説明

味わいの改善された野菜飲料

【課題】でんぷんを多く含む野菜類、イモ類、豆類、種実類を原料とし、それらが加熱調理されたときに有する自然な甘味を持つ飲料を提供する。
【解決手段】でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の搾汁液、糖類、及び乳酸を含有する飲料であって、乳酸含量が0.1g/L〜1.5g/Lであり、かつ乳酸と糖類の重量比(乳酸/糖類)が0.01〜0.12となるように調製する。また、(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の搾汁液であって糖化処理されたもの、及び(B)該野菜の搾汁液であって乳酸発酵されたものを、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で含むようにする。原料野菜の特に好ましい例は、さつまいも、かぼちゃである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜を使用した飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
でんぷんを多く含む野菜類、イモ類、豆類、種実類は加熱調理すると甘味が強くなり、昔から多くの人々に好んで食されてきた。しかし、飲料の原料として使用している例はいくつか存在するが(特許文献1)、数多くの素材のなかの一つとして混合されているものがほとんどで、それを主原料としたものは少ない。
【0003】
これまで野菜飲料の風味改善としては野菜汁と果汁との混合や乳酸菌による発酵が種々検討されている(特許文献2〜6)。サツマイモを原料とする飲料に関しては、サツマイモ加工汁にリンゴ果汁およびレモン果汁を加えることを特徴としたイモ臭さが無くスッキリ感に優れた甘藷飲料(特許文献7)、磨砕したサツマイモに乳原料を加えて原料とし、これに特定の乳酸菌を使用して乳酸発酵させて製造することを特徴とするサツマイモ乳酸発酵食品(特許文献8)、有色サツマイモから糖化液Aを製造する工程、該工程で製造された糖化液A、及び乳原料からなる発酵原料に、特定の乳酸菌を加え発酵させる工程(2)とからなるアントシアニンを含有する低カロリー乳酸菌発酵食品の製造方法(特許文献9)、サツマイモを生のまま凍結し、解凍後に圧搾して搾汁液を得、該搾汁液にクエン酸を添加して濃縮することを特徴とするサツマイモ搾汁液の濃縮方法(特許文献10)などが検討されてきた。
【0004】
一方、甘味を有する食品に関して、糖分その他の甘味料を減らすことなく食品の甘味を抑制して、コクがあり、キレの良い、清涼感のある甘味とすることを課題に、有機カルボン酸又はその塩の少なくとも一種と、カルシウム、マグネシウム又はそれらの塩の少なくとも一種とを含有することを特徴とする甘味改良剤も検討されている(特許文献11)。
【特許文献1】特開2002-281954
【特許文献2】特開平7-170933
【特許文献3】特開平11-75788
【特許文献4】特開平11-266824
【特許文献5】特開2001-292720
【特許文献6】特開2004-254528(特許3987992)
【特許文献7】特開2002-272429
【特許文献8】特開2001-86929
【特許文献9】特開2006-254820
【特許文献10】特開2003-33163
【特許文献11】特開2000-175651
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、野菜系飲料に果汁を混合すると、果汁由来の甘味や酸味のために原料本来の味わいが失われる。また、乳酸発酵のみでは、原料の持つほのかな甘みがなくなり、原料本来の味わいとは異なるものとなる。さらに、加熱調理したときの甘味を有するような飲料を製造しようと単に糖類を添加しただけでは、甘みが後を引き、原料本来のほのかな甘味とは異なり、嗜好性を損ねる。
【0006】
本発明者らは、でんぷんを多く含む野菜類、イモ類、豆類、種実類を原料とし、それらが加熱調理されたときに有する自然な甘味を持つ飲料を提供することをその課題として鋭意検討した結果、(1)甘味のキレのみを改善するためには、他の有機酸でも有効であるが、その場合は、甘味そのものやその他の複雑な味わいが失われ、さらに添加量が増すと収斂味がでてくること、(2)乳酸を適切な量添加することにより、収斂味を目的の飲料に付与することなく、かつ甘味や野菜の複雑な味わいを保持したまま甘味のキレが改善されること、を見いだし、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明は、以下を提供する:
