説明

周波数再構成が可能なデジタルフィルタ及びこれを用いたイコライザ

周波数再構成が可能なデジタルフィルタ及びこれを用いたイコライザを開示する。開示するフィルタは、モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングを行い、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのサンプリングカーネル格納部、上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を生成するためのコンプリメンタリ変換部、及び上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算するイメージ応答演算部を含む。極めて少数のパラメータ変更だけで多様な帯域通過特性を有するように周波数再構成が可能であり、使用者が容易にフィルタの帯域を変更できる利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルフィルタ及びこれを用いたイコライザに関するものであり、より詳しくは、フィルタの通過帯域に対する再構成が可能なデジタルフィルタとこれを用いたイコライザに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルフィルタは、集積回路化が可能であり、小型化、低価格化、高い信頼性を図ることができるため、アナログフィルタと比較して多くの利点を有している。特に通信速度と高速化及び通信量の増大に伴ってデジタルフィルタの活用分野は増加しており、移動通信システムの基底帯域部の伝送端及び受信端のような所に活用されている。
【0003】
デジタルフィルタは、一般に有限インパルス応答(Finite Impulse Response: FIR)フィルタ及び無限インパルス応答(Infinite Impulse Response: IIR)フィルタに区分される。
【0004】
有限インパルス応答フィルタは、インパルス応答が、フィルタに入力される時に有限な長さになるという特性を利用するものであって、これは有限インパルス応答フィルタがいかなるフィードバックも使用しないためである。
【0005】
フィードバックを使用しない有限インパルス応答フィルタは、帰還ループが必要ないため安定性が保障される。特に、線形位相特性のスペックを満たすため、波形伝送などの応用に広く用いられている。しかし、有限インパルス応答フィルタで無限インパルス応答フィルタと同一程度の振幅特性を得ようとすると、次数がより大きくなり、加算器と乗算器などのハードウェアにおいては負担がさらに生じる。
【0006】
有限インパルス応答フィルタを設計する時に、周波数領域での設計方法及び時間領域での設計方法の2種類があり、周波数領域での設計時にはウィンドウ関数方法及び周波数サンプリング方法などが多く用いられる。
【0007】
一方、時間領域で設計する場合には、インパルス応答は有限インパルス応答フィルタの係数に対応するため周波数領域での設計より簡単であり、伝達関数を近似化する方法として線形計画法が多く知られているが、最適解が存在する場合には有限計算解の最適解を求めることができる。
【0008】
特に、有限インパルス応答フィルタは、自身の出力の有限性がデシメーション(Decimation)された出力を作らない計算、またはインターポレーション(Interpolation)された出力において予測可能な値を有する計算が省略されることを許容するので、いわゆるマルチレート(Multirate)応用、例えば信号のサンプリングレートを高めたり低くするためにインターポレーションしたりデシメーションする場合の計算を効率的に行える。
【0009】
しかし、有限インパルス応答フィルタは、そのタブ数及びフィルタ係数などが固定されて特定通過帯域を有するように設計された場合、帯域通過特性を再構成することが非常に難しい問題がある。
【0010】
図7は、従来のフィルタ係数の変更を通じて周波数を再構成するフィルタの一例を示した図面である。
【0011】
図7を参照すると、従来の一例による周波数再構成フィルタは、係数記憶部(100)、マルチプレクサ(102)、乗算器(104)及び加算器(106)を含む。従来の再構成フィルタの係数記憶部(100)は、多数の通過帯域に対する係数情報を格納する。
【0012】
使用者の帯域選択に応じた係数情報を抽出しマルチプレクサ(102)に提供することによって、選択された帯域に相応するフィルタインパルス応答が生成され得るようにし、このように生成されたフィルタインパルス応答は入力された関数(x(n))に適用され、入力された関数をフィルタをした出力信号(y(n))が生成される。
【0013】
このような従来の方式は再構成できる帯域に限界があり、周波数再構成がされても単にフィルタの係数のみを変更するものであるため適切な再構成がされるのが難しい問題がある。
【0014】
また、予め格納されたフィルタ係数以外の周波数帯域に対しては、周波数再構成が不可能であり、周波数再構成のためにいちいちフィルタ係数を格納しなければいけないため多くの情報格納空間を必要とする。
【0015】
最近では、補聴器及び音源再生などにイコライザの使用が一般的になっており、このようなイコライザにおいて使用者の好みに合う通過帯域の再構成は重要な機能の1つであり、フィルタの周波数再構成は改善したイコライザを提供するにあたって必要不可欠な事項である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、極めて少数のパラメータ変更だけで多様な帯域通過特性を有するように周波数再構成が可能なデジタルフィルタ及びこれを用いたイコライザを提案することにある。
【0017】
また、本発明は、多様な帯域に対して自由に周波数再構成が可能なデジタルフィルタ及びこれを用いたデジタルフィルタを提案することにある。
【0018】
また、本発明は、使用者が容易にフィルタの帯域を変更できるように多数のイメージ組合わせを通じて周波数再構成が可能なデジタルフィルタを提案することにある。
【0019】
さらに、本発明は、特定帯域において時間領域でのクローズドフォーム(Closed−form)応答式を通じて、単純なパラメータ変更で帯域通過特性を変更することができる周波数再構成が可能なデジタルフィルタを提案することにある。
【0020】
本発明の他の態様は、下記の実施例を通じて当業者により容易に導き出されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するための本発明の一側面によると、モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングを行い、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのサンプリングカーネル格納部、上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を生成するためのコンプリメンタリ変換部、及び上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算するイメージ応答演算部を含むことを特徴とする。
【0022】
上記デジタルフィルタは、選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域に相応する各イメージの応答を合算してフィルタ応答を生成するフィルタ応答演算部をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
上記サンプリングカーネルは、サンプリング定数及びマルチイメージナンバーを変数として含むことを特徴とする。
【0024】
上記サンプリングカーネル(Kα,L(n,k))は、次の[数7]を含むことを特徴とする。
【数7】

