説明

吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法

【課題】施工時間が短く、粉じんやリバウンドが少ない吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法を提供するものである。
【解決手段】セメントと骨材を含有する吹付け材料Aを空気搬送またはポンプ圧送して吹き付ける吹付け装置において、吹付け材料を輸送する配管3途中に、噴射口の断面形状が円形で口径が0.2〜2mmまたは噴射口の断面形状が楕円形で口径が長軸の長さを1とした場合に短軸が0.3〜0.8で長軸の長さが2mm以下であり、水または圧縮空気と水を霧状に噴射する噴射角度が45〜100°になるように調整した噴射口を配管円周に沿って4〜8個設けたシャワーリング管4を、吹付けノズル5より後部に接続する吹付け装置。前記吹付け装置を用いた吹付け工法。噴射口の水の吐出圧力を60MPa以上とすることが好ましい。前記吹付け工法を用いたコンクリート構造物の補修工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の断面修復などを行うための吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の補修工法の1つとして、劣化したコンクリート部分をウォータージェットなどで除去した後に、新たに耐久性に優れた補修材料で修復する断面修復工法がある。断面修復工法は、修復箇所の立地条件、修復面積の大小、修復箇所の数などを考慮して、左官工法、グラウト工法、吹付け工法のうちのいずれかを選定して行われる。特に、修復面積が大きい場合は、型枠が不要であることや、施工スピードが速いといった理由で吹付け工法が選定される場合が多い。吹付け工法は、セメントおよび骨材などが予めプレミックスされた材料と水を練混ぜ、練混ぜたモルタルをポンプ圧送し,圧縮空気をノズル手前で導入し吹き付ける湿式吹付け工法(特許文献1、2)と、乾燥あるいは空気搬送に支障のない程度に少量の水分を含有させたセメント、骨材を空気搬送し、ノズル手前で水を添加して吹き付ける乾式吹付け工法がある(特許文献3、4)。
【特許文献1】特開平11−270144号公報
【特許文献2】特開2000−335953号公報
【特許文献3】特開2000−96824号公報
【特許文献4】特開2000−72506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の吹付け工法と比べ、施工時間が短く、粉じんやリバウンドが少ない吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、(1)セメントと骨材を含有する吹付け材料を空気搬送またはポンプ圧送して吹き付ける吹付け装置において、吹付け材料を輸送する配管途中に、噴射口の断面形状が円形で口径が0.2〜2mmまたは噴射口の断面形状が楕円形で口径が長軸の長さを1とした場合に短軸が0.3〜0.8で長軸の長さが2mm以下であり、水または圧縮空気と水を霧状に噴射する噴射角度が45〜100°になるように調整した噴射口を配管円周に沿って4〜8個設けたシャワーリング管を、吹付けノズルより後部に接続する吹付け装置、(2)(1)の吹付け装置を用いた吹付け工法、(3)噴射口の水の吐出圧力を60MPa以上とする(2)の吹付け工法、(4)含有する骨材の表面水分率が0〜8質量%となるように水および/またはポリマーディスパージョンを添加した吹付け材料を空気搬送する(2)または(3)の吹付け工法、(5)セメントに対して水を30〜40質量%添加した吹付け材料をポンプ圧送する(2)または(3)の吹付け工法、(6)粉じん低減効果のある物質を含有する吹付け材料である(2)〜(5)のいずれかの吹付け工法、(7)(2)〜(6)のうちのいずれかの吹付け工法を用いたコンクリート構造物の補修工法、である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法により、施工時間が短く、粉じんとリバウンドが少ない状態でコンクリート構造物の補修が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の吹付け装置は、吹付け材料を空気搬送(図1)またはポンプ圧送(図2)し、吹き付けノズルの直前でシャワーリング管を用いて水を噴霧して混合し吹き付けるものである。