(1) 野菜の搾汁液、糖類、及び乳酸を含有する飲料であって、野菜がでんぷんを6 w/w%以上含有するものであり、乳酸含量が0.1g/L〜1.5g/Lであり、かつ乳酸と糖類の重量比(乳酸/糖類)が0.01〜0.12である、飲料。
(2)1〜25v/v%のアルコールを含有する、(1)に記載の飲料。
(3)野菜搾汁液が糖化処理されたものである、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の乳酸発酵物を含む、(1)〜(3)のいずれか1に記載の飲料。
(5)野菜が、サツマイモ又はかぼちゃである(1)〜(4)のいずれか1に記載の飲料。
(6)(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液(すなわち、野菜の搾汁液であって、野菜がでんぷんを6 w/w%以上含有するものである、該搾汁液)であって糖化処理されたもの、及び(B)該野菜の乳酸発酵物を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で含む、請求項1に記載の飲料。
(7)(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液(すなわち、野菜の搾汁液であって、野菜がでんぷんを6 w/w%以上含有するものである、該搾汁液)であって糖化処理されたもの、及び(B)該野菜の乳酸発酵物を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で混合する工程を含む、飲料の製造方法。
(8)(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液(すなわち、野菜の搾汁液であって、野菜がでんぷんを6 w/w%以上含有するものである、該搾汁液)であって糖化処理されたもの、及び(B)該野菜の乳酸発酵物を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で混合する工程を含む、飲料の甘味改善方法。
(9)(1)〜(6)のいずれか1に記載の飲料を得るための、飲料濃縮物。
【0008】
本明細書で「野菜」というときは、特別な場合を除き、市場で野菜類としてとりあつかわれているもの(例えば、かぼちゃ、にんじん、えだまめ、アスパラガス、グリーンピース、キャベツ、きゅうり、ごぼう、とうもろこし、にんにく、ホースラディッシュ、らっきょう、わさび、れんこん)のほか、いも類(例えば、さつまいも、じゃがいも、さといも類、ながいも、こんにゃくいも)、豆類(例えば、あずき、いんげんまめ、えんどう、ささげ、だいず、そらまめ)、種実類(例えば、くり類、ぎんなん、くるみ、かぼちゃの種、アーモンド)を含む。
【0009】
本発明の飲料(本明細書では、以下、飲料について説明することがあるが、特別な場合を除き、その説明は、飲料濃縮物にもあてはまる。)には、でんぷんを6 w/w%以上、好ましくは10 w/w%以上、より好ましくは13w/w%以上、さらに好ましくは16w/w%以上含有する野菜を、搾汁液の原料として用いることができる。このような野菜の使用は、後述する糖化処理に供することにより、得られる飲料に加熱した際に生じるような甘味を付与することができる点で好ましい。
【0010】
本明細書で野菜に関し、でんぷん量をいうとき(例えば、でんぷんを6 w/w%以上含有する)いうときは、特別な場合を除き、食品可食部あたりの量をいう。野菜中のでんぷん量は、当業者であれば、公知の方法を用いて測定することができる。
【0011】
でんぷんを所定の量以上含有する野菜であるか否かは、野菜中のでんぷん量が炭水化物の量から食物繊維総量を減じた量にほぼ相当する場合には、そのようにして求めた値に基づいて判断することができる。炭水化物の量及び食物繊維総量は、当業者であれば、公知の方法を用いて測定することができるが、「五訂増補日本食品標準成分表」に基づいてもよい。
【0012】
本明細書で野菜に関し「搾汁液」というときは、特別な場合を除き、野菜を収穫後、所望により加熱、非可食部の除去、細断、粉砕等の工程を経て、そして圧搾、遠心分離等の工程により、汁液として得たものをいう。他の工程、例えば、ろ過、酵素処理を経ていてもよい。搾汁液は、ストレート汁であってもよく、濃縮されたものであってもよい。搾汁液には、清澄汁及び糖化処理液が含まれる。但し、本明細書で野菜に関し「搾汁液」というときは、特別な場合を除き、後述する野菜の乳酸発酵物は含まない。清澄汁は、野菜の搾汁液について沈殿物を生じないように清澄化処理を施したものである。清澄化処理工程としては、例えば、酵素処理、遠心分離、ろ過があり、これらの工程を単独で又は組合せて用いることができる。糖化処理液は、野菜の搾汁液について後述する糖化処理を施したものである。
