説明

呈味改善方法

【課題】異味を呈する製品における呈味改善方法を提供する。
【解決手段】異味を呈する製品において、製品の全量に対してネオテームを0.01ppm〜250ppmの濃度になるように添加する呈味を改善する方法。異味を呈する製品としては、清涼飲料(茶飲料、大豆ペプチド入り飲料、コラーゲン飲料、アミノ酸飲料など)、コーヒー飲料、果汁飲料、乳飲料、またはアルコール飲料などが挙げられる。ネオテームの濃度としては、製品の全量に対して、0.01ppm〜10ppmが好ましく、0.5ppm〜1.8ppmが更に好ましい。該方法において、ネオテームを他の甘味料と併用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオテームを用いることを特徴とする呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
味は、主として甘味、塩味、酸味、旨味、および苦味の5種類が挙げられ、これらのほかに、渋み、えぐ味、辛味、金属味等が知られている。また、これらの味は、強すぎたりバランスが悪かったりすると不快な味と感じられる。味以外にも、アミノ酸等の有するアミノ臭や、魚類が有する魚臭、大豆の豆臭、野菜類の青臭さ、加熱時のこげ臭、乳化剤の風味等も不快な味(風味)として感じられる。
【0003】
なかでも、渋味は、例えば、渋柿等で代表されるように、未熟な果物を味わった場合に口をすぼめてひきしめられるような感覚であり、舌粘膜の収斂によるものとされている。強い渋味は不快であり、加工食品等を開発する場合には極力抑えることが好ましい。一方、淡い渋味は他の味と混ざり合って独特の風味を与え、緑茶等のように珍重されている。
【0004】
近年、緑茶のカテキンや、大豆ペプチド等、機能性を有する食品素材を加工食品に取り入れる動きがあるが、これらの機能性を有する素材には、強い苦味や渋みがあり、加工食品などを開発する際には、極力押さえることが重要な課題となっている。
【0005】
また、CVS(コンビニエンスストア)、スーパー等で販売されている弁当、惣菜、サンドイッチ、調理パン、サラダ等多くの加工食品の品質管理や食中毒防止対策に日持ち向上剤が広く使用されている。日持ち向上剤は特有の金属味、酸味、臭いを有するものが多く、味付けへの影響の低減が課題とされている。
【0006】
渋味を呈する代表的な成分は、タンニン、カテキン、クロロゲン酸、シブオール等種々のものが知られており、これら成分は、主に緑茶、コーヒー、紅茶、渋柿、梅等の食品や、歯磨粉等の医薬部外品、さらにはたばこにまで広く含有されている。
【0007】
酸味を呈する代表的な成分は、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸等の酸類及びその塩類等、種々のものが知られている。これらの成分は、主に、果物、ヨーグルト等の食品に広く含有されている。また、pH調整剤として加工食品のpHを調整するために使用されている。クエン酸ナトリウムは日持ち向上剤として用いられ、米飯などの加工食品に使用されている。苦味を呈する代表的な成分は、タンニン、クロロゲン酸、カフェイン等があり、これらの成分は、茶、コーヒー等の食品に含有されている。えぐみを呈する代用的な成分は、アミノ酸等があり、日持ち向上剤として使用されるグリシンは添加量が多くなるとえぐみを呈する。辛味を呈する代表的な成分は、唐辛子に含まれるカプサイシン、ショウガに含まれるジンゲロール等がある。また、有機酸塩は、酸味だけでなく、金属味を呈する。
【0008】
渋味を呈しないようにするためには、例えば、渋柿に含有されているタンニンやシブオールの場合には、酵素処理、アルコール液噴霧によりタンニン自体を不溶性にして、渋味を呈しないように処理されることがある。また、茶に含有されているカテキン類は、茶葉にアルコール系水溶液を噴霧したり、デキストリンやサイクロデキストリン等の澱粉を添加した後酵素処理を行うことによって渋味を抑制することが知られている。さらに、豆腐の渋味には酵素エキスを添加したり、卵、特に加工卵白液にはプロテアーゼ処理を施したり、たばこに対してはアンモニア加湿空気混合ガスで処理したり、テルペンカルボン酸又はその低級脂肪酸エステルを添加する方法等により渋味の抑制を行うことが提案されている。
【0009】
