説明

味マスキング被覆粒子、その調製方法および前記被覆粒子を含有する口腔内崩壊錠剤

本発明は、コア部を含む活性物質の被覆粒子であって、前記コア部が該活性物質および酸性化合物を含み、前記コア部が、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とする味マスキング用コーティングで被覆されている被覆粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質の味マスキング被覆粒子(taste-masking coated particles)、前記粒子を含有する経口処方剤、特に口腔内崩壊錠剤(orodispersible tablets)、および、前記粒子および前記錠剤を調製する方法に関する。
【0002】
本発明の文脈において、用語「口腔内崩壊錠剤」は、頬側口腔内で、唾液との接触から60秒未満、好ましくは40秒未満で、嚥下しやすい懸濁物を形成して崩壊することが可能な錠剤を意味する。
【背景技術】
【0003】
経口処方用に意図された多くの活性物質は、不快な、苦い、または刺激性の風味を呈する。経口処方剤の嗜好性を高め、結果として治療コンプライアンスを向上させるためには、このような風味をマスキングしなければならない。
【0004】
このような活性物質を味マスキング用に被覆することが、上記の問題を解決するために用いられる周知の手法である。
【0005】
味マスキングの要求に応じるような特定のポリマーが開発されている。これらのポリマーは、唾液のpH、すなわちpH6から8では不溶性であり、このことにより処方剤が頬側口腔内にある時に活性物質を舌と接触させず、一方、胃のpH、すなわちpH1から3では可溶性であって、このことにより活性物質の迅速放出と胃腸粘膜によるその吸収とを可能にするような、溶解プロファイルを示す。
【0006】
下記条件の両方が満たされた時に、上記ポリマーが完全に溶解して活性物質が放出される:
-被覆粒子の胃内滞留時間が十分に長いこと、
-胃のpHが十分に酸性であること。
【0007】
ある場合では、必ずしも両方の条件は満たされない。
【0008】
実際に、上記胃内滞留時間は非常に短い場合がある。それは、患者が何も食べておらず、胃が空の場合である。また、患者が薬物と一緒に大量の水を飲む場合も挙げられる。大量の水が幽門括約筋の反射的な開放を引き起こし、胃の内容物を十二指腸へ素早く送り出させるためでる。
【0009】
処方剤が、粒径数ミリメートル以下の多数の粒子で存在する場合は、幽門から十二指腸(pH 5.5から6.5)および空腸(pH 6から7)への通過が非常に速い。
【0010】
さらに、胃のpHは、患者が摂食していたか否かに非常に依存する。
【0011】
また、制酸剤の摂取も胃のpHを変化させ得、このときpHは大幅に上昇してほぼ中性のpHになる。
【0012】
このような場合に、上記被覆粒子は上記ポリマーがもはや可溶性ではなく浸透性でしかないような媒体中にあることになる。活性物質の放出は、フィルムの浸透性およびその厚みに依存する。したがって、活性物質の放出は遅延する。
【0013】
この問題点を回避するまたは最小限とするために、国際特許出願のWO91/16043において、頬側口腔内でのポリマー膜の溶解を防止または制限する目的で、pH5超でのみ可溶性のポリマー膜で活性物質を被覆し、そして酸性化合物を添加することが提案されている。
【0014】
しかしながら、このようなポリマー膜を酸性化合物と共に用いることは、活性物質を迅速に放出させねばならない場合には適当でない。このポリマーは胃のpHにおいて不溶性であり、胃のpHで損傷され得る活性物質を保護するために従来用いられる腸溶ポリマー(enteric polymers)であるからである。
【特許文献1】WO91/16043
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、WO91/16043で提案されている解決法は、味マスキング用コーティングを要する活性物質を迅速かつ完全に放出させるために適当でない。
【0016】
これまでのところ、いかなるpH値においても、すなわち腸管のいかなる準位でも活性物質を放出するような、味マスキング粒子含有経口処方剤は存在しない。
【0017】
