呼吸を制御するための方法および装置
【課題】呼吸を制御するための方法および装置の提供。
【解決手段】本発明は、患者(101)の呼吸を制御する方法およびシステム(100)に関する。患者の呼吸を制御するシステムは、呼吸コンジット(120)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器(102)に連結されるように構成され、さらに圧搾空気発生装置(130)に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリューム(111)は、第1気流制御装置(108、131)と第2気流制御装置(112、133)との間に位置し、別のボリューム(113)は、第2気流制御装置と第3気流制御装置(114、135)との間に位置する。
【解決手段】本発明は、患者(101)の呼吸を制御する方法およびシステム(100)に関する。患者の呼吸を制御するシステムは、呼吸コンジット(120)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器(102)に連結されるように構成され、さらに圧搾空気発生装置(130)に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリューム(111)は、第1気流制御装置(108、131)と第2気流制御装置(112、133)との間に位置し、別のボリューム(113)は、第2気流制御装置と第3気流制御装置(114、135)との間に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2006年4月17日に出願された、米国特許出願第11/405,948号の利益を主張し、さらには、2007年4月17日に出願された、一部継続出願である米国特許出願第11/405,948号の利益を主張し、両出願は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、呼吸障害の治療に関する。より具体的には、本発明は、患者の動脈血に溶解した二酸化炭素(「CO2」)の特定レベルを維持することにより、患者の呼吸を制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
睡眠呼吸障害(「SDB」;sleep−disorder breathig)は、睡眠中に呼吸困難をもたらすすべての症候群を含む。それらは、閉塞型睡眠時無呼吸(「OSA」;obstructive sleep apnea)、混合型睡眠時無呼吸(「MSA」;mixed sleep apnea)、中枢性睡眠時無呼吸(「CSA」;central sleep apnea)、チェーンストークス呼吸(「CSR」;Cheyne−Stokes respiration)等を含む。一部形態のSDBは、米国人口の約3〜5%で発症する。
【0004】
肥満または異常に狭い上気道等の解剖学的問題が幾つかのSDBの原因となる場合があるが、CO2および酸素(「O2」)等の血液ガスのレベル制御における神経学的困難が、疾患の重要な寄与因子としてますます認められるようになっている。これは特に、全SDBの20%を占める「中枢性」症候群、MSA、CSA、およびCSRに関して当てはまる。血液ガスを制御する神経システムの変化は、不安定な呼吸パターンを生じることが多く、睡眠からの覚醒をもたらす。これらの変化は、血圧の深刻な急上昇を伴い、ストレスホルモンを放出することにより、多くの臓器系に長期的な損傷をもたらし得る。さらに、一部のSDB症候群は、全体血液ガスレベルの異常が関与する。例えば、動脈血中に溶解したCO2レベルが低いことが多く、臨床的な問題を示す。そのため、SDBを治療する場合は、血液ガスの正常な制御を回復することにより、呼吸を安定させ、適切な血液ガスレベルを確立する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジット(respiratory conduit)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する。第2気流制御装置は、さらに複数の開口を含むように構成された気流制御コンジットからの空気の排出を制御するように構成される。
【0006】
一部実施形態において、本発明は、患者への二酸化炭素の流れを制御する方法に関する。本方法は、上述のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む。制御は、少なくとも1つの気流制御装置を通る気流を測定するステップと、測定気流中の二酸化炭素濃度を検出するステップと、二酸化炭素濃度の検出に基づいて、少なくとも1つの別の気流制御装置を通る気流を調整するステップと、二酸化炭素濃度の検出および少なくとも1つの気流制御装置を通る気流の調整に基づいて、ボリュームのサイズを調整するステップと、を含む。
【0007】
一部実施形態において、本発明は、患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含む。呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、圧搾給気装置は、別端において患者に空気を供給する。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に隣接する第1弁を含み、呼吸プロセス中にガスの漏出を制御するように構成された第1開口と、呼吸プロセス中に呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成された第2弁と、第1弁と第2弁を接続し、呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、呼吸プロセス中にガスの漏出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、第2弁および第3弁を接続し、第2ボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成された第2ボリュームコネクタと、第2弁および給気装置を接続する第3コネクタと、を含む。
【0008】
一部代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御する方法に関する。少なくとも1つのボリュームコネクタ内に配置された少なくとも1つの開口から空気を引き出すように構成された少なくとも1つの弁を含む呼吸コンジットを用いる給気装置に連結された患者インターフェース機器を使用し、空気が患者に供給される。弁およびボリュームコネクタは、呼吸コンジットの長さに沿って位置する。本方法は、患者によるガスの産生レートを判断するステップと、制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、その測定に基づいて複数の開口を通る流速を調整するステップと、前記判断および測定のうちの少なくとも1つに基づいて複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと、を含む。患者に供給される空気は、給気装置により供給された空気と患者により生成されたガスとの混合物を含む。
【0009】
さらに別の代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御する方法に関する。患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含む呼吸コンジットを用いる給気装置に連結された患者インターフェース機器を使用し、空気を患者に供給する。少なくとも1つのボリュームは、少なくとも1つの気流制御装置を使用し、ボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成される。本方法は、第2気流制御装置から流出する空気中の平均ガス濃度を判断するステップと、平均ガス濃度を事前設定したガス濃度の設定点と比較するステップと、平均濃度と事前設定した濃度の設定点との差を計算するステップと、算出される差が実質的になくなるまで第1気流制御装置を通る気流を調整することにより患者の呼吸を制御するステップと、を含む。
【0010】
さらに別の代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジットを含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つのボリュームを含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つの気流制御装置を含み、少なくとも1つの気流制御装置は、呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および操作について、添付の図面を参照して以下に詳述する。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェース機器を用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、複数の制御可能な開口と、上記呼吸コンジットの長さに沿って配置されたボリュームコネクタとを含み、
上記患者により生成されるガスの産生レートを判断するステップと、
上記複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記測定に基づいて、上記複数の制御可能な開口のサイズを調整するステップと、
上記判断および上記測定のうちの少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、上記患者に供給される空気は、上記給気装置により供給された空気と、上記患者により生成されたガスとの混合物を含む、方法。
(項目2)
患者の動脈血におけるガス圧の増加を判断するステップをさらに含み、上記判断は、
呼気終末ガス監視、経皮ガス監視、および動脈血ガス分析から成る群から選択される時間ベースの監視を用いて、上記患者の上記動脈血に含まれる上記ガス圧を測定するステップと、
上記測定に基づいて上記患者の動脈血における上記ガス圧の望ましい変化を計算するステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記ガスは二酸化炭素である、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記複数の制御可能な開口および上記複数のボリュームコネクタのサイズを修正するステップをさらに含み、上記修正は、
上記複数の制御可能な開口および上記複数のボリュームコネクタのそれぞれから漏出する上記ガスの量を監視するステップと、
上記複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記判断および上記測定のうちの少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、上記患者に供給されるガスは、上記給気装置により供給されたガスと、呼吸中に上記患者により産生されたガスとの混合物である、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記修正は、上記患者の呼吸気道の虚脱の結果として行われる、項目4に記載の方法。
(項目6)
上記患者の呼吸気道が虚脱状態でなくなるまで、呼吸中に上記患者に供給される空気圧を調整するステップをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記計算は、年齢、性別、体重、除脂肪体重率、および上記患者の動脈血における上記ガスの分圧から成る群から選択される少なくとも1つの特徴を使用し、上記患者により産生される上記ガス量を推定するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記計算は、上記患者の正常な呼吸を事前にシミュレーションし、上記複数の制御可能な開口および複数のボリュームコネクタのサイズを判断するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記複数の制御可能な開口のうちの1つを通る空気の流速は、上記複数の制御可能な開口のうちの少なくとも1つの別の開口を通る流速に基づく、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記判断は、呼吸中に上記複数の制御可能な開口のそれぞれから漏出するガスの最小量、最大量、および平均量を計算するステップと、
上記計算に基づいて、上記複数の制御可能な開口のうちの少なくとも1つのサイズ、および上記ボリュームコネクタのうちの少なくとも1つのサイズを調整するステップと
をさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
少なくとも第1の空気制御可能な開口および少なくとも第2の制御可能な開口を通るガスの流速は、上記患者による上記ガスの予想産生レート、上記患者の予想呼吸レート、上記患者の呼吸の予想深度、および上記患者の呼気に含まれる上記ガスの予想濃度に基づいて計算される、項目1に記載の方法。
(項目12)
上記複数の制御可能な開口から漏出し得るガスの量、および上記複数のボリュームコネクタに含まれるガスの量に基づいて、上記患者の呼気のうち患者が再呼吸する量を連続的に調整する、項目1に記載の方法。
(項目13)
呼吸中の患者に対する二酸化炭素の流れを制御する装置であって、
患者インターフェース機器に連結される二酸化炭素混合装置であって、
上記二酸化炭素混合装置は、圧搾給気装置に連結されるように構成され、
上記二酸化炭素混合装置は、複数のデッドスペースと互いに接続される複数の換気オリフィスを含み、上記複数の換気オリフィスは、上記患者への二酸化炭素の供給、および上記複数のデッドスペースにおける二酸化炭素量を制御する、
二酸化炭素混合装置と、
上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を測定する手段と、
上記測定気流における二酸化炭素濃度を検出する手段と、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整する手段と、
上記二酸化炭素濃度の上記検出、および上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記複数のデッドスペースのサイズを調整する手段と
を含む、装置。
(項目14)
患者に配置された患者インターフェースに連結された給気装置を用いることによって、呼吸中の患者に対する二酸化炭素の流れを制御する方法であって、上記患者インターフェースは、二酸化炭素混合装置に連結され、上記二酸化炭素混合装置は、上記給気装置に連結され、上記二酸化炭素混合装置は、複数のデッドスペースと互いに接続される複数の換気オリフィスを含み、上記複数の換気オリフィスは、上記患者に対する二酸化炭素の供給および上記複数のデッドスペースにおける二酸化炭素の量を制御し、
上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を測定するステップと、
上記測定気流における二酸化炭素の濃度を検出するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出および上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記複数のデッドスペースのサイズを調整するステップと
を含む、方法。
(項目15)
上記サイズ調整ステップは、
【化1】
と
【化2】
との間の関係に基づいて、上記複数のデッドスペースおよび上記複数の換気オリフィスのサイズを調整するステップをさらに含み、
【化3】
は患者による1分間の二酸化炭素排出レートであり、
【化4】
は患者による1分間の総換気レートであり、
【化5】
と
【化6】
との間の上記関係を表す曲線は、少なくとも2つの不連続を含み、
上記不連続は、
少なくとも第1換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる低換気トラバースセグメントの長さと、
少なくとも第1デッドスペースを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる第1呼吸プラトーセグメントの長さと、
少なくとも第2換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる正常呼吸トラバースセグメントの長さと、
少なくとも第2デッドスペースを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる第2呼吸プラトーセグメントの長さと、
少なくとも第3換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる過換気トラバースセグメントの長さと
を用いて判断される、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記低換気トラバースセグメントは、呼吸間隔中に上記患者が呼吸した空気量と上記呼吸間隔中に上記患者が排出した二酸化炭素量との間の関係により定義された傾斜を有する、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記正常呼吸トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素が、上記二酸化炭素混合装置の少なくとも第2換気オリフィスから漏出し、上記追加量は少なくとも第1換気オリフィスから漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目15に記載の方法。
(項目18)
上記過換気トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素が、上記二酸化炭素混合装置の少なくとも第3換気オリフィスから漏出し、上記追加量は少なくとも第1および第2換気オリフィスから漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目15に記載の方法。
(項目19)
上記サイズ調整ステップに基づいて、二酸化炭素の目標平均動脈中濃度を判断するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目20)
上記サイズ調整ステップは自動である、項目14に記載の方法。
(項目21)
上記サイズ調整ステップは手動である、項目14に記載の方法。
(項目22)
呼吸コンジットを用いることによって、患者の呼吸を制御する方法であって、上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器および圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、上記コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含み、第1ボリュームは、第1気流装置と第2気流装置との間に位置し、第2ボリュームは、上記第2気流装置と第3気流装置との間に位置し、上記方法は、
ガスを上記コンジットに受け取るステップであって、上記ガスは患者の呼気に由来するステップと、
上記少なくとも2つの気流制御装置からのガス漏出を可能にするステップと
を含み、上記受け取られたガスの一部は、上記第1気流制御装置から漏出し、上記受け取られたガスの別の部分は、上記第1ボリュームを通って上記第2気流制御装置に移動し、
上記受け取られたガスの別の部分の一部は、上記第2気流制御装置から漏出し、上記受け取られたガスの別の部分の別の一部は、上記第2ボリュームを通って上記第3気流制御装置に移動し、
上記受け取られたガスの別の部分の別の一部は上記第3気流制御装置から漏出する、方法。
(項目23)
患者の呼吸を制御する方法であって、
低換気中の患者の換気レートの関数として、上記患者によるガスの排出レートを判断するステップであって、上記判断は、上記排出されたガスが最大濃度に到達するまで行われる、ステップと、
上記判断に基づいて、上記患者のガス排出レートを事前設定したレベルに維持するステップと、
上記患者による上記ガスの予想排出レートに基づいて、上記患者の換気レートの関数として、上記患者によるガスの排出レートを安定させるステップであって、上記ガスが最大濃度に到達するまで上記安定化が行われる、ステップと、
上記患者の過換気中に上記患者によるガスの排出を抑制するステップと、
上記患者の過換気中に上記患者によるガスの排出を増加させて患者の呼吸を制御するステップと
を含む、方法。
(項目24)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェース機器を用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、少なくとも1つのボリュームコネクタ内に配置される少なくとも1つの開口から空気を引き出すように構成された少なくとも1つの弁を含み、上記弁および上記ボリュームコネクタは、上記呼吸コンジットの長さに沿って位置し、
上記患者によるガスの産生レートを判断するステップと、
制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記測定に基づいて、上記複数の開口を通る流速を調整するステップと、
上記判断および上記測定の少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、患者に供給される空気は、上記給気装置により供給された空気と患者により生成されたガスとの混合物を含む、方法。
(項目25)
患者の動脈血におけるガス圧の増加を判断するステップをさらに含み、上記判断は、
呼気終末ガス監視、経皮ガス監視、および動脈血ガス分析から成る群から選択される時間ベースの監視を使用し、患者の動脈血における上記ガス圧を測定するステップと、
上記測定に基づいて、患者の動脈血における上記ガス圧の望ましい変化を計算するステップと
をさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記複数の開口および上記複数のボリュームコネクタを通る気流を調整するステップをさらに含み、上記調整は、
上記複数の開口および上記複数のボリュームコネクタのそれぞれから流出する上記ガスの量を監視するステップと、
上記複数の開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記判断および上記測定の少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
をさらに含み、患者に供給されるガスは、給気装置により供給されるガスと呼吸中に患者により産生されるガスとの混合物である、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記計算は、年齢、性別、体重、除脂肪体重率、および患者の動脈血における上記ガスの部分圧から成る群から選択される少なくとも1つの特性を使用し、患者が産生する上記ガス量を推定するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記計算は、上記患者の正常な呼吸の事前のシミュレーションを用い、上記複数の開口および複数のボリュームコネクタのサイズを判断するステップをさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記複数の開口のうちの1つを通るガスの流速は、上記複数の開口のうちの少なくとも1つの別の開口を通る流速に基づく、項目24に記載の方法。
(項目30)
上記判断は、
一定期間に上記複数の開口のそれぞれから流出するガスの量を計算するステップと、
上記計算に基づいて、上記複数の開口の少なくとも1つのサイズ、および上記ボリュームコネクタの少なくとも1つのサイズを調整するステップと
をさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
少なくとも第1空気開口および少なくとも第2開口を通るガスの流速は、上記患者による上記ガスの予想産生レート、上記患者の予想呼吸レート、上記患者による呼吸の予想深度、および上記患者の呼気に含まれる上記ガスの予想濃度に基づいて計算される、項目24に記載の方法。
(項目32)
上記複数の開口から漏出し得るガスの量および上記複数のボリュームコネクタに含まれるガスの量に基づいて、上記患者の呼気のうち上記患者が再呼吸する量を連続的に調整する、項目31に記載の方法。
(項目33)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェースを用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置の間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含み、少なくとも1つのボリュームは、上記気流制御装置の少なくとも1つを使用してボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成され、
第2気流制御装置から漏出する空気中の平均ガス濃度を判断するステップと、
平均ガス濃度を事前設定したガス濃度の設定点と比較するステップと、
平均濃度と事前設定した濃度の設定点との差を計算するステップと、
計算された差が実質的になくなるまで上記第1気流制御装置を通る気流を調整することにより、患者の呼吸を制御するステップと
を含む、方法。
(項目34)
少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度を判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れる気流の濃度に基づいて、少なくとも別の気流制御装置を通る気流を調整するステップと
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度が、上記事前設定した設定点を超えるかどうかを判断するステップと、
少なくとも別の気流制御装置を通る気流を増加させるステップと
をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度が、上記事前設定した設定点を下回るかどうかを判断するステップと、
少なくとも別の気流制御装置を通る気流を減少させるステップと、
をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目37)
上記事前設定した設定点を患者に対して計算する、項目33に記載の方法。
(項目38)
少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度を定期的に監視するステップと、
少なくとも別の気流装置を通る上記気流中の呼気終末CO2濃度の値を計算するステップであって、患者の動脈血中の上記CO2の部分圧の推定値を表すステップと、
上記呼気終末CO2値を許容し得る呼気終末CO2値の事前設定した範囲と比較するステップと、
上記比較に基づいて、上記少なくとも1つの気流制御装置を通る気流の濃度に関して上記事前設定した設定点を調整するステップと、
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目39)
上記計算された呼気終末CO2値が、許容し得る呼気終末CO2値の範囲より低いかどうかを判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度の事前設定した設定点の値を増加させるステップと
をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
計算された呼気終末CO2値が、許容し得る呼気終末CO2値の範囲より高いかどうかを判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度の事前設定した設定点の値を減少させるステップと
をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
上記患者が特定の睡眠段階にあるかどうかを判断するステップと、
特定の睡眠段階に基づいて少なくとも1つのパラメータを調整するステップと
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目42)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置の間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する、システム。
(項目43)
上記ボリュームは、患者の呼気の少なくとも一部を蓄積するように構成されたデッドスペースボリュームの一部である、項目42に記載のシステム。
(項目44)
上記患者インターフェース機器は、鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ装置、口腔内装置、および気管内チューブから成る群から選択される、項目42に記載のシステム。
(項目45)
上記患者インターフェース機器は、上記呼気コンジットと上記患者の呼吸気道との間に実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目44に記載のシステム。
(項目46)
上記呼吸コンジットは、患者の気道への気流を制御するように構成された上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目42に記載のシステム。
(項目47)
上記補助気流制御装置は、上記患者により制御される、項目45に記載のシステム。
(項目48)
上記呼吸コンジットは、上記圧搾空気発生装置が故障した場合に、空気へのアクセスを形成し、上記呼吸コンジットをバイパスするように構成された窒息防止弁であって、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する窒息防止弁を含む、項目42に記載のシステム。
(項目49)
上記気流制御装置は、上記患者の生理的変数の少なくとも1つに基づいて、上記気流制御装置を通るガスの上記流速を調整するように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目50)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、
上記呼吸コンジットからのガス排出レートと、
上記患者の血液中の上記ガス濃度と
を制御するように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目51)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、上記呼吸コンジットから容易に排出される上記ガス量の範囲を、上記患者による上記ガスの産生範囲に等しくするように構成される、項目50に記載のシステム。
(項目52)
上記ガスは二酸化炭素である、項目42に記載のシステム。
(項目53)
上記第1気流制御装置は、上記患者が一度に産生する上記ガス量より少ないか、または等しい上記ガス量の漏出を可能にするように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目54)
上記第2気流制御装置は、
上記第1気流制御装置から漏出し得る上記ガス量、および上記患者が一度に産生するガスの最大総量に基づく上記ガス量の漏出を可能にするように構成される、項目53に記載のシステム。
(項目55)
上記第3気流制御装置は、上記第1および第2気流制御装置から漏出可能な上記空気量に基づく空気を排出し、上記ガスの超過量を患者が再呼吸しないように構成される、項目54に記載のシステム。
(項目56)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に回転可能に連結されるように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目57)
