説明

呼吸補助装置

【課題】快適な使用感を維持したまま、体内に正圧を印加する。
【解決手段】呼吸補助装置1は、鼻孔近傍に設置されて、鼻孔内に気体を噴出する噴出部10と、この噴出部10に対して気体を供給する高圧気体発生装置70と、噴出部10と高圧気体発生装置70を連結する供給配管90を備えるようにする。更に、噴出部10の噴出口の周囲には、噴出部10から噴出される気体の速流で生じる負圧により、外部気体を鼻孔内に誘引して鼻腔内の流量を増幅する増幅空間30を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸障害を補助するために気道内に正圧を印加する呼吸補助装置に関し、特に睡眠時無呼吸の患者が利用する際の好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の無呼吸は、睡眠中に気道の筋肉が弛緩して舌根部や軟口蓋が下がり、気道を閉塞することによって生じる。この種の呼吸障害の患者に対しては、気道に正圧を印加する呼吸補助装置が利用される(特許文献1参照)。この呼吸補助装置は、一般的に鼻シーパップ(nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure))装置と呼ばれており、少なくとも鼻全体を覆うようにして鼻マスクを患者に取り付け、この鼻マスクに対してチューブにより加圧された空気(高圧空気)を送り、この正圧を気道に印加する。この結果、気道における舌根の周囲の軟部組織が拡張されるので、吸気時の気道狭窄を抑制することができる。なお、鼻シーパップ装置から鼻マスクへ送出される空気の気圧は、症状や体格により異なるが4〜20cmHO程度とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2927958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鼻マスクは、離脱を防止するために、頭部に巻き付けられるバンドによって固定される。従って、利用者は不快感を持ちやすく、睡眠中においても無意識に鼻マスクを外してしまう。しかし、どのような形式の鼻マスクであれ、鼻全体を覆うことで気道に正圧を印加するために、鼻全体が密閉空間となることから、息苦しいような不快感を伴うという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、装着時の不快感を抑制しながらも、確実に呼吸を補助することが可能な呼吸補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0007】
即ち、本手段は、鼻孔近傍に設置されて、鼻孔内に気体を噴出する噴出部と、前記噴出部に対して前記気体を供給する高圧気体発生装置と、前記噴出部と前記高圧気体発生装置を連結する供給配管と、前記噴出部の噴出口の周囲に形成され、該噴出部から噴出される前記気体の速流で生じる負圧により、外部気体を鼻孔内に誘引して鼻腔内の流量を増幅する増幅空間と、を備えることを特徴とする呼吸補助装置である。
【0008】
上記呼吸補助装置において、更に、前記高圧気体発生装置は、20cmHO以上の圧力で前記気体を供給することを特徴とすることが好ましい。
【0009】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出部の前記噴出口の面積が、0.8cm以下となることを特徴とすることが好ましい。
【0010】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出口から噴出される前記気体の平均流速が、0.62m/秒以上であることを特徴とすることが好ましい。
【0011】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出口から噴出される前記気体の流量が、30l/min以上であることを特徴とすることが好ましい。
【0012】
上記呼吸補助装置において、更に、鼻腔内に配置され、前記噴出部から噴出される前記気体を衝突させる緩衝部材を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0013】
上記呼吸補助装置において、更に、前記緩衝部材は、鼻腔内に配置され、且つ鼻孔側及び気道側のそれぞれに開口を有する袋体であることを特徴とすることが好ましい。
【0014】
上記呼吸補助装置において、更に、前記緩衝部材は、前記噴出部から鼻腔内側に延びるように配置されるアーム部と、前記アーム部に保持されて前記気体が衝突する緩衝体と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0015】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出部の内部には、前記噴出口に向かって次第に径が細くなるベンチュリー空間が形成されており、前記気体が該ベンチュリー空間を経て前記噴出口から放出されることを特徴とすることが好ましい。
【0016】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出部における前記噴出口がリング形状となっており、該噴出口の環内に前記増幅空間が確保されることを特徴とすることが好ましい。
【0017】
上記呼吸補助装置において、更に、前記噴出部は、鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されていることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
上記呼吸補助装置において、更に、前記間隔調整機構は、前記ノズルの基端側に配置される台座部と、前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0019】
