説明

呼吸補助装置

【課題】患者に掛かる負担が増加することを防止する。
【解決手段】呼吸補助装置10は、呼気となる気体を送り出す供給源11に基端が接続されて、少なくとも吸気経路として機能する吸気管12と、吸気経路上に設けられて、供給源11から送り出される気体の流量を調整する調整弁13と、を備える。調整弁13は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子22を調整弁本体21とし、当該調整弁本体21が変位することで通気孔20aを開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、人工呼吸器などの呼吸補助装置が用いられている。一般的な呼吸補助装置は、酸素ボンベと、この酸素ボンベから送り出される酸素の流量を計測する流量計と、この流量計の測定結果に基づいて酸素の流量を調整する調整弁と、この調整弁で流量が調整された酸素の経路となる吸気管と、この吸気管の先端に取り付けられたマスクと、吸気管から分岐した呼気管と、この呼気管の先端に固定された呼気弁などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような呼吸補助装置には、自発呼吸のない患者(全身麻酔、心肺蘇生中、重篤な患者)に用いる調節換気(Controlled Ventilation)方式と、患者の自発呼吸に合わせて気道に陽圧(正圧)を作り出す補助換気(Assisted Ventilation)方式など、種々の方式が採用される。
【0004】
いずれの方式の呼吸補助装置においても、酸素ボンベから送り出される酸素は、吸気管を経由して吸気として肺に供給される。肺に供給された酸素は、その後、肺の弾力によって呼気として自然に吐き出される。吐き出された呼気は、呼気管を経由して呼気弁から外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−245204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような呼吸補助装置では、流量計の測定結果に基づいて調整弁を制御して酸素の流量を調整するので、調整弁自体の性能や調整弁の配置などによって調整弁の応答が遅い場合には、肺に供給される酸素が過剰になったり不足したりして、患者に掛かる負担が増加する。このような問題は、酸素ボンベから酸素が送り出される場合に限られず、その他の供給源からその他の気体を送り出す場合に共通して存在する。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、患者に掛かる負担が増加することを防止する呼吸補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0009】
(1)本発明は、呼気となる気体を送り出す供給源に基端が接続されて、少なくとも吸気経路として機能する吸気管と、前記吸気経路上に設けられて、前記供給源から送り出される気体の流量を調整する調整弁と、を備え、前記調整弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を調整弁本体とし、該調整弁本体が変位することで開閉することを特徴とする、呼吸補助装置である。
【0010】
(2)本発明はまた、前記調整弁を調整する調整弁を複数備えることを特徴とする、上記(1)に記載の呼吸補助装置である。
【0011】
(3)本発明はまた、前記調整弁は、前記吸気管の先端近傍に設けられていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の呼吸補助装置である。
【0012】
(4)本発明はまた、呼気経路と、前記呼気経路上に設けられた呼気弁を備え、前記呼気弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を呼気弁本体とし、該呼気弁本体が変位することで開閉することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【0013】
(5)本発明はまた、前記呼気弁は、前記呼気弁本体に対する電圧の印加時に閉鎖し、該電圧の印加の解除時に開放することを特徴とする、上記(4)に記載の呼吸補助装置である。
【0014】
(6)本発明はまた、前記呼気弁は、前記呼気経路の内側に向けて開放することを特徴とする、上記(4)または(5)に記載の呼吸補助装置である。
【0015】
(7)本発明はまた、前記呼気弁の周囲に、前記呼気経路の外側に突出するように設けられた部材であって、前記呼気弁を被覆するように物品が接触した場合に該物品と前記呼気弁との間に隙間を形成して、前記呼気弁の機能を保つ安全部材を備えることを特徴とする、上記(4)〜(6)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【0016】
(8)本発明はまた、前記呼気弁を複数備えることを特徴とする、上記(4)〜(7)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【0017】