【0008】
本発明の吹付け材料とはセメントと骨材を含有するものであり、吹付け材料に粉じん低減効果のある物質を含有させたものを用いることが好ましい。粉じん低減効果のある物質とは、吹付けコンクリートやモルタル用として市販されている粉じん低減剤や、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、粘土鉱物類などの無機粉末が挙げられる。これら粉じん低減効果のある物質を含有する吹付け材料は、乾燥状態あるいは予め表面水分率を0.3〜3質量%含有させた状態にしておくことが好ましい。
また、吹き付けた硬化体の耐久性を向上させるために、例えば、再乳化型粉末ポリマー、繊維、γ型ケイ酸二カルシウムシリケートなどを含有させることが可能である。
さらに、各種性能を付与する目的で施工や耐久性に支障のない範囲で、カルシウムアルミネート、カルシウムサルホアルミネートなどのカルシウムアルミネート鉱物類、炭酸塩、アルミン酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩などの凝結促進剤、オキシカルボン酸類や糖類などの凝結遅延剤、その他、セメント混和剤として知られているAE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤
などの減水剤類、撥水剤、防水剤、防錆剤、凍結防止剤、収縮低減剤、抗菌剤などを添加することができる。
【0009】
吹付け材料を空気搬送する場合は、吹付け材料は空気搬送に支障のない程度に乾燥する必要があり、吹付け材料中の骨材の表面水分率を予め0〜8%の範囲に調整したものが好ましい。骨材の表面水分率の調整方法は、特に限定されるものではないが、一般的に市販されているパン型ミキサー、二軸ミキサー、ホバートミキサーなどに乾燥吹付け材料と所定量の水を加え攪拌することで調整可能である。水分調整は水を使用してもよく、JIS A 6203に規定されているセメント混和用のポリマーディスパージョンを用いてもよい。ポリマーディスパージョンを使用するときは固形分を除いた水分で調整する。
【0010】
本発明における吹付け材料の空気搬送は、市販されている空気搬送装置を使用することが可能である。例えば、アリバー社製のアリバー246、アリバー280、アリバー260や、プライブリコ社製のリードガンなどが挙げられる。これら装置の空気搬送原理は、ホッパーに吹付け材料を投入しホッパー下部に設置してあるローターが回転することでローター窪みに材料が落ち排出口まで回転すると圧縮空気と共に材料が配管内を吹き飛ばされる仕組みである。
本発明における空気搬送に使用する配管は、耐圧ゴム製のフレキシブルホースや鋼管、硬質塩ビ管などが使用できる。配管径は、搬送する吹付け材料の量によっても異なるが通常25〜60mmである。配管が細すぎると閉塞しやすくなり、太すぎると多量の圧縮空気を必要となり、粉じんとリバウンドの増加を招くことになる。配管の長さは、特に限定されるものではないが、長すぎると多量の圧縮空気を必要とし、粉じんとリバウンドの増加を招くので50m以内が好ましい。空気搬送区間は25m以下が好ましい。空気搬送区間が短いほど、消費する空気量が少なくてよいので、より粉塵やリバウンドの発生を低減することが可能である。
本発明で使用する圧縮空気を作るコンプレッサーは、特に限定されるものではないが、一般に市販されているコンプレッサーを使用することが可能である。圧縮空気の圧力は、5〜10MPaが好ましい。通常は7MPa程度に設定されているので問題なく使用できる。コンプレッサーの空気流量は、1〜15m/minが好ましく、2〜8m/minがより好ましい。1m/min未満では空気搬送中に閉塞しやすい傾向があり、15m/minを超えると粉じんとリバウンドが多くなる傾向がある。空気流量を安定化させたい場合は、例えば、吹付け以外の作業で同じコンプレッサーから圧縮空気を使う場合に、同時作業を行うと一時的に空気流量が低下する場合がある。このような問題を解決するために、レシーバータンクを空気搬送装置とコンプレッサーの間に設け、他作業で使用する場合はそのレシーバタンクより配管を分岐させればよい。レシーバータンクの容量は、特に限定されるものではないが、使用するコンプレッサーの空気流量程度のタンク容量があれば十分である。