[数7]において、Lはマルチイメージナンバーであり、αはサンプリング定数である。
【0025】
上記サンプリングカーネルを適用してモデルフィルタ応答をアップサンプリングし、多数のマルチイメージ生成は次の[数6]により行われることを特徴とする。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【0026】
上記コンプリメンタリ変換部は、マルチイメージを生成するための応答をzドメインにおいて、次の[数16]だけ遅延させ(ここでNはモデルフィルタの長さである)、多数のマルチコンプリメンタリイメージを生成することを特徴とする。
【数16】

【0027】
上記イメージ応答演算部は、選択されたL番目のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージの応答演算のために、L個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答を差し引いてイメージ応答を演算することを特徴とする。
【0028】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算するマルチイメージ応答演算部、モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算するマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部を含むことを特徴とする。
【0029】
上記デジタルフィルタは、選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域の各イメージまたはコンプリメンタリイメージの応答を合算してフィルタ応答を生成するフィルタ応答演算部をさらに含むこと特徴とする。
【0030】
上記マルチイメージ生成のための応答は、次の[数6]の通りであることを特徴とする。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【0031】
上記マルチコンプリメンタリイメージ生成のための応答は、次の[数10]の通りであることを特徴とする。
【数10】


[数10]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるコンプリメンタリサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【0032】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングを行い、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのサンプリングカーネル格納部、上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を生成するためのコンプリメンタリ変換部、及び上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算するイメージ応答演算部、上記イメージ応答のゲインを設定するゲイン設定部、及び上記設定されたゲインが適用されたイメージの応答を合算して最終出力応答を生成するイコライザ部を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算するマルチイメージ応答演算部、モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算するマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部、上記マルチイメージ応答演算部またはマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部で応答が演算されたイメージに対して、各イメージ応答別にゲインを設定するゲイン設定部、上記設定されたゲインが適用されたイメージの応答を合算して最終出力応答を生成するイコライザ部を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルを適用し、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのマルチイメージ応答を演算する段階、上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を演算する段階、及び上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算する段階を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算する段階、及びモデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算する段階を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルを適用し、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのマルチイメージ応答を演算する段階、上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を演算する段階、上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算する段階、上記応答が演算されたイメージのゲインを設定する段階、及び上記ゲインが設定されたイメージの応答を合算して最終出力応答を演算する段階を含むことを特徴とする。
【0037】
本発明の他の側面によると、モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算する段階、モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算する段階、応答が演算されたイメージに対して、各イメージ応答別にゲインを設定する段階、及び上記ゲインが設定されたイメージの応答を合算して最終出力応答を演算する段階を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明の実施例によると、極めて少数のパラメータ変更だけで多様な帯域通過特性を有するように周波数再構成を行える利点がある。
【0039】
また、本発明は、多様な帯域に対して自由に周波数再構成が可能であり、使用者が容易にフィルタの帯域を変更できる利点がある。
【0040】
さらに、本発明は、特定帯域において時間領域でのクローズドフォーム(Closed−form)応答式を通じて、単純なパラメータ変更で帯域通過特性を変更することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例によるアップサンプリングを行った場合にモデルフィルタ応答の変化を示した図面。
【図2】本発明の一実施例によって生成されるマルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージの一例を示した図面。
【図3】本発明の一実施例によるL値の変化に応じたマルチイメージの変化を示す図面。
【図4】本発明の第1実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタの構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第2実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタの構成を示すブロック図。
【図6】本発明の一実施例による周波数再構成が可能なフィルタを用いたイコライザの構成を示すブロック図。
【図7】従来のフィルタ係数の変更を通じて周波数を再構成するフィルタの一例を示す図面。
【図8】本発明の一実施例によるL値の変化に応じたマルチコンプリメンタリイメージの変化を示す図面。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下において、本発明の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。この場合、同一または対応する構成要素は同一の図面番号を付与し、これに対する重複説明は省略する。
【0043】
フィルタの動作原理
【0044】
(1)アップサンプリング
【0045】
本発明のフィルタは、モデルフィルタに対してアップサンプリングを行う。モデルフィルタは、特定フィルタリング特性を有するように設計されたフィルタ関数であって、ハードウェアで具現することもでき、ソフトウェアで具現することもできる。本発明の好ましい実施例によると、ハーフバンド(Half−band)フィルタがモデルフィルタとして用いられることができ、ハーフバンドフィルタはイコライザに適用されるのに適した特性を有している。
【0046】
本発明においてアップサンプリングは、フィルタの特性のうち通過帯域の傾きに該当するスカート特性をより良好にするために行われ、付加的にアップサンプリングを通じて帯域幅を調節することもできる。また、アップサンプリングは、今後説明する本発明のマルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージの生成に必要な準備作業でもある。
【0047】
スカート特性を良く(通過帯域の傾きを大きく)設計することが最も理想的なフィルタ設計であるといえるが、スカート特性を改善するためには多数の係数がフィルタ設計に適用されなければならず、これは多数のタブがフィルタに必要になるということを意味する。
【0048】
フィルタのタブ数が増加すると、ハードウェアとしてフィルタを製造する時にフィルタ価格及びサイズが増加するようになり、ソフトウェアでフィルタを具現する時に多大の計算量を必要とすることを意味する。スカート特性とタブ数は、互いにトレードオフ(Trade Off)の関係にある。
【0049】
本発明においては、比較的少ないタブ数を有するモデルフィルタ関数に対してアップサンプリングを行ってスカート特性を良好にし、必要に応じてモデルフィルタの帯域幅を調節する方式を用いる。
【0050】
本発明の好ましい実施例によると、アップサンプリングはサンプリング定数αによりスケーリングされるサンプリングカーネルを用いて行う。
【0051】
サンプリングカーネルをKα(n,k)と定義し、αをサンプリング定数と定義し、長さがNである有限インパルス応答フィルタ応答をh[n]とする時、本発明によるサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングは、次の[数1]のように行われる。
【数1】

