説明

呼吸器マスクおよびシステム

【課題】CPAP治療時のチューブの引っ張りというリスクを低減または回避すること。
【解決手段】気道陽圧システム(10)であって、着用者の顔上に配置されるとともに着用者の顔に対して気密的に連結されるマスク(60)を具備してなり、このマスクが、加圧された呼吸可能ガスを受領するための導入ポートを備え、この導入ポートが、チューブに対して連結され、このチューブが、加圧された呼吸可能ガスを供給するためのモータアセンブリに対して連結され、このモータアセンブリが、ヘッドギアシステム上にあるいはヘッドギヤシステム内に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年9月25日付けで出願された米国特許予備出願第60/505,718号明細書の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、呼吸器に関するものであり、例えば、マスクとエア流生成源とを具備しさらにエア流生成源がマスク着用者に対して取付可能とされているような、持続的気道陽圧(『CPAP』)システムに関するものである。一実施形態においては、本発明は、エア流生成源をマスク上に取り付けるタイプのCPAPシステムを提供する。他の実施形態においては、エア流生成源を、着用者の身体に対して、例えば腕や脚や胸やウエストに対して、設置することができ、短いエア供給チューブを使用することによって、マスクとエア流生成源とを接続することができる。
【背景技術】
【0003】
CPAP治療は、例えば閉塞型睡眠時無呼吸症候群といったような呼吸障害を治療するために一般に使用されている。CPAP治療を行うに際しては、典型的には、患者の鼻および/または口領域上にマスクを密封的に装着し、マスクの内部に形成されたチャンバに対して加圧エアを供給する。従来技術によるシステムにおいては、エアは、典型的には患者のベッドの近くに配置されたエア流生成源によって、マスクに対して供給される。この場合には、エア流生成源によって生成されたエアをマスクに対して供給するために、エア供給チューブが必要とされる。
【0004】
使用時にまた睡眠時に、マスクシステムに不安定性をもたらすものとして、主に2つの原因が存在する。患者の正常な移動が、不安定性をもたらし得る。例えば、患者が横向きに寝返りをした場合、マスクがベッド構成部材と衝突する可能性がある。他の関心は、患者から遠い位置に配置された装置に対して接続を行うためにエア供給チューブを使用していることであり、この場合、いわゆる『チューブの引っ張り』が存在する。チューブの引っ張りとは、ベッドの背面や側面上に取り付けられたエア供給チューブに対して引っ張り力が印加されることである。チューブの引っ張りは、着用者の移動によって引き起こされ、複雑化する。チューブの引っ張りは、CPAP治療を行っている際であれば、マスクシールと患者の顔との間の相対運動を引き起こし、漏れや不快感を引き起こす。
【0005】
他の関心事は、エア供給チューブが長いことである(多くの場合、約2m以上)。このため、エア流生成源からマスクへと加圧エアを供給する際に、応答時間に遅延が発生するとともに、立ち上がり時間が必要となる。チューブの直径や長さのために、流通インピーダンスが増大しおよび/または圧力降下が増大する。このため、エア供給チューブに沿っての圧力降下を補償し得るよう、より大きなブロワモータが必要とされる。
【0006】
特許文献1〜3には、マスクを適用する際の安全性が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,590,951号明細書
【特許文献2】米国特許第5,372,130号明細書
【特許文献3】米国特許第6,435,184号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一見地においては、例えばCPAP治療時のチューブの引っ張りというリスクを低減することによりあるいは回避することにより、従来技術における問題点を解決する。
【0009】
本発明の他の見地は、シール性と快適性とを両立させつつ、ベッド内における着用者の移動自由度を大きなものとすることである。
【0010】
本発明の他の見地は、エア流供給源からマスクへの加圧エアの供給に際しての応答時間/立ち上がり時間における遅延を低減または除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態においては、呼吸器システムあるいはCPAPシステムは、マスクと、エア流生成源と、を具備し、マスクとエア流生成源との双方が、着用者に対してまたは着用者上に付設される。一実施形態においては、マスクが、患者の顔に対して設置され、エア流生成源が、着用者の身体に対して取り付け得るものとされる。エア流生成源は、マスクに対して直接的に付設することができる。
【0012】
一実施形態においては、CPAPシステムは、フェイスマスクと、エア流生成源と、を具備し、エア流生成源が、フェイスマスク上に取り付けられる。
【0013】
