説明

周波数誤差検出装置及びプログラム

【課題】ブースト比が異なるパイロット信号が混在するOFDM信号であっても、その周波数誤差を正しく検出する。
【解決手段】広帯域AFC部15の相関演算部16は、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)、SP配置情報SP(i,k)、AC,TMCC及びCPブースト比rP並びにSPブースト比rSPを用いて、パイロット信号の電力値を等しくするための全パイロット重み情報Pall(i,k)を求め、所定範囲内でスライドキャリア数αを設定し、サブキャリア毎の電力値と全パイロット重み情報Pall(i,k)とを乗算して積算電力値S(i,α)を算出する。最大位置検出部153は、スライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号i毎の積算電力値S(i,α)の中で最大値を判定し、最大となる積算電力値S(i,α)におけるスライドキャリア数αを検出し、広帯域の周波数誤差として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を用いた映像、音声またはデータを受信し、受信したOFDM信号の周波数誤差を検出する装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
OFDMは無線伝送に用いられる変調方式の1つであり、地上デジタル放送、無線LAN等の様々な伝送システムで採用されている。OFDMは、直交する複数のサブキャリアを用いた変調方式であり、これらのサブキャリアの情報を並列伝送する。このようなOFDM伝送方式を用いたシステムでは、送信側と受信側との間に信号の周波数ずれが存在すると、各サブキャリアの直交性が崩れて復調信号が劣化する。
【0003】
OFDM伝送方式を用いた地上デジタル放送システムの場合、数百から数千本のサブキャリアを用いることから、キャリア間隔は非常に狭くなり、復調信号に対する周波数誤差の影響が大きくなる。このため、受信側では、受信したOFDM信号の周波数誤差を検出し、その周波数誤差を補正する処理(自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control))を行った後に、OFDM信号を復調する。
【0004】
一般に、受信したOFDM信号に対するAFCには、狭帯域AFCと広帯域AFCとがある。狭帯域AFCは、例えばサブキャリア間隔の±1/2以内の周波数誤差(狭帯域の周波数誤差)を補正する制御をいい(例えば、非特許文献1を参照)、広帯域AFCは、例えばサブキャリア間隔の±1/2を超える周波数誤差(広帯域の周波数誤差)を補正する制御をいう。
【0005】
以下、従来の広帯域AFCについて説明する。ここで、受信するOFDM信号を、日本の地上デジタル放送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)に採用されている信号として説明する。ISDB−Tでは、AC,TMCC,CP及びSPである4種類のパイロット信号が規定されている。それぞれのパイロット信号の電力値は、データシンボルの平均電力値に対して16/9倍にブーストされる。
【0006】
図4は、ISDB−TのSP配置を示す図である。図4において、横軸は周波数(サブキャリア番号)を示し、縦軸は時間(シンボル番号)を示し、縦軸の#0〜#3はSPのシーケンス番号を示す。SPは、キャリア方向に12キャリア毎、シンボル方向に4シンボル毎に分散され、4シンボルで1周期の配置となっている。シーケンス番号#0〜#3は、SP配置がこの4シンボルのうちどのシンボルの配置パターンに該当するかを示す番号である。それ以外のAC,TMCC及びCPは、予め設定されたサブキャリア番号に配置されている。
【0007】
図5は、ISDB−Tのモード3における同期変調時のAC及びTMCCのパイロット配置を示す図である。AC(AC1_1,・・・,AC1_8)及びTMCC(TMCC1,・・・,TMCC4)が配置されるサブキャリア番号が、OFDMセグメントフレームのセグメント番号0〜12に対して示されている。例えば、セグメント番号11のOFDMセグメントフレームにおいて、AC1_1のパイロット信号は、サブキャリア番号10に配置され、TMCC1のパイロット信号は、サブキャリア番号70に配置される。このように、ISDB−Tのモード3においては、AC及びTMCCは、1シンボルのサブキャリア番号0〜431内で、所定の番号に配置される。
【0008】