【0011】
本発明における吹付け材料のポンプ圧送は、ピストン方式ポンプを用いる。ポンプ圧送する吹付け材料は、吹付け材料中に含有するセメントに対して30〜40質量%の水分率に調整することが好ましい。水分率を調整する方法は、特に限定されるものではないが、一般的に市販されているパン型ミキサー、二軸ミキサー、ホバートミキサーなどに乾燥吹付け材料と所定量の水を加え攪拌することで調整可能ある。
【0012】
本発明におけるポンプ圧送は、一般的なピストンポンプを使用することができる。ポンプの圧送能力は、大きすぎると配管を太くしなければならず、システムが大型化するので好ましくないので、最大でも5m/hr程度のピストンポンプが好ましい。ピストン方式で圧送する場合は、シャワーリング管を接続する位置より後方に圧縮空気を挿入するY字管を接続した方がより吹付け材料の分散性を向上させることができるので好ましい。
本発明におけるポンプ圧送する配管は、耐圧ゴム製のフレキシブルホースや鋼管、硬質塩ビ管などが使用できるが、空気搬送方式に比べ大きな圧送負荷が配管にかかるので圧縮空気を挿入する位置までは鋼管とし、それ以降はフレキシブルホース等を使用した方がよい。配管径は、搬送する吹付け材料の量によっても異なるが、例えば、圧縮空気を挿入する位置までは50〜100mmとし、圧縮空気を挿入してからの空気搬送区間の箇所は、圧縮空気を挿入するまでの配管径と同じかテーパ管を用いて小さくしてもよい。配管径を極端に小さくすると閉塞しやすくなる。配管の長さは、長すぎると圧送負荷が大きくなったり、大量の圧縮空気を必要とし、配管の閉塞や、粉じん、リバウンドの増加を招くので全長で50m以内が好ましい。また、ピストン圧送の区間は25m以下が好ましい。
ポンプ圧送で用いるコンプレッサーは、特に限定されるものではなく、空気搬送方式で使用するコンプレッサーを使用することができる。
本発明では、空気搬送およびポンプ圧送する場合両者において、最終的な吹付け材料中のセメントに対する水の割合は60%以下となるように設定することが好ましい。60%を超えると吹き付けたときにダレが発生する場合がある。
【0013】
本発明で使用するシャワーリング管は、ノズルより手前に接続するものであり、水や水と圧縮空気を輸送されてくる吹付け材料と均一に合流混合できるように二重管構造となっている。シャワーリング管は、外側の管壁に接続された1つの配管より水あるいは圧縮空気と水が挿入され、内側の管壁に等間隔で噴射口が4〜8個設けられている(図3、図4)。噴射口の数は4〜8個であれば特に限定されるものではないが,4、6または8の偶数箇所設けられている構造を有していることが混合性の点で好ましい。噴射口の断面形状は、円形あるいは楕円形であり、円形の場合の口径は0.2〜2mmが好ましい。0.2mm未満であると所定量の水量を添加できない場合があり、2mmを超えると十分な水圧が得られず、吹付け材料の分散性や水との混合性が悪くなる場合がある。噴射口の断面形状が楕円形の場合は、長軸を吹付け材料の流動方向に対して鉛直方法に配置し、長軸を1とすると短軸は0.3未満とならない楕円形状が好ましい。0.3より小さくなると噴射したときの水の広がりが面状となり混合性が悪くなる場合がある。また、楕円形状の噴射口の場合の長軸の長さは2mm以下が好ましく、2mmを超えると十分な水圧が得られず吹付け材料の分散性や水との混合性が悪くなる場合がある。
本発明のシャワーリング管の噴射口から噴射される水または圧縮空気と水の噴射角度(図5)は、45〜100°が好ましい.噴射角度を最適化することにより輸送されてくる吹付け材料の分散性や水との混合性が良好となる。45°未満では吹付け材料の分散性や水との混合性を良くする効果が小さく、100°を超えても効果が変わらない傾向がある。噴射角度を設定する方法は、特に限定されるものではないが、設定する角度となるように二重構造となっている内側管の吹付け材料が輸送される管壁側をVカットし、Vカットされた頂点を中心に円形あるいは楕円形に孔をあける方法や、別途このような構造に成型された噴射チップを内側の管に固定する方法などがある。
本発明で噴射口から噴射するための水の水圧は、流動している吹付け材料と瞬時に混合するために60MPa以上が好ましい。60MPa未満であると吹付け材料との混合性が悪くなり粉塵の発生が低減できなくなる傾向がある。水を送るポンプは、特に限定されるものではないが、60MPa以上の水圧をかけて水を送ることができるポンプであれば使用できる。
