説明

呼制御装置、呼制御方法、及び呼制御プログラム

【課題】IMS網等の所定のIP網に複数の網が接続されたネットワークにおいて、呼制御装置の処理負荷を軽減するとともに、適切に接続先のドメインを切り替えることを可能とする。
【解決手段】所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置において、発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信手段と、前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定手段と、前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMS(IP Multimedia subsystem)網にPS(Packet Switching)ドメイン及びCS(Circuit Switching)ドメイン等の網が接続されたネットワークにおける上記IMS網の呼制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク事業者(一般に電話会社) が提供するネットワーク10の構成の例を図1に示す。図1に示すように、このネットワーク10は、マルチメディア呼の呼制御を行うIMS網11に、パケット交換(PS:Packet Switching)呼を処理するネットワークであるPSドメイン12と、回線交換(CS:Circuit Switching)呼を処理するネットワークであるCSドメイン13とが接続されて構成されている。なお、IMS、PSドメイン、CSドメインについては、例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
IMS網11では、SIPプロトコル(非特許文献2)により呼制御が行われていることから、IMS網11にはSIPプロトコルにより呼制御を行う呼制御装置20が備えられている。また、図1に示す例では、発端末1がIMS網11に接続され、着端末2がPSドメイン12とCSドメイン13に接続されている、すなわち、着端末2は、PSドメイン12経由の通信とCSドメイン13経由の通信の両方をサポートする端末である。
【0004】
このネットワーク構成における従来の技術では、発端末1から着端末2に対して呼接続要求を行う場合、呼制御装置20にて、呼接続要求信号 (具体的にはSIP信号)の内容に応じて、どのドメインで着信させるか判断し、そのドメイン経由で呼接続要求を行って通信を行う。これを図2及び図3を参照して具体的に説明する。
【0005】
図2は、呼接続要求に係るサービスがPSドメイン12を利用するサービス(本例では、非音声サービスとする)である場合の通信接続の手順を示す図である。図2に示すように、発端末1が呼接続要求信号を送信すると(ステップ1)、IMS網11の呼制御装置20が呼接続要求信号を受信する。呼接続要求信号を受信した呼制御装置20は、呼接続要求信号の中のメディアに関する情報(サービスに関する情報)を参照することにより、当該呼接続要求信号が非音声サービスの通信要求であることを把握し、呼接続要求信号をPSドメイン12経由で転送することを決定し(ステップ2)、呼接続要求信号をPSドメイン12経由で着端末2に転送する(ステップ3)。そして、着端末2から発端末1にSIPの応答信号が返され(ステップ4、5)、発端末1と着端末2との間で非音声サービスの通信が行われる(ステップ6)。
【0006】
図3は、呼接続要求に係るサービスがCSドメイン12を利用するサービス(本例では、音声サービスとする)である場合の通信接続の手順示す図である。図3に示すように、発端末1が呼接続要求信号を送信すると(ステップ11)、IMS網11の呼制御装置20が呼接続要求信号を受信する。呼接続要求信号を受信した呼制御装置20は、呼接続要求信号の中のメディアに関する情報を参照することにより、当該呼接続要求信号が音声サービスの通信要求であることを把握し、呼接続要求信号をCSドメイン13経由で転送することを決定し(ステップ12)、呼接続要求信号をCSドメイン13経由で着端末2に転送する(ステップ13)。そして、着端末2から発端末1に応答信号が返され(ステップ14、15)、発端末1と着端末2との間で音声サービスの通信が行われる(ステップ16)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS23.002 V10.2.0 (2011年3月)
【非特許文献2】IETF RFC3261(2002年6月)
【非特許文献3】IETF draft-bakker-sipping-3gpp-ims-xml-body-handling-06(2011年2月22日)
【非特許文献4】3GPP TS 24.229 V10.3.0 (2011年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術には、以下のような課題がある。
【0009】
上記のように、呼制御装置20は、呼接続要求信号における、本来発着の両端末間でのみやり取りするべきメディアに関する情報 (具体的には、SDPの情報)を確認し、経由させつドメインを振り分けている。
【0010】
