説明

周波数計測装置、周波数計測方法、速度計測装置及び速度計測方法

【課題】簡易な装置で短時間に周波数を計測する。
【解決手段】計測対象としての移動体によって反射されたマイクロ波を、電気信号に変換する。次に、この電気信号が増幅されることにより生成された電気信号を、第1出力回路13を用いて、第1出力回路13を構成するハイパスフィルタの減衰特性に応じた電圧レベルの直流信号SD13に変換する。同時に、第2出力回路14を用いて、第2出力回路14を構成するローパスフィルタの減衰特性に応じた電圧レベルの直流信号SD14に変換する。そして、直流信号SD13の値と直流信号SD14の値とを用いて、電気信号の周波数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数計測装置、周波数計測方法、速度計測装置及び速度計測方法に関し、更に詳しくは、測定対象の周波数を計測する周波数計測装置、測定対象の周波数を計測するための周波数計測方法、移動体からの反射波に基づく電気信号の周波数を計測することにより移動体の速度を計測する速度計測装置、移動体からの反射波に基づく電気信号の周波数を計測することにより移動体の速度を計測するための速度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の振動解析や、ドップラー効果を用いた速度計測の分野では、例えばサンプリングした信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform)処理を実行することにより、各周波数に対する音圧レベルを計測し、この計測結果を用いて、振動の解析や速度計測を行うことが一般的に行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された装置は、測定対象物から発生する騒音をマイクロホンで集音する。そして、マイクロホンからの出力信号に対して、FFT処理を行うことにより、上記騒音の周波数特性を算出する。当該装置のユーザは、この処理結果を用いて、騒音の周波数解析を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−219866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FFT処理は、処理対象となる信号の基本波成分における音圧レベルと、当該基本波成分に対する高調波成分それぞれにおける音圧レベルの双方を算出する処理である。このため、分布周波数信号に対してFFT処理を行おうとすると、演算処理に要する時間が増大するという不都合がある。
【0006】
本発明は上述の事情の下になされたもので、波動に基づいて生成された電気信号の周波数を、簡易な装置で短時間に計測することを目的とする。また、電気信号の周波数を短時間に計測することで、波動を反射する移動体の移動速度を、短時間に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る周波数計測装置は、
波動を電気信号に変換する変換手段と、
前記電気信号の周波数の増加に比例して値が増加する第1信号を出力する第1出力手段と、
前記電気信号の周波数の増加に比例して値が減少する第2信号を出力する第2出力手段と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記波動の周波数を算出する演算手段と、
を有する。
【0008】
前記周波数に対する前記第1信号の値の増加割合と、前記周波数に対する前記第2信号の値の減少割合とは等しいこととしてもよい。
【0009】
前記第1出力手段は、前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、前記電気信号を減衰させる第1フィルタを有し、
前記第2出力手段は、前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、前記電気信号を減衰させる第2フィルタを有することとしてもよい。
【0010】
前記第1出力手段は、
前記第1フィルタを通過した前記電気信号を全波整流する第1整流回路と、
前記第1整流回路からの出力を平滑化して、前記電気信号のレベルを示す前記第1信号を生成する第1平滑回路とを有し、
前記第2出力手段は、
前記第2フィルタを通過した前記電気信号を全波整流する第2整流回路と、
前記第2整流回路からの出力を平滑化して、前記電気信号のレベルを示す前記第2信号を生成する第2平滑回路とを有することとしてもよい。
【0011】
前記演算手段は、前記第1信号の値をP1、前記第2信号の値をP2、前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数をF0、定数をkとしたときに、前記電気信号の周波数Fを次式を用いて算出することとしてもよい。
【0012】
【数1】

【0013】
また、本発明の第2の観点に係る速度計測装置は、
移動体から反射した波動に基づく電気信号の周波数を計測する本発明の周波数計測装置と、
前記周波数計測装置によって計測された周波数を用いた演算を行って、前記移動体の速度を算出する速度算出手段と、