しかし、上記のように、原料自体の渋味を抑制する方法は、一般に工程が複雑であり、設備や装置を変更することが必要で、製造/加工コストの増大を招くという問題があった。また、上記の渋味の抑制方法とは別に、渋味を呈する食品等に、キキョウ科植物の抽出物、クルクチン又は糖アルコールや高甘味度甘味料を添加することにより渋味をマスキングする方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【0010】
一方、新しい高甘味度甘味料として知られているネオテームは、アスパルテームの還元アルキル化により合成されるジペプチドメチルエステル誘導体である。その甘味度は使用する食品の種類や配合組成によって異なるが、アスパルテームの30〜60倍、砂糖の7,000〜13,000倍とされている。ネオテームは苦味や金属味のないクリーンな味質を有しており、炭酸飲料,果汁飲料,乳飲料,粉末飲料等の飲料、ヨーグルト等の乳製品、焼き菓子,キャンディ,チューインガム等の菓子類、卓上甘味料、シロップ、ドライフルーツといった様々な食品に8〜250ppm使用することで、適度な甘味が付与される。また、甘味の付与だけではなく、フレーバー及び酸味を増強することが知られている。加えて、他の甘味と比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くことも知られている。(非特許文献1)
【0011】
しかしこれらの高甘味度甘味料では渋みをマスキングできるものの、渋みや苦味の後味は十分にマスキングできない。また、高甘味度甘味料はそれ自身に、苦味や金属味といった不快な味(異味)があり、異味をマスキングするために使用量を増やすと渋みをマスキングする一方で、嗜好性に悪影響を及ぼしてしまうことがある。
【0012】
【特許文献1】特公平4−76659号公報
【特許文献2】特開平7−274829号公報
【特許文献3】特許3938968号公報
【非特許文献1】Food Chemistry 69 (2000) 245-257
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
キキョウ科植物抽出物やクルクチンは天然物であるために供給量や供給質が不安定であり、高品質で得ることが困難であるという問題があった。また、添加の際にはこれら物質は大量に必要となるため、渋味のマスキングという点では有効であっても、これら添加物の味を呈することにより他の味とのバランスを崩すという問題があった。さらに、上記と同様に製造/加工コストの問題も有している。一方、先行技術で用いられた高甘味度甘味料を用いた苦味や渋味のマスキング方法は、これらの高甘味度甘味料では渋みをマスキングできるものの、渋みや苦味の後味を十分にマスキングすることができない。また、高甘味度甘味料はそれ自身に、苦味や金属味といった不快な味(異味)があり、異味をマスキングするために使用量を増やすと渋みをマスキングする一方で、嗜好性に悪影響を及ぼしてしまうことがある。従って、渋味等を緩和な程度に抑制して、上記欠点部分を是正するとともに、長所の部分のみを引き立てることが重要な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点に鑑み、本願の発明者らは、製品の物性や味に影響を及ぼさないで、かつ呈味を改善することができる方法について種々の検討を行った。その結果、ネオテームを添加することで、過剰な渋味、苦味、酸味等を減少又は緩和させ、さらに総合的な味を何ら損なうことがなく呈味を改善できることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
本発明は、以下の通りである。
【0015】
項1:異味を呈する製品において、ネオテームを添加することを特徴とする呈味改善方法。
【0016】
項2:ネオテームを、製品の全量に対して0.01ppm〜400ppmの濃度になるように添加する項1に記載の呈味改善方法。
【0017】
項3:ネオテームを、製品の全量に対して0.01ppm〜250ppmの濃度で添加する項2に記載の呈味改善方法。
【0018】
項4:ネオテームの濃度が、製品の全量に対して0.01ppm〜10ppmである項3に記載の呈味改善方法。
【0019】
項5:ネオテームの濃度が、製品の全量に対して0.5ppm〜1.8ppmである項4に記載の呈味改善方法。
【0020】
項6:異味を呈する製品が、飲料、菓子、または食品である項1〜項5に記載の呈味改善方法。
【0021】
項7:飲料が、清涼飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、乳飲料、またはアルコール飲料である項6に記載の呈味改善方法。