上記呼吸補助装置において、更に、前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0020】
上記呼吸補助装置において、更に、前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0021】
上記呼吸補助装置において、更に、前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための前記供給配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とすることが好ましい。
【0022】
上記呼吸補助装置において、更に、前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0023】
上記呼吸補助装置において、更に、前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される前記供給配管を兼ねることを特徴とすることが好ましい。
【0024】
上記呼吸補助装置において、更に、前記筐体は、前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、快適な使用感を確保したまま、効率的に体内に正圧を印加することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る呼吸補助装置の全体構成を示した概念図である。
【図2】同呼吸補助装置の噴出部を拡大して示す(A)斜視図、及び(B)断面図である。
【図3】同呼吸補助装置を鼻に装着した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る呼吸補助装置の噴出部を拡大して示す(A)斜視図、及び(B)断面図である。
【図5】同呼吸補助装置を鼻に装着した状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る呼吸補助装置の噴出部を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る呼吸補助装置の噴出部を拡大して示す斜視図である。
【図8】同呼吸補助装置を鼻に装着した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の呼吸補助装置を、人工呼吸目的で乳幼児に装着した状態を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る呼吸補助装置の噴出部の構成を示した図である。
【図11A】ノズルと筐体が分離した状態の同噴出部を拡大して示す斜視図である。
【図11B】ノズルと筐体が結合した状態の同噴出部を拡大して示す斜視図である。
【図12A】同噴出部の筐体の平面図である。
【図12B】図12AにおけるXIIB−XIIB矢視断面図である。
【図13A】図12AにおけるXIIIA−XIIIA矢視断面図である。
【図13B】図12AにおけるXIIIB−XIIIB矢視断面図である。
【図13C】図12AにおけるXIIIC−XIIIC矢視断面図である。
【図14A】同噴出部のノズル及び台座の正面図及び平面図である。
【図14B】同噴出部のノズル及び台座の断面図である。
【図15】同呼吸補助装置を装着した状態を模式的に示す側面図である。
【図16A】同呼吸補助装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図16B】同呼吸補助装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図16C】同呼吸補助装置の間隔調整機構の使用方法を示す図である。
【図17】同呼吸補助装置を大人の利用者に設置した場合を示す正面図である。
【図18】同呼吸補助装置の他の例を示す平面図である。
【図19】同呼吸補助装置の他の例を示す平面図である。
【図20】同呼吸補助装置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例について詳細に説明する。
【0028】
図1には、第1実施形態に係る呼吸補助装置1の全体構成が示されている。この呼吸補助装置1は、鼻孔近傍に設置されて鼻孔内に気体を噴出する噴出部10と、噴出部10に気体を供給する高圧気体発生装置70と、噴出部10に供給される気体の湿度を確保する加湿器80と、噴出部10と加湿器80と高圧気体発生装置70を連結する供給配管90と、噴出部10の噴出口の周囲に形成される増幅空間30と、鼻腔内に配置されて、噴出口からの噴流Sを受け止める緩衝部材50を備える。
【0029】
噴出部10は、噴出口を介して気体(空気)を高速で噴出する。従って噴流Sは、ベルヌーイの原理により低圧状態(静圧が低い状態)となる。結果、噴出口10Aの近傍の増幅空間30が負圧状態(気圧に対してマイナス状態)になる。増幅空間30は大気側と連通しているので、大気が増幅空間30に誘引されることで増幅流Gが形成される。この結果、鼻腔内に流れ込む気体の流量は、噴流Sと増幅流Gの総和となる。これらの気体は、鼻腔内で流速が低下するので、ベルヌーイの原理によって静圧が上昇する。この陽圧作用よって気道側に正圧が印加され、気道における舌根の周囲の軟部組織が拡張される。
【0030】
高圧気体発生装置70は、いわゆるコンプレッサであり、空気を20cmHO以上に圧縮する。好ましくは50cmHO以上、より望ましくは100cmHO以上に空気を圧縮する。この結果、噴出部10から噴出される気体の流量が30l/min以上となる。なお、ここでは空気を供給する場合を示したが、酸素を供給したり、酸素と窒素の混合物を供給したり、薬剤との混合気体を供給したりすることも可能である。
【0031】
加湿器80は、供給配管90を通過する気体を加湿する。具体的に、水タンクから疎水性中空糸や疎水性膜に水分を供給し、その表面に気体を通過させることで加湿する。供給配管90は、樹脂によるチューブであり、高圧気体発生装置70の高圧空気を噴出部10まで導く。