上記呼吸コンジットは、上記呼吸コンジットへの損傷を防ぐように構成された保護カバーを含む、項目42に記載のシステム。
(項目58)
上記呼吸コンジットに連結されるように構成され、患者の呼吸中に凝縮を収集するようさらに構成されたコレクタをさらに含む、項目42に記載のシステム。
(項目59)
項目42に記載のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目60)
項目42に記載のシステムを使用し、患者の血液中の酸素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目61)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
患者インターフェース機器に連結するように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する第1弁であって、上記第1弁はガスの漏出を制御するように構成された第1開口を含む、第1弁と、
ガスの漏出を制御するように構成された第2開口を含む第2弁と、
上記第1弁および上記第2弁に連結される第1ボリュームコネクタであって、上記第1ボリュームコネクタは、上記圧搾給気装置により供給される上記空気と上記患者により生成される上記ガスの混合物を含むように構成され、
空気の漏出を制御するように構成された第3固定開口を含む第3弁と、
上記第2弁および上記第3弁に連結された第2ボリュームコネクタであって、上記第2ボリュームコネクタは、上記圧搾給気装置により供給される上記空気と上記患者により生成される上記ガスの混合物を含むように構成され、
上記第3弁および上記給気装置に連結される第3コネクタと
を含む、システム。
(項目62)
上記患者インターフェース機器は、上記患者の呼吸気道および上記呼吸コンジットに対して実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目61に記載のシステム。
(項目63)
上記患者インターフェース機器は、上記患者インターフェース機器からの空気の漏出を制御するように構成される第1開口を含む、項目61に記載のシステム。
(項目64)
上記第2ボリュームコネクタに含まれるガスの量は、一回の呼吸で患者が排出する上記ガスの量から第1ボリュームコネクタに蓄積されたガスの量を差し引いた量と実質的に等しい、項目61に記載のシステム。
(項目65)
上記第1弁から漏出し得るガス量は、上記第1弁から漏出し得る空気量、上記第1コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量、上記第2弁から漏出し得る空気量および上記ガスの量、および上記第2コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目66)
上記第2弁から漏出し得るガス量は、上記第1弁から漏出し得る空気量、上記第1コネクタのボリューム、上記第2弁から漏出し得る空気量、および上記第2コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目67)
上記第3弁から漏出し得る空気量は、上記第1および第2弁から漏出し得る上記空気の総量、および上記圧搾給気装置により供給される空気、および上記呼吸コンジットから上記ガスの余剰量を排出するように構成される空気量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目68)
上記第1弁から漏出しないガス量の少なくとも一部を上記患者が再呼吸する、項目61に記載のシステム。
(項目69)
上記第2弁から漏出しないガス量の少なくとも一部を上記患者が再呼吸する、項目61に記載のシステム。
(項目70)
上記第1ボリュームコネクタに蓄積された上記ガス量と上記第2ボリュームコネクタに蓄積された上記ガス量との合計を超えるガス量の少なくとも一部は、上記第3弁を通じて上記呼吸コンジットから完全に排出される、項目61に記載のシステム。
(項目71)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目61に記載のシステム。
(項目72)
上記呼吸コンジットは、上記患者の気道への気流を制御するように構成された窒息防止弁を含む、項目61に記載のシステム。
(項目73)
項目61に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目74)
項目61に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の酸素レベルを増加させるステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目75)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
上記患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は、別端において患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に隣接し、呼吸プロセス中に上記ガスの排出を制御するように構成された第1開口を含む第1弁と、
上記呼吸プロセス中にガスの排出を制御するように構成された第2開口を含む第2弁と、
上記第1弁と上記第2弁を接続し、上記呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、
上記呼吸プロセス中にガスの排出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、
上記第2弁と上記第3弁を接続し、上記第1ボリュームコネクタへのガスの供給を制御するように構成された第2ボリュームコネクタと、
上記第2弁と上記給気装置を接続する第3コネクタと
を含む、システム。
(項目76)
上記患者インターフェース機器は、上記呼吸コンジットと患者の呼吸気道との間に実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目75に記載のシステム。
(項目77)
上記患者インターフェース機器は、上記患者インターフェース機器からの空気の漏出を制御するように構成された第1開口を含む、項目75に記載のシステム。
(項目78)
項目75に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目79)
項目75に記載のシステムを使用し、患者の血液中の酸素レベルを増加させるステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目80)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置し、
上記第2気流制御装置は、複数の開口を含むようさらに構成される気流制御コンジットから空気の排出を制御するように構成される、システム。
(項目81)
上記気流制御コンジットは、上記別のボリューム内に少なくとも一部が配置されるように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目82)
上記気流制御コンジットは、上記複数開口のそれぞれ1つを通る気流を調整するように構成された制御弁を含む、項目80に記載のシステム。
(項目83)
患者への二酸化炭素の流れを制御する方法であって、項目80に記載のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含み、
上記制御は、
上記気流制御装置のうちの少なくとも1つを通る気流を測定するステップと、
測定した気流中の二酸化炭素濃度を検出するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、少なくとも1つの別の上記気流制御装置を通る気流を調整するステップと、
上記二酸化炭素の濃度の上記検出、および上記気流制御装置の少なくとも1つを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記ボリュームのサイズを調整するステップと
を含む、方法。
(項目84)
上記サイズ調整ステップは、
【化7】
と
【化8】
との間の関係に基づいて、上記ボリュームのサイズおよび上記気流制御装置の少なくとも1つを通る上記気流を調整するステップをさらに含み、
【化9】
は患者による1分間の二酸化炭素排出レートであり、
【化10】
は患者による1分間の総換気レートである、項目83に記載のシステム。
(項目85)
【化11】
と
【化12】
との間の上記関係を表す曲線は、少なくとも2つの不連続を含み、
上記不連続は、
上記第1気流制御装置を上記システムに配置することにより生じる低換気トラバースセグメントの長さと、
上記ボリュームを上記システムに配置することにより生じる第1呼吸プラトーセグメントの長さと、
上記複数の開口を上記第2気流制御装置に配置することにより生じる少なくとも1つの正常呼吸トラバースセグメントの長さと、
上記別のボリュームを上記システムに配置することにより生じる第2呼吸プラトーセグメントの長さと、
上記第3気流制御装置を上記システムに配置することにより生じる過換気トラバースセグメントの長さと
を用いて判断される、項目84に記載のシステム。
(項目86)
上記低換気トラバースセグメントは、呼吸間隔中に上記患者が呼吸した空気量と上記呼吸間隔中に上記患者が排出した二酸化炭素量との間の関係により定義された傾斜を有する、項目85に記載のシステム。
(項目87)
上記正常呼吸トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素は、上記第2気流制御装置の上記複数開口のうちの少なくとも1つから漏出し、上記追加量は、上記第1気流制御装置から漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目85に記載のシステム。
(項目88)
上記過換気トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素は、上記第3気流制御装置から流出し、上記追加量は、少なくとも上記第1および第2気流制御装置から漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目85に記載のシステム。
(項目89)
上記制御は、上記サイズ調整ステップに基づいて、二酸化炭素の目標平均動脈中濃度を判断するステップをさらに含む、項目84に記載のシステム。
(項目90)
上記サイズ調整ステップは自動である、項目84に記載のシステム。
(項目91)
上記サイズ調整ステップは手動である、項目84に記載のシステム。
(項目92)
上記ボリュームは、上記患者の呼気の少なくとも一部を蓄積するように構成された一部デッドスペースボリュームである、項目80に記載のシステム。
(項目93)
上記患者インターフェース機器は、鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ装置、口腔内装置、および気管内チューブから成る群から選択される、項目80に記載のシステム。
(項目94)
上記患者インターフェース機器は、上記呼吸コンジットと患者の呼吸気道との間に実質的に密閉された接続を形成するように構成される、項目93に記載のシステム。
(項目95)
上記呼吸コンジットは、患者の気道への気流を制御するように構成された上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目80に記載のシステム。
(項目96)
上記補助気流制御装置は、患者により制御される、項目95に記載のシステム。
(項目97)
上記呼吸コンジットは、上記圧搾空気発生装置が故障した場合に、空気へのアクセスを形成し、上記呼吸コンジットをバイパスするように構成された窒息防止弁であって、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する窒息防止弁を含む、項目80に記載のシステム。
(項目98)
上記気流制御装置は、上記患者の少なくとも1つの生理的変数に基づいて、上記気流制御装置を通る上記ガスの流速を調整するように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目99)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、
上記呼吸コンジットからのガス排出レートと、
上記患者の血液に含まれる上記ガスの濃度と
を制御するように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目100)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、上記呼吸コンジットから容易に排出される上記ガス量の範囲を患者による上記ガスの産生範囲に等しくできるように構成される、項目99に記載のシステム。
(項目101)
上記ガスは二酸化炭素である、項目80に記載のシステム。
(項目102)
上記第1気流制御装置は、上記患者により産生される上記ガス量より少ない、または等しい上記ガス量が一度に漏出し得るように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目103)
上記第2気流制御装置は、
上記第1気流制御装置から漏出し得るガス量と、
上記患者が一度に産生できるガスの最大総量と、
に基づく上記ガス量が漏出し得るように構成される、項目102に記載のシステム。
(項目104)
上記第3気流制御装置は、上記第1および第2気流制御装置から漏出し得る上記空気量に基づく空気を漏出し、上記患者が上記ガスの余剰分を再呼吸しないように構成される、項目102に記載のシステム。
(項目105)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に回転可能に連結されるように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目106)
上記呼吸コンジットは、上記呼吸コンジットへの損傷を防ぐように構成された保護カバーを含む、項目80に記載のシステム。
(項目107)
上記呼吸コンジットに連結されるように構成されたコレクタであって、上記患者の呼吸中に凝縮を収集するようさらに構成されたコレクタをさらに含む、項目80に記載のシステム。
(項目108)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は別端において患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に隣接し、上記呼吸プロセス中に上記ガスの流出を制御するように構成された第1開口を含む第1弁と、
上記呼吸プロセス中に上記呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成された第2弁と、
上記第1弁と上記第2弁とを接続し、上記呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、
上記呼吸プロセス中にガスの流出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、
上記第2弁と上記第3弁を接続し、上記第2ボリューム内の上記少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される第2ボリュームコネクタと、
上記第2弁と上記給気装置を接続する第3コネクタと
を含む、システム。
(項目109)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つのボリュームを含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つの気流制御装置を含み、上記少なくとも1つの気流制御装置は、上記呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される、システム。
本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジット(respiratory conduit)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する。第2気流制御装置は、さらに複数の開口を含むように構成された気流制御コンジットからの空気の排出を制御するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的なシステムを示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的なシステムを示す別の図である。
【図2A】図2Aは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する方法およびシステムを使用した典型的な臨床機器のセットアップを示す図である。
【図2B】図2Bは、図1A〜2Aに示される呼吸コンジットの一部を示す図である。
【図3】図3は、本発明に従う、患者の呼吸を制御するシステムおよび方法を使用した場合の、換気(例えば、1分間に患者が呼吸した空気の総量)と患者によるCO2排出との関係を、患者の一晩のCO2産生レートを表すトレースとともに示す典型的なグラフ表示である。
【図4】図4は、患者の一晩の典型的なCO2排出のグラフ表示である。
【図5】図5は、患者の呼吸を制御する従来の方法およびシステムを使用した場合の、患者の1回呼吸における呼吸の深さ(例えば、1回換気量)とCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図6】図6は、本発明に従う、8回の典型的な呼吸にわたって患者の呼吸を制御する装置から漏出するCO2率のグラフ表示である。
【図7】図7は、正常な呼吸とチェーンストーク呼吸との比較を示すグラフ表示である。
【図8】図8は、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的な方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明に従って、患者の呼吸を制御する方法の代替実施形態を示すフローチャートである。
【図10】図10は、呼吸を制御する従来の方法およびシステムを使用した場合の患者の一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図11】図11は、従来の圧搾空気供給装置を単独で使用した場合の患者の一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図12】図12は、本発明に従う、一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図13】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図14】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図15】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図16A】図16A〜Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する代替システムを示す。少なくとも1つの気流制御装置は複数の開口を含む。
【図16B】図16A〜Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する代替システムを示す。少なくとも1つの気流制御装置は複数の開口を含む。
【図17】図17は、患者の1回呼吸における呼吸の深さ(例えば、1回換気量)とCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図18】図18は、図16に示される本発明の実施形態に従って、患者の呼吸の深さとCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図19】図19は、図16に示される本発明の実施形態に従って、患者の呼吸の深さとCO2排出との関係を示す別のグラフ表示である。
【図20】図20は、本発明に従う患者の呼吸を制御する方法を示す典型的なフローチャートである。
【図21A】図21A〜21Bは、本発明に従う典型的な窒息防止弁を示す。
【図21B】図21A〜21Bは、本発明に従う典型的な窒息防止弁を示す。
【図22】図22は、本発明に従う患者の呼吸を制御するシステムの別の典型的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、添付の図面を参照して説明される。図面において、同様の参照番号は、同一または機能的に類似する要素を示す。さらに、参照番号の左端の桁は、その参照番号が最初に現れる図面を示す。
【0014】
2つの血液ガス、二酸化炭素(「CO2」)および酸素(「O2」)のうち、睡眠中の呼吸の神経制御に関する問題は、O2よりもCO2の制御に関連する。CO2は血液に溶解し、重炭酸イオンとともに血液pHを決定する。過剰なCO2は血液を酸性にする一方、CO2の不足は血液をアルカリ性にする。タンパク質は機能するために安定したpHを必要とするため、約7.4の血液pHを産生する狭い範囲内でCO2レベルを制御する必要がある。これは、肺を経由するCO2の排出を、細胞代謝の生成物である内因性CO2の産生と厳密に一致させることにより達成される。
【0015】
図7は、正常な呼吸およびチェーンストーク呼吸のプロットを対応する血中CO2レベルのプロットに沿って示す。プロット710により示されるように、正常な呼吸において、患者の呼吸努力は安定している。これは、プロット712に示される安定した動脈血中のCO2レベルに対応する。動脈血に溶解したCO2の典型的な正常部分圧は40mmHgであり、O2圧は約105mmHgである。チェーンストーク呼吸において、増減プロット714に示されるように、呼吸努力は不安定である。対応するプロット716は、チェーンストーク呼吸中の関連する可変血中CO2レベルを示す。
【0016】
高感度で細微に調整されたシステムは、患者の血管系および脳内に配置される多くのセンサまたは化学受容器(chemoreceptor)を介して血中CO2レベルを検出する。これらセンサからの神経信号は、脳の呼吸制御中枢により処理され、適切な呼吸パターン指令を横隔膜、胸部および呼吸気道の筋肉を含む呼吸筋に送る。本システムの目的は、呼吸レート(呼吸の深さおよび頻度)を変えることにより、CO2の排出をCO2の産生と一致させることである。健康なヒトにおいて、このシステムは正確であり安定している。CO2の産生における変化に素早く対応し、血中CO2レベルを狭い範囲内で維持することができる。体内の多くのホメオスタシス機構と同様に、血液ガスの制御は、閉ループ負のフィードバック制御系により達成される。
【0017】
血中CO2レベルを制御するシステムが故障した場合、安定したCO2レベルを維持する能力が失われる可能性がある。このシステムは、「オーバーシュート」と「アンダーシュート」の振動パターンにおける血中CO2を「追跡」することにより、特徴的な増減呼吸パターンを生じる。CSRは、不規則な呼吸パターンに関連する典型的な症候群であり、心不全の場合に一般的である。図7は、正常な呼吸が動脈血中の安定したCO2レベルを伴うが、CSRは不安定なCO2レベルのため振動する呼吸パターンを呈することを示す。
【0018】
血液ガスの不十分な制御に関連する増減呼吸ドライブ(waxing/waning respiratory drive)は、気道を開いた状態で維持する筋肉の制御にも適用するため、呼吸ドライブの減退期中の周期的気道虚脱は、これらの症候群の特徴である場合が多い。実際に、少なくとも断続的な気道虚脱に関連しない純粋な増減気道パターンは比較的まれであり、MSAは呼吸の不安定性の優性発現である場合がある。MSAは、低下した呼吸努力に関連する極めて規則的で予測可能なパターンの閉塞性イベントとして現れる場合があるが、視覚的に認識可能なパターンを持たない異なる種類のイベント(例えば、閉塞性無呼吸、中枢性無呼吸、呼吸低下)のカオス的混合として現れる場合もある。
【0019】
数十年にわたり、呼吸の安定性に必要な状態を数学的に説明することが可能であった。この解析フレームワークは、閉ループ負のフィードバック制御系の安定性を予測するための典型的なプロセス制御理論で使用される解析フレームワークと同一のものである。これらのシステムは、正しく調整されると、非常に複雑で高感度のプロセスを安定に制御できるが、特定分野の問題は、不安定性および振動制御をもたらし、プロセスが無駄になるか、または悪化することが知られる。一般に、これらの問題は、制御ループの過敏性または「閉ループゲイン」およびタイミングの問題により生じ、プロセス結果を測定し、適切な是正措置を取るまでに過剰な時間遅延が起こる。これらは、不安定な睡眠時呼吸の患者が呈する問題と同一のものである。
【0020】
呼吸の化学的制御における不安定性の根底にある原因は、通常、血液ガスセンサ、すなわち末梢化学受容器の1つの過剰なゲインまたは敏感性であることは十分に知られている。末梢化学受容器は、頸動脈内に配置され、酸素およびCO2含有量を調べるため直接動脈血を採取する。化学受容器は、動脈血中のCO2含有量の代わりとなる血中H+イオン濃度を短期間感知する。感知異常が起きると、脳の呼吸中枢に信号を送る。この信号は、血液ガス、特にCO2の変化を過大評価する傾向にある。異常感知の原因は不明であるが、心不全等の様々な疾患によく見られる。現行の医療技術を用いて上述の異常感知を是正することは困難である。さらに、血液循環に関する問題は、血液ガスの変化が報告されるまでの時間遅延を延長するため、患者の呼吸制御ループの不安定性の問題が加わる。
【0021】
不安定な呼吸を生じる呼吸制御フィードバックループにおける高い閉ループゲインは、一般に過敏なCO2センサまたは血液循環障害のいずれかに起因することを考慮し、多数の治療方針が試行されているが、既存の治療法の大部分には様々な欠点がある。
【0022】
睡眠時の呼吸安定性を取り戻すための現行の治療方法には以下の問題がある。
1.複雑である。
2.費用がかかる。
3.閉ループ呼吸制御ゲインの一側面は減少するが、その他の側面は増加するため効率的でない。さらに、安定した状態を確実に回復できない場合がある。
4.患者が低炭酸状態にある場合、睡眠時に維持すべき標的血中CO2範囲を医師が判断できない。
5.呼吸に使用可能な酸素量を削減するため、正常レベルの血液酸素を回復するために追加の酸素補給を必要とする。
6.長い閉塞性無呼吸イベントの後等の異常状況下において、急速にCO2を排出できない。
7.不安定な呼吸パターンに対して1回呼吸ベースで速やかに応答できず、多呼吸パターン認識アルゴリズムに依存する。
8.治療の経過中に、単一の固定推定呼吸要件に依存し、呼吸要件の変化に適応するように構成されていない。
9.高価な電子装置に依存する。
【0023】
また現行の方法は、患者の換気レート(rate ventilation of patient)とCO2排出レート(rate of CO2 excretion)との関係を非線形様式でモデル化することができない。モデル化は、大部分の状況においてCO2の排出を定義された範囲内に維持することにより呼吸の「クランピング」を可能にする複数の個別のステップを含む。
【0024】
本明細書に記載されるように、患者の血中CO2を特定レベルに維持することにより、患者の呼吸を制御する一方、血液の酸素化を維持または改善できるシステムおよび方法は、これらの問題に対する解決策を提供する。
【0025】
また本発明は、「デッドスペース(deadspace)ゲイン」を実質的に排除する方法を提供する。これは、一部の従来の呼吸装置に存在する問題である。
【0026】
不安定な呼吸パターンは、過換気および低換気または無呼吸を互いに含む。過換気中にはCO2の急速な「噴出」があり、動脈血CO2を急激に低下させることで、動脈血が末梢化学受容器に達し、脳が血中CO2レベルの異常低下を検出すると、低換気または無呼吸期が開始する。低換気中にはCO2が急速に蓄積し、過換気期が再開する。このパターンは無限に反復し得る。
【0027】
理想では、過換気中に肺の効率が低下し、CO2の噴出を抑えるはずである。これを行う方法の1つは、患者に高いパーセンテージでCO2を含む吸気を吸入させることであり、これによって肺におけるガス交換を妨げ、過剰なCO2の排出を呈するようになる。同様に、低換気中は肺の効率が最大になり、CO2の蓄積を制限する。そのため、低換気中に吸入されたCO2は最適にはゼロである。過換気中は患者にCO2濃度の高い吸気を供給し、低換気中は供給しないことにより安定化影響を及ぼす能力に関して、任意の設計を特徴付けることができる。
【0028】
残念ながら従来のデッドスペースシステムは、これと反対に作用する傾向がある。1回換気量(tidal volume)が増加するにつれて、吸気中のCO2濃度が減少するため、実際に不安定性が促進される。図13〜15は、正常な呼吸において、近位の単一デッドスペース設計と遠位の単一デッドスペース設計のデッドスペースゲインがいずれも高いことを示す。単一の近位デッドスペースシステムは、密閉された患者インターフェースと、オリフィスを通る気流が単一のデッドスペースボリュームを超えるすべての排出ガスを流し出すために十分な大きさで構成された単一オリフィスとの間に単一デッドスペースボリュームを挟入する。次にそのような装置は、典型的な呼吸コンジットを介して給気装置にさらに接続される。単一の遠位デッドスペースシステムは、実質的に患者のインターフェース上またはその付近にある単一オリフィスと、給気装置との連結として作用するデッドスペース全体を含む単一コンジットとで構成される。単一オリフィスは、装置から排出されるガスの特定最大量を可能にし、任意の追加の排出ガスを実質的に再呼吸するように構成される。高いデッドスペースゲインは、斜線領域における関数の急な正の傾斜で示される。斜線領域は、装置使用中の正常な呼吸範囲を表す。
【0029】
本発明のさらなる特徴および利点については、本発明の様々な実施形態の構造および操作とともに、添付の図面を参照して以下に詳述する。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されない。そのような実施形態は、本明細書において単なる例示目的で提示される。追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術に精通する者には明らかとなるであろう。
【0030】
本発明は本明細書において特定のアプリケーションの例示的実施形態を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されない。本明細書で提供される教示を入手できる当業者は、その範囲内における追加の修正、アプリケーション、および実施形態、また本発明が極めて有用となる追加の分野を認識するであろう。
【0031】
(血液ガスレベルの規制)
本明細書は、患者の呼吸を制御する方法およびシステムについて説明する。本方法およびシステムは、複数のデッドスペースボリュームと弁との組み合わせを使用し、患者の血中CO2レベルを制御することにより、患者の呼吸を制御する。治療システムの装置は、換気レート(例えば、毎分総換気量、
【0032】
【化13】
とCO2排出レート
【0033】
【化14】
との関係を制御しながら、非線形の断続様式でこの関係を広範囲にモデル化できる(図3および以下の説明を参照)。このシステムにより、医師は、治療中に維持すべき動脈血中CO2レベルを定義するとともに、過換気と低換気に関する強力な制限を設けることができる。特定の状況下で、本発明は、酸素補給を用いずに血液の酸素化を増加できる。
【0034】
本システムは、固定(精密に定義された)サイズまたは可変サイズの複数の個別のデッドスペースボリュームと複数の換気オリフィスとの相互作用を提供する。ここで、ボリュームとオリフィスは、特定のパターンで組織化できる。そのような相互作用は、事前設定した圧力に設定される持続的気道陽圧(「CPAP」;Continuous Positive Airway Pressure)マシン等の換気補助装置を併用した場合の患者の換気レートとCO2排出量との関係を示す広範囲のスペクトルを定義する可能性を提供する。代替実施形態においては、換気補助装置は使用されず、患者が呼吸する単純な装置を使用して同様の効果が得られる。
