説明

味付き固形食品の製造方法

【課題】固形食品本来の外観及び食感を過度に損なうことなくマヨネーズ風味に味付けしてある味付き固形食品の製造方法を提供する。
【解決手段】有機酸を1.5〜5.0%、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳から選ばれる一種又は二種以上を固形分換算で合計4〜20%、脂質を1〜50%含有し、かつ前記卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)が、脂質100部に対し10〜200部である粘度が100〜3000mPa・sの液状調味料を、固形食品表面に被膜状に付着する工程を有する味付き固形食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズ風味の味付き固形食品の製造方法に関し、より詳しくは、固形食品本来の外観及び食感を過度に損なうことなくマヨネーズ風味に味付けしてある味付き固形食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズは、卵黄又は全卵を乳化材として食用油脂を乳化し、食塩、食酢、香辛料などを加えた粘ちょうなソースである。マヨネーズは、乳化物であることから白色の外観を呈し、酸味やコク味が調和した特有の風味を有する。
【0003】
マヨネーズは、近年その用途が拡大しており、野菜だけでなく魚介類や肉類等を用いた様々な料理に使用されているものの、白色で粘ちょうな性質により料理の外観を損なう場合もあり、用途拡大の制約となっていた。料理の外観を損なわずにマヨネーズ風味を付与する方法としては、例えば、かまぼこのような水産加工食品などの場合、水産加工食品の製造過程ですり身混合物中にマヨネーズを練りこむ方法を考えられる。しかしながら、この場合、マヨネーズの酸としての性質や乳化物としての性質により、かまぼこの物性が変化して食材本来の食感が損なわれるという問題がある。
【0004】
従来、食材をマヨネーズ風味に味付けする調味料としては、例えば、特許文献1(特開平8−56608号公報)には粉末マヨネーズが提案されているが、このような粉末マヨネーズは食材表面に付着した粉末により食材本来の外観が損なわれるだけでなく、粉末化によりマヨネーズ特有の風味も損なわれやすい傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−56608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、固形食品本来の外観及び食感を過度に損なうことなくマヨネーズ風味に味付けしてある味付き固形食品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべくマヨネーズ風味を食材に付与する調味料の組成や調味方法について鋭意研究を重ねた。その結果、特定の組成に調製した液状調味料を固形食品表面に被膜状に付着するならば、意外にも当該固形食品はマヨネーズ風味に味付けされ、しかも、この場合、固形食品本来の外観及び食感が損なわれ難いことを見出し遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)、有機酸を1.5〜5.0%、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳から選ばれる一種又は二種以上を固形分換算で合計4〜20%、脂質を1〜50%含有し、かつ前記卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)が、脂質100部に対し10〜200部である粘度が100〜3000mPa・sの液状調味料を、固形食品表面に被膜状に付着する工程を有する味付き固形食品の製造方法、
(2)、固形食品100部に対し前記液状調味料0.1〜20部を、固形食品表面全体の少なくとも1/4以上に、塗布、噴霧、滴下又は浸漬により被膜状に付着させる(1)記載の味付き固形食品の製造方法、
(3)、前記有機酸の含有量が、前記卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)100部に対し15〜150部である(1)又は(2)記載の味付き固形食品の製造方法、
(4)、前記有機酸の一部又は全部として乳酸を用いる(1)乃至(3)のいずれかに記載の味付き固形食品の製造方法、
(5)、固形食品が、野菜類、肉類、米飯類、水産加工品、畜肉加工品、パン類又は焼き菓子である(1)乃至(4)のいずれかに記載の味付き固形食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、野菜類、肉類、米飯類、水産加工品、畜肉加工品、パン類又は焼き菓子などの様々な固形食品について、これら固形食品本来の外観及び食感を過度に損なうことなくマヨネーズ風味に味付けされた従来にない新規な美味しさを有する固形食品を提供することができる。したがって、これら味付き固形食品の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
