説明

周波数に応じた糸又は糸前駆体における欠陥箇所の検出

【課題】ノイズ信号に対して従来よりも優れた強靭さを有する方法もしくは装置を提供する。
【解決手段】検出器12、13、16におけるノイズ・レベルを複数の周波数において検出する周波数選択ステップを実行する。次いで、周波数選択ステップにおいて検出されたノイズ・レベルに応じた測定周波数を選択する。これによって、僅かのノイズしか存在しない周波数を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸又は糸前駆体における欠陥箇所を検出する方法、並びに、前記方法を実施するために構成された装置に関する。
【0002】
ここで使用する語「糸前駆体」は製糸の過程で生ずる繊維組織、例えば、カーディング処理後の繊維ウェブ又は本来の紡糸工程の前の繊維束を意味する。
【背景技術】
【0003】
糸を製造及び使用する際には、連続的な品質管理を実施しなければならない。そのために糸もしくは糸前駆体の品質を測定できる種々の方法が知られている。これらの方法では、細い箇所、太い箇所、瘤、異質繊維、変色などの光学的に認識可能な欠点を検出できるように、例えば、糸の光学的透過率又は反射率が測定される。ほかには、例えば、容量測定方法も採用されている。
【0004】
米国特許第4436472号明細書には、発振器によって変調周波数を発生させ、発振器の再生回路中に光源及び検出器を設け、特定周波数を有する測定光を変調させる方法を開示している。ノイズの軽減を可能にする極めて周波数に固有の測定を保証する。
【0005】
国際公開第99/30108号パンフレットは同じ理由から増幅器を光源の変調周波数と同期させる方法を記述している。この方法もノイズの少ない特定周波数における測定を可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ノイズ信号に対する強靭性が従来よりも高い方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本明細書の独立請求項に記載の方法もしくは装置によって解決される。即ち、検出器におけるノイズ・レベルを複数の周波数で測定する周波数選択ステップを実施する。次いで、周波数選択ステップにおいて検出されたノイズ値に応じて測定周波数を選択する。これにより、ノイズ・レベルの低い1つの周波数(又は場合によっては複数の周波数)を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のその他の好ましい実施態様は本明細書の従属請求項に記載の通りであり、その詳細を添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0009】
本明細書の以下の説明及び特許請求項では下記のような定義を採用する。
【0010】
「欠陥箇所」とは、例えば、太い箇所、細い箇所、瘤、異質繊維及びその他の異質材料、変色などのような糸の欠陥を示唆する検出可能なあらゆる特性を意味する。
【0011】
「ノイズ」とは検出器によって測定される不定のエラー信号を意味する。これは、例えば、機械的振動又は電気的妨害信号によって起こることがあり、光学センサーの場合には周囲光によっても起こり得る。
【0012】
図1には一例として、光源11と光センサー12との間を糸10が通過する光学的糸センサーを示す。前記装置は当業者に公知の装置である。前記装置は、例えば、糸の幅もしくは太さに応じて変化するセンサー12からの信号によって、糸の太い箇所又は細い箇所を検出する機能を果す。但し、本発明は他の測定原理と併用することができる。既に述べたように、例えば、反射率測定又は容量測定、並びに複数の測定原理の組み合わせも利用できる。これらの装置にそれぞれ対応する方法は当業者に公知である。光学的測定は可視、赤外及び/又は紫外スペクトル領域における1つ又は2つ以上の波長で行なうことができる。
【0013】
この実施態様では、センサー12からの信号が増幅器13において増幅され、次いで(ディジタル信号に変換後)マイクロプロセッサ14へ伝送される。
【0014】
図1から明らかなように、マイクロプロセッサ14によって与えられる周波数で動作する発振器15によって、光源11の方向を制御する。光源11を流れる電流を調節する発振器15の周波数を以下の説明において測定周波数と呼称する。
【0015】
前記実施態様では、実際の測定の前に、マイクロプロセッサ14が周波数選択ステップを実施するように構成されている。前記周波数選択ステップは、糸10なしで、又は糸を静止させて、又は参照物体を対象に行なわれる。参照物体を利用する場合、例えば、欠陥のない糸を参照物体として使用することができる。いずれの場合にも、ノイズに妨げられずに動作する限り、センサー12は定常な信号を発信しなければならない。しかし、既に述べたように、センサー12は常に或る程度の、ノイズと呼称される不要波成分を含んでいる。周波数選択ステップの目的は、ノイズの少ない周波数領域において実際の測定を行うことができるように、このノイズの性質を予め正しく識別するよう学習することにある。