を備える。
【0014】
また、本発明の第3の観点に係る周波数計測方法は、
波動を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第1フィルタからの出力信号のレベルを示す第1信号を生成する工程と、
前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第2フィルタからの出力信号のレベルを示す第2信号を生成する工程と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記電気信号の周波数を算出する工程と、
を含む。
【0015】
また、本発明の第4の観点に係る速度計測方法は、
移動体から反射した波動を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第1フィルタからの出力信号のレベルを示す第1信号を生成する工程と、
前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第2フィルタからの出力信号のレベルを示す第2信号を生成する工程と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記電気信号の周波数を算出する工程と、
算出した前記電気信号の周波数を用いた演算を行って、前記移動体の速度を検出する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、波動が変換されることにより生成された電気信号の周波数に応じた第1信号の値と第2信号の値との比に基づいて、波動の中心周波数が算出される。したがって、FFT処理のような複雑な処理を行う必要がなく、簡易な装置で短時間に周波数を計測することが可能となる。また、波動の周波数を短時間に計測することができるので、結果的に、波動を反射する測定対象物の移動速度を、短時間に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る速度計測装置のブロック図である。
【図2】増幅器から出力される電気信号の一例を示す図である。
【図3】第1出力回路のブロック図である。
【図4】第2出力回路のブロック図である。
【図5】ハイパスフィルタとローパスフィルタの減衰特性を示す図である。
【図6】図6(A)は、ハイパスフィルタからの出力信号を示す図である。図6(B)は、ローパスフィルタからの出力信号を示す図である。
【図7】平滑フィルタから出力される直流信号を示す図である。
【図8】直流信号の電圧レベルと周波数との関係を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る速度計測装置のブロック図である。
【図10】第1〜第4出力回路を構成するフィルタそれぞれの減衰特性を示す図である。
【図11】第1〜第4出力回路それぞれの出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る速度計測装置10のブロック図である。この速度計測装置10は、計測対象としての移動体によって反射されたマイクロ波の周波数に基づいて、移動体の移動速度を計測する装置である。図1に示されるように、この速度計測装置10は、ドップラーモジュール11、信号増幅器12、第1出力回路13、第2出力回路14、A/D変換器15、演算回路16,速度算出回路17、表示ユニット18を有している。
【0019】
ドップラーモジュール11は、例えば発信周波数がfの発信回路と、マイクロ波を送信する送信アンテナと、測定対象物に反射されたマイクロ波を受信する受信アンテナと、検波回路とを有している。ドップラーモジュールは、発信回路が駆動されることにより生じる周波数fのマイクロ波を、送信アンテナを介して測定対象物としての移動体に向けて射出する。そして、移動体によって反射されたマイクロ波(以下、単に反射波という)を、受信アンテナを介して受信し、射出時のマイクロ波の周波数fと、反射波の周波数fとの差で表されるドップラー偏移周波数f(=|f−f|)を周波数とする電気信号(ドップラー信号)を生成する。ドップラーモジュール11は、この電気信号を増幅器12へ出力する。
【0020】
マイクロ波の進行方向と移動体の進行方向が平行である場合には、移動体の速度をv(m/s)とし、周波数fのマイクロ波の波長をλ(m)とすると、ドップラー偏移周波数fは2・V/λとなる。例えば、周波数24.15GHzで波長が0.012414mのマイクロ波が、速度計測装置10に対して相対速度1m/sで移動する移動体によって反射された場合には、ドップラーモジュール11からは、161.1Hz(=2・1/0.012414)の周波数の電気信号が出力される。
【0021】
信号増幅器12は、ドップラーモジュール11から出力される電気信号を増幅する。そして、増幅した電気信号S12を、第1出力回路13及び第2出力回路14の双方にそれぞれ出力する。図2は、信号増幅器12から出力される電気信号S12の一例を示す図である。図2の曲線S0に示されるように、この電気信号S12は、例えば周期がほぼ1/fで振幅がV0の交流信号となる。なお、図2は電気信号S12を模式的に示す図であるが、実際の電気信号S12は、測定対象物に起因する分布周波数、高調波成分やノイズ成分をある程度含む場合が多い。