【0032】
図2には、噴出部10が拡大して示されている。噴出部10は、各鼻孔に対応するように2個用意されている。各噴出部10は、筐体12と、筐体12の先端側に形成される円形の噴出口10Aと、筐体12における噴出口10Aと反対側(基端側)に形成され、供給配管90が接続される供給口12Aと、筐体12内に形成されて、供給口12Aから供給される高圧空気を噴出口10Aまで案内するベンチュリー空間14を備える。ベンチュリー空間14は、その名称からも分かるように、供給口12A側から噴出口10A向かって、気体の通路が径方向に次第に細くなっており、ベンチュリー効果によって空気の流速を早める。流速が上昇するとベルヌーイの法則によって静圧が低下する。従って、噴出口10Aから噴出された瞬間の噴流Sは、大気圧と比較して負圧になる。噴出口10Aの周囲には、外気と連通した十分な増幅空間30が確保されている。噴出口10Aから噴出される高速の噴流Sの負圧によって、外気は増幅空間30に誘引され、増幅流Gとなって噴流Sと合流する。なお、ここでは外気(大気)を利用して増幅流Gを生成する場合を示したが、増幅空間30に大気以外の気体を雰囲気ガスとして供給しておき、この雰囲気ガスを増幅流Gを利用して鼻腔内に導入しても良い。
【0033】
筐体12の外形は、内部のベンチュリー空間14に倣って、基端から先端に向かって次第に外形が補足なる部分円錐形状となっている。従って、増幅流Gは、筐体12の外周面に滑らかに沿うようにして鼻腔内に案内される。
【0034】
噴出口10Aの開口面積は、0.8cm以下となっている。このように、鼻孔と比較して噴出口10Aの面積を極端に小さくすることで、噴出口10Aの周囲に十分な増幅空間30を確保する。また、噴出口10Aの開口面積を0.8cm以下にすると、噴流Sの流速を増大させることができ、空気増幅効果を得ることができる。なお、この開口面積は、更に小さい0.5cm以下に設定することが望ましい。
【0035】
図3に示されるように、緩衝部材50は、噴出口10Aからの噴流Sの先に配置され、この噴流Sを受け止める。既に述べたように、噴流Sの流速は、一般的な鼻シーパップと比較にならないほど大きい。この噴流Sが鼻腔の粘膜に直接衝突すると粘膜が損傷したり乾燥したりするので好ましくない。そこで本第1実施形態では、鼻腔内において緩衝部材50によって噴流Sを受け止める構造を採用して鼻腔の粘膜を保護する。
【0036】
この緩衝部材50は、袋体52によって構成されている。この袋体52は、噴出口10A側(手前側)の開口52Aと、気道側(奥側)の開口52Bを備えており、全体として筒形状となっている。この袋体52を、鼻腔内で拡張させて鼻腔の粘膜に密着させる。袋体52の素材は、紙、不織布、親水性プラスディックフィルムなど、透水性を有する材料で構成されており、好ましくは和紙を採用する。袋体52が粘膜に密着すると、粘膜側の水分が袋体52に浸透する。この水分によって鼻腔内の湿度が適切に保たれる。袋体52は緩衝部材50として機能するので、高速の噴流Sや増幅流Gが、鼻腔内の粘膜に直接衝突することを抑制できる。この袋体52によって、粘膜本来の保湿機能を維持したまま、粘膜の損傷を適切に保護できる。
【0037】
図3を参照して呼吸補助装置1の使用方法を説明する。まず、緩衝部材50を鼻腔内に挿入し、手の指を利用して鼻腔内で拡張させる。なお、噴出部10から噴出される高速の噴流Sを利用して風船のように緩衝部材50を拡張させても良い。その後、一対の噴出部10を、先端の噴出口10Aが鼻孔内に位置する状態で、鼻と口の間に固定する。高圧気体発生装置70と加湿器80を作動させて、所望の湿度を有する高圧空気を噴出部10に供給する。なお、この空気は次第に流速が高められるように制御する。高圧空気は、噴出部10内のベンチュリー空間14によって流速が増大することで、噴出口10Aから高速の噴流Sが放出される。噴出口10Aの面積は、0.8cm以下に設定されているので、噴出口10Aと鼻孔内壁の間に、十分な増幅空間30(隙間)が確保される。従って、噴流Sの負圧によって、外気が増幅空間30に誘引されて、増幅流Gが形成される。鼻腔内に流れ込む空気は、噴流Sと増幅流Gの総和となる。これらの気流は、緩衝部材50の内壁に衝突しながら流速が低下し、ベルヌーイの原理によって陽圧(正圧)が生じる。この陽圧が、4〜20cmHOとなるように、噴流Sの流速を制御する。鼻腔内の正圧は、気道に導入され、気道における舌根の周囲の軟部組織が拡張される。気道の狭窄が抑制され、睡眠時における無呼吸症状を抑制することが可能となる。
【0038】
以上、本第1実施形態の呼吸補助装置1によれば、噴出口10Aの周囲に増幅空間30が形成されるので、噴出部10から噴出される高速の噴流Sによって、外気が増幅空間30に誘引される。従って、増幅流Gと噴流Sの相乗効果によって、鼻腔内の圧力を十分に高めることが可能となる。
【0039】
特に、流速の高い噴流Sを鼻腔の内部で拡散させることで、鼻腔内で陽圧を生じさせる構造であることから、密閉状態の鼻マスクを利用して鼻孔から高圧の気体を直接導入する従来構造と比較して、少ない流量による効率的な正圧印加が実現される。
【0040】
また、鼻腔自体は、増幅空間30を介して外気(大気)と連通しているので、鼻全体が密閉されないで済む。この結果、患者の不快感も低減される。吸気時は、噴流Sに加えて大気から供給される増幅流Gを吸気できるので、自然な感覚が得られる。呼気時には、増幅空間30を介して外部に排出できるので、同様に自然な感覚が得られる。
【0041】
また、第1実施形態によれば、高圧気体発生装置70から、20cmHO以上の圧力で気体が供給されるので、噴流Sの流速が非常に大きくなる。具体的には、噴流Sの平均流速を、0.62m/秒以上にすることが可能となる。この結果、鼻腔内においてベルヌーイの原理により陽圧が生じ、気道を適切な正圧(2〜40cmHO)に維持できる。特に、噴出部10の内部にベンチュリー空間14を形成して、気体の流速を効率的に増加させているので、エネルギー損失を低減することができる。
