説明

呼吸治療装置用の音響検出

方法及び装置が、呼吸治療装置等の自動化されたデバイス用の音響検出を提供する。本技術のいくつかの実施形態では、音センサ104の信号に基づく、ケプストラム解析等のノイズ又は音パルスの音響解析により、患者インターフェース内、マスク若しくは呼吸導管108内、又は患者呼吸器系内等の閉塞(O)の検出が可能になる。いくつかの実施形態により、付属品の識別、又は漏れ等の付属品の使用の状態等、付属品の検出がさらに可能になる。本技術のさらなる実施形態により、自動化されたデバイスを使用するように意図されている患者又はユーザの検出が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月20日出願の米国仮特許出願第61/253,172号、2009年8月13日出願の米国仮特許出願第61/233,554号及び2009年2月11日出願のオーストラリア仮特許出願第2009900561号の出願日の利益を主張し、それらの開示内容は、引用により本明細書の一部を成すものとする。
【0002】
本技術は、呼吸治療装置等の自動化されたデバイスに有用であり得る音響検出用の方法及び装置に関する。本技術の実施の形態は、患者インターフェース内又は患者の呼吸器系内等の閉塞の検出、マスク等、付属品又はその状態の検出、及び患者又はユーザの検出を含むことができる。
【背景技術】
【0003】
人工呼吸器(ventilator:ベンチレータ)又は陽圧治療デバイス等の呼吸治療装置は、通常、流れ発生器(flow generator)、空気フィルタ、マスク、カニューレ又は気管内チューブ、流れ発生器をマスク又はチューブに接続する供給チューブ、センサ、及びマイクロプロセッサベースのコントローラを有する場合がある。流れ発生器は、サーボ制御モータ及びインペラ(たとえばブロワ(blower))とすることができる。任意選択で、流れ発生器は、ブロワのモータ速度制御に代わるものとして、患者に供給される圧力を変更する手段として、環境に空気を排出することができる弁を有することもできる。センサは、特に、圧力トランスデューサ、流れセンサ等により、モータ速度、気体体積流量及び出口圧力を測定する。
【0004】
こうしたデバイスは、システムに変化を起こすように自動化されてきた。たとえば、CPAPデバイスは、患者の状態を検出するように実施されてきた。Berthon-Jonesによる米国特許第5,704,345号には、部分的な又は完全な上気道閉塞の指示に応じて治療圧力を自動的に調節するデバイスが記載されている。Berthon-Jonesが開示した自動化手続きには、調整された圧力出力を生成するCPAP圧力発生器により空気流を誘導することにより、開放した又は閉鎖した患者気道を検出することが含まれる。圧力の調整によって誘導される空気流は、測定された空気流信号を復調することにより、他の要素(心拍等)によって誘導される空気流から分離される。無呼吸は、平均誘導信号が0.03リットル/秒を上回る場合、「気道開放」として分類され、平均誘導信号が0.03リットル/秒を下回る場合、「気道閉鎖」として分類される。
【0005】
特許協力条約による国際出願公開第2006/092001号では、Kwokが、コードの付された一連の抵抗器を使用することによりマスクを特定するシステムを記載している。コントローラが、抵抗器に基づいて、特定のマスクの識別に関連する特定の電気抵抗を識別することによってマスクを検出することができる。
【0006】
こうしたシステムの状態を評価するか、又はその動作を制御する、改善された技法及びデバイスが望ましい可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本技術の一態様は、さまざまな目的に対して音響検出を実施することである。
【0008】
本技術の別の態様は、音又はノイズを放出することができるデバイスにおいて又はそうしたデバイスを用いて音響検出を実施することである。
【0009】
本技術の別の態様は、呼吸治療装置において又は呼吸治療装置を用いて音響検出を実施することである。
【0010】
本技術の別の態様は、たとえばケプストラム解析により音響検出を実施することである。
【0011】
本技術のさらなる態様は、音響解析により、閉塞検出、構成要素若しくは付属品の検出、及び/又は患者若しくはユーザの検出を実施することである。
【0012】
A.閉塞検出
本技術の或る特定の実施の形態例の一態様は、閉塞の検出を自動化することである。
【0013】
本技術の或る特定の実施の形態例の別の態様は、呼吸装置導管内における閉塞の検出を自動化することである。
【0014】
本技術のいくつかの実施の形態の別の態様は、音センサにより気管内チューブ等、呼吸治療導管内の流れ発生器の音の測定量(measure:測定値)を決定することにより、呼吸治療導管閉塞を検出する方法を含む。そして、音の測定量をプロセッサによって解析することができる。そして、プロセッサは、解析に基づいて、呼吸治療導管における閉塞の存在又は不在を示すことができる。
【0015】
いくつかの実施の形態では、解析は、音の測定量を表すデータサンプルからフーリエ変換を計算することを含むことができる。これは、音の測定量を表す変換されたデータサンプルの対数を計算することをさらに含むことができる。さらに、解析は、音の測定量を表す変換されたデータサンプルの対数の逆変換を計算することを含むことができる。いくつかの実施の形態では、解析はまた、(a)音の測定量を表す変換されたデータサンプルの対数の逆変換と(b)呼吸治療導管の閉塞されていないものから測定された音を表す、フーリエ変換されたデータサンプルの対数の逆変換との差を計算することも含むことができる。
【0016】
さらなる実施の形態では、上記示すことは、差の計算に基づいてディスプレイにデータのグラフを表示することを含むことができる。さらに、差の計算のデータに基づく閉塞の存在の場所及び程度を決定することができる。こうした程度を、任意選択で、差の計算のデータの有意なサンプルの振幅又は大きさの値から決定することができる。場所を、差の計算のデータの有意なサンプルの時刻から決定することができる。任意選択で、呼吸治療導管内で音を発生する音源は流れ発生器とすることもできる。さらに、音センサは単一のマイクロフォンとすることもできる。
【0017】
本技術のいくつかの実施の形態は、また、呼吸治療導管の閉塞を検出する装置も含む。本装置は、呼吸治療導管と結合して、呼吸治療導管内の流れ発生器の音の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンを含むことができる。本装置のプロセッサを、マイクロフォンからの音の測定量のデータサンプルを解析し、解析されたデータサンプルに基づいて、呼吸治療導管における閉塞の存在又は不在を示すように構成することができる。任意選択で、マイクロフォンを、気管内チューブの一部と接続する開口部を有する気管内チューブカプラに適合させることができる。気管内チューブカプラはまた、人工呼吸器供給チューブの一部と接続するように適合された開口部も有することができる。カプラはマイクロフォンチャンバをさらに有することができ、該チャンバは、該チャンバをカプラのガス流路から分離する膜に適合されている。任意選択で、カプラは、マイクロフォンチャンバが周囲圧力と等しくなるのを可能にするように適合された通気孔をさらに有することができる。いくつかの実施の形態では、本装置はまた、流れ発生器を有することができ、プロセッサを、呼吸治療を引き起こすよう流れ発生器を制御するように構成することができる。同様に、プロセッサを、上述した方法の任意のものに従って閉塞を決定するように構成することができる。
【0018】
本技術のいくつかの実施の形態では、方法は、呼吸器系の閉塞の検出を実施する。本方法は、音センサにより、流れ発生器の音の測定量を決定することを含むことができる。そして、プロセッサが、音センサからの音の測定量を、音の測定量からケプストラムを計算することによって解析することができる。そして、プロセッサは、解析に基づいて、患者の呼吸器系における(たとえば部分的又は完全な)閉塞の存在又は不在を示すことができる。いくつかの実施の形態では、これは、音の測定量からのケプストラムと以前の音の測定量から決定されたケプストラムとの差を計算することに基づいて、閉塞の存在の程度を検出することを含むことができる。任意選択で、程度を、差の計算のデータの有意なサンプルの振幅値から決定することができる。さらに、場所を、差の計算のデータにおける有意なサンプルの位置から決定することができ、その位置は、呼吸治療導管の既知の端部を越えた位置を表す。
【0019】
こうした方法を、呼吸器閉塞を検出する装置において実施することができる。たとえば、本装置は、呼吸治療導管に結合して、流れ発生器の音の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンを有することができる。本装置はまた、マイクロフォンからの音の測定量のデータサンプルを、音の測定量のデータサンプルを用いるケプストラムの計算により解析するように構成された、コントローラ又はプロセッサも有することができる。本装置は、解析されたデータサンプルに基づいて患者の呼吸器系における閉塞の存在又は不在を示すようにさらに構成することができる。本装置はまた、任意選択で、流れ発生器を有することもでき、その場合、コントローラ又はプロセッサは、流れセンサを、呼吸治療を引き起こすよう制御するようにさらに適合される。
【0020】
B.付属品の検出
本技術の一態様は、流れ発生器と周辺部品との調整を容易にする構造を提供する認識システムを対象とする。
【0021】
本技術の別の態様は、CPAPデバイスに接続されたマスクのタイプの自動検出方法及び装置を提供することである。本技術のさらなる態様は、患者インターフェース及び患者の呼吸器系を含むCPAPデバイスの空気路における特徴を検出しかつ/又は特定する方法、システム及びデバイスを含むことができる。
【0022】
本技術の別の態様は、治療のために出口において患者に提供される加圧空気の供給をもたらす流れ発生器で使用されるアダプタに関する。アダプタは、流れ発生器の出口に取付け可能な導管と、導管によって支持されると共に、流れ発生器に取付け可能な特定の周辺構成要素に一意の識別特徴を提供する、識別要素とを有する。識別特徴は、流れ発生器に通信可能であり、それにより、流れ発生器の適切な動作パラメータを、流れ発生器により、特定の周辺構成要素と調和するように自動的に選択することができる。
【0023】
C.患者/ユーザ検出
本技術の或る特定の実施の形態例の一態様は、デバイスのユーザの検出又は認証方法を自動化することである。
【0024】
本技術の或る特定の実施の形態例の別の態様は、検出されたユーザに従って動作(複数可)を不可能にするか又は可能にするように、デバイスの特定のユーザの検出を自動化することである。
【0025】
本技術の或る特定の実施の形態例の別の態様は、安全機能として呼吸治療装置の特定のユーザの検出を自動化することである。
【0026】
本技術の実施の形態例のまたさらなる態様は、音センサにより、デバイスのユーザの解剖学的腔に向けられた音導管内で、音発生器の音の測定量を決定することを含む、デバイスのユーザを認証する方法である。本方法は、プロセッサにより、音センサからの音の測定量を、音の測定量からケプストラムを計算することによって解析することをさらに含むことができる。本方法は、プロセッサにより、解析に基づいて、ユーザが事前に認可されたユーザであることを決定することをまたさらに含むことができる。
【0027】
いくつかの実施の形態では、本方法における決定することは、デバイスの動作を可能にすることを含むことができる。いくつかの実施の形態では、音発生器はスピーカを含み、音センサはマイクロフォンを含む。いくつかの実施の形態では、認証によって保護されるデバイスは呼吸治療装置であり、そこでは、音発生器は流れ発生器を含み、音導管は呼吸供給チューブを含む。場合によっては、解析は、ケプストラムのデータを、セットアッププロセスにおいて以前の音の測定量から決定された以前のケプストラムのデータと比較することを含むことができる。こうした場合によっては、本方法は、セットアッププロセスで取得された以前の音の測定量を決定することを含むことができる。
【0028】
いくつかの実施の形態では、本技術は、ユーザを認証する装置を含むことができる。本装置は、装置のユーザの解剖学的腔に音響信号を向けるように適合された音導管を有することができる。本装置はまた、音響信号を発生する音発生器も有することができる。本装置は、音導管に結合して、音響信号の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンをさらに有することができる。本装置はまた、音の測定量のデータサンプルを用いてケプストラムを計算することにより、マイクロフォンからの音響信号の測定量のデータサンプルを解析するように構成されたプロセッサも有することができる。プロセッサを、解析に基づいて、ユーザが事前に認可されたユーザであることを決定するように構成することも可能である。
【0029】
いくつかの実施の形態では、プロセッサを、上記決定に基づいて装置の動作を可能にするように構成することができる。本装置の音発生器は、少なくとも1つのスピーカを含むことができる。本装置のプロセッサはまた、任意選択で、ケプストラムを、セットアッププロセスで取得された以前の音の測定量から決定される以前のケプストラムのデータと比較することにより、解析を行うことも可能である。いくつかの実施の形態では、本装置のプロセッサを、セットアッププロセスで以前の測定量を設定するように構成することも可能である。いくつかの実施の形態では、本装置は呼吸治療装置であってもよく、その場合、音発生器はサーボ制御ブロワであり、音導管は、呼吸供給チューブ及びマスク又は鼻カニューレを含む。
【0030】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に含まれる情報を考慮することで明らかとなろう。
【0031】
本技術を、添付の図面において、限定としてではなく例として示し、図面では、同様の参照数字は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本技術の呼吸治療導管閉塞を検出するシステムの構成要素例を示す図である。
【図2】本技術の呼吸治療導管閉塞検出を実施することができるデバイスの方法例の図である。
【図3】本技術のいくつかの実施形態による、閉塞されていない呼吸治療導管から測定された2つの音波からのケプストラムデータのグラフである。
【図4】図3の2つの音波のケプストラムデータの差のグラフである。
【図5】本技術のいくつかの実施形態に従って決定された、閉塞のある場合及びない場合の一般的な呼吸治療導管から取得された2つの音波のケプストラムデータのグラフである。
