呼吸判定装置および呼吸判定システム
【課題】被験者の呼吸が胸式呼吸であるか腹式呼吸であるかを判定する。
【解決手段】生体測定装置1は、身体の特定部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200を備え、CPU170は、これを制御して体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaおよび体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定するとともに、それらの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値Za0および第2センタリング値Zb0を求める。そして、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZaと、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値ΔZbとに基づいて、被験者の呼吸が胸式呼吸であるか腹式呼吸であるかを判別可能な判別情報を求める。
【解決手段】生体測定装置1は、身体の特定部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200を備え、CPU170は、これを制御して体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaおよび体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定するとともに、それらの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値Za0および第2センタリング値Zb0を求める。そして、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZaと、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値ΔZbとに基づいて、被験者の呼吸が胸式呼吸であるか腹式呼吸であるかを判別可能な判別情報を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼吸の種別を判定する装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体電気インピーダンスを測定し、測定結果に基づいて、生体の状態を推定する各種の装置が従来から知られている。そのような装置の一つとして、特許文献1には、体幹生体電気インピーダンスに基づいて、肺活量を推定する技術が開示されている。
【0003】
呼吸は、生体データ(血圧,体温,皮膚温,脳波,脈波など)の中で、唯一自己コントロール可能なものであることから、例えば、呼吸をコントロールすることによって、ヨガ、気功、カイロプラクティック、あるいは座禅などの健康法として世の中に広がっている。また、呼吸法は胸式と腹式に分けられる。腹式呼吸は、ダイエットやボイストレーニングなどにも応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50127号公報(段落0020参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、呼吸の健康法への有用な活用には、被験者の呼吸が胸式であるか腹式であるかを知る必要がある。しかしながら、従来の技術では、生体電気インピーダンスから呼吸が胸式であるか腹式であるかを知ることができなかった。
そこで、本発明は、被験者の呼吸が胸式呼吸であるか腹式呼吸であるかを判定可能な装置およびシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定装置(1)は、被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(170、200)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(170)と、を備えることを特徴とする。本発明では、解析部が、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めることにより、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別できるという利点がある。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0007】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)、および、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)を生成するセンタリング値生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の第1センタリング値に対する相対値である第1相対値(ΔZa)を求める第1相対値算出部(170)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の第2センタリング値に対する相対値である第2相対値(ΔZb)を求める第2相対値算出部(170)と、をさらに備え、解析部は、第1相対値と第2相対値とに基づいて判別情報を求める。
【0008】
この態様では、解析部が、第1相対値と第2相対値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めることにより、被験者の呼吸の種別をリアルタイムで正確に判別できる。より具体的には、上記判別情報は、被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比(ΔRib/ΔAb)を示すものである。本発明では、被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比(ΔRib/ΔAb)と、上述の第1相対値および第2相対値との間には相関関係があることを見出し、解析部は、判別情報と、第1相対値および第2相対値との関係を表す回帰式にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値および第2相対値に対応する判別情報を求める。そして、その求めた判別情報から、被験者の呼吸の種別を推定できるという具合である。その回帰式は、以下の形で表される。
ΔRib/ΔAb=(a×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b
ΔRib:被験者の胸部の周囲径の変化、ΔAb:被験者の腹部の周囲径の変化、ΔRib/ΔAb:判別情報、ΔZa:第1相対値、ΔZb:第2相対値、a,b:定数。
【0009】
この態様において、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸である一方、所定の閾値以下の場合は腹式呼吸であると推定される。このため、解析部によって求められたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸が胸式呼吸であるのか腹式呼吸であるのかを精度良く判定できるという利点がある。
【0010】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、解析部は、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求める。この態様では、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかに加え、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法(以降、ドローイン呼吸と記載する)なのかを正確に判別することができる。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0011】
この態様において、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値以下の場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であり、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値より所定値以上大きい場合は、被験者の呼吸はドローイン呼吸であり、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値と所定値との加算値未満の場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定される。このため解析部によって求められたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸が胸式呼吸であるのか腹式呼吸であるのかドローイン呼吸であるのかを精度良く判定することができる。
【0012】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部(170)をさらに備え、生体電気インピーダンス測定部は、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、第1生体電気インピーダンスおよび第2生体電気インピーダンスを測定し、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する一方、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第2センタリング値を生成する。
【0013】
ここで、被験者が、吸気と呼気とからなる呼吸を行うと、その呼吸に応じて、体幹上部の第1生体電気インピーダンスおよび体幹中部の第2生体電気インピーダンスは変化する。腹式呼吸と胸式呼吸とドローイン呼吸とで肺は同じように伸縮変化し、吸気では肺組織に含まれる空気量が増加するために肺の生体電気ンピーダンスは増加方向に変化し、呼気では肺組織に含まれる空気量が減るために肺の生体電気インピーダンスは減少方向に変化する。つまり、被験者の呼吸が腹式呼吸と胸式呼吸とドローイン呼吸の何れの場合であっても、肺の上部を含み、腹部を含まない第1生体電気インピーダンスは、吸気では増加方向に変化する一方、呼気では減少方向に変化する。
また、腹式呼吸では、呼気時に腹部骨格筋の働きによって内臓組織が横隔膜を押し上げる方向に上昇するので、腹部の生体電気インピーダンスは増加方向に変化する。つまり、腹式呼吸の呼気では、肺の生体電気インピーダンスの減少を腹部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。一方、胸式呼吸やドローイン呼吸では、そのようなことはない。したがって、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、肺の中下部および腹部を含む第2生体電気インピーダンスの変化は、上述の第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる態様を示す。
【0014】
被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であってもドローイン呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形は略正弦波状となる。体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値(第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル)が得られるように、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する。より具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値を求める。これにより、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値を精度良く生成できる。上記センタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される。なお、ここでの「移動平均処理」には、重み付けのない平均処理だけでなく、重み付けのある平均処理も含まれる。例えば各サンプリングタイミングにおける周波数の相違に応じた重み付けがされたうえで、平均処理が行われる態様であってもよい。
【0015】
一方、腹式呼吸に伴う第2生体電気インピーダンスの変化は、第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる態様(非正弦波状)となるので、第1センタリング値を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを精度良く求めることは困難である。
【0016】
そこで、上記態様では、センタリング値生成部は、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する。具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前のサンプリングタイミングで生成した第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値として採用する。これにより、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを精度良く求めることができる。
【0017】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部(170)と、被験者の1呼吸ごとに、解析部により求められた判別情報に基づいて当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを求める腹式レベル算出部(170)と、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度および腹式レベルに基づいて、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを報知する報知部(170、160)と、をさらに備える。より具体的には、呼吸深度抽出部で抽出された呼吸深度を正規化する正規化部(170)をさらに備え、報知部は、呼吸深度と、1呼吸で肺に出入りする空気量を示す1回換気量との関係を示す第2の回帰式にしたがって演算処理を実行することで、正規化部にて正規化された呼吸深度に対応する1回換気量を求め、その求めた1回換気量と、腹式レベルとに基づいて、被験者の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを決定して報知する。
【0018】
この態様では、報知部は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを被験者に対して報知するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、この態様によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
【0019】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形(図32〜図35、図37〜図39)の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0020】
なお、互いに直交する2軸とは、例えばX軸とY軸である。但し、これに限らず、例えばX軸とY軸をそれぞれ45度傾けた2軸などであってもよい。また、リサージュ図形は、例えば、図32や図33に示すように1呼吸分の様子を示すものであってもよいし、図34や図35に示すように複数回の呼吸の様子を連続して示すものであってもよい。また、呼吸判定装置は、リサージュ図形を表示する表示部を備えていてもよいし、リサージュ図形の表示データを外部の表示装置に出力する出力部を備えていてもよい。
【0021】
例えば、胸式呼吸の場合、図10に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。したがって、被験者の呼吸のうち胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、例えば図32や図34に示すようにリサージュ図形の軌跡は傾斜した直線状になる。また、胸式呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、胸式呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0022】
これに対し、腹式呼吸の場合、図9に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化する一方、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。したがって、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、例えば図33や図35に示すようにリサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。
【0023】
なお、図33に示すリサージュ図形は、1呼吸に占める胸式呼吸と腹式呼吸の割合が50%ずつになる場合のものである。この場合、リサージュ図形の軌跡はブーメラン状(“く”の字状)になり、軌跡の形状が上下でほぼ対称になる。但し、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも低ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(図33では右上がりの直線部分)の占める割合が大きくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が小さくなる。逆に、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも高ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(図33では右上がりの直線部分)の占める割合が小さくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が大きくなる。このように被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸と腹式呼吸の割合に応じて屈曲形状が様々に変化する。
【0024】
また、理論上、腹式呼吸の割合が100%になる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡とは反対方向に傾斜した直線状になる。しかしながら、例えば息を止めて胸式呼吸を全く行わないようにした状態で腹部を凹ませたり膨らませたりした場合であっても、横隔膜の上下に伴って肺が収縮したり拡張したりするため、疾患などで横隔膜が全く機能しない場合を除き、被験者が呼吸を行う場合には胸式呼吸が必ず含まれることになる。したがって、実際には、腹式呼吸の占める割合がどんなに高い場合であっても、リサージュ図形の軌跡には、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分が必ず含まれ、屈曲した形状となる。また、図33に示すように、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(近似直線LN1)に対し、そこから折れ曲がった部分(近似直線LN2)がどれだけ屈曲しているのかを示す屈曲角度AGは、腹式呼吸が浅ければ小さくなり、腹式呼吸が深ければ大きくなる。また、腹式呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0025】
このように胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の形状が異なる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ(深さ)によってリサージュ図形の軌跡の大きさや形状が変化する。したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか、あるいは現在の自分の呼吸が胸式呼吸と腹式呼吸のうちどちらの占める割合が高いのかを把握することができる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。
【0026】
また、被験者は、胸式呼吸の訓練を行う場合、リサージュ図形の軌跡が傾斜した直線状になり、そのサイズが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。また、腹式呼吸の訓練を行う場合には、リサージュ図形の軌跡が屈曲した形状になり、そのサイズや屈曲角度AGが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。このようにリサージュ図形を見ながら呼吸の訓練を行うことができると、胸式呼吸や腹式呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0027】
また、ドローイン呼吸の場合、図30に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、図30に示すように体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。このためドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに傾斜した直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた他方の軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。
【0028】
したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸がドローイン呼吸であるか否かも把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。したがって、ドローイン呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、リサージュ図形を見ながら訓練を行うことで、ドローイン呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0029】
以上のようにリサージュ図形を表示することができると、被験者は、現在の自分の呼吸の種別やその大きさ、さらには胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを把握することができる。また、呼吸の種別やその大きさ、あるいは胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを、生体電気インピーダンスの測定値に基づいて客観的に把握することができる。また、呼吸を効率よく訓練することもできる。
【0030】
また、例えばインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーでは、被験者の胸部(剣状突起部)と腹部(臍部)の両方にコイルを内蔵した測定バンドを巻き付け、コイルのインダクタンス変化から、呼吸時の胸部の周囲径変化に相当する胸部変化率Rrc(%)と、呼吸時の腹部の周囲径変化に相当する腹部変化率Rabd(%)を測定する。このようなインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの中には、例えば、X軸を腹部変化率Rabdとし、Y軸を胸部変化率RrcとするKonno-Mead Diagramに準じたリサージュ図形を表示するものがある。
【0031】
しかしながら、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの場合、被験者の胸部と腹部に測定バンドを装着しなければならない。また、被験者が測定を意識したり測定時に緊張したりすると、胸部変化率Rrcや腹部変化率Rabdが大きく変動してしまう。このため睡眠時には比較的信頼性の高い測定結果を得ることができるが、被験者が起きている状態で測定を行うと、信頼性の高い測定結果を得られないケースが多々見受けられる。
【0032】
これに対し、生体電気インピーダンスによる測定の場合、例えば四肢誘導八電極法を利用すれば両掌と両足裏の部分に電流電極や電圧電極を配置すればよく、被験者の体幹部に電流電極や電圧電極を貼り付ける必要がないので拘束性が少ない。また、生体電気インピーダンスの場合、例えば体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaであれば、測定値のうちおよそ8割が肺への空気の出し入れによるもので、残り2割が呼吸筋などによるものである。したがって、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの場合に比べ、被験者が測定を意識したり測定時に緊張したりすることによる影響を低減し、より信頼性の高い測定結果を得ることが可能になる。これに加え、肺への空気の出し入れや横隔膜の上下動など、呼吸に直結した情報を高い感度で測定することが可能になる。
【0033】
このためリサージュ図形についても、生体電気インピーダンスによるリサージュ図形は、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形に比べ、肺への空気の出し入れや横隔膜の上下動など、呼吸に直結した情報を高い感度で反映したものになる。また、上述したようにインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形は、例えば、X軸を腹部変化率Rabdとし、Y軸を胸部変化率Rrcとするものである。この場合、1呼吸分の軌跡は、胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合でともに右上がりの直線状になる。また、右上がりの直線状の軌跡とX軸とのなす角を軌跡の傾斜角としたとき、胸式呼吸の割合が高いほど軌跡の傾斜角は大きくなって90度に近づき、腹式呼吸の割合が高いほど軌跡の傾斜角は小さくなって0度に近づく。つまり、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形の場合、胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合では軌跡の傾きが変化するだけで、本発明のように軌跡の形状が異なる訳ではないので、リサージュ図形から呼吸の種別を把握しにくい。
なお、レスピトレースで測定した胸部周囲径Ribと腹部周囲径Abを用いてKonno-Mead Diagramに準じたリサージュ図形を表示する場合についても同様である。
【0034】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)とを生成するセンタリング値生成部(170)と、をさらに備え、表示データ生成部(170)は、第1センタリング値および第2センタリング値によって定まるリサージュ図形上の位置がリサージュ図形を表示する表示領域(160A)の中心になるように、リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、表示領域の中央にリサージュ図形を表示することが可能になるので、リサージュ図形を見易くすることができる。
【0035】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)とを生成するセンタリング値生成部(170)と、をさらに備え、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、第1センタリング値に基づいてリサージュ図形の一方の軸方向のセンタリングを行う第1センタリング処理と、第2センタリング値に基づいてリサージュ図形の他方の軸方向のセンタリングを行う第2センタリング処理とを有し、第2センタリング処理を行う頻度が第1センタリング処理を行う頻度より少なくなるようにしてもよい。
【0036】
ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに傾斜した直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた他方の軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。ここで、センタリングを頻繁に行うと、リサージュ図形が常に表示領域の中央に表示されてしまうため、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができなくなってしまう。上述の態様によれば、例えば、第1センタリング処理は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理は最初の1回だけ行って後は行わないようにするなど、第1センタリング処理よりも第2センタリング処理を行う頻度を少なくしているので、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の位置が他方の軸方向にずれることになる。このためリサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2センタリング処理を行う頻度を少なくした分だけ呼吸判定装置の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2センタリング処理も行っているので、表示領域の中央にリサージュ図形を表示して見易くすることができる。
【0037】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、第1振幅値および第2振幅値を用いて2軸のレンジを調整し、リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、2軸のレンジを調整することで、リサージュ図形を表示する表示領域に対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示することが可能になる。また、表示領域の中央にリサージュ図形を表示することもできる。このためリサージュ図形を見易くすることができる。
【0038】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、第1振幅値を用いて一方の軸のレンジを調整する第1レンジ調整処理と、第2振幅値を用いて他方の軸のレンジを調整する第2レンジ調整処理とを有し、第2レンジ調整処理を行う頻度が第1レンジ調整処理を行う頻度より少なくなるようにしてもよい。
この場合もリサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2レンジ調整処理を行う頻度を少なくした分だけ呼吸判定装置の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2レンジ調整処理も行っているので、リサージュ図形を表示する表示領域に対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示して見易くすることができる。
【0039】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の軌跡の表示態様が最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで異なるようにリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
例えば、図34や図35に示すように複数回の呼吸の様子を連続して示すリサージュ図形の場合、軌跡の表示態様が同じであると、最新の1呼吸分の軌跡が把握しづらい。上述の態様であれば、表示態様(例えば色や線種など)の違いから最新の1呼吸分の軌跡を容易に把握することができる。
【0040】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の軌跡の表示態様が経過時間に応じて変化するようにリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
例えば、経過時間が増えるほど軌跡の色が薄くなるようにすれば、新しい軌跡ほど色が濃いので、最新の1呼吸分の軌跡など、新しい軌跡を容易に把握することができる。
【0041】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成するとともに、目標とする呼吸の種別と当該呼吸の大きさとに応じた呼吸指導用のリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形の他に、目標とする呼吸の様子を示す呼吸指導用のリサージュ図形を表示することが可能になる。したがって、被験者は、両方のリサージュ図形を見比べながら呼吸の訓練を行うことができる。この場合、被験者は、自分の呼吸の様子を示すリサージュ図形の軌跡が呼吸指導用のリサージュ図形の軌跡と一致するように意識して呼吸を行うことで、目標とする呼吸を体得することができる。このように呼吸指導用のリサージュ図形を用いることで、被験者の呼吸を効果的に指導することができる。
【0042】
なお、表示データ生成部(170)は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形と呼吸指導用のリサージュ図形とが重ねて表示されるように両者の表示データを生成してもよい。このようにすれば目標とする呼吸との差異を容易に把握することができる。また、表示データ生成部(170)は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形の軌跡と、呼吸指導用のリサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、両者の表示データを生成してもよい。このようにすれば、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形と呼吸指導用のリサージュ図形を重ねて表示しても、軌跡の表示態様(例えば色や線種など)の違いから両者を容易に見分けることができる。
【0043】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、リサージュ図形の軌跡の傾斜角を算出する傾斜角算出部(170)と、傾斜角算出部が算出した傾斜角を予め定められた基準傾斜角と比較して、肺の換気能力の良否を判定する換気能力判定部(170)と、をさらに備えてもよい。
この場合、肺の換気能力の良否をリサージュ図形の軌跡から簡単に判定することができる。なお、立位、座位、仰臥位など、測定時の姿勢によってリサージュ図形の軌跡の傾斜角は異なるので、基準傾斜角も測定時の姿勢に応じて異なる。
【0044】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部(170)と、呼吸深度抽出部が抽出した呼吸深度の経時的変化を示すグラフの表示データを生成するグラフ生成部(170)と、をさらに備え、グラフの時間軸は非線形であって、所定の時間幅を1区間としたとき、最新の1区間と最古の1区間では時間軸のレンジが異なり、最新の1区間の方が最古の1区間より時間分解能が高くなるようにしてもよい。
例えば、呼吸の訓練時間は1回当たり10分〜数十分と比較的長い時間になることが多い。このため測定開始時から現在に到るまでのグラフ全体を表示しようとすると、グラフを時間軸方向に圧縮しなければならない。この際、グラフ全体を均一に圧縮すると、測定区間全体に亘って一律に時間分解能が下がってしまうため、直近の呼吸の大きさについて詳細を把握しづらくなる。上述した態様によれば、表示するグラフの時間軸を非線形にし、最古の1区間より最新の1区間の時間分解能を高くすることができるので、直近の呼吸の大きさについて詳細を容易に把握することができる。
【0045】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部(120)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部(170)と、記憶部を参照し、呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する訓練メニューに基づいて被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、特定した階級に対応するクリア条件が成立すると、被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部(170)と、をさらに備えてもよい。
この場合、被験者は、自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューに基づいて呼吸の訓練を行うことができる。また、訓練メニューを階級ごとに分けて用意し、1階級ごとにクリアしながら次の階級に進むといったゲーム性を持たすことで、楽しみながら呼吸の訓練を行うことができるので、呼吸の訓練に対する被験者のモチベーションを高めることもできる。
【0046】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、生体電気インピーダンス測定部(170、200)は、被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)と、被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第3生体電気インピーダンス(Zb)とを測定し、解析部(170)は、第1生体電気インピーダンスの測定値または第2生体電気インピーダンスの測定値と、第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めてもよい。
【0047】
このように体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)と、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)と、体幹中部の第3生体電気インピーダンス(Zb)とを測定し、体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)として、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)または体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)を用いてもよい。この場合も、右肺または左肺を対象として被験者の呼吸の種別を判別することができる。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値または第2生体電気インピーダンスの測定値と、第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0048】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(ZaR)、他方の軸を第3生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第1リサージュ図形(図40:右肺用)の表示データを生成するとともに、一方の軸を第2生体電気インピーダンス(ZaL)、他方の軸を第3生体電気インピーダンス(Zb)とし、第2生体電気インピーダンスの測定値および第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第2リサージュ図形(図40:左肺用)の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0049】
この場合、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を表示することが可能になるので、呼吸の種別やその大きさなどを左右の肺ごとに把握することができる。また、2つのリサージュ図形を見比べることで左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することで、左右の肺ごとに呼吸の訓練を行うことが可能になる。健常者の場合、左右の肺で換気能力に差がでることはほとんどないが、例えば、片肺に疾患がある者は、左右の肺で換気能力が大きく異なる。また、過去に肺疾患を経験した者も、左右の肺で換気能力に差がでることがある。例えば、右肺に比べ左肺の換気能力が低い場合など、左肺の換気能力を高めたい場合は、左腕を右肩の後ろに回し、右手で左肘を後ろに押すようにして左肺に負荷を与え、この状態を維持しながら呼吸を行うことで、左肺の換気能力を集中的に鍛えることができる。
【0050】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、第1リサージュ図形と第2リサージュ図形とが重ねて表示されるように、第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を重ねて表示することが可能になるので、左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。
【0051】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、第1リサージュ図形の軌跡と第2リサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、例えば、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を重ねて表示しても、軌跡の表示態様(例えば色や線種など)の違いから右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を容易に見分けることができる。
【0052】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1リサージュ図形の軌跡と第2リサージュ図形の軌跡との差異を検出する軌跡解析部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、差異が強調して表示されるように第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
このようにしても左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。
【0053】
また、上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定装置(300)は、生体電気インピーダンス測定装置(200’)が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを入力する入力部(320)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(360)と、を備えることを特徴とする。
以上の構成を有する呼吸判定装置においても、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別することができる。なお、呼吸判定装置は、例えば、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯型電子機器(例えば携帯電話機など)であってもよい。
【0054】
また、上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定システム(5)は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(200’、360)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(300、360)と、を備えることを特徴とする。
以上の構成を有する呼吸判定システムにおいても、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別することができる。なお、呼吸判定システムは、例えば、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯型電子機器などを用いて構成されていてもよい。
【0055】
なお、本発明は、被験者の呼吸がドローイン呼吸であるか否かを判定するためのものであってもよい。つまり、本発明は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(170、200)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(170)と、を備えることを特徴とする呼吸判定装置(1)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0056】
また、本発明は、生体電気インピーダンス測定装置(200’)が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを入力する入力部(320)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(360)と、を備えることを特徴とする呼吸判定装置(300)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(360)を備えてもよい。
【0057】
また、本発明は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(200’、360)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(300、360)と、を備えることを特徴とする呼吸判定システム(5)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(300、360)を備えてもよい。
【0058】
なお、ドローイン呼吸であるか否かを判別するための判別情報は、腹式呼吸と胸式呼吸を判別するための判別情報と同様にして求めることができる。例えば、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値より所定値以上大きい場合に、被験者の呼吸はドローイン呼吸であると推定することができる。
【0059】
その他、本願の特許請求の範囲に記載した構成は、矛盾しない範囲でドローイン呼吸を判定するための発明に適用可能である。
【0060】
例えば、呼吸判定装置(1)は、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)、および、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)を生成するセンタリング値生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の第1センタリング値に対する相対値である第1相対値(ΔZa)を求める第1相対値算出部(170)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の第2センタリング値に対する相対値である第2相対値(ΔZb)を求める第2相対値算出部(170)と、を備え、解析部は、第1相対値と第2相対値とに基づいて判別情報を求めてもよい。
【0061】
また、呼吸判定装置(1)は、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部(170)をさらに備え、生体電気インピーダンス測定部は、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、第1生体電気インピーダンスおよび第2生体電気インピーダンスを測定し、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する一方、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第2センタリング値を生成してもよい。
【0062】
また、呼吸判定装置(1)は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0063】
また、呼吸判定装置(1)は、呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部(120)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部(170)と、記憶部を参照し、呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する訓練メニューに基づいて被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、特定した階級に対応するクリア条件が成立すると、被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部(170)と、をさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る実施形態の生体測定装置の電気的構成について示すブロック図である。
【図2】生体測定装置の外観例を示す斜視図である。
【図3】生体測定装置の電極配置を示す説明図である。
【図4】電流電極の選択と電圧電極の選択とを説明するための説明図である。
【図5】生体測定装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図6】体幹を構成する組織の概略を示す模式図である。
【図7】体幹の生体電気インピーダンスの等価回路を示す回路図である。
【図8】呼吸と生体電気インピーダンスの変化の関係を説明する説明図である。
【図9】腹式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図10】胸式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図11】腹式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図12】胸式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図13】胸部の周囲径変化と腹部の周囲径変化との比と、第1相対値および第2相対値との関係を示す相関図である。
【図14】呼吸解析処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図15】第1センタリング処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図16】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図17】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】呼吸スピード判別フラッグ設定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図19】第1センタリング値抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図20】第2センタリング値の生成方法を概念的に説明するための模式図である。
【図21】第2相対値算出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図22】腹式呼吸における第1相対値と第2相対値との経時的変化を示す図である。
【図23】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図24】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図25】ΔRib/ΔAb推定演算処理の演算結果を示す図である。
【図26】表示部での表示態様を示す図である。
【図27】呼吸深度抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図28】呼吸レベル表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図29】呼吸深度と1回換気量との間の関係を示す相関図である。
【図30】体幹上部および体幹中部の生体電気インピーダンスの時間変化を示すグラフである。
【図31】呼吸種別判別処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図32】胸式呼吸のときに得られる1呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図33】腹式呼吸のときに得られる1呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図34】胸式呼吸のときに得られる複数回の呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図35】腹式呼吸のときに得られる複数回の呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図36】リサージュ図形表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図37】胸式呼吸から腹式呼吸へのリサージュ図形の変化を説明するための図である。
【図38】X軸とY軸を入れ替えた場合のリサージュ図形を示す図である。
【図39】X軸とY軸を入れ替えた場合のリサージュ図形における胸式呼吸から腹式呼吸への変化を説明するための図である。
【図40】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形(1呼吸分)を重ねて表示した場合を示す図である。
【図41】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調表示した場合を示す図である。
【図42】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の平均値をプロットした場合を示す図である。
【図43】リサージュ図形の表示位置をセンタリングする方法を説明するための模式図(その1)である。
【図44】リサージュ図形の表示位置をセンタリングする方法を説明するための模式図(その2)である。
【図45】ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を示す図である。
【図46】最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで軌跡の色の濃淡を変えた場合のリサージュ図形を示す図である。
【図47】リサージュ図形によるアシスト表示を説明するための図(その1)である。
【図48】リサージュ図形によるアシスト表示を説明するための図(その2)である。
【図49】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その1)である。
【図50】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その2)である。
【図51】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その3)である。
【図52】呼吸レベルの時間変化を示すグラフである。
【図53】アシスト情報の表示態様を説明するための図である。
【図54】アシスト情報の表示態様の一例を示す図である。
【図55】呼吸の大きさを報知する表示態様の一例を示す図である。
【図56】家庭用のゲーム機を用いた生体測定システムの構成を示す図である。
【図57】ゲーム機の構成を示すブロック図である。
【図58】訓練メニュー管理テーブルのデータ構成を示す図である。
【図59】呼吸訓練管理処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
<1.第1実施形態>
<1−1:生体測定装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る生体測定装置1の構成を示すブロック図である。この生体測定装置1は、生体の状態を測定するものであるが、その機能の一部は、呼吸の種別や胸式呼吸の程度及び腹式呼吸の程度を判定する呼吸判定装置としての役割を担う。
生体測定装置1は、体重を測定するとともに装置全体の動作を管理する管理部100と、被験者の各部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200とを備える。管理部100は、体重計110、第1記憶部120、第2記憶部130、音声処理部140、スピーカ145、入力部150、並びに表示部160を備える。これらの構成要素は、バスを介してCPU(Central Processing Unit)170と接続されている。CPU170は、装置全体を制御する制御中枢として機能する。なお、CPU170は図示せぬクロック信号発生回路からクロック信号の供給を受けて動作する。また、各構成要素には図示せぬ電源スイッチがオン状態になると、電源回路から電源が供給される。
【0066】
体重計110は、被験者の体重を測定し、その測定した体重データを、バスを介してCPU170に出力する。第1記憶部120は、不揮発性のメモリであって、例えばROM(Read Only Memory)で構成される。第1記憶部120には、装置全体を制御する制御プログラムが記憶されている。CPU170は、制御プログラムにしたがって所定の演算を実行する。
【0067】
第2記憶部130は、揮発性のメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成される。第2記憶部130はCPU170の作業領域として機能し、CPU170が所定の演算を実行する際にデータを記憶する。また、音声処理部140は、CPU170の制御の下、音声データをDA変換して得た音声信号を増幅してスピーカ145に出力する。スピーカ145は増幅した音声信号を振動に変換して放音する。これによって、呼吸方法の指導などのアドバイス情報を音によって被験者に報知することができる。
【0068】
入力部150は、各種のスイッチから構成され、被験者がスイッチを操作すると、身長、年齢、及び性別といった情報が入力される。表示部160は、体重や呼吸の種別といった測定結果や、腹式呼吸に導くための呼気と吸気のリズムやパターンなどのアドバイス情報を知らせる機能、あるいは被験者に各種の情報の入力を促すメッセージを表示する機能を有する。表示部160は、例えば、液晶表示装置などで構成される。
【0069】
次に、生体電気インピーダンス測定部200は、被験者(人体)の生体電気インピーダンスを測定する。生体電気インピーダンス測定部200は、交流電流出力回路210、基準電流検出回路220、電位差検出回路230、A/D変換器240、電極切換回路251及び252を備える。
交流電流出力回路210は基準電流Irefを生成する手段である。交流電流出力回路210は、基準電流Irefの実効値が予め定められた値となるように、当該基準電流Irefを生成する。基準電流検出回路220は、被測定対象に流れる基準電流Irefの大きさを検出して電流データDiとしてCPU170に出力するとともに、被験者に基準電流Irefを通電する。この場合、電極切換回路252は、電流電極X1〜X4の中から2つを選択して電流を供給する。
さらに、電位差検出回路230は、電圧電極Y1〜Y4の中から選択された2つの電圧電極の間の電位差を検出して電位差信号ΔVを生成する。A/D変換器240は電位差信号ΔVをアナログ信号からデジタル信号に変換し電圧データDvとしてCPU170に出力する。CPU170は電圧データDvと電流データDiとに基づいて生体電気インピーダンスZ(=Dv/Di)を計算する。
【0070】
第1記憶部120は、各種データを予め記憶することができる。たとえば、各部位の生体電気インピーダンスを変数として体脂脂肪率や筋肉量を算出するための相関式又は相関テーブルが記憶されている。
CPU170は、体重、被験者の各種の部位の生体電気インピーダンス(例えば、上肢生体電気インピーダンス、下肢生体電気インピーダンス、体幹生体電気インピーダンス)、を演算し、かつ、各種の入出力、測定、演算等について制御する。なお、生体電気インピーダンスなどに基づいて、内臓脂肪/皮下脂肪、内臓脂肪量、皮下脂肪率、皮下脂肪量、全身の脂肪率、身体の各部位の脂肪率(上肢脂肪率、下肢脂肪率、体幹脂肪率など)を演算することもできる。
【0071】
図2に、生体測定装置1の外観例を示す。生体測定装置1は、L字型の形状をしており、台座部20の上に柱状の筐体部30を備える。台座部20には、左足用の電流電極X1及び電圧電極Y1と、右足用の電流電極X2及び電圧電極Y2が設けられている。また、筐体部30の上部には、表示部160が設けられている。この表示部160は、タッチパネルで構成されており、入力部150としても機能する。さらに、筐体部30の左右の側面には、左手用の電極部30Lと右手用の電極部30Rが設けられている。
【0072】
図3は筐体部30の上部を拡大した拡大図である。この図に示すように、左手用の電極部30Lは電流電極X3及び電圧電極Y3を備え、右手用の電極部30Rは電流電極X4及び電圧電極Y4を備える。被験者は、台座30の上に立ち、左右の手を下げた状態で電極部30L及び電極部30Rを握ることによって、測定を行う。
【0073】
電極切換回路251及び252は、CPU170の制御の下、両手及び両足に装着される8個の電極を選択する。この8個の電極を適宜選択することによって、人体の所定の部位における生体電気インピーダンスZを計測することが可能となる。例えば、図4(A)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。なお、基準電流Irefを電流電極X2及びX4の間に流し、電圧電極Y2及びY4の間の電位差を計測しても全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。さらに、図4(K)に示すように両掌を短絡させ、両足を短絡させ、両掌から両足までの生体電気インピーダンスを全身の生体電気インピーダンスとして測定してもよい。
【0074】
