説明

呼吸回路用ウォータトラップ

【課題】管理者の負担を軽減することができる呼吸回路用ウォータトラップを提供すること。
【解決手段】呼吸回路用ウォータトラップ500は、医療機器の呼吸回路に配置されて使用される器具であって、呼吸回路に接続し呼吸回路の不要水を排出する止水弁付きコネクタ700と、止水弁付きコネクタ700の不要水の排水側を密栓し、排出された不要水を貯留する貯水カップ800とを有し、貯水カップ800は、貯留した不要水を外部へ排出する排水口812と、不要水を利用して排水口812に対する封水を行う封水部820とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸回路用ウォータトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器等の医療機器における呼吸回路では、患者の呼気に含まれる水蒸気の凝縮等により、不要水(復水)が発生する。この不要水を外部へ排出する装置として、呼吸回路用ウォータトラップが広く使用されている。呼吸回路用ウォータトラップの使用例としては、例えば特許文献1に記載されているように、呼気系統のチューブに設けたもの、および、例えば特許文献2に記載されているように、呼吸回路から分岐してガスセンサに接続するチューブに設けたもの、等がある。
【0003】
呼吸回路用ウォータトラップは、一般に、主に、止水弁付きコネクタと貯水カップとから構成される。止水弁付きコネクタは、貯水カップが取り付けられているときには、止水弁を開放して呼吸回路の不要水を貯水カップへ排出する。また、止水弁付きコネクタは、貯水カップが取り外されているときには、止水弁が自動的に閉止するようになっている。
【0004】
このような呼吸回路用ウォータトラップは、人工呼吸器の使用中に、呼吸回路の気密性を保ちつつ、呼吸回路の不要水を貯留し、貯水カップを外して排水させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−23051号公報
【特許文献2】特開平6−130029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の呼吸回路用ウォータトラップでは、貯水カップを取り外して排水してまた取り付けるといった作業を定期的に行わなければならない。更に、不要水が貯水カップ内で溢れて、呼吸回路へと逆流することがないように、頻繁に不要水の貯留量を確認しなければならない。すなわち、従来の呼吸回路用ウォータトラップには、看護師等の管理者の負担が大きいという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、管理者の負担を軽減することができる呼吸回路用ウォータトラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の呼吸回路用ウォータトラップは、医療機器の呼吸回路に配置されて使用される呼吸回路用ウォータトラップであって、前記呼吸回路に接続し、前記呼吸回路の不要水を排出する止水弁付きコネクタと、前記止水弁付きコネクタの前記不要水の排水側を密栓し、排出された不要水を貯留する貯水カップとを有し、前記貯水カップは、貯留した前記不要水を外部へ排出する排水口と、前記不要水を利用して前記排水口に対する封水を行う封水部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯留水の排水作業や貯留量の確認作業等による管理者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップが用いられる呼吸回路の構成の一例を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップの外観を示す斜視図
【図3】本発明の一実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップの第1の断面図
【図4】本発明の一実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップの第2の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態の呼吸回路用ウォータトラップが用いられる呼吸回路の構成の一例を示す図である。ここでは、人工呼吸システムに、本発明に係る呼吸回路用ウォータトラップが用いられる例を示す。
【0013】
人工呼吸システム100は、人工呼吸器200、加温加湿器300、カテーテルマウント400、および呼吸回路用ウォータトラップ500と、これらを接続する複数のチューブ600から主に構成される。
【0014】
人工呼吸器200は、患者の人工呼吸を自動的に行うための装置であり、吸気の供給および呼気の排出を行う。加温加湿器300は、人工呼吸器200から吸気を導入し、加温および加湿を行ってカテーテルマウント400へ送る。カテーテルマウント400は、加温加湿された吸気を供給すると共に、呼気弁(図示せず)の働きにより患者の呼気を呼吸回路用ウォータトラップ500を介して人工呼吸器200へ送る。呼吸回路用ウォータトラップ500は、呼気に含まれる水蒸気の凝固等により発生する不要水(復水)を貯留する。
【0015】
図2は、呼吸回路用ウォータトラップ500の外観を示す斜視図である。
【0016】