【0035】
患者インターフェース機器(例えば、密閉されたCPAPマスク)とCPAPマシン(または任意のその他の給気装置)との間に配置される呼吸コンジットは円筒形である。換気オリフィスは、コンジットに沿って配置し、患者が排出したCO2を流出させる。換気オリフィス間にあるコンジットの長さは、個別のデッドスペースまたは準デッドスペースボリュームを示す。CO2を含む空気が患者の肺から呼吸コンジットに排出されると、CPAPマシンにより生成された圧力がそのような空気に含まれるCO2の少なくとも一部を様々なオリフィスから特定パターンで流し出す。そのパターンは、患者の呼吸、または1回換気量(Vr)のボリュームと呼吸の頻度、あるいは呼吸レートに依存する。各呼吸は、呼気間隔と吸気間隔を含む。呼気間隔が終了すると吸気間隔が始まり、患者はコンジット内に残るCO2の大部分またはすべてを再呼吸する。各デッドスペースのボリュームおよび各換気オリフィスのサイズに応じて、換気レートとCO2排出レートとの関係を示す曲線は、任意の数の変曲点を有し、それぞれ傾斜および長さの異なる直線または曲線セグメント(図3を参照)を定義する。
【0036】
上述のシステムは、患者の呼吸(例えば、換気)とCO2の排出との関係を広範囲にモデル化できる。従来のコンピュータシミュレーション技術を使用して、オリフィスのサイズ、ボリューム、および/またはそれらの構成を特定し、呼吸制御フィードバックループを安定した動作に戻す関係を確立する。眠りに入るまでの間は、睡眠中に見られると予想されるレベルよりCO2の産生が高い場合があるため、補助換気弁を装着することにより、患者は、快適にベッドで安静するまで装置を通る気流を増加させることができる。
【0037】
図1Aおよび1Bは、患者101の呼吸を制御する典型的なシステム100を示す。図1Aを参照すると、システム100は、マスクとヘッドギアのアセンブリ102、また圧搾給気装置あるいはCPAP装置130に連結されるように構成された呼吸コンジットまたは混合装置120を含む。マスクとヘッドギアのアセンブリ102は、複数のストラップ103とマスク104を含む。複数のストラップ103は、マスク104を患者101の顔面に固定し、マスクと患者の呼吸気道(例えば、鼻または口)との間を実質的に密閉接続する。密閉されたインターフェースまたは接続は、空気またはガスが、患者の顔面とマスクとの間に生じ得る開口から制御不能に漏出することを防ぐ。図1Aの典型的な実施形態において、1つまたは複数のストラップ103は、患者の頭の上部から底部にかけて配置される。当業者には明らかなように、マスク104を患者101に固定するその他の方法も本明細書に包含される。圧搾および/または非圧搾ガス物質(空気、ガス等を含む)生成装置、例えばCPAP装置130を治療用呼吸システムと併用できる。
【0038】
マスク104は、密閉された低侵襲性口腔顔面換気マスクである。例えば、マスク104は、ResMed Corp.(Poway,CA)製の調節可能なVELCRO(R)ストラップヘッドギア付きMirage NVフルフェースマスクであってもよい。フルフェースマスクを使用し、鼻と口を覆うことができる。この設計は口からの漏出を排除し、口および/または鼻から呼吸する患者に対する治療を可能にする。当業者には明らかなように、例えば鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ、口腔内装置、気管内チューブ、または任意のその他の装置等のその他のタイプのマスクを使用できる。
【0039】
マスク104は、マスク弁105を含む。マスク弁105は、オリフィス136を含み、マスク104上の既存のルアポートの1つに結合する雌ルアフィッティングであってもよい。オリフィス136は、ドリル、穿刺、または任意のその他の方法で開けることができる。マスク弁105は、オリフィス136を通じて、患者が排出したガス(例えば、CO2)を漏出できる。代替として、マスク104はマスク弁105を含まない。代わりに、第1弁108を混合装置120上で実質的にマスク104に隣接するよう配置する。一例において、オリフィス136は固定サイズである。この設計により、時間単位あたりに特定量の空気をマスク弁105から漏出させることができる。別の例において、オリフィス136は可変サイズであり、マスク弁105からの漏出を可能とするよう意図された空気の量に応じて変えることができる。一例において、オリフィス136は、マスクがCPAPマシン130により特定の圧力で加圧される場合に、毎分0.5〜6リットルの気流を可能にする。この圧力は、患者のCPAP圧力規定(pressure prescription)に等しくてもよい。
【0040】
図1Aを再度参照し、混合装置120は、第1弁108、第1ボリューム111、第2弁112、第2ボリューム113、第3弁114、およびコネクタボリューム115を含む。第1弁108はオリフィス131を含む。第2弁112はオリフィス133を含む。第3弁114はオリフィス135を含む。関連技術分野において通常の技術を有する者には明らかなように、マスク弁105は第1弁108であってもよい。マスク弁105は、マスク104を含んでも含まなくてもよい。また第1弁108は、フィッティング139ではなくマスク104上に配置することもできる。
【0041】
図1Aに示されるように、フィッティング139は第1弁108を組み込む。フィッティング139は、マスク104および第1ボリューム111に連結される。第2弁112は、第1ボリューム111および第2ボリューム113に連結される。第3弁114は、第2ボリューム113およびコネクタボリューム115に連結される。コネクタボリューム115は、圧搾空気/ガス生成装置130に連結される。
【0042】
フィッティング139は、フィッティング122および124をさらに含み、それらを通じてマスク104および第1ボリューム111にそれぞれ連結される。フィッティング122、124は、22mm外径(「o.d.」;outer diameter)の標準型フィッティングであってもよい。フィッティング139に対する適切な接続を可能にするため、第1ボリューム111は、標準22mm内径(「i.d.」;inner diameter)の呼吸ホースであってもよい。
【0043】
さらに、フィッティング122および124はスイベル型であってもよく、フィッティング139を回転させて混合装置120の様々な位置および配向に対応し、実質的に漏出を防ぐ接続を提供できる。そうでなければ、フィッティング139は直線フィッティングまたは屈曲フィッティングであってもよく、例えば2つの22mm o.d.の端を有し、90度屈曲したフィッティングであってもよい。第1弁108は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130によりシステム100が加圧されると、1分間に0.5〜6リットルの気流を提供する。フィッティング126、128(第2弁112を第1ボリューム111および第2ボリューム113にそれぞれ連結する)、およびフィッティング132、134(第3弁114を第2ボリューム113およびコネクタボリューム115にそれぞれ連結する)は、フィッティング122、124に類似してもよい。
【0044】
第1ボリューム111は、標準的な22mm i.d.の呼吸ホースであってもよく、患者の動脈血CO2の望ましい増加に応じて、100〜400mlの内部体積を有してもよい。ホースは、CPAPマシンで使用されるようなゴム製のカフを有する従来のホースであってもよく、波型の使い捨て呼吸ホース、またはマスク104をフィッティング126に接続するために適した任意のその他のホースであってもよい。
【0045】
上述のように、第2弁112は、固定サイズであってもよいオリフィス133を組み込む直線状のコネクタを含む。代替として、オリフィス133は可変サイズである。このコネクタはプラスチックであってもよく、第1ボリューム111と第2ボリューム113の接続に適した22mm o.d.の端を有する。さらにオリフィス133は、表面(例えば、ベッド)に横たわることにより閉塞されないようにコネクタに配置される。第2弁112を含むフィッティングに溝を形成し、任意の閉塞を防ぐことができる。オリフィス133は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130により加圧されると、1分間に3〜8リットルの気流を可能にする。
【0046】
第2ボリューム113は、第1ボリューム111と実質的に同一タイプである。第2ボリューム113の総体積は100〜400mlである。
【0047】
第3弁114は、オリフィス135を組み込み、可変であっても固定であってもよい。第3弁114は、図1Aに示されるように直線状のコネクタであってもよい。コネクタは、プラスチックであってもよく、第1ボリューム113とコネクタボリューム115の接続に適した22mm o.d.の端を有する。オリフィス135は、表面(例えば、ベッド)に横たわることにより閉塞されないように混合装置120内に配置される。第3弁114を含むフィッティングに溝を形成し、任意の閉塞を防ぐことができる。オリフィス135は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130により加圧されると、1分間に15〜30リットルの気流を可能にする。
【0048】
コネクタボリューム115は、第1ボリューム111および第2ボリューム113と実質的に同一のタイプであってもよい。コネクタボリューム115の長さは、患者101に対するCPAPマシン130の配置に対応するように設定できる。
【0049】
オリフィス131(または代替で136)、133、および135はそれぞれ、圧搾給気装置130が特定の圧力で作動する場合に、特定の速度で空気を漏出できるように構成される。各オリフィスを通る気流のガス濃度に応じて、ガスが各オリフィスを通って特定の速度で漏出する。オリフィスは固定、可変サイズであってもよく、または固定および可変サイズのオリフィスの組み合わせを使用できる。当業者には明らかなように、必要に応じて、様々な位置および/または数の固定および可変オリフィスを使用できる。これにより、固定サイズのオリフィスの場合は、事前設定した量の空気およびガスを(そのような空気中のガス濃度に応じて)オリフィスから漏出することができ、または可変サイズのオリフィスの場合は、可変量のガスをオリフィスから漏出できる。さらに可変オリフィスの場合は、そのサイズを手動または動的に制御できる。オリフィスのサイズを手動で制御する場合は、患者、医師、または第3者がオリフィスのサイズを制御し、よってオリフィスから漏出し得るガス量を制御できる。オリフィスのサイズを自動制御する場合は、患者が排出したガス量、特定の各オリフィスから漏出するガス量、ボリュームコネクタ111および113に含まれるガス量、患者の身体的パラメータ(例えば、血圧、体重、年齢等)および/またはその他の要素に基づいて、そのサイズを自動調整することができる。
【0050】
オリフィス131、133、135および3つのボリューム111、113、115のサイズは、睡眠時に直接測定される患者の最高および最低
【0051】
【化15】
(1分間のCO2産生レート(ml))の推定値に基づくアルゴリズムを使用して事前に決定できる。代替として、患者の最高および最低
【0052】
【化16】
推定値は、患者の体重または任意のその他の生理学的または人口統計学的変数、またはそれら変数の組み合わせに由来してもよい。ボリュームおよびオリフィスのサイズは、診療所、病院、研究所、またはCO2監視装置を備えた任意のその他の施設において、睡眠ポリグラフ検査中に調整される。この調整に基づいて、オリフィスおよびボリュームの最終的な組み合わせが決定される。この組み合わせは、睡眠時に生じることが予想される1分間のCO2産生の最小推定値に等しい
【0053】
【化17】
以下で第1呼吸プラトー(plateau)(図3、セグメント308を参照)を確立し、睡眠時に生じることが予想される1分間の最大推定CO2産生値に等しい
【0054】
【化18】
以上で第2呼吸プラトー(図3、セグメント310を参照)を確立する。
【0055】
呼吸コンジット120は、マスク104およびCPAP装置130に回転可能に連結される。この配置により、コンジット120は、睡眠中の患者の寝返りに併せて回転できる。当業者には明らかなように、回転可能な接続は、システム100の作動中に任意の漏れを防ぐように密閉できる。
【0056】
図1Bを参照すると、コンジット120は、窒息防止弁(anti−asphyxiation valve)118、および呼吸時に患者を補助する任意の数の補助弁116を含む。図1Bの例において、窒息防止弁118および補助弁116は、フィッティング139に配置される。
【0057】
補助弁116は、開いている場合、混合装置120を通じて、混合装置120から排出CO2を大量に流し出すために十分な気流を提供する。一例において、患者101は補助弁116を作動し、快適に安静するまでCO2を流し出すことができる。補助弁116は、患者101が手動で閉じるか、または特定の期間が経過した後に自動で閉じることができる。
【0058】
窒息防止弁118は、CPAPマシン130の作動圧が事前設定した値を下回る(例えば、CPAPマシン130が適切な圧力を提供できない)場合に開く。後者が起こった場合は、窒息防止弁118が開き、患者101は弁118を通じて環境大気を呼吸できる。したがって、弁118は、CPAPマシン130の故障時に患者の窒息を防ぐ。
【0059】
さらに、混合装置120は、患者の息から水分を収集する水分凝縮収集装置を含む。これにより、混合装置120内の不要な水分の蓄積を防ぐことができる。
【0060】
例えば、体重100kg、CPAP規定15cmH2Oの男性患者は、以下の構成のオリフィスおよびボリュームが必要であると判断される。
【0061】
【表1】
図2Aは、患者の睡眠ポリグラフおよび/または滴定検査の典型的なセットアップ200を示す。セットアップ200は、CO2モニタ204、計算装置206、ニードル弁制御を有する可変領域流量計202(a、b、c)、CPAPマシン212、切り替え可能なマニホールド208、チューブ210(a、b、c)、コンジット218、および口腔顔面マスク214を含む。
【0062】
マスク214は、図1Aおよび1Bに示される104に類似する。CPAPマシン212は、CPAPマシン130に類似する。またコンジット218は、混合装置120に類似する。コンジット218は、マスク214とCPAPマシン212を接続する。またコンジット218は、チューブ210(a,b,c)に接続される。コンジット218は、第1ボリューム211、第2ボリューム213、およびコネクタボリューム215を含み、これらはボリューム111、113、および115にそれぞれ類似する。チューブ210aは、オリフィス131(図2Aに図示せず)を流量計202aに接続する。チューブ210bは、オリフィス133(図2Aに図示せず)を流量計202bに接続する。チューブ210cは、オリフィス135(図2Aに図示せず)を流量計202cに接続する。チューブ210(a,b,c)は、内径3/8インチのTygonチューブであってもよい。チューブ210(a,b,c)は、糊またはセメントで接着されるか、あるいはその他の方法でオリフィス131、133、135および流量計202(a,b,c)にそれぞれしっかりと固定される。
【0063】
さらに、コンジット218は、ボリューム213および215内に配置される可動ピストンまたはシリンダ(図2Bに示す)を使用し、ボリューム213および215を変えるように構成される。シリンダは、o−リングクランプ(図2Bに示す)を使用して密閉できる。図2Bは、コンジットの内部234に配置されるシリンダ/ピストン236を有するコンジット218の一部を示す。シリンダ/ピストン236は、両方向矢印Aで示されるように、前後に移動できる。この移動により、デッドスペースボリューム232が増減する。シリンダ/ピストン236は、o−リングクランプ238で固定される。このシリンダ/ピストン236は、ボリューム211、213、および215のいずれか、またはすべてに配置できる。またボリュームは、目盛り付きの計り(図2A、2Bに図示せず)を含み、デッドスペースボリューム232を特定の値に調整できる。
【0064】
図2Aを再度参照すると、流量計202(a,b,c)の外側を切り替え可能なマニホールド208に連結することにより、可変流量計202(a,b,c)の組み合わせのうちのいずれか1つから流れる空気中のCO2含有量をモニタ204で測定できる。モニタ204は、データを収集する計算装置206に接続される。データを使用し、図1A、1Bおよび3〜9に関して記載されるように、各流量計202を通る空気の流速およびボリュームのサイズを調整する。
【0065】
(患者の治療方法および滴定)
最初に、患者の一晩の睡眠中CO2排出プロフィールを判断する。このプロフィールは、診断の夜間睡眠ポリグラフ検査中に患者が産生した総CO2量を測定することにより判断する。そのようなプロフィールは、睡眠中のCO2産生の最高、最低、および平均レベルに関する情報を含む。患者に装置を試験的にフィッティングする前に(図1A〜2を参照)、その他の患者の生理的データに沿って収集されたデータおよび望ましい治療結果を使用し、シミュレーションモデルを生成する。これは、治療中に使用されるボリュームおよびオリフィスの構成に関する最善の推定を提供する。その後の睡眠ポリグラフ滴定検査において、装置を患者に装着し、初期CPAP圧を選択して、事前設定した空気の流速において各オリフィスを通るCO2の実際の流れを測定する。各オリフィスを通るCO2またはそこから漏出するCO2の流れは、患者のCO2排出プロフィールとの意図された関係に応じて望ましい値と等しくなるように、オリフィスのサイズを(手動または自動で)調整する。またボリュームのサイズも(手動または自動で)調整する。これは、患者の平均動脈血CO2量が望ましいレベルから逸脱しているか否かによる。サイズの調整は、知られたサイズのボリュームホースと物理的に置き換えることにより行うことができる。代替として、シリンダ/ピストンの配置(図2Bに示す)を各ボリュームに挿入し、得られたデータおよび望ましい値に基づいて、手動または自動でボリュームの内部スペースを増減できる。CPAPの開始圧を変更する必要がある場合は、測定および調整の手順を反復し、特定の望ましい結果に戻す。
【0066】
滴定検査の最後に、CPAP圧、ボリューム、および各オリフィスを通る気流の最終構成を記録する。特注のコンジット/混合装置(図1A〜2Bに示される)は、これらの明細に従って製造し、患者用に提供できる。当業者には明らかなように、様々な構成のオリフィスおよびボリュームが可能である。
【0067】
装置および治療システムは、各患者に対して個別に調整される。最初に、患者を適切な睡眠診断施設に紹介する。施設において、医師は患者の考えられる呼吸の不安定性評価を指示する。上述のように、通常の夜間睡眠ポリグラフ検査に特定の修正および強化を任意で行う。これらの修正は、呼気終末CO2の監視および較正鼻圧測定を追加で含んでもよい。代替として、鼻圧の代わりに、別の極めて正確な手段を使用し、例えば気流センサ付きの呼吸マスクを着用して、患者の鼻および口を通る気流を判断できる。呼吸グラフ(CO2)の波形(図6を参照)および気流信号を一晩記録し、睡眠ポリグラフ記録システムに保存する。検査の結果として、リアルタイムまたは検査後プロセスにおいて、呼気終末CO2モニタにより測定されたオリフィスを通る空気の気流の速度と気流メータの合計に空気中のCO2パーセンテージを掛けることにより、患者の1分間のCO2量
【0068】
【化19】
対時間、すなわち、睡眠時のCO2排出レートを得る。患者のCO2排出プロフィールは、National Instruments Corporation(Austin,Texas)製のDASYlab等、多数の市販の分析パッケージを使用して判断する。
【0069】
それを解読する医師は、一晩の
【0070】
【化20】
の変化を調べ、予想される
【0071】
【化21】
の最低、平均、および最高目標値を決定し、装置を構成する。また医師は、呼気終末CO2の波形自体を調べ、動脈血CO2の変化を評価し、夜の間に目標平均動脈血CO2レベルに達するために、患者が全体的CO2補助をどの程度必要とするかを判断する。次に、医師は、本発明を使用した滴定検査に患者を紹介する。
【0072】
滴定検査の前に、睡眠ポリグラフ技師は、患者に関する特定の統計学的および身体的情報を取得し、開始構成を確立する。例えば、年齢、性別、体重、動脈血CO2レベル、推定CPAP規定、および呼気終末CO2の実際値と目標値を収集する。次にこの情報を使用し、オリフィスおよびボリュームの可能な最適構成を推定する。患者の年齢、性別および体重を使用し、少なくとも複数の患者の検査に基づいて、睡眠時
【0073】
【化22】
の可能な最低、平均、および最高値を得る。次に、
【0074】
【化23】
の値を使用してオリフィスの目標流速を設定し、圧力下で各オリフィスを通る流速に基づいて、オリフィスのサイズを判断する。望ましい目標呼気終末CO2に基づいて、第1デッドスペースボリューム111のサイズを推定する。最後に、第3オリフィス115の最小サイズを推定する。これにより、過剰なCO2を流し出すことができる。
【0075】
検査が完了した後、図1に示されるように、システム100に類似した自宅用装置を患者に提供してもよい。代替として、本発明のシステムを使用した診療所での治療を予定してもよい。装置は、以下の典型的な機能を実施できる。
(i)各換気オリフィス131、133、135を個別に通る気流を測定する(例えばコンピュータ等の入出力装置に連結された可変領域流量計または電子流量計として、従来のゲージを使用し、気流を測定できる)。
(ii)各オリフィス131、133、135から派生する気流中のCO2含有量を検出し、例えばコンピュータ等の入出力装置に収集した含有量データを転送する。
(iii)弁を使用し(弁は手動または自動で操作できる)、各オリフィス131、133、135を通る(またはそこから漏出する)気流を調整する。
(iv)様々な長さのホースを着脱することにより、2つのデッドスペースボリュームのサイズを調整する(代替として、可変ボリューム装置を組み込むことにより、ホースを変えずにデッドスペースボリュームを変えることができる。また可変ボリューム装置をo−リングで密閉されたシリンダに入れ子にし、スライドして出し入れできるようにする)。(v)各オリフィスを通るCO2の流速を計算および表示する(この機能は、DASYLab等のソフトウェア上で実行する適切なデータ取得周辺装置を有する任意の計算装置で行い、CO2と気流データチャンネルを獲得できる。また適切なディスプレイを使用することにより、医師がボリュームを調整しながら各オリフィスを通るCO2の流れを観察できるようにする)。
【0076】
図8および9は、上述の説明に従い、図1A〜2Bに示されるシステムを使用し、患者の呼吸を制御する典型的な方法800および900をそれぞれ示す。図8を参照すると、方法800はステップ802から始まる。ステップ802において、患者が生成するCO2の量が判断される(患者による1分間のCO2の最高、最低および平均産生値を測定する)。次に、処理はステップ803に進む。ここで、一晩の呼気終末CO2のトレースを調べ、治療中の平均動脈血CO2の望ましい増加の程度を判断する。ステップ804において、任意の既存の閉塞性無呼吸を治療できる可能性の高い最適CPAP圧を判断する。次に、ステップ805および806において、ステップ802〜804で収集されたデータを使用し、システム100の予備構成を決定する。システムを構成するため、様々な仮定におけるシステム性能のコンピュータシミュレーションを使用できる。代替として、患者の生理的および/または統計学的データに加え、ステップ802および804で収集されたデータの関数であるオリフィスおよびボリュームに対して実験的に決定された値を使用してもよい。ステップ806において、複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定する。ステップ807において、患者の動脈血CO2レベルを測定する。次に、ステップ808〜809において、オリフィスのサイズ、ボリューム、および任意でCPAP圧を調整する。特定のオリフィス構成、ボリュームおよびCPAP圧に達するまで、ステップ808〜809を反復してもよい。
【0077】
図9を参照すると、方法900はステップ902から始まる。複数の換気オリフィス131、133、135のそれぞれを流れる気流を測定する。ステップ904において、ステップ902で測定された気流のCO2含有量を判断する。次にステップ906の方法に進む。ステップ906において、ステップ904で行った検出に基づいて、複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整する。ステップ908において、ステップ904の検出、およびステップ906で行った複数換気オリフィスの調整に基づいてデッドスペースボリュームのサイズを調整する。
【0078】
当業者には明らかなように、上述の方法は、研究室設定、病院、診療所、患者の自宅、または任意のその他の施設において適用できる。
【0079】
図3は、複数のデッドスペースボリューム111、113、115と複数のオリフィス131、133、135との関係300を示す。これにより、様々な換気レート
【0080】
【化24】
に関する患者のCO2排出レート
【0081】
【化25】
を広範囲でモデル化できる。実施形態において、本発明は、図3の傾斜に様々な変化をもたらす2つのデッドスペースボリューム111および113と、3つの換気オリフィス131、133、135を含む。
【0082】
図3において、曲線302は、患者の一晩のCO2排出プロフィールを表す。これをプロットに重ねて、患者の予想されるCO2排出レートの範囲を示す。図4を参照し、プロットの水平軸は時間を分で表し、垂直軸は1分間の患者のCO2産生レートをミリリットル/分(ml/分)で示す。図3を再度参照し、水平軸は本発明のシステムを使用した場合の患者の換気レート
【0083】
【化26】
をml/分で示し、垂直軸は患者のCO2排出レート
【0084】
【化27】
をml/分で示す。これら2つの量の典型的な関係は、本発明のシステムを使用しない場合、以下のように定義される。
【0085】
【化28】
式中、
【0086】
【化29】
は生理的および人工的に追加されたデッドスペースのボリュームの合計に呼吸頻度を掛けた値に等しい。
【0087】
【化30】
は、各呼吸で吸入および排出された空気の総量に呼吸頻度を掛けた値に等しい。FACO2は、動脈血に溶解したCO2の部分圧を環境大気圧で割った値であり、FICO2は、患者により吸入された空気中のCO2濃度である。方程式(1)に記載の関数は、ゼロで水平軸と交差する直線により表される。
【0088】
図3を再度参照し、曲線320は、本発明に従う
【0089】
【化31】
と
【0090】
【化32】
との関係を説明し、低換気トラバースセグメント304、第1呼吸プラトーセグメント306、正常呼吸トラバースセグメント308、第2呼吸プラトーセグメント310、および過換気トラバースセグメント312を含む。各セグメントは、デッドスペースボリュームおよび呼吸コンジットに配置されたオリフィスの数およびサイズ、またデッドスペースボリュームおよびオリフィスを通るCO2の流量により定義される特定の傾斜および長さを有する。したがって、セグメントの数は、コンジットにおけるデッドスペースボリュームおよびオリフィスの数とともに変化する。
【0091】
図3に示されるように、低換気トラバースセグメント304は、第1オリフィスを呼吸コンジットに配置することにより生じる。このセグメントの傾斜は、飽和点に達するまで、方程式(1)に記載の呼吸とCO2排出との正常な関係を示す。第1オリフィスを通るCO2の最大流速に対応する飽和点は、セグメント304とセグメント306の接合として表される。
【0092】
この低換気トラバースは、患者が低換気である間の換気とCO2排出の関係を説明する。推定される最小睡眠レベルを下回る
【0093】
【化33】
の値において、
【0094】
【化34】
と
【0095】
【化35】
の関係は、正常な生理学的関係から実質的に変化しない。不安定な呼吸症候群において安定性を損なう要因の1つは、低換気期に血中CO2が急速に蓄積することである。制御ループの実施に特有の時間遅延に起因して、これが起こった場合のオーバーシュートは避けられず、蓄積によって、急速に血中CO2レベルが実質的に正常値を上回る。本明細書に記載のシステムは、任意のCO2蓄積を実質的に最小化し、十分な換気を提供して、オリフィスを通じて低換気時のすべての呼気CO2を速やかに排出する。患者の呼吸パラメータと同様に、第1オリフィスのサイズは、その他のオリフィスおよびデッドスペースボリュームの構成とともに、
【0096】
【化36】
と
【0097】
【化37】
の関係が正常値から逸脱し始める値を判断する。第1オリフィスは、曲線320におけるこの最初の変曲点を予想される最小睡眠
【0098】
【化38】
またはその直下に配置するに足る大きさである(図3を参照)。
【0099】
第1呼吸プラトーセグメント306は、第1デッドスペースボリュームを呼吸コンジットに配置する効果を表す。第1オリフィスが飽和点に達すると、排出されたCO2を第1デッドスペースボリュームおよび第2オリフィスを越えて押し出すことによって、そのような増加が第1デッドスペースボリュームを超えるまで、患者の換気がどれだけ増加しても問題はない。そのため、この点に到達するまで、換気の増加が任意の追加CO2排出を生じることはない。第1デッドスペースを超える換気レートおよび第2オリフィスから流れるCO2は、セグメント306とセグメント308との接合点において定義される。
【0100】
この呼吸プラトーは、曲線において最初の変曲点を超える高い呼吸が事実上
【0101】
【化39】
の増加を生じないゾーンを含む。このセグメントは、実質的にゼロに近い傾斜を有する。この呼吸プラトーの存在は、第1デッドスペースボリュームが、典型的な呼吸期間に第1オリフィスから排出され得るガスの体積より大きいという事実に起因する。残りのCO2量は再吸入される。第1デッドスペースボリューム内の任意の追加CO2量は、排出されるCO2レベルの増加を生じない。不安定な呼吸サイクルは、気道が進行的に狭まることから始まることが多く、結果的に
【0102】
【化40】
が減少する。
【0103】
【化41】
の減少は
【0104】
【化42】
の比例減少を伴う場合に、不安定性がさらに進行する可能性がある。これは、血中CO2の蓄積を急速に生じ、脳がこの蓄積に対応する前に「オーバーシュート」をもたらす。第1呼吸プラトーの存在は、
【0105】
【化43】
が著しく減少した場合に、CO2の排出を安定レベルで維持することにより、脳が換気の減少に応答する時間があるため、急速なCO2の蓄積および著しい「オーバーシュート」を回避できる。低換気または無換気期間から回復する際に、第1呼吸プラトーは、CO2の排出が換気の増加に比例して増加することを防ぐ。同様に、これは「アンダーシュート」の可能性をもたらす過剰なCO2噴出の障害となる。
【0106】
また第1呼吸プラトーセグメント306により、医師は睡眠中の患者の平均動脈血CO2レベルを特定できる。罹患患者は、一般に少なくともわずかに低呼吸状態(例えば、正常な動脈血中CO2より低い)であり、そうした睡眠時CO2レベルを正常に近い値に再設定することが望ましい。第1呼吸プラトーセグメント306の長さは、治療中の血液CO2を決定する。さらに、セグメント306は混合装置に第1デッドスペースボリュームが存在する結果として生成されるため、第1デッドスペースボリュームのサイズを増加させると、血中CO2レベルが上昇する。そのような任意のボリュームの増加による血中CO2レベルの上昇量は、患者から収集したデータに基づいて計算できる。
【0107】
