説明

周波数調整方法及び周波数調整装置

【課題】水晶振動子の共振周波数を簡単で正確に調整する。
【解決手段】周波数調整装置は、チャンバ内に配置された水晶振動子21上の電極にイオンビームを照射してエッチングするイオンガンと、水晶振動子21の電極に接触するプローブと、水晶振動子21と共に発振回路を構成する共振回路35と、プローブと共振回路35とを接続する同軸ケーブル34A,34Bと、共振回路35の出力信号に基づいて、水晶振動子21の共振周波数をモニタし、イオンガンを制御する制御部とを備える。同軸ケーブル34A,34Bの内導体は、プローブと共振回路の入力端又は出力端とを接続し、同軸ケーブル34の外導体には、所定の基準電圧が印加されている。同軸ケーブル34Aと34Bの特性、特に、長さは、帰還回路113の入出力信号の位相差が180°となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電素子の固有振動周波数を調整する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子の周波数調整を高精度でしかも高速に実施できる装置と方法が例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−322565号公報
【0003】
この種の周波数調整装置は、水晶振動子の共振周波数を正確に調整できるものの、装置が大きく部品点数が多いという問題がある。また、処理装置内は真空状態であり、装置内に不純物を含ませないためにも、測定装置をエッチング装置内に配置することは困難である。
【0004】
また、水晶振動子の共振周波数を正確に調整するため、水晶振動子の共振周波数を実際に測定しながら電極を処理することが考えられる。
【0005】
水晶振動子の共振周波数を測定するために、調整対象の水晶振動子を含む発振回路を構成し、実際に発振させて固有共振周波数を測定する方法がある。水晶振動子を用いた発振回路としては、コルピッツ回路が広く適用される。
【0006】
水晶振動子を含むコルピッツ発振回路の一例を図13に示す。
図13に示す発振回路311の、増幅器側の帰還回路312の増幅率をα、入出力間の位相差をθ1、水晶振動子Cxを含む帰還回路313の増幅率をβ、入出力間の位相差をθ2とすると、発振回路311の発振条件は次の2つの式(1)、(2)の通りになる。
ループゲインG=α×β≧1 ・・・(1)
位相差θ=θ1+θ2=360×n ・・・(2)
【0007】
通常、n=1とし、帰還回路312を構成する増幅器として位相差θ1=180°の反転増幅器を用い、帰還回路313に集中負荷容量C1、C2を用いてθ2=180°の反転を行う。
【0008】
しかし、図13の発振回路311は、安定して発振するためのループゲインGと位相差θの2つの条件(1)、(2)を共に満たすことが困難であるという問題がある。具体例を用いて説明する。図14(A),(B)は、水晶振動子Cxを、ATカット121MHz5次オーバートーンの水晶振動子としたときの、帰還回路313の共振周波数付近の伝送特性(SパラメータのS21)を示す。これらの伝送特性は、負荷容量C1(pF)とC2(pF)を同じ値とし、0pF、30pF、50pFとしたときの特性である。図14(B)に示すように、負荷容量値C1とC2が大きくなるにつれて出力信号の位相が回転し、入出力信号間の位相差が大きくなる。しかし、その一方で、図14(A)に示すように、利得が徐々に下がってしまう。このため、上記2つの発振条件(1)、(2)を安定的に満たして、図13の発振回路311を安定的に発振させることは容易ではない。このため、発振回路を動作させて固有発振周波数をモニタしつつ水晶振動子の固有発振周波数を調整することも困難である。
【0009】
また、従来の水晶発振回路は、必要とする共振周波数が高次オーバートーンの場合、基本波やスプリアス振動などが原因となって意図しない周波数で発振してしまう、異常発振が起きるケースがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題点を解決する為に成されたもので、振動子の共振周波数を簡単で正確に調整する事が出来る周波数調整方法と装置を提供する事を目的とする。
また、本発明は、発振回路を所望の発振周波数で安定的に発振可能とすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、この発明の周波数調整方法は、
電極を有する圧電素子をチャンバ内に配置し、
前記電極をエッチング又は付加蒸着し、
前記電極をエッチング又は付加蒸着中の前記圧電素子の基本共振周波数をモニタする、
圧電素子の周波数調整方法において、
該圧電素子の電極と増幅回路とを同軸ケーブル又はストリップラインで接続して発振回路を構成し、前記基本共振周波数をモニタする、
ことを特徴とする。
【0012】
例えば、前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さを変化させることにより、前記発振回路の位相角を調整する。
【0013】