【図6】図5の2つの音波からのケプストラムデータの差の大きさのグラフである。
【図7】本技術の導管の実施形態における音センサの実施形態の断面図である。
【図8】本技術の音センサを備えた呼吸治療導管カプラの実施形態の斜視図である。
【図9】気管内チューブが取り付けられた図8のカプラの実施形態の斜視図である。
【図10】流れ発生器供給導管もまた取り付けられた図9のカプラの実施形態の斜視図である。
【図11】本技術のいくつかの実施形態による閉塞を検出するように構成された呼吸治療装置の構成要素例の図である。
【図12】導管閉塞検出技術を含む本技術のコントローラアーキテクチャ例のブロック図である。
【図13】本発明の第1の好ましい実施形態の概略図である。
【図14】第1の好ましい実施形態によるインパルス応答関数の一例を示すグラフである。
【図15】さまざまな流れ発生器速度でのさまざまなマスク例のさまざまなケプストラムを示すさらなるグラフである。
【図16】実施形態例で用いられるマスクの第1の例を示す図である。
【図17】実施形態例で用いられるマスクの第1の例を示す図である。
【図18】実施形態例で用いられるマスクの第1の例を示す図である。
【図19】本技術のデバイスの特定のユーザを認証又は検出するシステム又は装置の構成要素例を示す図である。
【図20】本技術のデバイスのユーザ検出方法例の図である。
【図21】共通のユーザから異なる時点で測定された2つの音波からの仮想ケプストラムデータのグラフである。
【図22】図21の2つの音波からのケプストラムデータの差のグラフである。
【図23】2つの異なるユーザから取得された2つの音波からの仮想ケプストラムデータのグラフである。
【図24】図23の2つの音波からのケプストラムデータの差の大きさのグラフである。
【図25】本技術のいくつかの実施形態による認証技術を用いて構成された呼吸治療装置例の構成要素の図である。
【図26】ユーザ検出技術を有する本技術のコントローラアーキテクチャ例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
本音響検出技術のいくつかの実施形態は、ケプストラム解析を実施することができる。ケプストラムを、対数スペクトルの逆フーリエ変換か又はデシベルスペクトルの順フーリエ変換等とみなすことができる。演算は、本質的に、インパルス応答関数IRFとノイズ源又は音源との畳み込みを加法演算に変換することができ、それにより、ノイズ源又は音源を、解析のため、システムインパルス応答関数のデータを分離するように、より容易に考慮するか又は除去することができる。ケプストラム解析の技法は、「The Cepstrum: A Guide to Processing」(Childers他、Proceedings of the IEEE, Vol. 65, No.10, Oct 1977)と題する学術論文、及びRANDALL RB著、「Frequency Analysis」、(Copenhagen: Bruel & Kjaer, p.344(1977、改訂版1987))に詳細に記載されている。ケプストラム解析について記載している他の文献も入手可能であり得る。
【0034】
こうした方法を、畳み込みの特性に関して理解することができる。f及びgの畳み込みをf*gと書くことができる。この演算は、2つの関数(f及びg)の、一方が反転又はシフトした後の積の積分とすることができる。したがって、それは以下のようにある種の積分変換である。
【0035】
【数1】

【0036】
上記では符号tが使用されているが、それは、時間領域を表す必要はない。しかしながら、その文脈では、畳み込み公式を、瞬間tにおける関数f(τ)の重み付き平均として説明することができ、ここで、重み付けは、単純に量tだけシフトしたg(−τ)によって与えられる。tが変化すると、重み付け関数は、入力関数の異なる部分を強調する。
【0037】
より一般的には、f及びgがR上の複素数値関数である場合、それらの畳み込みを以下の積分として定義することができる。
【0038】
【数2】

【0039】
音響システム出力を、呼吸治療装置の導管を含むもの等、時不変線形システム(何らかの人又はシステムの他の未知の部分を含むことができる)に対する入力に関連付けることができる数学モデルは、この畳み込みに基づくことができる。システムのマイクロフォンで測定される出力を、時間(t)の関数としてシステムインパルス応答関数(IRF)で「畳み込まれる」入力ノイズとみなすことができる。
【0040】
【数3】

【0041】
ここで、
*は畳み込み関数を示す。
y(t)はマイクロフォンで測定される信号である。
(t)は、呼吸治療装置の流れ発生器(「FG」)において又は該流れ発生器によって形成されたノイズ又は音等の音源又はノイズ源である。
(t)は、ノイズ源又は音源からマイクロフォンまでのシステムIRFである。
インパルス応答関数(IRF)は、単位インパルス入力に対するシステム応答である。
【0042】
式1を、測定された音データのフーリエ変換(たとえば、離散フーリエ変換(「DFT」)又は高速フーリエ変換(「FFT」))によって周波数領域に変換し、畳み込み定理を考慮することにより、以下の式が生成される。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、
Y(f)はy(t)のフーリエ変換であり、
(f)はs(t)のフーリエ変換であり、
(f)はh(t)のフーリエ変換である。
こうした場合、時間領域における畳み込みは、周波数領域における乗算となる。
【0045】
乗算が加算に変換されるように、式2の対数を適用することができる。
【0046】
【数5】

【0047】
そして、式3を、逆フーリエ変換(IFT)(たとえば逆DFT又は逆FFT)によって、再び時間領域に変換することができ、その結果、複素ケプストラム(K(τ))(ここでは複素スペクトルから開始することができるため複素数)、すなわち、スペクトルの対数の逆フーリエ変換がもたらされる。
【0048】
【数6】

【0049】
「τ」は、単位が秒で測定される、ケフレンシとして知られる実数値変数である。そのため、時間領域において畳み込みである効果が、スペクトルの対数において加法となり、ケプストラムにおいてもそのままであることが分かる。
【0050】
ケフレンシのデータ値を検査すること等、ケプストラム解析からのデータを考慮することにより、システムに関する情報を提供することができる。たとえば、システムに対するケプストラムデータの以前の又は既知のベースラインからシステムのケプストラムデータを比較することにより、差等の比較を用いて、システムの相違又は類似性を認識することができ、次に、それを用いて、可変の関数又は目的に対して自動制御を実施することができる。
【0051】
以下の実施形態例は、本明細書で説明するように、こうした解析方法を利用して、さまざまな目的に対して有用な種々の検出器を実施することができる。
【0052】
A.閉塞検出
侵襲的に人工呼吸されている患者を、気管挿管によって人工呼吸デバイスを用いて治療することができる。可撓性の気管内チューブが患者の気管内に挿入される。そして、チューブを、任意選択で機械式人工呼吸器とすることもできる呼吸治療装置に接続することができる。チューブは、人工呼吸器から肺に換気補助の流れを向けることにより、患者の人工呼吸を可能にする。チューブは、患者の気道が、換気補助を送達するために開放したままでありすなわち閉塞されていないままであることを確実にする。しかしながら、場合によっては、粘液等の生体物質が、チューブの内側に蓄積する可能性がある。こうした物質が大量に存在することにより、チューブ内に余分な空気抵抗がもたらされる可能性がある。
【0053】
この物質によってもたらされる抵抗は、大きくなりすぎると、換気補助を妨げる可能性がある。こうした場合、チューブを交換するか又は洗浄することができるように、患者から抜管しなければならない。場合によっては、気管内カメラを利用して、チューブの内部を検査し、チューブ内のあらゆる蓄積の進行を監視することができる。しかしながら、これは容易な措置ではなく、こうしたカメラはコストがかかる可能性がある。
【0054】
したがって、本技術の実施形態は、気管内チューブ又は供給チューブ及びマスク等の呼吸治療装置導管内の閉塞を検出する方法及びデバイスを含むことができる。図1に示すように、呼吸治療導管閉塞検出装置102を、音波測定及び解析により、導管内の粘液又は他の生体物質等、閉塞(たとえば部分閉塞又はそれ以外)の存在を検出するように実施することができる。こうした検出器装置は、通常、マイクロフォン等の音センサ104及び検出コントローラ106を有する。
【0055】
通常の実施形態では、音センサ104は、検出コントローラ106によって解析するために、呼吸治療導管108内を移動している音を測定する。たとえば、音は、音源が発生した音の場合がある。音は、サーボ制御ブロワ等の流れ発生器110の動作によって生成される振動又は音の場合がある。たとえば、流れ発生器は、任意の供給導管112を介して呼吸可能なガスの流れを呼吸治療導管108に供給している可能性がある。呼吸治療導管108が患者の呼吸器系内にある場合、呼吸可能なガスは、それにより、患者に呼吸治療を提供することができる。この測定された音は、呼吸治療導管内に閉塞(図1において参照符号「O」によって示す)がある場合、該閉塞によって反射される音波を含む可能性がある。
【0056】
音センサ104からの音信号を、検出コントローラ106に送信することができる。センサからの供給信号がデジタル形式でなく、コントローラがデジタルコントローラである場合、任意のアナログ/デジタル(A/D)変換器/サンプラ(別個には示さず)を利用することができる。センサからの信号に基づき、コントローラは、音信号を評価して、呼吸治療導管内の閉塞の存在若しくは不在、閉塞の程度又は閉塞の位置等、閉塞データを決定する。
【0057】
いくつかの実施形態では、検出コントローラ106は、本明細書においてより詳細に説明するアルゴリズム等の特定の検出方法を実施するように構成されたプロセッサを含むことができる。したがって、コントローラは、集積チップ、メモリ及び/又は他の制御命令、データ若しくは情報記憶媒体を含むことができる。たとえば、こうした検出方法を含むプログラムされた命令を、デバイスのメモリの集積チップにコード化することができる。同時に又は代替的に、こうした命令を、適切なデータ記憶媒体を用いてソフトウェア又はファームウェアとしてロードすることもできる。こうしたコントローラ又はプロセッサにより、デバイスを、音センサからの音データを検出し解析するように使用することができる。したがって、プロセッサは、本明細書においてより詳細に説明する実施形態において記載したように閉塞の評価を制御することができる。
【0058】
呼吸治療導管閉塞検出装置102のコントローラ106のこうした方法又はアルゴリズムの一例を、図2のフローチャートに示す。220において、音センサは、コントローラの制御下等において、呼吸治療導管内の流れ発生器の音を測定する。222において、音センサからの音の測定量(measure:測定値)を、コントローラ又はそのプロセッサによって解析する。224において、コントローラ又はプロセッサは、解析に基づいて、呼吸治療導管内の閉塞の存在又は不在を示す。
【0059】
本技術のこうした実施形態では、システムの音響的な性質に関する複数の設計考慮事項があり得る。患者の人工呼吸器回路は、構成要素の組合せ及び並べ換えに関して多くの異なる変形を有することができる。各組合せは、異なる音響特性を有する可能性がある。これらの組合せに対する1つの共通の構成要素は、気管内チューブ等の呼吸治療導管108とすることもでき、それはその長さ「L」に沿った断面がおよそ一定であり(閉塞されていない場合)、患者が導管の患者側端部(図1において「PE」として示す)に位置し、人工呼吸器回路(他のあり得る構成要素を含む)が流れ発生器側端部(図1において「FGE」として示す)にある。導管(閉塞されていない場合)の音響特性は、その長さに沿って広範囲の周波数に対し導波路として作用する、というものであり得る。したがって、音響信号が気管内チューブを下って伝播する際、その伝播速度に関連する時間遅延以外に音響信号に著しい変化はない可能性がある。
【0060】
考慮すべき別の要素は、流れ発生器又は人工呼吸器及び患者が共に、ランダムな周期定常性の決定的なノイズの発生源となる可能性がある、ということであり得る。さらに、流れが誘導するノイズは、システム内に流れがある構成要素(たとえば供給導管等)の構造的設計の結果である可能性がある。
【0061】
したがって、本装置のいくつかの実施形態では、変化の検出は、導管が、閉塞されていなかった場合と比較して、その内壁上の物質の蓄積により次第に閉塞される際の、流れ発生器動作中の導管(又は気管内チューブ)における音響反射に基づくことができる。チューブが清潔であるか又は新しい場合、チューブには閉塞はない可能性がある。こうしたシステムにおける、音センサへの音源としての役割を果たす人工呼吸器回路の流れ発生器によって生成される音又はノイズのインパルス応答関数(「IRF」)は、選択された時刻ゼロにおけるデルタ関数と、時刻2L/cにおけるチューブの患者側端部PEからの反射とを含む(又は考慮する)ことができる。ここで、音の速度は「c」で示され、導管又は気管内チューブの長さは「L」である。その後、チューブが、その長さに沿って閉塞Oによって部分的に閉塞される場合、時刻2x/c(「x」は音センサから閉塞までの距離である)において、システムの別のIRFが、閉塞からの新たな反射を含む可能性がある。
【0062】
導管又は気管内チューブからの反射のこうした変化を監視する1つの可能な方法は、音センサからの信号のケプストラムの計算に基づくことができる。既知の清潔な導管からのケプストラムデータを、閉塞されている可能性のある導管からのケプストラムデータと比較することにより、それらの間の差等の比較を、導管内の閉塞を特定する際に考慮することができる。たとえば、同じ設定(たとえば、圧力送達、速度及び/又は流れ等)で動作している同じタイプの人工呼吸器回路又は流れ発生器等、両試験から共通のノイズ源が用いられる場合、閉塞されていないチューブのケプストラムと閉塞されたチューブのケプストラムとの比較又は差を、差データの振幅又は大きさを考慮する等により、たとえば(a)導管の閉塞の存在、(b)導管内の閉塞の場所及び/又は(c)閉塞の程度を示すように実施することができる。
【0063】