正常呼吸トラバースセグメント308は、呼吸コンジットにおける第2オリフィスの配置を表す。このオリフィスが飽和する(すなわち、オリフィスからの気流におけるCO2の濃度が最大値に達する点)まで、換気レート
【0108】
【化44】
の増加がCO2排出レート
【0109】
【化45】
の増加を生じる。第2オリフィスの飽和点は、セグメント308と310との接合点において定義される。
【0110】
さらに、セグメント308は、予想される睡眠時
【0111】
【化46】
の範囲における
【0112】
【化47】
と
【0113】
【化48】
との関係を示す。セグメント308は、低換気トラバースセグメント304よりも実質的に傾斜の緩い直線である。この関係の傾斜は、所定の時間における患者の実際のCO2産生レートを通過するため、呼吸が安定した状態を確立する。傾斜は、呼吸制御フィードバックループにおける閉ループゲインを説明する関係の変数である。制御のゲインは、不安定な呼吸症候群において過剰になるため、CO2産生と排出が一致する点(すなわち、正常呼吸(eucapnia))の側近でセグメント308の傾斜を減少させることにより、呼吸を安定化させる。
【0114】
正常呼吸トラバースセグメント308の傾斜は、例えば、第1および第2デッドスペースボリューム、第1および第2換気オリフィスのサイズ等、複数の変数により決定される。セグメント308の傾斜は、使用されるデッドスペースボリュームが大きくなる程浅くなり、第1および第2オリフィスの飽和点が近づく。トラバースされた
【0115】
【化49】
の範囲は、第2オリフィス133のサイズによっても決定される。患者の睡眠時
【0116】
【化50】
を測定することにより、第1呼吸プラトーセグメント306を最高の適切な
【0117】
【化51】
に設定することができ、正常呼吸トラバースセグメント308の長さをできる限り短くする。これがセグメント308の傾斜を浅くする。
【0118】
第2呼吸プラトーセグメント310は、第1呼吸プラトーセグメント306に類似するが、セグメント310は、呼吸コンジットにおける第2デッドスペースボリュームの配置を表す。得られる効果は、セグメント306に関して上述の効果と同様である。第2デッドスペースボリュームの飽和点は、セグメント310および312の接合点において定義される。
【0119】
第2呼吸プラトーセグメント310は、予想される睡眠時
【0120】
【化52】
の最高値上に配置され、第1呼吸プラトーセグメント306と同様に機能する。またそれはほぼ傾斜ゼロの直線セグメントであり、
【0121】
【化53】
の変化が
【0122】
【化54】
の変化をほとんど、またはまったく生じないゾーンを構成する。第2呼吸プラトーセグメント310の長さは、第2デッドスペースにより決定される。急激な換気の増加は
【0123】
【化55】
をほとんど、またはまったく増加させないため、過換気時のCO2排出を抑制する。
【0124】
第1および第2呼吸プラトーセグメント306、310は、強力な「換気クランプ」を提供する。
【0125】
【化56】
は2つのプラトー306、310により決定されるゾーン外で変化する可能性があるが、それは、極めて強力な刺激、例えば長い閉塞性無呼吸後の急激なCO2排出の必要性等に応じて起こる。
【0126】
過換気トラバースセグメント312は、呼吸コンジットにおける第3オリフィスの「漏出」弁の配置を示す。第3オリフィスは、その他2つのオリフィスよりも大きい。そのため、第1および第2オリフィスとデッドスペースボリュームの飽和後にCO2が漏出するようになる。当業者には明らかなように、オリフィスおよびデッドスペースボリュームのその他の構成も可能であるため、異なるグラフ表示を生じる。
【0127】
過換気トラバースセグメント312は、予想より高い率でCO2を排出する必要があるイベント、例えば、長い閉塞性呼吸イベントの後等において、安全な予防措置として機能する。そのような排出は、そのような
【0128】
【化57】
レベルを得るために必要な正常換気レートの2倍以上の激しい呼吸を生じる。過換気トラバースがない場合、一部の状況下で少なくとも一時的な呼吸アシドーシスを発症するリスクがある。過換気トラバースは、オリフィス131および133より大きい場合がある第3オリフィス135により形成される。オリフィス135のサイズは、CPAPマシン130が治療中に遭遇する可能性のある最大流速で圧力を維持する能力によって決定される。実施形態において、オリフィス135は、CPAPマシンを酷使することなく、可能な限り大きく形成される。
【0129】
図6は、一連の8回の呼吸において、システムのすべてのオリフィスから出る気流中のCO2濃度のトレース600を示す。このトレースにおいて、システムは適切に調整され、特徴的な「ヒップ」612が波形で現れる。このヒップの存在は、すべての排出CO2が、呼吸サイクルにおける点において、第2デッドスペースから排除されることにより、第2オリフィスを通るCO2の流れがすべて停止することに起因する。多くのCO2は第1デッドスペースに残り、実際に第1オリフィスは、さらに長い期間飽和状態を維持するため、CO2の流れは、第1デッドスペースが完全に排気されるまで短期間ヒップのレベルに維持される。ヒップの欠如は第1オリフィスが大きすぎることを示し、第2ヒップの発現は、第1および第2オリフィスがいずれも小さすぎることを示す。したがって、システムは、この波形の形態論を参照して調整可能であってもよい。
【0130】
図10〜11は、患者の一晩の心拍(図の各上部)および血中酸素飽和レベル(図の各下部)のトレースを示す。鋭いスパイクを含む心拍トレースのセグメントは、呼吸異常に起因する頻繁な覚醒(arousal)のため、不安定または分裂した睡眠を示す。頻繁なスパイクを含まない心拍トレースのセグメントは、安眠または集合型睡眠を示す。図10および11は、従来の呼吸制御方法およびシステムを使用した場合に、一晩罹患患者が実際に集合型睡眠を得ることはほとんどなく、あったとしても短期間であることを示す。
【0131】
図12は、図1A〜9で説明されたシステムおよび方法を使用した場合の心拍および血中酸素飽和のトレースを示す。この装置は、頻繁な覚醒を実質的に解決し、静穏な集合型睡眠を長期間可能にした。この結果症状が改善され、これは心拍トレースにおけるスパイクの存在が著しく減少したこと、および酸素のトレースが事実上固定されたことから分かる。さらに、本明細書に記載のシステムは、患者の血中酸素飽和を図10とほぼ同レベルに高め、ここで毎分3リットルの酸素供給を行った。図12に示される酸素レベルは、酸素供給を行わず、本システムのみを使用して達成された。これらのデータは、治療システムが、呼吸異常により生じる覚醒を有効かつ確実に排除しながら非常に好ましい血中酸素レベルを維持することを示す。これは、罹患患者に著しい症状の緩和をもたらす。
【0132】
典型的な場合において、本発明は、環境大気の自由な呼吸と比較して、患者の酸素ヘモグロビン飽和を2〜2.5%改善する。酸素ヘモグロビン飽和曲線はその高端で水平となるが、これはかん流組織において使用可能な酸素の重要な増加を示す。さらに本発明は、多くの医療設定において、酸素供給の必要性を排除する可能性がある。また酸素化を高めることにより、本発明は、大部分の周期的呼吸症候群をもたらす末梢化学受容器の敏感性を低下させることができる。
【0133】
本発明は、第1オリフィスが、患者が産生している全CO2の排出を可能にするには不十分なレベルで飽和するように構成されるため、呼吸の深さ、よって全体換気レートを強制的に増加させる。患者は、第1デッドスペースボリュームを通じてCO2を押し出すために十分な深さで呼吸することにより、少なくとも第2オリフィスを通ってCO2が装置から出る。患者の吸気間隔が開始するまでに、様々なデッドスペースボリューム内に排出されたガスが空気と置き換えられ、それによって、吸い込まれた空気の酸素濃度は環境大気よりわずかに低い。これら2つの事項を考慮して、呼吸の増加は、吸気の酸素含有量(FIO2)のわずかな減少を相殺し、肺の酸素輸送を促進する。従来の単一近位デッドスペースは、換気の増加に密接に一致する、またはそれを超えるFIO2の減少を生じるため、頻繁な酸素補給を必要とする。これは、デッドスペースが呼気で充満し、吸入が開始するまで充満したままとなるためである。従来の単一遠位デッドスペースは、正常な呼吸に対して、換気を増加させることもFIO2を減少させることもないため、酸素の飽和は変化しない。
【0134】
図1A〜12に関して記載されるように、本発明は以下の領域において使用できる。
1.一酸化炭素中毒からの回復。本発明のシステムおよび方法は、COのクリアランス率を従来の使用可能な方法(例えば、酸素提供)に比べ3〜5倍加速する。
2.出産時低炭酸症の回避。分娩中の女性の過換気は極めて一般的であり、CO2の急激な低下により、実質的に胎児への酸素供給が遮断される。低CO2または低炭酸症は、多くの方法で酸素の輸送を阻害する。本発明は、分娩中の胎児への酸素の流れを改善する。3.高山病/登山からの回復。CPAPマシンを使用しない本発明のシステムおよび方法は、この状態からの速やかな回復を可能にする。
4.ベンチレータ依存からの回復。患者のベンチレータ依存から離脱(wean)させることは困難であることが多く、救命救急の設定では死亡の原因となる。本発明は、患者の呼吸を刺激し、酸素化を増加させることにより、患者の速やかな回復を可能にする。
5.麻酔からの回復。これはベンチレータ依存からの回復と同様である。
6.特定の慢性肺疾患における酸素補給の使用を未然に防ぐ。慢性の閉塞性肺疾患は非常に一般的であり、高額の酸素治療を必要とする。しかし、本発明を用いた場合は、そのような酸素治療が不要となる。
7.当業者には明らかなように、本発明のシステムおよび方法のその他の使用も可能である。
【0135】
図1Aおよび1Bを再度参照し、本発明の一部代替実施形態において、第2オリフィス133は、図16A〜Bに示されるように、気流制御コンジット1601と置き換えられる。気流制御コンジット1601は、複数の開口1605を含むオリフィスチューブ1603をさらに含む。チューブ1603は、オリフィスチューブ1603を弁1609と連結する弁チューブ1607にさらに連結される。当業者には明らかなように、オリフィスチューブ1603は、弁1609に直接連結されるように構成できる。
【0136】
図16Aに示されるように、オリフィスチューブ1603(図16Bは閉口のオリフィスチューブを示す)は、第2ボリューム113内に配置される。さらに、弁チューブ1607は、第2ボリューム113内に一部配置されてもよい。第2ボリューム113は、出口ポート1613を含むように構成できる。弁チューブ1607は、出口ポート1613から突出する。一部実施形態において、出口ポート1613は、弁チューブ1607と第2ボリューム113を含むチューブとの間に密閉した接続を形成するように構成される。そのような密閉した接続は、出口ポート1613を通る空気および/またはガスの漏出を防ぐ。当業者には明らかなように、オリフィスチューブ1603は、第1ボリューム111および第2ボリューム113内に配置されるように構成できる。代替として、オリフィスチューブ1603は、第1ボリューム111内にのみ配置されるように構成できる。さらに当業者には明らかなように、コンジット120におけるその他の弁/オリフィスは、コンジット1601に類似した気流制御コンジットと置き換えることができる。
【0137】
気流コンジット1601は、第2ボリューム113内に永久に固定できる。代替として、気流コンジット1601を第2ボリューム113内にスライド可能に配置し、気流をさらに制御できる。一部実施形態において、オリフィスチューブ1603を第2ボリューム113内でスライドおよび/または移動できる。当業者には明らかなように、そのような気流コンジットは、図1Aおよび1Bに示されるシステムにおいて、任意のオリフィス、および/または任意のボリューム内に配置できる。
【0138】
複数の開口1605は、オリフィスチューブ1603全体に配置されるように構成される。図16に示されるように、開口1605は、端1612に向かって、弁チューブ1607が接続される端1614から離れて配置される。端1614は、密閉されるように構成することにより、オリフィスチューブ1603と弁チューブ1607との間に密閉接続を形成できる。端1612は開口端であってもよく、そこを通ってオリフィスチューブ1603に空気が流れるように構成できる。
【0139】
当業者には明らかなように、開口1605は、オリフィスチューブ1603全体に均等な間隔で配置できる。代替として、開口1605は、チューブ1603上に散在して配置できる。開口は、調整可能または制御可能となるように構成できる。これは、システム100が作動状態にある間に開口のサイズを調整できることを意味する。代替として、開口のサイズを固定してもよい。望ましい構成に応じて、開口1605のサイズは、等しいか、または開口ごとに異なってもよい。
【0140】
弁1609は、ボリューム113からの空気の排出を制御する。弁1609が開いている場合、矢印で示されるように、空気は複数の開口1605を通じて押し出されている。次に、空気はオリフィスチューブ1603を通って弁チューブ1607に移動し、弁チューブ1607上の出口ポート1616から出る。弁1609が閉じている場合、空気はボリューム113から押し出されていない。
【0141】
当業者には明らかなように、ボリューム113からの空気の排出レートは、開口1605のサイズに依存する。さらに、排出レートは、弁1609に設置されてもよい吸引装置の種類に依存する場合がある。弁1609は、開閉位置を有するように構成された任意の従来の弁であってもよい。開いた位置において、弁1609は空気をオリフィス1603から押し出される、および/または弁チューブ1607を通って出口ポート1616に移動するようにすることができ、閉じた位置において、弁1609は、弁チューブ1607を通じた任意の空気の排出を防ぐ。
【0142】
図1Aおよび1Bに示される実施形態に関して上記のように、オリフィスとボリューム/デッドスペースとの間には特別な関係がある。その関係に従って、デッドスペースは、1回の呼吸でオリフィスを通じて排出され得る空気よりも多い体積を含む。これは、ひざ1701および「トラバース(traverse)」セグメント1703と「プラトー(plateau)」セグメント1705を有する曲線1700により示される。図17に示されるように、「ひざ(knee)」1701は、トラバースセグメントとプラトーセグメントとの間の切断点として現れる。
【0143】
患者が正常または健康に呼吸する場合、その肺におけるCO2のレベルは、約5.5%〜6%に維持される。安静時(例えば、睡眠)に、健康なヒトの呼吸は減少する。そのような個人は深く呼吸し、必要に応じた量の空気を肺に取り込むことができる。そのため、上記のように適切なCO2レベルは、患者の呼吸系、免疫系、神経系、および代謝の調節因子の1つとして機能するため、健全な呼吸に重要である。また上記のように、多くの患者は、すなわち肺からCO2を「噴出」させる潜在的な過換気の一種を患う。過呼吸は、患者の血液中のCO2レベルを同様に低下させる。過呼吸は、呼吸量を削減し、患者の呼吸を正常化することにより治療できる。また患者の呼吸を正常化することは、呼吸を健常にし、免疫系を強化し、神経系を静め、エネルギー代謝の効率を高める。一方、過剰なCO2は問題を生じる。そのため、患者の血液において適切なCO2レベルを維持する必要がある。
【0144】
前述のとおり、各呼吸は、患者の1回換気量の関数として、CO2の排出レートをプロットすることにより表すことができる(図17を参照)。各呼吸は固有の形状を有するため、「ひざ」1701は、図17に示されるほど鋭角に現れない。図18に示されるように、「ひざ」は、特定の呼吸に応じて「なだらか(softer)」で丸く現れる場合がある。第2オリフィスが図16に示される実施形態で置き換えられる場合、「ひざ」はさらに「なだらか」になる。
【0145】
また上記のように、トラバースセグメント1703の傾斜は、患者の呼吸の安定性、すなわち、患者が夜中に正常に呼吸する能力を判断する。患者固有の身体的、生理的特徴および要因のため、トラバースセグメント1703の傾斜は単調でない場合がある。実際に、トラバースセグメント1703の傾斜は、図18に示されるように、トラバースセグメント全体で減少する。トラバースセグメント1703の傾斜は、図1〜15に関して上記のとおり、オリフィスとデッドスペース/ボリュームとの複雑な関係に基づく。そのため、ボリュームの1つの内部に、複数のオリフィスを含むチューブを(例えば、図16の実施形態において示されるように、第2オリフィスを通じて)配置することにより、システムを値の範囲に沿って調整してトラバースセグメントの傾斜をさらに制御することができ、患者に固有の安定した呼吸値の範囲を最適に反映する傾斜を実現できる。これは、優れた患者の呼吸安定性が得られることを意味する。
【0146】
図3を再度参照すると、優れた呼吸安定性を得るために、「正常呼吸トラバース」の傾斜を調整してもよい。各患者は特定の傾斜の減少を必要とし、その値は患者ごとに異なる。傾斜が減少しすぎると、患者に臨床的問題が現れる場合がある。臨床的問題の一例は、傾斜の減少量が必要以上に多い場合、図1Aおよび1Bに示されるシステムが、正常に機能するために過剰な追加呼吸量を要求する場合があることである。臨床的問題の別の例は、傾斜の減少量が必要以上に多い場合、患者の一晩のCO2産生の変化が、血中CO2含有量に大きな変化をもたらす場合があることである。
【0147】
図16に示される実施形態は、この問題を解決する。図19は、第2オリフィスが気流制御コンジット1601と置き換えられる場合に得られるような正常呼吸トラバースの様々な傾斜を示す。上記のように、制御コンジット1601におけるオリフィスのサイズと、オリフィス間のスペースは、各患者に対して特異的に選択できる。別の代替策は、単一の第2オリフィス/第2デッドスペースの組み合わせの代わりに、多数の小さいオリフィス/デッドスペースの組み合わせをカスケードすることである。これは、第2デッドスペースをその長さに沿って複数の場所に穿孔することにより行うことができる。
【0148】
このシステムの操作は、各開口1605の出力の合計で形成されるトラバースセグメントの傾斜がほぼ単調であり、複数のオリフィスを含むチューブからの空気の放出を制御する弁1603により調整できるようにする。チューブを通る気流が高いほど、トラバースの傾斜が急になり、その逆も同様である。患者の滴定は、基本的な安定が得られるまで傾斜を下げることにより達成できる。滴定が確立されれば、それ以上傾斜を下げる必要はない。そのため、弁1603を調整することにより、システムが患者に提供する基本的な呼吸の安定が確立される。したがって、システムの利点は、最小の必要用量で優れた正確性と有効性を提供し、副作用が少ないことである。
【0149】
図20は、本発明の実施形態に従って、患者の血中CO2濃度を調整する典型的な方法2000を示す。一部実施形態において、CO2モニタを第2弁(図16に図示せず)に組み込み、出口ポート1616から出る気流の平均CO2濃度を評価できる(ステップ2002を参照)。次に、ステップ2004に示されるように、一定期間のCO2濃度を平均化する。この時間の設定は任意の時間の間隔であってよい(例えば、1分間)。この平均濃度と、出口ポート1616を通る気流中のCO2濃度の事前設定した設定点とを比較する(ステップ2006を参照)。この値は、特定の患者およびその患者の特性に依存する。一部実施形態において、設定点をCO2モニタにプログラム化してもよい。2つの値の比較に基づいて、ステップ2008に示されるように誤差を計算する。一部実施形態において、比例積分微分(PID)制御ループ等の従来の制御アルゴリズムを使用し、誤差の大きさおよび方向を判断する。PID制御ループは、様々な制御システムにおいて使用される従来のフィードバックループである。誤差に基づいて、第1オリフィスを通る気流を制御する弁を調整する。弁の調整は、計算された誤差が実質的になくなるまで行う。例えば、測定平均CO2濃度が事前設定した設定点値を超える場合は、第1オリフィスを通る気流を増加させる(ステップ2012を参照)。測定平均CO2濃度が事前設定した設定点を下回る場合は、第1オリフィスを通る気流を削減する(ステップ2014を参照)。これにより、患者の現行のCO2産生に対する適切な「クランプ」の設定を維持する。
【0150】
患者のCO2産生は一晩の間に変化し、患者の血中CO2濃度も変化する。一部実施形態において、ソレノイド弁(図示せず)を使用して、組込CO2モニタを第2オリフィスの監視およびサンプリングから第1オリフィスの監視およびサンプリングに切り替えてもよい。そのような切り替えは、事前設定した期間が経過した後に行うことができる。またそれは、自動または手動で行うことができる。第1オリフィス中のCO2濃度のピーク値は、呼気終末CO2値と実質的に同様であるか、または密接に関連し、患者の血中CO2濃度を示す。この値は、患者に設定された正常値より低く測定される場合は、事前設定した設定点値を上げることができる。正常値より高い値で測定される場合は、事前設定した設定点値を下げることができる。そのため、患者の血中CO2濃度の絶対値を、正常な生理学的範囲内で良好に維持できる。当業者には明らかなように、上述の調整は手動または自動で、定期的または事前設定した期間に行うことができる。一部実施形態において、特定の睡眠段階(例えば、REM睡眠)のCO2の事前設定した設定点値を上げ、第2オリフィス(または図16に示す一連のオリフィス)を通る気流を上昇させることにより、システム変数を制御して患者の呼吸を安定させてもよい。一部実施形態において、呼気終末CO2の値を様々な期間において決定できる(例えば、その期間は、各患者の必要に応じて本発明のシステムにプログラム化できる)。そのような呼気終末CO2の決定に基づいて、事前設定した設定点値を適宜調整できる。その他の実施形態において、呼気終末CO2値を反復的に決定し、そのような反復に基づいて、事前設定した設定点を調整できる。これにより、患者の血中CO2レベルを正確に追跡し、優れた呼吸安定性を提供することが可能になる。
【0151】
一部実施形態において、第2気流制御装置を通って流れるガスの濃度を定期的に監視する。その監視に基づいて、第1気流装置を通って流れるガスにおけるCO2の呼気終末濃度の値を計算する。これは、患者の動脈血中CO2の部分圧の推定値を示す。呼気終末CO2値を許容し得る呼気終末CO2値の事前設定した範囲と比較する。次に、第2気流制御装置を通って流れるガス濃度の事前設定した設定点を調整する。
【0152】
一部実施形態において、図1〜20に示されるシステムは、図21A〜Bに示されるように、窒息防止弁2100を利用するように構成されてもよい。上記のように、窒息防止弁2100は、空気生成装置が故障した場合に患者の呼吸を可能にする。そのような故障の場合は、弁2100が開き、患者が正常に呼吸できるようにする。弁2100は、システムを通じて患者が睡眠中に自由に呼吸できるようプログラム化されるように構成できる。
【0153】
空気生成装置が故障した場合、弁2100が開き、患者インターフェース機器(すなわち、患者のマスク)を通じて約30lpm(リットル/分)の気流を可能にするように構成される。弁2100は、無圧、非活性状態で開くように構成できる。空気生成装置が適切に接続され、空気生成装置の圧力がオンの場合、弁は閉じるように構成される。
【0154】
図21Aおよび21Bを参照すると、弁2100は、図1Aおよび1Bに示される気流コンジットの吸気ポート2104と排気ポート2106の間に連結された弁チャンバ2102を含む。図21Aは弁2100の側面図であり、図21Bは弁2100の3次元図である。弁チャンバは、トッププレート2112にさらに連結される。弁チャンバ2102は、弁カップ2108をさらに含む。弁カップ2108は、激しい呼吸時にベルヌーイ流が弁を閉じないように構成される。弁カップ2108は、アンブレラ弁2110にさらに連結される。アンブレラ弁2110は、トッププレート2112内に配置されるように構成される。トッププレート2112は、弁2100の上部2114に連結されるように構成される。上部2114は、ソレノイド本体2116およびソレノイドプランジャ2118を同封するように構成される。ソレノイドプランジャ2118は、さらにバネカップ2120と相互作用し、弁2100を開閉する。バネカップ2120は、機械的伸縮バネ2122にも連結される。
【0155】
実施形態において、チャンバ2102の内部体積は約60mlである。トッププレート2112は、約30lpmの速度で患者の換気を可能にするように構成される。ソレノイド本体2116とソレノイドプランジャ2118の組み合わせは、活性化されて弁を開閉できるように構成される。弁2100の開閉は、ソレノイドプランジャ2118に力を伝達するバネ2120を使用して達成される。
【0156】
弁2100は、弁が開く、または閉じる圧力の閾値(例えば、最大値および最小値)を有するように構成できる。ソレノイド本体2116およびソレノイドプランジャ2118は、空気生成装置の圧力が最小閾値を下回り始めた場合、および最大閾値を超えた場合に起動するようにさらに構成できる。ソレノイド本体2116とプランジャ2118が一旦起動されると、弁2100は閉じる。一部実施形態において、弁2100が閉じると、圧力は最大閾値を下回り、ソレノイド構成要素は再起動されない。そのため弁は閉じたままになる。ソレノイド構成要素は、圧力が最小閾値を下回るか、または最大閾値を超えると再起動する。一部実施形態において、最小閾値は2cmH2Oと定義され、最大閾値は6cmH2Oと定義される。これらの閾値は調整可能である。
【0157】
図22は、本発明に従う患者の呼吸を制御するシステム2200の別の実施形態を示す。システム2200は、マスク2208、第1デッドスペース2204、第2デッドスペース2204、第1オリフィス2212、気流制御コンジット2220、第3オリフィス2218、CPAPマシン2210、接続セットアップパネル2202を含む。システム2200内の様々な構成要素は、気道接続(図22において太線で表示)および/または電子/電気接続(図22において法線で表示)を使用して接続される。
【0158】
図1Aおよび1Bの実施形態と同様に、マスク2208は、第1デッドスペース2204に連結されるように構成される。第1デッドスペース2204は、マスク2208と気流制御コンジット2220との間に配置されるように構成される。第2デッドスペース2206は、気流制御コンジット2220と第3オリフィス2218との間に連結および配置されるように構成される。CPAPマシン2210は、接続コンジット2244を介して第3オリフィスに連結されるように構成される。図22に示されるように、デッドスペース2204、2206は密閉されたボリュームであり、デッドスペースから直接延長する気流制御コンジット2220とともに連結できる。一部実施形態において、ホース2246は、デッドスペース2204および2206を通るように構成される。ホース2246は、22mm内径(I.D.)のホースであってもよい。当業者には明らかなように、ホースはその他のI.D.値を有してもよい。第2デッドスペース2206の内側に配置されるホース2246は、気流制御コンジット2220チューブに適応するように構成される。気流制御コンジット2220は、図16A〜Bに関して上述のとおりである。
【0159】
図22に示されるように、接続セットアップパネル2202は、ユーザインターフェース2240、圧力センサ2232、AA(窒息防止)弁2230、ソレノイド弁2228、CO2センサ2224、ポンプ2226、圧力センサ2252、および電子装置2216をさらに含む。一部実施形態において、システム2200は、システム全体の気流の乱れを抑制するように構成された空気だめ2254を含んでもよい。典型的な空気だめ2254の体積は10mlに設定できるが、当業者には明らかなように、システム2200のパラメータに従って変えることができる。空気だめ2254は、圧力センサ2252に連結されるように構成される。そのような空気だめ2254の例は、「OEM Compact CO2 Waveform Analyzer,IMPLEMENTATION GUIDE for the OEM CAPNOGRAPHY MODULE」、CARDIOPULMONARY TECHNOLOGIES,INCに記載されている。接続セットアップパネル2202およびシステム2200上の構成要素は、電源2214を使用して起動される。電子装置2216は、第1デッドスペース2204およびCO2センサ2224に設置された圧力センサ2232により、接続2271を介して供給された情報を処理するように構成される。圧力センサ2232は、第1デッドスペース2204内部の空気圧を判断するように構成される。空気圧の任意の変化が電子装置2216に送信され、そのような変化に基づいて、電子装置2216は接続2273を使用してAA弁2230を起動できる。これは、電子装置がAA弁2230の開閉を制御するように構成されることを意味する。AA弁2230は、図21に関して上述のとおりである。AA弁2230は、気道接続2234を介して環境大気に放出することにより、患者の自由な呼吸を可能にするか、またはCPAPマシン2210が故障した場合に機能するように構成される。当業者には明らかなように、接続2271および2273は、電気/電子接続または電子装置2216に情報を供給するために使用できるその他の同様の接続である。
【0160】
また電子装置2216は、3元ソレノイド弁2228から情報を受信する。弁2228は、気道接続2275を介して気流制御コンジット2220に連結されるように構成され、CO2測定値を受信し、その情報をCO2センサ2224に供給した後、同情報を電子装置2216に送信する。そのような情報は、図20に関して上述のように、CO2濃度の調整を可能にする。またCO2センサ2224、圧力センサ2252、および電子装置2216は、情報を横隔膜ポンプ2226に(気道接続2277を介して)情報を供給することにより、気道接続2236を使用したCO2濃度のサンプリングを可能にする。
【0161】
電子装置は、第1オリフィス2212に配置された弁も制御する。第1オリフィス2212における弁は、図16A〜20に関して上述のように、気流制御コンジット2220におけるCO2濃度の測定値に基づいて(気道接続を介して)環境大気2242に放出するように構成される。上記のように、第1オリフィス2212における弁は、気流制御コンジット2220において測定されたCO2濃度が高い場合に開くように構成される。濃度が低い場合は弁の流れが減少する、および/または弁が閉じる。
【0162】
一部実施形態において、システム2200は、マスク2208(気道接続2279を経由)および/またはコンジット2246、デッドスペースボリューム2204、2206またはシステムにおける任意のその他の構成要素からの水分(および任意のその他の望ましくない要素)を収集するための排水アタッチメント2238も含む。図22に示されるように、排水アタッチメント2238は、マスク2208と第1オリフィス2212との間に連結されるように構成される。
【0163】
本発明の一部実施形態において、第1オリフィス2212は、流速0〜10lpmを可能にするように構成される。気流コンジット2220は、10cmH2Oの圧力で流速5lpmを可能にするように構成される。気流コンジットからの流速は、図16A〜20に関して上述されるとおり患者に依存する。第3オリフィスは、流速20lpmを可能にするように構成される。第1デッドスペース2204は、体積が300mlとなるように構成される。第2デッドスペースは、体積が400mlとなるように構成される。当業者には明らかなように、気流の体積および速度は患者に特異的であり、上記の量は非限定的な例示目的で示される。当業者によりさらに理解されるように、システム2200のその他の構成も可能である。
【0164】