【0052】
[数1]においてh(α)[n]は、アップサンプリングを用いた最終的に良好なスカート特性を有するフィルタ応答である。
【0053】
一方、上記[数1]においてサンプリングカーネルは多様な形態を有することが可能である。最も理想的なケースの1つとしてサンプリングカーネルはSinc関数の形態を有することができるが、これに限定されるわけではなく、当業者にとって自明なことであり多様な形態の関数をサンプリングカーネルに適用できる。
【0054】
一例として、次の[数2]のようにSinc関数を含め多様な形態の適応的ウィンドウ関数形態を有することができ、それ以外にも多様な関数を適用できる。
【数2】

【0055】
上記[数2]において、最初の数式はraised−cosineを用いたもので、Rはroll−off定数であり、フィルタの帯域幅を決定する基準になる。
2番目の数式はKaiserを用いたもので、Iはzeroth order modified Bessel function of the first kind、βはウィンドウの形状を決定する任意のreal number、Mはsequenceの長さである。
【0056】
3番目の数式はDolph−Chebychevを用いたものである。3番目の数式において、λはside−lobeを調節できるパラメータである。
【0057】
図1は、本発明の一実施例によるアップサンプリングを行った場合に、モデルフィルタ応答の変化を示した図面である。
【0058】
図1において、(a)はアップサンプリング前のモデルフィルタの応答であり、(b)はアップサンプリング後のフィルタ応答を示したものである。
【0059】
図1を参照すると、アップサンプリング前のモデルフィルタ関数と比較した時、通過帯域及び阻止帯域でのトランジション(Transition)傾きが大きくなりスカート特性が良好になったことを確認することができる。
【0060】
上記[数1]においてサンプリング定数αとして整数を用いる場合、上記[数1]は次の[数3]のようにコンボルーション(Convolution)形態で表現することができる。即ち、アップサンプリングを単純なコンボルーション演算により行うことによって、既存のフィルタデザインに比べて演算量を減らすことができる。
【数3】

【0061】
本発明によるアップサンプリング方式において、hup[n]はh[n]の隣接したフィルタ係数間に(α−1)個の0を挿入する形態に変更され、[数3]でのように実際の演算はh[n]の係数だけで行われるため、サンプリングレートや計算量は増加しない。
【0062】
一方、サンプリング定数αを設定するにおいて最適な計算量を有するように最適サンプリング定数を求めることができる。次の[数4]は、最適サンプリング定数を求めるための一例であって、ωは通過帯域の周波数であり、ωは阻止帯域の周波数である。この時、得られたサンプリング定数に最も近似する整数をαとして適用することが、全体の演算において最も大きな効率を示す。
【数4】