さらなる実施形態においては、呼吸器システムあるいはCPAPシステムは、
(i)着用者の顔の一領域上にわたって配置されるフェイスマスクを具備し、このマスクが、
(1)シェルと;
(2)着用者の顔に対してマスクを密封的に連結し得るようシェルに対して付設されたクッションであるとともに、シェルと着用者の顔との間にチャンバを形成するものとされたクッションと;
(3)呼吸可能ガスの流れを受領し得るよう、シェルに設けられた導入ポートと;
を備え、
(ii)システムが、さらに、エア流生成源を具備し、このエア流生成源が、マスク上に取り付けられているとともに、チャンバ内に2〜40cmHO という圧力を生成し得るものとされている。
【0014】
実施形態においては、呼吸器システムまたはCPAPシステムは、着用者に対して十分に近傍の位置に配置され得るものとされたエア流生成源を具備している。これにより、エア供給チューブの長さを1.5m以内とすることができる。
【0015】
一実施形態においては、呼吸器システムまたはCPAPシステムは、
導入ポートを有したフェイスマスクと、
導出ポートを有したエア流生成源と、
導出ポートから導入ポートに対して呼吸可能ガスを供給するための少なくとも1つのエア供給チューブと、
を具備し、
少なくとも1つのエア供給チューブが、1.5mよりも短いものとされている。少なくとも1つのエア供給チューブは、2つ以上のエア供給チューブから構成することができ、全体的に1.5mよりも短いものとされる。
【0016】
さらなる実施形態においては、呼吸器システムあるいはCPAPシステムは、
(i)フェイスマスクを具備し、このマスクが、
(1)シェルと;
(2)着用者の顔に対してマスクを密封的に連結し得るようシェルに対して付設されたクッションであるとともに、シェルと着用者の顔との間にチャンバを形成するものとされたクッションと;
(3)呼吸可能ガスの流れを受領し得るよう、シェルに設けられた導入ポートと;
を備え、
(ii)システムが、さらに、エア流生成源と;
(iii)長さが1.5m以内のものとされたエア供給チューブと;
を具備し、
エア供給チューブが、導入ポートとエア流生成源とを接続し、これにより、エア流生成源から導入ポートに向けての呼吸可能ガスの供給によって、チャンバ内に2〜40cmHO という圧力が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態によるCPAPシステムを示す斜視図である。
【図2】図1のCPAPシステムを示す分解図である。
【図3】図1のCPAPシステムの内表面を示す正面図である。
【図4】図1のCPAPシステムの外表面を示す背面図である。
【図5】図4のCPAPシステムを示す右側面図である。
【図6】図4のCPAPシステムを示す平面図である。
【図7】図4のCPAPシステムを示す底面図である。
【図8】本発明の他の実施形態によるCPAPシステムを示す底面図である。
【図9A】図1のCPAPシステムの着用者を示す図である。
【図9B】本発明の代替可能な実施形態を示す図である。
【図10A】本発明の他の実施形態によるCPAPシステムの着用者を示す図である。
【図10B】本発明の一実施形態によるCPAPに関するエア流生成源およびバッテリパックを概略的に示す図である。
【図11A】本発明の他の実施形態によるCPAPシステムの着用者を示す図である。
【図11B】本発明の一実施形態によるCPAPに関するバッテリパックおよびストラップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の他の見地や利点や特徴点は、以下に記載されており、当業者であれば、本発明の開示により、理解されるであろう。本明細書において開示された発明は、様々な見地や様々な利点や様々な特徴点に関しての様々な特定の組合せおよび様々な任意の組合せを制限するものではない。開示された様々な見地や様々な利点や様々な特徴点に関しての様々な組合せが、本発明内に包含されることが、想定されている。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態によるCPAPシステムを示す斜視図である。
【0020】
図2は、図1のCPAPシステムを示す分解図である。
【0021】
図3は、図1のCPAPシステムの内表面を示す正面図である。
【0022】
図4は、図1のCPAPシステムの外表面を示す背面図である。
【0023】
図5は、図4のCPAPシステムを示す右側面図である。
【0024】
図6は、図4のCPAPシステムを示す平面図である。
【0025】
図7は、図4のCPAPシステムを示す底面図である。
【0026】
図8は、本発明の他の実施形態によるCPAPシステムを示す底面図である。
【0027】
図9Aは、図1のCPAPシステムの着用者を示す図である。
【0028】
図9Bは、本発明の代替可能な実施形態を示す図である。
図10Aは、本発明の他の実施形態によるCPAPシステムの着用者を示す図である。
【0029】
