説明

周期運動体の状態監視方法、監視システム、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】Kurtosisの簡易計算方法を導入、絶対指標化として衝撃波形やピークレベル等をモデル化することによりそれが実際の設備診断方法として、より有効に活用しようとするものである。
【解決手段】周期運動体の異常時に発生する振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(クルトシス)として、計算式から、バーKTNを求め、更に該当式から、正規分布の正常値のクルトシスKTNの値は3.0であることから、絶対指標バーZNとして次式に基づき


から計算して、回転運動体の正常時は1とし、異常が進行するにつれて値は0に近づくことを以って異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期運動体の異常時に発生する振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(クルトシス)として計算し、更にこれから絶対指標としての指数を計算し、周期運動体の状態を監視する方法、システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型設備を有する鉄鋼業界等では、突発的に発生する設備故障でラインが停止すると、設備の稼働率の低下、下工程への材料供給の不足、納期が切迫している受注物件の納期遅れ等、多大な影響をこうむり、また多大な損害につながる。
これらを防止するため設備異常検知は重要な役割を果たす。従来は時間基準保全(Time Based Maintenance:TBM)が主流をなしていたが、近年は設備監視のハードウェア、ソフトウェアの充実も相まって状態基準保全(Condition Based Maintenance:CBM)に大きくシフ
トしている。この方が部品コスト低減、保全コスト低減、故障率低減につながるからである。
【0003】
保全をすると、保全後の初期故障にあたる確率が高くなる。保全しなくてもすんでいたものを定期保全で保全したため初期故障を生じたりする。これを現場では"当たりこわし"と呼んでいるところもある。
CBMに移行してくると、異常の兆候をできるだけ早く捉えることがクローズアップされ
る。そのための手法としてさまざまなものが検討されている。分野によってその指標も異なる。
【0004】
従来は感度のよい指標として特許文献1(特開2006−153760号)のようなKurtosis(クルトシス:尖度)、特許文献2( 特公昭62−60011号)、特許文献3(
特公昭64−4611号)のようなBicoherence(バイコヒーレンス:周波数成分比)、 衝撃劣化指標(Impact Deterioration Factor: ID Factor)などが検討されてきた。
【特許文献1】特開2006−153760号公報
【特許文献2】特公昭62−60011号公報
【特許文献3】特公昭64−4611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では振動振幅を指標化するものに対象を絞り、Kurtosisについて検討する。
従来は精密診断技法の一つであるKurtosisや、振動信号の確率密度関数の4次モーメントを正規化して計算していた。現場においては精密診断のニーズはあるもののハードウェア、ソフトウェア、コスト面から精密診断技術を組み込めないところもある。また、現場で信号波形をモニターしながら早急に対応が要される場合なども考えられる。
Kurtosisは精密診断技法の1つとして感度のよい良好な指標とされている。衝撃波が生じた場合、系の異常が進展すると、当初見られた衝撃波だけでなく傷そのものが拡大したり、また傷の接触面を通じて傷が伝播して微小傷等が多数発生することから衝撃波を中心に前後によりピークレベルの低い衝撃波が富士山状に生起する。これはよく一般的に観測されることである。
このKurtosisの簡易計算方法を導入、絶対指標化として衝撃波形やピークレベル等をモデル化することにより様々なケースを検討し、よりよく記述する簡易計算方式であると、それが実際の設備診断方法として、より有効に活用しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段は、周期運動体の異常時に発生する振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(クルトシス)を、
【数1】

(1)(式中:バーKTNはクルトシスの平均値を示し、バーなしのKTNは正常時のクルトシス値を示し、pはピーク波形の大きさ、mは異常振動の発生回数、qはサンプリング回数を示す。)に基づいて計算し、更に該当式から、正規分布の正常値のクルトシスKTNの値
は3.0であることから、絶対指標バーZN
【数2】

(2)から計算して、絶対指標バーZNが、回転運動体の正常時は1になり、異常が進行するに
つれて値は0に近づくことを以って異常を判定する工程を備えることを特徴とする周期運動体の状態監視方法である。
【0007】
更に、本発明の第2の解決手段は、周期運動体の異常時に発生する片側派生衝撃波のうち、振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(ク
ルトシス)を、
【数3】