【0013】
本発明の飲料には、糖類が含まれる。本明細書で「糖類」というときは、特別な場合を除き、果糖、ブドウ糖、ショ糖、及びマルトースをいう。また、本明細書で飲料に関し、糖類含量をいうときは、特別な場合を除き、糖、ブドウ糖、ショ糖、及びマルトースそれぞれの含量の合計をいう。飲料中の糖類含量は、当業者であれば公知の方法を用いて測定することができる。
【0014】
本発明の飲料中の糖類は、砂糖類(例えば上白糖、グラニュー糖、液糖)、でんぷん糖類(例えば、水あめ、ブドウ糖、果糖、異性化液糖)、はちみつ、メープルシロップ等として添加されたものであることもあり、後述する糖化処理の結果生じたものであることもある。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、野菜搾汁液は、糖化処理されたものを含み、糖化処理液のみからなるものであってもよく、糖化処理液とそれ以外の搾汁液との混合物であってもよい。糖化処理液の使用は、飲料に対し、非常に強い甘味と、野菜固有の特徴的な複雑な味わいを付与しうる点で好ましい。本明細書で「糖化処理」というときは、特別な場合を除き、野菜(粉砕等の処理をしてもよい。搾汁液としてもよい。)にアミラーゼを作用させ、含まれるでんぷんを加水分解する工程を含む処理をいう。アミラーゼには、α−アミラーゼ(液化酵素ということもある)、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼが含まれる。糖化処理においては、アミラーゼは、複数のものを、同時に又は順に用いることができる。本発明において糖化処理に用いることができるアミラーゼは、食品の処理に用いることができるものであれば特に制限はない。糖化処理は、通常、前処理(原料野菜を破砕し、必要に応じ、加水し、加熱する。)、酵素添加、反応(必要に応じ、加温し、撹拌する。)、分離、殺菌の工程を経る。糖化処理の条件は、当業者であれば適宜設定することができる。
【0016】
本発明の飲料には、乳酸が含まれる。乳酸は、添加されたものであることもあり、後述の乳酸発酵の結果生じたものであることもある。飲料中の乳酸含量は、当業者であれば公知の方法を用いて測定することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、野菜の乳酸発酵物を含む。乳酸発酵物の使用は、野菜飲料に乳酸をもたらすことによる本発明の好ましい効果、すなわち「甘味のキレがよくなり、収斂味が減少する」効果に加えて、製造における加熱殺菌等で発生する不快臭が減少し、旨味とまろやかさの向上した飲料を得ることが可能になる点で、また飲料に対し、独特の外観(例えば、紫色系のサツマイモを原料とする場合には、薄い赤ワイン様の色、透明感等)を付与しうる点で好ましい。本明細書で「乳酸発酵物」というときは、特別な場合を除き、野菜又は野菜処理物(粉砕、搾汁、糖化等の処理をしたもの。)を乳酸菌で発酵させたものをいう。乳酸菌は、食品に用いることのできるものであれば特に制限はなく、Lactobacillus属の菌を用いることが好ましく、例えばLactobacillus brevisLactobacillus plantarumLactobacillus caseiを用いることができる。
【0018】
乳酸発酵は、通常、原料(破砕物、搾汁液等)の殺菌、スターター接種、培養(30℃前後、24時間前後)、分離、殺菌、冷却の工程を経る。発酵は、当業者であれば、適宜条件を設定して行うことができる。発酵は、乳酸含有量が0.5g/L以上、好ましくは1.0g/L以上、より好ましくは2.5g/L以上、さらに好ましくは5.0g/L以上となるまで行う。あるいは、酸度を指標として、0.03%以上、好ましくは0.6%以上、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.30%以上となるまで行う。乳酸発酵の進行度の指標としてpHを用いてもよい。これらの指標は、当業者であれば公知の手法を用いて測定することができる。例えば乳酸量は、液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0019】