図10Bは、本発明の一実施形態によるCPAPに関するエア流生成源およびバッテリパックを概略的に示す図である。
【0030】
図11Aは、本発明の他の実施形態によるCPAPシステムの着用者を示す図である。
【0031】
図11Bは、本発明の一実施形態によるCPAPに関するバッテリパックおよびストラップを示す図である。
【0032】
CPAPシステムは、マスクと、エア流生成源と、を具備しており、エア流生成源が、マスクの着用者に提供される。一実施形態においては、エア流生成源は、着用者の身体(着用者の衣類を含む)に対して取付可能なものとされる。他の実施形態においては、エア流生成源は、マスクに対して取り付けられる。
【0033】
図1〜図11Bは、本発明によるCPAPシステムのいくつかの実施形態を示している。
【0034】
図1に示すように、CPAPシステム10は、マスク60を具備している。マスク60は、クッション30とシェル46とを備えており、これにより、着用者の気道に対して連通するエアチャンバを形成する。この例においては、マスク60は、着用者の少なくとも口と鼻との領域をカバーする。しかしながら、マスク60は、鼻マスクとすることもでき、その場合には、例えば鼻の領域だけあるいは口の領域だけをカバーする。いずれの場合においても、マスクは、着用者の目をカバーしたり視界を妨害したりしないことが好ましい。マスクは、CO ガスの追い出しのためのベント穴61と、エアチャンバ内へと例えば酸素といったような補足ガスを導入する際に使用するのための1つまたは複数の導入ポート47と、を備えることができる。ベント穴61は、制御可能にCO を排出し得るよう、適切なインサート63等を使用してカバーすることができる。インサートは、ResMed社による米国特許第6,561,190号明細書および米国特許第6,561,191号明細書に開示されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。
【0035】
マスククッション30は、好ましくは、ソフトな材料(例えば、シリコーン弾性体といったようなゴム材料)から形成され、着用者の顔に対して密封的な連結を形成する。これにより、着用者の顔とマスク60との間にエアチャンバを形成することができる。シェルは、比較的硬質のプラスチックから形成することができる。しかしながら、シェルは、用途によっては、クッション30と同じ材料から形成することができる。クッション30の例は、例えば、 ResMed Limited 社による米国特許第6,513,526号明細書に開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。市販されているマスク60の例としては、例えば、ResMed Limited 社による Mirage(登録商標)フルフェイスマスクシリーズIIがある(詳細に後述するような細部調整は考慮されていない)。
【0036】
ヘッドギアコネクタ50が、シェル46に付設されている。ヘッドギアコネクタは、着用者の頭に対してCPAPシステム10を固定するためのヘッドギアストラップ(固定用ストラップ55は、図9および図10Aに示されている)を受領し得るよう構成されている。シェル46に対しては、延出部72が取り付けられている。延出部72には、全体的に弾性パッド(図示せず)が付設されており、これにより、着用者の額に対して係合可能とされていて、付加的な安定性を提供し得るものとされている。ストラップは、着用者の頭部に対する接触を行い得るよう、延出部72の各コネクタ50に設けることができる。これに代えてあるいはこれに加えて、図9および図10Aに示すように、ストラップが着用者の頭部全体にわたって延在するようにして、延出部72に、ストラップコネクタ50aを設けることができる。
【0037】
着用者の顔とマスク60の内部との間に形成されたエアチャンバは、エア導入ポート56(図2を参照)を介して呼吸可能ガス(例えば、エア)を受領する。エア導入ポート56は、着用者の口/鼻領域のごく近傍に(例えば、直上に)配置され得るよう構成されている。呼吸可能ガスは、エア流生成源20によって供給される。一実施形態においては、エア流生成源20によって供給されたエア流は、エアチャンバ内において、2〜40cmHO という範囲の、例えば、10〜28cmHO や、15〜20cmHO 、という範囲の、あるいは、10cmHO 等という比較的一定の単一のまたは可変の圧力を形成する。
【0038】
図2に示すように、エア流生成源20は、例えば、第1部分90と第2部分80とを備えている。これら部分80,90は、例えば穴134,136を通したネジ130によって、互いに連結される。これにより、羽根車120およびモータ100のためのハウジングを形成する。それら部分80,90は、様々な材料から形成することができ、例えば、硬化させた樹脂材料や、金属(例えばアルミニウム)や、例えばポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレン等)やポリカーボネートやアクリロニトリルブタジエンスチレンポリマー(『ABS』)といったようなポリマー、から形成することができる。