図6は、従来の広帯域AFC部(周波数誤差検出装置)の構成を示すブロック図である。この従来の広帯域AFC部150は、電力算出部151、相関演算部(積算電力値算出部)152及び最大位置検出部(最大値判定部)153を備えている。広帯域AFC部150は、OFDM信号が直交復調及び高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)された周波数領域の信号であるサブキャリア毎のFFT出力信号を入力し、サブキャリア毎の電力値を算出し、所定のパイロット配置情報に対応するサブキャリアの積算電力値を、サブキャリア番号をスライドさせる所定範囲内でそれぞれ算出し、所定範囲におけるそれぞれの積算電力値のうちの最大となる積算電力値を判定し、最大となる積算電力値におけるサブキャリア番号のスライド数を検出する。このように、広帯域AFC部150は、サブキャリア間隔以上の周波数誤差を補正するための周波数誤差を検出し、広帯域の周波数情報として出力する。
【0009】
電力算出部151は、周波数領域の信号であるサブキャリア毎のFFT出力信号を入力し、各サブキャリアの振幅値を2乗して電力値を算出し、サブキャリア毎の電力値を相関演算部152に出力する。
【0010】
相関演算部152は、電力算出部151からサブキャリア毎の電力値を入力すると共に、AC,TMCC及びCP配置情報(周波数軸上のサブキャリア番号が反映されたAC,TMCC及びCPの配置情報)をメモリ(図示せず)から読み出し、読み出したAC,TMCC及びCP配置情報に対応するサブキャリアの電力値を1シンボル(全サブキャリア)において積算し、その積算電力値を最大位置検出部153に出力する。また、相関演算部152は、メモリから読み出したAC,TMCC及びCP配置情報が示すサブキャリア番号を1キャリア分スライドさせ、1キャリア分スライドさせたときのサブキャリアの電力値を1シンボルにおいて積算し、その積算電力値を最大位置検出部153に出力する。さらに、相関演算部152は、メモリから読み出したAC,TMCC及びCP配置情報が示すサブキャリア番号を所定数分スライドさせたときの積算電力値を算出する。このように、相関演算部152は、読み出したAC,TMCC及びCP配置情報が示すサブキャリア番号における積算電力値、及び1キャリア毎にスライドさせたときのそれぞれの積算電力値を、所定範囲におけるそれぞれの積算電力値として最大位置検出部153に出力する。
【0011】
ここで、AC,TMCC及びCPは、周波数誤差検出のために使用するパイロット信号であり、前述のとおり、所定のサブキャリア番号に固定配置されている。メモリには、周波数軸上のサブキャリア番号を特定可能なAC,TMCC及びCP配置情報が予め格納されているものとする。
【0012】
最大位置検出部153は、相関演算部152から所定範囲におけるそれぞれの積算電力値を入力し、所定範囲におけるこれらの積算電力値のうち、最大となる積算電力値を判定し、最大となる積算電力値におけるサブキャリア番号のスライドキャリア数を検出し、これを周波数誤差として外部へ出力する。
【0013】
図7は、周波数誤差検出処理を説明する第1のイメージ図であり、図6に示した相関演算部152が、メモリから読み出したAC,TMCC及びCP配置情報が示すサブキャリア番号の積算電力値を求める処理を示している。図8は、周波数誤差検出処理を説明する第2のイメージ図であり、図6に示した相関演算部152が、メモリから読み出したAC,TMCC及びCP配置情報が示すサブキャリア番号を1キャリア分スライドさせたときの積算電力値を求める処理を示している。
【0014】
図7及び図8の上段において、横軸はサブキャリア番号の周波数軸を示し、縦軸はサブキャリア毎の電力値を示している。電力値1付近の矢印は、データキャリアの電力値を表しており、電力16/9付近の矢印は、ブーストされたパイロット信号の電力値を表しており、データキャリアの電力値よりもパイロット信号の電力値の方が大きい。図7及び図8の中段のAC,TMCC及びCP配置情報は一例を示しており、周波数誤差検出に使用するサブキャリアの位置(サブキャリア番号)、すなわち周波数誤差検出に使用するパイロット信号の位置には1を、周波数誤差検出に使用しないサブキャリアの位置(サブキャリア番号)には0をそれぞれ配置し、1シンボルにおける各サブキャリア番号において1または0にて構成される数列情報である。図8に示すAC,TMCC及びCP配置情報は、図7に示すAC,TMCC及びCP配置情報(メモリから読み出したサブキャリア番号)に比べて1キャリア分ずれていることがわかる。この場合、図7では、AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応する上段のサブキャリア番号は9,27であり、これらのサブキャリア番号9,27の電力値はデータキャリアの電力値である。これに対し、図8では、AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応する上段のサブキャリア番号は10,28であり、これらのサブキャリア番号10,28の電力値はACの電力値である。