【0022】
図1に戻り、第1出力回路13及び第2出力回路14それぞれは、信号増幅器12から出力される電気信号S12に応じた電圧レベルの信号を出力する。以下、第1出力回路13及び第2出力回路14について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
【0023】
図3は、第1出力回路13のブロック図である。また、図4は、第2出力回路14のブロック図である。図3に示されるように、第1出力回路13は、ハイパスフィルタ13a、全波整流器13b、及び平滑フィルら13cを有している。また、図4に示されるように、第2出力回路14は、ローパスフィルタ14a、全波整流器14b、及び平滑フィルタ14cを有している。
【0024】
図5は、第1出力回路13を構成するハイパスフィルタ13aの減衰特性と、第2出力回路14を構成するローパスフィルタ14aの減衰特性を示す図である。ハイパスフィルタ13aは、入力信号に対する利得が、入力信号の周波数が高くなるほど大きくなる減衰特性を有するフィルタである。具体的には、図5に示されるように、ハイパスフィルタ13aの減衰特性は、横軸が対数座標となった座標系において、右上がりの直線L1で示される。直線L1に示されるように、ハイパスフィルタ13aの利得は、例えば100kHzで最大となり、周波数が低くなるにつれて小さくなる。
【0025】
また、ローパスフィルタ14aは、入力信号に対する利得が、入力信号の周波数が高くなるほど小さくなる減衰特性を有するフィルタである。具体的には、図5に示されるように、ローパスフィルタ14aの減衰特性は、右下がりの直線L2で示される。直線L2で示されるように、ローパスフィルタ14aの利得は、例えば10Hzで最大となり、周波数が高くなるにつれて小さくなる。
【0026】
図5に示されるように、本実施形態では、周波数が1KHzのときの入力信号に対するハイパスフィルタ13aの利得(減衰率)と、ローパスフィルタ14aの利得(減衰率)とが等しい。以下、説明の便宜上、ハイパスフィルタ13aの利得と、ローパスフィルタ14aの利得が等しくなるときの周波数を基準周波数Fというものとする。また、本実施形態では、ハイパスフィルタ13aの直線L1で示される利得の増加割合と、ローパスフィルタ14aの直線L2で示される利得の減少割合とが等しくなっている。
【0027】
図6(A)は、基準周波数Fよりも高い周波数fの電気信号S12が、ハイパスフィルタ13aに入力されたときに、このハイパスフィルタから出力される出力信号S13を示す図である。また、図6(B)は、周波数fの電気信号S12が、ローパスフィルタ14aに入力されたときに、このローパスフィルタから出力される出力信号S14を示す図である。電気信号S12の周波数fが基準周波数Fよりも高い場合には、図5を参照するとわかるように、ハイパスフィルタ13aの利得の方が、ローパスフィルタ14aの利得よりも大きくなる。したがって、ハイパスフィルタ13aからの出力信号S13の振幅V1の方が、ローパスフィルタ14aからの出力信号S14の振幅V2よりも大きくなる。
【0028】
なお、電気信号S12の周波数fが基準周波数Fよりも低い場合には、図5を参照するとわかるように、ハイパスフィルタ13aの利得の方が、ローパスフィルタ14aの利得よりも小さくなる。この場合は、ローパスフィルタ14aからの出力信号S14の振幅よりも、ハイパスフィルタ13aからの出力信号S13の振幅の方が小さくなる。
【0029】
全波整流器13b,14bは相互に同等の構成を有している。そして、全波整流器13bは、出力信号S13を全波整流する。また、全波整流器14bは、出力信号S14を全波整流する。
【0030】
平滑フィルタ13c,14cは相互に同等の構成を有している。そして、平滑フィルタ13cは、全波整流器13bによって全波整流された出力信号S13を平滑化する。また、平滑フィルタ14cは、全波整流器14bによって全波整流された出力信号S14を平滑化する。これにより、平滑フィルら13cからは、直流信号SD13が出力され、平滑フィルら14cからは、直流信号SD14が出力される。
【0031】
図7には、平滑フィルタ13cから出力される直流信号SD13、及び平滑フィルタ14cから出力される直流信号SD14が示されている。上述したように、ハイパスフィルタ13aから出力される出力信号S13の振幅V1の方が、ローパスフィルタ14aから出力される出力信号S14の振幅V2よりも大きい。このため、直流信号SD13の電圧値a1の方が、直流信号SD14の電圧値a2よりも大きくなる。
【0032】
なお、ハイパスフィルタ13aから出力される出力信号S13の振幅V1の方が、ローパスフィルタ14aから出力される出力信号S14の振幅V2よりも小さい場合には、直流信号SD13の電圧値a1の方が、直流信号SD14の電圧値a2よりも小さくなる。
【0033】