インパルス応答関数(IRF)は、単位インパルス入力に対するシステム応答である。ここで、(マイクロフォン応答に対する音源として流れ発生器からの)IRFのいくつかの要素について説明する。導管が、流れ発生器によって生成される音に対する導波路として作用する場合。音が放出され、第1の信号(図1において「A1」として示す)を形成する。音又は第1の信号は、導管を下って又は導管に沿って端部又は閉塞まで移動し、反射されて導管に沿って戻る。反射音を、第2の信号A2(図1において「A2」として示す)とみなすことができる。上述したように、導管応答の特徴は、音が、システムの一端から反対側の端部まで移動するのに必要な時間である。この遅延は、導管の一端に配置された音センサが、流れ発生器から来る第1の信号を受信し、その後しばらくして、反射された第2の信号A2として、導管(及び導管が患者内に挿管されている場合は、人間の呼吸器系のように、取り付けられている他の任意のシステムでもあり得る)によってフィルタリングされた同じ音を受信することを意味することができる。これは、導管からの反射に関連するIRFの部分が遅延の後に現れることを意味することができる。遅延を、音が音源から患者側端部まで又は導管の閉塞まで移動し、反射され、再び戻るのにかかる時間におよそ等しいものとみなすことができる。
【0064】
システムに損失が発生しやすい場合、導管の長さを考慮すると、流れ発生器における応答に関連するIRFの部分は、反射応答が開始する時までにわずかな量まで減衰する。これが発生すると、閉塞による応答を、システムIRFにおいて流れ発生器応答から完全に分離することができる。
【0065】
たとえば、発生したノイズ又はノイズ源を、音センサの測定の期間中に一定速度で動作している流れ発生器によって生成することができる。このノイズを、「周期定常性」として説明することができる。すなわち、それは、定常ランダムであり、かつその統計では周期的である。これは、いかなる時点においても、システム出力が入力信号及びシステム応答の以前のすべての値の関数であるため、ノイズ源及びシステム応答が、すべての測定時刻にわたって「不鮮明になる(smeared)」可能性があることを意味する。
【0066】
いくつかの実施形態において、音のこの畳み込み混合(convolutive mixture)から閉塞反射を分離するあり得る方法及びシステムを、式1、式2、式3及び式4に関して上述した演算に従って行うことができる。
【0067】
白色ノイズ(平坦なスペクトルを有する信号)のケプストラムはケプストラムの開始時にのみ現れるように短いが、すでに示したように、閉塞反射を含むシステムIRFの部分がチューブによってもたらされる時間遅延の後に現れるという事実により、閉塞反射の分離を支援することができる。これは、流れ発生器ノイズが十分に白色である場合に、流れ発生器のノイズ及び応答の両方から、閉塞反射応答が分離されることを意味することができる。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、流れ発生器の動作の連続音を、連続音の間の任意の時点を音インパルスであると考慮することにより、システムに対する音インパルス(s(t))とみなすことができる。こうした場合、音発生器は、相対的な音の増大の前後に無音又は音の低減した期間を生成して実際の瞬間的な音インパルスを生成する必要がない。しかしながら、いくつかの実施形態では、こうした瞬間的な音インパルスを、低速又は速度なしに続き、瞬間的な高速、次いで低速又は速度なしに戻るように設定すること等による、流れ発生器又は音源に対する制御信号の変調により発生させることができる。瞬間的な音インパルスを実施する他の方法もまた実施することができる。たとえば、スピーカを用いて、音響的な音パルス又はチャープを発生させることもできる。こうした音パルスは、さらには、広域スペクトルインパルスとすることもできる。
【0069】
図3〜図6は、上述したようなケプストラム方法に基づいて閉塞の存在を検出するためのマイクロフォンからの音データの解析を例示するグラフを示す。図3では、2つの別個の音測定試験からのデータを共通軸にプロットしている。音が患者側端部まで導管を通り抜けかつマイクロフォンまで戻ることができる十分な時間が経過するまで、選択されたか又は制御された時刻ゼロからマイクロフォン信号のサンプルを収集又は記録することができるように、音を測定することができる。図3に示す両方の場合では、測定プロセスが施される導管は閉塞されていなかった。各試験においてマイクロフォンからの測定サンプル又は音データに対して、上述した式1、式2、式3及び式4によって説明した演算を施し、その後、プロットした。図4では、2つのプロットのデータからの差又は差の大きさである。こうした差又は大きさを、2つの試験の音データ間の差の絶対値として、サンプル毎に任意選択で決定することができる。有意なサンプルのないおよそ平坦なラインを、導管に沿って閉塞のないことを表すものとみなすことができる。
【0070】
図5では、2つの別個の音測定試験からのデータがこの場合もまた共通軸にプロットされている。一方の場合、測定プロセスが施される導管は閉塞されておらず、他方の場合、測定プロセスの導管は閉塞されていた。各試験においてマイクロフォンからの音データに対し、上述した式1、式2、式3及び式4によって説明した演算を施し、その後プロットした。図6では、その後、サンプル単位に、2つのプロットのデータからの差又は差の大きさを決定し、プロットした。1つ又は複数のサンプルに幾分かの有意な差(たとえば、プロットに沿った或る点における閾値を超えた1つ又は複数の値)が存在する場合、それは、導管に沿って1つ又は複数の閉塞が存在することを表すことができる。こうした決定を、差データのサンプルをスキャンし評価することによって行うことができる。さらに、データのプロットに沿った特定の差の点の値の大きさは、閉塞の程度を表すことができる。またさらに、プロットに沿った点の位置を、ケプストラムデータが以下のように秒の関数であるならば、導管に沿った閉塞の位置として評価することができる。
音センサからの長さ=(T×C)/2
ここで、
は有意なサンプルの秒での時間位置であり、
Cは音の速度である。
この計算は、マイクロフォンから試験されている導管又は気管内チューブの人工呼吸器側端部までの距離を考慮するように調整することができることが理解されよう。
【0071】
こうした方法を行うように構成された装置では、装置により、既知の閉塞されていないチューブを用いて、それが患者に最初に使用される前か又は最初に使用されるときに装置に最初に接続されるときに、任意選択で事前測定プロセスを行うことができる。代替的に、こうしたプロセスからのデータを、標準的な機器構成及び動作設定に基づいて事前に格納することができる。そして、事前に格納されているデータを、装置のユーザが、新たな試験データと比較するために選択することができる。そして、装置による患者の治療中に、事前測定プロセスと共通の人工呼吸器動作設定で、後続する試験を行うとき、後続する試験データを以前のデータと比較するために使用して、閉塞を検出し関連する閉塞情報を生成することができる。
【0072】
図3〜図6に示すもののような単純なグラフを、本装置により、閉塞情報を示すように生成することができるが、いくつかの実施形態では、閉塞情報のより詳細な報告を、検出装置の表示デバイスに出力するか、又は他の装置(たとえばコンピュータ又は呼吸治療装置)に表示するために別の装置に電子的に転送することができる。たとえば、報告は、(1)気管内チューブに閉塞が存在するか否か、(2)気管内チューブのマイクロフォン、人工呼吸器側端部及び/又は患者側端部のいずれかからの距離を単位にして、閉塞がどこに位置するか、(3)閉塞によって閉鎖されているか又は依然として開放されたままである断面のパーセンテージ又は他の測定量等、閉塞の程度、を特定する情報を含むことができる。検出器は、さらに、実質的な閉塞が検出されたときに警告メッセージ及び/又は警報をトリガーすることができ、それにより、使用中の現気管内チューブの交換又は清掃の必要を推奨又は警告することができる。したがって、こうした装置のコントローラは、任意選択で、1つ又は複数の警告灯(たとえば、1つ又は複数の発光ダイオード)等の表示デバイスを有することができる。表示デバイスを、LCD等の表示画面として実施することも可能である。事前測定プロセスを開始するため、事前測定されたチューブデータを選択するため、閉塞測定プロセスを開始するため等、検出器の起動を、検出装置のコントローラ又はプロセッサを動作させる入力スイッチ等のユーザインターフェースと連動して実行することができる。
【0073】
本技術のいくつかの実施形態では、音センサを、呼吸治療装置導管(たとえば気管内チューブ又は人工呼吸器供給導管)と一体化するか、又は導管間の導管カプラの一部として実施することができる。たとえば、図7及び図8に示すように、マイクロフォンを実施することができる。図7は、導管又はカプラに組み込まれた音センサの断面図を示す。この例では、マイクロフォン772は、壁770内に形成されているマイクロフォンチャンバ774内に取り付けられている。チャンバは、導管の内部ガス流路からの音の取込みを容易にする。実施形態では、壁770は、導管又はカプラの流路内のガス流用のバリアとしての役割を果たすことができる。任意選択で、音伝導膜等のチャンババリアは、導管のガス流路と音センサとを分離することができる。こうしたバリアは、マイクロフォンを保護する役割を果たすことができる。図7にさらに示すように、壁はまた、マイクロフォンチャンバを周囲圧力と等しくすることができるように適合された通気孔778を有することも可能である。任意選択で、導管の流路は、図7に示す円錐形断面で示されているもの等、ベベル780面を有することができる。こうした面は、導波路として用いられる際に導管の音響特性を向上させることができる。
【0074】
図8、図9及び図10は、気管内チューブ用の上述したような導管カプラ800の例を示す。カプラ800は、気管内チューブ取付端部882及び人工呼吸器供給チューブ取付端部884を有している。この実施形態では、両端部は、人工呼吸器供給チューブ若しくは気管内チューブ、又はそれらチューブ用の適切なアダプタと接続するように寸法が決められている。たとえば、チューブを、カプラ及び/又はアダプタに締まり嵌めにより接続された状態で保持することができる。図7に関して上述したように、音センサ872を、任意選択で、カプラ内に組み込むか又は取り付けることができる。図9では、カプラ800は、任意選択で、アダプタ992を介して気管内チューブ990に接続されている。こうしたアダプタは、ガス及び音がカプラとチューブとの間で移動するのを可能にするガス流路を有している。図10では、カプラ800は、人工呼吸器供給チューブ1094に接続されている。
【0075】
図1の実施形態に関連して、閉塞検出装置102は、呼吸治療装置で使用されるが構造的に独立している検出器としての役割を果たすことができる。こうした実施形態では、試験に使用される流れ発生器の共通の動作設定を、臨床医が手動で設定することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、図11に示す実施形態のように、閉塞検出装置1102を、呼吸治療装置に組み込むか又はその構成要素とすることができる。こうしたデバイスでは、流れ発生器を介して圧力の送達又は患者の換気治療を制御するコントローラ1106は、チューブ閉塞検出コントローラとしての役割を果たすことも可能である。こうした実施形態では、音センサ1104を、気管内チューブ1108の閉塞の音響測定のために呼吸治療装置のコントローラ1106に直接結合することができる。こうしたデバイスは、ブロワ1110が発生する圧力を測定し、圧力の測定値を示す圧力信号p(t)を生成する圧力トランスデューサ等、圧力センサを有することができる。それはまた、任意選択で、流れセンサを有することも可能である。流れ信号f(t)及び圧力信号p(t)に基づき、プロセッサを有するコントローラ1106は、ブロワ制御信号を生成することができる。
【0076】
たとえば、コントローラは、所望の圧力設定値を生成し、設定値を圧力センサの測定状態と比較することにより、その設定値を満たすようにブロワをサーボ制御することができる。したがって、コントローラ404は、ブロワ102により患者インターフェースに送達される圧力に対して制御された変更を行うことができる。任意選択で、それは、ブロワを特定のRPM設定に制御するように速度センサを有することができる。これに関して、自動化された呼吸治療に加えて、本装置の閉塞測定プロセスを、上述したように音響測定中にブロワの特定の設定を直接制御するように自動化することができる。このように、それは、チューブ閉塞試験中に共通の動作設定を維持することができる。
【0077】
導管閉塞検出コントローラ1206用のアーキテクチャ例を、図12のブロック図に示す。図において、コントローラを、1つ又は複数のプログラム可能なプロセッサ1208によって実装することができる。本デバイスはまた、上述したようなユーザインターフェース又は表示デバイス等に対するデータ(たとえば、検出された導管閉塞情報等)を、モニタ、LCDパネル、タッチスクリーン等のディスプレイに出力するディスプレイインターフェース1210を有することができる。上述したように、かつデータを入力するか又は他の方法で本明細書に記載する方法を起動するか又は動作させるために、たとえば、キーボード、タッチパネル、制御ボタン、マウス等のためのユーザ制御/入力インターフェース1212も含めることができる。本デバイスはまた、プログラミング命令、設定データ、音データ、マイクロフォン音サンプル、音響測定データ、閉塞情報等のデータを送受信する、センサ又はバス等のデータインターフェース1214も有することができる。
【0078】
コントローラはまた、上述した方法の制御命令及びデータを含むメモリ/データ記憶コンポーネント1220を有している。たとえば、1222において、それらは、測定、フィルタリング、FFT、対数、位置決定、程度決定、差決定等、音信号処理及びチューブ閉塞情報検出用の格納されたプロセッサ制御命令を含むことができる。1224において、これらはまた、フィードバック処理及び測定プロセス設定調整等に基づく呼吸治療制御等、流れ発生器制御用の格納されたプロセッサ制御命令も含むことができる。最後に、それらはまた、1126において、音測定、検出された閉塞、位置データ、程度データ、閉塞されていないチューブに対する事前測定値、報告及びグラフ等、本方法のための格納されたデータを含むこともできる。
【0079】
いくつかの実施形態では、上述した方法を制御するためのプロセッサ制御命令及びデータを、汎用コンピュータが使用するためにソフトウェアとしてコンピュータ可読記録媒体に含めることができ、それにより、汎用コンピュータは、そのソフトウェアを汎用コンピュータにロードすると、本明細書で述べる方法の任意のものに従って専用コンピュータとしての役割を果たすことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、導管閉塞検出技術について説明したが、これらの実施形態は、本技術を単に例示するものであることが理解されるべきである。さらなる変更を本明細書の趣旨及び範囲内で考案することができる。