本発明のシャワーリング管の位置は、空気搬送方式の場合は、ノズル後端から5m以内の位置が好ましく、2m以内がより好ましい。5mを超えるとノズルから吐出する手前の配管で閉塞したり、脈動が発生する場合がある。ポンプ圧送方式の場合も空気搬送方式と同様であるが、圧縮空気を挿入するY字管を接続した場合は、そのY字管よりもノズル側に接続する。
【0014】
本発明で使用するノズルは、特に限定されるものではないが、ノズル手前の配管径と同じ吐出口径のノズルでもよく、ノズル手前は配管径よりも吐出口径が小さいテーパ付のノズルでもよく、テーパ付ノズルで先端口径を小さくした部分にさらに長さ5〜50mmのストレート管を接続したものでもよい。ノズルの材質は、特に限定されるものではないが、鋼製、ゴム製、プラスチック製いずれも使用可能である。
【実施例1】
【0015】
図1に示す空気搬送吹付けシステムを用いて下記条件で吹付けを行い、粉じん発生量とリバウンド率を測定した。
【0016】
(吹付け条件)
空気搬送装置:アリバー社製、アリバー246、材料供給量1.5m/hr、電源200V
コンプレッサー:市販品、空気量吐出量10m/min、エンジン式
水ポンプ:市販品、水圧80MPa、電源200V、水供給量8L/min
シャワーリング管(A1):配管径40mm、噴射口径1mm、噴射口形状は楕円形、長軸に対する短軸の比0.7、噴射角度45°、噴射口の数は8個
シャワーリング管からの噴霧:水のみ
吹付け材料を輸送する耐圧ホース:ホース長20m、ホース径40mm
水圧送ホース:ホース長20m、ホース径10mm
シャワーリング管の位置:ノズル後端部
ノズル:硬質ウレタン製テーパノズル、吐出口径30mm
【0017】
(吹付け材料)
吹付け材料A:最大骨材径1.2mm以下の石灰砂3質量部に対し早強ポルトランドセメントを1質量部混合した1/3モルタル、骨材の表面水分率0%
吹付け材料B:吹付け材料A中の骨材に対して表面水分率を水で0.5質量%に予め調整した材料
吹付け材料C:吹付け材料A中の骨材に対して表面水分率を水で2質量%に予め調整した材料
吹付け材料D:吹付け材料A中の骨材に対して表面水分率を水で5質量%に予め調整した材料
吹付け材料E:吹付け材料A中の骨材に対して表面水分率を水で8質量%に予め調整した材料
吹付け材料F:吹付け材料A中の骨材に対して表面水分率を固形分45質量%のスチレン−ブタジエン形ディスパージョンで2質量%に予め調整した材料
吹付け材料G:吹付け材料A中の骨材にたいして表面水分率を固形分45質量%のスチレン−ブタジエン系ディスパージョンで5質量%に予め調整した材料
吹付け材料H:吹付け材料Aに市販の粉じん低減剤を0.005質量%添加した吹付け材料
吹付け材料I:吹付け材料H中の骨材にたいして表面水分率を水で2質量%に調整した材料
吹付け材料J:吹付け材料H中の骨材にたいして表面水分率を固形分45質量%のスチレン−ブタジエン系ディスパージョンで2%に調整した材料
吹付け材料K:吹付け材料Aにシリカフュームを1.5質量%添加した吹付け材料
【0018】
(粉じん発生量)
半径3mの半円形状の断面を持つ長さ20mの模擬トンネル内の先端壁面に向けて吹き付けたけた。吹付け箇所から後方5mの位置で粉じん濃度計を用いてカウント数を吹付けが終了するまで計測し、1分あたりのカウント数で表した。なお、吹き付ける前の粉塵濃度(CPM)も計測し補正した値とした。
(リバウンド率)
吹付けで使用した吹付け材料の全量に対する吹き付けて落下した材料の割合から算出した。
リバウンド率(%)=(落下した材料/使用した吹付け材料)×100
【0019】
「比較例」
吹付け材料Dについて下記の吹付け条件に変えて吹付けを行い粉塵発生量とリバウンド率を測定した。
シャワーリング管(B):楕円形噴射口の長軸を2.5mmとし、長軸に対する短軸の比を0.7、噴射口の数を8個とした場合
シャワーリング管(C):楕円形噴射口の長軸を1mmとし、長軸に対する短軸の比を0.2、噴射口の数を8個とした場合
シャワーリング管(D):シャワーリング管(A1)噴射口の数を2個とした場合
【0020】
【表1】

【0021】
表1より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さいことが分かる。
