説明

呼吸補助装置

【課題】患者に掛かる負担が増加することを防止する。
【解決手段】呼吸補助装置70は、利用者の口および鼻を覆うマスク13と、このマスク13に直接接続され、吸気となる気体を送り出す供給源11と、を備えている。この呼吸補助装置70は、供給源11としてマイクロポンプ100を備えている。また、呼吸補助装置70は、マスク13に形成された通気孔13aを覆うように設けられた呼気弁15を備えている。呼気弁15は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子22を有してなり、当該ピエゾ素子22がマスク13に対して離隔し又は近接して当接するように当該マスク13の内側で変位することで、当該ピエゾ素子22自体が通気孔13aを開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、人工呼吸器などの呼吸補助装置が用いられている。一般的な呼吸補助装置は、酸素ボンベなどの酸素の供給源と、この供給源に接続された吸気管と、この吸気管の先端に取り付けられたマスクと、吸気管から分岐した呼気管と、この呼気管の先端に固定された呼気弁などを備えている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
このような呼吸補助装置には、自発呼吸のない患者(全身麻酔、心肺蘇生中、重篤な患者)に用いる調節換気(Controlled Ventilation)方式と、患者の自発呼吸に合わせて気道に陽圧(正圧)を作り出す補助換気(Assisted Ventilation)方式など、種々の方式が採用される。
【0004】
いずれの方式の呼吸補助装置においても、酸素ボンベから送り出される酸素は、吸気管を経由して吸気として肺に供給される。肺に供給された酸素は、その後、肺の弾力によって呼気として自然に吐き出される。吐き出された呼気は、呼気管を経由して呼気弁から外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−131765号公報
【特許文献2】特開平02−131773号公報
【特許文献3】特開平02−131774号公報
【特許文献4】特開平05−245204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸素ボンベから送り出される酸素は、その3割程度が呼気弁から漏出して肺に供給されない。確かに、呼気弁としてダイヤフラムを採用することで、呼気弁から漏出する酸素の量を軽減できる。しかしながら、ダイヤフラムの構造上、呼気弁から放出される呼気の流量が急激に変化して、マスク内の気圧が急激に変化することとなり、患者に掛かる負担が増加する。このような問題は、酸素ボンベから酸素が送り出される場合に限られず、その他の供給源からその他の気体を送り出す場合に共通して存在する。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、患者に掛かる負担が増加することを防止すると共に、供給源から送り出される気体が漏出して肺に供給される気体の量が低減することを防止する呼吸補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0009】
(1)本発明は、利用者の口および鼻を覆うマスクと、前記マスクに直接接続され、吸気となる気体を送り出す供給源と、を備えることを特徴とする、呼吸補助装置である。
【0010】
(2)本発明はまた、前記供給源は、マイクロポンプであることを特徴とする、上記(1)に記載の呼吸補助装置である。
【0011】
(3)本発明はまた、前記マスクに形成された通気孔を覆うように設けられた呼気弁を備えることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の呼吸補助装置である。
【0012】
(4)本発明はまた、前記呼気弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を有してなり、該ピエゾ素子が前記マスクに対して離隔し又は近接して当接するように該マスクの内側で変位することで、該ピエゾ素子自体が前記通気孔を開閉することを特徴とする、上記(3)に記載の呼吸補助装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記(1)〜(4)に記載の呼吸補助装置によれば、患者に掛かる負担が増加することを防止できると共に、供給源から送り出される気体が漏出して肺に供給される気体の量が低減することを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図2】マスクの構成を示す概略図であり、(A)は呼気弁の開放時を示し、(B)は呼気弁の閉鎖時を示す。
【図3】安全部材を説明するマスクの部分拡大図である。
【図4】制御ユニットのハード構成を示すブロック図である。
【図5】制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【図6】呼吸補助装置の制御例を示す概略図であり、(A)は患者が呼気する場合を示し、(B)は患者が吸気する場合を示す。
【図7】本発明の第2実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図11】(A)はマイクロポンプの構成例を示す断面図であり、(B)は同マイクロポンプの圧力−流量線を示すグラフである。