本明細書は、本発明の方法、回路、および構成要素の典型的な実施形態について説明した。別掲のとおり、これらの実施形態の例は、単に例示の目的で説明されており、限定を意図しない。その他の実施形態も可能であり、本発明に包含される。そのような実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術に精通する者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の幅および範囲は、上述の典型的な実施形態のいずれによっても制限されないが、以下の請求項およびそれらに相当するもののみに従って定義される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2006年4月17日に出願された、米国特許出願第11/405,948号の利益を主張し、さらには、2007年4月17日に出願された、一部継続出願である米国特許出願第11/405,948号の利益を主張し、両出願は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、呼吸障害の治療に関する。より具体的には、本発明は、患者の動脈血に溶解した二酸化炭素(「CO2」)の特定レベルを維持することにより、患者の呼吸を制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
睡眠呼吸障害(「SDB」;sleep−disorder breathig)は、睡眠中に呼吸困難をもたらすすべての症候群を含む。それらは、閉塞型睡眠時無呼吸(「OSA」;obstructive sleep apnea)、混合型睡眠時無呼吸(「MSA」;mixed sleep apnea)、中枢性睡眠時無呼吸(「CSA」;central sleep apnea)、チェーンストークス呼吸(「CSR」;Cheyne−Stokes respiration)等を含む。一部形態のSDBは、米国人口の約3〜5%で発症する。
【0004】
肥満または異常に狭い上気道等の解剖学的問題が幾つかのSDBの原因となる場合があるが、CO2および酸素(「O2」)等の血液ガスのレベル制御における神経学的困難が、疾患の重要な寄与因子としてますます認められるようになっている。これは特に、全SDBの20%を占める「中枢性」症候群、MSA、CSA、およびCSRに関して当てはまる。血液ガスを制御する神経システムの変化は、不安定な呼吸パターンを生じることが多く、睡眠からの覚醒をもたらす。これらの変化は、血圧の深刻な急上昇を伴い、ストレスホルモンを放出することにより、多くの臓器系に長期的な損傷をもたらし得る。さらに、一部のSDB症候群は、全体血液ガスレベルの異常が関与する。例えば、動脈血中に溶解したCO2レベルが低いことが多く、臨床的な問題を示す。そのため、SDBを治療する場合は、血液ガスの正常な制御を回復することにより、呼吸を安定させ、適切な血液ガスレベルを確立する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジット(respiratory conduit)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する。第2気流制御装置は、さらに複数の開口を含むように構成された気流制御コンジットからの空気の排出を制御するように構成される。
【0006】
一部実施形態において、本発明は、患者への二酸化炭素の流れを制御する方法に関する。本方法は、上述のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む。制御は、少なくとも1つの気流制御装置を通る気流を測定するステップと、測定気流中の二酸化炭素濃度を検出するステップと、二酸化炭素濃度の検出に基づいて、少なくとも1つの別の気流制御装置を通る気流を調整するステップと、二酸化炭素濃度の検出および少なくとも1つの気流制御装置を通る気流の調整に基づいて、ボリュームのサイズを調整するステップと、を含む。
【0007】
一部実施形態において、本発明は、患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含む。呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、圧搾給気装置は、別端において患者に空気を供給する。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に隣接する第1弁を含み、呼吸プロセス中にガスの漏出を制御するように構成された第1開口と、呼吸プロセス中に呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成された第2弁と、第1弁と第2弁を接続し、呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、呼吸プロセス中にガスの漏出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、第2弁および第3弁を接続し、第2ボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成された第2ボリュームコネクタと、第2弁および給気装置を接続する第3コネクタと、を含む。
【0008】
一部代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御する方法に関する。少なくとも1つのボリュームコネクタ内に配置された少なくとも1つの開口から空気を引き出すように構成された少なくとも1つの弁を含む呼吸コンジットを用いる給気装置に連結された患者インターフェース機器を使用し、空気が患者に供給される。弁およびボリュームコネクタは、呼吸コンジットの長さに沿って位置する。本方法は、患者によるガスの産生レートを判断するステップと、制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、その測定に基づいて複数の開口を通る流速を調整するステップと、前記判断および測定のうちの少なくとも1つに基づいて複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと、を含む。患者に供給される空気は、給気装置により供給された空気と患者により生成されたガスとの混合物を含む。
【0009】
さらに別の代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御する方法に関する。患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含む呼吸コンジットを用いる給気装置に連結された患者インターフェース機器を使用し、空気を患者に供給する。少なくとも1つのボリュームは、少なくとも1つの気流制御装置を使用し、ボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成される。本方法は、第2気流制御装置から流出する空気中の平均ガス濃度を判断するステップと、平均ガス濃度を事前設定したガス濃度の設定点と比較するステップと、平均濃度と事前設定した濃度の設定点との差を計算するステップと、算出される差が実質的になくなるまで第1気流制御装置を通る気流を調整することにより患者の呼吸を制御するステップと、を含む。
【0010】
さらに別の代替実施形態において、本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジットを含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つのボリュームを含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つの気流制御装置を含み、少なくとも1つの気流制御装置は、呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および操作について、添付の図面を参照して以下に詳述する。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェース機器を用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、複数の制御可能な開口と、上記呼吸コンジットの長さに沿って配置されたボリュームコネクタとを含み、
上記患者により生成されるガスの産生レートを判断するステップと、
上記複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記測定に基づいて、上記複数の制御可能な開口のサイズを調整するステップと、
上記判断および上記測定のうちの少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、上記患者に供給される空気は、上記給気装置により供給された空気と、上記患者により生成されたガスとの混合物を含む、方法。
(項目2)
患者の動脈血におけるガス圧の増加を判断するステップをさらに含み、上記判断は、
呼気終末ガス監視、経皮ガス監視、および動脈血ガス分析から成る群から選択される時間ベースの監視を用いて、上記患者の上記動脈血に含まれる上記ガス圧を測定するステップと、
上記測定に基づいて上記患者の動脈血における上記ガス圧の望ましい変化を計算するステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記ガスは二酸化炭素である、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記複数の制御可能な開口および上記複数のボリュームコネクタのサイズを修正するステップをさらに含み、上記修正は、
上記複数の制御可能な開口および上記複数のボリュームコネクタのそれぞれから漏出する上記ガスの量を監視するステップと、
上記複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記判断および上記測定のうちの少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、上記患者に供給されるガスは、上記給気装置により供給されたガスと、呼吸中に上記患者により産生されたガスとの混合物である、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記修正は、上記患者の呼吸気道の虚脱の結果として行われる、項目4に記載の方法。
(項目6)
上記患者の呼吸気道が虚脱状態でなくなるまで、呼吸中に上記患者に供給される空気圧を調整するステップをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記計算は、年齢、性別、体重、除脂肪体重率、および上記患者の動脈血における上記ガスの分圧から成る群から選択される少なくとも1つの特徴を使用し、上記患者により産生される上記ガス量を推定するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記計算は、上記患者の正常な呼吸を事前にシミュレーションし、上記複数の制御可能な開口および複数のボリュームコネクタのサイズを判断するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記複数の制御可能な開口のうちの1つを通る空気の流速は、上記複数の制御可能な開口のうちの少なくとも1つの別の開口を通る流速に基づく、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記判断は、呼吸中に上記複数の制御可能な開口のそれぞれから漏出するガスの最小量、最大量、および平均量を計算するステップと、
上記計算に基づいて、上記複数の制御可能な開口のうちの少なくとも1つのサイズ、および上記ボリュームコネクタのうちの少なくとも1つのサイズを調整するステップと
をさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
少なくとも第1の空気制御可能な開口および少なくとも第2の制御可能な開口を通るガスの流速は、上記患者による上記ガスの予想産生レート、上記患者の予想呼吸レート、上記患者の呼吸の予想深度、および上記患者の呼気に含まれる上記ガスの予想濃度に基づいて計算される、項目1に記載の方法。
(項目12)
上記複数の制御可能な開口から漏出し得るガスの量、および上記複数のボリュームコネクタに含まれるガスの量に基づいて、上記患者の呼気のうち患者が再呼吸する量を連続的に調整する、項目1に記載の方法。
(項目13)
呼吸中の患者に対する二酸化炭素の流れを制御する装置であって、
患者インターフェース機器に連結される二酸化炭素混合装置であって、
上記二酸化炭素混合装置は、圧搾給気装置に連結されるように構成され、
上記二酸化炭素混合装置は、複数のデッドスペースと互いに接続される複数の換気オリフィスを含み、上記複数の換気オリフィスは、上記患者への二酸化炭素の供給、および上記複数のデッドスペースにおける二酸化炭素量を制御する、
二酸化炭素混合装置と、
上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を測定する手段と、
上記測定気流における二酸化炭素濃度を検出する手段と、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整する手段と、
上記二酸化炭素濃度の上記検出、および上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記複数のデッドスペースのサイズを調整する手段と
を含む、装置。
(項目14)
患者に配置された患者インターフェースに連結された給気装置を用いることによって、呼吸中の患者に対する二酸化炭素の流れを制御する方法であって、上記患者インターフェースは、二酸化炭素混合装置に連結され、上記二酸化炭素混合装置は、上記給気装置に連結され、上記二酸化炭素混合装置は、複数のデッドスペースと互いに接続される複数の換気オリフィスを含み、上記複数の換気オリフィスは、上記患者に対する二酸化炭素の供給および上記複数のデッドスペースにおける二酸化炭素の量を制御し、
上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を測定するステップと、
上記測定気流における二酸化炭素の濃度を検出するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出および上記複数の換気オリフィスのそれぞれを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記複数のデッドスペースのサイズを調整するステップと
を含む、方法。
(項目15)
上記サイズ調整ステップは、
【化1】
と
【化2】
との間の関係に基づいて、上記複数のデッドスペースおよび上記複数の換気オリフィスのサイズを調整するステップをさらに含み、
【化3】
は患者による1分間の二酸化炭素排出レートであり、
【化4】
は患者による1分間の総換気レートであり、
【化5】
と
【化6】
との間の上記関係を表す曲線は、少なくとも2つの不連続を含み、
上記不連続は、
少なくとも第1換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる低換気トラバースセグメントの長さと、
少なくとも第1デッドスペースを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる第1呼吸プラトーセグメントの長さと、
少なくとも第2換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる正常呼吸トラバースセグメントの長さと、
少なくとも第2デッドスペースを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる第2呼吸プラトーセグメントの長さと、
少なくとも第3換気オリフィスを上記二酸化炭素混合装置に配置することにより生じる過換気トラバースセグメントの長さと
を用いて判断される、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記低換気トラバースセグメントは、呼吸間隔中に上記患者が呼吸した空気量と上記呼吸間隔中に上記患者が排出した二酸化炭素量との間の関係により定義された傾斜を有する、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記正常呼吸トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素が、上記二酸化炭素混合装置の少なくとも第2換気オリフィスから漏出し、上記追加量は少なくとも第1換気オリフィスから漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目15に記載の方法。
(項目18)
上記過換気トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素が、上記二酸化炭素混合装置の少なくとも第3換気オリフィスから漏出し、上記追加量は少なくとも第1および第2換気オリフィスから漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目15に記載の方法。
(項目19)
上記サイズ調整ステップに基づいて、二酸化炭素の目標平均動脈中濃度を判断するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目20)
上記サイズ調整ステップは自動である、項目14に記載の方法。
(項目21)
上記サイズ調整ステップは手動である、項目14に記載の方法。
(項目22)
呼吸コンジットを用いることによって、患者の呼吸を制御する方法であって、上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器および圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、上記コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含み、第1ボリュームは、第1気流装置と第2気流装置との間に位置し、第2ボリュームは、上記第2気流装置と第3気流装置との間に位置し、上記方法は、
ガスを上記コンジットに受け取るステップであって、上記ガスは患者の呼気に由来するステップと、
上記少なくとも2つの気流制御装置からのガス漏出を可能にするステップと
を含み、上記受け取られたガスの一部は、上記第1気流制御装置から漏出し、上記受け取られたガスの別の部分は、上記第1ボリュームを通って上記第2気流制御装置に移動し、
上記受け取られたガスの別の部分の一部は、上記第2気流制御装置から漏出し、上記受け取られたガスの別の部分の別の一部は、上記第2ボリュームを通って上記第3気流制御装置に移動し、
上記受け取られたガスの別の部分の別の一部は上記第3気流制御装置から漏出する、方法。
(項目23)
患者の呼吸を制御する方法であって、
低換気中の患者の換気レートの関数として、上記患者によるガスの排出レートを判断するステップであって、上記判断は、上記排出されたガスが最大濃度に到達するまで行われる、ステップと、
上記判断に基づいて、上記患者のガス排出レートを事前設定したレベルに維持するステップと、
上記患者による上記ガスの予想排出レートに基づいて、上記患者の換気レートの関数として、上記患者によるガスの排出レートを安定させるステップであって、上記ガスが最大濃度に到達するまで上記安定化が行われる、ステップと、
上記患者の過換気中に上記患者によるガスの排出を抑制するステップと、
上記患者の過換気中に上記患者によるガスの排出を増加させて患者の呼吸を制御するステップと
を含む、方法。
(項目24)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェース機器を用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、少なくとも1つのボリュームコネクタ内に配置される少なくとも1つの開口から空気を引き出すように構成された少なくとも1つの弁を含み、上記弁および上記ボリュームコネクタは、上記呼吸コンジットの長さに沿って位置し、
上記患者によるガスの産生レートを判断するステップと、
制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記測定に基づいて、上記複数の開口を通る流速を調整するステップと、
上記判断および上記測定の少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
を含み、患者に供給される空気は、上記給気装置により供給された空気と患者により生成されたガスとの混合物を含む、方法。
(項目25)
患者の動脈血におけるガス圧の増加を判断するステップをさらに含み、上記判断は、
呼気終末ガス監視、経皮ガス監視、および動脈血ガス分析から成る群から選択される時間ベースの監視を使用し、患者の動脈血における上記ガス圧を測定するステップと、
上記測定に基づいて、患者の動脈血における上記ガス圧の望ましい変化を計算するステップと
をさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記複数の開口および上記複数のボリュームコネクタを通る気流を調整するステップをさらに含み、上記調整は、
上記複数の開口および上記複数のボリュームコネクタのそれぞれから流出する上記ガスの量を監視するステップと、
上記複数の開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定するステップと、
上記判断および上記測定の少なくとも1つに基づいて、上記複数のボリュームコネクタのサイズを調整するステップと
をさらに含み、患者に供給されるガスは、給気装置により供給されるガスと呼吸中に患者により産生されるガスとの混合物である、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記計算は、年齢、性別、体重、除脂肪体重率、および患者の動脈血における上記ガスの部分圧から成る群から選択される少なくとも1つの特性を使用し、患者が産生する上記ガス量を推定するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記計算は、上記患者の正常な呼吸の事前のシミュレーションを用い、上記複数の開口および複数のボリュームコネクタのサイズを判断するステップをさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記複数の開口のうちの1つを通るガスの流速は、上記複数の開口のうちの少なくとも1つの別の開口を通る流速に基づく、項目24に記載の方法。
(項目30)
上記判断は、
一定期間に上記複数の開口のそれぞれから流出するガスの量を計算するステップと、
上記計算に基づいて、上記複数の開口の少なくとも1つのサイズ、および上記ボリュームコネクタの少なくとも1つのサイズを調整するステップと
をさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
少なくとも第1空気開口および少なくとも第2開口を通るガスの流速は、上記患者による上記ガスの予想産生レート、上記患者の予想呼吸レート、上記患者による呼吸の予想深度、および上記患者の呼気に含まれる上記ガスの予想濃度に基づいて計算される、項目24に記載の方法。
(項目32)
上記複数の開口から漏出し得るガスの量および上記複数のボリュームコネクタに含まれるガスの量に基づいて、上記患者の呼気のうち上記患者が再呼吸する量を連続的に調整する、項目31に記載の方法。
(項目33)
患者の呼吸を制御する方法であって、呼吸コンジットを用いて給気装置に連結された患者インターフェースを用いることによって、上記患者に空気が供給され、上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置の間に位置する少なくとも2つの気流制御装置と、少なくとも2つのボリュームとを含み、少なくとも1つのボリュームは、上記気流制御装置の少なくとも1つを使用してボリューム内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すことができるように構成され、
第2気流制御装置から漏出する空気中の平均ガス濃度を判断するステップと、
平均ガス濃度を事前設定したガス濃度の設定点と比較するステップと、
平均濃度と事前設定した濃度の設定点との差を計算するステップと、
計算された差が実質的になくなるまで上記第1気流制御装置を通る気流を調整することにより、患者の呼吸を制御するステップと
を含む、方法。
(項目34)
少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度を判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れる気流の濃度に基づいて、少なくとも別の気流制御装置を通る気流を調整するステップと
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度が、上記事前設定した設定点を超えるかどうかを判断するステップと、
少なくとも別の気流制御装置を通る気流を増加させるステップと
をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度が、上記事前設定した設定点を下回るかどうかを判断するステップと、
少なくとも別の気流制御装置を通る気流を減少させるステップと、
をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目37)
上記事前設定した設定点を患者に対して計算する、項目33に記載の方法。
(項目38)
少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度を定期的に監視するステップと、
少なくとも別の気流装置を通る上記気流中の呼気終末CO2濃度の値を計算するステップであって、患者の動脈血中の上記CO2の部分圧の推定値を表すステップと、
上記呼気終末CO2値を許容し得る呼気終末CO2値の事前設定した範囲と比較するステップと、
上記比較に基づいて、上記少なくとも1つの気流制御装置を通る気流の濃度に関して上記事前設定した設定点を調整するステップと、
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目39)
上記計算された呼気終末CO2値が、許容し得る呼気終末CO2値の範囲より低いかどうかを判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度の事前設定した設定点の値を増加させるステップと
をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
計算された呼気終末CO2値が、許容し得る呼気終末CO2値の範囲より高いかどうかを判断するステップと、
上記少なくとも1つの気流制御装置を通って流れるガスの濃度の事前設定した設定点の値を減少させるステップと
をさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
上記患者が特定の睡眠段階にあるかどうかを判断するステップと、
特定の睡眠段階に基づいて少なくとも1つのパラメータを調整するステップと
をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目42)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置の間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する、システム。
(項目43)
上記ボリュームは、患者の呼気の少なくとも一部を蓄積するように構成されたデッドスペースボリュームの一部である、項目42に記載のシステム。
(項目44)
上記患者インターフェース機器は、鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ装置、口腔内装置、および気管内チューブから成る群から選択される、項目42に記載のシステム。
(項目45)
上記患者インターフェース機器は、上記呼気コンジットと上記患者の呼吸気道との間に実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目44に記載のシステム。
(項目46)
上記呼吸コンジットは、患者の気道への気流を制御するように構成された上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目42に記載のシステム。
(項目47)
上記補助気流制御装置は、上記患者により制御される、項目45に記載のシステム。
(項目48)
上記呼吸コンジットは、上記圧搾空気発生装置が故障した場合に、空気へのアクセスを形成し、上記呼吸コンジットをバイパスするように構成された窒息防止弁であって、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する窒息防止弁を含む、項目42に記載のシステム。
(項目49)
上記気流制御装置は、上記患者の生理的変数の少なくとも1つに基づいて、上記気流制御装置を通るガスの上記流速を調整するように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目50)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、
上記呼吸コンジットからのガス排出レートと、
上記患者の血液中の上記ガス濃度と
を制御するように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目51)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、上記呼吸コンジットから容易に排出される上記ガス量の範囲を、上記患者による上記ガスの産生範囲に等しくするように構成される、項目50に記載のシステム。
(項目52)
上記ガスは二酸化炭素である、項目42に記載のシステム。
(項目53)
上記第1気流制御装置は、上記患者が一度に産生する上記ガス量より少ないか、または等しい上記ガス量の漏出を可能にするように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目54)
上記第2気流制御装置は、
上記第1気流制御装置から漏出し得る上記ガス量、および上記患者が一度に産生するガスの最大総量に基づく上記ガス量の漏出を可能にするように構成される、項目53に記載のシステム。
(項目55)
上記第3気流制御装置は、上記第1および第2気流制御装置から漏出可能な上記空気量に基づく空気を排出し、上記ガスの超過量を患者が再呼吸しないように構成される、項目54に記載のシステム。
(項目56)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に回転可能に連結されるように構成される、項目42に記載のシステム。
(項目57)
上記呼吸コンジットは、上記呼吸コンジットへの損傷を防ぐように構成された保護カバーを含む、項目42に記載のシステム。
(項目58)
上記呼吸コンジットに連結されるように構成され、患者の呼吸中に凝縮を収集するようさらに構成されたコレクタをさらに含む、項目42に記載のシステム。
(項目59)
項目42に記載のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目60)
項目42に記載のシステムを使用し、患者の血液中の酸素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目61)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
患者インターフェース機器に連結するように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する第1弁であって、上記第1弁はガスの漏出を制御するように構成された第1開口を含む、第1弁と、
ガスの漏出を制御するように構成された第2開口を含む第2弁と、
上記第1弁および上記第2弁に連結される第1ボリュームコネクタであって、上記第1ボリュームコネクタは、上記圧搾給気装置により供給される上記空気と上記患者により生成される上記ガスの混合物を含むように構成され、
