周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置
【課題】周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の周波数検出器は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、を具備することを特徴とする。
【解決手段】本発明の周波数検出器は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、を具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステップ周波数型合成帯域レーダ(以下、合成帯域レーダとする)は、チャープパルスレーダを変形したレーダである。図23に示すように、チャープパルスレーダは、ある周波数帯域幅Bに対して、帯域の端の周波数から時間的に周波数をスイープする。広い帯域幅を有しているため、受信信号を位相調整して、逆フーリエ変換すれば、インパルスに近い波形となり、このインパルスのピークに基づき目標までの距離を検出することが出来る。
【0003】
合成帯域レーダは、このチャープパルスレーダのスイープ周波数を時間的に離散化したものであり、ステップ状に周波数が変化していく。離散化以外の動作はほぼ同じであり、受信信号の位相調整、逆フーリエ変換によって、インパルスに近い波形が得られ、インパルスのピークから目標までの距離が検出できる。
【0004】
しかし、合成帯域レーダでは、チャープパルスのパルス長より十分に長い期間に渡ってパルスを送出し続けるため、目標やレーダ装置が移動している場合、検出期間中に相対距離が変化して、明確なピークが現れなくなり、正しい検出ができない。そのため、受信信号のドップラ周波数から目標の移動速度を検出し、目標の検出期間中の移動分を補正してから距離検出を行うことが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3709698号
【特許文献2】特開2005−308723号公報
【特許文献3】特開2009−180666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の合成帯域レーダは、ディシジョンフィードバック的に最適な移動速度を求める方法であったり(特許文献2)、送信するパルスの間隔や周波数間隔が特定の条件に制限されるなど(特許文献3)、計算時間や収束性に問題があったり、仕様に不必要な条件が加わるなどの課題があり、必ずしも利便性の良いものとはいえなかった。
【0007】
そこで、本発明は利便性の良い周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1記載の周波数検出器は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、請求項9記載の合成帯域レーダは、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項10記載の飛翔体誘導装置は、センサから入力された信号を、処理に適した形に変換する前処理部と、前記前処理部の出力を信号処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力から誘導信号を生成し、操舵装置に出力する誘導信号生成部と、を具備し、前記信号処理部は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利便性の良い周波数検出装置、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の処理を示すフローチャート。
【図3】合成帯域レーダを説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図5】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図6】ショートタイムFFTを説明するための図。
【図7】ショートタイムFFTを説明するための図。
【図8】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図10】周波数選択制フェージングを説明するための図。
【図11】周波数選択制フェージングを説明するための図。
【図12】本発明の実施の形態3に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図13】ピーク整合型フーリエ変換部の構成を示す図。
【図14】ピーク整合型フーリエ変換部の構成を示す図。
【図15】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図16】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図17】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図18】本発明の実施の形態4に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図19】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図20】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図21】本発明の実施の形態5に係る合成帯域レーダ20の構成を示す図。
【図22】飛翔体誘導装置を説明するための図。
【図23】合成帯域レーダを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の構成を示す図である。
【0015】
周波数検出器1は、ベースバンド変換部2、フーリエ変換部3、ノルム抽出部4、加算部5、ピーク検出部6を有する。
【0016】
ベースバンド変換部2は、複数の周波数バンドについて順次時系列で入力された受信信号を1つの周波数バンドが複数サンプルから成るベースバンド信号に変換する。
【0017】
フーリエ変換部3は、ベースバンド変換部2によって変換されたベースバンド信号をフーリエ変換する。
【0018】
ノルム抽出部4は、フーリエ変換部3によって変換された結果(フーリエ変換結果)から位相成分を除去した振幅(或いは、パワー)に変換し、ノルム成分を抽出する。
【0019】
加算部5は、ノルム抽出部4によって抽出された振幅(或いは、パワー)を周波数ビン毎に加算する。
【0020】
ピーク検出部6は、加算部5によって加算された結果(加算結果)からピーク周波数を検出する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1によるピーク周波数を検出する処理を示すフローチャートである。
【0022】
周波数検出器1には、複数の周波数バンドについて順次時系列で受信された受信信号が入力される。
【0023】
ここで、受信信号のパルス構成は、図3に示すように送出されるパルス構成と同様の1周波数バンドがNp個からなり、隣接する周波数バンドの中心周波数の間隔はfstであり、総計でNf個の周波数バンドであるとする。
【0024】
入力された受信信号はベースバンド変換部2にて、1つの周波数バンドが複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される(St1)。
【0025】
St1において変換されたベースバンド信号はフーリエ変換部3に送られ、フーリエ変換される(St2)。
【0026】
St3においてフーリエ変換された結果はノルム抽出部4に送られ、フーリエ変換結果から位相成分を除去した振幅(或いは、パワー)に変換される(St3)。
【0027】
図4は、各周波数バンドのNp個のパルスを、各周波数バンド毎に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)した結果の振幅成分を表したものである。横軸は周波数ビン番号、縦軸はリニアスケールの振幅である。1パルスのSNR(Signal Noise Ratio)が0dBと非常に低いため、ピークの高さはバラついており、また、少しずつずれながら並んでいるはずのピーク位置もバラバラである。この状態で、各周波数バンド毎にピーク検出を行っても、雑音の影響が強すぎて正しいピーク位置を推定することは難しい。
【0028】
そこで、周波数バンド毎に振幅成分を加算する。加算をスペクトルが位相を持つ複素数の状態で行わないのは、雑音のみについて言えば、複素数での加算結果は振幅加算より少なくなるが、周波数バンド毎の位相ずれがある場合、複素数で加算を行うと、信号も打ち消し合ってしまうためである。
【0029】
St4において変換された変換結果は加算部5に送られ、加算部5は、全ての周波数バンドのフーリエ変換結果である振幅(或いは、パワー)を周波数ビン毎に加算する(St5)。
【0030】
St5における加算結果を図5に示す。全パルスを利用したスペクトルとなってSNRが向上し、ピーク位置が周波数ビン番号2と3の間にあることが明確になっている。
【0031】
St5において加算された加算結果は、ピーク検出部6に送られ、ピーク検出部6はピーク周波数を検出する(St6)。
【0032】
ピーク検出部6は、図5からピークを検出する。図5では、ピークは明らかに周波数ビン番号2と3の間であり、単純なピークサーチ、すなわち、各ビンの高さを比較して最も高いビンの番号を出力する方法では、高い精度で求まらない。
【0033】
そこで、図5の波形に近い波形を予め用意し、フィッティングを行う。図4の各スペクトルは、同一周波数バンドのNp個のパルスのフーリエ変換結果である。図4は、窓をかけずにフーリエ変換を行った場合を示している。すなわち、矩形窓であるので、各スペクトルはsinc関数の絶対値の形状をしており、それらの加算結果もsinc関数の絶対値に近い形状をしている。そこで、sinc関数波形の特にピーク位置の波形を予め用意し、図5のピークの部分と適宜振幅を併せて、ピーク周波数が一致するように、sinc関数の中心周波数を振っていく。