したがって、この状況を改善して、たとえ胃のpH範囲外であっても活性物質を迅速かつ完全に放出させ、満足な味マスキング特性を示し、したがって、経口処方剤に、特に、好もしい嗜好性を呈する口腔内崩壊錠剤に含まれることが可能な活性物質粒子を開発することが強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ここで本出願人は、驚くべきことに、コア部を含む活性物質の被覆粒子であって、前記コア部が該活性物質および酸性化合物を含み、前記コア部が、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とする味マスキング用コーティングで被覆されている被覆粒子によって、これらの特性を達成できることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の文脈において、用語「可溶性ポリマー」とは、活性物質にこれを被覆した際の付着量に実質的に関係なく所定のpHに溶解して、in vivoまたはin vitroで、被覆なしの場合に放出されるであろう活性物質量の少なくとも80%(w/w)の活性物質を、1時間のうちに放出させる能力を有するポリマーを示す。
【0020】
本発明によれば、5を超えるpHにおいて、ポリマーは可溶性でなく浸透性である。前記pHにおいて、上記コア部に含まれる酸性化合物が、非常に酸性の微小環境を局所的に作り出す。このことによってポリマーが短時間で溶解し、その結果、コア部から活性物質が放出される。
【0021】
本発明の粒子の上記コア部に含まれる酸性化合物は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸またはこれらの混合物からなる群より選択される、製薬上許容される有機酸である。
【0022】
本発明に係る粒子の有利な一実施形態によれば、酸性化合物の分量は、被覆粒子の総重量に対して0.5から20%(w/w)、好ましくは5から15%(w/w)、さらに好ましくは5から10%(w/w)の範囲である。
【0023】
本発明に係る被覆粒子のコア部は、胃腸鎮静剤、制酸剤、鎮痛剤、抗炎症剤、冠状血管拡張剤、末梢血管拡張剤および中枢血管拡張剤、抗感染剤、抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫剤、ダニ駆除剤、抗不安剤、神経遮断剤、中枢神経系刺激剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤、下痢止め剤、緩下剤、栄養補給剤、免疫抑制剤、低コレステロール剤(hypocholesterolemiants)、ホルモン、酵素、抗痙攣剤(antispasmodics)、心調律に作用する薬物、動脈性高血圧の治療に用いられる薬物、抗偏頭痛剤、抗凝血剤、鎮痙剤(antiepileptics)、筋弛緩剤、糖尿病の治療に用いられる薬物、甲状腺機能不全の治療に用いられる薬物、利尿剤、食欲抑制物、抗ぜん息剤、去痰剤、咳止め剤、粘液調整剤、うっ血除去剤(decongestionants)、催眠剤、制吐剤、造血剤、尿酸排泄剤、ハーブ抽出物、造影剤、またはその他任意のファミリーの化合物、あるいはこれらの混合物を含む群から選択される少なくとも一つの活性物質を含む。
【0024】
本発明は、酸性媒体中で、例えば胃の中や酸性化合物により作り出された微小環境中で不安定であり、経口投与について胃保護を必要とする活性物質(例えばオメプラゾール、ランソプラゾール)、または、胃粘膜を刺激し、潰瘍性作用ゆえに徐放の必要がある活性物質(例えばジクロフェナク、エリスロマイシンおよびその誘導体ならびにドキシサイクリンなど)には適さない。
【0025】
初め微粉形態または微結晶形態である活性物質は、粒子の調製には乾燥状態で用いられ、不活性担体上に層状化するために、有機または水性の、溶液または懸濁物の形態で用いられる。
【0026】
本発明に係る粒子において、上記コア部は、不活性担体、バインダー、希釈剤、静電気防止剤およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの成分をさらに含んでもよい。
【0027】
不活性担体は、特に結晶または非晶質の形態で存在する、いかなる化学的および薬学的に不活性な賦形剤で存在してもよい。例として、ラクトース、スクロース、加水分解澱粉(マルトデキストリン)、セルロースまたはこれらの混合物などの糖誘導体が挙げられる。
【0028】
スクロースおよび澱粉の混合物、またはセルロースを主とした混合物もまた、球状不活性担体として用いられる。不活性担体粒子の粒径は50から500μm、好ましくは90から150μmの範囲である。
【0029】
