説明

呼気ガス測定器用口腔内気体採取具

【課題】呼気ガスの測定を行う際に取り扱いが容易で操作性に優れた口腔内気体を採取する呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を提供する。
【解決手段】呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を、口腔内に挿入される側の端部にフランジ部1aが設けられているオートクレイブや薬品消毒が可能な素材で構成されている筒状部材1と、該筒状部材1の貫通孔1bに嵌挿される嵌挿部2aと該嵌挿部2aに続く蛇腹部2bと該蛇腹部2bに続く接続部2cとから成る使い捨て用のプラスチックチューブ2と、先端部3aが該プラスチックチューブ2の接続部2cに嵌入され後端部3bが呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されるか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブに接続される透明な素材で構成されているパイプ状の連結用部材3とから成る構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が生活する上で口から発する臭いなどの成分とその割合などを呼気ガス測定器で測定するために口腔内気体を採取する呼気ガス測定器用口腔内気体採取具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、清潔意識の高まりから人が発する臭いに対する関心が大いに高まっている。特に、呼気ガスに基づく臭いは自分自身ばかりでなく周りにいる他人にも影響を及ぼすものとして、大きな注意が払われていると言っても過言ではない。特に呼気ガスの臭いの強度が強いと悪臭としてとらえられ、自己嫌悪やいじめの対象となってしまう場合もある。
【0003】
そこで、この呼気ガスを測定するための装置や器具類が種々市販されたり、特許や実用新案として提案されてもいる。この呼気ガスの臭いの原因となる物質は、これまでの多くの研究によりほぼ解明されている。即ち、自己口腔内で発生する臭いの主な原因物質としては、揮発性の硫黄化合物である硫化水素,メチルメルカプタン及びジメチルサルファイドであるとされているが、インドール,フェノール,低級脂肪酸,アミン類も原因物質として考えられている。
【0004】
呼気ガスの測定には化学的分析可能な機器が用いられており、この機器へ口腔内気体を導く方法としては、唾液を染み込ませた検査用紙片を試料室内に挿入する方法(例えば、特許文献1参照。)や、マウスピースを設けて口腔内気体が自然に流入するようにする方法(例えば、特許文献2参照。)や、減圧容器に口腔内気体を吸引する方法(例えば、特許文献3参照。)等がある。ここで、検査用紙片に唾液を染み込ませる方法は、染み込ませる唾液量によって測定誤差が生じる可能性があるので、近年では口腔内気体を採取して呼気ガスの測定を行う方法が採用されるようになってきているが、口腔内気体を採取する方法では呼気ガス中の物質の濃度を正確に測定可能である代わりに唾液や口腔内組織を吸引してしまい測定の精度が低下することが多かった。
【0005】
このような口腔内気体を採取して化学的分析可能な機器に導いて呼気ガスの測定を行うには、口腔内に挿入する部材と、その口腔内に挿入する部分から化学的分析可能な機器へと口腔内気体を導く部材とが必要であり、口腔内に挿入する部材としては呼気ガスを測定しようとする被測定者が噛んでしまうことがあるため、丈夫な部品であることが要求される結果、使い捨てにすることができず、且つ衛生面からオートクレイブや薬品消毒が可能な樹脂や金属から成る硬質素材で構成されることが必要となり、このような硬質素材から成る口腔内に挿入する部材に口腔内気体を化学的分析可能な機器に導く部材をどのように連結するか、また口腔内気体を化学的分析可能な機器に導く部材をどのような構成にするかという問題があった。
【0006】
すなわち、口腔内に挿入する部材とその口腔内に挿入する部材から化学的分析可能な機器へと口腔内気体を導く部材とを強固に連結する構造を採用すると、1回呼気ガスの測定を行う度にその強固な連結を解除する作業が必要になって煩雑であり、また口腔内気体を化学的分析可能な機器に導く部材は通常不透明な可撓性があるプラスチックチューブが使用されているがそのプラスチックチューブ中に唾液や口腔内組織が入り込んでしまうと呼気ガスの測定精度が低下するにも拘らず、プラスチックチューブ中に唾液や口腔内組織が入り込んでいることが分かりずらく且つプラスチックチューブ中の唾液や口腔内組織を除去しようとすると長さの長いプラスチックチューブを化学的分析可能な機器から取り外してチューブ内を洗浄する手間のかかる作業が必要になるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−98694号公報
【特許文献2】特開2006−184265号公報
