説明

呼気成分測定装置

【課題】呼気の吹込みを確実に検出して呼気成分の測定が行える呼気成分測定装置を提供する。
【解決手段】呼気成分測定装置は、呼気吹込口から吹き込まれた呼気が金属酸化物半導体からなる感ガス体20に接触するように測定器本体内部に収納されたガスセンサ2と、呼気吹込口から吹き込まれた呼気が感温部に接触するように測定器本体内部に収納されたサーミスタ3と、サーミスタ3の検出信号の微分出力を発生する微分回路4と、微分回路4の微分出力に基づいて呼気が正常に吹き込まれたことを検出すると、感ガス体20の抵抗値変化に基づいて呼気中の検知対象ガス成分のガス濃度を測定するマイコン7を備える。マイコン7は、微分回路4の微分出力が所定の吹込判定値を超えると、呼気が吹き込まれたと判定し、吹込判定時から所定の吹込時間が経過するまでの間に微分出力が所定の中断判定値を下回ると、呼気の吹込が中断されたと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気に含まれる口臭要因ガスやアルコール等の検知対象ガスの濃度を測定する呼気成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の呼気成分測定装置として、ガスの吸着によって抵抗値が変化する金属酸化物半導体からなる感ガス体内にヒータを埋設した金属酸化物半導体ガスセンサと、組込のプログラムを実行することによって、ヒータの温度制御、及び、感ガス体の抵抗値変化から呼気に含まれる口臭要因ガスやアルコール濃度を測定する測定処理を行う演算処理部と、演算処理部の測定結果を表示する表示器とを備えた口臭検査装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような金属酸化物半導体ガスセンサを用いた口臭検査装置では、電源投入後に測定開始操作が行われると、演算処理部が、ガスセンサのヒータに印加する電圧を高い電圧に制御することによって高温状態を作り出し、呼気を吹き込む以前に感ガス体の表面に付着していたガスを燃焼させて、感ガス体表面をクリーニングする。そして、感ガス体表面のクリーニングを終了し、測定準備が完了した状態で、被験者が呼気を吹込み口に吹き込むと、演算処理部は呼気成分の測定を開始するのであるが、例えばメチルメルカプタン等の口臭要因ガスが吹き込まれると、感ガス体の抵抗値が低下することを利用して呼気の吹込みを検知している。
【0004】
すなわち、演算処理部では、ヒートクリーニング期間の終了後、感ガス体の温度を低温状態に切り替えるとともに、感ガス体の抵抗値を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、抵抗値が低下したことから呼気の吹込みを判定すると、所定時間後の感ガス体の抵抗値と基準値とを比較することによって、口臭強度の検査を行っている。尚、上記の所定時間は、抵抗値の変化が安定するまでに必要な時間に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−190523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の口臭検査装置では、感ガス体の高温状態において感ガス体の抵抗値の立下りエッジを検出することで呼気の吹込みと判定しており、例えば図8に示すように時刻t1,t2で呼気が吹き込まれると、感ガス体の抵抗値Rsが低下することによって、抵抗値Rsと清浄大気中での基準抵抗値R0との比(R0/Rs)が増加することから呼気の吹込みを検知し、所定時間の経過後にガス濃度の判定を行っている。
【0007】
ところで、時刻t2において高濃度の口臭要因ガスが吹き込まれたために、感ガス体の抵抗値Rsが過度に低い抵抗値に変化している場合、時刻t3において低濃度の口臭要因ガスが吹き込まれると、感ガス体の抵抗値Rsが吹込前に比べて増加することになり、抵抗比(R0/Rs)が低下する。ここで、演算処理部では、感ガス体の抵抗値の立下りエッジ、つまり抵抗比(R0/Rs)の立ち上がりエッジから呼気の吹込を判定しているので、時刻t3において呼気が吹き込まれたにもかかわらず抵抗比が低下すると、呼気の吹込を検出することができず、口臭ガスの検査が行えないという問題があった。尚、濃度が高いほど抵抗値が高くなる検知対象ガスの場合には、抵抗比(R0/Rs)の立下がりエッジを検出することで呼気の吹込を検知しているが、その場合にも上述と同様の問題が発生する。