説明

呈色解析装置および方法ならびにプログラム

【課題】テスト領域の呈色状態に基づいて容易に被検物質の検査を行う。
【解決手段】試験片10の展開層12に対し検体が点着され、この試験片10が呈色解析装置1の挿入口3に挿入される。すると、予め設定された設定時間完了後に、観察窓10Zのテスト領域TLおよびコントロール領域CLの呈色状態が画像Pとして読み取られる。前処理手段22において画像Pに対し前処理が施された後、画像Pの空間周波数成分が算出される。そして、空間周波数成分に基づいてパターン情報PPが生成され、パターン情報PPが情報出力手段4に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の被験物質を検査する際に用いられる呈色解析装置および方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断薬や毒物等の検査のために被験物質を含有する可能性のある検体溶液を試験片に送液し、イムノクロマトグラフ法を用いて被験物質について簡便かつ迅速に検査するデバイスが数多く開発されている。具体的には、特定の領域(テストライン)に被検物質(たとえば抗原)に特異的に結合する第1抗体が固定された多孔質体からなる展開層が用意される。そして、展開層上に被検物質と特異的に結合する標識化第2抗体に被検物質が存在する可能性のある検体を混合した検体溶液が展開される。すると、テストライン上において被検物質と第1抗体および第2抗体とによる抗原抗体反応が生じ、テストラインが着色もしくは発色し呈色状態になる。このテストラインの呈色状態を観察することにより、検体溶液に被検物質が存在するか否か定量的または定性的(陰性/陽性)な測定が行われる。
【0003】
ところで、上述した試験片を簡易的に測定するPOCT(Point of Care Testing)診療向けの測定装置として、呈色測定装置(イムノクロマトリーダー)が使用されている(たとえば特許文献1、2参照)。特許文献1には、効率的に試験片の検査を行うために、試験片のテストラインの濃度値に基づいて被検物質の定量的な判断を行うことが開示されている。また、特許文献2には、テストラインの光学的時間変化率が最大になる区間の測定データを離散フーリエ変換し、振幅スペクトル形状に基づいて地帯反応が生じているかを判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−266751号公報
【特許文献2】特開2005−43352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2のような呈色測定装置を用いた場合であっても、被検物質の量が少なくテストラインの濃淡が薄い場合、濃淡に基づいて被検物質の判定がしづらいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、テスト領域の呈色状態に基づいて容易に被検物質の検査を行うことができる呈色解析装置および方法ならびにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の呈色解析装置は、検体溶液が展開される展開層と、展開層に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析装置であって、テスト領域の呈色状態を画像として読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出する周波数処理手段と、周波数処理手段により算出された空間周波数成分を用いてパターン情報を生成し出力するパターン生成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の呈色解析方法は、検体溶液が展開される展開層と、展開層に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析方法であって、テスト領域の呈色状態を画像として読取り、画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出し、算出した空間周波数成分を用いてパターン情報を生成し出力することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の呈色解析プログラムは、コンピュータに、検体溶液が展開される展開層と、展開層に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析プログラムであって、テスト領域の呈色状態を示す画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出する手順と、算出した空間周波数成分を用いてパターン情報を生成し出力する手順とを実行させることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、試験片は、テスト領域およびテスト領域が被検物質の存在により呈色状態になるものであればなんでもよく、たとえばクロマトグラフィ、特に抗原抗体反応を利用したイムノアッセイをクロマトグラフィに応用したイムノクロマトグラフィ法を用いたものであってもよい。また、テスト領域およびコントロール領域のパターン形状は問わず、たとえばライン状に形成されていてもよいし、所定のパターンを有するものであってもよい。さらに、試験片は増幅処理を行うものであってもよいし、増幅処理が不要なものであってもよい。
【0011】