図1に戻り、A/D変換器15は、直流信号SD13及び直流信号SD14をデジタル信号に変換する。これにより、直流信号SD13及び直流信号SD14の電圧値a1,a2がそれぞれデジタルデータD13,D14として、演算回路16へ出力される。
【0034】
演算回路16は、A/D変換器15から出力されるデジタルデータD13,D14に基づいて、電気信号S12の周波数を算出する。図8は、直流信号SD13,SD14の電圧レベルと周波数との関係を示す図である。図8中の直線L3は、直流信号SD13の電圧値a1と電気信号S12の周波数との関係を示している。また、直線L4は、直流信号SD14の電圧値a2と電気信号S12の周波数との関係を示している。この直線L3,L4によって示される特性は、ハイパスフィルタ13a、ローパスフィルタ14aの特性によって規定され、相互に相似した特性となる。
【0035】
図8に示されるように、直流信号SD13,SD14の電圧レベルと周波数との関係が、横軸に平行な直線に対称となる直線L3,L4で示される場合は、電圧信号S12の周波数Fと、基準周波数Fと、直流信号SD13,SD14の電圧値a1,a2との関係は次式(1)で示される。なお、kは、直線L3,L4の傾きによって規定される定数である。
【0036】
【数2】

【0037】
演算回路16は、受信したデジタルデータD13,D14から、直流信号SD13,SD14の電圧値a1,a2を特定する。そして、この特定した電圧値a1,a2と、既知の基準周波数Fとを用いて、上記式(1)に示される演算を実行することにより、電気信号S12の周波数Fを算出する。
【0038】
なお、ここでは、図7に示されるように、直流信号SD13の電圧値a1が、直流信号SD14の電圧値a2よりも大きい場合について説明したが、上記式(1)は、直流信号SD13の電圧値a1が、直流信号SD14の電圧値a2よりも小さい場合についても成立する。したがって、演算回路16は、直流信号SD13及び直流信号SD14の電圧値a1,a2がわかれば、それぞれの電圧値の大小に関係なく、電気信号S12の周波数Fを算出することができる。
【0039】
演算回路16は、電気信号S12の周波数Fを算出すると、この周波数Fに関する情報を、速度算出回路17へ出力する。
【0040】
速度演算回路17は、演算回路16によって算出された周波数Fに基づいて、移動体の移動速度vを算出する。移動体の移動速度vは、周波数F(≒f)と、ドップラーモジュール11から移動体に向かって射出されるマイクロ波の波長λとを用いて、次式(2)で示すことができる。
【0041】
v=F・λ/2 …(2)
【0042】
そこで、速度演算回路17は、演算回路16が算出した周波数Fと、マイクロ波の波長λを上記式(2)へ代入することにより、移動体の移動速度vを算出する。例えば、マイクロ波の波長λが0.012414mであり、ドップラー偏移周波数として検出された周波数Fが161.1Hzである場合には、移動体の移動速度vは1m/S(=161.1×0.012414/2)となる。速度演算回路17は、移動体の移動速度vを算出すると、算出した移動速度vに関する情報を、表示ユニット18へ出力する。
【0043】
表示ユニット18は、例えば液晶ディスプレイを有している。そして、速度算出回路17から移動体の移動速度vに関する情報を受信すると、この移動速度vに関する情報を表示する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る速度計測装置10では、計測対象としての移動体によって反射された反射波が、ドップラーモジュール11によって受信される。そして、ドップラーモジュールから出力されたマイクロ波と、受信した反射波とに基づいて、周波数がドップラー偏移周波数fと一致する電気信号が生成される。次に、この電気信号が増幅されることにより生成された電気信号S12が、第1出力回路13によって、当該第1出力回路13を構成するハイパスフィルタ13aの減衰特性に応じた電圧レベルの直流信号SD13に変換される。同時に、第2出力回路14によって、当該第2出力回路14を構成するローパスフィルタ14aの減衰特性に応じた電圧レベルの直流信号SD14に変換される。そして、直流信号SD13の電圧値a1と直流信号SD14の電圧値a2とを用いて、上記式(1)に示される演算が実行されることにより、電気信号(ドップラー信号)の周波数Fが算出される。
【0045】
このため、本実施形態に係る速度計測装置10では、FFT処理に代表される演算量が比較的多い演算処理を行うことなく、電気信号の周波数を短時間に計測することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る速度計測装置10では、短時間に計測された周波数に基づいて、移動体の移動速度が計測される。このため、短時間に、移動体の移動速度を計測することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る速度計測装置10では、周波数の算出に複雑な処理を行う必要がないので、装置の構造を簡素化することができる。これにより、装置の製造コスト及びランニングコストを低減することができる。