例えば、前記増幅回路が反転増幅器から構成され、該増幅回路の出力信号が、その位相を反転して該増幅回路に入力されるように前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さが設定されている。
【0014】
また、前記同軸ケーブル又は前記ストリップラインが有する誘導成分と容量成分によるインピーダンスと、前記増幅回路の入力インピーダンスとをマッチングするマッチング回路をさらに備えてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、この発明の周波数調整装置は、
チャンバと、
前記チャンバ内で、処理対象の圧電素子を支持する支持手段と、
前記支持手段により前記チャンバ内に支持された圧電素子上に電極膜を形成し、又は、前記圧電素子に形成された電極膜をエッチングすることにより前記圧電素子の共振周波数を調整する周波数調整手段と、
前記支持手段で支持された圧電素子の電極膜に接触するプローブと、
前記チャンバの外に配置され、前記圧電素子と共に発振回路を構成する増幅回路と、
前記プローブと前記増幅回路とを接続し、前記発振回路の位相角を調整する同軸ケーブル又はストリップラインと、
前記増幅回路の出力信号に基づいて、前記圧電素子の共振周波数をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段がモニタした共振周波数に基づいて、前記周波数調整手段を制御して前記電極膜の厚さを制御することにより、前記圧電素子の共振周波数を調整する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さを変化させることにより、前記発振回路の位相角を調整する切り替え手段を更に配置してもよい。
【0017】
例えば、前記増幅回路が反転増幅器から構成され、該増幅回路の出力信号が、その位相を反転して該増幅回路に入力されるように前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さが設定されてもよい。
【0018】
例えば、前記同軸ケーブル又は前記ストリップラインのリアクタンスによるインピーダンスと、前記反転増幅器の入力インピーダンスとをマッチングするマッチング回路を配置してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で、周波数を適切に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る周波数調整装置及び周波数調整方法を説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の周波数調整装置10は、仕込室11、エッチング室(エッチング用チャンバ)12、取出室13の3室インライン構成となっている。
【0022】
仕込室11には、複数の水晶振動子21を搭載したキャリア22がセットされる。仕込室11を10−3Pa以下に排気後、仕切弁23を開き、キャリア22に搭載された水晶振動子21をエッチング室12に搬送する。
【0023】
被処理体である水晶振動子21は、図2に示すように、水晶片211と、該水晶片211上に形成され、水晶片211にひずみを与えるための電極212,213を備える。電極212には、接続パッド212Pが接続されている。電極213には、水晶片211の側面に形成されたリード電極213L等を介して、接続パッド212Pと同一面に形成された接続パッド213Pが接続されている。電極212,213(接続パッド212P,213P)のサイズや厚さにより、同一の水晶片211でも、その基本発振周波数は変化する。
【0024】
図1に示すエッチング室12には、3台のイオンガン31(31H,31M,31L)が設けられ、上流(左側)より、H(高レート用)、M(中レート用)、L(低レート用)となっている。イオンガン31(31H,31M,31L)には、それぞれにシャッタ32(32H,32M,32L)、コンタクト機構33(33H,33M,33L)、同軸ケーブル34(34HA,34HB,34MA,34MB,34LA,34LB)、共振回路(インバータ回路)35(35H,35M,35L)及び周波数検出回路36(36H,36M,36L)が設けられている。これらは制御部200によってコントロールされ、水晶振動子21はその基本発振周波数が目的周波数に一致するように、水晶振動子21上に形成された電極の厚さが調整される。
【0025】
エッチング室12で基本発振周波数が調整された水晶振動子21は、取出室13をエッチング室12と同一の圧力まで減圧した後、仕切弁37を開きキャリア22毎に、取出室13へ送られ、仕切弁37を閉じて取出室13を大気圧とした後取出される。
【0026】
イオンガン31H,31M,31Lの構成は、任意である。ただし、照射エネルギーの量は、イオンガン31H>イオンガン31M>イオンガン31Lに設定されている。
【0027】
シャッタ32H,32M,32Lは、それぞれ、イオンガン31H,31M,31Lから照射されたイオンの通過をオン・オフする。
【0028】
