説明

周辺監視モニタリングシステム

【課題】ドアの開閉範囲を含むドアの近辺の画像を車両の搭乗者に提供する。
【解決手段】カメラ10は、車両の上部に取付けられ、対象ドアの開閉範囲を含む画像を撮像する。画像歪み補正部22は、カメラ10で撮像された画像のレンズによる歪みを除去する補正を行う。画像視点変換部23は、画像歪み補正部22によって歪みが除去された画像を、対象ドアの開閉範囲の真上から見た画像に変換する。ドア開閉軌跡演算部25は、対象ドアの開閉軌跡を演算する。画像合成部27は、カメラ10で撮像されて画像歪み補正部22及び画像視点変換部23で変換された画像と、ドア開閉軌跡演算部25で求めた対象ドアの開閉軌跡とを合成した合成画像を形成し、合成画像に対応する信号をディスプレイ30に与える。ディスプレイ30には、ドアの周辺を含む画像にドアの車幅方向の開閉範囲が重畳された画像が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺を監視する周辺監視モニタリンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の周辺を監視して搭乗者を支援する周辺監視モニタリンクシステムが、多くの車両に搭載されている。従来の周辺監視モニタリングシステムとしては、特許文献1〜3に示されるものがあった。
【0003】
例えば、特許文献1では、ドアミラーにカメラを組込み、ドアミラーが閉じた状態でも、後方の監視ができるようになっている。特許文献2では、車両の運転状況に応じて複数のカメラで撮影された画像を選択して表示している。複数のカメラの配置は、特許文献2の図1に示されている。特許文献3は、例えば車両に搭載されカメラ群から、運転状況に応じたカメラを複数選択し、選択したカメラから得られる画像を合成している。カメラの位置及び視野は、特許文献3の図3に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−320898号公報
【特許文献2】特開平11−48828号公報
【特許文献3】特開2001−55100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3等に示された従来の周辺監視モニタリングシステムは、車両の運転状態に応じた画像を運転者に提供することができるが、特に助手席のドアを開閉するときに障害となる物体の存在を搭乗者に知らせるのに適していない。
本発明は、ドアの開閉に支障を来す障害物の存在を搭乗者に知らせることが可能な、周辺監視モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の観点に係る周辺監視モニタリングシステムは、
車両に取付けられ、該車両に取付けられた対象ドアの開閉範囲を示す画像を撮像するカメラと、
前記車両に搭載され、前記対象ドアのドアロックが解除されたときに前記カメラで撮像された画像に対して前記対象ドアの車幅方向の開閉範囲を示す画像を合成して表示する表示装置と、
前記対象ドアの開閉する軌跡を求め、前記表示装置に表示される前記対象ドアの開閉範囲を示す画像に該軌跡を重畳させるドア軌跡表示手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
尚、前記表示装置は、前記車両が停車し且つ前記対象ドアのドアロックが解除されたときに前記カメラで撮像された画像に対して前記対象ドアの車幅方向の開閉範囲を示す画像を合成して表示してもよい。
【0008】
また、前記表示装置に表示される前記対象ドアの開閉範囲を示す画像を、真上から撮影した画像に変換する視点変換手段を備えてもよい。
【0009】
さらに、前記対象ドアの開閉する軌跡と前記カメラで撮像された画像とに基づいて、該対象ドアを開く際の障害となる障害物の有無を検出する障害物検出手段と、該障害物検出手段により障害物があることが検出された場合に警報を発生する警報手段を備えてもよい。
【0010】
この場合、前記警報手段は、前記表示装置に前記警報を表示してもよい。或いは、前記警報手段は、前記警報を音で発生してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドアの開閉範囲を示す画像に、対象ドアの車幅方向の開閉範囲を示す画像が合成されて表示される。そのため、ドアの開閉範囲に障害物がある場合に、不用意にドアを開けてしまうことを防止できる。これにより、ドアの損傷等が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る周辺監視モニタリングシステムを示す構成図である。