本発明の飲料の乳酸含量は、0.1〜1.5g/Lである。乳酸含量は、甘味のキレがさらに増すとの観点からは、好ましくは0.14〜1.13g/Lであり、味わいに複雑さが増し、野菜のおいしさをより強く感じることができるとの観点からは、より好ましくは0.19〜0.76g/Lであり、収斂味が後口にほとんど感じられなくなり、加熱した野菜の風味に非常に近くなるとの観点からは、さらに好ましくは0.38〜0.5g/Lである。なお、本発明は、野菜飲料を得るための飲料濃縮物も提供するが、本発明の飲料濃縮物における乳酸含量は、濃縮の度合を考慮したものとなる。例えば、飲用時には2倍に希釈される飲用濃縮物における乳酸含量は、0.2〜3.0g/L、好ましくは0.28〜2.26g/L、より好ましくは0.38〜1.42g/L、さらに好ましくは0.76〜1.0g/Lである。
【0020】
本発明の飲料においては、乳酸/糖類の重量比が0.01〜0.12である。甘味のキレがさらに増すとの観点からは、好ましくは0.01〜0.09であり、味わいに複雑さが増し、野菜のおいしさをより強く感じることができるとの観点からは、より好ましくは0.014〜0.058であり、収斂味が後口にほとんど感じられなくなり、加熱した野菜の風味に非常に近くなるとの観点からは、さらに好ましくは0.029〜0.04である。
【0021】
飲料において上記の範囲より乳酸が多い場合、収斂味が強く、原料の持つほのかな甘味が感じられなくなる。一方、糖類が多い場合、甘味が強すぎて、キレの悪い飲料となる。このように、糖類と乳酸とを、適切な量・比で用いることにより、野菜飲料の甘味のキレがよくなり、収斂味が低減しうる。従来技術によると、クエン酸やリンゴ酸などの有機カルボン酸を甘味を呈する食品において使用することにより、甘味を抑制することができ、コクがあってキレが良く、清涼感のある甘味を有する食品を得ることができるとされていた(特開2000-175651(特許3250535))。これに対し、本発明者らの検討によると、野菜飲料中の特定量の乳酸は、好ましい甘味を保持したまま甘味のキレを向上させることができる。また、収斂味を抑制することができる。このような効果は、乳酸以外の有機酸では得られない。
【0022】
本発明の飲料は、特に好ましい態様において、(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の搾汁液であって糖化処理されたもの、及び(B)該野菜の乳酸発酵物を含む。配合比は、同糖度が得られる量に換算した場合に重量比で(A):(B)=20〜95:80〜5である。甘味のキレがさらに増すとの観点からは、好ましくは(A):(B)=40〜95:60〜5であり、味わいに複雑さが増し、野菜のおいしさをより強く感じることができるとの観点からは、より好ましくは(A):(B)=60〜90:40〜10であり、収斂味が後口にほとんど感じられなくなり、加熱した野菜の風味に非常に近くなるとの観点からは、さらに好ましくは(A):(B)=70〜80:30〜20、(但し、(A)+(B)=100)である。
発明の効果
【0023】
野菜搾汁液を原料とする野菜飲料に適切な量の乳酸を添加することにより、収斂味を目的の野菜飲料に付与することなく、かつ甘味を保持したまま甘味のキレが改善される。また、収斂味を有する野菜を原料とする場合には、その収斂味が改善されうる。
【0024】
さらに糖化処理された搾汁液と乳酸発酵された搾汁液とを用いることにより、これまでの野菜汁含有飲料では不十分であった加熱調理した甘味のある野菜のおいしさが十分感じられるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の飲料は、アルコール飲料とすることができる。アルコール含量は、特に制限されないが、1〜25v/v%、好ましくは4〜18v/v%、より好ましくは8〜14v/v%とすることができる。飲料濃縮物においてば、濃縮の度合を考慮したものとなる。例えば、飲用時には2倍に希釈される飲用濃縮物におけるアルコール含量は、2〜50v/v%、好ましくは8〜36v/v%、より好ましくは16〜28v/v%とすることができる。使用するアルコールは、種類、製法、原料等特に限定されないすべての飲用アルコールを指す。例えば、原料用アルコール(糖蜜を原料とするニュートラルスピリッツ、穀物を原料とするグレーンスピリッツ等)、蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ブランデー、ジン等)、醸造酒類(清酒、果実酒等)、発泡酒、混成酒類(合成清酒、甘味果実酒、リキュール等)等の飲用可能なアルコールを、1種又は複数を組合せて用いることができる。