【0015】
図7及び図8の下段において、横軸はサブキャリア番号の周波数軸を示し、縦軸は、配置情報が1に対応するサブキャリアの電力値を示している。このように、図6に示した相関演算部152は、図7及び図8の下段に示した信号帯域幅内に残されたサブキャリアの電力値(AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応するサブキャリアの電力値)を積算することにより、積算電力値を求めることができる。つまり、相関演算部152は、所定範囲内でサブキャリア番号をスライドさせ、そのときの積算電力値をそれぞれ求めることができる。
【0016】
図7及び図8の下段に示したサブキャリアの電力値から、積算電力値は、図7よりも図8の方が大きいことがわかる。これは、図8では、AC,TMCC及びCP配置情報が示すパイロット信号の配置と実際のパイロット信号の配置とが一致しており、図8の下段に示したサブキャリアの電力値が、データキャリアよりも大きいパイロット信号の電力値だからである。このようにして、所定範囲内で1キャリア毎にスライドさせて求めた積算電力値のうち、最大となる積算電力値におけるスライドキャリア数がわかれば、周波数誤差を検出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】関隆史、他2名、「OFDMにおけるガード期間を利用した新しい周波数同期方式の検討」、テレビジョン学会技術報告、1995年8月24日、ITE Technical Report Vol.19,No.38,pp.13〜18,BCS’95-42,BFO’95-49,ROFT’95-49(Aug.1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図6に示した広帯域AFC部150の最大位置検出部153は、ブースト比(パイロット信号の電力比)が全てのパイロット信号にて同一である場合に、特定のパイロット信号の電力値がデータキャリアの平均電力値よりも大きいことを利用して、周波数誤差を検出するものである。しかしながら、この最大位置検出部153では、ブースト比がパイロット信号間で異なる場合に、周波数誤差を正しく検出することができない。
【0019】
図9は、パイロット信号のブースト比が異なるOFDM信号の周波数誤差検出処理を説明するイメージ図であり、ISDB−T波のSPの電力値が従来の2倍である場合を想定したものである。図9の上段は、図7及び図8の上段と同様に、横軸がサブキャリア番号の周波数軸を示し、縦軸はサブキャリア毎の電力値を示している。電力値1付近の矢印はデータキャリアの電力値を、電力16/9付近の矢印はブーストされたACの電力値を、電力32/9付近の矢印はブーストされたSPの電力値をそれぞれ表しており、データキャリアよりもACの電力値の方が大きく、ACよりもSPの電力値の方が大きい。図9の中段のAC,TMCC及びCP配置情報は、図7及び図8の中段と同様に、その一例を示している。AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応する上段のサブキャリア番号は12等であり、サブキャリア番号12の電力値はSPの電力値である。
【0020】
相関演算部152により算出される積算電力値は、AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応するサブキャリアがSPの場合(図9を参照)、AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応するサブキャリアがSP以外の場合よりも大きくなる。つまり、周波数誤差検出のために用いるAC,TMCC及びCP配置情報に基づいて算出される積算電力値は、電力値の大きいSPが大きく影響する。
【0021】
このように、図6に示した従来の広帯域AFC部150では、ブースト比がパイロット信号間で異なる場合に、電力値が最も大きいパイロット信号(図9の場合はSP)が積算電力値に大きく影響することから、周波数誤差を正しく検出することができないという問題があった。具体的には、積算電力値を算出する際に基準とならないパイロット信号またはデータキャリアの電力値が、基準となるパイロット信号の電力値よりも大きい場合には(例えば、図9に示すように、基準とならないSPの電力値が、基準となるACの電力値よりも大きい場合には)、AC,TMCC及びCP配置情報が1に対応するサブキャリアに電力値が最も大きいパイロット信号(基準ではないパイロット信号)を含むときに、積算電力値が大きい値になってしまい、最大となる積算電力値を判定しても、周波数誤差を正しく検出することができない。