【0022】
項8:菓子が、チューインガムまたはキャンディである項6に記載の呈味改善方法。
【0023】
項9:食品が、粉末食品、栄養補助食品、ドレッシング、漬物、梅干、米飯、または麺類である項6に記載の呈味改善方法。
【0024】
項10:ネオテームを飲料、菓子、または食品の全量に対して0.01ppm〜400ppmの濃度で含有する呈味が改善された飲料、菓子、または食品。
【0025】
項11:ネオテームを飲料、菓子、または食品の全量に対して0.01ppm〜250ppmの濃度で含有する呈味が改善された項10に記載の飲料、菓子、または食品。
【0026】
項12:ネオテームの濃度が、0.01ppm〜10ppmである項11に記載の呈味が改善された飲料、菓子、または食品。
【0027】
項13:ネオテームの濃度が、0.5ppm〜1.8ppmである項12に記載の呈味が改善された飲料、菓子、または食品。
【0028】
項14:飲料が、清涼飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、乳飲料、またはアルコール飲料である項10〜項13のいずれか一項に記載の呈味が改善された飲料。
【0029】
項15:菓子が、チューインガムまたはキャンディである項10〜13のいずれか一項に記載の菓子。
【0030】
項16:食品が、粉末食品、栄養補助食品、ドレッシング、調味料、漬物、梅干、弁当、惣菜、米飯、または麺類である項10〜13のいずれか一項に記載の食品。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、渋味を呈する各種の最終製品における過剰な苦味や渋味を、特別な工程/ 処理を追加することなく、「ネオテーム」を異味を呈する製品に少量添加するだけで、減少又は緩和することができる。本発明により、従来技術では不十分であった異味の後味を特に改善することができる。特に、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール調節作用、血糖値調節作用、抗酸化作用、老化抑制作用、抗突然変異作用、抗癌作用、抗菌作用、抗う蝕作用、抗アレルギー作用、疲労回復作用、筋肉強化作用、貧血予防のような健康維持や増進に関する機能性を有するが、異味の後味が強いため添加の難しい機能性成分について、格段に嗜好性を高めることができる。従って、機能性を有する製品(加工食品)の製造が容易である。更に、異味を呈する製品にネオテームを添加することにより、フレーバーが際立つ効果(フレーバー増強効果)を得ることが出来る。また、ネオテームの甘味の持続性から、甘味で不快な風味が覆い隠される効果(マスキング効果)を得ることができる。従って、嗜好性に悪影響を及ぼすことなく(甘味以外の味を付与することなく)、異味を改善することができるため、幅広い食品において、味のバランスを整え嗜好性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
この発明によれば、苦味や渋味等の異味を呈する製品に、ネオテームを用いることを特徴とする呈味(苦味や渋味のような不快な異味を呈すること)の改善方法が提供される。
本発明における「呈味改善」とは、広義に異味を呈する製品における異味に関与する各種因子の改善を意味する。より具体的には、塩味、酸味、旨味、苦味、渋味、えぐ味、辛味、金属味等やこれらが複合してもたらされる風味等が増強または低下(マスキング)されて、人体の口腔内で本来の味がより好ましい味に改善されることを意味する。
【0033】
「異味を呈する製品」とは、塩味、酸味、旨味、苦味、渋味、えぐ味、辛味、または金属味を呈する成分、または前記成分以外にも、アミノ酸等の有するアミノ臭や、魚類が有する魚臭、大豆の豆臭、野菜類の青臭さ、加熱などにより生じた風味、保存時に経時的に発生する劣化臭(キサンタンガム、油脂等)等の不快な味(風味)を含有することにより、これらの味覚に起因する不快感(例えば、口を締め付けられるような感じ)などを与える製品のことを意味する。このなかには、乳化目的など、味を付与する以外の目的で添加されたにもかかわらず結果的に不快な風味を呈することとなった製品を含む。また、「異味を呈する製品」は、摂取又は利用時において液体、固体又は半固体のいずれの形態のものであってもよい。
【0034】