また、呈色状態とは、被検物質によりテスト領域が発色もしくは変色する、もしくは検体溶液によりコントロール領域が発色もしくは変色するものであればよく、濃淡値は呈色状態の発色強度もしくは変色度合いを表すものであればよい。そして、読取手段は、呈色状態を濃淡値として読み取るものであればその構成を問わず、たとえば撮像素子を用いて試験片を画像として取得するものであってもよいし、試験片に光を照射しその反射光を受光する受光素子からなるものであってもよい。さらに、読取手段は、呈色状態の濃度変化を濃淡値として読み取るものであってもよいし、所定の波長の光(蛍光)の強度を濃淡値として読み取るものであってもよい。
【0012】
また、読取手段はテスト領域の画像のみを読み取るものであってもよいし、テスト領域およびコントロール領域を含む領域の画像を読み取るものであってもよい。このとき、周波数処理手段はテスト領域およびコントロール領域を含む画像に対し周波数変換処理を施すことになる。
【0013】
さらに、周波数処理手段は、画像を空間周波数成分に変換するものであればその手法を問わず、たとえばフーリエ変換、離散フーリエ変換やウェーブレット変換等の公知の技術を用いることができる。
【0014】
また、周波数処理手段は、読取手段により読み取られた画像全体に対し周波数変換処理を施すものであってもよいし、画像から一端側にテスト領域が位置し他端側にコントロール領域が位置するように抽出された解析領域に対し周波数変換処理を施すものであってもよい。
【0015】
さらに、パターン生成手段は、空間周波数成分の値に基づいてパターン情報を生成するものであればその方法を問わず、たとえば周波数毎の振幅を示すパワースペクトルをパターン情報として生成し出力するものであってもよいし、空間周波数成分の値に応じて異なる色を付すことにより、周波数毎の空間周波数成分を色で示したパターン画像を生成する機能を有するものであってもよい。
【0016】
また、呈色解析装置は、読取手段により読み取られた画像に対し前処理を施す前処理手段を有していてもよい。たとえば前処理手段は、画像の画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を画素値と閾値との差分値に変換するようにしてもよい。あるいは、前処理手段は、画像の画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を所定の規定画素値に変換するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の呈色解析装置および方法ならびにプログラムによれば、検体溶液が展開される展開層と、展開層に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析するものであって、テスト領域の呈色状態を画像として読取り、画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出し、算出した空間周波数成分を用いてパターン情報を生成することにより、検体溶液中の被験物質の濃度が小さくテスト領域の濃淡による判別がしづらい場合であっても、パターン情報に基づいてテスト領域の呈色状態を明確に認識することができるため、検査結果が偽陰性とみなされることを防止することができる。
【0018】
なお、パターン生成手段が、空間周波数成分の値に応じて異なる色を付すことにより、各周波数に対する空間周波数成分を色で表したパターン画像を生成する機能を有するものであるとき、テスト領域の濃淡による判断に比べて精度良く効率的な被検物質の定量的もしくは定性的な判断を行うことができる。
【0019】
また、読取手段がテスト領域およびコントロール領域を含む領域の画像を読み取るものであり、周波数処理手段がテスト領域およびコントロール領域を含む画像に対し周波数変換処理を施すものであれば、コントロール領域の濃淡による周波数成分の変化に基づいて検査の異常等についてもパターン情報に基づいて把握することができる。
【0020】
さらに、パターン生成手段が、周波数毎の振幅を示すパワースペクトルをパターン情報として生成するものであるとき、テスト領域の濃淡による判断に比べて精度良く効率的な被検物質の定量的もしくは定性的な判断を行うことができる。
【0021】
また、画像の画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を画素値と閾値との差分値に変換する前処理手段をさらに有するものであれば、バックグランド等によるノイズ成分がパターン情報に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
さらに、画像の画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を所定の規定画素値に変換する前処理手段をさらに有するものであるとき、バックグランド等によるノイズ成分がパターン情報に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0023】
また、周波数毎の空間周波数成分の特性に基づいてテスト領域の呈色レベルを算出し、陽性/陰性の判定または陽性のレベル判定を行う判定手段を有することにより、検体溶液中の被験物質の濃度が小さくテスト領域の濃淡による判別がしづらい場合であっても、空間周波数成分から精度良く定性的または定量的な判定を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の呈色解析装置の好ましい実施形態を示す概略斜視図
【図2】図1の呈色解析装置の内部を示す概略図である。
【図3】本発明の呈色解析装置の好ましい実施形態を示す概略斜視図
【図4】図1の呈色解析装置の内部を示す概略図である。