メディアに関する情報は、呼接続要求信号における呼接続制御に関する部分(ヘッダ等)以外の部分(ボディ部等)に記述されている。従って、従来技術における処理を行う呼制御装置20は、呼接続要求信号の詳細な内容を確認し、更に、それに基づいたルーティング選択を行わなければならず、そのため呼制御装置20の負荷増大につながるという問題がある。特に、今後はPSドメイン経由の各種サービスが増えていくと予想されるため、大半がPSドメインを選択することになる可能性があり、ほとんど同じ判定結果を出す処理のための負荷が増大することになり、非効率である。
【0011】
また、従来の技術では、呼接続要求信号の中のメディアの情報が特定の情報(音声サービス等)の場合、IMS網側で一律に判断しCSドメインを選択してしまうため、端末の能力等に応じてPSドメイン経由で通信することができないという課題もある。すなわち、端末のみが知りえる情報や、ユーザの要望に応じたPSドメインとCSドメインの使い分けを行うことができない。
【0012】
ここで、端末の能力や端末の各種条件に応じてドメインを選択するには、NW事業者の網が、利用可能ドメイン等に関わる端末の能力や端末の各種条件を完全に把握している必要があるが、従来の技術では端末の能力等を網側で完全に保持できるとは限らないため、端末の能力等に基づき網側で適切なドメインを選択することは従来技術では困難であった。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、IMS網等の所定のIP網にPSドメイン及びCSドメイン等の網が接続されたネットワークにおいて、呼制御装置の処理負荷を軽減するとともに、網側で端末の能力等を保持できない環境であっても、端末の能力等に応じて接続先のドメインを切り替えることを可能とした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置であって、
前記IP網に接続された発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信手段と、
前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定手段と、
前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替手段と、を備えることを特徴とする呼制御装置として構成される。
【0015】
また、本発明は、所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置が実行する呼制御方法であって、
前記IP網に接続された発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信ステップと、
前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定ステップと、
前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替ステップと、を備えることを特徴とする呼制御方法として構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、IMS網等の所定のIP網にPSドメイン及びCSドメイン等の網が接続されたネットワークにおいて、呼制御装置の処理負荷を軽減するとともに、網側で端末の能力等を保持できない環境であっても、端末の能力等に応じて接続先のドメインを切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ネットワーク事業者のネットワーク構成例を示す図である。
【図2】PSドメイン12を利用するサービスについての従来の通信接続手順を示す図である。
【図3】CSドメイン12を利用するサービスについての従来の通信接続手順を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る呼制御装置200の機能構成図である。
【図5】PSドメイン12を利用するサービスについての本発明の実施の形態に係る通信接続手順を示す図である。
【図6】CSドメイン13を利用するサービスについての本発明の実施の形態に係る通信接続手順を示す図である。
【図7】ドメイン切替制御信号としての380応答信号のボディ部に記述されるXMLに基づく制御情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではない。また、本実施の形態では、IMS網を用いているが、本発明はIMS網以外のIP網にも適用可能である。また、本実施の形態では、パケット網等における呼制御信号としてSIP信号を用いるが、本発明において適用可能な呼制御プロトコルはSIPに限定されるわけではない。また、以下で説明するドメインとは複数の装置からなるネットワークに相当するので、網と呼んでもよい。
【0019】
(装置構成)
本実施の形態における全体のネットワークのシステム構成は図1に示した構成と同じであるが、本実施の形態では、IMS網11側に備えられる呼制御装置200の機能が従来の呼制御装置20の機能と異なる。また、着端末2において機能追加がされている。
【0020】
図4に、本実施の形態に係る呼制御装置200の機能構成図を示す。図4に示すように、本実施の形態に係る呼制御装置200は、PSドメイン通信部210、CSドメイン通信部220、呼制御部230を備える。
【0021】
PSドメイン通信部210は、PSドメイン12で用いられるプロトコルにより、PSドメイン12を介して着端末2と呼制御信号の送受信を行う機能部である。CSドメイン通信部220は、CSドメイン13で用いられるプロトコルにより、CSドメイン13を介して着端末2と呼制御信号の送受信を行う機能部である。