【0081】
たとえば、本技術により、組み込まれた閉塞測定及び報告デバイスを企図しているが、本デバイスの構成要素の方法を、システムの複数の構成要素にわたって共有することができる。たとえば、測定デバイスは、単に測定プロセスを行うことにより、導管の音響データを決定し、そのデータを別の処理システムに転送することができる。そして、第2の処理システムが、そのデータを解析し、上述したように閉塞情報を決定することができる。そして、第2の処理システムが、上述したメッセージのうちの1つ又は複数を、たとえば電子形式で測定装置又は他の表示装置に戻すように送信すること等によって、本明細書に記載するように閉塞を示すことにより、臨床医又は医師に警告することができる。
【0082】
同様に、本技術は、導管閉塞を検出するために単一のマイクロフォンのみからのデータを実施することができることを企図しているが、本技術のいくつかの実施形態では、追加のマイクロフォンを実施することができる。さらに、本技術は、音インパルスとしての役割を果たすシステムのノイズ又は音が、1つ又は複数の選択されたブロワ設定で動作している流れ発生器によって発生する音である実施形態を企図しているが、いくつかの実施形態では、導管内で音センサによって記録される音インパルスを生成するために、スピーカ又はホーンドライバを実施することができる。さらに、いくつかの実施形態を、既知の閉塞されていないチューブからのケプストラムデータを閉塞されたチューブのケプストラムデータと比較するように実施しているが、閉塞の程度が変化するチューブ間で追加の比較を行うことにより、閉塞の変化する性質を追跡しユーザに示すことができるようにすることも可能である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本技術を、閉鎖又は部分閉鎖(たとえば、閉塞性無呼吸に関連する狭窄)等、患者の呼吸器系の呼吸通路の閉塞の存在を検出するように実施することも可能である。たとえば、上述したようなケプストラム解析及びマイクロフォンからの距離の決定に基づき、ケプストラム差データにおける有意な値の検出が、任意の呼吸治療導管、気管内チューブ又はマスクの長さを超えた閉塞又は部分閉塞を示すことができる。こうした場合、データを、患者の呼吸通路の閉塞を示すものとみなすことができる。こうした実施形態では、音が呼吸装置の導管又はマスクの端部を超えたところから反射するのに十分なデータを収集するように、或る期間の音データを記録することができる。上述したケプストラム解析及び差計算を行うことにより、デバイスは、患者の閉塞を(治療導管閉塞に加えて又はその代りとして)示すことができる。装置導管の既知の端部を超える距離に関連する、ケプストラム差データにおける1つ又は複数の有意な値に基づき、閉塞の程度(たとえば増大又は低減)、閉塞の存在若しくは不在、及び/又は閉塞の位置を、呼吸治療導管の閉塞に関して上述したものと同様に、検出装置によって表示するか又はそうでない場合出力することができる。こうしたデバイスでは、呼吸装置及び患者呼吸器系が閉塞されていないか又はそうでない場合それほど閉塞されていないことが既知となると、システムに対してケプストラムデータを決定するように事前測定プロセスを実施することができ、それにより、試験データの後の解析を比較することによって閉塞の変化(たとえば増大又は低減)を示すことができる。
【0084】
患者の呼吸器系の音響反射データのこうした解析は、概して、閉塞又は部分閉塞の存在又は不在の検出に加えて、患者の呼吸器系の状態を検出する試験としての役割を果たすことができる。たとえば、音響反射データを解析することにより、肺の状態を検出しかつ/又は肺の状態の変化を監視することができる。たとえば、装置を、数日間にわたり(たとえば1日に1回)肺からの音響反射を測定し、その後、各々からのデータを比較して変化を検出するように構成することができる。変化は、呼吸状態における改善又は悪化を示すことができる。さらに、それを、いくつかの呼吸関連状態に関連する、実験的に収集され格納された反射データを表すテンプレートと比較することもできる。
【0085】
特に重要な反射データが患者の呼吸器系におけるものであるいくつかの実施形態では、患者インタフェース(たとえばチューブ又はマスク)の音響応答を、マスク又は導管から反射がもたらされる可能性を低減するように行うことができる。このように、反射データは、より容易に患者の呼吸状態に帰される可能性がある。
【0086】
さらなる実施形態では、反射データを解析して、肺インピーダンス、鼻腔計測法、加湿器が必要か否か、浮腫を介する心不全、及び患者の気道抵抗における他の上昇等、肺又は患者の特徴を検出することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、周波数領域を処理することにより、特定の状態又はシステム付属品を検出する際に重要なデータを隔離し又は強調することができる。たとえば、プロセスは、特定の周波数に関するフィルタリング(たとえば、ローパス、ハイパス、バンドパス等)を含むことができる。これに関して、対象の検出に特に関連しない周波数を排除するためにスペクトル成分をフィルタリング除去する等、或る特定のスペクトル成分を含めるか又は排除することが有用な場合がある。たとえば、鼾(いびき)のような音又は漏音に関連する周波数をフィルタリング除去することにより、マスク検出又は他の患者状態検出に役立つことができる。これに関して、マスク形状に関する情報を、通常、より高い周波数信号成分に含めることができ、一方で、漏れ及び鼾に関する情報、及び場合によっては肺パラメータを、信号のより低い周波数成分により容易に見ることができる。さらなる例として、プロセスは、サンプルレート及び記録長等の音サンプリングパラメータを、対象の特定の検出の応用に適するように調整することができる。たとえば、患者の鼾状態(通常、比較的低い周波数からなる)に関する情報を検出するために、より長い期間の間に音データの記録又は取込みを実施することが有利である場合があり、同時に、サンプリングレートを低下させることができる。こうした場合、流れ発生器のモータ又はインペラに関連する特定の周波数をさらにフィルタリング除去することが有用であり得る。
【0088】
B.付属品検出
上述したように、患者に呼吸可能なガスを送達する装置は、通常、流れ発生器、空気送達導管及び患者インターフェースを有している。所与の流れ発生器で、種々の異なる形態の患者インターフェース、たとえば鼻枕(nasal pillow)、鼻マスク、鼻及び口用マスク、フルフェースマスクを用いることができる。さらに、種々の形態の空気送達導管を用いることができる。患者インターフェースに提供される治療の制御を改善するために、マスク内の圧力及び通気孔の流れ等、治療パラメータを測定し推定することが有利であり得る。治療圧力の推定を用いるシステムでは、厳密に臨床医がいずれのマスクを使用しているかを知ることで、治療の質を向上させることができる。たとえば、既知の流れ発生器は、患者が、使用されている周辺構成要素のタイプを、たとえばブランド、送達方法等により選択することができるようにする、メニューシステムを有している。構成要素が臨床医によって選択されると、流れ発生器は、選択された構成要素と最もよく協調する流れ発生器の適切な動作パラメータを選択することができる。
【0089】
本技術は、特定の構成要素を識別又は特定するために音響検出に基づき、流れ発生器と周辺構成要素との協調を容易にするように、既知の装置に対する改善を提供することができる。
【0090】
本技術の第1の実施形態は、患者インターフェースデバイスを識別する、デバイス、システム、識別子及び/又は方法を含む。患者インターフェースデバイスは、持続的気道陽圧システム(「CPAP」)又は同様のシステム等の呼吸治療装置で使用されるマスク及び管とすることができる。この実施形態は、こうした装置又はCPAPデバイスに接続された管の長さと共に、管に接続されたマスクのモデルを検出し識別することができる。本技術はまた、患者が識別時にマスク部分を装着しているか否かに関らず、マスク及び管を識別することもできる。
【0091】
本技術は、マイクロフォン又は他の同様のセンサにより、流れ発生器(本明細書では「FG」と呼ぶ)の近くで、近接して又はその流れ発生器で検知される音響信号の解析を実施することができる。しかしながら、マイクロフォンの代りに圧力センサ又は流れセンサを用いることも可能である。
【0092】
この技術は、限定されないがモータ又はブロワのノイズを含む、他のシステムノイズ及び応答から音響マスク反射の応答を分離するのを可能にする、提案される解析方法を含む。これにより、種々のマスクの音響反射間の相違(通常、マスクの形状、構造及び材料により決まる)を識別するのを可能にすることができ、ユーザ又は患者の介入なしに種々のマスクの識別を可能にすることができる。
【0093】
マスクを検出し識別する方法例は、測定された音響反射応答を、既知のマスクに対する以前に測定された反射応答の事前定義された又は所定のデータベースと比較するというものであり得る。任意選択で、適切な類似性を決定するために何らかの基準が設定される。一実施形態例では、比較を、ケプストラム解析から決定されたケフレンシデータによって表されるもの等、測定された反射応答と格納された反射応答との相互相関における単一の最大データピークに基づいて完了することができる。しかしながら、これを、いくつかのデータピークにわたり又は交互に比較することによって改善してもよく、その場合、比較は波の特徴の抽出された一意のセットにおいて完了する。
【0094】
代替的に、同じ測定システム又は方法を用いて、FGから受け取られている音とマスクからのその反射との間の遅延を見つけることにより、チューブ又は導管の長さを決定することもできる。すなわち、遅延はチューブの長さに比例する可能性がある。さらに、管の直径の変化は、出力された波形の振幅を増大させるか又は低減させる可能性があり、したがって、検出可能かつ識別可能でもあり得る。こうした評価を、現反射データを以前の反射データと比較することによって行うことができる。直径の変化を、波形(すなわち反射データ)からの振幅の変化の比例とみなすことができる。
【0095】
図13は、本技術のさらなる実施形態の例の概略図を示す。FGの送達管に、空気路における音圧を記録する小型のマイクロフォンを取り付けることができる。マイクロフォンを、ノイズ又は音をより受け取るように空気路に直接露出させてもよく、又は可撓性の膜材料の薄層の後方に封入することもできる。この膜は、マイクロフォンを熱及び/又は湿気から保護するように機能することができる。
【0096】
この実施形態例では、図13に示すように、チューブ又は管13−1は、FG13−4によって生成される音に対する導波路として有効に作用する。この実施形態では、音は、FG13−4から放出され、第1の信号を形成する。音信号すなわち第1の信号は、管13−1内の空気路を下って又はそれに沿ってマスク13−2まで移動し、ガス又は空気路(管及び/又はマスクを含む可能性がある)における特徴により管13−1に沿って反射され、反射された第2の信号と呼ばれる。チューブ応答の重要な特徴は、音がシステムの一端から反対側の端部まで移動するために必要な時間である。この遅延は、チューブ13−1の一端に配置されたマイクロフォン13−5が、FG13−4から来る第1の信号を受信し、そのしばらくの後に、チューブ13−1によってフィルタリングされ(反射された第2の信号)、マスク13−2(マスクが患者に取り付けられている場合は、人間の呼吸器系のような、取り付けられている他の任意のシステムである可能性もある)によって反射されかつフィルタリングされた同じ信号を受信することを意味することができる。これは、チューブ13−1の端部からの反射に関連するIRFの部分が遅延後に現れることを意味することができる。遅延は、音が音源からチューブの端部まで移動し、反射され、再び戻るのにかかる時間に等しい可能性がある。
【0097】
システムIRFの別の特徴は、システムに損失が発生しやすいため、チューブが十分に長ければ、FGにおける応答に関連するIRFの部分がマスクの反射応答が開始するときまでわずかな量に減衰する、ということである。これが当てはまる場合、マスク応答を、システムIRFにおいてFG応答から完全に分離することができる。一例として、図14は、1つのこうしたシステムIRFの音測定値を示す。当然ながら、実際には、不完全なインパルスを用いてシステムが励起されるが、それでもなお、マスク反射はFG応答から十分に分離されて現れることを示す。
【0098】
概して、IRFにおいてマスク反射が現れる時刻は、2L/cに、音源とマイクロフォンとの間の任意のさらなる遅延を足したものであるはずである(ここで、「L」はチューブの長さであり、「c」はチューブにおける音の速度である)。実施の目的で、概して、追加の遅延を無視することができ、時刻ゼロを、マイクロフォンが最初にインパルスに応答するときに近似することができる。これにより、概して、マスク反射が、2L/cによって特定される時刻に発生することが可能となり得る。したがって、マスク反射の時刻に関連するデータを、このデータを既知のマスク応答データと比較することにより、いずれのマスクが流れ発生器に接続されているかの識別において評価することができる。
【0099】
図14に示すIRFの例は、流れ発生器のモータ/ブロワを含むノイズであり得るインパルスによって励起されるシステム例を示した。代替的に、それは、スピーカからの持続時間の短い音インパルスとすることもできる。この実施形態の方法では、装置は、反射されたノイズ又は音信号(たとえば、マスク又は導管から反射されたノイズ)を、他のシステムアーチファクト(限定されないがFGからの反射を含む)から分離し、それを、測定された音信号の解析により(たとえば、上述した式1、式2、式3及び式4に関連するケプストラム解析からの音信号又はケフレンシデータのいずれかのデータの位置及び振幅の検査により)実施することができる。
【0100】
しかしながら、発生するノイズは、一過性であるか、又は定常ランダムである可能性がある。後者の場合、反射応答をシステムアーチファクトから識別することがより困難となる可能性がある。しかしながら、本技術は依然として、インパルスのタイプにも関らずIRFを解決する役割を果たすことができる。
【0101】
したがって、いくつかの実施形態では、発生するノイズ又はノイズ源を、上述したように不鮮明な周期定常性ノイズを生成するように、一定の速度で動作している流れ発生器FGによって生成することができる。したがって、ケプストラム解析方法を、この畳み込み混合からマスク反射を分離するように実施することができる。しかしながら、付属品識別システムは、ノイズ及び応答を分離することなくマスク(及び/又は管)を決定し識別することができる可能性がある。
【0102】