「製品」としては、清涼飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、粉末飲料等の飲料;ヨーグルト等の乳製品;焼き菓子、キャンディ、チューインガム等の菓子類;卓上甘味料;シロップ;粉末食品、機能性素材を含有する食品、栄養補助食品、ドレッシング、漬物、梅干、米飯、麺類、ドライフルーツ等の食品;医薬品;医薬部外品が挙げられる。
【0035】
「異味を呈する製品」の具体例として、例えば渋みであれば、茶飲料(緑茶、抹茶、ほうじ茶等)、紅茶飲料、大豆ペプチド入り飲料(黒酢飲料も含む)、コラーゲン飲料、アミノ酸飲料などの清涼飲料;コーヒー飲料;果汁飲料;乳飲料(豆乳など);アルコール飲料(ワイン、ブドウ酒など)等の飲料;柿、栗、ぶどう等の果実;これら果実の果汁又は果肉を含む製品などが挙げられる。また、これら以外にも、タンニン、カテキン類、クロロゲン酸、シブオール、AlCl3、Al(NO33、ZnSO4、トリクロロ酢酸等の渋味を呈する成分を含有する食品、クエン酸鉄、大豆ペプチド、ポリフェノール、フラボノイド等の機能性素材、高甘味度甘味料、医薬品及び医薬部外品などの経口摂取又は口内利用可能な製品などが挙げられる。更に、渋味としては現れていないが、上記成分を含有する製品、例えば山芋、カカオ豆、ごぼう、ふき、さつまいも、ジャガイモ、なす、リンゴ、なし等又はこれらの加工品等をも含む。なお、これら渋味を呈する製品においては、塩味など他の味覚成分、又は賦形剤や保存剤など他の添加剤が用いられたものであってもよい。「異味を呈する製品」としては、茶飲料、大豆ペプチド入り飲料、コラーゲン飲料、アミノ酸飲料などの清涼飲料;コーヒー飲料;果汁飲料;乳飲料;アルコール飲料;または菓子、調味料、米飯、麺類が好ましい。
【0036】
「塩味」とは、塩味を呈する成分を含有することに起因するしおっからさやしょっぱさ等の味覚を意味する。塩味を呈する成分としては、例えば、食塩、塩化カリウムなどが挙げられる。
【0037】
「酸味」とは、酸味を呈する成分を含有することに起因するすっぱさ等の味覚を意味する。酸味を呈する成分としては、例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸などが挙げられる。
【0038】
「苦味」とは、苦味を呈する成分を含有することに起因するにがさ等の味覚を意味する。苦味を呈する成分としては、例えば、タンニン、クロロゲン酸などが挙げられる。
【0039】
「渋味」とは、渋味を呈する成分を含有することに起因するしぶさ等の味覚を意味する。渋味を呈する成分としては、例えば、タンニン、カテキンなどが挙げられる。
【0040】
「辛味」とは、辛味を呈する成分を含有することに起因するからさ等の味覚を意味する。辛味を呈する成分としては、例えば、カプサイシン、ジンゲロールなどが挙げられる。
【0041】
本発明における呈味改善方法において、用いられる「ネオテーム」の使用量としては、異味を呈する製品の全量に対して、0.01ppm〜250ppmが好ましく、0.01ppm〜10ppmがより好ましく、0.5ppm〜1.8ppmが更に好ましい。
【0042】
この発明の有効成分であるネオテームが、どのような作用機序で呈味改善作用をしめすのか明らかではないが、ネオテームの甘味特性に由来すると考えられる。すなわち、甘味の立ち上がりが遅いことから、甘味がフレーバーを覆い隠すことがない。従って、フレーバーが際立つ効果、すなわちフレーバー増強効果が見られる。また、ネオテームの甘味が長く続くことにより、甘味で不快な風味が覆い隠される効果、すなわち、マスキング効果が得られると考えられる。特にネオテームの甘味の持続性は他の甘味料よりも長いことから、他の甘味料ではマスキングできなかった、異味の後味がマスキングされることにより、更に強い呈味改善がもたらされると考えられる。よって、甘味発現の異なる甘味料と組み合わせることにより、マスキング効果が補強され、より強い呈味改善効果を得ることができる。また、甘味料の組み合わせや濃度を変えることで、苦味や渋み等の強度を調節することができ、より嗜好性を高めることができる。
【0043】
ネオテームは単独で用いてもよいし、2種以上の高甘味度甘味料と混合してもよい。高甘味度甘味料とは、微量で甘味を呈する甘味剤を意味し、具体的には、ソーマチン、ステビア又は甘草等の植物からの抽出物、スクラロース、アスパルテーム、サッカリンナトリウム又はアセスルファムK等が挙げられる。ここで、ステビアとは、キク科植物ステビアから抽出した抽出物及びこの抽出物を酵素処理したものを含む。