【0022】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ブースト比が異なるパイロット信号が混在するOFDM信号であっても、その周波数誤差を正しく検出することが可能な周波数誤差検出装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するために、本発明による周波数誤差検出装置は、複数種類のパイロット信号が混在するOFDM信号の周波数誤差を検出する装置において、前記OFDM信号をFFTして得られたサブキャリア毎の信号から、サブキャリア毎の電力値を算出する電力算出部と、パイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示すパイロット配置情報、及び前記パイロット信号のブースト比を示すパイロットブースト比に基づいて、前記パイロット配置情報が示すパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出する積算電力値算出部と、前記パイロット配置情報が示すパイロット信号の位置を所定範囲内でサブキャリア数分スライドさせて算出された前記積算電力値のうち、最大となる積算電力値を判定し、前記最大となる積算電力値においてスライドさせたキャリア数に基づいて、前記OFDM信号の周波数誤差を検出する最大値判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明による周波数誤差検出装置は、前記積算電力値算出部が、前記積算電力値を算出するための対象となる所定種類のパイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示す第1のパイロット配置情報、前記OFDM信号に混在する複数種類のパイロット信号のうち前記所定種類以外のパイロット信号の位置を示す第2のパイロット配置情報、及び、前記パイロット信号におけるそれぞれのブースト比を示すパイロットブースト比を用いて、前記第1のパイロット配置情報及び前記第2のパイロット配置情報が示すそれぞれのパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出する、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明による周波数誤差検出装置は、前記積算電力値算出部が、前記積算電力値を算出するための対象となる所定種類の第1のパイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示す第1のパイロット配置情報、前記OFDM信号に混在する複数種類のパイロット信号のうち前記所定種類以外の第2のパイロット信号が所定数のシンボルで1周期の配置となる場合に、前記所定数のシンボルのそれぞれに対応するシーケンス番号における前記第2のパイロット信号の位置を示す第2のパイロット配置情報、及び、前記パイロット信号におけるそれぞれのブースト比を示すパイロットブースト比を用いて、前記第1のパイロット配置情報及び前記第2のパイロット配置情報が示すそれぞれのパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出し、前記最大値判定部が、前記第1のパイロット配置情報が示すパイロット信号の位置を所定範囲内でサブキャリア数分スライドさせ、前記第2のパイロット配置情報が示すシーケンス番号毎に算出された前記積算電力値のうち、最大となる積算電力値を判定し、前記最大となる積算電力値においてスライドさせたキャリア数に基づいて、前記OFDM信号の周波数誤差を検出し、前記最大となる積算電力値における前記シーケンス番号を検出する、ことを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明による周波数誤差検出プログラムは、コンピュータを、前記周波数誤差検出装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、ブースト比が異なるパイロット信号が混在するOFDM信号であっても、その周波数誤差を正しく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による広帯域AFC部(周波数誤差検出装置)を含むOFDM信号受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】広帯域AFC部の構成を示すブロック図である。
【図3】広帯域AFC部の処理を示すフローチャートである。
【図4】ISDB−TのSP配置を示す図である。
【図5】ISDB−Tのモード3における同期変調時のAC及びTMCCのパイロット配置を示す図である。
【図6】従来の広帯域AFC部の構成を示すブロック図である。
【図7】周波数誤差検出処理を説明する第1のイメージ図である。