バインダーの分量は、被覆されていない粒子の総重量に対して15重量%まで、好ましくは10重量%までであり得る。前記バインダーは、特にセルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポビドン、コポビドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、澱粉、予備糊化澱粉、スクロールおよびこれらの誘導体、グアーガム、ポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0030】
希釈剤の分量は、被覆されていない粒子の総重量に対して95重量%まで、好ましくは50重量%までであり得る。前記希釈剤は、セルロース誘導体、好ましくはマイクロクリスタリンセルロース、ポリオール、好ましくはマンニトール、澱粉、糖誘導体、例えばラクトース、を含む群から選択される。
【0031】
静電気防止剤の分量は、被覆されていない粒子の総重量に対して10重量%まで、好ましくは3重量%までであり得る。前記静電気防止剤は、コロイド状シリカ(Aerosil(登録商標))、好ましくは沈降シリカ、特にSylold(登録商標) FP244の商標で入手可能な沈降シリカ、微粉(micronised)または非微粉(non micronised)タルク、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0032】
本発明によれば、活性物質および酸性化合物を含む前記コア部は、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とする味マスキング用コーティングで被覆されている。
【0033】
有利な一実施形態によれば、前記ポリマーはメタクリル酸ポリマーまたはメタクリル酸コポリマーであり、好ましくは(ブチルメタクリレート-コ-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-コ-メチルメタクリレート) 1:2:1のコポリマー(平均重量約150,000を示す。EUDRAGIT(登録商標) E100またはEUDRAGIT(登録商標) EPOの商標でROHM社より入手可能。)である。
【0034】
コーティングフィルムの厚みは、唾液のpHにおける前記活性物質の溶解性、およびその不快味の程度に依存する。一般的に、前記厚みは約5から75ミクロンの範囲である。
【0035】
ポリマーの分量は、被覆されるコア部の重量に対する重量増加分として、5から60%の範囲であり;好ましくは10から20%の範囲である。
【0036】
別の実施形態によれば、前記コーティングは、静電気防止剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、甘味料、着色料、香味料およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの成分をさらに含む。
【0037】
可塑剤は、トリアセチン、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリブチルシトレート、ジエチルフタレート、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、モノアセチル化グリセリド、ジアセチル化グリセリド、またはこれらの混合物からなる群より選択される。可塑剤は、コーティングポリマーの多くとも約40重量%、好ましくは15から30重量%の割合で用いられる。
【0038】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群より選択される。界面活性剤は、コーティングポリマーの多くとも約20重量%、好ましくは5から15重量%の割合で用いられる。
【0039】
静電気防止剤は、微粉または非微粉タルク、コロイド状シリカ(Aerosil 200)、加工シリカ(Aerosil R972)、沈降シリカ(Syloid FP244)、およびこれらの混合物からなる群より選択される。静電気防止剤は、コーティングポリマーの多くとも約10重量%、好ましくは0から3重量%、さらに好ましくは1重量%未満の割合で用いられる。
【0040】
滑剤は、マグネシウムステアレート、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマレート、微粉ポリオキシエチレングリコール、ナトリウムベンゾエートおよびこれらの混合物からなる群より選択される。滑剤は、コーティングポリマーの多くとも約10重量%、好ましくは0から3重量%、さらに好ましくは1重量%未満の割合で用いられる。
【0041】
有利には、前記被覆粒子の粒径は100から800μm、好ましくは200から500μmの範囲である。
粒径は、ふるい分け法やレーザー回折法など従来の手法によって測定する。
【0042】
本発明はさらに、上述の被覆顆粒を調製する方法にも関する。