(9)本発明はまた、前記吸気管の先端に取り付けられて、利用者の口または鼻に配置されることで、前記吸気経路および前記呼気経路として機能する装着具を備えることを特徴とする、上記(4)〜(8)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【0018】
(10)本発明はまた、前記呼気弁は、前記装着具に設けられていることを特徴とする、上記(9)に記載の呼吸補助装置である。
【0019】
(11)本発明はまた、前記供給源を備えることを特徴とする、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記(1)〜(11)に記載の呼吸補助装置によれば、患者に掛かる負担が増加することを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図2】マスクの構成を示す概略図であり、(A)は調整弁本体の閉鎖時を示し、(B)は調整弁本体の開放時を示す。
【図3】マスクの構成を示す概略図であり、(A)は呼気弁本体の開放時を示し、(B)は呼気弁本体の閉鎖時を示す。
【図4】安全部材を説明するマスクの部分拡大図である。
【図5】制御ユニットのハード構成を示すブロック図である。
【図6】制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【図7】呼吸補助装置の制御例を示す概略図であり、(A)は患者が呼気する場合を示し、(B)は患者が吸気する場合を示す。
【図8】本発明の第2実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図11】複数の調整弁を備える形態に変形した呼吸補助装置における調整弁の拡大図である。
【図12】複数の呼気弁を備える形態に変形した呼吸補助装置における呼気弁の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例について詳細に説明する。なお、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。
【0023】
図1には、本発明の第1実施形態に係る医療用の呼吸補助装置10の構成が例示されている。この呼吸補助装置10は、吸気となる気体を送り出す供給源11と、この供給源11に基端が接続される吸気管12と、この吸気管12の先端近傍に設けられて気体の流量を調整する調整弁13と、この調整弁13で調整された気体の流量を計測する流量計14と、吸気管12の先端に取り付けられたマスク15と、このマスク15内の気圧を計測する気圧計16と、マスク15に設けられた呼気弁17と、この呼気弁17の周囲に、呼気経路の外側に突出するように設けられた複数の安全部材18と、装置全体を統括的に制御する制御ユニット19と、を備えている。吸気管12およびマスク15は、吸気経路として機能する。また、マスク15は、口および鼻を覆う装着具であり、呼気経路としても機能する。
【0024】
供給源11は、例えば、空気や酸素などの気体を圧縮した状態で貯留したガスタンクである。呼気管12は、樹脂製の蛇腹チューブからなり、患者に装着されたマスク15と一体となって一つの空間を構成し、供給源11から送り出された気体の経路となる。この吸気管12内の気圧は、定常状態において、患者に装着されたマスク15内の気圧と一致する。
【0025】
調整弁13は、吸気経路上に設けられて、供給源11から送り出される気体を、その流量を調整しながらマスク15に放出し、その逆流を防止する逆止弁として機能する。この調整弁13は、通気孔20aを有してなるプレート20と、このプレート20の供給源11側に取り付けられて通気孔20aを開閉する調整弁本体21と、を備えている。調整弁本体21は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子(圧電素子)22を金属板23に積層したモノモルフ(ユニモルフ)構造であって、かつ、片持ち梁(カンチレバー)構造の弁である。このため、調整弁13は、調整弁本体21が反ったり延びたりするように変位することで開閉する。具体的に、調整弁本体21は、図2(A)に示されるように、ピエゾ素子22に電圧が印加されていない初期状態の時に延びた形状になり、プレート20に形成された通気孔20aを閉鎖する。そして、調整弁本体21は、図2(B)に示されるように、ピエゾ素子22に電圧が印加された時に供給源11側に向けて沿った形状になり、プレート20に形成された通気孔20aを開放する。なお、調整弁本体21は、例えばネジ(図示省略)などによって適宜固定されている。このような調整弁13は、流量計14および気圧計16のそれぞれのセンシングデータ(測定結果、センシング信号)に基づいて制御される。
【0026】
ここでは、調整弁本体21としてモノモルフ構造を紹介しているが、勿論、2枚のピエゾ素子を貼り合わせたバイモルフ構造を採用することもできる。
【0027】
