説明

呼吸器合胞体ウイルスに対する抗体及び該ウイルス用のワクチンを製造する方法

【課題】 本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の新規Fペプチド及びそれらを含む組成物に関する。
【解決手段】 本発明はまた、Fペプチドへの抗RSV抗体の結合を評価する方法に関する。本発明はまた、本発明のFペプチドと免疫特異的に結合する抗体に関する。本発明はさらに、RSV感染症の予防、中和又は治療のための、Fペプチド及び/又はFペプチドに免疫特異的に結合する抗体の投与に関する方法及びプロトコールを提供する。さらに、本発明の方法はRSV感染症に関連する症状の治療、予防及び改善に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のFタンパク質エピトープ(配列番号1に例示される)及びその変異体、又はFペプチドを含む医薬組成物に関する。一実施形態では、RSV Fタンパク質エピトープ(又はその変異体)又はFペプチドは、モノクローナル抗体SYNAGIS(登録商標)及び/又はNUMAXTMに免疫特異的に結合する。別の実施形態では、本発明のRSV Fペプチド又はFタンパク質エピトープは、哺乳類宿主細胞の表面上の天然のRSVレセプターに結合する。本発明はさらに、前記組成物を利用する、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に関連する症状を予防する、治療する又は改善するための方法を含む。特に、本発明はRSV感染症に関連する症状を予防する、治療する又は改善するための方法であって、RSV感染症を効果的に予防する1以上のRSV Fペプチド又はFタンパク質エピトープ(又はその変異体若しくは断片)の有効量をヒト被験者に投与することを含む、上記方法に関する。本発明はさらに、Fタンパク質エピトープ変異体(すなわちFペプチド)に結合する抗RSV抗体を評価する方法に関する。本発明はまた、本発明のRSV Fペプチド又はFタンパク質エピトープに免疫特異的に結合する抗体又はそのフラグメント、並びにかかる抗体をスクリーニングするための、検出するための及び該抗体を利用するための方法であって、該抗体がSynagis(登録商標)(パリビズマブ)又はNumaxTM(モタビズマブ)又はマウスmAb47F及び7C2(Arbiza J.ら, J Gen. Virol., 73:2225-2234 (1992)参照)ではない、上記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、幼児及び児童における深刻な下気道疾患の主因である(Feigenら編集, 1987: Textbook of Pediatric Infectious Diseases, WB Saunders, Philadelphia 1653-1675頁; New Vaccine Development, Establishing Priorities, Vol. 1, 1985, National Academy Press, Washington D.C. 397-409頁; 及びRuuskanenら, 1993, Curr. Probl. Pediatr. 23:50-79)。RSV感染症の年次流行性は世界的に明らかであるが、所定の季節におけるRSV疾患の発生率及び重篤度は地域によって変化する(Hall, C. B., 1993, Contemp. Pediatr. 10:92-110)。北半球の温暖な地域では、RSV感染症は通常は晩秋に始まり、晩春に終わる。主なRSV感染症は、院内流行の間、ほとんどの場合は6週から2歳の児童で生じ、出生後4週目までの児童では通常は生じない(Hallら, 1979, New Engl. J. Med. 300:393-396)。RSV感染症のリスクが増加した児童には、早産児(Hallら, 1979, New Engl. J. Med. 300:393-396)、並びに気管支肺異形成症(Groothuisら, 1988, Pediatrics 82:199-203)、先天性心疾患(MacDonaldら, New Engl. J. Med. 307:397-400)、先天性又は後天性免疫不全症(Ograら, 1988, Pediatr. Infect. Dis. J. 7:246-249; 及びPohlら, 1992, J. Infect. Dis. 165:166-169)、及び脳嚢性繊維症(Abmanら, 1988, J. Pediatr. 113:826-830)に罹患した児童が挙げられる。RSV感染症で入院している心疾患又は肺疾患に罹患した幼児の死亡率は3%〜4%である(Navasら, 1992, J. Pediatr. 121:348-354)。
【0003】
RSVは幼児及び児童だけでなく成人にも感染する。健康な成人では、RSVは主に上気道疾患の原因となる。近年、一部の成人、特に年配の成人が、既に報告されているよりも高い頻度で症候性RSV感染症を有することが明らかになっている(Evans, A. S.,編集, 1989, Viral Infections of Humans. Epidemiology and Control, 第3版, Plenum Medical Book, New York 525-544頁)。幾つかの流行病も、看病中の自宅患者及び施設に収容された若い成人の間で報告されている(Falsey, A. R., 1991, Infect. Control Hosp. Epidemiol. 12:602-608;及びGarvieら, 1980, Br. Med. J. 281:1253-1254)。最終的に、RSVは免疫抑制された人、特に骨髄移植患者で深刻な疾患を引き起こし得る(Hertzら, 1989, Medicine 68:269-281)。
【0004】
確立されたRSV疾患の治療法の選択肢は制限されている。いくつかの下気道のRSV疾患は、しばしばかなりの支持療法(加湿酸素の投与及び呼吸補助を含む)が必要である(Fieldsら編集, 1990, Fields Virology, 第2版, Vol. 1, Raven Press, New York 1045-1072頁)。感染症の治療に承認されている唯一の薬剤が抗ウイルス薬リバビリン(ribavirin)である(American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases, 1993, Pediatrics 92:501-504)。これは、免疫応答性の児童における重篤なRSV疾患の経過を改善する、RSV肺炎及び細気管支炎の治療に効果的であることが示されてきた(Smithら, 1991, New Engl. J. Med. 325:24-29)。しかし、リバビリンは、長期のエアロゾル投与が必要であり、かつ病院内での投与の間にこの薬剤に曝露されるかもしれないという、妊娠した女性に対する潜在的リスクに関する懸念により、使用が制限されている。
【0005】
ワクチンはRSV感染症を予防し得るが、市販のワクチンは依然としてこの効能について認可されていない。ワクチン開発に対する主な障害は安全性である。ホルマリン不活性化ワクチンは免疫原性であるが、意外にも、免疫処置した幼児において、RSVに起因して、同様に調製したパラインフルエンザ三価ワクチンで免疫処置した幼児よりも高くかつ重篤な下気道疾患の発生率を生じた(Kimら, 1969, Am. J. Epidemiol. 89:422-434;及びKapikianら, 1969, Am. J. Epidemiol. 89:405-421)。数種の候補RSVワクチンが断念されており、その他は開発中であるが(Murphyら, 1994, Virus Res. 32:13-36)、たとえ安全性の問題が解決されても、ワクチンの有効性も改善される必要がある。多くの問題が未解決のままである。免疫処置は、下気道疾患の最高発生率が2〜5月齢で生じるため、早期新生児期に必要であろう。新生児の免疫応答の未熟性は、母方から獲得した高力価のRSV抗体と共に、新生児期におけるワクチンの免疫原性を低減することが予想され得る(Murphyら, 1988, J. Virol. 62:3907-3910; 及びMurphyら, 1991, Vaccine 9:185-189)。結果として、一次RSV感染症及び疾患は、その後のRSV疾患を十分に予防しない(Hendersonら, 1979, New Engl. J. Med. 300:530-534)。
【0006】
現在、RSV疾患の予防法に対して承認されている唯一の手法は受動免疫処置である。IgGの防御的役割を示唆する最初の証拠は、フェレット(Prince, G. A., Ph.D. diss., University of California, Los Angeles, 1975)及びヒト(Lambrechtら, 1976, J. Infect. Dis. 134:211-217;及びGlezenら, 1981, J. Pediatr. 98:708-715)における母方由来の抗体に関する観察から取得した。Hemmingら(Morellら編集, 1986, Clinical Use of Intravenous Immunoglobulins, Academic Press, London 285-294頁)は、新生児敗血症の疑いがある新生児における静脈内免疫グロブリン(IVIG)の薬物動態学に関する研究中に、RSV感染症の治療又は予防におけるRSV抗体の可能な有用性を認めた。彼らは、呼吸分泌物がRSVを産出する1個体の幼児が、IVIG注入後に回復したことに注目した。その後のIVIGロットの分析は、非常に高い力価のRSV中和抗体を明らかにした。その後、同一グループの研究者らは、RSV中和抗体で富化された過免疫血清又は免疫グロブリンの、RSV感染症に対してコトンラット及び霊長類を予防する能力を調査した(Princeら, 1985, Virus Res. 3:193-206; Princeら, 1990, J. Virol. 64:3091-3092; Hemmingら, 1985, J. Infect. Dis. 152:1083-1087; Princeら, 1983, Infect. Immun. 42:81-87;及びPrinceら, 1985, J. Virol. 55:517-520)。これらの研究の結果は、予防的に生じたRSV中和抗体がコトンラットの気道におけるRSVの複製を阻害することを示唆した。治療上投与されるとき、RSV抗体はコトンラット及び非ヒト霊長類モデルの双方において肺におけるウイルス複製を低減した。さらに、免疫血清又は免疫グロブリンの受動注入は、後にRSVでチャレンジしたコトンラットにおいて増強した肺病理学を生じなかった。
【0007】
RSVの表面上の2種の糖タンパク質F及びGが、中和抗体の標的であることが示されている(Fieldsら, 1990, 前掲; 及びMurphyら, 1994, 前掲)。これらの2種のタンパク質は、主にウイルス認識及び標的細胞への侵入にも関与する。Gタンパク質は特定の細胞レセプターに結合し、Fタンパク質はウイルスと細胞との融合を促進する。Fタンパク質はまた、感染した細胞の表面で発現され、これに続く合胞体の形成に導く他の細胞との融合に関与する。したがって、Fタンパク質に対する抗体は、直接的にウイルスを中和し、ウイルスの細胞への侵入をブロックし、又は合胞体の形成を防止し得る。A及びBサブタイプ間の抗原的及び構造的差異がG及びFタンパク質の両者について記載されているが、より顕著な抗原的差異がG糖タンパク質上に存在する(アミノ酸配列はわずかに53%相同であり、抗原相関性は5%である)(Walshら, 1987, J. Infect. Dis. 155:1198-1204; 及びJohnsonら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5625-5629)。逆に、Fタンパク質に対して生じた抗体は、サブタイプA及びBウイルス間で高度の交差反応性を示す。Beeler及びCoelingh (1989, J. Virol. 7:2941-2950)は、RSV Fタンパク質に対する18種の異なるマウスMAbに関する広範な分析を実施した。これらのMAbの生物学的及び生化学的特性の比較により、3種の別個の抗原性部位(A、B及びCで表される)を同定した。中和調査は、抗原性部位A及びC内のエピトープが高度に保存されているが、抗原性部位Bのエピトープが可変的であることが立証された、1956年〜1985年の間に単離されたRSV株のパネルに対して実施した。
【0008】
このように、RSVに対する防御的応答は、主要なウイルス表面の糖タンパク質に対する中和抗体を産生するが、非防御的又は病的な免疫応答を最小化することを条件とする。本発明は、既知の強力な中和抗体と特異的に相互作用することが示されているFタンパク質構造(配列番号29)内のペプチドエピトープを含むワクチンを提供することによってかかる問題を回避する。このエピトープはRSV感染症に対するワクチンとして、及び/又は哺乳類を免疫処理してRSV感染症の予防若しくは治療に使用するための抗体を作製するために、及び/又はRSVのそのレセプターへの結合を防止するための受動的療法として使用することができる。
【0009】
配列番号1のFタンパク質エピトープに免疫特異的に結合するヒト化抗体であるSYNAGIS(登録商標)は、RSVによって引き起こされる重篤な下気道疾患の予防のために、RSVの時期(北半球では11月から4月)を通じて、推奨される体重1kg当たり15mgの月用量で小児患者に筋肉内注射することについて承認されている。SYNAGIS(登録商標)は、ヒト(95%)及びマウス(5%)抗体配列の複合体である。その全体の内容を参照により本明細書に組み入れる、Johnsonら, 1997, J. Infect. Diseases 176:1215-1224及び米国特許第5,824,307号を参照されたい。ヒト重鎖配列はヒトIgGの定常ドメイン及びCor(Pressら, 1970, Biochem. J. 117:641-660)及びCess(Takashiら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:194-198)由来の可変フレームワーク領域から誘導された。ヒト軽鎖配列はCκの定常領域及びJκ−4を有するVL遺伝子K104の可変フレームワーク領域から誘導した(Bentleyら, 1980, Nature 288:5194-5198)。マウス配列はマウスモノクローナル抗体であるMab1129(Beelerら, 1989, J. Virology 63:2941-2950)から、マウス相補性決定領域のヒト抗体フレームワークへのグラフティングを含むプロセスにおいて誘導した。
【0010】
SYNAGIS(登録商標)は、小児患者におけるRSV感染症の予防に首尾よく使用されてきたが、予防的効果を達成するために15mg/kgのSYNAGIS(登録商標)の筋肉内複数投与が必要である。抗体の筋肉内複数投与の必要性により、診療所に何度も訪れることが必要となり、これは患者にとって不便であるだけでなく、投与を逸する結果ももたらし得る。したがって、RSV抗原と免疫特異的に結合し、非常に強力であり、改善された薬物動態プロファイルを有し、それによって全体的に改善された治療プロファイルを有する抗体のニーズが存在する。米国特許公開第2003/0091584号では、より強力な抗RSV分子であるNUMAXTMが開示されている。NUMAXTMは、上述したより高度な投薬要求を回避し得る改善された結合特性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的に、抗体の製造は非常に高価であり、かつ精製かつ濃縮し得る抗体の量は、その分子の性質によって制限される。したがって、SYNAGIS(登録商標)と同一の効果を有する一方で、より低コストで製造しかつより簡便に濃縮される分子を作製するニーズが存在する。さらに、RSV感染症を予防するために、免疫処理(能動又は受動のいずれか)を介してRSV感染症を積極的に予防するニーズが存在する。
【0012】
本明細書の参考文献の引用又は議論は、それらが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、一部には、抗体SYNAGIS(登録商標)が特異的に結合するRSV Fタンパク質エピトープ(或いは、Fタンパク質エピトープ)を発見したことを基礎とする。Fタンパク質エピトープは、24個のアミノ酸の配列:NSELLSLINDMPITNDQKKLMSNN(配列番号1)を含み、これはSYNAGIS(登録商標)のRSVのFタンパク質への結合を競合的に阻害する。本発明の一実施形態は、Fタンパク質エピトープ及び/又はその断片、誘導体又は変異体(「Fペプチド」と称する)を、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対する中和抗体(又は本発明のFタンパク質エピトープ若しくはFペプチドと特異的に結合する他の分子)を(in−vivo、ex−vivo又はin−vitroで)作製するために利用する方法である。本発明の別の実施形態では、RSVウイルスのその天然のレセプターへの結合を阻害するための及び/又は感染症を予防するためのワクチンとして提供されるべき、本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドを含む医薬組成物を、ヒトに投与する方法である。本発明のさらに別の実施形態は、本発明の抗体又は本発明のFペプチドのいずれかの医薬組成物の有効量を鼻腔内投与することを含む、治療が必要な患者/被験者におけるRSVによって引き起こされる上気道感染症を治療する方法に関する。
【0014】
本発明の別の実施形態は、これに限定されるものではないが、抗体、アプタマー、小分子(一般的には10kD未満のサイズとみなす)、本発明の1以上のFタンパク質エピトープ又はFペプチドと特異的に結合するペプチド(本明細書では総称して「抗Fペプチド結合体」、「抗F結合体」又は「抗Fペプチド抗体」)(前述の断片及び誘導体を含む)を含む分子をスクリーニングする方法である。かかるスクリーニング方法は具体的に、RSVを中和しかつ/又は合胞体形成を防止する分子を同定するために使用されることが意図される。さらに別の実施形態では、Fペプチドは結合体、例えばFペプチドに特異的に結合する抗体、の作製に有用である。Fタンパク質エピトープ又はFペプチドに特異的に結合する抗体、そのフラグメント及び誘導体は、本明細書でそれぞれ「抗Fタンパク質抗体又は抗Fペプチド抗体」と称する。
【0015】
本発明は、これに限定されるものではないが、組換え、完全ヒト、キメラ、マウス、CDRグラフト、及びヒト化抗Fタンパク質抗体又は抗Fペプチド抗体並びにそのフラグメント及び誘導体を包含し、これらは下記でより十分に説明される。
【0016】
本発明のFペプチドは、配列番号1のFタンパク質エピトープと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%同一である。
【0017】
Fタンパク質エピトープ及びFペプチドは、Fタンパク質のA抗原領域に由来し得る(図1参照)。本明細書で使用される「由来する(derived)」という用語は、本明細書に開示されるタンパク質の配列及び該タンパク質の配列と同一な断片配列と類似するが同一ではない配列を含む。また、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドの誘導体も含み、これには、限定されるものではないが、メチル化、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、及び非天然アミノ酸を含むものが包含される。
【0018】
本発明の別の目的は、異種ポリペプチドセグメント(例えば融合及び/又はキメラ分子の一部として)、或いはその断片又は一部分として、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドを提供することである。
【0019】
一実施形態では、本発明のFタンパク質エピトープ及びFペプチドは、そのアミノ酸配列がJohnsonら, J. Infect. Dis. 176:1215-1224 (1997)に開示されているヒト化抗体(本明細書でSYNAGIS(登録商標)(パリビズマブ(palivizumab))と称する改変ヒト化組換え抗体を含む)によって認識される。
【0020】
別の実施形態では、本発明のFタンパク質エピトープ及びFペプチドは、そのアミノ酸配列が米国特許第6,818,216号に開示されているヒト化抗体(本明細書でNUMAXTM(モタビズマブ(motavizumab))又はMEDI−524と称する改変ヒト化組換えIgG1抗体を含む)によって認識される。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明のFタンパク質エピトープ及びFペプチドは、SYNAGIS(登録商標)、NUMAXTM又はマウスmAb47F及び7C2(Arbiza J.ら, J Gen. Virol., 73:2225-2234 (1992)参照)ではない、抗RSV抗体又はそのフラグメントによって認識される。
【0022】
本発明のFタンパク質エピトープ及びFペプチドはSYNAGIS(登録商標)及び/又はNUMAXTM又はマウスmAb47F及び7C2に結合し得ると理解されるべきであるが、さらにFタンパク質エピトープ及びFペプチドはSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTM又はマウスmAb47F及び7C2以外の抗体又はそのフラグメントとも結合し得ると理解されるべきである(それぞれ参照により本明細書に組み入れるU.S. 5,762,905; U.S. 5,811,534; U.S特許公開第2003/0091584号; Beelerら1989, J Virol 63: 2941);及びPalomoら, 1990, J Virol 64: 4199中の例を参照)。当業者はさらに、Fタンパク質エピトープ及びFペプチドが、キメラ、ヒト化、完全ヒト、CDRグラフト、及びFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドと免疫特異的に結合するSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTM以外の抗体の他の誘導体と結合し得ることを理解するだろう。
【0023】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチド結合体を含む医薬組成物であて、該結合体が薬理学的に許容し得る担体中に懸濁されている、上記医薬組成物を提供することである。許容し得る製薬担体として、これに限定されるものではないが、非毒性の緩衝剤、増量剤、等張液等が挙げられる。さらに、前記ペプチドを含むワクチン又はワクチン組成物が本発明の一実施形態として意図される。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、RSV感染症を予防又は治療する方法であって、かかる予防又は治療を必要とする患者に、上記の免疫原組成物を含むワクチン組成物の治療上又は予防上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの本発明のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドを含有する免疫原組成物であって、該ペプチドが薬理学的に許容し得る担体中で懸濁されている、前記免疫原組成物を提供することである。許容し得る製薬担体として、これに限定されるものではないが、非毒性の緩衝剤、増量剤、等張液等が挙げられる。さらに、前記ペプチドを含むワクチン又はワクチン組成物が本発明の一実施形態として意図される。