また、図4(B)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と右手用の電流電極X4との間に供給し、右足用の電圧電極Y2と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、右下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。また、図4(C)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、左下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0075】
また、図4(D)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を計測すれば、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を計測することでも、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0076】
また、図4(E)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間の電位差を計測することでも、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0077】
また、図4(F)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、両掌間の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ここで、体幹を体幹上部と体幹中部に分けた場合、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスは、いずれも体幹上部が含まれる。このため、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスを体幹上部の生体電気インピーダンスとして取り扱うことも可能である。
【0078】
さらに、図4(G)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(H)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(I)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左足用の電流電極X1との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。図4(J)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。
【0079】
なお、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定方法は、上述した方法に限定されるものではなく、両手両足の電極のうち、基準電流Irefを供給する電極と電位差を検出する電極とを適宜選択することによって、手、足、あるいは全身といった人体の各部位の生体電気インピーダンスZを各々測定し、測定結果を加減算して体幹中部の生体電気インピーダンスZを算出すればよい。さらに、四肢以外に頭部の耳たぶなどを四肢のいずれかの代用として使用しても、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定は可能である。くわえて、体幹に接触電極を設ける場合には言うに及ばない。
【0080】
<1−2:生体測定装置の動作>
図5は、生体測定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、入力部150における電源スイッチ(図示省略)がオンされると、図示せぬ電力供給部から電気系統各部に電力を供給し、表示部160により身長を含む身体特定情報(身長、性別、年齢など)を入力するための画面を表示する(ステップS1)。
続いて、入力部150から身長、性別、年齢等が入力されると、体重計110により体重が測定され、CPU170は体重を取得する(ステップS2)。
【0081】
ステップS2の後、CPU170は、呼吸解析処理を実行する(ステップS3)。この処理では、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める。この詳細な内容については後述する。ステップS3の後、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示する呼吸レベル表示処理を実行する(ステップS4)。この詳細な内容についても後述する。
【0082】
<1−3:呼吸解析の原理>
次に、呼吸解析の原理について説明する。図6は、体幹部の組織の概略を示す模式図である。図6に示すように、体幹部の組織は、横隔膜によって上下に分けられている。上部には、肺と、内外肋間筋などの胸部骨格筋とが形成されている。一方、下部には、内臓組織と、内外腹斜筋・腹横筋や腹直筋などからなる腹部骨格筋とが形成されている。
腹式呼吸及び胸式呼吸のいずれにしても、呼気時に横隔膜は上昇して肺が圧縮され、吸気時に横隔膜は下降して肺は伸長拡大する。胸式呼吸に無い腹式呼吸の特徴は、腹直筋や内外腹斜筋・腹横筋などの腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織と供に横隔膜を上下させる点にある。
【0083】
ここで、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとは、図7に示す等価回路で表すことができる。図7に示すように、第1生体電気インピーダンスZaは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1、および、肺の生体電気インピーダンスZ2の並列インピーダンスと、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3とが直列に接続されたものとなる。ここで、Z1およびZ2の並列インピーダンスは、肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。
【0084】
また、図7に示すように、第2生体電気インピーダンスZbは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ4、および、肺の生体電気インピーダンスZ5の並列インピーダンスと、腹部骨格筋の生体電気インピーダンスZ6、および、内臓組織の生体電気インピーダンスZ7の並列インピーダンスとが直列に接続されたものとなる。ここで、Z4およびZ5の並列インピーダンスは、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスに相当する。また、横隔膜の生体電気インピーダンスは、内臓組織に代表される生体電気インピーダンスZ7に含ませて考えることができる。
【0085】
次に、図8を参照して、呼吸と生体電気インピーダンスの変化との関係を説明する。呼吸に連動した第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に絶縁性の高い空気が出入りすることによる電気的特質(電気導電性、1/体積抵抗率)の変化が主な原因であると考えられる。つまり、呼気(呼息)では肺組織中に含まれる空気量が減るため肺の生体電気インピーダンスZ2は減少方向に変化する(ΔZlu<0)。一方、吸気(吸息)では空気量が増加するため、肺の生体電気インピーダンスZ2は増加方向に変化する(ΔZlu>0)。
【0086】
胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸骨格筋の伸縮変化と肺の伸縮変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスZ2が増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も増加し、肺の生体電気インピーダンスZ2が減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1はほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスZ2が呼吸に伴って大きく変化する。なお、第1生体電気インピーダンスZaには、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3が含まれているが、上肢骨格筋は、呼吸に直接的に寄与する筋肉ではない。本実施形態では、被験者は、図2に示す測定装置の台座部20の上に立ち、左右の腕を下げた状態で30L及び30Rを握り計測を行うので、計測中に上肢骨格筋(Z3)が動くことは殆ど無い。図9および図10に示すように、被験者の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、吸気では第1生体電気インピーダンスZaは増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化するという具合である。
【0087】
一方、呼吸に連動した第2生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動している。上述したように腹式呼吸及び胸式呼吸のいずれの場合も、横隔膜は呼気時上昇し、吸気時下降する。そして、腹式呼吸の特徴は、腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織とともに横隔膜を上下させる点にある。より具体的には、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋を緊張させて内臓組織と伴に横隔膜を押し上げ上昇させることで、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する(ΔZst>0)。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する(ΔZlu<0)。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。このように、胸式呼吸と腹式呼吸とでは、横隔膜から下部にある腹部骨格筋と内臓組織の動きが異なる。
【0088】
図9に示すように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用するので、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。また、図10に示すように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、上述した第1生体電気インピーダンスZaの変化と同様に、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では第2生体電気インピーダンスZbは減少方向に変化するという具合である。
【0089】
次に、図11および図12を参照して、被験者の呼吸と、被験者の胸部の周囲径Ribおよび腹部の周囲径Abとの関係について説明する。まず、被験者の呼吸が腹式呼吸である場合を想定する。図11は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の腹式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。図11からも理解されるように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合は、その呼吸に応じて腹部の周囲径Abが変化する一方、胸部の周囲径Ribは殆ど変化しない。したがって、腹式呼吸の場合は、被験者の胸部の周囲径Ribの変化(Ribの測定値の基準レベルを示すRib基準値に対するRib(測定値)の相対値)ΔRibと、被験者の腹部の周囲径Abの変化(Abの測定値の基準レベルを示すAb基準値に対するAb(測定値)の相対値)ΔAbとの比を示すΔRib/ΔAbは、「1」を下回るという具合である。なお、レスピトレースの情報は、測定値の基準値に対する相対値のピーク値またはボトム値の絶対値(0-P)、および、ピーク値とボトム値との絶対値の和(P-P)のうちの何れかで検出される。ここでは、被験者の1呼吸ごとに、呼吸の種別の判定が行われるので、レスピトレースの情報は、P-Pの形で検出される。
【0090】
次に、被験者の呼吸が胸式呼吸である場合を想定する。図12は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の胸式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、その呼吸に応じた胸部の周囲径Ribの変化は、腹部の周囲径Abの変化よりも大きいので、上述のΔRib/ΔAbは、「1」を上回るという具合である。ここでは、ΔRib/ΔAbは、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報であると捉えることができる。
【0091】
本実施形態では、被験者の胸部の周囲径の変化ΔRibと腹部の周囲径の変化ΔAbとの比(=ΔRib/ΔAb)と、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZa、および、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する第2相対値ΔZbとの間には相関関係があることを見出し、その相関関係を表す式を用いて、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。そして、その求めたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸の種別(胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか)を推定できるという具合である。この詳細な内容は後述するが、「第1センタリング値Za0」とは、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものであり、「第2センタリング値Zb0」とは、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
【0092】
図13は、複数の被験者の測定データから得られた、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの関係を示す相関図である。図13からも理解されるように、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの間には相関係数R=0.651、P<0.01という高い相関が得られ、以下の回帰式(1)が成立する。
ΔRib/ΔAb=a0×ΔZb/ΔZa+b0 ・・・(1)
a0:回帰係数,b0:定数。
【0093】
また、上記回帰式(1)は以下のように変形できる。
ΔRib/ΔAb=(a0×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b1 ・・・(2)
b1:定数(=b0+1)。
【0094】
ここで、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺の上葉部の生体電気インピーダンス(Z1およびZ2の並列インピーダンス)の変化であると捉えることができる。一方、第2生体電気インピーダンスZbの変化は、肺の中下葉部の生体電気インピーダンス(Z4およびZ5の並列インピーダンス)の変化と、腹部の生体電気インピーダンス(Z6およびZ7の並列インピーダンス)の変化との和であると捉えることができる。肺の上葉部の生体電気インピーダンスの変化、および、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスの変化は、同じ部位(胸部)の生体電気インピーダンスの変化であるとみなせば、第2生体電気インピーダンスZbの変化と第1生体電気インピーダンスZaの変化との差分は、腹部の生体電気インピーダンスの変化に相当する。そうすると、上記式(2)は、腹部の生体電気インピーダンスの変化と胸部の生体電気インピーダンスの変化との比と、ΔRib/ΔAbとの関係を表す式であると捉えることもできる。上記式(2)のa0は、肺の上葉部と中下葉部との測定感度の相違を補正するための補正係数であるとみなすことができる。
【0095】
<1−4:呼吸解析処理>
次に、CPU170が実行する呼吸解析処理について説明する。図14は、呼吸解析処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、通常の1呼吸(=1回の吸気+1回の呼気)につき、10回の呼吸解析処理を実行するように設定される。ここでは、通常の1呼吸に要する時間を4秒とみなし、CPU170は、0.4秒ごとに、呼吸解析処理を実行するという具合である。以下では、呼吸解析処理を実行するタイミング(0.4秒ごとのタイミング)をサンプリングタイミングと呼ぶ。なお、これは一例であり、呼吸解析処理を実行するタイミングは任意に設定可能である。
【0096】
図14に示すように、まず、CPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS10)、ステップS10の結果が肯定である場合はステップS20に進む。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップS20以下の各ステップの具体的な内容を説明する。ステップS20以下の各ステップの具体的な説明に先立ち、まずは、各ステップの内容の概略を簡単に説明する。ステップS10の後のステップS20において、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ステップS20の後のステップS30において、CPU170は、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ステップS30の後のステップS40において、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZaおよびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZbの各々について、スムージング処理を実行する。ステップS40の後のステップS50において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する。ステップS50の後のステップS60において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZaを算出する。ステップS60の後のステップS70において、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する。ステップS70の後のステップS80において、CPU170は、上記回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求めるという具合である。以下、各ステップの具体的な内容を順番に説明していく。
【0097】
ステップS20において、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。例えば、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢(体幹上部)の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値をZa(n)’と表記する。
【0098】
ステップS20の後、CPU170は、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップS30)。例えば、CPU170は、左足用の電流電極X1と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値をZb(n)’と表記する。
【0099】
ステップS30の後、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZa(n)’およびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZb(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS40)。まず、第1生体電気インピーダンスZa(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値を、Za(n)と表記する。
【0100】
次に、第2生体電気インピーダンスZb(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値を、Zb(n)と表記する。
【0101】
ステップS40の後、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する第1センタリング処理を実行する(ステップS50)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値をZa0(n)と表記する。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する。センタリング期間の時間長は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸の速度に応じて可変に設定される。以下、その具体的な内容について詳細に説明する。
【0102】
図15は、第1センタリング処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図15に示すように、まず、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA10を抽出するMA10抽出処理を実行する(ステップS51)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−9)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA10(n)として抽出する([Za(n−9)+Za(n−8)+・・・+Za(n)]/10→MA10(n))。
【0103】
ステップS51の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA20を抽出するMA20抽出処理を実行する(ステップS52)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−19)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA20(n)として抽出する([Za(n−19)+Za(n−18)+・・・+Za(n)]/20→MA20(n))。
【0104】
ステップS52の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値をMAX10として抽出するMAX10抽出処理を実行する(ステップS53)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMAX10(n)として抽出するという具合である。
【0105】
ステップS53の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値をMIN10として抽出するMIN10抽出処理を実行する(ステップS54)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMIN10(n)として抽出するという具合である。
【0106】
ステップS54の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々におけるMAX10とMIN10との平均値(第n番目のサンプリングタイミングにおける平均値をAV10(n)と表記)について移動平均処理を行い、その処理結果を、中央値として算出する中央値算出処理を実行する(ステップS55)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における平均値(AV10(n−19)〜AV10(n))について移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける中央値CNT20(n)として抽出する([AV10(n−19)+AV10(n−18)+・・・+AV10(n)]/20→CNT20(n))。ここでは、説明を省略するが、中央値CNT20(n)は、体動などに起因するアーチファクト(データ波形の歪み)等による処理に適さない異常波形の抽出に用いられる。
【0107】
ステップS55の後、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸のタイミングを抽出する呼吸タイミング抽出処理を実行する(ステップS56)。以下では、図16および図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を説明する。図16および図17は、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図16に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZa(n)を抽出する微分係数抽出処理を実行する(ステップS201)。より具体的には、CPU170は、以下の式(3)にしたがって演算処理を実行することで、微分係数dZa(n)を抽出する。
[Za(n)−Za(n−2)]/1.2=dZa(n) ・・・(3)
【0108】
次に、CPU170は、ステップS201で抽出した微分係数dZa(n)の絶対値が0.1より小さいか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の結果が肯定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の極性判別フラッグF0(n)を「0」に設定してステップS204に進む。極性判別フラッグF0(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの値は極大値(ピーク値)または極小値(ボトム値)であることを意味する。
【0109】
一方、ステップS202の結果が否定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の結果が肯定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「+1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は正側であることを意味する。ステップS203の結果が否定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「-1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は負側であることを意味する。
【0110】
ステップS204において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)の絶対値と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n−1)の絶対値とが等しく、かつ、F0(n−1)の値とF0(n)の値とが等しくないか否かを判定する。ステップS204の結果が肯定である場合、CPU170は、F0(n)を「0」に設定して、次のステップS206(図17参照)へ進む。ステップS204の結果が否定である場合、CPU170は、ステップS204の直前で設定したF0(n)の値を維持したまま、次のステップS206へ進む。
【0111】
図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容の説明を続ける。CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS206)。ステップS206の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電位インピーダンスの測定値Za(n)は、ピーク値またはボトム値ではないことを意味する。
一方、ステップS206の結果が肯定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する。
【0112】
ステップS207の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はピーク値(最大値)であることを意味する。
【0113】
ステップS207の結果が否定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する(ステップS208)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する。
【0114】
ステップS208の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「-1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はボトム値(最小値)であることを意味する。一方、ステップS208の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進むという具合である。
【0115】
ステップS209において、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する。ステップS209の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)に1を加算する一方(ステップS210)、ステップS209の結果が肯定である場合、CPU170は、サンプリングカウンタ値Nを初期化する(ステップS211)。ここで、図9および図10からも理解されるように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状であるところ、サンプリングカウンタ値Nは、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達するたびに初期化(サンプリングカウンタ値=0)され、次のピーク値に到達するまでのサンプリングタイミングの回数が順次にカウントされていくという具合である。以上で、図15のステップS56における呼吸タイミング抽出処理が終了する。
【0116】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸タイミング抽出処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸が速めの呼吸なのか遅めの呼吸なのかを判別する呼吸スピード判別フラッグを設定する(ステップS57)。以下、図18を参照しながら、ステップS57でCPU170が実行する呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を説明する。図18は、呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図18に示すように、まずCPU170は、極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。
【0117】
ステップS301の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「10」よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。ここで、被験者の呼吸のスピードが遅ければ、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達してから、次のピーク値に到達するまでの時間長は長くなり、次のピーク値に到達する直前のサンプリングカウンタ値Nも大きくなる。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおいて第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達したと判断した場合は、その直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいか否かを判定し、当該サンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいと判定した場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する。具体的には、ステップS303の結果が肯定である場合、CPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「20」であるとは、被験者の呼吸が遅めの呼吸であることを意味する。また、ステップS303の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断して呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるとは、被験者の呼吸が速めの呼吸であることを意味する。
【0118】
一方、ステップS302の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。ステップS304の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きいか否かを判定する(ステップS305)。本実施形態では、CPU170は、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きい場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する一方、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも小さい場合は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断する。具体的には、CPU170は、ステップS305の結果が肯定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する一方、ステップS305の結果が否定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了するという具合である。以上で、図15のステップS57における呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了する。
【0119】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了すると、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を抽出する(ステップS58)。以下、図19を参照しながら、ステップS58でCPU170が実行する第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を説明する。図19は、第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図19に示すように、まずCPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるか否かを判定する(ステップS401)。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸であるか否かを判定するという具合である。
【0120】
本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)が生成される。上記ステップS401の結果が肯定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、その速めの1呼吸に要する時間長(ここでは約4.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、第n−9番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−9番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が肯定である場合、CPU170は、図15のステップS51で求めたMA10(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS402)。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−1)と、MA10(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA10(n)]/3→Za0(n))。
【0121】
一方、上記ステップS401の結果が否定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、その遅めの1呼吸に要する時間長(ここでは約8.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、第n−19番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−19番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が否定である場合、CPU170は、図15のステップS52で求めたMA20(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS403)。さらに詳述すると、CPU170は、Za0(n−2)と、Za0(n−1)と、MA20(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA20(n)]/3→Za0(n))。以上で、図14のステップS50における第1センタリング処理が終了する。
【0122】
前述したように、被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状となる。CPU170は、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0が得られるように、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて第1センタリング値Za0を生成する。より具体的には、CPU170は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0を求めるので、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0を精度良く生成できる。そして、各サンプリングタイミングに対応するセンタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるという具合である。
【0123】
図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS50の第1センタリング処理が終了すると、CPU170は、第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)の第1センタリング値Za0(n)に対する相対値である第1相対値ΔZa(n)を算出する第1相対値算出処理を実行する(ステップS60)。より具体的には、CPU170は、ステップS40で求めた第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)と、ステップS50で求めた第1センタリング値Za0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)として採用するという具合である。
【0124】
ステップS60の後、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する(ステップS70)。
【0125】
ここで、前述したように、腹式呼吸の呼気における第2生体電気インピーダンスZbの変化は、第1生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる態様を示すので、第1センタリング値Za0を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスZbの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル(第2センタリング値Zb0)を精度良く求めることはできない。
【0126】
そこで、本実施形態では、図20に示すように、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と、第1センタリング値Za0とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出し、当該ゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて第2センタリング値Zb0を生成している。これにより、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを精度良く抽出できる。図20は、第2センタリング値Zb0の生成方法を概念的に説明するための図である。以下では、図21を参照しながら、ステップS70でCPU170が実行する第2相対値算出処理の具体的な内容を説明する。
【0127】
図21は、第2相対値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図21に示すように、CPU170は、5個のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値を抽出する(ステップS71)。より具体的には、CPU170は、第n−4番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaの絶対値|ΔZa|(|ΔZa(n−4)|〜|ΔZa(n)|)のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n)として抽出するという具合である。
【0128】
ステップS71の後、CPU170は、直前のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値と、ステップS71で抽出したクロスポイント判定値とが等しく、且つ、直前のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS72)。より具体的には、CPU170は、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n−1)とΔMIN5(n)とが等しく、且つ、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されているか否かを判定する。クロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されている場合は、第n−1番目のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるとみなされる。なお、クロスポイント判定フラッグF2の初期値(デフォルト値)、つまりは第1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(1)の値は「0」に設定されている。
【0129】
ステップS72の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS72の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の絶対値が0.3以下であるか否かを判定する(ステップS73)。ステップS73の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS73の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングであると判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「+1」に設定してステップS74へ進む。
【0130】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS74)。ステップS74の結果が肯定の場合、CPU170は、第2センタリング値Zb0を抽出する(ステップS75)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n)として抽出する([Zb0(n−2)+Zb0(n−1)+Zb(n)]/3→Zb0(n))。一方、ステップS74の結果が否定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n)として採用する(Zb0(n−1)→Zb0(n))。
【0131】
そして、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)を算出する(ステップS76)。より具体的には、CPU170は、第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)と、第2センタリング値Zb0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)として採用するという具合である。以上で、図14のステップS70における第2相対値算出処理が終了する。
【0132】
例えば被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbが図9のように変化する場合、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、図22のようになる。第1相対値ΔZaの経時的変化を示す波形は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値Za0をゼロ基準とするものであり、第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルである第2センタリング値Zb0をゼロ基準とするものである。両波形を重ねることで、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形と、呼気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形とを判別することができる。本実施形態では、CPU170は、第1相対値ΔZaの値に基づいて、被験者の呼吸が吸気であるか呼気であるかを判定する。より具体的には、CPU170は、第1相対値ΔZaが正の値である場合は吸気であると判定し、負の値である場合は呼気であると判定するという具合である。また、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形の振幅および積分値の違いに基づいて、前述の回帰式(2)の係数を補正してもよい。これにより、測定精度の向上が図られる。
【0133】
再び図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS70の第2相対値算出処理が終了すると、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAbを推定するΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップS80)。以下、図23および図24を参照しながら、ステップS80でCPU170が実行するΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を説明する。図23および図24は、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図23に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の値が「0」以上であるか否かを判定する(ステップS81)。
【0134】
ステップS81の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の推定演算を行う(ステップS82)。より具体的には、CPU170は、上述の回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を求める。一方、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を初期値に設定する。本実施形態では、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定する。
【0135】
次に、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の値が、−2.5以上であり、且つ4.5以下であるか否かを判定する(ステップS83)。ステップS83の結果が否定の場合、CPU170は、ΔRib/ΔAbの値を、初期値である「1.0」に設定してステップS84へ進む。ステップS83の結果が肯定の場合、CPU170は、そのままステップS84へ進む。
【0136】
ステップS84において、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の絶対値と、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)の絶対値との差分(|ΔRib/ΔAb(n)|−|ΔRib/ΔAb(n−1)|)が0.3よりも大きいか否かを判定する。ステップS84の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)と、ΔRib/ΔAbとの平均を求め、その求めた平均値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)として採用([ΔRib/ΔAb(n−1)+ΔRib/ΔAb(n)]/2→ΔRib/ΔAb(n))して次のステップS85(図24参照)へ進む。一方、ステップS84の結果が肯定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定して次のステップS85へ進む。
【0137】
図24を参照しながら、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容の説明を続ける。図24に示すように、ステップS85において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを判定する。ステップS85の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、直前の積分回数のカウント値Niに1を加算する。より具体的には、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n−1)に1を加算した値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)として採用する。
【0138】
一方、ステップS85の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、積分回数のカウント値Niの値を「0」に初期化する。すなわち、この場合、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)は「0」に設定されるという具合である。
【0139】
続いて、図24に示すように、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを再び判定する(ステップS86)。ステップS86の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n−1))と、ΔRib/ΔAb(n)との和を求めることで、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n))を求めて次のステップS87へ進む。一方、ステップS86の結果が否定の場合、つまりは、被験者の呼吸状態が吸気であると判断した場合は、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して次のステップS87へ進む。
【0140】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)がゼロであるか否かを判定する(ステップS87)。ステップS87の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値[ΣΔRib/ΔAb(n)]を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)で割ることで、ΔRib/ΔAbの平均値を求める。一方、ステップS87の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb(n−1)]/Ni(n−1))を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値として採用する。以上で、ΔRib/ΔAb推定演算処理が終了し、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸解析処理が終了する。
【0141】
被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbが図22のように変化する場合、上述のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)は、図25のように変化する。図25において、呼気におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)が1.0以下である場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であると推定される一方、1.0を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定されるという具合である。
【0142】
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170が呼吸解析処理を実行することで、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbが求められるので、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)をリアルタイムで正確に判別できるという利点がある。
【0143】
<1−5:呼吸レベル表示処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示(報知)する呼吸レベル表示処理を実行する。より具体的には、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸の深さを示す呼吸深度と、当該1呼吸における呼吸解析処理の結果とから、当該1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御する。図26に示すように、本実施形態では、1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度のほか、当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを表示部160に表示するように制御する。図26に示す第1バーグラフBG1は、胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示するためのものである。一方、図26に示す第2バーグラフBG2は、被験者の腹式レベルを表示するためのものである。これらの詳細な内容については後述する。
【0144】
呼吸レベル表示処理の具体的な説明に先立って、図27を参照しながら、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理について説明する。図27は、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。後述するように、この呼吸深度抽出処理で抽出された被験者の呼吸深度(呼吸の深さ)は、呼吸レベル表示処理に用いられる。
【0145】
図27に示すように、まずCPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS501)、ステップS501の結果が肯定である場合は次のステップS502へ進む。ステップS502において、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する。具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaの値が正の値である場合には吸気であると判定する一方、負の値である場合には呼気であると判定するという具合である。CPU170は、吸気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する一方、呼気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。なお、初期状態においては、吸気判別フラッグF3は「1」に設定される(つまりはF3のデフォルト値は1に設定される)。
【0146】
ステップS502の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップS503)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最大の値をピーク値ΔZa(MAX)として保持する。一方、ステップS502の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップS504)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値をボトム値ΔZa(MIN)として保持する。
【0147】
次に、CPU170は、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS505)。より具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2が「+1」であるか否かを判定することで、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定するという具合である。ステップS505の結果が否定の場合、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理は終了する。一方、ステップS505の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZaが正極性(>0)であるか否かを判定する(ステップS506)。言い換えれば、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
【0148】
ステップS506の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZa(MAX)とボトム値ΔZa(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pとして抽出する(ステップS507)。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップS508)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップS509)。より具体的には、CPU170は、ステップS503で保持していたピーク値ΔZa(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
【0149】
一方、ステップS506の結果が否定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップS510)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップS511)。より具体的には、CPU170は、ステップS504で保持していたボトム値ΔZa(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
【0150】
次に、図28を参照しながら、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理の具体的な内容を説明する。図28は、呼吸レベル表示処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図28に示すように、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度を正規化する(ステップS601)。ここで、「呼吸深度を正規化する」とは、前述の呼吸深度抽出処理で抽出された直前の1呼吸における呼吸深度の値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。具体的には、ステップS601において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第2センタリング値Zb0(詳述すれば、当該1呼吸における複数のサンプリングタイミングの各々における第2センタリング値Zb0の平均値)で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用する。
【0151】
次に、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaの値に応じて、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(以下、「第1表示段階数」と呼ぶ)を決定する(ステップS602)。より具体的には、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求め、その求めた%ΔTVの値に応じて、第1表示段階数を決定する。ここで、「1回換気量」とは、被験者の1呼吸で肺に出入りする空気量を示すものであり、ΔTVと表記する。また、「1回換気量を正規化する」とは、スパイロなどで計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。本実施形態では、1回換気量ΔTVの正規化を行う際には、スパイロなどで計測された被験者の肺活量の値(実測値)VCを、標準肺活量を示す標準VCで割り算した形で表される係数%VC(=実測VC/標準VC)が用いられる。具体的には、計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を上述の係数%VCで割ることで、1回換気量の正規化値%ΔTV(=ΔTV/%VC)が求められる。なお、例えば男性の標準肺活量VCmale(ml)は、(27.63−0.112×年齢)×身長(cm)で表され、女性の標準肺活量VCfemale(ml)は、(21.78−0.101×年齢)×身長(cm)で表される。