また、装置の構造が簡素化することにより、装置でのエネルギー消費量が少なくなくなる。このため、バッテリーなどの電源を用いて、長時間にわたる計測を行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、信号増幅器12、第1出力回路13、第2出力回路14、A/D変換器15、及び演算回路16によって、周波数計測装置が構成されている。本実施形態では、この周波数計測装置が、一例として移動体の移動速度の検出に用いられる場合について説明した。本実施形態に係る周波数計測装置の用途はこれに限定されるものではなく、例えば、ビルやプラント等の構造体や地盤から発生する振動に基づいて生成された電気信号の周波数を計測することもできる。この場合には、用途に応じて、第1出力回路13を構成するハイパスフィルタ13a、及び第2出力回路14を構成するローパスフィルタ14aの周波数特性を、計測対象の周波数特性に応じて選定するのが好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、第1出力回路13を構成するハイパスフィルタ13aの利得は、入力される電気信号の周波数が大きくなるにつれて一律に大きくなり、第2出力回路14を構成するローパスフィルタ14aの利得は、入力される電気信号の周波数が大きくなるにつれて一律に小さくなる。これに限らず、各フィルタの利得(減衰率)は必ずしも一律に変化していなくともよく、必ずしも変化割合が、ハイパスフィルタ13aとローパスフィルタ14a間で等しくなくともよい。
【0050】
また、本実施形態では、図2に示されるように、電気信号の周波数が単一周波数(正弦波)であるものとして説明を行った。これに限らず、電気信号は、単一周波数である必要はない。この場合には、直流信号SD13の電圧値と直流信号SD14の電圧値とを用いて、上記式(1)に示される演算を実行することで、帯域を持った信号の中心周波数を簡単に算出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、移動体が、速度計測装置10から射出されるマイクロ波の進行方向と同軸方向へ移動している場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、移動体が、速度計測装置10から射出されるマイクロ波の進行方向と、θの角度をなす方向に移動している場合には、ドップラー偏移周波数fは次式(3)で示される。また、移動体の移動速度vは、次式(4)で示される。この場合、速度算出回路17は、次式(4)を用いて、移動速度vを算出することができる。
【0052】
=2・v/λ・COSθ …(3)
v=F・λ/(2・COSθ) …(4)
【0053】
例えば、移動体の移動速度vが1m/sであり、マイクロ波の波長λが0.012414であり、θが45度である場合には、上記式(3)より、ドップラー偏移周波数fは、113.92Hzとなる。また、電気信号の周波数F(≒f)が、113.92Hzである場合には、上記式(4)により、移動体の移動速度vは、1m/sとなる。
【0054】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る速度計測装置10Aについて説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0055】
図9は、本実施形態に係る速度計測装置10Aのブロック図である、速度計測装置10Aは第1出力回路21、第2出力回路22、第3出力回路23、及び第4出力回路24の4つの出力回路を有している点で、第1の実施形態に係る速度計測装置10と異なっている。
【0056】
図10は、第1出力回路21、第2出力回路22、第3出力回路23、及び第4出力回路24それぞれを構成するフィルタの減衰特性を示す図である。図10の実線で示される山形の折れ線S1は、第1出力回路21を構成するフィルタ(以下、第1フィルタという)の減衰特性を示している。この第1フィルタは、中心周波数Fを基準に、利得が一律に減少する減衰特性を有している。また、一点鎖線で示される山形の折れ線S2は、第2出力回路22を構成するフィルタ(以下、第2フィルタという)の減衰特性を示している。この第2フィルタは、中心周波数Fを基準に、利得が一律に減少する減衰特性を有している。また、二点鎖線で示される山形の折れ線S3は、第3出力回路23を構成するフィルタ(以下、第3フィルタという)の減衰特性を示している。この第3フィルタは、中心周波数Fを基準に、利得が一律に減少する減衰特性を有している。また、破線で示される山形の折れ線S4は、第4出力回路24を構成するフィルタ(以下、第4フィルタという)の減衰特性を示している。この第4フィルタは、中心周波数Fを基準に、利得が一律に減少する減衰特性を有している。
【0057】
