説明

呼吸用気体供給装置

【目的】 本発明の目的は、患者の呼吸状態に合わせて呼吸位相の検出感度を適確に設定し得る機能を備えた呼吸用気体供給装置を提供することにある。
【構成】 本発明の呼吸用気体供給装置は、呼吸用気体の発生手段1と、開放型供給手段9と、自動開閉弁手段5と、ダイヤフラム式の差圧検出手段7やゲイン設定手段等を有した呼吸位相検知手段と、自動開閉弁手段の制御手段を具備している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、使用する者の呼吸サイクルに応じて作動し得る自動開閉弁を備えた呼吸用気体供給装置に関する。さらに詳細には、酸素又は酸素濃縮気体を呼吸補助のための呼吸用気体として呼吸サイクルに応じて間歇的に使用に供給するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、呼吸器疾患患者に対して酸素ボンベから酸素を吸入させることによる酸素療法が行なわれてきており、特に最近では、空気中の酸素を濃縮して酸素濃縮気体を得るための酸素濃縮器が開発されて実用に供されるようになってから、それを用いた酸素療法が次第に普及するようになってきた。
【0003】かかる酸素濃縮器としては大別して、ゼオライト等の窒素をより吸着しやすい吸着剤を充填した吸着塔において圧力を変動させることにより吸着・脱着を繰り返す圧力変動式等の吸着型酸素濃縮器と、酸素選択透過性膜を用いた膜型酸素濃縮器の2種類がある。
【0004】酸素ボンベから得られた酸素、又はこれらの酸素濃縮器により得られた酸素濃縮気体を呼吸器疾患患者に供給する場合に、通常ボンベ又は濃縮器から延長されたチューブの先端に設けられた鼻カニューラから連続的に患者の鼻孔内に導入される方式が採用される。
【0005】尚これらの改良された供給方式としては、患者の呼吸サイクルに対応して、吸入時においてのみ酸素濃縮気体を供給することができるようにすることによって、無駄な酸素濃縮気体の放出を防止して効率を高める方法が提案されている(特開昭59―8972号公報)。
【0006】かかる供給方式として、酸素の導出口が患者の鼻孔に装着される鼻カニューラ等を介して患者の吸気開始時等の圧力変化を検出するためのダイヤフラム式検出手段と、その検出結果を用いて制御手段により患者の吸気期間のみ酸素を供給するように開閉が制御されたデマントレギュレーターとしての自動開閉弁(デマンドバルブ)を具備し、酸素ボンベからの酸素が流量設定器等を経て鼻カニューラから患者に供給されるようにしたデマンドレギュレーター方式があげられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これまでのデマンドレギュレーター方式の呼吸用気体供給装置では、例えば患者によって吸気開始における鼻孔における圧力変化の挙動が大きく異なり、徐々に吸引がはじまりゆっくりと圧力が変化する場合と急に大きく吸引して急激に圧力が変化する場合では、一定の検出感度のままで双方の吸気開始時の正確な検出が困難であった。即ち吸気開始の検出手段において、検出感度が低い場合には徐々に圧力変化する患者について実際の吸気開始よりも遅れて吸気開始が検出されることになり、また検出感度が高い場合には、ノイズを検知しやすくなり、特に患者が歩行中に使用する携帯型デマンドレギュレーターの場合、歩行による鼻カニューラのゆれが引き起こす圧力信号変化により誤動作を生ずる可能性が高くなり問題があった。
【0008】本発明は、デマンドレギュレーター方式の呼吸用気体供給装置において、呼吸位相の検出感度の設定を適確に行なうようにして、種々の呼吸パターンの患者に適応しやすくすることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ダイヤフラム式で静電容量の変動により圧力の変化を検出する圧力変動検出手段を用いて、その静電容量の変動の検出結果等の患者からの情報を用いて呼吸位相の検出感度を設定するようにした方式が非常に有効であることを見い出し、本発明に到達したものである。