【0026】
本発明は、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する及び改善する方法であって、該被験者に本発明のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチド或いはその断片の1以上を投与することを含む、前記方法を提供する。かかる投与はさらに鼻腔内又は吸入(肺)のいずれかを意図する。
【0027】
本発明はさらに、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する及び改善する方法であって、本発明のFタンパク質エピトープ又はFペプチド或いはその断片を用いることによって取得される抗RSV抗体又はそのフラグメントの1以上を前記被験者に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明はまた、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する及び改善する方法であって、該被験者に、本発明のFタンパク質エピトープ又はFペプチド或いはその断片を用いることによって取得される抗RSV抗体又はそのフラグメントを投与することを含み、ここで、抗RSV抗体又はそのフラグメントがSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTM或いはマウスmAb47F及び7C2(Arbiza J.ら, J Gen. Virol., 73:2225-2234 (1992)参照)ではない、前記方法を提供することも意図する。かかる投与はさらに鼻腔内又は吸入(肺)のいずれかを意図する。
【0028】
本発明はFタンパク質エピトープ又はFペプチド及びその断片の1以上を投与するための徐放性製剤を包含する。徐放性製剤は前記ペプチドの被験者への投与の用量及び/又は頻度を低減する。さらに、徐放性製剤は、投与により、特定の期間の間、特定の最大血清力価を超えない、治療上又は予防上有効な血清力価を維持し得る。
【0029】
本発明は、1以上の抗Fペプチド又はFタンパク質エピトープ結合体(例えば抗体又はそのフラグメント)を投与するための徐放性製剤であって、抗RSV抗体又はそのフラグメントがSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTM或いはマウスmAb47F及び7C2(Arbiza J.ら, J Gen. Virol., 73:2225-2234 (1992)参照)ではない、前記徐放性製剤を包含する。本発明の徐放性製剤は、被験者への前記結合体投与の用量及び/又は頻度を低減する。さらに、徐放性製剤を投与して、特定の期間の間、特定の最大血清力価を超えない、治療上又は予防上有効な血清レベル(例えば力価)を維持し得る。
【0030】
本発明は、本発明のFタンパク質エピトープ又はFペプチド及び/或いは抗Fタンパク質エピトープ又はFペプチド結合体(例えば抗体)をRSV感染の部位に直接投与する方法を包含する。特に本発明は、本発明の少なくとも1つのFタンパク質エピトープ又はFペプチド及び/或いは1以上の抗Fタンパク質エピトープ又はFペプチド結合体(例えば抗体)の肺又は鼻腔内送達を包含する。一例として、肺投与は、例えば吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤を含む製剤を用いることによって使用することができる(例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第6,019,968号、5,985,320号、5,985,309号、5,934,272号、5,874,064号、5,855,913号、5,290,540号及び4,880,078号;並びにPCT公開第WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903を参照)。一実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメント、或いは本発明の組成物はAlkermes AIR.TM.肺薬剤送達技術(Alkermes, Inc., Cambridge, Mass.)を用いて投与する。或いは、抗体又はそのフラグメント、或いは医薬組成物を投与する方法として、これに限定されるものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば鼻腔内及び経口経路)が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメント、或いは医薬組成物は、筋肉内に、静脈内に又は皮下に投与される。この組成物は従来の経路のいずれかによって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜)を通した吸収によって投与してもよいし、他の生物学的活性剤と共に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であり得る。
【0031】
本発明はさらに、配列番号1のFタンパク質エピトープ及び/又はその80%同一のFペプチド変異体に免疫特異的に結合し、かつ本明細書に記載される又は当業者に公知のアッセイ(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価する際に少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1又は少なくとも10−1−1の会合速度定数又はkon速度(抗体(Ab)+抗原(Ag)Ab−Ag)を有する抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0032】
本発明は、配列番号1のFタンパク質エピトープ及び/又はその80%同一のFペプチド変異体に特異的に結合し、かつ本明細書に記載される又は当業者に公知のアッセイ(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価する際に、10−1−1未満、5x10−1−1未満、10−2−1未満、5x10−2−1未満、10−3−1未満、5x10−3−1未満、10−4−1未満、5x10−4−1未満、10−5−1未満、5x10−5−1未満、10−6−1未満、5x10−6−1未満、10−7−1未満、5x10−7−1未満、10−8−1未満、5x10−8−1未満、10−9−1未満、5x10−9−1未満、又は10−10−1未満のKoff速度(抗体(Ab)+抗原(Ag)Ab−Ag)を有する抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0033】
本発明はさらに、配列番号1のFタンパク質エピトープ及び/又はその80%同一のFペプチド変異体に特異的に結合し、かつ本明細書に記載される又は当業者に公知のアッセイ(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価する際に、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5x1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5x1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも5x1012−1、少なくとも1013−1、少なくとも5x1013−1、少なくとも1014−1、少なくとも5x1014−1、少なくとも1015−1、又は少なくとも5x1015-の親和性定数又はK(Kon/Koff)を有する抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0034】
一実施形態では、本発明は、被験者のRSV感染症を予防する、治療する又は管理する方法であって、少なくとも1つの抗Fタンパク質エピトープ又はFペプチド結合体(例えば抗体又はそのフラグメント)の製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。
【0035】
別の実施形態では、本発明は被験者のRSV感染症を予防する、治療する又は管理する方法であって、本発明の少なくとも1つのFタンパク質エピトープ又はFペプチドの製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。一実施形態では、FペプチドはFタンパク質を模倣し、かつ宿主細胞上の天然のレセプターに結合することによってRSV感染症を予防する。
【0036】
一実施形態では、本発明のFペプチドは、被験者において感染症を引き起こすRSVウイルスのFタンパク質エピトープと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%同一である。別の実施形態では、本発明のFペプチドの誘導体は、ウイルス融合を防止するために使用することができる。かかる誘導体として、これに限定されるものではないが修飾(例えば、メチル化、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化)されている、非天然のアミノ酸で置換されている、アミノ酸鎖が除去されるように末端切断されている、或いは単一のアミノ酸又はアミノ酸鎖が付加されるように伸長されているFペプチドが挙げられる。さらに別の実施形態では、FペプチドはRSV感染症を治療する、管理する又は予防するために使用される。別の実施形態では、Fペプチドの組合せがRSV感染症を治療する、管理する又は予防するために投与される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、RSV融合(F)糖タンパク質(配列番号29)の一次アミノ酸配列を示す。下線はF糖タンパク質内のA部位近辺である。
【図2】図2は、アミノ酸257位〜283位に由来するRSV Fタンパク質抗原のA部位配列の一部分におけるSYNAGIS(登録商標)及びNUMAXTM MARMを示す。Fタンパク質抗原のA部位中の258位、262位、268位、272位、275位及び276位におけるアミノ酸変化が示される。マイクロ中和アッセイで評価した際の、各単一アミノ酸の変化を含むFペプチドを中和するSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTMの能力は、中和能力の維持については「+」、能力の損失については「−」で示される。
【図3】図3は、NUMAXTMへのFペプチド及び野生型Fタンパク質配列の結合を比較する、結合ELISAの結果を示す。
【図4】図4は、RSV Fタンパク質に対する様々なFペプチドの結合速度論を評価するためのBIAコアの結果を示す。
【図5】図5は、ITC技術を用いたMEDI−524の、Fタンパク質エピトープ(配列番号1)への結合力価を示すグラフである。
【0038】
定義
本明細書で使用される「類似体」という用語は、Fタンパク質である配列番号29又はその断片と類似又は同一の機能を保有するが、Fタンパク質と類似又は同一のアミノ酸配列を必ずしも含まないポリペプチドを指す。類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、以下の少なくとも1つを満たすポリペプチドを指す:(a)配列番号29のアミノ酸配列と、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又はその断片;(b)配列番号29のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、又は少なくとも5アミノ酸残基、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、又は少なくとも25アミノ酸残基のその断片;及び(c)配列番号29のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、又はその断片。
【0039】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトにおいて抗原性又は免疫原性活性を有するRSV F糖タンパク質の領域を指す。免疫原性活性を有するエピトープは、動物において抗体応答を誘発するRSVポリペプチドの断片である。抗原性活性を有するエピトープは、当業者に周知の方法のいずれか、例えば本明細書に記載されるイムノアッセイによって測定される際に、抗体が免疫特異的に結合するRSVポリペプチドの断片である。抗原性エピトープは必ずしも免疫原性である必要はない。
【0040】
本明細書に記載される本発明のFタンパク質エピトープ又はその断片と「類似の構造」を有するポリペプチドは、本明細書に記載される本発明のFタンパク質エピトープ又はその断片のものと類似した二次、三次又は四次構造を有するポリペプチドを指す。ポリペプチドの構造は、当業者に公知の方法によって決定することができ、限定されるものではないが、X線結晶学、核磁気共鳴及び結晶電子顕微鏡が挙げられる。あるいは、ポリペプチドの構造は、当業者に公知の方法によって予測することができ、限定されるものではないが、例えばエネルギー最小化分子力学計算を用いることによる、又は結合部位の理論モデルを構築することによるコンピューターモデリングが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、アミノ酸残基の置換、欠失若しくは付加の導入によって改変されている、本発明のFタンパク質エピトープ又はその断片、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメント、を含むペプチドを指す。本明細書で使用される「誘導体」という用語はさらに、例えば任意のタイプの分子のポリペプチドへの共有結合によって、改変されている本発明のFタンパク質エピトープ若しくはFペプチド又はその断片、抗Fタンパク質エピトープ抗体若しくはFペプチド抗体又はそのフラグメントを指す。例えば、限定する目的ではないが、本発明のFペプチド又はその断片、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントは、例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合等による誘導体化などによって、改変し得る。本発明のFペプチド又はその断片、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントの誘導体は、当業者に公知の技術を用いた化学的改変によって改変してもよく、これに限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等が挙げられる。さらに、Fペプチド又はその断片、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントの誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。ポリペプチド誘導体は、本明細書に記載されるFペプチド又はその断片、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントと類似又は同一の機能を保有する。
【0042】
本明細書で使用される「有効な中和力価」とは、動物(ヒト又はコトンラット)の血清中に存在する、臨床上有効な(ヒト中)又はウイルスを例えばコトンラット中で少なくとも99%低減することが示されている量に対応する抗体の量を指す。99%の低減は、RSVの特定のチャレンジ(例えば10pfu、10pfu、10pfu、10pfu、10pfu、10pfu又は10pfu)によって規定される。
【0043】
「単離された」又は「精製された」ポリペプチド(例えばFペプチド又はその断片、或いは抗Fタンパク質エピトープ抗体若しくは抗Fペプチド抗体又はそのフラグメント)は、該タンパク質が由来する細胞又は組織源由来の細胞物質又は他の汚染タンパク質を実質的に含まないか、或いは化学合成するときには化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という用語は、ポリペプチドが、これが単離される又は組換え的に製造される細胞の細胞成分から分離されているポリペプチドの調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まないポリペプチドは、異種タンパク質(本明細書で「汚染タンパク質」とも称する)を約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満又は約1%未満(乾燥重量で)で含むポリペプチドの調製物を含む。ポリペプチドが組換え的に作製されるとき、培養培地を実質的に含まない、例えば培養培地がタンパク質調製物の量の約20%未満、約10%未満、約5%未満又は約1%未満を表すことが好ましい。ポリペプチドが化学合成によって製造される場合、化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まない、例えばタンパク質の合成に関与する化学前駆物質又は他の化学物質から分離されていることが好ましい。したがって、かかるポリペプチドの調製物は、目的のポリペプチド以外の化学前駆物質又は化合物を約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満又は約1%未満(乾燥重量で)で有する。好適な実施形態では、Fペプチド又はその断片、或いは抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントは単離又は精製される。
【0044】
「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、「単離された」核酸分子(cDNA分子など)は、組換え技術により製造されるとき、他の細胞物質又は培養培地を実質的に含まないものであるか、或いは化学合成されるとき、化学前駆物質又は他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。好適な実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメントをコードする核酸分子は単離又は精製される。
【0045】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、抗Fペプチド結合体(例えば抗体)又はそのフラグメント由来のアミノ酸配列と異種ポリペプチド(例えば非抗RSV抗原抗体)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドを指す。さらに、「融合タンパク質」とは、少なくとも1つのFタンパク質エピトープ及び/若しくはFペプチド又はその断片、並びに他のポリペプチド(例えばIgG Fcドメインペプチド又は血清アルブミン)を含む異種ペプチドを指す。
【0046】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされる特定の対象細胞及びかかる細胞の子孫又は可能な子孫を指す。かかる細胞の子孫は、世代の継承又は核酸分子の宿主細胞ゲノムへの組込みを生じ得る突然変異又は環境影響に起因して、核酸分子でトランスフェクトされる親細胞と同一でないかもしれない。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、「予防上有効な血清力価」は、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、該哺乳動物におけるRSV感染症の発生率を低減する血清力価である。好ましくは、予防上有効な血清力価は、RSV感染症から生じる合併症の可能性が最も高いヒト(例えば嚢胞性繊維症、気管支肺異形成症、先天性心疾患、先天性免疫不全、或いは後天性免疫不全に罹患したヒト、骨髄移植したヒト、ヒト幼児、又は初老のヒト)のRSV感染症の発生率を低減する。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、「治療上有効な血清力価」は、哺乳類、好ましくはヒトにおいて、該哺乳類におけるRSV感染症に関連する重篤度、持続期間及び/又は症状を低減する血清力価である。好ましくは、治療上有効な力価は、RSV感染症から生じる合併症の可能性が最も高いヒト(例えば嚢胞性繊維症、気管支肺異形成症、先天性心疾患、先天性免疫不全又は後天性免疫不全に罹患したヒト、骨髄移植したヒト、ヒト幼児、又は成人のヒト)のRSV感染症に関連する重篤度、持続時間及び/又は症状の数を低減する。本発明の他の特定の実施形態では、「治療上有効な血清力価」は、コトンラットにおいて、10pfuのRSVでチャレンジした5日後に、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチド並びに/或いは抗Fタンパク質エピトープ抗体若しくは抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントが投与されていないコトンラットにおける10pfuのRSVでチャレンジした5日後のRSV力価よりも、少なくとも99%低いRSV力価を生じる血清力価である。
【0049】
「Fタンパク質エピトープ」という用語は、免疫応答を誘発できる天然のRSV Fタンパク質(配列番号29)に沿う任意のアミノ酸ストレッチである。さらに、この用語は、抗RSV抗体が免疫特異的に結合できる天然のRSV Fタンパク質に沿うアミノ酸の任意の連続的ストレッチであって、かかる抗体がSYNAGIS(登録商標)若しくはNUMAXTM又は既に記載されている他の任意の抗体ではない、上記ストレッチも包含する。この用語はさらに、免疫応答を誘発できかつ/又は抗RSV抗体が免疫特異的に結合できる天然のRSV Fタンパク質(配列番号29)の抗原A部位内の24個連続の任意のアミノ酸ストレッチであって、本明細書中、かかる抗体はSYNAGIS(登録商標)若しくはNUMAXTM又は既に記載される他の任意の抗体ではない、上記ストレッチも包含する。かかるFタンパク質エピトープの非限定的な例として、Fタンパク質エピトープは、これに限定されるものではないが、配列番号1に規定される24アミノ酸配列によって例示し得る。
【0050】
「本発明のFペプチド」という用語は、本発明の抗RSV抗体が免疫特異的に結合し、かつこれらの抗体はSYNAGIS(登録商標)又はNUMAXTMではない、RSV−Fペプチド及びその変異体、誘導体若しくは断片を指す。本発明のFペプチドは、配列番号29の類似体、誘導体及び変異体並びにその断片を指す。かかるFペプチドは、配列番号1に規定される24アミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性(下記で論じられるように算出される)を有するペプチドをさらに包含する。かかるFペプチドはさらに、以下の構造:
NSELαSLIβDMPITγDQKδLMεNN