【図8】周波数誤差検出処理を説明する第2のイメージ図である。
【図9】パイロット信号のブースト比が異なるOFDM信号の周波数誤差検出処理を説明するイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明は、パイロット信号の配置及びブースト比の情報に基づいて、異なるブースト比のパイロット信号の電力値を等しくし、この等しくした電力値を用いて積算電力値を算出し、OFDM信号の周波数誤差を検出することを特徴とする。これにより、ブースト比がパイロット信号間で異なる場合であっても、パイロット信号の電力値を等しくして積算電力値を算出するから、電力値が最も大きいパイロット信号が積算電力値に大きく影響することがなく、正しい周波数誤差を検出することができる。
【0030】
〔OFDM信号受信装置〕
まず、本発明の実施形態による広帯域AFC(周波数誤差検出装置)を含むOFDM信号受信装置について説明する。図1は、OFDM信号受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM信号受信装置1は、直交復調部10、複素乗算部11、FFT部12、復調部13、狭帯域AFC部14及び広帯域AFC部15を備えている。
【0031】
OFDM信号受信装置1がOFDM信号送信装置(図示せず)により送信されたOFDM信号を受信すると、直交復調部10は、受信したOFDM信号を入力し、OFDM信号を直交復調し、等価ベースバンド信号を生成して複素乗算部11に出力する。
【0032】
複素乗算部11は、直交復調部10から等価ベースバンド信号を入力すると共に、狭帯域AFC部14から狭帯域の周波数誤差情報を、広帯域AFC部15から広帯域の周波数誤差情報をそれぞれ入力する。そして、複素乗算部11は、狭帯域の周波数誤差情報及び広帯域の周波数誤差情報に基づいて、これらの周波数誤差を打ち消すように位相回転用係数を生成し、位相回転用係数を等価ベースバンド信号に複素乗算する。これにより、等価ベースバンド信号の周波数誤差を補正することができる。周波数誤差を補正した後の等価ベースバンド信号は分配され、FFT部12及び狭帯域AFC部14へそれぞれ入力される。
【0033】
狭帯域AFC部14は、複素乗算部11から等価ベースバンド信号を入力し、サブキャリア間隔の±1/2以内の周波数誤差を補正するための周波数誤差を検出し、狭帯域の周波数誤差情報として複素乗算部11に出力する。狭帯域の周波数誤差を検出するには、等価ベースバンド信号に付加されたガードインターバルの相関に基づく手法等が用いられる。詳細については、例えば前述の非特許文献1を参照されたい。
【0034】
FFT部12は、複素乗算部11から等価ベースバンド信号を入力し、有効シンボル期間の等価ベースバンド信号に対してFFTを施し、サブキャリア毎の信号を生成する。サブキャリア毎の信号である周波数領域の信号、すなわちサブキャリア毎のFFT出力信号は分配され、復調部13及び広帯域AFC部15へそれぞれ入力される。
【0035】
復調部13は、FFT部12からサブキャリア毎のFFT出力信号を入力し、デマッピング、デインターリーブ、デコード等の復調処理を行い、OFDM信号送信装置からの伝送情報を復元する。尚、デマッピング等の復調処理は既知であるから、説明を省略する。
【0036】
広帯域AFC部15は、FFT部12からサブキャリア毎のFFT出力信号を入力し、
サブキャリア毎の電力値を算出し、AC,TMCC及びCP配置情報、SP配置情報、AC,TMCC及びCPブースト比、並びにSPブースト比に基づいて、異なるブースト比のパイロット信号の電力値を等しくし、この等しくした電力値を用いて、サブキャリア番号をスライドさせる所定範囲内で積算電力値をそれぞれ算出する。そして、広帯域AFC部15は、所定範囲におけるそれぞれの積算電力値のうちの最大となる積算電力値を判定し、最大となる積算電力値におけるサブキャリア番号のスライドキャリア数を検出する。このように、広帯域AFC部15は、検出したスライドキャリア数を、サブキャリア間隔以上の周波数誤差を補正するための広帯域の周波数情報として複素乗算部11に出力する。
【0037】
〔広帯域AFC部(周波数誤差検出装置)〕
次に、図1に示した広帯域AFC部15について説明する。図2は、広帯域AFC部15の構成を示すブロック図である。この広帯域AFC部15は、電力算出部151、相関演算部(積算電力値算出部)16及び最大位置検出部(最大値判定部)153を備えている。広帯域AFC部15は、ブースト比がパイロット信号間で同一である場合に加え、パイロット信号間で異なる場合であっても、周波数誤差を正しく検出する。具体的には、積算電力値を計算する際に基準となるパイロット信号の電力値よりも、それ以外のパイロット信号またはデータキャリアの電力値の方が大きい場合であっても、OFDM信号の周波数誤差を正しく検出することができる。