【0034】
そして、最も良く一致する周波数、例えば二乗誤差が最小となるsinc関数の周波数が、求めるピークの周波数となる。ここで求められるピーク周波数は、fst・Nfからなる帯域幅の中心周波数に対するドップラ周波数となる。
【0035】
本発明の実施の形態1によれば、振幅を加算することによりピーク検出を行ったが、振幅ではなく、振幅の2乗で表現されるパワーを用いてピーク検出を行ったほうが各周波数便成分のノルムを計算する際の計算量が少なく効率的であるといえる。
【0036】
なお、フィッティングする波形は、可能であれば、フーリエ変換を行った際の窓のスペクトル形状に合わせることが望ましい。スペクトルの加算を振幅で行う場合は、窓のスペクトル形状そのままの形、例えばsinc関数、を用いることが可能であるが、パワーで加算を行う場合には、フィッティング波形を生成する際、窓のスペクトル形状を二乗する必要があり、若干計算量が増大する。ただし、予め非常に細かい間隔でフィッティング波形を生成しておき、メモリに記憶しておくなどの方法で、計算量は削減できる。
【0037】
ただし、フィッティングをピーク周辺の非常に狭い範囲で行うならば、必ずしも窓のスペクトル形状に合わせなくとも、似たような凸波形でかまわない。この場合、フィッティング前の振幅調整の際に、フィッティング波形に掛ける係数だけでなく、フィッティング波形に足す分であるオフセットも調整するとよい。
【0038】
図5では、ピークが周波数ビン番号2と3の間にあり、特にこのようなケースでは初期の振幅調整が難しく、フィッティング結果の精度が劣化することがある。そこで、フーリエ変換を行う際、スペクトルの点と点の間を補完することを目的として、ショートタイムFFT(ST−FFT:Short Time −Fast Fourier Transform)を利用する。
【0039】
ST−FFTは、図6に示すように、本来の信号にゼロを付加してFFTを行う方法である。FFT結果のスペクトルの点数はFFTフレームの点数で決定するため、ゼロを付加して点数を増加させることによって、本来の点と点の間を補間するようにスペクトルの点数を増加させることができる。図7は、図4の元となる信号を、ST−FFTした結果を示している。図7は、ST−FFT長を4Npとして、点数を4倍に増やした結果である。図4の場合と比較してスペクトルの点と点の間が補間されスムーズなスペクトル形状となっていることが分かる。
【0040】
図8は、これを同様に振幅で加算した結果であり、図5に示す場合と比較してピーク位置がより明確になっている。
【0041】
こうすることにより、ピーク位置が明確になり、元の点数ではピーク位置が周波数ビンとビンの間にある場合でも、感度劣化が発生しなくなる。
【0042】
なお、図8のスペクトルからピーク周波数を求める方法は、ST−FFTを行わない場合と同様に窓のスペクトル形状に対応した波形でフィッティングを行っても良い。図8のピーク位置を見ると、ビン番号10と11の間であることがうかがわれ、ST−FFT長が元のサンプル数の2倍、4倍と言った比較的少ない数の場合に高い精度でピークを求めたい場合には、フィッティングが必要であることが分かる。
【0043】
しかし、ST−FFT長を例えば16Npと十分に長くすれば、ピーク近辺の形状が十分になだらかになるため、ピークサーチでピーク検出すれば十分である。
【0044】
なお、ST−FFTの替わりに離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を利用しても良い。ST−FFTは前述のようになめらかなスペクトルを得るための方法である。DFTによれば、フーリエ変換時の参照周波数を整数以外の数とすることができる。
【0045】
(実施の形態2)
続いて本発明の実施の形態2について説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る周波数検出器1の構成を示す図である。実施の形態1と同一構成については同一の符号を付し重複する説明は省略する。実施の形態1のフーリエ変換部3ではなくDFT変換部27によって構成されている点が実施の形態1と異なっている。
【0046】
DFT変換部27にはピーク位置の予測値が入力され、予測値の近傍のみでピーク周波数の検出を行う。
【0047】
DFT時の参照周波数間隔を適切な細かい値とすることによって図7と同等のスペクトルを得ることができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、フーリエ変換時の参照周波数とは、次のフーリエ変換式のf(或いは各周波数:2πf)である。
【数1】
【0049】
ただし、kはサンプル番号、Y(k)はフーリエ変換対象の信号、Nはフーリエ変換フレーム長である。
【0050】
しかし、DFTは、ST−FFTと比較して演算量が多いため、予めピーク位置の予測値を入力し、その近辺のスペクトルのみを計算するような方法が望ましい。
【0051】
例えば、FFTで図5の波形までを計算し、ピーク位置を探すと、ピーク位置が周波数ビン番号2と3の間にあることが分かるので、ビン番号2と3の間の周波数を何点か参照周波数として指定してDFTを行う。
【0052】
ピーク位置の予測値は、このように、信号から抽出しても良いが、例えば、目標のドップラ周波数や相対速度が予めある程度見当が付いているような場合には、予測されたドップラ周波数や相対速度に対応するドップラ周波数の近傍のみDFTするようにしてもよい。
【0053】
DFT結果からピーク検出する際には、これまでと同様に全ての周波数バンド分について、振幅(或いは、パワー)で加算したスペクトルを用いる。その後は、加算後スペクトルに適切な波形をフィッティングしてピーク周波数を求めるか、十分に細かい間隔でDFTの参照周波数を設定するならばピークサーチをすればよい。
【0054】
このように、なめらかなスペクトルを用いてピーク周波数検出を行うことによって、より精度の高い推定が可能となる。
【0055】
以上の方法では、検出されたピーク周波数は全周波数バンドを含む全帯域の中心周波数に対応する値となる。しかし、上記の方法は周波数選択性フェージングがある場合に、誤差が大きくなることがある。
【0056】
図10は目標が1点のみの点目標である場合の各周波数バンドのフーリエ変換後の振幅スペクトルである。受信時のSNRを100dBと非常に大きくしたため、図7とは異なり、各周波数バンド毎のピーク周波数が明確であり、ピーク周波数が少しずつずれながら整列している。
【0057】
一方、図11は周波数選択性フェージングがある場合の一例であり、フーリエ変換後のピークの高さが周波数バンドによって大きく異なっている。
【0058】
図11の例では、最も周波数の小さいピークを与える周波数バンドが著しく他より大きいため、このようなスペクトルを振幅を加算して、ピーク周波数を求めても、最も周波数の小さいピークを与える周波数バンドのドップラ周波数に近づいてしまい、全体の中心周波数に対するドップラ周波数からは離れた値となってしまう。
【0059】
(実施の形態3)
続いて本発明の実施の形態3について説明する。図12は、本発明の実施の形態3に係る周波数検出器1の構成を示す図である。実施の形態1と同一構成については同一の符号を付し重複する説明は省略する。フーリエ変換部3がピーク整合型フーリエ変換部28となっている点で実施の形態1とは異なる。
【0060】
ベースバンド変換部2には、送信時周波数情報が入力され、受信信号は、その送信時周波数を有するローカル信号によって、複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号にはフーリエ変換部28で上述したピーク整合型のフーリエ変換が適用される。フーリエ変換部28の出力スペクトルは、ノルム抽出部4で振幅(或いは、パワー)に変換される。
【0061】
続いて、加算部4で全ての周波数バンドの振幅(或いは、パワー)のスペクトルが同一周波数ビンごとに加算される。その結果からピーク検出部6でピーク周波数が検出される。
【0062】
図13、及び図14は、ピーク整合型フーリエ変換部28の詳細を示した図である。
【0063】
図13は、ST−FFTを利用した方法に対応する実施の形態である。
【0064】
ゼロ長決定部9は、入力された送信時周波数情報を用いて周波数バンド毎に異なる適切なゼロの長さを決定し、信号調整部10は、ゼロ長決定部9で決定された長さのゼロを、入力された複数サンプル列に付加する。ST−FFT部11はこれをST−FFTして、結果を出力する。
【0065】
図14は、DFTを利用する方法に対応する実施の形態である。
【0066】
入力されたピーク予測値、及び送信時周波数情報に基づいて、参照周波数決定部12は、周波数バンド毎に異なるDFTの参照周波数を決定する。DFT部13は決定された参照周波数で入力サンプル列をDFTし出力する。
【0067】
なお、送信時周波数情報を利用してゼロの長さを決定したり、参照周波数を決定する方法では、毎回、式に基づいて参照周波数を決定する必要は無い。殆どの場合は送信時周波数が仕様によって決定しているので、各周波数バンドに対応する値を予め計算してメモリに記憶しておき、どの周波数バンドの受信信号を処理すべきかが送信時周波数情報から入力されるようにして、その周波数バンドに対応した値をメモリから読み出せばよい。
【0068】
図15はピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図である。図15(a)の各段は、例えば中心周波数f1、f2、f3の周波数バンドの受信信号をフーリエ変換する際のフレーム構成を示している。送信時の中心周波数が異なる周波数バンドであって、これらがドップラシフトを受けると、元の中心周波数の比率でドップラ周波数が異なる。図では、f1、f2、f3の順に波長が短くなっているように示した。この状態で、各周波数バンドの受信パルス列、すなわちNp個のベースバンドサンプルに、周波数バンド毎に異なる長さni(i=0、1、...、Nf)のゼロを付加していく。
