとは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。
【0036】
本発明のスラリーでは、必要に応じて、さらに、減水剤等を使用することも可能である。
【0037】
減水剤は、セメントコンクリートの流動性を改善するために使用するものをいい、液状や粉状の何れも使用可能である。減水剤としては、例えば、リグニンスルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系及びポリカルボン酸系等の公知の減水剤が使用可能である。
【0038】
減水剤の使用量は、セメント100部に対して、0.05〜2部が好ましい。
【0039】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントと骨材とを含有するものである。骨材としては、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
【0040】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、従来使用の吹付け設備等が使用可能である。具体的には、例えば、吹付けセメントコンクリートの圧送にはシンテック社製、商品名「MKW−25SMT」等が使用可能である。急結剤の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等が使用可能である。
【0041】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法としては、乾式吹付け工法も施工できるが、粉塵量が多くなる場合があるので、急結剤を使用する前にあらかじめ水をセメントコンクリート側に加えて混練した湿式吹付け工法を使用することが好ましい。
【0042】
セメントコンクリートに使用する水の量は、作業性の面から35%以上が好ましく、40〜55%がより好ましい。35%未満ではセメントコンクリートを充分混合できない場合があり、55%を超えると強度発現性が低下する場合がある。
【0043】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、通常、吹付け圧力は0.2〜0.5MPaが好ましく、吹付け速度は4〜20m/hが好ましい。
【0044】
また、急結剤スラリーを圧送する圧送空気の圧力は、セメントコンクリートが急結剤スラリーの圧送管内に混入した時に圧送管内が閉塞しないように、セメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa大きいことが好ましい。
【0045】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、粉塵やリバウンドを低減するために、粉体急結剤にスラリー水を加えて連続的に急結剤をスラリー化し、この急結剤スラリーを、吐出口先端で吹付けセメントコンクリートと混合して吹付けることが好ましい。
【0046】
急結剤を連続的にスラリー化する方法としては、例えば、粉体急結剤を空気圧送する圧送管の周囲に穴を開け、その穴からスラリー水を圧送管内へ加水してスラリー化し、空気圧送する方法等が使用できる。
【0047】
湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて混練し、ポンプ圧送し、途中にY字管を設けて、その一方から連続的に調整される急結剤スラリーを合流混合して急結性湿式吹付けコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0048】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。尚、実験と測定は20℃、湿度60%で行った。
【実施例1】
【0049】
カルシウムアルミネート100部、表1に示す量のアルカリ金属硫酸塩、セッコウ40部、保水性物質1.0部を含有してなる急結剤100部と、アルミニウム、イオウを含有する、固形分濃度25%のスラリー水250部とを混合撹拌して急結剤スラリーを調製した。アルミニウム、イオウを含有させるために、イオウ・アルミ供給原料を使用した。
また、細骨材/セメント比=3、水/セメント比=50%のモルタルを調製した。
モルタル中のセメント100部に対して、急結剤スラリーを固形分換算で12部添加し、急結性モルタルとし、凝結時間と圧縮強度とを測定した。結果を表1に併記した。
【0050】
<使用材料>
カルシウムアルミネート:C12組成に対応するもの、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
セッコウ:市販無水セッコウ粉砕品、ブレーン値5,900cm/g
アルカリ金属硫酸塩:硫酸ナトリウム、市販品、無水品、ブレーン値1,000cm/g
イオウ・アルミ供給原料a:硫酸アルミニウム、市販品
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、比重3.16
保水性物質:ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量200万、市販品
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、比重2.62
【0051】
<測定方法>
凝結時間:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規(JSCED−102)」に準じて測定
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定した。
ブレーン値:JIS R 5201の比表面積試験に従った。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果から、凝結性状、強度性状の2点において、バランスのとれた結果が得られるのは、実験No.1‐5であることが判った。アルカリ金属硫酸塩が2.5部未満であると、凝結時間は早まるが、圧縮強度が得られない結果となり、アルカリ金属硫酸塩が40部を超えると、圧縮強度は上がるが、凝結時間が遅くなる結果となった。よって、アルカリ金属硫酸塩の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、2.5〜40部が好ましい。
【実施例2】
【0054】
カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩25部、表2に示す量のセッコウ、保水性物質1.0部を含有してなる急結剤100部を使用したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に併記した。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果から、凝結性状、強度性状の2点において、バランスのとれた結果が得られるのは、実験No.1‐5であることが判った。セッコウが20部未満であると、凝結時間は早まるが、圧縮強度が得られない結果となり、セッコウが60部を超えると、圧縮強度は上がるが、凝結時間が遅くなる結果となった。よって、セッコウの使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、20〜60部が好ましい。
【実施例3】
【0057】
各材料の単位量、セメント400kg/m、細骨材1,058kg/m、粗骨材710kg/m、水200kg/m、及び高性能減水剤4kg/mとして吹付けコンクリートを調製し、この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。一方、カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩25部、セッコウ40部、表3に示す量の保水性物質からなる急結剤を、圧送圧力0.5MPaの条件下で、急結剤添加装置「ナトムクリート」を用いて空気圧送し、途中に設けたY字管の一方の管の周囲数カ所に設けた穴から、急結剤100部に対して、アルミニウム、イオウを含有する、固形分濃度25%のスラリー水250部を加水して急結剤スラリーとした。アルミニウム、イオウを含有させるために、イオウ・アルミ供給原料を使用した。
この急結剤スラリーを、セメント100部に対して、固形分換算で13部になるように、Y字管のもう一方から圧送された吹付けコンクリートに混合し、急結性吹付けコンクリートとした。この急結性吹付けコンクリートについてコンクリート圧縮強度、リバウンド率、及び粉塵量を測定した。結果を表3に併記した。
【0058】
<使用材料>
高性能減水剤:ポリカルボン酸系、市販品
粗骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、比重2.64、最大寸法10mm
【0059】
<測定方法>
コンクリート圧縮強度:材齢3時間、24時間の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢1日以降の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性吹付けコンクリートを吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
リバウンド率:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に作成した高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性吹付けコンクリートの量)/(模擬トンネルに吹付けた急結性吹付けコンクリートの量)×100(%)で算出した。
粉塵量:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。吹付け場所より5mの定位置で粉塵量を粉塵計(柴田化学株式会社、測定範囲0.01〜100mg/m3、P−5L型)により測定した。
【0060】
【表3】