【図5】本発明の呈色解析装置の好ましい実施形態を示す概略斜視図
【図6】図1の前処理手段において前処理された画素値の一例を示すグラフ
【図7】図1の前処理手段において前処理された画素値の一例を示すグラフ
【図8】図1の前処理手段において前処理された画素値の一例を示すグラフ
【図9】図1のパターン生成手段において生成されるパターン画像の一例を示す模式図
【図10】図1のパターン生成手段において生成されるパターン画像の一例を示す模式図
【図11】図1のパターン生成手段において生成されるパターン画像の一例を示す模式図
【図12】図1のパターン生成手段において生成されるパターン画像の一例を示す模式図
【図13】本発明の呈色解析方法の好ましい実施形態を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の呈色解析装置1の概略構成図である。呈色解析装置1は、たとえばイムノクロマトグラフィ技術を利用して被検物質の検出を行う試験片10の読取りを行うものであって、筐体2、デバイス挿入口3、情報出力手段4等を備えている。そして、検体溶液が点着された試験片がデバイス挿入口3に挿入され、試験片10において生じる呈色反応が光学的に読み取られ、読取結果が情報入出力手段4に出力される。情報入出力手段4はたとえば液晶タッチパネルからなるオペレーションパネルであって、使用者はオペレーションパネルを介して測定のための基本的な設定を入力することができる。
【0026】
図2および図3は呈色解析装置1により読み取られる試験片10の一例を示す模式図である。なお、試験片10として、たとえば特開2009−139256号公報、特開2007−64766号公報等公知の技術を用いることができる。また、以下にいわゆる増幅処理が可能な試験片10を用いる場合について例示するが、増幅処理を行わない試験片10を用いてもよい。
【0027】
試験片10は、イムノクロマトグラフィ法を用いて被検物質の定量的もしくは定性的(陰性/陽性)の検査を行うためのデバイスであって、被検物質(所定の抗原)を視認可能に標識化するものである。この試験片10には被検物質が存在する可能性のある検体と標識化物質(第2抗体)とを混合させた検体溶液が点着される。
【0028】
試験片10は、上ケース10A、下ケース10B、展開層12を有しており、上ケース10Aおよび下ケース10B内に展開層12が収容されている。上ケース10Aには外部から検体溶液を展開層12に点着するための貫通孔11と増幅液を展開層12に点着するための貫通孔14とが形成されている。一方、下ケース10Bには展開層12が固定されており、被検物質の定量的または定性的な測定を観察するための観察窓10Zが形成されている。さらに、下ケース10Bの表面には検体を識別情報(氏名等)や反応に必要な時間情報等を記録した文字情報、バーコード、ICタグ等の情報記憶手段15が設けられている。
【0029】
展開層12はたとえばセルロース濾紙、硝子繊維、ポリウレタン等の吸収剤からなっており、点着された検体溶液は毛細管現象により一定の方向に流れる。展開層12にはテスト領域TLとコントロール領域CLとが形成されている。テスト領域TLは、被検物質(抗体)に対して特異性を有する第1抗体がライン状に固定されたものであって(テストライン)、被検物質の存在により第1抗体−被検物質−第2抗体の結合体が形成されライン状に呈色する。一方、コントロール領域CLは、標識化抗体に反応する参照用抗原(もしくは抗体)が固定されており、検体溶液中の標識化抗体と反応しライン状に呈色する。したがって、コントロール領域CLの呈色状態を確認することにより、検体溶液がテスト領域TLおよびコントロール領域CL上を通過したか否かを判断することができる。
【0030】
さらに、試験片10は、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを上下方向(検体溶液の流路に略直交する方向)に挟むように、テスト領域TLおよびコントロール領域CLを洗浄するための洗浄液の流路を形成する洗浄層13a、13bを備えている。洗浄層13a、13bは、展開層12と同様の材料からなるものであって、洗浄層13a側には洗浄液が貯蔵されている(図示せず)。そして、テスト領域TLおよびコントロール領域CLにおける反応が完了した後に、洗浄層13aが呈色解析装置1から押圧される。すると、毛細管現象によって洗浄液が洗浄層13aから洗浄層13b側へ流れ、洗浄層13aと13bとの間に存在するテスト領域TLおよびコントロール領域CLに洗浄液が流れる。これにより、テスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体を形成しなかった標識化抗体が除去される。
【0031】
また、上ケース10Aには筐体2内の増幅処理手段6から金属イオン(銀コロイド等)を含有する増幅液を展開層12に展開させるための貫通孔14が形成されている。そして、洗浄液による洗浄後に増幅液が展開層12上に展開することにより、金属イオンがテスト領域TLおよびコントロール領域CL上の免疫複合体に付着し、呈色状態が増幅される。
【0032】
図4は本発明の呈色解析装置の好ましい実施形態を示すブロック図である。図4の呈色解析装置1は、読取手段21、前処理手段22、周波数処理手段23、パターン生成手段24を備えている。読取手段21は、観察窓10Zからテスト領域TLおよびコントロール領域CLの呈色状態を図5に示す画像Pとして読み取るものであって、たとえばCCDやCMOS等の撮像素子からなっている。なお、読取手段21は、グレースケール値(濃淡値)の画像Pを読み取るものであってもよいし、RGBの各成分値や蛍光等の所定の色(波長成分)を濃淡値とする画像Pとして読み取るものであってもよい。さらに、読取手段21は撮像素子からなる場合に限らず、観察窓10Zから生じる反射光や蛍光を受光する受光素子からなるものであってもよい。