【0152】
図29は、男女合わせて20人で、各々の1回換気量ΔTVを3回ずつ(小程度の換気、中程度の換気、大程度の換気を各1回)測定したときの、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとの関係を示す相関図である。図29に示すように、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとは相関係数r=0.75という高い相関が得られ、以下の回帰式(4)が成立する。
%ΔZa=c0×%ΔTV ・・・(4)
c0:回帰係数。
【0153】
CPU170は、上述の回帰式(4)にしたがって演算処理を実行することで、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求める。そして、CPU170は、その求めた1回換気量の正規化値%ΔTVに応じて、第1表示段階数を決定する。本実施形態では、第1表示段階数の最大値は、胸式5段階と腹式5段階とを合わせた「10」に設定されている(図26参照)。
【0154】
図29に示すように、本実施形態では、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第1所定値α1以上である場合は、被験者の呼吸レベルは「最大」とみなされる。この場合、CPU170は、第1表示段階数を最大値である「10」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第2所定値α2(<α1)以上であって、かつ第1所定値α1を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、「大程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「8」に決定する。さらに、1回換気量の正規化値%ΔTVが第3所定値α3(<α2)以上であって、かつ第2所定値α2を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「中程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「6」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4(<α3)以上であって、かつ第3所定値α3を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「小程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「4」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、安静時における必須レベル程度とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「2」に決定するという具合である。
【0155】
再び図28に戻って説明を続ける。図28に示すように、ステップS602の段階数決定処理が終了すると、CPU170は、直前の1呼吸における腹式レベルを決定する(ステップS603)。具体的には、CPU170は、直前の1呼吸におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)に応じて、腹式レベルの数値を決定する。腹式レベルの数値は0〜100までの値で表され、その値が0に近いほど腹式呼吸の程度は小さく(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は小さく)、100に近いほど腹式呼吸の程度は大きい(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は大きい)。
【0156】
図28に示すように、ステップS603の後、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数を、腹式と胸式とに分割する段階数分割処理を実行する(ステップS604)。より具体的には、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数と、ステップS603で決定した腹式レベルとに基づいて、段階数分割処理を実行する。ここでは、全体の呼吸レベルを示す第1表示段階数が「6」である一方、腹式レベルは「70」である場合を想定して説明を続ける。腹式レベルが「70」であるとは、腹式呼吸と胸式呼吸との割合は、7:3であるとみなされるので、第1表示段階数「6」は、胸式で2段階、腹式で4段階に分割される。つまり、図26のように、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフのBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」になるように設定される。
【0157】
図28に示すように、ステップS604の後、CPU170は、被験者の呼吸速度に応じたマージンレベルを決定する(ステップS605)。いま、直前の1呼吸が安静呼吸であって、当該1呼吸に要する時間長が4秒以上であった場合を想定する。本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数が予め定められており、安静呼吸時の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「2」に設定されている。CPU170は、その段階数「2」を、胸式と腹式に1段階ずつ割り振る。上述のステップS604で説明したように、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」となるように設定されているので、胸式呼吸については1段階分の余裕があり、腹式呼吸については3段階分の余裕があるという具合である。
【0158】
この場合は、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数が「1」以上であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「2」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを上回る「小程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「3」であれば、さらに上の「中程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「4」であれば、さらに上の「大程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「5」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは「最大」レベルを満たしていることを意味するという具合である。前述したように、ここでは、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「4」に設定されているので、被験者の腹式呼吸の大きさは「大程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)に対して十分な余裕があることが分かる。胸式呼吸についても同様であり、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「2」に設定されているので、被験者の胸式呼吸の大きさは「小程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)を上回っていることが分かる。
【0159】
なお、被験者の呼吸速度が大きいほど、当該呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は増加するので、結果として、胸式呼吸および腹式呼吸の必須レベルに対応する段階数も増加する。例えば1呼吸に要する時間長が3秒以上であって、かつ4秒未満である場合は、必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「4」に設定され、その段階数「4」は、胸式と腹式に2段階ずつ割り振られる。これに応じて、胸式呼吸および腹式呼吸の各々のマージンレベルが変化するという具合である。
【0160】
ステップS605の後、CPU170は、被験者の胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを第1バーグラフBG1で表示する一方、被験者の腹式レベルを第2バーグラフBG2で表示する(ステップS606)。図26に示すように、CPU170は、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(胸式2段階、腹式4段階)のうち腹式呼吸および胸式呼吸の各々の必須レベルに対応する段階数と、マージン分に対応する段階数とを異なる色で表示するので、被験者は、自分の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを容易に把握することができる。
【0161】
また、図26に示すように、第2バーグラフBG2で表示される腹式レベルの段階数は「5」に設定され、上述のステップS603で求められた腹式レベルの数値に応じて、5つの段階のうちの何れかが選択的に着色表示される。具体的には、CPU170は、腹式レベルの数値が0〜20の場合は1段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が21〜40の場合は2段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が41〜60の場合は3段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が61〜80の場合は4段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が81〜100の場合は5段階目のみを着色表示するように制御する。前述したように、ここでは、腹式レベルは「70」である場合を想定しているので、図26に示すように、CPU170は、第2バーグラフBG2の4段階目のみを着色表示するように制御するという具合である。
【0162】
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、本実施形態によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
【0163】
<2.第2実施形態>
胸式呼吸と腹式呼吸の他に、腹を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行うドローイン呼吸がある。ドローイン呼吸は、普段の生活ではあまり使われることがない体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を効果的に鍛えることができる。インナーマッスルの強化は、呼吸機能を高めるだけでなく、背骨を支える筋肉が強化されて体幹部の筋肉が力を発揮し易くなることから、運動機能などの強化にもつながる。例えば、ドローイン呼吸は、運動機能の向上を目的としてアスリートのトレーニングに取り入れられている。また、理学療法やリハビリテーションの現場では、腰痛の改善や腰痛の予防対策としてドローイン呼吸が利用されている。また、ドローイン呼吸はダイエットにも効果がある。
【0164】
第1実施形態で説明した生体測定装置1を応用すれば、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかに加え、ドローイン呼吸なのかを判別することが可能になる。以下、ドローイン呼吸を判別する場合について説明する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0165】
図30は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの時間変化を示すグラフである。同図に示すようにドローイン呼吸の場合、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。
【0166】
このようにドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが異なるので、これを利用してドローイン呼吸を判別することが可能である。すなわち、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)を行った後、ΔRib/ΔAbの平均値が1.0を上回るため胸式呼吸であると判別した場合において、第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル(第2センタリング値Zb0)が、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルよりも所定値以上高い場合に、これをドローイン呼吸と判別すればよい。
【0167】
但し、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルは、被験者ごとに異なる。したがって、上述した方法でドローイン呼吸を判別するためには、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを事前に測定して第2記憶部130に記憶しておく必要がある。また、上述した所定値についても第1記憶部120に予め記憶しておく必要がある。
【0168】
このため本実施形態に係る生体測定装置1(CPU170)は、例えば、被験者に対して胸式呼吸を行うよう指示するメッセージを報知し、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した多数の第2センタリング値Zb0の平均値を算出し、これを胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとして第2記憶部130に記憶する。以降、このようにして第2記憶部130に記憶された、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルをZb1と表記する。一方、第1記憶部120に記憶しておく所定値は、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。以降、第1記憶部120に記憶されている所定値をΔZb1と表記する。
【0169】
図31は、呼吸種別判別処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す処理は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理を行った後に実行される。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、図14に示した呼吸解析処理を行い、サンプリングタイミングごとに、第1生体電気インピーダンスZaの測定(ステップS20)と、第2生体電気インピーダンスZbの測定(ステップS30)と、スムージング処理(ステップS40)と、第1センタリング処理(ステップS50)と、第1相対値算出処理(ステップS60)と、第2相対値算出処理(ステップS70)と、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)を実行する。
【0170】
この後、CPU170は、呼吸種別判別処理を開始し、まず、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)によって求められたΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)が1.0以下であるか否かを判定する(ステップS701)。ステップS701の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸であると判別する(ステップS702)。
【0171】
一方、ステップS701の結果が否定である場合、CPU170は、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1を第2記憶部130から読み出すとともに、所定値ΔZb1を第1記憶部120から読み出す(ステップS703)。なお、第1記憶部120に記憶されている所定値ΔZb1を標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図5のステップS1)や、事前に測定した体重(図5のステップS2)を用いた演算によって補正してもよい。
【0172】
この後、CPU170は、第2相対値算出処理(ステップS70)において第2相対値ΔZbを算出する過程で生成された第2センタリング値Zb0が、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1と所定値ΔZb1との加算値以上であるか否かを判定する(ステップS704)。なお、ステップS704で使用する第2センタリング値Zb0は、例えば、直前の1呼吸における第2センタリング値Zb0の平均値や、直前の複数サンプリング期間における第2センタリング値Zb0の平均値などであってもよい。ステップS704の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸がドローイン呼吸であると判別する(ステップS705)。また、ステップS704の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が胸式呼吸であると判別する(ステップS706)。
【0173】
以上説明したように本実施形態によれば、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかドローイン呼吸なのかをリアルタイムで正確に判別することができる。なお、生体測定装置1は、胸式呼吸や腹式呼吸に加えてドローイン呼吸を判別するのではなく、ドローイン呼吸であるか否かのみを判別してもよい。
【0174】
また、第2記憶部130に記憶しておくZb1(胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル)は、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した複数の第2センタリング値Zb0の平均値に限らない。例えば、被験者が胸式呼吸を行っている期間中において任意のタイミングで取得した1個の第2センタリング値Zb0であってもよい。また、CPU170は、第2記憶部130から読み出したZb1に対し、所定値ΔZb1を加算するのではなく、1.0より大きい所定の係数(例えば1.035)を乗算して加算値(Zb1+ΔZb1)に相当する閾値を算出してもよい。この場合の係数も、所定値ΔZb1の場合と同様に、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。また、このようにして算出された閾値をZb1の代わりに第2記憶部130に記憶しておき、上述した呼吸種別判別処理のステップS704では、第2センタリング値Zb0が第2記憶部130から読み出した閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0175】
また、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理は、被験者の呼吸の種別によらず実行されるので、被験者がドローイン呼吸を行っている場合にも実行される。したがって、ドローイン呼吸の場合にも図26に示した第1バーグラフBG1や第2バーグラフBG2が表示される。よって、被験者は、第1バーグラフBG1のうち胸式呼吸の大きさを示すレベルメータを見ることで、自分が行っているドローイン呼吸の大きさを確認することができる。
【0176】
なお、生体測定装置1は、以下に示す方法でドローイン呼吸の判別を行ってもよい。
[方法1]図30に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルのみが上方にシフトする。そこで、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0と、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0とを監視し、第2センタリング値Zb0のみが所定値(例えば0.5Ω)以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
【0177】
[方法2]図30に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、第1生体電気インピーダンスZaの振幅値(最大値−最小値)と、第2生体電気インピーダンスZbの振幅値(最大値−最小値)がともに小さくなる。そこで、これらの振幅値からドローイン呼吸であるか否かを判別できるようにするため、振幅値について閾値を定めて第1記憶部120に記憶しておく。そして、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの振幅値と、第2生体電気インピーダンスZbの振幅値とを監視し、両者の振幅値がともに閾値(例えば1.8Ω)以下となり、かつ、上述した[方法1]により第2センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。なお、第1記憶部120には、第1生体電気インピーダンスZa用と第2生体電気インピーダンスZb用の2つの閾値が記憶されていてもよいし、両者で共用する1つの閾値が記憶されていてもよい。
【0178】
[方法3]ドローイン呼吸の場合、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形と第2生体電気インピーダンスZbの測定波形は、胸式呼吸の場合と同様の特徴を示す。すなわち、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。そこで、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形と、第2生体電気インピーダンスZbの測定波形とを監視し、両者の測定波形が胸式呼吸の場合と同様の特徴を示し、かつ、上述した[方法1]により第2センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
【0179】
<3.第3実施形態>
例えば、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1生体電気インピーダンスZaの波形と第2生体電気インピーダンスZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示することで、現状の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸のうちのどちらの依存性が高いのかを被験者に報知する態様とすることもできる。ここで、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合、図10に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。したがって、この場合の1呼吸分のリサージュ図形は、例えば図32のようになる。すなわち、1呼吸に占める胸式呼吸の割合が極めて高い場合は、ほぼ直線状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
【0180】
一方、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、図9に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化する一方、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。したがって、この場合のリサージュ図形は、例えば図33のようになる。すなわち、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば「ブーメラン」型など、屈曲した形状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
【0181】
この態様では、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示するようにすることで、被験者は、自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを容易に認識できる。そして、この態様では、上述の呼吸解析処理を行う必要が無いので、簡易な構成で、被験者の呼吸の種別を推定できるという顕著な効果を奏する。また、例えば被験者は、リサージュ図形の態様を直線状に近づけることを意識しながら呼吸することで、その呼吸を胸式呼吸に近付けることができる。つまり、リサージュ図形の表示は、呼吸法トレーニングのためのバイオフィードバック情報として活用できる。
【0182】
ここでは、図32および図33に示すように、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示する態様を説明したが、これに限らず、例えば図34および図35に示すように、複数回の呼吸の各々のデータ(第1生体電気インピーダンスZa,第2生体電気インピーダンスZb)に基づくリサージュ図形を表示することもできる。被験者の呼吸のうち胸式呼吸の占める割合が高い場合(胸式呼吸の依存度が高い場合)は、例えば図34のようなリサージュ図形が得られる一方、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば図35のようなリサージュ図形が得られる。また、例えば被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1相対値ΔZaの波形と第2相対値ΔZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示してもよい。
【0183】
以下に、リサージュ図形を表示する場合について詳述する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0184】
<3−1:リサージュ図形の表示>
図36は、リサージュ図形表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示すフローチャートのうち、ステップS801〜S804までの処理は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS10〜S40までの処理と同じである。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、サンプリングタイミングに到達すると(ステップS801:YES)、生体電気インピーダンス測定部200を制御して第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップS802,S803)。また、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に対し、スムージング処理を行う(ステップS804)。
【0185】
この後、CPU170は、例えば、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の表示データを生成する(ステップS805)。ここで、第2記憶部130にはリサージュ図形描画領域が設けられている。このリサージュ図形描画領域は、表示部160に表示するリサージュ図形の表示データを一時的に記憶しておく記憶領域である。リサージュ図形の表示データを生成する場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域のうち、第2生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Y座標値)によって定まる位置にドットをプロットし、リサージュ図形の軌跡を更新する。また、CPU170は、リサージュ図形描画領域からリサージュ図形の表示データを読み出して表示部160に出力し、リサージュ図形を表示部160に表示する(ステップS806)。なお、同図に示す処理はサンプリングタイミングごとに行われるので、ステップS805では、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の軌跡を更新することになる。また、リサージュ図形の表示もサンプリングタイミングごとに更新される。
【0186】
したがって、表示部160には、被験者が呼吸を行っている場合、リアルタイムでリサージュ図形が表示される。例えば、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、図32や図34に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、図33や図35に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図37に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が右側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。
【0187】
図32や図34に示したように、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、リサージュ図形の軌跡は右上がりの直線状になる。また、胸式呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、胸式呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0188】
一方、図33や図35に示したように、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、図33に示すリサージュ図形は、1呼吸に占める胸式呼吸と腹式呼吸の割合が50%ずつになる場合のものである。この場合、リサージュ図形の軌跡はブーメラン状(“く”の字状)になり、軌跡の形状が上下でほぼ対称になる。但し、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも低ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が大きくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が小さくなる。逆に、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも高ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が小さくなり、そこから屈曲した部分の占める割合が大きくなる。このように被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸と腹式呼吸の割合に応じて屈曲形状が様々に変化する。
【0189】
また、理論上、腹式呼吸の割合が100%になる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡とは反対方向に傾斜した直線状(図33の場合、右下がりの直線状)になる。しかしながら、例えば息を止めて胸式呼吸を全く行わないようにした状態で腹部を凹ませたり膨らませたりした場合であっても、横隔膜の上下に伴って肺が収縮したり拡張したりするため、疾患などで横隔膜が全く機能しない場合を除き、被験者が呼吸を行う場合には胸式呼吸が必ず含まれることになる。したがって、実際には、腹式呼吸の占める割合がどんなに高い場合であっても、リサージュ図形の軌跡には、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分が必ず含まれ、屈曲した形状となる。また、図33に示すように、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分(近似直線LN1)に対し、そこから折れ曲がった部分(近似直線LN2)がどれだけ屈曲しているのかを示す屈曲角度AGは、腹式呼吸が浅ければ小さくなり、腹式呼吸が深ければ大きくなる。また、腹式呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0190】
このように胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の形状が異なる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ(深さ)によってリサージュ図形の軌跡の大きさや形状が変化する。したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか、あるいは現在の自分の呼吸が胸式呼吸と腹式呼吸のうちどちらの占める割合が高いのかを把握することができる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。
【0191】
また、被験者は、胸式呼吸の訓練を行う場合、リサージュ図形の軌跡が右上がりの直線状になり、そのサイズが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。また、腹式呼吸の訓練を行う場合には、リサージュ図形の軌跡が屈曲した形状になり、そのサイズや屈曲角度AGが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。このようにリサージュ図形を見ながら呼吸の訓練を行うことができると、胸式呼吸や腹式呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0192】
また、被験者の呼吸がドローイン呼吸の場合、第2実施形態において図30を用いて説明したように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、図30に示したように第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。このためドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。
【0193】
したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸がドローイン呼吸であるか否かも把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。したがって、ドローイン呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、リサージュ図形を見ながら訓練を行うことで、ドローイン呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0194】
以上のようにリサージュ図形を表示することができると、被験者は、現在の自分の呼吸の種別やその大きさ、さらには胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを把握することができる。また、呼吸の種別やその大きさ、あるいは胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを、生体電気インピーダンスの測定値に基づいて客観的に把握することができる。また、呼吸を効率よく訓練することもできる。
【0195】
また、呼吸を効率よく訓練することができると、呼吸筋(例えば、腹横筋、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋など)を効果的に鍛えることができる。特に、呼吸筋に含まれる腹横筋は、呼吸だけでなく運動機能にも大きな影響を及ぼす体幹部の筋肉である。また、ドローイン呼吸は、呼吸筋だけでなく、例えば脊柱起立筋など、体幹部のインナーマッスルを強化することができる。したがって、呼吸の訓練は、呼吸機能を高めるだけでなく、運動機能の強化や、腰痛の改善/予防、ダイエットなどにも効果がある。また、例えば、深呼吸(深い腹式呼吸)を行ったり、呼息を吸息よりも長くしたりすることで、副交感神経の働きを高めてリラックスした状態に導くことができるなど、呼吸の訓練は心身の健康状態をよくする効果もある。
【0196】
また、生体測定装置1は、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定して両者の経時的変化を示すリサージュ図形を表示するだけでよく、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のうち、第1センタリング処理(ステップS50)、第1相対値算出処理(ステップS60)、第2相対値算出処理(ステップS70)、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)を行う必要がないので、生体測定装置1の制御構成を簡素化することもできる。
【0197】
なお、呼吸の訓練には、例えば、呼吸器疾患の患者が低下した呼吸機能を回復する目的で行うリハビリや、アスリートが運動機能を強化する目的で行うトレーニング、健常者が呼吸機能や心身の健康状態を高める目的で行うトレーニング、健常者が、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能を改善する目的で行うトレーニングなどが含まれる。
【0198】
また、図32〜図35および図37には、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形を例示したが、リサージュ図形はX軸とY軸を入れ替えたものであってもよい。例えば、図38は、X軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形(腹式呼吸の場合)であるが、X軸とY軸を入れ替えてもリサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、このようにX軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形において、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図39に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が上側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。また、リサージュ図形は、図50に示すようにX軸とY軸をそれぞれ45度傾けたものであってもよい。要は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、他方の軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形であればよい。
【0199】
<3−2:右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形の表示>
左右の肺の換気能力の違いを把握できるようにするため、右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を表示してもよい。ここで、右肺用のリサージュ図形を生成するためには、第1生体電気インピーダンスZaとして、図4(D)に示した右上肢、すなわち被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の生体電気インピーダンスを測定する必要がある。また、左肺用のリサージュ図形を生成するためには、第1生体電気インピーダンスZaとして、図4(E)に示した左上肢、すなわち被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の生体電気インピーダンスを測定する必要がある。つまり、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示するためには、体幹上部右側の生体電気インピーダンスと、体幹上部左側の生体電気インピーダンスと、体幹中部の生体電気インピーダンスの3つを測定する必要がある。
【0200】
以降、本明細書では、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示する場合、体幹上部右側の生体電気インピーダンスを第1生体電気インピーダンスZaRと表記し、体幹上部左側の生体電気インピーダンスを第2生体電気インピーダンスZaLと表記し、体幹中部の生体電気インピーダンスを第3生体電気インピーダンスZbと表記する。
【0201】
右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示する場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理(図36)のステップS802,S803において、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の選択を適宜切り換えながら、第1生体電気インピーダンスZaRと、第2生体電気インピーダンスZaLと、第3生体電気インピーダンスZbを測定する。例えば、第1生体電気インピーダンスZaRを測定する場合、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。また、第2生体電気インピーダンスZaLを測定する場合、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する。
【0202】
次に、CPU170は、ステップS804において、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値と、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値と、第3生体電気インピーダンスZbの測定値に対し、スムージング処理を行う。また、CPU170は、ステップS805において、例えば、X軸を第3生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaRとする右肺用のリサージュ図形と、X軸を第3生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZaLとする左肺用のリサージュ図形とについて表示データを生成する。また、CPU170は、ステップS806において、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを表示部160に出力する。
【0203】
この場合、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することができるので、呼吸の種別やその大きさなどを左右の肺ごとに把握することができる。また、2つのリサージュ図形を見比べることで左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することで、左右の肺ごとに呼吸の訓練を行うことが可能になる。健常者の場合、左右の肺で換気能力に差がでることはほとんどないが、例えば、片肺に疾患がある者は、左右の肺で換気能力が大きく異なる。また、過去に肺疾患を経験した者も、左右の肺で換気能力に差がでることがある。例えば、右肺に比べ左肺の換気能力が低い場合など、左肺の換気能力を高めたい場合は、左腕を右肩の後ろに回し、右手で左肘を後ろに押すようにして左肺に負荷を与え、この状態を維持しながら呼吸を行うことで、左肺の換気能力を集中的に鍛えることができる。
【0204】
ところで、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示してもよいが、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くするためには、図40に示すように両者を重ねて表示するのがよい。この場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域に右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を重ねて描画すればよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を重ねて表示する場合には、両者を容易に見分けられるようにするため、右肺用のリサージュ図形の軌跡と、左肺用のリサージュ図形の軌跡との表示態様を変えるのがよい。例えば、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを生成する場合に、右肺用のリサージュ図形については軌跡の色を青にし、左肺用のリサージュ図形については軌跡の色を赤にすることができる。また、CPU170は、軌跡の色を変えることの他に、例えば、軌跡を示す線の太さや線種(例えば実線と破線など)を変えることができる。なお、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、両者の軌跡の表示態様を変えてもよい。
【0205】
また、図41に示すように、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調表示してもよい。この場合、CPU170は、例えば、サンプリングタイミングごとに、第3生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第1生体電気インピーダンスZaRの測定値(Y座標値)によって定まる右肺用のリサージュ図形上の座標(XR,YR)と、第3生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第2生体電気インピーダンスZaLの測定値(Y座標値)によって定まる左肺用のリサージュ図形上の座標(XL,YL)とを比較する。そして、CPU170は、両者が異なる場合に、座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を結ぶバー(直線)の表示データを生成する。このように右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調して表示することができると、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くなる。
【0206】
なお、CPU170は、バーの色を呼気相と吸気相で変えてもよい。図20に示した第1生体電気インピーダンスZaの測定波形において、第1センタリング値Za0よりも上側の部分は吸気相、第1センタリング値Za0よりも下側の部分は呼気相になる。したがって、例えば、直前の1呼吸における第1センタリング値Za0の平均値が図41において図中二点差線で示す直線の部分であった場合、この直線の上下でバーの色を変えればよい。但し、このように呼気相と吸気相でバーの色を変えるためには、第1生体電気インピーダンスZaRについて第1実施形態で説明した第1センタリング処理を行う必要がある。あるいは第1生体電気インピーダンスZaRの代わりに第2生体電気インピーダンスZaLについて、第1実施形態で説明した第2センタリング処理を行う必要がある。
【0207】
また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、一方のX座標値から他方のX座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたり、一方のY座標値から他方のY座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたりしてもよい。また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、両座標間の距離に応じてバーの色のトーンを変えてもよい。例えば、両座標間の距離が大きければ色を濃くし、両座標間の距離が小さければ色を薄くすることができる。また、CPU170は、バーを表示する代わりに、バーを表示しているエリアを淡い色で塗りつぶしてもよい。
【0208】
また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差分面積(図41においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから左右の肺で換気能力がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。また、CPU170は、図42に示すように、サンプリングタイミングごとに座標(XR,YR)と座標(XL,YL)の中間座標を算出してこの位置にドットをプロットし、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の平均値を表示するようにしてもよい。また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、例えば、右肺用のリサージュ図形の軌跡のうち左肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示する一方、左肺用のリサージュ図形の軌跡のうち右肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示してもよい。
【0209】
なお、右肺用のリサージュ図形や左肺用のリサージュ図形についても、X軸とY軸を入れ替えることなどが可能であり、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンスZaR(または第2生体電気インピーダンスZaL)、他方の軸を第3生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形であればよい。また、図40〜図42には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形のうち、いずれか一方のみを表示するようにしてもよい。例えば、被験者は、右肺について呼吸の訓練を行う場合、入力部150を操作して右肺用のリサージュ図形だけを表示するよう指示することができる。この場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理において、第1生体電気インピーダンスZaRと第3生体電気インピーダンスZbを測定し、右肺用のリサージュ図形のみを生成して表示部160に表示する。
【0210】
<3−3:表示位置のセンタリング>
第1実施形態で説明した第1センタリング値Za0や第2センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることができる。以下、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の場合を例に説明を行う。
【0211】
まず、CPU170は、図36に示したリサージュ図形表示処理においてスムージング処理(ステップS804)を終えた後、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS50〜ステップS70までの処理を行い、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0を抽出する。なお、図20からも明らかとなるように、第1センタリング値Za0は、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形の振幅基準レベルを示し、第2センタリング値Zb0は、第2生体電気インピーダンスZbの測定波形の振幅基準レベルを示す。
【0212】
また、CPU170は、リサージュ図形表示処理のステップS805においてリサージュ図形の表示データを生成する場合に、図43に示すように、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0によって定まるリサージュ図形上の座標C(Zb0,Za0)が、表示部160においてリサージュ図形を表示するリサージュ図形表示領域160Aの中心に位置するように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形の作図位置を修正する。このようにすればリサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することができるので、リサージュ図形を見易くすることができる。
【0213】
なお、第1センタリング値Za0や第2センタリング値Zb0は、移動平均処理を行って得られる値であるので、サンプリングタイミングごとに表示位置のセンタリングを行っても、リサージュ図形の表示位置が短い時間間隔で急激に変化するといった問題は起こらない。但し、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の表示位置をセンタリングすると処理負荷が増大する。したがって、例えば、1呼吸ごとに、直前の1呼吸における第1センタリング値Za0の平均値と第2センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。また、予め定められた測定区間(例えば20秒)ごとに、直前の測定区間における第1センタリング値Za0の平均値と第2センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。このようにリサージュ図形の表示位置をセンタリングするタイミングは、任意に定めることができる。
【0214】
また、X軸の表示レンジとY軸の表示レンジを調整することでリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることもできる。この場合、CPU170は、例えば1呼吸ごとに、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の最大値と最小値を検出し、両者を第1振幅値(最大値,最小値)として取得する。また、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値についても、1呼吸ごとに最大値と最小値を検出し、両者を第2振幅値(最大値,最小値)として取得する。この後、CPU170は、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する一方、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する。
【0215】
例えば、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのX軸方向の幅を10としたとき、第2振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第2振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のX軸方向の大きさや位置を調整する。同様に、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのY軸方向の幅を10としたとき、第1振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第1振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のY軸方向の大きさや位置を調整する。
【0216】
このようにすれば、例えば図44に示すように、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示することができる。また、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することもできる。このためリサージュ図形を見易くすることができる。なお、2軸の表示レンジを調整するタイミングについても任意に定めることができる。但し、少なくとも1呼吸分の軌跡の全体がリサージュ図形表示領域160Aに収まることが望ましいので、CPU170は、1呼吸分以上の測定波形から第1振幅値と第2振幅値を取得するのがよい。
【0217】
ところで、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向に軌跡の位置がずれる。ここで、センタリングを頻繁に行うと、リサージュ図形が常にリサージュ図形表示領域160Aの中央に表示されてしまうため、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができなくなってしまう。これを防ぐためには、X軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすればよい。
【0218】
つまり、例えば、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングする場合であれば、第1センタリング値Za0に基づいてリサージュ図形のY軸方向のセンタリングを行う処理を第1センタリング処理とし、第2センタリング値Zb0に基づいてリサージュ図形のX軸方向のセンタリングを行う処理を第2センタリング処理としたとき、CPU170は、第2センタリング処理を行う頻度を、第1センタリング処理を行う頻度よりも少なくすればよい。また、第1振幅値と第2振幅値を使用して表示位置をリサージュ図形のセンタリングする場合であれば、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する処理を第1レンジ調整処理とし、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する処理を第2レンジ調整処理としたとき、CPU170は、第2レンジ調整処理を行う頻度を、第1レンジ調整処理を行う頻度よりも少なくすればよい。
【0219】
この場合、例えば、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は測定開始時などに1回だけ行って後は行わないようにすることができる。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は30呼吸ごとに行うようにしてもよい。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は8秒ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は5分ごとに行うようにしてもよい。
【0220】
このように第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすれば、リサージュ図形の軌跡の形状が同じであっても、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では軌跡の表示位置がX軸方向にシフトすることになる。したがって、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行う頻度を少なくした分だけ生体測定装置1の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行っているので、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示したり、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示したりすることができる。
【0221】
なお、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbは、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaに比べ、腕などの四肢の動きによるアーチファクトの影響を受けにくく、測定値の変動範囲が比較的安定している。このため第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをそれほど頻繁に行わなくても、リサージュ図形がリサージュ図形表示領域160A内に収まらない、などといった問題はほとんど起こらない。
【0222】
また、X軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形の場合であれば、Y軸方向についての表示位置のセンタリングをあまり行わないようにすればよい。要は、互いに直交する2軸のうち、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度を、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度よりも少なくすればよい。また、図43や図44には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
【0223】
また、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaは、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbに比べ、その変動範囲が比較的大きいが、これは腕などの四肢の動きによるアーチファクトの影響が大きいためであり、これを無視してセンタリングの頻度を少なくしてもさほど問題にはならない。そこで、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行う頻度(例えば30呼吸ごとや5分ごと)で、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行うようにしてもよい。つまり、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向と、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向とでセンタリングを行う頻度を同じにし、センタリングを行う時間間隔を30呼吸ごとや5分ごとなどに広げてもよい。
【0224】
<3−4:軌跡表示処理>
図34や図35に示したように複数回の呼吸の様子を連続して示すリサージュ図形の場合、軌跡の表示態様が同じであると最新の1呼吸分の軌跡が把握しづらい。そこで、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とでリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。
