説明

呼吸マスク装置及び当該装置を作成するための方法及び成形型

ユーザの顔面の接触面に対して密閉する本体構造と、本体構造とともに呼吸マスク内部を部分的に画定する密閉リップデバイスと、本体構造に作用する保持力を少なくとも断続的・部分的にユーザの顔面領域に対して伝えるためのゲル構造と、弾力的に変形可能な収容壁により少なくとも部分的に画定されたゲル収容チャンバに収容されたゲル構造を画定するゲル材料と、を備える、呼吸可能なガスを投与するための呼吸マスク装置が提供される。収容壁の形成を意図したエラストマ材料は、呼吸マスク装置の壁部上に一体に形成され、ゲル収容チャンバを形成するためにこの壁部から持ち上げられるか又は分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸マスク装置、呼吸マスク装置用の密閉リップデバイス、及び対応する呼吸マスク装置及び密閉リップデバイスを製造するための成形型及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸マスク配置は、特に、周囲圧力を越える圧力レベルで、周囲空気のような呼吸可能なガス混合を投与するために用いられる。周囲圧力を越える圧力レベルで呼吸ガスを送出することは、例えば、ストローク又は睡眠に関連する呼吸障害を処理するためのいわゆるCPAP治療を行なうために用いられる。
【0003】
本出願人によって出願されてその全体を参照することにより本願明細書に組み入れられた国際出願PCT/EP02/11798号から、ユーザへの呼吸可能なガスを投与するための呼吸マスク装置は知られている。この呼吸マスク装置は、マスクのユーザの顔面領域と協働して、環境からの呼吸マスクのマスク内部を密封することを可能にする。かかる呼吸マスクは、例えばガスマスク及び呼吸装置の分野で、特に産業分野と同様に、呼吸可能なガスの医学又は治療の投与と共に用いられる。呼吸マスクの中で典型的に、呼吸マスク・ユーザの顔面領域から密閉することは、マスクの開口のまわりで、内方へ延在して、顔面領域に据え付けられて、弾力的に変形可能な材料から作られた密閉リップ構造を用いることで達成される。かかる密閉リップで一般に達成された密閉動作は、顔面領域に対する密閉リップの接触圧力につれて増加する。高い接触圧力の場合には、かかる呼吸マスクの長期使用が特に不快となる。技術の必要は、この問題に取り組むために展開されている。
【発明の開示】
【0004】
本発明の特徴は、十分に漏れていない間に着用することが特に快適であり、さらに工業的生産の時間(times)で好適に製造することができることにより識別される呼吸マスク装置を製造することを可能にする方法を提供することである。
【0005】
本発明の一つの実施形態又は実施例によれば、適用位置でユーザの顔面の接触面に対して十分な保持力で押圧される本体構造と、本体構造及びユーザの顔面領域の部分と協働して呼吸マスク内部を画定し且つ環境から密閉する密閉リップデバイスと、本体構造に作用する保持力をユーザの顔面領域に対して少なくとも断続的且つ部分的に伝達するためのゲル構造と、を有する、呼吸可能なガスを投与するための呼吸マスク装置が提供され、ゲル構造を形成するゲル材料は、弾力的に変形可能な収容壁によって少なくとも部分的に画定されたゲル収容チャンバに収容される。収容壁の形成を意図したエラストマ材料は、呼吸マスク装置の壁部上に一体成形(例えばオーバーモールド、共モールド)され、ゲル収容チャンバを形成するためにこの壁部から持ち上げられるか又は分離可能である。
【0006】
その結果、好ましくは、マスク力の好ましい伝達の目的で特に有効なゲル構造を含む呼吸マスク装置を製造することが可能になる。ゲル構造は、ゲル収容チャンバの提供のために、エラストマ壁によって少なくともいくつかの部分に画定されたゲル収容チャンバに、ゲル材料を導入することにより形成される。エラストマ壁は、エラストマ材料の射出の中で鋳型(mold)壁として機能する呼吸マスク装置の部分から持ち上げられるか又は分離可能である。
【0007】
本発明の実施形態において、ゲル収容チャンバはブレーシング・ビード(bracing bead)部として機能するように具体化される。ブレーシング・ビード(bracing bead)部は、好ましくは、呼吸マスク装置の本体構造とユーザの呼吸マスク装置の顔面密閉リップとの間で延在するように具体化される。ブレーシング・ビード(bracing bead)部は、密閉リップデバイスの全周にわたって延在するように具体化される。しかしながら、好ましくは、ブレーシング・ビード(bracing bead)部は、鼻に横方向に隣接するユーザの顔面密閉リップの接触領域だけに延在するようにセグメント様に具体化される。