【図12】本発明の第6実施形態に係る呼吸補助装置の構成を示す概略図である。
【図13】複数の呼気弁を備える形態に変形した呼吸補助装置における呼気弁の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例について詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明の第1実施形態に係る医療用の呼吸補助装置10の構成が例示されている。この呼吸補助装置10は、吸気となる気体を送り出す供給源11と、この供給源11に基端が接続される吸気管12と、この吸気管12の先端に取り付けられたマスク13と、このマスク13内の気圧を計測する気圧計14と、マスク13に設けられた呼気弁15と、この呼気弁15の周囲に、呼気経路の外側に突出するように設けられた複数の安全部材16と、装置全体を統括的に制御する制御ユニット17と、を備えている。吸気管12およびマスク13は、吸気経路として機能する。また、マスク13は、口および鼻を覆う装着具であり、呼気経路としても機能する。
【0017】
供給源11は、空気や酸素などの気体を圧縮した状態で貯留したガスタンク19と、このガスタンク19から送り出される気体の流量を調整する調整弁20と、この調整弁20で調整された気体の流量を計測する流量計21と、を備えている。調整弁20は、気圧計14および流量計21のそれぞれのセンシングデータ(測定結果、センシング信号)に基づいて制御される。この調整弁20は、特に種類が限定されることはないが、電動弁や、応答速度が速い電磁弁などを採用できる。流量計21は、センシングデータを制御ユニット17に出力する。
【0018】
吸気管12は、樹脂製の蛇腹チューブからなり、患者に装着されたマスク13と一体となって一つの空間を構成し、供給源11から送り出された気体の経路となる。この吸気管12内の気圧は、定常状態において、患者に装着されたマスク13内の気圧と一致する。気圧計14は、センシングデータを制御ユニット17に出力する。
【0019】
呼気弁15は、呼気を大気に放出し、その逆流を防止する逆止弁として機能する。この呼気弁15は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子(圧電素子)22を金属板23に積層したモノモルフ(ユニモルフ)構造であって、かつ、片持ち梁(カンチレバー)構造の弁である。このため、呼気弁15は、ピエゾ素子22が反ったり延びたりするように変位することで開閉する。具体的に、呼気弁15は、図2(A)に示されるように、ピエゾ素子22に電圧が印加されていない初期状態の時に呼気経路の内側に向けて反った形状になり、マスク13に形成された通気孔13aを開放する。そして、呼気弁15は、図2(B)に示されるように、ピエゾ素子22に電圧が印加された時に延びた形状になり、マスク13に形成された通気孔13aを閉鎖する。なお、呼気弁15は、例えばネジ(図示省略)などによって適宜固定されている。
【0020】
ここでは、呼気弁15としてモノモルフ構造を紹介しているが、勿論、2枚のピエゾ素子を貼り合わせたバイモルフ構造を採用することもできる。なお、呼気弁15の片持ち長さは、30mm以上40mm以下程度であることが好ましい。また、呼気弁15が変位するストロークは、2mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0021】
図3に示されるように、安全部材16は、呼気弁15を被覆するように布などの何らかの物品XA1が接触した場合に当該物品XA1と呼気弁15との間に隙間GAPを形成して、呼気弁15の機能を保つ。
【0022】
図4に示されるように、制御ユニット17は、CPU24と、第1記憶媒体25と、第2記憶媒体26と、第3記憶媒体27と、入力装置28と、表示装置29と、入出力インタフェース30と、バス31と、を備えている。
【0023】
CPU24は、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて本制御ユニット17の各種機能を実現する。第1記憶媒体25は、いわゆるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)であり、CPU24の作業領域として使用される。第2記憶媒体26は、いわゆるROM(リード・オンリー・メモリ)であり、CPU24で実行される基本OSを記憶する。第3記憶媒体27は、磁気ディスクを内蔵したハードディスク装置、CDやDVDやBDを収容するディスク装置、および不揮発性の半導体フラッシュメモリ装置などで構成されており、CPU24で実行される各種プログラムなどが保存される。
【0024】
入力装置28は、入力キーやキーボード、マウスであり、各種情報を入力する。表示装置29は、ディスプレイであり、各種動作状態を表示する。入出力インタフェース30は、呼気弁15を動作させる電源および制御信号が入出力される。更に、この入出力インタフェース30は、外部のパーソナルコンピュータからプログラムなどのデータを取得する。バス31は、CPU24、第1記憶媒体25、第2記憶媒体26、第3記憶媒体27、入力装置28、表示装置29、入出力インタフェース30などを一体的に接続して通信を行う配線となる。
【0025】