上記方法は、
-活性物質と、酸性化合物と、場合により、不活性担体、バインダー、静電気防止剤、希釈剤、浸透剤およびこれらの混合物で存在する群から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含有する粒子を調製する工程、
-該粒子に、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とするコーティング組成物を噴霧することにより、該粒子を被覆する工程、
-かくして得られた被覆顆粒を乾燥する工程、
を含む。
【0043】
この方法において、混合、造粒および被覆工程を、互いに別個の装置内で実施してもよいし、同一の装置内で実施してもよく、各工程を、互いに同一または異なる賦形剤混合物の存在下で行ってよい。
【0044】
有利な一実施形態においては、各工程を、例えば(限定はされない)Glatt GPCG-1、GPCG-5またはGPCG 120などの空気流動床(fluidized air-bed)上で実施する。
【0045】
有利な一実施形態によれば、造粒に用いられるポリマーと被覆に用いられるポリマーとは同一である。造粒工程は、賦形剤混合物の噴霧流速、霧化圧など操作上のパラメータにおいて、被覆工程と異なる。
【0046】
有利には、賦形剤混合物の10から30%を造粒工程の間に噴霧し、被覆工程の間に100%まで全量を噴霧する。
【0047】
造粒については、ボトムスプレー造粒、タンジェンシャルスプレー造粒、トップスプレー造粒または高速攪拌造粒を用いることができ、ボトムスプレー造粒が好ましい。
【0048】
被覆については、ボトム、トップおよびタンジェンシャルスプレー方式ならびにレイヤリング式を用いることができ、ボトムスプレー式の被覆が好ましい。
【0049】
第一の実施形態によれば、上記粒子の調製は、
-微粉形態または結晶形態の活性物質と、酸性化合物と、場合により、希釈剤および静電気防止剤とを乾式混合する工程、
-かくして得られた混合物を、当該造粒のタイプに応じて乾燥または湿潤形態のバインダーを用いて造粒する工程、
-乾燥工程、
を含む。
【0050】
流動空気装置(fluidized air apparatus)を用いる場合、活性物質の微粉混合物と、場合により希釈剤および静電気防止剤とを装置に充填した後、そこに、少なくともバインダーを含む賦形剤混合物の溶液または懸濁物を噴霧する。
【0051】
第二の実施形態によれば、上記粒子の調製は、
-不活性担体上に、活性物質および酸性化合物を含有する溶液または懸濁物を噴霧する工程(両方とも、同時または連続的に噴霧する)、
-乾燥工程、
による。
【0052】
第三の実施形態によれば、上記粒子の調製は、
-活性物質粒子を供給する工程、
-これに酸性化合物溶液を噴霧する工程、
-乾燥工程、
を含む。
【0053】
上述の方法によって得られた粒子を、次いでこれに、水、有機アルコール(エタノール、イソプロパノールなど)、アセトン、およびこれらの混合物からなる群より選択される溶媒中の、溶液、分散物、コロイド分散物、または懸濁物として上記ポリマーを含有するコーティング組成物を噴霧し、その後、乾燥することによって被覆する。
【0054】
好ましくは、各工程を、当該装置におけるスプレー噴出口の位置および方向の両方を選択可能な流動空気装置にて行う。
この選択により、粒子の成長速度をチェックし、活性物質、バインダー組成物またはコーティング組成物の性質および処理の各種パラメータが原因の接着現象を回避することが可能となる。
【0055】
本発明に係る被覆粒子は、いかなる経口処方剤にも用いることができ、特に、処方中の被覆粒子が唾液と接触するような処方剤に適している。
【0056】
本発明の別の主題は、前記被覆粒子を含有する経口処方剤である。
【0057】
前記経口処方剤は、一包に入った調合薬粉末、または、液状を呈する飲用懸濁剤もしくは服用前に水を加える必要のある即席調合用の飲用懸濁剤、または口腔内崩壊型錠剤もしくは少量の水中で崩壊する錠剤であり得る。
【0058】
有利な一実施形態によれば、本発明の経口処方剤は、頬側口腔内で、唾液との接触から60秒未満、好ましくは40秒未満で崩壊または溶解して、嚥下しやすい被覆粒子懸濁物を形成するよう意図された口腔内崩壊錠剤である。
【0059】
「崩壊時間」は、当該錠剤を唾液と接触するように頬側口腔に置いた時点から、錠剤を噛むことなく崩壊により発生した懸濁物が嚥下される時点までの時間に相当する。
【0060】