【0225】
例えば、CPU170は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に、図46に示すように、最新の1呼吸の軌跡の色を濃くし、それ以外の過去の呼吸の軌跡の色を薄くすることができる。また、CPU170は、最新の1呼吸の軌跡を実線にし、それ以外の過去の呼吸の軌跡を点線にしてもよい。また、CPU170は、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで軌跡の色を変えてもよい。例えば、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaや第2生体電気インピーダンスZbの測定波形に基づいて新たな1呼吸が始まったか否かを判定し、新たな1呼吸が始まると、新たに始まった呼吸についての軌跡の色を赤にし、前回の呼吸の軌跡の色を赤から青に変更する。
【0226】
なお、CPU170は、経過時間に応じてリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。例えば、経過時間が増えるほど軌跡の色が薄くなるようにすれば、新しい軌跡ほど色が濃いので、最新の1呼吸分の軌跡など、新しい軌跡を容易に把握することができる。また、リサージュ図形は、図46に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。また、図46には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
【0227】
<3−5:アシスト表示>
図47に示すように、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形MLに対し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形TLを重ねて表示してもよい。以下、この章では、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形を実測リサージュ図形MLと表記し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形を目標リサージュ図形TLと表記する。
【0228】
目標リサージュ図形TLは、例えば、被験者の直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLなど、被験者の過去の実測リサージュ図形MLを加工して生成することができる。例えば、被験者が胸式呼吸やドローイン呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(右上がりの直線状の軌跡)の大きさを1.1倍など所定の倍率で拡大し、これを目標リサージュ図形TLの表示データとすることができる。また、被験者が腹式呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(屈曲した形状の軌跡)の大きさを所定の倍率で拡大したり、屈曲角度AGの大きさを調整したりして、目標リサージュ図形TLの表示データを生成することができる。
【0229】
また、CPU170は、目標リサージュ図形TLをリサージュ図形表示領域160Aに表示する一方、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて被験者の現在の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLの表示データを生成し、これを目標リサージュ図形TLと重ねてリサージュ図形表示領域160Aに表示する。このようにすれば、被験者は、現在の自分の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLと、目標とする呼吸の様子を示す目標リサージュ図形TLとを見比べながら、呼吸の訓練を行うことができる。また、被験者は、実測リサージュ図形MLの軌跡が目標リサージュ図形TLの軌跡と一致するように意識して呼吸を行うことで、目標とする呼吸を体得することができる。
【0230】
また、CPU170は、過去の実測リサージュ図形MLを加工して目標リサージュ図形TLを生成するのではなく、被験者に行わせたい呼吸の種別(胸式呼吸、腹式呼吸、ドローイン呼吸など)やその大きさに応じた目標リサージュ図形TLを生成することもできる。例えば、呼吸を訓練するための訓練メニューとして、小程度の大きさの胸式呼吸を1回行った後、中程度の大きさの腹式呼吸を1回行うことが定められている場合、CPU170は、小程度の大きさの胸式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示し、被験者が最初の1呼吸を終えて次の1呼吸を行う前に、中程度の大きさの腹式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示する。なお、目標リサージュ図形TLを表示するタイミングを制御すれば、被験者の呼吸のリズムを指導することもできる。このように目標リサージュ図形TLを用いて被験者の呼吸を指導するアシスト表示を行えば、被験者に対し、呼吸の種別やその大きさ、呼吸のリズムなどを効果的に指導することができる。
【0231】
なお、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLとで軌跡の表示態様(例えば色や線種など)を変え、両者を容易に見分けられるようにしてもよい。また、CPU170は、図48に示すように、実測リサージュ図形MLの軌跡と目標リサージュ図形TLの軌跡とで相違する部分にバーを表示し、両者の差異を強調表示してもよい。また、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLの差分面積(図48においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから両者がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。
【0232】
また、必ずしも実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLを重ねて表示する必要はなく、両者を並べて表示してもよい。また、実測リサージュ図形MLや目標リサージュ図形TLは、図47や図48に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。
【0233】
<3−6:肺の換気能力の良否判定>
リサージュ図形の軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。例えば図49に示すように胸式呼吸の場合、CPU170は、1呼吸分の軌跡(サンプリングタイミングごとに得られる第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値によって定まるXY座標値)から、最小二乗法などによって近似直線LNを求める。次に、CPU170は、近似直線LNとX軸とのなす角αを算出し、これをリサージュ図形の軌跡の傾斜角αとする。
【0234】
図49に示すように、X軸を第2生体電気インピーダンスZb、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとした場合、肺の換気能力が高いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が立ってくる(傾斜角αが大きくなり90度に近くなる)。逆に、肺の換気能力が低いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が寝てくる(傾斜角αが小さくなり0度に近くなる)。したがって、CPU170は、傾斜角αを予め定められた基準傾斜角βと比較し、傾斜角αが基準傾斜角β以上の場合は肺の換気能力が良いと判定し、傾斜角αが基準傾斜角βよりも小さい場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。なお、基準傾斜角βは、肺の換気能力の良否を判定するための閾値であり、予め多数の被験者から採取した1呼吸分の軌跡の傾斜角に基づいてその値を定めることができる。また、基準傾斜角βの値は第1記憶部120に記憶されている。
【0235】
以上のようにすれば肺の換気能力の良否をリサージュ図形の軌跡から簡単に判定することができる。なお、立位、座位、仰臥位など、測定時の姿勢によって1呼吸分の軌跡の傾斜角は異なる。したがって、基準傾斜角βの値は、測定時の姿勢と対応付けて第1記憶部120に複数記憶されていてもよい。この場合、例えば、入力部150から測定時の姿勢を入力するようにして、入力された姿勢に対応する基準傾斜角βの値を第1記憶部120から読み出して使用すればよい。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βを標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図5のステップS1)や、事前に測定した体重(図5のステップS2)などを用いた演算によって補正してもよい。
【0236】
また、図50に示すように、座標変換処理によって基準傾斜角βを示す直線が垂直になるようにリサージュ図形を回転させた場合、1呼吸分の軌跡を示す楕円が、垂直方向と同じか垂直方向よりも左側に傾いている場合は肺の換気能力が良く、垂直方向よりも右側に傾いている場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。また、図51に示すように腹式呼吸の場合は、1呼吸分の軌跡のうち図中実線で示す楕円で囲んだ部分について近似直線LNを求めることで、胸式呼吸の場合と同じように肺の換気能力の良否を判定することができる。また、ドローイン呼吸の場合は、胸式呼吸の場合と同じようにして肺の換気能力の良否を判定することができる。
【0237】
また、換気能力の良否判定に用いるリサージュ図形の軌跡は、必ずしも1呼吸分の軌跡に限らず、2呼吸分の軌跡や半呼吸分の軌跡であってもよい。また、X軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形や、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたリサージュ図形などであっても、軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βの値を任意の値に設定し、被験者の肺の換気能力が予め定められた基準能力値よりも高いか否かを判定してもよい。
【0238】
<3−7:呼吸深度グラフの時間軸圧縮表示>
CPU170は、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理(図27)を行うことで、1呼吸ごとに呼吸の深さを示す呼吸深度(呼吸レベル)を抽出することができる。つまり、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて、1呼吸ごとに呼吸深度を抽出することができる。また、CPU170は、抽出した呼吸深度に対し、第1実施形態で説明した呼吸深度の正規化処理(図28:ステップS601)を行った後、呼吸深度の時間変化を示すグラフ(以降、呼吸深度グラフ)を生成して、これを表示部160に表示することができる。例えば呼吸深度グラフは図52(A)のようになる。
【0239】
ところで、被験者は、訓練によって呼吸の大きさ(深さ)がどのように変化したのかを把握するため呼吸深度グラフを参照する。この際、呼吸の大きさの変化を把握する上で特に重要になるのは、直近の呼吸の大きさである。呼吸の訓練時間は1回あたり10分〜数十分と比較的長い時間になることが多いので、測定開始時から現在に到るまでのグラフ全体を表示部160に表示しようとすると、グラフを時間軸方向に圧縮しなければならない。この際、グラフ全体を均一に圧縮すると、測定区間全体に亘って一律に時間分解能が下がってしまうため、直近の呼吸の大きさについて詳細を把握しづらくなる。
【0240】
そこで、CPU170は、呼吸深度グラフの表示データを生成する場合に、グラフの時間軸を非線形に圧縮し、任意の時間幅を1区間としたとき、少なくとも直近の1区間と測定開始時の1区間とで時間軸のレンジが異なり、直近の1区間の方が測定開始時の1区間よりも時間分解能が高くなるようにする。例えば、CPU170は、図52(B)に示すように時間軸を対数目盛にすることで(片対数グラフ化)、直近の測定区間ほど時間分解能を高くすることができる。また、CPU170は、図52(C)に示すように、測定開始時から現在に到る測定区間全体を3つの区間1〜3に分割し、直近の区間1が最も時間分解能が高くなるように時間軸のレンジを区間ごとに変えることができる。このようにすれば、呼吸深度グラフを時間軸方向に圧縮して表示しても、直近の呼吸の大きさについて詳細を容易に把握することができる。
【0241】
なお、以上説明した第3実施形態において、右肺用や左肺用のリサージュ図形についても、表示位置のセンタリングや、軌跡表示処理、アシスト表示、肺の換気能力の良否判定を行うことができる。また、CPU170は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS10〜ステップS70までの処理を行って第1相対値ΔZaと第2相対値ΔZbを算出し、第1相対値ΔZaと第2相対値ΔZbを用いてリサージュ図形の表示データを生成してもよい。つまり、CPU170は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1相対値ΔZaとし、他方の軸を第2相対値ΔZbとするリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
【0242】
また、本実施形態と第1,第2実施形態を適宜組み合わせることができる。例えば、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かを判別して報知してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに図26に示したバーグラフBG1,BG2を表示してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かドローイン呼吸かを判別して報知してもよい。
【0243】
<4.変形例>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうち2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0244】
(1)変形例1
CPU170は、被験者の呼吸を指導するためのアシスト報知を行うこともできる。例えば吸気・呼気のリズムおよびパターンと、必要な呼吸の深さとを、図53に示す第3バーグラフBG3の形で表示部160に表示する態様であってもよい。図53に示すように、第3バーグラフBG3で表示可能な段階数は「6」であり、吸気側に3段階、呼気側に3段階に振り分けられている。ここでは、表示される段階数が多いほど、必要な呼吸の深さも大きくなる。例えば吸気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、吸気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。また、吸気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、吸気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。さらに、吸気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、吸気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。
【0245】
一方、呼気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、呼気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。また、呼気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、呼気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。さらに、呼気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、呼気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。
【0246】
例えば、被験者に対して、中程度の吸気を2回行った後、中程度の呼気を2回行うようにアシスト報知する場合は、第3バーグラフBG3の表示は図54のように変化するという具合である。ここで、1回の呼吸に要する時間を2秒とすれば、4秒間で、2回の呼気および2回の吸気を、それぞれ指定の呼吸レベルで行うように指導していることに相当する。なお、これは一例であり、様々なアシスト情報(吸気・呼気のリズム、パターンおよび大きさ)を報知することが可能である。例えば被験者の呼吸を腹式呼吸に導くためのアシスト情報を報知することもできる。また、第3バーグラフBG3による表示の代わりに、音声によるアシスト報知を行う態様であってもよいし、両者を組み合わせる態様であってもよい。
【0247】
上述したようなアシスト報知を行うことで、被験者が、呼吸のリズム、パターン、深さを意識した呼吸を行うように導くことができる。また、被験者は、前述の第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2の表示を見ることで、自分の現状の呼吸の状態を確認できる。言い換えれば、第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2の表示を、呼吸法トレーニングのためのバイオフィードバック情報として活用できる。
【0248】
(2)変形例2
図55に示すように呼吸の大きさを示す肺の模式図を表示部160に表示してもよい。この場合、呼吸が大きくなるにつれ肺の色つき部分の面積が拡大し、呼吸が小さくなるにつれ肺の色つき部分の面積が減少する。これは測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
また、人や動物などのアニメーション画像を表示して呼吸の種別とその大きさを報知してもよい。例えば、小さな胸式呼吸の場合は、胸部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな胸式呼吸の場合は、胸部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さな腹式呼吸の場合は、腹部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな腹式呼吸の場合は、腹部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さなドローイン呼吸の場合は、腹部が小さく凹んだ状態で、胸部も小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きなドローイン呼吸の場合は、腹部が大きく凹んだ状態で、胸部も大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。このようなアニメーション画像についても測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
以上のようにすれば被験者に対してよりわかりやすく測定結果や指導情報を報知することができる。
【0249】
(3)変形例3
上述の各実施形態では、電流電極および電圧電極の一例として、両手両足を電極の接点とする四肢誘導八電極法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、耳電極との四肢誘導法とを組み合わせて、体幹上部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。
この場合には、耳電極を用いることによって、体幹上部の生体電気インピーダンスの測定について両腕計測ではなく片腕計測が可能となる。なお、耳電極を用いる場合には、イヤホンやヘッドホンに耳電極を組み込むことによって、音声等の音報知・音刺激との組み合わせが効果的である。
また、上述した各実施形態では、立位での計測であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、便座での生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、便座や手摺に電極確保することができる。さらに、ポケッタブルやウェアラブルでのリラクゼーション姿勢(椅子座位等)で生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、マッサージチェアー等の手摺と足置き等に電極確保することができる。
さらに、入浴中の呼吸計測も可能である。この場合には、浴槽手摺部と浴槽底の御尻や足裏接触側面部に電極を設ける。浴槽内のお湯よりも、体幹の方が、生理食塩水でできているので電流通電が支配的になる。よって、入浴中にリラックスした状態で呼吸法のトレーニングを行うことができる。
くわえて、上述した各実施形態の生体測定装置1に、血圧計の腕帯と手で握る等で接触させる血圧計を付加し、血圧計に電極配置して呼吸変化や腕の筋の緊張具合を血圧測定時の補正情報として活用してもよい。
また、被験者がリラックスした状態で呼吸の測定や呼吸の訓練を行えることが望ましい。したがって、呼吸の測定中や呼吸の訓練中に、のどかな風景の映像を表示したり、心のやすらぐ音楽や鳥の鳴き声、滝の音などを流したり、呼吸の測定や呼吸の訓練を行う場所の温度や湿度を調整したりすることも重要である。また、呼吸法の訓練ビデオを付加して訓練効率を高めてもよい。
【0250】
(4)変形例4
上述の各実施形態では、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢の生体電気インピーダンスを測定しているが、これに限らず、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの測定方法は任意である。例えば右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、左上肢の生体電気インピーダンスを測定し、それを第1生体電気インピーダンスZaとして採用してもよい。
また、上述の各実施形態では、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定しているが、これに限らず、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの測定方法は任意である。例えば右足と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを測定し、それを第2生体電気インピーダンスZbとして採用してもよい。
【0251】
また、四肢誘導八電極法を利用せず、被験者の体幹部に電流電極と電圧電極を直接貼り付けて、被験者の肺を含み腹部を含まない体幹上部の生体電気インピーダンスや、被験者の右肺を含み腹部を含まない体幹上部右側の生体電気インピーダンス、被験者の左肺を含み腹部を含まない体幹上部左側の生体電気インピーダンス、被験者の腹部を含む体幹中部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。
【0252】
また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示するため、第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zbを測定する場合、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaとして第1生体電気インピーダンスZaRまたは第2生体電気インピーダンスZaLを使用し、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとして第3生体電気インピーダンスZbを使用して呼吸解析処理(第1実施形態)を行うことで、右肺または左肺を対象として被験者の呼吸の種別を判別することができる。同様に、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaとして第1生体電気インピーダンスZaRまたは第2生体電気インピーダンスZaLを使用し、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとして第3生体電気インピーダンスZbを使用して呼吸深度抽出処理と呼吸レベル表示処理(第1実施形態)を行うことで、右肺または左肺を対象として第1バーグラフBG1や第2バーグラフBG2を表示することができる。
【0253】
(5)変形例5
上述の呼吸レベル表示処理において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第2センタリング値Zb0で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用しているが、これに限らず、呼吸深度ΔZap−pの正規化方法は任意である。要するに、呼吸深度ΔZap−pの値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正するものであればよい。例えば骨格筋量(骨格筋の発達具合)を示す指標をMV、被験者の身長や生体電気インピーダンスの測定区間の長さを示す指標をH、身体骨格筋の発達に有用な部位の生体電気インピーダンスをZxと表記すると、MV∝H2/Zxという関係が成り立つので、第2センタリング値Zb0の代わりに、H2/Zxを用いて呼吸深度ΔZap−pを正規化してもよい。また、上述の指標MVの推定には、重回帰分析による多変量項として性別や年齢や体重などを含めることで、精度向上を図ることができる。
【0254】
(6)変形例6
例えば、ゲーム機を用いたシステムに本発明を適用することができる。
図56は、家庭用のゲーム機300を用いた生体測定システム5の構成を示す図である。同図に示すように生体測定システム5は、生体情報入力装置200’と、ゲーム機300と、コントローラ350と、モニタ400を備える。また、ゲーム機300のディスクスロットには光ディスク500が挿入される。
【0255】
生体情報入力装置200’は、被験者を載せる載台20’と、左手用の電極部30Lと、右手用の電極部30Rを備える。この生体情報入力装置200’は、基本的に図1に示した生体電気インピーダンス測定部200と同様の構成を有し、これに体重計を加えた構成となっている。また、生体情報入力装置200’は、通信ケーブルによってコントローラ350と接続されており、被験者の各部位の生体電気インピーダンスや体重を測定し、これらの生体情報をコントローラ350を介してゲーム機300に供給する。
【0256】
コントローラ350は、操作情報などを入力する入力装置である。コントローラ350は、Bluetooth(登録商標)などの無線通信によってゲーム機300と通信を行い、被験者が入力した操作情報や、生体情報入力装置200’から出力された生体情報をゲーム機300に送信する。例えば、身長、年齢、性別などの情報もコントローラ350を操作して入力することができる。モニタ400は、例えばテレビジョン受像機であり、通信ケーブルによってゲーム機300と接続されている。光ディスク500には、上述した第1〜第3実施形態や変形例(1)〜(5)で説明した各種の処理を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。
【0257】
なお、同図には、生体情報入力装置200’で測定された生体情報がコントローラ350を経由してゲーム機300に供給される場合を例示したが、生体情報入力装置200’は、生体情報を無線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合、生体情報入力装置200’は、ゲーム機300と無線通信を行うための無線通信モジュールを備える。また、生体情報入力装置200’は、生体情報を有線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合は、生体情報入力装置200’とゲーム機300を通信ケーブルで直接接続すればよい。また、左手用の電極部30Lの代わりに、電流電極X3と電圧電極Y3を設けた左手用のコントローラ350を備える一方、右手用の電極部30Rの代わりに、電流電極X4と電圧電極Y4を設けた右手用のコントローラ350を備えてもよい。
【0258】
図57は、ゲーム機300の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにゲーム機300は、ROM301と、RAM302と、ハードディスク303と、ディスクドライブ310と、無線通信モジュール320と、画像処理部330と、音声処理部340と、CPU360を備える。ROM301には、ゲーム機300の基本制御を司るプログラムなどが記憶されている。RAM302は、CPU360のワークエリアとして用いられる。ハードディスク303には、例えば後述する訓練メニュー管理テーブルTBL(図58)など、光ディスク500から読み出されたプログラムやデータなどが記憶される。ディスクドライブ310は、光ディスク500からプログラムやデータを読み出す。なお、プログラムやデータは、光ディスク500などの記録媒体によってゲーム機300に提供されるだけでなく、通信網を介してサーバなどからダウンロードされてもよい。この場合、ゲーム機300はネットワーク通信モジュールを備える。
【0259】
無線通信モジュール320は、コントローラ350との間で行われる無線通信を制御する。なお、無線通信モジュール320は、生体情報入力装置200’が測定した生体情報をゲーム機300に入力するための入力部である。画像処理部330は、画像データを生成してモニタ400に出力する。音声処理部340は、効果音や音声などのオーディオデータを生成してモニタ400(スピーカ)に出力する。CPU360は、ROM301やハードディスク303などに記憶されている各種のプログラムを実行することでゲーム機300の全体を制御する。例えば、CPU360は、無線通信モジュール320を制御し、コントローラ350を介して生体情報入力装置200’と通信を行うことができる。また、CPU360は、生体情報入力装置200’に対し、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の切り換え、生体電気インピーダンスの測定、体重の測定などを指示することができる。
【0260】
また、CPU360は、例えば、第1実施形態で説明した呼吸解析処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理を行い、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1や、腹式レベルを示す第2バーグラフBG2をモニタ400に表示することができる。また、CPU360は、第2実施形態で説明した吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかドローイン呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第3実施形態で説明したリサージュ図形表示処理を行い、リサージュ図形をモニタ400に表示することができる。また、CPU360は、バーグラフBG1〜BG3、リサージュ図形、肺の模式図などを利用して被験者の呼吸を訓練するための処理を行うことができる。このようにCPU360は、上述した第1〜第3実施形態や変形例(1)〜(5)で説明した各種の処理を行うことが可能である。
【0261】
図58は、訓練メニュー管理テーブルTBLのデータ構成を示す図である。
訓練メニュー管理テーブルTBLは、被験者が自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューで呼吸の訓練を行えるようにするためのものである。訓練メニュー管理テーブルTBLには、呼吸の能力に応じて定められた階級(ランク)ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、この階級をクリアして次の階級に進むためのクリア条件が記憶されている。例えば、同図に示す例では、ランク1〜ランク5までの5つの階級が設けられている。また、1階級ごとに20個の訓練メニューが用意されている。
【0262】
例えば、訓練メニューの具体例として、胸式呼吸や腹式呼吸をマスターするための訓練、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練、ドローイン呼吸をマスターするための訓練、腹式呼吸や完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練、左右の肺ごとに換気能力を高める訓練、ドローイン呼吸によって呼吸機能や運動機能を高める訓練、ヨガなどで用いられる様々なポーズを使用して呼吸筋に負荷を与えながら各種の呼吸を行って呼吸機能や運動機能を強化する訓練などを例示することができる。
【0263】
なお、完全呼吸とは、腹部と胸部と肩甲部を使って肺の換気能力を最大限に活用しながら呼息と吸息を行う呼吸法である。完全呼吸を行う場合、例えば、吸息時には、まず腹を膨らませながら息を吸い、次に胸を前に突き出す感じで胸郭を広げながら息を吸い、最後に肩を上げながら息を吸っていく。これにより横隔膜が最大限に開いた状態になる。また、呼息時には、その逆で、まず肩を下げながら息を吐き、次に広げた胸郭を元に戻しながら息を吐き、最後に腹を凹ませながら息を吐いていく。
【0264】
また、訓練メニューには、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)を使用し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)を使用し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)の両方を使用し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにするものなどが含まれる。
【0265】
また、クリア条件の具体例として、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上であること、肺の換気能力が予め定められた基準値以上であること、ドローイン呼吸ができること、腹式レベルが所定レベル以上であること、20個の訓練メニューを全て訓練し終えたことなどを例示することができる。なお、訓練メニュー管理テーブルTBLにおいて階級は2つ以上であればよいし、訓練メニューについても1階級ごとに1つ以上あればよい。また、階級分けや訓練内容の具体例として以下を例示することができる。
【0266】
[ランク1/中高度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
基本的な胸郭部呼吸運動を司る胸部呼吸筋を胸式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク2/軽度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
横隔膜などの腹部呼吸筋を腹式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク3/健常者向け標準トレーニング]
胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸によって胸部呼吸筋と腹部呼吸筋の両方を鍛え、呼吸機能の更なる向上や、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能の改善を図るためのトレーニング。
[ランク4/軽度負荷トレーニング]
ドローイン呼吸によって体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を鍛え、呼吸機能の向上の他、腰痛予防や運動機能を高めるためのトレーニング。
[ランク5/アスリート向け中高度負荷トレーニング]
例えばヨガで用いられるポーズなど呼吸筋に負荷を与える姿勢とドローイン呼吸を組み合わせて運動機能を強化するためのトレーニング。
【0267】
なお、ランク1,2として挙げた呼吸器疾患の患者向けトレーニングは、あくまで治療施設での医療指導の遵守が大前提である。また、疾患のレベルにもよるが、基本的には横隔膜がある程度機能し、呼吸を訓練することで呼吸機能の改善が期待できる者を対象者としている。また、ランク1〜5に対し、口をすぼめながら呼吸をするといった負荷を組み合わせることもできる。また、呼吸法とポーズの組み合わせ方やトレーニングの時間配分などは、適宜任意に定めることができる。
【0268】
図59は、呼吸訓練管理処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す呼吸訓練管理処理は、例えば、被験者が本システム5を利用して呼吸の訓練を始める場合にCPU360によって実行される。CPU360は、呼吸訓練管理処理を開始すると、まず、被験者の呼吸の能力を検出する処理を行う(ステップS901)。例えば、CPU360は、胸式呼吸や腹式呼吸を行うよう被験者に指示するメッセージを報知するとともに、第1実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理、あるいは第3実施形態で説明したリサージュ図形表示処理や肺の換気能力の良否判定を行う。これにより、CPU360は、例えば、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ、肺の換気能力、腹式レベルなどを被験者の呼吸の能力として検出する。
【0269】
なお、被験者の呼吸の能力を通常時の呼吸から検出するため、呼吸の測定を行っていることを被験者に報知せずにステップS901に示す処理を行ってもよい。また、ステップS901では、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよいし、第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zbを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよい。
【0270】
次に、CPU360は、訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、ステップS901で検出した被験者の呼吸の能力に応じた階級を特定する(ステップS902)。また、CPU360は、特定した階級に対応する訓練メニューを訓練メニュー管理テーブルTBLから選択する(ステップS903)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、図58に示す訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、メニュー41〜メニュー60を選択する。
【0271】
この後、CPU360は、ステップS903で選択した訓練メニューを使用して、被験者の呼吸を訓練するための処理を行う(ステップS904)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60を使用して呼吸を訓練するための処理を行う。また、ランク3が上述した健常者向けの標準トレーニングであった場合、CPU360は、訓練メニューに基づいて、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練や、完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練を行う。また、CPU360は、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)の両方をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにすることができる。
【0272】
この後、CPU360は、被験者の現在の階級に対応するクリア条件を訓練メニュー管理テーブルTBLから読み出し、クリア条件が成立しているか否かを判定する(ステップS905)。例えば、被験者の現在の階級がランク3であった場合、CPU360は、図58に示す訓練メニュー管理テーブルTBLから条件Cを読み出し、この条件Cが成立しているか否かを判定する。
【0273】
例えば、条件Cが「腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理を行い、被験者の腹式呼吸の大きさが基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「肺の換気能力が予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第3実施形態で説明した肺の換気能力の良否判定を行い、肺の換気能力が基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「ドローイン呼吸ができること」であった場合、CPU360は、第2実施形態で説明した呼吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸がドローイン呼吸であるか否かを判定する。また、条件Cが「20個の訓練メニューを全て訓練し終えたこと」であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60による訓練を全て終えている場合にクリア条件が成立したと判定する。
【0274】
ステップS905の結果が否定である場合は、ステップS904に戻り、現在の階級における呼吸の訓練を継続する。一方、ステップS905の結果が肯定である場合、CPU360は、被験者の階級を次の階級にランクアップさせた後(ステップS906)、ステップS903に戻る。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、ステップS906において被験者の階級をランク4に変更してステップS903に戻る。これにより、訓練メニュー管理テーブルTBLからランク4に対応する訓練メニュー(メニュー61〜メニュー80)が選択され、新たな訓練が開始される。
【0275】
なお、被験者がコントローラ350を操作して訓練の終了を指示すると、同図に示す呼吸訓練管理処理が終了する。この際、CPU360は、被験者の現在の階級を示すランク情報をハードディスク303に記憶し、被験者が次に呼吸の訓練を行う場合は、ハードディスク303に記憶してあるランク情報を読み出してステップS903から処理を開始する。
【0276】
以上説明したように本変形例によれば、ゲーム機300を用いることで、体重や体脂肪を測定するのと同じように家庭内で手軽に呼吸を測定することが可能になる。また、呼吸の訓練についても家庭内で手軽に行える。また、本変形例によれば、被験者は、自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューに基づいて呼吸の訓練を行うことができるので、効率よく呼吸を訓練することができる。また、訓練メニューを階級ごとに分けて用意し、1階級ごとにクリアしながら次の階級に進むといったゲーム性を持たすことで、楽しみながら呼吸の訓練を行うことができるので、呼吸の訓練に対する被験者のモチベーションを高めることもできる。
【0277】
なお、第1〜第3実施形態で説明した生体測定装置1において呼吸訓練管理処理(図59)を行ってもよい。この場合、呼吸訓練管理処理を行うためのプログラムや呼吸訓練管理テーブルTBL(図58)などを第1記憶部120に記憶しておけばよい。また、ゲーム機300の代わりに、パーソナルコンピュータや携帯型電子機器(例えば携帯電話機など)を用いてもよいし、携帯型電子機器の場合には、表示装置としてヘッドマウントディスプレイを使用してもよい。
【0278】
(7)変形例7
生体測定装置1は、表示部160を備えず、外部の表示装置にリサージュ図形やバーグラフBG1〜BG3などを表示してもよい。また、生体測定装置1は、生体電気インピーダンス測定部200を備えず、外部の生体電気インピーダンス測定装置で測定された、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZb(または第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zb)を無線通信や有線通信によって入力する入力部を備えていてもよい。この場合、入力部は、例えば、無線通信モジュール、ネットワーク通信モジュール、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスなどの通信インターフェイスになる。
【0279】
(8)変形例8
リサージュ図形は、呼吸の訓練を行う場合だけでなく、呼吸の測定を行なう場合(生体電気インピーダンスを測定して呼吸の種別やその大きさを判定する場合)に表示してもよい。また、本発明は、呼吸の測定機能や呼吸の訓練機能のみを有する装置やシステムに限定されない。例えば、フィットネス用のトレーニング装置など、呼吸の測定機能や呼吸の訓練機能がその一部に組み込まれた各種のトレーニング装置やトレーニングシステムに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0280】
1 生体測定装置
5 生体測定システム
120 第1記憶部
150 入力部
170 CPU
200 生体電気インピーダンス測定部
200’ 生体情報入力装置
Za 第1生体電気インピーダンス(体幹上部)
Zb 第2生体電気インピーダンス(体幹中部)
300 ゲーム機
320 無線通信モジュール
360 CPU
400 モニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の呼吸の種別を判定する装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体電気インピーダンスを測定し、測定結果に基づいて、生体の状態を推定する各種の装置が従来から知られている。そのような装置の一つとして、特許文献1には、体幹生体電気インピーダンスに基づいて、肺活量を推定する技術が開示されている。
【0003】
呼吸は、生体データ(血圧,体温,皮膚温,脳波,脈波など)の中で、唯一自己コントロール可能なものであることから、例えば、呼吸をコントロールすることによって、ヨガ、気功、カイロプラクティック、あるいは座禅などの健康法として世の中に広がっている。また、呼吸法は胸式と腹式に分けられる。腹式呼吸は、ダイエットやボイストレーニングなどにも応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50127号公報(段落0020参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、呼吸の健康法への有用な活用には、被験者の呼吸が胸式であるか腹式であるかを知る必要がある。しかしながら、従来の技術では、生体電気インピーダンスから呼吸が胸式であるか腹式であるかを知ることができなかった。
そこで、本発明は、被験者の呼吸が胸式呼吸であるか腹式呼吸であるかを判定可能な装置およびシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定装置(1)は、被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(170、200)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(170)と、を備えることを特徴とする。本発明では、解析部が、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めることにより、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別できるという利点がある。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0007】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)、および、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)を生成するセンタリング値生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の第1センタリング値に対する相対値である第1相対値(ΔZa)を求める第1相対値算出部(170)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の第2センタリング値に対する相対値である第2相対値(ΔZb)を求める第2相対値算出部(170)と、をさらに備え、解析部は、第1相対値と第2相対値とに基づいて判別情報を求める。
【0008】
この態様では、解析部が、第1相対値と第2相対値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めることにより、被験者の呼吸の種別をリアルタイムで正確に判別できる。より具体的には、上記判別情報は、被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比(ΔRib/ΔAb)を示すものである。本発明では、被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比(ΔRib/ΔAb)と、上述の第1相対値および第2相対値との間には相関関係があることを見出し、解析部は、判別情報と、第1相対値および第2相対値との関係を表す回帰式にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値および第2相対値に対応する判別情報を求める。そして、その求めた判別情報から、被験者の呼吸の種別を推定できるという具合である。その回帰式は、以下の形で表される。
ΔRib/ΔAb=(a×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b
ΔRib:被験者の胸部の周囲径の変化、ΔAb:被験者の腹部の周囲径の変化、ΔRib/ΔAb:判別情報、ΔZa:第1相対値、ΔZb:第2相対値、a,b:定数。
【0009】
この態様において、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸である一方、所定の閾値以下の場合は腹式呼吸であると推定される。このため、解析部によって求められたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸が胸式呼吸であるのか腹式呼吸であるのかを精度良く判定できるという利点がある。
【0010】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、解析部は、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求める。この態様では、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかに加え、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法(以降、ドローイン呼吸と記載する)なのかを正確に判別することができる。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0011】
この態様において、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値以下の場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であり、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値より所定値以上大きい場合は、被験者の呼吸はドローイン呼吸であり、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値と所定値との加算値未満の場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定される。このため解析部によって求められたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸が胸式呼吸であるのか腹式呼吸であるのかドローイン呼吸であるのかを精度良く判定することができる。
【0012】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部(170)をさらに備え、生体電気インピーダンス測定部は、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、第1生体電気インピーダンスおよび第2生体電気インピーダンスを測定し、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する一方、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第2センタリング値を生成する。
【0013】
ここで、被験者が、吸気と呼気とからなる呼吸を行うと、その呼吸に応じて、体幹上部の第1生体電気インピーダンスおよび体幹中部の第2生体電気インピーダンスは変化する。腹式呼吸と胸式呼吸とドローイン呼吸とで肺は同じように伸縮変化し、吸気では肺組織に含まれる空気量が増加するために肺の生体電気ンピーダンスは増加方向に変化し、呼気では肺組織に含まれる空気量が減るために肺の生体電気インピーダンスは減少方向に変化する。つまり、被験者の呼吸が腹式呼吸と胸式呼吸とドローイン呼吸の何れの場合であっても、肺の上部を含み、腹部を含まない第1生体電気インピーダンスは、吸気では増加方向に変化する一方、呼気では減少方向に変化する。
また、腹式呼吸では、呼気時に腹部骨格筋の働きによって内臓組織が横隔膜を押し上げる方向に上昇するので、腹部の生体電気インピーダンスは増加方向に変化する。つまり、腹式呼吸の呼気では、肺の生体電気インピーダンスの減少を腹部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。一方、胸式呼吸やドローイン呼吸では、そのようなことはない。したがって、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、肺の中下部および腹部を含む第2生体電気インピーダンスの変化は、上述の第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる態様を示す。
【0014】
被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であってもドローイン呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形は略正弦波状となる。体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値(第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル)が得られるように、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する。より具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値を求める。これにより、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値を精度良く生成できる。上記センタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される。なお、ここでの「移動平均処理」には、重み付けのない平均処理だけでなく、重み付けのある平均処理も含まれる。例えば各サンプリングタイミングにおける周波数の相違に応じた重み付けがされたうえで、平均処理が行われる態様であってもよい。
【0015】
一方、腹式呼吸に伴う第2生体電気インピーダンスの変化は、第1生体電気インピーダンスの変化とは異なる態様(非正弦波状)となるので、第1センタリング値を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを精度良く求めることは困難である。
【0016】
そこで、上記態様では、センタリング値生成部は、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する。具体的には、センタリング値生成部は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前のサンプリングタイミングで生成した第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける第2センタリング値として採用する。これにより、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを精度良く求めることができる。
【0017】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部(170)と、被験者の1呼吸ごとに、解析部により求められた判別情報に基づいて当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを求める腹式レベル算出部(170)と、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度および腹式レベルに基づいて、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを報知する報知部(170、160)と、をさらに備える。より具体的には、呼吸深度抽出部で抽出された呼吸深度を正規化する正規化部(170)をさらに備え、報知部は、呼吸深度と、1呼吸で肺に出入りする空気量を示す1回換気量との関係を示す第2の回帰式にしたがって演算処理を実行することで、正規化部にて正規化された呼吸深度に対応する1回換気量を求め、その求めた1回換気量と、腹式レベルとに基づいて、被験者の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを決定して報知する。
【0018】
この態様では、報知部は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを被験者に対して報知するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、この態様によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
【0019】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形(図32〜図35、図37〜図39)の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0020】
なお、互いに直交する2軸とは、例えばX軸とY軸である。但し、これに限らず、例えばX軸とY軸をそれぞれ45度傾けた2軸などであってもよい。また、リサージュ図形は、例えば、図32や図33に示すように1呼吸分の様子を示すものであってもよいし、図34や図35に示すように複数回の呼吸の様子を連続して示すものであってもよい。また、呼吸判定装置は、リサージュ図形を表示する表示部を備えていてもよいし、リサージュ図形の表示データを外部の表示装置に出力する出力部を備えていてもよい。
【0021】
例えば、胸式呼吸の場合、図10に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。したがって、被験者の呼吸のうち胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、例えば図32や図34に示すようにリサージュ図形の軌跡は傾斜した直線状になる。また、胸式呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、胸式呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0022】
これに対し、腹式呼吸の場合、図9に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化する一方、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。したがって、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、例えば図33や図35に示すようにリサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。
【0023】
なお、図33に示すリサージュ図形は、1呼吸に占める胸式呼吸と腹式呼吸の割合が50%ずつになる場合のものである。この場合、リサージュ図形の軌跡はブーメラン状(“く”の字状)になり、軌跡の形状が上下でほぼ対称になる。但し、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも低ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(図33では右上がりの直線部分)の占める割合が大きくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が小さくなる。逆に、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも高ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(図33では右上がりの直線部分)の占める割合が小さくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が大きくなる。このように被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸と腹式呼吸の割合に応じて屈曲形状が様々に変化する。
【0024】