図15は、3つの異なるマスクで使用された、図13のシステム等、流れ発生器FGシステムの測定値からのさまざまなケプストラム例を示す。この例におけるそれぞれのマスク各々を、流れ発生器の2つの異なる動作速度、すなわち10krpm及び15krpmで試験した。例ではこれらの速度を用いたが、特に、発生するノイズ及び反射がマイクロフォンによって検出可能である場合、本方法を他の速度を用いて実施することもできる。
【0103】
図において、マスク反射は、12ミリ秒(12ms)の辺りで開始して、すべての場合において明確に見ることができる。この時間位置は、本システム例において、2メートルチューブが使用され、音の速度が343m/sであるため、予測される場所である。図15において、グラフは、上から下へ以下の順序で識別可能なマスクからの結果を示す。
・10krpmで流れ発生器FGを用いるUltra Mirage(商標)(図18に示す)
・15krpmで流れ発生器FGを用いるUltra Mirage(商標)
・10krpmで流れ発生器FGを用いるMirage Quattro(商標)(図17に示す)
・15krpmで流れ発生器FGを用いるMirage Quattro(商標)
・10krpmで流れ発生器FGを用いるSwift II(商標)(図16に示す)
・15krpmで流れ発生器FGを用いるSwift II(商標)。
【0104】
管全長を延長することにより、マスクからの反射を受け取る遅延の相当の増大も達成することができる。図15と比較した場合の遅延の増大は、管長の近似値をもたらす上述した計算に従う。
【0105】
本技術の実施形態では、その後、図15のグラフの中心に示すもの等のマスク及び/又はチューブの反射に関連するデータを、メモリ又はマスク反射データベースに含まれるもの等の以前に識別されたマスク(及び/又はチューブ)の反射からの同様のデータと比較することができる。
【0106】
たとえば、試験されたマスクの「音響シグネチャ」を、ノイズを含む測定値から分離し、識別し、フィルタリングすることができる。この音響反射データを、装置のデータテンプレートとして格納されている既知のマスクからの以前の又は所定の音響反射データのものと比較することができる。これを行う1つの方法は、現測定値と、すべての既知のマスク又はデータテンプレートに対する以前に取得された測定値との相互相関を計算するというものである。最高ピークを有する相互相関が正しいマスクに対応し、かつ時間軸のピークの場所がチューブの長さに比例する可能性が高い。
【0107】
しかしながら、相関の点がより多いことによっても、本実施形態の検出ステップ及び識別ステップの精度が上昇する可能性がある。したがって、さらなるデータ点を利用することができる。任意選択で、試験データ及び既知のデータセットを用いる最小二乗アルゴリズムを、マスク/患者インターフェース決定において実施することができる。またさらに、いくつかの実施形態では、さらなる特徴抽出及び認識技法を利用することができ、それは、人工知能法に基づくことができる。
【0108】
以前の実施形態のように、説明した方法又は信号処理を、上述したようにファームウェア、ハードウェア及び/又はソフトウェア等を用いて、コントローラ又はプロセッサによって実施することができる。こうしたコントローラは、患者インターフェース(この1つの実施形態では、マスク、管又はそれらの組合せである)を検出しかつ/又は識別することができる。そして、患者インターフェースの存在又は識別に関連するこの識別情報又はデータを、コントローラにより、さらなるコントローラ、プロセッサ、システム又はコンピュータに中継するか、又は使用することができる。そして、情報を、呼吸治療装置による治療の提供時に流れ発生器を制御するように治療又は他の設定を調整する際に利用することができる。
【0109】
たとえば上述した技術を、CPAP装置等の呼吸治療装置のコントローラの一部として実施することができる。こうした実施態様は、CPAP装置のユーザ又は臨床医が、特定の患者インターフェース又はマスクで使用するように装置の設定を手動で入力するか又は調整する必要を軽減するのに役立つことができる。したがって、本技術のいくつかの実施形態により、こうしたシステムが、自動的に識別された患者インターフェース又はマスクの構造に従って設定が調整されて、装置を自動的に設定することができるため、CPAP装置にユーザ入力又はセットアップが必要とされることなく、ユーザがマスクを変更することをさらに可能とすることができる。
【0110】
さらに、いくつかの実施形態では、特定の患者インターフェースの識別又は存在に関連する情報を、インターネット又は何らかの電子手段を介して製造業者、医者又は臨床医に選択的に送出し又は送信することができ、それにより、その情報を用いて、ユーザ又は患者が患者インターフェースのトラブルに対応するのを支援することができる。たとえば、こうしたデータを、Bluetooth(商標)及び/又はWi−fi(商標)等の無線インターフェースシステムによって送信することができる。
【0111】
代替的に、本技術のいくつかの実施形態では、コントローラを利用して、たとえば試験反射データ又はケプストラムデータを、患者使用中に取得される既知の反射データ又はケプストラムと比較することにより、音響反射の性質に基づいて、患者が現在患者インターフェースを装着しているか否かを検出することができる。同様に、本技術を、患者インターフェースに、システムにおける漏れ及び/又は欠陥(kink)を含む技術的問題があるか否かを決定するように実施することができる。これは、現試験反射データ又はケプストラムデータを、患者インターフェースが適切な正常運転状態にあり適切に患者に装着されている(たとえば漏れなしである)間に取得された既知の反射データ又はケプストラムデータと比較することにより、検出することもできる。
【0112】
いくつかの実施形態では、反射試験/測定中に、上述した速度からより高い速度を実施することができる。たとえば、管又は導管によっては、ノイズを低減することができる特性を有する材料を使用する。こうしたシステムでは、システムの音響損失が実際には変動する可能性がある。測定信号によって検出されるように損失が増大する場合(たとえば振幅低減)、音損失の影響に打ち勝つように、音源又はノイズ源のデシベルを増大させることができる。これを、試験測定中に流れ発生器の速度を上昇させることによって達成することができる。さらに、マスク又は管の空気路に含まれる他の要素は、音響損失を増大させる可能性がある。これらの要素には、加湿器、ノイズバッフル及び弁が含まれ得る。この場合もまた、これらの構成要素に起因する可能性がある損失を、ノイズ源レベル又は振幅を増大させることによって克服することもできる。通常、音源又は流れ発生器からの適切なノイズ又は音のレベルは、約20dBa以上である可能性がある。
【0113】
上述したように、いくつかの実施形態は、スピーカ等の音源を利用して、音パルス又は白色ノイズを発生することができる。これは、特に、それほどのノイズを発生しない非常に静かな流れ発生器を有する呼吸治療装置の場合に有用であり得る。たとえば、概して6000rpm未満の速度でResmed(商標)流れ発生器を用いる場合、流れ発生器は非常に静かである。この条件下で、音響又はノイズエミッタとして流れ発生器のノイズを用いてインパルスを生成することは、不十分である可能性がある。これを、空気導管のいずれかに追加のノイズエミッタデバイスを含めることによって克服することができる。これを、患者インターフェースが最初に流れ発生器に取り付けられるとき等、測定の期間中に作動させることができる。音エミッタはスピーカとすることができるが、他のエミッタを利用することもできる。たとえば、選択的に作動させかつ停止させる(たとえば、流れ発生器又は導管の流路に機械的に付与しかつそこから取り除く)ことができるリード等、流れ発生器からの空気の流れに応じて振動する、単純な機械的エミッタを実施することもできる。そして、これは、音インパルスを選択的に生成するのに役立つことができる。代替的に、呼吸治療装置の作動弁が、音源としての役割を果たすこともできる。
【0114】
いくつかの実施形態では、マスクを、一意の音響音応答特性を有するように設計することができる。たとえば、マスク又は管内に、各患者インターフェースの音響反射シグネチャのより容易な区別を可能にするように、一意の音波共振器を設計することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ケプストラム解析を用いるのではなく、自己相関(すなわち、パワースペクトルの逆フーリエ変換)を実施することができる。
【0116】
本技術のさらなる実施形態では、音響反射を解析して、タイプ又はモデルの識別に加えて患者インターフェースの特定の特性を識別することができる。たとえば、システム応答データを利用して、患者のマスク及び導管の特性を識別することができる。特性には、直径、構成材料、空気腔の容積、マスク及び/又は管の全体構造等が含まれ得る。
【0117】
さらに、本明細書においてより詳細に説明するように、いくつかの実施形態はまた、患者インターフェースに接続されている患者自身の呼吸器系から戻る反射又はエコーを検出し測定することもできる。たとえば、具現化されたシステム、方法及びデバイスは、患者の呼吸器系の状態及び調整、又はさらには認証の目的でその同一性を検出し識別することができる。たとえば、本装置を、任意の所与の1つ又は複数の位置で患者の気道の直径を検出するように実施することができる。上述したように同じか又は同様の技法を用いて、気道の閉鎖又は患者の気道における抵抗の上昇を検出することができる。さらに、実施形態は、CPAP治療中に患者の口が空いているか否かを検出することを可能することもできる。検出された問題又は課題に応じて、治療をそれに従って調整することができる。こうしたシステムはまた、流れ発生器FGと患者の呼吸器系との間の(及びそれらの間に位置する患者インターフェースを含む)空気路における特性(たとえば漏れ又は閉塞)を識別することも可能である。さらに、本技術で用いるためにマスク及びチューブについて説明したが、いくつかの実施形態を、鼻カニューレで実施することも可能である。鼻カニューレは、空気路に対する妨害が最小限である可能性があり、患者の呼吸器系に関するより明白な音響反射データを提供することができる。
【0118】
たとえば、呼吸治療装置の導管における1つ若しくは複数の漏れ(たとえば切断)、又はさらには口漏れ等、マスクを越えた1つ若しくは複数の漏れを、音響反射データ又はケプストラムデータから検出することができる。たとえば、本明細書においてより詳細に説明するように、音導管に沿ったノイズ反射の場所に関する情報を提供するように、ケプストラムデータを理解することができるため、本技術により、装置は、漏れが発生したか否かに加えて、漏れの場所を識別することが可能である。たとえば、漏れを、漏れを表す既知の格納されたケプストラムデータを現試験ケプストラムデータと比較する等、ケプストラムデータの検査によって特定し、かつ/又は定量化することができる。ケプストラムデータから漏れが特定されると、場所(たとえば、ケプストラムデータにおける漏れ関連データのタイミングに基づく)を検出することができ、デバイスにより適切な応答を行うことができる。たとえば、検出された口・マスク接触漏れ(口漏れ)は、流れ発生器の近くの導管又はチューブで検出される漏れとは異なる自動化装置応答を有する可能性がある。本装置は、前者に対する流れを単に増大させる一方で、後者に対する可聴警告を発することができる。
【0119】
こうした検出器は、高インピーダンスの管に対して特に適している可能性がある。たとえば、4mmの気管内人工呼吸器管では、チューブを通過する空気により、大きな量のインピーダンスが発生する。このインピーダンスは、圧力センサ又は流れセンサを用いる従来の漏れ又は偶発的切断検出方法では、漏れを特定するのが困難であることを意味する。したがって、本技術は、低インピーダンス及び高インピーダンスの管における漏れ又は切断を検出することができる。したがって、こうした漏れ検出はまた、CPAPデバイスのような加圧治療をもたらさない大流量の呼吸治療デバイスでの実施にも適している可能性がある。こうした大流量デバイスは、通常、鼻の内壁に対して封止しない鼻カニューレを利用する。これら大流量システムは、通常、高インピーダンスの導管を含む。
【0120】
C.患者/ユーザ検出
特定のデバイスの特定のユーザの認証又は確認に利益がある場合がある。たとえば、特定のユーザへの医療デバイスの限られた使用は、安全性の理由で重要な場合がある。人工呼吸器又は持続的気道陽圧デバイス等の呼吸治療デバイスを考慮する。
【0121】
こうしたデバイスを用いる患者は、圧力送達関連設定等、治療に対して特定の設定を必要とする場合がある。これらの設定を、医師が指示する場合がある。さらには、これらの設定を、患者の治療の期間にわたりデバイスによって自動的に決定するか又は精緻化する場合もある。こうした設定は、特定の患者にのみ適しており、他の患者には適していない可能性がある。こうしたデバイスを、意図されていないユーザによる使用を妨げるように、特定のユーザ又は患者がそれを使用しているときか又は使用していないときを検出することができるように構成することが適切であり得る。
【0122】
使用が特定の人に対するものであることを確認するか、又は他の人による使用を妨げるように、デバイスのユーザを認証する改善された技法及びデバイスが望ましい場合がある。
【0123】
したがって、本技術では、自動化デバイスは、生体音響ユーザ認証の方法を提供する。いくつかの実施形態では、音センサは、デバイスのユーザの解剖学的腔に向けられた音導管内で音発生器の音の測定量を決定する。音の測定量を、プロセッサにより、音の測定量からのケプストラムの計算により解析することができる。そして、プロセッサは、解析に基づき、ユーザが事前に認可されたユーザであることを決定することができる。いくつかの実施形態例では、本技術を、特定のユーザによる使用の可能性があることを確認するように、呼吸治療装置の動作に対する安全機能として実施することができる。
【0124】
したがって、本技術のいくつかの実施形態は、ユーザ認証又はユーザ検出の方法及びデバイスを含むことができる。図19に示すような通常の実施形態では、ユーザ検出器装置19−102は、マイクロフォン等の音センサ19−104及び音認証コントローラ19−106を含む。音導管19−108を、音発生器19−110と連動して、検出器装置が結合されるデバイスのユーザに対してノイズ又は音を向けるように構成することができる。たとえば、音導管19−108は、検出器が呼吸治療装置に結合される場合、気管内チューブ、CPAPマスク、カニューレ等であり得る。本質的に、導管19−108は、音波又はノイズ波(図19においてA1として示す波)をユーザの解剖学的腔ACに向けるのに役立つ。通常の実施形態では、音センサ19−104は、認証コントローラ19−106によって解析されるように導管19−108内を移動する音を測定する。音は、音源が発生した音であり得る。たとえば、音は、呼吸治療装置の場合はサーボ制御ブロワ等の流れ発生器の動作によって生成される振動又はノイズである可能性がある。たとえば、流れ発生器はまた、導管19−108を介してユーザの呼吸器系に呼吸可能なガスの流れを供給することもできる。そして、測定された音は、装置のユーザの1つ又は複数の解剖学的腔から反射される音波を含むことができる。