本発明の固形食品の製造方法に用いる固形食品は、固形の食品であれば特に制限は無く、例えば、ニンジン、キャベツ、レタス、ジャガイモなどの野菜類、鶏肉、牛肉、魚介類などの肉類、おにぎり、すしなどの米飯類、かまぼこ、ちくわなどの水産加工品、ハム、ソーセージなどの畜肉加工品、ロールパン、食パンなどのパン類、及びせんべい、揚げ菓子、スナック菓子などの焼き菓子などが挙げられる。これら固形食品の中でも、野菜類、肉類又は米飯類は、マヨネーズ風味に味付けするにはマヨネーズを表面に付着させる方法しかなく、従来の一般的なマヨネーズで味付けした場合に、白色で粘ちょうなマヨネーズが表面に付着して固形食品の外観が損なわれていた。これに対し、本発明によれば、このような野菜類、肉類又は米飯類であっても、これら固形食品本来の外観を保ったままマヨネーズ風味に味付けされた味付き固形食品が得られることから、本発明は、これら野菜類、肉類又は米飯類の固形食品において好適に実施できる。一方、固形食品の中でも、水産加工品又は畜肉加工品は、マヨネーズ風味を付与する際に、水産加工品及び畜肉加工品の原料としてマヨネーズを配合し固形食品内部にマヨネーズを含有させる方法が考えられるが、これら水産加工品又は畜肉加工品は、酸性のマヨネーズにより物性が変化して固形食品本来の食感が損なわれやすい。これに対し、本発明によれば、このような水産加工品又は畜肉加工品であっても、これら固形食品本来の外観を保ったままマヨネーズ風味に味付けされた味付き固形食品が得られることから、本発明は、これら水産加工品又は畜肉加工品の固形食品において好適に実施できる。
【0012】
本発明の味付き固形食品の製造方法は、前記固形食品表面に、後述する特定の液状調味料を被膜状に付着する工程を有することを特徴とする。ここで、被膜状に付着するとは、固形食品表面の少なくとも一部を液状調味料が薄膜状に覆った状態で付着していることをいう。後述するように本発明の液状調味料は、従来の一般的なマヨネーズに比べて少量の添加で液状食品に充分にマヨネーズ風味を付与することができることから、本発明の味付き固形食品は、表面に被膜状に付着した液状調味料によりマヨネーズ風味を呈する。しかも、液状調味料は、表面に被膜状に付着しているため、固形食品の色調や物性に影響を与え難い。したがって、本発明の味付き固形食品は、固形食品本来の外観及び食感を過度に損なうことなくマヨネーズ風味に味付けされたものとなる。
【0013】
固形食品の表面に液状調味料を被膜状に付着する方法としては特に制限はないが、例えば、液状調味料を常法により塗布、噴霧、滴下又は浸漬により固形食品表面に付着させ、この際、固形食品100部に対し前記液状調味料0.1〜20部、好ましくは0.1〜15部、より好ましくは0.1〜10部を、固形食品の少なくとも1/4以上を覆うように付着させることにより、被膜状に付着させることができる。固形食品の少なくとも1/4以上を覆うように付着させることにより、固形食品に充分にマヨネーズ風味を付与することができる。
【0014】
固形食品表面に付着させる前記本発明の液状調味料について、以下説明する。
【0015】
本発明の液状調味料の粘度は、100〜3000mPa・sであり、好ましくは100〜2000mPa・sである。液状調味料の粘度が前記範囲であることにより、固形食品表面に被膜状に付着させることができる。なお、本発明における前記液状調味料の粘度は、BH形粘度計で、品温20℃、回転数:10rpmの条件で、粘度が750mPa・s未満のときは、ローターNo.1、粘度が750mPa・s以上1500mPa・s未満のときはローターNo.2、粘度が1500mPa・s以上3000mPa・s未満のときはローターNo.3、粘度が3000mPa・s以上のときはローターNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0016】
液状調味料の粘度の調整方法は、特に制限はないが、後述する脂質含有量及び増粘材の配合量により調整できる。本発明においては、増粘材を液状調味料の安定性を保つなどの理由で用いることができ、この場合、液状調味料の粘度を前記範囲に調整する増粘材の含有量は、増粘材の種類や後述する液状調味料の脂質含有量などにもよるが、液状調味料に対して、好ましくは0.001〜5.0%、より好ましくは0.01〜3.0%である。増粘材としては、例えば、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガムなどのガム質、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類などが挙げられる。
【0017】