【0042】
また更に、この第1実施形態によれば、鼻腔内で効率的に陽圧を生じさせるので、噴流Sの流量を抑制することが可能となる。具体的には、噴流Sの流量を80l/min以下とすることができ、鼻腔への刺激を低減できる。特にこの呼吸補助装置1によれば、噴出口10Aの面積が0.8cm以下となっているので、噴流Sの平均流速を高めることと、周囲に増幅空間30を確保すること、そして鼻腔内に十分な陽圧を生じさせることを、極めて合理的に両立させることができる。また、噴出部10の外形を、鼻孔の内径よりも小さくすることができるので、鼻孔内に噴出部10の一部を挿入しても、鼻孔が拡張されないで済む。従って、装着時の不快感を大幅に低減できる。
【0043】
更に本第1実施形態では、鼻腔内に緩衝部材50が配置されるので、噴流Sが鼻腔内の粘膜に直接接触しないで済む。この結果、粘膜の損傷を抑制することができ、繰り返して利用しても快適な使用感を得ることができる。また本緩衝部材50は、袋形状となる透湿性のシート材料を採用しているので、これを粘膜に密着させておけば、粘膜の水分を吸収することができる。従って、水分を含んだ緩衝部材50に噴流Sが接触することで加湿されるので、気道の乾燥を防ぐことができる。なお、この緩衝部材50を和紙や不織布等で構成すれば、使用毎に、低コストで交換できるので衛生的である。
【0044】
次に、第2実施形態に係る呼吸補助装置101について図4及び図5を参照して説明する。なお、噴出部110を除いた他の構成については、第1実施形態で示した呼吸補助装置1と同一又は類似するため、説明において符号の下二桁を互いに一致させることで、図示及び個々の詳細説明を省略する。また、噴出部110についても、第1実施形態の噴出部10と異なる点を中心に詳細に説明する。
【0045】
第2実施形態に係る噴出部110の筐体112は、円筒形状の外側筒122と内側筒124が、同軸状態で配置されている。外側筒122と内側筒124の隙間には、環状(円筒形状)のスリット120が形成されており、このスリット120に対して供給口112Aから気体が導入される。導入された気体は、スリット120の先端に位置するリング状の噴出口110Aから、鼻腔側に向かって噴出される。噴出口110Aの開口面積は、0.8cm以下となっている。このように、鼻孔と比較して噴出口110Aの面積を極端に小さくすることで、噴出口110Aの周囲に十分な増幅空間を確保する。
【0046】
特に本筐体112は、内側筒124の内壁側が貫通形状となっており、この内壁によって内側増幅空間130Aが形成される。また、外側筒122の外壁に沿って環状の外側増幅空間130Bも形成される。噴出口110Aから噴流Sが環状に噴出されると、内側・外側増幅空間130A、130Bの双方において外気が誘引される。結果、それぞれに増幅流G1、G2が形成される。この増幅流G1、G2と噴流Sが重なって、鼻腔内に効果的に陽圧を生じさせる。
【0047】
本第2実施形態によれば、噴出部110が環状ノズル構造となっているので、噴流Sが環状に分散され、鼻腔の粘膜の衝撃が緩和される。また。環状の噴流Sの内側と外側の双方に、増幅流G1、G2を生じさせることができるので、効率的な増幅が可能となっている。
【0048】
次に、第3実施形態に係る呼吸補助装置201について図6を参照して説明する。なお、噴出部210を除いた他の構成については、第2実施形態で示した呼吸補助装置101と同一又は類似するため、説明において符号の下二桁を互いに一致させることで、図示及び個々の詳細説明を省略する。また、噴出部210についても、第2実施形態の噴出部110と異なる点を中心に詳細に説明する。
【0049】
第3実施形態に係る噴出部210の筐体212は、円筒形状の外側筒222と、円筒形状の内側筒224が、段部225の結合によって同軸状態で互いに嵌り合っている。外側筒222と内側筒224の間には、軸方向に間隔が広がる環状のスリット220が形成される。即ちこのスリット220は、噴出部210の半径方向に延在する。スリット220の内周側に形成される噴出口210Aは、半径方向内側に向かってリング形状に開口する。
【0050】
より詳細に、外側筒222の内周壁222Aと、内側筒224の内周壁224Aは、互いに、ほぼ連続する周面となっており、更に、鼻腔側に向かって半径方向外側に広がる傾斜面となっている。噴出口210Aは、両内周壁222A、224Aの隙間によって形成される。従って、この噴出口210Aも鼻腔側に傾斜している。スリット220内に導入された気体は、噴出口210Aから、内周壁224Aに沿って流れる。既に述べたように、噴出口210A近傍の内周壁224Aは、鼻腔側に向かって次第に広がるデフューザ領域となる。この結果、噴流Sが乱れないで滑らかに拡散するので、効率的に陽圧を生じさせることができる。
【0051】
特に本実施形態では、内側筒224の内周壁224Aにって形成されるデフューザ領域が、そのまま内側増幅空間230Aの外形となる。この内側増幅空間230Aでは、内周壁224Aに沿って流れる噴流Sにより外気が強く誘引されて、増幅流G1が形成される。なお、外側筒222の外周側も、外側増幅空間230Bが形成されており、増幅流G2が形成される。
【0052】
次に、第4実施形態に係る呼吸補助装置301について図7及び図8を参照して説明する。なお、噴出部310を除いた他の構成については、第1実施形態で示した呼吸補助装置1と同一又は類似するため、説明において符号の下二桁を互いに一致させることで、図示及び個々の詳細説明を省略する。また、噴出部310についても、第1実施形態の噴出部10と異なる点を中心に詳細に説明する。
【0053】
噴出部310の筐体312には、第1実施形態と同様に、円形の噴出口310Aが形成される。筐体312内には、高圧空気を噴出口310Aまで案内するベンチュリー空間が形成される(図示省略)。噴出口310Aの周囲には、外気と連通する十分に広い増幅空間330が確保される。噴出口310Aから噴出される噴流Sの負圧によって、外気は増幅空間330に誘引され、増幅流Gとなって噴流Sと合流する。