[ここでαはロイシン又はセリンのいずれであってもよく;βはアスパラギン、ヒスチジン、アラニン、セリン、アルギニン、アスパラギン酸、リシン、チロシン又はグルタミンであってもよく;γはアスパラギン又はイソロイシンであってもよく;δはグルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、トレオニン、メチオニン、リシン又はチロシンであってもよく、εはセリン、グルタミン酸又はフェニルアラニンであってもよい]を有するペプチドを包含し得る。これに限定されるものではないが、表1に列挙されるもの、及び配列番号1と少なくとも80%同一である他の変異体によって例示し得るFペプチドは、本発明の範囲内であることが意図される。
【表1】

【0051】
「本発明のFペプチド」という用語が、抗体SYNAGIS(登録商標)及び/又はNUMAXTMと免疫特異的に結合するRSV−Fペプチド及びその変異体、誘導体又は断片を指すことも意図される。
【0052】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、多特異的抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、一本鎖Fvs(ScFv)、ジスルフィド架橋型抗体(SdFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、抗イディオタイプ(Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)及び当業者に公知の他の組換え抗体並びに上記抗体のいずれかのエピトープ結合フラグメントを指す。特に、抗体として、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント、すなわち抗原結合部位を含む分子が挙げられ、これらのフラグメントは別の免疫グロブリンドメイン(これに限定されるものではないが、Fc領域又はそのフラグメントを含む)と融合されても融合されなくてもよい。当業者は、他の融合産物(これに限定されるものではないがscFv−Fc融合、可変領域(例えばVL及びVH)−Fc融合及びscFv−scFv−Fc融合を含む)を作製し得ることをさらに理解するだろう。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0053】
本明細書で使用される「本発明のFペプチドと特異的に結合する」という用語は、本発明のFペプチド又はその断片と特異的に結合する上記のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、アプタマー、小分子(一般的に10kD未満のサイズとみなす)、及び任意のフラグメント又は誘導体を指す。
【0054】
Fペプチド若しくはその断片又はFタンパク質エピトープと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、アプタマー又は小分子は、例えばイムノアッセイ、BIAコア又は当該技術分野で公知の他のアッセイによって測定する際に、より低い親和性で他のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と結合し得る。例えば、Fペプチド若しくはその断片又はFタンパク質エピトープと特異的に結合する抗体又はそのフラグメントは、関連の抗原と交差反応し得る。好ましくは、特定のFペプチド又はFタンパク質エピトープと免疫特異的に結合する抗体又はそのフラグメントは、他の抗原以上にFペプチド又はFタンパク質エピトープと優先的に結合する。しかし、本発明は特に、「Fペプチド又はFタンパク質エピトープと免疫特異的に結合する」抗体の定義に、複数の特異性を有する抗体(例えば、2以上の別個の抗原に対する特異性を有する抗体(参照により本明細書に組み入れるCaoら, 2003, Adv Drug Deliv Rev 55:171; Hudsonら, 2003, Nat Med 1:129に概説される))を包含する。例えば、二重特異性抗体は共に融合された2つの異なる結合特異性を含む。最も単純な場合、二重特異性抗体は単一の標的抗原上の2つの隣接するエピトープに結合し、かかる抗体は(上述するように)他の抗原と交差反応しない。あるいは、二重特異性抗体は2つの異なる抗原と結合することができ、かかる抗体は2つの異なる分子と特異的に結合するが、他の未関連の分子とは結合しない。さらに、Fペプチド又はFタンパク質エピトープと特異的に結合する抗体は、関連のFペプチド又はFタンパク質エピトープと交差反応し得る。本発明のFペプチド若しくはFタンパク質エピトープ又はその断片と特異的に結合する抗体又はフラグメントは、他の抗原との交差反応性を有し得る。好ましくは、本発明のFペプチド若しくはFタンパク質エピトープ又はその断片と特異的に結合する抗体又はそのフラグメントは、他の抗原と交差反応しない。
【0055】
Fペプチド又はFタンパク質エピトープと免疫特異的に結合する抗体又はフラグメントは、例えばイムノアッセイ、BIAコア、又は当業者に公知の他の技術によって同定することができる。抗体又はそのフラグメントは、実験的技術(ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)など)を用いて測定する際に、これがFペプチド若しくはその断片又はFタンパク質エピトープと他の交差反応性抗原よりも高い親和性で結合するとき、Fペプチド若しくはその断片又はFタンパク質エピトープと特異的に結合する。抗体特異性に関する議論については例えばPaul編集, 1989, Fundamental Immunology 第2版, Raven Press, New York 332−336頁を参照されたい。
【0056】
2つアミノ酸配列又は2つの核酸配列の「同一性%」を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸又は核酸配列の配列中にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応の位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合に、分子はこの位置で同一である。2つの配列間の同一性%は、配列が共有する同一位置数の関数(すなわち、同一性%=同一の重複位置数/位置の総数×100%)である。一実施形態では、2つの配列は同一の長さである。
【0057】
2つの配列間の同一性%の決定は、数学的アルゴリズムを用いることによって達成することもできる。2つの配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの好適な非限定的な例は、Karlin及びAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5877で改変されているKarlin及びAltschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264-2268のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムはAltschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド分子を取得するために、NBLASTヌクレオチドプログラムパラメーター設定(例えばスコア=100、ワード長=12)を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を取得するために、XBLASTプログラムパラメーター設定(例えばスコア−50、ワード長=3)を用いて実施することができる。比較用のギャップアライメントを取得するために、ギャップ導入BLASTをAltschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されるように利用することができる。あるいは、PSI−BLASTを用いて、分子(Id.)間の距離関係を検出する繰り返し検索を実施することができる。BLAST、ギャップ導入BLAST及びPSI−Blastプログラムを利用する際、各プログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)のデフォルトのパラメーターを使用することができる(例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。配列比較に利用される数学的アルゴリズムの他の好適な非限定的例は、Myers及びMiller, 1988, CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する際、PAM120重み残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0058】
2つの配列間の同一性%は、ギャップを許容する又は許容しない、上述と類似の技術を用いることによって決定することができる。同一性%を算出する際、典型的には正確な一致のみがカウントされる。
【0059】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎、並びに/或いはこれに関連する症状又は呼吸状態(これに限定されるものではないが喘息、喘鳴、RAD、又はその組合せを含む)の重篤度及び/又は持続時間を低減及び/又は改善する、上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎及び/又はこれらに関連する症状又は呼吸状態の発達又は進行を予防する(例えば上気道RSV感染症から下気道RSV感染症への進行を予防する)、上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎及び/又はこれらに関連する症状又は呼吸状態(これに限定されるものではないが、喘息、喘鳴、RAD又はその組合せを含む)の再発、発症(development)又は発症(onset)を予防する、並びに/或いは他の治療(本発明の抗体以外のものによる療法)の予防的又は治療的効果を増強/改善するのに十分な治療(例えば本発明の抗体)の量を指す。本発明の抗体の有効な量の非限定的な例は、下記の5.3節に提供される。
【0060】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療」及び「治療する(treating)」という用語は、上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎又は1以上の治療(これに限定されるものではないが、1以上の予防剤又は治療剤の投与を含む)の投与から生じるこれらに関連する症状又は呼吸状態(喘息、喘鳴、RAD又はその組合せなど)の進行、重篤度及び/又は持続時間の低減又は改善を指す。具体的な実施形態では、かかる用語はRSVの複製の低減又は阻害、RSVの他の組織又は被験者への拡大の阻害又は低減(例えば下気道への拡大)、RSVによる細胞の感染の阻害又は低減、或いは上気道及び/又は下気道RSV感染症又は中耳炎に関連する1以上の症状の改善を指す。
【0061】
本明細書で使用される「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」及び「予防」という用語は、被験者における上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎又はこれらに関連する呼吸状態の発症(development)又は発症(onset)の予防又は阻害、上気道RSV感染症から下気道RSV感染症への進行、中耳炎又は治療(例えば予防剤又は治療剤)の投与により生じるこれに関連する呼吸状態の予防又は阻害、上気道及び/又は下気道RSV感染症、中耳炎又はこれに関連する呼吸状態の症状の予防、或いは治療の組合せ(例えば予防剤又は治療剤の組合せ)の投与を指す。
【0062】
「上気道及び/又は下気道」という用語は、上気道及び/又は下気道の主な通路及び構造(鼻又は鼻孔、鼻腔、口、喉(咽頭)及び喉頭を含む)を指す。
【0063】
「下気道」という用語は、下気道(らせん紋管を含む)並びに肺(肺の気管支、細気管支及び肺胞を含む)の主な通路及び構造を指す。
【0064】
「SYNAGIS(登録商標)」という用語は、RSVのF糖タンパク質に対するヒト化RSVモノクローナル抗体を指し、現在高リスクの児童における重篤なRSV疾患の受動的な免疫的予防についてFDA承認されている。SYNAGIS(登録商標)はさらに、一般名パリビズマブ(palivizumab)で知られる。配列番号30及び31は、それぞれ、RSV抗原に結合するモノクローナル抗体の(A)軽鎖可変領域及び(B)重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。参考までに、これはJohnsonら, J. Infect. Dis. 176:1215-1224 (1997)に開示されるSYNAGIS(登録商標)抗体のアミノ酸配列である。
【0065】
「NUMAXTM」という用語は、パリビズマブ(palivizumab)の重鎖及び軽鎖の相補性決定領域のin vitro親和性成熟によって生じる増強された強力なRSV特異的モノクローナル抗体を指す。NUMAXTMはまた、一般名モタビズマブ(motavizumab)で知られる。配列番号32及び33は、それぞれRSV抗原に結合するモノクローナル抗体の(A)軽鎖可変領域及び(B)重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。参考までに、これは米国特許第6,818,216号及びWuら, J. Mol. Bio. 350(1):126-144 (2005)に開示されるSYNAGIS(登録商標)抗体のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
発明の詳細な説明
本発明は、SYNAGIS(登録商標)及び/又はNUMAXTMに結合するFタンパク質エピトープ及びFペプチドを提供する。一実施形態では、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドは、SYNAGIS(登録商標)及び/又はNUMAXTMのRSV Fタンパク質への結合を競合的に阻害する。具体的な実施形態では、1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドは、ワクチン又は抗原製剤として哺乳類に投与して、RSV感染症から該哺乳類を保護する免疫応答を生じさせる。別の実施形態では、1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドを受動免疫処理によって哺乳類に投与してRSV感染症を予防する。特定の理論又は機構に拘束されることなく、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドが、RSV Fタンパク質の天然のレセプターに結合し、結合をブロックすることによってRSVの細胞とのFタンパク質仲介融合を防止し得ることを意図する。
【0067】
本発明はさらに、1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドに特異的に結合する分子、例えば抗体(例えば、抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体)を提供する。前記抗体はSynagis(登録商標)(パリビズマブ)又はNumaxTM(モタビズマブ)又はマウスmAb 47F及び7C2(Arbiza J.ら, J Gen. Virol., 73:2225-2234 (1992)参照)ではないことが意図される。本発明はさらに、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する及び改善する方法であって、前記被験者に1以上の前記抗Fタンパク質エピトープ結合体及び/又は抗Fペプチド結合体、例えばその後RSVウイルスを中和し得る抗体、を投与することを含む、前記方法を提供する。一実施形態では、抗Fタンパク質エピトープ抗体又はFペプチド抗体は、高親和性及び/又は高結合活性(high avidity)を有し、かつ/或いは最適化されている血清半減期を有する。本発明の前記抗体の高親和性及び/又は高結合活性により、RSV感染症に関連する症状の予防、中和、治療及び改善に有効であると従来考えられていたよりも低い前記抗体の用量を使用することが可能である。1以上のRSV抗原(例えばFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチド)に特異的に結合する抗体の低用量での使用は、より効果的な予防を提供するだけでなく、副作用の可能性を低減する。さらに本発明の抗Fタンパク質エピトープ抗体又は抗Fペプチド抗体の高親和性及び/又は高結合活性により、RSV感染症に関連する症状の予防、中和、治療及び改善に必要であると従来考えられていたよりも前記抗体の投与頻度を少なくすることができる。
【0068】
本発明はさらに、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する及び改善する方法であって、該被験者に1以上の抗Fタンパク質エピトープ結合体及び/又は抗Fペプチド結合体(例えば抗体)を投与することを含み、該結合体がすでに知られる他の結合体よりも長いin vivo半減期を有する、前記方法を提供する。特に本発明は、被験者、好ましくは哺乳類、そして最も好ましくはヒトにおいて、3日を超える、7日を超える、10日を超える、好ましくは15日を超える、25日を超える、30日を超える、35日を超える、40日を超える、45日を超える、2ヶ月を超える、3ヶ月を超える、4ヶ月を超える又は5ヶ月を超える半減期を有する、前記抗体を提供する。in vivoでの抗体(例えばモノクローナル抗体、一本鎖抗体及びFabフラグメント)の血清循環を延長するために、例えば高分子量ポリエチレングリコール(PEG)などの不活性ポリマー分子を、多機能リンカーを用いて又は用いることなく、PEGの抗体N又はC末端への部位特異的コンジュゲーション或いはリシン残基上に存在するε−アミノ基のいずれかを介して抗体に結合することができる。生物学的活性の損失を最小にする線状又は分岐状ポリマー誘導体化が使用されよう。コンジュゲーションの程度は、SDS−PAGE及び質量分析によって厳密にモニターすることで、PEG分子の抗体への適当なコンジュゲーションを保証することができる。未反応のPEGは、サイズ排除又はイオン交換クロマトグラフィーによって抗体−PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG誘導体化抗体は、当業者に周知の方法を用いて、例えば本明細書に記載されるイムノアッセイによって、in vivo効能だけでなく、結合活性について試験することができる。増加したin vivo半減期を有する抗体も、1以上のアミノ酸改変(すなわち、置換、挿入又は欠失)をIgG定常ドメイン又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくはFc又はヒンジ−Fcドメインフラグメント)に導入することによって作製することができる。例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れる国際公開WO02/06919;WO98/23289;及びWO97/34631;並びに米国特許第6,277,375号を参照されたい。かかる半減期の延長は、アルブミンへのコンジュゲーションによって達成することもできる。この技術は当該技術分野で周知であり、例えばその全てを参照により本明細書に組み入れる、国際特許出願WO93/15199、WO93/15200及びWO01/77137;並びにヨーロッパ特許EP413,622を参照されたい。
【0069】
本発明はまた、被験者におけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、中和する、治療する又は改善する方法であって、本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドをワクチン又は抗原製剤として該被験者に投与して、RSV感染症から該被験者を保護する免疫応答を生じさせることを含む、前記方法を提供する。本発明はさらに、RSV感染症を予防するために、Fタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドを受動免疫療法として投与する方法を提供する。
【0070】
本発明はさらに、1以上の抗Fペプチド結合体を被験者に投与する方法を提供する。本発明は、RSVの中和が可能な1以上の抗Fペプチド結合体を送達する方法を包含する。特に、本発明は、本発明の1以上のFペプチド及び/又は1以上の抗Fペプチド結合体の肺送達を包含する。特に、本発明は、本発明の少なくとも1つのFタンパク質エピトープ若しくはFペプチド及び/又は1以上の抗Fタンパク質エピトープ若しくはFペプチド結合体(例えば抗体)の肺又は鼻腔内送達を包含する。一例として、例えば吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤を含む製剤を用いることによって、肺投与を使用することができる。例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れる、米国特許第6,019,968号、5,985,320号、5,985,309号、5,934,272号、5,874,064号、5,855,913号、5,290,540号及び4,880,078号;並びにPCT公開WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903を参照されたい。一実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメント、或いは本発明の組成物は、Alkermes AIR.TM.薬剤肺送達技術(Alkermes, Inc., Cambridge, Mass.)を用いて投与される。あるいは、抗体又はそのフラグメント、或いは医薬組成物の投与方法として、これに限定されるものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば鼻腔内及び経口経路)が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメント、或いは医薬組成物は、筋肉内、静脈内又は皮下に投与される。この組成物は、都合のよい任意の経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通じた吸収によって投与してもよいし、他の生物活性剤と共に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であり得る。
【0071】