【0033】
さらに読取手段21は、観察窓10Zの画像Pを読み取った際に一端側RR1にテスト領域TLが位置し他端側RR2にコントロール領域CLが位置するような解析領域RRを抽出する。なお、テスト領域TLおよびコントロール領域CLは、試験片10の所定の位置に形成されるものであり、試験片10はデバイス挿入口3より装置1内において所定の位置に位置決めされる。したがって、読取手段21は予め定まった領域を解析領域RRとして抽出し、この解析領域RRを周波数変換処理する領域として出力する。これにより、たとえばコントロール領域CLの異常もパターン情報PPから認識することができる。
【0034】
前処理手段22は、画像Pに対し前処理を施すものである。たとえば前処理手段22はテスト領域TLおよびコントロール領域CLに平行する画素ライン毎に平均値、メディアン値、最頻値等からなる代表画素値を算出する。すると、図6に示すような1次元の各画素ラインに対する代表画素値が得られる。このとき、前処理手段22は解析領域RRの画素ラインを圧縮することによりたとえば512ラインから16ライン分の代表画素数に減らす処理を行ってもよい。
【0035】
また、前処理手段22は上述した代表画素値に対し閾値処理を施す機能を有している。たとえば、前処理手段22は、図7に示すように、画像Pの代表画素値が所定の閾値以下である場合には代表画素値を0に変換するとともに、代表画素値が所定の閾値よりも大きい場合には代表画素値と閾値との差分値を新たな代表画素値として用いるようにしてもよい(バックグランド補正)。あるいは、前処理手段22は、図8に示すように、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には所定の規定画素値を新たな代表画素値とした正規化処理を行うようにしてもよい。これにより、テスト領域TLおよびコントロール領域CL以外の領域BRによるノイズ成分がパターン情報PPに及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0036】
図4の周波数処理手段23は、読取手段21により読み取られた画像Pに対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出するものである。ここで、周波数処理手段23は、前処理手段22により前処理された解析領域RRの代表画素値に対し1次元の高速フーリエ変換(FFT)を行うことにより、各周波数に対する空間周波数成分を算出する。なお、周波数処理手段23が前処理された解析領域RR(図6〜図8参照)に対し周波数変換処理を行う場合について例示しているが、前処理前の解析領域RRに対し周波数変換処理を行うようにしてもよい。
【0037】
また、周波数処理手段23が1次元の高速フーリエ変換をする場合について例示しているが2次元のフーリエ変換を行うようにしてもよい。この場合、前処理手段22において画素ライン毎の代表画素値の算出が不要であって、(u,v)空間上の空間周波数成分が算出されることになる。あるいは、周波数処理手段23はフーリエ変換に代えてウェーブレット変換等の他の周波数変換処理を行うようにしてもよい。さらに、周波数処理手段23は、計算可能な全ての周波数に対する成分を計算する1次元フーリエ変換を使用した場合について例示しているが、特定の周波数のフーリエ係数を計算した結果を用いて陽性/陰性の判定又は、陽性のレベル判定をおこなうこととしても良い。
【0038】
パターン生成手段24は、周波数処理手段23により算出された空間周波数成分を用いてパターン情報PPを生成するものである。たとえば周波数処理手段23は1次元フーリエ変換に基づくパワースペクトル分布を算出する。すると、コントロール領域CLおよびテスト領域TLの双方が呈色状態にある場合、図9に示すパワースペクトルがパターン情報PPとして生成される。一方、コントロール領域CLのみが呈色状態にある場合、図10に示すパワースペクトルがパターン情報PPとして生成される。
【0039】
さらに、パターン生成手段24は空間周波数成分(振幅値)応じて異なる色付けをしたパターン画像を生成する機能を有している。具体的には、パターン生成手段24には振幅値毎に応じて異なる色もしくはグレースケール値が予め記憶されており、図11および図12に示すような各周波数の振幅を色で表現したパターン画像を生成する。なお、図11はコントロール領域CLおよびテスト領域TLの双方が呈色状態にある場合のパターン画像を示しており、図12はコントロール領域CLのみが呈色状態にある場合のパターン画像を示している。
【0040】
そして、情報出力手段4は上述した画像P(図5参照)、画像Pの画素値(図6から図8参照)、パターン情報(図9から図12参照)のいずれかもしくはすべてを表示する機能を有している。これにより、使用者は上述したすべての情報を加味して被検物質の定量的または定性的な判断を行うことができる。
【0041】
以上のように、呈色状態を示す画像Pに対し周波数変換処理を施した後にパターン情報PPを生成することにより、呈色状態に基づく定量的または定性的な判定を容易に行うことができる。すなわち、従来のように、テスト領域TLの濃淡によって目視による判定を行う場合、濃淡が薄いときには目視判定がしづらいという問題がある。一方、周波数変換を行った後にパターン情報を生成することにより、濃淡が薄い場合であってもパターン情報として見ればテスト領域TLの呈色状態を精度良く把握することができるため、被検物質の定量的または定性的な測定を効率よく行うことができる。