図3に示すように、コンタクト機構33(33H、33M、33L)は、それぞれ、一対のプローブピン331Aと331Bを備える。コンタクト機構33(33H,33M,33L)は、前進してプローブピン331Aと331Bを、処理対象の水晶振動子21に形成された接続パッド212Pと213Pに接続し、後退して、プローブピン331Aと331Bをそれぞれ、接続パッド212Pと213Pから離接する。
【0029】
図3に示すように、一対の同軸ケーブル34A,34B(34HAと34HB,34MAと34MB,34LAと34LB)の内導体34Ainと34Binはそれぞれ、コンタクト機構33(33H,33M,33L)のプローブピン331Aと331Bに接続されている。また、同軸ケーブル34Aと34B(34HAと34HB,34MAと34MB,34LAと34LB)の外導体34Aoutと34Boutはそれぞれ、基準電圧端(通常グランド)に接続されている。
【0030】
同軸ケーブル34Aと34Bの長さは、発振器回路の水晶振動子21を含む帰還回路(同軸ケーブル34A、水晶振動子21、同軸ケーブル34Bで構成される回路)の入力信号と出力信号の位相差が180°となるように、実験等により、予め設定されている。
【0031】
図1に示す共振回路35(35H,35M,35L)は、処理対象の水晶振動子21と共に発振回路を構成する。各共振回路35は、図4に示すように、カスケードに接続されたインバータ回路(反転増幅回路)101,102と、インバータ回路101に並列に接続された抵抗素子103と、インバータ回路101と102の接続ノードに接続された抵抗素子104とから構成される。
【0032】
コンタクト機構33(33H,33M,33L)のプローブピン331A、331Bが調整対象の水晶振動子21の接続パッド212P,213Pに接触した状態では、図5に示すように、共振回路35と帰還回路113とから構成される発振回路111が形成される。
【0033】
発振回路111の、増幅器側の帰還回路112の増幅率をα、位相差をθ1、水晶振動子を含む帰還回路113の増幅率をβ、位相差をθ2とすると、
水晶発振回路111の発振条件は次の2つの式の通りになる。
ループゲインG=α×β≧1
位相差θ=θ1+θ2=360×n
通常、n=1とし、帰還回路112を構成する増幅器は、反転増幅器であり、位相差θ1=180°であり。従って、θ2=180°となるように、帰還回路113の同軸ケーブル34Aと34Bの特性(長さ)が設定されている。
【0034】
図1に示す周波数検出回路36Hは、共振回路35Hの出力信号の周波数を検出することにより、処理対象の水晶振動子21、プローブ331HA,331HB、同軸ケーブル34HA,34HB、共振回路35Hで形成される発振回路の発振周波数(出力信号の周波数)を求め、制御部200に通知する。
【0035】
同様に、周波数検出回路36Mは、処理対象の水晶振動子21、プローブ331MA,331MB、同軸ケーブル34MA,34MB、共振回路35Mで形成される発振回路の発振周波数を求め、制御部200に通知する。また、周波数検出回路36Lは、処理対象の水晶振動子21、プローブ331LA,331LB、同軸ケーブル34LA,34LB、共振回路35Lで形成される発振回路の発振周波数を求め、制御部200に通知する。
【0036】
制御部200は、プロセッサ、メモリ等を含み、所定の制御ルーチンに従って、周波数検出回路36H,36M,36Lの検出周波数などに基づいて、各部を制御し、各水晶振動子21の基本発振周波数が目的周波数に一致するように、エッチング処理を行う。
【0037】
上述したように、図5に示す発振回路111は、水晶振動子側の帰還回路113が、長さが調整された同軸ケーブル34A,34Bから形成されている。この構成の発振回路111は、安定して発振する特性を有する。
【0038】
図6Aは、図5に示した構成の発振回路111における帰還回路113の周波数ゲイン特性を、図6Bは帰還回路113の入力信号と出力信号の位相θ2の差の例を示す。この例は、水晶振動子21をATカット121MHz5次オーバートーンとし、共振周波数付近の特性(SパラメータのS21)を示したものであり、同軸ケーブル34Aと34Bの長さL1(m)とL2(m)を同じ値とし、それぞれ0mm、25mm、50mmとした場合の特性である。図6Bに示すように、同軸ケーブル34A,34Bが長くなるにつれて、位相θ1が回転し、発振条件の(2)を充足する。一方、図6(A)に示すように、図14(A)と異なり、同軸ケーブル34A,34Bの長さが変換しても、利得の低下は見られず、安定して発振条件(1)が充足される。従って、発振回路111を安定して発振させることができる。
【0039】
図7にコンタクト機構33の概略断面図を示す。
図示するように、コンタクト機構33は、樹脂等の絶縁材料からなるブロック332にプローブピン331を固定し、図示しない駆動機構に接続するアーム337を用いてブロック332を前進若しくは後退させることにより、水晶振動子21に形成した電極と接続若しくは離接する。ブロック332には図示しないばねが内挿されており、プローブピン331がばねの弾性力で伸縮することにより、プローブピン331を水晶振動子21の電極に加圧しながら接触させることができる。ブロック332には配線用の基板333が取り付けられており、基板333に設けたスルーホール334にプローブピン331を挿通し、これを半田接続する。