【0061】
表3の結果から、圧縮強度、リバウンド量、粉塵量の3点において、バランスの良いデータが得られるのは、実験No.3‐7であることが判った。保水性物質が0.1部未満であると、高い圧縮強度が得られるが、リバウンド率や粉塵量が増えてしまうことが判った。保水性物質が5.0部を超えると、リバウンド量や粉塵量が増えてしまい、圧縮強度が得られない結果となった。よって、保水性物質の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、0.1〜5.0部が好ましい。
【実施例4】
【0062】
カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩25部、セッコウ40部、保水性物質1.5部からなる急結剤100部、アルミニウム、イオウを含有する、表4に示す固形分濃度のスラリー水250部を加水して急結剤スラリーとしたこと以外は、実施例3と同様に行った。結果を表4に併記した。
【0063】
<使用材料>
イオウ・アルミ供給原料b:アンモニウム明礬、市販品
【0064】
<測定方法>
施工性:スラリー水固形分濃度の変動によって急結剤スラリーの圧送性が悪化するかどうかを急結スラリーとコンクリート管が混合するY字管の内部を確認し、施工性を判断した。Y字管内部が完全に固結している場合を不可、若干固結している場合を良、固結していない場合を可とした。
【0065】
【表4】

【0066】
表4の結果から、スラリー水の固形分濃度が15%未満であると、圧縮強度が得られない結果となった。スラリー水の固形分濃度が50%を超えると、施工性が得られない結果となった。よって、スラリー水の固形分濃度は、15〜50%が好ましい。
アンモニウム明礬と硫酸アルミニウムを比較すると、圧縮強度の面で、硫酸アルミニウムが好ましい。
【実施例5】
【0067】
特許文献7との比較を行った。各材料の単位量、セメント400kg/m、細骨材1,058kg/m、粗骨材710kg/m、水200kg/m、高性能減水剤4kg/m、セメント100部に対してイオウ・アルミ供給原料a7部を添加して吹付けコンクリートを調製し、カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩25部、セッコウ40部、表3に示す量の保水性物質からなる急結剤を空気圧送し、アルミニウム、イオウを含有しない、固形分濃度0%のスラリー水を加水して急結剤スラリーとしたこと以外は、実施例3と同様に行った。結果を表5に併記した。
【0068】
【表5】

【0069】
表5の結果から、アルミニウム、イオウを含有するスラリー水を使用した場合(実験No.3−7)、アルミニウム、イオウを含有する吹付けコンクリートを使用した場合(特許文献7)よりも、高い圧縮強度が得られ、リバウンド率や粉塵量が少ないという、極めて良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の吹付け材料を使用することにより、粉塵の発生量を最小限に抑えることが可能となり、吹付け初期に高い強度が得られるために、安全性も向上するといった効果を奏する。作業性をさらに良くし、工期短縮の面で、急結性、強度発現性をさらに向上できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)セメントコンクリートと(2)下記の(2−1)と(2−2)を含有してなる急結剤スラリー
(2−1)カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩2.5〜40部、セッコウ20〜60部、保水性物質0.1〜5.0部を含有してなる急結剤
(2−2)アルミニウム、イオウを含有してなるスラリー水、
を含有してなる吹付け材料。
【請求項2】
(2−2)スラリー水中の固形分濃度が15〜50%である請求項1記載の吹付け材料。
【請求項3】
(1)セメントコンクリートが減水剤を含有してなる請求項1又は2記載の吹付け材料。
【請求項4】
(2−1)急結剤と(2−2)スラリー水とを連続的に合流混合して(2)急結剤スラリーを調整してなる請求項1〜3のうちの1項記載の吹付け材料。
【請求項5】
(1)セメントコンクリートと、
(2)下記の(2−1)と(2−2)を含有してなる急結剤スラリー
(2−1)カルシウムアルミネート100部、アルカリ金属硫酸塩2.5〜40部、セッコウ20〜60部、保水性物質0.1〜5.0部を含有してなる急結剤
(2−2)アルミニウム、イオウを含有してなるスラリー水
を混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
【請求項6】
(2−2)スラリー水中の固形分濃度が15〜50%である請求項5記載の吹付け工法。
【請求項7】
(1)セメントコンクリートが減水剤を含有してなる請求項5又は6記載の吹付け工法。
【請求項8】
(2−1)急結剤と(2−2)スラリー水とを連続的に合流混合して(2)急結剤スラリーを調整してなる請求項5〜7のうちの1項記載の吹付け工法。

【公開番号】特開2007−277051(P2007−277051A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106301(P2006−106301)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】