【0010】即ち本発明は、呼吸用気体の発生手段と、一端が該発生手段に連通し他端に該呼吸用気体の開放型供給手段を有し途中に自動開閉弁手段を有した導管手段と、呼吸における少なくとも一部の所定位相を検知し得る機能を有した呼吸位相検知手段と、該自動開閉手段の開閉を制御するための制御手段を備えた呼吸用気体供給装置において、該呼吸位相検知手段が、ダイヤフラム式の差圧検出手段を有し該差圧検出手段が測定すべき差圧を受けて変位するダイヤフラムに連動する移動電極とこれに対向して配置した固定電極との間の静電容量の変動により該差圧を検出するようにしたものであり、さらにその検出された静電容量の変動を電気パルス信号の変動に変換するための変換回路手段と、該電気パルス信号をパルスカウント数に変換するためのカウント回路手段と、該パルスカウント数を記憶するための記憶手段と、所定時間tn の間に検出された電気パルス信号から変換されたパルスカウント数Fn とその直前の所定時間tn-1 の間に検出されたパルス信号から変換された記憶手段に記憶されたパルスカウント数Fn-1 の差ΔF(=Fn −Fn-1 )を算出するための算出手段と、呼吸位相検出感度ΔFGを設定するためのゲイン設定手段と、算出手段により算出されたΔFとゲイン設定手段により設定されたΔFGを比較しΔFがΔFG以上になった際に該自動開閉弁手段を開くための信号を発生するための弁開信号発生手段とを具備したものであることを特徴とした呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0011】かかる本発明には、呼吸位相検出感度ΔFGを2個以上あらかじめコンピューター手段CPU内に入力して記憶しておいて外部から手動で適当なΔFGを選択できるようにした如く、該ゲイン設定手段が外部から手動で設定するようにしたものである呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0012】また上記の本発明には、該ゲイン設定手段が、該算出手段により算出されたΔFの値を用いて該ΔFGを自動的に設定するための自動設定手段である呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0013】かかる本発明の装置には、該ゲイン自動設定手段が、複数個の検出感度水準ΔFGiに対応してあらかじめ設定されたΔFについての各々の範囲Riを記憶する手段と、算出手段により算出されたΔFが含まれる範囲Riを求めてそれに対応するΔFGiを該呼吸位相検出感度ΔFGとして自動的に設定する手段を具備したものである呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0014】かかる装置には、該算出手段により算出されたΔFとして、直前に設定されたΔFGを用いて運転され弁開信号発生手段が弁手段を開くための信号を発生した際のΔFを用いる呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0015】さらに前記の本発明には、該ゲイン自動設定手段が、検出感度記憶手段を有し、さらに該検出感度記憶手段に記憶された呼吸位相検出感度ΔFGを用いて運転を続けて弁開信号発生手段が弁手段を開くための信号を発生した際のΔFについて所定の個数の平均値ΔFavを求めるための手段を有し、必要に応じてさらに該ΔFavに所定の係数fを乗じたf・ΔFavを算出するための手段を有し、該ΔFav又はf・ΔFavを検出感度記憶手段に更新して記憶し該ΔFGとして設定するようにしたものである呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0016】かかる装置には、呼吸における少なくとも一部の所定位相が実質上吸気開始時であり、測定すべき差圧が負圧である場合に、該差圧が実質上0に相当するパルスカウント数F0 