本発明の液状調味料で用いる有機酸は、構造内に少なくとも1個以上のカルボキシル基を有し、酸性を呈し、食用の酸材として用いられている有機化合物をいう。本発明で用いる有機酸としては、食用として供されるものであれば特に限定するものではないが、例えば、1個のカルボキシル基を有する有機酸としては、酢酸、乳酸、プロピオン酸、グルコン酸などが挙げられ、2個以上のカルボキシル基を有する有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸などが挙げられ、本発明ではこれらの1種または2種以上を用いるとよい。また、本発明では、これらの有機酸を直接用いてもよいが、有機酸を含有した液状の食材である、例えば、リンゴ酢、ワインビネガー、モルトビネガー、米酢、粕酢などの醸造酢、レモン、かぼすなどの柑橘果汁又はこれらの濃縮物などを用いてもよい。
【0018】
また、本発明で使用する乳酸としては、天然の乳酸、あるいは合成の乳酸のいずれであっても良いが、一般的に食品に用いられる天然の乳酸、例えば発酵乳酸を用いると良い。市販されている50%発酵乳酸、あるいは乳酸に賦形剤を添加して乾燥させた粉末乳酸などを使用しても良い。
【0019】
液状調味料に対する有機酸の含有量は、1.5〜5.0%、好ましくは2.5〜5.0%、より好ましくは3.0〜5.0%である。有機酸の含有量が前記特定範囲であることにより、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際に固形食品に充分にマヨネーズ風味を付与することができる。これに対して、液状調味料に対する有機酸の含有量が前記範囲より少ないと、たとえその他の構成要件を満たしたとしても、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味が得られ難い。また、液状調味料に対する有機酸の含有量が前記範囲よりも多いと、マヨネーズ特有の風味とは異なる風味となる場合があるため好ましくない。
【0020】
前記有機酸の一部又は全部として乳酸を用いることが好ましく、乳酸の含有量は、液状調味料に対して好ましくは0.1〜5.0%、より好ましくは0.5〜5.0%である。乳酸を用いることにより、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味がより得られ易くなる。
【0021】
更に、前記有機酸の含有量は、後述する卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)100部に対し、好ましくは15〜150部、より好ましくは20〜150部、更に好ましくは30〜150部である。卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量に対する有機酸の含有量を前記特定範囲とすることで、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味がより得られ易くなる。
【0022】
また、本発明の液状調味料には、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳から選ばれる一種又は二種以上を用いる。卵としては、生液全卵、生液卵黄、生液卵白及びこれらの混合物、並びにこれらに、殺菌処理、冷凍処理、乾燥処理、ホスフォリパーゼ又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したもの等が挙げられる。
【0023】
乳酸発酵とは、蛋白質及び糖質を含む原料に乳酸菌を添加して発酵させることであり、このような乳酸発酵は、一般的に、蛋白質及び糖質を含む溶液に、必要に応じ栄養源として乳酸菌資化性糖類や酵母エキス等の発酵促進物質を添加し、乳酸菌を1mLあたり10〜10程度共し発酵されている。本発明で用いる乳酸発酵卵は、卵原料をこのような一般的な方法で乳酸発酵させたものであり、乳酸発酵乳とは、同様の一般的な方法で乳原料を乳酸発酵させたものである。液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味がより得られ易くなる点から、本発明においては、上述の卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の中でも、卵黄を用いることが好ましく、卵黄及び乳酸発酵卵を併用することがより好ましい。
【0024】
液状調味料に対する卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)は、4〜20%であり、好ましくは5〜20%である。更に、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)は、後述する脂質100部に対し10〜200部であり、好ましくは14〜200部、より好ましくは20〜200部である。卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量、または脂質に対する含有量が前記特定範囲であることにより、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際に固形食品に充分にマヨネーズ風味を付与することができる。これに対して、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量、または脂質に対する含有量が前記範囲より少ないと、たとえその他の構成要件を満たしたとしても、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味が得られ難い。また、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量、または脂質に対する含有量が前記範囲よりも多いと、マヨネーズ特有の風味とは異なる風味となる場合があるため好ましくない。