【0016】
このため、本発明の第1実施態様では、周波数選択ステップにおいてマイクロプロセッサ14が検出器からの信号の経時的推移を測定し、これを周波数部分に区分する。具体的には、例えば、異なる時点で測定されたセンサー12からの信号値を、高速フーリエ変換又はコサイン変換することによって行なうことができる。こうして、図2に定性的な例として示すような周波数スペクトルが得られる。このグラフにおいて、y-軸はそれぞれの周波数における信号振幅nを示す。
【0017】
次いで、マイクロプロセッサ14はスペクトルを分析し、ノイズが特に少ない領域を検出する。図示例の場合、周波数f0がそのような領域である。
【0018】
この時点で本来の測定が開始されることになる。そのため、マイクロプロセッサ14が発振器15を測定周波数f0で動作させ、走行する糸に対して測定が行われる。センサー12からの測定信号がマイクロプロセッサ14において再び周波数部分に区分され、周波数f0における測定振幅だけが測定の対象となる。
【0019】
本発明の第2実施態様を図3に示す。第1実施態様では周波数分析がマイクロプロセッサ14によって行なわれたが、第2実施態様ではこの分析のために、例えば、いわゆるロック-イン増幅器のような周波数選択フィルター16を設ける。マイクロプロセッサ14によって周波数選択フィルターの通過周波数が選択される。その他の点に関して、第2実施態様は第1実施態様と同じ構成を採用している。
【0020】
第2実施態様において、先ずは周波数選択ステップが実施され、前記ステップでは、増幅器13の出力信号がゼロの状態に、システムが設定される。ここで想定される一連の周波数におけるフィルター16の出力信号をマイクロプロセッサ14が測定する。このため、フィルター16及び発振器15をそれぞれ想定される条件に合わせて調整する。次いで、マイクロプロセッサ14はノイズが最小であった周波数を測定周波数として選択する。マイクロプロセッサ14は、前記測定周波数に合わせてフィルター16及び発振器15の周波数を設定し、この時点で正規の測定を行なうことができる。
【0021】
フィルター16としては、できるだけ狭い帯域通過フィルターを使用することが好ましい。図3に示す実施態様におけるロック-イン増幅器はフィルターの一例に過ぎない。これに代わる実施態様を図4に示す。ここではフィルター16をいわゆる中間周波フィルター(ZF−フィルター)として実施しており、この場合、ミキサー17において入力信号に(マイクロプロセッサ14によって設定された)パイロット周波数f1が乗算された後、(所定)周波数f2の信号だけを通過させる帯域の狭い中間周波フィルター18へ供給する。このように構成することで、マイクロプロセッサ14は周波数f1−f2において信号を測定することができ、この周波数はf1を変化させることによって変化させることができる。
【0022】
その他の点に関して、図4に示す実施態様は図3に示した実施態様と同じであり、周波数選択ステップも同様に実施される。
【0023】
以上に述べた実施態様では、測定周波数で変調される光信号によって、糸もしくは糸前駆体を走査するというものであった。換言すると、糸に電磁界を印加し、この電磁界に対する糸の反応を測定するというものであった。但し、既に述べたように、糸の容量を測定することも可能である。この場合には、糸を誘導して電気的コンデンサを通過させることによって糸に電界を印加する。この場合にも、コンデンサにおける電界を調整する測定周波数において測定を行うことが好ましい。測定周波数を求めるには、この実施態様においても、上述の周波数選択ステップを実施することによってノイズが最も少ない周波数を求めることができる。
【0024】
光学的測定又は容量測定に代わる測定方法として、例えば、他の電磁的又は非接触測定方法を利用することも可能である。
【0025】
周波数選択ステップにおいて、光学的フィールドもしくは電界の周波数をほぼ連続的に所要の周波数に同調させ、対応の詳細なノイズスペクトルを測定することができる。但し、周波数選択ステップにおいて少数の周波数測定することで、状況によっては回路技術上のコストを軽減することも可能である。
【0026】
周波数選択ステップにおいて、複数の周波数に順次同調させることができるフィルター16を含む検出器を設けることが好ましい。次いで、正規の測定において同じフィルター16を、周波数選択ステップにおいて得られた測定周波数に合わせて設定する。図1に示した実施態様ではフィルターを純粋にソフトウェアで解決する方法が選択されたのに対して、図3及び4に示した実施態様ではフィルター16をハードウェアで実施した。
【0027】
検出器がそれぞれ異なる周波数もしくは周波数領域に感応する複数の異なるセンサーを含む構成も考えられる。周波数選択ステップにおいて、どのセンサーが最小ノイズの信号を示すかが判断される。次いで、このセンサーが正規の測定に使用される。
【0028】