をあらかじめ設定しておく手段を有し、該パルスカウント数Fn 戸の差Fd(=Fn −F0 )を算出し該差Fdが所定の値Fdmよりも大きくなった場合には該ΔFavとして所定の値ΔFGmaxを用いるための機能を該ゲイン自動設定手段に具備せしめた呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0017】前記の本発明には、該呼吸位相検知手段において所定の期間内に該所定位相が検知されない場合に、所定の値ΔFGminを該ΔFGとして自動的に設定するための機能を該ゲイン設定手段に具備せしめた呼吸用気体供給装置が含まれる。
【0018】以下に、必要に応じて図面を用いながら、本発明の呼吸用気体供給装置についてさらに詳細に説明する。
【0019】本発明における呼吸用気体の具体例としては、酸素ガスや空気よりも酸素濃度を高めた酸素濃縮気体等があげられる。その発生手段の具体例としては、酸素ガスボンベ、液体酸素貯蔵装置、圧力変動吸着型等の酸素濃縮装置があげられる。
【0020】本発明における開放型供給手段は、患者の鼻孔や口に対して密閉されない状態即ち大気に解放された状態で呼吸用気体を供給するものであって、例えば鼻カニューラが例としてあげられる。
【0021】自動開閉弁手段としては、直流励磁型電磁弁、交流励磁式電磁弁、空気差動式自動弁、パイロット作動型電磁弁等が好ましく、中でも直流励磁型電磁弁、空気差動式自動弁、およびパイロット作動型電磁弁等が鉄芯等の動きがゆるやかでライフが長くかつ作動時の発生音が小さく低騒音化の対策上更に好ましく、特に直流励磁型電磁弁が携帯用としても実用的である。
【0022】呼吸位相検知手段としては、呼吸の際の呼気および吸気のサイクルの少なくとも一部が検知できるものであって、その具体例としては、呼気および吸気の通路における気流に関する圧力に基づいて変化する値を検知するための手段があげられる。
【0023】検知する呼吸位相としては、吸気期間、呼気期間、吸気開始時等が挙げられるが、検知を簡単に行ない得る吸気開始時が実用上好ましい。
【0024】圧力に基づく検知手段としては、圧力変動を検知するものと、圧力自体を測定するものがあるが、前者が実用上好ましく、特に圧力の変化速度を検知するようにしたものが感度を高めるうえで有効である。圧力変動を検知するための手段としては、例えば呼気および吸気が通過する通路である鼻孔等において開口部を有した導管内にダイヤフラムを用いた圧力変動検知手段があげられる。
【0025】ダイヤフラム式の差圧変動検知手段としては、測定すべき差圧を受けて変位するダイヤフラムに連動する移動電極と、これに対応して配置した固定電極との間の静電容量変化により差圧を検出するようにしたものが好ましく用いられる。その例として、静電容量変化により圧力又は差圧を測定するための導電性物質で表面処理した高分子フイルムをダイヤフラムとして用いたものがあげられる。特にかかる高分子フイルムをダイヤフラムとして用いた検知手段の場合には、数mmAq程度の微圧・微差圧の変動を検知するのに適している。
【0026】ダイヤフラム式微差圧検出手段の好ましい具体例としては、測定すべき圧力又は差圧を受けて変位するダイヤフラムに連動する移動電極と、これに対向して配置した固定電極との間の静電容量変化により該圧力又は差圧を検出するようにしたダイヤフラム式の圧力検出器において、ダイヤフラムを高分子フイルムに導電層を積層した導電性フイルムとして該導電層を移動電極とすると共に、固定電極に電子回路用のプリント基板を用いて安価に製作可能とした圧力計があげられる(特開平1―274027号公報参照)。
【0027】また本発明の装置における自動開閉弁手段の制御手段としては、呼吸位相検出手段から得られた弁開信号に基づいて自動開閉弁手段を開くようにすると共に、自動開閉弁手段の開時間を設定したタイマー手段をスタートさせ、所定の時間経過した後にタイマー手段を停止させると共に自動開閉弁手段を閉じるように機能するものであればいかなるものであってもよく、例えばマイクロコンピュータ(CPU)等があげられる。尚かかる制御手段中には、呼吸位相検出結果によって例えば実質上の吸気期間の1/3の期間を弁開時間として算出するための機能を具備させることが、患者の呼吸パターンに適合した呼吸補助を行なううえで有効である。