(3)
(式中:バーKTNはクルトシスの平均値を示し、バーなしのKTNは正常時のクルトシス値を示し、pはピーク波形の大きさ、mは異常振動の発生回数、qはサンプリング回数を示す。)に基づいて計算し、更に該当式から、正規分布の正常値のクルトシスKTNの値
は3.0であることから、絶対指標バーZN
【数4】

(4)
から計算して、絶対指標バーZNが、回転運動体の正常時は1になり、異常が進行するに
つれて値は0に近づくことを以って異常を判定する工程を備えることを特徴とする周期運動体の状態を監視する方法である。
【0008】
更に、本発明の解決手段は、前記絶対指標バーZNをグラフに表記して周期運動体の状
態を監視することを特徴とする周期運動体の状態監視方法である。
【0009】
また、絶対指標バーZNを絶対指標指数値として表記グラフ化して該値が所定値より小
さくなれば異常として判定することを特徴とする周期運動体の状態監視システムとする。
更に、これらの絶対指標バーZNを簡易的に計算させる手順を備えた周期運動体の状態
監視コンピュータプログラムとして、用いれば、他の回転体にも利用できる。
更に、また、これらのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体とすれば、現場などに持ち込みが可能であり汎用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡易計算できるクルトシスを用いて、絶対指標化とすることで、周期運動体の異常を素早く且つ正確に判定し、捉えることができるので、設備の状態診断などに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
軸受、歯車等の回転体においては劣化が進行するに従って振動が大きくなる。また据付等が不適切な場合も振動が大きくなることは一般的によく知られている。各種の劣化指標としては、発明者らの特許文献1に詳細記載している。
【0012】
回転体に傷がついた場合などには、回転周期ごとのピーク波形が生ずる。特に初期異常の場合、当該回転体や転動体の単独の損傷が他の回転体や転動体に派生的に影響を伝播しない間は、このピークが明確に出るものと想定される(通常、回転体や転動体の損傷が生ずると、その接触面を損傷させることにより経時的に他の回転体や転動体への損傷に広がってゆくケースが多い)。傷が拡大していったり、伝播していくと、衝撃波を中心に前後によりピークレベルの低い衝撃波が富士山状に生起する。第1図は、本発明の1実施例を
説明するための通常回転体の振動信号の両側派生衝撃波を表した模式的図である。
【0013】
第1図において、サンプリングしたデータのm回転毎に通常のp倍のピークを持つ信号が現れるものと仮定する。なお、サンプリング間隔の定め方についてはサンプリング定理に基づく決定方法が周知であるが、本発明では決定方法は記述しない。また、派生する衝撃波については、サンプリングのカウントを便宜上dとおくと、
d=1の時、通常のp倍のピークレベル
d=iの時、通常のp−(i−1)(p−1)/qのピークレベル(i=1,2,…,q)とし、
d=q+1の時、通常のピークレベルに戻る三角形型の減衰パターンとしてモデル化する。
【0014】
本発明では、尖り度(クルトシス、Kurtosis)を用いて、簡易計算し、これを用いて、指標化して図式の形で判定に利用するものである。
衝撃波が発生しない場合のN個のデータを用いた分散、モーメント、Kurtosisを夫々、
σN2,MTN(4),KTN
とし、衝撃波が発生した場合についてはそれぞれ
【数5】

(5)と表記することにする。
衝撃波発生時の分散は
【数6】

(6)
【数7】

(7)を用いて、
【数8】

(8)を得る。
【数9】

(9)となる。
【0015】
系が正常の時、p(x)は正規分布となる。
正規分布の場合、理論計算によりKTは常に3.0である。
そこで、次式で計算する。
【数10】

(10)傷が拡大すると、バーKTNの値は増加する。
一般的に、バイコヒーレンスのように、正常時では1.0をとり、系の異常が進行するにつ
れ0に近づく絶対指標は、扱いやすいとされている。
そこで、本発明では(バーKTN−2)の逆数を取ることにより、それを絶対指標とする。
絶対指標バーZNは、以下の式で求められる。
【数11】

(11)正常時ではバーZNは1をとり、系の異常が進行するにつれその値は0に近づく。
【0016】
m=12とし、p=1,2,…,6及びq=1,2,3のケースを考え、式(9)の値
の変遷の結果を表1に示す。
【表1】

pが増大すると、当然のことながらKTNの値は増大する。一方、pの値が同じ場合q
の値が大きくなるに従って、KTNの値は下がってくる。傷が拡大したり伝播していくと
ピークレベルは大きくなり、派生衝撃波も拡大してゆく。
イメージ的には、表の左上から右下へとシフトしてゆくことが考えられる。
例えば、
【数12】