呼吸回路用ウォータトラップ500は、大別すると、止水弁付きコネクタ700および貯水カップ800からなる。
【0017】
止水弁付きコネクタ700は、図1に示したように、人工呼吸システム100の呼吸回路のうち、呼気系統のチューブ600に接続し、チューブ600内の不要水を排出する。特に、図1のように呼吸回路に加温加湿器300が配置されている場合、水蒸気の復水が多く、大量の不要水が発生することになる。
【0018】
貯水カップ800は、止水弁付きコネクタ700の不要水の排水側を密栓し、排出された不要水を貯留する。また、貯水カップ800は、貯留した不要水を外部へ排出する排水口を有すると共に、不要水を利用して排水口に対する封水を行う封水部とを有する。
【0019】
貯水カップ800は、止水弁付きコネクタ700と一体的に構成されても良いが、本実施の形態では、止水弁付きコネクタ700に対して着脱可能に構成されているものとする。貯水カップ800は、洗浄時等には取り外され、それ以外は基本的に取り付けられたままとすることができる。
【0020】
また、呼吸回路用ウォータトラップ500は、外から内部の状態を視認できるように、透明プラスティック等、透過性を有することが望ましい。
【0021】
図3は、貯水カップ800が止水弁付きコネクタ700に装着された状態における呼吸回路用ウォータトラップ500の断面図である。説明の簡便化のため、不要水が貯留した状態を図示する。
【0022】
止水弁付きコネクタ700は、大別すると、パイプ部710および止水弁720からなる。
【0023】
パイプ部710は、V字状の流路を有する短いパイプ部材であり、曲がり部分を下方に向けた状態で呼吸回路のチューブに接続されて、呼吸回路に挿入される。パイプ部710の曲がり部分には、不要水を排出するための穴である流路711が設けられている。そして、パイプ部710には、流路711に設けられる止水弁720を囲むように、ゴムパッキン(図示せず)が装着された筒状のカップ接続部712が設けられている。
【0024】
止水弁720の弁体721は、流路711をパイプ部710の内部側から閉止するように配置されている。止水弁720の弁棒722は、パイプ部710の流路711から外へ突出している。弁棒722には、弁体721が流路711を塞ぐ方向に弁棒722に力を付勢するばね723が嵌め込まれている。
【0025】
貯水カップ800は、大別すると、カップ部810および封水部820から成る。
【0026】
カップ部810の上部には、カップ接続部712に接続するコネクタ接続部811が設けられている。また、カップ部810の底には、止水弁付きコネクタ700から排出されてカップ部810に貯留した不要水を外部へ排出する排水口812が設けられている。
【0027】
排水口812の外側には、所定のチューブや栓を接続するための排水側接続部813が設けられている。排水側接続部813に接続されるチューブ(図示せず)他端は、例えば、大きな容器や排水シンク等に開放される。なお、ここでは、排水側接続部813の一例として、竹の子ニップルを図示しているが、三方活栓等、他の各種接続継手を採用することができる。
【0028】
また、排水口812の内側には、パイプ状部材814が、排水口812と一体的に形成されている。
【0029】
封水部820は、カップ部810のパイプ状部材814を上から覆う椀状の部材である。封水部820の内径は、パイプ状部材814の外径よりもわずかに大きく、封水部820の高さは、パイプ状部材814の上端の高さよりもわずかに高い。また、封水部820は、パイプ状部材814を覆った状態で、下端の一部にわずかな隙間を有している。これにより、カップ部810に貯留した不要水900のうち、パイプ状部材814の高さを超える分は、排水口812から外部へ排出され、超えない分は、パイプ状部材814と封水部820との間を満たしてカップ部810の内部と外部とを遮断し、封水を行うことになる。また、パイプ状部材814の上端は、止水弁720の排出側と排水口812の外部との気圧差に対応した封水深が確保される高さ、つまり、通常の使用において封水が切れないような十分な高さを有しているものとする。
【0030】
すなわち、カップ部810と、パイプ状部材814と、封水部820との組み合わせは、いわゆる椀トラップを構成している。これにより、呼吸回路用ウォータトラップ500は、継続的に、貯水カップ800の内部の空気を外部と遮断しつつ、パイプ状部材814の高さを超える分の不要水を外部へ排出することができる。なお、使用開始時には不要水が無いため、管理者が水を予め入れておくことが望ましい。
【0031】
また、封水部820の外側上面は、止水弁720の弁棒722に当接することにより、止水弁720の弁体721を、上方に移動させ、弁座であるパイプ部710の内壁から離す高さとなっている。また、止水弁付きコネクタ700のカップ接続部712と貯水カップ800のコネクタ接続部811とは、接続された状態において、止水弁720のばね723に生じる力を超える接合力を保持するように構成されている。
【0032】
このように、呼吸回路用ウォータトラップ500は、貯水カップ800が止水弁付きコネクタ700に装着された状態では、止水弁720が封水部820によって開放される構成となっている。したがって、止水弁720を開放するための特別な部材を不要とすることができる。
【0033】