【0063】
(2)マルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージ
【0064】
本発明のフィルタは、多様な通過帯域を選択できるようにアップサンプリングされたフィルタ応答に対して多数のマルチイメージを生成する。本発明において用いられる「イメージ」は、フィルタの周波数ドメイングラフにおいて特定通過帯域を形成する客体を意味し、特定バンドと同一の意味に解釈することができ、本実施例においてはイメージという用語を用いるようにし、これを特定バンドと同一に理解することができる。
【0065】
モデルフィルタ応答は、一般に基底帯域に対するフィルタリング応答を有する。従って、アップサンプリングされたモデルフィルタ応答は、低周波帯域において1つのイメージのみを有する。
【0066】
本発明においては、このように単一イメージを有するアップサンプリングしたフィルタ応答が多数のイメージを有するように変換する機能をするものであり、これはこのような変換を通じてフィルタ応答が多数の通過帯域を有するようにするということを意味する。
【0067】
多数のマルチイメージは基底帯域のイメージを基準に生成され、多数のイメージ(多数の通過帯域)は基底帯域のイメージと同一の特性を有している。即ち、低域通過帯域のイメージが帯域幅がWであり、減衰特性がCであり、大きさがAの場合、多数形成されたマルチイメージも帯域幅がWであり、減衰特性がCであり、大きさがAである同一の特性を有している。
【0068】
低域通過帯域イメージを基準に生成される多数のイメージは、一定の周期を有し、この時の周期は低域通過帯域イメージの帯域幅と関連性がある。
【0069】
例えば、低域通過帯域イメージが−WからWまでの2Wの帯域幅を有する時、マルチイメージは2Wの周期を有し、低域通過イメージと同一の形態で反復的に形成される。
【0070】
従って、−WからWまでの2Wの帯域幅を有する低域通過帯域イメージがある時、3Wから5W帯域で第2マルチイメージを生成し、7Wから9W帯域で第3マルチイメージを生成する方式で多数のマルチイメージが生成される。
【0071】
図2は、本発明の一実施例によって生成されるマルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージの一例を示した図面である。
【0072】
図2において、(a)は[数3]の応答を周波数ドメインにおいて図式化したものであり、(b)は(a)の応答に対するマルチイメージを示したものである。図2に示されたように、モデルフィルタ応答と同一のイメージが一定の周期を有して反復的に形成される。
【0073】
アップサンプリングされた基底帯域のモデルフィルタ応答に対して多数のマルチイメージを生成することは、一種のIDTFT変換を行って具現することができ、これは次の[数5]の通りである。
【数5】

【0074】
上記[数5]において単一低域通過フィルタは、所望の数だけの多数のイメージからなる形態で拡張することができる。Lをイメージの数(イメージナンバー)とする時、IDTFT変換により多数のマルチイメージを有するフィルタ応答であるh(α),L[n]は次の[数6]のように表現することができる。
【数6】

【0075】
上記[数6]において、サンプリングカーネルKα,L(n,k)にSinc関数を適用する場合、サンプリングカーネルは次の[数7]のように表現することができる。
【数7】

【0076】
上記[数6]及び[数7]においてLが0である場合にはマルチイメージが生成されないが、Lがそれ以外の整数値を有する場合には、該当する整数に相応するマルチイメージが生成される。
【0077】
上記[数6]を周波数応答で表すと次の[数8]のように表現することができる。
【数8】

【0078】
前述したように、このようなマルチイメージの形態はアップサンプリングしたモデルフィルタ応答と同一であり、その周期はアップサンプリングしたモデルフィルタ応答の帯域幅に相応する。
【0079】
結局、モデルフィルタに対して[数6]及び[数7]によるサンプリングカーネルを適用すると、アップサンプリング及び多数のマルチイメージ生成が一緒になされるようになる。
【0080】
図3は、本発明の一実施例によるL値の変化に応じたマルチイメージの変化を示した図面である。
【0081】
図3を参照すると、サンプリングカーネルのパラメータであるイメージナンバーLを調節することによって、生成されるマルチイメージの数を調節できる。
【0082】
図3に示されたように、Lが1である場合には1つの追加マルチイメージが生成され、Lが3である場合には3つの追加マルチイメージが生成される。この時、Lは使用者により選択することができる。
【0083】
一方、本発明においては、基底帯域のイメージを基準としたマルチイメージとは別に、マルチイメージとは反対の周波数領域に多数のコンプリメンタリイメージを生成する。
【0084】
即ち、コンプリメンタリイメージは、マルチイメージが形成されない周波数領域に形成されるイメージを意味し、図2を参照すると、マルチイメージが形成されないW−3W領域及び5W−7W領域などにマルチコンプリメンタリイメージが形成される。
【0085】
マルチコンプリメンタリイメージもモデル応答による低域通過イメージと同一の特性を有し、低域通過イメージの帯域幅と同一の周期を有して反復的に形成される。
【0086】
マルチコンプリメンタリイメージは、モデルフィルタ応答をzドメインにおいて、次の[数16]だけ遅延させることによって獲得することができ、(ここでNはモデルフィルタの長さである)、
【数16】