図10を参照するとわかるように、第1フィルタの利得(減衰率)と、第2フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。また、第1フィルタの利得(減衰率)と、第3フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。また、第1フィルタの利得(減衰率)と、第4フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。また、第2フィルタの利得(減衰率)と、第3フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。また、第2フィルタの利得(減衰率)と、第4フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。また、第3フィルタの利得(減衰率)と、第4フィルタの利得(減衰率)は、周波数Fの入力信号に対して等しい。
【0058】
図11は、第1出力回路21、第2出力回路22、第3出力回路23、及び第4出力回路24の出力特性を示す図である。第1の実施形態において述べたように、第1出力回路21、第2出力回路22、第3出力回路23、及び第4出力回路24の出力特性は、各出力回路を構成するフィルタの特性によって規定される。このため、各出力回路の出力特性は、折れ線S1〜S4と相似な折れ線S5〜S8によって示される。
【0059】
本実施形態に係る演算回路16は、周波数の計測対象となる電気信号S12の周波数が、第1範囲A1に含まれるか、第2範囲A2に含まれるか、第3範囲A3に含まれるかを判断する。この判断は、例えば移動体の速度や、計測に用いるマイクロ波の周波数に基づいて行う。
【0060】
なお、第1範囲A1は、第1フィルタの中心周波数Fから、第2フィルタの中心周波数Fまでの範囲である。また、第2範囲A2は、第2フィルタの中心周波数Fから、第3フィルタの中心周波数Fまでの範囲である。また、第3範囲A3は、第3フィルタの中心周波数Fから、第4フィルタの中心周波数Fまでの範囲である。
【0061】
演算回路16は、電気信号S12の周波数が、第1範囲A1に属すると判断した場合には、第1出力回路21及び第2出力回路22からの直流信号の電圧値を用いて、上記式(1)に示される演算を行うことで、電気信号S12の周波数Fを算出する。また、演算回路16は、電気信号S12の周波数が、第2範囲A2に属すると判断した場合には、第2出力回路22及び第3出力回路23からの直流信号の電圧値を用いて、上記式(1)に示される演算を行うことで、電気信号S12の周波数Fを算出する。また、演算回路16は、電気信号S12の周波数が、第3範囲A3に属すると判断した場合には、第3出力回路23及び第4出力回路24からの直流信号の電圧値を用いて、上記式(1)に示される演算を行うことで、電気信号S12の周波数Fを算出する。
【0062】
例えば図11に示されるように、電気信号S12の周波数が、第2範囲A2に属すると推測できるような場合には、第2出力回路22からの直流信号の電圧値b2と、第3出力回路23からの直流信号の電圧値b1とに基づいて、電気信号S12の周波数Fが算出される。また、電気信号S12の周波数が、第3範囲A3に属すると推測できるような場合には、第3出力回路23からの直流信号の電圧値c2と、第4出力回路24からの直流信号の電圧値c1とに基づいて、電気信号S12の周波数Fが算出される。
【0063】
図9に戻り、速度算出回路17は、周波数Fについて、上記式(2)に示される演算を実行することで、移動体の移動速度vを算出する。そして、表示ユニット18は、移動体の移動速度vに関する情報を表示する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態では、電気信号S12の周波数に応じて、周波数の算出に用いられる直流信号が選択され、選択された直流信号の電圧値に基づいて、電気信号S12の周波数が算出される。山形の折れ線で示される減衰特性を有するフィルタは、一般に、中心周波数近傍でのSN比が高い。本実施形態では、電気信号12の周波数に近い中心周波数をもつフィルタを通過した交流信号から直流信号が生成される。そして、この直流信号の電圧値に基づいて、電気信号S12の周波数が算出される。したがって、電気信号を算出する際に生じる誤差が低減され、正確な周波数を算出することができる。また、出力特性が異なる複数の出力回路を用いることで、広い周波数レンジでの計測が可能となる。
【0065】
なお、本実施形態に係る速度計測装置10Aは、4つの出力回路21〜24を有している。これに限らず、5つ以上の出力回路を有していてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば上記実施形態では、信号増幅器、出力回路、A/D変換器、及び演算回路から構成される周波数計測装置が、速度計測装置に用いられる場合について説明した。これに限らず、本発明の周波数計測装置を、入力される電気信号の周波数を計測するための周波数解析装置等に用いてもよい。
【0067】
また、上記実施形態における電気信号の周波数帯域、及び各フィルタの周波数帯域は一例であり、上記周波数帯域以外の周波数帯域を有するフィルタを組み合わせて用いても、同様の効果を得ることができる。
【0068】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の周波数計測装置及び周波数計測方法は、波動の中心周波数の計測に適している。また、本発明の速度計測装置及び速度計測方法は、移動体の速度の計測に適している。