例えば、口腔内崩壊型の多顆粒錠剤が、EP 548356, EP 636364, EP1003484, EP 1058538, WO 98/46215, WO 00/06126, WO 00/27357およびWO00/51568において既に記載されている。これらの内容は参照として本明細書に組み込まれる。活性成分は、被覆された微結晶または被覆された微小顆粒の形態にある。
【0061】
頬側口腔において、唾液の存在下で錠剤が崩壊または溶解した時点で被覆粒子が放出される。次いでこれらが嚥下されて、胃腸管(胃、十二指腸)内のこれらが位置する場所で、すなわち、周囲のpHに関わりなく、活性物質を放出する。
【0062】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、上述の被覆顆粒と、少なくとも一つの崩壊剤、可溶性希釈剤(soluble diluent agent)、滑剤ならびに場合により膨潤剤、浸透剤、静電気防止剤、甘味料、香味料および着色料を含む賦形剤混合物とを含有する。
【0063】
前記口腔内崩壊錠剤の有利な一実施形態では、賦形剤混合物の被覆顆粒に対する比率が重量で0.4対10重量部(0.4 to 10 parts by weight)、好ましくは1対5重量部(1 to 5 parts by weight)である。
【0064】
崩壊剤は、クロスカルメロース、クロスポビドンおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0065】
それぞれ当該錠剤の重量を基準として、崩壊剤の割合は1から20重量%、好ましくは5から15重量%、混合物である場合は含まれる各崩壊剤がそれぞれ0.5から15重量%、好ましくは5から10重量%であり、可溶性剤(soluble agent)の割合は20から90重量%、好ましくは30から50重量%である。
【0066】
希釈剤は、特にラクトース、セルロース誘導体、好ましくはマイクロクリスタリンセルロース、および結合特性を有する可溶性剤、好ましくは、13個未満の炭素原子を有するポリオール、を含む群より選択される。
【0067】
13個未満の炭素原子を有するポリオールは、好ましくは、マンニトール、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールに属する群より選択される。
【0068】
希釈剤は、平均粒径100から500μmの直接圧縮可能な製品(directly compressible product)の形態または平均粒径100μm未満の粉末形態であり、この粉末は単独でまたは直接圧縮可能な製品と混合して用いられる。
【0069】
好ましい一実施形態によれば、上記ポリオールは直接圧縮可能な製品の形態で用いられる。
【0070】
第二の好ましい実施形態では、直接圧縮可能なポリオールと粉末状ポリオールとの混合物が用いられる。この場合、この場合にポリオールは互いに同一であり得、直接圧縮可能なポリオールの粉末ポリオールに対する比率は99/1から20/80、好ましくは80/20から20/80である。
【0071】
滑剤は、マグネシウムステアレート、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマレート、微粉ポリオキシエチレングリコール、ナトリウムベンゾエートおよびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0072】
滑剤の分量は0.02から2パーセント、好ましくは0.5から1パーセント(滑剤重量/錠剤重量)である。
【0073】
滑剤は、賦形剤混合物中に分散されていてよく、あるいは、有利な一実施形態で、錠剤の表面に分散されていてもよい。
【0074】
膨潤剤は、マイクロクリスタリンセルロース、澱粉、変性澱粉、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0075】
膨潤剤の割合は、錠剤の重量を基準として1.0から15重量%である。
【0076】
静電気防止剤は、コロイド状シリカ、沈降シリカ、微粉または非微粉タルク、およびこれらの混合物からなる群より選択される。静電気防止剤の割合は、錠剤の重量に対して0.5重量%から5重量%である。
【0077】
用いられる浸透剤は、商標Syloid(登録商標)でよく知られる沈降シリカのような水性溶媒に高親和性のシリカ、マルトデキストリン、β-シクロデキストリンおよびこれらの混合物を含む群より選択される化合物である。
【0078】
浸透剤により、唾液の浸透を促進する親水性ネットワークが作り出され、このことによって、錠剤の崩壊が助けられる。
【0079】
浸透剤の割合は、錠剤の重量を基準として0.5から5重量%である。
【0080】