【0054】
筐体312の外形は、供給口が形成される基端側から、噴出口310Aが形成される先端側に向かって次第に外形が小さくなる部分円錐形状となっている。従って、増幅流Gは、筐体312の周面に沿うようにして鼻腔内に案内される。
【0055】
緩衝部材350は、2本のアーム部356と、このアーム部材356によって保持される緩衝体358を備えている。アーム部356は噴出方向Sに延びる棒状部材であり、鼻腔の手前側(基端側)が噴出部310に結合され、鼻腔の奥側(先端側)が緩衝体358に結合される。従って、緩衝体358は、この一対のアーム部材356の先端に保持されるようにして、噴出口310Aに対向して配置される。更に緩衝体358は、噴出口310A側に向かって凸となる緩衝面358Aが形成されている。この緩衝面358Aもいわゆるデフューザ領域と考えることができる。特に第4本実施形態では、この緩衝面358Aは円錐形状となっている。緩衝体558は、噴出口310Aの噴流Sが衝突する位置に配置されているので、この噴流Sが緩衝面358Aに沿って滑らかに拡散する。噴流Sは、鼻腔の粘膜に直接衝突すると粘膜が損傷しやすい。従って、緩衝部材350における緩衝体358によって、噴流Sを拡散させる構造にすることで、鼻腔の粘膜に対して局所的に噴流Sが衝突することを回避する。
【0056】
なお、これらの第1〜第4実施形態では、睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、気道に正圧を印加して気道狭窄を抑制する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、自発呼吸能力が低下している患者に対して、肺に正圧を印加し、酸素を多く含む気体を鼻腔から強制的に供給するような呼吸補助態様で利用することができる。例えば、図9には、乳幼児に対してこの呼吸補助装置を装着して人工呼吸を行う状態が示している。本発明の呼吸補助装置によれば、鼻全体を覆ったり、鼻孔を拡張したりしなくても良いので、装着時の不快感が低減し、快適に利用することが可能になる。
【0057】
次に、第5実施形態に係る呼吸補助装置401について、図10〜図20を参照して説明する。なお、この呼吸補助装置401は、噴出部801の形状及び構造に特徴がある。従って、噴出部801を除いた他の構成については、第1実施形態等で示した呼吸補助装置1と同一又は類似するため、図示及び個々の詳細説明を省略する。
【0058】
図10に示されるように、この噴出部801は、鼻腔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズル820と、この一対のノズル820を保持する筐体850を備える。筐体850の内部には供給経路(詳細は後述)が形成されており、外部から供給される気体を、この一対のノズル820の基端まで案内するようになっている。なお、ノズル820は弾性を有する比較的柔らかい樹脂素材で構成されており、筐体850は、いわゆるプラスチック素材によって構成されている。
【0059】
図11から図14に示されるように、ノズル820と筐体850の間には、一対のノズル820の間隔を可変に切り換える間隔調整機構830が配置されている。この間隔調整機構830は、ノズル820の基端側に配置されて、ノズル820と一体的に形成される台座部832と、筐体850側に形成されて、台座832を複数の位置に固定させる台座収容部834を備えて構成される。
【0060】
台座832は、図14に示されるように、ノズル820の噴出方向と略平行する揺動軸(回転軸)Yを中心として、複数の角度で台座収容部834に固定される。ノズル820は、この台座832に対して、揺動軸Yから偏心した位置が中心となるように設けられている。従って、台座832が台座収容部834内で回転すると、ノズル820の中心が偏心運動をする。結果、一対のノズル820間隔を調整できる。
【0061】
具体的に、この台座832は、円形かつ柱状となる回転体となっている。また台座収容部834は、円形かつ筒状の凹部となっている。従って、台座832を台座収容部834に挿入することで、互いの摩擦力により両者を位置決めできる。また、凹部内でこの回転体を自在に回転させることができる。既に述べたように、ノズル820は回転体の中心(揺動軸Y)から偏心した位置に設けられているので、この回転体の回転角を変化させることで、一対のノズル820の間隔を自在に調整できる。
【0062】
図13Bに示されるように、台座832の外周面には、環状の溝832Aが形成されている。台座収容部834の内周面には、環状の突起834Aが形成されている。従って、溝832Aと突起834Aを係合させることで、両者の回転軸方向の移動が規制される。
【0063】
更に、台座832の上面には、位置決め用の目盛り832Bが形成されている。同様に、台座収容部834の周囲(筐体850の外周面)にも、位置決め用の目盛り834Bが形成されている。両者の目盛り832B、834Bの相対関係から、一対のノズル820の間隔を目視にて調整可能となっている。
【0064】
図14A、図14Bに示されるように、ノズル820は、円柱状の台座832の上端面に一体的に形成されてる。ノズル820は、大凡、円筒形状になっており、この内部を気体が通過する。ノズル820の途中には、屈曲部820Aが形成されている。この屈曲部820Aは、ノズル820の直径方向の外側に向かって、軸方向断面が円弧形状となるように拡張しており、他の部位よりも軸方向の剛性が低くなっている。ノズル820を鼻腔内に挿入する際に、このノズル820の上端が鼻腔内と接触すると、ノズル820に軸方向の外力が作用する。屈曲部820Aは、この外力によって軸方向に積極的に収縮するようになっている。結果、ノズル820を鼻腔に挿入する際に、ノズル820の突端が鼻腔に干渉しても、鼻腔を傷つけないで済む。台座832には、ノズル820の内周面と連続するようにして流路832Cが形成されている。ノズル820には、この流路832Cを介して気体が供給される。