また、本実施形態では、図示するように、調整弁13は、吸気管12およびマスク15の接続部分に設けられているが、その配置に限定されるものではなく、吸気管12の先端近傍に設けられていればよい。本発明において、吸気管12の先端近傍とは、マスク15を装着している人が手を伸ばして届く程度の範囲であることが好ましい。具体的に、吸気管12の先端近傍とは、吸気管12の先端から700mm以内の範囲であることが好ましい。ただし、調整弁13の位置は、吸気管12の先端から近ければ近いほど好ましく、吸気管12の先端から300mm以内の範囲であることがより好ましい。また、応答性の観点からすると、調整弁13の位置は、吸気管12の先端(吸気管12の先端から0mm)であることが最も好ましい。
【0028】
流量計14および気圧計16は、センシングデータを制御ユニット19に出力する。
【0029】
呼気弁17は、呼気を大気に放出する逆止弁として機能する。この呼気弁17は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子(圧電素子)25を金属板26に積層したモノモルフ(ユニモルフ)構造であって、かつ、片持ち梁(カンチレバー)構造の呼気弁本体24を備える。このため、呼気弁17は、呼気弁本体24が反ったり延びたりするように変位することで開閉する。具体的に、呼気弁本体24は、図3(A)に示されるように、ピエゾ素子25に電圧が印加されていない初期状態の時に呼気経路の内側に向けて沿った形状になり、マスク15に形成された通気孔15aを開放する。そして、呼気弁本体24は、図3(B)に示されるように、ピエゾ素子25に電圧が印加された時に延びた形状になり、マスク15に形成された通気孔15aを閉鎖する。なお、呼気弁17は、例えばネジ(図示省略)などによって適宜固定されている。
【0030】
ここでは、呼気弁17としてモノモルフ構造を紹介しているが、勿論、2枚のピエゾ素子を貼り合わせたバイモルフ構造を採用することもできる。なお、呼気弁17の片持ち長さは、30mm以上40mm以下程度であることが好ましい。また、呼気弁17が変位するストロークは、2mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0031】
図4に示されるように、安全部材18は、呼気弁17を被覆するように布などの何らかの物品XA1が接触した場合に当該物品XA1と呼気弁17との間に隙間GAPを形成して、呼気弁17の機能を保つ。
【0032】
図5に示されるように、制御ユニット19は、CPU28と、第1記憶媒体29と、第2記憶媒体30と、第3記憶媒体31と、入力装置32と、表示装置33と、入出力インタフェース34と、バス35と、を備えている。
【0033】
CPU28は、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて本制御ユニット19の各種機能を実現する。第1記憶媒体29は、いわゆるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)であり、CPU28の作業領域として使用される。第2記憶媒体30は、いわゆるROM(リード・オンリー・メモリ)であり、CPU28で実行される基本OSを記憶する。第3記憶媒体31は、磁気ディスクを内蔵したハードディスク装置、CDやDVDやBDを収容するディスク装置、および不揮発性の半導体フラッシュメモリ装置などで構成されており、CPU28で実行される各種プログラムなどが保存される。
【0034】
入力装置32は、入力キーやキーボード、マウスであり、各種情報を入力する。表示装置33は、ディスプレイであり、各種動作状態を表示する。入出力インタフェース34は、呼気弁17を動作させる電源および制御信号が入出力される。更に、この入出力インタフェース34は、外部のパーソナルコンピュータからプログラムなどのデータを取得する。バス35は、CPU28、第1記憶媒体29、第2記憶媒体30、第3記憶媒体31、入力装置32、表示装置33、入出力インタフェース34などを一体的に接続して通信を行う配線となる。
【0035】
図6には、この制御ユニット19に保存される制御プログラムがCPU28で実行されることで得られる機能構成が示されている。制御ユニット19は、機能構成として、センシング部37と、呼気弁制御部38と、調整弁制御部39と、を備えている。センシング部37は、気圧計16のセンシングデータを常に取得して呼気弁制御部38に伝達する。更に、このセンシング部37は、流量計14および気圧計16のセンシングデータを常に取得して調整弁制御部39に伝達する。呼気弁制御部38は、センシング部37のセンシングデータを参照して、呼気弁17への制御信号を、目標となる開放量に近づくように制御する。調整弁制御部39は、センシング部37のセンシングデータを参照して、調整弁13への制御信号を、目標となる流量値に近づくように制御する。
【0036】
次に、図7(A)および図7(B)を用いて、呼吸補助装置10の制御例について説明する。
【0037】
呼気する場合、マスク15内が昇圧する。マスク15内が昇圧すると、その昇圧した値が気圧計16によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット19に出力される。制御ユニット19は、センシングデータに基づいて、呼気弁17を制御する。すなわち、制御ユニット19は、図6(A)に示されるように、呼気弁本体24を動作させ、通気孔15aを開放する。呼気は、通気孔15aから放出される。