空気の漏出を制御するように構成された第3固定開口を含む第3弁と、
上記第2弁および上記第3弁に連結された第2ボリュームコネクタであって、上記第2ボリュームコネクタは、上記圧搾給気装置により供給される上記空気と上記患者により生成される上記ガスの混合物を含むように構成され、
上記第3弁および上記給気装置に連結される第3コネクタと
を含む、システム。
(項目62)
上記患者インターフェース機器は、上記患者の呼吸気道および上記呼吸コンジットに対して実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目61に記載のシステム。
(項目63)
上記患者インターフェース機器は、上記患者インターフェース機器からの空気の漏出を制御するように構成される第1開口を含む、項目61に記載のシステム。
(項目64)
上記第2ボリュームコネクタに含まれるガスの量は、一回の呼吸で患者が排出する上記ガスの量から第1ボリュームコネクタに蓄積されたガスの量を差し引いた量と実質的に等しい、項目61に記載のシステム。
(項目65)
上記第1弁から漏出し得るガス量は、上記第1弁から漏出し得る空気量、上記第1コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量、上記第2弁から漏出し得る空気量および上記ガスの量、および上記第2コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目66)
上記第2弁から漏出し得るガス量は、上記第1弁から漏出し得る空気量、上記第1コネクタのボリューム、上記第2弁から漏出し得る空気量、および上記第2コネクタに含まれる空気量および上記ガスの量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目67)
上記第3弁から漏出し得る空気量は、上記第1および第2弁から漏出し得る上記空気の総量、および上記圧搾給気装置により供給される空気、および上記呼吸コンジットから上記ガスの余剰量を排出するように構成される空気量により判断される、項目61に記載のシステム。
(項目68)
上記第1弁から漏出しないガス量の少なくとも一部を上記患者が再呼吸する、項目61に記載のシステム。
(項目69)
上記第2弁から漏出しないガス量の少なくとも一部を上記患者が再呼吸する、項目61に記載のシステム。
(項目70)
上記第1ボリュームコネクタに蓄積された上記ガス量と上記第2ボリュームコネクタに蓄積された上記ガス量との合計を超えるガス量の少なくとも一部は、上記第3弁を通じて上記呼吸コンジットから完全に排出される、項目61に記載のシステム。
(項目71)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目61に記載のシステム。
(項目72)
上記呼吸コンジットは、上記患者の気道への気流を制御するように構成された窒息防止弁を含む、項目61に記載のシステム。
(項目73)
項目61に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目74)
項目61に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の酸素レベルを増加させるステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目75)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
上記患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は、別端において患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に隣接し、呼吸プロセス中に上記ガスの排出を制御するように構成された第1開口を含む第1弁と、
上記呼吸プロセス中にガスの排出を制御するように構成された第2開口を含む第2弁と、
上記第1弁と上記第2弁を接続し、上記呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、
上記呼吸プロセス中にガスの排出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、
上記第2弁と上記第3弁を接続し、上記第1ボリュームコネクタへのガスの供給を制御するように構成された第2ボリュームコネクタと、
上記第2弁と上記給気装置を接続する第3コネクタと
を含む、システム。
(項目76)
上記患者インターフェース機器は、上記呼吸コンジットと患者の呼吸気道との間に実質的に密閉した接続を形成するように構成される、項目75に記載のシステム。
(項目77)
上記患者インターフェース機器は、上記患者インターフェース機器からの空気の漏出を制御するように構成された第1開口を含む、項目75に記載のシステム。
(項目78)
項目75に記載のシステムを使用し、上記患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目79)
項目75に記載のシステムを使用し、患者の血液中の酸素レベルを増加させるステップを含む、患者の呼吸を安定させる方法。
(項目80)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置し、
上記第2気流制御装置は、複数の開口を含むようさらに構成される気流制御コンジットから空気の排出を制御するように構成される、システム。
(項目81)
上記気流制御コンジットは、上記別のボリューム内に少なくとも一部が配置されるように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目82)
上記気流制御コンジットは、上記複数開口のそれぞれ1つを通る気流を調整するように構成された制御弁を含む、項目80に記載のシステム。
(項目83)
患者への二酸化炭素の流れを制御する方法であって、項目80に記載のシステムを使用し、患者の血液中の二酸化炭素レベルを制御するステップを含み、
上記制御は、
上記気流制御装置のうちの少なくとも1つを通る気流を測定するステップと、
測定した気流中の二酸化炭素濃度を検出するステップと、
上記二酸化炭素濃度の上記検出に基づいて、少なくとも1つの別の上記気流制御装置を通る気流を調整するステップと、
上記二酸化炭素の濃度の上記検出、および上記気流制御装置の少なくとも1つを通る上記気流の上記調整に基づいて、上記ボリュームのサイズを調整するステップと
を含む、方法。
(項目84)
上記サイズ調整ステップは、
【化7】
と
【化8】
との間の関係に基づいて、上記ボリュームのサイズおよび上記気流制御装置の少なくとも1つを通る上記気流を調整するステップをさらに含み、
【化9】
は患者による1分間の二酸化炭素排出レートであり、
【化10】
は患者による1分間の総換気レートである、項目83に記載のシステム。
(項目85)
【化11】
と
【化12】
との間の上記関係を表す曲線は、少なくとも2つの不連続を含み、
上記不連続は、
上記第1気流制御装置を上記システムに配置することにより生じる低換気トラバースセグメントの長さと、
上記ボリュームを上記システムに配置することにより生じる第1呼吸プラトーセグメントの長さと、
上記複数の開口を上記第2気流制御装置に配置することにより生じる少なくとも1つの正常呼吸トラバースセグメントの長さと、
上記別のボリュームを上記システムに配置することにより生じる第2呼吸プラトーセグメントの長さと、
上記第3気流制御装置を上記システムに配置することにより生じる過換気トラバースセグメントの長さと
を用いて判断される、項目84に記載のシステム。
(項目86)
上記低換気トラバースセグメントは、呼吸間隔中に上記患者が呼吸した空気量と上記呼吸間隔中に上記患者が排出した二酸化炭素量との間の関係により定義された傾斜を有する、項目85に記載のシステム。
(項目87)
上記正常呼吸トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素は、上記第2気流制御装置の上記複数開口のうちの少なくとも1つから漏出し、上記追加量は、上記第1気流制御装置から漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目85に記載のシステム。
(項目88)
上記過換気トラバースセグメントにおいて、追加量の二酸化炭素は、上記第3気流制御装置から流出し、上記追加量は、少なくとも上記第1および第2気流制御装置から漏出する二酸化炭素量に基づいて判断される、項目85に記載のシステム。
(項目89)
上記制御は、上記サイズ調整ステップに基づいて、二酸化炭素の目標平均動脈中濃度を判断するステップをさらに含む、項目84に記載のシステム。
(項目90)
上記サイズ調整ステップは自動である、項目84に記載のシステム。
(項目91)
上記サイズ調整ステップは手動である、項目84に記載のシステム。
(項目92)
上記ボリュームは、上記患者の呼気の少なくとも一部を蓄積するように構成された一部デッドスペースボリュームである、項目80に記載のシステム。
(項目93)
上記患者インターフェース機器は、鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ装置、口腔内装置、および気管内チューブから成る群から選択される、項目80に記載のシステム。
(項目94)
上記患者インターフェース機器は、上記呼吸コンジットと患者の呼吸気道との間に実質的に密閉された接続を形成するように構成される、項目93に記載のシステム。
(項目95)
上記呼吸コンジットは、患者の気道への気流を制御するように構成された上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する補助気流制御装置を含む、項目80に記載のシステム。
(項目96)
上記補助気流制御装置は、患者により制御される、項目95に記載のシステム。
(項目97)
上記呼吸コンジットは、上記圧搾空気発生装置が故障した場合に、空気へのアクセスを形成し、上記呼吸コンジットをバイパスするように構成された窒息防止弁であって、上記患者インターフェース機器に実質的に隣接する窒息防止弁を含む、項目80に記載のシステム。
(項目98)
上記気流制御装置は、上記患者の少なくとも1つの生理的変数に基づいて、上記気流制御装置を通る上記ガスの流速を調整するように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目99)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、
上記呼吸コンジットからのガス排出レートと、
上記患者の血液に含まれる上記ガスの濃度と
を制御するように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目100)
上記気流制御装置および上記ボリュームは、上記呼吸コンジットから容易に排出される上記ガス量の範囲を患者による上記ガスの産生範囲に等しくできるように構成される、項目99に記載のシステム。
(項目101)
上記ガスは二酸化炭素である、項目80に記載のシステム。
(項目102)
上記第1気流制御装置は、上記患者により産生される上記ガス量より少ない、または等しい上記ガス量が一度に漏出し得るように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目103)
上記第2気流制御装置は、
上記第1気流制御装置から漏出し得るガス量と、
上記患者が一度に産生できるガスの最大総量と、
に基づく上記ガス量が漏出し得るように構成される、項目102に記載のシステム。
(項目104)
上記第3気流制御装置は、上記第1および第2気流制御装置から漏出し得る上記空気量に基づく空気を漏出し、上記患者が上記ガスの余剰分を再呼吸しないように構成される、項目102に記載のシステム。
(項目105)
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器に回転可能に連結されるように構成される、項目80に記載のシステム。
(項目106)
上記呼吸コンジットは、上記呼吸コンジットへの損傷を防ぐように構成された保護カバーを含む、項目80に記載のシステム。
(項目107)
上記呼吸コンジットに連結されるように構成されたコレクタであって、上記患者の呼吸中に凝縮を収集するようさらに構成されたコレクタをさらに含む、項目80に記載のシステム。
(項目108)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
患者のインターフェース機器に連結されるように構成された呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、圧搾給気装置に連結されるように構成され、上記圧搾給気装置は別端において患者に空気を供給し、
上記呼吸コンジットは、
上記患者インターフェース機器に隣接し、上記呼吸プロセス中に上記ガスの流出を制御するように構成された第1開口を含む第1弁と、
上記呼吸プロセス中に上記呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成された第2弁と、
上記第1弁と上記第2弁とを接続し、上記呼吸プロセス中に患者へのガスの供給を制御するように構成された第1ボリュームコネクタと、
上記呼吸プロセス中にガスの流出を制御するように構成された第3開口を含む第3弁と、
上記第2弁と上記第3弁を接続し、上記第2ボリューム内の上記少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される第2ボリュームコネクタと、
上記第2弁と上記給気装置を接続する第3コネクタと
を含む、システム。
(項目109)
患者の呼吸を制御するシステムであって、
呼吸コンジットを含み、
上記呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成され、
上記呼吸コンジットは、上記患者インターフェース機器と上記圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つのボリュームを含み、
上記呼吸コンジットは、少なくとも2つの気流制御装置を含み、上記少なくとも1つの気流制御装置は、上記呼吸コンジット内の少なくとも1つの位置から空気を引き出すように構成される、システム。
本発明は、患者の呼吸を制御するシステムに関する。本システムは、呼吸コンジット(respiratory conduit)を含む。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、さらに圧搾空気発生装置に連結されるように構成される。呼吸コンジットは、患者インターフェース機器と圧搾空気発生装置との間に位置する少なくとも2つの気流制御装置を含む。呼吸コンジットは、少なくとも2つのボリュームを含み、1つのボリュームは第1気流制御装置と第2気流制御装置との間に位置し、別のボリュームは第2気流制御装置と第3気流制御装置との間に位置する。第2気流制御装置は、さらに複数の開口を含むように構成された気流制御コンジットからの空気の排出を制御するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的なシステムを示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的なシステムを示す別の図である。
【図2A】図2Aは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する方法およびシステムを使用した典型的な臨床機器のセットアップを示す図である。
【図2B】図2Bは、図1A〜2Aに示される呼吸コンジットの一部を示す図である。
【図3】図3は、本発明に従う、患者の呼吸を制御するシステムおよび方法を使用した場合の、換気(例えば、1分間に患者が呼吸した空気の総量)と患者によるCO2排出との関係を、患者の一晩のCO2産生レートを表すトレースとともに示す典型的なグラフ表示である。
【図4】図4は、患者の一晩の典型的なCO2排出のグラフ表示である。
【図5】図5は、患者の呼吸を制御する従来の方法およびシステムを使用した場合の、患者の1回呼吸における呼吸の深さ(例えば、1回換気量)とCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図6】図6は、本発明に従う、8回の典型的な呼吸にわたって患者の呼吸を制御する装置から漏出するCO2率のグラフ表示である。
【図7】図7は、正常な呼吸とチェーンストーク呼吸との比較を示すグラフ表示である。
【図8】図8は、本発明に従う、患者の呼吸を制御する典型的な方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明に従って、患者の呼吸を制御する方法の代替実施形態を示すフローチャートである。
【図10】図10は、呼吸を制御する従来の方法およびシステムを使用した場合の患者の一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図11】図11は、従来の圧搾空気供給装置を単独で使用した場合の患者の一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図12】図12は、本発明に従う、一晩の心拍および血液酸素飽和度を示す一連のトレースである。
【図13】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図14】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図15】図13〜15は、従来の呼吸システムにおけるデッドスペースの獲得を示す一連のトレースである。
【図16A】図16A〜Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する代替システムを示す。少なくとも1つの気流制御装置は複数の開口を含む。
【図16B】図16A〜Bは、本発明に従う、患者の呼吸を制御する代替システムを示す。少なくとも1つの気流制御装置は複数の開口を含む。
【図17】図17は、患者の1回呼吸における呼吸の深さ(例えば、1回換気量)とCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図18】図18は、図16に示される本発明の実施形態に従って、患者の呼吸の深さとCO2排出との関係を示すグラフ表示である。
【図19】図19は、図16に示される本発明の実施形態に従って、患者の呼吸の深さとCO2排出との関係を示す別のグラフ表示である。
【図20】図20は、本発明に従う患者の呼吸を制御する方法を示す典型的なフローチャートである。
【図21A】図21A〜21Bは、本発明に従う典型的な窒息防止弁を示す。
【図21B】図21A〜21Bは、本発明に従う典型的な窒息防止弁を示す。
【図22】図22は、本発明に従う患者の呼吸を制御するシステムの別の典型的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、添付の図面を参照して説明される。図面において、同様の参照番号は、同一または機能的に類似する要素を示す。さらに、参照番号の左端の桁は、その参照番号が最初に現れる図面を示す。
【0014】
2つの血液ガス、二酸化炭素(「CO2」)および酸素(「O2」)のうち、睡眠中の呼吸の神経制御に関する問題は、O2よりもCO2の制御に関連する。CO2は血液に溶解し、重炭酸イオンとともに血液pHを決定する。過剰なCO2は血液を酸性にする一方、CO2の不足は血液をアルカリ性にする。タンパク質は機能するために安定したpHを必要とするため、約7.4の血液pHを産生する狭い範囲内でCO2レベルを制御する必要がある。これは、肺を経由するCO2の排出を、細胞代謝の生成物である内因性CO2の産生と厳密に一致させることにより達成される。
【0015】
図7は、正常な呼吸およびチェーンストーク呼吸のプロットを対応する血中CO2レベルのプロットに沿って示す。プロット710により示されるように、正常な呼吸において、患者の呼吸努力は安定している。これは、プロット712に示される安定した動脈血中のCO2レベルに対応する。動脈血に溶解したCO2の典型的な正常部分圧は40mmHgであり、O2圧は約105mmHgである。チェーンストーク呼吸において、増減プロット714に示されるように、呼吸努力は不安定である。対応するプロット716は、チェーンストーク呼吸中の関連する可変血中CO2レベルを示す。
【0016】
高感度で細微に調整されたシステムは、患者の血管系および脳内に配置される多くのセンサまたは化学受容器(chemoreceptor)を介して血中CO2レベルを検出する。これらセンサからの神経信号は、脳の呼吸制御中枢により処理され、適切な呼吸パターン指令を横隔膜、胸部および呼吸気道の筋肉を含む呼吸筋に送る。本システムの目的は、呼吸レート(呼吸の深さおよび頻度)を変えることにより、CO2の排出をCO2の産生と一致させることである。健康なヒトにおいて、このシステムは正確であり安定している。CO2の産生における変化に素早く対応し、血中CO2レベルを狭い範囲内で維持することができる。体内の多くのホメオスタシス機構と同様に、血液ガスの制御は、閉ループ負のフィードバック制御系により達成される。
【0017】
血中CO2レベルを制御するシステムが故障した場合、安定したCO2レベルを維持する能力が失われる可能性がある。このシステムは、「オーバーシュート」と「アンダーシュート」の振動パターンにおける血中CO2を「追跡」することにより、特徴的な増減呼吸パターンを生じる。CSRは、不規則な呼吸パターンに関連する典型的な症候群であり、心不全の場合に一般的である。図7は、正常な呼吸が動脈血中の安定したCO2レベルを伴うが、CSRは不安定なCO2レベルのため振動する呼吸パターンを呈することを示す。
【0018】
血液ガスの不十分な制御に関連する増減呼吸ドライブ(waxing/waning respiratory drive)は、気道を開いた状態で維持する筋肉の制御にも適用するため、呼吸ドライブの減退期中の周期的気道虚脱は、これらの症候群の特徴である場合が多い。実際に、少なくとも断続的な気道虚脱に関連しない純粋な増減気道パターンは比較的まれであり、MSAは呼吸の不安定性の優性発現である場合がある。MSAは、低下した呼吸努力に関連する極めて規則的で予測可能なパターンの閉塞性イベントとして現れる場合があるが、視覚的に認識可能なパターンを持たない異なる種類のイベント(例えば、閉塞性無呼吸、中枢性無呼吸、呼吸低下)のカオス的混合として現れる場合もある。
【0019】
数十年にわたり、呼吸の安定性に必要な状態を数学的に説明することが可能であった。この解析フレームワークは、閉ループ負のフィードバック制御系の安定性を予測するための典型的なプロセス制御理論で使用される解析フレームワークと同一のものである。これらのシステムは、正しく調整されると、非常に複雑で高感度のプロセスを安定に制御できるが、特定分野の問題は、不安定性および振動制御をもたらし、プロセスが無駄になるか、または悪化することが知られる。一般に、これらの問題は、制御ループの過敏性または「閉ループゲイン」およびタイミングの問題により生じ、プロセス結果を測定し、適切な是正措置を取るまでに過剰な時間遅延が起こる。これらは、不安定な睡眠時呼吸の患者が呈する問題と同一のものである。
【0020】
呼吸の化学的制御における不安定性の根底にある原因は、通常、血液ガスセンサ、すなわち末梢化学受容器の1つの過剰なゲインまたは敏感性であることは十分に知られている。末梢化学受容器は、頸動脈内に配置され、酸素およびCO2含有量を調べるため直接動脈血を採取する。化学受容器は、動脈血中のCO2含有量の代わりとなる血中H+イオン濃度を短期間感知する。感知異常が起きると、脳の呼吸中枢に信号を送る。この信号は、血液ガス、特にCO2の変化を過大評価する傾向にある。異常感知の原因は不明であるが、心不全等の様々な疾患によく見られる。現行の医療技術を用いて上述の異常感知を是正することは困難である。さらに、血液循環に関する問題は、血液ガスの変化が報告されるまでの時間遅延を延長するため、患者の呼吸制御ループの不安定性の問題が加わる。
【0021】
不安定な呼吸を生じる呼吸制御フィードバックループにおける高い閉ループゲインは、一般に過敏なCO2センサまたは血液循環障害のいずれかに起因することを考慮し、多数の治療方針が試行されているが、既存の治療法の大部分には様々な欠点がある。
【0022】
睡眠時の呼吸安定性を取り戻すための現行の治療方法には以下の問題がある。
1.複雑である。
2.費用がかかる。
3.閉ループ呼吸制御ゲインの一側面は減少するが、その他の側面は増加するため効率的でない。さらに、安定した状態を確実に回復できない場合がある。
4.患者が低炭酸状態にある場合、睡眠時に維持すべき標的血中CO2範囲を医師が判断できない。
5.呼吸に使用可能な酸素量を削減するため、正常レベルの血液酸素を回復するために追加の酸素補給を必要とする。
6.長い閉塞性無呼吸イベントの後等の異常状況下において、急速にCO2を排出できない。
7.不安定な呼吸パターンに対して1回呼吸ベースで速やかに応答できず、多呼吸パターン認識アルゴリズムに依存する。
8.治療の経過中に、単一の固定推定呼吸要件に依存し、呼吸要件の変化に適応するように構成されていない。
9.高価な電子装置に依存する。
【0023】
また現行の方法は、患者の換気レート(rate ventilation of patient)とCO2排出レート(rate of CO2 excretion)との関係を非線形様式でモデル化することができない。モデル化は、大部分の状況においてCO2の排出を定義された範囲内に維持することにより呼吸の「クランピング」を可能にする複数の個別のステップを含む。
【0024】
本明細書に記載されるように、患者の血中CO2を特定レベルに維持することにより、患者の呼吸を制御する一方、血液の酸素化を維持または改善できるシステムおよび方法は、これらの問題に対する解決策を提供する。
【0025】
また本発明は、「デッドスペース(deadspace)ゲイン」を実質的に排除する方法を提供する。これは、一部の従来の呼吸装置に存在する問題である。
【0026】
不安定な呼吸パターンは、過換気および低換気または無呼吸を互いに含む。過換気中にはCO2の急速な「噴出」があり、動脈血CO2を急激に低下させることで、動脈血が末梢化学受容器に達し、脳が血中CO2レベルの異常低下を検出すると、低換気または無呼吸期が開始する。低換気中にはCO2が急速に蓄積し、過換気期が再開する。このパターンは無限に反復し得る。
【0027】
理想では、過換気中に肺の効率が低下し、CO2の噴出を抑えるはずである。これを行う方法の1つは、患者に高いパーセンテージでCO2を含む吸気を吸入させることであり、これによって肺におけるガス交換を妨げ、過剰なCO2の排出を呈するようになる。同様に、低換気中は肺の効率が最大になり、CO2の蓄積を制限する。そのため、低換気中に吸入されたCO2は最適にはゼロである。過換気中は患者にCO2濃度の高い吸気を供給し、低換気中は供給しないことにより安定化影響を及ぼす能力に関して、任意の設計を特徴付けることができる。
【0028】
残念ながら従来のデッドスペースシステムは、これと反対に作用する傾向がある。1回換気量(tidal volume)が増加するにつれて、吸気中のCO2濃度が減少するため、実際に不安定性が促進される。図13〜15は、正常な呼吸において、近位の単一デッドスペース設計と遠位の単一デッドスペース設計のデッドスペースゲインがいずれも高いことを示す。単一の近位デッドスペースシステムは、密閉された患者インターフェースと、オリフィスを通る気流が単一のデッドスペースボリュームを超えるすべての排出ガスを流し出すために十分な大きさで構成された単一オリフィスとの間に単一デッドスペースボリュームを挟入する。次にそのような装置は、典型的な呼吸コンジットを介して給気装置にさらに接続される。単一の遠位デッドスペースシステムは、実質的に患者のインターフェース上またはその付近にある単一オリフィスと、給気装置との連結として作用するデッドスペース全体を含む単一コンジットとで構成される。単一オリフィスは、装置から排出されるガスの特定最大量を可能にし、任意の追加の排出ガスを実質的に再呼吸するように構成される。高いデッドスペースゲインは、斜線領域における関数の急な正の傾斜で示される。斜線領域は、装置使用中の正常な呼吸範囲を表す。
【0029】
本発明のさらなる特徴および利点については、本発明の様々な実施形態の構造および操作とともに、添付の図面を参照して以下に詳述する。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されない。そのような実施形態は、本明細書において単なる例示目的で提示される。追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術に精通する者には明らかとなるであろう。
【0030】
本発明は本明細書において特定のアプリケーションの例示的実施形態を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されない。本明細書で提供される教示を入手できる当業者は、その範囲内における追加の修正、アプリケーション、および実施形態、また本発明が極めて有用となる追加の分野を認識するであろう。
【0031】
(血液ガスレベルの規制)
本明細書は、患者の呼吸を制御する方法およびシステムについて説明する。本方法およびシステムは、複数のデッドスペースボリュームと弁との組み合わせを使用し、患者の血中CO2レベルを制御することにより、患者の呼吸を制御する。治療システムの装置は、換気レート(例えば、毎分総換気量、
【0032】
【化13】
とCO2排出レート
【0033】
【化14】
との関係を制御しながら、非線形の断続様式でこの関係を広範囲にモデル化できる(図3および以下の説明を参照)。このシステムにより、医師は、治療中に維持すべき動脈血中CO2レベルを定義するとともに、過換気と低換気に関する強力な制限を設けることができる。特定の状況下で、本発明は、酸素補給を用いずに血液の酸素化を増加できる。
【0034】
本システムは、固定(精密に定義された)サイズまたは可変サイズの複数の個別のデッドスペースボリュームと複数の換気オリフィスとの相互作用を提供する。ここで、ボリュームとオリフィスは、特定のパターンで組織化できる。そのような相互作用は、事前設定した圧力に設定される持続的気道陽圧(「CPAP」;Continuous Positive Airway Pressure)マシン等の換気補助装置を併用した場合の患者の換気レートとCO2排出量との関係を示す広範囲のスペクトルを定義する可能性を提供する。代替実施形態においては、換気補助装置は使用されず、患者が呼吸する単純な装置を使用して同様の効果が得られる。
【0035】
患者インターフェース機器(例えば、密閉されたCPAPマスク)とCPAPマシン(または任意のその他の給気装置)との間に配置される呼吸コンジットは円筒形である。換気オリフィスは、コンジットに沿って配置し、患者が排出したCO2を流出させる。換気オリフィス間にあるコンジットの長さは、個別のデッドスペースまたは準デッドスペースボリュームを示す。CO2を含む空気が患者の肺から呼吸コンジットに排出されると、CPAPマシンにより生成された圧力がそのような空気に含まれるCO2の少なくとも一部を様々なオリフィスから特定パターンで流し出す。そのパターンは、患者の呼吸、または1回換気量(Vr)のボリュームと呼吸の頻度、あるいは呼吸レートに依存する。各呼吸は、呼気間隔と吸気間隔を含む。呼気間隔が終了すると吸気間隔が始まり、患者はコンジット内に残るCO2の大部分またはすべてを再呼吸する。各デッドスペースのボリュームおよび各換気オリフィスのサイズに応じて、換気レートとCO2排出レートとの関係を示す曲線は、任意の数の変曲点を有し、それぞれ傾斜および長さの異なる直線または曲線セグメント(図3を参照)を定義する。
【0036】