また、理論上、腹式呼吸の割合が100%になる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡とは反対方向に傾斜した直線状になる。しかしながら、例えば息を止めて胸式呼吸を全く行わないようにした状態で腹部を凹ませたり膨らませたりした場合であっても、横隔膜の上下に伴って肺が収縮したり拡張したりするため、疾患などで横隔膜が全く機能しない場合を除き、被験者が呼吸を行う場合には胸式呼吸が必ず含まれることになる。したがって、実際には、腹式呼吸の占める割合がどんなに高い場合であっても、リサージュ図形の軌跡には、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分が必ず含まれ、屈曲した形状となる。また、図33に示すように、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する直線部分(近似直線LN1)に対し、そこから折れ曲がった部分(近似直線LN2)がどれだけ屈曲しているのかを示す屈曲角度AGは、腹式呼吸が浅ければ小さくなり、腹式呼吸が深ければ大きくなる。また、腹式呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0025】
このように胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の形状が異なる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ(深さ)によってリサージュ図形の軌跡の大きさや形状が変化する。したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか、あるいは現在の自分の呼吸が胸式呼吸と腹式呼吸のうちどちらの占める割合が高いのかを把握することができる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。
【0026】
また、被験者は、胸式呼吸の訓練を行う場合、リサージュ図形の軌跡が傾斜した直線状になり、そのサイズが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。また、腹式呼吸の訓練を行う場合には、リサージュ図形の軌跡が屈曲した形状になり、そのサイズや屈曲角度AGが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。このようにリサージュ図形を見ながら呼吸の訓練を行うことができると、胸式呼吸や腹式呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0027】
また、ドローイン呼吸の場合、図30に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、図30に示すように体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。このためドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに傾斜した直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた他方の軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。
【0028】
したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸がドローイン呼吸であるか否かも把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。したがって、ドローイン呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、リサージュ図形を見ながら訓練を行うことで、ドローイン呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0029】
以上のようにリサージュ図形を表示することができると、被験者は、現在の自分の呼吸の種別やその大きさ、さらには胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを把握することができる。また、呼吸の種別やその大きさ、あるいは胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを、生体電気インピーダンスの測定値に基づいて客観的に把握することができる。また、呼吸を効率よく訓練することもできる。
【0030】
また、例えばインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーでは、被験者の胸部(剣状突起部)と腹部(臍部)の両方にコイルを内蔵した測定バンドを巻き付け、コイルのインダクタンス変化から、呼吸時の胸部の周囲径変化に相当する胸部変化率Rrc(%)と、呼吸時の腹部の周囲径変化に相当する腹部変化率Rabd(%)を測定する。このようなインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの中には、例えば、X軸を腹部変化率Rabdとし、Y軸を胸部変化率RrcとするKonno-Mead Diagramに準じたリサージュ図形を表示するものがある。
【0031】
しかしながら、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの場合、被験者の胸部と腹部に測定バンドを装着しなければならない。また、被験者が測定を意識したり測定時に緊張したりすると、胸部変化率Rrcや腹部変化率Rabdが大きく変動してしまう。このため睡眠時には比較的信頼性の高い測定結果を得ることができるが、被験者が起きている状態で測定を行うと、信頼性の高い測定結果を得られないケースが多々見受けられる。
【0032】
これに対し、生体電気インピーダンスによる測定の場合、例えば四肢誘導八電極法を利用すれば両掌と両足裏の部分に電流電極や電圧電極を配置すればよく、被験者の体幹部に電流電極や電圧電極を貼り付ける必要がないので拘束性が少ない。また、生体電気インピーダンスの場合、例えば体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaであれば、測定値のうちおよそ8割が肺への空気の出し入れによるもので、残り2割が呼吸筋などによるものである。したがって、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーの場合に比べ、被験者が測定を意識したり測定時に緊張したりすることによる影響を低減し、より信頼性の高い測定結果を得ることが可能になる。これに加え、肺への空気の出し入れや横隔膜の上下動など、呼吸に直結した情報を高い感度で測定することが可能になる。
【0033】
このためリサージュ図形についても、生体電気インピーダンスによるリサージュ図形は、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形に比べ、肺への空気の出し入れや横隔膜の上下動など、呼吸に直結した情報を高い感度で反映したものになる。また、上述したようにインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形は、例えば、X軸を腹部変化率Rabdとし、Y軸を胸部変化率Rrcとするものである。この場合、1呼吸分の軌跡は、胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合でともに右上がりの直線状になる。また、右上がりの直線状の軌跡とX軸とのなす角を軌跡の傾斜角としたとき、胸式呼吸の割合が高いほど軌跡の傾斜角は大きくなって90度に近づき、腹式呼吸の割合が高いほど軌跡の傾斜角は小さくなって0度に近づく。つまり、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィーによるリサージュ図形の場合、胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合では軌跡の傾きが変化するだけで、本発明のように軌跡の形状が異なる訳ではないので、リサージュ図形から呼吸の種別を把握しにくい。
なお、レスピトレースで測定した胸部周囲径Ribと腹部周囲径Abを用いてKonno-Mead Diagramに準じたリサージュ図形を表示する場合についても同様である。
【0034】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)とを生成するセンタリング値生成部(170)と、をさらに備え、表示データ生成部(170)は、第1センタリング値および第2センタリング値によって定まるリサージュ図形上の位置がリサージュ図形を表示する表示領域(160A)の中心になるように、リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、表示領域の中央にリサージュ図形を表示することが可能になるので、リサージュ図形を見易くすることができる。
【0035】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)とを生成するセンタリング値生成部(170)と、をさらに備え、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、第1センタリング値に基づいてリサージュ図形の一方の軸方向のセンタリングを行う第1センタリング処理と、第2センタリング値に基づいてリサージュ図形の他方の軸方向のセンタリングを行う第2センタリング処理とを有し、第2センタリング処理を行う頻度が第1センタリング処理を行う頻度より少なくなるようにしてもよい。
【0036】
ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに傾斜した直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた他方の軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。ここで、センタリングを頻繁に行うと、リサージュ図形が常に表示領域の中央に表示されてしまうため、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができなくなってしまう。上述の態様によれば、例えば、第1センタリング処理は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理は最初の1回だけ行って後は行わないようにするなど、第1センタリング処理よりも第2センタリング処理を行う頻度を少なくしているので、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の位置が他方の軸方向にずれることになる。このためリサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2センタリング処理を行う頻度を少なくした分だけ呼吸判定装置の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2センタリング処理も行っているので、表示領域の中央にリサージュ図形を表示して見易くすることができる。
【0037】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、第1振幅値および第2振幅値を用いて2軸のレンジを調整し、リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、2軸のレンジを調整することで、リサージュ図形を表示する表示領域に対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示することが可能になる。また、表示領域の中央にリサージュ図形を表示することもできる。このためリサージュ図形を見易くすることができる。
【0038】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、第1振幅値を用いて一方の軸のレンジを調整する第1レンジ調整処理と、第2振幅値を用いて他方の軸のレンジを調整する第2レンジ調整処理とを有し、第2レンジ調整処理を行う頻度が第1レンジ調整処理を行う頻度より少なくなるようにしてもよい。
この場合もリサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2レンジ調整処理を行う頻度を少なくした分だけ呼吸判定装置の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2レンジ調整処理も行っているので、リサージュ図形を表示する表示領域に対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示して見易くすることができる。
【0039】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の軌跡の表示態様が最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで異なるようにリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
例えば、図34や図35に示すように複数回の呼吸の様子を連続して示すリサージュ図形の場合、軌跡の表示態様が同じであると、最新の1呼吸分の軌跡が把握しづらい。上述の態様であれば、表示態様(例えば色や線種など)の違いから最新の1呼吸分の軌跡を容易に把握することができる。
【0040】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の軌跡の表示態様が経過時間に応じて変化するようにリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
例えば、経過時間が増えるほど軌跡の色が薄くなるようにすれば、新しい軌跡ほど色が濃いので、最新の1呼吸分の軌跡など、新しい軌跡を容易に把握することができる。
【0041】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、リサージュ図形の表示データを生成するとともに、目標とする呼吸の種別と当該呼吸の大きさとに応じた呼吸指導用のリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形の他に、目標とする呼吸の様子を示す呼吸指導用のリサージュ図形を表示することが可能になる。したがって、被験者は、両方のリサージュ図形を見比べながら呼吸の訓練を行うことができる。この場合、被験者は、自分の呼吸の様子を示すリサージュ図形の軌跡が呼吸指導用のリサージュ図形の軌跡と一致するように意識して呼吸を行うことで、目標とする呼吸を体得することができる。このように呼吸指導用のリサージュ図形を用いることで、被験者の呼吸を効果的に指導することができる。
【0042】
なお、表示データ生成部(170)は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形と呼吸指導用のリサージュ図形とが重ねて表示されるように両者の表示データを生成してもよい。このようにすれば目標とする呼吸との差異を容易に把握することができる。また、表示データ生成部(170)は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形の軌跡と、呼吸指導用のリサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、両者の表示データを生成してもよい。このようにすれば、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形と呼吸指導用のリサージュ図形を重ねて表示しても、軌跡の表示態様(例えば色や線種など)の違いから両者を容易に見分けることができる。
【0043】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、リサージュ図形の軌跡の傾斜角を算出する傾斜角算出部(170)と、傾斜角算出部が算出した傾斜角を予め定められた基準傾斜角と比較して、肺の換気能力の良否を判定する換気能力判定部(170)と、をさらに備えてもよい。
この場合、肺の換気能力の良否をリサージュ図形の軌跡から簡単に判定することができる。なお、立位、座位、仰臥位など、測定時の姿勢によってリサージュ図形の軌跡の傾斜角は異なるので、基準傾斜角も測定時の姿勢に応じて異なる。
【0044】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部(170)と、呼吸深度抽出部が抽出した呼吸深度の経時的変化を示すグラフの表示データを生成するグラフ生成部(170)と、をさらに備え、グラフの時間軸は非線形であって、所定の時間幅を1区間としたとき、最新の1区間と最古の1区間では時間軸のレンジが異なり、最新の1区間の方が最古の1区間より時間分解能が高くなるようにしてもよい。
例えば、呼吸の訓練時間は1回当たり10分〜数十分と比較的長い時間になることが多い。このため測定開始時から現在に到るまでのグラフ全体を表示しようとすると、グラフを時間軸方向に圧縮しなければならない。この際、グラフ全体を均一に圧縮すると、測定区間全体に亘って一律に時間分解能が下がってしまうため、直近の呼吸の大きさについて詳細を把握しづらくなる。上述した態様によれば、表示するグラフの時間軸を非線形にし、最古の1区間より最新の1区間の時間分解能を高くすることができるので、直近の呼吸の大きさについて詳細を容易に把握することができる。
【0045】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部(120)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部(170)と、記憶部を参照し、呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する訓練メニューに基づいて被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、特定した階級に対応するクリア条件が成立すると、被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部(170)と、をさらに備えてもよい。
この場合、被験者は、自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューに基づいて呼吸の訓練を行うことができる。また、訓練メニューを階級ごとに分けて用意し、1階級ごとにクリアしながら次の階級に進むといったゲーム性を持たすことで、楽しみながら呼吸の訓練を行うことができるので、呼吸の訓練に対する被験者のモチベーションを高めることもできる。
【0046】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、生体電気インピーダンス測定部(170、200)は、被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)と、被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第3生体電気インピーダンス(Zb)とを測定し、解析部(170)は、第1生体電気インピーダンスの測定値または第2生体電気インピーダンスの測定値と、第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求めてもよい。
【0047】
このように体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)と、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)と、体幹中部の第3生体電気インピーダンス(Zb)とを測定し、体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)として、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンス(ZaR)または体幹上部左側の第2生体電気インピーダンス(ZaL)を用いてもよい。この場合も、右肺または左肺を対象として被験者の呼吸の種別を判別することができる。
なお、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値または第2生体電気インピーダンスの測定値と、第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0048】
本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(ZaR)、他方の軸を第3生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第1リサージュ図形(図40:右肺用)の表示データを生成するとともに、一方の軸を第2生体電気インピーダンス(ZaL)、他方の軸を第3生体電気インピーダンス(Zb)とし、第2生体電気インピーダンスの測定値および第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第2リサージュ図形(図40:左肺用)の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0049】
この場合、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を表示することが可能になるので、呼吸の種別やその大きさなどを左右の肺ごとに把握することができる。また、2つのリサージュ図形を見比べることで左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することで、左右の肺ごとに呼吸の訓練を行うことが可能になる。健常者の場合、左右の肺で換気能力に差がでることはほとんどないが、例えば、片肺に疾患がある者は、左右の肺で換気能力が大きく異なる。また、過去に肺疾患を経験した者も、左右の肺で換気能力に差がでることがある。例えば、右肺に比べ左肺の換気能力が低い場合など、左肺の換気能力を高めたい場合は、左腕を右肩の後ろに回し、右手で左肘を後ろに押すようにして左肺に負荷を与え、この状態を維持しながら呼吸を行うことで、左肺の換気能力を集中的に鍛えることができる。
【0050】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、第1リサージュ図形と第2リサージュ図形とが重ねて表示されるように、第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を重ねて表示することが可能になるので、左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。
【0051】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、表示データ生成部(170)は、第1リサージュ図形の軌跡と第2リサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
この場合、例えば、右肺用の第1リサージュ図形と左肺用の第2リサージュ図形を重ねて表示しても、軌跡の表示態様(例えば色や線種など)の違いから右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を容易に見分けることができる。
【0052】
また、本発明に係る呼吸判定装置(1)の態様として、第1リサージュ図形の軌跡と第2リサージュ図形の軌跡との差異を検出する軌跡解析部(170)をさらに備え、表示データ生成部(170)は、差異が強調して表示されるように第1リサージュ図形の表示データおよび第2リサージュ図形の表示データを生成してもよい。
このようにしても左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。
【0053】
また、上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定装置(300)は、生体電気インピーダンス測定装置(200’)が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを入力する入力部(320)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(360)と、を備えることを特徴とする。
以上の構成を有する呼吸判定装置においても、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別することができる。なお、呼吸判定装置は、例えば、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯型電子機器(例えば携帯電話機など)であってもよい。
【0054】
また、上述した課題を解決するため、本発明に係る呼吸判定システム(5)は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(200’、360)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部(300、360)と、を備えることを特徴とする。
以上の構成を有する呼吸判定システムにおいても、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)を正確に判別することができる。なお、呼吸判定システムは、例えば、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯型電子機器などを用いて構成されていてもよい。
【0055】
なお、本発明は、被験者の呼吸がドローイン呼吸であるか否かを判定するためのものであってもよい。つまり、本発明は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(170、200)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(170)と、を備えることを特徴とする呼吸判定装置(1)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(170)を備えてもよい。
【0056】
また、本発明は、生体電気インピーダンス測定装置(200’)が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを入力する入力部(320)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(360)と、を備えることを特徴とする呼吸判定装置(300)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(360)を備えてもよい。
【0057】
また、本発明は、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンス(Za)と、被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンス(Zb)とを測定する生体電気インピーダンス測定部(200’、360)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判別可能な判別情報を求める解析部(300、360)と、を備えることを特徴とする呼吸判定システム(5)であってもよい。また、解析部の代わりに、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸が腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であるか否かを判定する判定部(300、360)を備えてもよい。
【0058】
なお、ドローイン呼吸であるか否かを判別するための判別情報は、腹式呼吸と胸式呼吸を判別するための判別情報と同様にして求めることができる。例えば、ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超え、かつセンタリング値生成部が生成した第2センタリング値が被験者の胸式呼吸時の第2センタリング値より所定値以上大きい場合に、被験者の呼吸はドローイン呼吸であると推定することができる。
【0059】
その他、本願の特許請求の範囲に記載した構成は、矛盾しない範囲でドローイン呼吸を判定するための発明に適用可能である。
【0060】
例えば、呼吸判定装置(1)は、第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値(Za0)、および、第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値(Zb0)を生成するセンタリング値生成部(170)と、第1生体電気インピーダンスの測定値の第1センタリング値に対する相対値である第1相対値(ΔZa)を求める第1相対値算出部(170)と、第2生体電気インピーダンスの測定値の第2センタリング値に対する相対値である第2相対値(ΔZb)を求める第2相対値算出部(170)と、を備え、解析部は、第1相対値と第2相対値とに基づいて判別情報を求めてもよい。
【0061】
また、呼吸判定装置(1)は、第1生体電気インピーダンスの測定値と、第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部(170)をさらに備え、生体電気インピーダンス測定部は、所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、第1生体電気インピーダンスおよび第2生体電気インピーダンスを測定し、センタリング値生成部は、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第1センタリング値を生成する一方、ゼロクロスタイミング抽出部で抽出されたゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて第2センタリング値を生成してもよい。
【0062】
また、呼吸判定装置(1)は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンス(Za)、他方の軸を第2生体電気インピーダンス(Zb)とし、第1生体電気インピーダンスの測定値および第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部(170)をさらに備えてもよい。
【0063】
また、呼吸判定装置(1)は、呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部(120)と、第1生体電気インピーダンスの測定値と第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部(170)と、記憶部を参照し、呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する訓練メニューに基づいて被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、特定した階級に対応するクリア条件が成立すると、被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部(170)と、をさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る実施形態の生体測定装置の電気的構成について示すブロック図である。
【図2】生体測定装置の外観例を示す斜視図である。
【図3】生体測定装置の電極配置を示す説明図である。
【図4】電流電極の選択と電圧電極の選択とを説明するための説明図である。
【図5】生体測定装置の動作内容を示すフローチャートである。
【図6】体幹を構成する組織の概略を示す模式図である。
【図7】体幹の生体電気インピーダンスの等価回路を示す回路図である。
【図8】呼吸と生体電気インピーダンスの変化の関係を説明する説明図である。
【図9】腹式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図10】胸式呼吸における生体電気インピーダンスの変化を示す図である。
【図11】腹式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図12】胸式呼吸に伴う胸部および腹部の周囲径変化を示す図である。
【図13】胸部の周囲径変化と腹部の周囲径変化との比と、第1相対値および第2相対値との関係を示す相関図である。
【図14】呼吸解析処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図15】第1センタリング処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図16】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図17】呼吸タイミング抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図18】呼吸スピード判別フラッグ設定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図19】第1センタリング値抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図20】第2センタリング値の生成方法を概念的に説明するための模式図である。
【図21】第2相対値算出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図22】腹式呼吸における第1相対値と第2相対値との経時的変化を示す図である。
【図23】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図24】ΔRib/ΔAb推定演算処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図25】ΔRib/ΔAb推定演算処理の演算結果を示す図である。
【図26】表示部での表示態様を示す図である。
【図27】呼吸深度抽出処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図28】呼吸レベル表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図29】呼吸深度と1回換気量との間の関係を示す相関図である。
【図30】体幹上部および体幹中部の生体電気インピーダンスの時間変化を示すグラフである。
【図31】呼吸種別判別処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図32】胸式呼吸のときに得られる1呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図33】腹式呼吸のときに得られる1呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図34】胸式呼吸のときに得られる複数回の呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図35】腹式呼吸のときに得られる複数回の呼吸分のリサージュ図形を示す図である。
【図36】リサージュ図形表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
【図37】胸式呼吸から腹式呼吸へのリサージュ図形の変化を説明するための図である。
【図38】X軸とY軸を入れ替えた場合のリサージュ図形を示す図である。
【図39】X軸とY軸を入れ替えた場合のリサージュ図形における胸式呼吸から腹式呼吸への変化を説明するための図である。
【図40】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形(1呼吸分)を重ねて表示した場合を示す図である。
【図41】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調表示した場合を示す図である。
【図42】右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の平均値をプロットした場合を示す図である。
【図43】リサージュ図形の表示位置をセンタリングする方法を説明するための模式図(その1)である。
【図44】リサージュ図形の表示位置をセンタリングする方法を説明するための模式図(その2)である。
【図45】ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を示す図である。
【図46】最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで軌跡の色の濃淡を変えた場合のリサージュ図形を示す図である。
【図47】リサージュ図形によるアシスト表示を説明するための図(その1)である。
【図48】リサージュ図形によるアシスト表示を説明するための図(その2)である。
【図49】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その1)である。
【図50】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その2)である。
【図51】肺の換気能力の良否を判定する方法を説明するための図(その3)である。
【図52】呼吸レベルの時間変化を示すグラフである。
【図53】アシスト情報の表示態様を説明するための図である。
【図54】アシスト情報の表示態様の一例を示す図である。
【図55】呼吸の大きさを報知する表示態様の一例を示す図である。
【図56】家庭用のゲーム機を用いた生体測定システムの構成を示す図である。
【図57】ゲーム機の構成を示すブロック図である。
【図58】訓練メニュー管理テーブルのデータ構成を示す図である。
【図59】呼吸訓練管理処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
<1.第1実施形態>
<1−1:生体測定装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る生体測定装置1の構成を示すブロック図である。この生体測定装置1は、生体の状態を測定するものであるが、その機能の一部は、呼吸の種別や胸式呼吸の程度及び腹式呼吸の程度を判定する呼吸判定装置としての役割を担う。
生体測定装置1は、体重を測定するとともに装置全体の動作を管理する管理部100と、被験者の各部位の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定部200とを備える。管理部100は、体重計110、第1記憶部120、第2記憶部130、音声処理部140、スピーカ145、入力部150、並びに表示部160を備える。これらの構成要素は、バスを介してCPU(Central Processing Unit)170と接続されている。CPU170は、装置全体を制御する制御中枢として機能する。なお、CPU170は図示せぬクロック信号発生回路からクロック信号の供給を受けて動作する。また、各構成要素には図示せぬ電源スイッチがオン状態になると、電源回路から電源が供給される。
【0066】
体重計110は、被験者の体重を測定し、その測定した体重データを、バスを介してCPU170に出力する。第1記憶部120は、不揮発性のメモリであって、例えばROM(Read Only Memory)で構成される。第1記憶部120には、装置全体を制御する制御プログラムが記憶されている。CPU170は、制御プログラムにしたがって所定の演算を実行する。
【0067】
第2記憶部130は、揮発性のメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成される。第2記憶部130はCPU170の作業領域として機能し、CPU170が所定の演算を実行する際にデータを記憶する。また、音声処理部140は、CPU170の制御の下、音声データをDA変換して得た音声信号を増幅してスピーカ145に出力する。スピーカ145は増幅した音声信号を振動に変換して放音する。これによって、呼吸方法の指導などのアドバイス情報を音によって被験者に報知することができる。
【0068】
入力部150は、各種のスイッチから構成され、被験者がスイッチを操作すると、身長、年齢、及び性別といった情報が入力される。表示部160は、体重や呼吸の種別といった測定結果や、腹式呼吸に導くための呼気と吸気のリズムやパターンなどのアドバイス情報を知らせる機能、あるいは被験者に各種の情報の入力を促すメッセージを表示する機能を有する。表示部160は、例えば、液晶表示装置などで構成される。
【0069】
次に、生体電気インピーダンス測定部200は、被験者(人体)の生体電気インピーダンスを測定する。生体電気インピーダンス測定部200は、交流電流出力回路210、基準電流検出回路220、電位差検出回路230、A/D変換器240、電極切換回路251及び252を備える。
交流電流出力回路210は基準電流Irefを生成する手段である。交流電流出力回路210は、基準電流Irefの実効値が予め定められた値となるように、当該基準電流Irefを生成する。基準電流検出回路220は、被測定対象に流れる基準電流Irefの大きさを検出して電流データDiとしてCPU170に出力するとともに、被験者に基準電流Irefを通電する。この場合、電極切換回路252は、電流電極X1〜X4の中から2つを選択して電流を供給する。
さらに、電位差検出回路230は、電圧電極Y1〜Y4の中から選択された2つの電圧電極の間の電位差を検出して電位差信号ΔVを生成する。A/D変換器240は電位差信号ΔVをアナログ信号からデジタル信号に変換し電圧データDvとしてCPU170に出力する。CPU170は電圧データDvと電流データDiとに基づいて生体電気インピーダンスZ(=Dv/Di)を計算する。
【0070】
第1記憶部120は、各種データを予め記憶することができる。たとえば、各部位の生体電気インピーダンスを変数として体脂脂肪率や筋肉量を算出するための相関式又は相関テーブルが記憶されている。
CPU170は、体重、被験者の各種の部位の生体電気インピーダンス(例えば、上肢生体電気インピーダンス、下肢生体電気インピーダンス、体幹生体電気インピーダンス)、を演算し、かつ、各種の入出力、測定、演算等について制御する。なお、生体電気インピーダンスなどに基づいて、内臓脂肪/皮下脂肪、内臓脂肪量、皮下脂肪率、皮下脂肪量、全身の脂肪率、身体の各部位の脂肪率(上肢脂肪率、下肢脂肪率、体幹脂肪率など)を演算することもできる。
【0071】
図2に、生体測定装置1の外観例を示す。生体測定装置1は、L字型の形状をしており、台座部20の上に柱状の筐体部30を備える。台座部20には、左足用の電流電極X1及び電圧電極Y1と、右足用の電流電極X2及び電圧電極Y2が設けられている。また、筐体部30の上部には、表示部160が設けられている。この表示部160は、タッチパネルで構成されており、入力部150としても機能する。さらに、筐体部30の左右の側面には、左手用の電極部30Lと右手用の電極部30Rが設けられている。
【0072】
図3は筐体部30の上部を拡大した拡大図である。この図に示すように、左手用の電極部30Lは電流電極X3及び電圧電極Y3を備え、右手用の電極部30Rは電流電極X4及び電圧電極Y4を備える。被験者は、台座30の上に立ち、左右の手を下げた状態で電極部30L及び電極部30Rを握ることによって、測定を行う。
【0073】
電極切換回路251及び252は、CPU170の制御の下、両手及び両足に装着される8個の電極を選択する。この8個の電極を適宜選択することによって、人体の所定の部位における生体電気インピーダンスZを計測することが可能となる。例えば、図4(A)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。なお、基準電流Irefを電流電極X2及びX4の間に流し、電圧電極Y2及びY4の間の電位差を計測しても全身の生体電気インピーダンスを計測することができる。さらに、図4(K)に示すように両掌を短絡させ、両足を短絡させ、両掌から両足までの生体電気インピーダンスを全身の生体電気インピーダンスとして測定してもよい。
【0074】
また、図4(B)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と右手用の電流電極X4との間に供給し、右足用の電圧電極Y2と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、右下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。また、図4(C)に示すように基準電流Irefを左足用の電流電極X1と左手用の電流電極X3との間に供給し、左足用の電圧電極Y1と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、左下肢の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0075】
また、図4(D)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を計測すれば、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を計測することでも、右上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0076】
また、図4(E)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ただし、これに限らず、基準電流Irefを左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間の電位差を計測することでも、左上肢(体幹上部)の生体電気インピーダンスZを計測することができる。
【0077】
また、図4(F)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左手用の電圧電極Y3との間で電位差を計測すれば、両掌間の生体電気インピーダンスZを計測することができる。ここで、体幹を体幹上部と体幹中部に分けた場合、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスは、いずれも体幹上部が含まれる。このため、左上肢、右上肢、及び掌間の生体電気インピーダンスを体幹上部の生体電気インピーダンスとして取り扱うことも可能である。
【0078】
さらに、図4(G)に示すように基準電流Irefを左手用の電流電極X3と左足用の電流電極X1との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(H)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と右足用の電流電極X2との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部の生体電気インピーダンスを計測することができる。また、図4(I)に示すように基準電流Irefを右手用の電流電極X4と左足用の電流電極X1との間に供給し、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。図4(J)に示すように基準電流Irefを右足用の電流電極X2と左手用の電流電極X3との間に供給し、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を計測すれば、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを計測することができる。
【0079】
なお、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定方法は、上述した方法に限定されるものではなく、両手両足の電極のうち、基準電流Irefを供給する電極と電位差を検出する電極とを適宜選択することによって、手、足、あるいは全身といった人体の各部位の生体電気インピーダンスZを各々測定し、測定結果を加減算して体幹中部の生体電気インピーダンスZを算出すればよい。さらに、四肢以外に頭部の耳たぶなどを四肢のいずれかの代用として使用しても、体幹部の生体電気インピーダンスZxの測定は可能である。くわえて、体幹に接触電極を設ける場合には言うに及ばない。
【0080】
<1−2:生体測定装置の動作>
図5は、生体測定装置1の動作を示すフローチャートである。まず、入力部150における電源スイッチ(図示省略)がオンされると、図示せぬ電力供給部から電気系統各部に電力を供給し、表示部160により身長を含む身体特定情報(身長、性別、年齢など)を入力するための画面を表示する(ステップS1)。
続いて、入力部150から身長、性別、年齢等が入力されると、体重計110により体重が測定され、CPU170は体重を取得する(ステップS2)。
【0081】
ステップS2の後、CPU170は、呼吸解析処理を実行する(ステップS3)。この処理では、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める。この詳細な内容については後述する。ステップS3の後、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示する呼吸レベル表示処理を実行する(ステップS4)。この詳細な内容についても後述する。
【0082】
<1−3:呼吸解析の原理>
次に、呼吸解析の原理について説明する。図6は、体幹部の組織の概略を示す模式図である。図6に示すように、体幹部の組織は、横隔膜によって上下に分けられている。上部には、肺と、内外肋間筋などの胸部骨格筋とが形成されている。一方、下部には、内臓組織と、内外腹斜筋・腹横筋や腹直筋などからなる腹部骨格筋とが形成されている。
腹式呼吸及び胸式呼吸のいずれにしても、呼気時に横隔膜は上昇して肺が圧縮され、吸気時に横隔膜は下降して肺は伸長拡大する。胸式呼吸に無い腹式呼吸の特徴は、腹直筋や内外腹斜筋・腹横筋などの腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織と供に横隔膜を上下させる点にある。
【0083】
ここで、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとは、図7に示す等価回路で表すことができる。図7に示すように、第1生体電気インピーダンスZaは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1、および、肺の生体電気インピーダンスZ2の並列インピーダンスと、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3とが直列に接続されたものとなる。ここで、Z1およびZ2の並列インピーダンスは、肺の上葉部の生体電気インピーダンスに相当する。
【0084】
また、図7に示すように、第2生体電気インピーダンスZbは、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ4、および、肺の生体電気インピーダンスZ5の並列インピーダンスと、腹部骨格筋の生体電気インピーダンスZ6、および、内臓組織の生体電気インピーダンスZ7の並列インピーダンスとが直列に接続されたものとなる。ここで、Z4およびZ5の並列インピーダンスは、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスに相当する。また、横隔膜の生体電気インピーダンスは、内臓組織に代表される生体電気インピーダンスZ7に含ませて考えることができる。
【0085】
次に、図8を参照して、呼吸と生体電気インピーダンスの変化との関係を説明する。呼吸に連動した第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺に絶縁性の高い空気が出入りすることによる電気的特質(電気導電性、1/体積抵抗率)の変化が主な原因であると考えられる。つまり、呼気(呼息)では肺組織中に含まれる空気量が減るため肺の生体電気インピーダンスZ2は減少方向に変化する(ΔZlu<0)。一方、吸気(吸息)では空気量が増加するため、肺の生体電気インピーダンスZ2は増加方向に変化する(ΔZlu>0)。
【0086】
胸式で胸郭を広げる呼吸法(胸式呼吸)では、内外肋間筋などの呼吸骨格筋の伸縮変化と肺の伸縮変化が同じ方向に作用するので、肺の生体電気インピーダンスZ2が増加すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も増加し、肺の生体電気インピーダンスZ2が減少すれば胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1も減少する。一方、腹式呼吸は胸郭の変化がほとんど見られない呼吸法なので、胸部骨格筋の生体電気インピーダンスZ1はほとんど変化せず、肺の生体電気インピーダンスZ2が呼吸に伴って大きく変化する。なお、第1生体電気インピーダンスZaには、上肢骨格筋の生体電気インピーダンスZ3が含まれているが、上肢骨格筋は、呼吸に直接的に寄与する筋肉ではない。本実施形態では、被験者は、図2に示す測定装置の台座部20の上に立ち、左右の腕を下げた状態で30L及び30Rを握り計測を行うので、計測中に上肢骨格筋(Z3)が動くことは殆ど無い。図9および図10に示すように、被験者の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、吸気では第1生体電気インピーダンスZaは増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化するという具合である。
【0087】
一方、呼吸に連動した第2生体電気インピーダンスZbの変化は、横隔膜の動きと連動している。上述したように腹式呼吸及び胸式呼吸のいずれの場合も、横隔膜は呼気時上昇し、吸気時下降する。そして、腹式呼吸の特徴は、腹部呼吸筋の伸縮により内臓組織とともに横隔膜を上下させる点にある。より具体的には、腹式呼吸の呼気時のみ、腹筋を緊張させて内臓組織と伴に横隔膜を押し上げ上昇させることで、内臓組織と腹部骨格筋との並列部の生体電気インピーダンスが上昇する(ΔZst>0)。このとき、肺組織の生体電気インピーダンスは減少する(ΔZlu<0)。このため、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用する。このように、胸式呼吸と腹式呼吸とでは、横隔膜から下部にある腹部骨格筋と内臓組織の動きが異なる。
【0088】
図9に示すように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では、横隔膜から上部の生体電気インピーダンスの減少を横隔膜から下部の生体電気インピーダンスの増加が打ち消すように作用するので、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。また、図10に示すように、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、上述した第1生体電気インピーダンスZaの変化と同様に、吸気では第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する一方、呼気では第2生体電気インピーダンスZbは減少方向に変化するという具合である。
【0089】
次に、図11および図12を参照して、被験者の呼吸と、被験者の胸部の周囲径Ribおよび腹部の周囲径Abとの関係について説明する。まず、被験者の呼吸が腹式呼吸である場合を想定する。図11は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の腹式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。図11からも理解されるように、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合は、その呼吸に応じて腹部の周囲径Abが変化する一方、胸部の周囲径Ribは殆ど変化しない。したがって、腹式呼吸の場合は、被験者の胸部の周囲径Ribの変化(Ribの測定値の基準レベルを示すRib基準値に対するRib(測定値)の相対値)ΔRibと、被験者の腹部の周囲径Abの変化(Abの測定値の基準レベルを示すAb基準値に対するAb(測定値)の相対値)ΔAbとの比を示すΔRib/ΔAbは、「1」を下回るという具合である。なお、レスピトレースの情報は、測定値の基準値に対する相対値のピーク値またはボトム値の絶対値(0-P)、および、ピーク値とボトム値との絶対値の和(P-P)のうちの何れかで検出される。ここでは、被験者の1呼吸ごとに、呼吸の種別の判定が行われるので、レスピトレースの情報は、P-Pの形で検出される。
【0090】
次に、被験者の呼吸が胸式呼吸である場合を想定する。図12は、レスピトレース(米国A.M.I社製)で、被験者の胸式呼吸に連動した胸部および腹部の各々の周囲径変化を時系列的に捕捉した結果を示す図である。被験者の呼吸が胸式呼吸の場合は、その呼吸に応じた胸部の周囲径Ribの変化は、腹部の周囲径Abの変化よりも大きいので、上述のΔRib/ΔAbは、「1」を上回るという具合である。ここでは、ΔRib/ΔAbは、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報であると捉えることができる。
【0091】
本実施形態では、被験者の胸部の周囲径の変化ΔRibと腹部の周囲径の変化ΔAbとの比(=ΔRib/ΔAb)と、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZa、および、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する第2相対値ΔZbとの間には相関関係があることを見出し、その相関関係を表す式を用いて、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求める。そして、その求めたΔRib/ΔAbの値から、被験者の呼吸の種別(胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか)を推定できるという具合である。この詳細な内容は後述するが、「第1センタリング値Za0」とは、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものであり、「第2センタリング値Zb0」とは、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベルを示すものである。
【0092】
図13は、複数の被験者の測定データから得られた、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの関係を示す相関図である。図13からも理解されるように、ΔRib/ΔAbと、ΔZb/ΔZaとの間には相関係数R=0.651、P<0.01という高い相関が得られ、以下の回帰式(1)が成立する。
ΔRib/ΔAb=a0×ΔZb/ΔZa+b0 ・・・(1)
a0:回帰係数,b0:定数。
【0093】
また、上記回帰式(1)は以下のように変形できる。
ΔRib/ΔAb=(a0×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b1 ・・・(2)
b1:定数(=b0+1)。
【0094】
ここで、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化は、肺の上葉部の生体電気インピーダンス(Z1およびZ2の並列インピーダンス)の変化であると捉えることができる。一方、第2生体電気インピーダンスZbの変化は、肺の中下葉部の生体電気インピーダンス(Z4およびZ5の並列インピーダンス)の変化と、腹部の生体電気インピーダンス(Z6およびZ7の並列インピーダンス)の変化との和であると捉えることができる。肺の上葉部の生体電気インピーダンスの変化、および、肺の中下葉部の生体電気インピーダンスの変化は、同じ部位(胸部)の生体電気インピーダンスの変化であるとみなせば、第2生体電気インピーダンスZbの変化と第1生体電気インピーダンスZaの変化との差分は、腹部の生体電気インピーダンスの変化に相当する。そうすると、上記式(2)は、腹部の生体電気インピーダンスの変化と胸部の生体電気インピーダンスの変化との比と、ΔRib/ΔAbとの関係を表す式であると捉えることもできる。上記式(2)のa0は、肺の上葉部と中下葉部との測定感度の相違を補正するための補正係数であるとみなすことができる。
【0095】
<1−4:呼吸解析処理>
次に、CPU170が実行する呼吸解析処理について説明する。図14は、呼吸解析処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、通常の1呼吸(=1回の吸気+1回の呼気)につき、10回の呼吸解析処理を実行するように設定される。ここでは、通常の1呼吸に要する時間を4秒とみなし、CPU170は、0.4秒ごとに、呼吸解析処理を実行するという具合である。以下では、呼吸解析処理を実行するタイミング(0.4秒ごとのタイミング)をサンプリングタイミングと呼ぶ。なお、これは一例であり、呼吸解析処理を実行するタイミングは任意に設定可能である。
【0096】
図14に示すように、まず、CPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS10)、ステップS10の結果が肯定である場合はステップS20に進む。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングに到達した場合を想定して、ステップS20以下の各ステップの具体的な内容を説明する。ステップS20以下の各ステップの具体的な説明に先立ち、まずは、各ステップの内容の概略を簡単に説明する。ステップS10の後のステップS20において、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ステップS20の後のステップS30において、CPU170は、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ステップS30の後のステップS40において、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZaおよびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZbの各々について、スムージング処理を実行する。ステップS40の後のステップS50において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する。ステップS50の後のステップS60において、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の第1センタリング値Za0に対する相対値である第1相対値ΔZaを算出する。ステップS60の後のステップS70において、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する。ステップS70の後のステップS80において、CPU170は、上記回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbの値を求めるという具合である。以下、各ステップの具体的な内容を順番に説明していく。