【0022】
呼制御部230は、IMS網11に接続された端末や、各ドメインに接続された端末等との間で呼制御信号を送受信することにより、端末の呼接続制御を行う機能部である。呼接続制御の基本的な機能は従来技術と同様である。ただし、本実施の形態の呼制御部230は、IMS網11に接続される発端末1から受信した呼接続要求信号におけるメディアの情報を参照して経由ドメインを判断する動作を行わず、IMS網11に接続される発端末1から受信した呼接続要求信号を一律にPSドメイン経由(つまり、PSドメイン通信部210経由)で着端末2に転送する動作を行う。
【0023】
また、本実施の形態の呼制御部230は、ドメイン切替判断部231を備えている。ドメイン切替判断部231は、着端末2からPSドメイン12経由で受信したSIP応答信号が、ドメイン切替制御信号であるか否かを判定し、ドメイン切替制御信号であると判定した場合に、通信の利用ドメインを切り替えて、CSドメイン13経由で呼接続要求信号を着端末2に送信する機能を備える。なお、ドメイン切替判断部231により、着端末2からPSドメイン12経由で受信したSIP応答信号が、ドメイン切替制御信号であるか否かを判定し、その判定結果に基づき、呼制御部230が信号送信(ドメイン切替後の呼接続要求信号又は通常のSIP応答信号送信)を行う構成としてもよい。
【0024】
ドメイン切替制御信号は、SIP信号における内容(ボディ部等)まで解析することなくドメイン切替制御信号であるか否かを判別できるSIP信号であればよい。例えば、SIP信号の先頭の行(ステータス行等)でドメイン切替制御信号であるか否かを判別できることが処理を軽減する観点から好ましい。後述するように、本実施の形態では、ドメイン切替制御信号として、例えばSIPの380応答信号を用いる。380応答信号であるか否かは、ステータス行にステータスコードである380があるか否かで判別できる。
【0025】
すなわち、呼制御装置200は、IMS網等の所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置であって、前記IP網に接続された発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信手段と、前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定手段と、前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替手段と、を備える呼制御装置である。
【0026】
また、前記呼接続要求信号送信手段は、前記発端末から受信した前記呼接続要求信号に含まれるサービスに関する情報による網選択処理を行うことなく、前記呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で前記着端末に送信する。ここで、前記網切替判定手段により、前記応答信号が網切替制御信号でないと判定された場合に、前記呼制御装置は、前記応答信号を前記発端末に送信する。また、前記網切替制御信号は、SIPの380応答信号であってもよく、その場合の380応答信号は、後述するようにXMLに基づき記述された制御情報を含み、前記網切替手段は、当該制御情報に基づいて、前記呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する。
【0027】
本実施の形態に係る呼制御装置200は、CPU、メモリ、通信デバイス等から構成されるコンピュータに、本実施の形態で説明する機能に対応したプログラムを実行させることにより実現可能である。すなわち、呼制御装置200の各機能部は、当該呼制御装置200を構成するコンピュータに内蔵されるCPUやメモリなどのハードウェア資源を用いて、各機能部で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。
【0028】
また、呼制御装置200は、1つの装置(コンピュータ)で実現してもよいし、複数の装置で実現してもよい。例えば、呼制御部230を1つのコンピュータ(及びプログラム)で実現し、PSドメイン通信部210とCSドメイン通信部220をそれぞれ別の装置で実現することもできる。なお、呼制御装置200が複数の装置で実現される場合であっても、複数の装置全体で本実施の形態に係る呼制御装置200が構成されるものとする。
【0029】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えばFD(Floppy(登録商標) Disk)や、MO(Magneto−Optical disk)、ROM(Read Only Memory)、メモリカード、CD(Compact Disk)−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)−ROM、BD(Blu−ray Disk)−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、BD−R、BD−RE、HDD、リムーバブルディスクなどに記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メールなど、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0030】