図4は、貯水カップ800が止水弁付きコネクタ700に装着されていない状態における呼吸回路用ウォータトラップ500の断面図であり、図3に対応するものである。
【0034】
呼吸回路用ウォータトラップ500は、貯水カップ800が止水弁付きコネクタ700に装着されていない状態では、封水部820が弁棒722を押し上げる力が無い状態となり、ばね723の力によって止水弁720が閉止される。
【0035】
したがって、貯水カップ800が取り外されている間も、呼吸回路用ウォータトラップ500は、継続的に、貯水カップ800の内部の空気を外部と遮断し、呼吸回路の気密性を保つことができる。
【0036】
なお、封水部820を、弁棒722からの力の付勢のみによって固定される構成とした場合には、封水部820を固定するための特別な部材を不要とすることができ、また、貯水カップ800の洗浄を簡単に行うことが可能となる。逆に、封水部820が、ネジ機構等により固定される構成となっている場合には、封水部820の紛失のおそれを低減することができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップは、貯水カップに排水口を有し、更に、不要水を利用して排水口に対する封水を行う封水部を有するので、貯留水の排水ための貯水カップの着脱等の作業を不要とすることができる。したがって、本実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップは、人工呼吸システム100の呼吸回路に関する管理者の負担を軽減することができ、その作業効率を大幅に向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る呼吸回路用ウォータトラップは、貯水カップの着脱の回数を低減することができ、更には、貯水カップの着脱ができない一体型の構成とすることが可能である。したがって、本実施の形態に係る人工呼吸器用ウォータトラップは、呼吸回路用ウォータトラップにおける着脱部分の接続不良による呼吸回路のエアー漏れが発生する可能性を低減することができ、安全性や信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明は、従来品との大きく異なる部分は貯水カップの構造のみであるため、既存の呼吸回路用ウォータトラップを利用したり、従来の呼吸回路用ウォータトラップに対する軽微な変更により、容易に実現することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、封水部をカップの内部に配置した椀トラップの封水機構を採用したが、これに限定されない。本発明に係る呼吸回路用ウォータトラップは、例えば、封水部をカップの外部に配置した、Sトラップ、Pトラップ、Uトラップ等の管トラップ、ドラムトラップ等、各種の封水機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
100 人工呼吸システム
200 人工呼吸器
300 加温加湿器
400 カテーテルマウント
500 呼吸回路用ウォータトラップ
600 チューブ
700 止水弁付きコネクタ
710 パイプ部
711 流路
712 カップ接続部
720 止水弁
721 弁体
722 弁棒
723 ばね
800 貯水カップ
810 カップ部
811 コネクタ接続部
812 排水口
813 排水側接続部
814 パイプ状部材
820 封水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の呼吸回路に配置されて使用される呼吸回路用ウォータトラップであって、
前記呼吸回路に接続し、前記呼吸回路の不要水を排出する止水弁付きコネクタと、
前記止水弁付きコネクタの前記不要水の排水側を密栓し、排出された不要水を貯留する貯水カップと、を有し、
前記貯水カップは、
貯留した前記不要水を外部へ排出する排水口と、
前記不要水を利用して前記排水口に対する封水を行う封水部と、を有する、
呼吸回路用ウォータトラップ。
【請求項2】
前記封水部は、
前記止水弁の排出側と前記排水口の外部との気圧差に対応した封水深を有する、
請求項1記載の呼吸回路用ウォータトラップ。
【請求項3】
前記排水口は、
所定のチューブまたは所定の栓を接続するための接続部を有する、
請求項2記載の呼吸回路用ウォータトラップ。
【請求項4】
前記貯水カップは、
前記止水弁付きコネクタに対して着脱可能な構成を有する、
請求項3記載の呼吸回路用ウォータトラップ。
【請求項5】
前記封水部は、
少なくとも前記貯水カップが前記止水弁付きコネクタを密栓した状態において、椀部が固定される椀トラップである、
請求項4記載の呼吸回路用ウォータトラップ。
【請求項6】
前記椀部は、
少なくとも前記貯水カップが前記止水弁付きコネクタを密栓した状態において、その外側上面が前記止水弁の弁棒に当接することにより、前記呼吸回路の内部と前記貯水カップの内部とを連通させる、
請求項5記載の呼吸回路用ウォータトラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−176207(P2012−176207A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41937(P2011−41937)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)