【0040】
図8にコンタクト機構33の概略平面図を示す。図示するように、基板333には同軸コネクタ341が取付けられる。同軸コネクタ341には、内導体用の配線パターン335と、外導体用の配線パターン336とが設けられている。内導体用の配線パターン335は同軸コネクタ341の内導体に接続され、外導体用の配線パターン336は、同軸コネクタ341の外導体に接続される。
【0041】
図8において、符号120はエッチング室12の槽壁を示す。大気中から高真空雰囲気中に同軸ケーブル34を導入するため、同軸ケーブル34は気密を保って槽壁120を挿通する。同軸ケーブル34の導入には、同軸コネクタを用いればよい。実施例では同軸ケーブル34の外導線を槽壁120に接続し、槽壁120をグランドに接続している。
【0042】
真空雰囲気中に導入された同軸ケーブル34は、コンタクト機構33の基板333に取付けられた同軸コネクタ341に接続されている。なお、上記構成により同軸ケーブル34と調整対象の水晶振動子21の電極を接続する構成に限定されず、同軸コネクタの内導体を接続パッド212P,213Pに直接接触させてもよい。
【0043】
次に、上記構成の周波数調整装置10の動作を説明する。
【0044】
まず、調整対象の水晶振動子21は、キャリア22にセットされ、仕込室11にセットされ、適宜、エッチング室12内に投入される。
【0045】
投入された調整対象水晶振動子21は、まず、ハイレートイオンガン31Hに対向する位置にセットされる。コンタクト機構33Hは、プローブ331HAと331HBを前進させ、接続パッド212Pと213Pに接触させる。
【0046】
続いて、制御部200は、イオンガン31Hにイオンビームの照射を開始させると共にシャッタ32Hを開き、イオンビームを調整対象水晶振動子21の電極213に照射させて、エッチングを開始する。
【0047】
エッチングを行っている間、水晶振動子21と共振回路35Hとは、プローブ331HA,331HBと同軸ケーブ34HAと34HBを介して図5に等価回路で示すように接続され、発振回路を構成する。
【0048】
このため、発振回路が大きな共振レベルで共振し、周波数検出回路36Hは発振周波数を容易にそして正確に検出できる。
周波数検出回路36Hが検出した発振周波数は、制御部200に通知される。制御部200は、通知された発振周波数が目的周波数に対し所定の許容範囲内に収束するまで、イオンビームの照射によるエッチングを継続する。
【0049】
制御部200は、周波数検出回路36Hから発振通知された発振周波数が、目的周波数の許容誤差範囲内に収まると、シャッタ32Hを閉じると共にイオンビームの照射を停止する。
【0050】
また、コンタクト機構33Hは、プローブ331HAと331HBを後退させ、接続パッド212P,213Pから離接させる。
【0051】
続いて、制御部200は、ハイレートエッチング装置で処理された水晶振動子21をミドルレートエッチング装置、ローレートエッチング装置に順次搬送し、電極をエッチングする処理を行う。なお、エッチングの動作自体は、上述の動作と同一である。
【0052】
この周波数調整装置10においては、水晶振動子21と発振回路35とを同軸ケーブル34A,34Bで接続し、同軸ケーブル34A,34B自体のリアクタンス成分を負荷としたので、発振回路111全体のゲインGを維持しつつ、帰還回路113の入出力間の位相差θ1を180°として、発振回路111を安定して発振させることができる。そして、発振回路111の発振状態を安定的に維持して、水晶振動子21の発振周波数をモニタしつつ、水晶振動子21の電極をエッチングすることができる。従って、水晶振動子21の固有振動を正確に調整することができる。
【0053】
また、周波数調整装置10は、エッチングの進行と共にエッチングレートがハイ、ミドル、ローと調整されているので、高速に且つ正確に周波数調整を行うことができる。
【0054】
なお、周波数調整の対象は、水晶振動子に限定されず、任意の発振素子、圧電素子で構わない。
【0055】
必要とする共振周波数が高次オーバートーンの場合、図5に示す共振回路111では、基本波やスプリアス振動などが原因となって、意図しない周波数で発振してしまう、異常発振が起きるおそれがある。
【0056】
異常発振を防止するためには、図9に示すように、共振回路35と同軸ケーブル34Aとの間にインピーダンスマッチング回路116a,116bを配置すればよい。インピーダンスマッチング回路116aは、インピーダンスマッチング回路116aから同軸ケーブル34A側を見たときのインピーダンスIkaと、インピーダンスマッチング回路116aを含む共振回路35の入力インピーダンスIiaとをマッチングする(等しくする)ようにインピーダンスが調整された回路である。同様に、インピーダンスマッチング回路116bは、インピーダンスマッチング回路116bから同軸ケーブル34B側を見たときのインピーダンスIkbと、インピーダンスマッチング回路116bを含む共振回路35のインピーダンスIibとをマッチングするようにインピーダンスが調整された回路である。