(12)と推移してゆくことが考えられる。
同様にバーZNを計算すると、表2の結果が得られる。
【表2】

【数13】

(13)と推移してゆくことが伺える。
図2は、この結果をグラフにしたもので、値が異常時には小さくなっていくので、その値を監視しておくことで、判定することができる。
【0017】
ピッチング傷小レベルとは一般的にp=2のような状態を指しており、同様に、傷中レベルp=4は、傷大レベルはp=6に相当する。
これらのことから、バーZNは劣化診断にとって感度の良い指標であると言える。また
、本方法はマイコンチップにも容易に組み込める簡便さとなっており、工場など現場における設備診断に有効に利用することが可能である。
【0018】
図3は、具体的な周期運動体の監視システムの構成を示すブロック図である。工場内の周期運動体である回転体において、振動を検知するセンサ31が設けられ、データ取得装置32に接続され、計測データを装置に入力する。データ取得装置32は計測データを所定の周期でサンプリングし、複数の信号からなる信号列を作成し、作成した信号列から各種のデータを取得する機能を有している。さらに工場内の通信ネットワークNWに接続され、システム監視装置本体10に送信する。
データ取得装置32からNW33と並列してシステム監視装置本体10に接続されている。
システム監視装置本体10は、本発明の尖度計算装置としての機能を兼備し、コンピュータを用いて構成されている。装置本体10は、演算を行うCPU11と、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM12と、CD−ROMドライブ等の外部記憶装置13と、ハードディスク等の内部記憶装置14とを備えており、CD−ROM等の本発明状態監視システム20から本発明コンピュータプログラム21を外部記憶装置13にて読み取り、読み取ったコンピュータプログラム21を内部記憶装置14に記憶し、RAM12にコンピュータプログラム21をロードし、CPU11はコンピュータプログラム21に基づいて状態監視装置10に必要な処理を実行する。また、状態監視装置10は工場内の通信ネットワークNW33に接続された入力部15(受付部)を備えており、通信ネットワークNW33を介してデータ取得装置32からデータを入力部15にて受信する。更に、状態監視装置10は情報を外部へ出力する出力部16を備えており、出力部16は警
報装置34に接続され、状態監視装置10は設備の異常を示す情報を出力部16から警報装置34へ送信する。警報装置34はブザー、ランプ、または警報の内容を表示する表示部などを備え、状態監視装置1から受信した情報に従って設備の異常を報知する。
【0019】
なお、状態監視装置10は、通信ネットワークNW33に接続されている、図示しない外部のサーバ装置から本発明にかかるコンピュータプログラム21をダウンロードし、CPU11にて処理を実行する形態であってもよい。
【0020】
内部記憶装置14は、監視対象の設備が正常であるときにデータ取得装置32が取得したN個の信号からなる標準信号列と、標準信号列から計算される標準尖度KTNと記憶し
、ZNを計算する工程を備える。
【0021】
図4は、本発明の状態監視システムが行う動作を示すフローチャートである。センサ31は、設備の稼動に伴って発生した図1のごとき振動などのデータを計測し、データ取得装置32は、設備の振動に略一致した周期などの所定の周期でセンサ31から入力された計測データをサンプリングし(S101)、平均値が0である複数の信号からなる信号列を取得する。データ取得装置32は、サンプリングの結果、取得した信号がq個蓄積されたか否かを判定し(S102)、信号がq個蓄積されていない場合は(S102:NO)、ステップS101へ処理を戻してサンプリングを継続し、信号がq個蓄積されている場合は(S102:YES)、蓄積されたq個の信号からなる第1信号列における信号の絶