なお、本実施の形態における着端末2は、IMS網11及びPSドメイン12を経由して受信した呼接続要求信号に含まれる制御情報(例えばメディアの情報等)に基づいて、CSドメイン13での通信に切り替えるかどうかを判断し、CSドメイン13での通信に切り替えると判断した場合に、SIPの応答信号としてドメイン切替制御信号をPSドメイン12経由で呼制御装置200に送信する機能を備えている。このドメイン切替制御信号には、そのボディ部に、CSドメイン13での接続を再度行うことを通知するための制御情報が含められる。
(システムの動作)
次に、図5、図6を参照して、本実施の形態に係るシステムの動作例を説明する。
【0031】
最初に、図5を参照して、呼接続要求に係るサービスがPSドメイン12を利用するサービス(本例では、非音声サービスとする)である場合の通信接続の手順を説明する。
【0032】
まず、発端末1が呼接続要求信号(SIPセッション要求信号)を送信すると(ステップ101)、IMS網11の呼制御装置200が呼接続要求信号を受信する。呼制御装置200は、発端末1から受信した呼接続要求信号におけるメディアに基づくドメインの選択処理を行わずに、予め定められた転送経路であるPSドメイン12を経由して、呼接続要求信号を着端末2に転送する(ステップ102)。
【0033】
図5の例では、要求に係るサービスが、PSドメイン経由で利用されるサービスであるため、着端末2は、切り替えを行わないと判断し、従来と同様のSIP応答信号を返す(ステップ103)。
【0034】
SIP応答信号を受信した呼制御装置200は、ドメイン切替判断部231において、SIP応答信号はドメイン切替制御信号でないことを確認し(ステップ104)、ドメイン切替を行わないと判断し、SIP応答信号は発端末1に送られる(ステップ105)。これにより、発端末1と着端末2との間で非音声サービスの通信が行われる(ステップ106)。
【0035】
次に、図6を参照して、呼接続要求に係るサービスがCSドメイン13を利用するサービス(本例では、音声サービスとする)である場合の通信接続の手順を説明する。
【0036】
まず、発端末1が呼接続要求信号(SIPセッション要求信号)を送信すると(ステップ201)、IMS網11の呼制御装置200が呼接続要求信号を受信する。呼接続装置200は、発端末1から受信した呼接続要求信号におけるメディアに基づくドメインの選択処理を行わずに、予め定められた転送経路であるPSドメイン12を経由して、呼接続要求信号を着端末2に転送する(ステップ202)。
【0037】
呼接続要求信号を受信した着端末2は、呼接続要求信号の中のメディアの情報等から、接続要求されているサービスが、CSドメイン13経由で利用される音声サービスであることを把握し、ドメイン切り替えを行うと判断し、ドメイン切替制御信号をPSドメイン12経由で呼制御装置200に送信する(ステップ203)。
【0038】
ドメイン切替制御信号を受信した呼制御装置200は、ドメイン切替判断部231において、SIP応答信号がドメイン切替制御信号であることを確認し、ドメイン切替制御を行うと判断し(ステップ204)、CSドメイン13に対応したプロトコルにより、CSドメイン12経由で呼接続要求信号(発端末1と着端末2間で呼接続を行うことを要求する信号)を着端末2に送信する(ステップ205)。ここでの呼接続要求信号の内容は、従来技術において、音声サービスの呼接続を行う場合に、呼制御装置20から着端末2に送信される呼接続要求信号の内容と同様である。
【0039】
上記の呼接続要求信号を受信した着端末2は、CSドメイン13経由で応答信号を返す(ステップ206)。この応答信号を受信した呼制御装置200は、SIP応答信号を発端末1に返す(ステップ207)。これにより、発端末1と着端末2間で音声サービスの通信が行われる(ステップ208)。
【0040】
(ドメイン切替制御信号について)
本実施の形態では、前述したドメイン切替制御信号として、例えば、SIPの380応答信号を用いる。380応答信号はSIPの規格(非特許文献2)において、Alternative Service(代替サービス)として規定された信号である。
【0041】
この場合、着端末2において、ドメイン切替制御信号としての380応答信号のボディ部に、XMLの規定に従った、CSドメイン13での接続を再度行うように通知するための制御情報が含められ、当該380応答信号を受信した呼制御装置200において、ドメイン切替判断部231がこの制御情報(XMLの内容)に基づいて、CSドメイン13経由となるよう通信経路を切り替え、以後は既存技術と同様に改めて着端末2への呼接続要求を行う。
【0042】
380応答信号にXMLを用いて、端末の通信をCSドメインへ切り換えさせることは、非特許文献3や非特許文献4に記載されている。 本実施の形態でも、これらの文献に記載されたXMLの記述を用いることができる。すなわち、着端末2から呼制御装置200にPSドメイン12経由で送信される380応答信号に含めるXMLに基づく制御情報として、図7に示す制御情報を含めることができる。この情報は、上記の各文献において、端末(UE)に、CSドメイン経由の緊急通信への切り替えを行わせるための制御情報として規定されているものであり、本実施の形態ではこの制御情報を用いることが可能である。もちろん、制御情報は図7に示すものに限るわけではなく、図7に示す情報は一例に過ぎない。
【0043】