これは次の[数9]のように表現することができる。
【数9】

【0087】
最終的に、マルチコンプリメンタリイメージは次の[数10]を通じて求めることができ、マルチコンプリメンタリイメージの数もL値により定めることができる。
【数10】

【0088】
[数10]において、マルチコンプリメンタリイメージのためのサンプリングカーネルとしてSinc関数を適用する時、サンプリングカーネルは次の[数11]のように表現することができる。
【数11】

【0089】
また、[数10]を周波数応答で表すと次の[数12]のように表現することができる。
【数12】

【0090】
マルチコンプリメンタリイメージの数もイメージナンバーであるLを調節することによって調節することができる。
【0091】
図8は、本発明の一実施例によるL値の変化に応じたマルチコンプリメンタリイメージの変化を示した図面である。
【0092】
図8を参照すると、Lが0である場合には、マルチコンプリメンタリイメージが生成されず、L値と同一数のマルチコンプリメンタリイメージが生成されることを確認することができる。
【0093】
(3)イメージ応答演算
【0094】
マルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージの生成が[数6]及び[数10]を通じてなされると、通過帯域に相応するイメージを選択して通過帯域に対する応答を設定する過程がなされる。
【0095】
多数のマルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージのうち、所望の通過帯域に相応するイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを選択すると、各イメージの応答を演算する。
【0096】
例えば、7W−9Wの帯域に対するバンドパスフィルタが必要な場合、これは図3において2番目のマルチイメージと同一の帯域であり、2番目のマルチイメージに対する応答を生成する。
【0097】
選択されたN番目のマルチイメージに対する応答は、マルチイメージに対する応答である[数6]においてL=Nを代入した式からL=(N−1)を代入した式を差し引くことによって求めることができる。上記の例で2番目のマルチイメージに対するフィルタ応答は、L=2に設定された[数6]の応答式からL=1に設定された[数6]の応答式を差し引いて求めることができる。
【0098】
L番目のイメージに相応するフィルタ応答は、次の[数13]のように表現することができる。
【数13】

【0099】
このような方式は、特定のマルチコンプリメンタリイメージに対する応答を求める時も同様に適用される。
【0100】
L番目のマルチコンプリメンタリイメージに対するフィルタ応答は、[数10]においてLを代入した式からL−1を代入した式を差し引くことによって求めることができ、これは次の[数14]のように表現することができる。
【数14】

