説明

呈味改良剤、並びに加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料

【課題】飲料の呈味を改良することができる呈味改良剤、及び呈味が改良された加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料を提供することである。
【解決手段】液体に添加された際に寒天分子がゲル化能以下の流動体として存在するように調整された飲料の呈味改良剤、並びにその呈味改良剤が含まれている加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料の呈味を改良することができる呈味改良剤、並びに呈味が改良された加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
市乳には、乳牛から搾乳された牛乳や、原料乳から作られる脱脂粉乳、クリーム、バター及びホエーなどと水を原料として作られた加工乳がある。また、これらの乳にコーヒーなどの味をつけたり、カルシウムを強化したり、乳糖を分解したりした乳飲料も市販されている(特許文献1)。一方、清涼飲料としては、例えば、ミネラル強化された飲料や蛋白が分解されたペプチド飲料などの機能性飲料、薬効を有する茶系飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料、乳性飲料などが市販されている。さらに、近年の健康ブームを反映して、豆乳を使った飲料が商品化されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−111879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加工乳、例えば脱脂粉乳などによって調製された低脂肪乳は、牛乳本来のコク味がなく、また脱脂粉乳は、牛乳中の塩類の濃縮により塩味が多く、これより作られる低脂肪乳は、エグ味が出てくるなどの呈味に関する問題がある。一方、乳糖分解乳は、乳糖分解によりできるグルコースの甘味が出てしまうなどの問題がある。さらに、高脂肪濃厚乳は、コクが強いがキレが悪く喉越しが悪いという問題がある。ミネラル強化した飲料や蛋白が分解されたペプチド飲料などの機能性飲料は、機能性素材自身に苦味や収斂味、エグ味などがあるものが多く呈味の改良の必要がある。薬効を有する茶系飲料には、苦味やエグ味が多いものがある。豆乳には、独自の豆臭のくさ味があり、改良が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、飲料の呈味を改良することができる呈味改良剤、並びに呈味が改良された加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、液体に添加された際に寒天分子をゲル化能以下の流動体として存在させることにより、呈味を改良することができることを見出した。すなわち、本発明は、液体に添加された際に寒天分子がゲル化能以下の流動体として存在するように調整された飲料の呈味改良剤である。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するために、寒天分子が流動体として存在していることを特徴とする加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料である。
【0008】
このように、寒天分子によって液体をゲル化させずに、寒天分子をゲル化能以下の流動体として液体中に浮遊させることによって、呈味を改良することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、飲料の呈味を改良することができる呈味改良剤、並びに呈味が改良された加工乳、乳飲料、清涼飲料、及び豆乳飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
このように、寒天分子を液体中にゲル化能以下の流動体として存在させる方法としては、寒天をゲル化能以下の濃度、例えば0.001〜0.3重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%に調整する方法がある。本発明において、ゲル化能とは、寒天水溶液におけるゲル化能力(凝固能力)をいい、ゲル化能以下とは、このようなゲル化能を有しない状態、すなわち寒天水溶液においてゲル化しない状態をいい、例えば0.3重量%以下の寒天溶液がゲル化しない状態である。
【0011】
本発明に係る呈味改良剤、乳飲料、加工乳、清涼飲料、及び豆乳飲料において、呈味とは、甘味、塩味、酸味、苦味、辛味、収斂味、コク味又はエグ味などをいう。すなわち、このような呈味改良剤を添加することにより、低脂肪乳においては、牛乳本来のコク味を与えることができるとともに、塩味やエグ味を抑える効果があるなど呈味の改良が可能になる。乳糖分解乳においては、コク味を増強できるとともに、グルコースの甘味を低減することができる。また、高脂肪濃厚乳においては、キレがよくなり喉越しのよい加工乳に仕上げることができる。カルシウム強化乳においては、カルシウムのザラツキを低減することが可能になる。ミネラルが増量された機能性飲料においては、例えばマグネシウムや亜鉛の苦味やエグ味を緩和することができる。ビタミンが増量された機能性飲料においては、ビタミン臭を低減することができる。蛋白が分解されたペプチドが含有された機能性飲料においては、独特の獣臭や苦味やエグ味を低減することができ、機能性素材の呈味の改良を行なうことができる。
【0012】
また、本発明において、加工乳としては、低脂肪乳、乳糖分解乳、高脂肪濃厚乳などがあり、乳飲料としては、牛乳及び牛乳にコーヒーや果物などの味を付けたものやカルシウムなどのミネラル成分が増量されているものがあり、清涼飲料としては、例えば、機能性飲料、薬効を有する茶系飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料や乳性飲料などがある。このうち、機能性飲料としては、クエン酸鉄ナトリウムなどの鉄分としてのミネラルが1〜10mg/100ml以上含まれた飲料、ビタミンCが100〜2000mg/100ml以上含まれた飲料、又は蛋白質が分解されたペプチドが100〜2000mg/100ml以上含まれている飲料などがある。
【実施例】
【0013】
実施例1
次に、低脂肪乳(乳脂肪0.5重量%以下)に平均分子量220,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−5、ゲル化能0.15重量%)0.05重量%を加え、加熱溶解することによって、本発明に係る乳飲料の実施例1を作製した。比較例1として、元の低脂肪乳を用意し、比較例2として乳脂肪3.5重量%以上の牛乳を用意した。それぞれの乳について、どちらのコクがあって好ましいかに関して目隠しによる官能試験を行った。その結果、コク味に関しては、実施例1>比較例2>比較例1という結果を得た。
【0014】
実施例2
次に、乳糖分解加工乳に平均分子量100,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−35、ゲル化能0.2重量%)0.02重量%を加え、加熱溶解することによって、本発明に係る乳飲料の実施例2を作製した。比較例3として元の乳糖分解加工乳を用意した。それぞれの乳についてどちらの甘味が強いかに関して目隠しによる官能試験を行った。その結果、甘味に関しては比較例3>実施例2という結果を得た。
【0015】
実施例3
次に、市販のイチゴ牛乳に平均分子量400,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−8、ゲル化能0.15重量%)0.05重量%を加え、加熱溶解することによって、本発明に係る乳飲料の実施例3を作製した。比較例4として元のイチゴ牛乳を用意した。それぞれの乳についてどちらがおいしいと感じるかに関して目隠しによる官能試験を行った。その結果、実施例3>比較例4という結果を得た。
【0016】
実施例4
次に、関節軟骨の主要成分であるグルコサミンが含有された表1に示す成分の機能性飲料に、平均分子量220,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−5、ゲル化能0.15重量%)0.10重量%を加え、加熱溶解することによって、本発明に係る機能性飲料の実施例4を作製した。比較例5として表1に示す成分の機能性飲料を用意した。
【0017】
【表1】