本発明は、抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体、或いはそのフラグメントの少なくとも1μg/ml、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも6μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも175μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも225μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも275μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも325μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも375μg/ml又は少なくとも400μg/mlの血清力価を達成するか又は生じさせる一方で、副作用を低減又は回避する方法を提供する。好ましくは、この血清力価は、上記抗体(又は本発明のFタンパク質エピトープ及び/若しくはFペプチド)の初回投与後約30日で、該抗体又はそのフラグメントの追加投与なく、達成される。
【0072】
具体的な実施形態では、非霊長類哺乳類において、1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体の少なくとも40μg/ml、好ましくは少なくとも80μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも120μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、又は少なくとも300μg/mlの血清力価が、2.5mg/kg未満、好ましくは1mg/kg未満、又は0.5mg/kg未満の用量の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの非霊長類哺乳類への投与後、少なくとも1日で達成される。
【0073】
別の実施形態では、非霊長類の哺乳類において、1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの、少なくとも150μg/ml、好ましくは少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml又は少なくとも400μg/mlの血清力価が、約5mg/kgの用量の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの非霊長類哺乳類への投与後少なくとも1日で達成される。
【0074】
別の実施形態では、霊長類において、1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの、少なくとも40μg/ml、好ましくは少なくとも80μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも120μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml又は少なくとも300μg/mlの血清力価が、抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの5mg/kg未満、好ましくは3mg/kg未満、1mg/kg未満又は0.5mg/kg未満の初回用量の霊長類への投与後少なくとも30日で達成される。
【0075】
さらに別の実施形態では、霊長類において、1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml又は少なくとも400μg/mlの血清力価が、約15mg/kgの該抗体又はそのフラグメントの初回用量の投与後少なくとも30日で達成される。これらの実施形態によれば、霊長類がヒトであることが好ましい。
【0076】
本発明は、哺乳類、好ましくはヒトにおけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、治療する又は改善する方法であって、該哺乳類に本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチド並びに/或いは抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントの予防上又は治療上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0077】
本発明は、哺乳類、好ましくはヒトにおけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、治療する又は改善する方法であって、哺乳類に本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドの予防上又は治療上有効な量の初回用量を投与すること、及びその後、1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントの第2用量を投与することを含む、前記方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、哺乳類、好ましくはヒトにおけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、治療する又は改善する方法であって、予防上又は治療上有効な量の1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントを投与すること、次いで本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドの第2用量を投与することを含む、前記方法を提供する。別の実施形態では、本発明は哺乳類、好ましくはヒトにおけるRSV感染症に関連する1以上の症状を予防する、治療する又は改善する方法であって、予防上又は治療上有効な量の1以上の抗Fタンパク質エピトープ抗体及び/又は抗Fペプチド抗体或いはそのフラグメントと、本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドとを哺乳類に同時に投与することを含む、前記方法を提供する。上記方法のいずれも、本発明のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドではないRSVエピトープに免疫特異的に結合する抗体の投与を包含し得ることが具体的に意図される。
【0078】
特定の実施形態では、本発明は被験者におけるRSV感染症を予防する、治療する又は管理する方法であって、本発明の1以上のFタンパク質エピトープ及び/又はFペプチドの製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を少なくもと10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。具体的な実施形態では、FペプチドはFタンパク質を模倣し、宿主細胞上の天然のレセプターに結合することによりRSV感染症を防止する。
【0079】
他の実施形態では、本発明のFペプチドは被験者において感染症を引き起こすウイルスのペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%同一である。特定の実施形態では、本発明のFペプチドの誘導体は、ウイルス融合を防止するために使用することができる。かかる誘導体として、これに限定されるものではないが、非天然のアミノ酸で置換されているペプチド、アミノ酸鎖が除去されるように末端切断されているペプチド、或いは単一のアミノ酸又はアミノ酸鎖が付加されるように伸長されているペプチドが挙げられる。さらに別の実施形態では、本発明のFペプチドが、RSV感染症を治療する、管理する又は防止するために使用される。さらに別の実施形態では、上記Fペプチドの組合せがRSV感染症を治療する、管理する又は予防するために投与される。
【0080】
特定の実施形態では、本発明は被験者におけるRSV感染症を防止する、治療する又は管理する方法であって、1以上の抗Fペプチド結合体の製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。
【0081】
他の具体的な実施形態では、本発明は、被験者におけるRSV感染症を予防する、治療する又は管理する方法であって、1以上の抗Fペプチド抗体の製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。
【0082】
本発明のペプチド
本発明の一実施形態では、本発明のFペプチド又はその断片或いは該Fペプチドを含む医薬組成物が、RSV感染症を治療し、管理し又は予防するために被験者に投与される。好適な実施形態では、前記被験者はヒトである。具体的な実施形態では、Fペプチド又はその断片或いは該Fペプチドを含む医薬組成物はワクチン又は免疫原性組成物である。別の実施形態は、Fペプチド又はその断片或いは該Fペプチドを含む医薬組成物の受動免疫療法としての投与を含む。特定の実施形態では、本発明は被験者におけるRSV感染症を予防し、治療し又は管理する方法であって、本発明の1以上のFペプチドの製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。他の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。
【0083】
特定の実施形態では、本発明のFペプチドは配列番号1と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%同一である。本発明はさらに、本発明のFペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリペプチドを提供する。
【0084】
特定の実施形態では、本発明のFペプチドの誘導体は、ウイルス融合を予防するために使用することができる。かかる誘導体として、これに限定されるものではないが、非天然のアミノ酸で置換されているペプチド、アミノ酸鎖が除去されるように末端切断されているペプチド、或いは単一のアミノ酸又はアミノ酸鎖が付加されるように伸長されているペプチドが挙げられる。本発明はさらに、Fペプチドの任意の変異体を包含する。変異体には、これに限定されるものではないが、1以上のアミノ酸の置換及び/又は付加及び/又は欠失が挙げられるが、この改変がポリペプチドの抗原性、免疫原性又は結合能力を損なわないことを条件とする。
【0085】
具体的にはFペプチドにおける保存的アミノ酸置換が意図される。「保存的アミノ酸置換」が、機能的に同等のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を指すことは当該技術分野で周知である。保存的アミノ酸変化は、結果として生じるペプチドのアミノ酸配列のサイレント変化を生じる。例えば、1以上の類似の極性のアミノ酸は機能的同等物として作用し、ペプチドのアミノ酸配列内のサイレント変化を生じる。電荷中性であり、所与の残基をより小さな残基で置き換える置換(例えばフェニルアラニンのより小さなイソロイシンによる置換)も、たとえ残基が異なる基になる場合でも「保存的置換」とみなすことができる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で規定されている。保存的アミノ酸置換の数ファミリーが表2に示される。
【表2】

【0086】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、アミノ酸類似体又は変異体の使用をも指す。どのようにして表現型サイレントアミノ酸置換を作製するかについての手引きは、参照により本明細書に組み入れるBowieら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」(1990, Science 247:1306-1310)で提供される。
【0087】
他の実施形態では、Fペプチドの変異体は、特定の特徴(これに限定されるものではないが、可溶性、安定性、pI及び血清半減期を含む)を改善するために作製される。例えば、荷電性アミノ酸の、他の荷電性の又は中性のアミノ酸によるアミノ酸置換を含むペプチド変異体は、特徴が改善された(より低い凝集度など)タンパク質を生じ得る。医薬製剤の凝集は、凝集体の免疫原活性に起因して、活性を低減しかつクリアランスを増加する。それぞれ参照により本明細書に組み入れるPinckardら, Clin. Exp. Immunol. 2:331-340 (1967); Robbinsら, Diabetes 36: 838-845 (1987); Clelandら, Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307-377 (1993)を参照されたい。
【0088】
好適な実施形態では、本発明のFペプチドは、RSV感染症を治療し、管理し又は予防するために使用される。別の好適な実施形態では、Fペプチドの組み合わせが、RSV感染症を治療し、管理し又は予防するために投与される。さらに別の好適な実施形態では、1以上のFペプチド及び/又は1以上の抗Fペプチド抗体の組合せが、RSV感染症を治療し、管理し又は予防するために投与される。具体的な実施形態では、個別の成分の用量が連続的に投与される。別の具体的な実施形態では、個別の成分の用量が同時に投与される。
【0089】
Fペプチドの作製
Fペプチドは、非常に多くの手段によって作製することができ、該手段として、これに限定されるものではないが、化学合成及び組換えタンパク質発現が挙げられる。可溶性ペプチドは宿主細胞から発現及び精製することができる。一実施形態では、本発明のFペプチドをコードする合成の組換えDNAが調製される。
【0090】
別の実施形態では、Fペプチドの精製を容易にするのに有用な配列タグをさらに含む合成の組換えDNAが調製される。本発明の好適な実施形態では、Fペプチドの精製を容易にするタグはその活性を妨げない。具体的な実施形態では、タグアミノ酸配列は、pQEベクターで提供されるタグ(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)などのヘキサヒスチジンペプチドである。精製に有用な他のペプチドタグとして、これに限定されるものではないが赤血球凝集素「HA」タグが挙げられ、これはインフルエンザの赤血球凝集素タンパク質(Wilsonら, 1984, Cell 37: 767)由来のエピトープ及び「フラッグ」タグに相当する。
【0091】
可溶性ペプチドを発現しかつ精製するために使用できる多くの異なる手法が存在する。FペプチドのDNA配列は、ヌクレオチド配列の操作のための当該技術分野で周知の方法、例えば組換えDNA技術(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れる、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら編集, John Wiley & Sons (Chichester, England, 1998); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, J. Sambrookら編集, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY, 2001)に記載される技術を参照)を用いて操作し得る。FペプチドをコードするDNAベクターを調製し、その後適当な発現宿主細胞(例えば大腸菌BL21(DE3)株など)に形質転換し、タンパク質を発現させ、当該技術分野で慣用の方法を用いて精製する。例えば、ヒスチジンタグを有するペプチドをコードする遺伝子の発現は、IPTGを用いてpETから誘導することができる。次いで、細胞を溶解し、発現したペプチドをNi−キレートセファロースアフィニティーカラム上で固定化し、次いで逆荷電性種(例えばイミダゾール)による溶出後に単離することができる。
【0092】
本発明は、特にFペプチドを含む融合タンパク質も包含する。ポリペプチド、タンパク質及び融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって、又はタンパク質合成技術によって、例えばペプチド合成器を使用することによって製造することができる。例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸分子は、従来技術(自動化DNA合成器を含む)によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続的な遺伝子断片間の相補性突出部を生じ、その後アニーリングし、再増幅してキメラ遺伝子配列を生じることができるアンカープライマーを用いて実施することができる(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubelら,編集, John Wiley & Sons, 1992参照)。さらに、生物活性分子をコードする核酸は、生物活性分子がFタンパク質エピトープとインフレームで連結されるようにFペプチドを含む発現ベクター中にクローニングすることができる。
【0093】
本発明のFタンパク質エピトープは、当該技術分野で公知の方法によって精製及び単離し得る。特に、同定された遺伝子配列を有する場合、適当な宿主中で遺伝子を発現させるために組換え技術を使用することが可能であろう。さらに、ペプチドは合成的に合成し得る。活性断片及びこれに関連する分子は同定可能であり、治療に有用であり得る。例えば、ペプチド又はその活性断片はワクチン中で抗原決定基として使用して、免疫応答を誘発し得る。これらは受動免疫処置又は診断用途のための抗体の調製においても使用し得る。適当な抗体として、モノクローナル抗体又はそのフラグメント(一本鎖Fvフラグメントを含む)が挙げられる。ヒト化抗体も本発明の範囲内である。抗体を調製する方法は当業者に明らかであり、下で概説される。
【0094】
本発明のFタンパク質エピトープは、等張性及び化学的安定性を増強する担体と結合することができる。かかる物質は使用される用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸及び他の有機酸或いはその塩などの緩衝剤;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えばポリアルギニン又はトリペプチド;血清アルブミン又は牛血清アルブミン(BSA)、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はアルギニン、或いはオルニチン又はシステイン、などのアミノ酸;単糖、二糖及び他の炭水化物(セルロース又はその誘導体、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);EDTAなどのキレート化剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン;並びに/或いはポリソルベート、ポロキサマー又はPEGなどの非イオン性界面活性剤を含む。
【0095】
本発明は、Fペプチドと、他の化合物(例えばポリペプチドの安定性及び/又は可溶性を増加する化合物(例えばポリエチレングリコール))との融合、ペプチドと、追加のアミノ酸(例えばIgG Fc融合領域ペプチド、血清アルブミン(好ましくはヒト血清アルブミン)若しくはその断片、リーダー配列若しくは分泌配列、又は精製容易にする配列)との融合、或いはペプチドと、別の化合物、例えばアルブミン(これに限定されるものではないが組換えアルブミン(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第5,876,969号(1999年3月2日登録)、ヨーロッパ特許0 413 622号及び米国特許第5,766,883号(1998年6月16日登録)を参照されたい)を含む)との融合を包含する。かかる変異ペプチドは、本明細書の教示から当業者の技術範囲内であるとみなす。
【0096】
抗体及び他の結合体
Fペプチドと特異的に結合する抗体は当該技術分野で公知であると認められるべきである。例えば、SYNAGIS(登録商標)は、小児患者のRSV感染症の予防に現在使用されているヒト化モノクローナル抗体である。
【0097】
本発明は、本発明のFタンパク質エピトープと特異的に結合する新規抗体、フラグメント及び他の生物学的又はマクロ高分子(例えば抗Fペプチド抗体)を包含する。特定の実施形態では、本発明は、被験者におけるRSV感染症を予防し、治療し又は管理する方法であって、抗Fタンパク質エピトープ結合体、例えば抗体又はそのフラグメントの製薬上の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。特定の実施形態では、製薬上の有効量は、ウイルス宿主細胞融合を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%低減する。
【0098】
本発明はさらに、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。本発明の抗Fペプチド抗体として、これに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド架橋型Fvs(sdFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、並びに上記いずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。特に、本発明の抗体として、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわちRSV抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられる。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリンの任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA)又はサブクラスであり得る。
【0099】
本発明の抗体は、鳥類及び哺乳類(例えばヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウシ又はニワトリ)を含む任意の動物起源であり得る。好ましくは、本発明の抗体はヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で使用される、「ヒト」抗体として、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を含む抗体及びヒト免疫グロブリンライブラリー又はヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから単離した抗体が挙げられる。
【0100】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術、又はその組合せを用いることを含む、当該技術分野で公知の広範な技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当該技術分野で公知であり、例えばAntibodies: A Laboratory Manual, E. Harlow及びD. Lane編集, Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY, 1988);並びにHammerlingら, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981) (該参考文献は参照によりその全体を組み入れる)で教示されるものを含む、ハイブリドーマ技術を用いて作製することができる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって作製される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、単一のクローン(任意の真核、原核又はファージクローンを含む)に由来する抗体を指し、これを作製する方法ではない。