【0042】
図13は本発明の呈色解析方法の好ましい実施形態を示すフローチャートであり、図1から図13を参照して呈色改正方法について説明する。まず、図2および図3に示す試験片10の展開層12に対し検体が点着され、この試験片が呈色解析装置1の挿入口3に挿入される(ステップST1)。すると、呈色解析装置1において試験片10が装着されたことを検出して測定が開始される。そして、検体溶液の種類に応じて予め設定された設定時間完了後に、読取手段21により観察窓10Zのテスト領域TLおよびコントロール領域CLの呈色状態が画像Pとして読み取られる(ステップST2、図5参照)。すると、前処理手段22において画像Pに対し前処理が施され(ステップST3)、周波数処理手段23により空間周波数成分が算出される(ステップST4)。
【0043】
その後、パターン生成手段24により空間周波数成分に基づいてパターン情報(パターン画像)PPが生成され、パターン情報PPが情報出力手段4に表示される(ステップST5)。このとき、情報出力手段4にはパターン情報とともに画像Pおよび濃淡値が同時に表示され、使用者は情報出力手段4の表示に基づいて被検物質の定性的(陽性/陰性)判断を行う。
【0044】
上記実施の形態によれば、検体溶液が展開される展開層12と、展開層12に形成された検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域TLと、検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域CLとを有する試験片の呈色状態を解析するものであって、テスト領域TLの呈色状態を画像Pとして読取り、画像Pに対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出し、算出した空間周波数成分を用いてパターン情報PPを生成し出力することにより、検体溶液中の被験物質の濃度が低い等の場合においても、検査結果が偽陰性とみなされることを防止することができる。
【0045】
また、図11および図12に示すように、パターン生成手段24が、空間周波数成分の値に応じて異なる色を付すことにより、各周波数に対する空間周波数成分を色で表したパターン画像PPをパターン情報として生成する機能を有するものであるとき、テスト領域TLの濃淡による判断に比べて精度良く効率的な被検物質の定量的もしくは定性的な判断を行うことができる。
【0046】
さらに、図7に示すように、前処理手段22が画像Pの画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を画素値と閾値との差分値に変換するものであれば、バックグランド等によるノイズ成分がパターン情報に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0047】
また、図8に示すように、前処理手段22が画像Pの画素値が所定の閾値以下である場合には画素値を0に変換するとともに、画素値が所定の閾値よりも大きい場合には画素値を所定の規定画素値に変換する機能を有するものであるとき、バックグランド等によるノイズ成分がパターン情報に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0048】
また、図9および図10に示すように、パターン生成手段24が、周波数毎の振幅を示すパワースペクトルをパターン情報PPとして生成するものであるとき、テスト領域TLの濃淡による判断に比べて精度良く効率的な被検物質の定量的もしくは定性的な判断を行うことができる。
【0049】
本発明の実施形態は上記実施形態に限定されない。たとえば、上記実施の形態において、試験片は1本の判定ラインを有する場合について例示しているが、2本以上の判定ラインを有するものであってもよい。この場合であっても、2本以上のテスト領域TLおよびコントロール領域CLを含むように解析領域RRを設定し、周波数変換処理後にパターン情報が生成されることになる。
【0050】
さらに、パターン生成手段24がパワースペクトルに基づいてパターン画像を生成する場合について例示しているが、実数部分(cos(ω)成分)のみを用いてパターン画像を生成するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態において、パターン情報を生成し表示する場合について例示しているが、周波数処理手段23により生成された周波数毎の空間周波数成分の特性に基づいてテスト領域TLの呈色レベルを算出し、陽性/陰性の判定または陽性のレベル判定を行う判定手段をさらに備えていてもよい。たとえば判定手段は、陽性の場合および陰性の場合の既知の空間周波数成分もしくはパターン情報を特徴量(特徴ベクトル)とした教師データを用いて予め学習させたニューラルネットワークやブースティングアルゴリズム等を用いてパターンを認識するものであって、未知の空間周波数成分もしくはパターン情報が入力された際に被検物質の定性的判断(陰性/陽性)または定性的判断(陽性レベル)を自動的に判定する。これにより、検体溶液中の被験物質の濃度が小さくテスト領域の濃淡による判別がしづらい場合であっても、空間周波数成分から精度良く定性的または定量的な判定を自動的に行うことができる。
【0052】