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、呼気の吹込みを確実に検出して呼気成分の測定が行える呼気成分測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、吹込口から吹き込まれた呼気を通過させる呼気流路及び当該呼気流路に吹き込まれた呼気を外部に排気させる排気口が設けられた測定器本体と、検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値が変化する金属酸化物半導体で形成された感ガス体及び感ガス体に埋設されたヒータを有し、呼気流路に吹き込まれた呼気の少なくとも一部が感ガス体に接触するように測定器本体内部に収納されたガスセンサと、測定器本体の表面に露設された操作釦が押されると測定開始信号を発生する測定開始スイッチと、測定開始スイッチから測定開始信号が入力されるとヒータへの通電を開始して、感ガス体のヒートクリーニングを所定の待機時間だけ行った後、ガス濃度の測定を行う測定期間を設けるヒータ制御部と、呼気流路に吹き込まれた呼気の少なくとも一部が感温部に接触するように測定器本体内部に収納された温度センサと、温度センサの検出信号の微分出力を発生する微分出力発生部と、測定期間において微分出力発生部の微分出力が所定の吹込判定値を超えると、呼気が吹き込まれたと判定し、吹込判定時から吹込時間が経過するまでの間に、微分出力が所定の中断判定値を下回ると、呼気の吹込が中断されたと判断する吹込状態検出部と、測定期間において、ガス濃度の測定に必要な所定の吹込時間呼気が吹き込まれたことを吹込状態検出部が検出すると、感ガス体の抵抗値変化に基づいて呼気に含まれる検知対象ガス成分のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、吹込状態検出部は、測定開始信号の入力時における温度センサの検出温度が、人間の体温に対応して設定された温度範囲外であれば、微分出力発生部の微分出力に基づいて呼気の吹込状態を検出し、測定開始信号の入力時における温度センサの検出温度が上記温度範囲内であれば、感ガス体の抵抗値変化から呼気の吹込状態を検出することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、吹込状態検出部は、吹込判定時から吹込時間が経過するまでの間に、微分出力発生部の微分出力が所定の中断判定値を下回るか、或いは、感ガス体の抵抗値が低濃度方向に変化すると、呼気の吹込が中断されたと判断することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、ガスセンサは、ヒータの両端が電気的に接続される一対のヒータ電極端子と、感ガス体に一端が電気的に接続された出力電極端子との3端子構造を有し、少なくともガスセンサが実装されたセンサ基板と、少なくともヒータ制御部及びガス濃度測定部の回路が形成された本体基板とを備え、センサ基板と本体基板の間を電気的に接続する基板間接続コネクタが、一対のヒータ電極端子にそれぞれ接続されてヒータに通電するための一対の通電用端子と、一対のヒータ電極端子にそれぞれ接続されて各ヒータ電極端子の電圧値を測定するための一対の電圧測定用端子とを備え、ヒータ制御部は、一対の電圧測定用端子の端子間電圧からヒータ電圧を求め、ヒータ電圧が所望の電圧値となるようにヒータへの通電を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、呼気吹込口から呼気が吹き込まれると、温度センサの検出温度が呼気の温度に近づく方向に変化することを利用し、温度センサの検出信号の微分出力が吹込判定値を超えると、呼気が吹き込まれたと判定し、また吹込判定時から吹込時間が経過するまでの間に微分出力が中断判定値を下回ると、吹込が中断されたと判断しているので、感ガス体の抵抗値変化から呼気の吹込を検知する場合に比べて、呼気の吹込や吹込の中断を確実に判断して、ガス濃度の測定を開始させることができる。
【0014】
また、雰囲気温度が人間の体温に対応して設定された温度範囲内の場合、温度センサの検出信号を用いて呼気の吹込を判断すると誤検出の虞があるが、請求項2の発明によれば測定開始時の検出温度が上記温度範囲内であれば、感ガス体の抵抗値変化から呼気の吹込を判断するので、呼気の吹込を誤検出する可能性を低減することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、温度センサの検出信号の微分出力だけではなく、感ガス体の抵抗値が低濃度方向に変化することから、吹込の中断を検出することができる。
【0016】
ところで、ヒータの駆動電流が流れる一対の通電用端子の電圧からヒータ電圧を検出する場合、基板間接続コネクタの接触抵抗による電圧ドロップ分も含んで検出されるため、ヒータ電圧の検出が不正確になるが、請求項4の発明によれば、ヒータの駆動電流が流れない電圧測定用端子の端子間電圧からヒータ電圧を測定するため、接触抵抗による電圧ドロップ分を小さくできる。したがって、ヒータ電圧をより正確に測定できるから、ヒータの発熱量、すなわち感ガス体の温度を正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の口臭測定器の回路図である。