【0057】
なお、インピーダンスマッチング回路116a,116bの一方のみを配置してもよい。
【0058】
図10は、ATカット30MHz3次オーバートーンの水晶振動子21を用いた発振回路において、共振回路35と同軸ケーブル34との間にマッチング回路116が配置されている発振回路(図9の発振回路115)とマッチング回路が配置されていない発振回路(図5の発振回路111)との出力波形を比較して示すものである。図示するように、マッチング回路が無い場合、3次オーバートーンの信号に不要な基本波10MHz発振波形が重畳されている。一方、マッチング回路116を用いた場合、30MHzの良好な発振波形が得られている。この図からも、マッチング回路を配置することが有効であることが理解できる。
【0059】
また、同軸ケーブルに限定されず、マイクロストリップラインツイストペア信号線など、信号線をリアクタンスとして使用できるならば、どのような信号線を使用してもよい。マイクロストリップラインは、図11に断面で例示するように、誘電体基板91の一面に、例えば接地された導体箔92を形成し、他面に線状の信号伝達用導体箔93を形成した基本構造を持つ伝送路である。また、同軸ケーブル、マイクロストリップラインに限定されず、分布定数回路を構成できるならば、ツイストペア信号線等、どのような伝送路を使用してもよい。
【0060】
上記実施の形態においては、発振回路111,115の帰還回路113の位相角(入力信号と出力信号の位相差)θ2を固定する例を示した。装置構成によっては、位相角θ2を連続的又は不連続に変化させる必要が生ずることがある。位相角θ2の調整が必要な場合には、図12に例示するように、異なる特性(長さ、径)の同軸ケーブル(マイクロストリップライン、分布定数回路等)121a〜121nを配置し、スイッチ122,123等を、例えば、制御部200で切り替えることにより、伝送路を選択して水晶振動子21及び他の回路と接続するように構成すればよい。この場合、浮遊容量及び寄生容量の影響を排除するため、選択しない同軸ケーブル等を、周辺回路から完全に電気的に分離することが望ましい。
【0061】
上記実施の形態においては、コルピッツ型の共振回路を例示したが、共振回路の構成は任意である。
【0062】
上記実施の形態においては、水晶片211の上に予め電極212,213を形成し、これをイオンガンでエッチングすることにより、電極212,213の厚さ(重量)を変更することにより、水晶振動子21の固有振動周波数を変更(調整)する例を示した。この発明はこれに限定されず、例えば、真空蒸着装置、スパッタ装置内において、水晶片211上に導体(金属)を堆積して電極を形成(付加蒸着)させることにより、電極212,213の厚さ(重量)を変更し、水晶振動子21の固有振動周波数を変更(調整)する場合等にも同様に適用可能である。
【0063】
通常、安定した発振出力を得るためには、水晶振動子と増幅器を接続するケーブルは極力短く配線する必要があるが、本発明により予め長さを調整した同軸ケーブルを用いることにより、水晶振動子と増幅器を離隔して配置しても安定した発振周波数を得ることができる。これにより、高温や極低温など発振回路を配置することができないチャンバ環境であっても、チャンバ雰囲気外に増幅器を配置することができるため、モニタ用水晶振動子をチャンバ内に配置して発振させることができる。また、真空チャンバ内に発振回路を配置する場合、増幅器の発熱による影響で周波数の測定に誤差を生じる場合があるが、本発明により増幅器をチャンバ外に配置することができるため、増幅器を大気中で放熱し熱の影響を軽減して測定精度を向上させるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る周波数調整装置の全体構成図である。
【図2】水晶振動子の構成を示す図である。
【図3】コンタクト機構と同軸ケーブルの構成例を示す図である。
【図4】共振回路(インバータ回路)の回路例を示す図である。
【図5】発振回路の回路構成を説明するための図である。
【図6】図5に示す帰還回路の特性を示す図であり、(A)は、周波数−ゲイン特性、(B)は周波数−位相差特性を示す。
【図7】コンタクト機構の概略断面を示す図である。
【図8】コンタクト機構の概略平面を示す図である。
【図9】インピーダンスマッチング回路を備える発振回路の構成を示す回路図である。
【図10】インピーダンスマッチング回路の有無による、出力信号の差を説明摺るための図である。
【図11】マイクロストリップラインの基本構成を示す図である。
【図12】同軸ケーブルを切り替えることにより、位相差を切り替える構成の例を示す図である。
【図13】従来の発振回路の回路図である。
【図14】図13に示す発振回路の帰還回路の特性を示す図であり、(A)は、周波数−ゲイン特性、(B)は周波数−位相差特性を示す。
【符号の説明】
【0065】
10 周波数調整装置
11 仕込室