【0008】
上唇領域(鼻マスクの場合)又は顎領域(フルフェースマスク)と同様に鼻のブリッジを横切る密閉リップデバイスの領域において、ゲル構造の具体化は省略可能である。前述の部分においてゲル構造を完全に省略することの代わりに、鼻のブリッジの領域、及び上唇又は顎領域において、それがブレーシング(bracing)力又は少なくともあらゆる主たるあるいは実質的なブレーシング(bracing)力を伝達しないように、ゲル構造を埋め込まれた(recessed)状態で具体化することは可能である。
【0009】
本発明の実施形態において、ユーザの顔面密閉リップは、ゲル構造の収容壁を形成する壁で一体で具体化される。ユーザの顔面密閉リップを密閉リップデバイスの残りの領域に結合することは、ユーザの顔面密閉リップの、又はユーザの顔面密閉リップを結合するために設けられた周辺の構造の固有の剛性に起因する非常に高い接触圧力が生み出されるように達成される。この機械的な挙動は、例えば、適切に低いショア硬度を用いるによって、及びユーザの顔面密閉リップの肉厚と三次元の曲率を適切に構成することによって、得られる。
【0010】
本発明の実施形態において、本体構造はいわゆる硬質マスクシェルとして具体化される。硬質マスクシェルは、完全に透明な熱可塑性プラスチック材料(例えばポリカーボネート)から作られる。硬質マスクシェルは、呼吸ガス線を特に柔軟なホースの形で接続するための接続構造(例えばインレットやエルボー)を持っていてもよい。硬質マスクシェルは、使用された呼吸ガスが呼吸マスク内部から環境に適切な洗い流しを可能にするガス洗い流し装置を含んでいてもよい。
【0011】
本発明の実施形態において、密閉リップデバイスは、この硬質マスクシェル上に射出成形される。密閉リップデバイスを硬質マスクシェル上に射出成形する前に、付着可能である局所的に区画された反応ゾーンを有し、その結果、これらの反応ゾーンで、射出された材料が本体構造に高強度で付着結合するように、硬質マスクシェルは好ましくは処理される。これらの反応ゾーンは、特に、硬質マスクシェルの適切な又は選択された領域のコロナ処理又はプラズマ処理によってもたらされる。この代わりにあるいはこの提供と組み合わせて、付着促進剤(promoter)の適用により、又は硬質マスクシェルのいくつかの他の適切な処理により、局所的に区画された反応ゾーンを作ることも可能である。硬質マスクシェルを含む材料、接着接合の具体化を意図したゾーンのタイプ、及び硬質マスクシェル上に射出成形されたエラストマ材料の特性(property)は、好ましくは、エラストマ材料と硬質マスクシェルの材料との間で十分に丈夫な局所的結合に求められた効果が得られるように構成される。硬質マスクシェルに射出されたエラストマ材料を非常に強い付着が要求されない領域は、分離手段あるいはテンプレート又はマスクの適用によって局所的に適切にシールドされる。
【0012】
本発明の実施形態において、後でエラストマ壁がゲル収容構造を具体化する領域で、硬質マスクシェルは、硬質マスクシェルによって、このエラストマ壁の有利な基本形状が既に保証されるように画定される。特に、材料の適用可能な部分は、硬質マスクシェルの膨らんだ壁部上に射出成形される。適用可能なエラストマ材料部分が、硬質マスクシェルの膨らんだ壁部から持ち上げられているならば、ゲル材料用の適切に大きな収容チャンバはカッピング(cupping)により作られる。ゲル材料は、ある過剰圧力で、ゲル材料を収容することを意図したゲル材料収容チャンバへ導入され、プロセスでエラストマ壁を広げることができる。エラストマ壁の形状は、好ましくは、少なくともエラストマ壁が広げられた状態で、ゲル構造の所望の形状が得られるように構成される。
【0013】
密閉リップデバイス上に、好ましくは特に硬質マスクシェル上に、充填導管又は充填バルブ構造を設けることは可能である、それにより、ゲル材料の収容を意図したゲル収容チャンバの導管あるいは構造が充填される。ゲル材料によって硬質マスクシェル上に最初に局所的に適切に射出成形された壁を持ち上げるか又は分離することは、ゲル材料の導入によって直接に可能である。その結果、ゲル収容チャンバは、ゲルの導入の間に徐々に生成される(膨れ上がる、あるいは拡張される)。ゲル材料のこの導入は、マスク装置を十分に型から外す前にさえ行うことができる。
【0014】
本発明の別の特徴は、少なくともいくつかの部分においてゲル本体及びゲル本体を囲むエラストマ・ジャケットを持ったゲル構造を有する呼吸マスク用の密閉リップデバイスに関する。射出成形作業の中で、ジャケットは対向する壁の上にエラストマ材料を射出成形することによって形成される。また、ジャケットはゲル材料の導入の間にこの対向する壁から持ち上げられるか、分離される。対向する壁は、実質的に硬質のプラスチック材料から作られた硬質マスクシェルの部分を形成する。対向する壁は、前の射出工程の中で形成されたエラストマ構造によって提供されてもよい。