【0044】
異味を呈する製品にネオテームを用いる方法としては、下記の方法が具体的に挙げられる。尚、異味を呈する製品において、渋味を呈する製品に関して下記に説明するが、その他の異味を呈する製品についても同様の方法が用いられる。
渋味を呈する製品にネオテームを用いる方法としては、ネオテームを、渋味を呈する製品に添加できる方法である限り、特に限定されない。例えば、渋味を呈する最終製品が固体の場合は、成型されるまでの液体、半固体の形状の時に、所定量のネオテームをそのまま、又は希釈溶液の状態で添加し、その後に固体形状に成型する方法、固体形状の製品に希釈溶液状のネオテームを塗付又は噴霧等により添加する方法等が挙げられる。また、渋味を呈する製品の最終形態が液体、半固体の場合は、その製造工程中又は最終製品にそのまま又は溶液の状態で添加する方法等が挙げられる。
【0045】
以上のような方法で通常より少ない量のネオテームを用いて、本発明は簡便に過剰な渋味、苦味、酸味、辛味、塩味、金属味及び不快な風味を減少又は緩和し、味覚の改善を図ることができる。
【実施例】
【0046】
本発明の異味を呈する製品の呈味の改善方法を以下の実施例によって説明する。しかしながら、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実施例1 緑茶飲料の苦味および渋みの低減
【0048】
高カテキン含有飲料(市販品)にネオテームを0.3〜4.0ppmとなるように添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により渋みと甘味の評価を行った。
【0049】
表1に示したように、対照はカテキン独特の非常に強い渋みがあり、その渋みが後まで続くが、ネオテームを0.4ppm以上添加することにより、渋みを低減させることができた。0.8ppmから1.8ppmの範囲で添加することにより、甘味を付与することなく、渋みを低減することができた。2.0ppm以上では甘味が僅かに付与されるものの、飲料の味を損なうことなく渋みを大幅に低減することができた。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2 カフェインの呈味改善
カフェイン抽出物(白鳥製薬株式会社製)の0.03および0.05%水溶液に、ネオテーム
(8.2ppm)を添加し苦味の低減効果を確認した。
【0052】
ネオテームを添加することにより、いずれの濃度においてもカフェインの苦味が低減された。
【0053】
実施例3 コーヒー飲料(無糖)の苦味の低減
【0054】
市販の無糖コーヒーにネオテームを0.02〜2.5ppmとなるように添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により苦味、酸味、甘味の評価を行った。
【0055】
表2〜5に示したように、市販の無糖コーヒーにネオテームを添加することにより、コーヒーの苦味と酸味を低減することができた。対照はコーヒー独特の苦味が感じられるが、ネオテームを0.1ppm以上添加することにより、苦味と苦味の後味を低減させることができた。0.5ppmから1.3ppmの範囲で添加することにより、甘味を付与することなく、苦味を低減することができた。1.3ppmより高い濃度では甘味が僅かに付与されるものの、苦味を大幅に低減することができた。また、対照はコーヒー独特の酸味が感じられるが、ネオテームを0.08ppm以上添加することにより、酸味と酸味の後味を低減させることができた。0.08ppmから1.3ppmの範囲で添加することにより、甘味を付与することなく、酸味を低減することができた。1.3ppmより高い濃度では僅かに甘味は付与されるものの、酸味を大幅に低減することができた。また、ネオテームを0.3ppm以上添加することにより、焦げた風味も低減することができた。いずれの濃度においても、飲料の風味を損なうことはなかった。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
実施例4 ミルク入コーヒーの呈味改善
【0061】
下記の処方に従って原材料を均一に混合し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0062】