【0038】
呼気の放出により、マスク15内が減圧する。マスク15内が減圧すると、その減圧した値が気圧計16によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット19に出力される。制御ユニット19は、センシングデータに基づいて、呼気弁17を制御する。すなわち、制御ユニット19は、呼気弁本体24を動作させ、通気孔15aを閉鎖する。これにより、マスク15内に閉空間が形成され、吸気動作が可能になる。
【0039】
続いて、患者が吸気する場合、マスク15内が減圧する。マスク15内が減圧すると、その減圧した値が気圧計16によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット19に出力される。制御ユニット19は、センシングデータに基づいて、調整弁13を制御する。すなわち、制御ユニット19は、図6(B)に示されるように、調整弁本体21を動作させ、通気孔20aを開放する。これにより、供給源11から気体が吸気として送り出される。
【0040】
その間、供給源11から送り出される気体の流量が流量計14によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット19に出力される。制御ユニット19は、センシングデータに基づいて、調整弁13を制御する。すなわち、調整弁本体21を動作させ、通気孔20aの開放量を調節する。これにより、供給源11から送り出される気体の流量が調整される。
【0041】
その後、マスク15内が昇圧する。マスク15内が昇圧すると、その昇圧した値が気圧計16によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット19に出力される。制御ユニット19は、センシングデータに基づいて、調整弁13を制御する。すなわち、制御ユニット19は、調整弁本体21を動作させ、通気孔20aを閉鎖する。これにより、供給源11から吸気として気体が送り出されることが停止する。以後同様に、呼気動作と吸気動作とを繰り返す。
【0042】
以上説明したように、呼吸補助装置10によれば、調整弁13が、ピエゾ素子22を有する調整弁本体21を備えてなり、その開放量を微調整できるので、供給源11から送り出される吸気となる気体の流量が急激に変化することを防止できる。すなわち、マスク15内の気圧が急激に変化することを防止することとなり、患者に掛かる負担が増加することを防止できる。調整弁13が、ピエゾ素子22を有する調整弁本体21を備えてなるので、応答性が速く、患者への負担が小さい。具体的に、調整弁13として電磁弁を採用する場合には、8msec〜10msec程度の時間で開閉するが、本発明のように、ピエゾ素子22を有する調整弁本体21を備えてなる調整弁13の場合には、100μsec程度の短い時間で開閉できる。さらに、調整弁13が、ピエゾ素子22を有する調整弁本体21を備えてなるので、調整弁として電磁弁を採用する場合と比較して耐久期間が長く、壊れにくい。次いで、調整弁13が、ピエゾ素子22を有する調整弁本体21を備えてなるので、調整弁として電磁弁を採用する場合などと比較して、呼吸補助装置10を小型化したり軽量化したりできる。
【0043】
そして、調整弁13が吸気管12の先端近傍に設けられているので、吸気動作に対する調整弁13の応答性が速く、患者への負担が少ない。
【0044】
また、呼気弁17が、ピエゾ素子25を有する呼気弁本体24を備えてなり、その開放量を微調整できるので、当該呼気弁17から放出される呼気の流量が急激に変化することを防止できる。すなわち、マスク15内の気圧が急激に変化することを防止することとなり、患者に掛かる負担が増加することを防止できる。そして、吸気時にマスク15内が気密となるように呼気弁本体24が通気孔15aを閉じることができるので、当該通気孔15aから漏出する気体の量を軽減できる。また、具体的に、呼気弁として電磁弁を採用する場合には、8msec〜10msec程度の時間で開閉するが、本発明のように、ピエゾ素子25を有する呼気弁本体24を備えてなる呼気弁17の場合には、100μsec程度の短い時間で開閉できる。さらに、呼気弁17として電磁弁を採用する場合などと比較して、呼吸補助装置10を小型化したり軽量化したりできる。このため、本発明を適用することで、睡眠時無呼吸症候群などの患者が在宅人工呼吸器として使用できる。
【0045】
また、呼気弁17は、ピエゾ素子22に対する電圧の印加が解除されている時に開放するので、故障などによって呼気弁17が機能しなくなった場合であっても、当該呼気弁17が開放することとなり、呼気および吸気の気道を確保できる。
【0046】
さらに、呼気弁17が呼気経路の内側に向けて開放するので、開閉時の呼気弁17が何らかの物品と干渉することが防止できる。
【0047】
次いで、呼気弁17の周囲に安全部材18を備えているので、呼気弁17を被覆するように布などの何らかの物品XA1が接触した場合であっても、当該物品XA1と呼気弁17との間に隙間GAPを形成して、呼気弁17の機能を保てる。