【0097】
ステップS20において、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。例えば、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢(体幹上部)の第1生体電気インピーダンスZaを測定する。ここでは、第n番目(n≧1)のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値をZa(n)’と表記する。
【0098】
ステップS20の後、CPU170は、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップS30)。例えば、CPU170は、左足用の電流電極X1と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定する。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値をZb(n)’と表記する。
【0099】
ステップS30の後、CPU170は、ステップS20で測定した第1生体電気インピーダンスZa(n)’およびステップS30で測定した第2生体電気インピーダンスZb(n)’の各々について、スムージング処理を実行する(ステップS40)。まず、第1生体電気インピーダンスZa(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの実測値Za(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値を、Za(n)と表記する。
【0100】
次に、第2生体電気インピーダンスZb(n)’のスムージング処理について具体的に説明する。CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−2)’と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n−1)’と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの実測値Zb(n)’とを用いた移動平均処理を行う。そして、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値として採用する(スムージング処理)。ここでは、スムージング処理が行われた後の、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値を、Zb(n)と表記する。
【0101】
ステップS40の後、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0を生成する第1センタリング処理を実行する(ステップS50)。ここでは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値をZa0(n)と表記する。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する。センタリング期間の時間長は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸の速度に応じて可変に設定される。以下、その具体的な内容について詳細に説明する。
【0102】
図15は、第1センタリング処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図15に示すように、まず、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA10を抽出するMA10抽出処理を実行する(ステップS51)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−9)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA10(n)として抽出する([Za(n−9)+Za(n−8)+・・・+Za(n)]/10→MA10(n))。
【0103】
ステップS51の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルを示すMA20を抽出するMA20抽出処理を実行する(ステップS52)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Za(n−19)〜Za(n))を用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMA20(n)として抽出する([Za(n−19)+Za(n−18)+・・・+Za(n)]/20→MA20(n))。
【0104】
ステップS52の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値をMAX10として抽出するMAX10抽出処理を実行する(ステップS53)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最大の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMAX10(n)として抽出するという具合である。
【0105】
ステップS53の後、CPU170は、10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値をMIN10として抽出するMIN10抽出処理を実行する(ステップS54)。より具体的には、CPU170は、第n−9番目〜第n番目の10個のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるMIN10(n)として抽出するという具合である。
【0106】
ステップS54の後、CPU170は、20個のサンプリングタイミングの各々におけるMAX10とMIN10との平均値(第n番目のサンプリングタイミングにおける平均値をAV10(n)と表記)について移動平均処理を行い、その処理結果を、中央値として算出する中央値算出処理を実行する(ステップS55)。より具体的には、CPU170は、第n−19番目〜第n番目の20個のサンプリングタイミングの各々における平均値(AV10(n−19)〜AV10(n))について移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける中央値CNT20(n)として抽出する([AV10(n−19)+AV10(n−18)+・・・+AV10(n)]/20→CNT20(n))。ここでは、説明を省略するが、中央値CNT20(n)は、体動などに起因するアーチファクト(データ波形の歪み)等による処理に適さない異常波形の抽出に用いられる。
【0107】
ステップS55の後、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸のタイミングを抽出する呼吸タイミング抽出処理を実行する(ステップS56)。以下では、図16および図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を説明する。図16および図17は、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図16に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZa(n)を抽出する微分係数抽出処理を実行する(ステップS201)。より具体的には、CPU170は、以下の式(3)にしたがって演算処理を実行することで、微分係数dZa(n)を抽出する。
[Za(n)−Za(n−2)]/1.2=dZa(n) ・・・(3)
【0108】
次に、CPU170は、ステップS201で抽出した微分係数dZa(n)の絶対値が0.1より小さいか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の結果が肯定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の極性判別フラッグF0(n)を「0」に設定してステップS204に進む。極性判別フラッグF0(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの値は極大値(ピーク値)または極小値(ボトム値)であることを意味する。
【0109】
一方、ステップS202の結果が否定である場合、CPU170は、微分係数dZa(n)の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の結果が肯定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「+1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は正側であることを意味する。ステップS203の結果が否定である場合、CPU170は、極性判別フラッグF0(n)を「-1」に設定してステップS204へ進む。極性判別フラッグF0(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおいて、第1生体電気インピーダンスZaの変化の方向は負側であることを意味する。
【0110】
ステップS204において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)の絶対値と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n−1)の絶対値とが等しく、かつ、F0(n−1)の値とF0(n)の値とが等しくないか否かを判定する。ステップS204の結果が肯定である場合、CPU170は、F0(n)を「0」に設定して、次のステップS206(図17参照)へ進む。ステップS204の結果が否定である場合、CPU170は、ステップS204の直前で設定したF0(n)の値を維持したまま、次のステップS206へ進む。
【0111】
図17を参照しながら、呼吸タイミング抽出処理の具体的な内容の説明を続ける。CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS206)。ステップS206の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「0」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電位インピーダンスの測定値Za(n)は、ピーク値またはボトム値ではないことを意味する。
一方、ステップS206の結果が肯定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「+1」よりも大きいか否かを判定する。
【0112】
ステップS207の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はピーク値(最大値)であることを意味する。
【0113】
ステップS207の結果が否定である場合、CPU170は、3個のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグF0の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する(ステップS208)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミング〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における極性判別フラッグ(F0(n−2)〜F0(n))の和が「-1」よりも小さいか否かを判定する。
【0114】
ステップS208の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「-1」に設定して、ステップS209へ進む。ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるとは、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)はボトム値(最小値)であることを意味する。一方、ステップS208の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「0」に設定して、ステップS209へ進むという具合である。
【0115】
ステップS209において、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する。ステップS209の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)に1を加算する一方(ステップS210)、ステップS209の結果が肯定である場合、CPU170は、サンプリングカウンタ値Nを初期化する(ステップS211)。ここで、図9および図10からも理解されるように、被験者の呼吸が胸式呼吸および腹式呼吸の何れの場合であっても、呼吸に伴う第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状であるところ、サンプリングカウンタ値Nは、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達するたびに初期化(サンプリングカウンタ値=0)され、次のピーク値に到達するまでのサンプリングタイミングの回数が順次にカウントされていくという具合である。以上で、図15のステップS56における呼吸タイミング抽出処理が終了する。
【0116】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸タイミング抽出処理が終了すると、CPU170は、被験者の呼吸が速めの呼吸なのか遅めの呼吸なのかを判別する呼吸スピード判別フラッグを設定する(ステップS57)。以下、図18を参照しながら、ステップS57でCPU170が実行する呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を説明する。図18は、呼吸スピード判別フラッグ設定処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図18に示すように、まずCPU170は、極性判別フラッグF0(n)が「0」であるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。
【0117】
ステップS301の結果が肯定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「10」よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。ここで、被験者の呼吸のスピードが遅ければ、第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達してから、次のピーク値に到達するまでの時間長は長くなり、次のピーク値に到達する直前のサンプリングカウンタ値Nも大きくなる。本実施形態では、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおいて第1生体電気インピーダンスZaの測定値がピーク値に到達したと判断した場合は、その直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいか否かを判定し、当該サンプリングカウンタ値が「10」よりも大きいと判定した場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する。具体的には、ステップS303の結果が肯定である場合、CPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「20」であるとは、被験者の呼吸が遅めの呼吸であることを意味する。また、ステップS303の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断して呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了する。呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるとは、被験者の呼吸が速めの呼吸であることを意味する。
【0118】
一方、ステップS302の結果が否定である場合、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)が「-1」であるか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の結果が否定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n)は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける呼吸スピード判別フラッグFma(n−1)に等しいとみなして処理を終了する。ステップS304の結果が肯定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きいか否かを判定する(ステップS305)。本実施形態では、CPU170は、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも大きい場合は、被験者の呼吸は遅めの呼吸であると判断する一方、ボトム値に到達する直前のサンプリングカウンタ値N(n−1)が「5」よりも小さい場合は、被験者の呼吸は速めの呼吸であると判断する。具体的には、CPU170は、ステップS305の結果が肯定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「20」に設定して処理を終了する一方、ステップS305の結果が否定である場合は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)を「10」に設定して処理を終了するという具合である。以上で、図15のステップS57における呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了する。
【0119】
再び図15に戻って説明を続ける。上述の呼吸スピード判別フラッグ設定処理が終了すると、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を抽出する(ステップS58)。以下、図19を参照しながら、ステップS58でCPU170が実行する第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を説明する。図19は、第1センタリング値抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図19に示すように、まずCPU170は、呼吸スピード判別フラッグFma(n)が「10」であるか否かを判定する(ステップS401)。言い換えれば、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸であるか否かを判定するという具合である。
【0120】
本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)が生成される。上記ステップS401の結果が肯定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、その速めの1呼吸に要する時間長(ここでは約4.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が速めの呼吸である場合は、第n−9番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−9番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が肯定である場合、CPU170は、図15のステップS51で求めたMA10(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS402)。さらに詳述すると、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n−1)と、MA10(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA10(n)]/3→Za0(n))。
【0121】
一方、上記ステップS401の結果が否定である場合、つまりは第n番目のサンプリングタイミングにおける被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、その遅めの1呼吸に要する時間長(ここでは約8.0秒)がセンタリング期間として設定される。すなわち、被験者の呼吸が遅めの呼吸である場合は、第n−19番目のサンプリングを始点とし、第n番目のサンプリングタイミングを終点とする期間がセンタリング期間として設定され、第n−19番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理の結果に基づいて第1センタリング値Za0(n)が生成される。より具体的には、ステップS401の結果が否定である場合、CPU170は、図15のステップS52で求めたMA20(n)に基づいて、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)を生成する(ステップS403)。さらに詳述すると、CPU170は、Za0(n−2)と、Za0(n−1)と、MA20(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0(n)として採用する([Za0(n−2)+Za0(n−1)+MA20(n)]/3→Za0(n))。以上で、図14のステップS50における第1センタリング処理が終了する。
【0122】
前述したように、被験者の呼吸が胸式呼吸であっても腹式呼吸であっても、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形は略正弦波状となる。CPU170は、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0が得られるように、所定数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスZaの測定値に基づいて第1センタリング値Za0を生成する。より具体的には、CPU170は、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数のサンプリングタイミングの各々における第1生体電気インピーダンスの測定値を用いた移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける第1センタリング値Za0を求めるので、体動などによる影響で、第1生体電気インピーダンスZaの変化を示す波形が乱れても、それに応じた第1センタリング値Za0を精度良く生成できる。そして、各サンプリングタイミングに対応するセンタリング期間の時間長は、当該サンプリングタイミングにおける被験者の呼吸速度に応じて可変に設定されるという具合である。
【0123】
図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS50の第1センタリング処理が終了すると、CPU170は、第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)の第1センタリング値Za0(n)に対する相対値である第1相対値ΔZa(n)を算出する第1相対値算出処理を実行する(ステップS60)。より具体的には、CPU170は、ステップS40で求めた第1生体電気インピーダンスの測定値Za(n)と、ステップS50で求めた第1センタリング値Za0(n)との差分を求め、その求めた差分値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)として採用するという具合である。
【0124】
ステップS60の後、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0を生成し、その生成した第2センタリング値Zb0を用いて、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の第2センタリング値Zb0に対する相対値である第2相対値ΔZbを算出する(ステップS70)。
【0125】
ここで、前述したように、腹式呼吸の呼気における第2生体電気インピーダンスZbの変化は、第1生体電気インピーダンスZaの変化とは異なる態様を示すので、第1センタリング値Za0を求める場合と同様に、所定数のサンプリングタイミングの各々における第2生体電気インピーダンスZbの測定値を用いた移動平均処理を行っても、これらの振幅基準レベル、すなわち、第2生体電気インピーダンスZbの変化を示す波形から、呼吸に起因した情報を抽出するための振幅基準レベル(第2センタリング値Zb0)を精度良く求めることはできない。
【0126】
そこで、本実施形態では、図20に示すように、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と、第1センタリング値Za0とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出し、当該ゼロクロスタイミングにおける第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて第2センタリング値Zb0を生成している。これにより、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルを精度良く抽出できる。図20は、第2センタリング値Zb0の生成方法を概念的に説明するための図である。以下では、図21を参照しながら、ステップS70でCPU170が実行する第2相対値算出処理の具体的な内容を説明する。
【0127】
図21は、第2相対値算出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図21に示すように、CPU170は、5個のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値を抽出する(ステップS71)。より具体的には、CPU170は、第n−4番目〜第n番目のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaの絶対値|ΔZa|(|ΔZa(n−4)|〜|ΔZa(n)|)のうち最小の値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n)として抽出するという具合である。
【0128】
ステップS71の後、CPU170は、直前のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値と、ステップS71で抽出したクロスポイント判定値とが等しく、且つ、直前のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS72)。より具体的には、CPU170は、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定値ΔMIN5(n−1)とΔMIN5(n)とが等しく、且つ、第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されているか否かを判定する。クロスポイント判定フラッグF2(n−1)が「+1」に設定されている場合は、第n−1番目のサンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるとみなされる。なお、クロスポイント判定フラッグF2の初期値(デフォルト値)、つまりは第1番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(1)の値は「0」に設定されている。
【0129】
ステップS72の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS72の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の絶対値が0.3以下であるか否かを判定する(ステップS73)。ステップS73の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングではないと判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「0」に設定してステップS74へ進む。ステップS73の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングはゼロクロスタイミングであると判定し、クロスポイント判定フラッグF2(n)を「+1」に設定してステップS74へ進む。
【0130】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2(n)が「+1」であるか否かを判定する(ステップS74)。ステップS74の結果が肯定の場合、CPU170は、第2センタリング値Zb0を抽出する(ステップS75)。より具体的には、CPU170は、第n−2番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−2)と、第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)と、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)とを用いて移動平均処理を行い、その処理結果を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n)として抽出する([Zb0(n−2)+Zb0(n−1)+Zb(n)]/3→Zb0(n))。一方、ステップS74の結果が否定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n−1)を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2センタリング値Zb0(n)として採用する(Zb0(n−1)→Zb0(n))。
【0131】
そして、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)を算出する(ステップS76)。より具体的には、CPU170は、第2生体電気インピーダンスの測定値Zb(n)と、第2センタリング値Zb0(n)との差分を、第n番目のサンプリングタイミングにおける第2相対値ΔZb(n)として採用するという具合である。以上で、図14のステップS70における第2相対値算出処理が終了する。
【0132】
例えば被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbが図9のように変化する場合、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、図22のようになる。第1相対値ΔZaの経時的変化を示す波形は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の振幅基準レベルである第1センタリング値Za0をゼロ基準とするものであり、第2相対値ΔZbの経時的変化を示す波形は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値の振幅基準レベルである第2センタリング値Zb0をゼロ基準とするものである。両波形を重ねることで、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形と、呼気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形とを判別することができる。本実施形態では、CPU170は、第1相対値ΔZaの値に基づいて、被験者の呼吸が吸気であるか呼気であるかを判定する。より具体的には、CPU170は、第1相対値ΔZaが正の値である場合は吸気であると判定し、負の値である場合は呼気であると判定するという具合である。また、吸気における第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbの各々の波形の振幅および積分値の違いに基づいて、前述の回帰式(2)の係数を補正してもよい。これにより、測定精度の向上が図られる。
【0133】
再び図14に戻って説明を続ける。図14に示すように、ステップS70の第2相対値算出処理が終了すると、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAbを推定するΔRib/ΔAb推定演算処理を実行する(ステップS80)。以下、図23および図24を参照しながら、ステップS80でCPU170が実行するΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を説明する。図23および図24は、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図23に示すように、まずCPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)の値が「0」以上であるか否かを判定する(ステップS81)。
【0134】
ステップS81の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の推定演算を行う(ステップS82)。より具体的には、CPU170は、上述の回帰式(2)にしたがって演算処理を実行することで、第1相対値ΔZa(n)および第2相対値ΔZb(n)に対応するΔRib/ΔAb(n)を求める。一方、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を初期値に設定する。本実施形態では、ステップS81の結果が肯定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定する。
【0135】
次に、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の値が、−2.5以上であり、且つ4.5以下であるか否かを判定する(ステップS83)。ステップS83の結果が否定の場合、CPU170は、ΔRib/ΔAbの値を、初期値である「1.0」に設定してステップS84へ進む。ステップS83の結果が肯定の場合、CPU170は、そのままステップS84へ進む。
【0136】
ステップS84において、CPU170は、ΔRib/ΔAb(n)の絶対値と、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)の絶対値との差分(|ΔRib/ΔAb(n)|−|ΔRib/ΔAb(n−1)|)が0.3よりも大きいか否かを判定する。ステップS84の結果が否定である場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n−1)と、ΔRib/ΔAbとの平均を求め、その求めた平均値を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)として採用([ΔRib/ΔAb(n−1)+ΔRib/ΔAb(n)]/2→ΔRib/ΔAb(n))して次のステップS85(図24参照)へ進む。一方、ステップS84の結果が肯定である場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAb(n)の値を、初期値である「1.0」に設定して次のステップS85へ進む。
【0137】
図24を参照しながら、ΔRib/ΔAb推定演算処理の具体的な内容の説明を続ける。図24に示すように、ステップS85において、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを判定する。ステップS85の結果が肯定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が呼気であると判断し、直前の積分回数のカウント値Niに1を加算する。より具体的には、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n−1)に1を加算した値を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)として採用する。
【0138】
一方、ステップS85の結果が否定の場合、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であると判断し、積分回数のカウント値Niの値を「0」に初期化する。すなわち、この場合、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)は「0」に設定されるという具合である。
【0139】
続いて、図24に示すように、CPU170は、第1相対値ΔZa(n)が「0」よりも小さいか否かを再び判定する(ステップS86)。ステップS86の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n−1))と、ΔRib/ΔAb(n)との和を求めることで、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値(ΣΔRib/ΔAb(n))を求めて次のステップS87へ進む。一方、ステップS86の結果が否定の場合、つまりは、被験者の呼吸状態が吸気であると判断した場合は、CPU170は、ピーク/ボトム判別フラッグF1(n)を「+1」に設定して次のステップS87へ進む。
【0140】
次に、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)がゼロであるか否かを判定する(ステップS87)。ステップS87の結果が否定の場合、CPU170は、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの積分値[ΣΔRib/ΔAb(n)]を、第n番目のサンプリングタイミングにおける積分回数のカウント値Ni(n)で割ることで、ΔRib/ΔAbの平均値を求める。一方、ステップS87の結果が肯定の場合、CPU170は、直前の第n−1番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb(n−1)]/Ni(n−1))を、第n番目のサンプリングタイミングにおけるΔRib/ΔAbの平均値として採用する。以上で、ΔRib/ΔAb推定演算処理が終了し、第n番目のサンプリングタイミングにおける呼吸解析処理が終了する。
【0141】
被験者の呼吸が腹式呼吸であって、第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbが図22のように変化する場合、上述のΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)は、図25のように変化する。図25において、呼気におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)が1.0以下である場合は、被験者の呼吸は腹式呼吸であると推定される一方、1.0を上回る場合は、被験者の呼吸は胸式呼吸であると推定されるという具合である。
【0142】
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170が呼吸解析処理を実行することで、サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaおよび第2相対値ΔZbに対応するΔRib/ΔAbが求められるので、被験者の呼吸の種別(腹式呼吸なのか胸式呼吸なのか)をリアルタイムで正確に判別できるという利点がある。
【0143】
<1−5:呼吸レベル表示処理>
次に、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理について説明する。本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示(報知)する呼吸レベル表示処理を実行する。より具体的には、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸の深さを示す呼吸深度と、当該1呼吸における呼吸解析処理の結果とから、当該1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御する。図26に示すように、本実施形態では、1呼吸における胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度のほか、当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを表示部160に表示するように制御する。図26に示す第1バーグラフBG1は、胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを表示するためのものである。一方、図26に示す第2バーグラフBG2は、被験者の腹式レベルを表示するためのものである。これらの詳細な内容については後述する。
【0144】
呼吸レベル表示処理の具体的な説明に先立って、図27を参照しながら、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理について説明する。図27は、CPU170が実行する呼吸深度抽出処理の具体的な内容を示すフローチャートである。後述するように、この呼吸深度抽出処理で抽出された被験者の呼吸深度(呼吸の深さ)は、呼吸レベル表示処理に用いられる。
【0145】
図27に示すように、まずCPU170は、サンプリングタイミングに到達したか否かを判定し(ステップS501)、ステップS501の結果が肯定である場合は次のステップS502へ進む。ステップS502において、CPU170は、被験者の呼吸が吸気であるか否かを判定する。具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1相対値ΔZaの値が正の値である場合には吸気であると判定する一方、負の値である場合には呼気であると判定するという具合である。CPU170は、吸気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する一方、呼気であると判定した場合は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。なお、初期状態においては、吸気判別フラッグF3は「1」に設定される(つまりはF3のデフォルト値は1に設定される)。
【0146】
ステップS502の結果が肯定の場合、CPU170は、ピークホールド処理を実行する(ステップS503)。より具体的には、CPU170は、吸気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最大の値をピーク値ΔZa(MAX)として保持する。一方、ステップS502の結果が否定の場合、CPU170は、ボトムホールド処理を実行する(ステップS504)。より具体的には、CPU170は、呼気での複数のサンプリングタイミングの各々における第1相対値ΔZaのうち最小の値をボトム値ΔZa(MIN)として保持する。
【0147】
次に、CPU170は、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定する(ステップS505)。より具体的には、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおけるクロスポイント判定フラッグF2が「+1」であるか否かを判定することで、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングであるか否かを判定するという具合である。ステップS505の結果が否定の場合、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理は終了する。一方、ステップS505の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングにおける第1生体電気インピーダンスZaの微分係数dZaが正極性(>0)であるか否かを判定する(ステップS506)。言い換えれば、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであるか否かを判定する。
【0148】
ステップS506の結果が肯定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、呼気から吸気へと変化するタイミングであると判断して、そのときホールドされているピーク値ΔZa(MAX)とボトム値ΔZa(MIN)との絶対値の和を、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pとして抽出する(ステップS507)。その後、CPU170は、吸気フラッグ設定処理を実行する(ステップS508)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「1」に設定する。そして、CPU170は、ピークホールド処理を初期化する(ステップS509)。より具体的には、CPU170は、ステップS503で保持していたピーク値ΔZa(MAX)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
【0149】
一方、ステップS506の結果が否定の場合、CPU170は、当該サンプリングタイミングが、吸気から呼気へと変化するタイミングであると判断して、呼気フラッグ設定処理を実行する(ステップS510)。より具体的には、CPU170は、吸気判別フラッグF3を「0」に設定する。そして、CPU170は、ボトムホールド処理を初期化する(ステップS511)。より具体的には、CPU170は、ステップS504で保持していたボトム値ΔZa(MIN)を、「0」に設定(初期化)して、当該サンプリングタイミングにおける呼吸深度抽出処理を終了する。
【0150】
次に、図28を参照しながら、CPU170が実行する呼吸レベル表示処理の具体的な内容を説明する。図28は、呼吸レベル表示処理の具体的な内容を示すフローチャートである。図28に示すように、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度を正規化する(ステップS601)。ここで、「呼吸深度を正規化する」とは、前述の呼吸深度抽出処理で抽出された直前の1呼吸における呼吸深度の値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。具体的には、ステップS601において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第2センタリング値Zb0(詳述すれば、当該1呼吸における複数のサンプリングタイミングの各々における第2センタリング値Zb0の平均値)で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用する。
【0151】
次に、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaの値に応じて、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(以下、「第1表示段階数」と呼ぶ)を決定する(ステップS602)。より具体的には、CPU170は、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求め、その求めた%ΔTVの値に応じて、第1表示段階数を決定する。ここで、「1回換気量」とは、被験者の1呼吸で肺に出入りする空気量を示すものであり、ΔTVと表記する。また、「1回換気量を正規化する」とは、スパイロなどで計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正することを意味する。本実施形態では、1回換気量ΔTVの正規化を行う際には、スパイロなどで計測された被験者の肺活量の値(実測値)VCを、標準肺活量を示す標準VCで割り算した形で表される係数%VC(=実測VC/標準VC)が用いられる。具体的には、計測された1回換気量ΔTVの値(実測値)を上述の係数%VCで割ることで、1回換気量の正規化値%ΔTV(=ΔTV/%VC)が求められる。なお、例えば男性の標準肺活量VCmale(ml)は、(27.63−0.112×年齢)×身長(cm)で表され、女性の標準肺活量VCfemale(ml)は、(21.78−0.101×年齢)×身長(cm)で表される。
【0152】
図29は、男女合わせて20人で、各々の1回換気量ΔTVを3回ずつ(小程度の換気、中程度の換気、大程度の換気を各1回)測定したときの、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとの関係を示す相関図である。図29に示すように、1回換気量の正規化値%ΔTVと呼吸深度の正規化値%ΔZaとは相関係数r=0.75という高い相関が得られ、以下の回帰式(4)が成立する。
%ΔZa=c0×%ΔTV ・・・(4)
c0:回帰係数。
【0153】
CPU170は、上述の回帰式(4)にしたがって演算処理を実行することで、ステップS601で求めた呼吸深度の正規化値%ΔZaに対応する1回換気量の正規化値%ΔTVを求める。そして、CPU170は、その求めた1回換気量の正規化値%ΔTVに応じて、第1表示段階数を決定する。本実施形態では、第1表示段階数の最大値は、胸式5段階と腹式5段階とを合わせた「10」に設定されている(図26参照)。
【0154】
図29に示すように、本実施形態では、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第1所定値α1以上である場合は、被験者の呼吸レベルは「最大」とみなされる。この場合、CPU170は、第1表示段階数を最大値である「10」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第2所定値α2(<α1)以上であって、かつ第1所定値α1を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、「大程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「8」に決定する。さらに、1回換気量の正規化値%ΔTVが第3所定値α3(<α2)以上であって、かつ第2所定値α2を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「中程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「6」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4(<α3)以上であって、かつ第3所定値α3を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは「小程度」とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「4」に決定する。また、1回換気量の正規化値%ΔTVの値が第4所定値α4を下回る場合は、被験者の呼吸レベルは、安静時における必須レベル程度とみなされる(図29参照)。この場合、CPU170は、第1表示段階数を「2」に決定するという具合である。
【0155】
再び図28に戻って説明を続ける。図28に示すように、ステップS602の段階数決定処理が終了すると、CPU170は、直前の1呼吸における腹式レベルを決定する(ステップS603)。具体的には、CPU170は、直前の1呼吸におけるΔRib/ΔAbの値(平均値)に応じて、腹式レベルの数値を決定する。腹式レベルの数値は0〜100までの値で表され、その値が0に近いほど腹式呼吸の程度は小さく(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は小さく)、100に近いほど腹式呼吸の程度は大きい(被験者の呼吸に占める腹式呼吸の割合は大きい)。
【0156】
図28に示すように、ステップS603の後、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数を、腹式と胸式とに分割する段階数分割処理を実行する(ステップS604)。より具体的には、CPU170は、ステップS602で決定した第1表示段階数と、ステップS603で決定した腹式レベルとに基づいて、段階数分割処理を実行する。ここでは、全体の呼吸レベルを示す第1表示段階数が「6」である一方、腹式レベルは「70」である場合を想定して説明を続ける。腹式レベルが「70」であるとは、腹式呼吸と胸式呼吸との割合は、7:3であるとみなされるので、第1表示段階数「6」は、胸式で2段階、腹式で4段階に分割される。つまり、図26のように、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフのBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」になるように設定される。
【0157】
図28に示すように、ステップS604の後、CPU170は、被験者の呼吸速度に応じたマージンレベルを決定する(ステップS605)。いま、直前の1呼吸が安静呼吸であって、当該1呼吸に要する時間長が4秒以上であった場合を想定する。本実施形態では、被験者の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数が予め定められており、安静呼吸時の呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「2」に設定されている。CPU170は、その段階数「2」を、胸式と腹式に1段階ずつ割り振る。上述のステップS604で説明したように、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「2」、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数は「4」となるように設定されているので、胸式呼吸については1段階分の余裕があり、腹式呼吸については3段階分の余裕があるという具合である。
【0158】
この場合は、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数が「1」以上であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「2」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは必須レベルを上回る「小程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「3」であれば、さらに上の「中程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「4」であれば、さらに上の「大程度」のレベルを満たしていることを意味し、その表示段階数が「5」であれば、被験者の腹式呼吸の大きさは「最大」レベルを満たしていることを意味するという具合である。前述したように、ここでは、腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「4」に設定されているので、被験者の腹式呼吸の大きさは「大程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)に対して十分な余裕があることが分かる。胸式呼吸についても同様であり、ここでは、胸式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1の表示段階数数は「2」に設定されているので、被験者の胸式呼吸の大きさは「小程度」のレベルを満たしており、必須レベル(表示段階数「1」)を上回っていることが分かる。
【0159】
なお、被験者の呼吸速度が大きいほど、当該呼吸速度に応じた必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は増加するので、結果として、胸式呼吸および腹式呼吸の必須レベルに対応する段階数も増加する。例えば1呼吸に要する時間長が3秒以上であって、かつ4秒未満である場合は、必須の呼吸レベルに対応する第1バーグラフBG1の段階数は「4」に設定され、その段階数「4」は、胸式と腹式に2段階ずつ割り振られる。これに応じて、胸式呼吸および腹式呼吸の各々のマージンレベルが変化するという具合である。
【0160】
ステップS605の後、CPU170は、被験者の胸式呼吸および腹式呼吸の各々の大きさと余裕度とを第1バーグラフBG1で表示する一方、被験者の腹式レベルを第2バーグラフBG2で表示する(ステップS606)。図26に示すように、CPU170は、着色表示すべき第1バーグラフBG1の段階数(胸式2段階、腹式4段階)のうち腹式呼吸および胸式呼吸の各々の必須レベルに対応する段階数と、マージン分に対応する段階数とを異なる色で表示するので、被験者は、自分の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを容易に把握することができる。
【0161】
また、図26に示すように、第2バーグラフBG2で表示される腹式レベルの段階数は「5」に設定され、上述のステップS603で求められた腹式レベルの数値に応じて、5つの段階のうちの何れかが選択的に着色表示される。具体的には、CPU170は、腹式レベルの数値が0〜20の場合は1段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が21〜40の場合は2段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が41〜60の場合は3段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が61〜80の場合は4段階目のみを着色表示するように制御し、腹式レベルの数値が81〜100の場合は5段階目のみを着色表示するように制御する。前述したように、ここでは、腹式レベルは「70」である場合を想定しているので、図26に示すように、CPU170は、第2バーグラフBG2の4段階目のみを着色表示するように制御するという具合である。
【0162】
以上に説明したように、本実施形態では、CPU170は、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の大きさと余裕度とを表示部160に表示するように制御するので、被験者は、自分の胸部呼吸筋および腹部呼吸筋の活用の強みと弱みとを認識できる。これにより、被験者に対して、自分の強みを自覚させつつも、自分の弱みを活性化させるための腹式呼吸等の呼吸筋トレーニングへのモチベーションを確保させることができる。また、本実施形態によれば、スパイロなどのように、被験者が最大の呼吸を行わなくとも、当該被験者の呼吸能力の余裕を把握できるので、被験者の安全を確保するという観点からも好ましいという利点がある。
【0163】
<2.第2実施形態>
胸式呼吸と腹式呼吸の他に、腹を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行うドローイン呼吸がある。ドローイン呼吸は、普段の生活ではあまり使われることがない体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を効果的に鍛えることができる。インナーマッスルの強化は、呼吸機能を高めるだけでなく、背骨を支える筋肉が強化されて体幹部の筋肉が力を発揮し易くなることから、運動機能などの強化にもつながる。例えば、ドローイン呼吸は、運動機能の向上を目的としてアスリートのトレーニングに取り入れられている。また、理学療法やリハビリテーションの現場では、腰痛の改善や腰痛の予防対策としてドローイン呼吸が利用されている。また、ドローイン呼吸はダイエットにも効果がある。
【0164】
第1実施形態で説明した生体測定装置1を応用すれば、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかに加え、ドローイン呼吸なのかを判別することが可能になる。以下、ドローイン呼吸を判別する場合について説明する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0165】
図30は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaと体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの時間変化を示すグラフである。同図に示すようにドローイン呼吸の場合、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。
【0166】
このようにドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが異なるので、これを利用してドローイン呼吸を判別することが可能である。すなわち、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)を行った後、ΔRib/ΔAbの平均値が1.0を上回るため胸式呼吸であると判別した場合において、第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル(第2センタリング値Zb0)が、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルよりも所定値以上高い場合に、これをドローイン呼吸と判別すればよい。
【0167】
但し、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルは、被験者ごとに異なる。したがって、上述した方法でドローイン呼吸を判別するためには、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを事前に測定して第2記憶部130に記憶しておく必要がある。また、上述した所定値についても第1記憶部120に予め記憶しておく必要がある。
【0168】