さらに、図4に示す呈色解析装置1の構成はDSP等を用いて構築されている場合について例示しているが、読取手段21により読み取った画像Pを取得し、画像Pをパーソナルコンピュータ等により解析するものであってもよい。この場合、図4のような呈色解析装置1の構成は、補助記憶装置に読み込まれた呈色解析プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。また、この呈色解析プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。
【符号の説明】
【0053】
1 呈色解析装置
4 情報出力手段
10 試験片
12 展開層
15 情報記憶手段
21 読取手段
22 前処理手段
23 周波数処理手段
24 パターン生成手段
CL コントロール領域
TL テスト領域
PP パターン情報(パターン画像)
RR 解析領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体溶液が展開される展開層と、該展開層に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、前記検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析装置であって、
前記テスト領域の呈色状態を画像として読み取る読取手段と、
該読取手段により読み取られた前記画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出する周波数処理手段と、
該周波数処理手段により算出された周波数毎の前記空間周波数成分を用いてパターン情報を生成するパターン生成手段と
を備えたことを特徴とする呈色解析装置。
【請求項2】
前記パターン生成手段が、前記空間周波数成分の値に応じて異なる色を付すことにより、前記周波数毎の前記空間周波数成分を色で表したパターン画像を前記パターン情報として生成するものであることを特徴とする請求項1記載の呈色解析装置。
【請求項3】
前記パターン生成手段が、前記周波数毎の振幅を示すパワースペクトルを前記パターン情報として生成するものであることを特徴とする請求項1記載の呈色解析装置。
【請求項4】
前記読取手段が前記テスト領域および前記コントロール領域を含む領域の前記画像を読み取るものであり、前記周波数処理手段が前記テスト領域および前記コントロール領域を含む前記画像に対し周波数変換処理を施すものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項5】
前記画像の前記画素値が前記所定の閾値以下である場合に該画素値を0に変換し、前記画素値が前記所定の閾値よりも大きい場合に該画素値を前記画素値と前記閾値との差分値に変換する前処理手段をさらに有し、
前記周波数処理手段が前処理済みの前記画像に対し周波数変換処理を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項6】
前記画像の前記画素値が前記所定の閾値以下である場合には該画素値を0に変換し、前記画素値が前記所定の閾値よりも大きい場合には該画素値を所定の規定画素値に変換する前処理手段をさらに有し、
前記周波数処理手段が前処理済みの前記画像に対し周波数変換処理を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項7】
前記画像および前記パターン情報を同一画面上に表示する情報出力手段をさらに備えたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項8】
前記読取手段が、増幅剤により増幅処理された後の前記試験片から前記テスト領域の呈色状態を読み取るものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項9】
前記周波数処理手段により生成された周波数毎の前記空間周波数成分の特性に基づいて前記テスト領域の呈色レベルを算出し、陽性/陰性の判定または陽性のレベル判定を行う判定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の呈色解析装置。
【請求項10】
検体溶液が展開される展開層と、該展開層に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、前記検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析方法であって、
前記テスト領域の呈色状態を画像として読取り、
前記画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出し、
算出した前記空間周波数成分を用いてパターン情報を生成し出力する
ことを特徴とする呈色解析方法。
【請求項11】
コンピュータに、検体溶液が展開される展開層と、該展開層に形成された前記検体溶液中の被験物質に反応し呈色するテスト領域と、前記検体溶液が通過することにより呈色するコントロール領域とを有する試験片の呈色状態を解析する呈色解析プログラムであって、
前記テスト領域の呈色状態を示す画像に対し周波数変換処理を施すことにより空間周波数成分を算出する手順と、
算出した前記空間周波数成分を用いてパターン情報を生成し出力する手順と
を実行させることを特徴とする呈色解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−191229(P2011−191229A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58777(P2010−58777)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】