【0101】
(4)最終フィルタ応答
【0102】
本発明は、選択した各イメージまたはコンプリメンタリイメージに対する応答を合算して最終的なフィルタ応答を生成する。広帯域のフィルタ応答またはマルチバンドに対するフィルタ応答が必要な時、多数のイメージまたはコンプリメンタリイメージが選択され、最終的なフィルタ応答は各イメージまたはコンプリメンタリイメージのフィルタ応答を合算することによって求められる。
【0103】
例えば、マルチイメージの2番目のイメージ及び3番目のイメージそれぞれに相応するマルチバンドパスフィルタが要求される時、2番目のイメージ及び3番目のイメージそれぞれのフィルタ応答を合算することによって最終的なフィルタ応答を求めることができる。
【0104】
フィルタの構成
【0105】
(1)第1実施例
【0106】
図4は、本発明の第1実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタの構成を示したブロック図である。
【0107】
図4を参照すると、本発明の第1実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタは、アップサンプリング部(400)、マルチイメージ生成部(402)、マルチコンプリメンタリイメージ生成部(404)、イメージ応答演算部(406)及びフィルタ応答演算部(408)を含む。
【0108】
アップサンプリング部(400)は、モデルフィルタにサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルを適用し、モデルフィルタの特性を良好にする。モデルフィルタに対するアップサンプリングは、[数1]のようにモデルフィルタ関数に対して、サンプリング定数αによりスケーリングされるサンプリングカーネルを乗じて行われ、サンプリング定数αの値に応じてフィルタの減衰特性及び帯域幅が変化する。αは、所望の帯域幅及び減衰特性に応じて適切に選択することができる。
【0109】
マルチイメージ生成部(402)は、アップサンプリングされたモデルフィルタ応答に対して多数の通過帯域に相応するマルチイメージに対する応答を生成し、マルチコンプリメンタリイメージ生成部(404)は、アップサンプリングされたモデルフィルタ応答に対してマルチイメージの通過帯域と反対の周波数領域に多数のマルチコンプリメンタリイメージに対する応答を生成する。
【0110】
上述したように、マルチイメージとマルチコンプリメンタリイメージは、アップサンプリングされたモデルフィルタ応答と同一の特性を有するものの、互いに異なる周波数領域に通過帯域を形成する。
【0111】
マルチイメージは、アップサンプリングされたモデルフィルタ応答に対して[数6]のような変換を通じて生成することができ、マルチコンプリメンタリイメージは、[数9]のようなコンプリメンタリ変換式または[数10]を用いて生成することができる。
【0112】
第1実施例では、アップサンプリング及びマルチイメージとマルチコンプリメンタリイメージの生成が順次なされることを記述したが、[数6]、[数9]または[数10]を用いてアップサンプリング及びマルチイメージとマルチコンプリメンタリイメージの生成に対する応答を一度に求めることができるという点は、当業者にとって自明である。
【0113】
イメージ応答演算部(406)は、使用者が選択したイメージまたはコンプリメンタリイメージに対する応答を演算する。特定の通過帯域が選択されると、イメージ応答演算部(406)は選択された各イメージに対する応答を演算する。
【0114】
上述したように、イメージに対するフィルタ応答は、L番目までマルチイメージが生成されるように変換された応答式から(L−1)番目までマルチイメージが生成されるように変換された応答式を差し引くことによって求められることができ、マルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージに対するそれぞれのイメージ応答は、それぞれ[数13]及び[数14]の通りである。
【0115】
フィルタ応答演算部(408)は、選択されたそれぞれのイメージに対するイメージ応答を合算して最終的なフィルタ応答を演算し、これを通じて周波数が再構成されたフィルタ応答をクローズドフォーム形態で求めることができる。もし1つのイメージのみ選択される場合、該当イメージの応答が最終的なフィルタ応答になり、別途の合算手続は不要である。
【0116】
(2)第2実施例
【0117】
図5は、本発明の第2実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタの構成を示したブロック図である。
【0118】
第2実施例は、本発明の実施例によるフィルタをソフトウェアで具現する場合のフィルタの構成をモジュールで表したものであって、第1実施例のフィルタを他の観点からブロック図で表したのである。
【0119】
図5を参照すると、本発明の第2実施例による周波数再構成が可能なデジタルフィルタは、モデルフィルタ応答格納部(500)、サンプリングカーネル格納部(502)、コンプリメンタリ変換部(504)、イメージ応答演算部(506)及びフィルタ応答演算部(508)を含む。
【0120】
モデルフィルタ応答格納部(500)は、特定のタブ数及び係数を有するモデルフィルタ応答を格納する。
【0121】
サンプリングカーネル格納部(502)は、アップサンプリング及びマルチイメージの生成に適用されるサンプリング定数によりスケーリングされ、イメージナンバーLを変数として有したサンプリングカーネル応答を格納する。サンプリングカーネルとしてSinc関数を用いる時、[数7]のようなサンプリングカーネルをサンプリングカーネル格納部(502)に格納することができ、Sinc関数以外にも[数2]に例示したもののような多様なサンプリングカーネルを活用することができる。
【0122】
コンプリメンタリ変換部(504)は、マルチコンプリメンタリイメージ生成のためのコンプリメンタリ変換を行う。コンプリメンタリ変換は、[数9]のような変換式を通じてなすことができ、コンプリメンタリイメージのためのモデルフィルタ応答とサンプリングカーネルを別途に格納してマルチコンプリメンタリイメージを生成することもできる。
【0123】
イメージ応答演算部(506)は、選択された通過帯域に相応するイメージに対する応答を演算する。マルチイメージが選択された場合、格納されたモデルフィルタ応答及び格納されたサンプリング定数及びイメージナンバーを変数とするサンプリングカーネルを用いて、[数6]及び[数13]のような方法を通じて選択されたイメージに相応するフィルタ応答を演算する。
【0124】
また、マルチコンプリメンタリイメージのうち、特定のコンプリメンタリイメージが選択された場合、格納されたモデルフィルタ応答、格納されたサンプリング定数及びイメージナンバーを変数とするサンプリングカーネルとコンプリメンタリ変換を通じて、[数10]及び[数14]のような方法を通じて選択されたコンプリメンタリイメージに相応するフィルタ応答を演算する。
【0125】
フィルタ応答演算部(508)は、選択されたそれぞれのイメージに対するイメージ応答を合算して最終的なフィルタ応答を演算し、これを通じて周波数が再構成されたフィルタ応答をクローズドフォーム形態で求めることができる。もし1つのイメージのみ選択される場合、該当イメージの最終的なフィルタ応答になり、別途の合算手続は不要である。
【0126】
フィルタを用いたイコライザ
【0127】
上述した本発明の周波数再構成が可能なデジタルフィルタを用いて、多数の周波数帯域に対するゲイン及び帯域通過特性を調節できるイコライザの具現が可能である。イコライザは、音源の再生が可能なデジタル機器(例えば、携帯電話、MP3プレーヤー、コンピュータ、ノートパソコンなどを含む)において音源の出力特性を調節するのに用いられ、補聴器などのような装置において使用者の聴力特性に応じてパーソナライズされた補聴器を製作する時にも用いられる。
【0128】
図6は、本発明の一実施例による周波数再構成が可能なフィルタを用いたイコライザの構成を示したブロック図である。
【0129】
図6を参照すると、本発明の一実施例によるイコライザは、チャネル設定部(600)、ゲイン(gain)設定部(602)、GUI部(604)、周波数再構成部(606)及びイコライザ部(608)を含む。
【0130】
GUI部(604)は、使用者がイコライザの通過帯域及びチャネルを選択するためのインターフェースを提供する。GUI部(604)から提供されるグラフィックインターフェースを通じて、使用者はイコライザのチャネル及び各チャネルのゲイン情報を設定できる。携帯電話のようにディスプレイが備えられた装置は、フィルタが内蔵された装置に具備することもできるが、補聴器のようにディスプレイが備えられていない装置の場合には、外部装置を用いてGUIを具現することもできる。
【0131】
チャネル設定部(600)は、使用者のチャネル設定情報に基づいてデジタルフィルタのチャネルを設定する機能をする。イコライザにおいてチャネルは、本発明のデジタルフィルタにおける各イメージまたはコンプリメンタリイメージの個別の通過帯域を意味し、チャネル設定部(800)は、使用者の入力情報に基づいてチャネルを設定する。一例として、使用者はチャネル数を設定することができ、使用者が設定したチャネル数に応じて本発明のフィルタのL値を設定する作業がチャネル設定部(600)でなされる。
【0132】
例えば、使用者がチャネル数を8個に設定した時、計8個の通過帯域が必要になり、この時、4つのマルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージが必要であるため、マルチイメージ及びマルチコンプリメンタリイメージに対するイメージナンバーLは4に設定される。
【0133】
ゲイン設定部(602)は、各通過帯域(イメージまたはコンプリメンタリイメージ)に対するゲインを使用者の入力によって設定する機能をする。正規化されたゲインが用いられる場合、0〜1のうち1つのゲイン値を設定する。
【0134】
周波数再構成部(606)は、上述したデジタルフィルタにおいて各イメージの応答を生成する部分であって、チャネル設定部(600)で設定されたチャネルに相応するすべてのイメージ及びコンプリメンタリイメージの応答を生成する。イメージ及びコンプリメンタリイメージの応答は、[数13]及び[数14]に提示されたものと同じ方法で生成することができる。
【0135】
イコライザ部(608)は、ゲイン設定部(602)で設定された各周波数帯域のゲイン値及び上記周波数再構成部でチャネルによって設定された各イメージ及びコンプリメンタリ応答を用いて、最終的なイコライザ出力を生成する。ゲイン値が調節されたイコライザ出力は、次の[数15]のように表現することができる。
【数15】