【0065】
筐体850は、平面から視た場合に、鼻と上唇の間において、上唇に沿って横方向に配置される鼻下部852と、この鼻下部852の中央近傍から、鼻頭方向(唇から離れる方向)に突出するように配置される突出部854を備えて構成される。突出部854の上面には、筐体850内に気体を送り込むための供給口854Aが形成される。鼻下部852の上面には、既に述べた円筒状の凹部となる一対の台座収容部834が形成されている。鼻下部852の上面における一対の台座収容部834の両外側には、余分な気体を排気するための一対の排気口852Aが形成される。詳細は後述するが、この排気口852Aは、自発呼吸における呼気時に、供給口854Aから筐体850内に供給される気体を積極的に放出して、呼気動作の邪魔をしないようになっている。
【0066】
一対の排気口852Aの近傍には、それぞれ、抵抗用開口852Bが形成されている。この抵抗用開口852Bは、自発呼吸における吸気時に、供給口854Aから供給される気体の一部を逃がす(排気する)ことで、ノズル820に対して適切な正圧を印加するようになっている。即ちこの抵抗用開口852Bは、いわゆるリリーフ用の開口として機能している。なお、排気口852A及び抵抗用開口852Bは、供給口854Aから供給される気体に対して、外部の空気を取り込んで適切に混合するエア吸入口としても機能する。
【0067】
図12B及び図13Bに示されるように、筐体850の内部には、供給口854Aから台座収容部834まで気体を案内する供給経路860が形成される。即ち、供給経路860の一端は供給口854Aに接続され、他端は台座収容部834の下端に接続される。なお、供給経路860における台座収容部834の下側は、拡張空間860Aとなっており、この拡張空間860Aを介してノズル820に正圧を印加する。また、供給経路860の途中には、絞り部860Bが形成されており、気体の流れを途中で絞り込むことで、気体を加速させて下流側に放出するようにしている。更に図12B及び図13Aに示されるように、拡張空間860Aには、抵抗用開口852Bに接続される抵抗用排気路860Cが形成されている。この抵抗用排気路860C及び抵抗用開口852Bから、余分な気体が排気される。抵抗用排気路860Cは、敢えて内径を細くすることで気体が流れにくくなっており、拡張空間860Aに適切な正圧が印加されるようにしている。
【0068】
供給経路860における絞り部860Bの出口近傍には、この供給経路860から分岐するようにして排気経路870が形成される。この排気経路870の下流側は、図13Cに示されるように、排気口852Aに接続されている。供給経路860と排気経路870の分岐点には、板状の切換ブレード880が配置さる。この切換ブレード880の上面側は供給経路860となり、下面側が排気経路870となる。この切換ブレード880の上流側の端縁880Aは、絞り部860Bの出口側に対して一定の間隔を空けて対向している。更にこの端縁880Aは、絞り部860Bの出口に対して、排気経路870側に多少偏って配置されている。従って、図12Bに示されるように、供給口854Aから供給される気体は、通常、絞り部860Bを通過して切換ブレード880の上面側を通過して拡張空間860A側に流れる。一方、この切換ブレード880よりも下流側には、分岐後の供給経路860と排気経路870を短絡する短絡路890が形成されてる。図11及び図12Aに示されるように、この短絡路890はいわゆるスリット形状となっており、台座収容部834の真下に形成される。使用者の呼気動作時は、呼気が、ノズル820を介して筐体850内の拡張空間860A側に逆流する。この呼気は更にノズル820の真下にある短絡路890から排気経路870側に放出されて、排気口852Aから排出される。この呼気の排気流によって、排気経路870の上流側、即ち切換ブレード880近傍に負圧が作用し、これによって、絞り部860Bから放出される気体が、排気経路870側に誘引される。結果、呼気動作中は、気体が呼気と共に排気口852A側から排出される。この作用によって、呼気動作中は、拡張空間860Aが減圧するので、呼気動作を円滑に行うことができる。利用者が吸気動作を行うと、供給経路860によって拡張空間860Aに気体が供給され、再び、ノズル820側に素早く正圧が印加されることになる。
【0069】
図10、図11及び図17に示されるように、筐体850における一対のノズル820の両外側の近傍、即ち鼻下部852の両脇近傍には、一対の横側保持部材892の下端が固定されている。この横側保持部材892は紐又は管状の部材となっており、利用者の鼻の両脇を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。また、筐体850における一対のノズル820よりも鼻頭側、即ち突出部854側には、前側保持部材894の下端が固定されている。この前側保持部材894も紐又は管状の部材であり、鼻の前面側(鼻の頭)を通って、少なくともこめかみ近傍に到達する。特に本実施形態では、突出部854に形成される供給口854A、ノズル820の噴出方向と略同じ方向(上方向)に開口しているので、この供給口854Aに接続される供給配管そのものが、前側保持部材894を兼ねることができる。この供給配管894は、利用者の鼻頭及びこめかみを経て、前額側に延びている。この供給配管894は、いわゆる高圧気体発生装置に接続される。
【0070】