甘味料、ならびに、場合により香味料および着色料もまた、賦形剤混合物に含まれて本発明の錠剤の構成要素の一部をなす。
【0081】
甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、スクラロース、モノアンモニウムグリシリジネート、およびこれらの混合物を含む群より選択され得る。
【0082】
香味料および着色料は、薬事分野において錠剤の調製に従来用いられるものである。
【0083】
有利な一実施形態によれば、前記賦形剤混合物は、
-1から25重量%、好ましくは5から10%重量%の崩壊剤および/または膨潤剤;
-30から90重量%、好ましくは40から70重量%の希釈剤;
-0.02から2重量%、好ましくは0.5 から1重量%の滑剤、
-0.5から5重量%の浸透剤、
を含む(各パーセンテージは錠剤の重量に対して算定される)。
【0084】
本発明はまた、上記被覆粒子を含む口腔内崩壊錠剤を調製する方法にも関する。
【0085】
本発明に係る方法は、
-上述の方法により得られた被覆粒子と、少なくとも一つの崩壊剤、可溶性希釈剤、滑剤ならびに場合により膨潤剤、浸透剤、甘味料、香味料および着色料を含む賦形剤混合物とを乾式混合する工程;
-得られた混合物を製錠して錠剤を得る工程、
による。
【0086】
上記製錠工程は、交互式(alternate)または回転式プレス機にて実施することができる。
上記製錠工程の間に用いられる力は、5kNから50kN、好ましくは5kNから15kNの範囲である。
【0087】
前記口腔内崩壊錠剤の硬度は1から10kp、好ましくは1から5kpである(例えばthe European Pharmacopeia(2.9.8)に記載の手法に従って測定した場合など。1kpは9.8Nである)。
【0088】
前記錠剤の硬度は、
-錠剤が、European Pharmacopeiaに従って測定した摩損度(friability)2%未満を示す、
-錠剤の溶解プロファイルが、それに含有される被覆粒子の溶解プロファイルと同一となる;および
-頬側口腔内での口腔内崩壊錠剤の崩壊時間が、60秒以下、好ましくは40秒以下となる、
ようなものである。
【0089】
前記錠剤の直径は6から17mmであってよい。これらは、円形、オーバル形、長円形であり得る。これらは、平坦または凹面の外表面を有し得、任意選択で印が付いていてもよい。
【0090】
口腔内崩壊錠剤の場合、ドーナツ型パンチ(polo punches)が有利に用いられる。
【0091】
投与量に応じて、前記錠剤は0.1から2.0グラムの重量を有する。
【0092】
本発明を、以下の実施例においてさらに詳細に説明する。これらの実施例はあくまで例示的なものであり、制限的なものではない。
【実施例】
【0093】
以下の実施例においては、下記の各製品を使用する。
-HPMC:商標Pharmacoat(登録商標)603にてSHIN-ETSU社から販売のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
-マンニトール:ROQUETTE社から販売のPearlitol(登録商標)200SD;
-マイクロクリスタリンセルロース:FMC社から販売のAvicel(登録商標)PH102;
-コロイド状シリカ:BASF社から販売のSyloid(登録商標)244FP;
-メタクリレートコポリマー:Rohm社から販売のEudragit(登録商標)E100;
-Sucralose:SPLENDAにて販売。
【0094】
実施例1:フェキソフェナジン(fexofenadine) HClの被覆粒子
-Wursterノズル(ボトムスプレー)を備えたGPCG1 GLATT流動床中で、フェキソフェナジン HCl 1000g、バインダーとしてHPMC 300g(フェキソフェナジンに対して30重量%)およびクエン酸100g(フェキソフェナジンに対して10重量%)を含有する含水アルコール溶液を、サイズ80μmから150μmのスクロース結晶100グラムに噴霧した。
-Wursterノズルを備えたGPCG3 GLATT流動床中で、乾燥ポリマー重量に対して10重量%のコロイド状シリカを含むEuragit(登録商標)E100 アルコール溶液を、前の工程で得られたコア2400gに噴霧することによってこれを被覆する。
【0095】
Euragit(登録商標)E100の量は、コアの重量に対する増加重量として計算して30%であった。
被覆された粒子の最終処方を、以下の表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
実施例2:フェキソフェナジン HCl 30mgの口腔内崩壊錠剤