【0038】
図6に示した従来の広帯域AFC部150と図2に示す広帯域AFC部15とを比較すると、両広帯域AFC部150,15共に、電力算出部151及び最大位置検出部153を備えている点で同一である。これに対し、広帯域AFC部15は、広帯域AFC部150の相関演算部152とは異なる相関演算部16を備えている点で相違する。入力する情報を比較すると、広帯域AFC部150の相関演算部152は、積算電力値の算出対象の基準となるパイロット信号のサブキャリア番号が反映されたAC,TMCC及びCP配置情報を入力するのに対し、広帯域AFC部15の相関演算部16は、同じAC,TMCC及びCP配置情報に加え、積算電力値の算出対象の基準ではなく、かつ電力値がAC等に比べて大きいSPのサブキャリア番号が反映されたSP配置情報、AC,TMCC及びCPブースト比、並びにSPブースト比も入力する点で相違する。
【0039】
図3は、広帯域AFC部15の処理を示すフローチャートである。広帯域AFC部15の電力算出部151が入力するサブキャリア毎のFFT出力信号をF(k)(kはサブキャリア番号)とすると、電力算出部151は、サブキャリア毎のFFT出力信号F(k)を入力し(ステップS301)、FFT出力信号F(k)の振幅値を2乗してサブキャリア毎の電力値F(k)×F(k)を求め、相関演算部16に出力する(ステップS302)。ここで、*は複素共役を表している。
【0040】
相関演算部16は、電力算出部151からサブキャリア毎の電力値F(k)×F(k)を入力すると共に、メモリ(図示せず)から、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)、SP配置情報SP(i,k)(iはSPのシーケンス番号、kはサブキャリア番号)、AC,TMCC及びCPブースト比rP、並びにSPブースト比rSPを読み出す(ステップS303)。ここで、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)及びSP配置情報SP(i,k)は、1シンボルを構成する全サブキャリア番号において、そのパイロット信号が配置されているサブキャリア番号では1、それ以外のサブキャリア番号では0からなる数列とする。
【0041】
相関演算部16は、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)及びSP配置情報SP(i,k)が示すパイロット信号の電力値を等しくするための重みからなる全パイロット重み情報Pall(i,k)を、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)、SP配置情報SP(i,k)、AC,TMCC及びCPブースト比rP、並びにSPブースト比rSPを用いて、以下の式により求める(ステップS304)。
all(i,k)=P’(k)/rP+SP(i,k)/rSP
【0042】
ここで、全パイロット重み情報Pall(i,k)は、パイロット信号の電力値F(k)×F(k)を乗算することにより、パイロット信号の電力値を等しくすることが可能な重みからなる数列である。AC,TMCC及びCPの位置における重みは、Pall(i,k)=P’(k)/rP=1/rPとなり、SPの位置における重みは、Pall(i,k)=SP(i,k)/rSP=1/rSPとなる。図9の例では、ACのブースト比rP=16/9、SPブースト比rSP=32/9とすると、ACの位置における全パイロット重み情報Pall(i,k)=9/16となり、SPの位置における全パイロット重み情報Pall(i,k)=9/32となる。
【0043】
相関演算部16は、所定範囲内(探索スライドキャリア数内)でサブキャリア番号をスライドさせる数(スライドキャリア数)αを設定する(ステップS305)。最初の処理の場合は、スライドキャリア数α=0に設定し、サブキャリア番号をスライドさせない。そして、相関演算部16は、OFDM信号の総サブキャリア数をNとし、サブキャリア毎の電力値F(k+α)×F(k+α)と全パイロット重み情報Pall(i,k)とを乗算し、積算電力値(相関値)S(i,α)を以下の式により求め、最大位置検出部153に出力する(ステップS306)。
【数1】


例えば、所定範囲である探索スライドキャリア数の範囲を−50≦α≦50(αは整数)とすると、101×4=404通りの積算電力値S(i,α)が求められる。
【0044】
尚、前記数式(1)では、サブキャリア毎の電力値F(k)×F(k)のサブキャリア番号kをスライドさせるようにしたが、全パイロット重み情報Pall(i,k)のサブキャリア番号kをスライドさせるようにしてもよい。
【0045】