【0101】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を作製する及びスクリーニングする方法は、当該技術分野で慣用的でありかつ周知である。簡潔に言うと、マウス(又は他の哺乳類)を目的の抗原(例えば本発明のFタンパク質エピトープ)で免疫することができ、免疫応答が検出された(例えば本発明のFタンパク質エピトープに特異的な抗体がマウス血清中で検出された)時点で、マウスの脾臓を回収し、脾細胞を単離する。次いで、脾細胞を周知技術によって適当な任意のミエローマ細胞(例えばATCCから入手可能な細胞系SP20由来の細胞)と融合する。ハイブリドーマを選別し、限界希釈によってクローニングする。さらに、RIMMS(repetitive immunization, multiple sites)技術を使用して動物を免疫することができる(参照によりその全体を本明細書に組み入れるKilpatrickら, 1997, Hybridoma 16:381-9)。次いで、ハイブリドーマクローンを当該技術分野で公知の方法によって、本発明のポリペプチドに結合可能な抗体を分泌する細胞についてアッセイする。一般的に高レベルの抗体を含む腹水液は、マウスを陽性ハイブリドーマクローンで免疫処理することによって作製することができる。
【0102】
抗体のヒトにおけるin vivoでの使用及びin vitro検出アッセイを含む一部の用途のために、ヒト化抗体又はキメラ抗体を使用することが好ましいかもしれない。完全ヒト抗体又はヒト化抗体は、ヒト被験者の治療的処置に特に望ましい。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な方法(ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いる上記ファージディスプレイ法を含む)によって作製することができる。さらに、それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第4,444,887号及び4,716,111号;並びに国際公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735及びWO91/10741を参照されたい。
【0103】
ヒト化抗体は、所定の抗原に結合可能であり、かつ実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域と実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRとを含む、抗体又はその変異体或いはそのフラグメントである。ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab、F(ab')、Fv)の全てを含み、その際、全ての又は実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリン(すなわちドナー抗体)のものに対応し、かつ全ての又は実質的に全てのフレームワーク領域はヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。好ましくは、ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部をさらに含む。通常、この抗体は軽鎖及び少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含む。この抗体はさらに重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域を含んでもよい。ヒト化抗体は、免疫グロブリンの任意のクラス(IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む)、及び任意のアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3及びlgG4を含む)から選択することができる。ヒト化抗体が細胞毒性活性を示すことが望ましい場合は、定常ドメインは通常は補体結合性定常ドメインであり、クラスは典型的にはIgG1である。かかる細胞毒性活性が望ましくない場合は、定常ドメインはIgG2クラスのものであり得る。ヒト化抗体は2以上のクラス又はアイソタイプ由来の配列を含んでもよく、特に所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは当業者の技術範囲内である。ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は、親配列に正確に対応する必要はなく、例えばドナーCDR又はコンセンサスフレームワークは少なくとも1つの残基の置換、挿入又は欠失によって突然変異させて、CDR又はフレームワーク残基はその部位でコンセンサス又はインポート抗体のいずれかと対応していなくてもよい。しかし、かかる突然変異は大規模ではない。通常は、ヒト化抗体の少なくとも75%の残基は、親フレームワーク及びCDR配列のものと対応し、大抵は90%、そして最も好ましくは95%以上対応する。ヒト化抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を用いて作製することができ、これに限定されるものではないが、CDRグラフティング(例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れるヨーロッパ特許EP239,400;国際公開WO91/09967;及び米国特許第5,225,539号、5,530,101号、及び5,585,089号参照)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェシング(resurfacing)(例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れるヨーロッパ特許EP592,106及びEP519,596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;並びにRoguskaら, 1994, PNAS 91:969-973参照)、チェインシャッフリング(chain shuffling)(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第5,565,332号参照)、並びに例えばそれぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開WO9317105、Tanら, 2002, J. Immunol. 169:1119-25、Caldasら, 2000, Protein Eng. 13:353-60、Moreaら, 2000, Methods 20:267-79、Bacaら, 1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84、Roguskaら, 1996, Protein Eng. 9:895-904、Coutoら, 1995, Cancer Res. 55:5973s-5977s、Coutoら, 1995, Cancer Res. 55:1717-22、Sandhu JS, 1994, Gene 150:409-10、並びにPedersenら, 1994, J. Mol. Biol. 235:959-73に開示される技術が挙げられる。しばしば、フレームワーク領域中のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体由来の対応の残基で置換されて、抗原結合を改変、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法により、例えばCDR及びフレームワーク残基の相互作用のモデリングにより、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定すること及び配列比較によって特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定することによって同定される(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるQueenら, 米国特許第5,585,089号;及びRiechmannら, 1988, Nature 332:323参照)。
【0104】
ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて作製することもできる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに又は相同的組換えによってマウス胚性幹細胞内に導入し得る。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域を、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えてマウス胚性幹細胞に導入し得る。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによってヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に又は同時に非機能的になり得る。特に、JH領域のホモ接合体欠失は内因的な抗体の産生を妨げる。改変型胚性幹細胞を増殖し、胚盤胞にマイクロインジェクトすることでキメラマウスが作製される。次いで、キメラマウスを交配してヒト抗体を発現するホモ接合の子孫を生じさせる。トランスジェニックマウスは選択した抗原、例えば本発明のポリペプチドの全て又は一部分により通常の様式で免疫処理される。この抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫処理したトランスジェニックマウスから従来のハイブリドーマ技術を用いて取得することができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランスジーンは、B細胞分化の間に再配列し、その後クラススイッチ及び体細胞突然変異を経る。したがって、かかる技術を用いて、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体を作製するための技術の概要についてはLonberg及びHuszar, 1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作製するための技術並びにかかる抗体を作製するためのプロトコールの詳細な議論については、例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れる国際公開WO98/24893、WO96/34096及びWO96/33735;並びに米国特許第5,413,923号、5,625,126号、5,633,425号、5,569,825号、5,661,016号、5,545,806号、5,814,318号及び5,939,598号を参照されたい。さらに、Abgenix, Inc. (Freemont, CA)及びGenpharm (San Jose, CA)などの企業は、上記と同様の技術を用いて、選択した抗原に対するヒト抗体を提供することを保証することができる。
【0105】
ヒト抗体はまた、ヒト抗体フラグメントのファージディスプレイから誘導することもできる。ファージディスプレイ法において、機能的な抗体ドメインは、これらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面上に提示される。特に、V及びVドメインをコードするDNA配列は動物のcDNAライブラリー(例えばヒト又はマウスのリンパ組織のcDNAライブラリー)から増幅される。V及びVドメインをコードするDNAは、PCRによってscFvリンカーと共に再結合され、ファージミドベクター(例えばpCANTAB6又はpComb3HSS)中にクローニングされる。ベクターは大腸菌(E.coli)にエレクトロポレートされ、この大腸菌はヘルパーファージで感染される。これらの方法で使用されるファージは、典型的にはfd及びM13を含む繊維状ファージであり、V及びVドメインは通常はファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIのいずれかと組換え的に融合される。目的の抗原エピトープと結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原、例えば標識抗原或いは固体表面又はビーズに結合又は捕捉された抗原を用いて、選別又は同定することができる。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法の例には、それぞれ参照によりその全体を本明細書に組み入れるBrinkmanら, 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50; Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177; Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persicら, 1997, Gene 187:9; Burtonら, 1994, Advances in Immunology 57:191-280; 国際公開PCT/GB91/01134;国際公開WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401及びWO97/13844;並びに米国特許第5,698,426号、5,223,409号、5,403,484号、5,580,717号、5,427,908号、5,750,753号、5,821,047号、5,571,698号、
5,427,908号、5,516,637号、5,780,225号、5,658,727号、5,733,743号及び5,969,108号に開示されるものが挙げられる。
【0106】
好ましい実施形態では、ファージ選別の後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、全抗体(上記参考文献に記載されるヒト抗体を含む)を作製するために使用する。別の好適な実施形態では、本発明の再構成抗体は、細菌、昆虫細胞、植物細胞、酵母を含む所望の宿主のいずれか、特に哺乳類細胞(例えば下記に記載される)で発現される。Fab、Fab'及びF(ab')フラグメントも当該技術分野で公知の方法、例えば国際公開WO92/22324; Mullinaxら, 1992, BioTechniques 12:864; Sawaiら, 1995, AJRI 34:26;及びBetterら, 1988, Science 240:1041に開示されるもの等(該参考文献は参照によりその全体を組み入れる)を用いて使用することができる。
【0107】
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を作製する方法は当該技術分野で公知である。例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるMorrison, 1985, Science 229:1202; Oiら, 1986, BioTechniques 4:214; Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;及び米国特許第5,807,715号、4,816,567号、4,816,397号及び6,311,415号を参照されたい。
【0108】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性又は多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、Fペプチド並びに異種エピトープ(異種ポリペプチド又は固体支持体物質)に特異的であり得る。例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるPCT公開WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360及びWO92/05793;Tuttら, J. Immunol. 147:60-69(1991);米国特許第4,474,893号、4,714,681号、4,925,648号、5,573,920及び5,601,819号;並びにKostelnyら, J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。
【0109】
本発明の抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントは、様々な手法で特徴付けてもよい。特に、本発明の抗体又はそのフラグメントは、Fペプチドと特異的に結合する能力についてアッセイし得る。かかるアッセイは溶液中(例えばHoughten, 1992, Bio/Techniques 13:412-421)、ビーズ上(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ上(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号; 5,403,484号;及び5,223,409号)、プラスミド(Cullら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)又はファージ(Scott及びSmith, 1990, Science 249:386-390; Devlin, 1990, Science 249:404-406; Cwirlaら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382; 及びFelici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)(これらの各引用文献は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)で実施し得る。Fペプチド又はその断片に特異的に結合することが同定されている抗体又はそのフラグメントはその後、RSV抗原に対するその特異性及び親和性についてアッセイすることができる。
【0110】
本発明の抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントは、Fペプチドに対する特異的結合、及び他の抗原との交差反応性について、当該技術分野で公知の方法によってアッセイし得る。免疫特異的結合及び交差反応性を分析するために使用できるイムノアッセイとして、いくつか例を挙げると、これに限定されるものではないが、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの競合又は非競合アッセイ系が挙げられる。かかるアッセイは当該技術分野で慣用かつ周知である(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるAusubelら編集, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York参照)。
【0111】
本発明は、本発明の抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明はさらに、高ストリンジェント、中又は低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば前掲で規定される)で本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。
【0112】
本発明は、本明細書に記載のアッセイで高力価を示す抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。高力価でかつ高親和性の抗体又はそのフラグメントは、同時係属中の米国特許出願第09/796,848号及び米国特許第6,656,467号(それぞれ参照により本明細書に組み入れる)に開示される方法及び本明細書に記載の方法によって作製することができる。例えば、高力価の抗体は、適当な抗体遺伝子配列を遺伝子的に操作すること及びその抗体配列を適当な宿主で発現させることによって作製することができる。作製される抗体をスクリーニングして、例えばBIAコアアッセイにおいて高いKon値の抗体を同定することができる。
【0113】
本発明はさらに、Fペプチドと免疫特異的に結合し、かつ本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価した際に少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1、少なくとも10−1−1、少なくとも5x10−1−1又は少なくとも10−1−1の会合速度定数又はKon速度(抗体(Ab)+抗原(Ag)Ab−Ag)を有する、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0114】
本発明は、本明細書に記載される又は当業者に公知の方法(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価した際に、10−1−1未満、5x10−1−1未満、10−2−1未満、5x10−2−1未満、10−3−1未満、5x10−3−1未満、10−4−1未満、5x10−4−1未満、10−5−1未満、5x10−5−1未満、10−6−1未満、5x10−6−1未満、10−7−1未満、5x10−7−1未満、10−8−1未満、5x10−8−1未満、10−9−1未満、5x10−9−1未満又は10−10−1未満のKoff速度(抗体(Ab)+抗原(Ag)Ab−Ag)を有する抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0115】
本発明はさらに、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えばBIAコアアッセイ)を用いて評価した際に少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5x1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5x1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも5x1012−1、少なくとも1013−1、少なくとも5x1013−1、少なくとも1014−1、少なくとも5x1014−1、少なくとも1015−1又は少なくとも5x1015−1の親和性定数又はKa(Kon/Koff)を有する抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0116】
本発明は、in vitroマイクロ中和アッセイにおいて0.01nM未満、0.025nM未満、0.05nM未満、0.1nM未満、0.25nM未満、0.5nM未満、0.75nM未満、1nM未満、1.25nM未満、1.5nM未満、1.75nM未満又は2nM未満の50%有効濃度(EC50)を有する抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントを提供する。特に、本発明はRSV感染症に関連する1以上の症状の予防、治療又は改善に使用するための組成物であって、RSV抗原の1以上に免疫特異的に結合し、かつin vitroマイクロ中和アッセイにて0.01nM未満、0.025nM未満、0.05nM未満、0.1nM未満、0.25nM未満、0.5nM未満、0.75nM未満、1nM未満、1.25nM未満、1.5nM未満、1.75nM未満又は2nM未満のEC50を有する1以上の抗体(例えば抗Fペプチド抗体)又はそのフラグメントを含む、前記組成物を提供する。
【0117】
本発明の抗Fペプチド抗体として、共有結合、すなわち任意のタイプの分子と抗体との共有結合などによって改変されている誘導体が挙げられる。例えば、これに限定されるものではないが、抗体の誘導体として例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質との結合などによる誘導体化によって改変されている抗体が挙げられる。多くの化学的改変のいずれかを、これに限定されるものではないが特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、公知の技術によって実施し得る。さらに、この誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。
【0118】
本発明はさらに、哺乳類、好ましくはヒトにおいて15日を超える、好ましくは20日を超える、25日を超える、30日を超える、35日を超える、40日を超える、45日を超える、2ヶ月を超える、3ヶ月を超える、4ヶ月を超える又は5ヶ月を越える半減期を有するFペプチド結合体、例えば抗体又はそのフラグメントを提供する。本発明の抗体又はそのフラグメントの、哺乳類、好ましくはヒトでの半減期の増加は、哺乳類での該抗体又は抗体フラグメントのより高い血清力価をもたらし、その結果、該抗体又は抗体フラグメントの投与頻度を低減する及び/或いは投与されるべき該抗体又は抗体フラグメントの濃度を低減する。in vivo半減期が増加した結合体は、当業者に公知の技術によって作製することができる。例えば、in vivo半減期が増加した抗体又はそのフラグメントは、Fcドメイン及びFcRnレセプター間の相互作用に関与することが同定されたアミノ酸残基を改変する(例えば置換する、欠失する又は付加する)ことによって作製することができる(例えば、参照によりその全体を本明細書に組み入れるPCT公開WO97/34631参照)。かかる結合体は、RSV抗原への結合活性、並びにin vivo効能について、当業者に公知の方法を用いて、例えば本明細書に記載のイムノアッセイによって試験することができる。
【0119】
さらに、in vivo半減期が増加した抗体又はそのフラグメントは、前記抗体又は抗体フラグメントとポリマー分子(高分子量ポリエチレングリコール(PEG)など)との結合によって作製することができる。PEGは、前記抗体又は抗体フラグメントのN又はC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーション、或いはリシン残基上に存在するε−アミノ基のいずれかを介して、多機能性リンカーにより又は該リンカーなしに前記抗体又は抗体フラグメントと結合することができる。生物活性の欠失を最小にする線状又は分岐状ポリマーが使用される。コンジュゲーションの程度は、SDS−PAGE及び質量分析によって厳密にモニターして、PEG分子の抗体への適当なコンジュゲーションを保証する。未反応のPEGは、例えばサイズ排除又はイオン交換クロマトグラフィーによって、抗体−PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG誘導体化抗体又はそのフラグメントは、RSV抗原への結合活性、並びにin vivo効能について、当業者に公知の方法を用いて、例えば本明細書に記載のイムノアッセイによって試験することができる。
【0120】
本発明はさらに、Fペプチド及び異種ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを含む融合タンパク質を提供する。抗体又は抗体フラグメントが融合されるポリペプチドが、抗体が呼吸上皮細胞を標的化するのに有用であることが好ましい。
【0121】
本発明はさらに、抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントのパネルを提供する。具体的な実施形態では、本発明はRSV抗原に対する異なる親和性、Fペプチドに対する異なる特異性又は異なる解離速度を有する抗体又はそのフラグメントのパネルを提供する。本発明は、少なくとも10種、好ましくは少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも75種、少なくとも100種、少なくとも125種、少なくとも150種、少なくとも175種、少なくとも200種、少なくとも250種、少なくとも300種、少なくとも350種、少なくとも400種、少なくとも450種、少なくとも500種、少なくとも550種、少なくとも600種、少なくとも650種、少なくとも700種、少なくとも750種、少なくとも800種、少なくとも850種、少なくとも900種、少なくとも950種、又は少なくとも1000種の抗体又はそのフラグメントのパネルを提供する。抗体のパネルは、例えばELISAなどのアッセイのために96ウェルプレートで使用することができる。
【0122】
本発明の抗Fタンパク質エピトープ抗体又はそのフラグメントは、例えば、in vitro及びin vivoでの診断及び治療方法において、RSV抗原を精製、検出及び標的化するために使用し得る。例えば、この抗体又はフラグメントは、唾液などの生物学的サンプル中のRSVのレベルを定性的に及び定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて使用される。例えばHarlowら, Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版. 1988)(参照によりその全体を本明細書に組み入れる)を参照されたい。
【0123】
本発明は、融合タンパク質を作製するために、異種ポリペプチド(又はその断片、好ましくはこのポリペプチドの少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90又は少なくとも100アミノ酸)と組換え的に融合された又は化学的にコンジュゲートされた(共有及び非共有結合の両方を含む)抗体又はそのフラグメントを包含する。融合は必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して生じさせてもよい。例えば、抗体は、抗体を特定の細胞表面レセプターに特異的な抗体と融合又はコンジュゲートすることによって、in vitro又はin vivoのいずれかで、特定の細胞型(例えば呼吸上皮細胞)に対して異種ポリペプチドを標的化させるために使用し得る。異種ポロペプチドと融合又はコンジュゲートした抗体はさらに、当該技術分野で公知の方法を用いたin vitroイムノアッセイ及び精製法に使用し得る。例えば、参照によりその全体を組み入れるPCT公開WO93/21232;EP439,095; Naramuraら, 1994, Immunol. Lett. 39:91-99; 米国特許第5,474,981号; Gilliesら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1428-1432並びにFellら,1991, J. Immunol. 146:2446-2452を参照されたい。
【0124】
本発明はさらに、抗Fタンパク質エピトープ抗体フラグメントと融合又はコンジュゲートされた異種ポリペプチドを含む組成物を含む。例えば、異種ポリペプチドは、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)フラグメント又はその一部分と融合又はコンジュゲートし得る。ポリペプチドを抗体の一部と融合又はコンジュゲートするための方法は当該技術分野で公知である。例えば米国特許第5,336,603号、5,622,929号、5,359,046号、5,349,053号、5,447,851号及び5,112,946号; EP307,434;EP367,166;PCT公開WO96/04388及びWO91/06570; Ashkenaziら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539; Zhengら, 1995, J. Immunol. 154:5590-5600 ; 並びにVilら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照されたい(該参考文献は参照によりその全体を組み入れる)。
【0125】
本発明のさらなる融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング及び/又はコドンシャッフリング(総称して「DNAシャッフリング」と称する)の技術によって作製し得る。DNAシャッフリングは、本発明の抗体又はそのフラグメントの活性を改変するために使用し得る(例えば親和性が高い及び解離速度が低い抗体又はそのフラグメント)。全般的に、米国特許第5,605,793号;5,811,238号;5,830,721号;5,834,252号;及び5,837,458号、並びにPattenら, 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33; Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hanssonら, 1999, J. Mol. Biol. 287:265-76、並びにLorenzo及びBlasco,1998, Biotechniques 24(2):308-13(これらの各特許及び刊行物は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)を参照されたい。一実施形態では、抗体又はそのフラグメント、或いはコード抗体又はそのフラグメントは、組換え前にエラー−プローン(error-prone)PCR、ランダムヌクレオチド挿入又は他の方法によるランダム突然変異誘発法に供することによって改変し得る。別の実施形態では、RSV抗原と免疫特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドの1以上の部分が、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、断片等と再結合されてもよい。
【0126】
さらに、本発明の抗Fペプチド抗体又はそのフラグメントは、精製を容易にするために、マーカー配列(ペプチドなど)と融合させることができる。好適な実施形態では、マーカーアミノ酸配列はpQEベクターで提供されるタグ(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)などのヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、特にその多くは市販されている。例えばGentzら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとして、これに限定されるものではないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilsonら, 1984, Cell 37:767)及び「フラッグ」タグが挙げられる。
【0127】
本発明は診断又は治療薬とコンジュゲートされた抗Fペプチド結合体(例えば抗体)又はそのフラグメントをさらに包含する。抗Fペプチド抗体は、例えば臨床上の試験手順の一部としてRSV感染症の発症又は進行をモニターして、例えば所与の治療レジメンの効果を判定するために、診断上使用することができる。検出は、抗体又はそのフラグメントを検出可能な物質と結合させることによって容易化することができる。検出可能な物質の例として、様々な酵素、接合団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、抗体(又はそのフラグメント)と直接的に又は媒介物(例えば当該技術分野で公知のリンカーなど)を通じて間接的に結合又はコンジュゲートし得る。本発明による診断として使用するための抗体とコンジュゲートすることができる金属イオンについては、例えば米国特許第4,741,900号(参照により本明細書に組み入れる)を参照されたい。適当な酵素の例として、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アリカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適当な接合団複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられる;適当な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンが挙げられる;発光物質の例としてルミノールが挙げられる;生物発光物質の例としてルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられる;並びに適当な放射性物質の例として125I、131I、111In又は99Tcが挙げられる。
【0128】
Fタンパク質エピトープ結合体又はその断片は、細胞毒素などの治療成分(例えば細胞静止剤又は細胞破壊剤)、治療剤又は放射性金属イオン(例えばα−発光体)とコンジュゲートしてもよい。細胞毒素又は細胞毒性剤として、細胞に有害である任意の薬剤が挙げられる。例として、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにその類似体又はホモログが挙げられる。治療剤として、これに限定されるものではないが、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びシスジクロロジアミン白金(II)((DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。
【0129】
さらに、Fタンパク質エピトープ結合体又はそのフラグメントは、所与の生体応答を改変する治療剤又は薬剤部分とコンジュゲートし得る。治療剤又は薬剤部分は古典的な化学療法剤に限定されるものと解釈されるものではない。例えば、薬剤部分は所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。かかるタンパク質として、例えば、毒素(アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素など);タンパク質(腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えばTNF−α、TNF−β、AIM I(国際公開WO97/33899参照)、AIM II(国際公開WO97/34911参照)、Fasリガンド(Takahashiら, 1994, J. Immunol., 6:1567-1574)、及びVEGI(国際公開WO99/23105)13(これらの各特許及び刊行物は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)、血栓剤又は抗血管形成剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン;或いは生体応答調節剤(例えばリンホカイン(例えばインターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)及び顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)など)又は成長因子(例えば成長ホルモン(「GH」))が挙げられる。
【0130】
上記治療成分と抗体とをコンジュゲートする技術は周知であり、例えばArnonら, 「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編集), pp.243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら「Antibodies For Drug Delivery」,Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら(編集), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」, Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編集), pp. 475-506 (1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編集), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、並びにThorpeら, 1982, Immunol. Rev. 62:119-5813を参照されたい(これらの各刊行物は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。
【0131】
単独で又は細胞障害因子及び/又はサイトカインと併用して投与される、治療成分とコンジュゲートされている又はコンジュゲートされていない抗体又はそのフラグメントは、治療剤として使用することができる。あるいは、抗体は第2の抗体とコンジュゲートして、Segal(参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国特許第4,676,980号)に記載されるような抗体異種コンジュゲートを形成することができる。抗体はさらに、特に標的抗原のイムノアッセイ又は精製に有用である固体支持体と結合し得る。かかる固体支持体として、これに限定されるものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンが挙げられる。
【0132】
一実施形態では、本発明は本発明のFタンパク質エピトープのアプタマー(例えば本発明のFタンパク質エピトープのアプタマー)に関する。当該技術分野で知られるように、アプタマーは特定の分子標的(例えば本発明のFタンパク質エピトープ及び天然のFタンパク質レセプター)と固く結合する核酸(例えばRNA、DNA)からなるマクロ分子である。特定のアプタマーは、線状ヌクレオチド配列により記載することもでき、アプタマーは典型的には約15〜60ヌクレオチドの長さである。アプタマー中のヌクレオチドの鎖は、分子を複雑な3次元形状に折り畳む分子内相互作用を生じさせ、この3次元形状によりアプタマーがその標的分子の表面へ固く結合することが可能になる。可能な全てのヌクレオチド配列集団内に存在する分子形状の異常な多様性を仮定すると、アプタマーは分子標的(タンパク質及び小分子を含む)の広範なアレイについて取得し得る。高い特異性に加えて、アプタマーはその標的に対する非常に高い親和性(例えばタンパク質に対するピコモル〜低ナノモル範囲の親和性)を有する。アプタマーは化学的に安定であり、活性を失わせることなく煮沸又は凍結することができる。これらは合成分子であるため、様々な改変が容易であり、これにより特定の用途のためにその機能を最適化できる。in vivo用途のために、アプタマーを改変して血中での酵素による分解に対するその感度を劇的に低減することができる。さらに、アプタマーの改変はその生体分布又は血漿滞留期間を改変するために使用することができる。
【0133】
本発明のFタンパク質エピトープ及び/又は天然のFタンパク質レセプターと結合できるアプタマーの選別は、当該技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、アプタマーはSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法(Tuerk, C., and Gold, L., Science 249:505-510 (1990))を用いて選別することができる。SELEX法において、核酸分子の大ライブラリー(例えば1015の異なる分子)が、標的分子(例えば本発明のFタンパク質エピトープ及び/又は天然のFタンパク質レセプター)を用いて作製及び/又はスクリーニングされる。標的分子は所与の時間の間ヌクレオチド配列のライブラリーと共にインキュベートし得る。次いで、いくつかの方法を用いて混合物中の未結合分子からアプタマー標的分子を物理的に単離することができ、未結合分子は廃棄することができる。次いで、標的分子に対して最高の親和性を有するアプタマーは、標的分子から精製し取り出すことができ、酵素的に増幅して標的分子に結合できるアプタマーが実質的に富化された、分子の新規ライブラリーを作製することができる。次いで、富化されたライブラリーを用いて新たな選別、分離及び増幅のサイクルを開始することができる。この選別、分離及び増幅プロセスの5〜15サイクル後、ライブラリーを標的分子に固く結合する少数のアプタマーまで削減する。その後、混合物中の個々の分子を単離し、そのヌクレオチド配列を決定し、そして結合親和性及び特異性に関してこれらの性質を判定し、比較することができる。次いで、単離したアプタマーをさらに純化して標的結合及び/又はアプタマー構造に寄与しない任意のヌクレオチドを排除することができる(すなわちそのコア結合ドメインまで末端切断されたアプタマー)。アプタマー技術の概要については、その全体的な教示を参照により本明細書に組み入れるJayasena, S.D. Clin. Chem. 45:1628-1650 (1999)を参照されたい。
【0134】
特定の実施形態では、本発明のアプタマーは、本発明の抗Fペプチド抗体に対する本明細書に記載の結合特異性及び/又は機能的活性を有する。したがって、例えば特定の実施形態では、本発明は、本発明の抗Fペプチド抗体に対して本明細書に記載されるものと同一の又は類似の結合特異性(例えば本発明のFタンパク質エピトープに対する結合特異性)を有するアプタマーに関する。特定の実施形態では、本発明のアプタマーは本発明のFタンパク質エピトープに結合することができ、かつ本発明のFタンパク質エピトープの1以上の機能を阻害することができる。本明細書に記載される本発明のFタンパク質エピトープの機能として、これに限定されるものではないが、ウイルス−細胞融合の促進、合胞体(syncytia)形成に導く細胞−細胞融合の促進、その天然レセプターへの結合が挙げられる。
【0135】
別の実施形態では、本発明のアプタマーはFタンパク質エピトープの分子模倣体であり、これは本明細書中「アプタマーFタンパク質エピトープ模倣体」と称する。具体的な実施形態では、アプタマーFタンパク質エピトープ模倣体は、本明細書に記載の抗Fペプチド抗体によって認識される。理論又は機構に拘束されることを望むことなく、アプタマーFタンパク質エピトープ模倣体がRSV Fタンパク質の天然のレセプターと結合し、かつRSV会合型Fタンパク質の結合を阻止することにより、RSVと細胞とのFタンパク質仲介融合を防止できることが期待される。特定の実施形態では、本発明のアプタマーFタンパク質エピトープ模倣体は、本発明のFタンパク質エピトープの1以上の機能(前掲)を阻害することができる。
【0136】
Fペプチド結合体(例えば抗体)の予防上及び治療上の使用
本発明の1以上の抗Fペプチド結合体又はそのフラグメントは、身体において治療剤として局所的に又は全身的に使用し得る。この発明の抗Fペプチド結合体又はそのフラグメントはさらに、例えば抗体と相互作用するエフェクター細胞の数又は活性の増加のために使用する、他のモノクローナル又はキメラ抗体、或いはリンホカイン又は造血成長因子(例えばIL−2、IL−3及びIL−7など)と組合わせて有利に利用し得る。本発明の抗Fペプチド結合体又はそのフラグメントはさらに、RSV感染症を治療するために使用される1以上の薬剤、例えば抗ウイルス剤などと併用して有利に利用し得る。本発明の結合体又はフラグメントは、以下の薬剤の1以上と併用し得る:NIH−351(Gemini Technologies)、組換えRSVワクチン(MedImmune Vaccines)、RSVf−2(Intracel)、F−50042(Pierre Fabre)、T−786(Trimeris)、VP−36676(ViroPharma)、RFI−641(American Home Products)、VP−14637(ViroPharma)、PFP−1及びPFP−2(American Home Products)、RSVワクチン(Avant Immunotherapeutics)並びにF−50077(Pierre Fabre)。
【0137】
本発明の抗Fペプチド抗体は、単独で又は他のタイプの治療(例えばホルモン療法、免疫療法及び抗炎症剤)と組合わせて投与し得る。一般的には、患者のものと同一の種である種起源又は種反応性(抗体の場合)の産物の投与が好ましい。したがって、好適な実施形態では、ヒト又はヒト抗体、フラグメント誘導体、類似体又は核酸が治療又は予防のためにヒト患者に投与される。
【0138】
一実施形態では、本発明の抗Fペプチド結合体又はそのフラグメントを含む治療用又は予防用組成物は、RSV感染症に関連する1以上の症状を治療し、予防し又は改善するために、哺乳類、好ましくはヒトに投与される。別の実施形態では、抗Fペプチド結合体又はそのフラグメントを含む治療用及び予防用組成物は、RSV感染症に関連する1以上の症状を治療し、予防し又は改善するために、嚢胞性繊維症、気管支肺異形成症、先天性心疾患、先天性免疫不全症又は後天性免疫不全症に罹患したヒト、或いは骨髄移植を経験したヒトに投与される。別の実施形態では、本発明のFペプチド結合体又はそのフラグメントを含む治療用又は医薬組成物は、RSV感染症に関連する1以上の症状を治療し、予防し又は改善するために、ヒト幼児、好ましくは早産で生まれたヒト幼児又はRSV感染症による入院のリスクのあるヒト幼児に投与される。さらに別の実施形態では、本発明のFペプチド結合体又はそのフラグメントを含む治療用又は医薬組成物はグループホーム(例えば療養所又はリハビリテーション施設)の高齢者又は人に投与される。
【0139】
中耳炎は中耳の感染症又は炎症である。この炎症はしばしば咽頭炎、風邪或いは中耳まで拡大した他の呼吸器又は呼吸の問題を生じさせる感染の際に発症する。これらはウイルス又は細菌感染症であり得る。RSVは、中耳炎と互いに関連している主要なウイルスである。75%の児童は、3歳までに少なくとも1回の中耳炎の症状の発症を経験する。これらの児童のほぼ半分は、生後3年の間に3回以上耳感染する。中耳炎による医療費及び逸失賃金は米国で年間50億ドルに達することが予測されている(Gates GA, 1996, Cost-effectiveness considerations in otitis media treatment. Otolaryngol Head Neck Sur. 114 (4): 525-530)。中耳炎は幼児及び児童の主要な疾患であるが、成人にも影響し得る。
【0140】
中耳炎は、激しい痛みを生じさせるだけでなく、治療しない場合には重篤な合併症をもたらし得る。未治療の感染症は、中耳から頭部の近接部分(脳を含む)に移動し得る。中耳炎を原因とする聴力障害は通常は一時的であるが、未治療の中耳炎は永久的な聴力障害をもたらし得る。中耳における永存的な流体及び慢性的な中耳炎は、同時に児童の聴力を低減することができ、これは会話及び言語の発達に重大である。頻繁な耳感染から早期に聴力障害を経験した児童は、会話及び言語障害を有する傾向がある。
【0141】
多くの医師は耳感染症の治療に抗生物質の使用を推奨するが、抗生物質耐性がこの疾患の効果的な治療において重要な問題となっている。さらに、中耳炎、特にRSVに関連するウイルス感染症を予防又は治療する新しい治療が必要である。
【0142】
米国における約1200万人が喘息を患っており、これは児童の入院の主因である(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy (第17版, 1999))。喘息は気道過敏症(「AHR」)、気管支収縮(すなわち喘鳴)、好酸球性炎症、粘液過分泌、上皮下繊維症、及びIgEレベルの上昇によって特徴付けられる肺の炎症性疾患である。喘息発作は、環境刺激(例えばダニ、昆虫、動物(例えばネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、マウス、ラット及び鳥類)、真菌、大気汚染物(例えばタバコの煙)、刺激性ガス、煙霧、蒸気、エアロゾル、化学物質又は花粉)、運動或いは寒気によって引き起こされ得る。喘息の原因は不明である。しかし、喘息の家族歴(Londonら, 2001, Epidemiology 12(5):577-83)、アレルゲン(チリダニ、タバコの煙及びゴキブリ(Melenら, 2001, 56(7):646-52)など)との早期接触、及び呼吸器感染症(Wenzelら, 2002, Am J Med, 112(8):672-33及びLinら, 2001, J Microbiol Immuno Infect, 34(4):259-64)(RSVなど)が喘息を発症させるリスクを増加し得ることが推測されてきた。危険因子、動物モデル及び炎症マーカーを含む喘息の概要は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるO’Byrne及びPostma (1999), Am. J. Crit. Care. Med. 159:S41-S66で見出すことができる。
【0143】
現在の治療は、主に喘息を管理することを狙いとしており、これにはβ−アドレナリン作動薬(例えばエピネフリン及びイソプレテレノール)、テオフィリン、抗コリン作用薬(例えばアトロピン及び臭化イプラトロピウム)、コルチコステロイド及びロイコトリエン阻害剤が挙げられる。これらの治療は副作用(薬物相互作用、口内乾燥症、かすみ目、児童の成長抑制、及び閉経期の女性における骨粗鬆症など)に関連する。クロモリン及びネドクロミルは、炎症細胞からのメディエーターの放出を阻害するために、気道過敏症を低減するために、及びアレルゲンに対する応答を阻止するために予防的に投与される。しかし、喘息を発達させるリスクが増加した被験者において喘息の発症を予防する現在利用可能な治療は存在しない。したがって、より副作用が少なくかつ予防及び/又は治療効率に優れた新規治療が喘息に必要である。
【0144】
気道過敏症は喘息様症状についての広範な(及び多くの場合は同義である)特徴であり、一般的には慢性咳、痰の産出、喘鳴又は呼吸困難によって特徴付けられる。喘鳴(呻軋音としても知られる)は、一般的には狭小化した呼吸管、特に肺の深部に位置するより小さく、硬い気道を通じた空気の流れによって生じる雑音によって特徴付けられる。これはRSV感染症、並びに喘息及び細気管支炎などのRSVの二次症状の一般的な症状である。喘鳴は、これが気道の収縮の指標であり、かつ呼吸困難を示し得る点で臨床上重要である。喘鳴は息を吐く(吐き出す)際に最も明らかであるが、吸息(息を吸う)又は呼気の間に現れるかもしれない。喘鳴はほとんどの場合は小さな気管支チューブ(胸部の深部の呼吸管)に由来するが、大気道が閉塞される場合にも生じ得る。
【0145】
本明細書中の参考文献の引用又は議論は、これらが本発明の先行技術であることを自認するものと解釈されないものとする。
【0146】
生物学的検定法
下記に記載する試験は、RSVと細胞との融合を妨げる際の、Fペプチド及びその誘導体の有効性を判定するために使用することができる。下記に記載する試験は、RSVと細胞との融合を妨げる際の、抗Fペプチド抗体の有効性を判定するために使用することもできる。これらの方法及びその他は、Fペプチド又は抗Fペプチド結合体、例えば抗体が被験者のRSV感染症を治療する、予防する又は管理するために最も適していることを判定するために使用することができる。
【0147】
ウイルス融合を阻害する分子(例えばFペプチド)の能力を判定するために使用される細胞ベースのアッセイが記載されている(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるMufsonら, 1985, J Gen Virol 66:2111-2124参照)。簡潔に言うと、RSVによる宿主細胞の感染時に、細胞をFタンパク質エピトープ又は抗Fペプチド抗体調製物と共にインキュベートし、適当な時間のインキュベーション後に融合についてスコア付けする。その後、細胞を合胞体/多核細胞形成について染色して、ウイルス−細胞融合が成功したか否かを判定する。RSVに感染することができる細胞のいずれか(これに限定されるものではないがtMK、Hep2及びVero細胞が挙げられる)をアッセイに使用することができる。具体的な実施形態では、使用する細胞のタイプはHep2細胞である。
【0148】
中和アッセイも記載されている(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるBellerら, 1989, J Virol 63: 2941-2950参照)。簡潔に言うと、RSVを試験されるべき連続希釈の試薬(例えばFペプチド)の存在下で適当な時間インキュベートする。次いで、ウイルス−試薬の混合物を細胞単層に移し、適当な時間インキュベートする。その後、細胞を細胞病理学について顕微鏡で調査する。顕微鏡による観察は、グルタルアルデヒド−クリスタルバイオレット溶液による染色によって確認することができる。中和は対照サンプル(RSV及び細胞のみ)に存在するウイルスの細胞変性効果を95%超で阻害した最大試薬希釈の逆数として表すことができる。
【0149】
ELISAアッセイは、抗原を調製すること、96ウェルマイクロタイタープレートを該抗原でコーティングすること、酵素基質(例えばセイヨウワセビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)などの検出可能な化合物とコンジュゲートされた目的の抗体を該ウェルに添加すること、及び所与の時間インキュベートすること、並びに抗原の存在を検出することを含む。ELISAにおいて、目的の抗体は検出可能な化合物とコンジュゲートされる必要はない。その代わりに、検出可能な化合物とコンジュゲートされた二次抗体(目的の抗体を認識する)をウェルに添加し得る。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体をウェルにコーティングしてもよい。この場合、検出可能な化合物とコンジュゲートされた二次抗体は、目的の抗原をコートウェルへ添加した後に添加し得る。当業者は検出されるシグナルを増加させるために変更できるパラメーター並びに当該技術分野で公知のELISAの他の変形について理解するだろう。ELISAに関する更なる議論については、例えばAusubelら編集, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York at 11.2.1を参照されたい。抗原への抗体の結合親和性及び抗体−抗原相互作用のオフの速度(off-rate)は、競合結合アッセイによって測定することができる。競合結合アッセイの一例は、放射性免疫検定法であり、これは目的の抗体を標識した抗原(例えばH又は125I)と共に増加量の未標識抗原の存在下でインキュベートすること、及び標識抗原に結合した抗体を検出することを含む。RSV抗原に対する本発明の抗体の親和性及び結合のオフ速度は、Scatchardプロット分析によるデータから決定することができる。二次抗体との競合も放射性免疫検定法を用いて測定することができる。この場合、RSV抗原は標識化合物(例えばH又は125I)とコンジュゲートされた本発明の抗体と共に増加量の未標識の二次抗体の存在下でインキュベートする。好適な実施形態では、BIAコア速度論的分析を用いて、RSV抗原に対する抗体の結合のオン及びオフの速度を測定する。BIAコア速度論的分析は、チップ由来のRSV抗原のその表面上に固定化された抗体との結合及び解離を分析することを含む。
【0150】
BIAコア分析は、抗RSV抗体とRSV Fペプチドとの速度論的相互作用を、BIAコア1000、2000又は3000型装置(Biacore, Uppsala, Sweden)を用いた表面プラズモン共鳴によって測定することができる。精製した組換えの、C末端切断Fタンパク質は(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド)/N−ヒドロキシスクシンイミド活性化CM5センサーチップに低タンパク質密度で共有結合した(Johnssonら(1991) Anal. Biochem. 198, 268-277参照)。未反応の活性エステル基は1M エタノールアミンでブロックした。参照としての使用のために、BIAコア2000又は3000型装置を使用した際は、抗原を含まないブランクの表面を同一の固定化条件下で調製した。異なるFタンパク質のロットによって生じる結合の変動を最小にするために、大部分の抗体は同一のFタンパク質のロットに対して測定した。いくつかの場合では、異なるFタンパク質のロットを用いた際、抗RSV抗体へのその結合を、これらのロットが主に使用されるロットと類似した結合特性を有することを確認するための参照として用いた。HBS/Tween20バッファー(BIAコア)中0.2〜100nmの範囲の、精製した抗体の連続的な2倍希釈シリーズを、順に連結したFタンパク質及び参照細胞表面の上に注入した。各測定において、残存の抗体は100mM HClの短いパルスによってセンサーチップから除去した。結合曲線は、BIA評価プログラムを用いて1:1 Langmuir結合モデルと包括的に適合させた。このアルゴリズムはKon及びKoffの両者を算出する。見掛けの平衡解離定数Kは2つの速度定数の比(koff/kon)として推定した。
【0151】
Isothermal Titration Calorimetryアッセイ(ITC)が記載されている(例えばら, , 参照)。分子相互作用は化学量論及び2、3の熱力学パラメーターによって規定される。全ての結合反応は熱の吸収及び生成と関連付けられる。したがって、熱量測定は生物学的マクロ分子の相互作用を特徴付けるための第1の道具として挙げられている。ITCは単一の実験で平衡定数、エンタルピー及びエントロピーを測定する唯一の方法である。実験が異なる温度で実施される場合、重要なパラメーターである熱容量変化を測定することができる。ITCは、リガンドとレセプター分子との結合を調べるための標準的な方法となっている。したがって、リガンドはレセプターと混合され、その後、取り込み(又は結合)の熱が測定される。
【0152】
Fペプチド及び抗Fタンパク質結合体に関して、本発明は、一部にはその固有の治療プロファイル及び効力に基づいて、投与、用量、服用及び使用の新規の様式をさらに包含する。
【0153】
Fペプチド又は抗Fタンパク質結合体(例えば抗体)を主成分とするワクチン又は免疫原組成物の調製は当業者に公知である。ワクチン又は免疫原組成物は適当な担体又はアジュバントと、例えば必要又は所望であればミョウバン(alum)、と共に製剤化することにより、感染に対する有効な免疫処理を提供することができる。ワクチン製剤の調製は当業者に明らかである。
【0154】
より一般的には、そして当業者に周知の通り、適当な本発明の活性成分の量は治療用途に対して選択することができ、同様に適当な担体又は賦形剤、並びに投与経路を選択することができる。これらの要素は、治療されるべき症状の性質/重篤度、被験者のタイプ及び/又は健康状態などの公知の基準に従って選択又は決定される。
【0155】
別の実施形態では、本発明の産物は潜在的な抗菌薬(例えば抗体、融合タンパク質、小分子など)を同定するための、或いは毒性(virulence)を検出するためのスクリーニングアッセイで使用し得る。慣用のスクリーニングアッセイは当業者に公知であり、本発明の産物を適当な手段で用いることによって使用することができる。例えば、本発明の産物は、標的を不活性化するか又は該標的に結合する薬剤の能力を有し、潜在的な抗ウイルス活性を示す、潜在的な薬剤の標的として使用し得る。
【0156】
本発明の別の実施形態は、動物、好ましくはヒトにおいてRSVによる感染を検出するためのin vitro診断キットにおけるFタンパク質エピトープ、Fペプチド或いはFペプチド又はFタンパク質エピトープ結合体の使用を含む。一実施形態では、キットは本発明の抗体、好ましくは精製抗体を1以上の容器中に含む。具体的な実施形態では、本発明のキットは実質的に単離されたRSV抗原を対照として含む。好ましくは、本発明のキットは、RSV抗原と反応しない対照抗体をさらに含む。別の具体的な実施形態では、本発明のキットは、抗体とRSV抗原との結合を検出するための手段を含む(例えば抗体を蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物又は発光化合物などの検出可能な物質とコンジュゲートしてもよいし、或いは一次抗体を認識する二次抗体を検出可能な基質とコンジュゲートしてもよい)。具体的な実施形態では、キットは組換え的に作製した又は化学的に合成したRSV抗原を含んでもよい。キットで提供されるRSV抗原は、さらに固体支持体に結合されてもよい。さらに具体的な実施形態では、上記キットの検出手段は、RSV抗原が結合される固体支持体を含む。かかるキットはさらに、非結合レポーター標識抗ヒト抗体を含んでもよい。この実施形態では、RSV抗原への抗体の結合は、該レポーター標識抗体の結合によって検出することができる。
【0157】
投与方法
本発明は、RSV感染症に関連する1以上の症状を、被験者に本発明のFタンパク質エピトープ、或いは該ペプチド又は有効量の抗Fタンパク質エピトープ結合体若しくはそのフラグメントを含む組成物(例えば医薬組成物)、或いは抗Fタンパク質エピトープ結合体又はそのフラグメントを含む組成物(例えば医薬組成物)を投与することによって治療する、予防する及び改善する方法を提供する。好ましい態様では、本発明のFタンパク質エピトープ又は抗Fタンパク質エピトープ結合体若しくはそのフラグメントは実質的に精製されている(すなわち、その効果を制限するか又は所望でない副作用を生じさせる物質を実質的に含まない)。被験者は好ましくは非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えばカニクイザルなどのサル及びヒト)などの哺乳類である。好適な実施形態では、被験者はヒトである。別の好適な実施形態では、被験者はヒト幼児又は早産のヒト幼児である。別の実施形態では、被験者は嚢胞性繊維症、気管支肺異形成症、先天性心疾患、先天性免疫不全症又は後天性免疫不全症、骨髄移植されているヒト或いは高齢のヒトである。
【0158】
様々な送達システムが公知であり、本発明のFタンパク質エピトープ又は本発明の抗Fタンパク質エピトープ結合体、又はそのフラグメントを投与するために使用できる(例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセル中でのカプセル化、抗体又は抗体フラグメントを発現可能な組換え細胞、レセプター仲介エンドサイトーシス(例えばWu及びWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432参照)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築など)。本発明のFタンパク質エピトープ又はその断片、抗Fタンパク質エピトープ結合体又はそのフラグメント、或いはそのいずれか又は両者の医薬組成物を投与する方法として、これに限定されるものではないが、非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば鼻腔内及び経口経路)が挙げられる。具体的な実施形態では、本発明の抗Fペプチド結合体又はそのフラグメント或いはこれらを含む医薬組成物は、筋肉内、静脈内又は皮下に投与される。この組成物は便利な経路のいずれかによって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与してもよいし、他の生物学的活性物質と共に投与してもよい。投与は全身的又は局所的であることができる。さらに、例えば吸入器及びネブライザー、並びにエアロゾル化剤を含む製剤の使用により、肺投与を利用することもできる。例えば、それぞれ参照によりその全体を組み入れる米国特許第6,019,968号、5,985,320号、5,985,309号、5,934,272号、5,874,064号、5,855,913号、5,290,540号及び4,880,078号;並びにPCT公報WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903を参照されたい。好適な実施形態では、本発明の抗体又はそのフラグメント、或いは本発明の組成物は、Alkermes AIRTM 薬剤肺送達技術(Alkermes, Inc., Cambridge, Mass.)を用いて投与される。
【0159】
具体的な実施形態では、本発明の組成物は治療が必要な領域に局所的に投与されることが望ましいかもしれない。これは、例えば限定するものではないが、注射による局所注入によって、又は移植片(該移植片は多孔性、非多孔性、膜(シリコン膜など)を含むゲル状物質又は繊維である)を利用することによって達成し得る。本発明のペプチド又は抗体或いはそのフラグメントが投与されるとき、抗体又は抗体フラグメントを吸収しない物質を使用することに注意すべきである。
【0160】
別の実施形態では、本発明の組成物はビヒクル、特にリポソームで送達することができる(Langer,1990, Science 249:1527-1533; Treatら, Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein及びFidler (編集), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, 前記箇所, pp. 3 17-327; 全般的に前記箇所を参照)。
【0161】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は制御放出又は持続放出システムで送達することができる。一実施形態では、制御又は持続放出を達成するためにポンプを使用し得る(それぞれ参照により本明細書に組み入れるLanger, 前掲; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20; Buchwaldら, 1980, Surgery 88:507; Saudekら, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574参照)。別の実施形態では、ポリマー材料は本発明のFペプチド又は抗体或いはそのフラグメントの制御又は持続放出を達成するために使用することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer及びWise (編集), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen及びBall (編集), Wiley, N.Y. (1984); Ranger及びPeppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61参照;さらにLevyら, 1985, Science 228:190; Duringら, 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howardら, 1989, J. Neurosurg. 7 1:105); 米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開WO99/15154;及びPCT公開WO99/20253(これらの各特許及び刊行物は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。持続放出製剤に使用されるポリマーの例として、これに限定されるものではないが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)及びポリオルトエステルが挙げられる。好適な実施形態では、持続放出製剤に使用されるポリマーは不活性であり、漏出可能な不純物を含まず、保存に安定であり、無菌でありかつ生物分解性である。さらに別の実施形態では、制御又は持続放出システムは、治療標的(すなわち肺)付近に位置することができ、その結果、全身投与の小部分のみを要する(例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れるGoodson, 1984, Medical Applications of Controlled Release, 前掲, vol. 2, pp. 115-138参照)。
【0162】
本発明はさらに医薬組成物を提供する。かかる組成物は予防上又は治療上有効な量のFペプチド又はFペプチド結合体或いはそのフラグメント、並びに製薬上許容し得る担体を含む。具体的な実施形態では、「製薬上許容し得る」という用語は、連邦又は政府の規制当局により認可されているか、或いは米国薬局方又は動物(より具体的にはヒト)における使用のために一般的に認められる他の薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えばフロイントのアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、または治療薬を投与するためのビヒクルを指す。かかる製薬担体は、水及び油(例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物又は合成起源のものを含む)などの滅菌液であることができる。医薬組成物が静脈内に投与されるとき、水が好ましい担体である。食塩水、グルコース溶液及びグリセロール溶液も、特に注射可能な溶液用の液体担体として利用することができる。適当な製薬賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水及びエタノールなどが挙げられる。所望であれば、この組成物はさらに少量の湿潤剤又は乳化剤、或いはpH緩衝剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、持続放出製剤などの形態を採ることができる。経口製剤として、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を挙げることができる。適当な製薬担体の例はE. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。かかる組成物は、患者への適当な投与のための形状を提供するのに適当な量の担体と共に、予防上又は治療上有効量の抗体又はそのフラグメントを好ましくは精製形態で含む。この製剤は投与の様式に適するべきである。
【0163】
好適な実施形態では、本発明の医薬組成物はヒトへの静脈内投与に適合する医薬組成物として従来の手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は滅菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、この組成物は、可溶化剤及び注射部位の傷みを緩和するための局所麻酔(lignocamneなど)を含み得る。
【0164】
RSV感染症に関連する1以上の症状の治療、予防又は改善に有効な本発明の組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。例えば、RSV感染症に関連する1以上の症状の治療、予防又は改善に有効な組成物の用量は、該組成物をコトンラットに投与すること、10pfuのRSVによるコトンラットのチャレンジ後にRSV力価を測定すること、及びRSV力価を該組成物が投与されていないコトンラットについて得られたものと比較することによって決定することができる。したがって、10pfuのRSVでチャレンジされたコトンラットにおいて、10pfuのRSVでチャレンジされるが前記組成物が投与されないコトンラットに対する2対数(log)減少又は99%減少を生じる用量は、RSV感染症に関連する症状の治療、予防、又は改善のためにヒトに投与することができる組成物の用量である。RSV感染症に関連する1以上の症状の治療、予防又は改善に効果的な組成物の用量は、組成物を動物モデル(例えばコトンラット又はサル)に投与すること、及びFペプチドに特異的に結合する結合体(例えば抗体)又はそのフラグメントの血清力価を測定することによって決定することができる。さらに、場合により、最適な用量範囲の同定を手助けするためにin vitroアッセイを利用し得る。
【0165】
本発明は、上記方法で使用できるキットを提供する。一実施形態では、キットは本発明の抗Fタンパク質エピトープ結合体、好ましくは精製抗体を1以上の容器に含む。代替的な実施形態では、キットは抗Fタンパク質エピトープ結合体のフラグメントを含む。具体的な実施形態では、本発明のキットは実質的に単離されたRSV抗原(例えば本発明のFタンパク質エピトープ)を対照として含む。好ましくは、本発明のキットは、本発明のFタンパク質エピトープ又は他のRSV抗原のいずれかと反応しない対照抗体をさらに含む。
【0166】
別の具体的な実施形態では、本発明のキットは、結合体(例えば抗体)の本発明のFペプチドへの結合を検出するための手段を含む(例えば、抗体は蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物又は発光化合物などの検出可能な物質とコンジュゲートされてもよいし、或いは一次抗体を認識する二次抗体が検出可能な基質とコンジュゲートされてもよい)。具体的な実施形態では、このキットは組換え的に作製された又は化学的に合成された本発明のFタンパク質エピトープを含んでもよい。このキットで提供されるFタンパク質はさらに固体支持体と結合され得る。より具体的な実施形態では、上記キットの検出手段は、本発明のFタンパク質エピトープが結合される固体支持体を含む。かかるキットはさらに、非接着型のレポーター標識抗ヒト抗体を含んでもよい。この実施形態では、抗体のRSV抗原との結合は、該レポーター標識抗体の結合によって検出することができる。
【実施例】
【0167】
実施例1:RSVに対するモノクローナル抗体耐性突然変異体(MARM)の選別
Hep−2細胞を、抗RSVモノクローナル抗体、例えばSynagis(登録商標)(パリビズマブ)及び/又はNumaxTM(モタビズマブ)又はMEDI−524の存在下、24ウェルプレート中で、RSVで感染した。このウイルスはCPEを示すウェルからモノクローナル抗体の持続的な存在下で2回以上継代した。生じたプラークをモノクローナル抗体の存在下で2回精製した。このウイルスをモノクローナル抗体の存在下で増殖させてウイルスストックを作製した。ウイルス突然変異体の分析は、マイクロ中和アッセイ及びIFAによって実施した。最後に、突然変異Fタンパク質の配列を標準的な方法によって決定した。図2はSynagis(登録商標)(パリビズマブ)及びNumaxTM(モタビズマブ)の両者についてのMARM分析の結果を示す。272位のアミノ酸残基がリシン(K)からグルタミン酸(E)に改変したとき、Synagis(登録商標)及びNumaxTMはともに長らくRSVを中和した。272位で示された他の全ての変異体は、Synagis(登録商標)のRSVを中和する能力を排除するように思われるが、一方、NumaxTMはその中和能力を維持しているようである。さらに、272位の残基がリシン(K)からグルタミン(Q)に改変され、262位の残基がアスパラギン(N)からリシン(K)に改変された二重突然変異がRSV Fタンパク質中で作製されたとき、Synagis(登録商標)及びNumaxTMはいずれも、K272Qの単一突然変異がNumaxTM中和をノックアウトしたときにその中和能を失った。この結果は表3に要約される。262位及び272位の残基と接触する抗体が重要と思われる。
【表3】

【0168】
実施例2:Fペプチドの結合ELISA
一部には上記MARM分析の結果に基づいてFペプチドを合成した(AnaSpec, Inc. San Jose, CAにより行った)。このアッセイプレートの各ウェルは、ウェルあたり50mlの4mg/mLの特定の可溶性RSV Fペプチドで一晩、2〜8℃でコーティングした。このプレートを吸引し、PBS/0.05%Tween−20バッファーで洗浄した後、PBS/0.05%Tween−20/0.5%BSAバッファーと共に1時間、周囲温度でインキュベートすることによってブロックした。このプレートを洗浄し、MEDI−524標準曲線サンプル、試験サンプル、MEDI−524参照標準、及びネガティブコントロールを、洗浄したプレートに添加した。周囲温度で1時間のインキュベーション後、このプレートを洗浄し、ウェル当たり50mlのヤギ抗ヒトIgG−HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)(1:16,000希釈)をプレートに添加した。洗浄後、ウェル当たり100mlの3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)基質をプレートに添加し、光から保護しながら周囲温度で10分間インキュベートした。酵素反応は、ウェル当たり50mlの2N HSOを添加することによって停止させ、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。参照標準曲線の対数-対数(log-log)変換の勾配を、過去の参照標準勾配範囲と比較し、参照標準曲線に対する試験サンプル曲線の平行性(90%の信頼限界)を試験した。全てのシステム適合性要件に合致させ、かつ平行性試験の規準に合致させた後、参照標準に対する試験サンプルのED50比を算出し、その結果を参照標準結合活性の百分率として表した。図3は、この特定の結合ELISAの結果を示す。許容し得る活性は参照標準結合の50〜150%である。Fペプチドの262位で、アミノ酸がH−結合残基(野生型ではこの残基はグルタミンである)であることが好ましいと思われる。272位で、アミノ酸は正電荷のアミノ酸であることが好ましいと思われる。さらに、262位にヒスチジンを有するFペプチドは、野生型Fタンパク質エピトープ(配列番号1)よりも強固にNumaxTMと結合すると思われる。
【0169】
実施例3:BIAコア速度論的分析
全ての研究は、カルボキシメチル(CM)デキストランマトリックス及びBiacore(登録商標)3000型表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を具備するSensor Chip CM5(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を用いて実施した。
【0170】
NumaxTMはNumaxTMのFc部分とヤギ抗ヒトIgG(Fc)(KPL, Inc., Gaithersburg, MD)間の高親和性相互作用を介して捕捉した。ヤギ抗ヒトIgG(Fc)は、アミンカップリング化学を用いてCMデキストランマトリックスと共有結合させた。2種類の抗ヒトIgG(Fc)特異的表面を作製した。NumaxTMを、HBS−EPで10.9μg/mLに希釈し、抗ヒトIgG(Fc)表面の一方を横断するようにして5μL/分の流速で1分間流した。他方の抗ヒトIgG(Fc)表面は参照表面として用いた。FペプチドはHBS−EP(0.01M Hepes pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)で100nMの終濃度に希釈することによって調製した。Fペプチドは、連続流動様式で参照表面及びNumaxTM特異的表面を横断するようにして1分間注入された。結合したFペプチドの解離はHBS−EPの存在下で2分間モニターした。この解離期間後、NumaxTM及びFペプチドを10mMグリシン(pH1.7)(Biacore AB, Uppsala, Sweden)の30秒間注入により除去した。NumaxTMの除去により、各Fペプチドの注入前に新しいNumaxTM特異的表面を作製する必要があった。図4はその結果を示すグラフである。
【表4】

【0171】
実施例4:等温滴定熱量計(ITC)を用いた抗RSV抗体に対するFペプチドの結合特性の評価
ITC技術を用いることによってNumaxTM/MEDI−524に対する野生型ペプチド(配列番号28)の結合特性を評価した。MEDI−524 Mabを基礎バッファー(25mM His、pH6)中で配列番号28により10℃で滴定した。配列番号28:(MW=2732.14;W、Y又はCを有しない)。55μMの実施(working)溶液を、30μLの5mg/mLペプチド溶液をITC滴定に使用される970μLの25mM His pH6バッファーで希釈することによって調製した。MEDI−524の1.15μM(0.1706mg/ml)実施溶液をこの実験に使用した(MW148400、A280=1.47)。結果は以下の通りである:(a)結合強度は配列番号24のペプチドに比較して約3桁小さい;(b)1つの結合部位が検出された;(c)結合定数は4.36±0.5x10−1と決定された;(d)結合エンタルピーは4.8±0.1Kcal M−1と決定された;そして(e)化学量論:4。図5は、実験結果を経時的(分)に示すグラフである。
【0172】
MEDI−524 Mab及びMEDI−524 Fabフラグメントの、Fタンパク質配列から構築したFペプチドとの結合定数を取得するために、ITCを実施した。
【表5】

【0173】
この実験セットに関して、いずれも25mM His、pH6.07中の0.172gm/mL(1.16μM−148.4KDa)のMEDI−524 Mab及び0.088mg/mL(1.88μM−46.3 KDa)のMEDI−524 Fabを用いた。一方、HO中に溶解した250μLの異なる1mg/mLのペプチドはABCによって提供された。次いで、このペプチドを適当な量のバッファー中に希釈して50μMの終濃度とした。ITC実験は、上記細胞中でマクロ分子(Mab又はFab)を用いて、10μLのペプチドの約26回注入を360秒の間隔で一定に攪拌しながら行うことによって実施した。データの適合は、最後の2、3の注入の平均値を、バッファー及び不特定の希釈熱に起因するものとして、除算することによって達成した。
【0174】
結果:Mabは2つのFabセグメントを有することによって予測されるように2の結合能を示し、これは言い換えればフラグメント当たり1つのペプチド分子のみが結合する能力を示す。別の注目は、観察された結合能(N)がペプチドの長さにより増加する事実であり、これはおそらく結合事象における余分なコンホメーション因子を示す。エントロピー貢献:配列番号24及び26のペプチドに関して、エントロピー因子は類似していると思われる;N末端の最後の余分なアミノ酸は結合パラメーターに大きく影響していないと思われる。一方、C末端の伸長は、結合エンタルピー、結合定数並びにエントロピー因子をわずかに減少するように思われる。結合能は30merのペプチドが使用される場合(配列番号25及び26)、おそらくペプチド全体のより長い範囲に起因して、配列番号24のペプチドに比較して増加されると思われる。26merに対して30merのペプチドのいずれに関しても結合定数は小さく(弱く)なると思われる。エントロピー貢献は26mer〜30merのN末端ペプチド(配列番号26)からさほど変化しないため、おそらく結合の主な推進力が静電気であることを考えることができるが、30merのC末端ペプチド(配列番号25)に関して、エンタルピーとエントロピーの両者における減少は、より強力な疎水性効果が駆動する相互作用を導く可能性がある。
【表6】

【0175】
均等物
当業者は、本明細書に記載の発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識する、又は慣用の実験のみを用いて確認することができる。かかる均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されることを意図する。この明細書中で言及された全ての刊行物、特許及び特許出願(特に2005年9月21日に同時に出願された米国仮出願(代理人整理番号RS108P4))は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み入れられるべきことが具体的かつ個別に示されたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物におけるRSV感染症を予防する及び/又は改善する方法であって、配列番号1のFタンパク質エピトープと少なくとも80%の同一性を有するRSV Fペプチドを含む組成物を該動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記方法が受動免疫法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が能動免疫法である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下:
a.RSV Fペプチドを抗体又はそのフラグメントと接触させること;
b.抗体がRSV Fペプチドと特異的に結合したか否かを検出すること;及び
c.RSV Fペプチドと特異的に結合した抗体又はそのフラグメントを発現するクローンを回収すること
を含む、抗RSV抗体をスクリーニングする方法。
【請求項5】
RSV Fペプチドが配列番号1のRSV Fタンパク質エピトープと少なくとも80%の同一性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
RSV Fペプチドが以下の構造:
NSELαSLIβDMPITγDQKδLMεNN
[ここで、αはロイシン又はセリンのいずれかであり得る;βはアスパラギン、ヒスチジン、アラニン、セリン、アルギニン、アスパラギン酸、リシン、チロシン又はグルタミンであり得る;γはアスパラギン又はイソロイシンであり得る;δはグルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、トレオニン、メチオニン、リシン又はチロシンであり得る;そしてεはセリン、グルタミン酸又はフェニルアラニンであり得る]
を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
抗RSV抗体はパリビズマブ(palivizumab)、モタビズマブ(motavizumab)、又はマウスmAb47F及び7C2ではない、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
抗RSV抗体がa)キメラ抗体;b)ヒト化抗体;c)ヒト抗体;d)一本鎖抗体;e)Fabフラグメント;f)F(ab')フラグメント;g)一本鎖FvFc抗体;及びh)scFv−scFv−Fc抗体よりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
配列番号1のFタンパク質と少なくとも80%の同一性を有し、結合ELISAアッセイによって測定するとき、配列番号1のFタンパク質と比較して抗RSV抗体に対するより高い結合親和性を有する、RSV Fペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが以下の構造:
NSELαSLIβDMPITγDQKδLMεNN
[ここで、αはロイシン又はセリンのいずれかであり得る;βはアスパラギン、ヒスチジン、アラニン、セリン、アルギニン、アスパラギン酸、リシン、チロシン又はグルタミンであり得る;γはアスパラギン又はイソロイシンであり得る;δはグルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、トレオニン、メチオニン、リシン又はチロシンであり得る;そしてεはセリン、グルタミン酸又はフェニルアラニンであり得る]
を有する、請求項9に記載のRSV Fペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドがBSAにコンジュゲートされている、請求項9に記載のRSV Fペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドは標識されている、請求項9に記載のRSV Fペプチド。
【請求項13】
前記抗RSV抗体がモタビズマブ(motavizumab)である、請求項9に記載のRSV Fペプチド。
【請求項14】
請求項10に記載のRSV Fペプチドを含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項10に記載のRSV Fペプチドと特異的に結合する分子をスクリーニングする方法。
【請求項16】
前記分子はアプタマーである、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252023(P2011−252023A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180577(P2011−180577)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2007−533590(P2007−533590)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】