【0025】
更に、液状調味料に対する脂質の含有量は、1〜50%、好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%である。脂質の含有量が前記特定範囲であることにより、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際に固形食品に充分にマヨネーズ風味を付与することができる。これに対して、液状調味料に対する脂質の含有量が前記範囲より少ないと、たとえその他の構成要件を満たしたとしても、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味が得られ難いためである。また、液状調味料に対する脂質の含有量が前記範囲よりも多いと、マヨネーズ特有の風味とは異なる風味となる場合があるため好ましく、更に、液状調味料を上述した粘度に調整し難くなる。
【0026】
前記脂質含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生省告示第176号)別表第2の第3欄記載のエーテル抽出法に準じて測定した値である。液状調味料の脂質含有量は、上述した卵などに含まれる脂質含有量を考慮し、必要により食用油脂を用いることにより調整できるが、本発明の液状調味料としては、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味がより得られ易くなることから、食用油脂を少なくとも用い、液状調味料を乳化状とすることが好ましい。食用油脂としては、食用に供されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などが挙げられる。また、液状調味料に対する食用油脂含有量としては、液状調味料の脂質含有量を前記範囲する点から、好ましくは1〜50%、より好ましくは5〜30%である。
【0027】
前記液状調味料の食塩の含有量は、液状調味料に対して好ましくは3〜10%である。食塩含有量が前記範囲であることにより、液状調味料を固形食品に被膜状に付着した際にマヨネーズ特有の風味がより得られ易くなる。
【0028】
前記液状調味料は、上述の有機酸、卵、乳酸発酵卵、乳酸発酵乳、食用油脂、増粘材、食塩を配合する他に本発明の効果を損なわない範囲で各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、グルタミン酸ナトリウム、砂糖、醤油、味噌などの各種調味料、各種エキス、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコールなどの糖類、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンEなどの酸化防止剤、からし粉、胡椒などの香辛料、各種蛋白質やこれらの分解物などが挙げられる。
【0029】
本発明の液状調味料の製造方法は、上述の卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳から選ばれる一種又は二種以上、並びに有機酸、更に必要に応じて食用油脂、増粘材、食塩などを配合する以外は、液状調味料の常法に則り製造すればよく、例えば、上述の有機酸、卵、乳酸発酵卵、乳酸発酵乳、食塩、清水などを均一に混合し、ミキサー等で攪拌させながら食用油脂を注加して乳化すればよい。
【0030】
また、本発明の味付き固形食品の製造方法は、当該固形食品表面に、本発明の液状調味料を被膜状に付着する工程を有する以外は、常法に則り製造すればよい。また、本発明の味付き固形食品の製造方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の液状調味料を被膜状に付着する前に、固形食品に、カット、調味、加熱、冷凍などの種々の処理を施してもよく、本発明の液状調味料を被膜状に付着した後の味付き固形食品に、更に、カット、調味、加熱、冷凍などの種々の処理を施してもよい。
【0031】
以下、本発明の味付き固形食品の製造方法について、実施例、及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0032】
[製造例1]液状調味料
(1)乳酸発酵卵白の製造