【0015】
本発明の別の特徴は、呼吸マスク装置を製造する方法に関する。当該方法によれば、連続の製造工程において、本体構造及び密閉リップデバイスを含む呼吸マスク装置が形成される。密閉リップデバイスは、成形型(molding tool)の鋳型チャンバの本体構造上の部分にエラストマ材料を射出することによって形成される。本体構造は、付着ゾーンが作られるように、エラストマ材料の射出工程に先行する方法工程で準備されている。付着ゾーンでは、硬質シェル上に(後で)射出されたエラストマ材料が本体構造で接着接合へ入る。分離ゾーンが作られるように、射出が行われる。分離ゾーンでは、射出エラストマ材料が本体構造から持ち上げられる。
【0016】
本発明の別の特徴は、本体構造及び密閉リップデバイスを有する呼吸マスク装置を製造する方法に関する。当該方法は、本体構造上に少なくとも一つの付着ゾーンを形成するステップと、適切な鋳型チャンバの本体構造上にエラストマ材料で密閉リップデバイスを射出成形するステップと、各付着ゾーンにおける本体構造と密閉リップデバイスとの間で接着接合を形成するステップと、密閉リップデバイスの一つ以上の部分の射出されたエラストマ材料が、本体構造から分離可能である分離ゾーンを作成するステップと、を備える。
【0017】
方法の実施形態において、付着ゾーンは、コロナ処理又はプラズマ処理によって作成される。特に、成形型へマスク装置を導入すること及び硬質マスクシェルのある部分(だけ)の局所的に画定され選択的な処理を行なうことにより、硬質マスクシェルを形成しようとする成形型を部分的に型から外すことだけの後に、このコロナ処理又はプラズマ処理が行なわれる。プラズマ又はコロナ処理の代わりに、又はこの提供と組み合わせて、適切な付着促進剤で硬質マスクシェルを局所的に処理することも可能である。
【0018】
分離ゾーン(すなわちエラストマ材料が硬質シェルから非常に容易に分離可能であるゾーン)は、好ましくは、硬質シェルを形成するために設けられた材料の基礎的な特性によって作成される。しかしながら、必要であるならば、対応する付着ゾーンの近くにおいて、それらの上に射出されたエラストマ材料が硬質マスクシェルで非常に強い接着接合に入らないように、分離ゾーンとして後で機能する硬質シェルの領域をシールドするか又はマスクすることができる。この点において、特に、分離手段(シールド、マスク又はテンプレート)の適用によって分離ゾーンを作成することは可能である、分離手段の適用は、スプレーの適用によって、又は印刷特にスクリーン印刷によって、シールドバッフルを用いて実行される。
【0019】
好ましくは、分離ゾーン上に射出成形されたエラストマ材料を持ち上げること又は分離することは、緩衝充填物が導入される収容チャンバを形成する。この緩衝充填物は、ガス、特に容易に圧縮された周囲空気、泡材料、あるいは、既に述べているような粘性材料、特にシリコンゲル、によって形成されてもよい。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、本体部分及び密閉リップデバイスを含むマスクを形成するための複数部分(multi-part)の成形型が提供される。当該成形型は、第一の鋳型セグメントと、本体部分の第一の部分と一致する形を備えた第一の部分を有する第一の鋳型キャビティを形成するために第一の鋳型セグメントに関して位置決めされるように構成された第二の鋳型セグメントと、本体部分の第二の部分と一致する形を持っている第一の鋳型キャビティの第二の部分をさらに画定するために第一の鋳型セグメント及び第二の鋳型セグメントに関して位置決めされるように構成された第三の鋳型セグメントと、第三の鋳型セグメントを置換するための第四の鋳型セグメントと、を備える。第四の鋳型セグメントは、第一の鋳型セグメント及び第二の鋳型セグメントに関して整列配置されている。第二の鋳型キャビティを画定するために形成された本体部分は、密閉リップデバイスの第一の部分と一致する形を備える。
【0021】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、以下の実施形態の詳細な説明に記述されるか、又はそれらから明らかであろう。
【0022】
本発明のさらなる細部及び特徴は、図面とともに、詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