上述のシステムは、患者の呼吸(例えば、換気)とCO2の排出との関係を広範囲にモデル化できる。従来のコンピュータシミュレーション技術を使用して、オリフィスのサイズ、ボリューム、および/またはそれらの構成を特定し、呼吸制御フィードバックループを安定した動作に戻す関係を確立する。眠りに入るまでの間は、睡眠中に見られると予想されるレベルよりCO2の産生が高い場合があるため、補助換気弁を装着することにより、患者は、快適にベッドで安静するまで装置を通る気流を増加させることができる。
【0037】
図1Aおよび1Bは、患者101の呼吸を制御する典型的なシステム100を示す。図1Aを参照すると、システム100は、マスクとヘッドギアのアセンブリ102、また圧搾給気装置あるいはCPAP装置130に連結されるように構成された呼吸コンジットまたは混合装置120を含む。マスクとヘッドギアのアセンブリ102は、複数のストラップ103とマスク104を含む。複数のストラップ103は、マスク104を患者101の顔面に固定し、マスクと患者の呼吸気道(例えば、鼻または口)との間を実質的に密閉接続する。密閉されたインターフェースまたは接続は、空気またはガスが、患者の顔面とマスクとの間に生じ得る開口から制御不能に漏出することを防ぐ。図1Aの典型的な実施形態において、1つまたは複数のストラップ103は、患者の頭の上部から底部にかけて配置される。当業者には明らかなように、マスク104を患者101に固定するその他の方法も本明細書に包含される。圧搾および/または非圧搾ガス物質(空気、ガス等を含む)生成装置、例えばCPAP装置130を治療用呼吸システムと併用できる。
【0038】
マスク104は、密閉された低侵襲性口腔顔面換気マスクである。例えば、マスク104は、ResMed Corp.(Poway,CA)製の調節可能なVELCRO(R)ストラップヘッドギア付きMirage NVフルフェースマスクであってもよい。フルフェースマスクを使用し、鼻と口を覆うことができる。この設計は口からの漏出を排除し、口および/または鼻から呼吸する患者に対する治療を可能にする。当業者には明らかなように、例えば鼻マスク、口マスク、口腔顔面マスク、鼻カニューレ、口腔内装置、気管内チューブ、または任意のその他の装置等のその他のタイプのマスクを使用できる。
【0039】
マスク104は、マスク弁105を含む。マスク弁105は、オリフィス136を含み、マスク104上の既存のルアポートの1つに結合する雌ルアフィッティングであってもよい。オリフィス136は、ドリル、穿刺、または任意のその他の方法で開けることができる。マスク弁105は、オリフィス136を通じて、患者が排出したガス(例えば、CO2)を漏出できる。代替として、マスク104はマスク弁105を含まない。代わりに、第1弁108を混合装置120上で実質的にマスク104に隣接するよう配置する。一例において、オリフィス136は固定サイズである。この設計により、時間単位あたりに特定量の空気をマスク弁105から漏出させることができる。別の例において、オリフィス136は可変サイズであり、マスク弁105からの漏出を可能とするよう意図された空気の量に応じて変えることができる。一例において、オリフィス136は、マスクがCPAPマシン130により特定の圧力で加圧される場合に、毎分0.5〜6リットルの気流を可能にする。この圧力は、患者のCPAP圧力規定(pressure prescription)に等しくてもよい。
【0040】
図1Aを再度参照し、混合装置120は、第1弁108、第1ボリューム111、第2弁112、第2ボリューム113、第3弁114、およびコネクタボリューム115を含む。第1弁108はオリフィス131を含む。第2弁112はオリフィス133を含む。第3弁114はオリフィス135を含む。関連技術分野において通常の技術を有する者には明らかなように、マスク弁105は第1弁108であってもよい。マスク弁105は、マスク104を含んでも含まなくてもよい。また第1弁108は、フィッティング139ではなくマスク104上に配置することもできる。
【0041】
図1Aに示されるように、フィッティング139は第1弁108を組み込む。フィッティング139は、マスク104および第1ボリューム111に連結される。第2弁112は、第1ボリューム111および第2ボリューム113に連結される。第3弁114は、第2ボリューム113およびコネクタボリューム115に連結される。コネクタボリューム115は、圧搾空気/ガス生成装置130に連結される。
【0042】
フィッティング139は、フィッティング122および124をさらに含み、それらを通じてマスク104および第1ボリューム111にそれぞれ連結される。フィッティング122、124は、22mm外径(「o.d.」;outer diameter)の標準型フィッティングであってもよい。フィッティング139に対する適切な接続を可能にするため、第1ボリューム111は、標準22mm内径(「i.d.」;inner diameter)の呼吸ホースであってもよい。
【0043】
さらに、フィッティング122および124はスイベル型であってもよく、フィッティング139を回転させて混合装置120の様々な位置および配向に対応し、実質的に漏出を防ぐ接続を提供できる。そうでなければ、フィッティング139は直線フィッティングまたは屈曲フィッティングであってもよく、例えば2つの22mm o.d.の端を有し、90度屈曲したフィッティングであってもよい。第1弁108は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130によりシステム100が加圧されると、1分間に0.5〜6リットルの気流を提供する。フィッティング126、128(第2弁112を第1ボリューム111および第2ボリューム113にそれぞれ連結する)、およびフィッティング132、134(第3弁114を第2ボリューム113およびコネクタボリューム115にそれぞれ連結する)は、フィッティング122、124に類似してもよい。
【0044】
第1ボリューム111は、標準的な22mm i.d.の呼吸ホースであってもよく、患者の動脈血CO2の望ましい増加に応じて、100〜400mlの内部体積を有してもよい。ホースは、CPAPマシンで使用されるようなゴム製のカフを有する従来のホースであってもよく、波型の使い捨て呼吸ホース、またはマスク104をフィッティング126に接続するために適した任意のその他のホースであってもよい。
【0045】
上述のように、第2弁112は、固定サイズであってもよいオリフィス133を組み込む直線状のコネクタを含む。代替として、オリフィス133は可変サイズである。このコネクタはプラスチックであってもよく、第1ボリューム111と第2ボリューム113の接続に適した22mm o.d.の端を有する。さらにオリフィス133は、表面(例えば、ベッド)に横たわることにより閉塞されないようにコネクタに配置される。第2弁112を含むフィッティングに溝を形成し、任意の閉塞を防ぐことができる。オリフィス133は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130により加圧されると、1分間に3〜8リットルの気流を可能にする。
【0046】
第2ボリューム113は、第1ボリューム111と実質的に同一タイプである。第2ボリューム113の総体積は100〜400mlである。
【0047】
第3弁114は、オリフィス135を組み込み、可変であっても固定であってもよい。第3弁114は、図1Aに示されるように直線状のコネクタであってもよい。コネクタは、プラスチックであってもよく、第1ボリューム113とコネクタボリューム115の接続に適した22mm o.d.の端を有する。オリフィス135は、表面(例えば、ベッド)に横たわることにより閉塞されないように混合装置120内に配置される。第3弁114を含むフィッティングに溝を形成し、任意の閉塞を防ぐことができる。オリフィス135は、患者のCPAP圧力規定に等しい所定圧力でCPAPマシン130により加圧されると、1分間に15〜30リットルの気流を可能にする。
【0048】
コネクタボリューム115は、第1ボリューム111および第2ボリューム113と実質的に同一のタイプであってもよい。コネクタボリューム115の長さは、患者101に対するCPAPマシン130の配置に対応するように設定できる。
【0049】
オリフィス131(または代替で136)、133、および135はそれぞれ、圧搾給気装置130が特定の圧力で作動する場合に、特定の速度で空気を漏出できるように構成される。各オリフィスを通る気流のガス濃度に応じて、ガスが各オリフィスを通って特定の速度で漏出する。オリフィスは固定、可変サイズであってもよく、または固定および可変サイズのオリフィスの組み合わせを使用できる。当業者には明らかなように、必要に応じて、様々な位置および/または数の固定および可変オリフィスを使用できる。これにより、固定サイズのオリフィスの場合は、事前設定した量の空気およびガスを(そのような空気中のガス濃度に応じて)オリフィスから漏出することができ、または可変サイズのオリフィスの場合は、可変量のガスをオリフィスから漏出できる。さらに可変オリフィスの場合は、そのサイズを手動または動的に制御できる。オリフィスのサイズを手動で制御する場合は、患者、医師、または第3者がオリフィスのサイズを制御し、よってオリフィスから漏出し得るガス量を制御できる。オリフィスのサイズを自動制御する場合は、患者が排出したガス量、特定の各オリフィスから漏出するガス量、ボリュームコネクタ111および113に含まれるガス量、患者の身体的パラメータ(例えば、血圧、体重、年齢等)および/またはその他の要素に基づいて、そのサイズを自動調整することができる。
【0050】
オリフィス131、133、135および3つのボリューム111、113、115のサイズは、睡眠時に直接測定される患者の最高および最低
【0051】
【化15】
(1分間のCO2産生レート(ml))の推定値に基づくアルゴリズムを使用して事前に決定できる。代替として、患者の最高および最低
【0052】
【化16】
推定値は、患者の体重または任意のその他の生理学的または人口統計学的変数、またはそれら変数の組み合わせに由来してもよい。ボリュームおよびオリフィスのサイズは、診療所、病院、研究所、またはCO2監視装置を備えた任意のその他の施設において、睡眠ポリグラフ検査中に調整される。この調整に基づいて、オリフィスおよびボリュームの最終的な組み合わせが決定される。この組み合わせは、睡眠時に生じることが予想される1分間のCO2産生の最小推定値に等しい
【0053】
【化17】
以下で第1呼吸プラトー(plateau)(図3、セグメント308を参照)を確立し、睡眠時に生じることが予想される1分間の最大推定CO2産生値に等しい
【0054】
【化18】
以上で第2呼吸プラトー(図3、セグメント310を参照)を確立する。
【0055】
呼吸コンジット120は、マスク104およびCPAP装置130に回転可能に連結される。この配置により、コンジット120は、睡眠中の患者の寝返りに併せて回転できる。当業者には明らかなように、回転可能な接続は、システム100の作動中に任意の漏れを防ぐように密閉できる。
【0056】
図1Bを参照すると、コンジット120は、窒息防止弁(anti−asphyxiation valve)118、および呼吸時に患者を補助する任意の数の補助弁116を含む。図1Bの例において、窒息防止弁118および補助弁116は、フィッティング139に配置される。
【0057】
補助弁116は、開いている場合、混合装置120を通じて、混合装置120から排出CO2を大量に流し出すために十分な気流を提供する。一例において、患者101は補助弁116を作動し、快適に安静するまでCO2を流し出すことができる。補助弁116は、患者101が手動で閉じるか、または特定の期間が経過した後に自動で閉じることができる。
【0058】
窒息防止弁118は、CPAPマシン130の作動圧が事前設定した値を下回る(例えば、CPAPマシン130が適切な圧力を提供できない)場合に開く。後者が起こった場合は、窒息防止弁118が開き、患者101は弁118を通じて環境大気を呼吸できる。したがって、弁118は、CPAPマシン130の故障時に患者の窒息を防ぐ。
【0059】
さらに、混合装置120は、患者の息から水分を収集する水分凝縮収集装置を含む。これにより、混合装置120内の不要な水分の蓄積を防ぐことができる。
【0060】
例えば、体重100kg、CPAP規定15cmH2Oの男性患者は、以下の構成のオリフィスおよびボリュームが必要であると判断される。
【0061】
【表1】
図2Aは、患者の睡眠ポリグラフおよび/または滴定検査の典型的なセットアップ200を示す。セットアップ200は、CO2モニタ204、計算装置206、ニードル弁制御を有する可変領域流量計202(a、b、c)、CPAPマシン212、切り替え可能なマニホールド208、チューブ210(a、b、c)、コンジット218、および口腔顔面マスク214を含む。
【0062】
マスク214は、図1Aおよび1Bに示される104に類似する。CPAPマシン212は、CPAPマシン130に類似する。またコンジット218は、混合装置120に類似する。コンジット218は、マスク214とCPAPマシン212を接続する。またコンジット218は、チューブ210(a,b,c)に接続される。コンジット218は、第1ボリューム211、第2ボリューム213、およびコネクタボリューム215を含み、これらはボリューム111、113、および115にそれぞれ類似する。チューブ210aは、オリフィス131(図2Aに図示せず)を流量計202aに接続する。チューブ210bは、オリフィス133(図2Aに図示せず)を流量計202bに接続する。チューブ210cは、オリフィス135(図2Aに図示せず)を流量計202cに接続する。チューブ210(a,b,c)は、内径3/8インチのTygonチューブであってもよい。チューブ210(a,b,c)は、糊またはセメントで接着されるか、あるいはその他の方法でオリフィス131、133、135および流量計202(a,b,c)にそれぞれしっかりと固定される。
【0063】
さらに、コンジット218は、ボリューム213および215内に配置される可動ピストンまたはシリンダ(図2Bに示す)を使用し、ボリューム213および215を変えるように構成される。シリンダは、o−リングクランプ(図2Bに示す)を使用して密閉できる。図2Bは、コンジットの内部234に配置されるシリンダ/ピストン236を有するコンジット218の一部を示す。シリンダ/ピストン236は、両方向矢印Aで示されるように、前後に移動できる。この移動により、デッドスペースボリューム232が増減する。シリンダ/ピストン236は、o−リングクランプ238で固定される。このシリンダ/ピストン236は、ボリューム211、213、および215のいずれか、またはすべてに配置できる。またボリュームは、目盛り付きの計り(図2A、2Bに図示せず)を含み、デッドスペースボリューム232を特定の値に調整できる。
【0064】
図2Aを再度参照すると、流量計202(a,b,c)の外側を切り替え可能なマニホールド208に連結することにより、可変流量計202(a,b,c)の組み合わせのうちのいずれか1つから流れる空気中のCO2含有量をモニタ204で測定できる。モニタ204は、データを収集する計算装置206に接続される。データを使用し、図1A、1Bおよび3〜9に関して記載されるように、各流量計202を通る空気の流速およびボリュームのサイズを調整する。
【0065】
(患者の治療方法および滴定)
最初に、患者の一晩の睡眠中CO2排出プロフィールを判断する。このプロフィールは、診断の夜間睡眠ポリグラフ検査中に患者が産生した総CO2量を測定することにより判断する。そのようなプロフィールは、睡眠中のCO2産生の最高、最低、および平均レベルに関する情報を含む。患者に装置を試験的にフィッティングする前に(図1A〜2を参照)、その他の患者の生理的データに沿って収集されたデータおよび望ましい治療結果を使用し、シミュレーションモデルを生成する。これは、治療中に使用されるボリュームおよびオリフィスの構成に関する最善の推定を提供する。その後の睡眠ポリグラフ滴定検査において、装置を患者に装着し、初期CPAP圧を選択して、事前設定した空気の流速において各オリフィスを通るCO2の実際の流れを測定する。各オリフィスを通るCO2またはそこから漏出するCO2の流れは、患者のCO2排出プロフィールとの意図された関係に応じて望ましい値と等しくなるように、オリフィスのサイズを(手動または自動で)調整する。またボリュームのサイズも(手動または自動で)調整する。これは、患者の平均動脈血CO2量が望ましいレベルから逸脱しているか否かによる。サイズの調整は、知られたサイズのボリュームホースと物理的に置き換えることにより行うことができる。代替として、シリンダ/ピストンの配置(図2Bに示す)を各ボリュームに挿入し、得られたデータおよび望ましい値に基づいて、手動または自動でボリュームの内部スペースを増減できる。CPAPの開始圧を変更する必要がある場合は、測定および調整の手順を反復し、特定の望ましい結果に戻す。
【0066】
滴定検査の最後に、CPAP圧、ボリューム、および各オリフィスを通る気流の最終構成を記録する。特注のコンジット/混合装置(図1A〜2Bに示される)は、これらの明細に従って製造し、患者用に提供できる。当業者には明らかなように、様々な構成のオリフィスおよびボリュームが可能である。
【0067】
装置および治療システムは、各患者に対して個別に調整される。最初に、患者を適切な睡眠診断施設に紹介する。施設において、医師は患者の考えられる呼吸の不安定性評価を指示する。上述のように、通常の夜間睡眠ポリグラフ検査に特定の修正および強化を任意で行う。これらの修正は、呼気終末CO2の監視および較正鼻圧測定を追加で含んでもよい。代替として、鼻圧の代わりに、別の極めて正確な手段を使用し、例えば気流センサ付きの呼吸マスクを着用して、患者の鼻および口を通る気流を判断できる。呼吸グラフ(CO2)の波形(図6を参照)および気流信号を一晩記録し、睡眠ポリグラフ記録システムに保存する。検査の結果として、リアルタイムまたは検査後プロセスにおいて、呼気終末CO2モニタにより測定されたオリフィスを通る空気の気流の速度と気流メータの合計に空気中のCO2パーセンテージを掛けることにより、患者の1分間のCO2量
【0068】
【化19】
対時間、すなわち、睡眠時のCO2排出レートを得る。患者のCO2排出プロフィールは、National Instruments Corporation(Austin,Texas)製のDASYlab等、多数の市販の分析パッケージを使用して判断する。
【0069】
それを解読する医師は、一晩の
【0070】
【化20】
の変化を調べ、予想される
【0071】
【化21】
の最低、平均、および最高目標値を決定し、装置を構成する。また医師は、呼気終末CO2の波形自体を調べ、動脈血CO2の変化を評価し、夜の間に目標平均動脈血CO2レベルに達するために、患者が全体的CO2補助をどの程度必要とするかを判断する。次に、医師は、本発明を使用した滴定検査に患者を紹介する。
【0072】
滴定検査の前に、睡眠ポリグラフ技師は、患者に関する特定の統計学的および身体的情報を取得し、開始構成を確立する。例えば、年齢、性別、体重、動脈血CO2レベル、推定CPAP規定、および呼気終末CO2の実際値と目標値を収集する。次にこの情報を使用し、オリフィスおよびボリュームの可能な最適構成を推定する。患者の年齢、性別および体重を使用し、少なくとも複数の患者の検査に基づいて、睡眠時
【0073】
【化22】
の可能な最低、平均、および最高値を得る。次に、
【0074】
【化23】
の値を使用してオリフィスの目標流速を設定し、圧力下で各オリフィスを通る流速に基づいて、オリフィスのサイズを判断する。望ましい目標呼気終末CO2に基づいて、第1デッドスペースボリューム111のサイズを推定する。最後に、第3オリフィス115の最小サイズを推定する。これにより、過剰なCO2を流し出すことができる。
【0075】
検査が完了した後、図1に示されるように、システム100に類似した自宅用装置を患者に提供してもよい。代替として、本発明のシステムを使用した診療所での治療を予定してもよい。装置は、以下の典型的な機能を実施できる。
(i)各換気オリフィス131、133、135を個別に通る気流を測定する(例えばコンピュータ等の入出力装置に連結された可変領域流量計または電子流量計として、従来のゲージを使用し、気流を測定できる)。
(ii)各オリフィス131、133、135から派生する気流中のCO2含有量を検出し、例えばコンピュータ等の入出力装置に収集した含有量データを転送する。
(iii)弁を使用し(弁は手動または自動で操作できる)、各オリフィス131、133、135を通る(またはそこから漏出する)気流を調整する。
(iv)様々な長さのホースを着脱することにより、2つのデッドスペースボリュームのサイズを調整する(代替として、可変ボリューム装置を組み込むことにより、ホースを変えずにデッドスペースボリュームを変えることができる。また可変ボリューム装置をo−リングで密閉されたシリンダに入れ子にし、スライドして出し入れできるようにする)。(v)各オリフィスを通るCO2の流速を計算および表示する(この機能は、DASYLab等のソフトウェア上で実行する適切なデータ取得周辺装置を有する任意の計算装置で行い、CO2と気流データチャンネルを獲得できる。また適切なディスプレイを使用することにより、医師がボリュームを調整しながら各オリフィスを通るCO2の流れを観察できるようにする)。
【0076】
図8および9は、上述の説明に従い、図1A〜2Bに示されるシステムを使用し、患者の呼吸を制御する典型的な方法800および900をそれぞれ示す。図8を参照すると、方法800はステップ802から始まる。ステップ802において、患者が生成するCO2の量が判断される(患者による1分間のCO2の最高、最低および平均産生値を測定する)。次に、処理はステップ803に進む。ここで、一晩の呼気終末CO2のトレースを調べ、治療中の平均動脈血CO2の望ましい増加の程度を判断する。ステップ804において、任意の既存の閉塞性無呼吸を治療できる可能性の高い最適CPAP圧を判断する。次に、ステップ805および806において、ステップ802〜804で収集されたデータを使用し、システム100の予備構成を決定する。システムを構成するため、様々な仮定におけるシステム性能のコンピュータシミュレーションを使用できる。代替として、患者の生理的および/または統計学的データに加え、ステップ802および804で収集されたデータの関数であるオリフィスおよびボリュームに対して実験的に決定された値を使用してもよい。ステップ806において、複数の制御可能な開口のそれぞれにおけるガスの流速および濃度を測定する。ステップ807において、患者の動脈血CO2レベルを測定する。次に、ステップ808〜809において、オリフィスのサイズ、ボリューム、および任意でCPAP圧を調整する。特定のオリフィス構成、ボリュームおよびCPAP圧に達するまで、ステップ808〜809を反復してもよい。
【0077】
図9を参照すると、方法900はステップ902から始まる。複数の換気オリフィス131、133、135のそれぞれを流れる気流を測定する。ステップ904において、ステップ902で測定された気流のCO2含有量を判断する。次にステップ906の方法に進む。ステップ906において、ステップ904で行った検出に基づいて、複数の換気オリフィスのそれぞれを通る気流を調整する。ステップ908において、ステップ904の検出、およびステップ906で行った複数換気オリフィスの調整に基づいてデッドスペースボリュームのサイズを調整する。
【0078】
当業者には明らかなように、上述の方法は、研究室設定、病院、診療所、患者の自宅、または任意のその他の施設において適用できる。
【0079】
図3は、複数のデッドスペースボリューム111、113、115と複数のオリフィス131、133、135との関係300を示す。これにより、様々な換気レート
【0080】
【化24】
に関する患者のCO2排出レート
【0081】
【化25】
を広範囲でモデル化できる。実施形態において、本発明は、図3の傾斜に様々な変化をもたらす2つのデッドスペースボリューム111および113と、3つの換気オリフィス131、133、135を含む。
【0082】
図3において、曲線302は、患者の一晩のCO2排出プロフィールを表す。これをプロットに重ねて、患者の予想されるCO2排出レートの範囲を示す。図4を参照し、プロットの水平軸は時間を分で表し、垂直軸は1分間の患者のCO2産生レートをミリリットル/分(ml/分)で示す。図3を再度参照し、水平軸は本発明のシステムを使用した場合の患者の換気レート
【0083】
【化26】
をml/分で示し、垂直軸は患者のCO2排出レート
【0084】
【化27】
をml/分で示す。これら2つの量の典型的な関係は、本発明のシステムを使用しない場合、以下のように定義される。
【0085】
【化28】
式中、
【0086】
【化29】
は生理的および人工的に追加されたデッドスペースのボリュームの合計に呼吸頻度を掛けた値に等しい。
【0087】
【化30】
は、各呼吸で吸入および排出された空気の総量に呼吸頻度を掛けた値に等しい。FACO2は、動脈血に溶解したCO2の部分圧を環境大気圧で割った値であり、FICO2は、患者により吸入された空気中のCO2濃度である。方程式(1)に記載の関数は、ゼロで水平軸と交差する直線により表される。
【0088】
図3を再度参照し、曲線320は、本発明に従う
【0089】
【化31】
と
【0090】
【化32】
との関係を説明し、低換気トラバースセグメント304、第1呼吸プラトーセグメント306、正常呼吸トラバースセグメント308、第2呼吸プラトーセグメント310、および過換気トラバースセグメント312を含む。各セグメントは、デッドスペースボリュームおよび呼吸コンジットに配置されたオリフィスの数およびサイズ、またデッドスペースボリュームおよびオリフィスを通るCO2の流量により定義される特定の傾斜および長さを有する。したがって、セグメントの数は、コンジットにおけるデッドスペースボリュームおよびオリフィスの数とともに変化する。
【0091】
図3に示されるように、低換気トラバースセグメント304は、第1オリフィスを呼吸コンジットに配置することにより生じる。このセグメントの傾斜は、飽和点に達するまで、方程式(1)に記載の呼吸とCO2排出との正常な関係を示す。第1オリフィスを通るCO2の最大流速に対応する飽和点は、セグメント304とセグメント306の接合として表される。
【0092】
この低換気トラバースは、患者が低換気である間の換気とCO2排出の関係を説明する。推定される最小睡眠レベルを下回る
【0093】
【化33】
の値において、
【0094】
【化34】
と
【0095】
【化35】
の関係は、正常な生理学的関係から実質的に変化しない。不安定な呼吸症候群において安定性を損なう要因の1つは、低換気期に血中CO2が急速に蓄積することである。制御ループの実施に特有の時間遅延に起因して、これが起こった場合のオーバーシュートは避けられず、蓄積によって、急速に血中CO2レベルが実質的に正常値を上回る。本明細書に記載のシステムは、任意のCO2蓄積を実質的に最小化し、十分な換気を提供して、オリフィスを通じて低換気時のすべての呼気CO2を速やかに排出する。患者の呼吸パラメータと同様に、第1オリフィスのサイズは、その他のオリフィスおよびデッドスペースボリュームの構成とともに、
【0096】
【化36】
と
【0097】
【化37】
の関係が正常値から逸脱し始める値を判断する。第1オリフィスは、曲線320におけるこの最初の変曲点を予想される最小睡眠
【0098】
【化38】
またはその直下に配置するに足る大きさである(図3を参照)。
【0099】
第1呼吸プラトーセグメント306は、第1デッドスペースボリュームを呼吸コンジットに配置する効果を表す。第1オリフィスが飽和点に達すると、排出されたCO2を第1デッドスペースボリュームおよび第2オリフィスを越えて押し出すことによって、そのような増加が第1デッドスペースボリュームを超えるまで、患者の換気がどれだけ増加しても問題はない。そのため、この点に到達するまで、換気の増加が任意の追加CO2排出を生じることはない。第1デッドスペースを超える換気レートおよび第2オリフィスから流れるCO2は、セグメント306とセグメント308との接合点において定義される。
【0100】
この呼吸プラトーは、曲線において最初の変曲点を超える高い呼吸が事実上
【0101】
【化39】
の増加を生じないゾーンを含む。このセグメントは、実質的にゼロに近い傾斜を有する。この呼吸プラトーの存在は、第1デッドスペースボリュームが、典型的な呼吸期間に第1オリフィスから排出され得るガスの体積より大きいという事実に起因する。残りのCO2量は再吸入される。第1デッドスペースボリューム内の任意の追加CO2量は、排出されるCO2レベルの増加を生じない。不安定な呼吸サイクルは、気道が進行的に狭まることから始まることが多く、結果的に
【0102】
【化40】
が減少する。
【0103】
【化41】
の減少は
【0104】
【化42】
の比例減少を伴う場合に、不安定性がさらに進行する可能性がある。これは、血中CO2の蓄積を急速に生じ、脳がこの蓄積に対応する前に「オーバーシュート」をもたらす。第1呼吸プラトーの存在は、
【0105】
【化43】
が著しく減少した場合に、CO2の排出を安定レベルで維持することにより、脳が換気の減少に応答する時間があるため、急速なCO2の蓄積および著しい「オーバーシュート」を回避できる。低換気または無換気期間から回復する際に、第1呼吸プラトーは、CO2の排出が換気の増加に比例して増加することを防ぐ。同様に、これは「アンダーシュート」の可能性をもたらす過剰なCO2噴出の障害となる。
【0106】
また第1呼吸プラトーセグメント306により、医師は睡眠中の患者の平均動脈血CO2レベルを特定できる。罹患患者は、一般に少なくともわずかに低呼吸状態(例えば、正常な動脈血中CO2より低い)であり、そうした睡眠時CO2レベルを正常に近い値に再設定することが望ましい。第1呼吸プラトーセグメント306の長さは、治療中の血液CO2を決定する。さらに、セグメント306は混合装置に第1デッドスペースボリュームが存在する結果として生成されるため、第1デッドスペースボリュームのサイズを増加させると、血中CO2レベルが上昇する。そのような任意のボリュームの増加による血中CO2レベルの上昇量は、患者から収集したデータに基づいて計算できる。
【0107】
正常呼吸トラバースセグメント308は、呼吸コンジットにおける第2オリフィスの配置を表す。このオリフィスが飽和する(すなわち、オリフィスからの気流におけるCO2の濃度が最大値に達する点)まで、換気レート
【0108】
【化44】
の増加がCO2排出レート
【0109】
【化45】
の増加を生じる。第2オリフィスの飽和点は、セグメント308と310との接合点において定義される。
【0110】
さらに、セグメント308は、予想される睡眠時
【0111】
【化46】
の範囲における
【0112】
【化47】
と
【0113】
【化48】
との関係を示す。セグメント308は、低換気トラバースセグメント304よりも実質的に傾斜の緩い直線である。この関係の傾斜は、所定の時間における患者の実際のCO2産生レートを通過するため、呼吸が安定した状態を確立する。傾斜は、呼吸制御フィードバックループにおける閉ループゲインを説明する関係の変数である。制御のゲインは、不安定な呼吸症候群において過剰になるため、CO2産生と排出が一致する点(すなわち、正常呼吸(eucapnia))の側近でセグメント308の傾斜を減少させることにより、呼吸を安定化させる。
【0114】
正常呼吸トラバースセグメント308の傾斜は、例えば、第1および第2デッドスペースボリューム、第1および第2換気オリフィスのサイズ等、複数の変数により決定される。セグメント308の傾斜は、使用されるデッドスペースボリュームが大きくなる程浅くなり、第1および第2オリフィスの飽和点が近づく。トラバースされた
【0115】
【化49】
の範囲は、第2オリフィス133のサイズによっても決定される。患者の睡眠時
【0116】
【化50】
を測定することにより、第1呼吸プラトーセグメント306を最高の適切な
【0117】
【化51】