図5には、この制御ユニット17に保存される制御プログラムがCPU24で実行されることで得られる機能構成が示されている。制御ユニット17は、機能構成として、センシング部34と、呼気弁制御部35と、調整弁制御部36と、を備えている。センシング部34は、気圧計14のセンシングデータを常に取得して呼気弁制御部35に伝達する。更に、このセンシング部34は、気圧計14および流量計21のセンシングデータを常に取得して調整弁制御部36に伝達する。呼気弁制御部35は、センシング部34のセンシングデータを参照して、呼気弁15への制御信号を、目標となる開放量に近づくように制御する。調整弁制御部36は、センシング部34のセンシングデータを参照して、調整弁20への制御信号を、目標となる流量値に近づくように制御する。
【0026】
次に、図6(A)および図6(B)を用いて、呼吸補助装置10の制御例について説明する。
【0027】
呼気する場合、マスク13内が昇圧する。マスク13内が昇圧すると、その昇圧した値が気圧計14によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット17に出力される。制御ユニット17は、センシングデータに基づいて、呼気弁15を制御する。すなわち、制御ユニット17は、図6(A)に示されるように、呼気弁15を動作させ、通気孔13aを開放する。呼気は、通気孔13aから放出される。
【0028】
呼気の放出により、マスク13内が減圧する。マスク13内が減圧すると、その減圧した値が気圧計14によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット17に出力される。制御ユニット17は、センシングデータに基づいて、呼気弁15を制御する。すなわち、制御ユニット17は、呼気弁15を動作させ、通気孔13aを閉鎖する。これにより、マスク13内に閉空間が形成され、吸気動作が可能になる。
【0029】
続いて、患者が吸気する場合、マスク13内が減圧する。マスク13内が減圧すると、その減圧した値が気圧計14によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット17に出力される。制御ユニット17は、センシングデータに基づいて、供給源11を制御する。すなわち、制御ユニット17は、図6(B)に示されるように、調整弁20を開き、ガスタンク19から気体を吸気として送り出す。その後、マスク13内が昇圧する。マスク13内が昇圧すると、その昇圧した値が気圧計14によってセンシングされる。センシングデータは、制御ユニット17に出力される。制御ユニット17は、センシングデータに基づいて、供給源11を制御する。すなわち、制御ユニット17は、調整弁20を閉じ、ガスタンク19から吸気として気体が送り出されることを停止する。以後同様に、呼気動作と吸気動作とを繰り返す。
【0030】
以上説明したように、呼吸補助装置10によれば、呼気弁15がピエゾ素子22を有してなり、その開放量を微調整できるので、当該呼気弁15から放出される呼気の流量が急激に変化することを防止できる。すなわち、マスク13内の気圧が急激に変化することを防止することとなり、患者に掛かる負担が増加することを防止できる。そして、吸気時にマスク13内が気密となるように呼気弁15を閉じることができるので、当該呼気弁15から漏出する気体の量を軽減できる。また、呼気弁15がピエゾ素子22を有してなるので、応答性が速く、患者への負担が小さい。具体的に、呼気弁として電磁弁を採用する場合には、8msec〜10msec程度の時間で開閉するが、本発明のように、ピエゾ素子22を有してなる呼気弁15の場合には、100μsec程度の短い時間で開閉できる。さらに、呼気弁15がピエゾ素子22を有してなるので、呼気弁として電磁弁を採用する場合と比較して耐久期間が長く、壊れにくい。次いで、呼気弁15がピエゾ素子22を有してなるので、呼気弁として電磁弁を採用する場合などと比較して、呼吸補助装置10を小型化したり軽量化したりできる。このため、本発明を適用することで、睡眠時無呼吸症候群などの患者が在宅人工呼吸器として使用できる。
【0031】
また、呼気弁15は、ピエゾ素子22に対する電圧の印加が解除されている時に開放するので、故障などによって呼気弁15が機能しなくなった場合であっても、当該呼気弁15が開放することとなり、呼気および吸気の気道を確保できる。
【0032】
さらに、呼気弁15が呼気経路の内側に向けて開放するので、開閉時の呼気弁15が何らかの物品と干渉することが防止できる。
【0033】
次いで、呼気弁15の周囲に安全部材16を備えているので、呼気弁15を被覆するように布などの何らかの物品XA1が接触した場合であっても、当該物品XA1と呼気弁15との間に隙間GAPを形成して、呼気弁15の機能を保てる。
【0034】
そして、呼気弁15がマスク13に設けられているので、呼気動作に対する呼気弁15の応答性が速く、患者への負担が少ない。
【0035】
図7には、第2実施形態に係る呼吸補助装置40の構成が例示されている。なお、第1実施形態と第2実施形態は、同一又は類似する部分が多いので、これらの部分の説明は適宜省略すると共に、ここでは第1実施形態と異なる点を中心に説明する。後述する第3実施形態以降についても、他の実施形態と共通する説明は適宜省略すると共に、他の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0036】