【0039】
モータ100は、羽根車120を駆動する。モータ100に対しては、電気コード110を介して電力が供給される。モータ100は、ネジ132を締め付けることによって、羽根車ハウジング内に固定されている。電気的なモータの例としては、例えば米国カリフォルニア州の Servo Magnetics Inc. 社によって市販されているような、小型ビュレットモータがある。しかしながら、様々なタイプのモータを使用することができる。例えば、空気圧によって駆動されるモータを使用することができる。この場合には、電気パルスではなく、小型のエアラインが、エネルギー源として利用される。モータアセンブリは、複数のモータを使用したアセンブリとすることも、単一のモータによって複数の羽根車を駆動するアセンブリとすることも、両面型の羽根車を備えたアセンブリとすることも、また、これら以外の構成とすることも、できる。他の可能性としては、所定のエア圧力供給し得る複数のシステムを分散させることである。他の変形例においては、さらなるモータ羽根車アセンブリを使用することにより、例えば、膨張可能カフが設けられている場合には、刺激やあるいは漏れ問題といったような検出パラメータに対する応答性を変更することができる。個別のモータ羽根車を使用することにより、顔に対しての、あるいは、クッションシールのプロファイルに対しての、マスクの位置を制御することができる。
【0040】
羽根車の例としては、例えば、ResMed社による S6 CPAP羽根車がある。しかしながら、様々な羽根車を使用することができ、例えば、軸流ファンや、ラジアルファンや、遠心ファン、などを使用することができ、さらに、エアのようなガスに関する所望流通を供給し得るような任意の新規な技術を使用することができる。
【0041】
電気コード110は、例えば壁面コンセントや壁取付型変圧器やバッテリパックや他の電力貯蔵媒体といったような任意の適切な電源から、電力を受領するすることができる。一実施形態においては、電気コード110は、センサケーブルとされる。これにより、マスク内に設置し得るセンサ(例えば、COセンサ、Oセンサ、湿度センサ、圧力センサ、流量センサ、および/または、温度センサ)から受領したデータを記録および/または調節することができる。一実施形態においては、センサによる観測は、赤外線技術やラジオ波技術を使用して行われる。例えばモータ速度を調節し得るよう、例えば2つのレベル間での処理を行い得るよう、あるいは、センサによって受領した情報に関連させて他のパラメータを調節し得るよう、制御ボックスを設けることができる。他の実施形態においては、漏れを検出することによって、モータ速度を調節し、これにより、供給圧力または供給流量を調節することができる。
【0042】
電気コード110は、電源端子に対して差し込み可能とされた電気的変圧器を内包している小さなコントローラチップ(図示せず)に対して接続することができる。このことは、融通性を増大させ、着用者の移動の自由度を増大させ、また、旅行時の万能性を増大させる。さらに、マスクインターフェイスのところにおける部材数が少なく、システムの全体的なサイズが小さく、潜在的な安定性が大きい。このシステムは、2つのレベルの間での処理を行うことができる。あるいは、一般的に呼吸応用において使用することができる。その場合、例えば、加圧エアの大きさが変化する。また、このシステムは、より速いレスポンスおよびより速い立ち上がり時間をもたらすことができ、典型的には2m以上という長さを有しているエア供給チューブに関連した遅延を除去することができるあるいは少なくとも低減することができる。システムは、着用者に対して多数の部材を取り付けるのではなく単一の部材を取り付けることのために、外科医や販売業者や臨床医の立場から、より容易に使用し得るものである。
【0043】
他の実施形態においては、ストラップ調節ポイントを変更することができる。すなわち、組込型の検出を利用して、顔に対してのマスクのフィット度合いを調節することができる。例えば、マスクに関して漏れが発生している場合には、例えば圧力トランスデューサ67(図4)といったようなセンサが、マスク内の漏洩を示す信号を生成し、エア流生成源の圧力を変更することができる。また、漏れが解決されるまである領域内のシールプロファイルを変更し得るようなものとして気嚢あるいはカフあるいはマスクシールの一部が変更されているような実施形態においては、センサは、制御ボックスに対してフィードバックをもたらし、このフィードバックと関連させてモータを駆動させることにより、漏洩に対処することができる。これに関しては、例えば、 ResMed 社による、2002年12月19日付けで出願された米国特許第10/332,578号明細書を参照されたい。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0044】