【0026】
本発明の一態様において、アルコールとして白ワイン及びニュートラルスピリッツを単独で又は組合せて用いることで、微生物管理や香味等の観点において特に好ましいアルコール飲料を得ることができる。白ワインは、ワイン特有のまろやかな味わいが野菜搾汁液の旨みと非常に相性がいいだけでなく、含有亜硫酸によって微生物管理の観点からより安定な飲料(特に容器詰飲料)を製造することができる点で好ましい。
【0027】
本明細書において、飲料中の野菜搾汁液又は野菜処理物の含量をいうときは、特別な場合を除き、糖度を基準にストレート汁に換算した場合の含量をいう。糖度は、既存の屈折計を用いて、Brix(Bx.)として表すことができる。例えば、濃縮原料を用いた場合には、濃縮されていない汁(ストレート汁)の基準糖度であるが得られる量に換算し、上記の配合比を決定することができる。不足分や超過分は水の配合量で調整する。
【0028】
本発明の飲料には、原料として、さつまいも、じゃがいも、さといも、ながいも、かぼちゃ、あずき、えんどう、大豆、くり、そらまめ、とうもろこし、にんにく、わさび、れんこんを好適に用いることができる。特に好ましい例は、さつまいも、かぼちゃ、くり、あずき、とうもろこしである。
【0029】
サツマイモを用いる場合、種類は特に限定されるものではなく、紫色系、オレンジ系(、黄色系、白色系のいずれを用いてもよい。品種も特に限定されず、例えば、アヤムラサキ、山川紫、種子島紫、ベニハヤト、サニーレッド、ジェイレッド、ベニオトメ、ジョイホワイト、コガネセンガン、べにまさり、アヤコマチ、ムラサキマサリ、パープルスイートロード、ツルセンガン、しんや、ツクバコマチ、ベニアズマ、ベニハヤト、シロユタカ、シロサツマ、サツマヒカリ、ハイスターチ、フサベニ、ツクバコマチ2号、クサノ1号、茜金時、ヒタチレッド、総の秋、サツマスターチ、スイート ガーデン、エレガントサマー、安納紅、安納こがね、種子島ろまん、種子島ゴールドを用いることができる。
【0030】
かぼちゃを用いる場合、種類は特に限定されず、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃのいずれも用いることができる。品種も特に限定されず、例えば、黒皮、菊座、鹿ヶ谷、ちりめん、えびす、黒皮栗、青皮栗、赤皮栗、雪化粧、福ひょうたん、IP−41、DML−82、輝虎、万次郎、海谷節成、くりさんご、華ほまれ、プッチィーニ、北のこころ、雪太郎、くり坊、味太郎、コリンキー、虹ロマン、ニューなかやま、白力を用いることができる。
【0031】
くりを用いる場合、種類は特に限定されず、日本ぐり、中国ぐりのいずれも用いることができる。品種も特に限定されず、丹沢、国見、人丸、利平、筑波、銀寄(丹波栗)、石鎚、岸根、晩赤、石島、白栗、六甲1号、神鍋、谷本早生、五十波、西播磨、七立、長谷川、相模、清里、オータムポロン、オータムコロン、板栗(バンリー)を用いることができる。
【0032】
あずきを用いる場合、種類は特に限定されず、赤(あずき色)系統、黒系統、白系統、緑系統、茶系統、灰白系統、斑紋系統、白地赤斑系統のいずれも用いることができる。品種も特に限定されず、大納言、新備中大納言、兵庫大納言、ほくと大納言、白雪大納言、とよみ大納言、新京都大納言、夢大納言、ベニダイナゴン、カムイダイナゴン、エリモショウズ、ハツネショウズ、サホロショウズ、アケノワセ、きたのおとめ、しゅまり、ときあかり、きたほたるを用いることができる。
【0033】
とうもろこしを用いる場合、種類は特に限定されず、スイートコーン(甘味種)、ポップコーン(爆裂種)、デントコーン(馬歯種)、フリントコーン(硬粒種)、ワキシーコーン(もち種)、ソフトコーン(軟粒種)、ポッドコーン、ジャイアントコーン のいずれも用いることができる。品種も特に限定されず、ユメソダチ、ナスホマレ、はたゆたか、タチタカネ、P3358、メロディスイート、ピーター早生1号、Na30、スイートメモリー、Tos12、さとゆたか、シシリア、ジャンナ、ナスティア、ディアHT、サヤカ、ブラバータ、マダレーナ、Na50、サマースイート、スイートエール、Mi19、Mi29を用いることができる。
【0034】
本明細書では、以下、サツマイモを例に説明することがあるが、特別な場合を除き、その説明は、かぼちゃ、くり、あずき、とうもろこしにもあてはまる。