【0069】
具体的には、Np+niの長さに対して、各周波数バンドの波長であるPiが常に一定値となるようにゼロを付加する。これは、フーリエ変換フレーム長、すなわち、便宜的な1秒がどの周波数バンドでも同じ1秒であるとみなした場合、図15(b)のように書ける。すなわち、Np+niがどの周波数バンドでも同じ長さであり、かつ、全周波数バンドで受信信号の波長が同じになる。その結果、全ての周波数バンドのドップラ周波数のピークがフーリエ変換後に同じ周波数となる。なお、信号が存在する長さNpのフーリエ変換長に対する比率は、周波数バンド毎に異なるが、これは問題ない。
【0070】
このような操作は図16のように解釈できる。図16(a)は各周波数バンドの受信信号のスペクトルを周波数を0から模擬的に示したものである。送信時周波数が周波数バンド毎に異なるため、ドップラ周波数を中間周波数として有する受信信号のスペクトルピークも少しずつずれている。これらのドップラ周波数の中心周波数の比は送信時周波数の比で決定している。従って、送信時周波数が擬似的に同じ周波数になるように、周波数バンド毎に異なる比率で横軸を圧縮すると図16(b)のようになり、全ての周波数バンドの受信信号のスペクトルピークが一致する。
【0071】
従って、Np+niの長さ、すなわち、圧縮の比率は、ドップラ周波数そのものではなく、送信時の中心周波数と周波数バンドの周波数差で決定するものであり、目標の移動速度には依存しない。
【0072】
なお、図15におけるゼロ付加は便宜的な物であり、実際の計算時には、信号がゼロである部分は何を掛けてもゼロになるため、演算は行わず、信号が存在するNpで示した領域のみの演算でよい。
【0073】
次に、式を用いて具体的なniの値の決定方法を説明する。受信信号列が下記のように定義されるとする。
【数2】
【0074】
本来の信号は、この他に振幅を有し、また、固定の位相成分を有するが、動作説明には関係しない。そこで、説明を簡便にするために省略した。kは同一周波数バンド内のパルス、すなわちサンプルの番号である。Fiはドップラ周波数、または、これに準ずる値であり、ここでは、本来のドップラ周波数fd、iにパルス繰り返し期間(PRI:Pulse Repetition Interval)であるT2とNpを掛けた値とする。
【0075】
これをNp+niを1秒とする系で周波数mについてフーリエ変換すると、フーリエ変換係数Ci、mは、下式で表すことが出来る。
【数3】
【0076】
適用するフーリエ変換がDFTである場合は、mは必ずしも整数で無くて良く、実数でよい。フーリエ変換後に各周波数ステップのスペクトルのピークを揃えることが目的であるので、式(3)の周波数に相当する部分Fi・(Np+ni)/Npがiの変化に関係無く同じ値になるようにniの値を決定すればよい。
【0077】
Fiを、0番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数F0を用いて表現すると、下式で表すことができる。
【数4】
【0078】
ただし、CFは周波数ステップの間隔値fstを全体の中心周波数f0で割った値である。ここで、(1+iCF)・(Np+ni)/Npが、iによらず一定になるようにniの値を決定すればよい。まず、
【数5】
【0079】
と置く。bはniが負のような実現できない値にならない限り、いくつでも良い。計算を簡便にするために、ここでは、b=1/(NpCF)と置くと、niを解くことができて、次式で表すことができる。
【数6】
【0080】
DFTを行う場合は、幾つか適切なmを選んで、式(3)のフーリエ変換を各周波数バンドのサンプル列に対して行うことによって、ピークの揃ったDFT結果を得ることができる。なお、実際のフーリエ変換の際には、式の導出の過程で省略した振幅や固定位相成分まで含んだ受信サンプル列に対して行う。
【0081】
なお、予めドップラ周波数の見当が付いているならば、ゼロ番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数をfd、0として、
【数7】
【0082】
のような値の近辺のmについてフーリエ変換を行えばよい。
【0083】
ただし、このとき、PRIの値と移動速度の関係によっては、ドップラ周波数のスペクトルに折り返しが発生することがある。
【0084】
このような場合には、適切なmはNp+niの値を超えてしまう。その場合、mは0からNp+ni−1の値までしか計算できないST−FFTではピークを揃えることができなくなる。従って、このようなケースではmの見当を付けた上で、その周辺をDFTを用いて計算すると良い。
【0085】
この演算をST−FFTで行う場合は、サンプル列の後ろに周波数バンド毎に異なるni個のゼロを付加して演算を行う。その場合はniがiの範囲でほぼ整数となるように適切なbの値を選択する必要がある。例えば、上記のb=1/(NpCF)といった値では、Nfの値によっては整数からずれてしまうことがあるが、b=1+1/(NpCF)といった補正項を付加することによって、ほぼ整数に近い値にすることができる。
【0086】
実際問題として、ドップラ周波数に折り返しが発生していると、折り返し回数の曖昧さの無いドップラ周波数を予備知識無しに計算することは難しい。従って、ドップラ周波数、すなわち、目標との相対速度の範囲を何かの方法で予め知っておくことが望ましい。
【0087】
このようにして求めた各周波数バンドに対応するDFTスペクトルの一例を図17に示す。図11と同じ信号について、ピーク整合DFTを適用した。全ての曲線のピーク位置が一致していることが分かる。
【0088】
なお、横軸はmであるため、図11とはスケールが異なっている。また、予想されるドップラ周波数の周辺のみを抜き出して計算したため、ピークのグラフ上の表示位置が異なっているが、これはグラフ表示だけの問題である。
【0089】
なお、これまで表示したスペクトルはT2の取り方の問題により、全て、ドップラ周波数の折り返しが発生している。ピーク整合にDFTを利用し、横軸をmに取った場合には、折り返しが発生する替わりに、mを0から無限大まで取ってみると、一定周期でほぼ同じ波形が繰り返される。従って、予め、ある程度mの見当を付けておく必要がある。
【0090】
(実施の形態4)
続いて本発明の実施の形態4について説明する。上述したように、ピーク整合をDFTで行う場合には、予めある程度の移動速度またはドップラ周波数の予測値がある方がよい。そこで次に、ピーク整合を行わないドップラ周波数検出方式の結果を予測値として用い、予測値の周辺の詳細推定をピーク整合DFTで行う実施の形態について説明する。
【0091】
図18は、本発明の実施の形態4に係る周波数検出器1の構成を示す図である。本実施の形態では、ピーク整合を行わないドップラ周波数検出を行って、これを概算の推定値とし、その推定値の周辺でピーク整合型DFTを行う。
【0092】
周波数検出器1に入力した受信信号はベースバンド変換部2に入力される。ベースバンド変換部2には、送信時周波数情報が入力され、各周波数バンドの送信時周波数を有するローカル信号で、1パルス1サンプルで合計複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は2分岐され、一方はフーリエ変換部3に入力される。フーリエ変換部3では、各周波数バンド毎にフーリエ変換が行われる。フーリエ変換によって得られたスペクトルはノルム抽出部4で位相の無い振幅(或いは、パワー)に変換される。その出力については、加算部4で、同一周波数ビンごとに複数の周波数バンドの結果が全て加算される。加算されたスペクトルはピーク検出部6でピーク検出され、ドップラ周波数の概算値が出力される。
【0093】
ベースバンド変換部2の2分岐された出力の他方は、ピーク整合型DFTを行うため、ピーク整合型フーリエ変換部28に入力される。ピーク整合型フーリエ変換部28には、同時にピーク検出部6の出力であるドップラ周波数の概算値、または、これを移動速度に変換した値が入力される。
【0094】
ピーク整合型フーリエ変換部28では、入力されたドップラ周波数の概算値に基づいて、DFTを行うmの範囲を決定し、入力されたベースバンド信号に対してピーク整合型DFTを適用する。詳細は前述の通りである。ピーク整合型フーリエ変換部28の出力はノルム抽出部17に入力され、振幅(或いは、パワー)に変換される。その結果は加算部18に入力され、同一のmについて、全周波数バンドの結果が加算される。加算結果はピーク検出部19に入力され、ピークを与えるmが計算され、mからドップラ周波数が計算されて出力される。
【0095】
前述のように、周波数選択性フェージングがある場合には、ピーク整合を行わない方法では誤差が大きくなるが、周波数バンド毎のドップラ周波数の差はあまり大きくないため、概算値を求める程度であれば十分有効に動作する。
【0096】
ピーク整合型DFTを行うピーク整合型フーリエ変換部28では、このような周波数選択性フェージングによるずれの可能性を考慮してピークが存在する可能性がある範囲を決定し、DFTを行う範囲を決定すると良い。
【0097】
このようにすることによって、周波数選択性フェージングがあり、また、PRIの設定の問題でドップラ周波数の折り返しがある場合でも、精度の高いドップラ周波数検出を行うことができる。
【0098】
なお、折り返しがある場合は、ドップラ周波数を検出する際に、予め折り返しの回数の見当を付けておく必要がある。そして、各々のドップラ周波数検出結果に折り返し分のオフセットを加算して出力する。
【0099】
予めmの見当を付けた状態で、ピーク整合DFTを行った例を図19に示す。予め入力されたドップラ周波数の推定値または相対移動速度の推定値から決定するドップラ周波数の推定値の近辺のみDFTを行った例である。横軸はDFTを行ったmを0から順に整数で番号付けした際のビン番号である。図17よりも周波数バンド毎のパワーのバラツキが低い条件であるが、合計SNRが0dBと低いため、周波数選択性フェージング以上に雑音によって振幅がばらつき、また、ピーク周波数もばらついている。しかし、おおよそピーク位置が揃っていることがわかる。