【0048】
そして、呼気弁17がマスク15に設けられているので、呼気動作に対する呼気弁17の応答性が速く、患者への負担が少ない。
【0049】
図8には、第2実施形態に係る呼吸補助装置40の構成が例示されている。なお、第1実施形態と第2実施形態は、同一又は類似する部分が多いので、これらの部分の説明は適宜省略すると共に、ここでは第1実施形態と異なる点を中心に説明する。後述する第3実施形態以降についても、他の実施形態と共通する説明は適宜省略すると共に、他の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
呼吸補助装置40は、マスク15に通気孔15aを形成することに代えて、吸気管12に通気孔12aを形成している。そして、呼吸補助装置40は、呼気弁17および複数の安全部材18をマスク15に設けることに代えて、呼気弁41および複数の安全部材42を吸気管12に設けている。このため、吸気管12は、呼気経路としても機能する。呼気弁41は、呼気動作に対する応答性が遅くならない範囲で、できる限りマスク15に近い位置に設けられていることが好ましい。具体的に、呼気弁41は、吸気管12におけるマスク15からの長さが300mm以内の位置に設けられていることが好ましく、100mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。すなわち、呼気弁41は、口などの体内への入口からの呼気経路の道のりが310mm以内の位置に設けられていることが好ましく、110mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。また、調整弁13は、吸気管12およびマスク15の接続部分に設けることに代えて、呼気弁41よりも供給源11側に設けられている。
【0051】
図9には、第3実施形態に係る呼吸補助装置50の構成が例示されている。呼吸補助装置50は、呼気弁17および複数の安全部材18を、直接マスク15に設けることに代えて、呼気弁51および複数の安全部材52を、排気筒53を介してマスク15に設けている。すなわち、排気筒53は、その基端が通気孔15aを覆うようにマスク15に設けられている。そして、排気筒53は、その周囲に呼気弁51および複数の安全部材52を設けている。排気筒53の先端は、キャップ54によって塞がれている。排気筒53は、呼気動作に対する呼気弁51の応答性が遅くならない範囲で、できる限り短く設定されていることが好ましい。具体的に、排気筒53の長さは、500mm以内であることが好ましく、300mm以内であることがより好ましい。
【0052】
図10には、第4実施形態に係る呼吸補助装置60の構成が例示されている。呼吸補助装置60は、呼気弁17および複数の安全部材18を、直接マスク15に設けることに代えて、呼気弁61および複数の安全部材62を、排気筒63を介して吸気管12に設けている。すなわち、排気筒63は、その基端が通気孔12aを覆うように吸気管12に設けられている。そして、排気筒63は、その周囲に呼気弁61および複数の安全部材62を設けている。このため、吸気管12は、呼気経路としても機能する。排気筒63の先端は、キャップ64によって塞がれている。排気筒63は、呼気動作に対する呼気弁61の応答性が遅くならない範囲で、できる限り短く設定されていることが好ましい。具体的に、排気筒63の長さは、500mm以内であることが好ましく、300mm以内であることがより好ましい。また、排気筒63は、できる限りマスク15に近い位置に設けられていることが好ましい。具体的に、排気筒63は、吸気管12におけるマスク15からの長さが150mm以内の位置に設けられていることが好ましく、50mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。すなわち、排気筒63は、口などの体内への入口からの呼気経路の道のりが160mm以内の位置に設けられていることが好ましく、60mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。
【0053】
尚、本発明の呼吸補助装置は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した実施形態の構成要件を、可能な範囲で他の実施の形態に適用してもよい。
【0054】
すなわち、上記各実施形態において、各構成の位置、大きさ、形状、数量は適宜変更できる。例えば、調整弁本体21の数量や、呼気弁本体24の数量が挙げられる。すなわち、調整弁本体21を2個以上備えるようにしたり、呼気弁本体24を2個以上備えるようにしたりしてもよい。
【0055】