【特許文献3】特開2005−249732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような種々の問題点を解消し、呼気ガスの測定を行う際に取り扱いが容易で操作性に優れた口腔内気体を採取する呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を、口腔内に挿入される側の端部にフランジ部が設けられているオートクレイブや薬品消毒が可能な素材で構成されている筒状部材と、該筒状部材の貫通孔に嵌挿される嵌挿部と該嵌挿部に続く蛇腹部と該蛇腹部に続く接続部とから成る使い捨て用のプラスチックチューブと、先端部が該プラスチックチューブの接続部に嵌入され後端部が呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されるか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブに接続される透明な素材で構成されているパイプ状の連結用部材とから成る構成とすれば、筒状部材は口腔内に挿入される側の端部にフランジ部が設けられているので唾液や口腔内組織が入り込み難く且つその貫通孔から使い捨て用プラスチックチューブを抜き取ることにより簡単に分離してオートクレイブや薬品消毒を行うことができ、使い捨て用のプラスチックチューブは筒状部材の貫通孔に嵌挿される嵌挿部に続いて蛇腹部を有しているのでその蛇腹部に続く接続部に嵌入される連結用部材との角度を自由に変更でき、連結用部材は透明な素材で構成されているので唾液や口腔内組織が入り込んでいるか否かを容易に確認できることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
そして、連結用部材にはその流路を遮断することができるバルブを設けられていれば、口腔内から採取した一定量の口腔内気体を化学的分析可能な機器に導いて呼気ガスの測定を行うことができて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具は、口腔内に挿入される側の端部にフランジ部が設けられているオートクレイブや薬品消毒が可能な素材で構成されている筒状部材と、該筒状部材の貫通孔に嵌挿される嵌挿部と該嵌挿部に続く蛇腹部と該蛇腹部に続く接続部とから成る使い捨て用のプラスチックチューブと、先端部が該プラスチックチューブの接続部に嵌入され後端部が呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されるか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブに接続される透明な素材で構成されているパイプ状の連結用部材とから成り、筒状部材は口腔内に挿入される側の端部にフランジ部が設けられているので唾液や口腔内組織が入り込み難く且つその貫通孔から使い捨て用プラスチックチューブを抜き取ることにより簡単に分離してオートクレイブや薬品消毒を行うことができ、使い捨て用のプラスチックチューブは筒状部材の貫通孔に嵌挿される嵌挿部に続いて蛇腹部を有しているのでその蛇腹部に続く接続部に嵌入される連結用部材との角度を自由に変更でき、連結用部材はその先端部がプラスチックチューブの接続部に嵌入により接続されるものであるからプラスチックチューブから引き抜くことにより簡単にプラスチックチューブから取り外すことができると共に透明な素材で構成されているので唾液や口腔内組織が入り込んでいるか否かを容易に確認できるのである。
【0012】
そして、連結用部材がその流路を遮断することができるバルブを設けられていれば、口腔内から採取した一定量の口腔内気体を化学的分析可能な機器に導いて呼気ガスの測定を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を構成する各部材を示す斜視図である。
【図2】図1に示した本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を構成する各部材を組み立てた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面中、1は口腔内に挿入される側の端部にフランジ部1aが設けられているオートクレイブや薬品消毒が可能な素材で構成されている筒状部材であり、この筒状部材1を構成するオートクレイブや薬品消毒が可能な素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS),ポリアミド(PA),ポリアセタール(POM),ポリカーボネート(PC),変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンテレフタレート(PET),グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET),環状ポリオレフィン(COP),ポリフェニレンスルファイド(PPS),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリスルホン(PSF),ポリエーテルサルフォン(PES),非晶ポリアリレート (PAR),液晶ポリマー (LCP),ポリエーテルエーテルケトン (PEEK),ポリアミドイミド (PAI)等の樹脂が好ましく使用される。
【0015】
2は筒状部材1の貫通孔1bに嵌挿される嵌挿部2aとこの嵌挿部2aに続く蛇腹部2bとこの蛇腹部2bに続く接続部2cとから成る使い捨て用のプラスチックチューブであり、このプラスチックチューブ2を構成する材質としては、ポリエチレン(PE),高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc)等の汎用樹脂が好ましく使用される。
【0016】