に設定することができ、正常呼吸トラバースセグメント308の長さをできる限り短くする。これがセグメント308の傾斜を浅くする。
【0118】
第2呼吸プラトーセグメント310は、第1呼吸プラトーセグメント306に類似するが、セグメント310は、呼吸コンジットにおける第2デッドスペースボリュームの配置を表す。得られる効果は、セグメント306に関して上述の効果と同様である。第2デッドスペースボリュームの飽和点は、セグメント310および312の接合点において定義される。
【0119】
第2呼吸プラトーセグメント310は、予想される睡眠時
【0120】
【化52】
の最高値上に配置され、第1呼吸プラトーセグメント306と同様に機能する。またそれはほぼ傾斜ゼロの直線セグメントであり、
【0121】
【化53】
の変化が
【0122】
【化54】
の変化をほとんど、またはまったく生じないゾーンを構成する。第2呼吸プラトーセグメント310の長さは、第2デッドスペースにより決定される。急激な換気の増加は
【0123】
【化55】
をほとんど、またはまったく増加させないため、過換気時のCO2排出を抑制する。
【0124】
第1および第2呼吸プラトーセグメント306、310は、強力な「換気クランプ」を提供する。
【0125】
【化56】
は2つのプラトー306、310により決定されるゾーン外で変化する可能性があるが、それは、極めて強力な刺激、例えば長い閉塞性無呼吸後の急激なCO2排出の必要性等に応じて起こる。
【0126】
過換気トラバースセグメント312は、呼吸コンジットにおける第3オリフィスの「漏出」弁の配置を示す。第3オリフィスは、その他2つのオリフィスよりも大きい。そのため、第1および第2オリフィスとデッドスペースボリュームの飽和後にCO2が漏出するようになる。当業者には明らかなように、オリフィスおよびデッドスペースボリュームのその他の構成も可能であるため、異なるグラフ表示を生じる。
【0127】
過換気トラバースセグメント312は、予想より高い率でCO2を排出する必要があるイベント、例えば、長い閉塞性呼吸イベントの後等において、安全な予防措置として機能する。そのような排出は、そのような
【0128】
【化57】
レベルを得るために必要な正常換気レートの2倍以上の激しい呼吸を生じる。過換気トラバースがない場合、一部の状況下で少なくとも一時的な呼吸アシドーシスを発症するリスクがある。過換気トラバースは、オリフィス131および133より大きい場合がある第3オリフィス135により形成される。オリフィス135のサイズは、CPAPマシン130が治療中に遭遇する可能性のある最大流速で圧力を維持する能力によって決定される。実施形態において、オリフィス135は、CPAPマシンを酷使することなく、可能な限り大きく形成される。
【0129】
図6は、一連の8回の呼吸において、システムのすべてのオリフィスから出る気流中のCO2濃度のトレース600を示す。このトレースにおいて、システムは適切に調整され、特徴的な「ヒップ」612が波形で現れる。このヒップの存在は、すべての排出CO2が、呼吸サイクルにおける点において、第2デッドスペースから排除されることにより、第2オリフィスを通るCO2の流れがすべて停止することに起因する。多くのCO2は第1デッドスペースに残り、実際に第1オリフィスは、さらに長い期間飽和状態を維持するため、CO2の流れは、第1デッドスペースが完全に排気されるまで短期間ヒップのレベルに維持される。ヒップの欠如は第1オリフィスが大きすぎることを示し、第2ヒップの発現は、第1および第2オリフィスがいずれも小さすぎることを示す。したがって、システムは、この波形の形態論を参照して調整可能であってもよい。
【0130】
図10〜11は、患者の一晩の心拍(図の各上部)および血中酸素飽和レベル(図の各下部)のトレースを示す。鋭いスパイクを含む心拍トレースのセグメントは、呼吸異常に起因する頻繁な覚醒(arousal)のため、不安定または分裂した睡眠を示す。頻繁なスパイクを含まない心拍トレースのセグメントは、安眠または集合型睡眠を示す。図10および11は、従来の呼吸制御方法およびシステムを使用した場合に、一晩罹患患者が実際に集合型睡眠を得ることはほとんどなく、あったとしても短期間であることを示す。
【0131】
図12は、図1A〜9で説明されたシステムおよび方法を使用した場合の心拍および血中酸素飽和のトレースを示す。この装置は、頻繁な覚醒を実質的に解決し、静穏な集合型睡眠を長期間可能にした。この結果症状が改善され、これは心拍トレースにおけるスパイクの存在が著しく減少したこと、および酸素のトレースが事実上固定されたことから分かる。さらに、本明細書に記載のシステムは、患者の血中酸素飽和を図10とほぼ同レベルに高め、ここで毎分3リットルの酸素供給を行った。図12に示される酸素レベルは、酸素供給を行わず、本システムのみを使用して達成された。これらのデータは、治療システムが、呼吸異常により生じる覚醒を有効かつ確実に排除しながら非常に好ましい血中酸素レベルを維持することを示す。これは、罹患患者に著しい症状の緩和をもたらす。
【0132】
典型的な場合において、本発明は、環境大気の自由な呼吸と比較して、患者の酸素ヘモグロビン飽和を2〜2.5%改善する。酸素ヘモグロビン飽和曲線はその高端で水平となるが、これはかん流組織において使用可能な酸素の重要な増加を示す。さらに本発明は、多くの医療設定において、酸素供給の必要性を排除する可能性がある。また酸素化を高めることにより、本発明は、大部分の周期的呼吸症候群をもたらす末梢化学受容器の敏感性を低下させることができる。
【0133】
本発明は、第1オリフィスが、患者が産生している全CO2の排出を可能にするには不十分なレベルで飽和するように構成されるため、呼吸の深さ、よって全体換気レートを強制的に増加させる。患者は、第1デッドスペースボリュームを通じてCO2を押し出すために十分な深さで呼吸することにより、少なくとも第2オリフィスを通ってCO2が装置から出る。患者の吸気間隔が開始するまでに、様々なデッドスペースボリューム内に排出されたガスが空気と置き換えられ、それによって、吸い込まれた空気の酸素濃度は環境大気よりわずかに低い。これら2つの事項を考慮して、呼吸の増加は、吸気の酸素含有量(FIO2)のわずかな減少を相殺し、肺の酸素輸送を促進する。従来の単一近位デッドスペースは、換気の増加に密接に一致する、またはそれを超えるFIO2の減少を生じるため、頻繁な酸素補給を必要とする。これは、デッドスペースが呼気で充満し、吸入が開始するまで充満したままとなるためである。従来の単一遠位デッドスペースは、正常な呼吸に対して、換気を増加させることもFIO2を減少させることもないため、酸素の飽和は変化しない。
【0134】
図1A〜12に関して記載されるように、本発明は以下の領域において使用できる。
1.一酸化炭素中毒からの回復。本発明のシステムおよび方法は、COのクリアランス率を従来の使用可能な方法(例えば、酸素提供)に比べ3〜5倍加速する。
2.出産時低炭酸症の回避。分娩中の女性の過換気は極めて一般的であり、CO2の急激な低下により、実質的に胎児への酸素供給が遮断される。低CO2または低炭酸症は、多くの方法で酸素の輸送を阻害する。本発明は、分娩中の胎児への酸素の流れを改善する。3.高山病/登山からの回復。CPAPマシンを使用しない本発明のシステムおよび方法は、この状態からの速やかな回復を可能にする。
4.ベンチレータ依存からの回復。患者のベンチレータ依存から離脱(wean)させることは困難であることが多く、救命救急の設定では死亡の原因となる。本発明は、患者の呼吸を刺激し、酸素化を増加させることにより、患者の速やかな回復を可能にする。
5.麻酔からの回復。これはベンチレータ依存からの回復と同様である。
6.特定の慢性肺疾患における酸素補給の使用を未然に防ぐ。慢性の閉塞性肺疾患は非常に一般的であり、高額の酸素治療を必要とする。しかし、本発明を用いた場合は、そのような酸素治療が不要となる。
7.当業者には明らかなように、本発明のシステムおよび方法のその他の使用も可能である。
【0135】
図1Aおよび1Bを再度参照し、本発明の一部代替実施形態において、第2オリフィス133は、図16A〜Bに示されるように、気流制御コンジット1601と置き換えられる。気流制御コンジット1601は、複数の開口1605を含むオリフィスチューブ1603をさらに含む。チューブ1603は、オリフィスチューブ1603を弁1609と連結する弁チューブ1607にさらに連結される。当業者には明らかなように、オリフィスチューブ1603は、弁1609に直接連結されるように構成できる。
【0136】
図16Aに示されるように、オリフィスチューブ1603(図16Bは閉口のオリフィスチューブを示す)は、第2ボリューム113内に配置される。さらに、弁チューブ1607は、第2ボリューム113内に一部配置されてもよい。第2ボリューム113は、出口ポート1613を含むように構成できる。弁チューブ1607は、出口ポート1613から突出する。一部実施形態において、出口ポート1613は、弁チューブ1607と第2ボリューム113を含むチューブとの間に密閉した接続を形成するように構成される。そのような密閉した接続は、出口ポート1613を通る空気および/またはガスの漏出を防ぐ。当業者には明らかなように、オリフィスチューブ1603は、第1ボリューム111および第2ボリューム113内に配置されるように構成できる。代替として、オリフィスチューブ1603は、第1ボリューム111内にのみ配置されるように構成できる。さらに当業者には明らかなように、コンジット120におけるその他の弁/オリフィスは、コンジット1601に類似した気流制御コンジットと置き換えることができる。
【0137】
気流コンジット1601は、第2ボリューム113内に永久に固定できる。代替として、気流コンジット1601を第2ボリューム113内にスライド可能に配置し、気流をさらに制御できる。一部実施形態において、オリフィスチューブ1603を第2ボリューム113内でスライドおよび/または移動できる。当業者には明らかなように、そのような気流コンジットは、図1Aおよび1Bに示されるシステムにおいて、任意のオリフィス、および/または任意のボリューム内に配置できる。
【0138】
複数の開口1605は、オリフィスチューブ1603全体に配置されるように構成される。図16に示されるように、開口1605は、端1612に向かって、弁チューブ1607が接続される端1614から離れて配置される。端1614は、密閉されるように構成することにより、オリフィスチューブ1603と弁チューブ1607との間に密閉接続を形成できる。端1612は開口端であってもよく、そこを通ってオリフィスチューブ1603に空気が流れるように構成できる。
【0139】
当業者には明らかなように、開口1605は、オリフィスチューブ1603全体に均等な間隔で配置できる。代替として、開口1605は、チューブ1603上に散在して配置できる。開口は、調整可能または制御可能となるように構成できる。これは、システム100が作動状態にある間に開口のサイズを調整できることを意味する。代替として、開口のサイズを固定してもよい。望ましい構成に応じて、開口1605のサイズは、等しいか、または開口ごとに異なってもよい。
【0140】
弁1609は、ボリューム113からの空気の排出を制御する。弁1609が開いている場合、矢印で示されるように、空気は複数の開口1605を通じて押し出されている。次に、空気はオリフィスチューブ1603を通って弁チューブ1607に移動し、弁チューブ1607上の出口ポート1616から出る。弁1609が閉じている場合、空気はボリューム113から押し出されていない。
【0141】
当業者には明らかなように、ボリューム113からの空気の排出レートは、開口1605のサイズに依存する。さらに、排出レートは、弁1609に設置されてもよい吸引装置の種類に依存する場合がある。弁1609は、開閉位置を有するように構成された任意の従来の弁であってもよい。開いた位置において、弁1609は空気をオリフィス1603から押し出される、および/または弁チューブ1607を通って出口ポート1616に移動するようにすることができ、閉じた位置において、弁1609は、弁チューブ1607を通じた任意の空気の排出を防ぐ。
【0142】
図1Aおよび1Bに示される実施形態に関して上記のように、オリフィスとボリューム/デッドスペースとの間には特別な関係がある。その関係に従って、デッドスペースは、1回の呼吸でオリフィスを通じて排出され得る空気よりも多い体積を含む。これは、ひざ1701および「トラバース(traverse)」セグメント1703と「プラトー(plateau)」セグメント1705を有する曲線1700により示される。図17に示されるように、「ひざ(knee)」1701は、トラバースセグメントとプラトーセグメントとの間の切断点として現れる。
【0143】
患者が正常または健康に呼吸する場合、その肺におけるCO2のレベルは、約5.5%〜6%に維持される。安静時(例えば、睡眠)に、健康なヒトの呼吸は減少する。そのような個人は深く呼吸し、必要に応じた量の空気を肺に取り込むことができる。そのため、上記のように適切なCO2レベルは、患者の呼吸系、免疫系、神経系、および代謝の調節因子の1つとして機能するため、健全な呼吸に重要である。また上記のように、多くの患者は、すなわち肺からCO2を「噴出」させる潜在的な過換気の一種を患う。過呼吸は、患者の血液中のCO2レベルを同様に低下させる。過呼吸は、呼吸量を削減し、患者の呼吸を正常化することにより治療できる。また患者の呼吸を正常化することは、呼吸を健常にし、免疫系を強化し、神経系を静め、エネルギー代謝の効率を高める。一方、過剰なCO2は問題を生じる。そのため、患者の血液において適切なCO2レベルを維持する必要がある。
【0144】
前述のとおり、各呼吸は、患者の1回換気量の関数として、CO2の排出レートをプロットすることにより表すことができる(図17を参照)。各呼吸は固有の形状を有するため、「ひざ」1701は、図17に示されるほど鋭角に現れない。図18に示されるように、「ひざ」は、特定の呼吸に応じて「なだらか(softer)」で丸く現れる場合がある。第2オリフィスが図16に示される実施形態で置き換えられる場合、「ひざ」はさらに「なだらか」になる。
【0145】
また上記のように、トラバースセグメント1703の傾斜は、患者の呼吸の安定性、すなわち、患者が夜中に正常に呼吸する能力を判断する。患者固有の身体的、生理的特徴および要因のため、トラバースセグメント1703の傾斜は単調でない場合がある。実際に、トラバースセグメント1703の傾斜は、図18に示されるように、トラバースセグメント全体で減少する。トラバースセグメント1703の傾斜は、図1〜15に関して上記のとおり、オリフィスとデッドスペース/ボリュームとの複雑な関係に基づく。そのため、ボリュームの1つの内部に、複数のオリフィスを含むチューブを(例えば、図16の実施形態において示されるように、第2オリフィスを通じて)配置することにより、システムを値の範囲に沿って調整してトラバースセグメントの傾斜をさらに制御することができ、患者に固有の安定した呼吸値の範囲を最適に反映する傾斜を実現できる。これは、優れた患者の呼吸安定性が得られることを意味する。
【0146】
図3を再度参照すると、優れた呼吸安定性を得るために、「正常呼吸トラバース」の傾斜を調整してもよい。各患者は特定の傾斜の減少を必要とし、その値は患者ごとに異なる。傾斜が減少しすぎると、患者に臨床的問題が現れる場合がある。臨床的問題の一例は、傾斜の減少量が必要以上に多い場合、図1Aおよび1Bに示されるシステムが、正常に機能するために過剰な追加呼吸量を要求する場合があることである。臨床的問題の別の例は、傾斜の減少量が必要以上に多い場合、患者の一晩のCO2産生の変化が、血中CO2含有量に大きな変化をもたらす場合があることである。
【0147】
図16に示される実施形態は、この問題を解決する。図19は、第2オリフィスが気流制御コンジット1601と置き換えられる場合に得られるような正常呼吸トラバースの様々な傾斜を示す。上記のように、制御コンジット1601におけるオリフィスのサイズと、オリフィス間のスペースは、各患者に対して特異的に選択できる。別の代替策は、単一の第2オリフィス/第2デッドスペースの組み合わせの代わりに、多数の小さいオリフィス/デッドスペースの組み合わせをカスケードすることである。これは、第2デッドスペースをその長さに沿って複数の場所に穿孔することにより行うことができる。
【0148】
このシステムの操作は、各開口1605の出力の合計で形成されるトラバースセグメントの傾斜がほぼ単調であり、複数のオリフィスを含むチューブからの空気の放出を制御する弁1603により調整できるようにする。チューブを通る気流が高いほど、トラバースの傾斜が急になり、その逆も同様である。患者の滴定は、基本的な安定が得られるまで傾斜を下げることにより達成できる。滴定が確立されれば、それ以上傾斜を下げる必要はない。そのため、弁1603を調整することにより、システムが患者に提供する基本的な呼吸の安定が確立される。したがって、システムの利点は、最小の必要用量で優れた正確性と有効性を提供し、副作用が少ないことである。
【0149】
図20は、本発明の実施形態に従って、患者の血中CO2濃度を調整する典型的な方法2000を示す。一部実施形態において、CO2モニタを第2弁(図16に図示せず)に組み込み、出口ポート1616から出る気流の平均CO2濃度を評価できる(ステップ2002を参照)。次に、ステップ2004に示されるように、一定期間のCO2濃度を平均化する。この時間の設定は任意の時間の間隔であってよい(例えば、1分間)。この平均濃度と、出口ポート1616を通る気流中のCO2濃度の事前設定した設定点とを比較する(ステップ2006を参照)。この値は、特定の患者およびその患者の特性に依存する。一部実施形態において、設定点をCO2モニタにプログラム化してもよい。2つの値の比較に基づいて、ステップ2008に示されるように誤差を計算する。一部実施形態において、比例積分微分(PID)制御ループ等の従来の制御アルゴリズムを使用し、誤差の大きさおよび方向を判断する。PID制御ループは、様々な制御システムにおいて使用される従来のフィードバックループである。誤差に基づいて、第1オリフィスを通る気流を制御する弁を調整する。弁の調整は、計算された誤差が実質的になくなるまで行う。例えば、測定平均CO2濃度が事前設定した設定点値を超える場合は、第1オリフィスを通る気流を増加させる(ステップ2012を参照)。測定平均CO2濃度が事前設定した設定点を下回る場合は、第1オリフィスを通る気流を削減する(ステップ2014を参照)。これにより、患者の現行のCO2産生に対する適切な「クランプ」の設定を維持する。
【0150】
患者のCO2産生は一晩の間に変化し、患者の血中CO2濃度も変化する。一部実施形態において、ソレノイド弁(図示せず)を使用して、組込CO2モニタを第2オリフィスの監視およびサンプリングから第1オリフィスの監視およびサンプリングに切り替えてもよい。そのような切り替えは、事前設定した期間が経過した後に行うことができる。またそれは、自動または手動で行うことができる。第1オリフィス中のCO2濃度のピーク値は、呼気終末CO2値と実質的に同様であるか、または密接に関連し、患者の血中CO2濃度を示す。この値は、患者に設定された正常値より低く測定される場合は、事前設定した設定点値を上げることができる。正常値より高い値で測定される場合は、事前設定した設定点値を下げることができる。そのため、患者の血中CO2濃度の絶対値を、正常な生理学的範囲内で良好に維持できる。当業者には明らかなように、上述の調整は手動または自動で、定期的または事前設定した期間に行うことができる。一部実施形態において、特定の睡眠段階(例えば、REM睡眠)のCO2の事前設定した設定点値を上げ、第2オリフィス(または図16に示す一連のオリフィス)を通る気流を上昇させることにより、システム変数を制御して患者の呼吸を安定させてもよい。一部実施形態において、呼気終末CO2の値を様々な期間において決定できる(例えば、その期間は、各患者の必要に応じて本発明のシステムにプログラム化できる)。そのような呼気終末CO2の決定に基づいて、事前設定した設定点値を適宜調整できる。その他の実施形態において、呼気終末CO2値を反復的に決定し、そのような反復に基づいて、事前設定した設定点を調整できる。これにより、患者の血中CO2レベルを正確に追跡し、優れた呼吸安定性を提供することが可能になる。
【0151】
一部実施形態において、第2気流制御装置を通って流れるガスの濃度を定期的に監視する。その監視に基づいて、第1気流装置を通って流れるガスにおけるCO2の呼気終末濃度の値を計算する。これは、患者の動脈血中CO2の部分圧の推定値を示す。呼気終末CO2値を許容し得る呼気終末CO2値の事前設定した範囲と比較する。次に、第2気流制御装置を通って流れるガス濃度の事前設定した設定点を調整する。
【0152】
一部実施形態において、図1〜20に示されるシステムは、図21A〜Bに示されるように、窒息防止弁2100を利用するように構成されてもよい。上記のように、窒息防止弁2100は、空気生成装置が故障した場合に患者の呼吸を可能にする。そのような故障の場合は、弁2100が開き、患者が正常に呼吸できるようにする。弁2100は、システムを通じて患者が睡眠中に自由に呼吸できるようプログラム化されるように構成できる。
【0153】
空気生成装置が故障した場合、弁2100が開き、患者インターフェース機器(すなわち、患者のマスク)を通じて約30lpm(リットル/分)の気流を可能にするように構成される。弁2100は、無圧、非活性状態で開くように構成できる。空気生成装置が適切に接続され、空気生成装置の圧力がオンの場合、弁は閉じるように構成される。
【0154】
図21Aおよび21Bを参照すると、弁2100は、図1Aおよび1Bに示される気流コンジットの吸気ポート2104と排気ポート2106の間に連結された弁チャンバ2102を含む。図21Aは弁2100の側面図であり、図21Bは弁2100の3次元図である。弁チャンバは、トッププレート2112にさらに連結される。弁チャンバ2102は、弁カップ2108をさらに含む。弁カップ2108は、激しい呼吸時にベルヌーイ流が弁を閉じないように構成される。弁カップ2108は、アンブレラ弁2110にさらに連結される。アンブレラ弁2110は、トッププレート2112内に配置されるように構成される。トッププレート2112は、弁2100の上部2114に連結されるように構成される。上部2114は、ソレノイド本体2116およびソレノイドプランジャ2118を同封するように構成される。ソレノイドプランジャ2118は、さらにバネカップ2120と相互作用し、弁2100を開閉する。バネカップ2120は、機械的伸縮バネ2122にも連結される。
【0155】
実施形態において、チャンバ2102の内部体積は約60mlである。トッププレート2112は、約30lpmの速度で患者の換気を可能にするように構成される。ソレノイド本体2116とソレノイドプランジャ2118の組み合わせは、活性化されて弁を開閉できるように構成される。弁2100の開閉は、ソレノイドプランジャ2118に力を伝達するバネ2120を使用して達成される。
【0156】
弁2100は、弁が開く、または閉じる圧力の閾値(例えば、最大値および最小値)を有するように構成できる。ソレノイド本体2116およびソレノイドプランジャ2118は、空気生成装置の圧力が最小閾値を下回り始めた場合、および最大閾値を超えた場合に起動するようにさらに構成できる。ソレノイド本体2116とプランジャ2118が一旦起動されると、弁2100は閉じる。一部実施形態において、弁2100が閉じると、圧力は最大閾値を下回り、ソレノイド構成要素は再起動されない。そのため弁は閉じたままになる。ソレノイド構成要素は、圧力が最小閾値を下回るか、または最大閾値を超えると再起動する。一部実施形態において、最小閾値は2cmH2Oと定義され、最大閾値は6cmH2Oと定義される。これらの閾値は調整可能である。
【0157】
図22は、本発明に従う患者の呼吸を制御するシステム2200の別の実施形態を示す。システム2200は、マスク2208、第1デッドスペース2204、第2デッドスペース2204、第1オリフィス2212、気流制御コンジット2220、第3オリフィス2218、CPAPマシン2210、接続セットアップパネル2202を含む。システム2200内の様々な構成要素は、気道接続(図22において太線で表示)および/または電子/電気接続(図22において法線で表示)を使用して接続される。
【0158】
図1Aおよび1Bの実施形態と同様に、マスク2208は、第1デッドスペース2204に連結されるように構成される。第1デッドスペース2204は、マスク2208と気流制御コンジット2220との間に配置されるように構成される。第2デッドスペース2206は、気流制御コンジット2220と第3オリフィス2218との間に連結および配置されるように構成される。CPAPマシン2210は、接続コンジット2244を介して第3オリフィスに連結されるように構成される。図22に示されるように、デッドスペース2204、2206は密閉されたボリュームであり、デッドスペースから直接延長する気流制御コンジット2220とともに連結できる。一部実施形態において、ホース2246は、デッドスペース2204および2206を通るように構成される。ホース2246は、22mm内径(I.D.)のホースであってもよい。当業者には明らかなように、ホースはその他のI.D.値を有してもよい。第2デッドスペース2206の内側に配置されるホース2246は、気流制御コンジット2220チューブに適応するように構成される。気流制御コンジット2220は、図16A〜Bに関して上述のとおりである。
【0159】
図22に示されるように、接続セットアップパネル2202は、ユーザインターフェース2240、圧力センサ2232、AA(窒息防止)弁2230、ソレノイド弁2228、CO2センサ2224、ポンプ2226、圧力センサ2252、および電子装置2216をさらに含む。一部実施形態において、システム2200は、システム全体の気流の乱れを抑制するように構成された空気だめ2254を含んでもよい。典型的な空気だめ2254の体積は10mlに設定できるが、当業者には明らかなように、システム2200のパラメータに従って変えることができる。空気だめ2254は、圧力センサ2252に連結されるように構成される。そのような空気だめ2254の例は、「OEM Compact CO2 Waveform Analyzer,IMPLEMENTATION GUIDE for the OEM CAPNOGRAPHY MODULE」、CARDIOPULMONARY TECHNOLOGIES,INCに記載されている。接続セットアップパネル2202およびシステム2200上の構成要素は、電源2214を使用して起動される。電子装置2216は、第1デッドスペース2204およびCO2センサ2224に設置された圧力センサ2232により、接続2271を介して供給された情報を処理するように構成される。圧力センサ2232は、第1デッドスペース2204内部の空気圧を判断するように構成される。空気圧の任意の変化が電子装置2216に送信され、そのような変化に基づいて、電子装置2216は接続2273を使用してAA弁2230を起動できる。これは、電子装置がAA弁2230の開閉を制御するように構成されることを意味する。AA弁2230は、図21に関して上述のとおりである。AA弁2230は、気道接続2234を介して環境大気に放出することにより、患者の自由な呼吸を可能にするか、またはCPAPマシン2210が故障した場合に機能するように構成される。当業者には明らかなように、接続2271および2273は、電気/電子接続または電子装置2216に情報を供給するために使用できるその他の同様の接続である。
【0160】
また電子装置2216は、3元ソレノイド弁2228から情報を受信する。弁2228は、気道接続2275を介して気流制御コンジット2220に連結されるように構成され、CO2測定値を受信し、その情報をCO2センサ2224に供給した後、同情報を電子装置2216に送信する。そのような情報は、図20に関して上述のように、CO2濃度の調整を可能にする。またCO2センサ2224、圧力センサ2252、および電子装置2216は、情報を横隔膜ポンプ2226に(気道接続2277を介して)情報を供給することにより、気道接続2236を使用したCO2濃度のサンプリングを可能にする。
【0161】
電子装置は、第1オリフィス2212に配置された弁も制御する。第1オリフィス2212における弁は、図16A〜20に関して上述のように、気流制御コンジット2220におけるCO2濃度の測定値に基づいて(気道接続を介して)環境大気2242に放出するように構成される。上記のように、第1オリフィス2212における弁は、気流制御コンジット2220において測定されたCO2濃度が高い場合に開くように構成される。濃度が低い場合は弁の流れが減少する、および/または弁が閉じる。
【0162】
一部実施形態において、システム2200は、マスク2208(気道接続2279を経由)および/またはコンジット2246、デッドスペースボリューム2204、2206またはシステムにおける任意のその他の構成要素からの水分(および任意のその他の望ましくない要素)を収集するための排水アタッチメント2238も含む。図22に示されるように、排水アタッチメント2238は、マスク2208と第1オリフィス2212との間に連結されるように構成される。
【0163】
本発明の一部実施形態において、第1オリフィス2212は、流速0〜10lpmを可能にするように構成される。気流コンジット2220は、10cmH2Oの圧力で流速5lpmを可能にするように構成される。気流コンジットからの流速は、図16A〜20に関して上述されるとおり患者に依存する。第3オリフィスは、流速20lpmを可能にするように構成される。第1デッドスペース2204は、体積が300mlとなるように構成される。第2デッドスペースは、体積が400mlとなるように構成される。当業者には明らかなように、気流の体積および速度は患者に特異的であり、上記の量は非限定的な例示目的で示される。当業者によりさらに理解されるように、システム2200のその他の構成も可能である。
【0164】
本明細書は、本発明の方法、回路、および構成要素の典型的な実施形態について説明した。別掲のとおり、これらの実施形態の例は、単に例示の目的で説明されており、限定を意図しない。その他の実施形態も可能であり、本発明に包含される。そのような実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術に精通する者には明らかとなるであろう。したがって、本発明の幅および範囲は、上述の典型的な実施形態のいずれによっても制限されないが、以下の請求項およびそれらに相当するもののみに従って定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【公開番号】特開2013−66773(P2013−66773A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−920(P2013−920)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2009−506557(P2009−506557)の分割
【原出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(512169752)ザ ペリオディック ブリージング ファウンデーション, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−920(P2013−920)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2009−506557(P2009−506557)の分割
【原出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(512169752)ザ ペリオディック ブリージング ファウンデーション, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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