【符号の説明】
【0070】
10,10A 速度計測装置
11 ドップラーモジュール
12 信号増幅器
13 第1出力回路
13a ハイパスフィルタ
13b 全波整流器
13c 平滑フィルタ
14 第2出力回路
14a ローパスフィルタ
14b 全波整流器
14c 平滑フィルタ
15 A/D変換器
16 演算回路
17 速度算出回路
18 表示ユニット
21 第1出力回路
22 第2出力回路
23 第3出力回路
24 第4出力回路
A1 第1範囲
A2 第2範囲
A3 第3範囲
D13 デジタルデータ
D14 デジタルデータ
L1,L2 直線
S1〜S8 折れ線
S12 電気信号
S13,S14 出力信号
SD13,SD14 直流信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動を電気信号に変換する変換手段と、
前記電気信号の周波数の増加に比例して値が増加する第1信号を出力する第1出力手段と、
前記電気信号の周波数の増加に比例して値が減少する第2信号を出力する第2出力手段と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記波動の周波数を算出する演算手段と、
を有する周波数計測装置。
【請求項2】
前記周波数に対する前記第1信号の値の増加割合と、前記周波数に対する前記第2信号の値の減少割合とが等しい請求項1に記載の周波数計測装置。
【請求項3】
前記第1出力手段は、前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、前記電気信号を減衰させる第1フィルタを有し、
前記第2出力手段は、前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、前記電気信号を減衰させる第2フィルタを有する請求項1又は2に記載の周波数計測装置。
【請求項4】
前記第1出力手段は、
前記第1フィルタを通過した前記電気信号を全波整流する第1整流回路と、
前記第1整流回路からの出力を平滑化して、前記電気信号のレベルを示す前記第1信号を生成する第1平滑回路とを有し、
前記第2出力手段は、
前記第2フィルタを通過した前記電気信号を全波整流する第2整流回路と、
前記第2整流回路からの出力を平滑化して、前記電気信号のレベルを示す前記第2信号を生成する第2平滑回路とを有する請求項3に記載の周波数計測装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記第1信号の値をP1、前記第2信号の値をP2、前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数をF、定数をkとしたときに、前記電気信号の周波数Fを次式を用いて算出する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の周波数計測装置。
【数1】

【請求項6】
移動体から反射した波動に基づく電気信号の周波数を計測する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の周波数計測装置と、
前記周波数計測装置によって計測された周波数を用いた演算を行って、前記移動体の速度を算出する速度算出手段と、
を備える速度計測装置。
【請求項7】
波動を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第1フィルタからの出力信号のレベルを示す第1信号を生成する工程と、
前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第2フィルタからの出力信号のレベルを示す第2信号を生成する工程と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記電気信号の周波数を算出する工程と、
を含む周波数計測方法。
【請求項8】
移動体から反射した波動を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号の周波数の減少に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第1フィルタからの出力信号のレベルを示す第1信号を生成する工程と、
前記電気信号の周波数の増加に比例する減衰率で、通過する前記電気信号を減衰させる第2フィルタからの出力信号のレベルを示す第2信号を生成する工程と、
前記第1信号の値と前記第2信号の値とが一致するときの前記電気信号の周波数と、前記第1信号の値と前記第2信号の値との比とに基づいて、前記電気信号の周波数を算出する工程と、
算出した前記電気信号の周波数を用いた演算を行って、前記移動体の速度を検出する工程と、
を含む速度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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