単純化された呼吸マスク装置の部分が図1に示されている。呼吸マスク装置は、本体構造又はマスクフレーム1と、本体構造に結び付けられた密閉リップデバイス2と、を含んでいる。本体構造1及び密閉リップデバイス2によって、呼吸マスクの内部Iは、ここに模式的だけに示されているがスケールが正確でなく示された、ユーザの顔面領域Gと協働して、環境Uから密封される。
【0024】
ここに示された呼吸マスク装置は、ゲル構造3が設けられて、このゲル構造を形成するゲル材料4が弾力的に変形可能な収容壁5又はジャケットに収容されることによって識別される。また、この収容壁5は、壁部1aの上に収容壁5を形成するために設けられた、エラストマ材料を一体で形成することにより作られる。また、この材料は、ゲル材料4を収容するゲル収容チャンバGAを形成するための壁部1aから持ち上げられるか、分離される。
【0025】
ゲル収容チャンバGAは、それがもたれる(rest)ユーザの顔面の領域Gの上に呼吸マスク装置を支える(brace)ブレーシング・ビード(bracing bead)部を形成する。ブレーシング・ビード(bracing bead)部は、密閉リップデバイス2の本体構造1と、非常に弾性的であり、好ましくは、比較的薄壁であるユーザの顔面密閉リップ2bとの間に延在し、マスクの適用位置においてユーザの顔面密閉リップ2bの内部に、又は選択的にそれがもたれかかる(rest on)ようとするユーザの顔面の領域の上に取り付けられる。
【0026】
ユーザの顔面密閉リップ2b及びゲル収容チャンバGAを部分的に画定する収容壁部5は、この程度まで一体的に具体化される。
【0027】
本体構造1は、好ましくは、完全に透明な熱可塑性プラスチック材料から作られた硬質マスクシェルとして具体化される。それは、呼吸ガスライン又はバルブ装置と接続するための接続構造(ここに示されない)を含む。
【0028】
さらに詳細に以下に説明されるように、密閉リップデバイス2は、この硬質マスクシェル上に射出成形されている。図1に示された状態で、密閉リップデバイス2は、付着ゾーン7,8,9に取り付けられ、このように丈夫な接着接合を形成して、接着接合は硬質マスクシェルのコロナ処理又はプラズマ処理によって形成される。硬質マスクシェルの壁部1aは、分離ゾーンを形成する。収容壁5の形成を意図した材料が、壁部1aから持ち上げられるか又は分離される。
【0029】
以下に説明されるように、呼吸マスク装置の製造が行われる。
【0030】
図2aにおいて、複数片(multi-piece)の成形型が供給される。それは第一の鋳型の閉鎖状態で、本体構造1又は硬質マスクシェルを形成しようとする鋳型チャンバを提供する。この複数部分の成形型は、単なる実施例として、鋳型セグメントA、B、Cの要素別に分解して示されている。一旦硬質シェルの形成を意図した好ましくは熱可塑性プラスチック材料が、成形型の鋳型チャンバに射出され、プラスチック材料が十分に硬化したならば、成形型はコアセグメントCの除去により開かれる。次に、好ましくはカバーマスクを用いて、付着ゾーン10,11,12は、コロナ処理又はプラズマ処理、又は、成形型の中に残存する硬質マスクシェルの他のいくらかの種類の反応処理によって本体構造1上で具体化される。図2bにおいて、これらの付着ゾーン10,11,12がさらに詳細に示される。
【0031】
次に、鋳型セグメントCの代わりに、コアセグメントC'及び/又はC''(好ましくは複数の部分である)は、図3に示されるように成形型に挿入される。この鋳型セグメントによって、密閉リップデバイス2の形成を意図した鋳型チャンバが提供される。エラストマ材料、好ましくは液体のシリコンゴム(LSR))が、この鋳型チャンバに射出される。このシリコン材料は、図2aと図2bに示された付着ゾーン10,11,12において、硬質マスクシェルの材料で堅固な接着接合に入る。壁5に隣接している硬質シェル1の壁部1aにおいて、シリコン材料は、壁部1aに隣接するか又は壁部1aに接している。しかし、シリコン材料は、壁部1aに結合されないか、あるいはわずかに結合されるだけである。このように形成されて、本体構造1又は硬質シェル要素とその上に射出成形された密閉リップデバイス2とを含む呼吸マスク装置は、成形型を適切に開くことによって成形型から取り除くことができる。特にシリコンゲルの粘性媒体を収容壁5と硬質シェル1との間で画定された境界領域に強制的に入れることにより、本体構造1から収容壁5を徐々に持ち上げてそのプロセスでゲル構造3を形成することが可能になる(図1を参照)。
【0032】