【図2】車両の外観を示す図である。
【図3】カメラで撮像した画像を示す図である。
【図4】歪みの説明図である。
【図5】視点変換の説明図である。
【図6】ディスプレイに表示される画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る周辺監視モニタリングシステムを示す構成図である。
図2(a),(b)は、車両1の外観を示す図である。
【0014】
図1に示す周辺監視モニタリングシステムは、図2に示す車両1の助手席のドア2(右ハンドルの場合)の車両1の車幅方向における開閉範囲を監視するシステムであり、カメラ10と、車両1に搭載された電子制御ユニット(ECU)に組込まれた制御部20と、ディスプレイ30とを備えている。
【0015】
カメラ10は、車両1の例えばBピーラー3に取付けられ、上方からドア2の開閉範囲とその周辺の画像をドア2よりも高い位置から撮像するようになっている。カメラ10は、図示しないレンズ及び電荷結合素子(CCD)を備え、レンズを介して入力された画像を撮像し、電気信号に変換して出力する。カメラ10の撮像する画像には、路面ばかりでなく、ドア2の一部、ドアミラー4等も撮像される。さらに、ドア2の近傍に障害物5が有れば、その障害物5も撮像される。
【0016】
ECU内の制御部20は、カメラ10から与えられる電気信号を入力するカメラ信号キャプチャ部21と、画像歪み補正部22と、画像視点変換部23と、カメラ画像出力部24と、ドア開閉軌跡演算部25と,ドア開閉軌跡表示部26と、画像合成部27とを備えている。
【0017】
画像歪み補正部22は、カメラ10で撮像した画像に存在する歪みを除去する機能を有し、カメラ信号キャプチャ部21に接続されている。画像歪み補正部22には、カメラ信号キャプチャ部21を介してカメラ10の撮像した画像を示す信号が入力される。
【0018】
画像視点変換部23は、画像歪み補正部22に接続され、画像歪み補正部22から与えられた信号で表される画像に対し、視点の変換処理を行う。この視点の変換処理では、例えばドア2の開閉範囲を含む画像を真上から撮像した画像に変換する。
【0019】
画像視点変換部23の出力側に、カメラ画像出力部24が接続され、カメラ画像出力部24の出力側が、画像合成部27に接続されている。カメラ画像出力部24は、画像視点変換部23で変換された画像に対応する信号を、画像合成部27に出力する。
【0020】
一方、ドア開閉軌跡演算部25は、カメラで撮像された画像中におけるドア2が開閉する場合の軌跡を演算する回路であり、カメラ信号キャプチャ部21に接続されている。
ドア開閉軌跡表示部26は、ドア開閉軌跡演算部25の出力側に接続され、そのドア開閉軌跡表示部26の出力側が画像合成部27に接続されている。ドア開閉軌跡表示部26は、ドア2が開閉する軌跡を示す信号を生成して画像合成部27に出力する。
画像合成部27は、カメラ画像出力部24及びドア軌跡表示部26から与えられた信号に基づき、カメラ10で撮像されて画像歪み補正部22及び画像視点変換部23を介したカメラ画像に対して、ドア2が開閉する軌跡をスーパーインポーズにより画像合成し、その合成画像に対応する信号をディスプレイ30に出力する。
【0021】
尚、画像歪み補正部22、画像視点変換部23、カメラ画像出力部24、ドア開閉軌跡演算部25、ドア開閉軌跡表示部26及び画像合成部27は、図1のように個別回路で構成してもよいが、CPU(Central Processing Unit)、イメージメモリ、作業用RAM(Random Access Memory)、DSP(Digital Signal Processor)等を用いて構成してもよい。
【0022】
ディスプレイ30は、液晶パネル等で構成され、図示しない電源スイッチや各種セレクトボタン等が設けられている。ディスプレイ30は、ドア2の開閉範囲を含むドア2の周辺の画像を表示する。尚、ディスプレイ30は、ドア2の開閉範囲を含むドア2の画像を専用に表示するものではなく、他の画像の例えばカーナビゲーションの画像や車両の後方の画像等を表示するものでもよい。この場合、例えば車両1が停車したこと及びドア2のドアロックが解除されたことを検出したときに、ドア2の開閉範囲を含むドア2の周辺画像を選択して表示するようにしてもよい。また、ディスプレイ30に設けられているセレクトボタンが選択的に押下されたときに、ドア2の開閉範囲を含むドア2の周辺画像を表示するようにしてもよい。
【0023】
次に、本実施形態の周辺監視モニタリングシステムの動作を説明する。