また、呼制御装置200が、380応答信号をSIP応答信号として受信したときには、CSドメイン経由の切替を行うものと予め決めておくことにより、XMLの制御情報を参照することなく、ドメイン切替を行うこととしてもよい。また、本実施の形態では、IMS網11に接続される網(ドメイン)としてPSドメイン12とCSドメイン13の2つを例に挙げたが、接続されるドメインは2つに限らず、2つより多くてもよい。この場合、XMLの制御情報として、どのドメインへの切り替えを行うかを示す情報を設定し(着端末2により設定される)、呼制御部230が当該制御情報を解釈し、利用ドメインを決定することで、複数のドメインの中から着端末2が希望するドメイン経由の通信を行うことが可能となる。
【0044】
なお、本実施の形態のように、端末側でドメイン切替のための380応答信号を生成及び送信し、ネットワーク側で380応答信号を受信し、それに応じてドメイン切り替えのための呼制御を行うことはいずれの非特許文献にも記載されていない。
【0045】
(実施の形態の効果)
本実施の形態で説明した技術を用いることにより、通信事業者のIMS網内から、最初の着信先ドメインの判定ロジックを省略することができ、切り替えが必要な場合のみ呼制御装置がルーティング変更にかかわる処理を行うことになるため、呼制御装置の負荷低減を実現できる。
【0046】
また、今後、PSドメイン経由で行う通信の比率がますます高くなることが予想されるところ、PSドメイン経由で行う通信の比率が高いほど、CSドメイン経由に切り替えるケースが減るため、判定ロジックを省略して必要な場合だけ切り替え処理を行う本実施の形態の方式では効率的に負荷低減を行うことが可能となり、システム全体の効率化につながる。
【0047】
更に、本実施の形態によれば、NW事業者のネットワークが、端末の能力を保持できない環境であっても、端末からの制御情報に基づき着信先ドメインを変更できるようにすることができる。すなわち、事前設定による一律の設定・切り替えが行われる方式から、柔軟に呼接続ごとに切り替えが実現できる方式となる。
【0048】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 発端末
2 着端末
10 ネットワーク
11 IMS網
12 PSドメイン
13 CSドメイン
20、200 呼制御装置
210 PSドメイン通信部
220 CSドメイン通信部
230 呼制御部
231 ドメイン切替判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置であって、
前記IP網に接続された発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信手段と、
前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定手段と、
前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替手段と、
を備えることを特徴とする呼制御装置。
【請求項2】
前記呼接続要求信号送信手段は、前記発端末から受信した前記呼接続要求信号に含まれるサービスに関する情報による網選択処理を行うことなく、前記呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で前記着端末に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の呼制御装置。
【請求項3】
前記網切替判定手段により、前記応答信号が網切替制御信号でないと判定された場合に、前記呼制御装置は、前記応答信号を前記発端末に送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の呼制御装置。
【請求項4】
前記網切替制御信号は、SIPの380応答信号であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の呼制御装置。
【請求項5】
前記380応答信号は、XMLに基づき記述された制御情報を含み、前記網切替手段は、当該制御情報に基づいて、前記呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する
ことを特徴とする請求項4に記載の呼制御装置。
【請求項6】
所定のIP網にパケット交換網と回線交換網とが接続されて構成されたネットワークにおける前記IP網に備えられた呼制御装置が実行する呼制御方法であって、
前記IP網に接続された発端末から呼接続要求信号を受信し、当該呼接続要求信号を前記パケット交換網経由で着端末に送信する呼接続要求信号送信ステップと、
前記着端末から前記パケット交換網経由で応答信号を受信し、当該応答信号が網切替を通知する網切替制御信号であるか否かを判定する網切替判定ステップと、
前記応答信号が前記網切替制御信号であると判定された場合に、前記発端末と前記着端末間で前記回線交換網を経由した呼接続を行うための呼接続要求信号を前記回線交換網経由で前記着端末に送信する網切替ステップと、
を備えることを特徴とする呼制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の呼制御装置の各手段として機能させるための呼制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−46301(P2013−46301A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183970(P2011−183970)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】