図4から分かるように、充填スタブ(filling stub)構造を硬質シェル1の上に設けることができる。充填スタブ(filling stub)構造13によってゲル材料が有利に導入される。ゲル材料、及び、壁部1aの領域で硬質シェル上に射出成形されたエラストマ材料の分離性の導入は、壁部1aの領域での特別な表面特性によって、及び特にフラットな優先の導管形状の手段によって、強化される。好ましくは閉鎖できるように、特に自動で閉鎖できるように、充填スタブ構造13が具体化される。閉鎖は、特に、ねじやプラグや釘構造によって行うことができる。
【0033】
図5は、特に、支柱似の(strutlike)又は波状の形態を有するように本体構造1の断面を設計することにより、「拡大した壁部」1aが、硬質シェル1又は本体構造の上に作成される概念を示している。壁部1aの上に最初に射出成形された壁は、この壁部1aから持ち上げられて、対応する断面において、支持壁1aの長さ/幅と同じ作成(developed)領域(すなわち長さ/幅)を本質的に持っている。
【0034】
図6は、壁部1aの上に射出成形された壁5が異なった肉厚を持っている断面図を示す。これらの肉厚を適合させることにより、壁5と協働して最後に形成されるゲル構造の機械的性質に対して影響を及ぼすことが可能になる。壁の肉厚のコース(course)、及び密閉リップデバイスの輪郭形状を特別に設計することにより、ユーザの顔面の領域Gにもたれる(rest on)密閉リップデバイス2aの機械的性質が、画定される。
【0035】
図7aに示されるように、ゲル収容チャンバGAを形成するための本発明の実施形態は、好ましくは、硬質材料/エラストマ材料の対を形成することにより実現することができる。反応(reactive)ゾーン10,11は、硬質の構造1の上に具体化される。エラストマ材料は、硬質の構造1の全ての領域にわたって最初に射出成形されて、プロセスにおいて壁部1aと接触する壁5を形成する。壁5と支持部1aの間で境界領域に導入することによって、壁5を点線で示した状態に膨らませて、その結果、ゲルで強化されたビード(bead)を作成することができる。
【0036】
図7bにおいて、柔軟材料/柔軟材料又はエラストマ材料/エラストマ材料の組み合わせで発明の実施形態が実現される変形例が示されている。エラストマ材料で具体化された第二のエラストマ層5'が、構造1'上に射出成形されている。壁5'の形成を意図した第二の射出工程が行なわれる前に、構造1'が反応ゾーン10',11'を含むように前処理される。壁部1',5'の間に形成された隙間領域に粘性媒体(特に、シリコンゲル)を導入することにより、点線で示される膨張した緩衝構造を作ることは可能になる。
【0037】
図8は、別の変形例に係る呼吸マスク装置を示す。この呼吸マスク装置は、完全に透明な硬質シェルとして具体化された本体構造1を含んでいる。本体構造1は、送出呼吸ガスにライン装置提供体(serving)を接続するための接続開口100を形成する。
【0038】
密閉リップデバイス2は本体構造1の上に射出成形されている。密閉リップデバイス2は、ユーザの鼻のブリッジと交差するブリッジ部2eと、サイド部2f、2gと、ユーザの上唇又は顎領域と交差する低いブリッジ部2hとを含むように具体化される。領域2f,2gにおいて、密閉リップデバイス2は、図1に示される組立てと大略同等な断面を持っている。ブリッジ部2eの領域において、ここに示された呼吸マスク装置は、ゲル構造を有していない。領域2f及び2gにおいて、二つのビード似の(beadlike)ゲル緩衝体GPが設けられている。それは、ビード似の(beadlike)形で、及び適用位置で、鼻の側面に沿って延在している。これらのゲル緩衝体GPは、本体構造1によって部分的に囲まれ、密閉リップ2bの方に突出して(図1を参照)、三次元的に大きく湾曲した指のようなコース(course)を有する壁5によって部分的に囲まれる。
【0039】
図9aにおいて、変形例が図示されている。変形例によれば、壁5の実施形態に対して、拡大した(enlarged)射出成形表面1aを設けることが可能になる。これは、構造のコンポーネント1上に張出部(strut)111を具体化することにより達成される。この張出部は、張出部111から壁5を分離した後に、ゲル収容チャンバGAの中に浸す。張出部111は、ゲル収容チャンバの中のゲル材料の移動(shifting)を湿らすことができ、ゲルクッションの機械的性質に影響を及ぼすことができる。張出部111は、終端停止体として機能するように具体化されて、ゲルクッションの過剰な変形を防止する。エラストマ材料の領域の画定(それはゲルチャンバ壁として機能する)は、構造1に向かう射出成形接触面の上で、反応ゾーン10,11を具体化することによりこの変形例において得られる。そのゾーンは、構造の部分1にゲル材料が十分に強く付着することを保証する。