対値の平均の所定倍などの所定値よりも大きい絶対値を有する大信号が前記第1信号列に含まれているか否かを判定する(S103)。大信号が第1信号列にふくまれていた場合
には(S103:YES)、データ取得装置32は、第1信号列にて、他の信号の絶対値
に対する大信号の絶対値の倍率p、衝撃波カウント数q及び大信号間の信号間隔数mを計測し(S104)、倍率p、衝撃波カウント数q、間隔数m、及び第1信号列を、通信ネットワークNW33を介して状態監視装置10へ送信する(S105)。
【0022】
状態監視装置10は、倍率p、衝撃波カウント数q、信号間隔数mなど、第1信号列をデータ取得装置32から受信し(S106)、内部記憶装置14に記憶してある標準尖度KTNを読み出し、一方、p、q、mから尖度計算式によってバーKTNを計算し(S107)、更にバーZN値を計算し(S108)、標準尖度との比較において判定する(S1
09)。判定の方法は、バーZN値が所定値より大とした結果にもとづくものでもよいし
、これらを表やグラフに表したものでもよい。設備が正常である場合は、標準信号列は略正規分布に従うと考えられるため、ZNの値は正規分布では1.0であるとして計算して
いる。
この判定によって、所定より小さな値を示せば、異常情報として警報信号を送信し(S110)、異常のない場合は正常として計測状態に戻る。異常のある場合は、ブザーやランプなどで表示するとともに、その設備についてマニュアルに基づき停止などが実行される。
【0023】
図5は、本発明の実施の一形態を示した状態監視方法の概念図である。これは電卓などによる簡易的な判定計算装置を示したもので、設備に設けられたセンサ31にはオシロスコープ等のデータ表示装置51が接続されており、データ表示装置51にはセンサ31が計測したデータを図1に示すような表示にすることができる。また、設備の作業者は、データ表示装置から、所定のデータを電卓にインプットして、電卓に設定された判定計算式にて計算し、設備稼働中のチェックに用いることが可能である。
【0024】
図6は、本発明の第2の解決手段として、周期運動体の衝撃派生が片側三角として表われる振動信号の場合を示し、図に示す記号は図1と同じものを表わす。
片側派生衝撃波は時間軸方向に対して片側の三角形に近い形をしており、その簡易計算
方法を導入し、新しい指標としたものは、機械の劣化診断にとってより感度の良い指標であるということを見出した。
この新しく提案された方法を利用すれば、設備保全においてKurtosisの動向を予測したり分析したりすることができ、より正確な診断に活用できる。
【0025】
回転体に傷がついた場合などには、回転周期ごとのピーク波形が生ずる。特に初期異常の場合、当該回転体や転動体の単独の損傷が他の回転体や転動体に派生的に影響を伝播しない間は、このピークが明確に出るものと想定される(通常、回転体や転動体の損傷が生ずると、その接触面を損傷させることにより経時的に他の回転体や転動体への損傷に広がってゆくケースが多い)。傷が拡大していったり、伝播していくと、衝撃波を中心に前後によりピークレベルの低い衝撃波が富士山状に生起する。
【0026】
サンプリングしたデータのm回転毎に通常のp倍のピークを持つ信号が現れるものと仮定する。なお、サンプリング間隔の定め方についてはサンプリング定理に基づく決定方法が周知であるが、ここでは議論を本題テーマに絞って明確化するため単純化している。
また、派生する衝撃波については、サンプリングのカウントを便宜上dとおくと
【数14】