マスクシステムの流量の検出あるいは圧力の検出は、応答時間を良化させ、マスクシステム内に直接的に取り付けられた状態でモータ羽根車アセンブリを有していることは、圧力変化および流量変化に対する応答時間が非常に迅速であることを意味する。したがって、着用者に対して供給されるガスの同期性が改良される。現在のところ(すなわち、従来技術においては)、エア流生成源は、例えばエア流生成源に対して取り付けられた圧力センサを使用するといったような手法を使用して、患者が正に呼吸をしようとしているのかあるいは患者の呼吸にいくらかの遅れが生じているのかを実質的に予測する必要がある。これに対し、本発明のこの実施形態の1つの見地においては、マスクシステムは、非常に素速く反応することができる。これにより、患者に対してエア流を極めて良好に同期させて供給することができる。このことは、とりわけ、呼吸が不十分でありつつ呼吸をしている患者に対してエア流生成源からのエア流を極めて良好に同期させて供給することにより、患者を治療する場合には、キーポイントである。
【0045】
エア流生成源20は、例えばその第2部分80が、マスク60に対して、例えば、貫通穴70(2つの貫通穴だけが図示されている)を貫通させつつ穴136(ネジ130とは反対側の面が図示されている)内へと螺着された4本のネジ140(2つのネジだけが図2の中で示される)を使用することによって、取り付けられている。当然のことながら、フルフェイスマスク60上にエア流生成源20を取り付けるに際しては、他の様々な手法を使用することができる。例えば、接着剤を使用したり、溶融溶接を使用したり、射出成型によってシェル46と第2部分80とを一体成型したり、といったような様々な手法を使用することができる。さらに他の実施形態においては、マスクからのエア流生成源20の取外しを容易に行い得るものとされる。これにより、例えば、クリーニング等を容易に行うことができる。この目的のために、1つまたは複数の迅速脱着クリップを使用することができる。
【0046】
一実施形態においては、例えば図2に示すような実施形態といったような実施形態においては、導入ポート56とエア流生成源20との間に、穴開きスクリーン40(例えば、穴開きアルミニウム製スクリーンのような穴開き金属製スクリーン)が、配置される。このスクリーンは、導出ポート85(図3)(エア導出ポート85は、図3においては、スクリーン40の向こう側に位置するものとして、スクリーン40越しに図示されている)とエア流生成源20とを分離するものであって、エア流生成源から導入されかねない異物を、着用者の口や顔の領域へと到達させないようにする。穴開きスクリーン40は、また、穴径よりも大きなサイズであるような着用者の舌や他の部分が羽根車120に対して接触し得ないことを保証している。穴開きスクリーン40の例としては、例えば、メッシュや、多数の小さな穴が形成されている薄いプレート、がある。この構成は、また、例えば破損といったようなモータや羽根車のいかなる故障によっても着用者を傷つけないことを保証する。
【0047】
図3〜図7は、図1および図2に示すCPAPマスク10を様々に示している。他の実施形態が、図8に示されている。図8においては、フィルタ128が、エア取込開口125の前方に配置されている(図7におけるエア取込開口125を参照されたい)。フィルタ128は、例えば、羽根車システム内へとあるいは穴開きスクリーン内へとダストが侵入することを防止するためのフィルタ(すなわち、ダストフィルタ)とすることができる。穴開きスクリーンは、羽根車システム内へとダストが侵入することを防止し得ないけれども、穴開きスクリーンは、例えば、着用者の指を羽根車120に対して接触させ得ないという点においては、有効である。加えて、穴開きスクリーンは、羽根車システム内へと、より大きな粒子が侵入することを防止する。一実施形態においては、CPAPシステムおよび/またはエア流生成源は、ダストフィルタまたは抗菌性フィルタを備えている。さらなる実施形態においては、CPAPシステムおよび/またはエア流生成源は、ダストフィルタまたは抗菌性フィルタを備えていない。
【0048】
図9Aに示すように、図1のCPAPシステムは、ストラップ55によって、着用者1の顔上に取り付けられている。電力は、電気コード110を介して、バッテリパック150により、エア流生成源20に対して供給されている。バッテリパック150は、ストラップ160を介して、着用者の身体に対して取り付けられている。電源としてバッテリパックを使用することの利点は、例えば、着用者の移動可能性を増大させることである。図9Bに示すような他の実施形態においては、エア流生成源に対する電力は、壁コンセント163内へと差し込まれた変圧器電力パック150’によって供給することができる。
【0049】