【0040】
図9bは、本発明の実施形態に係る呼吸マスクのゲルクッションを示す。このゲルクッションは、密閉リップの全周面のまわりにずっと延在してもよい。それは、いくつかの部分だけにおいてゲルセグメントとして設けられてもよい。かかるゲルセグメントは、好ましくは、頬領域にもたれかかるために設けられている密閉リップデバイスの部分の内部に延在する。ゲル材料は、粘性を有するか、又は言いかえれば、液体であるか、又は部分的に交差結合されている(crosslinked)か、あるいは言いかえれば大きな弾力性を有するものであってもよい。他の種類の充填材料は、収容チャンバGAに導入することもできる。好ましくは、これらの材料は、マスクに対して美学的にひきつける外観を貸し与えるように着色される。
【0041】
図9cは、フレーム要素11'と組み合わせて実現される本発明の実施形態を示す。エラストマ材料を用いることによって、密閉構造例えば鋸歯領域11'が作られる。それは、密閉するとともに、このように作成された密閉構造をマスク本体又は他の種類の搬送(carrier)システムに選択的に固定する役目をする。
【0042】
現在のところ最も実際的で且つ好適な実施形態であると考えられるものに関して本発明が説明されているが、本発明は、開示された実施形態に限定されるべきものではなく、本発明の精神及び範囲内に含まれる様々な修正物及び均等物をカバーするように意図されることは理解されるべきである。また、上述の様々な実施形態は、他の実施形態と共に実行されてもよい。例えば、一つの実施形態の態様が、他の実施形態を実現するための別の実施形態の態様と結合されてもよい。あるいは、さらなる実施形態は、所定の実施形態の単一のコンポーネント又はサブの部分を含んでいてもよい。さらに、本発明がOSAに苦しむ患者への特別な適用を有するが、当然のことながら、他の病気(例えば、鬱血心不全、糖尿病、病的肥満、ストローク、肥満に対する外科手術など)にかかる患者が上記教示から利益を導き出すことができる。さらに、上記教示は、非医学的な適用において患者及び非患者の両方に適用することができる。
【0043】
関連する出願への相互参照
本出願は、2005年7月19日に出願されてその全体を参照することにより本願明細書に組み入れられた、ドイツ国特許出願10 2005 033 648.5号及び10 2005 033 650.7号の利益を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】密閉リップデバイスの領域での、本発明の実施形態に係る呼吸マスク装置の組立てを説明する部分断面図である。
【図2a】図1の呼吸マスク装置の硬質シェルコンポーネントを説明する図である。
【図2b】図2aの硬質シェル要素の、付着ゾーンとして用いられる部分を示す斜視図である。
【図3】硬質シェル要素の上に、密閉リップデバイスを形成しようとしている、エラストマ材料の射出成形直後の状態にある、本発明の実施形態の呼吸マスク装置の製造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るゲル材料で硬質マスクシェルを充填するための充填部を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る十分に大きな射出成形された壁部を供給するための硬質シェル要素の好ましい組立てを説明する断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るゲル構造の作成の細部を説明する断面図である。
【図7a】硬質材料とエラストマ材料との組み合わせで本発明の実施形態の概念の利用を説明する基本図である。
【図7b】エラストマ材料/エラストマ材料の組み合わせで本発明の実施形態の概念を説明する図である。
【図8】本体構造(例えば、硬質シェル要素)と、その上に射出成形されたエラストマ密閉リップデバイスと、を含む、本発明の実施形態に係る呼吸マスク装置を示す斜視図である。そして、本体構造と協働する密閉リップデバイスは、二つの指状の収容チャンバ部分を形成する。そこにゲル材料が導入されて、ゲルビード部を成形する。
【図9a】本発明の実施形態に係る比較的大きな領域の分離ゾーンを示す基本図である。
【図9b】本発明の実施形態に係る呼吸マスク密閉リップを示す基本図である。
【図9c】本発明の実施形態に係るさらなるマスク構造に対して密封状態で配置されるフレーム要素を示す基本図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸可能なガスを投与するための呼吸マスク装置であって、当該呼吸マスク装置は、