図9の例では、ACの電力値F(k+α)×F(k+α)と全パイロット重み情報Pall(i,k)との乗算結果は、(16/9)×(9/16)=1となり、SPの乗算結果は、(32/9)×(9/32)=1となる。ACよりもSPの電力値の方が大きいが、電力値F(k+α)×F(k+α)と全パイロット重み情報Pall(i,k)とを乗算することで、ACの場合とSPの場合とで電力値F(k+α)×F(k+α)×Pall(i,k)を等しくすることができ、等しくした電力値F(k+α)×F(k+α)×Pall(i,k)を用いて積算電力値S(i,α)を算出することができる。
【0046】
相関演算部16は、所定範囲内で全てのスライドキャリア数αを設定済みであるか否かを判定し(ステップS307)、全てのスライドキャリア数αを設定済みであると判定した場合(ステップS307:Y)、ステップS308へ移行し、全てのスライドキャリア数αを設定済みでないと判定した場合(ステップS307:N)、ステップS305へ移行し、所定範囲内で新たなスライドキャリア数αを設定する。
【0047】
最大位置検出部153は、ステップS307から移行して、相関演算部16から、スライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号i毎の積算電力値S(i,α)を入力し、これらの積算電力値の中で最大値を判定し、最大となる積算電力値S(i,α)におけるスライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号iを検出する(ステップS308)。そして、最大位置検出部153は、検出したスライドキャリア数αを広帯域の周波数誤差として外部へ出力すると共に、検出したSPのシーケンス番号iを当該シンボルにおけるSPの配置を示すシーケンス番号i(図4における#0〜#3のうちのいずれかのシーケンス番号)として外部へ出力する。尚、検出したスライドキャリア数αは、プラスの場合もあるし。マイナスの場合もある。
【0048】
以上のように、本発明の実施形態による広帯域AFC部15(周波数誤差検出装置)によれば、電力算出部151が、サブキャリア毎のFFT出力信号F(k)の振幅値からサブキャリア毎の電力値を求め、相関演算部16が、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)、SP配置情報SP(i,k)、AC,TMCC及びCPブースト比rP、並びにSPブースト比rSPを用いて、パイロット信号の電力値を等しくするための重みからなる全パイロット重み情報Pall(i,k)を求め、所定範囲内でスライドキャリア数αを設定し、サブキャリア毎の電力値F(k+α)×F(k+α)と全パイロット重み情報Pall(i,k)とを乗算することで積算電力値(相関値)S(i,α)を求めるようにした。そして、最大位置検出部153が、スライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号i毎の積算電力値S(i,α)の中で最大値を判定し、最大となる積算電力値S(i,α)におけるスライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号iを検出し、検出したスライドキャリア数αを広帯域の周波数誤差とし、検出したSPのシーケンス番号iを当該シンボルにおけるSPの配置を示すシーケンス番号iとして出力するようにした。これにより、ブースト比が異なるパイロット信号が混在するOFDM信号であっても、サブキャリア毎の電力値F(k+α)×F(k+α)と全パイロット重み情報Pall(i,k)とを乗算することで、積算電力値を算出するための電力値が、AC,TMCC及びCP配置情報P’(k)並びにSP配置情報SP(i,k)の示す全てのパイロット信号において等しくなる。したがって、積算電力値は、電力値が最も大きいパイロット信号に影響を受けることがなく、全てのパイロット信号の電力値が等しいものとして算出されるから、積算電力値が最大となるスライドキャリア数α及びSPのシーケンス番号iを正しく検出することができ、周波数誤差及び当該シンボルにおけるSPのシーケンス番号を正しく検出することが可能となる。
【0049】
尚、本発明の実施形態による広帯域AFC部15のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。広帯域AFC部15は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。広帯域AFC部15に備えた電力算出部151、相関演算部16及び最大位置検出部153の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0050】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。本発明は、図1に示したOFDM信号受信装置1に適用があるだけでなく、OFDM伝送方式を用いた映像、音声またはデータを受信し、OFDM信号を測定する測定装置、補償装置、OFDM信号を中継する中継装置等にも適用がある。要するに、本発明は、広帯域AFC部15である周波数誤差検出装置を含む装置にも適用がある。