本発明の飲料の原料として、サツマイモを用いる場合、サツマイモ搾汁液をそのまま用いるのではなく、糖化処理後にろ過処理して得られた清澄サツマイモ汁、及び乳酸菌で発酵させた乳酸発酵サツマイモ汁を混合することにより、サツマイモ汁特有の不快香味は除去され、甘みのあるサツマイモの美味しさがより感じられる。このような野菜飲料は、本発明の特に好ましい一例である。
【0035】
サツマイモを用いる場合、糖化処理は以下のように実施することができる:仕込み(水、サツマイモを蒸煮して破砕) => 酵素処理=>搾汁=>濾過=>殺菌 => 充填 => 冷却。また、乳酸発酵工程は、以下のように実施することができる:乳酸発酵サツマイモ汁の製造プロセスを以下に示す:清澄サツマイモ汁 => 殺菌 => スターター接種(Lactobacillus caseiを使用。30℃前後) => 培養(30℃前後、24時間前後) => 遠心分離 => 殺菌 => 充填 => 冷却。
【0036】
本発明の飲料には、所望により、その他糖質(オリゴ糖など)、酸味料、色素、香料、酸化防止剤等を添加することができる。
本発明の飲料は、容器詰飲料とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
実施例1〜6
でんぷん質を多く含む野菜類、イモ類、豆類、種実類のうちサツマイモについて実施した。
【0038】
常法に従って下記表1に示す組成のサツマイモ汁含有飲料を得た。清澄サツマイモ汁として、アヤムラサキ濃縮汁(製造:宮崎農協果汁株式会社、Brix.50、酸度0.16%)を用いた。また、乳酸発酵物として、乳酸発酵サツマイモ汁(製造:大洋香料株式会社、Brix.15、酸度0.33%)を用いた。ニュートラルスピリッツは、糖蜜を原料とし、アルコール度数59%のものを用いた。ブリックス度は、アタゴ社製デジタル屈折計 RX-5000αを用いて測定した。酸度は果実飲料の日本農林規格検査法に従って測定した。
【0039】
清澄サツマイモ汁の製造プロセスを以下に示す:仕込み(水、サツマイモを蒸煮して破砕) => 酵素処理=>搾汁=>濾過=>殺菌 => 充填 => 冷却。
乳酸発酵サツマイモ汁の製造プロセスを以下に示す:清澄サツマイモ汁 => 殺菌 => スターター接種(30℃前後) => 培養(30℃前後、24時間前後) => 遠心分離 => 殺菌 => 充填 => 冷却。乳酸菌発酵にはLactobacillus caseiを用いた。
【0040】
甘味のキレ及び収斂味及び総合点は、6名のパネルにより官能評価を行った。甘味のキレ及び収斂味は、ともに実施例1の評価点を「1」とした。甘味のキレは、キレが非常に良いを5、良いを4、ふつうを3、悪いを2、非常に悪いを1とし、収斂味は、まったく感じないを5、ほとんど感じないを4、少し感じるを3、強く感じるを2、非常に強く感じるを1とした。総合点は、非常においしいを5、おいしいを4、ふつうを3、あまりおいしくないを2、全くおいしくないを1とし、その平均値を表2に示した。
【0041】
実施例1では収斂味は普通だが後口にべったりとした甘味が残り、実施例2では甘味のキレは良くなるが、甘味と酸味を別々に感じてイモらしいおいしさが減った。実施例3でも甘味のキレは良くなるが後口に収斂味を強く感じ、実施例4では甘味のキレが良く、後口の収斂味もあまり感じずサツマイモのおいしさが感じられた。実施例5では味わいに複雑さが増し、サツマイモのおいしさがより強く感じられ、実施例6ではさらに甘味のキレが良かった。
【0042】
糖分析は以下の条件で行い、果糖、ブドウ糖、ショ糖、マルトースの合計を糖類として算出した。
[使用機器] Hewlett Packard 1100 series 液体クロマトグラフィー、[カラム] 関東化学 LichroCART 250-4.0 Lichrospher 100 NH2(5μm)、[溶媒] アセトニトリル:水=75:25、[カラム温度] 40℃、[流速] 1.0ml/min、[検出器] RI、[リテンションタイム] 果糖=5.37min,ブドウ糖=5.86min,ショ糖=7.48min,マルトース=8.48min。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
実施例7〜14
常法に従って下記表3に示す組成のサツマイモ汁含有飲料を得た。清澄サツマイモ汁はアヤムラサキ濃縮汁(製造:宮崎農協果汁株式会社、Brix.50、酸度0.16%)を、乳酸発酵物は、乳酸発酵サツマイモ汁(製造:大洋香料株式会社、Brix.15、酸度0.33%)を、ニュートラルスピリッツは、糖蜜を原料とし、アルコール度数59%のものを用いた。