【0125】
音センサ19−104からのこうした音信号を、認証コントローラ19−106に送信することができる。センサからの供給信号がデジタル形式でなく、コントローラがデジタルコントローラである場合、任意選択のアナログ/デジタル(A/D)変換器/サンプラ(別個には示さず)を利用することができる。センサからの信号に基づいて、コントローラは音信号を評価して、以前に決定された認証データと比較するために認証データを決定する。
【0126】
いくつかの実施形態では、認証コントローラ19−106は、本明細書においてより詳細に説明するアルゴリズム等の特定の検出方法を実施するように構成されたプロセッサを含むことができる。したがって、コントローラは、集積チップ、メモリ及び/又は他の制御命令、データ又は情報記憶媒体を含むことができる。たとえば、こうした検出方法を包含するプログラムされた命令を、デバイスのメモリの集積チップにコード化することができる。同時に又は代替的に、こうした命令を、適切なデータ記憶媒体を用いてソフトウェア又はファームウェアとしてロードすることもできる。こうしたコントローラ又はプロセッサにより、デバイスを、音センサからの音データを決定し解析するように使用することができる。したがって、プロセッサは、本明細書においてより詳細に説明する実施形態に記載したように認証又はユーザ検出に対する評価を制御することができる。
【0127】
ユーザ検出器装置19−102のコントローラ19−106のこうした方法又はアルゴリズムの一例を、図20のフローチャートに示す。20−220において、音センサは、デバイスのユーザの解剖学的腔に向けられた音導管内の音発生器の音を測定する。20−222において、音センサからの音の測定量を、コントローラ又はそのプロセッサが、音の測定量からのケプストラムの計算により解析する。20−224において、コントローラ又はプロセッサは、解析に基づいて、ユーザが事前に認可されたユーザであることを決定する。こうした場合、その後、デバイスは、該デバイスの1つ又はいくつかの動作を可能にすることができる。ユーザが事前に認可されていないことが決定されると、認証コントローラは、デバイスのいくつかの動作又はすべての動作を防止することができる。任意選択で、認証コントローラ19−106からデバイスの別のコントローラに使用可能信号又は使用不能信号(複数可)を送信することによって、動作を許可又は防止することができる。
【0128】
本技術のこうした実施形態では、システムの音響的性質と、識別の目的でユーザの解剖学的腔に関連する音響情報を隔離する要求とに関連して、多数の設計考慮事項があり得る。ユーザの解剖学的腔に音を向けるために用いられる構成要素は、種々の音響特性をもたらすことができる多くの種々の構造を有することができる。導管構成要素の一例は、長さ「L」に沿っておよそ一定の断面を有するチューブとすることができ、導管のユーザ側端部(図19において「UE」として示す)にユーザの解剖学的腔があり、音発生器側端部(図19において「GE」として示す)に音発生器(他のあり得る構成要素を含む)がある。導管の音響特性は、その長さに沿って広範囲の周波数にわたり導波路として作用する、というものであり得る。
【0129】
したがって、本装置のいくつかの実施形態では、解剖学的腔の音響特性によりユーザを検出することは、音発生器動作中における、ユーザが装着している間にセットアップ手続き中に測定されたデータと、ユーザがデバイスのいくつかの動作を開始するか又は続けようと試みる前に測定された試験データとを比較することによる、導管内の音響反射に基づくことができる。
【0130】
音発生器によって音センサへの音源として生成される、こうしたシステムにおける音又はノイズのインパルス応答関数(「IRF])は、選択された時刻ゼロにおけるデルタ関数と、2L/cを上回る時刻における、解剖学的腔からの反射とを含むことができる。ここで、音の速度が「c」で示され、導管の長さが「L」である。こうした反射のデータを、後に解析するためにセットアッププロセス中に記録し格納することができる。その後、ユーザがデバイスを使用したい場合、システムの別のIRFが、2L/cを上回る時刻に、元のセットアップデータと比較するために、解剖学的腔から新たな反射を記録することができる。反射における有意な変化が、異なるユーザを示すことができ、一方で、反射データの実質的でない差又は識別情報が、セットアッププロセスからの同じユーザを示すことができる。
【0131】
上述したように、導管からの反射におけるこうした変化又は類似性を監視する1つのあり得る方法は、音センサからの信号のケプストラムの計算に基づくことができる。
【0132】
事前に認可されたユーザの導管及び解剖学的腔からのケプストラムデータを、後続するユーザの導管及び解剖学的腔からのケプストラムデータを比較することにより、それらの差等の比較を、ユーザを識別する際に考慮することができる。たとえば、両試験において共通のノイズ源が用いられる場合、両試験のケプストラムデータの間の比較又は差を、現ユーザがセットアッププロセスのユーザと同じでないか、又は現ユーザがセットアッププロセスのユーザと同じであるという指示とみなすことができる。
【0133】
本明細書において、(マイクロフォン応答への音源としての音発生器からの)IRFのいくつかの要素について説明する。導管が、音発生器によって生成される音に対する導波路として作用する場合、音は、放出されて第1の信号(図19において「A1」として示す)を形成する。音の信号すなわち第1の信号は、著しい長さを有しているか又は有していない可能性のある導管を下って又はそれに沿って、解剖学的腔まで移動し、導管に沿って反射される。反射された信号を第2の信号(図19において「A2」として示す)とみなすことができる。上述したように、導管応答例の特徴は、音がシステムの一端から反対側の端部まで移動するのに必要な時間である。この遅延は、導管の一端に配置された音センサが、音発生器から来る第1の信号を受信し、そのしばらくの後に、導管(及び人間の呼吸器系のように、取り付けられている他の任意のシステム)によってフィルタリングされた同じ音を、反射された第2の信号A2として受信することを意味することができる。これは、解剖学的腔からの反射に関連するIRFの部分が遅延の後に現れることを意味することができる。遅延を、音が音源から解剖学的腔まで移動し、反射され、再び戻るのにかかる時間におよそ等しいものとみなすことができる。
【0134】
システムに損失が発生しやすい場合、導管の長さを考慮すると、音発生器における応答に関連するIRFの部分は、反射応答が開始するときまでにわずかな量まで減衰する。これが発生すると、解剖学的腔による応答を、システムIRFにおいて音発生器応答から完全に分離することができる。
【0135】
音源がノイズ発生器である場合、畳み込み混合から解剖学的腔反射を分離する方法及びシステムは、以前の実施形態で説明したようなものとすることができる。
【0136】
したがって、いくつかの実施形態では、音発生器の連続音を、連続音の間の任意の時点を音インパルスであると考慮することにより、システムに対する音インパルスとみなすことができる。こうした場合、音発生器は、相対的な音の増大の前後に、無音又は音の低減した期間を生成して実際の瞬間的な音インパルスを生成する必要がない。しかしながら、いくつかの実施形態では、こうした瞬間的な音インパルスを、音発生器又は音源に対する音制御信号の変調により生成することができる。たとえば、音源としての役割を果たす流れ発生器の場合、ノイズを発生するために一定のモータ速度を実施することができる。代替的に、低速又は速度なしに続き、瞬間的な高速、次いで低速又は速度なしに戻るように設定することにより、変調を実施することもできる。チャープ又は他の音響音を実施するスピーカ等、瞬間的な音インパルスを実施する他の方法を実施することもできる。
【0137】
図21〜図24は、上述したケプストラム方法に基づいて解剖学的腔に関連する音の反射によりユーザを検出する、マイクロフォンからの音データの解析を示す仮想データグラフを示す。図21では、2つの別個の音測定試験(たとえばセットアッププロセス及び後続するユーザ認証プロセス)からのデータが共通軸にプロットされている。音が導管を通り抜けてユーザ側端部を越え、解剖学的腔から反射し、マイクロフォンに戻ることができるために十分な期間が経過するまで、マイクロフォン信号のサンプルを、選択されたか又は制御された時刻ゼロから収集又は記録することができるように、音を測定することができる。図21に示す両方の場合において、測定プロセスが施された解剖学的腔が、同じユーザのものであることが確認された。各試験においてマイクロフォンからの測定サンプル又は音データに対し、上述した式1、式2、式3及び式4によって説明した演算が施される。このプロセスの結果をグラフに示す。
【0138】
図22には、図21の2つのプロットのデータからの差又は差の大きさを示す。こうした差又は大きさを、任意選択で、2つの試験の音データ間の差の絶対値として、サンプル毎に決定することができる。有意なサンプルがないおよそ平坦なラインを、デバイスが、セットアッププロセスにおいて試験され該デバイスと関連付けられたユーザ(又はユーザの解剖学的腔)を適切に検出したことを表すものとみなすことができる。プロセス例では、差データのサンプルを、それらの有意性を評価するために閾値によって判定することができる。
【0139】
図23では、2つの別個の音測定試験からの仮想データが、この場合もまた共通軸にプロットされている。一方の場合では、測定プロセスが施された導管は、第1のユーザ(USER 1)の解剖学的腔に結合され、他方の場合では、測定プロセスの導管は、第2の異なるユーザ(USER 2)の解剖学的腔に結合された。各試験においてマイクロフォンからの音データに対し、上述した式1、式2、式3及び式4によって説明した演算を施し、その後プロットした。図24において、その後、2つのプロットのデータからの差又は差の大きさを、サンプル毎に決定してプロットすることができる。1つ又は複数のサンプルにおいて何らかの有意な差異(たとえば、プロットに沿った点において閾値を超える1つ又は複数の値)が存在する場合、それは、認可されていないユーザか又はセットアッププロセスの測定に加わらなかったユーザを表すことができる。こうした決定を、差異データのサンプルをスキャンし評価することによって行うことができる。任意選択で、解剖学的腔の音響反射に特に関連する導管の端部を越える情報を含むデータサンプルは、解析の対象であり得る。こうしたサンプル又はデータを、図24において参照符号ACDで示す。これに関して、導管の所与の長さを考慮すると、以下のように、ケプストラムデータが秒の関数であると仮定した場合、導管の端部を越えるプロットのデータを評価することができる。
【0140】
>=(2×L)/C
ここで、
は秒でのサンプルの時間位置であり、
Lは導管の既知の長さであり、
Cは音の速度である。
【0141】
この計算は、マイクロフォンから導管の音発生器側端部までの距離を考慮するように調整することができることが理解されよう。
【0142】
認証試験プロセスで決定されたケプストラムデータと、セットアッププロセス中に以前に決定されたケプストラムデータとの比較に基づき、検査されたケプストラムデータが十分に類似しているか又は十分には類似していないことを確認すると、デバイスを、動作を制限するか又は可能にするように制御することができる。たとえば、ケプストラム解析に基づき、ケプストラム差データにおける1つ又は複数の有意な値の検出を、異なる解剖学的腔又は異なるユーザを示すものとみなすことができる。こうした場合、認証コントローラを、認証結果の所望の結果に応じて、ユーザ検出器装置19−102を含むデバイスの1つ又は複数の動作を使用不能(又は使用可能)にするように実施することができる。
【0143】
この技術を、保護された装置の一人の人を一意に認証する方法として実施することができるが、こうした特定のユーザの一意の認証は厳密に必要でなくてもよいことが理解される。したがって、実施された認証システムが、何人かの又は大部分の他のあり得るユーザを排除する一方で、依然として最初に確認されたユーザが保護された装置を使用するのを可能にする場合、本明細書で説明する利点を依然として達成することができる。
【0144】
上述したように、ユーザ検出器装置19−102を、確認された、既知の又は認可されたユーザの解剖学的腔のケプストラムデータに対する基礎を確立するように、事前測定セットアッププロセスによって構成することができる。たとえば、デバイスが最初に作動する時、セットアッププロセスをトリガーすることができる。代替的に、こうしたプロセスからのデータを、別の装置からユーザ検出器装置内に事前に格納することもできる。後続する認証試験を、自動開始プロセス等において装置によって行う場合、後続する試験測定データを、事前に格納されたデータと比較するために用いることにより、認可されたか又は意図されたユーザによる使用を確認することができる。
【0145】
任意選択で、デバイスを使用不能にすることに加えて、又はその代りとして、検出器は、警告メッセージ及び/又は警報をトリガーして、デバイスが異なるユーザに意図されていることを明らかにすることもできる。したがって、こうした装置のコントローラは、任意選択で、1つ又は複数の警告灯(たとえば、1つ又は複数の発光ダイオード)等の表示デバイスを有することができる。表示デバイスを、LCD等の表示画面として実施することもできる。同様に、異なるか又は意図されていないユーザの検出が、ユーザ検出装置によって保護される特定のデバイスの新たな初期化をトリガーしてもよく、それにより、デバイスの動作が、特定のユーザに対して特に決定された可能性のある設定ではなく、すべてのユーザに適している設定で開始する。
【0146】
上述しかつ図25に示すように、本技術の検出器25−702の例を、呼吸治療装置として実施することができる。こうした実施形態では、音センサを、呼吸治療装置導管(たとえば気管内チューブ又は人工呼吸器供給導管)と一体化することもできるし、導管カプラ、マスク又は鼻カニューレの一部に取り付けることもできる。図25の例では、空気の供給を、患者の鼻孔及び/又は口等の患者の呼吸器系に向ける役割も果たす導管に、マイクロフォンを取り付けることができる。こうした場合、一方又は両方の鼻孔及び/又は口は、ユーザ検出用の1つ又は複数の解剖学的腔としての役割を果たすことができる。
【0147】