【0136】
上記では本発明の実施例を参照して説明したが、該当技術分野において通常の知識を有する者であれば、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、フィルタの通過帯域に対する再構成が可能なデジタルフィルタとこれを用いたイコライザに関する分野に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングを行い、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのサンプリングカーネル格納部、
上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を生成するためのコンプリメンタリ変換部、及び
上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算するイメージ応答演算部を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項2】
選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域に相応する各イメージの応答を合算してフィルタ応答を生成するフィルタ応答演算部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項3】
上記サンプリングカーネルは、サンプリング定数及びマルチイメージナンバーを変数として含むことを特徴とする請求項1に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項4】
上記サンプリングカーネル(Kα,L(n,k))は、次の[数7]を含むことを特徴とする請求項3に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【数7】

[数7]において、Lはマルチイメージナンバーであり、αはサンプリング定数である。
【請求項5】
上記サンプリングカーネルを適用してモデルフィルタ応答をアップサンプリングし、多数のマルチイメージ生成は次の[数6]により行われることを特徴とする請求項4に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項6】
上記コンプリメンタリ変換部は、マルチイメージを生成するための応答をzドメインにおいて、下記[数16]だけ遅延させ(ここでNはモデルフィルタの長さである)、多数のマルチコンプリメンタリイメージを生成することを特徴とする請求項5に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【数16】

【請求項7】
上記イメージ応答演算部は、
選択されたL番目のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージの応答演算のために、L個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答を差し引いてイメージ応答を演算することを特徴とする請求項1に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項8】
モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算するマルチイメージ応答演算部、
モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算するマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項9】
選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域の各イメージまたはコンプリメンタリイメージの応答を合算してフィルタ応答を生成するフィルタ応答演算部をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項10】
上記マルチイメージ生成のための応答は、次の[数6]のようであることを特徴とする請求項8に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項11】
上記マルチコンプリメンタリイメージ生成のための応答は、次の[数10]のようであることを特徴とする請求項8に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【数10】