アスパルテームまたはネオテームを添加することにより、コーヒーの苦味と酸味が低減された。アスパルテームを添加したものと比較して、ネオテームを添加したものは苦味の後味感じられず、より強くマスキングされていた。また、ネオテームを添加したコーヒーは味質のバランスが良く、より好ましい味質であった。また、ネオテーム添加量の多いBのほうがAと比べてより苦味と酸味が低減され好ましい味質であった。以上より、ネオテームにより苦味と酸味が低減され、砂糖に近い甘味が付与されることが確認された。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例5 大豆ペプチド入り飲料の呈味改善
【0065】
大豆ペプチド(ハイニュートD1:不二製油株式会社製)の1.6%水溶液に、ネオテーム(0.5、1.0、2.0ppm)、スクラロース(7、12、26ppm)、アスパルテーム(20、35、80、100ppm)を添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0066】
いずれの甘味料においても、苦味が低減された。ネオテームを添加することにより、大豆ペプチド特有の苦味の後味が特に低減された。スクラロースやアスパルテームを添加したものと比較して、ネオテームを添加したものは苦味の後味が特に改善されていた。
【0067】
実施例6 大豆ペプチド入り黒酢飲料の呈味改善
【0068】
下記処方で大豆ペプチド(ハイニュートDC6:不二製油株式会社製)入り黒酢飲料を調製し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。砂糖の代わりに、次の高甘味度甘味料 ネオテーム(4.1ppm、7.2ppm)、スクラロース(67、100ppm)、アスパルテーム(200、300ppm)を添加し、苦味と酸味の低減効果を確認した。
【0069】
【表7】

【0070】
砂糖を使用した黒酢飲料は、後味に強い苦味を感じたが、高甘味度甘味料を添加することにより低減された。ネオテームを添加することにより、後味の苦味と酸味を低減することができ、飲みやすさが改善された。
【0071】
実施例7 コラーゲン飲料の呈味改善
【0072】
市販のコラーゲン飲料にネオテームを1及び1.5ppmとなるように添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0073】
ネオテームを添加することにより口中に残る苦味(苦味の後味)が改善され、コラーゲン臭、魚臭も低減した。
【0074】
実施例8 コラーゲン飲料の呈味改善
【0075】
フィッシュコラーゲン(マリンマトリックス:焼津水産化学工業製)の5%水溶液に、ネオテーム(1.0、2.0ppm)を添加し、官能評価により味質の評価を行った。
【0076】
ネオテームを添加することにより、コラーゲン臭、魚臭を低減することができ、飲みやすさが改善された。
【0077】
実施例9 アミノ酸飲料の呈味改善
【0078】
下記処方で原料を混合し、75℃で10分間過熱後冷却し、アミノ酸を高濃度で含有するアミノ酸飲料を調製した。2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0079】
【表8】

【0080】
高甘味度甘味料を使用しない飲料では苦味、酸味やアミノ臭が強く、えぐみや金属味が感じられた。スクラロース及びネオテームを添加することにより、これらの味が改善された。スクラロースを添加したものは甘味のバランスが良く、後味に渋み、えぐみやアミノ臭のレベルが下がっていたが、後味でアミノ臭が残っていた。一方、ネオテームを添加したものは苦味、渋みやアミノ臭の後味が改善されていた。アミノ酸を倍量に増やした飲料でも同様の効果が見られた。
【0081】
実施例10 アミノ酸飲料の呈味改善
【0082】
市販のアミノ酸飲料粉末よりアミノ酸飲料を調製した。アミノ酸飲料に、ネオテームを1ppmまたはスクラロースを12ppmとなるように添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0083】
スクラロース及びネオテームを添加することにより、アミノ酸特有の苦味が低減された。スクラロースを添加したものは苦味が全体的に低減されていたが、後味にやや苦味が残っていた。一方、ネオテームを添加したものは苦味の後味が改善されていた。ネオテームを0.5ppm及びスクラロースを6ppmとなるように添加した。ネオテームとスクラロースを併用することによって、更に苦味と渋みが低減され、より好ましい味質となった。
【0084】
実施例11 果汁飲料の呈味改善