【0100】
これを振幅で加算した結果が図20であり、ピーク周波数が明確になっている。ピークを与えるmの値が求められたら、これから式(7)を用いて、ゼロ番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数を求めることができる。
【0101】
図20からのピーク位置の推定方法は、前述の場合と同じで、ピーク波形のフィッティングによっても行ってもよいし、十分に細かい間隔でDFTを行ったなら、ピークサーチでもよい。
【0102】
T2の設定の問題によってスペクトルに折り返しが発生する条件でピーク整合型DFTを行った場合、正しいピークを与えるmを含む範囲外の繰り返し波形では、本発明の特徴であるピーク整合性が低くなる。すなわち、正しいmの範囲外の繰り返しスペクトルでは、横軸の圧縮率が正しくないため、スペクトルが周波数バンド毎に横にずれた形になる。本実施形態では、ピークを整合させた後は、振幅(或いは、パワー)で加算して、ピーク周波数検出を行うが、その際、mの範囲が正しくないと、加算した結果のピークが低くなる。
【0103】
そこで、例えば、次のような方法でスペクトルの折り返し回数を推測できる。波形の繰り返し周期は、ほぼ、ドップラ周波数の折り返し周期をmの次元に換算した値となっている。その周期ごとに現れる加算後のピークの値を比較し、これが最大になるピークを探せばよい。ただし、SNRが低い場合には雑音の影響があるので、周期毎にピーク値をサンプリングし、その値にスムージングを掛けて、最大と思われる点を選択すればよい。
【0104】
(実施の形態5)
図21は本発明の実施の形態5に係る合成帯域レーダ20の構成を示す図である。
【0105】
合成帯域レーダ20では、周波数シンセサイザ26の出力を用いて、送信部25からステップ周波数のパルス列が出力される。これは図示しない適切なRF処理を経て、電波として放射される。目標に当たって反射してきた電波は図示しない適切なRF処理を経て受信信号として合成帯域レーダ20に受信信号として入力される。
【0106】
受信信号は周波数検出器1に入力され、これまで述べてきたような方法で、ドップラ周波数が検出される。なお、ドップラ周波数に折り返しがあるような場合には、例えば、合成帯域レーダ20を含む機材に搭載された加速度計30の出力などを用いて折り返し回数の見当を付けた上で、ドップラ周波数の推定を行う。また、各周波数バンド毎のベースバンド信号は、周波数検出器1から代表値抽出部31に出力される。
【0107】
計算されたドップラ周波数は、速度計算部21に入力され、速度の次元に変換される。
【0108】
代表値抽出部31では、各周波数ステップのスペクトルのピーク値を求めたり、或いは、周波数検出器1から出力された各周波数バンドのドップラ周波数または速度計算部21で求められた移動速度から計算された各周波数ステップのドップラ周波数に対応するスペクトル成分をベースバンド信号から抽出し、各周波数ステップ1点ずつの代表値とする。これを位相補正部22に入力する。
【0109】
位相補正部22では、速度計算部21で計算された速度を用いて、各周波数ステップの代表値の位相について、目標との検出期間中の相対距離の変化に伴う位相ずれを補正する。
【0110】
補正された代表値は逆フーリエ変換部23に入力され、周波数ステップの周波数の順に並べて逆フーリエ変換を受ける。逆フーリエ変換の結果から、目標までの相対距離に対応した位置にピークを有するインパルス波形が得られるので、そのピーク位置から目標までの距離を検出して出力する。
【0111】
合成帯域レーダでは速度検出誤差が距離検出誤差に与える影響が非常に大きいため、本発明の周波数検出器を用いて、確実、かつ、簡便な方法で高精度なドップラ周波数、すなわち、移動速度検出が行えるようになることによって、合成帯域レーダそのものの高精度化が実現できる。
【0112】
(実施の形態6)
図22は本発明の実施の形態6に係る飛翔体誘導装置32の構成を示す図である。本発明の周波数検出器およびこれを含む合成帯域レーダから飛翔体を誘導するための誘導信号を生成する構成である。
【0113】
アンテナ、加速度計などからなるセンサ33の出力が飛翔体誘導装置32に入力される。飛翔体誘導装置32においては、前処理部34にて、適宜、増幅、周波数変換、アナログ−デジタル変換など次段の信号処理部35での処理に適するよう前処理が施される。信号処理部35は、本発明の合成帯域レーダ20と、誘導信号生成に必要なその他の情報を検出するN個の処理部38−1〜38−Nを有する。誘導信号生成に必要なその他の情報とは、例えば、到来波の波数、角度などである。信号処理部35で生成された情報は、誘導信号生成部36に入力され、これらの情報を統合して飛翔体誘導に必要な信号が生成される。生成された誘導信号は操舵装置37に出力され、飛翔体の操舵が行われる。
【0114】
このように本発明の合成帯域レーダを飛翔体の誘導信号生成に用いることによって、より感度、精度の優れた誘導信号を生成することが可能となる。
【0115】
なお、図22では、信号、情報は、センサから操舵装置まで戻ることなく進んでいるが、必要に応じて、ブロック間での情報の授受が行われる。例えば、合成帯域レーダ35の出力が処理部38−1に渡されて、レンジ情報に基づいた処理、例えば、角度検出が行われる、などである。
【0116】
なお、本発明の周波数検出器は、順次周波数がステップ状に変化していく信号の周波数或いはドップラ周波数を検出する方式であって、適用の範囲は合成帯域レーダに限らず、周波数ホッピングを行う他のシステムにも適用できる。例えば、周波数ホッピングを行うシステムで、仕様上の中心周波数と周波数バンドの周波数間隔、ホッピングシーケンスは既知であるが、発振器の精度に問題があり、送信機の厳密な中心周波数を、受信機側で検出したい場合などにも適用できる。この場合は、受信機側が、既知の仕様に基づいた自身の発振器出力で受信信号をベースバンド信号に変換し、同様の処理を行えばよい。これは、ドップラ周波数の検出ではく、発振器の中心周波数ずれの検出になる。
【0117】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0118】
1 周波数検出器
2 ベースバンド変換部
3 フーリエ変換部
4 ノルム抽出部
5 加算部
6 ピーク検出部
9 ゼロ長決定部
10 信号調整部
11 ST−FFT部
12 参照周波数決定部
13 DFT部
27 DTF変換部
28 ピーク整合型フーリエ変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステップ周波数型合成帯域レーダ(以下、合成帯域レーダとする)は、チャープパルスレーダを変形したレーダである。図23に示すように、チャープパルスレーダは、ある周波数帯域幅Bに対して、帯域の端の周波数から時間的に周波数をスイープする。広い帯域幅を有しているため、受信信号を位相調整して、逆フーリエ変換すれば、インパルスに近い波形となり、このインパルスのピークに基づき目標までの距離を検出することが出来る。
【0003】
合成帯域レーダは、このチャープパルスレーダのスイープ周波数を時間的に離散化したものであり、ステップ状に周波数が変化していく。離散化以外の動作はほぼ同じであり、受信信号の位相調整、逆フーリエ変換によって、インパルスに近い波形が得られ、インパルスのピークから目標までの距離が検出できる。
【0004】
しかし、合成帯域レーダでは、チャープパルスのパルス長より十分に長い期間に渡ってパルスを送出し続けるため、目標やレーダ装置が移動している場合、検出期間中に相対距離が変化して、明確なピークが現れなくなり、正しい検出ができない。そのため、受信信号のドップラ周波数から目標の移動速度を検出し、目標の検出期間中の移動分を補正してから距離検出を行うことが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3709698号
【特許文献2】特開2005−308723号公報
【特許文献3】特開2009−180666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の合成帯域レーダは、ディシジョンフィードバック的に最適な移動速度を求める方法であったり(特許文献2)、送信するパルスの間隔や周波数間隔が特定の条件に制限されるなど(特許文献3)、計算時間や収束性に問題があったり、仕様に不必要な条件が加わるなどの課題があり、必ずしも利便性の良いものとはいえなかった。
【0007】
そこで、本発明は利便性の良い周波数検出器、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1記載の周波数検出器は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、請求項9記載の合成帯域レーダは、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項10記載の飛翔体誘導装置は、センサから入力された信号を、処理に適した形に変換する前処理部と、前記前処理部の出力を信号処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力から誘導信号を生成し、操舵装置に出力する誘導信号生成部と、を具備し、前記信号処理部は、入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利便性の良い周波数検出装置、この周波数検出器を備える合成帯域レーダ、及び飛翔体誘導装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の処理を示すフローチャート。