液卵白50%、グラニュ糖4%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水45.8%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を70〜90℃で5分間加熱した後、乳酸菌スターター0.02%を添加し、30℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で10分間加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、本発明で用いる乳酸発酵卵白(固形分含有量10%)を製した。
【0033】
(2)液状調味料の製造
下記に示す配合割合で液状調味料を製した。つまり、食酢、発酵乳酸、生卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄、食塩、グルタミン酸ソーダ、乳酸発酵卵白、清水をミキサーに入れ、攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化し、更にコロイドミルに通して仕上げ乳化を施し、液状調味料を製した。なお、得られた液状調味料は、液状調味料に対し有機酸を3.2%、乳酸を1.8%、卵黄及び乳酸発酵卵白を固形分換算で合計6%、脂質を24%含有し、脂質100部に対する卵黄及び乳酸発酵卵白の合計含有量(固形分換算)は26部、卵黄及び乳酸発酵卵白の合計含有量100部(固形分換算)に対する有機酸の含有量は52部である。また、得られた液状調味料の粘度は1000mPa・sであった。
【0034】
<液状調味料の配合割合>
(油相)
植物油 20%
(水相)
食酢(酸度10%) 14%
発酵乳酸(酸度50%) 3.6%
生卵黄 4%
ホスホリパーゼA処理卵黄 8%
食塩 3%
グルタミン酸ソーダ 0.3%
乳酸発酵卵白(固形分含有量10%) 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0035】
[製造例2]液状調味料
下記に示す配合割合とした以外は、製造例1と同様にして液状調味料を製した。なお、得られた液状調味料は、液状調味料に対し有機酸を3.2%、乳酸を1.8%、卵黄及び乳酸発酵卵白を固形分換算で合計6%、脂質を21%含有し、脂質100部に対する卵黄及び乳酸発酵卵白の合計含有量(固形分換算)は29部、卵黄及び乳酸発酵卵白の合計含有量100部(固形分換算)に対する有機酸の含有量は53部である。また、得られた液状調味料の粘度は1500mPa・sであった。
【0036】
<液状調味料の配合割合>
(油相)
植物油 20%
(水相)
食酢(酸度10%) 14%
発酵乳酸(酸度50%) 3.6%
生卵黄 4%
食塩 3%
乳酸発酵卵白(製造例1と同じ) 40%
グルタミン酸ソーダ 0.3%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0037】
[製造例3]液状調味料
下記に示す配合割合で液状調味料を製した。つまり、食酢、発酵乳酸、生卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄、食塩、キサンタンガム、グルタミン酸ソーダ、ヨーグルト、清水をミキサーに入れ、攪拌混合し、液状調味料を製した。なお、得られた液状調味料は、液状調味料に対し有機酸を3.2%、乳酸を1.8%、卵黄(固形分換算)を13%、脂質を8%含有し、脂質100部に対する卵黄の含有量(固形分換算)は163部、卵黄100部(固形分換算)に対する有機酸の含有量は24部である。また、得られた液状調味料の粘度は300mPa・sであった。
【0038】
<液状調味料の配合割合>
食酢(酸度10%) 14%
発酵乳酸(酸度50%) 3.6%
生卵黄 25%
ホスホリパーゼA処理卵黄 8%
食塩 3%
キサンタンガム 0.05%
グルタミン酸ソーダ 0.3%
ヨーグルト(乳酸発酵乳) 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0039】
[実施例1]味付きおにぎり
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付きおにぎりを製した。具体的には、100gのおにぎり1個を用意し、上面(おにぎり表面全体の略1/3)に、1gの液状調味料(製造例1)を噴霧して被膜状に付着させることにより、実施例1の味付きおにぎりを製した。得られた味付きおにぎりは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きおにぎりを喫食したところ、おにぎり本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0040】
[実施例2]味付きおにぎり
製造例2で製造した液状調味料を用いた以外は同様にして実施例2の味付きおにぎりを製した。得られた味付きおにぎりは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きおにぎりを喫食したところ、おにぎり本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0041】