【0085】
下記処方でグレープフルーツジュースを調整し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。グレープフルーツジュースにネオテームを1.5ppmまたは、スクラロースを25ppmとなるように添加し、苦味の低減効果を確認した。
【0086】
【表9】

【0087】
いずれの甘味料においても、グレープフルーツ果汁の苦味が低減された。ネオテームを添加したものは、全体的に苦味がマスキングされ、スクラロースを添加したものと比較して先味で特に効果が高かった。
【0088】
実施例12 ドレッシングの呈味改善
【0089】
下記処方で原料を混合し、75℃で10分間過熱後冷却し、ドレッシングを調製した。2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0090】
【表10】

【0091】
スクラロース及びネオテームを添加することにより、唐辛子の辛味が低減された。スクラロースを添加したものと比較して、ネオテームを添加したものは酸味と辛味の後味がより改善され、マイルドな味になった。
【0092】
実施例13 ノンオイルドレッシングの呈味改善
【0093】
市販のノンオイルドレッシング(和風、醤油ベース)に、ネオテームを1.0、2.0、2.9ppmとなるように添加し官能評価により味質の評価を行った。
【0094】

市販のドレッシングは酸味が強く喉への刺激が強かった。また辛味も強かった。しかしネオテームを添加することにより、酢カドが取れ、辛味も低減できた。特に辛味の後味がなくなったため、マイルドな印象となり味に幅がでた。
【0095】
実施例14 フレンチドレッシングの呈味改善
【0096】
市販のフレンチドレッシングに、ネオテームを1.0、2.1、3.0ppmとなるように添加し官能評価により味質の評価を行った。
【0097】
市販のドレッシングは酸味が強く喉への刺激が強かった。しかしネオテームを添加することにより、喉への酸味の刺激が減り酢カドが取れたため、マイルドな印象となり味に幅がでた。
【0098】
実施例15 酢飲料の呈味改善
【0099】
市販の酢飲料に、ネオテームを1.0、2.0ppmとなるように添加し官能評価により味質の評価を行った。
【0100】
市販の酢飲料は酸味が強く喉への刺激が強かった。しかしネオテームを添加することにより、喉への酸味の刺激が減り酢カドが取れたため、マイルドな印象となり飲み易くなった。
【0101】
実施例16 梅干の呈味改善
【0102】
市販の梅干(煉り梅、塩分11%)に、ネオテーム溶液を0.3、0.5、1.0、2.0、5.0、10.0、20.0ppmとなるように添加し均一になるよう混合した後、官能評価により味質の評価を行った。
【0103】
市販の梅干は酸味が強く喉への刺激が強かった。また塩分も強かった。しかしネオテームを添加することにより、喉への酸味の刺激が減り酢カドが取れた。また0.5ppm以上添加することにより塩カドも低減させることが出来た。
【0104】
実施例17 青汁の呈味改善
【0105】
市販の青汁にネオテーム(0.4、0.7ppm)、スクラロース(5.5、9.5ppm)、アスパルテーム(16ppm)を添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0106】
いずれの甘味料においても、野菜の青臭さが低減された。ネオテームを添加することにより、野菜の青臭さが特に低減された。スクラロース、アスパルテームを添加したものと比較して、ネオテームを添加したものは青臭さの後味が特に改善されていた。
【0107】
実施例18 豆乳の呈味改善
市販の豆乳にネオテーム(1.0、1.2、1.5ppm)、スクラロース(10、12、14ppm)を添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0108】
いずれの甘味料においても、豆乳の豆臭さが低減された。ネオテームを添加することにより豆乳の豆臭さが特に低減された。スクラロースを添加したものと比較して、ネオテームを添加したものは豆臭さの後味が特に改善されていた。
【0109】
実施例19 アルコール飲料の呈味改善
市販のウォッカ(アルコール度数40度)にネオテーム(3、5、10ppm)となるように添加し、2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0110】