12 エッチング室
13 取出室
21 水晶振動子
22 キャリア
23 仕切弁
31(31H,31M,31L) イオンガン
32 (32H,32M,32L)シャッタ
33 (33H,33M,33L)コンタクト機構
34 (34HA,34HB,34MA,34MB,34LA,34LB)同軸ケーブル
35 (35H,35M,35L)共振回路
36 (36H,36M,36L)周波数検出回路
101,102 インバータ回路
103,104 抵抗素子
111,115,311 発振回路
112 増幅回路
113,312,313 帰還回路
116 インピーダンスマッチング回路
120 槽壁
121 同軸ケーブル
122,123 スイッチ
200 制御部
211 水晶片
212 電極
212P 接続パッド
213 電極
213P 接続パッド
331 プローブピン
332 ブロック
333 基板
334 スルーホール
335 内導体用配線パターン
336 外導体用配線パターン
367 アーム
341 同軸コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する圧電素子をチャンバ内に配置し、
前記電極をエッチング又は付加蒸着し、
前記電極をエッチング又は付加蒸着中の前記圧電素子の基本共振周波数をモニタする、
圧電素子の周波数調整方法において、
該圧電素子の電極と増幅回路とを同軸ケーブル又はストリップラインで接続して発振回路を構成し、前記基本共振周波数をモニタする、
ことを特徴とする周波数調整方法。
【請求項2】
前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さを変化させることにより、前記発振回路の位相角を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数調整方法。
【請求項3】
前記増幅回路が反転増幅器から構成され、
該増幅回路の出力信号が、その位相を反転して該増幅回路に入力されるように前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さが設定されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の周波数調整方法。
【請求項4】
前記同軸ケーブル又は前記ストリップラインが有する誘導成分と容量成分によるインピーダンスと、前記増幅回路の入力インピーダンスとをマッチングするマッチング回路をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の周波数調整方法。
【請求項5】
チャンバと、
前記チャンバ内で、処理対象の圧電素子を支持する支持手段と、
前記支持手段により前記チャンバ内に支持された圧電素子上に電極膜を形成し、又は、前記圧電素子に形成された電極膜をエッチングすることにより前記圧電素子の共振周波数を調整する周波数調整手段と、
前記支持手段で支持された圧電素子の電極膜に接触するプローブと、
前記チャンバの外に配置され、前記圧電素子と共に発振回路を構成する増幅回路と、
前記プローブと前記増幅回路とを接続し、前記発振回路の位相角を調整する同軸ケーブル又はストリップラインと、
前記増幅回路の出力信号に基づいて、前記圧電素子の共振周波数をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段がモニタした共振周波数に基づいて、前記周波数調整手段を制御して前記電極膜の厚さを制御することにより、前記圧電素子の共振周波数を調整する制御手段と、
を備えることを特徴とする圧電素子の周波数調整装置。
【請求項6】
前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さを変化させることにより、前記発振回路の位相角を調整する切り替え手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の周波数調整装置。
【請求項7】
前記増幅回路が反転増幅器から構成され、
該増幅回路の出力信号が、その位相を反転して該増幅回路に入力されるように前記同軸ケーブル又はストリップラインの長さが設定されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の周波数調整装置。
【請求項8】
前記同軸ケーブル又は前記ストリップラインのリアクタンスによるインピーダンスと、前記反転増幅器の入力インピーダンスとをマッチングするマッチング回路を更に備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の周波数調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−60473(P2009−60473A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227181(P2007−227181)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】