【0028】図1は、本発明の呼吸用気体供給装置の具体例を示したものである。図1では、酸素ボンベ1からの酸素が、流量設定手段2で医師の処方流量値に流量設定された後、導管手段3を介して、デマンドレギュレーター4に導かれる。デマンドレギュレーター4には、デマンドバルブとして機能する自動開閉弁手段5とダイヤフラム式の差圧変動検出手段7とマイクロコンピュータ(CPU)からなるコントロールユニット6が具備されている。さらにデマンドレギュレーター4の下流側には、流量計(図示を省略する)を介して導管手段8が連結され、その下流端に開放型供給手段としての鼻カニューラ9が具備されている。尚、本発明の特徴の1つである呼吸位相検知手段は、差圧変動検出手段7およびコントロールユニット6の一部の機能からなる。
【0029】かかる呼吸位相検知手段は、ダイヤフラム式の差圧検出手段を有しその差圧検出手段が測定すべき差圧を受けて変位するダイヤフラムに連動する移動電極と、これに対応して配置した固定電極との間の静電容量の変動により該差圧を検出するようにしたものであり、さらにその検出された静電容量の変動を電気パルス信号の変動に変換するための変換回路手段と、その電気パルス信号をパルスカウント数に変換するためのカウント回路手段と、そのパルスカウント数を記憶するための記憶手段と、所定時間tn の間に検出された電気パルス信号から変換されたパルスカウント数Fn とその直前の所定時間tn-1 の間に検出されたパルス信号から変換された記憶手段に記憶されたパルスカウント数Fn-1 の差ΔF(=Fn −Fn-1 )を算出するための算出手段と、呼吸位相検出感度ΔFGを設定するためのゲイン設定手段と、算出手段により算出されたΔFとゲイン設定手段により設定されたΔFGを比較しΔFがΔFG以上になった際に該自動開閉弁手段を開くための信号を発生するための弁開信号発生手段とを具備したものである。
【0030】図2は、標準的な自発呼吸の圧力パターンと酸素供給パターンを示す。同図において、Pは圧力、Qは酸素流量、Tは時間、11は呼吸圧力パターン、12は酸素の流れるパターンを各々示す。尚図中のTA1〜TA3の領域は、図3で述べる如く吸気開始時の判断をする期間を示している。
【0031】図3は図2のTA部分の拡大図を示す。TA1,TA2,TA3と吸気開始に同調して、酸素の供給を繰返す場合の代表的なパターンを示したものである。尚、図中の11のラインは、図2における呼吸圧力パターン11を示している。
【0032】図3では、吸気検出感度(ΔFG)を外部設定手段等によって10パルス/10ms(ミリセカンド)と設定した場合の例であり、10msごとにCPUによりΔFを計算した結果は、ΔF1 〜ΔF3 はいずれも10パルス/10ms以下であり、吸気開始点と判定されないが、ΔF4 =16パルス/10msでは10パルス/10msより大となり、CPUは吸気開始と判定して電磁弁を閉から開とするための電気信号を電磁弁に送る。
【0033】図4は、本発明の呼吸用気体供給装置に用いられる呼吸位相検知手段の機能の好ましい具体的態様例のフローチャートを示したものである。ここで呼吸位相として吸気開始時を検出しようとするものである。あらかじめダイヤフラム式差圧検出手段における差圧が実質上0の状態での10ms間のパルスカウント数F0 を入力し記憶しておく必要がある。かかるF0 としては、最初に入力し記憶したものであってもよく、自動的にダイヤフラムの両側空間の圧力を大気圧等の同じ圧力の状態にして10ms間のパルスカウント数を実測するオートゼロ補正機構によって得られた値であってもよい。正確な呼吸位相検知を可能にする点から後者の方が好ましい。