3は先端部3aがプラスチックチューブ2の接続部2cに嵌入され後端部3bが呼気ガスを化学的分析可能な機器(図示なし)に接続されるか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブ(図示なし)に接続される透明な素材で構成されているパイプ状の連結用部材である。この連結用部材3にはその流路を遮断することができるバルブ3cを設けておけば、口腔内から採取した一定量の口腔内気体を化学的分析可能な機器に導いて正確な呼気ガスの測定を行うことができて好ましい。この連結用部材3を構成する材質としては、バルブ3cを設ける場合はポリプロピレン,ポリテトラフルオロエチレン,ガラスが好ましく使用される。
【0017】
このような各部材から構成される本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具を使用して呼気ガスを測定するには、先ずに筒状部材1のフランジ部1aが設けられている側と反対側の端部から筒状部材1の貫通孔1bに使い捨て用のプラスチックチューブ2の嵌挿部2aを、プラスチックチューブ2の蛇腹部2bが筒状部材1のフランジ部1aが設けられている側と反対側の端部近傍に位置するまで嵌挿し、次いでこのプラスチックチューブ2の蛇腹部2bに続く接続部2cにパイプ状の連結用部材3の先端部3aを嵌入し、この連結用部材3の後端部3bを呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続するか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブに接続すれば呼気ガス測定の準備が完了する。
【0018】
このようにして準備が完了すると、筒状部材1のフランジ部1aを口腔内に挿入して口腔内気体を採取するのであるが、口腔内に挿入された筒状部材1の先端にはフランジ部1aが設けられているので、筒状部材1の貫通孔1b内に唾液や口腔内組織が入り込み難く、口腔内気体のみが採取される。この採取された口腔内気体は使い捨て用プラスチックチューブ2の嵌挿部2a,蛇腹部2b及び接続部2cを経てパイプ状の連結用部材3内に至るのであるが、パイプ状の連結用部材3は透明な素材で構成されているのでその内部に唾液や口腔内組織が入り込んで正確な呼気ガスの測定が行えない状態にあるか否かを容易に識別することができるのである。また、筒状部材1とパイプ状の連結用部材3との間に位置する使い捨て用のプラスチックチューブ2には蛇腹部2bが設けられているので、筒状部材1とパイプ状の連結用部材3との成す角度を自由に変更することが可能である。そして、連結用部材3内に至った口腔内気体は呼気ガスを化学的分析可能な機器に導入されて呼気ガスが測定されるのであるが、呼気ガスを化学的分析可能な機器に導入される口腔内気体の量を一定量とするためにパイプ状の連結用部材3にバルブ3bが設けられていることが好ましい。
【0019】
かくして呼気ガス測定が完了したら、筒状部材1の貫通孔1bから使い捨て用のプラスチックチューブ2を抜き取り、プラスチックチューブ2の接続部2cからパイプ状の連結用部材3の先端部3aを引き抜き、プラスチックチューブ2は廃棄すると共に、筒状部材1はオートクレイブや薬品消毒して次の呼気ガス測定に備え、パイプ状の連結用部材3はその内部に唾液や口腔内組織が入り込んでいる場合にはその内部を洗浄すればよいのである。
【0020】
このように本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具は、簡単に着脱できる3つの部材から構成されていて、取り扱いが容易で操作性に優れた口腔内気体を採取する呼気ガス測定器用口腔内気体採取具である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る呼気ガス測定器用口腔内気体採取具は、呼気ガス測定に限らず、腋臭のような体臭測定を行う場合にも使用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 筒状部材
1a フランジ部
1b 貫通孔
2 使い捨て用のプラスチックチューブ
2a 嵌挿部
2b 蛇腹部
2c 接続部
3 パイプ状の連結用部材
3a 先端部
3b 後端部
3c バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に挿入される側の端部にフランジ部(1a)が設けられているオートクレイブや薬品消毒が可能な素材で構成されている筒状部材(1)と、該筒状部材(1)の貫通孔(1b)に嵌挿される嵌挿部(2a)と該嵌挿部(2a)に続く蛇腹部(2b)と該蛇腹部(2b)に続く接続部(2c)とから成る使い捨て用のプラスチックチューブ(2)と、先端部(3a)が該プラスチックチューブ(2)の接続部(2c)に嵌入され後端部(3b)が呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されるか又は呼気ガスを化学的分析可能な機器に接続されている可撓性チューブに接続される透明な素材で構成されているパイプ状の連結用部材(3)とから成ることを特徴とする呼気ガス測定器用口腔内気体採取具。
【請求項2】
連結用部材(3)に、その流路を遮断することができるバルブ(3c)が設けられている請求項1に記載の呼気ガス測定器用口腔内気体採取具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−223704(P2010−223704A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70211(P2009−70211)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】