(14)d=q+1の時、通常のピークレベルに戻る三角形型の減衰パターンとしてモデル化する(図6参照)。
衝撃波が発生しない場合のN個のデータを用いた分散、モーメント、Kurtosisをそれぞれ
σN2,MTN(4),KTN
とし、衝撃波が発生した場合についてはそれぞれ
【数15】

(15)と表記することにする。
衝撃波発生時の分散は
【数16】

(16)
となる。
【数17】

(17)を用いて、
【数18】

(18)を得る。
【0027】
よってバーKTN
【数19】

(19)となる。
系が正常の時、p(x)は正規分布となる。
正規分布の場合、理論計算によりKTは常に3.0である。
そこで、
【数20】

(20)として計算する。
傷が拡大すると、バーKTNの値は増加する。
一般的に、バイコヒーレンスのように、正常時では1.0をとり、系の異常が進行するにつ
れ0に近づく絶対指標は、扱いやすいとされている。
そこで、本論文では( ̄KTN−2)逆数を取ることにより、それを絶対指標とする。
絶対指標 ̄ZNは、以下の式で求められる。
【数21】

(21) 正常時では ̄ZNは1をとり、系の異常が進行するにつれその値は0に近づく。
【0028】
今、m=12とし、また、p=1,2,…6及びq=1,2,3のケースを考え、式(19)の値の変遷の結果を表3に示す。
【表3】

pが増大すると、当然のことながらKTNの値は増大する。一方、pの値が同じ場合qの値が大きくなるに従って、KTNの値は下がってくる。傷が拡大したり伝播していくとピー
クレベルは大きくなり、派生衝撃波も拡大してゆく。
イメージ的には、表の左上から右下へとシフトしてゆくことが考えられる。
【0029】
例えば、
【数22】

(22)と推移してゆくことが考えられる。
同様に ̄ZNを計算すると、表4の結果が得られる。
【表4】

表4から ̄ZNの値は、
【数23】

(23)と推移してゆくことが伺える。
【0030】
ここで、本発明の片側三角波におけるモデルと、両側派生衝撃波発生時のモデルと対比すると、表5に示すようになる(表5は表3に更にq=4の場合を計算したもの)。
【表5】

これから、片側三角波の方が、両側よりも異常の場合にはより敏感な反応を示していることがわかる。
例えば
【数24】

(24)となっている。つまり、衝撃波レベルが同じである場合、両側派生衝撃波のときよりも片側派生衝撃波のときの方が、概ねクルトシス(Kurtosis)の簡易計算値はより感度の良い挙動を示す。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記モデルによる判定方法は、軸受アウターレースに傷がある場合などには有効に適用でき、また、両側三角波や片側三角形波はその形を変形させることでさまざまなモデルを調査することができる。この方法を利用すれば設備保全において、正確な診断に活用できる。また、現場に適用することができ、精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に用いる、通常回転体の振動信号の派生衝撃波を表した模式的図である 。
【図2】本発明における両側派生衝撃波の場合の ̄ZNの変遷を表した模式的図である。
【図3】本発明の状態監視システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の状態システムが行う動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の一形態を示した状態監視方法の概念図である。
【図6】本発明の他の実施例として示す、片側三角波派生衝撃波を表した模式的図である。
【図7】本発明における片側三角波の場合の ̄ZNの変遷を表した模式的図である。
【符号の説明】
【0033】
1 衝撃波のピーク
2 派生衝撃波
10 状態監視装置
11 CPU
12 RAM
13 外部記憶装置
14 内部記憶装置
15 入力部
16 出力部
20 状態監視判定システム
21 コンピュータプログラム
31 センサ
32 データ取得装置
34 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期運動体の異常時に発生する振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(クルトシス)を、
【数1】

(1)(式中:バーKTNはクルトシスの平均値を示し、バーなしのKTNは正常時のクルトシス値を示し、pはピーク波形の大きさ、mは異常振動の発生回数、qはサンプリング回数を示す。)に基づいて計算し、更に該当式から、正規分布の正常値のクルトシスKTNの値
は3.0であることから、絶対指標バーZN
【数2】

(2)から計算して、絶対指標バーZNが、回転運動体の正常時は1になり、異常が進行するに
つれて値は0に近づくことを以って異常を判定する工程を備えることを特徴とする周期運動体の状態監視方法。
【請求項2】
周期運動体の異常時に発生する片側派生衝撃波のうち、振動振幅のピーク波形を検知し、時間進行方向に発生する前記波形を統計上の尖度(クルトシス)を、
【数3】

(式中:バーKTNはクルトシスの平均値を示し、バーなしのKTNは正常時のクルトシス値を示し、pはピーク波形の大きさ、mは異常振動の発生回数、qはサンプリング回数を示す。)に基づいて計算し、更に該当式から、正規分布の正常値のクルトシスKTNの値
は3.0であることから、絶対指標バーZN
【数4】

から計算して、絶対指標バーZNが、回転運動体の正常時は1になり、異常が進行するに
つれて値は0に近づくことを以って異常を判定する工程を備えることを特徴とする周期運動体の状態監視方法。
【請求項3】
前記絶対指標バーZNをグラフに表記して周期運動体の状態を監視することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の周期運動体の状態監視方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に基づく絶対指標バーZNを絶対指標指数値として表記グラフ化し
て該値が所定値より小さくなれば異常として判定することを特徴とする周期運動体の状態監視システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2の絶対指標バーZNを簡易的に計算させる手順を備えることを特徴
とする周期運動体の状態監視コンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5のプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241682(P2008−241682A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159242(P2007−159242)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年5月16日 システム制御情報学会発行の「第51回システム制御情報学会研究発表講演会」に発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】