【実施例2】
【0022】
図2に示すピストンポンプ圧送吹付けシステムを用いて下記の条件で吹付けを行い、実施例1と同様に粉じん発生量とリバウンド率を測定した。
【0023】
(吹付け条件)
ポンプ圧送装置:岡三機工社製、形式OHP−100型、材料供給量1.0m/hr、電源200V
コンプレッサー:市販品、空気量吐出量10m/min、エンジン式
水ポンプ:市販品、水圧80MPa、電源200V、水供給量0.7L/min
シャワーリング管(A2):配管径40mm、噴射口径0.6mm、噴射口形状は楕円形、長軸に対する短軸の比0.7、噴射角度45°、噴射口の数は8個
シャワーリング管からの水の方法:水のみ
吹付け材料を輸送する配管:鋼管(ポンプ吐出口から5m、鋼管径65mm)、圧縮空気を挿入するY字管(鋼製、管径65mm)、テーパ管(鋼製、65mmから50mmに管径を縮小)、耐圧ホース(ホース径50mm、ホース長5m)ポンプ吐出口からシャワーリング管までの全長11m
水圧送ホース:ホース長20m、ホース径10mm
シャワーリング管の位置:ノズル後端部
ノズル:硬質ウレタン製テーパノズル、吐出口径50mm
【0024】
(吹付け材料)
吹付け材料A:最大骨材径1.2mm以下の石灰砂3質量部に対し早強ポルトランドセメントを1質量部混合した1/3モルタルに水を含有するセメントに対して35質量%加え練り混ぜたモルタル
吹付け材料B:吹付け材料Aに市販の粉じん低減剤を0.005質量%添加した吹付け材料
吹付け材料C:吹付け材料Aにシリカフュームを1.5質量%添加した材料
【0025】
「比較例」
吹付け材料Aについて下記の吹付け条件に変えて吹付けを行い粉じん発生量とリバウンド率を測定した。
シャワーリング管(E)比較例4:楕円形噴射口の長軸を2.5mmとし、長軸に対する短軸の比を0.7、噴射口の数を8個とした場合
シャワーリング管(F):楕円形噴射口の長軸を1mmとし、長軸に対する短軸の比を0.2、噴射口の数を8個とした場合
シャワーリング管(G):シャワーリング管(A2)で噴射口の数を2個とした場合
【0026】
【表2】

【0027】
表2より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さいことが分かる。
【実施例3】
【0028】
実施例1の吹付け材料Dを用いて、シャワーリング管(A1)の噴射口径を円形とし口径を表3に示すように変え搬送状況を目視観察した以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0029】
(搬送状況)
吹付けを行っている間の配管の閉塞の有無、脈動の有無などを目視観察した。
【0030】
【表3】

【0031】
表3より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例4】
【0032】
実施例2の吹付け材料Aを用いて、シャワーリング管(A2)の噴射口径を円形とし口径を表4に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
表4より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例5】
【0035】
実施例1の吹付け材料Dを用いて、シャワーリング管(A1)の長軸の長さおよび長軸を1とする短軸の割合を表5に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
表5より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例6】
【0038】
実施例2の吹付け材料Aを用いて、シャワーリング管(A2)の長軸の長さおよび長軸を1とする短軸の割合を表6に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表6に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
表6より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例7】
【0041】
実施例1の吹付け材料Dを用いて、実施例1のシャワーリング管(A1)の噴射角度を表7に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表7に示す。