使用中のユーザの顔面の接触面を密閉するように構成された本体構造(1)と、
本体構造と組み合わせて呼吸マスク内部(I)を部分的に画定する密閉リップデバイス(2)と、
ユーザの顔面領域(G)に対して、本体構造に作用する保持力を、少なくとも断続的に及び/又は部分的に伝達するためのゲル構造(3)と、
弾力的に変形可能な収容壁(5)によって少なくとも部分的に画定されたゲル収容チャンバに収容されるゲル構造(3)を画定するゲル材料(4)と、を備え、
収容壁(5)の形成を意図するエラストマ材料は、呼吸マスク装置の壁部(1a)の上に一体に形成され、
前記収容壁(5)は、壁部(1a)から分離可能であり、その結果、ゲル収容チャンバ(GA)を形成することを特徴とする呼吸マスク装置。
【請求項2】
前記ゲル収容チャンバ(GA)は、ブレーシング・ビード部を含むことを特徴とする、請求項1記載の呼吸マスク装置。
【請求項3】
前記ブレーシング・ビード部は、本体構造(1)とユーザの顔面密閉リップ(2b)との間に延在することを特徴とする、請求項2記載の呼吸マスク装置。
【請求項4】
ゲル構造のユーザの顔面密閉リップ及び収容壁(5)は、一体に形成されることを特徴とする、請求項3記載の呼吸マスク装置。
【請求項5】
前記本体構造は、硬質マスクシェル(1)又はフレーム要素を含むことを特徴とする、請求項1乃至4の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項6】
前記密閉リップデバイス(2)は、硬質マスクシェル(1)又はフレーム要素の上に射出成形されることを特徴とする、請求項1乃至5の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項7】
前記密閉リップデバイス(2)を射出成形する前に、局所的に画定された反応ゾーン(10,11,12)は、本体構造(1)を形成する要素上に作成されることを特徴とする、請求項1乃至6の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項8】
前記反応ゾーンは、コロナ処理又はプラズマ処理によって作成されることを特徴とする、請求項1乃至7の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項9】
前記反応ゾーンは、付着促進によって作成されることを特徴とする、請求項1乃至8の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項10】
ゲル材料の分離を意図したゾーンは、局所的にシールドされることを特徴とする、請求項1乃至9の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項11】
本体(1)上に設けられた充填導管構造(13)をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至10の少なくとも一つに記載の呼吸マスク装置。
【請求項12】
本体構造を有する呼吸マスク用の密閉リップデバイスであって、ゲル本体と、ゲル本体の少なくとも一部分を囲むエラストマ・ジャケットとを有するゲル構造を含んでなり、
ジャケットは、本体構造の対向壁の上に射出成形することによって射出成形の中で形成され、ゲル材料収容チャンバを形成するために対向壁から分離可能であることを特徴とする密閉リップデバイス。
【請求項13】
本体構造及び密閉リップデバイスを有する呼吸マスク装置を製造するための方法であって、当該方法は、
本体構造上に少なくとも一つの付着ゾーンを形成するステップと、
適切な鋳型チャンバにおける本体構造上にエラストマ材料で密閉リップデバイスを射出成形するステップと、
各付着ゾーンにおける、本体構造と密閉リップデバイスとの間に接着接合を形成するステップと、
密閉リップデバイスの一つ以上の部分の射出されたエラストマ材料が、本体構造から分離可能である分離ゾーンを作成するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記付着ゾーンは、コロナ処理又はプラズマ処理によって作成されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記付着ゾーンは、付着促進剤の適用によって作成されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記分離ゾーンは、本体構造を含む材料の基礎的な特性によってもたらされるか、本体構造を含む材料の基礎的な特性に起因することを特徴とする、請求項13乃至15の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項17】