【図3】合成帯域レーダを説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図5】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図6】ショートタイムFFTを説明するための図。
【図7】ショートタイムFFTを説明するための図。
【図8】本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の動作を説明するための図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図10】周波数選択制フェージングを説明するための図。
【図11】周波数選択制フェージングを説明するための図。
【図12】本発明の実施の形態3に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図13】ピーク整合型フーリエ変換部の構成を示す図。
【図14】ピーク整合型フーリエ変換部の構成を示す図。
【図15】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図16】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図17】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図18】本発明の実施の形態4に係る周波数検出器1の構成を示す図。
【図19】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図20】ピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図。
【図21】本発明の実施の形態5に係る合成帯域レーダ20の構成を示す図。
【図22】飛翔体誘導装置を説明するための図。
【図23】合成帯域レーダを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1の構成を示す図である。
【0015】
周波数検出器1は、ベースバンド変換部2、フーリエ変換部3、ノルム抽出部4、加算部5、ピーク検出部6を有する。
【0016】
ベースバンド変換部2は、複数の周波数バンドについて順次時系列で入力された受信信号を1つの周波数バンドが複数サンプルから成るベースバンド信号に変換する。
【0017】
フーリエ変換部3は、ベースバンド変換部2によって変換されたベースバンド信号をフーリエ変換する。
【0018】
ノルム抽出部4は、フーリエ変換部3によって変換された結果(フーリエ変換結果)から位相成分を除去した振幅(或いは、パワー)に変換し、ノルム成分を抽出する。
【0019】
加算部5は、ノルム抽出部4によって抽出された振幅(或いは、パワー)を周波数ビン毎に加算する。
【0020】
ピーク検出部6は、加算部5によって加算された結果(加算結果)からピーク周波数を検出する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1に係る周波数検出器1によるピーク周波数を検出する処理を示すフローチャートである。
【0022】
周波数検出器1には、複数の周波数バンドについて順次時系列で受信された受信信号が入力される。
【0023】
ここで、受信信号のパルス構成は、図3に示すように送出されるパルス構成と同様の1周波数バンドがNp個からなり、隣接する周波数バンドの中心周波数の間隔はfstであり、総計でNf個の周波数バンドであるとする。
【0024】
入力された受信信号はベースバンド変換部2にて、1つの周波数バンドが複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される(St1)。
【0025】
St1において変換されたベースバンド信号はフーリエ変換部3に送られ、フーリエ変換される(St2)。
【0026】
St3においてフーリエ変換された結果はノルム抽出部4に送られ、フーリエ変換結果から位相成分を除去した振幅(或いは、パワー)に変換される(St3)。
【0027】
図4は、各周波数バンドのNp個のパルスを、各周波数バンド毎に高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)した結果の振幅成分を表したものである。横軸は周波数ビン番号、縦軸はリニアスケールの振幅である。1パルスのSNR(Signal Noise Ratio)が0dBと非常に低いため、ピークの高さはバラついており、また、少しずつずれながら並んでいるはずのピーク位置もバラバラである。この状態で、各周波数バンド毎にピーク検出を行っても、雑音の影響が強すぎて正しいピーク位置を推定することは難しい。
【0028】
そこで、周波数バンド毎に振幅成分を加算する。加算をスペクトルが位相を持つ複素数の状態で行わないのは、雑音のみについて言えば、複素数での加算結果は振幅加算より少なくなるが、周波数バンド毎の位相ずれがある場合、複素数で加算を行うと、信号も打ち消し合ってしまうためである。
【0029】
St4において変換された変換結果は加算部5に送られ、加算部5は、全ての周波数バンドのフーリエ変換結果である振幅(或いは、パワー)を周波数ビン毎に加算する(St5)。
【0030】
St5における加算結果を図5に示す。全パルスを利用したスペクトルとなってSNRが向上し、ピーク位置が周波数ビン番号2と3の間にあることが明確になっている。
【0031】
St5において加算された加算結果は、ピーク検出部6に送られ、ピーク検出部6はピーク周波数を検出する(St6)。
【0032】
ピーク検出部6は、図5からピークを検出する。図5では、ピークは明らかに周波数ビン番号2と3の間であり、単純なピークサーチ、すなわち、各ビンの高さを比較して最も高いビンの番号を出力する方法では、高い精度で求まらない。
【0033】
そこで、図5の波形に近い波形を予め用意し、フィッティングを行う。図4の各スペクトルは、同一周波数バンドのNp個のパルスのフーリエ変換結果である。図4は、窓をかけずにフーリエ変換を行った場合を示している。すなわち、矩形窓であるので、各スペクトルはsinc関数の絶対値の形状をしており、それらの加算結果もsinc関数の絶対値に近い形状をしている。そこで、sinc関数波形の特にピーク位置の波形を予め用意し、図5のピークの部分と適宜振幅を併せて、ピーク周波数が一致するように、sinc関数の中心周波数を振っていく。
【0034】
そして、最も良く一致する周波数、例えば二乗誤差が最小となるsinc関数の周波数が、求めるピークの周波数となる。ここで求められるピーク周波数は、fst・Nfからなる帯域幅の中心周波数に対するドップラ周波数となる。
【0035】
本発明の実施の形態1によれば、振幅を加算することによりピーク検出を行ったが、振幅ではなく、振幅の2乗で表現されるパワーを用いてピーク検出を行ったほうが各周波数便成分のノルムを計算する際の計算量が少なく効率的であるといえる。
【0036】
なお、フィッティングする波形は、可能であれば、フーリエ変換を行った際の窓のスペクトル形状に合わせることが望ましい。スペクトルの加算を振幅で行う場合は、窓のスペクトル形状そのままの形、例えばsinc関数、を用いることが可能であるが、パワーで加算を行う場合には、フィッティング波形を生成する際、窓のスペクトル形状を二乗する必要があり、若干計算量が増大する。ただし、予め非常に細かい間隔でフィッティング波形を生成しておき、メモリに記憶しておくなどの方法で、計算量は削減できる。
【0037】
ただし、フィッティングをピーク周辺の非常に狭い範囲で行うならば、必ずしも窓のスペクトル形状に合わせなくとも、似たような凸波形でかまわない。この場合、フィッティング前の振幅調整の際に、フィッティング波形に掛ける係数だけでなく、フィッティング波形に足す分であるオフセットも調整するとよい。
【0038】
図5では、ピークが周波数ビン番号2と3の間にあり、特にこのようなケースでは初期の振幅調整が難しく、フィッティング結果の精度が劣化することがある。そこで、フーリエ変換を行う際、スペクトルの点と点の間を補完することを目的として、ショートタイムFFT(ST−FFT:Short Time −Fast Fourier Transform)を利用する。
【0039】
ST−FFTは、図6に示すように、本来の信号にゼロを付加してFFTを行う方法である。FFT結果のスペクトルの点数はFFTフレームの点数で決定するため、ゼロを付加して点数を増加させることによって、本来の点と点の間を補間するようにスペクトルの点数を増加させることができる。図7は、図4の元となる信号を、ST−FFTした結果を示している。図7は、ST−FFT長を4Npとして、点数を4倍に増やした結果である。図4の場合と比較してスペクトルの点と点の間が補間されスムーズなスペクトル形状となっていることが分かる。
【0040】
図8は、これを同様に振幅で加算した結果であり、図5に示す場合と比較してピーク位置がより明確になっている。
【0041】
こうすることにより、ピーク位置が明確になり、元の点数ではピーク位置が周波数ビンとビンの間にある場合でも、感度劣化が発生しなくなる。
【0042】
なお、図8のスペクトルからピーク周波数を求める方法は、ST−FFTを行わない場合と同様に窓のスペクトル形状に対応した波形でフィッティングを行っても良い。図8のピーク位置を見ると、ビン番号10と11の間であることがうかがわれ、ST−FFT長が元のサンプル数の2倍、4倍と言った比較的少ない数の場合に高い精度でピークを求めたい場合には、フィッティングが必要であることが分かる。
【0043】
しかし、ST−FFT長を例えば16Npと十分に長くすれば、ピーク近辺の形状が十分になだらかになるため、ピークサーチでピーク検出すれば十分である。
【0044】
なお、ST−FFTの替わりに離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を利用しても良い。ST−FFTは前述のようになめらかなスペクトルを得るための方法である。DFTによれば、フーリエ変換時の参照周波数を整数以外の数とすることができる。