「正規の」測定において、複数の測定周波数で測定し、それぞれの測定周波数で測定された信号の加重和を求める方法も考えられる。加重値(Gewichtung)は周波数選択ステップにおいて、例えば、それぞれのノイズ振幅に反比例する値として選択することによってそれぞれの周波数において検出されたノイズ・レベルを反映する。
【0029】
以上に述べた実施態様において、検出器は糸もしくは糸前駆体の透過率又は反射率を測定する光センサー12を含む。但し、既に述べたように、容量測定を行なうことも可能である。また、例えば、それぞれが異なる色を感知する複数のセンサーの組み合わせ又は複数の光学センサーと容量センサーの組み合わせを使用することも可能である。
【0030】
図示の装置もしくは以上に説明した方法はヤーン・クリーナに特に好適であるが、糸の製造及び加工の他の工程にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の第1実施態様を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は周波数選択ステップにおいて検出される周波数スペクトルを示すグラフである。
【図3】図3は本発明の第2実施態様を示すブロックダイヤグラムである。
【図4】図4は本発明の第3実施態様を示すブロックダイヤグラムである。
【符号の説明】
【0032】
10・・・糸;11・・・光源;12・・・光センサー;13・・・増幅器;
14・・・マイクロプロセッサ;15・・・発振器;16・・・フィルター;
17・・・ミキサー;18・・・中間周波フィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定周波数少なくとも1つにおける糸もしくは糸前駆体のパラメータ少なくとも1つを測定する検出器(12,13,16)によって、糸もしくは糸前駆体の欠陥箇所を検出する方法であって、
周波数選択ステップにおいて検出器(12,13,16)におけるノイズ値のレベルを複数の周波数において算出し、周波数選択ステップにおいて決定されるノイズ値に応じて前記測定周波数が選択されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
周波数選択ステップにおいて、最も少ないノイズを有する周波数に測定周波数を設定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数選択ステップにおいて、糸なしで、又は糸を静止させて、又は参照物体とともに測定を実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
周波数選択ステップにおいて、検出器(12,13,16)からの信号の経時的推移を算出し、周波数部分における前記信号を分析する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定周波数ごとに変調する界で糸もしくは糸前駆体を走査し、そして、界に対する糸もしくは糸前駆体の反応を検出器(12,13,16)で測定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
周波数選択ステップにおいて、種々の周波数を有する界を使用し、周波数ごとに界に対する糸もしくは糸前駆体の反応を測定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
周波数選択ステップにおいて、複数の周波数に順次同調させ、次いで測定周波数に同調させる、調節可能なフィルターを検出器(12,13,16)が備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
検出器(12,13,16)が、糸もしくは糸前駆体の透過率又は反射率を測定する光センサーを有し、光源(11)からの光を糸もしくは糸前駆体に当て、そして、光源を流れる電流を測定周波数に応じて変調させる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の周波数において測定し、周波数選択ステップにおいて検出された測定周波数ごとのノイズに応じて、個々の測定周波数における信号を加重する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を実施するために構成される、糸もしくは糸前駆体の欠陥箇所検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−275616(P2008−275616A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115813(P2008−115813)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(595137491)ゲブリューダー レプフェ アクチェンゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】