前記分離ゾーンは、分離手段の適用によって作成されることを特徴とする、請求項13乃至16の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項18】
緩衝充填物を収容するための収容チャンバは、分離ゾーンの領域でのエラストマ材料を持ち上げることにより形成されることを特徴とする、請求項13乃至17の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項19】
前記緩衝充填物は、ガス又は空気で形成されることを特徴とする、請求項13乃至18の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項20】
前記緩衝充填物は、粘性媒体で形成されることを特徴とする、請求項13乃至19の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項21】
前記緩衝充填物は、泡材料で形成されることを特徴とする、請求項13乃至20の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項22】
エラストマ壁の持ち上げは、充填材料の導入で達成されることを特徴とする、請求項13乃至21の少なくとも一つに記載の方法。
【請求項23】
本体部分及び密閉リップデバイスを含むマスクを形成するための複数部分の成形型であって、
第一の鋳型セグメントと、
本体部分の第一の部分と一致する形を備えた第一の部分を有する第一の鋳型キャビティを形成するために第一の鋳型セグメントに関して位置決めするように構成された第二の鋳型セグメントと、
本体部分の第二の部分と一致する形を備えた第一の鋳型キャビティの第二の部分をさらに画定するために第一の鋳型セグメント及び第二の鋳型セグメントに関して位置決めするように構成された第三の鋳型セグメントと、
第三鋳型セグメントを置換するための第四の鋳型セグメントであって、密閉リップデバイスの第一の部分と一致する形を有する第二の鋳型キャビティを画定するために第一の鋳型セグメントと第二の鋳型セグメントと形成された本体部分とに関して整列配置されている第四の鋳型セグメントと、を備えることを特徴とする複数部分の成形型。
【請求項24】
密閉リップデバイスの第二の部分と一致する形を有する第二の鋳型キャビティの第二の部分を画定するために第一の鋳型セグメント及び第四の鋳型セグメントに関して整列配置されている第五の鋳型セグメントと、をさらに備えることを特徴とする、請求項23に記載の成形型。
【請求項25】
第四の鋳型セグメント及び第五の鋳型セグメントは、顔面密閉リップと一致する形を有するキャビティを画定することを特徴とする、請求項24に記載の成形型。
【請求項26】
成形型は、本体部分の一つ以上の表面を選択的に処理する処理部を含んでいることを特徴とする、請求項23乃至24のいずれか一つに記載の成形型。
【請求項27】
本体部分の残りの部分が処理されていなくて一つ以上の非結合ゾーンを画定するものの、処理部は、本体部分上に一つ以上の結合ゾーンを画定するための処理を作成するように構成されていて、
密閉リップデバイスは、成形型内部の結合ゾーンで粘着的に結合されるとともに、いったん第四の鋳型セグメント及び/又は第五の鋳型セグメントがお互いに分離されると密閉リップデバイスは、非結合ゾーンにおける本体部分から分離可能であることを特徴とする、請求項26に記載の成形型。
【請求項28】
前記処理は、プラズマ処理又はコロナ処理を含むことを特徴とする、請求項26乃至27のいずれか一つに記載の成形型。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【公表番号】特表2009−501582(P2009−501582A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521886(P2008−521886)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007121
【国際公開番号】WO2007/009782
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506153697)エムアーペー・メディツィーン−テヒノロギー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (10)
【氏名又は名称原語表記】MAP Medizin−Technologie GmbH