【0045】
(実施の形態2)
続いて本発明の実施の形態2について説明する。図9は、本発明の実施の形態2に係る周波数検出器1の構成を示す図である。実施の形態1と同一構成については同一の符号を付し重複する説明は省略する。実施の形態1のフーリエ変換部3ではなくDFT変換部27によって構成されている点が実施の形態1と異なっている。
【0046】
DFT変換部27にはピーク位置の予測値が入力され、予測値の近傍のみでピーク周波数の検出を行う。
【0047】
DFT時の参照周波数間隔を適切な細かい値とすることによって図7と同等のスペクトルを得ることができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、フーリエ変換時の参照周波数とは、次のフーリエ変換式のf(或いは各周波数:2πf)である。
【数1】
【0049】
ただし、kはサンプル番号、Y(k)はフーリエ変換対象の信号、Nはフーリエ変換フレーム長である。
【0050】
しかし、DFTは、ST−FFTと比較して演算量が多いため、予めピーク位置の予測値を入力し、その近辺のスペクトルのみを計算するような方法が望ましい。
【0051】
例えば、FFTで図5の波形までを計算し、ピーク位置を探すと、ピーク位置が周波数ビン番号2と3の間にあることが分かるので、ビン番号2と3の間の周波数を何点か参照周波数として指定してDFTを行う。
【0052】
ピーク位置の予測値は、このように、信号から抽出しても良いが、例えば、目標のドップラ周波数や相対速度が予めある程度見当が付いているような場合には、予測されたドップラ周波数や相対速度に対応するドップラ周波数の近傍のみDFTするようにしてもよい。
【0053】
DFT結果からピーク検出する際には、これまでと同様に全ての周波数バンド分について、振幅(或いは、パワー)で加算したスペクトルを用いる。その後は、加算後スペクトルに適切な波形をフィッティングしてピーク周波数を求めるか、十分に細かい間隔でDFTの参照周波数を設定するならばピークサーチをすればよい。
【0054】
このように、なめらかなスペクトルを用いてピーク周波数検出を行うことによって、より精度の高い推定が可能となる。
【0055】
以上の方法では、検出されたピーク周波数は全周波数バンドを含む全帯域の中心周波数に対応する値となる。しかし、上記の方法は周波数選択性フェージングがある場合に、誤差が大きくなることがある。
【0056】
図10は目標が1点のみの点目標である場合の各周波数バンドのフーリエ変換後の振幅スペクトルである。受信時のSNRを100dBと非常に大きくしたため、図7とは異なり、各周波数バンド毎のピーク周波数が明確であり、ピーク周波数が少しずつずれながら整列している。
【0057】
一方、図11は周波数選択性フェージングがある場合の一例であり、フーリエ変換後のピークの高さが周波数バンドによって大きく異なっている。
【0058】
図11の例では、最も周波数の小さいピークを与える周波数バンドが著しく他より大きいため、このようなスペクトルを振幅を加算して、ピーク周波数を求めても、最も周波数の小さいピークを与える周波数バンドのドップラ周波数に近づいてしまい、全体の中心周波数に対するドップラ周波数からは離れた値となってしまう。
【0059】
(実施の形態3)
続いて本発明の実施の形態3について説明する。図12は、本発明の実施の形態3に係る周波数検出器1の構成を示す図である。実施の形態1と同一構成については同一の符号を付し重複する説明は省略する。フーリエ変換部3がピーク整合型フーリエ変換部28となっている点で実施の形態1とは異なる。
【0060】
ベースバンド変換部2には、送信時周波数情報が入力され、受信信号は、その送信時周波数を有するローカル信号によって、複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号にはフーリエ変換部28で上述したピーク整合型のフーリエ変換が適用される。フーリエ変換部28の出力スペクトルは、ノルム抽出部4で振幅(或いは、パワー)に変換される。
【0061】
続いて、加算部4で全ての周波数バンドの振幅(或いは、パワー)のスペクトルが同一周波数ビンごとに加算される。その結果からピーク検出部6でピーク周波数が検出される。
【0062】
図13、及び図14は、ピーク整合型フーリエ変換部28の詳細を示した図である。
【0063】
図13は、ST−FFTを利用した方法に対応する実施の形態である。
【0064】
ゼロ長決定部9は、入力された送信時周波数情報を用いて周波数バンド毎に異なる適切なゼロの長さを決定し、信号調整部10は、ゼロ長決定部9で決定された長さのゼロを、入力された複数サンプル列に付加する。ST−FFT部11はこれをST−FFTして、結果を出力する。
【0065】
図14は、DFTを利用する方法に対応する実施の形態である。
【0066】
入力されたピーク予測値、及び送信時周波数情報に基づいて、参照周波数決定部12は、周波数バンド毎に異なるDFTの参照周波数を決定する。DFT部13は決定された参照周波数で入力サンプル列をDFTし出力する。
【0067】
なお、送信時周波数情報を利用してゼロの長さを決定したり、参照周波数を決定する方法では、毎回、式に基づいて参照周波数を決定する必要は無い。殆どの場合は送信時周波数が仕様によって決定しているので、各周波数バンドに対応する値を予め計算してメモリに記憶しておき、どの周波数バンドの受信信号を処理すべきかが送信時周波数情報から入力されるようにして、その周波数バンドに対応した値をメモリから読み出せばよい。
【0068】
図15はピーク整合型フーリエ変換の原理を説明するための図である。図15(a)の各段は、例えば中心周波数f1、f2、f3の周波数バンドの受信信号をフーリエ変換する際のフレーム構成を示している。送信時の中心周波数が異なる周波数バンドであって、これらがドップラシフトを受けると、元の中心周波数の比率でドップラ周波数が異なる。図では、f1、f2、f3の順に波長が短くなっているように示した。この状態で、各周波数バンドの受信パルス列、すなわちNp個のベースバンドサンプルに、周波数バンド毎に異なる長さni(i=0、1、...、Nf)のゼロを付加していく。
【0069】
具体的には、Np+niの長さに対して、各周波数バンドの波長であるPiが常に一定値となるようにゼロを付加する。これは、フーリエ変換フレーム長、すなわち、便宜的な1秒がどの周波数バンドでも同じ1秒であるとみなした場合、図15(b)のように書ける。すなわち、Np+niがどの周波数バンドでも同じ長さであり、かつ、全周波数バンドで受信信号の波長が同じになる。その結果、全ての周波数バンドのドップラ周波数のピークがフーリエ変換後に同じ周波数となる。なお、信号が存在する長さNpのフーリエ変換長に対する比率は、周波数バンド毎に異なるが、これは問題ない。
【0070】
このような操作は図16のように解釈できる。図16(a)は各周波数バンドの受信信号のスペクトルを周波数を0から模擬的に示したものである。送信時周波数が周波数バンド毎に異なるため、ドップラ周波数を中間周波数として有する受信信号のスペクトルピークも少しずつずれている。これらのドップラ周波数の中心周波数の比は送信時周波数の比で決定している。従って、送信時周波数が擬似的に同じ周波数になるように、周波数バンド毎に異なる比率で横軸を圧縮すると図16(b)のようになり、全ての周波数バンドの受信信号のスペクトルピークが一致する。
【0071】
従って、Np+niの長さ、すなわち、圧縮の比率は、ドップラ周波数そのものではなく、送信時の中心周波数と周波数バンドの周波数差で決定するものであり、目標の移動速度には依存しない。
【0072】
なお、図15におけるゼロ付加は便宜的な物であり、実際の計算時には、信号がゼロである部分は何を掛けてもゼロになるため、演算は行わず、信号が存在するNpで示した領域のみの演算でよい。
【0073】
次に、式を用いて具体的なniの値の決定方法を説明する。受信信号列が下記のように定義されるとする。
【数2】
【0074】
本来の信号は、この他に振幅を有し、また、固定の位相成分を有するが、動作説明には関係しない。そこで、説明を簡便にするために省略した。kは同一周波数バンド内のパルス、すなわちサンプルの番号である。Fiはドップラ周波数、または、これに準ずる値であり、ここでは、本来のドップラ周波数fd、iにパルス繰り返し期間(PRI:Pulse Repetition Interval)であるT2とNpを掛けた値とする。
【0075】
これをNp+niを1秒とする系で周波数mについてフーリエ変換すると、フーリエ変換係数Ci、mは、下式で表すことが出来る。
【数3】
【0076】
適用するフーリエ変換がDFTである場合は、mは必ずしも整数で無くて良く、実数でよい。フーリエ変換後に各周波数ステップのスペクトルのピークを揃えることが目的であるので、式(3)の周波数に相当する部分Fi・(Np+ni)/Npがiの変化に関係無く同じ値になるようにniの値を決定すればよい。
【0077】
Fiを、0番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数F0を用いて表現すると、下式で表すことができる。
【数4】
【0078】
ただし、CFは周波数ステップの間隔値fstを全体の中心周波数f0で割った値である。ここで、(1+iCF)・(Np+ni)/Npが、iによらず一定になるようにniの値を決定すればよい。まず、
【数5】
【0079】
と置く。bはniが負のような実現できない値にならない限り、いくつでも良い。計算を簡便にするために、ここでは、b=1/(NpCF)と置くと、niを解くことができて、次式で表すことができる。
【数6】
【0080】
DFTを行う場合は、幾つか適切なmを選んで、式(3)のフーリエ変換を各周波数バンドのサンプル列に対して行うことによって、ピークの揃ったDFT結果を得ることができる。なお、実際のフーリエ変換の際には、式の導出の過程で省略した振幅や固定位相成分まで含んだ受信サンプル列に対して行う。