【0042】
【表7】

【0043】
表7より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例8】
【0044】
実施例2の吹付け材料Aを用いて、実施例2のシャワーリング管(A2)の噴射角度を表8に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表8に示す。
【0045】
【表8】

【0046】
表8より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例9】
【0047】
実施例1の吹付け材料Dを用いて、実施例1のシャワーリング管(A1)の噴射口の数を表9に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したことた以外は実施例1と同様に行った。結果を表9に示す。
【0048】
【表9】

【0049】
表9より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例10】
【0050】
実施例2の吹付け材料Aを用いて、実施例2のシャワーリング管(A2)の噴射口の数を表10に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表10に示す。
【0051】
【表10】

【0052】
表10より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例11】
【0053】
実施例1の実験No.1-4において、水の吐出圧力を表11に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例1と同様に行った.結果を表11に示す。
【0054】
【表11】

【0055】
表11より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例12】
【0056】
実施例2の実験No.2-1において、水の吐出圧力を表12に示すように変え、実施例3と同様に搬送状況を目視観察したこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表12に示す。
【0057】
【表12】

【0058】
表12より、本発明の吹付け装置を用いた吹付けは、粉じん濃度とリバウンド率が小さく、搬送状況に異常がないことが分かる。
【実施例13】
【0059】
実施例1の吹付け材料Dを用いて、シャワーリング管(A1)より水と圧縮空気を導入し、噴霧したこと以外は実施例1と同様に行った。そのときの圧縮空気の流量は0.8m/minとした。その結果、粉じん発生量は589CPM、リバウンド率は19%であり、圧縮空気を導入した方が導入しない場合(実験No.1-4)に比べ良好な結果となった。
【実施例14】
【0060】
実施例1の吹付けシステム(シャワーリング管(A1))を用いて下記に示す吹付け材料を吹付け、各種強度試験および各種耐久性試験を行った。なお、比較のために実施例1の比較例のシャワーリング管(B、C、D)を使用した条件で吹き付けた場合の結果(実験No.1-12、1-13、1-14)と、吹付け材料D(実験No.1-4)と同じ水量として練り混ぜたものを吹き付けずに型枠に成形したもの(実験No.13-1)の結果も示す。結果を表13に示す。
【0061】
(使用材料)
吹付け材料D:実験No.1-4の吹付け材料
吹付け材料G:実験No.1-7の吹付け材料
吹付け材料K:実験No.1-11の吹付け材料
吹付け材料L:実験No.1-4の吹付け材料100質量部に対し再乳化型粉末ポリマー(アクリル−酢酸ビニル−ベオパ系ポリマー、市販品)を2質量部配合した吹付け材料
吹付け材料M:実験No.1-4の吹付け材料100質量部に対し繊維(ビニロン繊維、繊維長12mm、繊維径0.2mm、市販品)を0.8質量部配合した吹付け材料
【0062】
(強度試験)
圧縮強度:縦30cm×横30cm×厚さ15cmの箱型枠に吹き付けて、3日後にφ55mmのコアドリルで抜き取り、φ55×110mmの円柱に成形した。養生方法は、温度20℃、相対湿度80%で材齢28日まで行った。測定数は5本とした。測定はJIS A 1108に準拠した。また、各5本測定した値の最大値と最小値の差を求めばらつきの度合いも評価した。