さらに図25の実施形態例を参照すると、流れ発生器を介して患者の圧力送達又は換気治療を制御するコントローラ25−706が、ユーザ認証又はユーザ検出コントローラとしての役割を果たすことも可能である。こうした実施形態では、音センサ25−704を、導管25−708における音響測定のために、呼吸治療装置のコントローラ25−706に直接結合することができる。こうしたデバイスはまた、ブロワ25−710によって発生する圧力を測定し、圧力の測定値を示す圧力信号p(t)を生成する圧力トランスデューサ等、圧力センサを有することもできる。それはまた、任意選択で、流れセンサを有することも可能である。流れ信号f(t)及び圧力信号p(t)に基づき、プロセッサを備えたコントローラ25−706は、こうした動作が、上述したようなユーザ検出コントローラの方法によって許可されるか又は使用可能となると、ブロワ制御信号を生成することができる。
【0148】
したがって、コントローラは、所望の圧力設定値を生成し、その設定値を圧力センサの測定された状態と比較することにより、設定値を満足するようにブロワをサーボ制御することができる。したがって、コントローラ25−706は、ブロワ25−710によって患者インターフェースに送達される圧力に対して制御された変更を行うことができる。任意選択で、それは、ブロワを特定のRPM設定に制御するように速度センサを有することができる。これに関して、自動化された呼吸治療に加えて、ブロワは、音センサの測定の期間中にブロワを一定速度で運転すること等により、上述したように音響測定中にノイズ源又は音発生器としての役割を果たすことができる。
【0149】
ユーザ検出コントローラ26−806用のアーキテクチャ例を、図26のブロック図に示す。図では、コントローラを、1つ又は複数のプログラム可能なプロセッサ26−808によって実施することができる。コントローラはまた、モニタ、LCDパネル、タッチスクリーン等、上述したようにユーザインターフェース又は表示デバイスに対するデータ(たとえば警告又はメッセージ等)を出力する、ディスプレイインターフェース26−810も有することができる。任意選択で、データを入力するか又は他の方法で本明細書に説明した方法を起動するか又は動作させるために、たとえば、キーボード、タッチパネル、制御ボタン、マウス等のためのユーザ制御/入力インターフェース26−812も含めることができる。本デバイスはまた、プログラミング命令、設定データ、音データ、マイクロフォン音サンプル、音響測定データ、ケプストラムデータ等のデータを送受信する、センサ又はバス等のデータインターフェース26−814も有することができる。
【0150】
コントローラはまた、上述した方法の制御命令及びデータを含むメモリ/データ記憶コンポーネント26−820を有している。たとえば、26−822において、それらは、測定、フィルタリング、FFT、対数、ケプストラム比較/評価、差決定等、音信号処理及びユーザ認証/検出処理に対する格納されたプロセッサ制御命令を含むことができる。26−824において、これらはまた、ユーザ検出/認証に従って動作が許可されるか又は防止される命令等、デバイス起動又は制御に対する格納されたプロセッサ制御命令も含むことができる。最後に、それらはまた、26−826において、音測定、ケプストラムデータ、セットアップデータ、閾値等、本方法のための格納されたデータを含むことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、上述した方法を制御するプロセッサ制御命令及びデータを、汎用コンピュータが使用するためにソフトウェアとしてコンピュータ可読記録媒体に含めることができ、それにより、汎用コンピュータは、そのソフトウェア及びデータを汎用コンピュータにロードすると、本明細書で述べた方法の任意のものに従って専用コンピュータとしての役割を果たすことができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、認証又はユーザ検出技術について説明したが、これらの実施形態は、本技術を単に例示するものであることが理解されるべきである。さらなる変更を本明細書の趣旨及び範囲内で考案することができる。
【0153】
たとえば、本技術により、組み込まれたユーザ認証制御デバイスを企図しているが、本デバイスの構成要素の方法を、システムの複数の構成要素にわたって共有することができる。たとえば、測定デバイスは、単に測定プロセスを行うことにより、導管の音響データを決定しそのデータを別の処理システムに転送することができる。そして、第2の処理システムが、そのデータを解析し、上述したように認証を決定することができる。そして、第2の処理システムが、上述した使用可能又は使用不能メッセージのうちの1つ又は複数を、たとえば電子形式で測定装置又は他の表示デバイスに戻すように送信すること等により、本明細書に記載するように認証を示すことにより、デバイスの動作を制御することができる。
【0154】
同様に、本技術は、ユーザを検出するために単一のマイクロフォンのみからのデータを実施することができる実施形態を企図しているが、本技術のいくつかの実施形態では、追加のマイクロフォンを実施することができる。さらに、本技術は、音インパルスとしての役割を果たすシステムのノイズ又は音が、1つ又は複数の選択されたブロワ設定で動作している流れ発生器によって発生する音である実施形態を企図しているが、いくつかの実施形態では、導管内に音センサによって記録される音インパルスを発生するようにスピーカ又はホーンドライバを組み込むことができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本技術を、ハンドヘルドデバイス等のデジタルオーディオファイルプレイヤ等のオーディオデバイスである音発生器で実施することも可能である。オーディオデバイスの構成要素は、上述したユーザ検出器を含むことができ、それら構成要素を、認証のために耳栓又はイヤースピーカの導管を用いて耳道(複数可)内に音を発生するように構成することができる。そして、オーディオデバイスの動作(複数可)を、耳栓又はイヤースピーカのマイクロフォンと上述した音検出方法を行うように構成されたオーディオデバイスのプロセッサとに基づいて、使用可能又は使用不能とすることができる。
【0156】
D.さらなる実施形態
他の変形を、本技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。たとえば、上述した実施形態の説明した特徴の任意もの(たとえば、閉塞検出特徴、構成要素検出特徴及びユーザ検出特徴)を組み合わせて、開示したさまざまな機能の利益を含むようにさまざまなさらなる装置を形成することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、音響検出方法を、音声スピーカ又は動作流れ発生器等の自動化された音源なしに実施することができる。たとえば、マスクのユーザが、マスク内に音(たとえばハミング)を立てることにより、音パルスを生成することができ、それを、上述した検出方法のうちのいくつかの装置によって測定することができる。そして、この音の反射を用いて、装置のコントローラの処理によってマスクを識別することができる。
【符号の説明】
【0158】
102:呼吸治療導管閉塞検出装置
104:音センサ
106:検出コントローラ
108:呼吸治療導管
110:流れ発生器
112:供給導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸治療導管閉塞を検出する方法であって、
音センサにより、呼吸治療導管内の流れ発生器の音の測定量を決定するステップと、
プロセッサにより、前記音センサからの前記音の測定量を解析するステップと、
前記プロセッサにより、前記解析に基づいて前記呼吸治療導管内の閉塞の存在又は不在を示すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記解析するステップは、前記音の測定量を表すデータサンプルからフーリエ変換を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析するステップは、前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの対数を計算するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記解析するステップは、前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの前記対数の逆変換を計算するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記解析するステップは、(a)前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの前記対数の前記逆変換と、(b)前記呼吸治療導管の閉塞されていないものから測定された音を表すフーリエ変換されたデータサンプルの対数の逆変換と、の差を計算するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記示すステップは、前記差の計算に基づいてデータのグラフを表示するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記差の計算のデータに基づいて閉塞の存在の場所及び程度を検出するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記程度は、前記差の計算の前記データの有意なサンプルの振幅値から決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記場所は、前記差の計算の前記データにおける前記有意なサンプルの位置から決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記呼吸治療導管は気管内チューブを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記呼吸治療導管内で前記音を発生する音源をさらに備え、該音源は流れ発生器を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記呼吸治療導管の閉塞されていないものから音を事前測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記音センサは単一のマイクロフォンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
呼吸治療導管閉塞を検出する装置であって、
呼吸治療導管と結合し、該呼吸治療導管内の流れ発生器の音の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンからの前記音の測定量のデータサンプルを解析するように構成され、該解析されたデータサンプルに基づいて前記呼吸治療導管内の閉塞の存在又は不在を示すようにさらに構成されているプロセッサと、
を具備する、装置。
【請求項15】
前記マイクロフォンは、気管内チューブカプラに適合され、該気管内チューブカプラは気管内チューブの一部と接続する開口部を備えている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記気管内チューブカプラは、人工呼吸器供給チューブの一部と接続するように適合された開口部をさらに備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記気管内チューブカプラは、マイクロフォンチャンバをさらに備え、該マイクロフォンチャンバは、前記カプラのガス流路から該チャンバを分離する膜に適合される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記気管内チューブカプラは、前記マイクロフォンチャンバが周囲圧力と等しくなるのを可能にするように適合された通気孔をさらに備えている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
流れ発生器をさらに具備し、前記プロセッサは、呼吸治療を引き起こすよう該流れ発生器を制御するようにさらに構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記音の測定量を表すデータサンプルからフーリエ変換を計算するように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの対数を計算することにより、前記データサンプルを解析するように構成される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの前記対数の逆変換をさらに計算することにより、前記データサンプルを解析するように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサは、(a)前記音の測定量を表す前記変換されたデータサンプルの前記対数の前記逆変換と、(b)前記呼吸治療導管の閉塞されていないものから測定された音の測定量を表すフーリエ変換されたデータサンプルの対数の逆変換と、の差をさらに計算することにより、前記データサンプルを解析するように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記差の計算に基づいてデータのグラフを表示することにより、閉塞の存在を示すように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、前記差の計算のデータに基づいて閉塞の存在の場所及び程度を検出するようにさらに構成される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記程度は、前記差の計算の前記データの有意なサンプルの振幅値から決定される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記場所は、前記差の計算の前記データにおける前記有意なサンプルの位置から決定される、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プロセッサは、前記呼吸治療導管の閉塞されていないものから音を事前測定するようにさらに構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項29】
前記呼吸治療導管は気管内チューブを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項30】
前記呼吸治療導管内で前記音を発生する音源をさらに具備し、該音源は流れ発生器を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項31】