【0018】
これら実施例4及び比較例5に係る機能性飲料について、どちらが飲みやすいかという官能試験を行なったところ、実施例4に係る機能性飲料の方が、エグ味が少なく飲みやすいという評価を得た。
【0019】
実施例5

次に、脳及び目の発達に重要な働きを持つDHA(ドコサヘキサエン酸)が含有された表2に示す成分の機能性飲料に、平均分子量400,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−8、ゲル化能0.15重量%)の0.04重量%溶液になるように予め溶解された寒天溶液を加えることによって、本発明に係る機能性飲料の実施例5を作製した。比較例6として表2に示す成分の機能性飲料を用意した。
【0020】
【表2】

【0021】
これら実施例5及び比較例6に係る機能性飲料について、魚臭などの異臭が少ないものはどちらかという官能試験を行なったところ、実施例5に係る機能性飲料の方が明らかに異臭が少ないという評価を得た。
【0022】
実施例6
次に、市販の豆乳に平均分子量100,000の寒天(伊那食品工業(株)製、伊那寒天S−35、ゲル化能0.2重量%)0.02重量%を加え、加熱溶解することによって、本発明に係る豆乳の実施例6を作製した。比較例7として元の豆乳を用意した。それぞれの豆乳についてどちらの豆臭が強いかに関して目隠しによる官能試験を行った。その結果、豆臭の強さに関しては比較例7>実施例6という結果を得た。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に添加された際に寒天分子がゲル化能以下の流動体として存在するように調整された飲料の呈味改良剤。
【請求項2】
請求項1記載の呈味改良剤が含まれていることを特徴とする加工乳。
【請求項3】
請求項1記載の呈味改良剤が含まれていることを特徴とする乳飲料。
【請求項4】
請求項1記載の呈味改良剤が含まれていることを特徴とする清涼飲料。
【請求項5】
請求項1記載の呈味改良剤が含まれていることを特徴とする豆乳飲料。


【公開番号】特開2006−180792(P2006−180792A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378522(P2004−378522)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】