図10Aは、羽根車システム20Aが、マスク60A上に直接的に取り付けられているのではなく、羽根車システム20Aが、ストラップ160を介して着用者の身体に対して取り付けられているという実施形態を、示している。エア流生成源20Aのエア導出口が、エア供給チューブ65に対して取り付けられている。そして、エア供給チューブ65が、ソケット64および連結チューブ62を介して、フルフェイスマスク60Aのエア導入ポートに対して取り付けられている。一実施形態においては、エア供給チューブ65は、例えば1.0mのチューブや0.5mのチューブといったように、1.5mよりも短いチューブとされている。エア供給チューブは、任意の直径のチューブとすることができる。あるいは、エア供給チューブは、小さなプロファイルのおよび/またはキンク耐性を有した複数のエアチューブから構成することができる。これに関しては、2003年8月12日付けで出願された ResMed 社による米国特許出願第60/494,119号明細書に記載されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。電力は、電力コード110Aを介して、バッテリパック150からエア流生成源20Aへと供給されている。電力パックあるいはエア流生成源は、また、1つのアセンブリとして一体化することができる。
【0050】
一実施形態においては、エア流生成源20Aおよびバッテリパック150は、クリップ162A,162B(図10Bを参照)を使用して、ストラップ160に対して取り付けられる。当然のことながら、この実施形態は、このような取付システムに限定されるものではなく、エア流生成源およびバッテリパックの一方または双方は、任意の適切な手段を介して、着用者の身体(衣類を含む)の任意の適切な部分に対して取り付けることができる。例えば、図11Aおよび図11Bに示すように、エア流生成源20Aは、また、例えば Velcro(登録商標)160A 等の手段を介して、着用者の腕に対して取り付けることができる。羽根車を含めたモータアセンブリも、また、例えばストラップを介して、胸や肩などといったような着用者の身体の他の部分に対して取り付けることができる。
【0051】
さらに他の変形例(図示せず)においては、モータアセンブリは、マスクのところまで延在するチューブを短いものとしつつ、ヘッドギアシステムに対して、取り付けたり設置したりあるいは組み合わせたりすることができる。ヘッドギアシステムは、振動ダンパーという態様で作用することができる。モータは、動作時には、不平衡さのために、不可避的に振動する。着用者に対してこの振動を伝達させないことにより、いらいら感やノイズを低減することができる。頭が振動に敏感であることにより、モータおよび/または羽根車に関し、何らかの態様でもって、振動隔離を行うことが好ましい。ダンパーシステム(減衰システム)を使用することができる。例えば、頭とエア流生成源との間において、粘弾性的なおよび/またはソフトな発泡体製『クッション』を使用すると、いくつかの利点を得ることができる。
【0052】
他の見地においては、モータに、放熱板を設けることができる。これにより、患者が呼吸を行っているエアを加熱することができる。これにより、呼吸の快適性を改良することことができる。追加的な見地においては、例えばフィードバックループを使用するといったような手法により、周囲条件に基づいて呼吸エアの温度を制御することができる。これら見地は、上記の様々な実施形態のうちの任意のものに対して、その一部として組み込むことができる。
【0053】
例示としての様々な実施形態を参照して本発明について説明したけれども、上記説明が本発明を制限するためのものではないことは、理解されるであろう。本発明の範囲および精神を逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。例えば、上記様々な実施形態は、CPAP応用に関連するものとして説明されているけれども、それら実施形態において規定された各種特徴点が、一般的な換気や通気や呼吸器の分野においても適用し得るものであることは、理解されるであろう。加えて、システムは、子供に対しても成人に対してもまたすべての年齢の人に対しても使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 着用者
10 CPAPシステム(呼吸器システム)
30 クッション
40 穴開きスクリーン
46 シェル
47 導入ポート
55 ストラップ
56 エア導入ポート
60 マスク
100 モータ
110 電気コード
120 羽根車
125 エア取込開口
150 バッテリパック
160 ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道陽圧システムであって、
着用者の顔上に配置されるとともに着用者の顔に対して気密的に連結されるマスクを具備してなり、
このマスクが、加圧された呼吸可能ガスを受領するための導入ポートを備え、
この導入ポートが、チューブに対して連結され、
このチューブが、前記加圧された呼吸可能ガスを供給するためのモータアセンブリに対して連結され、
このモータアセンブリが、ヘッドギアシステム上にあるいはヘッドギヤシステム内に設置されていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項2】