【0034】パルスカウンター回路により図3に示した如く各10ms間の検出パルスカウント数Fn を求め、そのFn をF0 と比較する一方で、Fn の値をメモリーに記憶する。尚Fn の記憶は、Fn-1 およびFn の如く連続した2個の値が各々更新されていく。Fn がF0 よりも小さくない場合は、実質上負圧の状態即ち吸気期間であると判断し、次いで負圧の変化速度を表わすΔF(=Fn −Fn-1 )を算出する。一方あらかじめCPU内に3垂準の検出感度ΔFG1 ,ΔFG2 ,ΔFG3 を記憶させておき、患者の呼吸の状態に応じて外部選択入力手段によりいずれかの検出感度ΔFGを選択して設定する。次いでΔFをΔFGと比較し、ΔFGより小さくなければ吸気開始と判断して弁開信号を発生する。
【0035】尚、算出されたΔFの値を表示する表示手段を具備させて、その表示されたΔFを見て、その装置の使用者等が適当と思われる検出感度ΔFGを選択入力できるようにしてもよい。
【0036】図5〜図8は、本発明の呼吸用気体供給装置の吸気開始時検知手段において、検出感度(ゲイン)の自動設定手段の具体例をフローチャートで示したものである。
【0037】図5では、図4と同様にしてΔFが求められる他、ゲイン自動設定手段にあらかじめΔFについての3種の範囲R1 (ΔF≦18パルス/10ms)、R2 (18パルス/10ms<ΔF≦28パルス/10ms)、R3 (28パルス/10ms<ΔF)と、R1 に対応したΔFG1 =10パルス/10ms、R2 に対応したΔFG2 =20パルス/10ms、R3 に対応したΔFG3 =30パルス/10msなる検出感度垂準をCPU内に準備しておく。検出されたΔFに対応したRiおよびΔFGiを選択してそれをΔFGとして設定する。かくして自動設定手段によるΔFGとΔFの比較を行ない、ΔFがΔFGより小さくない場合に、弁開信号を発生する。
【0038】図6では、図4と同様にしてΔFが求められる他、ゲイン自動設定手段に、図5と同様のRiおよびΔFGiのデータをCPU内に保有させて、あらかじめ設定されたΔFGで運転されてΔF≧ΔFGの条件を満たして弁開信号を発生するようになったそのΔFの値を用いて、Riの範囲を求め、それに対応したΔFGiをΔFGとして自動的に設定される。例えばΔFG=10パルス/10msで運転されて図3の如くF0 〜F4 の値が検出され、ΔF4 =16パルス/10msで弁開信号が発生する一方で、ゲイン自動設定手段においてR1 が選択された後ΔFG=10パルス/10msが自動的に再設定されて次の運転がなされる。図7では、図4と同様にしてΔFが求められる他、ゲイン自動設定手段に、ΔFGの初期値入力手段(図示せず)等によりあらかじめ設定されたΔFGを記憶手段に記憶しておき、そのΔFGのままで所定回数(例えば5回)だけ弁開信号が発生するまで運転を続ける。その際の各弁開信号発生時のΔF値を記憶しておいて、かかる所定の個数のΔF値の平均値ΔFavを求めて、そのΔFav値を新しいΔFG値として設定し、更新記憶する。尚、図7では、弁開信号を所定回数発生させるために、図示された工程全体をその回数だけ繰返すようにするループは、簡略化のために省略する。このようにすることによって、患者の呼吸の状態に適合し、かつノイズや突発的な呼吸の乱れの影響をなくした安定な運転が可能になる。
【0039】また、図7に示される方式の装置において、必要に応じてゲイン自動設定手段にさらに、ΔFavに1以下のあらかじめ定められた係数f(例えばf=0.9)を乗じたf・ΔFavを算出する手段を具備させて、そのf・ΔFavを新しいΔFG値として設定するようにして、ΔFGの設定精度を高めることができる。