このため本実施形態に係る生体測定装置1(CPU170)は、例えば、被験者に対して胸式呼吸を行うよう指示するメッセージを報知し、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した多数の第2センタリング値Zb0の平均値を算出し、これを胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとして第2記憶部130に記憶する。以降、このようにして第2記憶部130に記憶された、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルをZb1と表記する。一方、第1記憶部120に記憶しておく所定値は、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。以降、第1記憶部120に記憶されている所定値をΔZb1と表記する。
【0169】
図31は、呼吸種別判別処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す処理は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理を行った後に実行される。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、図14に示した呼吸解析処理を行い、サンプリングタイミングごとに、第1生体電気インピーダンスZaの測定(ステップS20)と、第2生体電気インピーダンスZbの測定(ステップS30)と、スムージング処理(ステップS40)と、第1センタリング処理(ステップS50)と、第1相対値算出処理(ステップS60)と、第2相対値算出処理(ステップS70)と、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)を実行する。
【0170】
この後、CPU170は、呼吸種別判別処理を開始し、まず、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)によって求められたΔRib/ΔAbの平均値([ΣΔRib/ΔAb]/Ni)が1.0以下であるか否かを判定する(ステップS701)。ステップS701の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が腹式呼吸であると判別する(ステップS702)。
【0171】
一方、ステップS701の結果が否定である場合、CPU170は、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1を第2記憶部130から読み出すとともに、所定値ΔZb1を第1記憶部120から読み出す(ステップS703)。なお、第1記憶部120に記憶されている所定値ΔZb1を標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図5のステップS1)や、事前に測定した体重(図5のステップS2)を用いた演算によって補正してもよい。
【0172】
この後、CPU170は、第2相対値算出処理(ステップS70)において第2相対値ΔZbを算出する過程で生成された第2センタリング値Zb0が、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルZb1と所定値ΔZb1との加算値以上であるか否かを判定する(ステップS704)。なお、ステップS704で使用する第2センタリング値Zb0は、例えば、直前の1呼吸における第2センタリング値Zb0の平均値や、直前の複数サンプリング期間における第2センタリング値Zb0の平均値などであってもよい。ステップS704の結果が肯定である場合、CPU170は、被験者の呼吸がドローイン呼吸であると判別する(ステップS705)。また、ステップS704の結果が否定である場合、CPU170は、被験者の呼吸が胸式呼吸であると判別する(ステップS706)。
【0173】
以上説明したように本実施形態によれば、被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかドローイン呼吸なのかをリアルタイムで正確に判別することができる。なお、生体測定装置1は、胸式呼吸や腹式呼吸に加えてドローイン呼吸を判別するのではなく、ドローイン呼吸であるか否かのみを判別してもよい。
【0174】
また、第2記憶部130に記憶しておくZb1(胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベル)は、被験者が胸式呼吸を行っている期間において取得した複数の第2センタリング値Zb0の平均値に限らない。例えば、被験者が胸式呼吸を行っている期間中において任意のタイミングで取得した1個の第2センタリング値Zb0であってもよい。また、CPU170は、第2記憶部130から読み出したZb1に対し、所定値ΔZb1を加算するのではなく、1.0より大きい所定の係数(例えば1.035)を乗算して加算値(Zb1+ΔZb1)に相当する閾値を算出してもよい。この場合の係数も、所定値ΔZb1の場合と同様に、予め多数の被験者から採取した、胸式呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルと、ドローイン呼吸の場合における第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルとの差分に基づいて、その値を設定することができる。また、このようにして算出された閾値をZb1の代わりに第2記憶部130に記憶しておき、上述した呼吸種別判別処理のステップS704では、第2センタリング値Zb0が第2記憶部130から読み出した閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0175】
また、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理は、被験者の呼吸の種別によらず実行されるので、被験者がドローイン呼吸を行っている場合にも実行される。したがって、ドローイン呼吸の場合にも図26に示した第1バーグラフBG1や第2バーグラフBG2が表示される。よって、被験者は、第1バーグラフBG1のうち胸式呼吸の大きさを示すレベルメータを見ることで、自分が行っているドローイン呼吸の大きさを確認することができる。
【0176】
なお、生体測定装置1は、以下に示す方法でドローイン呼吸の判別を行ってもよい。
[方法1]図30に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルのみが上方にシフトする。そこで、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの振幅基準レベルを示す第1センタリング値Za0と、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルを示す第2センタリング値Zb0とを監視し、第2センタリング値Zb0のみが所定値(例えば0.5Ω)以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
【0177】
[方法2]図30に示すように、ドローイン呼吸の場合、胸式呼吸や腹式呼吸の場合に比べ、第1生体電気インピーダンスZaの振幅値(最大値−最小値)と、第2生体電気インピーダンスZbの振幅値(最大値−最小値)がともに小さくなる。そこで、これらの振幅値からドローイン呼吸であるか否かを判別できるようにするため、振幅値について閾値を定めて第1記憶部120に記憶しておく。そして、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの振幅値と、第2生体電気インピーダンスZbの振幅値とを監視し、両者の振幅値がともに閾値(例えば1.8Ω)以下となり、かつ、上述した[方法1]により第2センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。なお、第1記憶部120には、第1生体電気インピーダンスZa用と第2生体電気インピーダンスZb用の2つの閾値が記憶されていてもよいし、両者で共用する1つの閾値が記憶されていてもよい。
【0178】
[方法3]ドローイン呼吸の場合、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形と第2生体電気インピーダンスZbの測定波形は、胸式呼吸の場合と同様の特徴を示す。すなわち、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。そこで、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形と、第2生体電気インピーダンスZbの測定波形とを監視し、両者の測定波形が胸式呼吸の場合と同様の特徴を示し、かつ、上述した[方法1]により第2センタリング値Zb0のみが所定値以上増加した場合に、ドローイン呼吸であると判別する。
【0179】
<3.第3実施形態>
例えば、被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1生体電気インピーダンスZaの波形と第2生体電気インピーダンスZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示することで、現状の呼吸が、胸式呼吸および腹式呼吸のうちのどちらの依存性が高いのかを被験者に報知する態様とすることもできる。ここで、被験者の呼吸が胸式呼吸の場合、図10に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。したがって、この場合の1呼吸分のリサージュ図形は、例えば図32のようになる。すなわち、1呼吸に占める胸式呼吸の割合が極めて高い場合は、ほぼ直線状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
【0180】
一方、被験者の呼吸が腹式呼吸の場合、図9に示すように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaは減少方向に変化する一方、第2生体電気インピーダンスZbは増加方向に変化する。したがって、この場合のリサージュ図形は、例えば図33のようになる。すなわち、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば「ブーメラン」型など、屈曲した形状の軌跡を描くリサージュ図形が得られる。
【0181】
この態様では、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示するようにすることで、被験者は、自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを容易に認識できる。そして、この態様では、上述の呼吸解析処理を行う必要が無いので、簡易な構成で、被験者の呼吸の種別を推定できるという顕著な効果を奏する。また、例えば被験者は、リサージュ図形の態様を直線状に近づけることを意識しながら呼吸することで、その呼吸を胸式呼吸に近付けることができる。つまり、リサージュ図形の表示は、呼吸法トレーニングのためのバイオフィードバック情報として活用できる。
【0182】
ここでは、図32および図33に示すように、被験者の直前の1呼吸の様子を示すリサージュ図形を表示する態様を説明したが、これに限らず、例えば図34および図35に示すように、複数回の呼吸の各々のデータ(第1生体電気インピーダンスZa,第2生体電気インピーダンスZb)に基づくリサージュ図形を表示することもできる。被験者の呼吸のうち胸式呼吸の占める割合が高い場合(胸式呼吸の依存度が高い場合)は、例えば図34のようなリサージュ図形が得られる一方、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合は、例えば図35のようなリサージュ図形が得られる。また、例えば被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における第1相対値ΔZaの波形と第2相対値ΔZbの波形とから得られるリサージュ図形を表示してもよい。
【0183】
以下に、リサージュ図形を表示する場合について詳述する。なお、生体測定装置のハードウェア構成は基本的に第1実施形態で説明したものと同じであるので、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0184】
<3−1:リサージュ図形の表示>
図36は、リサージュ図形表示処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示すフローチャートのうち、ステップS801〜S804までの処理は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS10〜S40までの処理と同じである。すなわち、本実施形態においてもCPU170は、サンプリングタイミングに到達すると(ステップS801:YES)、生体電気インピーダンス測定部200を制御して第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定する(ステップS802,S803)。また、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に対し、スムージング処理を行う(ステップS804)。
【0185】
この後、CPU170は、例えば、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の表示データを生成する(ステップS805)。ここで、第2記憶部130にはリサージュ図形描画領域が設けられている。このリサージュ図形描画領域は、表示部160に表示するリサージュ図形の表示データを一時的に記憶しておく記憶領域である。リサージュ図形の表示データを生成する場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域のうち、第2生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第1生体電気インピーダンスZaの測定値(Y座標値)によって定まる位置にドットをプロットし、リサージュ図形の軌跡を更新する。また、CPU170は、リサージュ図形描画領域からリサージュ図形の表示データを読み出して表示部160に出力し、リサージュ図形を表示部160に表示する(ステップS806)。なお、同図に示す処理はサンプリングタイミングごとに行われるので、ステップS805では、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の軌跡を更新することになる。また、リサージュ図形の表示もサンプリングタイミングごとに更新される。
【0186】
したがって、表示部160には、被験者が呼吸を行っている場合、リアルタイムでリサージュ図形が表示される。例えば、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、図32や図34に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、図33や図35に示すリサージュ図形が表示される。また、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図37に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が右側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。
【0187】
図32や図34に示したように、胸式呼吸の占める割合が極めて高い場合、リサージュ図形の軌跡は右上がりの直線状になる。また、胸式呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、胸式呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0188】
一方、図33や図35に示したように、被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、図33に示すリサージュ図形は、1呼吸に占める胸式呼吸と腹式呼吸の割合が50%ずつになる場合のものである。この場合、リサージュ図形の軌跡はブーメラン状(“く”の字状)になり、軌跡の形状が上下でほぼ対称になる。但し、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも低ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が大きくなり、そこから屈曲した部分(図33では右下がりの直線部分)の占める割合が小さくなる。逆に、腹式呼吸の占める割合が胸式呼吸よりも高ければ、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分の占める割合が小さくなり、そこから屈曲した部分の占める割合が大きくなる。このように被験者の呼吸に腹式呼吸が含まれる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸と腹式呼吸の割合に応じて屈曲形状が様々に変化する。
【0189】
また、理論上、腹式呼吸の割合が100%になる場合、リサージュ図形の軌跡は、胸式呼吸の場合の軌跡とは反対方向に傾斜した直線状(図33の場合、右下がりの直線状)になる。しかしながら、例えば息を止めて胸式呼吸を全く行わないようにした状態で腹部を凹ませたり膨らませたりした場合であっても、横隔膜の上下に伴って肺が収縮したり拡張したりするため、疾患などで横隔膜が全く機能しない場合を除き、被験者が呼吸を行う場合には胸式呼吸が必ず含まれることになる。したがって、実際には、腹式呼吸の占める割合がどんなに高い場合であっても、リサージュ図形の軌跡には、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分が必ず含まれ、屈曲した形状となる。また、図33に示すように、胸式呼吸の場合の軌跡に相当する右上がりの直線部分(近似直線LN1)に対し、そこから折れ曲がった部分(近似直線LN2)がどれだけ屈曲しているのかを示す屈曲角度AGは、腹式呼吸が浅ければ小さくなり、腹式呼吸が深ければ大きくなる。また、腹式呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。
【0190】
このように胸式呼吸の場合と腹式呼吸の場合ではリサージュ図形の軌跡の形状が異なる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ(深さ)によってリサージュ図形の軌跡の大きさや形状が変化する。したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのか、あるいは現在の自分の呼吸が胸式呼吸と腹式呼吸のうちどちらの占める割合が高いのかを把握することができる。また、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。
【0191】
また、被験者は、胸式呼吸の訓練を行う場合、リサージュ図形の軌跡が右上がりの直線状になり、そのサイズが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。また、腹式呼吸の訓練を行う場合には、リサージュ図形の軌跡が屈曲した形状になり、そのサイズや屈曲角度AGが大きくなるように意識して呼吸を行えばよい。このようにリサージュ図形を見ながら呼吸の訓練を行うことができると、胸式呼吸や腹式呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0192】
また、被験者の呼吸がドローイン呼吸の場合、第2実施形態において図30を用いて説明したように、吸気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに増加方向に変化し、呼気では第1生体電気インピーダンスZaおよび第2生体電気インピーダンスZbはともに減少方向に変化する。この変化は胸式呼吸の場合と同じである。これはドローイン呼吸の場合、腹を凹ませた状態を維持しながら胸式呼吸によって呼息と吸息を行っているためである。但し、ドローイン呼吸の場合は、腹を凹ませるために腹部に力を入れているので、図30に示したように第2生体電気インピーダンスZbの振幅基準レベルが胸式呼吸の場合よりも高くなる。このためドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向(図45ではX軸方向)に軌跡の位置がずれる。
【0193】
したがって、被験者はリサージュ図形を見ることで、現在の自分の呼吸がドローイン呼吸であるか否かも把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、呼吸が浅ければリサージュ図形の軌跡は小さくなり、呼吸が深ければリサージュ図形の軌跡は大きくなる。したがって、ドローイン呼吸の大きさについてもリサージュ図形から把握することができる。また、ドローイン呼吸の場合も、リサージュ図形を見ながら訓練を行うことで、ドローイン呼吸が正しくできているか否かやその大きさを随時確認しながら訓練を進めることができる。
【0194】
以上のようにリサージュ図形を表示することができると、被験者は、現在の自分の呼吸の種別やその大きさ、さらには胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを把握することができる。また、呼吸の種別やその大きさ、あるいは胸式呼吸や腹式呼吸やドローイン呼吸が正しくできているか否かを、生体電気インピーダンスの測定値に基づいて客観的に把握することができる。また、呼吸を効率よく訓練することもできる。
【0195】
また、呼吸を効率よく訓練することができると、呼吸筋(例えば、腹横筋、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋など)を効果的に鍛えることができる。特に、呼吸筋に含まれる腹横筋は、呼吸だけでなく運動機能にも大きな影響を及ぼす体幹部の筋肉である。また、ドローイン呼吸は、呼吸筋だけでなく、例えば脊柱起立筋など、体幹部のインナーマッスルを強化することができる。したがって、呼吸の訓練は、呼吸機能を高めるだけでなく、運動機能の強化や、腰痛の改善/予防、ダイエットなどにも効果がある。また、例えば、深呼吸(深い腹式呼吸)を行ったり、呼息を吸息よりも長くしたりすることで、副交感神経の働きを高めてリラックスした状態に導くことができるなど、呼吸の訓練は心身の健康状態をよくする効果もある。
【0196】
また、生体測定装置1は、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定して両者の経時的変化を示すリサージュ図形を表示するだけでよく、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のうち、第1センタリング処理(ステップS50)、第1相対値算出処理(ステップS60)、第2相対値算出処理(ステップS70)、ΔRib/ΔAb推定演算処理(ステップS80)を行う必要がないので、生体測定装置1の制御構成を簡素化することもできる。
【0197】
なお、呼吸の訓練には、例えば、呼吸器疾患の患者が低下した呼吸機能を回復する目的で行うリハビリや、アスリートが運動機能を強化する目的で行うトレーニング、健常者が呼吸機能や心身の健康状態を高める目的で行うトレーニング、健常者が、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能を改善する目的で行うトレーニングなどが含まれる。
【0198】
また、図32〜図35および図37には、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形を例示したが、リサージュ図形はX軸とY軸を入れ替えたものであってもよい。例えば、図38は、X軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形(腹式呼吸の場合)であるが、X軸とY軸を入れ替えてもリサージュ図形の軌跡は屈曲した形状になる。なお、このようにX軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形において、被験者の呼吸が胸式から腹式に徐々に変化する場合、例えば図39に示すように、リサージュ図形の軌跡は、右上がりの直線状から、徐々に下側の部分が上側に折れ曲がりながら伸び、屈曲した形状に変化する。また、リサージュ図形は、図50に示すようにX軸とY軸をそれぞれ45度傾けたものであってもよい。要は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、他方の軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形であればよい。
【0199】
<3−2:右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形の表示>
左右の肺の換気能力の違いを把握できるようにするため、右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を表示してもよい。ここで、右肺用のリサージュ図形を生成するためには、第1生体電気インピーダンスZaとして、図4(D)に示した右上肢、すなわち被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の生体電気インピーダンスを測定する必要がある。また、左肺用のリサージュ図形を生成するためには、第1生体電気インピーダンスZaとして、図4(E)に示した左上肢、すなわち被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の生体電気インピーダンスを測定する必要がある。つまり、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示するためには、体幹上部右側の生体電気インピーダンスと、体幹上部左側の生体電気インピーダンスと、体幹中部の生体電気インピーダンスの3つを測定する必要がある。
【0200】
以降、本明細書では、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示する場合、体幹上部右側の生体電気インピーダンスを第1生体電気インピーダンスZaRと表記し、体幹上部左側の生体電気インピーダンスを第2生体電気インピーダンスZaLと表記し、体幹中部の生体電気インピーダンスを第3生体電気インピーダンスZbと表記する。
【0201】
右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示する場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理(図36)のステップS802,S803において、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の選択を適宜切り換えながら、第1生体電気インピーダンスZaRと、第2生体電気インピーダンスZaLと、第3生体電気インピーダンスZbを測定する。例えば、第1生体電気インピーダンスZaRを測定する場合、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスZaRを測定する。また、第2生体電気インピーダンスZaLを測定する場合、CPU170は、左手用の電流電極X3と右手用の電流電極X4とを選択するように電極切換回路252を制御するとともに、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3とを選択するように電極切換回路251を制御する。そして、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスZaLを測定する。
【0202】
次に、CPU170は、ステップS804において、第1生体電気インピーダンスZaRの測定値と、第2生体電気インピーダンスZaLの測定値と、第3生体電気インピーダンスZbの測定値に対し、スムージング処理を行う。また、CPU170は、ステップS805において、例えば、X軸を第3生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaRとする右肺用のリサージュ図形と、X軸を第3生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZaLとする左肺用のリサージュ図形とについて表示データを生成する。また、CPU170は、ステップS806において、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを表示部160に出力する。
【0203】
この場合、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することができるので、呼吸の種別やその大きさなどを左右の肺ごとに把握することができる。また、2つのリサージュ図形を見比べることで左右の肺の換気能力の違いを容易に把握することができる。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示することで、左右の肺ごとに呼吸の訓練を行うことが可能になる。健常者の場合、左右の肺で換気能力に差がでることはほとんどないが、例えば、片肺に疾患がある者は、左右の肺で換気能力が大きく異なる。また、過去に肺疾患を経験した者も、左右の肺で換気能力に差がでることがある。例えば、右肺に比べ左肺の換気能力が低い場合など、左肺の換気能力を高めたい場合は、左腕を右肩の後ろに回し、右手で左肘を後ろに押すようにして左肺に負荷を与え、この状態を維持しながら呼吸を行うことで、左肺の換気能力を集中的に鍛えることができる。
【0204】
ところで、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示してもよいが、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くするためには、図40に示すように両者を重ねて表示するのがよい。この場合、CPU170は、リサージュ図形描画領域に右肺用のリサージュ図形と左肺用のリサージュ図形を重ねて描画すればよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を重ねて表示する場合には、両者を容易に見分けられるようにするため、右肺用のリサージュ図形の軌跡と、左肺用のリサージュ図形の軌跡との表示態様を変えるのがよい。例えば、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の表示データを生成する場合に、右肺用のリサージュ図形については軌跡の色を青にし、左肺用のリサージュ図形については軌跡の色を赤にすることができる。また、CPU170は、軌跡の色を変えることの他に、例えば、軌跡を示す線の太さや線種(例えば実線と破線など)を変えることができる。なお、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、両者の軌跡の表示態様を変えてもよい。
【0205】
また、図41に示すように、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調表示してもよい。この場合、CPU170は、例えば、サンプリングタイミングごとに、第3生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第1生体電気インピーダンスZaRの測定値(Y座標値)によって定まる右肺用のリサージュ図形上の座標(XR,YR)と、第3生体電気インピーダンスZbの測定値(X座標値)と第2生体電気インピーダンスZaLの測定値(Y座標値)によって定まる左肺用のリサージュ図形上の座標(XL,YL)とを比較する。そして、CPU170は、両者が異なる場合に、座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を結ぶバー(直線)の表示データを生成する。このように右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差異を強調して表示することができると、左右の肺の換気能力の違いを把握し易くなる。
【0206】
なお、CPU170は、バーの色を呼気相と吸気相で変えてもよい。図20に示した第1生体電気インピーダンスZaの測定波形において、第1センタリング値Za0よりも上側の部分は吸気相、第1センタリング値Za0よりも下側の部分は呼気相になる。したがって、例えば、直前の1呼吸における第1センタリング値Za0の平均値が図41において図中二点差線で示す直線の部分であった場合、この直線の上下でバーの色を変えればよい。但し、このように呼気相と吸気相でバーの色を変えるためには、第1生体電気インピーダンスZaRについて第1実施形態で説明した第1センタリング処理を行う必要がある。あるいは第1生体電気インピーダンスZaRの代わりに第2生体電気インピーダンスZaLについて、第1実施形態で説明した第2センタリング処理を行う必要がある。
【0207】
また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、一方のX座標値から他方のX座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたり、一方のY座標値から他方のY座標値を減算した解が正か負かでバーの色を変えたりしてもよい。また、CPU170は、同じサンプリングタイミングにおける座標(XR,YR)と座標(XL,YL)を比較し、両座標間の距離に応じてバーの色のトーンを変えてもよい。例えば、両座標間の距離が大きければ色を濃くし、両座標間の距離が小さければ色を薄くすることができる。また、CPU170は、バーを表示する代わりに、バーを表示しているエリアを淡い色で塗りつぶしてもよい。
【0208】
また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の差分面積(図41においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから左右の肺で換気能力がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。また、CPU170は、図42に示すように、サンプリングタイミングごとに座標(XR,YR)と座標(XL,YL)の中間座標を算出してこの位置にドットをプロットし、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形の平均値を表示するようにしてもよい。また、CPU170は、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を並べて表示する場合に、例えば、右肺用のリサージュ図形の軌跡のうち左肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示する一方、左肺用のリサージュ図形の軌跡のうち右肺用のリサージュ図形の軌跡と異なる部分をより太い線で強調表示してもよい。
【0209】
なお、右肺用のリサージュ図形や左肺用のリサージュ図形についても、X軸とY軸を入れ替えることなどが可能であり、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1生体電気インピーダンスZaR(または第2生体電気インピーダンスZaL)、他方の軸を第3生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形であればよい。また、図40〜図42には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形のうち、いずれか一方のみを表示するようにしてもよい。例えば、被験者は、右肺について呼吸の訓練を行う場合、入力部150を操作して右肺用のリサージュ図形だけを表示するよう指示することができる。この場合、CPU170は、リサージュ図形表示処理において、第1生体電気インピーダンスZaRと第3生体電気インピーダンスZbを測定し、右肺用のリサージュ図形のみを生成して表示部160に表示する。
【0210】
<3−3:表示位置のセンタリング>
第1実施形態で説明した第1センタリング値Za0や第2センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることができる。以下、X軸を第2生体電気インピーダンスZbとし、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとするリサージュ図形の場合を例に説明を行う。
【0211】
まず、CPU170は、図36に示したリサージュ図形表示処理においてスムージング処理(ステップS804)を終えた後、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS50〜ステップS70までの処理を行い、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0を抽出する。なお、図20からも明らかとなるように、第1センタリング値Za0は、第1生体電気インピーダンスZaの測定波形の振幅基準レベルを示し、第2センタリング値Zb0は、第2生体電気インピーダンスZbの測定波形の振幅基準レベルを示す。
【0212】
また、CPU170は、リサージュ図形表示処理のステップS805においてリサージュ図形の表示データを生成する場合に、図43に示すように、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0によって定まるリサージュ図形上の座標C(Zb0,Za0)が、表示部160においてリサージュ図形を表示するリサージュ図形表示領域160Aの中心に位置するように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形の作図位置を修正する。このようにすればリサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することができるので、リサージュ図形を見易くすることができる。
【0213】
なお、第1センタリング値Za0や第2センタリング値Zb0は、移動平均処理を行って得られる値であるので、サンプリングタイミングごとに表示位置のセンタリングを行っても、リサージュ図形の表示位置が短い時間間隔で急激に変化するといった問題は起こらない。但し、サンプリングタイミングごとにリサージュ図形の表示位置をセンタリングすると処理負荷が増大する。したがって、例えば、1呼吸ごとに、直前の1呼吸における第1センタリング値Za0の平均値と第2センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。また、予め定められた測定区間(例えば20秒)ごとに、直前の測定区間における第1センタリング値Za0の平均値と第2センタリング値Zb0の平均値を使用して、リサージュ図形の表示位置をセンタリングしてもよい。このようにリサージュ図形の表示位置をセンタリングするタイミングは、任意に定めることができる。
【0214】
また、X軸の表示レンジとY軸の表示レンジを調整することでリサージュ図形の表示位置をセンタリングすることもできる。この場合、CPU170は、例えば1呼吸ごとに、第1生体電気インピーダンスZaの測定値の最大値と最小値を検出し、両者を第1振幅値(最大値,最小値)として取得する。また、CPU170は、第2生体電気インピーダンスZbの測定値についても、1呼吸ごとに最大値と最小値を検出し、両者を第2振幅値(最大値,最小値)として取得する。この後、CPU170は、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する一方、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する。
【0215】
例えば、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのX軸方向の幅を10としたとき、第2振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第2振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のX軸方向の大きさや位置を調整する。同様に、CPU170は、リサージュ図形表示領域160AのY軸方向の幅を10としたとき、第1振幅値の最大値と最小値の差分が8〜9程度の大きさとなり、かつ第1振幅値の最大値と最小値がともにリサージュ図形表示領域160A内に表示されるように、リサージュ図形描画領域に描画されているリサージュ図形のY軸方向の大きさや位置を調整する。
【0216】
このようにすれば、例えば図44に示すように、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示することができる。また、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示することもできる。このためリサージュ図形を見易くすることができる。なお、2軸の表示レンジを調整するタイミングについても任意に定めることができる。但し、少なくとも1呼吸分の軌跡の全体がリサージュ図形表示領域160Aに収まることが望ましいので、CPU170は、1呼吸分以上の測定波形から第1振幅値と第2振幅値を取得するのがよい。
【0217】
ところで、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合のリサージュ図形を比較すると、図45に示すように、両者の軌跡はともに右上がりの直線状になるが、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向に軌跡の位置がずれる。ここで、センタリングを頻繁に行うと、リサージュ図形が常にリサージュ図形表示領域160Aの中央に表示されてしまうため、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができなくなってしまう。これを防ぐためには、X軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすればよい。
【0218】
つまり、例えば、第1センタリング値Za0と第2センタリング値Zb0を使用してリサージュ図形の表示位置をセンタリングする場合であれば、第1センタリング値Za0に基づいてリサージュ図形のY軸方向のセンタリングを行う処理を第1センタリング処理とし、第2センタリング値Zb0に基づいてリサージュ図形のX軸方向のセンタリングを行う処理を第2センタリング処理としたとき、CPU170は、第2センタリング処理を行う頻度を、第1センタリング処理を行う頻度よりも少なくすればよい。また、第1振幅値と第2振幅値を使用して表示位置をリサージュ図形のセンタリングする場合であれば、第1振幅値を用いてY軸の表示レンジを調整する処理を第1レンジ調整処理とし、第2振幅値を用いてX軸の表示レンジを調整する処理を第2レンジ調整処理としたとき、CPU170は、第2レンジ調整処理を行う頻度を、第1レンジ調整処理を行う頻度よりも少なくすればよい。
【0219】
この場合、例えば、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は測定開始時などに1回だけ行って後は行わないようにすることができる。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は1呼吸ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は30呼吸ごとに行うようにしてもよい。また、第1センタリング処理(または第1レンジ調整処理)は8秒ごとに行う一方、第2センタリング処理(または第2レンジ調整処理)は5分ごとに行うようにしてもよい。
【0220】
このように第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをあまり行わないようにすれば、リサージュ図形の軌跡の形状が同じであっても、ドローイン呼吸の場合と胸式呼吸の場合では軌跡の表示位置がX軸方向にシフトすることになる。したがって、リサージュ図形からドローイン呼吸と胸式呼吸を見分けることができるようになる。また、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行う頻度を少なくした分だけ生体測定装置1の消費電力を低減することができる。また、頻度が少ないとはいえ、第2センタリング処理や第2レンジ調整処理を行っているので、リサージュ図形表示領域160Aの中央にリサージュ図形を表示したり、リサージュ図形表示領域160Aに対して丁度よい大きさでリサージュ図形を表示したりすることができる。
【0221】
なお、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbは、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaに比べ、腕などの四肢の動きによるアーチファクトの影響を受けにくく、測定値の変動範囲が比較的安定している。このため第2生体電気インピーダンスZbを割り当てたX軸方向についてのセンタリングをそれほど頻繁に行わなくても、リサージュ図形がリサージュ図形表示領域160A内に収まらない、などといった問題はほとんど起こらない。
【0222】
また、X軸を第1生体電気インピーダンスZaとし、Y軸を第2生体電気インピーダンスZbとするリサージュ図形の場合であれば、Y軸方向についての表示位置のセンタリングをあまり行わないようにすればよい。要は、互いに直交する2軸のうち、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度を、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングの頻度よりも少なくすればよい。また、図43や図44には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
【0223】
また、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaは、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbに比べ、その変動範囲が比較的大きいが、これは腕などの四肢の動きによるアーチファクトの影響が大きいためであり、これを無視してセンタリングの頻度を少なくしてもさほど問題にはならない。そこで、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行う頻度(例えば30呼吸ごとや5分ごと)で、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向についてのセンタリングを行うようにしてもよい。つまり、第2生体電気インピーダンスZbを割り当てた軸方向と、第1生体電気インピーダンスZaを割り当てた軸方向とでセンタリングを行う頻度を同じにし、センタリングを行う時間間隔を30呼吸ごとや5分ごとなどに広げてもよい。
【0224】
<3−4:軌跡表示処理>
図34や図35に示したように複数回の呼吸の様子を連続して示すリサージュ図形の場合、軌跡の表示態様が同じであると最新の1呼吸分の軌跡が把握しづらい。そこで、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とでリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。
【0225】
例えば、CPU170は、リサージュ図形の表示データを生成する場合に、図46に示すように、最新の1呼吸の軌跡の色を濃くし、それ以外の過去の呼吸の軌跡の色を薄くすることができる。また、CPU170は、最新の1呼吸の軌跡を実線にし、それ以外の過去の呼吸の軌跡を点線にしてもよい。また、CPU170は、最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで軌跡の色を変えてもよい。例えば、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaや第2生体電気インピーダンスZbの測定波形に基づいて新たな1呼吸が始まったか否かを判定し、新たな1呼吸が始まると、新たに始まった呼吸についての軌跡の色を赤にし、前回の呼吸の軌跡の色を赤から青に変更する。
【0226】
なお、CPU170は、経過時間に応じてリサージュ図形の軌跡の表示態様を変えてもよい。例えば、経過時間が増えるほど軌跡の色が薄くなるようにすれば、新しい軌跡ほど色が濃いので、最新の1呼吸分の軌跡など、新しい軌跡を容易に把握することができる。また、リサージュ図形は、図46に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。また、図46には腹式呼吸の場合のリサージュ図形を示したが、胸式呼吸やドローイン呼吸の場合のリサージュ図形であってもよい。
【0227】
<3−5:アシスト表示>
図47に示すように、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形MLに対し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形TLを重ねて表示してもよい。以下、この章では、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形を実測リサージュ図形MLと表記し、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形を目標リサージュ図形TLと表記する。
【0228】
目標リサージュ図形TLは、例えば、被験者の直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLなど、被験者の過去の実測リサージュ図形MLを加工して生成することができる。例えば、被験者が胸式呼吸やドローイン呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(右上がりの直線状の軌跡)の大きさを1.1倍など所定の倍率で拡大し、これを目標リサージュ図形TLの表示データとすることができる。また、被験者が腹式呼吸の訓練を行っている場合、CPU170は、直前の1呼吸の様子を示す実測リサージュ図形ML(屈曲した形状の軌跡)の大きさを所定の倍率で拡大したり、屈曲角度AGの大きさを調整したりして、目標リサージュ図形TLの表示データを生成することができる。
【0229】
また、CPU170は、目標リサージュ図形TLをリサージュ図形表示領域160Aに表示する一方、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて被験者の現在の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLの表示データを生成し、これを目標リサージュ図形TLと重ねてリサージュ図形表示領域160Aに表示する。このようにすれば、被験者は、現在の自分の呼吸の様子を示す実測リサージュ図形MLと、目標とする呼吸の様子を示す目標リサージュ図形TLとを見比べながら、呼吸の訓練を行うことができる。また、被験者は、実測リサージュ図形MLの軌跡が目標リサージュ図形TLの軌跡と一致するように意識して呼吸を行うことで、目標とする呼吸を体得することができる。
【0230】
また、CPU170は、過去の実測リサージュ図形MLを加工して目標リサージュ図形TLを生成するのではなく、被験者に行わせたい呼吸の種別(胸式呼吸、腹式呼吸、ドローイン呼吸など)やその大きさに応じた目標リサージュ図形TLを生成することもできる。例えば、呼吸を訓練するための訓練メニューとして、小程度の大きさの胸式呼吸を1回行った後、中程度の大きさの腹式呼吸を1回行うことが定められている場合、CPU170は、小程度の大きさの胸式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示し、被験者が最初の1呼吸を終えて次の1呼吸を行う前に、中程度の大きさの腹式呼吸に対応する目標リサージュ図形TLを生成してこれを表示する。なお、目標リサージュ図形TLを表示するタイミングを制御すれば、被験者の呼吸のリズムを指導することもできる。このように目標リサージュ図形TLを用いて被験者の呼吸を指導するアシスト表示を行えば、被験者に対し、呼吸の種別やその大きさ、呼吸のリズムなどを効果的に指導することができる。
【0231】
なお、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLとで軌跡の表示態様(例えば色や線種など)を変え、両者を容易に見分けられるようにしてもよい。また、CPU170は、図48に示すように、実測リサージュ図形MLの軌跡と目標リサージュ図形TLの軌跡とで相違する部分にバーを表示し、両者の差異を強調表示してもよい。また、CPU170は、実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLの差分面積(図48においてバーが表示されているエリア)を求め、差分面積の大きさから両者がどの程度違うのかを例えば5段階にランク分けして被験者に報知してもよい。この場合、差分面積の代わりにバー(差分線)の総和を用いてもよい。
【0232】
また、必ずしも実測リサージュ図形MLと目標リサージュ図形TLを重ねて表示する必要はなく、両者を並べて表示してもよい。また、実測リサージュ図形MLや目標リサージュ図形TLは、図47や図48に示したものに限らず、例えば、X軸とY軸を入れ替えたものや、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたものであってもよい。
【0233】
<3−6:肺の換気能力の良否判定>
リサージュ図形の軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。例えば図49に示すように胸式呼吸の場合、CPU170は、1呼吸分の軌跡(サンプリングタイミングごとに得られる第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値によって定まるXY座標値)から、最小二乗法などによって近似直線LNを求める。次に、CPU170は、近似直線LNとX軸とのなす角αを算出し、これをリサージュ図形の軌跡の傾斜角αとする。
【0234】
図49に示すように、X軸を第2生体電気インピーダンスZb、Y軸を第1生体電気インピーダンスZaとした場合、肺の換気能力が高いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が立ってくる(傾斜角αが大きくなり90度に近くなる)。逆に、肺の換気能力が低いほど1呼吸分の軌跡を示す楕円が寝てくる(傾斜角αが小さくなり0度に近くなる)。したがって、CPU170は、傾斜角αを予め定められた基準傾斜角βと比較し、傾斜角αが基準傾斜角β以上の場合は肺の換気能力が良いと判定し、傾斜角αが基準傾斜角βよりも小さい場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。なお、基準傾斜角βは、肺の換気能力の良否を判定するための閾値であり、予め多数の被験者から採取した1呼吸分の軌跡の傾斜角に基づいてその値を定めることができる。また、基準傾斜角βの値は第1記憶部120に記憶されている。
【0235】
以上のようにすれば肺の換気能力の良否をリサージュ図形の軌跡から簡単に判定することができる。なお、立位、座位、仰臥位など、測定時の姿勢によって1呼吸分の軌跡の傾斜角は異なる。したがって、基準傾斜角βの値は、測定時の姿勢と対応付けて第1記憶部120に複数記憶されていてもよい。この場合、例えば、入力部150から測定時の姿勢を入力するようにして、入力された姿勢に対応する基準傾斜角βの値を第1記憶部120から読み出して使用すればよい。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βを標準値とし、この標準値を、事前に入力された身長、年齢、性別(図5のステップS1)や、事前に測定した体重(図5のステップS2)などを用いた演算によって補正してもよい。
【0236】
また、図50に示すように、座標変換処理によって基準傾斜角βを示す直線が垂直になるようにリサージュ図形を回転させた場合、1呼吸分の軌跡を示す楕円が、垂直方向と同じか垂直方向よりも左側に傾いている場合は肺の換気能力が良く、垂直方向よりも右側に傾いている場合は肺の換気能力が悪いと判定することができる。また、図51に示すように腹式呼吸の場合は、1呼吸分の軌跡のうち図中実線で示す楕円で囲んだ部分について近似直線LNを求めることで、胸式呼吸の場合と同じように肺の換気能力の良否を判定することができる。また、ドローイン呼吸の場合は、胸式呼吸の場合と同じようにして肺の換気能力の良否を判定することができる。
【0237】
また、換気能力の良否判定に用いるリサージュ図形の軌跡は、必ずしも1呼吸分の軌跡に限らず、2呼吸分の軌跡や半呼吸分の軌跡であってもよい。また、X軸とY軸を入れ替えたリサージュ図形や、直交した状態を保ったままX軸とY軸を任意の角度だけ回転させたリサージュ図形などであっても、軌跡の傾斜角から肺の換気能力の良否を判定することができる。また、第1記憶部120に記憶されている基準傾斜角βの値を任意の値に設定し、被験者の肺の換気能力が予め定められた基準能力値よりも高いか否かを判定してもよい。
【0238】
<3−7:呼吸深度グラフの時間軸圧縮表示>
CPU170は、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理(図27)を行うことで、1呼吸ごとに呼吸の深さを示す呼吸深度(呼吸レベル)を抽出することができる。つまり、CPU170は、第1生体電気インピーダンスZaの測定値と第2生体電気インピーダンスZbの測定値に基づいて、1呼吸ごとに呼吸深度を抽出することができる。また、CPU170は、抽出した呼吸深度に対し、第1実施形態で説明した呼吸深度の正規化処理(図28:ステップS601)を行った後、呼吸深度の時間変化を示すグラフ(以降、呼吸深度グラフ)を生成して、これを表示部160に表示することができる。例えば呼吸深度グラフは図52(A)のようになる。
【0239】
ところで、被験者は、訓練によって呼吸の大きさ(深さ)がどのように変化したのかを把握するため呼吸深度グラフを参照する。この際、呼吸の大きさの変化を把握する上で特に重要になるのは、直近の呼吸の大きさである。呼吸の訓練時間は1回あたり10分〜数十分と比較的長い時間になることが多いので、測定開始時から現在に到るまでのグラフ全体を表示部160に表示しようとすると、グラフを時間軸方向に圧縮しなければならない。この際、グラフ全体を均一に圧縮すると、測定区間全体に亘って一律に時間分解能が下がってしまうため、直近の呼吸の大きさについて詳細を把握しづらくなる。
【0240】
そこで、CPU170は、呼吸深度グラフの表示データを生成する場合に、グラフの時間軸を非線形に圧縮し、任意の時間幅を1区間としたとき、少なくとも直近の1区間と測定開始時の1区間とで時間軸のレンジが異なり、直近の1区間の方が測定開始時の1区間よりも時間分解能が高くなるようにする。例えば、CPU170は、図52(B)に示すように時間軸を対数目盛にすることで(片対数グラフ化)、直近の測定区間ほど時間分解能を高くすることができる。また、CPU170は、図52(C)に示すように、測定開始時から現在に到る測定区間全体を3つの区間1〜3に分割し、直近の区間1が最も時間分解能が高くなるように時間軸のレンジを区間ごとに変えることができる。このようにすれば、呼吸深度グラフを時間軸方向に圧縮して表示しても、直近の呼吸の大きさについて詳細を容易に把握することができる。
【0241】
なお、以上説明した第3実施形態において、右肺用や左肺用のリサージュ図形についても、表示位置のセンタリングや、軌跡表示処理、アシスト表示、肺の換気能力の良否判定を行うことができる。また、CPU170は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理(図14)のステップS10〜ステップS70までの処理を行って第1相対値ΔZaと第2相対値ΔZbを算出し、第1相対値ΔZaと第2相対値ΔZbを用いてリサージュ図形の表示データを生成してもよい。つまり、CPU170は、互いに直交する2軸のうち、一方の軸を第1相対値ΔZaとし、他方の軸を第2相対値ΔZbとするリサージュ図形の表示データを生成してもよい。
【0242】
また、本実施形態と第1,第2実施形態を適宜組み合わせることができる。例えば、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かを判別して報知してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに図26に示したバーグラフBG1,BG2を表示してもよい。また、生体測定装置1は、リサージュ図形を表示するとともに被験者の呼吸が胸式呼吸か腹式呼吸かドローイン呼吸かを判別して報知してもよい。
【0243】
<4.変形例>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうち2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0244】
(1)変形例1
CPU170は、被験者の呼吸を指導するためのアシスト報知を行うこともできる。例えば吸気・呼気のリズムおよびパターンと、必要な呼吸の深さとを、図53に示す第3バーグラフBG3の形で表示部160に表示する態様であってもよい。図53に示すように、第3バーグラフBG3で表示可能な段階数は「6」であり、吸気側に3段階、呼気側に3段階に振り分けられている。ここでは、表示される段階数が多いほど、必要な呼吸の深さも大きくなる。例えば吸気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、吸気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。また、吸気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、吸気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。さらに、吸気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、吸気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の吸気を行うべきであることを報知するものである。
【0245】