【0081】
なお、予めドップラ周波数の見当が付いているならば、ゼロ番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数をfd、0として、
【数7】
【0082】
のような値の近辺のmについてフーリエ変換を行えばよい。
【0083】
ただし、このとき、PRIの値と移動速度の関係によっては、ドップラ周波数のスペクトルに折り返しが発生することがある。
【0084】
このような場合には、適切なmはNp+niの値を超えてしまう。その場合、mは0からNp+ni−1の値までしか計算できないST−FFTではピークを揃えることができなくなる。従って、このようなケースではmの見当を付けた上で、その周辺をDFTを用いて計算すると良い。
【0085】
この演算をST−FFTで行う場合は、サンプル列の後ろに周波数バンド毎に異なるni個のゼロを付加して演算を行う。その場合はniがiの範囲でほぼ整数となるように適切なbの値を選択する必要がある。例えば、上記のb=1/(NpCF)といった値では、Nfの値によっては整数からずれてしまうことがあるが、b=1+1/(NpCF)といった補正項を付加することによって、ほぼ整数に近い値にすることができる。
【0086】
実際問題として、ドップラ周波数に折り返しが発生していると、折り返し回数の曖昧さの無いドップラ周波数を予備知識無しに計算することは難しい。従って、ドップラ周波数、すなわち、目標との相対速度の範囲を何かの方法で予め知っておくことが望ましい。
【0087】
このようにして求めた各周波数バンドに対応するDFTスペクトルの一例を図17に示す。図11と同じ信号について、ピーク整合DFTを適用した。全ての曲線のピーク位置が一致していることが分かる。
【0088】
なお、横軸はmであるため、図11とはスケールが異なっている。また、予想されるドップラ周波数の周辺のみを抜き出して計算したため、ピークのグラフ上の表示位置が異なっているが、これはグラフ表示だけの問題である。
【0089】
なお、これまで表示したスペクトルはT2の取り方の問題により、全て、ドップラ周波数の折り返しが発生している。ピーク整合にDFTを利用し、横軸をmに取った場合には、折り返しが発生する替わりに、mを0から無限大まで取ってみると、一定周期でほぼ同じ波形が繰り返される。従って、予め、ある程度mの見当を付けておく必要がある。
【0090】
(実施の形態4)
続いて本発明の実施の形態4について説明する。上述したように、ピーク整合をDFTで行う場合には、予めある程度の移動速度またはドップラ周波数の予測値がある方がよい。そこで次に、ピーク整合を行わないドップラ周波数検出方式の結果を予測値として用い、予測値の周辺の詳細推定をピーク整合DFTで行う実施の形態について説明する。
【0091】
図18は、本発明の実施の形態4に係る周波数検出器1の構成を示す図である。本実施の形態では、ピーク整合を行わないドップラ周波数検出を行って、これを概算の推定値とし、その推定値の周辺でピーク整合型DFTを行う。
【0092】
周波数検出器1に入力した受信信号はベースバンド変換部2に入力される。ベースバンド変換部2には、送信時周波数情報が入力され、各周波数バンドの送信時周波数を有するローカル信号で、1パルス1サンプルで合計複数サンプルからなるベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は2分岐され、一方はフーリエ変換部3に入力される。フーリエ変換部3では、各周波数バンド毎にフーリエ変換が行われる。フーリエ変換によって得られたスペクトルはノルム抽出部4で位相の無い振幅(或いは、パワー)に変換される。その出力については、加算部4で、同一周波数ビンごとに複数の周波数バンドの結果が全て加算される。加算されたスペクトルはピーク検出部6でピーク検出され、ドップラ周波数の概算値が出力される。
【0093】
ベースバンド変換部2の2分岐された出力の他方は、ピーク整合型DFTを行うため、ピーク整合型フーリエ変換部28に入力される。ピーク整合型フーリエ変換部28には、同時にピーク検出部6の出力であるドップラ周波数の概算値、または、これを移動速度に変換した値が入力される。
【0094】
ピーク整合型フーリエ変換部28では、入力されたドップラ周波数の概算値に基づいて、DFTを行うmの範囲を決定し、入力されたベースバンド信号に対してピーク整合型DFTを適用する。詳細は前述の通りである。ピーク整合型フーリエ変換部28の出力はノルム抽出部17に入力され、振幅(或いは、パワー)に変換される。その結果は加算部18に入力され、同一のmについて、全周波数バンドの結果が加算される。加算結果はピーク検出部19に入力され、ピークを与えるmが計算され、mからドップラ周波数が計算されて出力される。
【0095】
前述のように、周波数選択性フェージングがある場合には、ピーク整合を行わない方法では誤差が大きくなるが、周波数バンド毎のドップラ周波数の差はあまり大きくないため、概算値を求める程度であれば十分有効に動作する。
【0096】
ピーク整合型DFTを行うピーク整合型フーリエ変換部28では、このような周波数選択性フェージングによるずれの可能性を考慮してピークが存在する可能性がある範囲を決定し、DFTを行う範囲を決定すると良い。
【0097】
このようにすることによって、周波数選択性フェージングがあり、また、PRIの設定の問題でドップラ周波数の折り返しがある場合でも、精度の高いドップラ周波数検出を行うことができる。
【0098】
なお、折り返しがある場合は、ドップラ周波数を検出する際に、予め折り返しの回数の見当を付けておく必要がある。そして、各々のドップラ周波数検出結果に折り返し分のオフセットを加算して出力する。
【0099】
予めmの見当を付けた状態で、ピーク整合DFTを行った例を図19に示す。予め入力されたドップラ周波数の推定値または相対移動速度の推定値から決定するドップラ周波数の推定値の近辺のみDFTを行った例である。横軸はDFTを行ったmを0から順に整数で番号付けした際のビン番号である。図17よりも周波数バンド毎のパワーのバラツキが低い条件であるが、合計SNRが0dBと低いため、周波数選択性フェージング以上に雑音によって振幅がばらつき、また、ピーク周波数もばらついている。しかし、おおよそピーク位置が揃っていることがわかる。
【0100】
これを振幅で加算した結果が図20であり、ピーク周波数が明確になっている。ピークを与えるmの値が求められたら、これから式(7)を用いて、ゼロ番目の周波数バンドに対応するドップラ周波数を求めることができる。
【0101】
図20からのピーク位置の推定方法は、前述の場合と同じで、ピーク波形のフィッティングによっても行ってもよいし、十分に細かい間隔でDFTを行ったなら、ピークサーチでもよい。
【0102】
T2の設定の問題によってスペクトルに折り返しが発生する条件でピーク整合型DFTを行った場合、正しいピークを与えるmを含む範囲外の繰り返し波形では、本発明の特徴であるピーク整合性が低くなる。すなわち、正しいmの範囲外の繰り返しスペクトルでは、横軸の圧縮率が正しくないため、スペクトルが周波数バンド毎に横にずれた形になる。本実施形態では、ピークを整合させた後は、振幅(或いは、パワー)で加算して、ピーク周波数検出を行うが、その際、mの範囲が正しくないと、加算した結果のピークが低くなる。
【0103】
そこで、例えば、次のような方法でスペクトルの折り返し回数を推測できる。波形の繰り返し周期は、ほぼ、ドップラ周波数の折り返し周期をmの次元に換算した値となっている。その周期ごとに現れる加算後のピークの値を比較し、これが最大になるピークを探せばよい。ただし、SNRが低い場合には雑音の影響があるので、周期毎にピーク値をサンプリングし、その値にスムージングを掛けて、最大と思われる点を選択すればよい。
【0104】
(実施の形態5)
図21は本発明の実施の形態5に係る合成帯域レーダ20の構成を示す図である。
【0105】
合成帯域レーダ20では、周波数シンセサイザ26の出力を用いて、送信部25からステップ周波数のパルス列が出力される。これは図示しない適切なRF処理を経て、電波として放射される。目標に当たって反射してきた電波は図示しない適切なRF処理を経て受信信号として合成帯域レーダ20に受信信号として入力される。
【0106】
受信信号は周波数検出器1に入力され、これまで述べてきたような方法で、ドップラ周波数が検出される。なお、ドップラ周波数に折り返しがあるような場合には、例えば、合成帯域レーダ20を含む機材に搭載された加速度計30の出力などを用いて折り返し回数の見当を付けた上で、ドップラ周波数の推定を行う。また、各周波数バンド毎のベースバンド信号は、周波数検出器1から代表値抽出部31に出力される。
【0107】
計算されたドップラ周波数は、速度計算部21に入力され、速度の次元に変換される。
【0108】
代表値抽出部31では、各周波数ステップのスペクトルのピーク値を求めたり、或いは、周波数検出器1から出力された各周波数バンドのドップラ周波数または速度計算部21で求められた移動速度から計算された各周波数ステップのドップラ周波数に対応するスペクトル成分をベースバンド信号から抽出し、各周波数ステップ1点ずつの代表値とする。これを位相補正部22に入力する。
【0109】
位相補正部22では、速度計算部21で計算された速度を用いて、各周波数ステップの代表値の位相について、目標との検出期間中の相対距離の変化に伴う位相ずれを補正する。
【0110】
補正された代表値は逆フーリエ変換部23に入力され、周波数ステップの周波数の順に並べて逆フーリエ変換を受ける。逆フーリエ変換の結果から、目標までの相対距離に対応した位置にピークを有するインパルス波形が得られるので、そのピーク位置から目標までの距離を検出して出力する。
【0111】