【符号の説明】
【0051】
1 OFDM信号受信装置
10 直交復調部
11 複素乗算部
12 FFT部
13 復調部
14 狭帯域AFC部
15,150 広帯域AFC部(周波数誤差検出装置)
16,152 相関演算部(積算電力値算出部)
151 電力算出部
153 最大位置検出部(最大値判定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のパイロット信号が混在するOFDM信号の周波数誤差を検出する装置において、
前記OFDM信号をFFTして得られたサブキャリア毎の信号から、サブキャリア毎の電力値を算出する電力算出部と、
パイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示すパイロット配置情報、及び前記パイロット信号のブースト比を示すパイロットブースト比に基づいて、前記パイロット配置情報が示すパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出する積算電力値算出部と、
前記パイロット配置情報が示すパイロット信号の位置を所定範囲内でサブキャリア数分スライドさせて算出された前記積算電力値のうち、最大となる積算電力値を判定し、前記最大となる積算電力値においてスライドさせたキャリア数に基づいて、前記OFDM信号の周波数誤差を検出する最大値判定部と、
を備えたことを特徴とする周波数誤差検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数誤差検出装置において、
前記積算電力値算出部は、
前記積算電力値を算出するための対象となる所定種類のパイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示す第1のパイロット配置情報、前記OFDM信号に混在する複数種類のパイロット信号のうち前記所定種類以外のパイロット信号の位置を示す第2のパイロット配置情報、及び、前記パイロット信号におけるそれぞれのブースト比を示すパイロットブースト比を用いて、前記第1のパイロット配置情報及び前記第2のパイロット配置情報が示すそれぞれのパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出する、ことを特徴とする周波数誤差検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の周波数誤差検出装置において、
前記積算電力値算出部は、
前記積算電力値を算出するための対象となる所定種類の第1のパイロット信号がサブキャリアに配置された位置を示す第1のパイロット配置情報、前記OFDM信号に混在する複数種類のパイロット信号のうち前記所定種類以外の第2のパイロット信号が所定数のシンボルで1周期の配置となる場合に、前記所定数のシンボルのそれぞれに対応するシーケンス番号における前記第2のパイロット信号の位置を示す第2のパイロット配置情報、及び、前記パイロット信号におけるそれぞれのブースト比を示すパイロットブースト比を用いて、前記第1のパイロット配置情報及び前記第2のパイロット配置情報が示すそれぞれのパイロット信号の位置に対応するサブキャリアについて算出された前記電力値を、前記パイロット信号のパイロットブースト比で除算し、前記除算結果に基づいて積算電力値を算出し、
前記最大値判定部は、
前記第1のパイロット配置情報が示すパイロット信号の位置を所定範囲内でサブキャリア数分スライドさせ、前記第2のパイロット配置情報が示すシーケンス番号毎に算出された前記積算電力値のうち、最大となる積算電力値を判定し、前記最大となる積算電力値においてスライドさせたキャリア数に基づいて、前記OFDM信号の周波数誤差を検出し、前記最大となる積算電力値における前記シーケンス番号を検出する、ことを特徴とする周波数誤差検出装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の周波数誤差検出装置として機能させるための周波数誤差検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55621(P2013−55621A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194352(P2011−194352)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)