一方、呼気側の表示段階数が「1」である場合、つまりは、呼気側の1段階目のみが着色表示される場合は、被験者に対して小程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。また、呼気側の表示段階数が「2」である場合、つまりは、呼気側の1段階目および2段階目が着色表示される場合は、被験者に対して中程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。さらに、呼気側の表示段階数が「3」である場合、つまりは、呼気側の1段階目〜3段階目までが着色表示される場合は、被験者に対して大程度の呼気を行うべきであることを報知するものである。
【0246】
例えば、被験者に対して、中程度の吸気を2回行った後、中程度の呼気を2回行うようにアシスト報知する場合は、第3バーグラフBG3の表示は図54のように変化するという具合である。ここで、1回の呼吸に要する時間を2秒とすれば、4秒間で、2回の呼気および2回の吸気を、それぞれ指定の呼吸レベルで行うように指導していることに相当する。なお、これは一例であり、様々なアシスト情報(吸気・呼気のリズム、パターンおよび大きさ)を報知することが可能である。例えば被験者の呼吸を腹式呼吸に導くためのアシスト情報を報知することもできる。また、第3バーグラフBG3による表示の代わりに、音声によるアシスト報知を行う態様であってもよいし、両者を組み合わせる態様であってもよい。
【0247】
上述したようなアシスト報知を行うことで、被験者が、呼吸のリズム、パターン、深さを意識した呼吸を行うように導くことができる。また、被験者は、前述の第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2の表示を見ることで、自分の現状の呼吸の状態を確認できる。言い換えれば、第1バーグラフBG1および第2バーグラフBG2の表示を、呼吸法トレーニングのためのバイオフィードバック情報として活用できる。
【0248】
(2)変形例2
図55に示すように呼吸の大きさを示す肺の模式図を表示部160に表示してもよい。この場合、呼吸が大きくなるにつれ肺の色つき部分の面積が拡大し、呼吸が小さくなるにつれ肺の色つき部分の面積が減少する。これは測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
また、人や動物などのアニメーション画像を表示して呼吸の種別とその大きさを報知してもよい。例えば、小さな胸式呼吸の場合は、胸部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな胸式呼吸の場合は、胸部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さな腹式呼吸の場合は、腹部が小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きな腹式呼吸の場合は、腹部が大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。また、小さなドローイン呼吸の場合は、腹部が小さく凹んだ状態で、胸部も小さく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示し、大きなドローイン呼吸の場合は、腹部が大きく凹んだ状態で、胸部も大きく膨張と収縮を繰り返すアニメーション画像を表示する。このようなアニメーション画像についても測定結果に基づいて表示してもよいし、呼吸の指導情報として表示してもよい。
以上のようにすれば被験者に対してよりわかりやすく測定結果や指導情報を報知することができる。
【0249】
(3)変形例3
上述の各実施形態では、電流電極および電圧電極の一例として、両手両足を電極の接点とする四肢誘導八電極法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、耳電極との四肢誘導法とを組み合わせて、体幹上部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。
この場合には、耳電極を用いることによって、体幹上部の生体電気インピーダンスの測定について両腕計測ではなく片腕計測が可能となる。なお、耳電極を用いる場合には、イヤホンやヘッドホンに耳電極を組み込むことによって、音声等の音報知・音刺激との組み合わせが効果的である。
また、上述した各実施形態では、立位での計測であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、便座での生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、便座や手摺に電極確保することができる。さらに、ポケッタブルやウェアラブルでのリラクゼーション姿勢(椅子座位等)で生体電気インピーダンスを計測するようにしてもよい。この場合には、マッサージチェアー等の手摺と足置き等に電極確保することができる。
さらに、入浴中の呼吸計測も可能である。この場合には、浴槽手摺部と浴槽底の御尻や足裏接触側面部に電極を設ける。浴槽内のお湯よりも、体幹の方が、生理食塩水でできているので電流通電が支配的になる。よって、入浴中にリラックスした状態で呼吸法のトレーニングを行うことができる。
くわえて、上述した各実施形態の生体測定装置1に、血圧計の腕帯と手で握る等で接触させる血圧計を付加し、血圧計に電極配置して呼吸変化や腕の筋の緊張具合を血圧測定時の補正情報として活用してもよい。
また、被験者がリラックスした状態で呼吸の測定や呼吸の訓練を行えることが望ましい。したがって、呼吸の測定中や呼吸の訓練中に、のどかな風景の映像を表示したり、心のやすらぐ音楽や鳥の鳴き声、滝の音などを流したり、呼吸の測定や呼吸の訓練を行う場所の温度や湿度を調整したりすることも重要である。また、呼吸法の訓練ビデオを付加して訓練効率を高めてもよい。
【0250】
(4)変形例4
上述の各実施形態では、CPU170は、右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右足用の電圧電極Y2と右手用の電圧電極Y4との間の電位差を示す電圧データDvとから、右上肢の生体電気インピーダンスを測定しているが、これに限らず、肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaの測定方法は任意である。例えば右手と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左足用の電圧電極Y1と左手用の電圧電極Y3との間の電位差を示す電圧データDvとから、左上肢の生体電気インピーダンスを測定し、それを第1生体電気インピーダンスZaとして採用してもよい。
また、上述の各実施形態では、CPU170は、左足と右手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、左手用の電圧電極Y3と右足用の電圧電極Y2との間の電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbを測定しているが、これに限らず、肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbの測定方法は任意である。例えば右足と左手との間に流れる基準電流Irefの大きさを示す電流データDiと、右手用の電圧電極Y4と左足用の電圧電極Y1との間で電位差を示す電圧データDvとから、体幹中部を斜めに横切る生体電気インピーダンスを測定し、それを第2生体電気インピーダンスZbとして採用してもよい。
【0251】
また、四肢誘導八電極法を利用せず、被験者の体幹部に電流電極と電圧電極を直接貼り付けて、被験者の肺を含み腹部を含まない体幹上部の生体電気インピーダンスや、被験者の右肺を含み腹部を含まない体幹上部右側の生体電気インピーダンス、被験者の左肺を含み腹部を含まない体幹上部左側の生体電気インピーダンス、被験者の腹部を含む体幹中部の生体電気インピーダンスを測定してもよい。
【0252】
また、右肺用と左肺用の2つのリサージュ図形を表示するため、第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zbを測定する場合、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaとして第1生体電気インピーダンスZaRまたは第2生体電気インピーダンスZaLを使用し、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとして第3生体電気インピーダンスZbを使用して呼吸解析処理(第1実施形態)を行うことで、右肺または左肺を対象として被験者の呼吸の種別を判別することができる。同様に、CPU170は、体幹上部の第1生体電気インピーダンスZaとして第1生体電気インピーダンスZaRまたは第2生体電気インピーダンスZaLを使用し、体幹中部の第2生体電気インピーダンスZbとして第3生体電気インピーダンスZbを使用して呼吸深度抽出処理と呼吸レベル表示処理(第1実施形態)を行うことで、右肺または左肺を対象として第1バーグラフBG1や第2バーグラフBG2を表示することができる。
【0253】
(5)変形例5
上述の呼吸レベル表示処理において、CPU170は、直前の1呼吸における呼吸深度ΔZap−pを、当該1呼吸における第2センタリング値Zb0で割った後に100を乗じて求めた値を、呼吸深度の正規化値%ΔZa(=(ΔZap−p/Zb0)×100)として採用しているが、これに限らず、呼吸深度ΔZap−pの正規化方法は任意である。要するに、呼吸深度ΔZap−pの値を、被験者間における体格等の個人差の影響を取り除いた値に補正するものであればよい。例えば骨格筋量(骨格筋の発達具合)を示す指標をMV、被験者の身長や生体電気インピーダンスの測定区間の長さを示す指標をH、身体骨格筋の発達に有用な部位の生体電気インピーダンスをZxと表記すると、MV∝H2/Zxという関係が成り立つので、第2センタリング値Zb0の代わりに、H2/Zxを用いて呼吸深度ΔZap−pを正規化してもよい。また、上述の指標MVの推定には、重回帰分析による多変量項として性別や年齢や体重などを含めることで、精度向上を図ることができる。
【0254】
(6)変形例6
例えば、ゲーム機を用いたシステムに本発明を適用することができる。
図56は、家庭用のゲーム機300を用いた生体測定システム5の構成を示す図である。同図に示すように生体測定システム5は、生体情報入力装置200’と、ゲーム機300と、コントローラ350と、モニタ400を備える。また、ゲーム機300のディスクスロットには光ディスク500が挿入される。
【0255】
生体情報入力装置200’は、被験者を載せる載台20’と、左手用の電極部30Lと、右手用の電極部30Rを備える。この生体情報入力装置200’は、基本的に図1に示した生体電気インピーダンス測定部200と同様の構成を有し、これに体重計を加えた構成となっている。また、生体情報入力装置200’は、通信ケーブルによってコントローラ350と接続されており、被験者の各部位の生体電気インピーダンスや体重を測定し、これらの生体情報をコントローラ350を介してゲーム機300に供給する。
【0256】
コントローラ350は、操作情報などを入力する入力装置である。コントローラ350は、Bluetooth(登録商標)などの無線通信によってゲーム機300と通信を行い、被験者が入力した操作情報や、生体情報入力装置200’から出力された生体情報をゲーム機300に送信する。例えば、身長、年齢、性別などの情報もコントローラ350を操作して入力することができる。モニタ400は、例えばテレビジョン受像機であり、通信ケーブルによってゲーム機300と接続されている。光ディスク500には、上述した第1〜第3実施形態や変形例(1)〜(5)で説明した各種の処理を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。
【0257】
なお、同図には、生体情報入力装置200’で測定された生体情報がコントローラ350を経由してゲーム機300に供給される場合を例示したが、生体情報入力装置200’は、生体情報を無線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合、生体情報入力装置200’は、ゲーム機300と無線通信を行うための無線通信モジュールを備える。また、生体情報入力装置200’は、生体情報を有線通信によってゲーム機300に直接供給してもよい。この場合は、生体情報入力装置200’とゲーム機300を通信ケーブルで直接接続すればよい。また、左手用の電極部30Lの代わりに、電流電極X3と電圧電極Y3を設けた左手用のコントローラ350を備える一方、右手用の電極部30Rの代わりに、電流電極X4と電圧電極Y4を設けた右手用のコントローラ350を備えてもよい。
【0258】
図57は、ゲーム機300の構成を示すブロック図である。
同図に示すようにゲーム機300は、ROM301と、RAM302と、ハードディスク303と、ディスクドライブ310と、無線通信モジュール320と、画像処理部330と、音声処理部340と、CPU360を備える。ROM301には、ゲーム機300の基本制御を司るプログラムなどが記憶されている。RAM302は、CPU360のワークエリアとして用いられる。ハードディスク303には、例えば後述する訓練メニュー管理テーブルTBL(図58)など、光ディスク500から読み出されたプログラムやデータなどが記憶される。ディスクドライブ310は、光ディスク500からプログラムやデータを読み出す。なお、プログラムやデータは、光ディスク500などの記録媒体によってゲーム機300に提供されるだけでなく、通信網を介してサーバなどからダウンロードされてもよい。この場合、ゲーム機300はネットワーク通信モジュールを備える。
【0259】
無線通信モジュール320は、コントローラ350との間で行われる無線通信を制御する。なお、無線通信モジュール320は、生体情報入力装置200’が測定した生体情報をゲーム機300に入力するための入力部である。画像処理部330は、画像データを生成してモニタ400に出力する。音声処理部340は、効果音や音声などのオーディオデータを生成してモニタ400(スピーカ)に出力する。CPU360は、ROM301やハードディスク303などに記憶されている各種のプログラムを実行することでゲーム機300の全体を制御する。例えば、CPU360は、無線通信モジュール320を制御し、コントローラ350を介して生体情報入力装置200’と通信を行うことができる。また、CPU360は、生体情報入力装置200’に対し、電流電極X1〜X4や電圧電極Y1〜Y4の切り換え、生体電気インピーダンスの測定、体重の測定などを指示することができる。
【0260】
また、CPU360は、例えば、第1実施形態で説明した呼吸解析処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第1実施形態で説明した呼吸深度抽出処理や呼吸レベル表示処理を行い、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさを示す第1バーグラフBG1や、腹式レベルを示す第2バーグラフBG2をモニタ400に表示することができる。また、CPU360は、第2実施形態で説明した吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸が胸式呼吸なのか腹式呼吸なのかドローイン呼吸なのかを判別することができる。また、CPU360は、第3実施形態で説明したリサージュ図形表示処理を行い、リサージュ図形をモニタ400に表示することができる。また、CPU360は、バーグラフBG1〜BG3、リサージュ図形、肺の模式図などを利用して被験者の呼吸を訓練するための処理を行うことができる。このようにCPU360は、上述した第1〜第3実施形態や変形例(1)〜(5)で説明した各種の処理を行うことが可能である。
【0261】
図58は、訓練メニュー管理テーブルTBLのデータ構成を示す図である。
訓練メニュー管理テーブルTBLは、被験者が自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューで呼吸の訓練を行えるようにするためのものである。訓練メニュー管理テーブルTBLには、呼吸の能力に応じて定められた階級(ランク)ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、この階級をクリアして次の階級に進むためのクリア条件が記憶されている。例えば、同図に示す例では、ランク1〜ランク5までの5つの階級が設けられている。また、1階級ごとに20個の訓練メニューが用意されている。
【0262】
例えば、訓練メニューの具体例として、胸式呼吸や腹式呼吸をマスターするための訓練、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練、ドローイン呼吸をマスターするための訓練、腹式呼吸や完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練、左右の肺ごとに換気能力を高める訓練、ドローイン呼吸によって呼吸機能や運動機能を高める訓練、ヨガなどで用いられる様々なポーズを使用して呼吸筋に負荷を与えながら各種の呼吸を行って呼吸機能や運動機能を強化する訓練などを例示することができる。
【0263】
なお、完全呼吸とは、腹部と胸部と肩甲部を使って肺の換気能力を最大限に活用しながら呼息と吸息を行う呼吸法である。完全呼吸を行う場合、例えば、吸息時には、まず腹を膨らませながら息を吸い、次に胸を前に突き出す感じで胸郭を広げながら息を吸い、最後に肩を上げながら息を吸っていく。これにより横隔膜が最大限に開いた状態になる。また、呼息時には、その逆で、まず肩を下げながら息を吐き、次に広げた胸郭を元に戻しながら息を吐き、最後に腹を凹ませながら息を吐いていく。
【0264】
また、訓練メニューには、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)を使用し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)を使用し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにするもの、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)の両方を使用し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにするものなどが含まれる。
【0265】
また、クリア条件の具体例として、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上であること、肺の換気能力が予め定められた基準値以上であること、ドローイン呼吸ができること、腹式レベルが所定レベル以上であること、20個の訓練メニューを全て訓練し終えたことなどを例示することができる。なお、訓練メニュー管理テーブルTBLにおいて階級は2つ以上であればよいし、訓練メニューについても1階級ごとに1つ以上あればよい。また、階級分けや訓練内容の具体例として以下を例示することができる。
【0266】
[ランク1/中高度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
基本的な胸郭部呼吸運動を司る胸部呼吸筋を胸式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク2/軽度呼吸器疾患患者向けトレーニング]
横隔膜などの腹部呼吸筋を腹式呼吸によって鍛え、呼吸器疾患によって低下した呼吸機能を回復させるためのリハビリ用トレーニング。
[ランク3/健常者向け標準トレーニング]
胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸によって胸部呼吸筋と腹部呼吸筋の両方を鍛え、呼吸機能の更なる向上や、喫煙、生活習慣病、運動不足、加齢などで低下した呼吸機能の改善を図るためのトレーニング。
[ランク4/軽度負荷トレーニング]
ドローイン呼吸によって体幹部のインナーマッスル(例えば腹横筋や脊柱起立筋など)を鍛え、呼吸機能の向上の他、腰痛予防や運動機能を高めるためのトレーニング。
[ランク5/アスリート向け中高度負荷トレーニング]
例えばヨガで用いられるポーズなど呼吸筋に負荷を与える姿勢とドローイン呼吸を組み合わせて運動機能を強化するためのトレーニング。
【0267】
なお、ランク1,2として挙げた呼吸器疾患の患者向けトレーニングは、あくまで治療施設での医療指導の遵守が大前提である。また、疾患のレベルにもよるが、基本的には横隔膜がある程度機能し、呼吸を訓練することで呼吸機能の改善が期待できる者を対象者としている。また、ランク1〜5に対し、口をすぼめながら呼吸をするといった負荷を組み合わせることもできる。また、呼吸法とポーズの組み合わせ方やトレーニングの時間配分などは、適宜任意に定めることができる。
【0268】
図59は、呼吸訓練管理処理の処理内容を示すフローチャートである。
同図に示す呼吸訓練管理処理は、例えば、被験者が本システム5を利用して呼吸の訓練を始める場合にCPU360によって実行される。CPU360は、呼吸訓練管理処理を開始すると、まず、被験者の呼吸の能力を検出する処理を行う(ステップS901)。例えば、CPU360は、胸式呼吸や腹式呼吸を行うよう被験者に指示するメッセージを報知するとともに、第1実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理、あるいは第3実施形態で説明したリサージュ図形表示処理や肺の換気能力の良否判定を行う。これにより、CPU360は、例えば、胸式呼吸や腹式呼吸の大きさ、肺の換気能力、腹式レベルなどを被験者の呼吸の能力として検出する。
【0269】
なお、被験者の呼吸の能力を通常時の呼吸から検出するため、呼吸の測定を行っていることを被験者に報知せずにステップS901に示す処理を行ってもよい。また、ステップS901では、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZbを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよいし、第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zbを測定して被験者の呼吸の能力を検出してもよい。
【0270】
次に、CPU360は、訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、ステップS901で検出した被験者の呼吸の能力に応じた階級を特定する(ステップS902)。また、CPU360は、特定した階級に対応する訓練メニューを訓練メニュー管理テーブルTBLから選択する(ステップS903)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、図58に示す訓練メニュー管理テーブルTBLを参照し、メニュー41〜メニュー60を選択する。
【0271】
この後、CPU360は、ステップS903で選択した訓練メニューを使用して、被験者の呼吸を訓練するための処理を行う(ステップS904)。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60を使用して呼吸を訓練するための処理を行う。また、ランク3が上述した健常者向けの標準トレーニングであった場合、CPU360は、訓練メニューに基づいて、胸式呼吸と腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸をマスターするための訓練や、完全呼吸によって肺の換気能力を高める訓練を行う。また、CPU360は、例えば、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)をモニタ400に表示し、被験者が目標とする呼吸の様子を確認しながら訓練を行えるようにすることができる。また、CPU360は、被験者の呼吸の様子を示すリサージュ図形(または被験者の呼吸の様子を示すバーグラフBG1,BG2や肺の模式図)と、目標とする呼吸の様子を示すリサージュ図形(または目標とする呼吸の様子を示すバーグラフBG3や肺の模式図)の両方をモニタ400に表示し、被験者が自分の呼吸の様子と目標とする呼吸の様子を見比べながら訓練を行えるようにすることができる。
【0272】
この後、CPU360は、被験者の現在の階級に対応するクリア条件を訓練メニュー管理テーブルTBLから読み出し、クリア条件が成立しているか否かを判定する(ステップS905)。例えば、被験者の現在の階級がランク3であった場合、CPU360は、図58に示す訓練メニュー管理テーブルTBLから条件Cを読み出し、この条件Cが成立しているか否かを判定する。
【0273】
例えば、条件Cが「腹式呼吸の大きさが予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第1実施形態で説明した呼吸解析処理や呼吸深度抽出処理を行い、被験者の腹式呼吸の大きさが基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「肺の換気能力が予め定められた基準値以上」であった場合、CPU360は、第3実施形態で説明した肺の換気能力の良否判定を行い、肺の換気能力が基準値以上であるか否かを判定する。また、条件Cが「ドローイン呼吸ができること」であった場合、CPU360は、第2実施形態で説明した呼吸種別判別処理を行い、被験者の呼吸がドローイン呼吸であるか否かを判定する。また、条件Cが「20個の訓練メニューを全て訓練し終えたこと」であった場合、CPU360は、メニュー41〜メニュー60による訓練を全て終えている場合にクリア条件が成立したと判定する。
【0274】
ステップS905の結果が否定である場合は、ステップS904に戻り、現在の階級における呼吸の訓練を継続する。一方、ステップS905の結果が肯定である場合、CPU360は、被験者の階級を次の階級にランクアップさせた後(ステップS906)、ステップS903に戻る。例えば、被験者の階級がランク3であった場合、CPU360は、ステップS906において被験者の階級をランク4に変更してステップS903に戻る。これにより、訓練メニュー管理テーブルTBLからランク4に対応する訓練メニュー(メニュー61〜メニュー80)が選択され、新たな訓練が開始される。
【0275】
なお、被験者がコントローラ350を操作して訓練の終了を指示すると、同図に示す呼吸訓練管理処理が終了する。この際、CPU360は、被験者の現在の階級を示すランク情報をハードディスク303に記憶し、被験者が次に呼吸の訓練を行う場合は、ハードディスク303に記憶してあるランク情報を読み出してステップS903から処理を開始する。
【0276】
以上説明したように本変形例によれば、ゲーム機300を用いることで、体重や体脂肪を測定するのと同じように家庭内で手軽に呼吸を測定することが可能になる。また、呼吸の訓練についても家庭内で手軽に行える。また、本変形例によれば、被験者は、自分の呼吸の能力に見合った訓練メニューに基づいて呼吸の訓練を行うことができるので、効率よく呼吸を訓練することができる。また、訓練メニューを階級ごとに分けて用意し、1階級ごとにクリアしながら次の階級に進むといったゲーム性を持たすことで、楽しみながら呼吸の訓練を行うことができるので、呼吸の訓練に対する被験者のモチベーションを高めることもできる。
【0277】
なお、第1〜第3実施形態で説明した生体測定装置1において呼吸訓練管理処理(図59)を行ってもよい。この場合、呼吸訓練管理処理を行うためのプログラムや呼吸訓練管理テーブルTBL(図58)などを第1記憶部120に記憶しておけばよい。また、ゲーム機300の代わりに、パーソナルコンピュータや携帯型電子機器(例えば携帯電話機など)を用いてもよいし、携帯型電子機器の場合には、表示装置としてヘッドマウントディスプレイを使用してもよい。
【0278】
(7)変形例7
生体測定装置1は、表示部160を備えず、外部の表示装置にリサージュ図形やバーグラフBG1〜BG3などを表示してもよい。また、生体測定装置1は、生体電気インピーダンス測定部200を備えず、外部の生体電気インピーダンス測定装置で測定された、第1生体電気インピーダンスZaと第2生体電気インピーダンスZb(または第1〜第3生体電気インピーダンスZaR,ZaL,Zb)を無線通信や有線通信によって入力する入力部を備えていてもよい。この場合、入力部は、例えば、無線通信モジュール、ネットワーク通信モジュール、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスなどの通信インターフェイスになる。
【0279】
(8)変形例8
リサージュ図形は、呼吸の訓練を行う場合だけでなく、呼吸の測定を行なう場合(生体電気インピーダンスを測定して呼吸の種別やその大きさを判定する場合)に表示してもよい。また、本発明は、呼吸の測定機能や呼吸の訓練機能のみを有する装置やシステムに限定されない。例えば、フィットネス用のトレーニング装置など、呼吸の測定機能や呼吸の訓練機能がその一部に組み込まれた各種のトレーニング装置やトレーニングシステムに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0280】
1 生体測定装置
5 生体測定システム
120 第1記憶部
150 入力部
170 CPU
200 生体電気インピーダンス測定部
200’ 生体情報入力装置
Za 第1生体電気インピーダンス(体幹上部)
Zb 第2生体電気インピーダンス(体幹中部)
300 ゲーム機
320 無線通信モジュール
360 CPU
400 モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定装置。
【請求項2】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値、および、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値を生成するセンタリング値生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の前記第1センタリング値に対する相対値である第1相対値を求める第1相対値算出部と、
前記第2生体電気インピーダンスの測定値の前記第2センタリング値に対する相対値である第2相対値を求める第2相対値算出部と、をさらに備え、
前記解析部は、前記第1相対値と前記第2相対値とに基づいて前記判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項3】
前記判別情報は、前記被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比を示すものであり、
前記解析部は、
前記判別情報と、前記第1相対値および前記第2相対値との関係を表す回帰式にしたがって演算処理を実行することで、前記第1相対値および前記第2相対値に対応する前記判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の呼吸判定装置。
【請求項4】
前記回帰式は以下の形で表される、
ことを特徴とする請求項3に記載の呼吸判定装置。
ΔRib/ΔAb=(a×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b
ΔRib:被験者の胸部の周囲径の変化、ΔAb:被験者の腹部の周囲径の変化、ΔRib/ΔAb:判別情報、ΔZa:第1相対値、ΔZb:第2相対値、a,b:定数。
【請求項5】
前記ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超える場合は、前記被験者の呼吸は胸式呼吸である一方、前記所定の閾値以下の場合は腹式呼吸である、
ことを特徴とする請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求め、
前記ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値以下の場合は、前記被験者の呼吸は腹式呼吸であり、
前記ΔRib/ΔAbの値が前記所定の閾値を超え、かつ前記センタリング値生成部が生成した前記第2センタリング値が前記被験者の胸式呼吸時の前記第2センタリング値より所定値以上大きい場合は、前記被験者の呼吸は腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であり、
前記ΔRib/ΔAbの値が前記所定の閾値を超え、かつ前記センタリング値生成部が生成した前記第2センタリング値が前記被験者の胸式呼吸時の前記第2センタリング値と前記所定値との加算値未満の場合は、前記被験者の呼吸は胸式呼吸である、
ことを特徴とする請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項8】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部をさらに備え、
前記生体電気インピーダンス測定部は、
所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、前記第1生体電気インピーダンスおよび前記第2生体電気インピーダンスを測定し、
前記センタリング値生成部は、
所定数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第1センタリング値を生成する一方、前記ゼロクロスタイミング抽出部で抽出された前記ゼロクロスタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第2センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項2から請求項7の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項9】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値を用いて移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第1センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の呼吸判定装置。
【請求項10】
前記センタリング期間の時間長は、前記被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される、
ことを特徴とする請求項9に記載の呼吸判定装置。
【請求項11】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前の前記サンプリングタイミングで生成した前記第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値として採用する、
ことを特徴とする請求項8から請求項10の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項12】
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部と、
前記被験者の1呼吸ごとに、前記解析部により求められた前記判別情報に基づいて当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを求める腹式レベル算出部と、
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における前記呼吸深度および前記腹式レベルに基づいて、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを報知する報知部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2から請求項11の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項13】
前記呼吸深度抽出部で抽出された前記呼吸深度を正規化する正規化部をさらに備え、
前記報知部は、
前記呼吸深度と、1呼吸で肺に出入りする空気量を示す1回換気量との関係を示す第2の回帰式にしたがって演算処理を実行することで、前記正規化部にて正規化された前記呼吸深度に対応する前記1回換気量を求め、
その求めた前記1回換気量と、前記腹式レベルとに基づいて、前記被験者の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを決定して報知する、
ことを特徴とする請求項12に記載の呼吸判定装置。
【請求項14】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項15】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値とを生成するセンタリング値生成部と、をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記第1センタリング値および前記第2センタリング値によって定まる前記リサージュ図形上の位置が前記リサージュ図形を表示する表示領域の中心になるように、前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項16】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値とを生成するセンタリング値生成部と、をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、前記第1センタリング値に基づいて前記リサージュ図形の前記一方の軸方向のセンタリングを行う第1センタリング処理と、前記第2センタリング値に基づいて前記リサージュ図形の前記他方の軸方向のセンタリングを行う第2センタリング処理とを有し、
前記第2センタリング処理を行う頻度が前記第1センタリング処理を行う頻度より少ない、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項17】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記第1振幅値および前記第2振幅値を用いて前記2軸のレンジを調整し、前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項16の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項18】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、前記第1振幅値を用いて前記一方の軸のレンジを調整する第1レンジ調整処理と、前記第2振幅値を用いて前記他方の軸のレンジを調整する第2レンジ調整処理とを有し、
前記第2レンジ調整処理を行う頻度が前記第1レンジ調整処理を行う頻度より少ない、
ことを特徴とする請求項14から請求項16の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項19】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の軌跡の表示態様が最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで異なるように前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項18の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項20】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の軌跡の表示態様が経過時間に応じて変化するように前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項18の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項21】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成するとともに、目標とする呼吸の種別と当該呼吸の大きさとに応じた呼吸指導用のリサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項20の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項22】
前記リサージュ図形の軌跡の傾斜角を算出する傾斜角算出部と、
前記傾斜角算出部が算出した傾斜角を予め定められた基準傾斜角と比較して、肺の換気能力の良否を判定する換気能力判定部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項14から請求項21の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項23】
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部と、
前記呼吸深度抽出部が抽出した呼吸深度の経時的変化を示すグラフの表示データを生成するグラフ生成部と、をさらに備え、
前記グラフの時間軸は非線形であって、所定の時間幅を1区間としたとき、最新の1区間と最古の1区間では前記時間軸のレンジが異なり、前記最新の1区間の方が前記最古の1区間より時間分解能が高い、
ことを特徴とする請求項2から請求項11、請求項14から請求項22の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項24】
呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部と、
前記記憶部を参照し、前記呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する前記訓練メニューに基づいて前記被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、前記特定した階級に対応する前記クリア条件が成立すると、前記被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項23の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項25】
前記生体電気インピーダンス測定部は、前記被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第3生体電気インピーダンスとを測定し、
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値または前記第2生体電気インピーダンスの測定値と、前記第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項26】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第3生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第1リサージュ図形の表示データを生成するとともに、前記一方の軸を前記第2生体電気インピーダンス、前記他方の軸を前記第3生体電気インピーダンスとし、前記第2生体電気インピーダンスの測定値および前記第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第2リサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項25に記載の呼吸判定装置。
【請求項27】
前記表示データ生成部は、前記第1リサージュ図形と前記第2リサージュ図形とが重ねて表示されるように、前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26に記載の呼吸判定装置。
【請求項28】
前記表示データ生成部は、前記第1リサージュ図形の軌跡と前記第2リサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26または請求項27に記載の呼吸判定装置。
【請求項29】
前記第1リサージュ図形の軌跡と前記第2リサージュ図形の軌跡との差異を検出する軌跡解析部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記差異が強調して表示されるように前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26から請求項28の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項30】
生体電気インピーダンス測定装置が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを入力する入力部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定装置。
【請求項31】
被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定システム。
【請求項1】
被験者の肺の上部を含み、腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定装置。
【請求項2】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値、および、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値を生成するセンタリング値生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の前記第1センタリング値に対する相対値である第1相対値を求める第1相対値算出部と、
前記第2生体電気インピーダンスの測定値の前記第2センタリング値に対する相対値である第2相対値を求める第2相対値算出部と、をさらに備え、
前記解析部は、前記第1相対値と前記第2相対値とに基づいて前記判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項3】
前記判別情報は、前記被験者の胸部の周囲径の変化と腹部の周囲径の変化との比を示すものであり、
前記解析部は、
前記判別情報と、前記第1相対値および前記第2相対値との関係を表す回帰式にしたがって演算処理を実行することで、前記第1相対値および前記第2相対値に対応する前記判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の呼吸判定装置。
【請求項4】
前記回帰式は以下の形で表される、
ことを特徴とする請求項3に記載の呼吸判定装置。
ΔRib/ΔAb=(a×ΔZb−ΔZa)/ΔZa+b
ΔRib:被験者の胸部の周囲径の変化、ΔAb:被験者の腹部の周囲径の変化、ΔRib/ΔAb:判別情報、ΔZa:第1相対値、ΔZb:第2相対値、a,b:定数。
【請求項5】
前記ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値を超える場合は、前記被験者の呼吸は胸式呼吸である一方、前記所定の閾値以下の場合は腹式呼吸である、
ことを特徴とする請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が、腹式呼吸なのか、胸式呼吸なのか、腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法なのかを判別可能な判別情報を求め、
前記ΔRib/ΔAbの値が所定の閾値以下の場合は、前記被験者の呼吸は腹式呼吸であり、
前記ΔRib/ΔAbの値が前記所定の閾値を超え、かつ前記センタリング値生成部が生成した前記第2センタリング値が前記被験者の胸式呼吸時の前記第2センタリング値より所定値以上大きい場合は、前記被験者の呼吸は腹部を凹ませた状態を維持しながら呼息と吸息を行う呼吸法であり、
前記ΔRib/ΔAbの値が前記所定の閾値を超え、かつ前記センタリング値生成部が生成した前記第2センタリング値が前記被験者の胸式呼吸時の前記第2センタリング値と前記所定値との加算値未満の場合は、前記被験者の呼吸は胸式呼吸である、
ことを特徴とする請求項4に記載の呼吸判定装置。
【請求項8】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第1センタリング値とが等しくなるゼロクロスタイミングを抽出するゼロクロスタイミング抽出部をさらに備え、
前記生体電気インピーダンス測定部は、
所定の周期でサンプリングタイミングに到達するたびに、前記第1生体電気インピーダンスおよび前記第2生体電気インピーダンスを測定し、
前記センタリング値生成部は、
所定数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第1センタリング値を生成する一方、前記ゼロクロスタイミング抽出部で抽出された前記ゼロクロスタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて前記第2センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項2から請求項7の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項9】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングよりも所定の時間長だけ前の時点を始点とし、当該サンプリングタイミングを終点とするセンタリング期間内の複数の前記サンプリングタイミングの各々における前記第1生体電気インピーダンスの測定値を用いて移動平均処理を行い、その結果に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第1センタリング値を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の呼吸判定装置。
【請求項10】
前記センタリング期間の時間長は、前記被験者の呼吸速度に応じて可変に設定される、
ことを特徴とする請求項9に記載の呼吸判定装置。
【請求項11】
前記センタリング値生成部は、
前記サンプリングタイミングごとに、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングであるか否かを判定し、当該サンプリングタイミングが前記ゼロクロスタイミングである場合は、当該サンプリングタイミングにおける前記第2生体電気インピーダンスの測定値に基づいて、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値を生成する一方、当該サンプリングタイミングがゼロクロスタイミングでない場合は、当該サンプリングタイミングの直前の前記サンプリングタイミングで生成した前記第2センタリング値を、当該サンプリングタイミングにおける前記第2センタリング値として採用する、
ことを特徴とする請求項8から請求項10の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項12】
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部と、
前記被験者の1呼吸ごとに、前記解析部により求められた前記判別情報に基づいて当該1呼吸に占める腹式呼吸の割合を示す腹式レベルを求める腹式レベル算出部と、
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における前記呼吸深度および前記腹式レベルに基づいて、当該1呼吸における腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを報知する報知部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2から請求項11の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項13】
前記呼吸深度抽出部で抽出された前記呼吸深度を正規化する正規化部をさらに備え、
前記報知部は、
前記呼吸深度と、1呼吸で肺に出入りする空気量を示す1回換気量との関係を示す第2の回帰式にしたがって演算処理を実行することで、前記正規化部にて正規化された前記呼吸深度に対応する前記1回換気量を求め、
その求めた前記1回換気量と、前記腹式レベルとに基づいて、前記被験者の腹式呼吸および胸式呼吸の各々の大きさと余裕度とを決定して報知する、
ことを特徴とする請求項12に記載の呼吸判定装置。
【請求項14】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項15】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値とを生成するセンタリング値生成部と、をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記第1センタリング値および前記第2センタリング値によって定まる前記リサージュ図形上の位置が前記リサージュ図形を表示する表示領域の中心になるように、前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項16】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第2生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第2生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示すリサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第1センタリング値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅基準レベルを示す第2センタリング値とを生成するセンタリング値生成部と、をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、前記第1センタリング値に基づいて前記リサージュ図形の前記一方の軸方向のセンタリングを行う第1センタリング処理と、前記第2センタリング値に基づいて前記リサージュ図形の前記他方の軸方向のセンタリングを行う第2センタリング処理とを有し、
前記第2センタリング処理を行う頻度が前記第1センタリング処理を行う頻度より少ない、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項17】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記第1振幅値および前記第2振幅値を用いて前記2軸のレンジを調整し、前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項16の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項18】
前記第1生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第1振幅値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値の振幅を示す第2振幅値とを特定する振幅値特定部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成する場合に行う処理として、前記第1振幅値を用いて前記一方の軸のレンジを調整する第1レンジ調整処理と、前記第2振幅値を用いて前記他方の軸のレンジを調整する第2レンジ調整処理とを有し、
前記第2レンジ調整処理を行う頻度が前記第1レンジ調整処理を行う頻度より少ない、
ことを特徴とする請求項14から請求項16の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項19】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の軌跡の表示態様が最新の1呼吸とそれ以外の過去の呼吸とで異なるように前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項18の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項20】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の軌跡の表示態様が経過時間に応じて変化するように前記リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項18の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項21】
前記表示データ生成部は、前記リサージュ図形の表示データを生成するとともに、目標とする呼吸の種別と当該呼吸の大きさとに応じた呼吸指導用のリサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項14から請求項20の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項22】
前記リサージュ図形の軌跡の傾斜角を算出する傾斜角算出部と、
前記傾斜角算出部が算出した傾斜角を予め定められた基準傾斜角と比較して、肺の換気能力の良否を判定する換気能力判定部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項14から請求項21の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項23】
前記被験者の1呼吸ごとに、当該1呼吸における呼吸深度を抽出する呼吸深度抽出部と、
前記呼吸深度抽出部が抽出した呼吸深度の経時的変化を示すグラフの表示データを生成するグラフ生成部と、をさらに備え、
前記グラフの時間軸は非線形であって、所定の時間幅を1区間としたとき、最新の1区間と最古の1区間では前記時間軸のレンジが異なり、前記最新の1区間の方が前記最古の1区間より時間分解能が高い、
ことを特徴とする請求項2から請求項11、請求項14から請求項22の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項24】
呼吸の能力に応じて定められた階級ごとに、呼吸を訓練するための訓練メニューと、当該階級をクリアするためのクリア条件とを記憶する記憶部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸の能力を検出する呼吸能力検出部と、
前記記憶部を参照し、前記呼吸能力検出部が検出した呼吸の能力に応じた階級を特定し、特定した階級に対応する前記訓練メニューに基づいて前記被験者の呼吸を訓練するための処理を行い、前記特定した階級に対応する前記クリア条件が成立すると、前記被験者の階級を当該階級より上位の次の階級に移行させる訓練管理部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項23の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項25】
前記生体電気インピーダンス測定部は、前記被験者の右肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部右側の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の左肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部左側の第2生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第3生体電気インピーダンスとを測定し、
前記解析部は、前記第1生体電気インピーダンスの測定値または前記第2生体電気インピーダンスの測定値と、前記第3生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸判定装置。
【請求項26】
互いに直交する2軸のうち、一方の軸を前記第1生体電気インピーダンス、他方の軸を前記第3生体電気インピーダンスとし、前記第1生体電気インピーダンスの測定値および前記第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第1リサージュ図形の表示データを生成するとともに、前記一方の軸を前記第2生体電気インピーダンス、前記他方の軸を前記第3生体電気インピーダンスとし、前記第2生体電気インピーダンスの測定値および前記第3生体電気インピーダンスの測定値の経時的変化を示す第2リサージュ図形の表示データを生成する表示データ生成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項25に記載の呼吸判定装置。
【請求項27】
前記表示データ生成部は、前記第1リサージュ図形と前記第2リサージュ図形とが重ねて表示されるように、前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26に記載の呼吸判定装置。
【請求項28】
前記表示データ生成部は、前記第1リサージュ図形の軌跡と前記第2リサージュ図形の軌跡との表示態様が異なるように、前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26または請求項27に記載の呼吸判定装置。
【請求項29】
前記第1リサージュ図形の軌跡と前記第2リサージュ図形の軌跡との差異を検出する軌跡解析部をさらに備え、
前記表示データ生成部は、前記差異が強調して表示されるように前記第1リサージュ図形の表示データおよび前記第2リサージュ図形の表示データを生成する、
ことを特徴とする請求項26から請求項28の何れかに記載の呼吸判定装置。
【請求項30】
生体電気インピーダンス測定装置が測定した、被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを入力する入力部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定装置。
【請求項31】
被験者の肺の上部を含み腹部を含まない体幹上部の第1生体電気インピーダンスと、前記被験者の肺の中下部および腹部を含む体幹中部の第2生体電気インピーダンスとを測定する生体電気インピーダンス測定部と、
前記第1生体電気インピーダンスの測定値と、前記第2生体電気インピーダンスの測定値とに基づいて、前記被験者の呼吸が腹式呼吸なのか胸式呼吸なのかを判別可能な判別情報を求める解析部と、を備える、
ことを特徴とする呼吸判定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【公開番号】特開2012−35054(P2012−35054A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88770(P2011−88770)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
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