車両1のBピラー3に取付けられたカメラ10は、図3のように、ドア2の上部からドア2の開閉範囲を示す画像を撮像し、撮像した画像を電気信号に変換して出力する。カメラ10の撮像した画像の各画素は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の輝度を示す信号として表される。カメラ10が出力する電気信号は、制御部20のカメラ信号キャプチャ部21に入力される。
【0024】
画像歪み補正部22は、カメラ信号キャプチャ部21を介してカメラ10が出力する電気信号を入力する。即ち、カメラ10で撮像した画像を取得する。
カメラ10で撮像した画像には、レンズを介してカメラ10に入力された画像であり、歪みが含まれている。図4(a),(b)は、歪みの説明図である。
【0025】
カメラ10で撮像した画像41を微小の領域に分割して考えたときに、画像41の中心O41の微小領域Raは、レンズの中心近傍を通過した光に対応するもので縮小率が小さいが、中心O41から離れた微小領域Rbは、縮小率が大きい。即ち、領域Rbの画像に対応するカメラ10の視野角は、微小領域Raの画像に対応するカメラ10の視野角よりも大きい。この視野角は、図4bのように、中心O41からの距離によって決まり、その距離が離れるほど大きくなる。
【0026】
画像歪み補正部22は、画像41における歪みを除去する補正を行うために、画像41を分割した微小領域ごとに、中心O41からの距離に応じて画素を補充する処理を行う。このような画素の補充を行うことにより、各微小領域の面積がカメラ10の視野角に応じた面積となる。即ち、中心O41からの距離が離れた微小領域の面積が増加し、画像41における歪みを除去できる。尚、この画素の補充に際し、補充する画素の輝度を周辺の画素の輝度から設定することにより、画像の不自然さが少なくてすむ。また、画素の補充により隣接する微小領域が重なるが、重なった部分の画素は、重なった画素の輝度を平均化した輝度に設定することにより、画質の劣化も避けられる。
【0027】
画像歪み補正部22は、補正した画像に対応する信号を画像視点変換部23に与える。
画像視点変換部23は、画像歪み補正部22で歪みが除去された画像に対して、視点の変換を行う。図5は、視点の変換の説明図である。
【0028】
カメラ10の取付け角度θ及びカメラ10の高さhは、カメラ10の取付け段階で決まり、カメラ10の撮影する路面の範囲Rの車両1からの距離Lもカメラ10の取付け状態によって決まる。画像視点変換部23は、カメラ10の取付け状態で決まるこれらのパラメータを記憶し、記憶したパラメータを利用して視点の変換を行い、カメラ10の撮像した画像を、真上から見た画像に変換する。
【0029】
この変換処理では、カメラ10で撮像した画像Im1を、カメラ10の光軸に垂直な画像Im2に変換し、その後、画像Im2を、仮想的に範囲Rの真上に取付けられた仮想カメラ50で撮像した画像Im3に変換する。画像Im1を画像Im2に変換する際、カメラ10の光軸よりも遠方に有る部分は画像Im2で拡大され、カメラ10の光軸よりも車両1側に有る部分は縮小される。ここで、最終的な画像Im3での画質の劣化を防ぐために、カメラ10の光軸よりも遠方に有る部分の拡大は、画素を補充することが望ましい。さらに、この補充する画素の輝度は、周辺の画素の輝度から求めた値に設定することが望ましい。
【0030】
カメラ画像出力部24は、画像視点変換部23で視点変換した画像に対応する信号を画像合成部27に与える。
【0031】
ドア開閉軌跡演算部25は、カメラ信号キャプチャ21から与えられた信号に基づきドア2に相当する画素群を検出し、ドア2の両端の位置を検出し、ドア2の開閉軌跡を演算して求める。即ち、ドア2の開く端部の動く範囲を求める。
ドア開閉軌跡表示部26は、ドア開閉軌跡演算部25が求めたドア2の開閉軌跡に対応する画像に対応する信号を画像合成部27に与える。
画像合成部27は、カメラ画像出力部24及びドア開閉軌跡表示部26から与えられた信号に基づき、カメラ10で撮像されて画像歪み補正部22,画像視点変換部23で変換されたカメラ画像に対して、ドア2が開閉する軌跡をスーパーインポーズにより画像合成する。画像合成部27は、その合成画像に対応する信号を例えばNTSC(National Television Standards Committee)のコンポジット信号に変換してディスプレイ30に出力する。
【0032】
ディスプレイ30は、図6のように、ドア2の周辺とドア2の車幅方向の開閉軌跡とを含む画像を表示する。これにより、車両1の搭乗者は、ドア2の開閉範囲に、障害物5があるか否かを判断できる。