清澄サツマイモ汁と乳酸発酵サツマイモ汁の配合量は、同糖度Bxに換算したときの量が表4に記載の配合比となるよう決定した。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
実施例7〜14について、糖類分析、有機酸分析と官能評価の結果を表5に示す。有機酸分析は以下の条件で行った。
[使用機器] Hewlett Packard 1100 series 液体クロマトグラフィー、[カラム] BIO-RAD HPX-87H Ion Exclusion Column 300mm×7.8mm、[溶媒] 2.5mmol/L硫酸、[カラム温度] 40℃、[流速] 0.6ml/min、[波長] 0min〜214nm,8.8min〜230nm,11.0min〜214nm、[リテンションタイム] クエン酸=7.75min,リンゴ酸=9.38min, 乳酸=12.54min。
【0049】
実施例7では収斂味は普通だが後口に甘味が残り、実施例14では酸味が強くて後口に収斂味を強く感じるため、実施例8〜実施例13がおいしく感じられた。さらに実施例8〜11がより酸味や収斂味を後口に感じず、すっきりとした甘味でさつまいものおいしさがより感じられた。なかでも実施例10が甘みや酸味、収斂味が後口にほとんど感じず、加熱したサツマイモの風味に非常に近くてもっともおいしかった。
【0050】
【表5】

【0051】
同様にかぼちゃについても検討し、常法に従って下記表6に示す組成の香味的に優れたかぼちゃ汁含有飲料を得た。清澄かぼちゃ汁は、かぼちゃ濃縮汁(製造:ダンフーズ株式会社、Brix.60)を、乳酸発酵物は、乳酸発酵かぼちゃ汁(製造:大洋香料株式会社、Brix.14、酸度0.85%)を、ニュートラルスピリッツは、糖蜜を原料とし、アルコール度数59%のものを用いた。
【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜の搾汁液、糖類、及び乳酸を含有する飲料であって、野菜がでんぷんを6 w/w%以上含有するものであり、乳酸含量が0.1g/L〜1.5g/Lであり、かつ乳酸と糖類の重量比(乳酸/糖類)が0.01〜0.12である、飲料。
【請求項2】
1〜25v/v%のアルコールを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
野菜搾汁液が、糖化処理されたものを含む、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
野菜の乳酸発酵物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
野菜がサツマイモ又はかぼちゃである請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液であって糖化処理されたもの、及び
(B)該野菜の乳酸発酵物
を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項7】
(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液であって糖化処理されたもの、及び
(B)該野菜の乳酸発酵物
を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5(但し、(A)+(B)=100)の重量比で混合する工程を含む、飲料の製造方法。
【請求項8】
(A)でんぷんを6 w/w%以上含有する野菜の、搾汁液であって糖化処理されたもの、及び
(B)該野菜の乳酸発酵物
を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=20〜95:80〜5((但し、(A)+(B)=100)の重量比で混合する工程を含む、飲料の甘味改善方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料を得るための、飲料濃縮物。

【公開番号】特開2009−142198(P2009−142198A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322557(P2007−322557)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000001904)サントリー酒類株式会社 (319)
【Fターム(参考)】