付着強度:サンドブラストした縦30cm×横30cm×厚さ6cmのコンクリート製平板に厚さ20mm程度になるように吹付け。表面をコテ均しした。材齢3日後にφ55mmのコアドリルで下地コンクリート面から5mm程度内部まで削孔した。養生方法は圧縮強度試験と同じ。測定は建研式付着力試験機で行った。
(耐久性)
中性化抵抗性:供試体の作製は圧縮強度と同じ箱型枠に採取し、3日後に縦10cm×横10cm×高さ10cmの角柱に成形し、28日間、20℃、相対湿度80%で養生したものを促進中性化試験を行った。促進条件はJIS A 1171に準拠した。中性化深さはフェノールフタレイン法により測定した。
塩化物イオン浸透抵抗性:中性化抵抗性と同様に供試体を作製・養生し、擬似海水中に28日間浸漬することで塩化物イオン浸透抵抗性試験を行った。試験方法はJIS A 1171に準拠した。
【0063】
【表13】

【0064】
表13より、本発明の吹付け装置を用いて吹付け材料は、圧縮強度が高くばらつきが少なく、中性化深さや塩化物イオンの浸透が小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の吹付け装置、吹付け工法およびそれを用いた補修工法は、施工時間が短く、粉じんとリバウンドが少ない状態でコンクリート構造物の補修が可能となるため、土木・建築分野で幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の吹付装置(空気搬送方式)の例を示す概略図である。
【図2】本発明の吹付装置(ピストンポンプ圧送方式)の例を示す概略図である。
【図3】本発明のシャワーリング管(噴射口:円形)の例を示す外観図である。
【図4】本発明のシャワーリング管(噴射口:楕円形)の例を示す外観図である。
【図5】本発明のシャワーリング管の噴射口の噴射角度の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1:コンプレッサー
2:空気搬送装置
2‘:ピストンポンプ圧送装置
3:吹付け材料圧送配管
4:シャワーリング管
5:ノズル
6:バルブ
7:圧縮空気圧送配管
8:水圧送配管
9:水圧送ポンプ
10:水タンク
11:噴射口
A:吹付け材料
B:水
C:圧縮空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと骨材を含有する吹付け材料を空気搬送またはポンプ圧送して吹き付ける吹付け装置において、吹付け材料を輸送する配管途中に、噴射口の断面形状が円形で口径が0.2〜2mmまたは噴射口の断面形状が楕円形で口径が長軸の長さを1とした場合に短軸が0.3〜0.8で長軸の長さが2mm以下であり、水または圧縮空気と水を霧状に噴射する噴射角度が45〜100°になるように調整した噴射口を配管円周に沿って4〜8個設けたシャワーリング管を、吹付けノズルより後部に接続することを特徴とする吹付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吹付け装置を用いた吹付け工法。
【請求項3】
噴射口の水の吐出圧力を60MPa以上とする請求項2に記載の吹付け工法。
【請求項4】
含有する骨材の表面水分率が0〜8質量%となるように水および/またはポリマーディスパージョンを添加した吹付け材料を空気搬送することを特徴とする請求項2または3に記載の吹付け工法。
【請求項5】
セメントに対して水を30〜40質量%添加した吹付け材料をポンプ圧送することを特徴とする請求項2または3に記載の吹付け工法。
【請求項6】
粉じん低減効果のある物質を含有する吹付け材料である請求項2〜5のいずれか1項に記載の吹付け工法。
【請求項7】
請求項2〜6のうちのいずれか1項に記載の吹付け工法を用いたコンクリート構造物の補修工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−168224(P2007−168224A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367868(P2005−367868)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】