【0033】
本実施形態の周辺監視モニタリングシステムは以上のような構成を採用したので、次のような利点を有する。
【0034】
(1)カメラ10をBピラー3に取付け、ドア2の開閉範囲を示す画像を上側から撮像してディスプレイ30に表示するので、車両1の搭乗者にドア2の外側の路面の状況を確認させることができ、ドア2の損傷等を未然に防ぐことができる。
【0035】
(2)画像歪み補正部22を備え、画像の歪みを除去した画像をディスプレイ30に表示するので、実際に近い画像を搭乗者に与えることができる。
【0036】
(3)画像視点変換部23を備え、ドア2の開閉範囲とその近傍を真上から見た画像にしてディスプレイ30に表示するので、搭乗者に、障害物5とドア2との間の距離感も認識させることができる。
【0037】
(4)ドア2の開閉軌跡を表示するので、ドア2を開閉したときの障害物5の有無を確実に搭乗者に知らせることができる。
【0038】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、カメラ10の取付け位置は、Bピラー3に限定されるものではない。車両1のルーフに取付け、下方を撮影するようにしてもよい。また、ドア2のバイザー内に取付けてもよい。
さらに、撮影対象のドア2を助手席のドアとしているが、他のドアを対象にしてもよい。
また、ドア2の周辺の画像及びドア2の軌跡から、障害物を検出できた場合、制御部20は障害物検出手段となり、搭乗者に対して警報を発生するようにしてもよい。警報としては、例えばディスプレイ30に文字で表示したり、障害物の輪郭を示す画像を点滅させて表示してもよい。また、警報としての音を鳴動させる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 ドア
3 Bピラー
4 ドアミラー
5 障害物
10 カメラ
20 制御部
21 カメラ信号キャプチャ部
22 画像歪み補正部(歪み補正手段)
23 画像視点変換部(視点変換手段)
24 カメラ画像出力部
25 ドア開閉軌跡演算部(ドア軌跡表示手段)
26 ドア開閉軌跡表示部
30 ディスプレイ(表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取付けられ、該車両に取付けられた対象ドアの開閉範囲を示す画像を撮像するカメラと、
前記車両に搭載され、前記対象ドアのドアロックが解除されたときに前記カメラで撮像された画像に対して前記対象ドアの車幅方向の開閉範囲を示す画像を合成して表示する表示装置と、
前記対象ドアの開閉する軌跡を求め、前記表示装置に表示される前記対象ドアの開閉範囲を示す画像に該軌跡を重畳させるドア軌跡表示手段と、
を備えることを特徴とする周辺監視モニタリングシステム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記車両が停車し且つ前記対象ドアのドアロックが解除されたときに前記カメラで撮像された画像に対して前記対象ドアの車幅方向の開閉範囲を示す画像を合成して表示することを特徴とする請求項1に記載の周辺監視モニタリングシステム。
【請求項3】
前記表示装置に表示される前記対象ドアの開閉範囲を示す画像を、真上から撮影した画像に変換する視点変換手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の周辺監視モニタリングシステム。
【請求項4】
前記対象ドアの開閉する軌跡と前記カメラで撮像された画像とに基づいて、該対象ドアを開く際の障害となる障害物の有無を検出する障害物検出手段と、該障害物検出手段により障害物があることが検出された場合に警報を発生する警報手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の周辺監視モニタリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−1210(P2012−1210A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221426(P2011−221426)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【分割の表示】特願2005−312848(P2005−312848)の分割
【原出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)