市販のウォッカではアルコールの刺激感、バーニング感を感じていたがネオテームを添加することによりアルコールの刺激感、バーニング感が緩和され味質が改善された。
【0111】
実施例20 日持ち向上剤の呈味改善
【0112】
酢酸ナトリウムとグリシンを主成分とした日持ち向上剤1%溶液に、ネオテームを0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、4.0ppmとなるように添加し官能評価により味質の評価を行った。
【0113】
【表11】

【0114】
酢酸ナトリウムとグリシンを主成分とした日持ち向上剤1%溶液は特有の金属味、酸味、酸臭があり好ましい味ではなかった。しかしネオテームを添加することにより、金属味、酸味が軽減し、臭いもマスクできた。
【0115】
実施例21 市販カップ焼きそばの呈味改善
【0116】
市販のカップ焼きそばのソースに、ネオテームを0.00004g添加しよく混合後、麺とあわせて焼きそばを調製した。官能評価により味質の評価を行った。
【0117】
市販のカップ焼きそばはソースの酸味が強く刺激が強かった。また塩味も強かった。しかしネオテームを添加することにより、酸味の刺激が減り塩カドが取れた。
【0118】
実施例22 冷やし中華のタレの呈味改善
【0119】
下記処方で原料を混合し、冷やし中華のタレを調製した。2℃の冷蔵庫で一夜放置後、官能評価により味質の評価を行った。
【0120】
【表12】

【0121】
対照処方の砂糖の33%をネオテームで置換することにより、酸味、酸臭が軽減し、マイルドでコク、キレのある味になった。
【0122】
実施例23 機能性成分の呈味改善効果(クエン酸鉄)
【0123】
クエン酸鉄(昭和化工株式会社製)の、0.025%溶液に、ネオテームを1.5ppm、スクラロースを22ppmとなるように添加し官能評価により味質の評価を行った。
【0124】
ブランクは金属味が強く、口中に残るため収斂味もあった。ネオテームまたはスクラロースを添加することにより、金属味は低減できていたが、ネオテームの方がより金属味が改善できていた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、渋味を呈する各種の最終製品における過剰な苦味や渋味を、特別な工程/処理を追加することなく、「ネオテーム」を、異味を呈する製品に少量添加するだけで、減少又は緩和することができる。本発明により、従来技術では不十分であった異味の後味を特に改善することができる。特に、血圧上昇抑制作用、血中コレステロール調節作用、血糖値調節作用、抗酸化作用、老化抑制作用、抗突然変異作用、抗癌作用、抗菌作用、抗う蝕作用、抗アレルギー作用、疲労回復作用、筋肉強化作用のような健康維持や増進に関する機能性を有するが、異味の後味が強いため添加の難しい機能性成分について、格段に嗜好性を高めることができる。従って、機能性を有する製品(加工食品)の製造が容易である。また、CVS(コンビニエンスストア)、スーパー等で販売されている弁当、惣菜、サンドイッチ、調理パン、サラダ等に広く使用されている日持ち向上剤特有の不快な味を低減することができ、これらの加工食品の嗜好性を高めることができる。更に、異味を呈する製品にネオテームを添加することにより、フレーバーが際立つ効果(フレーバー増強効果)を得ることができるため、幅広い食品において、味のバランスを整え嗜好性を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異味を呈する製品において、ネオテームを添加することを特徴とする呈味改善方法。
【請求項2】
ネオテームを、製品の全量に対して0.01ppm〜400ppmの濃度になるように添加する請求項1に記載の呈味改善方法。
【請求項3】
異味を呈する製品が、清涼飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、チューインガム、キャンディ、粉末食品、栄養補助食品、ドレッシング、調味料、漬物、梅干、弁当、惣菜、米飯、または麺類である請求項1または請求項2に記載の呈味改善方法。

【公開番号】特開2009−240297(P2009−240297A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231403(P2008−231403)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】