請求項1記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ヘッドギアシステムが、少なくとも1つのストラップを有していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の気道陽圧システムにおいて、
前記モータアセンブリが、エア流生成源を有していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項4】
請求項3記載の気道陽圧システムにおいて、
前記エア流生成源が、遠心ファン、または、軸流ファン、または、ラジアルファン、を有していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の気道陽圧システムにおいて、
さらに、振動およびノイズの伝達を低減し得るよう、前記エア流生成源と着用者の頭との間に配置されたダンパーシステムを具備していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項6】
請求項5記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ダンパーシステムが、クッションを備えていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項7】
請求項6記載の気道陽圧システムにおいて、
前記クッションが、粘弾性的な発泡体またはソフトな発泡体から形成されていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項8】
気道陽圧システムであって、
ヘッドギアシステムによって位置決め可能とされるとともに着用者の顔に対して係合し得るよう構成されたマスクを具備してなり、
このマスクが、チューブに対してエア流通可能とされつつこのチューブに対して連結され、
このチューブが、エア流生成源に対してエア流通可能とされ、
このエア流生成源が、着用者に対して呼吸可能ガスを供給し、
前記エア流生成源が、取付手段によって、着用者の身体の一部に対して取り付けられていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項9】
請求項8記載の気道陽圧システムにおいて、
前記取付手段が、ストラップを有していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項10】
請求項8または9記載の気道陽圧システムにおいて、
さらに、バッテリを具備し、
このバッテリが、前記エア流生成源に対して電力を供給することを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項11】
請求項10記載の気道陽圧システムにおいて、
前記バッテリが、前記取付手段を使用して着用者に対して取り付けられていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項12】
請求項9記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ヘッドギアシステムが、前記ストラップを有していることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項13】
請求項9記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ストラップが、着用者の腰に対して係合し得るよう構成されていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項14】
請求項9記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ストラップが、着用者の腕に対して係合し得るよう構成されていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項15】
請求項9記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ストラップが、着用者の肩に対して係合し得るよう構成されていることを特徴とする気道陽圧システム。
【請求項16】
請求項9記載の気道陽圧システムにおいて、
前記ストラップが、着用者の胸に対して係合し得るよう構成されていることを特徴とする気道陽圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【公開番号】特開2011−156410(P2011−156410A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115647(P2011−115647)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2006−527225(P2006−527225)の分割
【原出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD