呼吸器管の治療及び予防のための方法、化合物、及び組成物
本発明は、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管における粘液量を低下させる方法を提供する。この方法は、対象に、シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを含む治療的有効量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を投与するステップを具える。この治療的有効量は、この化合物又は組成物を投与する前の粘液量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低下させる融合タンパク質の量を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援による研究開発
本発明は、米国保健社会福祉省、国立衛生研究所によって認められた、契約番号HHSN266200600015Cによる政府支援によってなされた。政府は、本発明に関して所定の権利を有する。
【0002】
優先権主張
本発明は、2009年11月6日に出願された米国暫定特許出願第61/259,033号、2009年11月6日に出願された米国暫定特許出願第61/259,055号、2010年4月9日に出願された米国暫定特許出願第61/322,813号、2010年5月6日に出願された米国暫定特許出願第61/322,063号、及び2010年9月9日に出願された米国暫定特許出願第61/381,420号の利益を主張するものであり、各々の出願の全内容は、ここに引用により組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
気道感染症(Respiratory tract infections,RTIs)は、最も良く見られる病気の一つであり、潜在的に、最も深刻なタイプの感染性疾患である。RTIsの例には、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSV、副鼻腔炎、耳炎、咽頭炎、気管支炎、及び肺炎、がある。
【0004】
呼吸器の病原菌など、RTIsを引き起こす病原体の共通する特徴の一つは、上気道の粘膜表面に片利共生的コロニーを形成することである。このようなコロニー形成は、感染に先立つものであり、一般的に感染の必須要件である。新生児における細菌定着は出生直後に生じる。一生の間、上気道、特に、鼻咽頭と中咽頭は微生物種のダイナミックな生態学的リザーバのままであり、連続的に取得され、除去され、再取得されている細菌を伴う。ほとんどの場合、咽頭の細菌叢は無害である。しかしながら、宿主の状態が変化すると、ある種の微生物が近くの組織又は血流に入り込んで疾患を引き起こすことがある。
【0005】
鼻咽頭と中咽頭は細菌とウイルスの両方による粘膜感染及び侵襲的感染の入口ポートとして作用するのに加えて、個人間の病原微生物が蔓延する主源でもあると同時に、抗生物質耐性細菌が選択されているリザーバでもある(Garcia−Rodriguez and Martinez,J Antimicrob Chemother,(2002)50(Suppl S2),59−73;Soriano and Rodriguez−Cerrato,J.Antimicrob Chemother,(2002)50 Suppl S2,51−58)。気道感染しやすい人は、病原菌の持続性かつ再発性キャリアである傾向にある(Garcia−Rodriguez and Martinez,J Antimicrob Chemother,(2002)50(Suppl S2),59−73;Mbaki et al.,Tohoku J Exp.Med.,(1987)13(2),111−121)。例えば、ヘリコバクター・ピロリは、胃炎と消化性潰瘍にかかわるヒト病原体である。この細菌は、ヒトの胃に存在し、胃前庭部の上皮細胞に付いている。
【0006】
その他の呼吸器管疾患(より広い用語では、RTDs)は、感染性因子によっては生じないが、感染症の結果として生じることがある。RTDsの例には、アレルギー性あるいは非アレルギー性ぜん息、COPD、気管支拡張症、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、嚢胞性線維症(CF)など、様々な閉塞性肺疾患が含まれる。RTDsには、遺伝学的なものがあり(例えば、CF)、免疫疾患により生じることがあり、その他の疾患によって生じることがあり(例えば、α−1−アンチトリプシン疾患は人を気管支拡張症にかかりやすくすることがある)、アレルゲン及び/又は化学汚染物質によって生じることがあり、あるいは、上述したRTIsなどの他の感染性疾患、あるいは炎症性腸疾患又はクローン病などの炎症性疾患の合併症としてとして生じることもある。
【0007】
RTIsとRTDsの共通の兆候には、炎症と、気道内の高い粘液レベルを挙げることができる。しかしながら、RTIsとRTDsの治療にしばしば用いられている現在入手可能な薬剤は、これらの関連症状を改善することができない。例えば、Relenza(登録商標)は、インフルエンザの良く知られた治療薬であるが、ぜん息やCOPDなどの根本的な気道疾患を患っている患者には推奨されない。従って、気道の炎症を抑え及び/又は粘液を抑える、あるいはその上昇を制限する薬剤が必要とされていることに加えて、患者のぜん息、気管支炎、気管支拡張症、及びCOPDといった、根本的な気道疾患を悪化させることなく、インフルエンザ、パラインフルエンザ及びRSVなどの気道感染性疾患を治療できる薬剤が求められている。
【0008】
本発明は、医療用に現在入手可能な薬剤は、炎症を抑える、及び/又は、気道内の粘液を抑える、あるいは、気道内でのその増加を制限することに関する効能が制限されており、入手可能な薬剤は副作用があることを認識している。本発明はまた、ぜん息、気管支炎、気管支拡張症、及びCOPDなどの根本的な気道疾患を持つ患者の気道感染性疾患を治療する薬剤が求められていることを認識している。従って、炎症を抑えることができる、及び/又は気道内の粘液を抑えるあるいは気道内におけるその増加を制限することができる新規薬剤が求められている。また、炎症を低減しながら、及び/又は、気道内の粘液を抑えながらあるいは気道内におけるその増加を制限しながら、気道感染性疾患を治療できる薬剤が求められている。
【発明の概要】
【0009】
以下に述べる化合物、組成物及び方法は、様々な組成成分、調合ステップ、及び生物物理学的、物理的、生化学的、あるいは化学的パラメータによって特徴づけられる。当業者には自明であるように、ここに提供されている組成物と方法には、以下に述べる成分、ステップ、及び/又はパラメータのあらゆる置換と組み合わせが含まれる。
【0010】
本発明は、呼吸器管内の抗炎症効果を有する治療用化合物及び組成物の使用、及び、気道の炎症の治療方法及び気道の炎症の予防方法に関する。本発明は、限定するものではないが、アレルギィ又はアレルギィ反応によって引き起こされたものではない炎症を含めて、気道炎症によって引き起こされた、気道炎症を引き起こす、あるいは気道炎症によって悪化した疾患を予防又は治療するのに使用することができる治療用化合物及び組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、呼吸器管内の粘液レベルが高い対象の気道内の粘液量を低減させる治療用化合物及び組成物の使用、及び対応する治療方法に関する。本発明はまた、気道内の粘液レベルがベースラインを超えている対象の気道内の粘液量の増加を制限する治療用化合物と組成物の使用、及び対応する治療方法に関する。本発明は、また、アレルギィ性及び非アレルギィ性ぜん息の両方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎(急性及び慢性の両方)、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞(mucus plugging)、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性ぜん息、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、吸入した真菌胞子に対するアレルギィ反応、呼吸器感染、気道閉塞、アンモニア及びその他の毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、アルコール依存症、様々なアレルギィ及び、気道における粘液生成を高める、あるいは、気道における高くなった粘液生成によって引き起こされた又はこれらによって引き起こされたその他の疾患、等といった、気道中の高い粘液レベルによって引き起こされる、悪化した症状及び/又は疾患を予防又は治療するのに使用することができる治療用化合物及び組成物に関する。いくつかの実施例では、対象が上述した症状及び/又は疾患の一又はそれ以上を有している。その他の実施例では、上述した症状及び/又は疾患を一又はそれ以上有する対象が、インフルエンザ、パラインフルエンザ、あるいはRSVなどの、付随する感染性疾患(RTI)は持っていない。その他の実施例では、上述した症状及び/又は疾患を一又はそれ以上有する対象が、インフルエンザ、パラインフルエンザ、あるいはRSVなどの、付随する感染性疾患(RTI)を持っている。従って、ここには、RTI、RTD、又はこれらの組み合わせに関連する炎症及び/又はアレルギィ反応を治療する方法、化合物及び組成物が提供されている。
【0012】
ここで用いられている化合物と組成物は、呼吸器管の粘液産生を低下させ、及び/又は、限定するものではないが、単球、マクロファージ、樹枝状細胞、組織球、クッパー細胞、マスト細胞、及び好中球を含む、アレルギィ性炎症又は非アレルギィ性炎症を引き起こす炎症細胞レベルを低下させる。
【0013】
ここで用いられている化合物と組成物は、シアリダーゼ又はその有効成分を含む。いずれの理論にも縛られることなく、シアル酸は、RTIs及びRTDsに関連するアレルギィ反応及び/又は炎症反応に関係している。例えば、シグレック(siglecs)(シアル酸結合Ig様レクチン)は、シアル酸に結合する免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリィの員であり、造血系の細胞によって主に発現する。少なくとも11のシグレックが発見されており、これらは排他的に細胞表面のシアル酸をリガンドとして認識するように見える。シグレックとシアル酸との結合は、細胞間粘着と相互作用を仲介すると考えられる(Crocker and Varki,Trends Immunol.,(2001)22(6),337−342;Angata and Brinkman−Van der Linden,Boichim.Biophys.Acta,(2002)1572(2−3),294−316)。シグレック−8(SAF−2)は、アレルギィ性鼻炎、ぜん息、湿疹を含むアレルギィ性症状の主要なエフェクター細胞である、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞の表面に非常に限定されている接着分子である。シグレック−8(マウスのシグレック−Fに対応する)は、気道、肺、及びその他のアレルギィ部位に対する3つのアレルギィ性細胞タイプの回復を仲介する働きをすると考えられる。シグレック−1(シアロアドヘシオン)とシグレック−2(CD22)は、マクロファージとB細胞上の接着分子であり、両方の分子タイプが炎症の原因となる免疫反応において主要な役割を果たす。シグレック−9は、好中球に主に発現し、炎症に重要なエフェクター細胞であることが知られている(von Gunten,Yousefi,Seitz,Jakob,Schaffner,Seger,Takala,Villiger,and Simon(2005)Blood 106:1423−1431)。更に、特定の理論に縛られることなく、シアル酸残渣は、ムスカリン受容体のアゴニストとの相互作用に関連しており、従って、シアリダーゼは、ムスカリン受容体とそのアゴニストとの相互作用に影響する。
【0014】
本発明は、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる方法を提供する。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量の融合タンパク質と、アンカードメインを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この有効治療量には、この組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量がある。
【0015】
別の実施例では、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる別の方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この融合タンパク質は、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12を含むアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低下させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0016】
別の実施例では、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量のタンパク質又はペプチドを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させるタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0017】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼの触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0018】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する別の方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。融合タンパク質は、シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0019】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有するタンパク質又はペプチドを有効治療量含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させるタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0020】
別の実施例では、対象の呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液の増加を制限する方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼの触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量が含まれる。
【0021】
別の実施例では、呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液量の増加を制限する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分及びアンカードメインを有する有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量が含まれる。
【0022】
更に別の実施例では、呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液の増加を制限する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量のタンパク質又はペプチドを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限するタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0023】
また、本明細書に述べられている化合物又は組成物によるシアリダーゼ又はその有効成分を同定する方法も本発明で意図されており、ここで、シアリダーゼ又はその有効成分は、対象の呼吸器管における粘液量の低減に有効である。粘液の低減は、当業者に公知である標準アッセイで直接的に測定できる。例えば、いくつかの実施例では、単一の化合物又は、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性部分を含む化合物又は組成物のライブラリィ又は集合が、モルモットや実施例1及び実施例2に記載されているマウスといった、炎症反応を伴うぜん息の動物モデルに投与される。動物にぜん息状態又はその他の炎症状態を作り出し、これによって、肺又は呼吸器管における粘液の蓄積が増える。従って、粘液レベルが定量され、シアリダーゼ又はその有効成分による治療を行った後のレベルと比較される。シアリダーゼ又はその有効成分の存在下で粘液レベルの低減がある場合、このシアリダーゼ又はその有効成分が、粘液の過剰生産といった、炎症、アレルギィ性及び/又は関連する炎症/アレルギィ反応を治療するための本明細書に記載の方法に使用できるものとして同定あるいは選択される。
【0024】
いくつかの実施例では、本明細書に提供されている化合物又は組成物によるシアリダーゼ又はその有効成分は、当業者に公知の標準的な方法によって、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を止める能力を測定することによって、炎症、アレルギィ又はそれに関連する反応の治療に適しているものとして同定される。例えば、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性部分を含む化合物又は組成物が、
(a)動物対象のムスカリン受容体を、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性成分を含む化合物又は組成物に接触させること;
(b)ムスカリン受容体アゴニストを対象に投与すること;
(c)対象の気道抵抗を定量すること;
(d)(c)で測定した気道抵抗レベルを、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗と比較すること;
(e)この化合物又は組成物が、当該化合物又は組成物と接触していない気道抵抗に対して気道抵抗を低減させているかどうかを同定すること;及び
(f)前記化合物又は組成物が(e)で決定したように気道抵抗を低減させている場合は、対象の気道における粘液量を低下させるものとして、評価すること(このような方法は実施例3に例示されている);
によって、この化合物又は組成物を対象の呼吸器管における粘液量を低下させるかどうかを判定する方法が提供されている。
【0025】
特に規定がない限り、ここに用いられている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。本発明に用いるための方法と材料が記載されているが、この分野で公知のその他の好適な方法と材料を用いることもできる。この材料、方法、実施例は説明のためだけのものであり、制限することを意図するものではない。全ての公報、特許出願、特許、配列、データベース登録、およびここに記載したその他の引用は、全体が引用により組み込まれている。コンフリクトが生じた場合は、定義を含めてこの明細書に従うものとする。
【0026】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明と図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、4つのヒト遺伝子のGAG−結合配列:PF4、ヒト血小板因子4;IL8、ヒトインターロイキン8;ATIII、ヒト抗トロンビンIII;ApoE、ヒトアポリポタンパク質E;AAMP、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質;ヒトアンフィレギュリン;を示す。
【図2】図2は、ヒトシアリダーゼNEU2とNEU4(SEQ ID No.8及び9)の配列の比較を示す。
【図3】図3は、細菌性シアリダーゼと菌性シアリダーゼの基質特異性を比較した表である。
【図4】図4は、pTrc99aへのクローニングに用いるHis6−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.28及び29)を太字で示す。
【図5】図5は、pTrc99aへのクローニングに用いるAR−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の別の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.18及び19)を太字で示す。
【図6】図6は、pTrc99aへのクローニングに用いるAR−G4S−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の別の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.36及び37)を太字で示す。
【図7】図7A及び7Bは、組み換えAR−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質の局所投与がインフルエンザA(H1N1)ウイルスに感染したフェレットの炎症反応を低下させることを示すグラフである。図7Aは、感染後、表示した時間に感染動物から採取した鼻洗浄サンプルからの炎症細胞総数を示す。タンパク質濃度は、感染したフェレットの無細胞鼻洗浄サンプルで測定した。感染フェレットは、ビヒクル処理を行う(スクエア)か、又は、Construct #2(トライアングル)でできた組み換えAr−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質で処理した。非感染動物も、組み換えAr−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質(ダイアモンド)で処理した。統計的に有意な値には、*(p<0.05)と**(p<0.01)で標識した。
【図8】図8は、意識のある非拘束動物の気管支収縮の測定に使用されるパラメータである、エンハンスドポーズ(PENH)の式と説明を示すグラフを提供している。
【図9】図9は、OVA−噴霧器に反応した初期のぜん息反応を示すグラフを提供している。結果は、スチューデントt−検定を用いて、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図10】図10は、その日のセクションにおけるテンジクネズミの細胞総数を示すグラフを提供している。結果は、スチューデントt−検定を用いて、相加平均±SEM.*p<0.01、***p<0.001として表わす。
【図11】図11は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収したマクロファージ総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.**p<0.01として表わす。
【図12】図12は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収したリンパ球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05として表わす。
【図13】図13は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収した好中球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図14】図14は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収した好酸球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図15】図15は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果のMch48mg/mLのときの、Penh増減率を示すグラフである。
【図16】図16は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果のMch濃度範囲におけるPenh増減率を示すグラフである。
【図17】図17は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の血中好酸球を示すグラフである。
【図18】図18は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の肺粘液用PAS染色を示すグラフである。
【図19】図19A乃至19Fは、肺粘液用PAS染色を示す。
【図20】図20は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の好酸球用MBP免疫染色を示すグラフである。
【図21】図21A及び21Bは、低用量DAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図22】図22は、低用量DAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図23】図23は、DAS181で鼻腔内を処理した(カルバコール誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図24】図24は、低用量DAS185で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図25】図25は、DAS185でもたらされた気道抵抗の低減(メタコリン誘発試験)の時間的経過を示すグラフである。
【図26】図26は、非常に低用量のDAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【0028】
様々な図面における同様の符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、例えば呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液を低下させるための、特に、米国特許出願第10/718,986号及び10/939,262号(両方とも、ここに全体が引用により組み込まれている)に記載された化合物の新規使用方法を提供するものである。いくつかの実施例では、本開示は、粘液レベルを低下させる必要があり、インフルエンザ又はぜん息にかかっていない(例えば、治療時にインフルエンザに感染していない)対象の粘液(例えば、粘液レベル)を低下させる組成物及び方法を提供している。
【0030】
いくつかの実施例では、この組成物は、NexBio Inc.社によって製造された、化合物名DAS181及び商標Fludase(登録商標)(ここでは、SEQ ID No.21)を含む。DAS181は、シアリダーゼの触媒ドメインと、アンカードメインを含む融合タンパク質である。ここに述べた例のいくつかは、DAS181又は、DAS181を含む組成物を使用している。
【0031】
定義
特に定義がなされていない限り、本明細書で用いている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されている意味と同じ意味を持つ。一般的に、本明細書で使用した用語体系と以下に述べる製造法又は検査法は公知であり、この分野で通常使用されている。従来の方法は、この分野と一般的基準において提供されているこれらの手順に使用されている。用語が単数で使用されている場合は、本発明者らは、その用語の複数も意図している。引用によって組み込まれている文献で使用している用語と定義に相違する場合は、本出願で使用されている用語は、ここで用いられている定義に従う。この開示全体を通じて用いられているように、特に記載がない限り、以下の用語は、以下の意味をもつものと解される。
【0032】
ここで使用されているように、「対象」には、診断、スクリーニング、モニタ、あるいは治療が意図されているあらゆる動物が含まれる。動物には、霊長類や家畜と言った哺乳動物が含まれる。例示的な霊長類はヒトである。患者とは、ある病状がみられる、あるいは、ある病状を見つける、又は、ある病状のリスクを見つける、哺乳類、霊長類、ヒト又は家畜と言った対象を意味する。
【0033】
いくつかの実施例では、本明細書に開示された方法が、粘液レベルを低下させる必要があり、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のうちの一又はそれ以上に感染していない対象を選択するステップを具える。いくつかの場合、感染した又は感染という用語は、対象の中にインフルエンザ又はパラインフルエンザウイルス又はRSVが存在することを意味する。いくつかの場合、感染した又は感染という用語は、活性又は複製インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルス及び/又はRSVが対象の中に存在することを意味する。いくつかの実施例では、活性又は複製インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルス及び/又はRSV感染を伴う対象を、対象における(例えば、対象からのサンプル中の)インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルスの排出及び/又はRSVの排出の存在又は検出に基づいて選択することができる。いくつかの実施例では、本明細書に開示した方法は、粘液レベルの低下が必要な対象を選択するステップであって、この対象が潜在的なインフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又はRSV感染している、ステップを具えていてもよい。
【0034】
本明細書で用いている「動物モデル」とは、その生体構造、生理、あるいは反応(例えば、病原体又はアレルゲンに対する)において、対象となる疾病あるいは症状と十分に似た症状を呈している、その疾病あるいは症状に似ている、あるいはその疾病あるいは症状を再現しており、対象となる疾病あるいは症状に外挿できる(例えば、診断あるいは治療薬のスクリーン、化合物又は組成物の治療効果を調べる、その他)医学研究に有益である動物を意味する。例えば、テンジクネズミとマウスは、実施例1及び実施例2に示すように、ぜん息に関連する炎症反応及び/又はアレルギィ反応を呈する動物モデルである。マウスは、ムスカリン受容体とそのアゴニストとの相互作用と、本明細書に記載されている化合物及び組成物(実施例3を参照)などの薬剤によるその崩壊を研究する動物モデルにすることもできる。
【0035】
「病原菌」とは、細胞、組織、又は器官に感染するウイルス又は微生物である。病原菌はウイルス、細菌、又は原生動物であっても良い。
【0036】
「標的細胞」とは、病原菌又は炎症細胞と相互作用する細胞、あるは組み換えウイルスによって伝達された外来遺伝子の目的地である宿主細胞に感染した細胞である。
【0037】
「炎症細胞」とは、免疫系の炎症反応を行うあるいはこれに関連する細胞である。炎症細胞としては、Bリンパ球、Tリンパ球、マクロファージ、好塩基球、好酸球、肥満細胞、NK細胞、単球、好中球がある。
【0038】
「炎症細胞の接着又は機能を抑制する細胞外活性」とは、炎症細胞の標的細胞との接触を防止し、標的細胞の正常な生理学的状態への影響を妨げるあらゆる活性である。
【0039】
「細胞外アンカードメイン」、あるいは単純に「アンカードメイン」とも呼ばれる、「標的細胞膜へ少なくとも一の治療ドメインを固定するドメイン」とは、細胞表面の外側にある、あるいは、細胞表面に近接近している部分に安定して結合できる化学物質を意味する。細胞外アンカードメインは、可逆的にあるいは非可逆的に、一又はそれ以上の治療ドメインなどの一又はそれ以上の部分に結合することができ、これによって、一又はそれ以上の付着した治療部分を真核細胞の外側表面に、あるいはこれに近接近して保持させる。細胞外アンカードメインは、標的細胞の表面の少なくとも一の分子、あるいは標的細胞と密接に関連する一又はそれ以上の分子に結合できる。例えば、細胞外アンカードメインは、標的細胞の細胞膜に共有結合したあるいは非共有結合した分子に結合することができ、あるいは、標的細胞を囲む細胞外マトリックスに存在する分子に結合することができる。細胞外アンカードメインは、ペプチド、ポリペプチド、あるいはタンパク質であっても良く、一又はそれ以上の追加のタンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、有機小分子、ポリマ、脂肪、ステロイド、脂肪酸、糖質、又はこれらの組み合わせを含む、追加の化学物質を含んでいても良い。
【0040】
ここで用いられているように、タンパク質又はペプチド配列は、基準配列と同一であるか、一又はそれ以上のアミノ酸欠失、一又はそれ以上の追加アミノ酸、あるいは一又はそれ以上の保存的アミノ酸置換がある場合、基準配列に「実質的相同」であり、基準配列と同じ、又は、ほぼ同じ活性を維持する。同類置換は、以下の5つの群のうちの一つの交換として定義できる:
I. 小さい、脂肪族の、極性のない又は若干極性のある残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
II. 極性の、負に帯電した残基及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln
III.極性の、正に帯電した残基:His、Arg、Lys
IV. 大きい、脂肪族の、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys
V. 大きい、芳香族の残基:Phe、Try、Trp
【0041】
上述の群において、以下の置換が「非常に保存的である」と考えられる:Asp/Glu、His/Arg/Lys、Phe/Tyr/Trp、及びMet/Lue/Ile/Val。半同類置換は、上述の(I)、(II)及び(III)を含む超群(A)に、及び上述の(IV)及び(V)を含む超群(B)に限定される、上述の群(I)乃至(IV)のうちの二つの群間の置換であると定義される。更に、疎水性アミノ酸がこの出願で特定されている場合は、これは、アミノ酸Ala、Gly、Pro、Met、Lue、Ile、Val、Cys、Phe、及びTrpを意味し、一方、親水性アミノ酸は、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Lys、及びTyrを意味する。
【0042】
「シアリダーゼ」は、基質分子からシアル酸残基を除去する酵素である。シアリダーゼ(N−acylneuraminosylglycohydrolases,EC 3.2.1.18)は、シアロ複合多糖からシアル酸残基を加水分解で除去する一群の酵素である。シアル酸は、9炭素骨格を有するα−ケト酸であり、通常、糖タンパク質あるいは糖脂質に付着するオリゴサッカライド鎖の最も外側に見られる。主なシアル酸の一つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)であり、これは、その他のほとんどのタイプのシアル酸の生合成前駆体である。基質分子には、非限定的な例として、オリゴ糖、多糖、糖タンパク質、ガングリオシド、あるいは合成分子がある。例えば、シアリダーゼは、シアル酸残基と残りの基質分子との間のα(2,3)−Gal、α(2,6)−Gal、α(2,8)−Galリンケージを有する結合を開裂する。シアリダーゼは、また、シアル酸残基と残りの基質分子との間のいずれかのあるは全ての結合を開裂することができる。Neu5Acと、炭水化物鎖の最後から二番目のガラクトース残基との間の二つの主なリンケージは、天然に存在するNeu5Acα(2,3)−GalとNeu5Acα(2,6)−Galである。Neu5Acα(2,3)−Gal分子とNeu5Acα(2,6)−Gal分子は両方とも、インフルエンザウイルスに受容体として結合するが、ヒトウイルスは、Neu5Acα(2,6)−Galを好み、鳥ウイルスと、ウマウイルスは、圧倒的にNeu5Acα(2,3)−Galに結合する。シアリダーゼは、天然に存在するシアリダーゼであっても、加工シアリダーゼ(アミノ酸配列が、天然のシアリダーゼ配列にほぼ相同である配列を含めて、天然のシアリダーゼの配列に基づくシアリダーゼに限定されない)であっても良い。ここに用いられているように、「シアリダーゼ」は、天然のシアリダーゼの有効成分を、あるいは、天然のシアリダーゼの有効成分に基づく配列を含むペプチド又はタンパク質を意味している。
【0043】
「融合タンパク質」は、少なくとも二つの異なる源由来のアミノ酸配列を含むタンパク質である。融合タンパク質は、天然のタンパク質由来の、あるいは、天然のタンパク質の全てあるいは一部にほぼ相同のアミノ酸配列を含んでいても良く、これに加えて、異なる天然のタンパク質の全てあるいは一部由来のあるいはこれにほぼ相同の、一乃至非常に多数のアミノ酸を含むものでも良い。代替的に、融合タンパク質は、天然のタンパク質由来の、あるいは天然のタンパク質の全てあるいは一部にほぼ相同のアミノ酸配列を含んでおり、これに加えて、一乃至非常に多数の合成配列のアミノ酸を含むものでも良い。
【0044】
「シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質」は、シアリダーゼの触媒ドメイン、あるいは、シアリダーゼの触媒ドメインにほぼ相同のアミノ酸配列を含むが、その触媒ドメインが由来しているシアリダーゼの全アミノ酸配列を含まないタンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、触媒ドメインが由来しているシアリダーゼの完全なものとほぼ同じ活性を維持している。シアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、シアリダーゼ由来ではないアミノ酸配列を含んでいても良いが、そうでなくても良い。シアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、一又はそれ以上のその他の既知のタンパク質のアミノ酸由来のアミノ酸配列、あるいはこれとほぼ相同のアミノ酸配列を含んでいても良く、あるいは、その他の既知のタンパク質のアミノ酸配列に由来しないあるいはこれとほぼ相同でない一又はそれ以上のアミノ酸を含んでいても良い。
【0045】
「有効治療量」とは、組成物又は化合物を単回投与形で対象に投与した時に、所望の治療的、予防的、あるいはその他の生理学的効果又は反応を得るのに必要な量の組成物又は化合物の量を意味する。特定量の組成物又は化合物は、その組成物又は化合物の性質、治療を受けている状態の性質、対象の年齢や、サイズ、といった状態によって大きく変わる。
【0046】
「治療」とは、疾患、障害、又は疾病の一又はそれ以上の症状が改善される、あるいは有益に変化するあらゆる方法を意味する。治療は、呼吸器管の粘液を低下させるなど、ここにいう組成物又は化合物の薬学的使用にも及ぶ。
【0047】
「呼吸器管」とは、鼻から肺胞への気道を意味し、鼻、のど、咽頭(pharynx
)、咽頭(larynx)、気管、及び気管支を含み、更に、肺も含む。呼吸器管は医師には呼吸器系と呼ばれることがある。
【0048】
「吸入器」とは、鼻又は口を経由して吸入する(自然にあるいは機械によって強制的に肺に吸い込ませる)スプレィ又は乾燥粉体の形で薬剤を投与する装置を意味し、限定することなく、受動又は能動人工呼吸器(器官内チューブ付き、あるいは無しの、機械的な)、噴霧器、乾燥粉体吸入器、定量吸入器、及び加圧定量吸入器を含む。
【0049】
「吸入抗原」とは、鼻又は口を通って吸入される物質である。
【0050】
「粘液量の低下」とは、すべてあるいはいくらか、一般的に、あるいは、本明細書に述べた組成物又は化合物の投与前の量に比べて呼吸器管中の粘液量が5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%又はそれ以上少なくなることである。「粘液量の低減」は、また、例えば、聴診による、MRI又はその他の放射線学的検査による、気管支鏡又はその他の視覚化装置を用いた直接視覚化による、又は時間をかけた患者の粘液測定による、といった観察を行うことができる何らかの医療器具を用いて医療関係者が観察できる量の粘液量の低下を意味する。「粘液量の低下」は、また、患者又は対象自身が、例えば、時間の経過に伴って吐いたあるいは呑みこんだ粘液量をモニタする、又は時間の経過に伴って肺のうっ血感を主観的に観察する、といった自身の報告あるいは自身の観察によって観察できる量の粘液量の低下を意味する。
【0051】
「粘液量の増加制限」とは、本明細書に述べた組成物及び化合物が投与されなかった場合より、投与後の呼吸器管における粘膜量が増えないことを意味する。「粘液量の増加制限」とは、また、本明細書に述べた組成物及び化合物の投与後の呼吸器管における粘液量が、これらの組成物及び化合物の投与後に増えないことも意味する。「粘液量の増加制限」は、また、化合物又は組成物の投与を行った時の、例えば、聴診による、MRI又はその他の放射線学的検査による、気管支鏡又はその他の視覚化装置を用いた直接視覚化による、又は時間をかけた患者の粘液測定による、といった観察を行うことができる何らかの医療器具と分析システムを用いて医療関係者が観察できる又は確かめることができる量の、患者のベースラインを超える増加を制限することを意味する。「粘液量の増加制限」は、また、患者又は対象自身が、例えば、時間の経過に伴って吐いたあるいは呑みこんだ粘液量をモニタする、又は時間の経過に伴って肺のうっ血感を主観的に観察する、といった自身の報告あるいは自身の観察によって観察できる量の、化合物又は組成物の投与を行った時の、患者のベースラインを超える増加を制限することを意味する。
【0052】
本明細書で用いられている「賦形剤」は、薬物の有効成分のキャリアとして、単独であるいは組み合わせて使用される一又はそれ以上の不活性物質又は化合物を意味する。ここで用いられる「賦形剤」は、また、その有益な効果を向上する又は有効成分との相乗効果を有する医薬組成物を含む、一又はそれ以上の物質又は化合物を意味しても良い。
【0053】
ペプチド又はタンパク質ベースの化合物
本発明は、ペプチド又はタンパク質ベースの化合物であって、真核細胞膜にこの化合物を固定できる少なくとも一のドメインと、治療ドメインである少なくとも一の追加のドメインを含む化合物を含む。「ペプチド又はタンパク質ベースの」化合物によって、この化合物の二つの主なドメインがあるアミノ酸構造を有し、このアミノ酸がペプチド結合によって結合することを意味する。ペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、アンカードメインのアンカリング活性に寄与する部分、あるいは、治療ドメインの治療活性に寄与する部分を含む、このアミノ酸構造又は骨格に付着したその他の化合物又は化学基を有することができる。例えば、本発明に用いられているタンパク質ベースの治療薬は、限定するものではないが、炭水化物、脂肪酸、脂質、ステロイド、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸分子、核酸類似体、ペプチド核酸分子、小有機分子、あるいはポリマなどの化合物及び分子を含むものでも良い。本発明のタンパク質ベースの治療薬は、改質アミノ酸、あるいは非天然アミノ酸を含んでいても良い。この化合物の非アミノ酸部分は、限定するものではないが、化合物の純化を進める、化合物(治療製剤中のものなど)の溶解度あるいは分布を改良する、化合物のドメインを結合するあるいは化合物の化学的部分を結合する、化合物の二次元あるいは三次元構造に寄与する、化合物の全サイズを大きくする、化合物の安定性を上げる、化合物のアンカリング活性又は治療活性に寄与することを含む、あらゆる目的に作用する。
【0054】
本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、アンカードメイン又は治療ドメインを含む化合物に加えて、タンパク質又はペプチド配列も含んでいても良い。この追加のタンパク質配列は、限定するものではないが、上述の目的を含めて、あらゆる目的に作用する(化合物の純化を進める、化合物の溶解度あるいは分布を改良する、化合物のドメインを結合するあるいは化合物の化学的部分を結合する、化合物の二次元あるいは三次元構造に寄与する、化合物の全サイズを大きくする、化合物の安定性を上げる、又は化合物のアンカリング活性又は治療活性に寄与する)。いずれの追加のタンパク質又はアミノ酸配列も、アンカードメイン及び治療ドメインを含む単一のポリペプチド又はタンパク質鎖の一部であっても良く、タンパク質配列の適当な構成は、本発明の範囲内にある。
【0055】
アンカードメイン及び治療ドメインは、標的細胞膜で、あるいはその近傍で化合物を結合させる適宜の方法で配置することができる。化合物は、少なくとも一のタンパク質又はペプチドベースのアンカードメインと、少なくとも一のペプチド又はタンパク質ベースの治療ドメインを有している。この場合、これらのドメインは、ペプチド骨格に沿って任意の順序で直線的に配置することができる。アンカードメインは、治療ドメインのN−末端であってもよく、あるいは、治療ドメインのC−末端であっても良い。また、各端部における少なくとも一のアンカードメインが横にある一又はそれ以上の治療ドメインを有していても良い。代替的に、一又はそれ以上のアンカードメインの横に、各端部にある少なくとも一の治療ドメインがあってもよい。化学リンカー又はペプチドリンカーを選択的に用いて、化合物のいくつかのドメインあるいは全てのドメインを結合することもできる。
【0056】
ドメインを非直線状の、枝分かれした構造で有することも可能である。例えば、治療ドメインを、アンカードメインを含むあるいはこれに結合しているポリペプチド鎖の一部であるアミノ酸の誘導体化側鎖に付着させることができる。
【0057】
本発明の化合物は、一以上のアンカードメインを有していても良い。ある化合物が一以上のアンカードメインを有している場合、このアンカードメインは同じであっても、異なるものであっても良い。本発明の化合物は、一以上の治療ドメインを有していても良い。化合物が一以上の治療ドメインを有している場合、この治療ドメインは同じであっても、異なるものであっても良い。化合物が複数のアンカードメインを含む場合は、このアンカードメインは、直列に配置されていても良く(リンカーで、あるいはリンカーなしで)、あるいは、治療ドメインなどのその他のドメインの片側に配置されていても良い。化合物が複数の治療ドメインを含む場合、この治療ドメインは、直列に配置されていても良く(リンカーで、あるいはリンカーなしで)、あるいは、限定するものではないが、アンカードメインなどのその他のドメインの片側に配置されていても良い。
【0058】
本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、天然のタンパク質を生成すること、選択的に、このタンパク質をタンパク質分解性開裂させて所望の機能ドメインを得ること、および、機能ドメインをその他の機能ドメインへ結び付けることを含む、適宜の方法で作ることができる。ペプチドは、化学的に合成された、あるいは選択的に、その他のペプチド又は化学部分に化学的に結合したものでもよい。本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、核酸構造体を操作して、少なくとも一のアンカードメインと少なくとも一の治療ドメインを連続するポリペプチド内で互いにエンコードする(核酸リンカーを用いて、あるいは用いることなく)ことによって製造することができる。核酸構造体は、適宜の発現配列を有するいくつかの実施例では、原核細胞又は真核細胞へ形質移入し、治療タンパク質ベースの化合物は、この細胞によって発現し、純化できる。所望の化学的部分は、選択的には、純化した後のペプチド又はタンパク質ベースの化合物に選択的に連結できる。いくつかの場合は、タンパク質ベースの治療薬の好ましい翻訳後の改変を実行する能力(グリコシル化などであるが、これに限定されない)を発現するように細胞株を選択することができる。
【0059】
様々な構造体を設計して、そのタンパク質は所望の活性についてそのタンパク質製品を試験することができる(例えば、アンカードメインの活性を結合する、あるいは、治療ドメインの結合、触媒、あるいは治療ドメインの抑制能力、など)。
【0060】
アンカードメイン
本明細書で用いられているように、「細胞外アンカードメイン」又は「アンカードメイン」は、標的細胞の外側表面にあるいはその上にある、又は標的細胞の外側表面の近接近にある物質に安定的に結合できる部分である。アンカードメインは、標的細胞の外側表面において、あるいはその近傍に本発明に使用している化合物を保持する働きをする。
【0061】
細胞外アンカードメインは、1)標的細胞の表面に発現した分子、あるいは標的細胞の表面に発現した分子の部分、ドメインあるいは、エピトープに、2)標的細胞の表面に発現した分子に付着している化学物質に、あるいは、3)標的細胞周辺の細胞外マトリックスの分子に、結合できる。
【0062】
アンカードメインは、ペプチド又はタンパク質ドメイン(修飾されたあるいは誘導体化されたペプチド又はタンパク質ドメインを含む)であっても良く、あるいは、ペプチド又はタンパク質に結合した部分を含んでいても良い。ペプチド又はタンパク質に結合した部分は、標的細胞表面にあるいはその近傍にある物質へのアンカードメインの結合に寄与するどのようなタイプの分子であってもよく、いくつかの実施例では、例えば、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小有機分子、ポリマ、脂質、ステロイド、脂肪酸、炭水化物、あるいはこれらの組み合わせと言った、有機分子である。
【0063】
アンカードメインによって結合している分子、複合体、ドメイン、あるいはエピトープは、標的細胞に特異的であっても良く、特異的でなくても良い。例えば、アンカードメインは、標的細胞上に又はこの近接近の分子に存在するエピトープに結合することができ、これは、標的細胞近傍以外の部位でも生じる。しかしながら、多くの場合、本発明の治療化合物の局所的送達が、その発生を主に標的細胞の表面に制限する。その他の場合では、アンカードメインによって結合した分子、化合物、部分、ドメイン、あるいはエピトープは、標的細胞又は標的細胞タイプに特異的であっても良い。
【0064】
標的組織又は標的細胞タイプは、病原体が侵入する又は増幅する動物又はヒトの身体内の部位を含む。例えば、標的細胞は、病原体が感染し得ることがある上皮細胞であっても良い。本発明で使用した組成物は、例えば、上皮細胞タイプに特異的である細胞表面エピトープに結合できるアンカードメインを具えていても良い。別の例では、標的細胞が上皮細胞であり、本発明の組成物が多くの上皮細胞タイプの細胞表面に存在する、あるいはタイプの異なる上皮細胞の細胞外マトリックスに存在するエピトープを結合することができる。この場合、組成物の局所的送達が、病原体の標的である上皮細胞部位への局所化を制限することができる。
【0065】
本発明に使用されている化合物は、上皮細胞表面にあるいはその近傍に結合できる一又はそれ以上のアンカードメインを有していても良い。例えば、へパリンに近いヘパラン硫酸は、細胞膜上に偏在的に存在するグリコサミノグリカン(GAG)タイプであり、気道上皮表面を含む。へパリン/ヘパラン硫酸に特異的に結合した多くのタンパク質と、これらのタンパク質中のGAG−結合配列は、同定されている(Meyer,FA,King,M and Gelman,RA.(1975)Biochimica et Biophysica Acta 392:223−232;Sshauer,S.ed.,pp233.Sialic Acids Chemistry,Metabolism and Function.Springer−Verlag,1982)。例えば、ヒト血小板因子4(PF4)(SEQ ID No.2)のGAG−結合配列、ヒトインターロイキン8(IL8)(SEQ ID No.3)、ヒト抗トロンビンIII(ATIII)(SEQ ID No.4)、ヒトアポタンパク質E(ApoE)(SEQ ID No.5)、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)(SEQ ID No.6):又は、ヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)(図1)が、ヘパリンに対して非常に高い親和性(ナノモル範囲の)を持つことがわかっている(Lee,MK and Lander,AD.(1991)Pro Natl Acad Sei USA 88:2768−2772;Goger,B,Halden,Y,Rek,A,Mosl,R,Pye,D.Gallagher,J and Kungl,AJ(2002)Biochem.41:1640−1646;Witt,DP and Lander AD(1994)Curr Bio 4:394−400;Weisgraber,KH,Rall,SC,Mahley,RW,Milne,RW and Marcel,Y.(1986)J Bio Chem 261:2068−2076)。これらのタンパク質のGAG−結合配列は、これらの受容体−結合配列と異なっており、従って、これらは全長タンパク質又は受容体−結合ドメインに関連する生理学的活性を誘発しない。これらの配列、あるいはヘパリン/ヘパラン硫酸結合配列として同定された、あるいは将来同定されるであろうその他の配列、あるいは、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合活性を有する同定されたヘパリン/ヘパラン硫酸結合配列とほぼ相同の配列を、本発明に用いる化合物中の上皮−アンカードメインとして用いることができる。
【0066】
アンカードメインは、特定種の標的細胞タイプに特異的な部分に結合できる、あるいは、一又はそれ以上の種の標的細胞タイプに見られる部分に結合できる。
【0067】
治療ドメイン
本発明に用いている化合物は、少なくとも一の治療ドメイン又は有効成分を含み、これらの用語は明細書内で同じように使用されている。治療活性は、非限定的な例として、結合活性、触媒活性、あるいは抑制活性である。治療ドメインは、標的細胞又は標的器官の機能を修飾する、あるいは、抑制できる。化合物の有効成分は治療活性を有する。例えば、シアリダーゼの触媒ドメイン又は有効成分は、その治療ドメインでありうる。
【0068】
治療ドメインは、細胞外で作用できる、すなわち、細胞外マトリックス、細胞内空間、又は組織の管腔内スペース内の部位を含む、標的細胞においてあるいは標的細胞周囲の中間領域において、感染防止、炎症反応調整、形質導入強化活性が行われる。
【0069】
治療ドメインは、ペプチド又はタンパク質ドメイン(修飾又は誘導体化ペプチド又はタンパク質ドメインを含む)であっても良く、ペプチド又はタンパク質に結合した部分を含む。ペプチド又はタンパク質に結合した部分は、どのようなタイプの分子でも良く、いくつかの実施例では、例えば、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小有機分子、ポリマ、脂質、ステロイド、脂肪酸、炭水化物、あるいはこれらの任意の組み合わせといった、有機分子である。
【0070】
治療ドメインは、合成ペプチド又はポリペプチドであっても良く、ペプチド又はポリペプチドに結合できる合成分子を含んでいても良く、天然ペプチド又はタンパク質、又は天然タンパク質のドメインであっても良い。治療ドメインはまた、天然ペプチド又はタンパク質にほぼ相同であるペプチド又はタンパク質であってもよい。
【0071】
リンカー
本発明で使用している化合物は、選択的に、この化合物のドメインに加えることができる一又はそれ以上のリンカーを具えていても良い。リンカーは、化合物のドメインの最適なスペース又は折りたたみを提供するのに使用できる。リンカーによって結合された化合物のドメインは、治療ドメイン、アンカードメイン、あるいは化合物の安定性を強化する、純化を容易にする、その他といった追加の機能を提供する化合物のその他のドメイン又は部分であってもよい。本発明の化合物のドメインを結合させるのに使用するリンカーは、化学リンカーであっても良く、又はアミノ酸又はペプチドリンカーであっても良い。化合物が一又はそれ以上のリンカーを含む場合、これらのリンカーは、同じ又は異なる。化合物が一又はそれ以上のリンカーを含む場合、これらのリンカーは、同じ又は異なる長さである。
【0072】
様々な組成物、極性、反応性、長さ、柔軟性、開裂可能性が様々である多くの化学リンカーが、有機化学の分野で公知である。好ましいリンカーは、アミノ酸又はペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーは、この分野では良く知られている。いくつかのリンカーの実施例は、1乃至約100アミノ酸長の間であり、1乃至約30アミノ酸長の間であるが、本発明の化合物のリンカーに長さの制限はない。このリンカーアミノ酸配列は、本発明で用いている化合物と組成物の粘液低減及び/又は抗炎症活性を妨げないように選択することができる。リンカーのいくつかの実施例は、アミノ酸グリシンを含むものがある。例えば、配列:(GGGGS(SEQ ID No.10))を有するリンカーを用いて、本発明で使用する治療化合物のドメインに結合できる。ここで、nは1乃至20、あるは1乃至12の整数である。
【0073】
少なくとも一のアンカードメインと少なくとも一の触媒活性を具える組成物
いくつかの態様では、本発明は、酵素活性を持つ治療ドメインを有する化合物を使用することができる。この酵素活性は、宿主分子又は複合体を除去する、分解する、あるいは修飾する触媒活性である。いくつかの実施例では、宿主分子又は複合体は、標的細胞の表面、その上、あるいはその近傍にある本発明の化合物の酵素活性によって除去し、分解し、あるいは修飾することができる。
【0074】
本発明に用いている化合物は、例えば、以下の構造のうちの一つを有していても良い:
(アンカードメイン)n−[リンカー]−(酵素活性)n(n=1,2,3,又はそれ以上);又は、
(酵素活性)n(n=1,2,3,又はそれ以上)−[リンカー]−(アンカードメイン)n、
ここで、リンカーは任意である。
【0075】
酵素活性は、モノマー型のペプチド又はポリペプチドであってもよく、直接リンクしているか、間に間隔配列を置いてリンクしている同じポリペプチドの複数コピーであっても良い。このポリペプチド又はペプチドは、直接リンクしていても良く、あるいはペプチドリンカー配列からなるスペーサを介してリンクしていても良い。アンカードメインは、標的細胞の表面に結合できるあるいは表面近くに結合できるペプチド又はポリぺプチドである。
【0076】
一の実施例では、治療ドメインは上皮細胞表面上のシアル酸レベルをなくす、あるいは大幅に減少させることができるシアリダーゼを含む。治療ドメインは、完全なシアリダーゼタンパク質、又はその有効成分を含んでおり、ここで、その有効成分が、シアリダーゼタンパク質の触媒機能(例えば、シアル酸残基の開裂)を行う能力を維持している。
【0077】
シアル酸は、炎症細胞と標的細胞との間の細胞粘着と相互作用を仲介する。従って、呼吸上皮細胞表面をシアリダーゼで処理することで、炎症細胞が気道表面への炎症細胞の漸増を防止することができ、従って、ぜん息とアレルギィ性鼻炎を含むアレルギィ反応を治療することができる。また、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を予想外に減らすことになり、呼吸器管における粘液ベースラインを越える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する。
【0078】
本明細書に記載した方法に使用することを意図したシアリダーゼは、受容体シアル酸Neu5Acα(2,6)−GalとNeu5Aα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌性シアリダーゼである。例えば、Clostridium perfringens (Genbnak Accession Number X87369),Actinomyces viscosus,Arthrobacter ureafaciens,又は、Micromonospora viridifaciens(Genbank Accession Number D01045)からの細菌性シアリダーゼ酵素を使用することができる。本発明の化合物の治療ドメインは、大きな細菌性シアリダーゼのアミノ酸配列の全て又は一部を含むものでも良く、あるいは、大きな細菌性シアリダーゼのアミノ酸配列の全て又は一部にほぼ相同であるアミノ酸配列を含むものでも良い。一の好ましい実施例では、治療ドメインが、SEQ ID No.12のシアリダーゼや、又は、SEQ ID No.12にほぼ相同のシアリダーゼ配列などの、Actinomyces viscosusでコードされたシアリダーゼを含む。更に別の好ましい実施例では、治療ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274−667から伸長するActinomyces viscosusシアリダーゼの触媒ドメインを含む。
【0079】
本明細書に記載された方法に使用することを意図したその他のシアリダーゼは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002)Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼなどの、ヒトシアリダーゼである。本発明に使用する化合物の治療ドメインは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部を含んでいても良く、あるいは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部にほぼ相同であるアミノ酸配列を含んでいても良い。治療ドメインが天然に存在するシアリダーゼのアミノ酸配列の一部を含む、あるいは、天然に存在するシアリダーゼのアミノ酸配列の一部にほぼ相同である配列を含む場合、この一部は、ヒトシアリダーゼと実質的に同じ活性を有していても良い。
【0080】
呼吸器管中の高レベルの粘液を低下させる化合物は、いくつかの実施例では、上皮細胞表面にあるいはその近傍に結合できる一又はそれ以上のアンカードメインを有していても良い。いくつかの実施例では、上皮細胞のアンカードメインは、例えば、ヒト血小板因子4(PF4)(SEQ ID No.2)のGAG−結合アミノ酸配列、ヒトインターロイキン8(IL8)(SEQ ID No.3)、ヒト抗トロンビンIII(ATIII)(SEQ ID No.4)、ヒトアポタンパク質E(ApoE)(SEQ ID No.5)、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)(SEQ ID No.6)、及びヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)、といった、ヒトタンパク質からのGAG−結合配列である(図1)。上皮細胞アンカードメインは、図1に挙げられているもののように、天然のGAG−結合配列と実質的に相同であっても良い。このようは化合物は、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注入可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。
【0081】
このような化合物を含む医薬組成物を用いて、アレルギィ反応又は炎症反応を治療又は防止することができる。更に、呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低減させ、呼吸器管中の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する、化合物が明細書中に示されている。従って、このような化合物は、呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低減させる治療法として、あるいは、呼吸器管中の粘液のベースラインを超える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する予防的治療として、使用することができる。呼吸器管中の粘液に対するこれらの効果により、これらの化合物は、呼吸器管中の粘液レベルが高い、あるいは、呼吸器管中の粘液レベルが高くなるリスクのある対象における、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、の影響を防止する、治療する、あるいは改善するのに使用することができる。
【0082】
また、(a)呼吸器管におけるアレルギィ反応と炎症反応を治療あるいは防止する、(b)呼吸器管における粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低下させる、(c)呼吸器管における粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する、及び/又は(d)呼吸器管中の粘液レベルが高い、あるいは、呼吸器管中の粘液レベルが高くなるリスクのある対象における、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症の影響を防止する、治療する、あるいは改善するために、本明細書で述べたいずれかのもののような、ヒトシアリダーゼ、又はその有効成分を含む化合物又は組成物、あるいは、シアリダーゼに実質的に相同である化合物を、アンカードメインなしで使用することも本発明の範囲内である。本発明は、呼吸器管中の高い粘液レベルを、シアリダーゼ又はシアリダーゼの有効成分の使用によって低減できる旨、及び、このようなシアリダーゼ又はその有効成分を、遺伝子工学あるいは化学工学によって、又は製薬処方によって選択的に適合させて、その半減期又は呼吸上皮における滞留を改善できることを認識している。
【0083】
これらの化合物及び医薬組成物は、鼻スプレィとして上気道に送達する、あるいは吸入器を用いた吸入として呼吸器管に送達することができる。
【0084】
本明細書に記載した化合物は、様々な追加の化合物を単独で、又は、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な組み合わせで含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0085】
少なくとも一のシアリダーゼ活性を含む治療組成物
本発明は、少なくとも一のシアリダーゼ活性を含む医薬化合物及び組成物を用いる方法を含む。シアリダーゼ活性は、例えば、細菌又は哺乳類の源、といった何らかの源から分離したシアリダーゼ、あるいは、天然のシアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である遺伝子組み換えタンパク質であってもよい。いくつかの実施例では、シアリダーゼは、大きな細菌シアリダーゼであり、受容体シアル酸である、Neu5Acα(2,6)−Gal及びNeu5Acα(2,3)−Galを分解することができる。例えば、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Actinomyces viscosus (Genbank Accession No.L06898)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいは実質的に相同のタンパク質由来の細菌シアリダーゼ酵素を使用することができる。
【0086】
例えば、本発明で使用している医薬化合物及び組成物は、大きな細菌シアリダーゼを含むものでも良く、あるいは、大きな細菌シアリダーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質を含むものでも良く、あるいは、大きな細菌シアリダーゼのアミノ酸配列に実質的に相同であるアミノ酸配列を含むものでも良い。本発明で使用している医薬組成物は、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)を含む、あるいは、A.viscosusシアリダーゼに実質的に相同であるタンパク質を含む。
【0087】
本明細書に記載されている組成物、化合物及び方法に使用できるその他のシアリダーゼは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession No.Y16535;Monti,E,Preti,Rossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomcs 57:137−143)と、遺伝子NEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession No.NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani G.(2002)Neurochem Res 27:646−663)(図2)によってコードされたものなどの、ヒトシアリダーゼである。本発明の化合物の治療ドメインは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列に実質的に相同であるヒトシアリダーゼタンパク質を含んでいても良く、あるいは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部に実質的に相同であるアミノ酸配列を含んでいても良い。治療ドメインが天然シアリダーゼのアミノ酸配列の一部を、あるいは、天然シアリダーゼのアミノ酸配列の一部に実質的に相同である配列を含む場合、この部分が、例えば、シアリダーゼの有効成分であるヒトシアリダーゼと実質的に同じ活性を有していても良い。
【0088】
一般的に、呼吸上皮細胞で、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−Gal及びNeu5Acα(2,3)−Galの両方を有効に分解できるシアリダーゼを使用することができる。シアリダーゼは、高等真核生物や、ウイルス、細菌、及び原生動物を含むほとんどの病原菌微生物に見られる。ウイルスシアリダーゼ及び細菌シアリダーゼは、特徴的であり、これらのシアリダーゼのいくつかは三次元構造が分かっている(Crennell,SJ,Garman,E,Laver,G,Vimr,E and Taylor,G.(1994)Structure 2:535−544;Janakiraman,MN,White,CL,Laver,WG,Air,GM and Luo,M.(1994)Biochemistry 33:8172−8179;Pshezhetsky,A,Richard,C,Michaud,L,Igdoura,S,Wang,S,Elsliger,M,Qu,J,Leclerc,D,Gravel,R,Dallaire,L and Potier,M.(1997)Nature Genet 15:316−320)。いくつかのヒトシアリダーゼは、近年クローンされている(Milner,CM,Smith,SV,Carrillo MB,Taylor,GL,Hollinshead,M and Campbell,RD.(1997)J Bio Chem 272:4549−4558;Monti,E,Pret,A,Nesti,C,Ballabio,A and Borsani G.1999.Glycobiol 9:1313−1321;Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J 349:343−351)。シアリダーゼの有効成分を含むDAS181もクローンされている。
【0089】
全ての特徴的なシアリダーゼは、タンパク質によって3乃至5回繰り返した後ろにAspボックスモチーフが続くアミノ末端部分において、4つのアミノ酸モチーフを共有している(Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Robini,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001)Protein Sci 10:285−292)。 シアリダーゼスーパーファミリィの全アミノ酸相同性が約20−30%と比較的低い場合に、分子の全折りたたみ、特に触媒アミノ酸の折りたたみが著しく似ている(Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,a,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J 349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001) Protein Sci 10:285−292)。
【0090】
シアリダーゼは、一般的に二つのファミリィに分けられる。「小さい」シアリダーゼは、分子量が約42kDaであり、最大活性化に二価金属イオンが不要であり;「大きい」シアリダーゼは、分子量が約65kDaであり、活性化に二価金属イオンを要する(Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Biochem J 349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001)Protein Sci 10:285−292)。
【0091】
15を超すシアリダーゼタンパク質が精製され、これらは基質特異性と酵素反応速度によって大きく異なる。大きい細菌シアリダーゼは、ほとんどの天然物質との関連で、(α、2−6)リンケージと(α、2−3)リンケージの両方において、シアル酸を効率良く開裂させることができる(図4;Vimr,DR.(1994)Trends Microbiol 2:271−277;Drzeniek,R.(1973)Histochem J5:271−290;Roggentin,P,Kleineidam,RG and Schauer,R.(1995)Biol Chem Hoppe−Seyler 376:569−575;Roggenti,P,Schauer,R,Hoyer,LL and Vimr,ER.(1993)Mol Microb 9:915−921)。この広い基質特異性によって、大きな細菌シアリダーゼは、優れた候補になる。
【0092】
図4は、既知の基質特異性を持ついくつかの大きい細菌シアリダーゼを示す。これらの酵素は、高比放射能であり(C.perfringensでは600U/mgタンパク質(Corfield,AP,Veh,RW,Wember,M,Michalski,JC and Schauer,R.(1981)Bichem J 197:293−299)及びA.viscosusでは680U/mgタンパク質(Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443))、二価金属鉄なしで完全に活性であり、E.Coliからの組み換えタンパク質としてクローン化され精製されている(Roggentin,P,Kleineidam,RG and Schauer,R.(1995)Biol Chem Hoppe−Seyler 376:569−575,Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443,Sakurada,K,Ohta,T and Hasegawa,M.(1992)J Bacteriol 174:6896−6903)。更に、C.perfringens は、2乃至8℃の溶液中で数週間安定であり、アルブミン存在下で4℃では2年以上安定である(Wang,FZ,Akula,SM,Pramod,NP,Zen,L and Chandran,B.(2001)J Virol 75:7517−27)。A.viscosus は、凍結と解凍に対して不安定であるが、4℃で、0.1Mアセテート緩衝液中で、pH5で安定である(Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443)。
【0093】
シアリダーゼを含む医薬組成物は、限定するものではないが、やはり治療活性を有するその他のタンパク質を含むその他の化合物を含むものでも良い。シアリダーゼを含む医薬組成物は、組成物の安定性、溶解性、パッケージ性、送達性、濃度、味、あるいは香りを強化するその他の化合物を含むものでも良い。
【0094】
シアリダーゼを含む化合物は、鼻、気管、気管支、経口、又は局所投与用に調整することができる、あるいは、注射溶液あるいは点眼液として調整することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に調整し、吸入器を用いて吸入することができる。本明細書に記載したシアリダーゼは、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロース又はその類似体など、様々な追加の化合物を含む医薬製剤に調整することができる。
【0095】
これらのシアリダーゼ、又はシアリダーゼを含む医薬組成物を用いて(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、又は呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器官の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。いくつかの実施例では、呼吸器官における粘液レベルが高い対象は、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のうちの一又はそれ以上を有する対象を含まない。
【0096】
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド
ここで用いているように、「シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド」は、シアリダーゼの触媒ドメインを含むが、この触媒ドメインを取り出すシアリダーゼのアミノ酸配列全てを含むものではない。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドはシアリダーゼ活性を有する。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、この触媒ドメイン配列を取り出すシアリダーゼの活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%を有する。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、この触媒ドメイン配列を取り出すシアリダーゼの活性の少なくとも90%を有していても良い。
【0097】
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、限定するものではないが、追加のシアリダーゼ配列、その他のタンパク質から取り出した配列、又は、天然のタンパク質の配列から取り出したものではない配列など、その他のアミノ酸配列を有していても良い。追加のアミノ酸配列は、触媒ドメインタンパク質に対するその他の活性に寄与する、シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質の発現、処理、折りたたみ、あるいは安定性を強化する、あるいは、タンパク質又はペプチドの所望のサイズ又はスペースを提供することを含む、多数の機能のいずれかを行うことができる。
【0098】
好ましいシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインを含むタンパク質である。A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸270−667を含む。A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸270からアミノ酸290までのアミノ酸のいずれかで開始し、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸665からアミノ酸901までのいずれかで終端し、アミノ酸1からアミノ酸269に延びるA.viscosusシアリダーゼタンパク質配列を欠いている、アミノ酸配列を含むものでよい。(ここで用いられているように、「アミノ酸1からアミノ酸269に伸長するA.viscosusシアリダーゼタンパク質配列を欠いている」とは、これらのアミノ酸が指定のタンパク質又はアミノ酸配列に発現するときに、4又はそれ以上の連続するアミノ酸の伸張を欠くことを意味する。)
【0099】
いくつかの実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸274−681を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。その他の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至666又は290乃至667を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸274乃至666を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至666又は290乃至667を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至681を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。
【0100】
このようなシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注入可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。本明細書に述べたシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な追加の化合物を含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、単独で、あるいはNa2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体などの様々な組み合わせで、医薬組成物に含めるようにしても良い。これらの追加の化合物は、これらの医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0101】
このようなシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド又は、これらを含む医薬組成物は、(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器官の粘液レベルが高い対象の呼吸器官の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器官の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、又は呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器管の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。
【0102】
融合タンパク質
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質は、融合タンパク質であっても良く、ここでは融合タンパク質が少なくとも一のシアリダーゼ触媒ドメインと、限定するものではないが、精製ドメイン、タンパク質タグ、タンパク質安定化ドメイン、可溶化ドメイン、タンパク質サイズ増大ドメイン、タンパク質折りたたみドメイン、タンパク質局在化ドメイン、アンカードメイン、N−末端ドメイン、C−末端ドメイン、触媒活性ドメイン、結合ドメイン、あるいは触媒活性強化ドメインを含む、その他のタンパク質ドメインのうちの少なくとも一のその他のドメインを有する。少なくとも一のその他のタンパク質ドメインは、限定するものではないが、別のタンパク質からの配列といった、別の源から取り出すことができる。少なくとも一のその他のタンパク質ドメインは、既知のタンパク質配列に基づくものである必要はないが、融合タンパク質の機能を実行するように設計され、経験的に試験されたものでよい。
【0103】
精製ドメインは、非限定的な例として、ヒスチジン標識、カルモジュリン結合ドメイン、マルトース結合タンパク質ドメイン、ストレプタビジンドメイン、ストレプタビジン結合ドメイン、インテインドメイン、あるいはキチン結合ドメインのうちの一又はそれ以上を含んでいても良い。タンパク質表示器は、例えば、myc標識、血球凝集素標識、又はFLAG標識などの、タンパク質検出抗体として使用できる配列を含むものでも良い。タンパク質の発現、修飾、折りたたみ、安定性、サイズ、又は局在化を強化するタンパク質ドメインは、既知のタンパク質又は合成されたタンパク質の配列に基づくものでも良い。その他のタンパク質ドメインは、結合又は触媒活性を有していても良く、シアリダーゼの触媒ドメインの触媒活性を強化するものでも良い。
【0104】
本発明の組成物、化合物及び方法に使用されている融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼ触媒ドメインと少なくとも一のアンカードメインを含む。いくつかの実施例では、アンカードメインは、GAG−結合ドメイン又はヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)などのGAG−結合ドメインを含む。
【0105】
本発明に使用されている融合タンパク質のシアリダーゼ触媒ドメインとその他のドメインは、限定するものではないが、ペプチドリンカーなどのリンカーによって選択的に結合することができる。この分野では、様々なペプチドリンカーが知られている。一の実施例では、リンカーが、G−G−G−G−S(SEQ ID No.10)などのグリシンを含むペプチドリンカーである。
【0106】
このような融合タンパク質は、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注射可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。これらの融合タンパク質は、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な追加の化合物を単独で、又は組み合わせで含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0107】
これらを含むこのような融合タンパク質又は医薬組成物を用いて、(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器官の粘液レベルが高い対象の呼吸器官の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器官の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器管の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。
【0108】
融合タンパク質の様々な構成が図4乃至6、並びにここに提供されている配列リストに挙げられた配列に示されている。
【0109】
炎症を伴う疾病を治療するための、化合物及び組成物を試験する方法、及び/又は、シアリダーゼ及び/又はその有効成分を同定するスクリーニング方法
本明細書に提供されている化合物及び組成物は、当業者に公知の標準的アッセイを用いて、炎症、アレルギィ、粘液の過剰生産などに伴う反応を低減する活性を試験することができる。炎症又は粘液の過剰生産を測定するには、いくつかの細胞ベース(例えば、気管細胞培養)及び動物ベース(マウスモデル、テンジクネズミモデル)のアッセイが知られている(例えば、Nakao et al.,J.Immunol.,180:6262−6269(2008);Westerhof et al.,Mediators Inflamm.,10(3):143−154(2001);Miller et al.,J.Immunol.,170:3348−3356(2003);Nakanishi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98(9):5175−5180(2001);and Dubuske,Allergy Prc.,16(2):55−58(1995)を参照。各文献の内容は、全体が引用によってここに組み込まれている)。ここで提供されている化合物と組成物について、これらのアッセイ又は当業者に知られているその他の標準アッセイで、炎症又は粘液に過剰生産を低減する能力を試験することができる。更に、シアリダーゼ又はその有効成分を、その抗炎症活性及び/又は、粘液の過剰生産などの関連する反応をこのようなアッセイを用いて低減する能力について、同定し、及び/又は、選択することができる。例示的なアッセイとプロトコルが、実施例1及び実施例2に述べられている。
【0110】
炎症又は、粘液の過剰生産などの関連する反応を測定するアッセイに加えて、本明細書に提供されている化合物及び組成物は、ムスカリン受容体を妨害する能力を評価することによって、すなわちアゴニストの存在下で信号を伝達することによって、その活性を試験することができる。ムスカリン受容体、又は、mAChRsは、所定の神経細胞とその他の細胞の血漿膜中に見られるGタンパク質に結合したアセチルコリン受容体である。この受容体は、副交感神経系の節後繊維から放出されたアセチルコリンによって刺激を受けた主な末端受容体としての作用を含め、いくつかの役割を果たす。
【0111】
ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用と、その結果としての信号伝達は、喘息やCOPD(例えば、“Muscarinic Receptors in Airways Diseases,”Birkhause−Verlag publ.,Zangsma et al.,Eds.を参照)炎症反応及び/又はアレルギィ反応に関連する疾病においてある役割を果たすと考えられる。
【0112】
特に、アセチルコリンメカニズムは、以下の正常な呼吸機能及び病原性呼吸機能に影響を与えると認識されている:
1.粘液の分泌、
2.気道上皮を通る粘液線毛輸送中のイオンの能動輸送、
3.気道の平滑筋緊張、
4.気道の免疫反応及び炎症反応、
5.気道の反射調節、
6.喘息及びその他の呼吸器管の過敏状態における気道の呼吸反応。
【0113】
結果的に、所定の抗ムスカリン剤が:(a)アセチルコリンによって誘発される気管支収縮;(b)βブロッカーによって誘発される医原性気道痙縮;及び(c)心因性気管支痙攣;に有効であった。抗ムスカリン剤の二つの主な肺のアプリケーションは、慢性気管支炎と気管支喘息であった(Pharmacology of Anti−Muscarinic Agents,Laszlo Gyermek(1998))。
【0114】
ムスカリン受容体には、その生理学的役割に基づく5つの広い分類があり、これらの受容体の各々に対するアゴニストが当業者に知られている:
M1受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、オキソトレモリン、ムスカリン、カルバコール、及びMcNA343がある
M2受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、メタコリン、カルバコール、オキソトレモリン、及びムスカリンがある
M3受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、ベタニコール、カルバコール、オキソトレモリン、及びピロカルピンがある
M4容体−例示的アゴニストはアセチルコリン、カルバコール、オキソトレモリンがある
M5容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、カルバコール、オキソトレモリンがある
【0115】
いくつかの実施例では、本明細書に記載されている化合物及び組成物について、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を防止する能力を評価することによって、RTIs又はRTDsに関連する、粘液過剰生産を含む炎症反応及び/又はアレルギィ反応を低減する能力を試験することができる。更に、シアリダーゼ及び/又はその有効成分をスクリーニング、同定、及び選択して、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を防止する能力を評価することによって、炎症、アレルギィ、及び/又は粘液過剰生産などの関連する反応を低減する能力を試験することができる。これらの試験及びスクリーニングは、当業者に知られている標準アッセイを用いて行うことができる(例えば、Armstrong et al.,Curr.Protocols in Pharmacol.,UNIT 12−13(2010)を参照。この文献の内容は、ここに引用により全体が組み込まれている)。例示的なアッセイとプロトコルは、実施例3に記載されている。
【0116】
医薬組成物
本発明は、医薬組成物として調整した本発明の化合物を含む。この医薬組成物は、保存と続いて行う投与用に調整された薬学的に許容できるキャリアを含み、薬学的に許容できるキャリア又は希釈液中に薬学的有効量の化合物を有する。治療用の許容できるキャリア又は希釈液は、薬学の分野ではよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に記載されている。保存料、安定化剤、染料、及び香料を医薬組成物に提供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存料として加えることができる。更に、抗酸化剤と懸濁化剤を使用することができる。
【0117】
標的細胞によっては、本発明の化合物は、経口又は吸入投与用の錠剤、カプセル、エリキシル剤として;局所的に塗布する軟膏(salves)又は軟膏(ointments)として;直腸投与用座薬として;吸入基又は鼻スプレィ用の滅菌溶液、懸濁液、カプセル化した粉体などとして;調整し使用することができる。溶液又は懸濁液、又は、注入前に溶液又は懸濁液にするのに適した固形としての、従来の形状で注入剤を調整することもできる。
【0118】
好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、D型グルコース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システイン、などである。これらの賦形剤に加えて、本明細書に記載されている医薬製剤に、追加の化合物を、単独で、あるいは、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な組み合わせで含めるようにしても良い。これらの追加の化合物は、賦形剤として、あるいは更なる有益な効果を提供する活性成分として作用するように医薬組成物に含めるようにしても良い。更に、所望であれば、注入可能な医薬組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤など、非毒性補助物質を少量含んでいても良い。
【0119】
投与に必要な試験化合物の薬学的有効量は、投与ルート、治療を受ける動物又は患者のタイプ、対象としている特定動物の物理的特徴によって異なる。この投与量は、呼吸器管の高レベルな粘液を低減させるなど、所望する効果を実行するために調整することができるが、体重、食事、現在の投薬などの要因と、当業者が認識するその他の要因によって異なるであろう。本発明の方法を実行するに際して、医薬組成物は、単独で用いても良く、別の組成物と組み合わせて、又は、その他の治療又は診断薬剤と組み合わせて用いても良い。これらの製品は、非ヒト動物対象、哺乳動物対象、ヒト対象にはインビボで用いることができ、さもなければインビトロで用いる。これらの組成物をインビボで使用する場合、医薬組成物は、患者又は対象に、局所的に、非経口で、静脈内投与で、皮下で、筋肉注射で、結腸から、直腸から、鼻からあるいは腹腔から、を含む様々な経路で、様々な投与形を用いて投与することができる。このような方法は、インビボで試験化合物の活性を試験するのにも使用することができる。
【0120】
いくつかの実施例では、これらの医薬組成物は、経口投与可能な懸濁液、溶液、錠剤あるいはトローチ剤、鼻スプレィ、吸入剤、注入物質、局所スプレィ、軟膏、パウダー、又はジェルの形であっても良く、あるいは、吸入器吸入する溶液又は乾燥パウダーに調整したものでも良い。
【0121】
懸濁液として経口投与する場合、本発明の組成物を、医薬製剤の分野で良く知られている技術に応じて調整し、懸濁剤として食物繊維、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムを与える微結晶性セルロースと、粘性強化剤としてメチルセルロースと、この分野で知られている甘味/芳香剤を含んでいても良い。即効型錠剤として、これらの組成物が微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム、スターチ、ステアリン酸マグネシウムとラクトース及び/又はこの分野で知られているその他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、及び潤滑剤を含んでいても良い。マウスウォッシュ又はリンスの剤形の化合物は、抗菌剤、界面活性剤、共界面活性剤、オイル、水、及びこの分野で知られている甘味剤/芳香剤などのその他の添加物を含んでいても良い。
【0122】
飲用溶液によって投与する場合は、この組成物は、水に溶かして、pHを適宜調整した本発明の一又はそれ以上の化合物を、キャリアと共に含んでいる。この化合物は、蒸留水、水道水、湧水、などに溶かすことができる。いくつかの実施例では、pHを、約3.5乃至約8.5の間に調整することができる。甘味料は、例えば、1%(w/v)のスクロースを加えることができる。
【0123】
トローチ剤は、本明細書に引用により組み込まれている米国特許第3,439,089号によって調整することができる。
【0124】
鼻エアロゾル又は吸入によって投与する場合、この医薬組成物は、医薬製剤の分野で良く知られている技術によって調整することができ、ベンジルアルコール又はその他の好適な保存剤、生体適合性を強化する吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又はこの分野で知られているその他の可溶化剤又は分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調整できる。例えば、Ansel,H.C.et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Sixth Ed.(1995)を参照。吸入パウダーは、米国特許出願第11/657,813号及び12/179,520号に記載された技術を用いて調整することもできる。これらの出願は、全体が引用としてここに組み込まれている。これらの組成物及び製剤は一般的に、好適な非毒性の薬学的に受容できる成分で調整することができる。これらの成分は、鼻投与形の調整における当業者に知られており、いくつかは、この分野における標準文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に見ることができる。好適なキャリアの選択は、例えば、溶液、懸濁液、軟膏、又はジェルといった、所望される鼻投与形の実際の特徴に大きく依存している。鼻投与形は、一般的に、有効成分に加えて大量の水を含んでいる。pH調整剤、乳化剤又は分散剤、保存剤、界面活性剤、ゼリー化剤、又は、緩衝剤及びその他の安定化及び可溶化剤、といった少量のその他の成分が存在していても良い。一般的に、鼻投与形は、鼻の分泌液と等張である。
【0125】
鼻腔投与製剤は、点滴剤、スプレィ、エアロゾルとして、又はその他の経鼻投与形によって投与することができる。選択的に、送達システムは、単に投与送達システムであってもよい。投与ごとに送達される溶液又は懸濁液の量は、約5乃至約2000マイクロリットル、約10乃至約1000マイクロリットル、又は約50乃至約500マイクロリットルのいずれであっても良い。様々な投与形の送達システムは、単回投与あるいは複数回投与パッケージになった、点滴液ボトル、プラスチックのスクイーズユニット、アトマイザー、噴霧器、又は薬剤エアロゾルであっても良い。
【0126】
本発明の製剤は:(1)pHを調整するその他の酸及び塩を含める;(2)ソルビトール、グリセリン、D形グルコースなどの等張性を高めるその他の物質を含める;(3)p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ソルベート、安息香酸エステル、プロピオン塩酸、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、水銀剤などのその他の抗菌性保存剤を含める;(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びその他のゴムといった、その他の粘性強化材を含める;(5)適宜の吸収強化剤を含める;(6)亜硫酸水素塩やアスコルビン酸塩などの抗酸化剤といった安定剤、ナトリウム・エデト酸塩などの金属キレート化剤、及びポリエチレングリコールなどの薬剤溶解性強化剤を含める、ように変化させることができる。
【0127】
本発明の一の実施例は、約0.01mg乃至約100mgの投与レベルと言った様々な投与レベルで呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低減し、及び/又は呼吸器管の粘液ベースラインを超えている対象の呼吸器管の粘液量の増加を制限する医薬組成物を含む。このような投与レベルの例には、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、あるいは100mgの投与がある。本発明のその他の実施例は、約0.01mg乃至約100mgの投与レベルと言った様々な投与レベルで呼吸器管の炎症を抑えるあるいは呼吸器管の炎症が悪化するのを防ぐ医薬組成物を含む。このような投与レベルの例には、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、あるいは100mgの投与がある。上述の投与量は、一日当たり一又はそれ以上の回数で、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、あるいは14日、あるいはそれ以上の日で投与することができる。より多い投与量で、あるいはより少ない投与量で投与することもできる。通常は、投与量は、約1ng/kg乃至約10mg/kg、約10ng/kg乃至約1mg/kg、及び約100ng/kg乃至約100μg/kgであってもよい。ここに述べた様々な例では、マウスを、0.0008mg/kg、0.004mg/kg、0.02mg/kg、0.06mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、及び1.0mg/kgを含む様々な投与量の本明細書に記載の組成物で処置した。
【0128】
一の実施例では、医薬組成物が、DAS181、MgSO4 1.446mg/ml、CaCl2 0.059mg/ml、ヒスチジン 1.427mg/ml、ヒスチジン−HCl 1.943mg/ml、及びトレハロース 3.000mg/mlを含む。
【0129】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含む。
【0130】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181、Na2SO4、及びCaCl2を含む。
【0131】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181と、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースのうちの一又はそれ以上の組み合わせを含む。
【0132】
別の実施例では、医薬組成物が:(a)天然のシアリダーゼタンパク質又はペプチド又はその有効成分、あるいは天然のシアリダーゼの少なくとも一部とほぼ相同である組み換えタンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、(d)ヒスチジン 1.427mg/mlと、(e)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同である、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681などの有効成分、又は、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインにほぼ相同である、シアリダーゼである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解する大きな細菌性シアリダーゼの一つからのものである。例えば、Clostridium perfringens (Genbank Accession Number X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又は、Micromonospora viridifaciens (Genbank Accession Number D01045)からの細菌性シアリダーゼ酵素、又は、これらのシアリダーゼ又はその有効成分にほぼ相同であるタンパク質又はペプチドである。別の実施例では、このタンパク質とペプチドは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002)neurochem Res 27:646−663)(図2)、又はこれらのシアリダーゼの有効成分でコードされたシアリダーゼなどの、その他のシアリダーゼである。
【0133】
別の実施例では、医薬組成物は(a)天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、(b)MgSO4、(c)CaCl2、(d)ヒスチジン、(e)ヒスチジン−HCl、及び(f)トレハロースを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、A.viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Rossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27: 646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0134】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、(b)Na2SO4、及び(c)CaCl2を含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0135】
別の実施例では、医薬組成物は、天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、及び、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースの一又はそれ以上の組み合わせを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens (Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535; Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0136】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、ヒスチジン 1.427mg/mlと、(d)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlと、を含む。
【0137】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)MgSO4と、(c)CaCl2と、(d)ヒスチジンと、(e)ヒスチジン−HClと、(f)トレハロースと、を含む。
【0138】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID NO.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)Na2SO4と、(c)CaCl2と、を含む。
【0139】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID NO.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースの一又はそれ以上の組み合わせと、を含む。
【0140】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、(d)ヒスチジン 1.427mg/mlと、(e)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlと、を含む。
【0141】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)MgSO4と、(c)CaCl2と、(d)ヒスチジンと、(e)ヒスチジン−HClと、(f)トレハロースと、を含む。
【0142】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)Na4SO4と、(c)CaCl2と、を含む。
【0143】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロースの一又はそれ以上の組み合わせと、を含む。
【0144】
本発明の医薬組成物のもう一つの代表的な例であって、本明細書に記載した方法に使用できるものは:DAS181、ヒスチジン、硫酸マグネシウム(又はクエン酸塩)、塩化カルシウム、トレハロース、水、Na−酢酸、及び酢酸を含む。
【0145】
本発明の医薬組成物の更なる代表的な例であって、本明細書に記載した方法に使用できるものは、DAD181(約0.01%乃至約100%w/w、約1.00%乃至約90.0%w/w、約5.00%乃至約80%w/w、約10.0%乃至約70.0%w/w、約20.0%乃至約70%w/w、約30.0%乃至約70.0%w/w、約40.0%乃至約70.0%w/w、約50.0%乃至約70%w/w、約60.0%乃至約70.0%w/wのいずれかの濃度)を、ヒスチジン又はヒスチジン−HCl(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)、硫酸マグネシウム(又はクエン酸又は硫酸ナトリウム)(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、塩化カルシウム(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、トレハロース(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、水(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、Na−酢酸塩(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、酢酸(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、のいずれかと組み合わせたものを含む。
【0146】
上述の医薬組成物はいずれも、MgCl2を約0%乃至約75%w/wの範囲の様々な濃度で追加的に含んでいても良い。
【0147】
呼吸器管の粘液の低減とその上昇の制限
呼吸器管ツリー内の粘液の蓄積又は高レベルは、生産した粘液量が増えること、及び呼吸器管中の繊毛によるクリアランスの欠陥によりクリアランス率が低下することによって生じる。粘液の分泌過多は慢性でありうるが、喘息の発作の間のCOPDの悪化や、気管支拡張症や嚢胞性線維症の患者で、高い粘液量が生産される(W.D.Kim,Eur Respir.J.1997,10:1914−1917)。粘液の過剰分泌又はそのクリアランスの低下に関連する気道における管腔内粘液蓄積(すなわち、高い粘液レベル)は、肺疾患及び、限定するものではないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、吸呼吸器感染、気道閉塞毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、アルコール依存症、を含む悪化した症状及び/又は疾患呼吸器管に影響する疾患のほとんど全てに、臨床的問題を引き起こす。呼吸器管の高い粘液レベルは、重要な予後決定因子であり、嚢胞性線維症やCOPDに加えて、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息といった様々な肺疾患の臨床特性である(W.D.Kim,Eur Respir.J.1997,10:1914−1917)。従って、いくつかの実施例では、本開示は、これらの症状又は疾患の一又はそれ以上をもつ患者が治療のために選択されている方法を含む。いくつかの実施例では、この方法が、本明細書に記載された症状又は疾病の一又はそれ以上をもつ患者であって、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は気道感染症(RSV)の一又はそれ以上に感染していない患者を選択するステップを具えていても良い。この選択に続いて、対象は、本明細書に開示されている組成物の一又はそれ以上を投与することによって治療を受けることができる。
【0148】
本明細書及び米国特許出願番号第10/718,986合と第10/939,262合に記載の化合物、あるいはこれらを含む組成物を投与して、呼吸器管中の粘液レベルが高い患者の呼吸器管の粘液量を低減し、呼吸器管で粘液ベースラインを超えている患者の呼吸器管の粘液量の増加を制限する方法が、提供されている。従って、本発明は、本明細書に記載されている、呼吸器炎症又は粘液生産の増加によって引き起こされる、又は悪化する、アレルギィ性及び非アレルギィ性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎(急性及び慢性の両方)、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、及び、呼吸器管中に炎症又は高い粘液生産を引き起こす、あるいは呼吸器管中で炎症又は高い粘液生産によって悪化するあらゆるその他の疾病を防止する又は治療する治療成分及び/又は組成物の治療方法に関する。本発明は、本明細書に述べた治療用化合物及び/又は組成物を用いて、呼吸器管の粘液レベルが高い患者の呼吸器管の粘液量を低減し、呼吸器管の粘液ベースラインを超えている患者の呼吸器管の粘液量の増加を制限する方法も含む。
【0149】
いくつかの実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的に有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物又は化合物を患者に投与するステップを具える。このタンパク質又はペプチドは、単離された天然のシアリダーゼタンパク質、又は天然のシアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である組み換えタンパク質であってもよい。一の実施例では、医薬組成物又は化合物が、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったこのシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼか、あるいは、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインを含む。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量のタンパク質又はペプチドを含む。
【0150】
その他の実施例では、この方法は、治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具え、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0151】
更に別の実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0152】
その他の実施例は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する方法を含む。この方法は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物を対象に投与するステップと、(b)治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップであって、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、ステップと、(c)シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップと、を具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0153】
更に別の実施例は、呼吸器管における粘液ベースラインを超えている対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する方法を具える。この方法は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物を対象に投与するステップと、(b)治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップであって、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、ステップと、(c)シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップと、を具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0154】
いくつかの実施例では、使用する組成物又は化合物が、限定するものではないが、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、Mg塩及び/又はCa塩、の一又はそれ以上、あるいは様々な組み合わせを含む、追加の化合物を具えていても良い。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0155】
上述の方法で治療を受ける対象は、ヒト対象、あるいは非ヒト動物対象であっても良い。本明細書に述べた化合物と組成物は、限定するものではないが、吸入器を用いて化合物又は組成物を対象の呼吸器管に導入することを含めて、様々な投与ルートを介して対象の上皮細胞へ投与することができる。
【0156】
いくつかの好ましい実施例では、本明細書に述べた化合物を吸入器を用いた吸入、あるいは鼻スプレィとして送達することができる。この化合物は、点眼液、点耳液、スプレィ、軟膏、ローション、あるいは肌に塗布するジェルとして投与することもできる。この化合物は、静脈内投与であるいは局所注射として投与することができる。
【0157】
呼吸器管の炎症の低減又は防止
本発明は、米国特許出願番号第10/718,986号及び10/939,262号に記載の化合物又はこの化合物を含む組成物の投与が呼吸器管の炎症細胞の量を減らすという予期しない発見を含む。従って、本発明は、呼吸器管の炎症を低減する、あるいは、呼吸器管の炎症の悪化を抑えるのに使用することができる治療組成物又は化合物に関する。本発明は、また、呼吸器管の炎症を低減する、あるいは、呼吸器管の炎症の悪化を抑える方法を含む。更に、本発明は、アレルギィ性及び非アレルギィ性ぜん息、アレルギィ性鼻炎、皮膚炎、乾癬、植物性又は動物性毒素への反応、自己免疫性状態、及び呼吸器管に炎症を起こす、又は、呼吸器管の炎症によって生じるあるいは悪化するその他の疾患、疾病又は状態、などの呼吸器の炎症によって生じる、呼吸器の炎症を引き起こす、あるいは呼吸器の炎症によって悪化する疾患を防止又は治療するのに使用できる治療組成物又は化合物に関する。
【0158】
いくつかの好ましい実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物又は化合物を対象に投与するステップを具える。このタンパク質又はペプチドは、単離された天然シアリダーゼタンパク質であるか、あるいは、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である組み換えタンパク質であっても良い。好ましい医薬組成物は、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同である、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681などの有効成分、又は、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインにほぼ相同である、シアリダーゼを含む。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減するタンパク質又はペプチドの量を含む。
【0159】
その他の実施例では、この方法は、治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具え、ここで、この融合タンパク質はシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減する融合タンパク質の量を含む。
【0160】
更なる実施例では、この方法が、シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを含む治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具える。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減する融合タンパク質の量を含む。
【0161】
いくつかの実施例では、使用した組成物又は化合物が、限定する物ではないが、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース、又はその類似体の一又はそれ以上を、単独で又は組み合わせて含む追加の化合物を含むものでも良い。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0162】
上述の方法で治療を受ける対象は、ヒト対象又は非ヒト動物対象であっても良い。本明細書に述べた組成物及び化合物は、対象の皮下細胞に、限定するものではないが、吸入器を用いて化合物又は組成物を対象の呼吸器に導入することを含めて、様々な投与ルートで投与することができる。
【0163】
いくつかの好ましい実施例では、本明細書に述べた組成物又は化合物は、吸入器を用いた吸入により、あるいは鼻スプレィで送達することができる。この組成物又は化合物は、点眼液、点耳液、スプレィ、軟膏、ローション、あるいは肌に塗布するジェルとして投与することもできる。この化合物は、静脈内投与であるいは局所注射として投与することができる。
【0164】
図7A乃至Bは、図5に示す融合タンパク質構造の一つを、ヒト非順応インフルエンザにかかっているフェレットの炎症細胞に使用した場合の効果を示す。融合タンパク質(n=8)を用いた治療にもかかわらずウイルスを出芽したフェレットでは、炎症反応が低下し、必ずだるくなり熱がでた治療を行っていないフェレットに比べて、より機敏で活力があるように見えた。この8匹の感染し、融合タンパク質の治療を行った動物群について、鼻のタンパク質濃度について計算した平均曲線下面積(AUC)が、ビークルで治療した(リン酸緩衝食塩水)感染動物(図7B)に比べて、約40%(2.68対4.48、任意単位)低減していた。ビークルで治療した感染動物では、鼻洗浄液中の炎症細胞の数が、チャレンジ後2日目の非感染動物における数より約100倍増えていた。これらのレベルは、更に約4日間続いた。融合タンパク質で治療した動物は、鼻洗浄液中の炎症細胞の数が有意に低くなった。特に、細胞カウント数についてのAUCの値は、ビークルで治療した感染動物に比べて、融合タンパク質で治療した動物では、約3倍低くなった(1965対674、任意単位、図7B)。炎症反応で観察された低下は、感染の初期におけるウイルス複製を阻害するのに重要であることを示した。
【0165】
用量
当業者には明らかなように、投与を行う有用なインビボでの容量と、投与の特定のモードは、治療を受ける患者の年齢、体重、タイプ、使用する特定の医薬製剤、及びこの医薬製剤を用いる特別な使用によって変わる。所望の結果を達成するのに必要な容量レベルである、有効容量レベルの決定は、上述した定法を用いて、当業者によって行われる。非ヒト動物の研究では、医薬組成物のアプリケーションは、高い用量レベルから開始して、所望の効果が達成できなくなるまで、あるいは副作用が低減するかなくなるまで容量を下げてゆく。本発明の化合物の容量は、所望の効果、治療指標、投与ルート、及び化合物の純度と活性に応じて、広い範囲に及ぶ。典型的には、製品のヒトへの臨床アプリケーションは、低い用量レベルで開始して、所望の効果が達成できるまで用量レベルを上げてゆく。代替的に、受け入れ可能なインビトロでの研究を用いて、試験化合物の有効な用量と投与ルートを画定することができる。通常、容量は約1ng/kg乃至約10mg/kg、約10ng/kg乃至約1mg/kg、及び約100ng/kg乃至約100μg/kgである。本明細書に記載した様々な例では、マウスを、0.0008mg/kg、0.004mg/kg、0.02mg/kg、0.06mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kgの用量を含む、様々な用量のここに述べた組成物で処置した。非限定的な例として、本明細書に記載の組成物は、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、又は100mgなど、約0.01mg乃至約100mgの用量で、1日当たり1又はそれ以上の回数で、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、又は14日、又はそれ以上、ヒトに投与することができる。より高い又は低い用量で投与するようにしても良い。一の実施例では、以下に述べる実施例3に示すように、0.06mg/kgのシアリダーゼ化合物の投与で、ムスカリン受容体アゴニストへの気道応答性を低減するムスカリン受容体を脱シアル化するのに十分であり、従って、潜在的に気道収縮、気道過敏性、炎症、気管支収縮、ぜん息などのアレルギィ反応又は関連する応答、及び粘液過剰生産を低減する。0.06mg/kg、(成人の場合、約4乃至5mgの用量に変わる)、あるいは0.02mg/kg、(成人の場合約1乃至2mgの用量に変わる)といった、低用量での効力は、本明細書に述べたシアリダーゼベースの化合物を、繰り返しの長期投与を必要とする慢性疾患に使用する適切な候補とする。
【0166】
治療計画に、本明細書に記載の化合物と組成物を、1日当たり1回乃至1日当たり10回、1日当たり1回乃至1日当たり6回、1日当たり1回乃至1日当たり5回、1日当たり1回乃至1日当たり4回、1日当たり1回乃至1日当たり3回、1日当たり1回乃至1日当たり2回、及び1日1回の投与を含めることができる。この治療は、1日のみ乃至毎日、毎週、毎月、又は、その他所定の期間又は患者の残りの人生の間の周期的な使用、を続けることができる。
【0167】
正しい処方、投与ルート及び用量は、患者の状況を見て個々の医師によって選択することができる(Fingle et al.,in The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975)参照)。主治医は、毒性、臓器機能不全又は、その他の副作用により、いつ、どのように、投与を終了、中断、調整するかが分かっている。反対に、主治医は、臨床反応が顕著でない場合、より高いレベルに治療を調整することが分かっている。対象となる疾病の管理における投与用量の大きさは、治療を受ける症状の深刻度と、投与ルートで変わる。症状の深刻度は、例えば、標準予後評価法によって、部分的に評価することができる。更に、この用量とおそらく投与頻度は、獣医のアプリケーションも含めて、個々の患者の年齢、体重、及び反応によっても変わるであろう。
【0168】
いくつかの好ましい治療計画では、吸引、鼻スプレィ、又は局所投与によって、各患者に適当な用量で投与される。しかしながら、特定の患者に対する特定の用量レベルと投与頻度は、使用する特定の塩又はその他の形態の活性、代謝的安定性、化合物の生理作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬剤の組み合わせ、特定の症状の重症度、治療を受けているホストを含む、様々な要因によって変わることは理解されるであろう。
【0169】
いくつかの実施例では、本発明の開示は、本明細書に記載の組成物(以下に「X」として示す)の一又はそれ以上を以下の方法で使用する方法を提供している:
粘液過剰又は異常(例えば、一又はそれ以上の健康な対象(例えば、同じ民族の、及び/又は、同じ又は同様の地理的位置にある)と比較した場合、及び/又は、健康管理者によって表示された正常な粘液レベルを超えている)、粘液生産過多、及び/又は本明細書に記載した一又はそれ以上の疾病/症状の治療に、薬剤として使用する物質X;(各々、集合的に、以下の例では「Y」と呼ぶ)。
【0170】
Yの治療用薬剤の製造への物質Xの使用;及び
Yの治療に使用する物質X。
【実施例】
【0171】
本発明を以下の実施例で更に説明する。この実施例は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲を制限するものではない。
【0172】
実施例1.テンジクネズミの初期及び遅発ぜん息反応に対するシアリダーゼ治療の効果
1.概説
この研究では、Fludase(登録商標)をアレルギィ性ぜん息のテンジクネズミモデルで試験した。テンジクネズミは、オボアルブミン(OVA)又は食塩水で感光性として、15日又は20日後にFludase(登録商標)又は硫酸ナトリウムで処置した。21日目に、全ての動物をOVAで免疫反応を調べて、初期ぜん息反応を測定した。気道コンプライアンス/レジスタンスを測定し、気管支肺胞洗浄(BAL)流体を左肺から取り出して、細胞総数を計数し、差を求めた。
【0173】
2.序説
この研究の主たる目的は、ぜん息にかかったテンジクネズミの初期及び遅発反応に対するFludase(登録商標)の効果の特徴を達成することである。この研究に用いたテンジクネズミは、実験に使われておらず、従って、実験の一部としてインフルエンザあるいはその他の感染体に感染していない。ぜん息は、テンジクネズミを0日目にOVAで敏感にして誘発した。15又は20日後、テンジクネズミをFludase(登録商標)(0.3mg/kg)又は硫酸ナトリウム(0.143mM,pH5.0)で気管内処置を行った。21日目に、テンジクネズミにOVAエアロゾルを施し、気道反応性(PenH)を測定した。22日目に、肺血管抵抗とコンプライアンスを測定した。2分の時間インターバルで、用量0.2−2μg/kgのヒスタミンを、静脈注射により投与した。実験の最後に、テンジクネズミを殺して、左肺を洗浄し、単離したBAL細胞を洗浄して、係数し、マクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球に分離した。
【0174】
3.材料と方法
動物
特別に無菌のオスのハートレイ染色テンジクネズミ(HSD Poc: DH、体重400−500)をHarlan−CPB (Zeist, The Netherlands)社から入手した。このネズミは、収容条件に1週間順応させてから使用した。水と商用食が不断給餌された。この実験は、Animal Ethics Committee of the Utrecht University(Utrecht,The Netherlands)によって認められている。
【0175】
敏感化、予処置、及び抗原投与
テンジクネズミを食塩水(100mg/mlのAl(OH)3を含む溶液)又はOVA(20μg/mlのOVAと100mg/mlのAl(OH)3を含む溶液)で敏感にし、0.5mlを腹腔内投与し、5×0.1mlを皮下投与し、合計の注入量を1mlとした。15日又は20日経過後に、動物を0.3mg/kgのFludase(登録商標)で一旦処置して、20日目に対照の動物に硫酸ナトリウム(0.143mM、pH5.0)を気管点滴処置をした。咽頭鏡を用いて、咽頭蓋の位置を確かめた。次いで、Fludase(登録商標)又は硫酸ナトリウムを、1A−1CのMicroSprayer(商標)(Penn Century,Inc.Philadelphia,USA)を用いて、液体エアロゾルで投与した。テンジクネズミは、気管点滴の間、立位にあった。
【0176】
この気管点滴の間に、テンジクネズミに、Ketamine(登録商標)、Xylazin(登録商標)、Atropin、及び食塩水(3.5:3:1:3)の混合物150μlで麻酔をかけて、後脚に筋肉注射をした。
【0177】
21日目に、テンジクネズミをエアロゾルOVA(0.1%wt/volの滅菌食塩水)に露出させて、免疫反応を調べた。3リットルのパースペクス容器にエアロゾルを生成させて、そこにテンジクネズミを入れた。まず、基本的な気管支収縮(PenH)が測定された。テンジクネズミは、OVAエアロゾルで10秒間刺激された。免疫反応を調べた後、直接的に、初期ぜん息反応(PenH)が測定された。
【0178】
意識があり拘束していないテンジクネズミのアレルゲン誘発性初期ぜん息反応
動物の気道の働きを、換気したバイアス流の全身プレスチモグラフ(Buxco Electronics,Sharon CT,USA)において、エアロゾルにしたOVAに露出させた直後に測定した。このプレスチモグラフは、基準チャンバと、動物チャンバからできている。動物チャンバは、プレスチモグラフ上の呼吸気流計を介して外側に取り付けられる。動物チャンバへのアエロゾル入口は、動物チャンバの屋根の中央に位置している。動物が動物チャンバに入れられて静かに呼吸をしていると、1回換気量と呼吸をしている間の胸郭の動きとの間に圧力が生じる。差圧トランスデューサが、動物チャンバと基準チャンバとの間の圧力の変化を測定し、これらのデータをプリアンプに送る。この後、データがコンピュータに送られて、そこで、動物の肺機能を表わす複数のパラメータを計算する。使用した全てのテンジクネズミについて、基本の5分間と、全身プレスチモグラフで15分間エアロゾルを行った後に、測定を行った。最大呼気流量(PEF)と、1回換気量(TV)と、エンハンスドポーズ(PenH)として知られている肺機能パラメータも測定された。PenHの式と説明は図8に示されている。気管支が収縮している間は、最大呼気流量と最大吸気流量が増え、緩和時間と呼気時間が減少する。このことは、PenHが増えることになる。意識があり拘束していないテンジクネズミの気管支収縮のデータが、PenH(図8)に示されている。
【0179】
インビボでの気道応答性
22日目に、テンジクネズミを腹腔内にウレタン2g/kgで麻酔をかけた。この動物は自発的に呼吸をしていた。体温での麻酔導入フォールは、動物を、37℃の体温に維持する加熱チャンバに入れることで防止した。テンジクネズミは、以下の通り、肺血管抵抗(RL)と肺コンプライアンス(C)の測定ができるようになった。高い投与量のヒスタミン(0.02−2μg/kg)を静脈内投与するために、小さなポリエチレンカテーテル(PE−50)を右の頸動脈に入れた。基礎になるRLとCを5分間測定した。その後、高い投与量のヒスタミンを注入し、RLとCを2分間測定した。カニューレを挿入し気管をFleischフローヘッド(nr000;Meijnhart,Bunnik,The Netherlands)で呼吸気流計に接続して、気流量と1回換気量を測定した。圧力トランスデューサ(モデルMP45−2;Validyne Engineering Corp.,Northridge,CA)で、気管カニューレと、食道に挿入した食塩水を満たしたカニューレの間の圧力差を測定することで、肺圧差を測定した。RLとCは呼吸ごとに、呼気分析計で測定した。RLは、肺差圧を等容ポイントにおける気流で割ることによって、計算した。Cは、容積を等流ポイントにおける肺差圧で割ることによって計算した。データは、最大RLと最小Cで、cmH2O/ml*sec−1とml/cmH2Oとして、それぞれ表わした。
【0180】
気管支−肺胞肺洗浄細胞の回収
気管支−肺胞洗浄細胞は以下のようにして得た。気管をトリミングして、結合組織と血管をなくし、気管へカニューレを挿入するために小さく切除を行った。右肺を結んで、左肺だけを洗浄した。左肺に37℃の食塩水(0.9%NaCl)を5mlを満たした。そっとマッサージを行って流体を肺から取り出して、プラスチックチューブを氷(4℃)の上に回収した。この手順を3回繰り返し(トータルで15ml)、各動物から回収した細胞懸濁液をためた。次いで、4℃、1500rpmで、5分間、遠心分離を行って細胞を沈降させた。上澄み液を捨てて、ペレットを1mlの食塩水に再懸濁させた。細胞がチューブの壁にくっつくのを最小限に抑えるために、単離手順の間はプラスチックチューブだけを使用した。
【0181】
細胞の計数及び差別化
この細胞をチュルク液で染色し、ビュルケル・チュルク式輝線計算板(顕微鏡、倍率100×)で計数した。差BAL細胞の計数用に、サイトスピン試料を作り、ディフ・クイック染色(Merz & Dade A.G.,Duedingen,Switzerland)で染色した。コード化した後に、全てのサイトスピン試料を油侵顕微鏡(倍率1000×)を用いて一人の観察者が評価した。細胞は、標準的な形態で、マクロファージ、リンパ球、好中球、及び好酸球に差別化した。サイトスピン試料につき少なくとも200の細胞が計数され、各細胞タイプの絶対数が計算された。
【0182】
統計分析
特に記載がない限り、データは、相加平均±標準誤差として表わされており、グループ間の比較は、スチューデントt−検定を用いて行った。確立値p<0.05は有意であると考えられる。
【0183】
4.結果
意識のある拘束されていないテンジクネズミの気道応答性
図9に示すように、基礎気道抵抗は、硫酸ナトリウム又はDAS181で15日目又は20日目に食塩水で処置した(PenH=0.24±0.009 食塩水−硫酸ナトリウム、0.25±0.001 食塩水−Flu 15日目、0.28±0.01 食塩水−Flu 20日目に処置したテンジクネズミ)テンジクネズミに差がなかった。15日目又は20日目に、基礎レベル(PenH=0.25±0.01 OVA−硫酸ナトリウム、0.27±0.02 OVA−Flu 15日目、0.31±0.03 OVA−Flu 20日目に処置したテンジクネズミ)で硫酸ナトリウム又はFludase(登録商標)で処置したOVAテンジクネズミにも差がなかった。
【0184】
食塩水で感作した動物において、OVA抗原投与は、基礎気道抵抗を若干上げた(SOD、Flu 15及び20、図2)。しかしながら、OVAエアロゾルに対する応答における初期のぜん息反応は、OVA−硫酸ナトリウムで処置をしたテンジクネズミ(PenH=1.57±0.45)において、非常に大きく増えていた。Fludase(登録商標)で処置を行った後は、初期のぜん息反応は、15日目に約30%低減していたが、20日目では低減していなかった。
【0185】
気管支−肺胞洗浄液中の細胞係数
図10に示すように、Fludase(登録商標)が、食塩水及びOVAのテンジクネズミの両方で、総細胞数を減らした。
【0186】
気管支−肺胞洗浄液中の差別化細胞計数
図11に示すように、マクロファージの数は、食塩水で処置した群に比べてテンジクネズミOVAテンジクネズミで(30%)増えている。マクロファージの総数は、食塩水及びOVAで処置したテンジクネズミの双方において、15日目及び20日目のFludase(登録商標)を用いた処置の跡に、大きく低減した。
【0187】
図12に示すように、リンパ球の数にも同様のパターンが観察された。リンパ球の数は、Fludase(登録商標)で処置した後に低下した。
【0188】
図13に示すように、従来の対照に比べると、SODは肺への好中球の数の大きな増加を誘発する。興味深いことに、Fludase(登録商標)は、食塩水及びOVAの両グループにおけるこの流入を完全に防止した。
【0189】
図14に示すように、従来の対照に比べると、SODは、気道への好酸球の流入も誘発した。これは、更に、OVAの抗原投与によって増加する。興味深いことに、Fludase(登録商標)による処置は、好酸球の数を従来の対照レベルまで回復させることができる。
【0190】
5.考察/結論
OVA−感作し、抗原投与した動物は、PENHがOVA−抗原投与まで増加することによって測定される初期の及び遅発が多ぜん息反応と、BAL−流体中の炎症細胞の数の増加を示した。
【0191】
興味深いことに、Fludase(登録商標)(Flu15)は、初期のぜん息反応をほぼ30%低減し(図9)、マスト細胞刺激におけるこの化合物の効果を示している。更に、Fludase(登録商標)は、SOD又はOVAによって生じる炎症に驚くべき効果を有していた。すべての炎症細胞(マクロファージ、リンパ球、好中球、及び好酸球)の数が、この化合物によって有意に減少した。
【0192】
結論として、Fludase(登録商標)は、SOD−誘発性炎症とOVA−誘発性炎症の両方において有効であることを示した。
【0193】
実施例2.急性OVA誘発性ぜん息のマウスモデルにおけるFludaseの効果
1.序
この研究の目的は、Fludase(登録商標)(DAS181ともいう)が、(1)ぜん息の急性OVA抗原投与マウスモデルにおけるアレルゲン誘発性気道炎症と気道過敏を抑制するかどうかを調べることである。DAS181単独での介在効果を調べるのに加えて、a)DAS181+賦形剤(インビボでDAS181を送達する乾燥粉体の剤形で使用)、b)賦形剤単独、及びc)デキサメタゾン(比較として)を含む、その他3つのぜん息モデルのマウスへの介在を調べた。
【0194】
2.材料と方法
マウス
12週令の、メスのBALB/cマウスをCharles River 社から購入し、UCSD生態動物園に収容した。これらのマウスは、約1週間UCSD生態動物園で順化させて使用した。
【0195】
OVA感作とOVA抗原投与
0日、7日、14日、及び21日目に、200μlの通常の食塩水中で1mgのミョウバンに吸着させた25μgのOVAを皮下注射してマウスに免疫を与え、主要Th2免疫反応を誘発した。26日目に経鼻OVA抗原投与(20μg/50μl)を開始し、28日目と30日目にこれを繰り返した。どのOVA群でも、マウスはOVAに感作したが、経鼻OVA抗原投与されなかった。マウスは、31日目のPenhによる最終OVA抗原投与の後、24時間行われたメタコリン(Mch)に対する気道の反応性があった。この研究に用いたマウスは、実験に使用されておらず、従って、実験の一部としてインフルエンザやその他の感染症に感染していない。マウスは、その後すぐに殺した。気管支肺胞洗浄(BAL)、血液、及び肺組織を、以下に述べる結果を求めて処理した。
【0196】
試験化合物のマウスへの投与
1.試験化合物
以下の化合物を、ぜん息のマウスモデルで調べた。
a)賦形剤を伴うDAS181(0.6mg/kg 経鼻):DAS181−F02(NexBio,Inc.part #43−071,lot#47−034)をPBS中で、20mgDAS/mlに調整した。各投与を行う前に、PBS中で、新たに0.6mgDAS181/kgに希釈して、平均体重21gのマウスに対して投与量50μlとした。
b)DAS181(0.6mg/kg 経鼻)
c)賦形剤(50μL/マウス):賦形剤(416TL022A)を、溶液でNexBio,Inc.社から入手し、各賦形剤成分の濃度は、20mgDAS181/ml(MgSO4 1.446mg/ml、CaCl2 0.059mg/ml、ヒスチジン 1.427mg/ml、ヒスチジン−HCl 1.943mg/ml、及びトレハロース 3.000mg/ml)の濃度と同じにした。a)にあるように投与用にPBS中で新たに希釈した。各賦形剤成分の最終濃度は、0.6mgDAS181/kg、平均体重21gのマウスに対する投与量50μlの濃度と同じである。
d)デキサメタゾン(1.0mg/kg 腹腔内)
【0197】
賦形剤溶液を以下の方法で調整した。各賦形剤の最終標的濃度を計算して、DAS181−F02バルク乾燥粉体を20mgのタンパク質/mLで再構築する時と同じ濃度に近付けた。各賦形剤(各10mL)について10×のストック溶液(塩化カルシウムでは100×)を調整した。このストック溶液の調整に使用した材料を表1に挙げる。全ての材料は、USPグレードであるか、あるいはこれと同等のグレードである。表2に従って適宜量の各賦形剤を15mLの円錐形チューブに入れて、水を加えて、総重量を10gとし、かき回して材料を完全に溶解させた。1mLの各ストック溶液を加えて最終の1x賦形剤溶液を調整し、体積を水を用いて10mLにした。全てのサンプル調整は、溶液密度を1g/mLとして、重量測定法で行った。
【0198】
これらの実施例では、「賦形剤」又は「賦形剤」溶液と書かれているが、これらの追加の化合物は、粘液の低減及び炎症と炎症細胞の低減に関する更なる有益な効果を有するものでも良い。これらの賦形剤は、DAS181の相乗効果を有していても良い。
【0199】
【0200】
【0201】
2.ぜん息のマウスモデル
以下のBalb/cマウス群(n=10 メスマウス/群)を調べた。
a)OVAなし
b)OVA
c)OVA+DAS181賦形剤
d)OVA+DAS181
e)OVA+賦形剤
f)OVA+デキサメタゾン
【0202】
3.試験化合物の投与タイミング
試験化合物は、26日目、28日目、30日目の各経鼻OVA抗原投与の1時間前に投与した。終点のタイミングを調べた。
【0203】
最終OVA抗原投与の後24時間でマウスを殺し、血液、BAL、及び肺を分析した(27)。
【0204】
4.研究評価項目
a)Penh
31日目に、最終OVA吸入を行った後24時間、Buxco (Troy, NY)社から入手した単一チャンバ全身プレスチモグラフを用いて気道反応性を強化した。このシステムでは、拘束されていない自発的に呼吸しているマウスを、プレスチモグラフの主チャンバに入れて、このチャンバと基準チャンバ間の圧力差を記録した。マウスの呼吸サイクル間の、換気量と結果としての圧力の変化によってボックス圧力信号が生じる。主チャンバの壁のローパスフィルタによって、熱補償が行われる。これらのボックス圧力信号から、呼吸サイクルのフェーズ、一回換気量、及びエンハンスドポーズ(Penh)を計算することができる。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。これは、従来の二つのチャンバプレスチモグラフィによって測定した換気マウスの肺血管抵抗と密接に関連する。プレスチモグラフでは、マウスをネブライザで投与したPBSに3分間露出させて、次いで、Aerosonic超音波ネブライザ(De Vilbiss)を用いてPBSに投与した高濃度のメタコリン(MCh)(3,6,12,24,48mg/ml Mch)(Sigma,St.Louis,MO)に露出させる。ネブライザ投与を行った後、3分間記録を行う。各3分間のシーケンスの間に測定したPenh値の平均を取り、各MCh濃度についてPBS露出に続くベースラインPenh値のパーセンテージとして表わした。
【0205】
b)血中好酸球数
EDTA含有チューブへの心穿刺によって、末梢血をマウスから回収した。100mMの炭酸カリウム−1.5M塩化アンモニウムの1:10の溶液を用いて、赤血球を溶かした。残りの細胞を1mLのPBSに再懸濁させた。異なる細胞を計数するためには、200μLの再懸濁させた末梢血白血球懸濁液を、顕微鏡スライドと、乾燥空気の上へサイトスピンさせた。スライドは、Wright−Giemsaによって染色され、白血球の総数における好酸球のパーセンテージを、光学顕微鏡の下で評価した。
【0206】
c)肺粘液用のPAS染色
気道における粘液の出現レベルを定量化するために、各気管支の過ヨウ素酸Schiff(PAS)−陽性及びPSA−陰性上皮細胞の数を、上述した通り計数する(Zhang,M.,T.Angata,J.Y.Cho,M.Miller,D.H.Broide,A.Varki.2007 Blood.109:4280−4287)。各スライドにおいて、少なくとも10個の気管支を計数した。結果は、気管支ごとのPAS−陽性細胞の数を、気管支ごとの上皮細胞総数で割って計算した、気管支ごとにPAS−陽性細胞のパーセンテージで表わしている。OVAのない、OVAのある、OVA+DAS181のある肺組織のスライドも作って、これを観察した。
【0207】
d)気管支周囲の好酸球に対する肺のMBP染色
異なる実験グループから得た肺を、Zhang et al.に記載されているように同じ条件で組織学的染色又は免疫学的染色のためにバッチ処理を行った。染色した及び免疫染色したスライドは、すべて、倍率(20×)、ゲイン、カメラ位置、バックグラウンド照明を含む、同じ光学顕微鏡条件で定量化した。肺セクションを、上述した通り、アンチマウスMBP(主要塩基性タンパク質)Ab(James Lee PhD,Mayo Clinic,Scottsdale,Arizona提供)と、Zhang et al.に記載されている免疫ペルオキシダーゼ法を用いて、MBP免疫組織化学用に処理した。主要塩基性タンパク質は、好酸球細胞顆粒タンパク質であり、組織内の好酸球のマーカとして働く。気管支周囲のスペースにあるMBPに陽性に染色している個々の細胞の数を、光学顕微鏡を用いて計数した。結果は、内径150−200μmの気管支ごとのMBPに陽性に染色している気管支周囲の細胞数として表わされている。少なくとも10の気管支が各スライドで計数された。
【0208】
5.統計的分析
異なるマウス群の結果を、Mann Whitney非パラメータT検定で比較した。全ての結果は、平均±SEMとして提示されている。統計ソフトウエアパッケージ(Graph Pad Prism,San Diego,CA)を分析に用いた。P値<0.05は、統計的に有意であると考えられる。
【0209】
6.結果
a)Penh
図15に示すように、OVA抗原投与が、Penhの変化で評価されるように気道応答性に有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0210】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較してPenhに有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤;p<0.01)。
【0211】
DAS181で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、Penhが低下した(OVA 対 OVA+DAS181;p<0.005)。
【0212】
図16に示すように、48mg/mlMchにおけるPenhの測定は、陽性及び陰性の対照(OVAなし 対 OVA)の間に大きな差がみられ、これが、このMchの投与を、DAS181などの介在効果を評価するのに使用した理由である。
【0213】
b)血中好酸球増加
図17に示すように、OVA抗原投与は、血中好酸球の有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0005)。
【0214】
DAS181は、血中好酸球増加を有意に低減した(OVA 対 OVA+DAS;p=0.04)。
【0215】
c)肺粘液のPAS染色
図18乃至19A−Fに示すように、OVA抗原投与は、PASに陽性に染色した気道上皮のパーセンテージに有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0216】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、PAS染色において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤; p<0.0001)。
【0217】
DAS181で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、PAS染色において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181;p<0.0001)。
【0218】
粘液に対する効果
賦形剤を伴うDAS181、並びにDAS181単独のものは、PAS染色においてAS181の阻害効果があることを示した。このことは、賦形剤を伴うDAS181又はDAS181単独で、呼吸器管中の粘液を低下させることを示している。
【0219】
d)肺のMBP免疫染色
図20に示すように、OVA抗原投与は、気管支周囲のMBP+好酸球の数に有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0220】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、気管支周囲のMPB+好酸球の数において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤;p=0.02)。
【0221】
実施例3. 低投与量のDAS181を鼻腔内に投与した未処置マウスにおける気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対するDAS181の様々な投与レベルの効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.06、0.1、あるいは0.6mg/kgを1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。記録は、各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0222】
結果: 24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンが、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、48mg/mlのMch(図面)で、有意に気道抵抗が下がった。異なる投与群間で相違は観察されなかった。
【0223】
結論: これまでのデータと一致して、DA181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすという仮説が考えられる。驚いたことに、この二つの高投与量レベルは、最も低い投与量以上の効果を発揮するものではなく、0.06mg/kg程度の低いDAS181の鼻腔内投与量で、ムスカリン受容体を脱シアル化して、ムスカリン受容体あごにストの気道反応を低減し、その結果炎症や、アレルギィ、あるいは、気管支収縮、ぜん息、粘液の過剰生産などのアセチルコリンに関連する反応を抑えるには十分であることを示唆している。これらの結果は、図21A及び21Bに記載されている。
【0224】
実施例4. 低投与量のDAS181で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0225】
結果: 3、6、12、24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンが、PBSで処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げ、12、24及び48mg/mlのメタコリンで処理した動物が、DAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げた。一方、3及び6mg/mlのメタコリンは、DAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げなかった。DAS181で処置した全ての動物は、6、12、24及び48mg/mlのMchで、対照に比べて有意に気道抵抗が下がった。
【0226】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすと考えられる。これらの結果は、図22に記載されている。
【0227】
実施例5. DAS181で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗の低減(カルバコール抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストカルバコールで抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したカルバコール(1.25、2.5、5、10、20mg/mlカルバコール)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0228】
結果: 5、10、20mg/mlのムスカリン受容体アゴニストカルバコールが、PBSとDAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、5、10、20mg/mlのカルバコールで、有意に気道抵抗が下がった。
【0229】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストカルバコールに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすと考えられる。これらの結果は、図23に記載されている。
【0230】
実施例6. 低用量のDAS185で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS185を1日1回、投与した効果を試験することである。DAS185は、DAS181の酵素的に不活性な型であり、シアリダーゼ部分における突然変化がシアリダーゼを不活性にする。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS185を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0231】
結果: DAS185で処理した動物とPBSで処理した動物との間で、Mch抗原投与に応じた気道抵抗には、差異がなかった。
【0232】
結論: 上述の実施例4における、DA181とPBSで処理した動物との間の気道抵抗には、差があったが、DAS181を酵素的に不活性であるDAS185で置き換えたときには、差がなかった。この実験は、DAS181に応答する気道抵抗の低下は、シアリダーゼに依存することを示す。これらの結果は、図24に示されている。
【0233】
実施例7. DAS181によってもたらされる気道抵抗の低減の時間的経過(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、2日又は3日間投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、2日又は3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0234】
結果: 1日の処理では、DAS181で処理した動物とPBSで処理した動物との間で、Mch抗原投与に応じた気道抵抗には、差異がなかった。2日間の処理では、DAS181は、12及び24mg/mlのメタコリンでは、PBSに対して気道抵抗を低減するように見えるが、3、6及び48mg/mlのメタコリンでは、低減しない。3日間の処理では、DAS181は、24及び48mg/mlメタコリンで気道抵抗を有意に低減した。
【0235】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181とPBSで3日間処理した動物間には、気道抵抗に差があった。1回の投与では差はなく、2日のDAS181の処理の後、部分的な低下があった。この実験は、2乃至3日の処理が、気道抵抗を低減するには最適であることを示している。これらの結果は、図25に記載されている。
【0236】
実施例8. 非常に低用量のDAS181を鼻腔内投与した未処置マウスにおける気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対する、DAS181の様々な低い投与レベルの効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.0008、0.004、0.02、又は0.1mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0237】
結果: 24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンは、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、24、48mg/mlで、有意に気道抵抗が下がった。DAS181の異なる投与量群の間に差異は見られなかった。
【0238】
結論: 非常の投与量が低いDA181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、DAS181の投与量が非常に低くてもムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすという仮説が考えられる。この実験は、0.0008mg/kg程度の非常に低いDAS181の鼻腔内投与量でも、ムスカリン受容体を脱シアル化して、炎症や、アレルギィ、あるいは、気管支収縮、ぜん息、粘液の過剰生産などのアセチルコリンに関連する反応を抑えるには十分であることを示唆している。これらの結果は、図26に記載されている。
【0239】
実施例9. DAS181を鼻腔内投与した未処置マウスにおける低減した気道抵抗は、投与量に依存している(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対する、様々な投与レベルのDAS181の効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を10ng/kg、0.1μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、又は0.1mg/kg、1日1回、3日間投与し、ムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)の投与量を上げた。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0240】
結果: 24mg/mlおよびより高い濃度のムスカリン受容体アゴニストメタコリンは、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。気道応答性を、3日目の投与後8時間で評価した。DAS181で処置した全ての動物は、24mg/mlのメタコリンで有意に気道抵抗が下がった。Penh値の平均的なパーセンテージの差(ベースラインを越えた高い気道抵抗を示す)は、以下のとおりである。
対照(PBS): 550−560%
10ng/kg DAS181: 525−530%
0.1μg/kg DAS181: 450%
1μg/kg DAS181: 525%
10μg/kg DAS181: 225%
0.1mg/kg DAS181: 200%
【0241】
上述の結果からわかるように、0.01乃至0.1mg/kgのDAS181の投与レベルで、Mchに応答して気道抵抗を有意に低減した。
【0242】
結論: この結果は、DAS181による鼻腔内投与に応じた低い気道抵抗は、投与量依存性であることを示している。
【0243】
実施例10. インビトロでのM2及びM3ムスカリン受容体信号伝達に関するDAS181の効果
この研究の目的は、インビトロモデルを用いた、気道保護のための潜在的機構としてのムスカリン受容体脱シアル化を評価することである。安定してM2又はM3ムスカリン受容体を伝達するヒトchem−1細胞(ミリポア)を、受容体アゴニスト(アセチルコリン;ACh)を加える前に、0.4、2又は10μMのDAS181で、37℃で、30分間処置した。受容体信号伝達は、経口レポータを細胞間カルシウムに使用して決定した。
【0244】
結果: 試験を行ったDAS181の全投与量において、ヒトchem−1細胞のDAS181による処置が、アゴニスト−介在M2受容体信号伝達の能力を上げ、アゴニスト−介在M3受容体信号伝達の能力を低下させた。この結果は、以下のとおりである。
A. M2受容体
処置 予測EC50能力値(M)
Ach単独(DAS181無) 390nM
ACh+10μM DAS181 140nM
ACh+2μM DAS181 130nM
ACh+0.4μM DAS181 140nM
B. M3受容体
処置 予測EC50能力値(M)
Ach単独(DAS181無) 6.3nM
ACh+10μM DAS181 270nM
ACh+2μM DAS181 51nM
ACh+0.4μM DAS181 110nM
【0245】
結論: この結果は、DAS181がM2ムスカリン受容体を介する信号伝達を増やし、M3ムスカリン受容体を介する信号伝達を低減することを示している。従って、DAS181−介在応答は、M2の正のアロステリック変形を表わすことができ、アンタゴニストかあるいはM3の負の変形を表わす。シアル化は、刺激性信号の低減と、並びに、ムスカリン受容体によって介在される抑制性の信号を強化することによって、気道保護を提供することができる。
【0246】
実施例11. パラインフルエンザに対するDAS181微小粒子調整の治療効果
急性呼吸器疾患であるパラインフルエンザウイルス(PIV)に対するDAS181の効果を試験した。63歳の女性患者を試験して、2010年7月14日及び7月21日にPIVが陽性であった。鼻綿棒についたPIV抗原を落として、これらの日に患者から回収した唾液サンプルをPCRで検出した。
【0247】
この患者は、2010年7月23日、24日、及び25日に、乾燥パウダー形状のDAS181を1日1カプセル(送達投与量10mg)与えた。この組成物中の化合物と、組成物のwt/wt%は以下のとおりである:DAS181:64.54−64.69%;ヒスチジンフリー塩基:4.32−4.60%;ヒスチジン−HCl:5.85−6.27%;トレハノース:9.06−9.68%;硫化マグネシウム:4.66−5.84%;塩酸カルシウム:0.19%;酢酸ナトリウム:0.04−0.05%;リン酸:0.02%;水:0%;イソパノール:微量。各カプセルは、タイプ3のクリアHPMCカプセル(Capsugel)中に13mgの乾燥粉末を含有しており、10mgの送達投与量を提供する。患者に、1日1カプセル、3日間(2010年7月23日、7月24日及び7月25日)、吸入により投与した。治療完了後の日(7月26日)には、試験を行った患者はPIVが陽性であり、治療の後5日目(2010年7月30日)には、PIV試験が陰性であった。この結果は、DAS181のパラインフルエンザ、すなわち、上呼吸器管の呼吸障害に対する有効性を示している。
【0248】
実施例12. ぜん息に対するDAS181微粒子製剤の治療効果
実施例9で用いたDAS181微粒子製剤のぜん息に対する効果を試験した。20歳の白人男性ぜん息患者における、10mg送達投与量(13mgカプセル)の製剤Aを経口投与する前、及び投与後1時間での、FEV1(1秒間の強制呼気肺活量)によって測定した気流の変化を試験した。薬剤の投与前、患者のFEV1は、予測された正常な肺機能の82%であった。薬剤の投与後1時間、患者のFEV1は、92%まで10%の増加で肺機能の臨床的に有意な改善を示した。この結果は、DAS181製剤がぜん息に有効である、すなわち、中央から上側呼吸器管に影響する、非感染性呼吸器管である。
【0249】
その他の実施例
本発明は、詳細な説明と関連して記載したが、上述の記載は、本発明の範囲を明確にすることを意図したものであり、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を制限するものではない。その他の態様、利点、変形は、特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
連邦支援による研究開発
本発明は、米国保健社会福祉省、国立衛生研究所によって認められた、契約番号HHSN266200600015Cによる政府支援によってなされた。政府は、本発明に関して所定の権利を有する。
【0002】
優先権主張
本発明は、2009年11月6日に出願された米国暫定特許出願第61/259,033号、2009年11月6日に出願された米国暫定特許出願第61/259,055号、2010年4月9日に出願された米国暫定特許出願第61/322,813号、2010年5月6日に出願された米国暫定特許出願第61/322,063号、及び2010年9月9日に出願された米国暫定特許出願第61/381,420号の利益を主張するものであり、各々の出願の全内容は、ここに引用により組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
気道感染症(Respiratory tract infections,RTIs)は、最も良く見られる病気の一つであり、潜在的に、最も深刻なタイプの感染性疾患である。RTIsの例には、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSV、副鼻腔炎、耳炎、咽頭炎、気管支炎、及び肺炎、がある。
【0004】
呼吸器の病原菌など、RTIsを引き起こす病原体の共通する特徴の一つは、上気道の粘膜表面に片利共生的コロニーを形成することである。このようなコロニー形成は、感染に先立つものであり、一般的に感染の必須要件である。新生児における細菌定着は出生直後に生じる。一生の間、上気道、特に、鼻咽頭と中咽頭は微生物種のダイナミックな生態学的リザーバのままであり、連続的に取得され、除去され、再取得されている細菌を伴う。ほとんどの場合、咽頭の細菌叢は無害である。しかしながら、宿主の状態が変化すると、ある種の微生物が近くの組織又は血流に入り込んで疾患を引き起こすことがある。
【0005】
鼻咽頭と中咽頭は細菌とウイルスの両方による粘膜感染及び侵襲的感染の入口ポートとして作用するのに加えて、個人間の病原微生物が蔓延する主源でもあると同時に、抗生物質耐性細菌が選択されているリザーバでもある(Garcia−Rodriguez and Martinez,J Antimicrob Chemother,(2002)50(Suppl S2),59−73;Soriano and Rodriguez−Cerrato,J.Antimicrob Chemother,(2002)50 Suppl S2,51−58)。気道感染しやすい人は、病原菌の持続性かつ再発性キャリアである傾向にある(Garcia−Rodriguez and Martinez,J Antimicrob Chemother,(2002)50(Suppl S2),59−73;Mbaki et al.,Tohoku J Exp.Med.,(1987)13(2),111−121)。例えば、ヘリコバクター・ピロリは、胃炎と消化性潰瘍にかかわるヒト病原体である。この細菌は、ヒトの胃に存在し、胃前庭部の上皮細胞に付いている。
【0006】
その他の呼吸器管疾患(より広い用語では、RTDs)は、感染性因子によっては生じないが、感染症の結果として生じることがある。RTDsの例には、アレルギー性あるいは非アレルギー性ぜん息、COPD、気管支拡張症、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、嚢胞性線維症(CF)など、様々な閉塞性肺疾患が含まれる。RTDsには、遺伝学的なものがあり(例えば、CF)、免疫疾患により生じることがあり、その他の疾患によって生じることがあり(例えば、α−1−アンチトリプシン疾患は人を気管支拡張症にかかりやすくすることがある)、アレルゲン及び/又は化学汚染物質によって生じることがあり、あるいは、上述したRTIsなどの他の感染性疾患、あるいは炎症性腸疾患又はクローン病などの炎症性疾患の合併症としてとして生じることもある。
【0007】
RTIsとRTDsの共通の兆候には、炎症と、気道内の高い粘液レベルを挙げることができる。しかしながら、RTIsとRTDsの治療にしばしば用いられている現在入手可能な薬剤は、これらの関連症状を改善することができない。例えば、Relenza(登録商標)は、インフルエンザの良く知られた治療薬であるが、ぜん息やCOPDなどの根本的な気道疾患を患っている患者には推奨されない。従って、気道の炎症を抑え及び/又は粘液を抑える、あるいはその上昇を制限する薬剤が必要とされていることに加えて、患者のぜん息、気管支炎、気管支拡張症、及びCOPDといった、根本的な気道疾患を悪化させることなく、インフルエンザ、パラインフルエンザ及びRSVなどの気道感染性疾患を治療できる薬剤が求められている。
【0008】
本発明は、医療用に現在入手可能な薬剤は、炎症を抑える、及び/又は、気道内の粘液を抑える、あるいは、気道内でのその増加を制限することに関する効能が制限されており、入手可能な薬剤は副作用があることを認識している。本発明はまた、ぜん息、気管支炎、気管支拡張症、及びCOPDなどの根本的な気道疾患を持つ患者の気道感染性疾患を治療する薬剤が求められていることを認識している。従って、炎症を抑えることができる、及び/又は気道内の粘液を抑えるあるいは気道内におけるその増加を制限することができる新規薬剤が求められている。また、炎症を低減しながら、及び/又は、気道内の粘液を抑えながらあるいは気道内におけるその増加を制限しながら、気道感染性疾患を治療できる薬剤が求められている。
【発明の概要】
【0009】
以下に述べる化合物、組成物及び方法は、様々な組成成分、調合ステップ、及び生物物理学的、物理的、生化学的、あるいは化学的パラメータによって特徴づけられる。当業者には自明であるように、ここに提供されている組成物と方法には、以下に述べる成分、ステップ、及び/又はパラメータのあらゆる置換と組み合わせが含まれる。
【0010】
本発明は、呼吸器管内の抗炎症効果を有する治療用化合物及び組成物の使用、及び、気道の炎症の治療方法及び気道の炎症の予防方法に関する。本発明は、限定するものではないが、アレルギィ又はアレルギィ反応によって引き起こされたものではない炎症を含めて、気道炎症によって引き起こされた、気道炎症を引き起こす、あるいは気道炎症によって悪化した疾患を予防又は治療するのに使用することができる治療用化合物及び組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、呼吸器管内の粘液レベルが高い対象の気道内の粘液量を低減させる治療用化合物及び組成物の使用、及び対応する治療方法に関する。本発明はまた、気道内の粘液レベルがベースラインを超えている対象の気道内の粘液量の増加を制限する治療用化合物と組成物の使用、及び対応する治療方法に関する。本発明は、また、アレルギィ性及び非アレルギィ性ぜん息の両方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎(急性及び慢性の両方)、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞(mucus plugging)、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性ぜん息、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、吸入した真菌胞子に対するアレルギィ反応、呼吸器感染、気道閉塞、アンモニア及びその他の毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、アルコール依存症、様々なアレルギィ及び、気道における粘液生成を高める、あるいは、気道における高くなった粘液生成によって引き起こされた又はこれらによって引き起こされたその他の疾患、等といった、気道中の高い粘液レベルによって引き起こされる、悪化した症状及び/又は疾患を予防又は治療するのに使用することができる治療用化合物及び組成物に関する。いくつかの実施例では、対象が上述した症状及び/又は疾患の一又はそれ以上を有している。その他の実施例では、上述した症状及び/又は疾患を一又はそれ以上有する対象が、インフルエンザ、パラインフルエンザ、あるいはRSVなどの、付随する感染性疾患(RTI)は持っていない。その他の実施例では、上述した症状及び/又は疾患を一又はそれ以上有する対象が、インフルエンザ、パラインフルエンザ、あるいはRSVなどの、付随する感染性疾患(RTI)を持っている。従って、ここには、RTI、RTD、又はこれらの組み合わせに関連する炎症及び/又はアレルギィ反応を治療する方法、化合物及び組成物が提供されている。
【0012】
ここで用いられている化合物と組成物は、呼吸器管の粘液産生を低下させ、及び/又は、限定するものではないが、単球、マクロファージ、樹枝状細胞、組織球、クッパー細胞、マスト細胞、及び好中球を含む、アレルギィ性炎症又は非アレルギィ性炎症を引き起こす炎症細胞レベルを低下させる。
【0013】
ここで用いられている化合物と組成物は、シアリダーゼ又はその有効成分を含む。いずれの理論にも縛られることなく、シアル酸は、RTIs及びRTDsに関連するアレルギィ反応及び/又は炎症反応に関係している。例えば、シグレック(siglecs)(シアル酸結合Ig様レクチン)は、シアル酸に結合する免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリィの員であり、造血系の細胞によって主に発現する。少なくとも11のシグレックが発見されており、これらは排他的に細胞表面のシアル酸をリガンドとして認識するように見える。シグレックとシアル酸との結合は、細胞間粘着と相互作用を仲介すると考えられる(Crocker and Varki,Trends Immunol.,(2001)22(6),337−342;Angata and Brinkman−Van der Linden,Boichim.Biophys.Acta,(2002)1572(2−3),294−316)。シグレック−8(SAF−2)は、アレルギィ性鼻炎、ぜん息、湿疹を含むアレルギィ性症状の主要なエフェクター細胞である、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞の表面に非常に限定されている接着分子である。シグレック−8(マウスのシグレック−Fに対応する)は、気道、肺、及びその他のアレルギィ部位に対する3つのアレルギィ性細胞タイプの回復を仲介する働きをすると考えられる。シグレック−1(シアロアドヘシオン)とシグレック−2(CD22)は、マクロファージとB細胞上の接着分子であり、両方の分子タイプが炎症の原因となる免疫反応において主要な役割を果たす。シグレック−9は、好中球に主に発現し、炎症に重要なエフェクター細胞であることが知られている(von Gunten,Yousefi,Seitz,Jakob,Schaffner,Seger,Takala,Villiger,and Simon(2005)Blood 106:1423−1431)。更に、特定の理論に縛られることなく、シアル酸残渣は、ムスカリン受容体のアゴニストとの相互作用に関連しており、従って、シアリダーゼは、ムスカリン受容体とそのアゴニストとの相互作用に影響する。
【0014】
本発明は、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる方法を提供する。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量の融合タンパク質と、アンカードメインを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この有効治療量には、この組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量がある。
【0015】
別の実施例では、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる別の方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この融合タンパク質は、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12を含むアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低下させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0016】
別の実施例では、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量のタンパク質又はペプチドを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させるタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0017】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼの触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0018】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する別の方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。融合タンパク質は、シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させる融合タンパク質の量が含まれる。
【0019】
別の実施例では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を治療あるいは改善する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有するタンパク質又はペプチドを有効治療量含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与する前の粘液の量に比べて、この化合物又は組成物を投与した後に呼吸器管の粘液量を低減させるタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0020】
別の実施例では、対象の呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液の増加を制限する方法が提供されている。この方法は、有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。この融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼの触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインは、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長するアミノ酸配列と、少なくとも一のアンカードメインを含む。このアンカードメインは、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレギュリン(human amphiregulin)のグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量が含まれる。
【0021】
別の実施例では、呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液量の増加を制限する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分及びアンカードメインを有する有効治療量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量が含まれる。
【0022】
更に別の実施例では、呼吸器管中の粘液レベルのベースラインを超える対象の呼吸器管での粘液の増加を制限する別の方法が提供されている。この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する有効治療量のタンパク質又はペプチドを含む化合物又は組成物を対象に投与するステップを具える。有効治療量には、この化合物又は組成物を投与した後にベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限するタンパク質又はペプチドの量が含まれる。
【0023】
また、本明細書に述べられている化合物又は組成物によるシアリダーゼ又はその有効成分を同定する方法も本発明で意図されており、ここで、シアリダーゼ又はその有効成分は、対象の呼吸器管における粘液量の低減に有効である。粘液の低減は、当業者に公知である標準アッセイで直接的に測定できる。例えば、いくつかの実施例では、単一の化合物又は、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性部分を含む化合物又は組成物のライブラリィ又は集合が、モルモットや実施例1及び実施例2に記載されているマウスといった、炎症反応を伴うぜん息の動物モデルに投与される。動物にぜん息状態又はその他の炎症状態を作り出し、これによって、肺又は呼吸器管における粘液の蓄積が増える。従って、粘液レベルが定量され、シアリダーゼ又はその有効成分による治療を行った後のレベルと比較される。シアリダーゼ又はその有効成分の存在下で粘液レベルの低減がある場合、このシアリダーゼ又はその有効成分が、粘液の過剰生産といった、炎症、アレルギィ性及び/又は関連する炎症/アレルギィ反応を治療するための本明細書に記載の方法に使用できるものとして同定あるいは選択される。
【0024】
いくつかの実施例では、本明細書に提供されている化合物又は組成物によるシアリダーゼ又はその有効成分は、当業者に公知の標準的な方法によって、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を止める能力を測定することによって、炎症、アレルギィ又はそれに関連する反応の治療に適しているものとして同定される。例えば、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性部分を含む化合物又は組成物が、
(a)動物対象のムスカリン受容体を、シアリダーゼ及び/又はその触媒活性成分を含む化合物又は組成物に接触させること;
(b)ムスカリン受容体アゴニストを対象に投与すること;
(c)対象の気道抵抗を定量すること;
(d)(c)で測定した気道抵抗レベルを、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗と比較すること;
(e)この化合物又は組成物が、当該化合物又は組成物と接触していない気道抵抗に対して気道抵抗を低減させているかどうかを同定すること;及び
(f)前記化合物又は組成物が(e)で決定したように気道抵抗を低減させている場合は、対象の気道における粘液量を低下させるものとして、評価すること(このような方法は実施例3に例示されている);
によって、この化合物又は組成物を対象の呼吸器管における粘液量を低下させるかどうかを判定する方法が提供されている。
【0025】
特に規定がない限り、ここに用いられている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。本発明に用いるための方法と材料が記載されているが、この分野で公知のその他の好適な方法と材料を用いることもできる。この材料、方法、実施例は説明のためだけのものであり、制限することを意図するものではない。全ての公報、特許出願、特許、配列、データベース登録、およびここに記載したその他の引用は、全体が引用により組み込まれている。コンフリクトが生じた場合は、定義を含めてこの明細書に従うものとする。
【0026】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明と図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、4つのヒト遺伝子のGAG−結合配列:PF4、ヒト血小板因子4;IL8、ヒトインターロイキン8;ATIII、ヒト抗トロンビンIII;ApoE、ヒトアポリポタンパク質E;AAMP、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質;ヒトアンフィレギュリン;を示す。
【図2】図2は、ヒトシアリダーゼNEU2とNEU4(SEQ ID No.8及び9)の配列の比較を示す。
【図3】図3は、細菌性シアリダーゼと菌性シアリダーゼの基質特異性を比較した表である。
【図4】図4は、pTrc99aへのクローニングに用いるHis6−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.28及び29)を太字で示す。
【図5】図5は、pTrc99aへのクローニングに用いるAR−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の別の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.18及び19)を太字で示す。
【図6】図6は、pTrc99aへのクローニングに用いるAR−G4S−AvCD.NcoI部位とHindIII部位をコード化する本発明の別の構造の核酸及びアミノ酸配列(SEQ ID No.36及び37)を太字で示す。
【図7】図7A及び7Bは、組み換えAR−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質の局所投与がインフルエンザA(H1N1)ウイルスに感染したフェレットの炎症反応を低下させることを示すグラフである。図7Aは、感染後、表示した時間に感染動物から採取した鼻洗浄サンプルからの炎症細胞総数を示す。タンパク質濃度は、感染したフェレットの無細胞鼻洗浄サンプルで測定した。感染フェレットは、ビヒクル処理を行う(スクエア)か、又は、Construct #2(トライアングル)でできた組み換えAr−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質で処理した。非感染動物も、組み換えAr−AvCDシアリダーゼ融合タンパク質(ダイアモンド)で処理した。統計的に有意な値には、*(p<0.05)と**(p<0.01)で標識した。
【図8】図8は、意識のある非拘束動物の気管支収縮の測定に使用されるパラメータである、エンハンスドポーズ(PENH)の式と説明を示すグラフを提供している。
【図9】図9は、OVA−噴霧器に反応した初期のぜん息反応を示すグラフを提供している。結果は、スチューデントt−検定を用いて、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図10】図10は、その日のセクションにおけるテンジクネズミの細胞総数を示すグラフを提供している。結果は、スチューデントt−検定を用いて、相加平均±SEM.*p<0.01、***p<0.001として表わす。
【図11】図11は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収したマクロファージ総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.**p<0.01として表わす。
【図12】図12は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収したリンパ球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05として表わす。
【図13】図13は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収した好中球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図14】図14は、その日のセクションにおけるテンジクネズミBAL洗浄液中で回収した好酸球総数を示すグラフを提供している。結果は、相加平均±SEM.*p<0.05、***p<0.001として表わす。
【図15】図15は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果のMch48mg/mLのときの、Penh増減率を示すグラフである。
【図16】図16は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果のMch濃度範囲におけるPenh増減率を示すグラフである。
【図17】図17は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の血中好酸球を示すグラフである。
【図18】図18は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の肺粘液用PAS染色を示すグラフである。
【図19】図19A乃至19Fは、肺粘液用PAS染色を示す。
【図20】図20は、テンジクネズミの初期及び後期ぜん息反応のシアリダーゼ処理効果の好酸球用MBP免疫染色を示すグラフである。
【図21】図21A及び21Bは、低用量DAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図22】図22は、低用量DAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図23】図23は、DAS181で鼻腔内を処理した(カルバコール誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図24】図24は、低用量DAS185で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【図25】図25は、DAS185でもたらされた気道抵抗の低減(メタコリン誘発試験)の時間的経過を示すグラフである。
【図26】図26は、非常に低用量のDAS181で鼻腔内を処理した(メタコリン誘発試験)ナイーブマウスの低減された気道抵抗を示すグラフである。
【0028】
様々な図面における同様の符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、例えば呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液を低下させるための、特に、米国特許出願第10/718,986号及び10/939,262号(両方とも、ここに全体が引用により組み込まれている)に記載された化合物の新規使用方法を提供するものである。いくつかの実施例では、本開示は、粘液レベルを低下させる必要があり、インフルエンザ又はぜん息にかかっていない(例えば、治療時にインフルエンザに感染していない)対象の粘液(例えば、粘液レベル)を低下させる組成物及び方法を提供している。
【0030】
いくつかの実施例では、この組成物は、NexBio Inc.社によって製造された、化合物名DAS181及び商標Fludase(登録商標)(ここでは、SEQ ID No.21)を含む。DAS181は、シアリダーゼの触媒ドメインと、アンカードメインを含む融合タンパク質である。ここに述べた例のいくつかは、DAS181又は、DAS181を含む組成物を使用している。
【0031】
定義
特に定義がなされていない限り、本明細書で用いている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されている意味と同じ意味を持つ。一般的に、本明細書で使用した用語体系と以下に述べる製造法又は検査法は公知であり、この分野で通常使用されている。従来の方法は、この分野と一般的基準において提供されているこれらの手順に使用されている。用語が単数で使用されている場合は、本発明者らは、その用語の複数も意図している。引用によって組み込まれている文献で使用している用語と定義に相違する場合は、本出願で使用されている用語は、ここで用いられている定義に従う。この開示全体を通じて用いられているように、特に記載がない限り、以下の用語は、以下の意味をもつものと解される。
【0032】
ここで使用されているように、「対象」には、診断、スクリーニング、モニタ、あるいは治療が意図されているあらゆる動物が含まれる。動物には、霊長類や家畜と言った哺乳動物が含まれる。例示的な霊長類はヒトである。患者とは、ある病状がみられる、あるいは、ある病状を見つける、又は、ある病状のリスクを見つける、哺乳類、霊長類、ヒト又は家畜と言った対象を意味する。
【0033】
いくつかの実施例では、本明細書に開示された方法が、粘液レベルを低下させる必要があり、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のうちの一又はそれ以上に感染していない対象を選択するステップを具える。いくつかの場合、感染した又は感染という用語は、対象の中にインフルエンザ又はパラインフルエンザウイルス又はRSVが存在することを意味する。いくつかの場合、感染した又は感染という用語は、活性又は複製インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルス及び/又はRSVが対象の中に存在することを意味する。いくつかの実施例では、活性又は複製インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルス及び/又はRSV感染を伴う対象を、対象における(例えば、対象からのサンプル中の)インフルエンザ及び/又はパラインフルエンザウイルスの排出及び/又はRSVの排出の存在又は検出に基づいて選択することができる。いくつかの実施例では、本明細書に開示した方法は、粘液レベルの低下が必要な対象を選択するステップであって、この対象が潜在的なインフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又はRSV感染している、ステップを具えていてもよい。
【0034】
本明細書で用いている「動物モデル」とは、その生体構造、生理、あるいは反応(例えば、病原体又はアレルゲンに対する)において、対象となる疾病あるいは症状と十分に似た症状を呈している、その疾病あるいは症状に似ている、あるいはその疾病あるいは症状を再現しており、対象となる疾病あるいは症状に外挿できる(例えば、診断あるいは治療薬のスクリーン、化合物又は組成物の治療効果を調べる、その他)医学研究に有益である動物を意味する。例えば、テンジクネズミとマウスは、実施例1及び実施例2に示すように、ぜん息に関連する炎症反応及び/又はアレルギィ反応を呈する動物モデルである。マウスは、ムスカリン受容体とそのアゴニストとの相互作用と、本明細書に記載されている化合物及び組成物(実施例3を参照)などの薬剤によるその崩壊を研究する動物モデルにすることもできる。
【0035】
「病原菌」とは、細胞、組織、又は器官に感染するウイルス又は微生物である。病原菌はウイルス、細菌、又は原生動物であっても良い。
【0036】
「標的細胞」とは、病原菌又は炎症細胞と相互作用する細胞、あるは組み換えウイルスによって伝達された外来遺伝子の目的地である宿主細胞に感染した細胞である。
【0037】
「炎症細胞」とは、免疫系の炎症反応を行うあるいはこれに関連する細胞である。炎症細胞としては、Bリンパ球、Tリンパ球、マクロファージ、好塩基球、好酸球、肥満細胞、NK細胞、単球、好中球がある。
【0038】
「炎症細胞の接着又は機能を抑制する細胞外活性」とは、炎症細胞の標的細胞との接触を防止し、標的細胞の正常な生理学的状態への影響を妨げるあらゆる活性である。
【0039】
「細胞外アンカードメイン」、あるいは単純に「アンカードメイン」とも呼ばれる、「標的細胞膜へ少なくとも一の治療ドメインを固定するドメイン」とは、細胞表面の外側にある、あるいは、細胞表面に近接近している部分に安定して結合できる化学物質を意味する。細胞外アンカードメインは、可逆的にあるいは非可逆的に、一又はそれ以上の治療ドメインなどの一又はそれ以上の部分に結合することができ、これによって、一又はそれ以上の付着した治療部分を真核細胞の外側表面に、あるいはこれに近接近して保持させる。細胞外アンカードメインは、標的細胞の表面の少なくとも一の分子、あるいは標的細胞と密接に関連する一又はそれ以上の分子に結合できる。例えば、細胞外アンカードメインは、標的細胞の細胞膜に共有結合したあるいは非共有結合した分子に結合することができ、あるいは、標的細胞を囲む細胞外マトリックスに存在する分子に結合することができる。細胞外アンカードメインは、ペプチド、ポリペプチド、あるいはタンパク質であっても良く、一又はそれ以上の追加のタンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、有機小分子、ポリマ、脂肪、ステロイド、脂肪酸、糖質、又はこれらの組み合わせを含む、追加の化学物質を含んでいても良い。
【0040】
ここで用いられているように、タンパク質又はペプチド配列は、基準配列と同一であるか、一又はそれ以上のアミノ酸欠失、一又はそれ以上の追加アミノ酸、あるいは一又はそれ以上の保存的アミノ酸置換がある場合、基準配列に「実質的相同」であり、基準配列と同じ、又は、ほぼ同じ活性を維持する。同類置換は、以下の5つの群のうちの一つの交換として定義できる:
I. 小さい、脂肪族の、極性のない又は若干極性のある残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
II. 極性の、負に帯電した残基及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln
III.極性の、正に帯電した残基:His、Arg、Lys
IV. 大きい、脂肪族の、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys
V. 大きい、芳香族の残基:Phe、Try、Trp
【0041】
上述の群において、以下の置換が「非常に保存的である」と考えられる:Asp/Glu、His/Arg/Lys、Phe/Tyr/Trp、及びMet/Lue/Ile/Val。半同類置換は、上述の(I)、(II)及び(III)を含む超群(A)に、及び上述の(IV)及び(V)を含む超群(B)に限定される、上述の群(I)乃至(IV)のうちの二つの群間の置換であると定義される。更に、疎水性アミノ酸がこの出願で特定されている場合は、これは、アミノ酸Ala、Gly、Pro、Met、Lue、Ile、Val、Cys、Phe、及びTrpを意味し、一方、親水性アミノ酸は、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Lys、及びTyrを意味する。
【0042】
「シアリダーゼ」は、基質分子からシアル酸残基を除去する酵素である。シアリダーゼ(N−acylneuraminosylglycohydrolases,EC 3.2.1.18)は、シアロ複合多糖からシアル酸残基を加水分解で除去する一群の酵素である。シアル酸は、9炭素骨格を有するα−ケト酸であり、通常、糖タンパク質あるいは糖脂質に付着するオリゴサッカライド鎖の最も外側に見られる。主なシアル酸の一つのタイプは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)であり、これは、その他のほとんどのタイプのシアル酸の生合成前駆体である。基質分子には、非限定的な例として、オリゴ糖、多糖、糖タンパク質、ガングリオシド、あるいは合成分子がある。例えば、シアリダーゼは、シアル酸残基と残りの基質分子との間のα(2,3)−Gal、α(2,6)−Gal、α(2,8)−Galリンケージを有する結合を開裂する。シアリダーゼは、また、シアル酸残基と残りの基質分子との間のいずれかのあるは全ての結合を開裂することができる。Neu5Acと、炭水化物鎖の最後から二番目のガラクトース残基との間の二つの主なリンケージは、天然に存在するNeu5Acα(2,3)−GalとNeu5Acα(2,6)−Galである。Neu5Acα(2,3)−Gal分子とNeu5Acα(2,6)−Gal分子は両方とも、インフルエンザウイルスに受容体として結合するが、ヒトウイルスは、Neu5Acα(2,6)−Galを好み、鳥ウイルスと、ウマウイルスは、圧倒的にNeu5Acα(2,3)−Galに結合する。シアリダーゼは、天然に存在するシアリダーゼであっても、加工シアリダーゼ(アミノ酸配列が、天然のシアリダーゼ配列にほぼ相同である配列を含めて、天然のシアリダーゼの配列に基づくシアリダーゼに限定されない)であっても良い。ここに用いられているように、「シアリダーゼ」は、天然のシアリダーゼの有効成分を、あるいは、天然のシアリダーゼの有効成分に基づく配列を含むペプチド又はタンパク質を意味している。
【0043】
「融合タンパク質」は、少なくとも二つの異なる源由来のアミノ酸配列を含むタンパク質である。融合タンパク質は、天然のタンパク質由来の、あるいは、天然のタンパク質の全てあるいは一部にほぼ相同のアミノ酸配列を含んでいても良く、これに加えて、異なる天然のタンパク質の全てあるいは一部由来のあるいはこれにほぼ相同の、一乃至非常に多数のアミノ酸を含むものでも良い。代替的に、融合タンパク質は、天然のタンパク質由来の、あるいは天然のタンパク質の全てあるいは一部にほぼ相同のアミノ酸配列を含んでおり、これに加えて、一乃至非常に多数の合成配列のアミノ酸を含むものでも良い。
【0044】
「シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質」は、シアリダーゼの触媒ドメイン、あるいは、シアリダーゼの触媒ドメインにほぼ相同のアミノ酸配列を含むが、その触媒ドメインが由来しているシアリダーゼの全アミノ酸配列を含まないタンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、触媒ドメインが由来しているシアリダーゼの完全なものとほぼ同じ活性を維持している。シアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、シアリダーゼ由来ではないアミノ酸配列を含んでいても良いが、そうでなくても良い。シアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、一又はそれ以上のその他の既知のタンパク質のアミノ酸由来のアミノ酸配列、あるいはこれとほぼ相同のアミノ酸配列を含んでいても良く、あるいは、その他の既知のタンパク質のアミノ酸配列に由来しないあるいはこれとほぼ相同でない一又はそれ以上のアミノ酸を含んでいても良い。
【0045】
「有効治療量」とは、組成物又は化合物を単回投与形で対象に投与した時に、所望の治療的、予防的、あるいはその他の生理学的効果又は反応を得るのに必要な量の組成物又は化合物の量を意味する。特定量の組成物又は化合物は、その組成物又は化合物の性質、治療を受けている状態の性質、対象の年齢や、サイズ、といった状態によって大きく変わる。
【0046】
「治療」とは、疾患、障害、又は疾病の一又はそれ以上の症状が改善される、あるいは有益に変化するあらゆる方法を意味する。治療は、呼吸器管の粘液を低下させるなど、ここにいう組成物又は化合物の薬学的使用にも及ぶ。
【0047】
「呼吸器管」とは、鼻から肺胞への気道を意味し、鼻、のど、咽頭(pharynx
)、咽頭(larynx)、気管、及び気管支を含み、更に、肺も含む。呼吸器管は医師には呼吸器系と呼ばれることがある。
【0048】
「吸入器」とは、鼻又は口を経由して吸入する(自然にあるいは機械によって強制的に肺に吸い込ませる)スプレィ又は乾燥粉体の形で薬剤を投与する装置を意味し、限定することなく、受動又は能動人工呼吸器(器官内チューブ付き、あるいは無しの、機械的な)、噴霧器、乾燥粉体吸入器、定量吸入器、及び加圧定量吸入器を含む。
【0049】
「吸入抗原」とは、鼻又は口を通って吸入される物質である。
【0050】
「粘液量の低下」とは、すべてあるいはいくらか、一般的に、あるいは、本明細書に述べた組成物又は化合物の投与前の量に比べて呼吸器管中の粘液量が5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%又はそれ以上少なくなることである。「粘液量の低減」は、また、例えば、聴診による、MRI又はその他の放射線学的検査による、気管支鏡又はその他の視覚化装置を用いた直接視覚化による、又は時間をかけた患者の粘液測定による、といった観察を行うことができる何らかの医療器具を用いて医療関係者が観察できる量の粘液量の低下を意味する。「粘液量の低下」は、また、患者又は対象自身が、例えば、時間の経過に伴って吐いたあるいは呑みこんだ粘液量をモニタする、又は時間の経過に伴って肺のうっ血感を主観的に観察する、といった自身の報告あるいは自身の観察によって観察できる量の粘液量の低下を意味する。
【0051】
「粘液量の増加制限」とは、本明細書に述べた組成物及び化合物が投与されなかった場合より、投与後の呼吸器管における粘膜量が増えないことを意味する。「粘液量の増加制限」とは、また、本明細書に述べた組成物及び化合物の投与後の呼吸器管における粘液量が、これらの組成物及び化合物の投与後に増えないことも意味する。「粘液量の増加制限」は、また、化合物又は組成物の投与を行った時の、例えば、聴診による、MRI又はその他の放射線学的検査による、気管支鏡又はその他の視覚化装置を用いた直接視覚化による、又は時間をかけた患者の粘液測定による、といった観察を行うことができる何らかの医療器具と分析システムを用いて医療関係者が観察できる又は確かめることができる量の、患者のベースラインを超える増加を制限することを意味する。「粘液量の増加制限」は、また、患者又は対象自身が、例えば、時間の経過に伴って吐いたあるいは呑みこんだ粘液量をモニタする、又は時間の経過に伴って肺のうっ血感を主観的に観察する、といった自身の報告あるいは自身の観察によって観察できる量の、化合物又は組成物の投与を行った時の、患者のベースラインを超える増加を制限することを意味する。
【0052】
本明細書で用いられている「賦形剤」は、薬物の有効成分のキャリアとして、単独であるいは組み合わせて使用される一又はそれ以上の不活性物質又は化合物を意味する。ここで用いられる「賦形剤」は、また、その有益な効果を向上する又は有効成分との相乗効果を有する医薬組成物を含む、一又はそれ以上の物質又は化合物を意味しても良い。
【0053】
ペプチド又はタンパク質ベースの化合物
本発明は、ペプチド又はタンパク質ベースの化合物であって、真核細胞膜にこの化合物を固定できる少なくとも一のドメインと、治療ドメインである少なくとも一の追加のドメインを含む化合物を含む。「ペプチド又はタンパク質ベースの」化合物によって、この化合物の二つの主なドメインがあるアミノ酸構造を有し、このアミノ酸がペプチド結合によって結合することを意味する。ペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、アンカードメインのアンカリング活性に寄与する部分、あるいは、治療ドメインの治療活性に寄与する部分を含む、このアミノ酸構造又は骨格に付着したその他の化合物又は化学基を有することができる。例えば、本発明に用いられているタンパク質ベースの治療薬は、限定するものではないが、炭水化物、脂肪酸、脂質、ステロイド、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸分子、核酸類似体、ペプチド核酸分子、小有機分子、あるいはポリマなどの化合物及び分子を含むものでも良い。本発明のタンパク質ベースの治療薬は、改質アミノ酸、あるいは非天然アミノ酸を含んでいても良い。この化合物の非アミノ酸部分は、限定するものではないが、化合物の純化を進める、化合物(治療製剤中のものなど)の溶解度あるいは分布を改良する、化合物のドメインを結合するあるいは化合物の化学的部分を結合する、化合物の二次元あるいは三次元構造に寄与する、化合物の全サイズを大きくする、化合物の安定性を上げる、化合物のアンカリング活性又は治療活性に寄与することを含む、あらゆる目的に作用する。
【0054】
本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、アンカードメイン又は治療ドメインを含む化合物に加えて、タンパク質又はペプチド配列も含んでいても良い。この追加のタンパク質配列は、限定するものではないが、上述の目的を含めて、あらゆる目的に作用する(化合物の純化を進める、化合物の溶解度あるいは分布を改良する、化合物のドメインを結合するあるいは化合物の化学的部分を結合する、化合物の二次元あるいは三次元構造に寄与する、化合物の全サイズを大きくする、化合物の安定性を上げる、又は化合物のアンカリング活性又は治療活性に寄与する)。いずれの追加のタンパク質又はアミノ酸配列も、アンカードメイン及び治療ドメインを含む単一のポリペプチド又はタンパク質鎖の一部であっても良く、タンパク質配列の適当な構成は、本発明の範囲内にある。
【0055】
アンカードメイン及び治療ドメインは、標的細胞膜で、あるいはその近傍で化合物を結合させる適宜の方法で配置することができる。化合物は、少なくとも一のタンパク質又はペプチドベースのアンカードメインと、少なくとも一のペプチド又はタンパク質ベースの治療ドメインを有している。この場合、これらのドメインは、ペプチド骨格に沿って任意の順序で直線的に配置することができる。アンカードメインは、治療ドメインのN−末端であってもよく、あるいは、治療ドメインのC−末端であっても良い。また、各端部における少なくとも一のアンカードメインが横にある一又はそれ以上の治療ドメインを有していても良い。代替的に、一又はそれ以上のアンカードメインの横に、各端部にある少なくとも一の治療ドメインがあってもよい。化学リンカー又はペプチドリンカーを選択的に用いて、化合物のいくつかのドメインあるいは全てのドメインを結合することもできる。
【0056】
ドメインを非直線状の、枝分かれした構造で有することも可能である。例えば、治療ドメインを、アンカードメインを含むあるいはこれに結合しているポリペプチド鎖の一部であるアミノ酸の誘導体化側鎖に付着させることができる。
【0057】
本発明の化合物は、一以上のアンカードメインを有していても良い。ある化合物が一以上のアンカードメインを有している場合、このアンカードメインは同じであっても、異なるものであっても良い。本発明の化合物は、一以上の治療ドメインを有していても良い。化合物が一以上の治療ドメインを有している場合、この治療ドメインは同じであっても、異なるものであっても良い。化合物が複数のアンカードメインを含む場合は、このアンカードメインは、直列に配置されていても良く(リンカーで、あるいはリンカーなしで)、あるいは、治療ドメインなどのその他のドメインの片側に配置されていても良い。化合物が複数の治療ドメインを含む場合、この治療ドメインは、直列に配置されていても良く(リンカーで、あるいはリンカーなしで)、あるいは、限定するものではないが、アンカードメインなどのその他のドメインの片側に配置されていても良い。
【0058】
本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、天然のタンパク質を生成すること、選択的に、このタンパク質をタンパク質分解性開裂させて所望の機能ドメインを得ること、および、機能ドメインをその他の機能ドメインへ結び付けることを含む、適宜の方法で作ることができる。ペプチドは、化学的に合成された、あるいは選択的に、その他のペプチド又は化学部分に化学的に結合したものでもよい。本発明のペプチド又はタンパク質ベースの化合物は、核酸構造体を操作して、少なくとも一のアンカードメインと少なくとも一の治療ドメインを連続するポリペプチド内で互いにエンコードする(核酸リンカーを用いて、あるいは用いることなく)ことによって製造することができる。核酸構造体は、適宜の発現配列を有するいくつかの実施例では、原核細胞又は真核細胞へ形質移入し、治療タンパク質ベースの化合物は、この細胞によって発現し、純化できる。所望の化学的部分は、選択的には、純化した後のペプチド又はタンパク質ベースの化合物に選択的に連結できる。いくつかの場合は、タンパク質ベースの治療薬の好ましい翻訳後の改変を実行する能力(グリコシル化などであるが、これに限定されない)を発現するように細胞株を選択することができる。
【0059】
様々な構造体を設計して、そのタンパク質は所望の活性についてそのタンパク質製品を試験することができる(例えば、アンカードメインの活性を結合する、あるいは、治療ドメインの結合、触媒、あるいは治療ドメインの抑制能力、など)。
【0060】
アンカードメイン
本明細書で用いられているように、「細胞外アンカードメイン」又は「アンカードメイン」は、標的細胞の外側表面にあるいはその上にある、又は標的細胞の外側表面の近接近にある物質に安定的に結合できる部分である。アンカードメインは、標的細胞の外側表面において、あるいはその近傍に本発明に使用している化合物を保持する働きをする。
【0061】
細胞外アンカードメインは、1)標的細胞の表面に発現した分子、あるいは標的細胞の表面に発現した分子の部分、ドメインあるいは、エピトープに、2)標的細胞の表面に発現した分子に付着している化学物質に、あるいは、3)標的細胞周辺の細胞外マトリックスの分子に、結合できる。
【0062】
アンカードメインは、ペプチド又はタンパク質ドメイン(修飾されたあるいは誘導体化されたペプチド又はタンパク質ドメインを含む)であっても良く、あるいは、ペプチド又はタンパク質に結合した部分を含んでいても良い。ペプチド又はタンパク質に結合した部分は、標的細胞表面にあるいはその近傍にある物質へのアンカードメインの結合に寄与するどのようなタイプの分子であってもよく、いくつかの実施例では、例えば、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小有機分子、ポリマ、脂質、ステロイド、脂肪酸、炭水化物、あるいはこれらの組み合わせと言った、有機分子である。
【0063】
アンカードメインによって結合している分子、複合体、ドメイン、あるいはエピトープは、標的細胞に特異的であっても良く、特異的でなくても良い。例えば、アンカードメインは、標的細胞上に又はこの近接近の分子に存在するエピトープに結合することができ、これは、標的細胞近傍以外の部位でも生じる。しかしながら、多くの場合、本発明の治療化合物の局所的送達が、その発生を主に標的細胞の表面に制限する。その他の場合では、アンカードメインによって結合した分子、化合物、部分、ドメイン、あるいはエピトープは、標的細胞又は標的細胞タイプに特異的であっても良い。
【0064】
標的組織又は標的細胞タイプは、病原体が侵入する又は増幅する動物又はヒトの身体内の部位を含む。例えば、標的細胞は、病原体が感染し得ることがある上皮細胞であっても良い。本発明で使用した組成物は、例えば、上皮細胞タイプに特異的である細胞表面エピトープに結合できるアンカードメインを具えていても良い。別の例では、標的細胞が上皮細胞であり、本発明の組成物が多くの上皮細胞タイプの細胞表面に存在する、あるいはタイプの異なる上皮細胞の細胞外マトリックスに存在するエピトープを結合することができる。この場合、組成物の局所的送達が、病原体の標的である上皮細胞部位への局所化を制限することができる。
【0065】
本発明に使用されている化合物は、上皮細胞表面にあるいはその近傍に結合できる一又はそれ以上のアンカードメインを有していても良い。例えば、へパリンに近いヘパラン硫酸は、細胞膜上に偏在的に存在するグリコサミノグリカン(GAG)タイプであり、気道上皮表面を含む。へパリン/ヘパラン硫酸に特異的に結合した多くのタンパク質と、これらのタンパク質中のGAG−結合配列は、同定されている(Meyer,FA,King,M and Gelman,RA.(1975)Biochimica et Biophysica Acta 392:223−232;Sshauer,S.ed.,pp233.Sialic Acids Chemistry,Metabolism and Function.Springer−Verlag,1982)。例えば、ヒト血小板因子4(PF4)(SEQ ID No.2)のGAG−結合配列、ヒトインターロイキン8(IL8)(SEQ ID No.3)、ヒト抗トロンビンIII(ATIII)(SEQ ID No.4)、ヒトアポタンパク質E(ApoE)(SEQ ID No.5)、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)(SEQ ID No.6):又は、ヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)(図1)が、ヘパリンに対して非常に高い親和性(ナノモル範囲の)を持つことがわかっている(Lee,MK and Lander,AD.(1991)Pro Natl Acad Sei USA 88:2768−2772;Goger,B,Halden,Y,Rek,A,Mosl,R,Pye,D.Gallagher,J and Kungl,AJ(2002)Biochem.41:1640−1646;Witt,DP and Lander AD(1994)Curr Bio 4:394−400;Weisgraber,KH,Rall,SC,Mahley,RW,Milne,RW and Marcel,Y.(1986)J Bio Chem 261:2068−2076)。これらのタンパク質のGAG−結合配列は、これらの受容体−結合配列と異なっており、従って、これらは全長タンパク質又は受容体−結合ドメインに関連する生理学的活性を誘発しない。これらの配列、あるいはヘパリン/ヘパラン硫酸結合配列として同定された、あるいは将来同定されるであろうその他の配列、あるいは、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合活性を有する同定されたヘパリン/ヘパラン硫酸結合配列とほぼ相同の配列を、本発明に用いる化合物中の上皮−アンカードメインとして用いることができる。
【0066】
アンカードメインは、特定種の標的細胞タイプに特異的な部分に結合できる、あるいは、一又はそれ以上の種の標的細胞タイプに見られる部分に結合できる。
【0067】
治療ドメイン
本発明に用いている化合物は、少なくとも一の治療ドメイン又は有効成分を含み、これらの用語は明細書内で同じように使用されている。治療活性は、非限定的な例として、結合活性、触媒活性、あるいは抑制活性である。治療ドメインは、標的細胞又は標的器官の機能を修飾する、あるいは、抑制できる。化合物の有効成分は治療活性を有する。例えば、シアリダーゼの触媒ドメイン又は有効成分は、その治療ドメインでありうる。
【0068】
治療ドメインは、細胞外で作用できる、すなわち、細胞外マトリックス、細胞内空間、又は組織の管腔内スペース内の部位を含む、標的細胞においてあるいは標的細胞周囲の中間領域において、感染防止、炎症反応調整、形質導入強化活性が行われる。
【0069】
治療ドメインは、ペプチド又はタンパク質ドメイン(修飾又は誘導体化ペプチド又はタンパク質ドメインを含む)であっても良く、ペプチド又はタンパク質に結合した部分を含む。ペプチド又はタンパク質に結合した部分は、どのようなタイプの分子でも良く、いくつかの実施例では、例えば、核酸、ペプチド核酸、核酸類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、小有機分子、ポリマ、脂質、ステロイド、脂肪酸、炭水化物、あるいはこれらの任意の組み合わせといった、有機分子である。
【0070】
治療ドメインは、合成ペプチド又はポリペプチドであっても良く、ペプチド又はポリペプチドに結合できる合成分子を含んでいても良く、天然ペプチド又はタンパク質、又は天然タンパク質のドメインであっても良い。治療ドメインはまた、天然ペプチド又はタンパク質にほぼ相同であるペプチド又はタンパク質であってもよい。
【0071】
リンカー
本発明で使用している化合物は、選択的に、この化合物のドメインに加えることができる一又はそれ以上のリンカーを具えていても良い。リンカーは、化合物のドメインの最適なスペース又は折りたたみを提供するのに使用できる。リンカーによって結合された化合物のドメインは、治療ドメイン、アンカードメイン、あるいは化合物の安定性を強化する、純化を容易にする、その他といった追加の機能を提供する化合物のその他のドメイン又は部分であってもよい。本発明の化合物のドメインを結合させるのに使用するリンカーは、化学リンカーであっても良く、又はアミノ酸又はペプチドリンカーであっても良い。化合物が一又はそれ以上のリンカーを含む場合、これらのリンカーは、同じ又は異なる。化合物が一又はそれ以上のリンカーを含む場合、これらのリンカーは、同じ又は異なる長さである。
【0072】
様々な組成物、極性、反応性、長さ、柔軟性、開裂可能性が様々である多くの化学リンカーが、有機化学の分野で公知である。好ましいリンカーは、アミノ酸又はペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーは、この分野では良く知られている。いくつかのリンカーの実施例は、1乃至約100アミノ酸長の間であり、1乃至約30アミノ酸長の間であるが、本発明の化合物のリンカーに長さの制限はない。このリンカーアミノ酸配列は、本発明で用いている化合物と組成物の粘液低減及び/又は抗炎症活性を妨げないように選択することができる。リンカーのいくつかの実施例は、アミノ酸グリシンを含むものがある。例えば、配列:(GGGGS(SEQ ID No.10))を有するリンカーを用いて、本発明で使用する治療化合物のドメインに結合できる。ここで、nは1乃至20、あるは1乃至12の整数である。
【0073】
少なくとも一のアンカードメインと少なくとも一の触媒活性を具える組成物
いくつかの態様では、本発明は、酵素活性を持つ治療ドメインを有する化合物を使用することができる。この酵素活性は、宿主分子又は複合体を除去する、分解する、あるいは修飾する触媒活性である。いくつかの実施例では、宿主分子又は複合体は、標的細胞の表面、その上、あるいはその近傍にある本発明の化合物の酵素活性によって除去し、分解し、あるいは修飾することができる。
【0074】
本発明に用いている化合物は、例えば、以下の構造のうちの一つを有していても良い:
(アンカードメイン)n−[リンカー]−(酵素活性)n(n=1,2,3,又はそれ以上);又は、
(酵素活性)n(n=1,2,3,又はそれ以上)−[リンカー]−(アンカードメイン)n、
ここで、リンカーは任意である。
【0075】
酵素活性は、モノマー型のペプチド又はポリペプチドであってもよく、直接リンクしているか、間に間隔配列を置いてリンクしている同じポリペプチドの複数コピーであっても良い。このポリペプチド又はペプチドは、直接リンクしていても良く、あるいはペプチドリンカー配列からなるスペーサを介してリンクしていても良い。アンカードメインは、標的細胞の表面に結合できるあるいは表面近くに結合できるペプチド又はポリぺプチドである。
【0076】
一の実施例では、治療ドメインは上皮細胞表面上のシアル酸レベルをなくす、あるいは大幅に減少させることができるシアリダーゼを含む。治療ドメインは、完全なシアリダーゼタンパク質、又はその有効成分を含んでおり、ここで、その有効成分が、シアリダーゼタンパク質の触媒機能(例えば、シアル酸残基の開裂)を行う能力を維持している。
【0077】
シアル酸は、炎症細胞と標的細胞との間の細胞粘着と相互作用を仲介する。従って、呼吸上皮細胞表面をシアリダーゼで処理することで、炎症細胞が気道表面への炎症細胞の漸増を防止することができ、従って、ぜん息とアレルギィ性鼻炎を含むアレルギィ反応を治療することができる。また、呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を予想外に減らすことになり、呼吸器管における粘液ベースラインを越える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する。
【0078】
本明細書に記載した方法に使用することを意図したシアリダーゼは、受容体シアル酸Neu5Acα(2,6)−GalとNeu5Aα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌性シアリダーゼである。例えば、Clostridium perfringens (Genbnak Accession Number X87369),Actinomyces viscosus,Arthrobacter ureafaciens,又は、Micromonospora viridifaciens(Genbank Accession Number D01045)からの細菌性シアリダーゼ酵素を使用することができる。本発明の化合物の治療ドメインは、大きな細菌性シアリダーゼのアミノ酸配列の全て又は一部を含むものでも良く、あるいは、大きな細菌性シアリダーゼのアミノ酸配列の全て又は一部にほぼ相同であるアミノ酸配列を含むものでも良い。一の好ましい実施例では、治療ドメインが、SEQ ID No.12のシアリダーゼや、又は、SEQ ID No.12にほぼ相同のシアリダーゼ配列などの、Actinomyces viscosusでコードされたシアリダーゼを含む。更に別の好ましい実施例では、治療ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274−667から伸長するActinomyces viscosusシアリダーゼの触媒ドメインを含む。
【0079】
本明細書に記載された方法に使用することを意図したその他のシアリダーゼは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002)Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼなどの、ヒトシアリダーゼである。本発明に使用する化合物の治療ドメインは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部を含んでいても良く、あるいは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部にほぼ相同であるアミノ酸配列を含んでいても良い。治療ドメインが天然に存在するシアリダーゼのアミノ酸配列の一部を含む、あるいは、天然に存在するシアリダーゼのアミノ酸配列の一部にほぼ相同である配列を含む場合、この一部は、ヒトシアリダーゼと実質的に同じ活性を有していても良い。
【0080】
呼吸器管中の高レベルの粘液を低下させる化合物は、いくつかの実施例では、上皮細胞表面にあるいはその近傍に結合できる一又はそれ以上のアンカードメインを有していても良い。いくつかの実施例では、上皮細胞のアンカードメインは、例えば、ヒト血小板因子4(PF4)(SEQ ID No.2)のGAG−結合アミノ酸配列、ヒトインターロイキン8(IL8)(SEQ ID No.3)、ヒト抗トロンビンIII(ATIII)(SEQ ID No.4)、ヒトアポタンパク質E(ApoE)(SEQ ID No.5)、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)(SEQ ID No.6)、及びヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)、といった、ヒトタンパク質からのGAG−結合配列である(図1)。上皮細胞アンカードメインは、図1に挙げられているもののように、天然のGAG−結合配列と実質的に相同であっても良い。このようは化合物は、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注入可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。
【0081】
このような化合物を含む医薬組成物を用いて、アレルギィ反応又は炎症反応を治療又は防止することができる。更に、呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低減させ、呼吸器管中の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する、化合物が明細書中に示されている。従って、このような化合物は、呼吸器管中の粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低減させる治療法として、あるいは、呼吸器管中の粘液のベースラインを超える対象の呼吸器管中の粘液量の増加を制限する予防的治療として、使用することができる。呼吸器管中の粘液に対するこれらの効果により、これらの化合物は、呼吸器管中の粘液レベルが高い、あるいは、呼吸器管中の粘液レベルが高くなるリスクのある対象における、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、の影響を防止する、治療する、あるいは改善するのに使用することができる。
【0082】
また、(a)呼吸器管におけるアレルギィ反応と炎症反応を治療あるいは防止する、(b)呼吸器管における粘液レベルが高い対象の呼吸器管中の粘液量を低下させる、(c)呼吸器管における粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する、及び/又は(d)呼吸器管中の粘液レベルが高い、あるいは、呼吸器管中の粘液レベルが高くなるリスクのある対象における、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症の影響を防止する、治療する、あるいは改善するために、本明細書で述べたいずれかのもののような、ヒトシアリダーゼ、又はその有効成分を含む化合物又は組成物、あるいは、シアリダーゼに実質的に相同である化合物を、アンカードメインなしで使用することも本発明の範囲内である。本発明は、呼吸器管中の高い粘液レベルを、シアリダーゼ又はシアリダーゼの有効成分の使用によって低減できる旨、及び、このようなシアリダーゼ又はその有効成分を、遺伝子工学あるいは化学工学によって、又は製薬処方によって選択的に適合させて、その半減期又は呼吸上皮における滞留を改善できることを認識している。
【0083】
これらの化合物及び医薬組成物は、鼻スプレィとして上気道に送達する、あるいは吸入器を用いた吸入として呼吸器管に送達することができる。
【0084】
本明細書に記載した化合物は、様々な追加の化合物を単独で、又は、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な組み合わせで含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0085】
少なくとも一のシアリダーゼ活性を含む治療組成物
本発明は、少なくとも一のシアリダーゼ活性を含む医薬化合物及び組成物を用いる方法を含む。シアリダーゼ活性は、例えば、細菌又は哺乳類の源、といった何らかの源から分離したシアリダーゼ、あるいは、天然のシアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である遺伝子組み換えタンパク質であってもよい。いくつかの実施例では、シアリダーゼは、大きな細菌シアリダーゼであり、受容体シアル酸である、Neu5Acα(2,6)−Gal及びNeu5Acα(2,3)−Galを分解することができる。例えば、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Actinomyces viscosus (Genbank Accession No.L06898)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいは実質的に相同のタンパク質由来の細菌シアリダーゼ酵素を使用することができる。
【0086】
例えば、本発明で使用している医薬化合物及び組成物は、大きな細菌シアリダーゼを含むものでも良く、あるいは、大きな細菌シアリダーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質を含むものでも良く、あるいは、大きな細菌シアリダーゼのアミノ酸配列に実質的に相同であるアミノ酸配列を含むものでも良い。本発明で使用している医薬組成物は、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)を含む、あるいは、A.viscosusシアリダーゼに実質的に相同であるタンパク質を含む。
【0087】
本明細書に記載されている組成物、化合物及び方法に使用できるその他のシアリダーゼは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession No.Y16535;Monti,E,Preti,Rossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomcs 57:137−143)と、遺伝子NEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession No.NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani G.(2002)Neurochem Res 27:646−663)(図2)によってコードされたものなどの、ヒトシアリダーゼである。本発明の化合物の治療ドメインは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列に実質的に相同であるヒトシアリダーゼタンパク質を含んでいても良く、あるいは、ヒトシアリダーゼのアミノ酸配列の全てあるいは一部に実質的に相同であるアミノ酸配列を含んでいても良い。治療ドメインが天然シアリダーゼのアミノ酸配列の一部を、あるいは、天然シアリダーゼのアミノ酸配列の一部に実質的に相同である配列を含む場合、この部分が、例えば、シアリダーゼの有効成分であるヒトシアリダーゼと実質的に同じ活性を有していても良い。
【0088】
一般的に、呼吸上皮細胞で、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−Gal及びNeu5Acα(2,3)−Galの両方を有効に分解できるシアリダーゼを使用することができる。シアリダーゼは、高等真核生物や、ウイルス、細菌、及び原生動物を含むほとんどの病原菌微生物に見られる。ウイルスシアリダーゼ及び細菌シアリダーゼは、特徴的であり、これらのシアリダーゼのいくつかは三次元構造が分かっている(Crennell,SJ,Garman,E,Laver,G,Vimr,E and Taylor,G.(1994)Structure 2:535−544;Janakiraman,MN,White,CL,Laver,WG,Air,GM and Luo,M.(1994)Biochemistry 33:8172−8179;Pshezhetsky,A,Richard,C,Michaud,L,Igdoura,S,Wang,S,Elsliger,M,Qu,J,Leclerc,D,Gravel,R,Dallaire,L and Potier,M.(1997)Nature Genet 15:316−320)。いくつかのヒトシアリダーゼは、近年クローンされている(Milner,CM,Smith,SV,Carrillo MB,Taylor,GL,Hollinshead,M and Campbell,RD.(1997)J Bio Chem 272:4549−4558;Monti,E,Pret,A,Nesti,C,Ballabio,A and Borsani G.1999.Glycobiol 9:1313−1321;Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J 349:343−351)。シアリダーゼの有効成分を含むDAS181もクローンされている。
【0089】
全ての特徴的なシアリダーゼは、タンパク質によって3乃至5回繰り返した後ろにAspボックスモチーフが続くアミノ末端部分において、4つのアミノ酸モチーフを共有している(Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Robini,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001)Protein Sci 10:285−292)。 シアリダーゼスーパーファミリィの全アミノ酸相同性が約20−30%と比較的低い場合に、分子の全折りたたみ、特に触媒アミノ酸の折りたたみが著しく似ている(Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,a,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Bichem J 349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001) Protein Sci 10:285−292)。
【0090】
シアリダーゼは、一般的に二つのファミリィに分けられる。「小さい」シアリダーゼは、分子量が約42kDaであり、最大活性化に二価金属イオンが不要であり;「大きい」シアリダーゼは、分子量が約65kDaであり、活性化に二価金属イオンを要する(Wada,T,Yoshikawa,Y,Tokuyama,S,Kuwabara,M,Akita,H and Miyagi,T.(1999)Biochem Biophy Res Communi 261:21−27;Monti,E,Bassi,MT,Papini,N,Riboni,M,Manzoni,M,Veneranodo,B,Croci,G,Preti,A,Ballabio,A,Tettamanti,G and Borsani,G.(2000)Biochem J 349:343−351;Copley,RR,Russell,RB and Ponting,CP.(2001)Protein Sci 10:285−292)。
【0091】
15を超すシアリダーゼタンパク質が精製され、これらは基質特異性と酵素反応速度によって大きく異なる。大きい細菌シアリダーゼは、ほとんどの天然物質との関連で、(α、2−6)リンケージと(α、2−3)リンケージの両方において、シアル酸を効率良く開裂させることができる(図4;Vimr,DR.(1994)Trends Microbiol 2:271−277;Drzeniek,R.(1973)Histochem J5:271−290;Roggentin,P,Kleineidam,RG and Schauer,R.(1995)Biol Chem Hoppe−Seyler 376:569−575;Roggenti,P,Schauer,R,Hoyer,LL and Vimr,ER.(1993)Mol Microb 9:915−921)。この広い基質特異性によって、大きな細菌シアリダーゼは、優れた候補になる。
【0092】
図4は、既知の基質特異性を持ついくつかの大きい細菌シアリダーゼを示す。これらの酵素は、高比放射能であり(C.perfringensでは600U/mgタンパク質(Corfield,AP,Veh,RW,Wember,M,Michalski,JC and Schauer,R.(1981)Bichem J 197:293−299)及びA.viscosusでは680U/mgタンパク質(Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443))、二価金属鉄なしで完全に活性であり、E.Coliからの組み換えタンパク質としてクローン化され精製されている(Roggentin,P,Kleineidam,RG and Schauer,R.(1995)Biol Chem Hoppe−Seyler 376:569−575,Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443,Sakurada,K,Ohta,T and Hasegawa,M.(1992)J Bacteriol 174:6896−6903)。更に、C.perfringens は、2乃至8℃の溶液中で数週間安定であり、アルブミン存在下で4℃では2年以上安定である(Wang,FZ,Akula,SM,Pramod,NP,Zen,L and Chandran,B.(2001)J Virol 75:7517−27)。A.viscosus は、凍結と解凍に対して不安定であるが、4℃で、0.1Mアセテート緩衝液中で、pH5で安定である(Teufel,M,Roggentin,P.and Schauer,R.(1989)Biol Chem Hoppe Seyler 370:435−443)。
【0093】
シアリダーゼを含む医薬組成物は、限定するものではないが、やはり治療活性を有するその他のタンパク質を含むその他の化合物を含むものでも良い。シアリダーゼを含む医薬組成物は、組成物の安定性、溶解性、パッケージ性、送達性、濃度、味、あるいは香りを強化するその他の化合物を含むものでも良い。
【0094】
シアリダーゼを含む化合物は、鼻、気管、気管支、経口、又は局所投与用に調整することができる、あるいは、注射溶液あるいは点眼液として調整することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に調整し、吸入器を用いて吸入することができる。本明細書に記載したシアリダーゼは、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロース又はその類似体など、様々な追加の化合物を含む医薬製剤に調整することができる。
【0095】
これらのシアリダーゼ、又はシアリダーゼを含む医薬組成物を用いて(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器管の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、又は呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器官の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。いくつかの実施例では、呼吸器官における粘液レベルが高い対象は、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のうちの一又はそれ以上を有する対象を含まない。
【0096】
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド
ここで用いているように、「シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド」は、シアリダーゼの触媒ドメインを含むが、この触媒ドメインを取り出すシアリダーゼのアミノ酸配列全てを含むものではない。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドはシアリダーゼ活性を有する。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、この触媒ドメイン配列を取り出すシアリダーゼの活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%を有する。シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、この触媒ドメイン配列を取り出すシアリダーゼの活性の少なくとも90%を有していても良い。
【0097】
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、限定するものではないが、追加のシアリダーゼ配列、その他のタンパク質から取り出した配列、又は、天然のタンパク質の配列から取り出したものではない配列など、その他のアミノ酸配列を有していても良い。追加のアミノ酸配列は、触媒ドメインタンパク質に対するその他の活性に寄与する、シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質の発現、処理、折りたたみ、あるいは安定性を強化する、あるいは、タンパク質又はペプチドの所望のサイズ又はスペースを提供することを含む、多数の機能のいずれかを行うことができる。
【0098】
好ましいシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインを含むタンパク質である。A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸270−667を含む。A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸270からアミノ酸290までのアミノ酸のいずれかで開始し、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸665からアミノ酸901までのいずれかで終端し、アミノ酸1からアミノ酸269に延びるA.viscosusシアリダーゼタンパク質配列を欠いている、アミノ酸配列を含むものでよい。(ここで用いられているように、「アミノ酸1からアミノ酸269に伸長するA.viscosusシアリダーゼタンパク質配列を欠いている」とは、これらのアミノ酸が指定のタンパク質又はアミノ酸配列に発現するときに、4又はそれ以上の連続するアミノ酸の伸張を欠くことを意味する。)
【0099】
いくつかの実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸274−681を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。その他の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質は、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至666又は290乃至667を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸274乃至666を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至666又は290乃至667を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。更に別の実施例では、A.viscosusシアリダーゼの触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、A.viscosusシアリダーゼ配列(SEQ ID No.12)のアミノ酸290乃至681を含み、その他のA.viscosusシアリダーゼの配列を欠いている。
【0100】
このようなシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注入可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。本明細書に述べたシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチドは、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な追加の化合物を含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、単独で、あるいはNa2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体などの様々な組み合わせで、医薬組成物に含めるようにしても良い。これらの追加の化合物は、これらの医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0101】
このようなシアリダーゼ触媒ドメインタンパク質又はペプチド又は、これらを含む医薬組成物は、(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器官の粘液レベルが高い対象の呼吸器官の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器官の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、又は呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器管の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。
【0102】
融合タンパク質
シアリダーゼ触媒ドメインタンパク質は、融合タンパク質であっても良く、ここでは融合タンパク質が少なくとも一のシアリダーゼ触媒ドメインと、限定するものではないが、精製ドメイン、タンパク質タグ、タンパク質安定化ドメイン、可溶化ドメイン、タンパク質サイズ増大ドメイン、タンパク質折りたたみドメイン、タンパク質局在化ドメイン、アンカードメイン、N−末端ドメイン、C−末端ドメイン、触媒活性ドメイン、結合ドメイン、あるいは触媒活性強化ドメインを含む、その他のタンパク質ドメインのうちの少なくとも一のその他のドメインを有する。少なくとも一のその他のタンパク質ドメインは、限定するものではないが、別のタンパク質からの配列といった、別の源から取り出すことができる。少なくとも一のその他のタンパク質ドメインは、既知のタンパク質配列に基づくものである必要はないが、融合タンパク質の機能を実行するように設計され、経験的に試験されたものでよい。
【0103】
精製ドメインは、非限定的な例として、ヒスチジン標識、カルモジュリン結合ドメイン、マルトース結合タンパク質ドメイン、ストレプタビジンドメイン、ストレプタビジン結合ドメイン、インテインドメイン、あるいはキチン結合ドメインのうちの一又はそれ以上を含んでいても良い。タンパク質表示器は、例えば、myc標識、血球凝集素標識、又はFLAG標識などの、タンパク質検出抗体として使用できる配列を含むものでも良い。タンパク質の発現、修飾、折りたたみ、安定性、サイズ、又は局在化を強化するタンパク質ドメインは、既知のタンパク質又は合成されたタンパク質の配列に基づくものでも良い。その他のタンパク質ドメインは、結合又は触媒活性を有していても良く、シアリダーゼの触媒ドメインの触媒活性を強化するものでも良い。
【0104】
本発明の組成物、化合物及び方法に使用されている融合タンパク質は、少なくとも一のシアリダーゼ触媒ドメインと少なくとも一のアンカードメインを含む。いくつかの実施例では、アンカードメインは、GAG−結合ドメイン又はヒトアンフィレギュリン(SEQ ID No.7)などのGAG−結合ドメインを含む。
【0105】
本発明に使用されている融合タンパク質のシアリダーゼ触媒ドメインとその他のドメインは、限定するものではないが、ペプチドリンカーなどのリンカーによって選択的に結合することができる。この分野では、様々なペプチドリンカーが知られている。一の実施例では、リンカーが、G−G−G−G−S(SEQ ID No.10)などのグリシンを含むペプチドリンカーである。
【0106】
このような融合タンパク質は、鼻、気管、気管支、経口、あるいは局所投与用に製剤することができる、あるいは、注射可能な溶液として、あるいは点眼液として製剤することができる、あるいは、溶液、又は乾燥粉末に製剤して、吸入器で吸入することができる。これらの融合タンパク質は、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な追加の化合物を単独で、又は組み合わせで含む医薬組成物に調整することができる。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0107】
これらを含むこのような融合タンパク質又は医薬組成物を用いて、(a)呼吸器官のアレルギィ反応及び炎症反応を治療又は防止する、(b)呼吸器官の粘液レベルが高い対象の呼吸器官の粘液量を低下させる、(c)呼吸器官の粘液ベースラインを超える対象の呼吸器官の粘液量の増加を制限する、及び/又は、(d)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象又は呼吸器管の粘液レベルが高くなるリスクがある対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する。
【0108】
融合タンパク質の様々な構成が図4乃至6、並びにここに提供されている配列リストに挙げられた配列に示されている。
【0109】
炎症を伴う疾病を治療するための、化合物及び組成物を試験する方法、及び/又は、シアリダーゼ及び/又はその有効成分を同定するスクリーニング方法
本明細書に提供されている化合物及び組成物は、当業者に公知の標準的アッセイを用いて、炎症、アレルギィ、粘液の過剰生産などに伴う反応を低減する活性を試験することができる。炎症又は粘液の過剰生産を測定するには、いくつかの細胞ベース(例えば、気管細胞培養)及び動物ベース(マウスモデル、テンジクネズミモデル)のアッセイが知られている(例えば、Nakao et al.,J.Immunol.,180:6262−6269(2008);Westerhof et al.,Mediators Inflamm.,10(3):143−154(2001);Miller et al.,J.Immunol.,170:3348−3356(2003);Nakanishi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98(9):5175−5180(2001);and Dubuske,Allergy Prc.,16(2):55−58(1995)を参照。各文献の内容は、全体が引用によってここに組み込まれている)。ここで提供されている化合物と組成物について、これらのアッセイ又は当業者に知られているその他の標準アッセイで、炎症又は粘液に過剰生産を低減する能力を試験することができる。更に、シアリダーゼ又はその有効成分を、その抗炎症活性及び/又は、粘液の過剰生産などの関連する反応をこのようなアッセイを用いて低減する能力について、同定し、及び/又は、選択することができる。例示的なアッセイとプロトコルが、実施例1及び実施例2に述べられている。
【0110】
炎症又は、粘液の過剰生産などの関連する反応を測定するアッセイに加えて、本明細書に提供されている化合物及び組成物は、ムスカリン受容体を妨害する能力を評価することによって、すなわちアゴニストの存在下で信号を伝達することによって、その活性を試験することができる。ムスカリン受容体、又は、mAChRsは、所定の神経細胞とその他の細胞の血漿膜中に見られるGタンパク質に結合したアセチルコリン受容体である。この受容体は、副交感神経系の節後繊維から放出されたアセチルコリンによって刺激を受けた主な末端受容体としての作用を含め、いくつかの役割を果たす。
【0111】
ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用と、その結果としての信号伝達は、喘息やCOPD(例えば、“Muscarinic Receptors in Airways Diseases,”Birkhause−Verlag publ.,Zangsma et al.,Eds.を参照)炎症反応及び/又はアレルギィ反応に関連する疾病においてある役割を果たすと考えられる。
【0112】
特に、アセチルコリンメカニズムは、以下の正常な呼吸機能及び病原性呼吸機能に影響を与えると認識されている:
1.粘液の分泌、
2.気道上皮を通る粘液線毛輸送中のイオンの能動輸送、
3.気道の平滑筋緊張、
4.気道の免疫反応及び炎症反応、
5.気道の反射調節、
6.喘息及びその他の呼吸器管の過敏状態における気道の呼吸反応。
【0113】
結果的に、所定の抗ムスカリン剤が:(a)アセチルコリンによって誘発される気管支収縮;(b)βブロッカーによって誘発される医原性気道痙縮;及び(c)心因性気管支痙攣;に有効であった。抗ムスカリン剤の二つの主な肺のアプリケーションは、慢性気管支炎と気管支喘息であった(Pharmacology of Anti−Muscarinic Agents,Laszlo Gyermek(1998))。
【0114】
ムスカリン受容体には、その生理学的役割に基づく5つの広い分類があり、これらの受容体の各々に対するアゴニストが当業者に知られている:
M1受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、オキソトレモリン、ムスカリン、カルバコール、及びMcNA343がある
M2受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、メタコリン、カルバコール、オキソトレモリン、及びムスカリンがある
M3受容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、ベタニコール、カルバコール、オキソトレモリン、及びピロカルピンがある
M4容体−例示的アゴニストはアセチルコリン、カルバコール、オキソトレモリンがある
M5容体−例示的アゴニストにはアセチルコリン、カルバコール、オキソトレモリンがある
【0115】
いくつかの実施例では、本明細書に記載されている化合物及び組成物について、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を防止する能力を評価することによって、RTIs又はRTDsに関連する、粘液過剰生産を含む炎症反応及び/又はアレルギィ反応を低減する能力を試験することができる。更に、シアリダーゼ及び/又はその有効成分をスクリーニング、同定、及び選択して、ムスカリン受容体−アゴニスト相互作用を防止する能力を評価することによって、炎症、アレルギィ、及び/又は粘液過剰生産などの関連する反応を低減する能力を試験することができる。これらの試験及びスクリーニングは、当業者に知られている標準アッセイを用いて行うことができる(例えば、Armstrong et al.,Curr.Protocols in Pharmacol.,UNIT 12−13(2010)を参照。この文献の内容は、ここに引用により全体が組み込まれている)。例示的なアッセイとプロトコルは、実施例3に記載されている。
【0116】
医薬組成物
本発明は、医薬組成物として調整した本発明の化合物を含む。この医薬組成物は、保存と続いて行う投与用に調整された薬学的に許容できるキャリアを含み、薬学的に許容できるキャリア又は希釈液中に薬学的有効量の化合物を有する。治療用の許容できるキャリア又は希釈液は、薬学の分野ではよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に記載されている。保存料、安定化剤、染料、及び香料を医薬組成物に提供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存料として加えることができる。更に、抗酸化剤と懸濁化剤を使用することができる。
【0117】
標的細胞によっては、本発明の化合物は、経口又は吸入投与用の錠剤、カプセル、エリキシル剤として;局所的に塗布する軟膏(salves)又は軟膏(ointments)として;直腸投与用座薬として;吸入基又は鼻スプレィ用の滅菌溶液、懸濁液、カプセル化した粉体などとして;調整し使用することができる。溶液又は懸濁液、又は、注入前に溶液又は懸濁液にするのに適した固形としての、従来の形状で注入剤を調整することもできる。
【0118】
好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、D型グルコース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システイン、などである。これらの賦形剤に加えて、本明細書に記載されている医薬製剤に、追加の化合物を、単独で、あるいは、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、などの様々な組み合わせで含めるようにしても良い。これらの追加の化合物は、賦形剤として、あるいは更なる有益な効果を提供する活性成分として作用するように医薬組成物に含めるようにしても良い。更に、所望であれば、注入可能な医薬組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤など、非毒性補助物質を少量含んでいても良い。
【0119】
投与に必要な試験化合物の薬学的有効量は、投与ルート、治療を受ける動物又は患者のタイプ、対象としている特定動物の物理的特徴によって異なる。この投与量は、呼吸器管の高レベルな粘液を低減させるなど、所望する効果を実行するために調整することができるが、体重、食事、現在の投薬などの要因と、当業者が認識するその他の要因によって異なるであろう。本発明の方法を実行するに際して、医薬組成物は、単独で用いても良く、別の組成物と組み合わせて、又は、その他の治療又は診断薬剤と組み合わせて用いても良い。これらの製品は、非ヒト動物対象、哺乳動物対象、ヒト対象にはインビボで用いることができ、さもなければインビトロで用いる。これらの組成物をインビボで使用する場合、医薬組成物は、患者又は対象に、局所的に、非経口で、静脈内投与で、皮下で、筋肉注射で、結腸から、直腸から、鼻からあるいは腹腔から、を含む様々な経路で、様々な投与形を用いて投与することができる。このような方法は、インビボで試験化合物の活性を試験するのにも使用することができる。
【0120】
いくつかの実施例では、これらの医薬組成物は、経口投与可能な懸濁液、溶液、錠剤あるいはトローチ剤、鼻スプレィ、吸入剤、注入物質、局所スプレィ、軟膏、パウダー、又はジェルの形であっても良く、あるいは、吸入器吸入する溶液又は乾燥パウダーに調整したものでも良い。
【0121】
懸濁液として経口投与する場合、本発明の組成物を、医薬製剤の分野で良く知られている技術に応じて調整し、懸濁剤として食物繊維、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムを与える微結晶性セルロースと、粘性強化剤としてメチルセルロースと、この分野で知られている甘味/芳香剤を含んでいても良い。即効型錠剤として、これらの組成物が微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム、スターチ、ステアリン酸マグネシウムとラクトース及び/又はこの分野で知られているその他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、及び潤滑剤を含んでいても良い。マウスウォッシュ又はリンスの剤形の化合物は、抗菌剤、界面活性剤、共界面活性剤、オイル、水、及びこの分野で知られている甘味剤/芳香剤などのその他の添加物を含んでいても良い。
【0122】
飲用溶液によって投与する場合は、この組成物は、水に溶かして、pHを適宜調整した本発明の一又はそれ以上の化合物を、キャリアと共に含んでいる。この化合物は、蒸留水、水道水、湧水、などに溶かすことができる。いくつかの実施例では、pHを、約3.5乃至約8.5の間に調整することができる。甘味料は、例えば、1%(w/v)のスクロースを加えることができる。
【0123】
トローチ剤は、本明細書に引用により組み込まれている米国特許第3,439,089号によって調整することができる。
【0124】
鼻エアロゾル又は吸入によって投与する場合、この医薬組成物は、医薬製剤の分野で良く知られている技術によって調整することができ、ベンジルアルコール又はその他の好適な保存剤、生体適合性を強化する吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又はこの分野で知られているその他の可溶化剤又は分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調整できる。例えば、Ansel,H.C.et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Sixth Ed.(1995)を参照。吸入パウダーは、米国特許出願第11/657,813号及び12/179,520号に記載された技術を用いて調整することもできる。これらの出願は、全体が引用としてここに組み込まれている。これらの組成物及び製剤は一般的に、好適な非毒性の薬学的に受容できる成分で調整することができる。これらの成分は、鼻投与形の調整における当業者に知られており、いくつかは、この分野における標準文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に見ることができる。好適なキャリアの選択は、例えば、溶液、懸濁液、軟膏、又はジェルといった、所望される鼻投与形の実際の特徴に大きく依存している。鼻投与形は、一般的に、有効成分に加えて大量の水を含んでいる。pH調整剤、乳化剤又は分散剤、保存剤、界面活性剤、ゼリー化剤、又は、緩衝剤及びその他の安定化及び可溶化剤、といった少量のその他の成分が存在していても良い。一般的に、鼻投与形は、鼻の分泌液と等張である。
【0125】
鼻腔投与製剤は、点滴剤、スプレィ、エアロゾルとして、又はその他の経鼻投与形によって投与することができる。選択的に、送達システムは、単に投与送達システムであってもよい。投与ごとに送達される溶液又は懸濁液の量は、約5乃至約2000マイクロリットル、約10乃至約1000マイクロリットル、又は約50乃至約500マイクロリットルのいずれであっても良い。様々な投与形の送達システムは、単回投与あるいは複数回投与パッケージになった、点滴液ボトル、プラスチックのスクイーズユニット、アトマイザー、噴霧器、又は薬剤エアロゾルであっても良い。
【0126】
本発明の製剤は:(1)pHを調整するその他の酸及び塩を含める;(2)ソルビトール、グリセリン、D形グルコースなどの等張性を高めるその他の物質を含める;(3)p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ソルベート、安息香酸エステル、プロピオン塩酸、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、水銀剤などのその他の抗菌性保存剤を含める;(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びその他のゴムといった、その他の粘性強化材を含める;(5)適宜の吸収強化剤を含める;(6)亜硫酸水素塩やアスコルビン酸塩などの抗酸化剤といった安定剤、ナトリウム・エデト酸塩などの金属キレート化剤、及びポリエチレングリコールなどの薬剤溶解性強化剤を含める、ように変化させることができる。
【0127】
本発明の一の実施例は、約0.01mg乃至約100mgの投与レベルと言った様々な投与レベルで呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低減し、及び/又は呼吸器管の粘液ベースラインを超えている対象の呼吸器管の粘液量の増加を制限する医薬組成物を含む。このような投与レベルの例には、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、あるいは100mgの投与がある。本発明のその他の実施例は、約0.01mg乃至約100mgの投与レベルと言った様々な投与レベルで呼吸器管の炎症を抑えるあるいは呼吸器管の炎症が悪化するのを防ぐ医薬組成物を含む。このような投与レベルの例には、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、あるいは100mgの投与がある。上述の投与量は、一日当たり一又はそれ以上の回数で、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、あるいは14日、あるいはそれ以上の日で投与することができる。より多い投与量で、あるいはより少ない投与量で投与することもできる。通常は、投与量は、約1ng/kg乃至約10mg/kg、約10ng/kg乃至約1mg/kg、及び約100ng/kg乃至約100μg/kgであってもよい。ここに述べた様々な例では、マウスを、0.0008mg/kg、0.004mg/kg、0.02mg/kg、0.06mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、及び1.0mg/kgを含む様々な投与量の本明細書に記載の組成物で処置した。
【0128】
一の実施例では、医薬組成物が、DAS181、MgSO4 1.446mg/ml、CaCl2 0.059mg/ml、ヒスチジン 1.427mg/ml、ヒスチジン−HCl 1.943mg/ml、及びトレハロース 3.000mg/mlを含む。
【0129】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含む。
【0130】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181、Na2SO4、及びCaCl2を含む。
【0131】
別の実施例では、医薬組成物が、DAS181と、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースのうちの一又はそれ以上の組み合わせを含む。
【0132】
別の実施例では、医薬組成物が:(a)天然のシアリダーゼタンパク質又はペプチド又はその有効成分、あるいは天然のシアリダーゼの少なくとも一部とほぼ相同である組み換えタンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、(d)ヒスチジン 1.427mg/mlと、(e)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同である、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681などの有効成分、又は、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインにほぼ相同である、シアリダーゼである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解する大きな細菌性シアリダーゼの一つからのものである。例えば、Clostridium perfringens (Genbank Accession Number X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又は、Micromonospora viridifaciens (Genbank Accession Number D01045)からの細菌性シアリダーゼ酵素、又は、これらのシアリダーゼ又はその有効成分にほぼ相同であるタンパク質又はペプチドである。別の実施例では、このタンパク質とペプチドは、遺伝子NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002)neurochem Res 27:646−663)(図2)、又はこれらのシアリダーゼの有効成分でコードされたシアリダーゼなどの、その他のシアリダーゼである。
【0133】
別の実施例では、医薬組成物は(a)天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、(b)MgSO4、(c)CaCl2、(d)ヒスチジン、(e)ヒスチジン−HCl、及び(f)トレハロースを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、A.viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Rossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27: 646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0134】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、(b)Na2SO4、及び(c)CaCl2を含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens(Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535;Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0135】
別の実施例では、医薬組成物は、天然シアリダーゼタンパク質又はペプチド、又はその有効成分、又は、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同の組み換えタンパク質、及び、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースの一又はそれ以上の組み合わせを含む。一の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼであるか、あるいは、Actinomyces viscosusシアリダーゼのその他の触媒ドメインである。別の実施例では、このタンパク質又はペプチドが、受容体シアル酸であるNeu5Acα(2,6)−GalとNeu5Acα(2,3)−Galを分解できる大きな細菌シアリダーゼ由来のものである。例えば、この細菌シアリダーゼ酵素は、Clostridium perfringens (Genbank Accession No.X87369)、Arthrobacter ureafaciens、又はMicromonospora viridifaciens(Genbank Accession No.D01045)、あるいはこれらのシアリダーゼ又はその有効成分に実質的に相同のタンパク質又はペプチドからの細菌シアリダーゼ酵素である。その他の実施例では、このタンパク質又はペプチドは、NEU2(SEQ ID No.8;Genbank Accession Number Y16535; Monti,E,Preti,Riossi,E.,Ballabio,A and Borsani G.(1999)Genomics 57:137−143)とNEU4(SEQ ID No.9;Genbank Accession Number NM080741;Monti,E,Preti,A,Venerando,B and Borsani,G.(2002) Neurochem Res 27:646−663)(図2)でコードされたシアリダーゼ、あるいはこれらのシアリダーゼの有効成分といった、その他のシアリダーゼ由来のものである。
【0136】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、ヒスチジン 1.427mg/mlと、(d)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlと、を含む。
【0137】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)MgSO4と、(c)CaCl2と、(d)ヒスチジンと、(e)ヒスチジン−HClと、(f)トレハロースと、を含む。
【0138】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID NO.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)Na2SO4と、(c)CaCl2と、を含む。
【0139】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有する融合タンパク質であり、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID NO.:12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID NO.:7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、融合タンパク質と、(b)Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースの一又はそれ以上の組み合わせと、を含む。
【0140】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)MgSO4 1.446mg/mlと、(c)CaCl2 0.059mg/mlと、(d)ヒスチジン 1.427mg/mlと、(e)ヒスチジン−HCl 1.943mg/mlと、(f)トレハロース 3.000mg/mlと、を含む。
【0141】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)MgSO4と、(c)CaCl2と、(d)ヒスチジンと、(e)ヒスチジン−HClと、(f)トレハロースと、を含む。
【0142】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)Na4SO4と、(c)CaCl2と、を含む。
【0143】
別の実施例では、医薬組成物は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを有する融合タンパク質と、(b)Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロースの一又はそれ以上の組み合わせと、を含む。
【0144】
本発明の医薬組成物のもう一つの代表的な例であって、本明細書に記載した方法に使用できるものは:DAS181、ヒスチジン、硫酸マグネシウム(又はクエン酸塩)、塩化カルシウム、トレハロース、水、Na−酢酸、及び酢酸を含む。
【0145】
本発明の医薬組成物の更なる代表的な例であって、本明細書に記載した方法に使用できるものは、DAD181(約0.01%乃至約100%w/w、約1.00%乃至約90.0%w/w、約5.00%乃至約80%w/w、約10.0%乃至約70.0%w/w、約20.0%乃至約70%w/w、約30.0%乃至約70.0%w/w、約40.0%乃至約70.0%w/w、約50.0%乃至約70%w/w、約60.0%乃至約70.0%w/wのいずれかの濃度)を、ヒスチジン又はヒスチジン−HCl(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)、硫酸マグネシウム(又はクエン酸又は硫酸ナトリウム)(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、塩化カルシウム(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、トレハロース(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、水(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約1.00%乃至約75.0%w/w、約2.00%乃至約70.0%w/w、約3.00%乃至約60%w/w、約4.00%乃至約50.0%w/w、約5.00%乃至約40.0%w/w、約6.00%乃至約30%w/w、約7.00%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、Na−酢酸塩(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、酢酸(約0.00%乃至約90.0%w/w、約0.01%乃至約80.0%w/w、約0.01%乃至約75.0%w/w、約0.01%乃至約70.0%w/w、約0.01%乃至約60%w/w、約0.01%乃至約50.0%w/w、約0.01%乃至約40.0%w/w、約0.01%乃至約30%w/w、約0.10%乃至約20.0%w/wのいずれかの濃度)と、のいずれかと組み合わせたものを含む。
【0146】
上述の医薬組成物はいずれも、MgCl2を約0%乃至約75%w/wの範囲の様々な濃度で追加的に含んでいても良い。
【0147】
呼吸器管の粘液の低減とその上昇の制限
呼吸器管ツリー内の粘液の蓄積又は高レベルは、生産した粘液量が増えること、及び呼吸器管中の繊毛によるクリアランスの欠陥によりクリアランス率が低下することによって生じる。粘液の分泌過多は慢性でありうるが、喘息の発作の間のCOPDの悪化や、気管支拡張症や嚢胞性線維症の患者で、高い粘液量が生産される(W.D.Kim,Eur Respir.J.1997,10:1914−1917)。粘液の過剰分泌又はそのクリアランスの低下に関連する気道における管腔内粘液蓄積(すなわち、高い粘液レベル)は、肺疾患及び、限定するものではないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、吸呼吸器感染、気道閉塞毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、アルコール依存症、を含む悪化した症状及び/又は疾患呼吸器管に影響する疾患のほとんど全てに、臨床的問題を引き起こす。呼吸器管の高い粘液レベルは、重要な予後決定因子であり、嚢胞性線維症やCOPDに加えて、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息といった様々な肺疾患の臨床特性である(W.D.Kim,Eur Respir.J.1997,10:1914−1917)。従って、いくつかの実施例では、本開示は、これらの症状又は疾患の一又はそれ以上をもつ患者が治療のために選択されている方法を含む。いくつかの実施例では、この方法が、本明細書に記載された症状又は疾病の一又はそれ以上をもつ患者であって、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及び/又は気道感染症(RSV)の一又はそれ以上に感染していない患者を選択するステップを具えていても良い。この選択に続いて、対象は、本明細書に開示されている組成物の一又はそれ以上を投与することによって治療を受けることができる。
【0148】
本明細書及び米国特許出願番号第10/718,986合と第10/939,262合に記載の化合物、あるいはこれらを含む組成物を投与して、呼吸器管中の粘液レベルが高い患者の呼吸器管の粘液量を低減し、呼吸器管で粘液ベースラインを超えている患者の呼吸器管の粘液量の増加を制限する方法が、提供されている。従って、本発明は、本明細書に記載されている、呼吸器炎症又は粘液生産の増加によって引き起こされる、又は悪化する、アレルギィ性及び非アレルギィ性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎(急性及び慢性の両方)、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、及び、呼吸器管中に炎症又は高い粘液生産を引き起こす、あるいは呼吸器管中で炎症又は高い粘液生産によって悪化するあらゆるその他の疾病を防止する又は治療する治療成分及び/又は組成物の治療方法に関する。本発明は、本明細書に述べた治療用化合物及び/又は組成物を用いて、呼吸器管の粘液レベルが高い患者の呼吸器管の粘液量を低減し、呼吸器管の粘液ベースラインを超えている患者の呼吸器管の粘液量の増加を制限する方法も含む。
【0149】
いくつかの実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的に有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物又は化合物を患者に投与するステップを具える。このタンパク質又はペプチドは、単離された天然のシアリダーゼタンパク質、又は天然のシアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である組み換えタンパク質であってもよい。一の実施例では、医薬組成物又は化合物が、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同であるか、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681といったこのシアリダーゼの有効成分にほぼ相同であるシアリダーゼか、あるいは、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインを含む。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量のタンパク質又はペプチドを含む。
【0150】
その他の実施例では、この方法は、治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具え、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0151】
更に別の実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0152】
その他の実施例は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、脳胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液閉塞、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は呼吸器管に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性気道感染、α1−抗トリプシン欠乏症、原発性免疫不全、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染状態、感染後状態、風邪、運動誘発性粘液分泌過多、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気道感染、呼吸障害、有毒ガス吸入又は吸引、肺吸引、呼吸器管の粘液レベルが高い対象におけるアルコール中毒症、の影響を防止、治療あるいは改善する方法を含む。この方法は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物を対象に投与するステップと、(b)治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップであって、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、ステップと、(c)シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップと、を具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0153】
更に別の実施例は、呼吸器管における粘液ベースラインを超えている対象の呼吸器管における粘液量の増加を制限する方法を具える。この方法は、(a)シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物を対象に投与するステップと、(b)治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップであって、この融合タンパク質がシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有し、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、ステップと、(c)シアリダーゼ又はその有効成分とアンカードメインを有する治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップと、を具える。治療的有効量は、この組成物の投与前に存在した粘液量に比べたときに、この組成物又は化合物投与後の呼吸器管の粘液量を低下させる量の融合タンパク質を含む。
【0154】
いくつかの実施例では、使用する組成物又は化合物が、限定するものではないが、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース又はその類似体、Mg塩及び/又はCa塩、の一又はそれ以上、あるいは様々な組み合わせを含む、追加の化合物を具えていても良い。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0155】
上述の方法で治療を受ける対象は、ヒト対象、あるいは非ヒト動物対象であっても良い。本明細書に述べた化合物と組成物は、限定するものではないが、吸入器を用いて化合物又は組成物を対象の呼吸器管に導入することを含めて、様々な投与ルートを介して対象の上皮細胞へ投与することができる。
【0156】
いくつかの好ましい実施例では、本明細書に述べた化合物を吸入器を用いた吸入、あるいは鼻スプレィとして送達することができる。この化合物は、点眼液、点耳液、スプレィ、軟膏、ローション、あるいは肌に塗布するジェルとして投与することもできる。この化合物は、静脈内投与であるいは局所注射として投与することができる。
【0157】
呼吸器管の炎症の低減又は防止
本発明は、米国特許出願番号第10/718,986号及び10/939,262号に記載の化合物又はこの化合物を含む組成物の投与が呼吸器管の炎症細胞の量を減らすという予期しない発見を含む。従って、本発明は、呼吸器管の炎症を低減する、あるいは、呼吸器管の炎症の悪化を抑えるのに使用することができる治療組成物又は化合物に関する。本発明は、また、呼吸器管の炎症を低減する、あるいは、呼吸器管の炎症の悪化を抑える方法を含む。更に、本発明は、アレルギィ性及び非アレルギィ性ぜん息、アレルギィ性鼻炎、皮膚炎、乾癬、植物性又は動物性毒素への反応、自己免疫性状態、及び呼吸器管に炎症を起こす、又は、呼吸器管の炎症によって生じるあるいは悪化するその他の疾患、疾病又は状態、などの呼吸器の炎症によって生じる、呼吸器の炎症を引き起こす、あるいは呼吸器の炎症によって悪化する疾患を防止又は治療するのに使用できる治療組成物又は化合物に関する。
【0158】
いくつかの好ましい実施例では、この方法は、シアリダーゼ又はその有効成分を有する治療的有効量のタンパク質又はペプチドを含む組成物又は化合物を対象に投与するステップを具える。このタンパク質又はペプチドは、単離された天然シアリダーゼタンパク質であるか、あるいは、天然シアリダーゼの少なくとも一部にほぼ相同である組み換えタンパク質であっても良い。好ましい医薬組成物は、A.viscosusシアリダーゼ(SEQ ID No.12)にほぼ相同である、又はSEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、274乃至667、270乃至667、274乃至681、又は290乃至681などの有効成分、又は、Actinomyces viscosisシアリダーゼのその他の触媒ドメインにほぼ相同である、シアリダーゼを含む。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減するタンパク質又はペプチドの量を含む。
【0159】
その他の実施例では、この方法は、治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具え、ここで、この融合タンパク質はシアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを有しており、このシアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列(代替的に、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至666、270乃至667、274乃至681、290乃至681、又はActinomyces viscosisのその他の触媒ドメイン)と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインを含み、このアンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減する融合タンパク質の量を含む。
【0160】
更なる実施例では、この方法が、シアリダーゼ又はその有効成分と、アンカードメインを含む治療的有効量の融合タンパク質を含む組成物又は化合物を投与するステップを具える。治療的有効量は、この組成物又は化合物の投与後に、気道内でのアレルギィ又は炎症反応を防止又は低減する融合タンパク質の量を含む。
【0161】
いくつかの実施例では、使用した組成物又は化合物が、限定する物ではないが、Na2SO4、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、トレハロース、又はその類似体の一又はそれ以上を、単独で又は組み合わせて含む追加の化合物を含むものでも良い。これらの追加の化合物は、医薬組成物に含めて、更なる有益な効果を提供する賦形剤又は活性成分として作用するようにしても良い。
【0162】
上述の方法で治療を受ける対象は、ヒト対象又は非ヒト動物対象であっても良い。本明細書に述べた組成物及び化合物は、対象の皮下細胞に、限定するものではないが、吸入器を用いて化合物又は組成物を対象の呼吸器に導入することを含めて、様々な投与ルートで投与することができる。
【0163】
いくつかの好ましい実施例では、本明細書に述べた組成物又は化合物は、吸入器を用いた吸入により、あるいは鼻スプレィで送達することができる。この組成物又は化合物は、点眼液、点耳液、スプレィ、軟膏、ローション、あるいは肌に塗布するジェルとして投与することもできる。この化合物は、静脈内投与であるいは局所注射として投与することができる。
【0164】
図7A乃至Bは、図5に示す融合タンパク質構造の一つを、ヒト非順応インフルエンザにかかっているフェレットの炎症細胞に使用した場合の効果を示す。融合タンパク質(n=8)を用いた治療にもかかわらずウイルスを出芽したフェレットでは、炎症反応が低下し、必ずだるくなり熱がでた治療を行っていないフェレットに比べて、より機敏で活力があるように見えた。この8匹の感染し、融合タンパク質の治療を行った動物群について、鼻のタンパク質濃度について計算した平均曲線下面積(AUC)が、ビークルで治療した(リン酸緩衝食塩水)感染動物(図7B)に比べて、約40%(2.68対4.48、任意単位)低減していた。ビークルで治療した感染動物では、鼻洗浄液中の炎症細胞の数が、チャレンジ後2日目の非感染動物における数より約100倍増えていた。これらのレベルは、更に約4日間続いた。融合タンパク質で治療した動物は、鼻洗浄液中の炎症細胞の数が有意に低くなった。特に、細胞カウント数についてのAUCの値は、ビークルで治療した感染動物に比べて、融合タンパク質で治療した動物では、約3倍低くなった(1965対674、任意単位、図7B)。炎症反応で観察された低下は、感染の初期におけるウイルス複製を阻害するのに重要であることを示した。
【0165】
用量
当業者には明らかなように、投与を行う有用なインビボでの容量と、投与の特定のモードは、治療を受ける患者の年齢、体重、タイプ、使用する特定の医薬製剤、及びこの医薬製剤を用いる特別な使用によって変わる。所望の結果を達成するのに必要な容量レベルである、有効容量レベルの決定は、上述した定法を用いて、当業者によって行われる。非ヒト動物の研究では、医薬組成物のアプリケーションは、高い用量レベルから開始して、所望の効果が達成できなくなるまで、あるいは副作用が低減するかなくなるまで容量を下げてゆく。本発明の化合物の容量は、所望の効果、治療指標、投与ルート、及び化合物の純度と活性に応じて、広い範囲に及ぶ。典型的には、製品のヒトへの臨床アプリケーションは、低い用量レベルで開始して、所望の効果が達成できるまで用量レベルを上げてゆく。代替的に、受け入れ可能なインビトロでの研究を用いて、試験化合物の有効な用量と投与ルートを画定することができる。通常、容量は約1ng/kg乃至約10mg/kg、約10ng/kg乃至約1mg/kg、及び約100ng/kg乃至約100μg/kgである。本明細書に記載した様々な例では、マウスを、0.0008mg/kg、0.004mg/kg、0.02mg/kg、0.06mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.6mg/kg、1.0mg/kgの用量を含む、様々な用量のここに述べた組成物で処置した。非限定的な例として、本明細書に記載の組成物は、約0.05mg、0.06mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、又は100mgなど、約0.01mg乃至約100mgの用量で、1日当たり1又はそれ以上の回数で、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、又は14日、又はそれ以上、ヒトに投与することができる。より高い又は低い用量で投与するようにしても良い。一の実施例では、以下に述べる実施例3に示すように、0.06mg/kgのシアリダーゼ化合物の投与で、ムスカリン受容体アゴニストへの気道応答性を低減するムスカリン受容体を脱シアル化するのに十分であり、従って、潜在的に気道収縮、気道過敏性、炎症、気管支収縮、ぜん息などのアレルギィ反応又は関連する応答、及び粘液過剰生産を低減する。0.06mg/kg、(成人の場合、約4乃至5mgの用量に変わる)、あるいは0.02mg/kg、(成人の場合約1乃至2mgの用量に変わる)といった、低用量での効力は、本明細書に述べたシアリダーゼベースの化合物を、繰り返しの長期投与を必要とする慢性疾患に使用する適切な候補とする。
【0166】
治療計画に、本明細書に記載の化合物と組成物を、1日当たり1回乃至1日当たり10回、1日当たり1回乃至1日当たり6回、1日当たり1回乃至1日当たり5回、1日当たり1回乃至1日当たり4回、1日当たり1回乃至1日当たり3回、1日当たり1回乃至1日当たり2回、及び1日1回の投与を含めることができる。この治療は、1日のみ乃至毎日、毎週、毎月、又は、その他所定の期間又は患者の残りの人生の間の周期的な使用、を続けることができる。
【0167】
正しい処方、投与ルート及び用量は、患者の状況を見て個々の医師によって選択することができる(Fingle et al.,in The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975)参照)。主治医は、毒性、臓器機能不全又は、その他の副作用により、いつ、どのように、投与を終了、中断、調整するかが分かっている。反対に、主治医は、臨床反応が顕著でない場合、より高いレベルに治療を調整することが分かっている。対象となる疾病の管理における投与用量の大きさは、治療を受ける症状の深刻度と、投与ルートで変わる。症状の深刻度は、例えば、標準予後評価法によって、部分的に評価することができる。更に、この用量とおそらく投与頻度は、獣医のアプリケーションも含めて、個々の患者の年齢、体重、及び反応によっても変わるであろう。
【0168】
いくつかの好ましい治療計画では、吸引、鼻スプレィ、又は局所投与によって、各患者に適当な用量で投与される。しかしながら、特定の患者に対する特定の用量レベルと投与頻度は、使用する特定の塩又はその他の形態の活性、代謝的安定性、化合物の生理作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬剤の組み合わせ、特定の症状の重症度、治療を受けているホストを含む、様々な要因によって変わることは理解されるであろう。
【0169】
いくつかの実施例では、本発明の開示は、本明細書に記載の組成物(以下に「X」として示す)の一又はそれ以上を以下の方法で使用する方法を提供している:
粘液過剰又は異常(例えば、一又はそれ以上の健康な対象(例えば、同じ民族の、及び/又は、同じ又は同様の地理的位置にある)と比較した場合、及び/又は、健康管理者によって表示された正常な粘液レベルを超えている)、粘液生産過多、及び/又は本明細書に記載した一又はそれ以上の疾病/症状の治療に、薬剤として使用する物質X;(各々、集合的に、以下の例では「Y」と呼ぶ)。
【0170】
Yの治療用薬剤の製造への物質Xの使用;及び
Yの治療に使用する物質X。
【実施例】
【0171】
本発明を以下の実施例で更に説明する。この実施例は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲を制限するものではない。
【0172】
実施例1.テンジクネズミの初期及び遅発ぜん息反応に対するシアリダーゼ治療の効果
1.概説
この研究では、Fludase(登録商標)をアレルギィ性ぜん息のテンジクネズミモデルで試験した。テンジクネズミは、オボアルブミン(OVA)又は食塩水で感光性として、15日又は20日後にFludase(登録商標)又は硫酸ナトリウムで処置した。21日目に、全ての動物をOVAで免疫反応を調べて、初期ぜん息反応を測定した。気道コンプライアンス/レジスタンスを測定し、気管支肺胞洗浄(BAL)流体を左肺から取り出して、細胞総数を計数し、差を求めた。
【0173】
2.序説
この研究の主たる目的は、ぜん息にかかったテンジクネズミの初期及び遅発反応に対するFludase(登録商標)の効果の特徴を達成することである。この研究に用いたテンジクネズミは、実験に使われておらず、従って、実験の一部としてインフルエンザあるいはその他の感染体に感染していない。ぜん息は、テンジクネズミを0日目にOVAで敏感にして誘発した。15又は20日後、テンジクネズミをFludase(登録商標)(0.3mg/kg)又は硫酸ナトリウム(0.143mM,pH5.0)で気管内処置を行った。21日目に、テンジクネズミにOVAエアロゾルを施し、気道反応性(PenH)を測定した。22日目に、肺血管抵抗とコンプライアンスを測定した。2分の時間インターバルで、用量0.2−2μg/kgのヒスタミンを、静脈注射により投与した。実験の最後に、テンジクネズミを殺して、左肺を洗浄し、単離したBAL細胞を洗浄して、係数し、マクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球に分離した。
【0174】
3.材料と方法
動物
特別に無菌のオスのハートレイ染色テンジクネズミ(HSD Poc: DH、体重400−500)をHarlan−CPB (Zeist, The Netherlands)社から入手した。このネズミは、収容条件に1週間順応させてから使用した。水と商用食が不断給餌された。この実験は、Animal Ethics Committee of the Utrecht University(Utrecht,The Netherlands)によって認められている。
【0175】
敏感化、予処置、及び抗原投与
テンジクネズミを食塩水(100mg/mlのAl(OH)3を含む溶液)又はOVA(20μg/mlのOVAと100mg/mlのAl(OH)3を含む溶液)で敏感にし、0.5mlを腹腔内投与し、5×0.1mlを皮下投与し、合計の注入量を1mlとした。15日又は20日経過後に、動物を0.3mg/kgのFludase(登録商標)で一旦処置して、20日目に対照の動物に硫酸ナトリウム(0.143mM、pH5.0)を気管点滴処置をした。咽頭鏡を用いて、咽頭蓋の位置を確かめた。次いで、Fludase(登録商標)又は硫酸ナトリウムを、1A−1CのMicroSprayer(商標)(Penn Century,Inc.Philadelphia,USA)を用いて、液体エアロゾルで投与した。テンジクネズミは、気管点滴の間、立位にあった。
【0176】
この気管点滴の間に、テンジクネズミに、Ketamine(登録商標)、Xylazin(登録商標)、Atropin、及び食塩水(3.5:3:1:3)の混合物150μlで麻酔をかけて、後脚に筋肉注射をした。
【0177】
21日目に、テンジクネズミをエアロゾルOVA(0.1%wt/volの滅菌食塩水)に露出させて、免疫反応を調べた。3リットルのパースペクス容器にエアロゾルを生成させて、そこにテンジクネズミを入れた。まず、基本的な気管支収縮(PenH)が測定された。テンジクネズミは、OVAエアロゾルで10秒間刺激された。免疫反応を調べた後、直接的に、初期ぜん息反応(PenH)が測定された。
【0178】
意識があり拘束していないテンジクネズミのアレルゲン誘発性初期ぜん息反応
動物の気道の働きを、換気したバイアス流の全身プレスチモグラフ(Buxco Electronics,Sharon CT,USA)において、エアロゾルにしたOVAに露出させた直後に測定した。このプレスチモグラフは、基準チャンバと、動物チャンバからできている。動物チャンバは、プレスチモグラフ上の呼吸気流計を介して外側に取り付けられる。動物チャンバへのアエロゾル入口は、動物チャンバの屋根の中央に位置している。動物が動物チャンバに入れられて静かに呼吸をしていると、1回換気量と呼吸をしている間の胸郭の動きとの間に圧力が生じる。差圧トランスデューサが、動物チャンバと基準チャンバとの間の圧力の変化を測定し、これらのデータをプリアンプに送る。この後、データがコンピュータに送られて、そこで、動物の肺機能を表わす複数のパラメータを計算する。使用した全てのテンジクネズミについて、基本の5分間と、全身プレスチモグラフで15分間エアロゾルを行った後に、測定を行った。最大呼気流量(PEF)と、1回換気量(TV)と、エンハンスドポーズ(PenH)として知られている肺機能パラメータも測定された。PenHの式と説明は図8に示されている。気管支が収縮している間は、最大呼気流量と最大吸気流量が増え、緩和時間と呼気時間が減少する。このことは、PenHが増えることになる。意識があり拘束していないテンジクネズミの気管支収縮のデータが、PenH(図8)に示されている。
【0179】
インビボでの気道応答性
22日目に、テンジクネズミを腹腔内にウレタン2g/kgで麻酔をかけた。この動物は自発的に呼吸をしていた。体温での麻酔導入フォールは、動物を、37℃の体温に維持する加熱チャンバに入れることで防止した。テンジクネズミは、以下の通り、肺血管抵抗(RL)と肺コンプライアンス(C)の測定ができるようになった。高い投与量のヒスタミン(0.02−2μg/kg)を静脈内投与するために、小さなポリエチレンカテーテル(PE−50)を右の頸動脈に入れた。基礎になるRLとCを5分間測定した。その後、高い投与量のヒスタミンを注入し、RLとCを2分間測定した。カニューレを挿入し気管をFleischフローヘッド(nr000;Meijnhart,Bunnik,The Netherlands)で呼吸気流計に接続して、気流量と1回換気量を測定した。圧力トランスデューサ(モデルMP45−2;Validyne Engineering Corp.,Northridge,CA)で、気管カニューレと、食道に挿入した食塩水を満たしたカニューレの間の圧力差を測定することで、肺圧差を測定した。RLとCは呼吸ごとに、呼気分析計で測定した。RLは、肺差圧を等容ポイントにおける気流で割ることによって、計算した。Cは、容積を等流ポイントにおける肺差圧で割ることによって計算した。データは、最大RLと最小Cで、cmH2O/ml*sec−1とml/cmH2Oとして、それぞれ表わした。
【0180】
気管支−肺胞肺洗浄細胞の回収
気管支−肺胞洗浄細胞は以下のようにして得た。気管をトリミングして、結合組織と血管をなくし、気管へカニューレを挿入するために小さく切除を行った。右肺を結んで、左肺だけを洗浄した。左肺に37℃の食塩水(0.9%NaCl)を5mlを満たした。そっとマッサージを行って流体を肺から取り出して、プラスチックチューブを氷(4℃)の上に回収した。この手順を3回繰り返し(トータルで15ml)、各動物から回収した細胞懸濁液をためた。次いで、4℃、1500rpmで、5分間、遠心分離を行って細胞を沈降させた。上澄み液を捨てて、ペレットを1mlの食塩水に再懸濁させた。細胞がチューブの壁にくっつくのを最小限に抑えるために、単離手順の間はプラスチックチューブだけを使用した。
【0181】
細胞の計数及び差別化
この細胞をチュルク液で染色し、ビュルケル・チュルク式輝線計算板(顕微鏡、倍率100×)で計数した。差BAL細胞の計数用に、サイトスピン試料を作り、ディフ・クイック染色(Merz & Dade A.G.,Duedingen,Switzerland)で染色した。コード化した後に、全てのサイトスピン試料を油侵顕微鏡(倍率1000×)を用いて一人の観察者が評価した。細胞は、標準的な形態で、マクロファージ、リンパ球、好中球、及び好酸球に差別化した。サイトスピン試料につき少なくとも200の細胞が計数され、各細胞タイプの絶対数が計算された。
【0182】
統計分析
特に記載がない限り、データは、相加平均±標準誤差として表わされており、グループ間の比較は、スチューデントt−検定を用いて行った。確立値p<0.05は有意であると考えられる。
【0183】
4.結果
意識のある拘束されていないテンジクネズミの気道応答性
図9に示すように、基礎気道抵抗は、硫酸ナトリウム又はDAS181で15日目又は20日目に食塩水で処置した(PenH=0.24±0.009 食塩水−硫酸ナトリウム、0.25±0.001 食塩水−Flu 15日目、0.28±0.01 食塩水−Flu 20日目に処置したテンジクネズミ)テンジクネズミに差がなかった。15日目又は20日目に、基礎レベル(PenH=0.25±0.01 OVA−硫酸ナトリウム、0.27±0.02 OVA−Flu 15日目、0.31±0.03 OVA−Flu 20日目に処置したテンジクネズミ)で硫酸ナトリウム又はFludase(登録商標)で処置したOVAテンジクネズミにも差がなかった。
【0184】
食塩水で感作した動物において、OVA抗原投与は、基礎気道抵抗を若干上げた(SOD、Flu 15及び20、図2)。しかしながら、OVAエアロゾルに対する応答における初期のぜん息反応は、OVA−硫酸ナトリウムで処置をしたテンジクネズミ(PenH=1.57±0.45)において、非常に大きく増えていた。Fludase(登録商標)で処置を行った後は、初期のぜん息反応は、15日目に約30%低減していたが、20日目では低減していなかった。
【0185】
気管支−肺胞洗浄液中の細胞係数
図10に示すように、Fludase(登録商標)が、食塩水及びOVAのテンジクネズミの両方で、総細胞数を減らした。
【0186】
気管支−肺胞洗浄液中の差別化細胞計数
図11に示すように、マクロファージの数は、食塩水で処置した群に比べてテンジクネズミOVAテンジクネズミで(30%)増えている。マクロファージの総数は、食塩水及びOVAで処置したテンジクネズミの双方において、15日目及び20日目のFludase(登録商標)を用いた処置の跡に、大きく低減した。
【0187】
図12に示すように、リンパ球の数にも同様のパターンが観察された。リンパ球の数は、Fludase(登録商標)で処置した後に低下した。
【0188】
図13に示すように、従来の対照に比べると、SODは肺への好中球の数の大きな増加を誘発する。興味深いことに、Fludase(登録商標)は、食塩水及びOVAの両グループにおけるこの流入を完全に防止した。
【0189】
図14に示すように、従来の対照に比べると、SODは、気道への好酸球の流入も誘発した。これは、更に、OVAの抗原投与によって増加する。興味深いことに、Fludase(登録商標)による処置は、好酸球の数を従来の対照レベルまで回復させることができる。
【0190】
5.考察/結論
OVA−感作し、抗原投与した動物は、PENHがOVA−抗原投与まで増加することによって測定される初期の及び遅発が多ぜん息反応と、BAL−流体中の炎症細胞の数の増加を示した。
【0191】
興味深いことに、Fludase(登録商標)(Flu15)は、初期のぜん息反応をほぼ30%低減し(図9)、マスト細胞刺激におけるこの化合物の効果を示している。更に、Fludase(登録商標)は、SOD又はOVAによって生じる炎症に驚くべき効果を有していた。すべての炎症細胞(マクロファージ、リンパ球、好中球、及び好酸球)の数が、この化合物によって有意に減少した。
【0192】
結論として、Fludase(登録商標)は、SOD−誘発性炎症とOVA−誘発性炎症の両方において有効であることを示した。
【0193】
実施例2.急性OVA誘発性ぜん息のマウスモデルにおけるFludaseの効果
1.序
この研究の目的は、Fludase(登録商標)(DAS181ともいう)が、(1)ぜん息の急性OVA抗原投与マウスモデルにおけるアレルゲン誘発性気道炎症と気道過敏を抑制するかどうかを調べることである。DAS181単独での介在効果を調べるのに加えて、a)DAS181+賦形剤(インビボでDAS181を送達する乾燥粉体の剤形で使用)、b)賦形剤単独、及びc)デキサメタゾン(比較として)を含む、その他3つのぜん息モデルのマウスへの介在を調べた。
【0194】
2.材料と方法
マウス
12週令の、メスのBALB/cマウスをCharles River 社から購入し、UCSD生態動物園に収容した。これらのマウスは、約1週間UCSD生態動物園で順化させて使用した。
【0195】
OVA感作とOVA抗原投与
0日、7日、14日、及び21日目に、200μlの通常の食塩水中で1mgのミョウバンに吸着させた25μgのOVAを皮下注射してマウスに免疫を与え、主要Th2免疫反応を誘発した。26日目に経鼻OVA抗原投与(20μg/50μl)を開始し、28日目と30日目にこれを繰り返した。どのOVA群でも、マウスはOVAに感作したが、経鼻OVA抗原投与されなかった。マウスは、31日目のPenhによる最終OVA抗原投与の後、24時間行われたメタコリン(Mch)に対する気道の反応性があった。この研究に用いたマウスは、実験に使用されておらず、従って、実験の一部としてインフルエンザやその他の感染症に感染していない。マウスは、その後すぐに殺した。気管支肺胞洗浄(BAL)、血液、及び肺組織を、以下に述べる結果を求めて処理した。
【0196】
試験化合物のマウスへの投与
1.試験化合物
以下の化合物を、ぜん息のマウスモデルで調べた。
a)賦形剤を伴うDAS181(0.6mg/kg 経鼻):DAS181−F02(NexBio,Inc.part #43−071,lot#47−034)をPBS中で、20mgDAS/mlに調整した。各投与を行う前に、PBS中で、新たに0.6mgDAS181/kgに希釈して、平均体重21gのマウスに対して投与量50μlとした。
b)DAS181(0.6mg/kg 経鼻)
c)賦形剤(50μL/マウス):賦形剤(416TL022A)を、溶液でNexBio,Inc.社から入手し、各賦形剤成分の濃度は、20mgDAS181/ml(MgSO4 1.446mg/ml、CaCl2 0.059mg/ml、ヒスチジン 1.427mg/ml、ヒスチジン−HCl 1.943mg/ml、及びトレハロース 3.000mg/ml)の濃度と同じにした。a)にあるように投与用にPBS中で新たに希釈した。各賦形剤成分の最終濃度は、0.6mgDAS181/kg、平均体重21gのマウスに対する投与量50μlの濃度と同じである。
d)デキサメタゾン(1.0mg/kg 腹腔内)
【0197】
賦形剤溶液を以下の方法で調整した。各賦形剤の最終標的濃度を計算して、DAS181−F02バルク乾燥粉体を20mgのタンパク質/mLで再構築する時と同じ濃度に近付けた。各賦形剤(各10mL)について10×のストック溶液(塩化カルシウムでは100×)を調整した。このストック溶液の調整に使用した材料を表1に挙げる。全ての材料は、USPグレードであるか、あるいはこれと同等のグレードである。表2に従って適宜量の各賦形剤を15mLの円錐形チューブに入れて、水を加えて、総重量を10gとし、かき回して材料を完全に溶解させた。1mLの各ストック溶液を加えて最終の1x賦形剤溶液を調整し、体積を水を用いて10mLにした。全てのサンプル調整は、溶液密度を1g/mLとして、重量測定法で行った。
【0198】
これらの実施例では、「賦形剤」又は「賦形剤」溶液と書かれているが、これらの追加の化合物は、粘液の低減及び炎症と炎症細胞の低減に関する更なる有益な効果を有するものでも良い。これらの賦形剤は、DAS181の相乗効果を有していても良い。
【0199】
【0200】
【0201】
2.ぜん息のマウスモデル
以下のBalb/cマウス群(n=10 メスマウス/群)を調べた。
a)OVAなし
b)OVA
c)OVA+DAS181賦形剤
d)OVA+DAS181
e)OVA+賦形剤
f)OVA+デキサメタゾン
【0202】
3.試験化合物の投与タイミング
試験化合物は、26日目、28日目、30日目の各経鼻OVA抗原投与の1時間前に投与した。終点のタイミングを調べた。
【0203】
最終OVA抗原投与の後24時間でマウスを殺し、血液、BAL、及び肺を分析した(27)。
【0204】
4.研究評価項目
a)Penh
31日目に、最終OVA吸入を行った後24時間、Buxco (Troy, NY)社から入手した単一チャンバ全身プレスチモグラフを用いて気道反応性を強化した。このシステムでは、拘束されていない自発的に呼吸しているマウスを、プレスチモグラフの主チャンバに入れて、このチャンバと基準チャンバ間の圧力差を記録した。マウスの呼吸サイクル間の、換気量と結果としての圧力の変化によってボックス圧力信号が生じる。主チャンバの壁のローパスフィルタによって、熱補償が行われる。これらのボックス圧力信号から、呼吸サイクルのフェーズ、一回換気量、及びエンハンスドポーズ(Penh)を計算することができる。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。これは、従来の二つのチャンバプレスチモグラフィによって測定した換気マウスの肺血管抵抗と密接に関連する。プレスチモグラフでは、マウスをネブライザで投与したPBSに3分間露出させて、次いで、Aerosonic超音波ネブライザ(De Vilbiss)を用いてPBSに投与した高濃度のメタコリン(MCh)(3,6,12,24,48mg/ml Mch)(Sigma,St.Louis,MO)に露出させる。ネブライザ投与を行った後、3分間記録を行う。各3分間のシーケンスの間に測定したPenh値の平均を取り、各MCh濃度についてPBS露出に続くベースラインPenh値のパーセンテージとして表わした。
【0205】
b)血中好酸球数
EDTA含有チューブへの心穿刺によって、末梢血をマウスから回収した。100mMの炭酸カリウム−1.5M塩化アンモニウムの1:10の溶液を用いて、赤血球を溶かした。残りの細胞を1mLのPBSに再懸濁させた。異なる細胞を計数するためには、200μLの再懸濁させた末梢血白血球懸濁液を、顕微鏡スライドと、乾燥空気の上へサイトスピンさせた。スライドは、Wright−Giemsaによって染色され、白血球の総数における好酸球のパーセンテージを、光学顕微鏡の下で評価した。
【0206】
c)肺粘液用のPAS染色
気道における粘液の出現レベルを定量化するために、各気管支の過ヨウ素酸Schiff(PAS)−陽性及びPSA−陰性上皮細胞の数を、上述した通り計数する(Zhang,M.,T.Angata,J.Y.Cho,M.Miller,D.H.Broide,A.Varki.2007 Blood.109:4280−4287)。各スライドにおいて、少なくとも10個の気管支を計数した。結果は、気管支ごとのPAS−陽性細胞の数を、気管支ごとの上皮細胞総数で割って計算した、気管支ごとにPAS−陽性細胞のパーセンテージで表わしている。OVAのない、OVAのある、OVA+DAS181のある肺組織のスライドも作って、これを観察した。
【0207】
d)気管支周囲の好酸球に対する肺のMBP染色
異なる実験グループから得た肺を、Zhang et al.に記載されているように同じ条件で組織学的染色又は免疫学的染色のためにバッチ処理を行った。染色した及び免疫染色したスライドは、すべて、倍率(20×)、ゲイン、カメラ位置、バックグラウンド照明を含む、同じ光学顕微鏡条件で定量化した。肺セクションを、上述した通り、アンチマウスMBP(主要塩基性タンパク質)Ab(James Lee PhD,Mayo Clinic,Scottsdale,Arizona提供)と、Zhang et al.に記載されている免疫ペルオキシダーゼ法を用いて、MBP免疫組織化学用に処理した。主要塩基性タンパク質は、好酸球細胞顆粒タンパク質であり、組織内の好酸球のマーカとして働く。気管支周囲のスペースにあるMBPに陽性に染色している個々の細胞の数を、光学顕微鏡を用いて計数した。結果は、内径150−200μmの気管支ごとのMBPに陽性に染色している気管支周囲の細胞数として表わされている。少なくとも10の気管支が各スライドで計数された。
【0208】
5.統計的分析
異なるマウス群の結果を、Mann Whitney非パラメータT検定で比較した。全ての結果は、平均±SEMとして提示されている。統計ソフトウエアパッケージ(Graph Pad Prism,San Diego,CA)を分析に用いた。P値<0.05は、統計的に有意であると考えられる。
【0209】
6.結果
a)Penh
図15に示すように、OVA抗原投与が、Penhの変化で評価されるように気道応答性に有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0210】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較してPenhに有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤;p<0.01)。
【0211】
DAS181で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、Penhが低下した(OVA 対 OVA+DAS181;p<0.005)。
【0212】
図16に示すように、48mg/mlMchにおけるPenhの測定は、陽性及び陰性の対照(OVAなし 対 OVA)の間に大きな差がみられ、これが、このMchの投与を、DAS181などの介在効果を評価するのに使用した理由である。
【0213】
b)血中好酸球増加
図17に示すように、OVA抗原投与は、血中好酸球の有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0005)。
【0214】
DAS181は、血中好酸球増加を有意に低減した(OVA 対 OVA+DAS;p=0.04)。
【0215】
c)肺粘液のPAS染色
図18乃至19A−Fに示すように、OVA抗原投与は、PASに陽性に染色した気道上皮のパーセンテージに有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0216】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、PAS染色において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤; p<0.0001)。
【0217】
DAS181で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、PAS染色において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181;p<0.0001)。
【0218】
粘液に対する効果
賦形剤を伴うDAS181、並びにDAS181単独のものは、PAS染色においてAS181の阻害効果があることを示した。このことは、賦形剤を伴うDAS181又はDAS181単独で、呼吸器管中の粘液を低下させることを示している。
【0219】
d)肺のMBP免疫染色
図20に示すように、OVA抗原投与は、気管支周囲のMBP+好酸球の数に有意な増加を誘発した(OVA 対 OVAなし;p<0.0001)。
【0220】
DAS181+賦形剤で予め処置したOVA抗原投与マウスは、OVA抗原投与マウスに比較して、気管支周囲のMPB+好酸球の数において有意な低下がみられた(OVA 対 OVA+DAS181+賦形剤;p=0.02)。
【0221】
実施例3. 低投与量のDAS181を鼻腔内に投与した未処置マウスにおける気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対するDAS181の様々な投与レベルの効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.06、0.1、あるいは0.6mg/kgを1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。記録は、各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0222】
結果: 24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンが、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、48mg/mlのMch(図面)で、有意に気道抵抗が下がった。異なる投与群間で相違は観察されなかった。
【0223】
結論: これまでのデータと一致して、DA181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすという仮説が考えられる。驚いたことに、この二つの高投与量レベルは、最も低い投与量以上の効果を発揮するものではなく、0.06mg/kg程度の低いDAS181の鼻腔内投与量で、ムスカリン受容体を脱シアル化して、ムスカリン受容体あごにストの気道反応を低減し、その結果炎症や、アレルギィ、あるいは、気管支収縮、ぜん息、粘液の過剰生産などのアセチルコリンに関連する反応を抑えるには十分であることを示唆している。これらの結果は、図21A及び21Bに記載されている。
【0224】
実施例4. 低投与量のDAS181で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0225】
結果: 3、6、12、24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンが、PBSで処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げ、12、24及び48mg/mlのメタコリンで処理した動物が、DAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げた。一方、3及び6mg/mlのメタコリンは、DAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げなかった。DAS181で処置した全ての動物は、6、12、24及び48mg/mlのMchで、対照に比べて有意に気道抵抗が下がった。
【0226】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすと考えられる。これらの結果は、図22に記載されている。
【0227】
実施例5. DAS181で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗の低減(カルバコール抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストカルバコールで抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したカルバコール(1.25、2.5、5、10、20mg/mlカルバコール)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0228】
結果: 5、10、20mg/mlのムスカリン受容体アゴニストカルバコールが、PBSとDAS181で処理した動物におけるベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、5、10、20mg/mlのカルバコールで、有意に気道抵抗が下がった。
【0229】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストカルバコールに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、ムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすと考えられる。これらの結果は、図23に記載されている。
【0230】
実施例6. 低用量のDAS185で鼻腔内投与を行った未処置マウスの気道抵抗(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS185を1日1回、投与した効果を試験することである。DAS185は、DAS181の酵素的に不活性な型であり、シアリダーゼ部分における突然変化がシアリダーゼを不活性にする。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS185を0.6mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0231】
結果: DAS185で処理した動物とPBSで処理した動物との間で、Mch抗原投与に応じた気道抵抗には、差異がなかった。
【0232】
結論: 上述の実施例4における、DA181とPBSで処理した動物との間の気道抵抗には、差があったが、DAS181を酵素的に不活性であるDAS185で置き換えたときには、差がなかった。この実験は、DAS181に応答する気道抵抗の低下は、シアリダーゼに依存することを示す。これらの結果は、図24に示されている。
【0233】
実施例7. DAS181によってもたらされる気道抵抗の低減の時間的経過(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置のマウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対して0.6mg/kgのDAS181を1日1回、2日又は3日間投与した効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.6mg/kg、1日1回、2日又は3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(3、6、12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0234】
結果: 1日の処理では、DAS181で処理した動物とPBSで処理した動物との間で、Mch抗原投与に応じた気道抵抗には、差異がなかった。2日間の処理では、DAS181は、12及び24mg/mlのメタコリンでは、PBSに対して気道抵抗を低減するように見えるが、3、6及び48mg/mlのメタコリンでは、低減しない。3日間の処理では、DAS181は、24及び48mg/mlメタコリンで気道抵抗を有意に低減した。
【0235】
結論: これまでのデータと一致して、DAS181とPBSで3日間処理した動物間には、気道抵抗に差があった。1回の投与では差はなく、2日のDAS181の処理の後、部分的な低下があった。この実験は、2乃至3日の処理が、気道抵抗を低減するには最適であることを示している。これらの結果は、図25に記載されている。
【0236】
実施例8. 非常に低用量のDAS181を鼻腔内投与した未処置マウスにおける気道抵抗の低減(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対する、DAS181の様々な低い投与レベルの効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を0.0008、0.004、0.02、又は0.1mg/kg、1日1回、3日間投与した。最終投与後8時間に、動物を高投与量のムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)で抗原投与した。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0237】
結果: 24及び48mg/mlのムスカリン受容体アゴニストメタコリンは、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。DAS181で処置した全ての動物は、24、48mg/mlで、有意に気道抵抗が下がった。DAS181の異なる投与量群の間に差異は見られなかった。
【0238】
結論: 非常の投与量が低いDA181の鼻腔内投与は、ムスカリン受容体アゴニストメタコリンに反応して気管支収縮を低減し、さらに、DAS181依存脱シリル化が、DAS181の投与量が非常に低くてもムスカリン受容体信号伝達の低下を引き起こすという仮説が考えられる。この実験は、0.0008mg/kg程度の非常に低いDAS181の鼻腔内投与量でも、ムスカリン受容体を脱シアル化して、炎症や、アレルギィ、あるいは、気管支収縮、ぜん息、粘液の過剰生産などのアセチルコリンに関連する反応を抑えるには十分であることを示唆している。これらの結果は、図26に記載されている。
【0239】
実施例9. DAS181を鼻腔内投与した未処置マウスにおける低減した気道抵抗は、投与量に依存している(メタコリン抗原投与)
この研究の目的は、未処置マウスにおけるムスカリン受容体によってもたらされる気道抵抗に対する、様々な投与レベルのDAS181の効果を試験することである。BALB/cマウス(N=4)の鼻腔内に、PBS又はDAS181を10ng/kg、0.1μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、又は0.1mg/kg、1日1回、3日間投与し、ムスカリン受容体アゴニストメタコリン(Mch)の投与量を上げた。全身プレシモグラフィを使用して、気道応答性を評価した。気道抵抗の変化を、エンハンスドポーズ(Penh)で表わした。Penhは、最大呼気ボックス圧力信号と最大吸気ボックス圧力信号の割合と、呼気のタイミングとの関数を表わす大きさのない値である。マウスをネブライザ投与PBSに露出させ、次いで、PBS中で、高濃度のネブライザ投与したMCh(12、24、48mg/mlMch)に2分間、露出させた。各露出の後、3分間記録を行った。取得したPenhの値を平均して、PBS露出の後のベースラインのパーセンテージとして表わした。
【0240】
結果: 24mg/mlおよびより高い濃度のムスカリン受容体アゴニストメタコリンは、ベースラインを越えて気道抵抗を上げた。気道応答性を、3日目の投与後8時間で評価した。DAS181で処置した全ての動物は、24mg/mlのメタコリンで有意に気道抵抗が下がった。Penh値の平均的なパーセンテージの差(ベースラインを越えた高い気道抵抗を示す)は、以下のとおりである。
対照(PBS): 550−560%
10ng/kg DAS181: 525−530%
0.1μg/kg DAS181: 450%
1μg/kg DAS181: 525%
10μg/kg DAS181: 225%
0.1mg/kg DAS181: 200%
【0241】
上述の結果からわかるように、0.01乃至0.1mg/kgのDAS181の投与レベルで、Mchに応答して気道抵抗を有意に低減した。
【0242】
結論: この結果は、DAS181による鼻腔内投与に応じた低い気道抵抗は、投与量依存性であることを示している。
【0243】
実施例10. インビトロでのM2及びM3ムスカリン受容体信号伝達に関するDAS181の効果
この研究の目的は、インビトロモデルを用いた、気道保護のための潜在的機構としてのムスカリン受容体脱シアル化を評価することである。安定してM2又はM3ムスカリン受容体を伝達するヒトchem−1細胞(ミリポア)を、受容体アゴニスト(アセチルコリン;ACh)を加える前に、0.4、2又は10μMのDAS181で、37℃で、30分間処置した。受容体信号伝達は、経口レポータを細胞間カルシウムに使用して決定した。
【0244】
結果: 試験を行ったDAS181の全投与量において、ヒトchem−1細胞のDAS181による処置が、アゴニスト−介在M2受容体信号伝達の能力を上げ、アゴニスト−介在M3受容体信号伝達の能力を低下させた。この結果は、以下のとおりである。
A. M2受容体
処置 予測EC50能力値(M)
Ach単独(DAS181無) 390nM
ACh+10μM DAS181 140nM
ACh+2μM DAS181 130nM
ACh+0.4μM DAS181 140nM
B. M3受容体
処置 予測EC50能力値(M)
Ach単独(DAS181無) 6.3nM
ACh+10μM DAS181 270nM
ACh+2μM DAS181 51nM
ACh+0.4μM DAS181 110nM
【0245】
結論: この結果は、DAS181がM2ムスカリン受容体を介する信号伝達を増やし、M3ムスカリン受容体を介する信号伝達を低減することを示している。従って、DAS181−介在応答は、M2の正のアロステリック変形を表わすことができ、アンタゴニストかあるいはM3の負の変形を表わす。シアル化は、刺激性信号の低減と、並びに、ムスカリン受容体によって介在される抑制性の信号を強化することによって、気道保護を提供することができる。
【0246】
実施例11. パラインフルエンザに対するDAS181微小粒子調整の治療効果
急性呼吸器疾患であるパラインフルエンザウイルス(PIV)に対するDAS181の効果を試験した。63歳の女性患者を試験して、2010年7月14日及び7月21日にPIVが陽性であった。鼻綿棒についたPIV抗原を落として、これらの日に患者から回収した唾液サンプルをPCRで検出した。
【0247】
この患者は、2010年7月23日、24日、及び25日に、乾燥パウダー形状のDAS181を1日1カプセル(送達投与量10mg)与えた。この組成物中の化合物と、組成物のwt/wt%は以下のとおりである:DAS181:64.54−64.69%;ヒスチジンフリー塩基:4.32−4.60%;ヒスチジン−HCl:5.85−6.27%;トレハノース:9.06−9.68%;硫化マグネシウム:4.66−5.84%;塩酸カルシウム:0.19%;酢酸ナトリウム:0.04−0.05%;リン酸:0.02%;水:0%;イソパノール:微量。各カプセルは、タイプ3のクリアHPMCカプセル(Capsugel)中に13mgの乾燥粉末を含有しており、10mgの送達投与量を提供する。患者に、1日1カプセル、3日間(2010年7月23日、7月24日及び7月25日)、吸入により投与した。治療完了後の日(7月26日)には、試験を行った患者はPIVが陽性であり、治療の後5日目(2010年7月30日)には、PIV試験が陰性であった。この結果は、DAS181のパラインフルエンザ、すなわち、上呼吸器管の呼吸障害に対する有効性を示している。
【0248】
実施例12. ぜん息に対するDAS181微粒子製剤の治療効果
実施例9で用いたDAS181微粒子製剤のぜん息に対する効果を試験した。20歳の白人男性ぜん息患者における、10mg送達投与量(13mgカプセル)の製剤Aを経口投与する前、及び投与後1時間での、FEV1(1秒間の強制呼気肺活量)によって測定した気流の変化を試験した。薬剤の投与前、患者のFEV1は、予測された正常な肺機能の82%であった。薬剤の投与後1時間、患者のFEV1は、92%まで10%の増加で肺機能の臨床的に有意な改善を示した。この結果は、DAS181製剤がぜん息に有効である、すなわち、中央から上側呼吸器管に影響する、非感染性呼吸器管である。
【0249】
その他の実施例
本発明は、詳細な説明と関連して記載したが、上述の記載は、本発明の範囲を明確にすることを意図したものであり、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を制限するものではない。その他の態様、利点、変形は、特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の呼吸器管における粘液量又は粘液レベルを低下させる、又は粘液量又は粘液レベルの上昇を防止する方法において:
前記対象に治療的有効量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記融合タンパク質が、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを具え、当該シアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインであって、当該アンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、アンカードメインを含み;
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与する前の粘液量に比べて、前記化合物又は組成物を投与した後に前記呼吸器管の粘液量を低減させる量の融合タンパク質を含む;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1乃至19に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1乃至19に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる方法において:
前記対象に、シアリダーゼ又はその有効成分を含む治療的有効量のペプチドと、選択的に、アンカードメインを含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与する前の粘液量に比べて、前記化合物又は組成物の投与後に呼吸器管の粘液量を低下させる量のペプチドを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Clostridium perfringensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Micromonospora viridifaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ヒトNeu2シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、又はヒトNeu4シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法において、前記ペプチドがアンカードメインを含み、当該アンカードメインがグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒト血小板因子4のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトインターロイキン8のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアンチトロンビンIIIのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアポタンパク質EのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、又は、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項24乃至47に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項24乃至47に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項24乃至48のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項24乃至50のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項52】
呼吸器管中の粘液レベルがベースラインを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する方法において:
前記対象に治療的有効量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記融合タンパク質が、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを具え、当該シアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインであって、当該アンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、アンカードメインを含み;
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与した後に、ベースラインレベルを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量を含む;
ことを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項52乃至70に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項52乃至70に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項73】
請求項52乃至72のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項74】
請求項52乃至73のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項75】
呼吸器管中の粘液レベルがベースラインを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する方法において:
前記対象に、シアリダーゼ又はその有効成分を含む治療的有効量のペプチドと、選択的に、アンカードメインを含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与した後に、ベースラインレベルを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限するペプチドの量を含むことを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Clostridium perfringensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Micromonospora viridifaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ヒトNeu2シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、又はヒトNeu4シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項76に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同であることを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項75に記載の方法において、前記ペプチドがアンカードメインを含み、当該アンカードメインがグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインであることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項78に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒト血小板因子4のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトインターロイキン8のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアンチトロンビンIIIのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアポタンパク質EのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、又は、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項78に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項81】
請求項75に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項82】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項84】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項91】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項92】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項93】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項94】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項95】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項96】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項98】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項99】
請求項75乃至98に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項100】
請求項75乃至98に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項101】
請求項75乃至100のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項102】
請求項75乃至101のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項103】
請求項1、24、52、及び75のいずれか1項に記載の方法が更に、処置を行う対象を選択するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項104】
請求項103に記載の方法において、前記対象が、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、及び/又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の一又はそれ以上に感染していないことを特徴とする方法。
【請求項105】
請求項103に記載の方法において、前記対象が、活性インフルエンザウイルス、活性パラインフルエンザウイルス、及び/又は活性RSVの一又はそれ以上に感染していないことを特徴とする方法。
【請求項106】
請求項103に記載の方法において、前記対象がぜん息に罹患していないことを特徴とする方法。
【請求項107】
請求項103に記載の方法において、前記対象がぜん息患者でなく、ぜん息性でもないことを特徴とする方法。
【請求項108】
請求項1、24、52、75、及び103のいずれか1項に記載の方法において、前記対象がインフルエンザにかかっているか、又はインフルエンザウイルスに感染していることを特徴とする方法。
【請求項109】
請求項108に記載の方法において、前記化合物又は組成物が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有するタンパク質又はペプチドを含むことを特徴とする方法
【請求項110】
請求項52又は75に記載の方法が更に、前記対象に前記化合物又は組成物を投与する前に、前記対象の呼吸器管の粘液のベースラインレベルを測定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項111】
請求項110に記載の方法が更に、前記対象に前記化合物又は組成物を投与した後に、前記対象の呼吸器管の粘液の第2レベルを測定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項112】
請求項111に記載の方法が更に、前記対象の粘液のベースラインレベルに比べて、前記対象の呼吸器管の粘液レベルが低下する又は粘液レベルの増加が前記粘液の第2のレベルに制限されるまで、処置を続けるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項113】
(a)シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物の集合をぜん息に罹患している動物モデルに投与するステップと;
(b)前記動物の肺の粘液レベルを定量化するステップと;
(c)前記ステップ(b)で測定したレベルを、前記化合物又は組成物の集合を投与する前の前記動物の肺の粘液レベルと比較するステップと;
(d)前記化合物又は組成物がない場合の粘液レベルに対して、粘液レベルを低下させる化合物又は組成物を同定する又は選択するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項114】
(a)シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物の集合をぜん息に罹患している動物モデルに投与するステップと;
(b)前記動物の肺の粘液レベルを定量化するステップと;
(c)前記ステップ(b)で測定したレベルを、前記化合物又は組成物の集合を投与する前の前記動物の肺の粘液レベルと比較するステップと;
(d)前記化合物又は組成物が、前記化合物又は組成物がない場合の粘液レベルに対して、粘液レベルを低下させるかどうかを同定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項115】
シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物が、対象の呼吸器管の粘液量を低下させるかどうかを評価する方法において:
(a)動物モデルのムスカリン受容体を、シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物に接触させるステップと;
(b)前記対象にムスカリン受容体アゴニストを投与するステップと;
(c)前記対象の気道抵抗を定量化するステップと;
(d)ステップ(c)で測定した気道抵抗レベルを、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗と比較するステップと;
(e)前記化合物又は組成物が、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗に対して、気道抵抗を低下させるかどうかを同定するステップと;
(f)前記化合物又は組成物が前記ステップ(e)で決定したように気道抵抗を低下させる場合は、前記化合物又は組成物を前記対象の呼吸器管における粘液量を低下させるものとして評価するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項1】
対象の呼吸器管における粘液量又は粘液レベルを低下させる、又は粘液量又は粘液レベルの上昇を防止する方法において:
前記対象に治療的有効量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記融合タンパク質が、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを具え、当該シアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインであって、当該アンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、アンカードメインを含み;
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与する前の粘液量に比べて、前記化合物又は組成物を投与した後に前記呼吸器管の粘液量を低減させる量の融合タンパク質を含む;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1乃至19に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1乃至19に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
呼吸器管の粘液レベルが高い対象の呼吸器管の粘液量を低下させる方法において:
前記対象に、シアリダーゼ又はその有効成分を含む治療的有効量のペプチドと、選択的に、アンカードメインを含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与する前の粘液量に比べて、前記化合物又は組成物の投与後に呼吸器管の粘液量を低下させる量のペプチドを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Clostridium perfringensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Micromonospora viridifaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ヒトNeu2シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、又はヒトNeu4シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法において、前記ペプチドがアンカードメインを含み、当該アンカードメインがグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒト血小板因子4のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトインターロイキン8のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアンチトロンビンIIIのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアポタンパク質EのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、又は、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項30に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項24乃至36のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項24乃至47に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項24乃至47に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項24乃至48のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項24乃至50のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項52】
呼吸器管中の粘液レベルがベースラインを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する方法において:
前記対象に治療的有効量の融合タンパク質を含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記融合タンパク質が、シアリダーゼの少なくとも一の触媒ドメインを具え、当該シアリダーゼの触媒ドメインが、SEQ ID No.12のアミノ酸274乃至アミノ酸666から伸長したアミノ酸配列と、両立的に、少なくとも一のアンカードメインであって、当該アンカードメインが、SEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むヒトアンフィレグリンのグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインである、アンカードメインを含み;
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与した後に、ベースラインレベルを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する融合タンパク質の量を含む;
ことを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項53に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項52乃至59のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項52乃至70に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項52乃至70に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項73】
請求項52乃至72のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項74】
請求項52乃至73のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項75】
呼吸器管中の粘液レベルがベースラインを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限する方法において:
前記対象に、シアリダーゼ又はその有効成分を含む治療的有効量のペプチドと、選択的に、アンカードメインを含む化合物又は組成物を投与するステップを具え、
前記治療的有効量が、前記化合物又は組成物を投与した後に、ベースラインレベルを超えている対象の呼吸器管内の粘液量の増加を制限するペプチドの量を含むことを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Clostridium perfringensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Arthrobacter ureafaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、Micromonospora viridifaciensシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ヒトNeu2シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、又はヒトNeu4シアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項76に記載の方法において、前記シアリダーゼ又はその有効成分が、Actinomyces viscosusシアリダーゼ又はその触媒ドメインに実質的に相同であることを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項75に記載の方法において、前記ペプチドがアンカードメインを含み、当該アンカードメインがグリコサミノグリカン(GAG)結合ドメインであることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項78に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒト血小板因子4のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトインターロイキン8のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアンチトロンビンIIIのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒトアポタンパク質EのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ヒト血管関連遊走細胞タンパク質のGAG−結合ドメインに実質的に相同である、又は、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項78に記載の方法において、前記GAG−結合ドメインが、ヒトアンフィレギュリンのGAG−結合ドメインに実質的に相同である、ことを特徴とする方法。
【請求項81】
請求項75に記載の方法において、前記組成物が更に、一又はそれ以上の追加の化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項82】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項83】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、CaCl2又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項84】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項85】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、ヒスチジン−HCl又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、トレハロース又はこの類似体を含むことを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項71に記載の方法において、前記一又はそれ以上の追加の化合物が、MgSO4、CaCl2、ヒスチジン、ヒスチジン−HCl、及びトレハロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がスプレィとして調整されることを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が吸入剤として調整されることを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が注入用溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項91】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物がクリーム、軟膏(salve)、ゲル、又は軟膏(ointment)として調整されることを特徴とする方法。
【請求項92】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記化合物又は組成物が経口投与可能なピル、錠剤、トローチ、懸濁液、あるいは溶液として調整されることを特徴とする方法。
【請求項93】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が鼻スプレィの使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項94】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が吸入器の使用によるものであることを特徴とする方法。
【請求項95】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が1日1回乃至4回行われることを特徴とする方法。
【請求項96】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所的な塗布によるものであることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が経口投与によるものであることを特徴とする方法。
【請求項98】
請求項75乃至87のいずれか1項に記載の方法において、前記投与が局所注入又は静脈注射によるものであることを特徴とする方法。
【請求項99】
請求項75乃至98に記載の方法において、前記対象がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項100】
請求項75乃至98に記載の方法において、前記対象が非ヒト動物であることを特徴とする方法。
【請求項101】
請求項75乃至100のいずれか1項に記載の方法において、前記対象が以下の症状: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)、脈管炎、粘液栓、ヴェーゲナー肉芽腫、肺炎、結核、肺又は気道に関連する癌、カールタジュナー症候群、ヤング症候群、慢性洞肺感染、α−1−アンチトリプシン欠乏症、原発性免疫不全症、後天性免疫不全症候群、日和見感染症、感染症及び感染後状態、風邪、運動誘発性粘液過剰分泌、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、呼吸器感染、気道閉塞、毒性ガスの吸入又は吸引、肺吸引、又はアルコール依存症、のうち一又はそれ以上を有することを特徴とする方法。
【請求項102】
請求項75乃至101のいずれか1項に記載の方法において、前記融合タンパク質が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有することを特徴とする方法。
【請求項103】
請求項1、24、52、及び75のいずれか1項に記載の方法が更に、処置を行う対象を選択するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項104】
請求項103に記載の方法において、前記対象が、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、及び/又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の一又はそれ以上に感染していないことを特徴とする方法。
【請求項105】
請求項103に記載の方法において、前記対象が、活性インフルエンザウイルス、活性パラインフルエンザウイルス、及び/又は活性RSVの一又はそれ以上に感染していないことを特徴とする方法。
【請求項106】
請求項103に記載の方法において、前記対象がぜん息に罹患していないことを特徴とする方法。
【請求項107】
請求項103に記載の方法において、前記対象がぜん息患者でなく、ぜん息性でもないことを特徴とする方法。
【請求項108】
請求項1、24、52、75、及び103のいずれか1項に記載の方法において、前記対象がインフルエンザにかかっているか、又はインフルエンザウイルスに感染していることを特徴とする方法。
【請求項109】
請求項108に記載の方法において、前記化合物又は組成物が、SEQ ID No.21に記載されている配列を有するタンパク質又はペプチドを含むことを特徴とする方法
【請求項110】
請求項52又は75に記載の方法が更に、前記対象に前記化合物又は組成物を投与する前に、前記対象の呼吸器管の粘液のベースラインレベルを測定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項111】
請求項110に記載の方法が更に、前記対象に前記化合物又は組成物を投与した後に、前記対象の呼吸器管の粘液の第2レベルを測定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項112】
請求項111に記載の方法が更に、前記対象の粘液のベースラインレベルに比べて、前記対象の呼吸器管の粘液レベルが低下する又は粘液レベルの増加が前記粘液の第2のレベルに制限されるまで、処置を続けるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項113】
(a)シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物の集合をぜん息に罹患している動物モデルに投与するステップと;
(b)前記動物の肺の粘液レベルを定量化するステップと;
(c)前記ステップ(b)で測定したレベルを、前記化合物又は組成物の集合を投与する前の前記動物の肺の粘液レベルと比較するステップと;
(d)前記化合物又は組成物がない場合の粘液レベルに対して、粘液レベルを低下させる化合物又は組成物を同定する又は選択するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項114】
(a)シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物の集合をぜん息に罹患している動物モデルに投与するステップと;
(b)前記動物の肺の粘液レベルを定量化するステップと;
(c)前記ステップ(b)で測定したレベルを、前記化合物又は組成物の集合を投与する前の前記動物の肺の粘液レベルと比較するステップと;
(d)前記化合物又は組成物が、前記化合物又は組成物がない場合の粘液レベルに対して、粘液レベルを低下させるかどうかを同定するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項115】
シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物が、対象の呼吸器管の粘液量を低下させるかどうかを評価する方法において:
(a)動物モデルのムスカリン受容体を、シアリダーゼ及び/又はその触媒有効成分を含む化合物又は組成物に接触させるステップと;
(b)前記対象にムスカリン受容体アゴニストを投与するステップと;
(c)前記対象の気道抵抗を定量化するステップと;
(d)ステップ(c)で測定した気道抵抗レベルを、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗と比較するステップと;
(e)前記化合物又は組成物が、前記化合物又は組成物と接触していない気道抵抗に対して、気道抵抗を低下させるかどうかを同定するステップと;
(f)前記化合物又は組成物が前記ステップ(e)で決定したように気道抵抗を低下させる場合は、前記化合物又は組成物を前記対象の呼吸器管における粘液量を低下させるものとして評価するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−510169(P2013−510169A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538031(P2012−538031)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055636
【国際公開番号】WO2011/057081
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508221833)ネクスバイオ,インク. (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055636
【国際公開番号】WO2011/057081
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508221833)ネクスバイオ,インク. (4)
【Fターム(参考)】
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