更にこの噴出部801は、一対の横側保持部材892、及び前側保持部材894を、鼻よりも上方においてまとめて保持する位置決め部材896を備える。なお特に図示しないが、この位置決め部材896は、バンド等によって前額に固定されることが好ましい。図15のように、筐体850は、各部材892、894の下端によって、少なくとも3箇所が保持される。従って、位置決め部材896から筐体850までにおける、横側保持部材892及び前側保持部材894の長さを調整すれば、筐体850の設置角度を前後左右に自在に調整できる。特に、筐体850を上唇近傍に押しつけないで済むことから、不快感を抑制することができる。
【0071】
図16には、この噴出部801の使用方法が示されている。人間の鼻の大きさは、個人によって異なる。例えば、図16Aには、中型で鼻の低いタイプの利用者に、この噴出部801を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構830の台座832を回転させて、一対のノズル820の間隔を中間とし、かつノズル820を顔に近づけるように位置決めすれば良い。図16Bには、大型で鼻の高いタイプの利用者に、この噴出部801を設置する場合が示されている。この場合、台座832を回転させて、一対のノズル820の間隔を大きめにし、かつノズル820を顔から遠ざけるように位置決めすればよい。図16Cには、小型で鼻の低いタイプの利用者に、この噴出部801を設置する場合が示されている。この場合、間隔調整機構830の台座832を回転させて、一対のノズル820の間隔を小さめにし、かつノズル820を顔に近づけるように位置決めすれば良い。このように、噴出部801によれば、台座832を回転させるだけで、ノズル820の間隔や顔との距離を自在に変更することができる。
【0072】
このように、第5実施形態によれば、間隔調整機構830によって、鼻腔の位置とノズル820の位置を、個々に一致させることができるので、鼻腔とノズル820が干渉して鼻腔に過渡な外力を作用させないで済む。この結果、常に快適な使用感を得ることが出来る。特に噴出部801によれば、ノズル820の間隔と、前後方向の距離を同時に調整できるので、様々な形状の鼻に柔軟に対応することができる。また、ノズル820の位置決めは、台座832を回転させるだけで済むので、誰でも容易に間隔を調整できる。
【0073】
更に噴出部801によれば、筐体850におけるノズル820の基端の真下に、短絡路890が形成されているので、呼気動作時は、この呼気を活用して気体を排気経路870側に流すことができる。この結果、利用者の呼気動作の負担を軽減させることが可能となっている。
【0074】
また筐体850が、横側保持部材892及び前側保持部材894の下端を利用して3点以上の場所で保持されているので、筐体850を皮膚に押しつけることなく、筐体850の姿勢を自在に調整することができる。結果、様々な鼻の形状に対して、筐体850の角度を自在に変更できるので、より一層、快適な使用感を得ることが出来る。
【0075】
なお、本実施形態では、図10の通り、幼児に対して設置する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図17に示されるように、幼児以外の子供や大人に対して噴出部801を装着しても良い。また、位置決め部材896の場所は、前額に限られず、鼻の峰部やこめかみ等にテープ等で固定しても良い。眼鏡やゴーグルなどを利用することも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、台座832が円形となる場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図18の他の例に示されるように、正多角形(ここでは六角形)の柱状の台座832を、同じ形状の台座収容部834に収容しても良い。このようにすると、例えば60度の間隔で台座832を位置決めできる。また例えば、図19の他の例に示されるように、筐体850に帯状の凹部空間となる台座収容部834を形成しておき、この台座収容部834内に対して、ノズル820を有する台座832を、スライド自在に配置することもできる。この場合、位置決めを容易にするために、台座収容部834には、スライド方向に一定の間隔で係合突起又は係合凹部を形成しておき、台座834と係合させることが好ましい。なお、この場合、台座収容部834における台座834が存在しない場所に隙間が形成される可能性がある。この隙間は、台座834の上面にカバーを設けたり、隙間に別途スペーサーを挿入したりして埋めれば良い。勿論、ノズル820に正圧が印加させる限り、この隙間を残存させても良い。
【0077】
更に本実施形態では、供給口854Aに接続される供給配管が、筐体850を位置決めする前側保持部材894を兼ねる場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば図20に示されるように、供給配管898は顔の横方向から接続されるようにし、前側保持部材894は専用の紐部材を設けることも可能である。
【0078】
更にまた、本第5実施形態では、一対のノズル820に設けられる台座832の双方を回転させて、一対のノズル820の間隔を調整する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、一方のノズル820に限って、その位置を可変にすることで、結果として一対のノズル820の間隔を調整することも可能である。
【0079】
尚、本発明の供給装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0080】
尚、本発明の呼吸補助装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の呼吸補助装置は、気道から肺等にかけて正圧を印加するような、様々な呼吸補助分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1、101、201、301、401 呼吸補助装置
10、110、210、310、801 噴出部
50、150,350 緩衝部材
70 高圧気体発生装置