[実施例3]味付きおにぎり
製造例3で製造した液状調味料を用いた以外は同様にして実施例2の味付きおにぎりを製した。得られた味付きおにぎりは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きおにぎりを喫食したところ、おにぎり本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が若干弱いが問題とならない程度であり好ましかった。
【0042】
[実施例4]味付きスライスハム
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付きハムを製した。具体的には、スライスしたハム(20g)を用意し、スライスハムに製造例1の液状調味料を滴下して液切りすることにより、スライスハムの表面全体に液状調味料を被膜状に付着させ実施例4の味付きスライスハムを製した。スライスハムに付着した液状調味料は4gであった。得られた味付きスライスハムは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きスライスハムを喫食したところ、スライスハム本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0043】
[実施例5]味付き茹でジャガイモ
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付き茹でジャガイモを製した。具体的には、ボイル後皮むきしてカットした茹でジャガイモ(30g)を用意し、上面(茹でジャガイモ表面全体の略1/2)に、1gの液状調味料(製造例1)を噴霧して被膜状に付着させ、実施例5の味付き茹でジャガイモを製した。得られた味付き茹でジャガイモは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付き茹でジャガイモを喫食したところ、茹でジャガイモ本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0044】
[実施例6]味付きロールパン
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付きロールパンを製した。具体的には、ロールパン(30g)を用意し、上面(ロールパン表面全体の略1/3)に、1gの液状調味料(製造例1)を噴霧して被膜状に付着させ、実施例6の味付きロールパンを製した。得られた味付きロールパンは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きロールパンを喫食したところ、ロールパン本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0045】
[実施例7]味付き唐揚げ
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付き唐揚げを製した。具体的には、カットした鶏肉(50g)を用意し、鶏肉を液状調味料(製造例1)に浸漬して取り出すことにより、鶏肉の表面全体に液状調味料を被膜状に付着させた。カットした鶏肉(50g)に付着した液状調味料は5gであった。次に、鶏肉に常法により小麦粉をまぶしてフライすることにより実施例7の味付き唐揚げを製した。得られた味付き唐揚げは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付き味付き唐揚げを喫食したところ、唐揚げ本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0046】
[実施例8]味付きかまぼこ
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付きかまぼこを製した。具体的には、スライスしたかまぼこ(30g)を用意し、上面(かまぼこ表面全体の略1/3)に、2gの液状調味料(製造例1)を刷毛で塗布して被膜状に付着させ、実施例8の味付きかまぼこを製した。得られた味付きかまぼこは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きかまぼこを喫食したところ、かまぼこ本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0047】
[実施例9]味付きせんべい
製造例1で製造した液状調味料を用いて味付きせんべいを製した。具体的には、せんべい(10g)を用意し、上面(せんべい表面全体の略1/3)に、0.1gの液状調味料(製造例1)を噴霧して被膜状に付着させ、実施例9の味付きせんべいを製した。得られた味付きせんべいは、液状調味料を付着させる前後で外観に略変化が無かった。また、得られた味付きせんべいを喫食したところ、せんべい本来の食感を有し、マヨネーズ特有の風味が充分に感じられ好ましかった。
【0048】
[試験例1]