【0040】図8では、図7と同様にしてΔFav値を求めてそれをΔFGとして設定するゲイン自動設定する方式に加えて、例えば突発的な呼吸の乱れによって、Fn 値が極端に大きくなった場合に、ΔFGが実用上使用できない程大きな値に暴走するのを防止するために、ΔFav値を用いずに、自動的にΔFGの最大値としてあらかじめ入力されたΔFGmax値をΔFGとして設定するようにしたものである。即ち図8ではFn とF0 の差Fdを求め、Fdがあらかじめ入力されているその正常値の上限Fdm以上になった場合には、ΔFavのかわりに、あらかじめ入力されている最大値ΔFGmaxをΔFGとして自動的に設定するようにしたものである。
【0041】尚、図8では、図7と同様に簡略化のために、同一のΔFGのままで弁開信号を所定回数発生させるために図示された工程全体を繰返し運転するループが省略されている。
【0042】これらの図4〜図8、特に図5〜図8に示された本発明の装置において、さらに通常用いられるアプニアアラーム(無呼吸検知警報)、即ち弁開信号発生時から次の弁開信号発生時までの時間の検出手段およびその時間が所定時間を越えた場合に無呼吸として判断して警報を発生する手段を具備させて、無呼吸の検知がなされた場合に、自動的にあらかじめ入力された最小ゲイン値ΔFGminをΔFGとして設定する機能を具備させることが望ましい。
【0043】本発明の装置、特に呼吸位相の検出感度を自動的に設定するためのゲイン自動設定手段を具備した装置は、呼吸位相検知のためのダイヤフラム式の差圧検出手段においてオートゼロ補正機構を具備させることによって殊に正確な呼吸位相検知を可能にすることができる。
【0044】そのオートゼロ補正機構の具体例としては、差圧検出手段におけるダイヤフラムの一方側の空間が大気に連通しており他方側の空間がデマンドレギュレーターとしての自動開閉弁手段を介して開放型供給手段に連通し得るものであり、自動開閉弁手段により、発生手段からの呼吸用気体の流れが止められている間にダイヤフラムの他方側の空間が自動開閉弁手段を介して開放型供給手段に連通し、発生手段からの呼吸用気体の流れが開放型供給手段に供給されている間にその他方側の空間が自動開閉弁手段を介して大気に連通するような自動開閉弁手段を用いたものがあげられる。
【0045】かかるオートゼロ補正機構では、発生手段からの呼吸用気体の流れが開放型供給手段に供給されている間に他方側の空間が自動開閉弁手段を介して大気に連通した状態における差圧検出手段の移動電極と固定電極との間の静電容量に関する電気信号を、差圧が0なる状態に対応した零点を示す信号として自動的に記憶する自動記憶手段を有することが望ましい。その自動記憶手段としては、マイクロコンピューターであって、呼吸サイクル毎に電気信号を零点を示す信号として自動的に新たに記憶し直すようにしたものがあげられる。
【0046】
【発明の効果】本発明のデマンドレギュレーター方式の呼吸用気体供給装置は、呼吸位相の検出感度の設定を適確に行なうことができるので、種々の呼吸パターンの患者等に適応しやすい優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の呼吸用気体供給装置の具体例を示した模式図。
【図2】標準的な自発呼吸の圧力パターンと酸素供給パターンの関係の例示。
【図3】図2における呼吸圧力パターンにおけるTA部分の拡大図と、本発明の装置を適用した場合のパルスカウント数およびパルス差の例示。
【図4】本発明の装置における呼吸位相検知手段での検出ゲイン設定のための好ましい実施態様例のフローチャート。
【図5】本発明の装置における呼吸位相検知手段での検出ゲイン設定のための好ましい実施態様例のフローチャート。
【図6】本発明の装置における呼吸位相検知手段での検出ゲイン設定のための好ましい実施態様例のフローチャート。
【図7】本発明の装置における呼吸位相検知手段での検出ゲイン設定のための好ましい実施態様例のフローチャート。