呼吸治療導管閉塞を検出する装置であって、
呼吸治療導管内の流れ発生器の音の測定量を生成する音検知手段と、
前記音検知手段に結合され、前記音検知手段からの前記音の測定量を解析することにより、前記呼吸治療導管内の閉塞の存在の決定を制御するコントローラ手段と、
を具備する、装置。
【請求項32】
前記音検知手段を収容し、気管内チューブの一部及び人工呼吸器供給チューブの一部と接続する気管内チューブ結合手段をさらに具備する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記結合手段は、人工呼吸器ガス流路と前記音検知手段とを分離する膜をさらに備えている、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記結合手段は、前記音検知手段を周囲圧力と等しくする通気手段をさらに備えている、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
流れ発生器をさらに具備し、前記コントローラ手段は、呼吸治療を引き起こすよう前記流れ発生器を制御するようにさらに適合される、請求項31に記載の装置。
【請求項36】
呼吸治療導管をさらに具備し、該呼吸治療導管は気管内チューブを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項37】
前記呼吸治療導管内で音を発生する音手段をさらに具備し、該音手段はサーボ制御ブロワを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記音検知手段は単一のマイクロフォンを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項39】
呼吸器系閉塞を検出する方法であって、
音センサにより、流れ発生器の音の測定量を決定するステップと、
プロセッサにより、前記音の測定量からのケプストラムの計算によって前記音センサからの前記音の測定量を解析するステップと、
前記プロセッサにより、前記解析に基づいて患者の前記呼吸器系内の閉塞の存在又は不在を示すステップと、
を含む、方法。
【請求項40】
前記音の測定量からの前記ケプストラムと以前の音の測定量から決定されたケプストラムとの差を計算することに基づき、閉塞の存在の程度を検出するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記程度は、前記差の計算の前記データの有意なサンプルの振幅値から決定される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
場所が、前記差の計算の前記データにおける前記有意なサンプルの位置から決定され、前記位置は、呼吸治療導管の既知の端部を越えた位置を表す、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
呼吸閉塞を検出する装置であって、
呼吸治療導管と結合し、流れ発生器の音の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンからの前記音の測定量のデータサンプルを、該音の測定量の該データサンプルを用いたケプストラムの計算により解析するように構成され、該解析されたデータサンプルに基づいて患者の呼吸器系における閉塞の存在又は不在を示すようにさらに構成されているプロセッサと、
を具備する、装置。
【請求項44】
前記音の測定量からの前記ケプストラムと、以前の音の測定量から決定されたケプストラムとの差を計算することに基づいて、閉塞の存在の程度を検出することをさらに含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記程度は、前記差の計算の前記データの有意なサンプルの振幅値から決定される、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
場所が、前記差の計算の前記データにおける前記有意なサンプルの位置から決定され、前記位置は、呼吸治療導管の既知の端部を越えた位置を表す、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
流れ発生器をさらに具備し、前記プロセッサは、呼吸治療を引き起こすよう前記流れ発生器を制御するようにさらに適合される、請求項43に記載の装置。
【請求項48】
治療のために出口において患者に提供される加圧空気の供給を引き起こす流れ発生器と共に用いられるデバイスであって、
前記流れ発生器の前記出口に取り付け可能な患者インターフェースと、
第1の信号を発生するエミッタと、
前記第1の信号と前記患者インターフェースから反射された第2の信号とを受信するセンサと、
前記第1の信号及び前記反射された第2の信号を処理するコントローラであって、該処理された、反射された第2の信号に基づいて前記患者インターフェースの接続を検出する、コントローラと、
を具備するデバイス。
【請求項49】
前記第1の信号は、音響インパルス又は連続音響信号のいずれかである、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記センサは、マイクロフォン、圧力センサ、又は流れセンサである、請求項49に記載のデバイス。
【請求項51】
前記コントローラは、ケプストラム解析によって前記第1の信号及び前記第2の信号を処理する、請求項50に記載のデバイス。
【請求項52】
前記エミッタは前記流れ発生器である、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記患者インターフェースはマスク及び管を含む、請求項52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記センサは、流れ発生器内に又は該流れ発生器の出口に近接して取り付けられるか又は封入される、請求項53に記載のデバイス。
【請求項55】
前記センサは、マイクロフォン、圧力センサ、又は流れセンサである、請求項54に記載のデバイス。
【請求項56】
前記コントローラは、前記患者インターフェースに関する情報をコンピュータに転送する、請求項55に記載のデバイス。
【請求項57】
前記センサは、前記流れ発生器の前記出口に近接して配置される、請求項56に記載のデバイス。
【請求項58】
前記患者インターフェースの前記接続の前記検出は、特定のマスクモデルの識別を含む、請求項48に記載のデバイス。
【請求項59】
前記患者インターフェースの前記接続の前記検出は、該患者インターフェースに関連する漏れの検出を含む、請求項48に記載のデバイス。
【請求項60】
治療のために出口において患者に提供される加圧空気の供給を引き起こす流れ発生器と共に用いられるデバイスであって、
前記流れ発生器の前記出口に取り付け可能な患者インターフェースと、
第1の信号を発生するエミッタと、
前記第1のインパルスと前記患者インターフェースから反射された第2の信号とを受信するセンサと、
前記第1の信号及び前記反射された第2の信号を処理するコントローラと、
を具備し、
前記コントローラは、前記反射された第2の信号の少なくとも1つの特徴を所定の音響信号のセット内の少なくとも1つの特徴と比較することに基づいて、前記患者インターフェースを識別する、デバイス。
【請求項61】
治療のために出口において患者に提供される加圧空気の供給を引き起こす流れ発生器と共に用いられるデバイスであって、
前記流れ発生器の前記出口に取り付け可能な患者インターフェースと、
第1の信号を発生するエミッタと、
前記第1の信号と前記患者インターフェースから反射された第2の信号とを受信するセンサと、
前記インパルス及び前記反射された第2の信号を処理するコントローラと、
を具備し、
前記コントローラは、前記反射された第2の信号の少なくとも1つの特徴を所定の音響信号のセット内の少なくとも1つの特徴と比較することに基づいて、前記患者インターフェースにおける不具合を識別する、デバイス。
【請求項62】
出口から加圧空気の供給を引き起こす流れ発生器に接続するように適合された患者インターフェースを識別する方法であって、
空気路に第1の信号を放出するステップと、
前記第1の信号と、前記空気路に沿って反射された第2の信号と、を検出するステップと、
前記第2の信号を取得するよう、信号をフィルタリングするステップと、
前記第2の信号を、患者インターフェースの所定の反射信号のアレイと比較するステップと、
前記アレイとの前記第2の信号の比較に基づいて、前記空気路に接続された患者インターフェースを識別するステップと、
を含む、方法。
【請求項63】
流れ発生器に接続されたマスクのタイプを、該マスクの音響反射を特徴付けることにより識別する方法。
【請求項64】
空気路における特徴を検出又は識別する方法であって、
前記空気路に第1の信号を放出するステップと、
前記第1の信号と、前記空気路に沿って反射された第2の信号と、を検出するステップと、
前記第2の信号を取得するよう、信号をフィルタリングするステップと、
前記第2の信号を、前記空気路の所定の特徴のアレイと比較するステップと、
前記アレイとの前記第2の信号の比較に基づいて前記空気路における特徴を識別するステップと、
を含む、方法。
【請求項65】
前記空気路は患者インターフェースを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記空気路は患者の呼吸器系を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記特徴は、前記空気路内の狭窄、前記空気路の直径、前記空気路の長さ、及び前記空気路の閉塞を含むグループから選択される1つ又は複数を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
患者インターフェースの特徴を識別する、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
患者インターフェースの前記特徴は、流れ発生器の設定を制御する治療パラメータを調整するために用いられる、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
呼吸治療導管と結合し、該導管から音の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンからの前記音の測定量のデータサンプルを、テンプレートを表す以前に格納されたデータサンプルと比較することにより解析するように構成され、該比較からシステム又は患者の特徴を検出するようにさらに構成されているプロセッサと、
を具備する、呼吸治療装置。
【請求項71】
前記データサンプルの前記解析は、前記音の測定量の前記データサンプルを用いたケプストラムの計算を含む、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
デバイスのユーザを認証する方法であって、
音センサにより、デバイスのユーザの解剖学的腔に向けられた音導管内の音発生器の音の測定量を決定するステップと、
プロセッサにより、前記音センサからの前記音の測定量を、該音の測定量からのケプストラムの計算によって解析するステップと、
前記プロセッサにより、前記解析に基づいて前記ユーザが事前に認可されたユーザであると決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項73】
前記決定するステップは、前記デバイスの動作を可能にするステップを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記音発生器はスピーカを含み、前記音センサはマイクロフォンを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記デバイスは呼吸治療装置を含み、前記音発生器は流れ発生器を含み、前記音導管は呼吸供給チューブを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記解析するステップは、前記ケプストラムのデータを、セットアッププロセスからの以前の音の測定量によって決定された以前のケプストラムのデータと比較するステップを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
セットアッププロセスで取得された前記以前の音の測定量を決定するステップをさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ユーザを認証する装置であって、
音響信号を前記装置のユーザの解剖学的腔に向けるように適合された音導管と、
前記音響信号を発生する音発生器と、
前記音導管に結合し、前記音響信号の測定量を生成するように適合されたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンからの前記音響信号の測定量のデータサンプルを、前記音の測定量の前記データサンプルを用いたケプストラムの計算により解析するように構成され、該解析に基づいて前記ユーザが事前に認可されたユーザであることを決定するようにさらに構成されているプロセッサと、
を具備する、装置。
【請求項79】
前記プロセッサは、前記決定に基づいて前記装置の動作を可能にするように構成されている、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
前記音発生器はスピーカを含む、請求項79に記載の装置。
【請求項81】
前記プロセッサの前記解析は、前記ケプストラムのデータを、セットアッププロセスにおいて取得された以前の音の測定量から決定された以前のケプストラムのデータと比較することを含む、請求項78に記載の装置。
【請求項82】
前記プロセッサは、セットアッププロセスにおいて前記以前の測定量を設定するようにさらに構成されている、請求項81に記載の装置。
【請求項83】
呼吸治療装置を備え、前記音発生器はサーボ制御ブロワを含み、前記音導管は、呼吸供給チューブ及びマスク又は鼻カニューレを含む、請求項78に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2012−517303(P2012−517303A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549392(P2011−549392)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000140
【国際公開番号】WO2010/091462
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】