液状調味料の有機酸の含有量が、固形食品のマヨネーズ風味に与える影響を調べるために以下の試験を行った。具体的には、まず、製造例1において、食酢由来の酢酸、及び発酵乳酸由来の乳酸の含有量を表1に示す割合に変更した以外は、製造例1と同様の方法で6種類の液状調味料を製した。次いで、得られた各液状調味料を用いて、実施例1と同様の方法で6種類の味付きおにぎりを製造し、得られた各味付きおにぎりを喫食してマヨネーズ風味を下記評価基準により評価した。なお、得られた各液状調味料の粘度は3000mPa・s以下であった。結果を表1に示す。
【0049】
「マヨネーズ風味」の評価
ランク:基準
A :マヨネーズ特有の風味が充分に感じられる。
B−1:マヨネーズ特有の風味が若干弱いが、問題とならない程度である。
B−2:マヨネーズ特有の風味とやや異なるが、問題とならない程度である。
C−1:マヨネーズ特有の風味がほとんど感じられない。
C−2:マヨネーズ特有の風味とは異なる風味である。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より、有機酸の含有量が液状調味料に対し1.5〜5.0%である液状調味料(No.2〜6)を用いた味付きおにぎりは、マヨネーズ特有の風味が感じられ好ましいことが理解される。更に、乳酸を含有し、有機酸の含有量が液状調味料に対し2.5〜5.0%である液状調味料(No.2、3、5)を用いた味付きおにぎりは、よりマヨネーズ特有の風味が充分に感じられ特に好ましかった。
【0052】
[試験例2]
液状調味料の卵黄の含有量及び脂質の含有量が、固形食品のマヨネーズ風味に与える影響を調べるために以下の試験を行った。具体的には、まず、製造例1において、乳酸発酵卵白を配合せず、植物油及び卵黄の含有量を表2に示す割合に変更した以外は、製造例1と同様の方法で6種類の液状調味料を製した。次いで、得られた各液状調味料を用いて、実施例1と同様の方法で6種類の味付きおにぎりを製造し、得られた各味付きおにぎりを喫食してマヨネーズ風味を評価した。なお、得られた各液状調味料の粘度は3000mPa・s以下であった。また、マヨネーズ風味の評価基準は試験例1と同様とする。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2より、卵黄の含有量が固形分換算で液状調味料に対し4〜20%、かつ脂質100部に対し10〜200部である液状調味料(No.8〜11)を用いた味付きおにぎりは、マヨネーズ特有の風味が感じられ好ましいことが理解される。更に、卵黄の含有量が固形分換算で液状調味料に対し5〜20%であり、脂質100部に対し14〜200部である液状調味料(No.8、9)を用いた味付きおにぎりは、よりマヨネーズ特有の風味が充分に感じられ特に好ましかった。
【0055】
[比較例1]
製造例2において、キサンタンガムの配合量を増やし、液状調味料の粘度を1万mPa・sとした以外は同様にして液状調味料を製した。次に、100gのおにぎり1個を用意し、上面(おにぎり表面全体の略1/3)に液状調味料1gを刷毛で塗布して付着させたところ、液状調味料が不均一に付着し、不均一に広がった白色の液状調味料によりおにぎりの外観が損なわれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸を1.5〜5.0%、卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳から選ばれる一種又は二種以上を固形分換算で合計4〜20%、脂質を1〜50%含有し、かつ前記卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)が、脂質100部に対し10〜200部である粘度が100〜3000mPa・sの液状調味料を、固形食品表面に被膜状に付着する工程を有することを特徴とする味付き固形食品の製造方法。
【請求項2】
固形食品100部に対し前記液状調味料0.1〜20部を、固形食品表面全体の少なくとも1/4以上に、塗布、噴霧、滴下又は浸漬により被膜状に付着させる請求項1記載の味付き固形食品の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸の含有量が、前記卵、乳酸発酵卵及び乳酸発酵乳の合計含有量(固形分換算)100部に対し15〜150部である請求項1又は2記載の味付き固形食品の製造方法。
【請求項4】
前記有機酸の一部又は全部として乳酸を用いる請求項1乃至3のいずれかに記載の味付き固形食品の製造方法。
【請求項5】
固形食品が、野菜類、肉類、米飯類、水産加工品、畜肉加工品、パン類又は焼き菓子である請求項1乃至4のいずれかに記載の味付き固形食品の製造方法。

【公開番号】特開2011−177151(P2011−177151A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47206(P2010−47206)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】