実施例1で得られた粒子を、表2の通りに賦形剤と混合した。こうして得られた混合物を、次いで、直径12mmの円形パンチ6個を装備したSVIAC PR6プレス機で製錠し、約30mgという投与単位を得た。
【0098】
【表2】

【0099】
得られた錠剤は、下記表3に記載の特性を示す。
【0100】
【表3】

【0101】
実施例3:フェキソフェナジン HCl 180mgの口腔内崩壊錠剤
実施例1で得られた粒子を、表4の通りに賦形剤と混合した。こうして得られた混合物を、次いで、直径16mmの円形パンチ6個を装備したSVIAC PR6プレス機で製錠し、約180mgという投与単位を得た。
【0102】
【表4】

【0103】
得られた錠剤は、下記表5に記載の特性を示す。
【0104】
【表5】

【0105】
実施例4:比較例
クエン酸の添加なしで、実施例1の通りに被覆粒子を調製した。
被覆粒子の最終処方を、以下の表6に示す。
【0106】
【表6】

【0107】
その後、上記実施例3の通りに口腔内崩壊錠剤を調製した。
得られた口腔内崩壊錠剤の組成を、以下の表7に示す。
【0108】
【表7】

【0109】
得られた錠剤は、下記表8に記載の特性を示す。
【0110】
【表8】

【0111】
実施例5:pH3とpH6.8での溶解プロファイル比較
実施例3および実施例4の口腔内崩壊錠剤について、pH=3およびpH=6.8における溶解プロファイルを作成する。
溶解の条件は以下の通りである。
-装置:USP タイプII
-回転速度:100rpm
-容積:900ml
-温度:37.0℃±0.5℃
-検出:220nmにおける直接UV分光光度法
-溶解媒体:
・pH=3の場合:HCl 0.001N
・pH=6.8の場合:リン酸緩衝液 pH=6.8
結果を以下の表9および表10に示す。
【0112】
【表9】

【0113】
【表10】

【0114】
胃のpHに等しいpHを示す媒体中では、有機酸はフェキソフェナジンの放出に影響を及ぼさない。pH=6.8では、比較例(コア部中に有機酸なし)のフェキソフェナジン放出は遅くなるのに対し、被覆粒子のコア部中に有機酸が存在すると、コーティングフィルムの可溶化が促進され、胃のpHに等しいpHを示す媒体中の放出と同程度のフェキソフェナジン放出が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部を含む活性物質の被覆粒子であって、前記コア部が該活性物質および酸性化合物を含み、前記コア部が、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とする味マスキング用コーティングで被覆されている被覆粒子。
【請求項2】
前記酸性化合物が、製薬上許容される有機酸である請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項3】
前記有機酸が、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、乳酸またはこれらの混合物からなる群より選択される請求項2に記載の被覆粒子。
【請求項4】
酸性化合物の量が、当該被覆粒子の総重量に対して0.5から20%(w/w)の範囲である請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項5】
酸性化合物の量が、当該被覆粒子の総重量に対して5から15%(w/w)の範囲である請求項4に記載の被覆粒子。
【請求項6】
酸性化合物の量が、当該被覆粒子の総重量に対して5から10%(w/w)の範囲である請求項5に記載の被覆粒子。
【請求項7】
前記コア部が、不活性担体、バインダー、希釈剤、静電気防止剤およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの成分をさらに含む請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項8】
前記コーティングが、静電気防止剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、甘味料、着色料、香味料およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一つの成分をさらに含む請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項9】
請求項1に記載の被覆粒子を調製する方法であって、
-活性物質と、酸性化合物と、場合により、不活性担体、バインダー、静電気防止剤、希釈剤、浸透剤およびこれらの混合物に属する群から選択される少なくとも一つの賦形剤とを含有する粒子を調製する工程、