80 加湿器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻孔近傍に設置されて、鼻孔内に気体を噴出する噴出部と、
前記噴出部に対して前記気体を供給する高圧気体発生装置と、
前記噴出部と前記高圧気体発生装置を連結する供給配管と、
前記噴出部の噴出口の周囲に形成され、該噴出部から噴出される前記気体の速流で生じる負圧により、外部気体を鼻孔内に誘引して鼻腔内の流量を増幅する増幅空間と、
を備えることを特徴とする呼吸補助装置。
【請求項2】
前記高圧気体発生装置は、20cmHO以上の圧力で前記気体を供給することを特徴とする請求項1に記載の呼吸補助装置。
【請求項3】
前記噴出部の前記噴出口の面積が、0.8cm以下となることを特徴とする請求項1又は2に記載の呼吸補助装置。
【請求項4】
前記噴出口から噴出される前記気体の平均流速が、0.62m/秒以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項5】
前記噴出口から噴出される前記気体の流量が、30l/min以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項6】
鼻腔内に配置され、前記噴出部から噴出される前記気体を衝突させる緩衝部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項7】
前記緩衝部材は、鼻腔内に配置され、且つ鼻孔側及び気道側のそれぞれに開口を有する袋体であることを特徴とする請求項6に記載の呼吸補助装置。
【請求項8】
前記緩衝部材は、前記噴出部から鼻腔内側に延びるように配置されるアーム部と、前記アーム部に保持されて前記気体が衝突する緩衝体と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の呼吸補助装置。
【請求項9】
前記噴出部の内部には、前記噴出口に向かって次第に径が細くなるベンチュリー空間が形成されており、前記気体が該ベンチュリー空間を経て前記噴出口から放出されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項10】
前記噴出部における前記噴出口がリング形状となっており、該噴出口の環内に前記増幅空間が確保されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項11】
前記噴出部は、
鼻孔近傍にそれぞれ設置されて、鼻孔内に気体を噴出する一対のノズルと、
前記一対のノズルを保持すると共に、内部に形成される供給流路によって、供給口から供給される前記気体を前記一対のノズルの基端まで案内する筐体と、を備え、
前記ノズルと前記筐体の間には、前記一対のノズルの間隔を切り換える間隔調整機構が配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項12】
前記間隔調整機構は、
前記ノズルの基端側に配置される台座部と、
前記筐体に形成されて、前記台座を複数の位置状態で収容する台座収容部と、
を備えることを特徴とする請求項11に記載の呼吸補助装置。
【請求項13】
前記台座は、前記ノズルの噴出方向と略平行する揺動軸を中心として、複数の角度状態で前記台座収容部に収容され、
前記ノズルは、前記台座に対して、前記揺動軸から偏心した位置に設けられることを特徴とする請求項11に記載の呼吸補助装置。
【請求項14】
前記台座は、円形状又は正多角形状であって、板状又は柱状となる回転体を備えて構成され、
前記台座収容部は、前記台座の前記回転体を前記複数の角度状態で固定し、
前記ノズルは、前記回転体の中心から偏心した位置に設けられることを特徴とする請求項13に記載の呼吸補助装置。
【請求項15】
前記供給口は、前記ノズルの噴出方向と略同じ方向に開口しており、
前記筐体を鼻下に設置した際に、該筐体に対して前記気体を供給するための前記供給配管が、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項16】
前記筐体における前記一対のノズルの両外側の近傍に下端が固定され、前記鼻の両脇近傍を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の一対の横側保持部材と、
前記筐体における前記一対のノズルよりも鼻頭側に下端が固定され、前記鼻の前面側を通って、少なくともこめかみ近傍まで上端が到達する紐又は管状の前側保持部材と、
前記横側保持部材及び前記前側保持部材を、前記鼻頭よりも上方においてまとめて保持することで、前記筐体の設置角度を調整する位置決め部材と、を備えることを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項17】
前記前側保持部材は、前額及び鼻の前面を通過して前記供給口に接続される前記供給配管を兼ねることを特徴とする請求項16に記載の呼吸補助装置。
【請求項18】
前記筐体は、
前記供給流路から分岐形成され、前記気体を排気口まで案内して外部に放出する排気経路と、
分岐後の前記供給経路と前記排気経路を短絡し、前記ノズル側から前記供給経路に呼気が印加された際に、該呼気を前記排気経路側に案内することで、前記供給口から供給される前記気体を前記排出経路側に誘引する短絡路と、
を備えることを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載の呼吸補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−115375(P2012−115375A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266298(P2010−266298)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000138060)株式会社メトラン (23)