【図8】本発明の装置における呼吸位相検知手段での検出ゲイン設定のための好ましい実施態様例のフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 呼吸用気体の発生手段と、一端が該発生手段に連通し他端に該呼吸用気体の開放型供給手段を有し途中に自動開閉弁手段を有した導管手段と、呼吸における少なくとも一部の所定位相を検知し得る機能を有した呼吸位相検知手段と、該自動開閉手段の開閉を制御するための制御手段を備えた呼吸用気体供給装置において、該呼吸位相検知手段が、ダイヤフラム式の差圧検出手段を有し該差圧検出手段が測定すべき差圧を受けて変位するダイヤフラムに連動する移動電極とこれに対向して配置した固定電極との間の静電容量の変動により該差圧を検出するようにしたものであり、さらにその検出された静電容量の変動を電気パルス信号の変動に変換するための変換回路手段と、該電気パルス信号をパルスカウント数に変換するためのカウント回路手段と、該パルスカウント数を記憶するための記憶手段と、所定時間tn の間に検出された電気パルス信号から変換されたパルスカウント数Fn とその直前の所定時間tn-1の間に検出されたパルス信号から変換された記憶手段に記憶されたパルスカウント数Fn-1 の差ΔF(=Fn −Fn-1 )を算出するための算出手段と、呼吸位相検出感度ΔFGを設定するためのゲイン設定手段と、算出手段により算出されたΔFとゲイン設定手段により設定されたΔFGを比較しΔFがΔFG以上になった際に該自動開閉弁手段を開くための信号を発生するための弁開信号発生手段とを具備したものであることを特徴とした呼吸用気体供給装置。
【請求項2】 該ゲイン設定手段が、外部から手動で設定するようにしたものである請求項1の呼吸用気体供給装置。
【請求項3】 該ゲイン設定手段が、該算出手段により算出されたΔFの値を用いて該ΔFGを自動的に設定するためのゲイン自動設定手段である請求項1の呼吸用気体供給装置。
【請求項4】 該ゲイン自動設定手段が、複数個の検出感度水準ΔFGiに対応してあらかじめ設定されたΔFについての各々の範囲Riを記憶する手段と、算出手段により算出されたΔFが含まれる範囲Riを求めてそれに対応するΔFGiを該呼吸位相検出感度ΔFGとして自動的に設定する手段を具備したものである請求項3の呼吸用気体供給装置。
【請求項5】 該算出手段により算出されたΔFとして、直前に設定されたΔFGを用いて運転され弁開信号発生手段が弁手段を開くための信号を発生した際のΔFを用いる請求項4の呼吸用気体供給装置。
【請求項6】 該ゲイン自動設定手段が、検出感度記憶手段を有し、さらに該検出感度記憶手段に記憶された呼吸位相検出感度ΔFGを用いて運転を続けて弁開信号発生手段が弁手段を開くための信号を発生した際のΔFについて所定の個数の平均値ΔFavを求めるための手段を有し、必要に応じてさらに該ΔFavに所定の係数fを乗じたf・ΔFavを算出するための手段を有し、該ΔFav又はf・ΔFavを検出感度記憶手段に更新して記憶し該ΔFGとして設定するようにしたものである請求項3の呼吸用気体供給装置。
【請求項7】 呼吸における少なくとも一部の所定位相が実質上吸気開始時であり、測定すべき差圧が負圧である場合に、該差圧が実質上0に相当するパルスカウント数F0 をあらかじめ設定しておく手段を有し、該パルスカウント数Fn との差Fd(=Fn −F0 )を算出し該差Fdが所定の値Fdmよりも大きくなった場合には該ΔFavとして所定の値ΔFGmaxを用いるための機能を該ゲイン自動設定手段に具備せしめた請求項6の呼吸用気体供給装置。
【請求項8】 該呼吸位相検知手段において所定の期間内に該所定位相が検知されない場合に、所定の値ΔFGminを該ΔFGとして自動的に設定するための機能を該ゲイン設定手段に具備せしめた請求項1の呼吸用気体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−92038
【公開日】平成5年(1993)4月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−280386
【出願日】平成3年(1991)10月2日
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)