-該粒子に、pH5以下では可溶性かつpH5超では浸透性であるポリマーを主材とするコーティング組成物を噴霧することにより、該粒子を被覆する工程、
-かくして得られた被覆顆粒を乾燥する工程、
からなる工程を含む調製方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のまたは請求項9に従って調製された被覆粒子と、少なくとも一つの崩壊剤、可溶性希釈剤、滑剤ならびに場合により膨潤剤、浸透剤、静電気防止剤、甘味料、香味料および着色料を含む賦形剤混合物とを含む、口腔内崩壊錠剤。
【請求項11】
賦形剤混合物の被覆顆粒に対する比率が重量で0.4対10重量部、好ましくは1対5重量部であり、賦形剤混合物が:
-少なくとも一つの崩壊剤、
-結合特性を示す可溶性希釈剤、
-滑剤、
-浸透剤、ならびに
-場合により甘味料、香味料および着色料
を含む請求項10に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項12】
崩壊剤が、クロスカルメロース、クロスポビドンおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項10または11に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項13】
結合特性を有する可溶性希釈剤が、13個未満の炭素原子を有する、平均粒径100から500μmの直接圧縮可能な製品の形態でも、平均粒径100μm未満の粉末形態でもよいポリオールからなり、このポリオールが好ましくは、マンニトール、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールを含む群より選択され、ソルビトールは単独では用いられ得ないと解され、結合特性を有する可溶性希釈剤が1種類のみの場合は直接圧縮可能な製品の形態で用いられ、結合特性を有する可溶性希釈剤が少なくとも2種類の場合はその一方が直接圧縮可能な製品の形態で存在し他方が粉末形態で存在すると解され、この場合にポリオールは互いに同一であり得、直接圧縮可能なポリオールの粉末ポリオールに対する比率は99/1から20/80、好ましくは80/20から20/80である請求項10ないし12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項14】
浸透剤が、商標Syloid(登録商標)で周知の沈降シリカのような、水性溶媒に高親和性のシリカ、マルトデキストリン、β-シクロデキストリンおよびこれらの混合物を含む群より選択される、請求項10ないし13のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項15】
滑剤が、マグネシウムステアレート、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマレート、微粉ポリオキシエチレングリコール(微粉 Macrogol 6000)、ナトリウムベンゾエートおよびこれらの混合物からなる群より選択される請求項10ないし14のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項16】
それぞれ当該錠剤の重量を基準として、崩壊剤の割合が1から20重量%、好ましくは5から15重量%であり、可溶性剤の割合が20から90重量%、好ましくは30から50重量%である、請求項10ないし15のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠剤。
【請求項17】
請求項10ないし16のいずれか一項に記載の口腔内崩壊錠剤を調製する方法であって、
-以上に記載の方法により得られた被覆粒子と、少なくとも一つの崩壊剤、可溶性希釈剤、滑剤ならびに場合により膨潤剤、浸透剤、甘味料、香味料および着色料を含む賦形剤混合物とを乾式混合する工程;
-得られた混合物を製錠して錠剤を得る工程、
を含む調製方法。

【公表番号】特表2007−524575(P2007−524575A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501923(P2006−501923)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001754
【国際公開番号】WO2004/066974
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501435026)
【Fターム(参考)】