呼吸補助装置40は、マスク13に通気孔13aを形成することに代えて、吸気管12に通気孔12aを形成している。そして、呼吸補助装置40は、呼気弁15および複数の安全部材16をマスク13に設けることに代えて、呼気弁41および複数の安全部材42を吸気管12に設けている。このため、吸気管12は、呼気経路としても機能する。呼気弁41は、呼気動作に対する応答性が遅くならない範囲で、できる限りマスク13に近い位置に設けられていることが好ましい。具体的に、呼気弁41は、吸気管12におけるマスク13からの長さが300mm以内の位置に設けられていることが好ましく、100mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。すなわち、呼気弁41は、口などの体内への入口からの呼気経路の道のりが310mm以内の位置に設けられていることが好ましく、110mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。
【0037】
図8には、第3実施形態に係る呼吸補助装置50の構成が例示されている。呼吸補助装置50は、呼気弁15および複数の安全部材16を、直接マスク13に設けることに代えて、呼気弁51および複数の安全部材52を、排気筒53を介してマスク13に設けている。すなわち、排気筒53は、その基端が通気孔13aを覆うようにマスク13に設けられている。そして、排気筒53は、その周囲に呼気弁51および複数の安全部材52を設けている。排気筒53の先端は、キャップ54によって塞がれている。排気筒53は、呼気動作に対する呼気弁51の応答性が遅くならない範囲で、できる限り短く設定されていることが好ましい。具体的に、排気筒53の長さは、500mm以内であることが好ましく、300mm以内であることがより好ましい。
【0038】
図9には、第4実施形態に係る呼吸補助装置60の構成が例示されている。呼吸補助装置60は、呼気弁15および複数の安全部材16を、直接マスク13に設けることに代えて、呼気弁61および複数の安全部材62を、排気筒63を介して吸気管12に設けている。すなわち、排気筒63は、その基端が通気孔12aを覆うように吸気管12に設けられている。そして、排気筒63は、その周囲に呼気弁61および複数の安全部材62を設けている。このため、吸気管12は、呼気経路としても機能する。排気筒63の先端は、キャップ64によって塞がれている。排気筒63は、呼気動作に対する呼気弁61の応答性が遅くならない範囲で、できる限り短く設定されていることが好ましい。具体的に、排気筒63の長さは、500mm以内であることが好ましく、300mm以内であることがより好ましい。また、排気筒63は、できる限りマスク13に近い位置に設けられていることが好ましい。具体的に、排気筒63は、吸気管12におけるマスク13からの長さが150mm以内の位置に設けられていることが好ましく、50mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。すなわち、排気筒63は、口などの体内への入口からの呼気経路の道のりが160mm以内の位置に設けられていることが好ましく、60mm以内の位置に設けられていることがより好ましい。
【0039】
図10には、第5実施形態に係る呼吸補助装置70の構成が例示されている。呼吸補助装置70は、供給源11としてマイクロポンプ100を備え、また、吸気経路としてマスク13のみを備えている。すなわち、マイクロポンプ100は、マスク13に直接接続されている。このマイクロポンプ100は、特許文献WO2008/069266で提案されているものであり、図11(A)に示されるように、一次ブロア室101と、この一次ブロア室101の外側に形成された二次ブロア室102と、を備えている。
【0040】
一次ブロア室101は、振動源となる圧電素子103と、この圧電素子103が固定されたダイヤフラム104と、このダイヤフラム104と共に空間を形成する振動枠105と、を備えている。振動枠105は、一次ブロア室101の内外で流体を移動させる開口106を有している。二次ブロア室102は、ダイヤフラム104側に吸入口107を有すると共に、開口106に対向するように吐出口108を有している。
【0041】
以上のマイクロポンプ100では、圧電素子103によってダイヤフラム104が共振すると、一次ブロア室101と二次ブロア室102との間で流体が移動し、これによる流体抵抗によって振動枠105が共振する。このダイヤフラム104と振動枠105との共振によって、吸入口107から流体が吸い込まれて、吐出口108から流体が放出される。
【0042】
このマイクロポンプ100は、気体を搬送するブロア用途に適しており、逆止弁を用いることなく搬送できる。マイクロポンプ100は、外径が20mm×20mm×2mm程度の箱形状であって極めて小さいものの、入力正弦波を15Vpp(Volt peak to peak)で26kHzとした場合で、最大約1L/分(静圧0Pa時)の空気を搬送でき、また最大約2kPa(流量0L/分)の静圧を得ることができる。
【0043】
一方、マイクロポンプ100は、圧電素子103によるダイヤフラム104の振動で流体を搬送するから、搬送可能な流体の体積に自ずと限界があり、この静圧/流量特性も図11(B)に示されるような直線を示す。すなわち、例えば約1kPaの静圧を得る場合、流量は0.5L/分となる。
【0044】