具体的に、第1実施形態を変形した場合を例に説明する。図11に示すように、調整弁13を構成するプレート20には、複数(例えば、8個)の通気孔20aが形成されている。複数の通気孔20aには、一つずつ調整弁本体21が設けられている。複数の調整弁本体21は、互いに独立して制御されて通気孔20aを開閉する。開放する通気孔20aの数を変更することで、供給源11から吸気として送り出される気体の流量を調節できる。このため、ピエゾ素子22への電圧の印加量を制御せずに、各ピエゾ素子22に対する当該電圧のオンオフを制御して、開放する調整弁本体21の数を変更するだけで、流量を段階的に調節できる。すなわち、簡単な制御で流量を調節できる。また、ピエゾ素子22への電圧の印加量を制御することで、更に滑らかに流量を調節できる。
【0056】
また、図12に示すように、マスク15には、複数(例えば、8個)の通気孔15aが形成されている。複数の通気孔15aには、一つずつ呼気弁本体24が設けられている。複数の呼気弁本体24は、互いに独立して制御されて通気孔15aを開閉する。開放する通気孔15aの数を変更することで、呼気の流量を調節できる。このため、ピエゾ素子25への電圧の印加量を制御せずに、各ピエゾ素子25に対する当該電圧のオンオフを制御して、開放する呼気弁本体24の数を変更するだけで、呼気の流量を段階的に調節できる。すなわち、簡単な制御で流量を調節できる。また、ピエゾ素子25への電圧の印加量を制御することで、更に滑らかに呼気の流量を調節できる。
【0057】
あるいは、上記各実施形態において、吸気経路および呼気経路として、口および鼻を覆うマスク15を備えているが、そのマスク15に代えて、鼻に取り付ける鼻ピースなどの装着具を備えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の呼吸補助装置は、様々な生物の呼吸補助目的で利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10,40,50,60 呼吸補助装置
11 供給源
12 吸気管
13 調整弁
15 マスク
17,41,51,61 呼気弁
18,42,52,62 安全部材
21 調整弁本体
22 ピエゾ素子
24 呼気弁本体
25 ピエゾ素子
XA1 物品
GAP 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気となる気体を送り出す供給源に基端が接続されて、少なくとも吸気経路として機能する吸気管と、
前記吸気経路上に設けられて、前記供給源から送り出される気体の流量を調整する調整弁と、を備え、
前記調整弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を調整弁本体とし、該調整弁本体が変位することで開閉することを特徴とする、
呼吸補助装置。
【請求項2】
前記調整弁を調整する調整弁を複数備えることを特徴とする、
請求項1に記載の呼吸補助装置。
【請求項3】
前記調整弁は、前記吸気管の先端近傍に設けられていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の呼吸補助装置。
【請求項4】
呼気経路と、
前記呼気経路上に設けられた呼気弁を備え、
前記呼気弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を呼気弁本体とし、該呼気弁本体が変位することで開閉することを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項5】
前記呼気弁は、前記呼気弁本体に対する電圧の印加時に閉鎖し、該電圧の印加の解除時に開放することを特徴とする、
請求項4に記載の呼吸補助装置。
【請求項6】
前記呼気弁は、前記呼気経路の内側に向けて開放することを特徴とする、
請求項4または5に記載の呼吸補助装置。
【請求項7】
前記呼気弁の周囲に、前記呼気経路の外側に突出するように設けられた部材であって、前記呼気弁を被覆するように物品が接触した場合に該物品と前記呼気弁との間に隙間を形成して、前記呼気弁の機能を保つ安全部材を備えることを特徴とする、
請求項4〜6のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項8】
前記呼気弁を複数備えることを特徴とする、
請求項4〜7のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項9】
前記吸気管の先端に取り付けられて、利用者の口または鼻に配置されることで、前記吸気経路および前記呼気経路として機能する装着具を備えることを特徴とする、
請求項4〜8のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【請求項10】
前記呼気弁は、前記装着具に設けられていることを特徴とする、
請求項9に記載の呼吸補助装置。
【請求項11】
前記供給源を備えることを特徴とする、
請求項1〜10のいずれかに記載の呼吸補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−90823(P2013−90823A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235013(P2011−235013)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000138060)株式会社メトラン (23)