[数10]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるコンプリメンタリサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項12】
上記マルチイメージ応答演算部は、選択されたL番目のマルチイメージの応答を、L個のマルチイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチイメージを生成するための応答を差し引いて演算することを特徴とする請求項8に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項13】
上記マルチコンプリメンタリイメージ応答演算部は、選択されたL番目のマルチコンプリメンタリイメージの応答を、L個のマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答を差し引いて演算することを特徴とする請求項8に記載の周波数再構成が可能なデジタルフィルタ。
【請求項14】
モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるアップサンプリングを行い、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのサンプリングカーネル格納部、
上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を生成するためのコンプリメンタリ変換部、及び
上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算するイメージ応答演算部、
上記イメージ応答のゲインを設定するゲイン設定部、及び
上記設定されたゲインが適用されたイメージの応答を合算して最終出力応答を生成するイコライザ部を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なイコライザ。
【請求項15】
モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算するマルチイメージ応答演算部、
モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算するマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部、
上記マルチイメージ応答演算部またはマルチコンプリメンタリイメージ応答演算部で応答が演算されたイメージに対して、各イメージ応答別にゲインを設定するゲイン設定部、
上記設定されたゲインが適用されたイメージの応答を合算して最終出力応答を生成するイコライザ部を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なイコライザ。
【請求項16】
モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルを適用し、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのマルチイメージ応答を演算する段階、
上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を演算する段階、及び
上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算する段階を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項17】
選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域に相応する各イメージの応答を合算してフィルタ応答を生成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項18】
上記サンプリングカーネルは、サンプリング定数及びマルチイメージナンバーを変数として含むことを特徴とする請求項16に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項19】
上記サンプリングカーネル(Kα,L(n,k))は、次の[数7]を含むことを特徴とする請求項18に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【数7】

[数7]において、Lはマルチイメージナンバーであり、αはサンプリング定数である。
【請求項20】
上記サンプリングカーネルを適用してモデルフィルタ応答をアップサンプリングし、多数のマルチイメージ生成は次の[数6]により行われることを特徴とする請求項19に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項21】
上記コンプリメンタリ応答演算段階は、マルチイメージを生成するための応答をzドメインにおいて、次の[数16]だけ遅延させたものである(ここでNはモデルフィルタの長さである) ことを特徴とする請求項17に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【数16】

【請求項22】
上記選択された帯域に相応するイメージの応答を演算する段階は、選択されたL番目のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージの応答演算のために、L個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答を差し引いてイメージ応答を演算することを特徴とする請求項16に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項23】
モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算する段階、及び
モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算する段階を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項24】
選択された帯域が多数のマルチイメージまたはマルチコンプリメンタリイメージに対応する場合、上記選択された帯域の各イメージまたはコンプリメンタリイメージの応答を合算してフィルタ応答を演算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項25】
上記マルチイメージ生成のための応答は、次の[数6]のようであることを特徴とする請求項23に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【数6】

[数6]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項26】
上記マルチコンプリメンタリイメージ生成のための応答は、次の[数10]のようであることを特徴とする請求項23に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【数10】

[数10]において、αはサンプリング定数であり、h[n]はモデルフィルタ応答であり、Lはマルチイメージナンバーであり、Kα,L(n,k)はサンプリング定数によりスケーリングされるコンプリメンタリサンプリングカーネルであり、マルチイメージの数はL値に相応する。
【請求項27】
L番目のマルチイメージが選択される場合、上記選択されたL番目のマルチイメージ応答は、L個のマルチイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチイメージを生成するための応答を差し引いて演算することを特徴とする請求項23に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項28】
L番目のマルチコンプリメンタリイメージが選択される場合、上記選択されたL番目のマルチコンプリメンタリイメージの応答は、L個のマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答から(L−1)個のマルチコンプリメンタリイメージを生成するための応答を差し引いて演算することを特徴とする請求項23に記載の周波数再構成が可能なフィルタリング方法。
【請求項29】
モデルフィルタ応答に対してサンプリング定数によりスケーリングされるサンプリングカーネルを適用し、上記モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージ応答を生成するためのマルチイメージ応答を演算する段階、
上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、上記一定周期を有して反復され、上記マルチイメージと同一の特性を有するマルチコンプリメンタリイメージ応答を演算する段階、
上記マルチコンプリメンタリイメージ及び上記マルチイメージのうち、選択された帯域に相応するイメージの応答を演算する段階、
上記応答が演算されたイメージのゲインを設定する段階、及び
上記ゲインが設定されたイメージの応答を合算して最終出力応答を演算する段階を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なイコライザ設計方法。
【請求項30】
モデルフィルタ応答が一定周期を有して反復されるマルチイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチイメージの応答を演算する段階、及び
モデルフィルタ応答が上記マルチイメージが生成されていない周波数領域に、反復されるマルチコンプリメンタリイメージを生成するように変換する応答から選択されたマルチコンプリメンタリイメージの応答を演算する段階、
応答が演算されたイメージに対して、各イメージ応答別にゲインを設定する段階、及び
上記ゲインが設定されたイメージの応答を合算して最終出力応答を演算する段階を含むことを特徴とする周波数再構成が可能なイコライザ設計方法。
【請求項31】
請求項16乃至請求項30のうちのいずれか一項の方法を実行するための命令語のプログラムが記録され、デジタルデータ処理装置により読み出し可能なプログラムが記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−520919(P2013−520919A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554949(P2012−554949)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001407
【国際公開番号】WO2011/105879
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505406671)インダストリー−ユニバーシティー コオペレーション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー (10)