なお、入力正弦波のVppを10や20に変化させた場合、圧電素子103の振幅が変化するので、流量及び圧力を変化させることができる。すなわち、入力正弦波のVppを滑らかに変化させた場合には、流量及び圧力を滑らかに変化させることができる。あるいは、入力正弦波の周波数を変化させた場合、流量及び圧力を変化させることができる。すなわち、入力正弦波の周波数を滑らかに変化させた場合には、流量及び圧力を滑らかに変化させることができる。ただし、流量及び圧力には、圧電素子103の能力や部材の強度や耐久性によって上限がある。通常は定格のVpp及び周波数で使用される。
【0045】
なお、ここでは1つの圧電素子103をダイヤフラム104に貼り付けたモノモルフ(ユニモルフ)構造を紹介しているが、勿論、2つの圧電素子を貼り合わせて振動量を増やすバイモルフ構造を採用することもできる。
【0046】
図12には、第6実施形態に係る呼吸補助装置80の構成が例示されている。呼吸補助装置80は、供給源11としてマイクロポンプ100を備え、また、吸気経路として吸気管12のみを備えている。そして、呼吸補助装置80は、呼気弁15および複数の安全部材16を、マスク13に設けることに代えて、呼気弁81および複数の安全部材82を吸気管12に設けている。このため、吸気管12は、呼気経路としても機能する。呼気弁81は、呼気動作に対する応答性が遅くならない範囲で、かつ、患者の口に挿入されない範囲で、できる限り呼気管12の先端に近い位置に設けられていることが好ましい。さらに、呼吸補助装置80は、気圧計14をマスク13内に設けることに代えて、気圧計83を吸気管12内に設けている。
【0047】
尚、本発明の呼吸補助装置は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した実施形態の構成要件を、可能な範囲で他の実施の形態に適用してもよい。
【0048】
すなわち、上記各実施形態において、各構成の位置、大きさ、形状、数量は適宜変更できる。例えば、呼気弁15,41,51,61の数量が挙げられ、呼気弁15,41,51,61を2個以上備えるようにしてもよい。
【0049】
具体的に、第1実施形態を変形した場合を例に説明する。図13に示すように、マスク13には、複数(例えば、8個)の通気孔13aが形成されている。複数の通気孔13aには、一つずつ呼気弁15が設けられている。複数の呼気弁15は、互いに独立して制御されて開閉する。開放する呼気弁15の数を変更することで、呼気の流量を調節できる。このため、ピエゾ素子22への電圧の印加量を制御せずに、各ピエゾ素子22に対する当該電圧のオンオフを制御して、開放する呼気弁15の数を変更するだけで、呼気の流量を段階的に調節できる。すなわち、簡単な制御で呼気の流量を調節できる。また、ピエゾ素子22への電圧の印加量を制御することで、更に滑らかに呼気の流量を調節できる。
【0050】
あるいは、上記第1〜第4実施形態において、供給源11として、ガスタンク19などに代えてマイクロポンプ100を備えるようにしてもよい。上記第5および第6実施形態の場合を含めた上記各実施形態において、マイクロポンプ100を複数備え、それらを直列もしくは並列に配置したり、あるいはマトリクス状に配置したりするようにしてもよい。
【0051】
あるいは、上記第1〜第5実施形態において、吸気経路および呼気経路として、口および鼻を覆うマスク13を備えているが、そのマスク13に代えて、鼻に取り付ける鼻ピースなどの装着具を備えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の呼吸補助装置は、様々な生物の呼吸補助目的で利用できる。
【符号の説明】
【0053】
10,40,50,60,70,80 呼吸補助装置
11 供給源
12 吸気管
13 マスク
15,41,51,61,81 呼気弁
16,42,52,62,82 安全部材
22 ピエゾ素子
100 マイクロポンプ
XA1 物品
GAP 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の口および鼻を覆うマスクと、
前記マスクに直接接続され、吸気となる気体を送り出す供給源と、を備えることを特徴とする、
呼吸補助装置。
【請求項2】
前記供給源は、マイクロポンプであることを特徴とする、
請求項1に記載の呼吸補助装置。
【請求項3】
前記マスクに形成された通気孔を覆うように設けられた呼気弁を備えることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の呼吸補助装置。
【請求項4】
前記呼気弁は、電圧の印加量に応じて変位するピエゾ素子を有してなり、該ピエゾ素子が前記マスクに対して離隔し又は近接して当接するように該マスクの内側で変位することで、該ピエゾ素子自体が前記通気孔を開閉することを特徴とする、
請求項3に記載の呼吸補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−90954(P2013−90954A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19057(P2013−19057)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2011−235012(P2011−235012)の分割
【原出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000138060)株式会社メトラン (23)