合成帯域レーダでは速度検出誤差が距離検出誤差に与える影響が非常に大きいため、本発明の周波数検出器を用いて、確実、かつ、簡便な方法で高精度なドップラ周波数、すなわち、移動速度検出が行えるようになることによって、合成帯域レーダそのものの高精度化が実現できる。
【0112】
(実施の形態6)
図22は本発明の実施の形態6に係る飛翔体誘導装置32の構成を示す図である。本発明の周波数検出器およびこれを含む合成帯域レーダから飛翔体を誘導するための誘導信号を生成する構成である。
【0113】
アンテナ、加速度計などからなるセンサ33の出力が飛翔体誘導装置32に入力される。飛翔体誘導装置32においては、前処理部34にて、適宜、増幅、周波数変換、アナログ−デジタル変換など次段の信号処理部35での処理に適するよう前処理が施される。信号処理部35は、本発明の合成帯域レーダ20と、誘導信号生成に必要なその他の情報を検出するN個の処理部38−1〜38−Nを有する。誘導信号生成に必要なその他の情報とは、例えば、到来波の波数、角度などである。信号処理部35で生成された情報は、誘導信号生成部36に入力され、これらの情報を統合して飛翔体誘導に必要な信号が生成される。生成された誘導信号は操舵装置37に出力され、飛翔体の操舵が行われる。
【0114】
このように本発明の合成帯域レーダを飛翔体の誘導信号生成に用いることによって、より感度、精度の優れた誘導信号を生成することが可能となる。
【0115】
なお、図22では、信号、情報は、センサから操舵装置まで戻ることなく進んでいるが、必要に応じて、ブロック間での情報の授受が行われる。例えば、合成帯域レーダ35の出力が処理部38−1に渡されて、レンジ情報に基づいた処理、例えば、角度検出が行われる、などである。
【0116】
なお、本発明の周波数検出器は、順次周波数がステップ状に変化していく信号の周波数或いはドップラ周波数を検出する方式であって、適用の範囲は合成帯域レーダに限らず、周波数ホッピングを行う他のシステムにも適用できる。例えば、周波数ホッピングを行うシステムで、仕様上の中心周波数と周波数バンドの周波数間隔、ホッピングシーケンスは既知であるが、発振器の精度に問題があり、送信機の厳密な中心周波数を、受信機側で検出したい場合などにも適用できる。この場合は、受信機側が、既知の仕様に基づいた自身の発振器出力で受信信号をベースバンド信号に変換し、同様の処理を行えばよい。これは、ドップラ周波数の検出ではく、発振器の中心周波数ずれの検出になる。
【0117】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0118】
1 周波数検出器
2 ベースバンド変換部
3 フーリエ変換部
4 ノルム抽出部
5 加算部
6 ピーク検出部
9 ゼロ長決定部
10 信号調整部
11 ST−FFT部
12 参照周波数決定部
13 DFT部
27 DTF変換部
28 ピーク整合型フーリエ変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
を具備することを特徴とする周波数検出器。
【請求項2】
前記ピーク周波数検出部は、前記複数の周波数バンドからなる全帯域の中心周波数に対応するドップラ周波数を検出することを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項3】
前記フーリエ変換部は、前記ベースバンド信号にゼロを付加してショートタイムFFTを行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項4】
前記フーリエ変換部は、ピークが存在すると予想される周波数の近傍で、フーリエ変換時の参照周波数の間隔を、前記複数サンプルの数で決定される間隔よりも細かく設定することを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項5】
前記フーリエ変換部は、前記ベースバンド信号に異なる長さのゼロを付加して、ショートタイムFFTを行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項6】
前記フーリエ変換部は、前記周波数バンド毎に参照周波数を変化させて離散フーリエ変換を行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項7】
前記周波数バンド毎に異なる前記参照周波数は、前記周波数バンドの送信時周波数に対応する比率となっていることを特徴とする請求項6記載の周波数検出器。
【請求項8】
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数の近傍の周波数をフーリエ変換の参照周波数として複数の周波数ビンにフーリエ変換する第2のフーリエ変換部と、
前記第2のフーリエ変換部によるフーリエ変換結果の各周波数ビンをノルムに変換する第2のノルム変換部と、
前記第2のノルム変換部によって変換されたノルムを同一周波数ビン毎に加算する第2の加算部と、
前記第2の加算部によって加算された加算結果のピーク周波数を検出する第2のピーク検出部と、
をさらに具備し、
前記第2のフーリエ変換部で用いられる参照周波数は、周波数バンド毎に、周波数バンドの送信時周波数に対応する比率で異なっていることを特徴とする請求項2記載の周波数検出器。
【請求項9】
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダ。
【請求項10】
センサから入力された信号を、処理に適した形に変換する前処理部と、前記前処理部の出力を信号処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力から誘導信号を生成し、操舵装置に出力する誘導信号生成部と、を具備し、
前記信号処理部は、
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダを含むことを特徴とする飛翔体誘導装置。
【請求項1】
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
を具備することを特徴とする周波数検出器。
【請求項2】
前記ピーク周波数検出部は、前記複数の周波数バンドからなる全帯域の中心周波数に対応するドップラ周波数を検出することを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項3】
前記フーリエ変換部は、前記ベースバンド信号にゼロを付加してショートタイムFFTを行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項4】
前記フーリエ変換部は、ピークが存在すると予想される周波数の近傍で、フーリエ変換時の参照周波数の間隔を、前記複数サンプルの数で決定される間隔よりも細かく設定することを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項5】
前記フーリエ変換部は、前記ベースバンド信号に異なる長さのゼロを付加して、ショートタイムFFTを行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項6】
前記フーリエ変換部は、前記周波数バンド毎に参照周波数を変化させて離散フーリエ変換を行うことを特徴とする請求項1記載の周波数検出器。
【請求項7】
前記周波数バンド毎に異なる前記参照周波数は、前記周波数バンドの送信時周波数に対応する比率となっていることを特徴とする請求項6記載の周波数検出器。
【請求項8】
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数の近傍の周波数をフーリエ変換の参照周波数として複数の周波数ビンにフーリエ変換する第2のフーリエ変換部と、
前記第2のフーリエ変換部によるフーリエ変換結果の各周波数ビンをノルムに変換する第2のノルム変換部と、
前記第2のノルム変換部によって変換されたノルムを同一周波数ビン毎に加算する第2の加算部と、
前記第2の加算部によって加算された加算結果のピーク周波数を検出する第2のピーク検出部と、
をさらに具備し、
前記第2のフーリエ変換部で用いられる参照周波数は、周波数バンド毎に、周波数バンドの送信時周波数に対応する比率で異なっていることを特徴とする請求項2記載の周波数検出器。
【請求項9】
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダ。
【請求項10】
センサから入力された信号を、処理に適した形に変換する前処理部と、前記前処理部の出力を信号処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力から誘導信号を生成し、操舵装置に出力する誘導信号生成部と、を具備し、
前記信号処理部は、
入力された複数の周波数バンドからなる周波数ホッピングの受信信号を複数サンプルのベースバンド信号に変換するベースバンド変換部と、
前記ベースバンド変換部によって変換されたベースバンド信号を、複数の周波数ビンにフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部によって変換された変換結果の各周波数ビンの値をノルムに変換するノルム変換部と、
前記ノルムを周波数ビン毎に加算する加算部と、
前記加算部によって加算された結果のピーク周波数を検出するピーク周波数検出部と、
前記ピーク周波数検出部によって検出されたピーク周波数から目標との相対速度を検出し、前記相対速度を用いて補正した前記受信信号から目標までの距離を検出することを特徴とする合成帯域レーダを含むことを特徴とする飛翔体誘導装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−149871(P2011−149871A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12462(P2010−12462)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]