【図2】同上のフローチャートである。
【図3】同上に用いる金属酸化物半導体ガスセンサの一部破断せる側面図である。
【図4】同上の感ガス体の抵抗値の二次微分値を測定した結果を示す図である。
【図5】同上の口臭測定器を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図、(d)は下面図である。
【図6】同上のセンサブロックの分解斜視図である。
【図7】同上の要部の断面図である。
【図8】従来の呼気測定器の動作を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の技術思想を、呼気に含まれる口臭要因ガスの濃度を測定する口臭測定器に適用した実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1に本実施形態の口臭測定器Aの回路図を示す。この口臭測定器Aは、乾電池、充電池などの低電圧(例えば3V)の電池電源1と、金属酸化物半導体ガスセンサ(以下、ガスセンサと略す)2と、サーミスタ3(温度センサ)と、サーミスタ3の検出信号の微分出力を発生する微分回路4(微分出力発生部)と、ガスセンサ2に内蔵されたヒータに通電するヒータ駆動回路5と、液晶表示器(以下LCDと称する)6と、ヒータ駆動回路5の駆動制御を行うヒータ制御部や後述する感ガス体20の抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を測定するガス濃度測定部などの機能がプログラム化され、またLCD6のドライバ機能を備え、測定器全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ(以下マイコンと略す)7と、ガスセンサ2の校正データや口臭強度(口臭要因ガスの濃度)の判定を行うための基準値などを格納する不揮発性メモリ(例えばEEPROMなど)からなるメモリ8と、測定開始スイッチSW1を主要な構成要素として備える。
【0020】
図1に示す回路の構成部品は2枚のプリント配線板(センサ基板10a及び本体基板10b)に分割して実装されている。一方のセンサ基板10aには、ガスセンサ2とサーミスタ3とメモリ8とを少なくとも含む回路要素が実装されている。他方の本体基板10bには、微分回路4とヒータ駆動回路5とLCD6とマイコン7とを少なくとも含む回路要素が実装されている。そして、センサ基板10aと本体基板10bとの間は基板間接続コネクタ(以下、コネクタと略す。)CN1,CN2を介して電気的に接続されている。
【0021】
ガスセンサ2は、図3に示すように検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値が変化する金属酸化物半導体(例えばSnOなど)により楕円球状に形成された感ガス体20を備えている。この感ガス体20には、貴金属線(例えばPtなど)からコイル状に形成されたヒータ兼用電極21が埋設されるとともに、ヒータ兼用電極21の中心を貫通するようにして、貴金属線(例えばPtなど)から棒状に形成された検出電極22の一端側が感ガス体20内に埋設されている。
【0022】
またガスセンサ2は、略円筒状であって上面にガス導入用孔24aが開口するとともに下面側の全体が開口した金属製のキャップ24と、キャップ24の下面側の開口部に圧入固定される樹脂製のベース25と、ベース25を貫通してセンサ筐体(キャップ24及びベース25からなる)の内外に突出する3本の端子26a,26b,26cとを備えている。端子26a,26cには、ヒータ兼用電極21の両端21a,21bがそれぞれ接続され、端子26bに検出電極22の他端側が接続されることによって、感ガス体20が各端子26a〜26cに支持固定されている。また、キャップ24上面のガス導入用孔24aには、ステンレス製の金網27が取着されており、ガス導入用孔24aから塵埃等が内部に入り込むのを抑制している。
【0023】
図5(a)〜(d)は口臭測定器Aの全体を示した図であり、口臭測定器Aの測定器本体30は、それぞれ合成樹脂成形品(例えばABS樹脂など)からなる前ケース32及び後ケース33を組み立てて構成されるケース31に、ガスセンサ2やサーミスタ3を収納したセンサブロック34を取り付けて構成される。尚、前ケース32の左右両側壁において、センサブロック34の側方に位置する部位には、ケース31の内外を連通するスリット32aが複数開口している。
【0024】
センサブロック34は、図6及び図7に示すように、それぞれ合成樹脂成形品(例えばABS樹脂など)からなる前ケース35及び後ケース36を組み立てて構成されるケースの内部に、ガスセンサ2を実装したセンサ基板10aが収納されている。前ケース35は後面が開口した略箱状であって、左右両側壁の後縁からは、後方に向かって突出する爪片35bが一体に設けられている。また後ケース36は前面が開口した略箱状であって、左右両側壁の内側面には爪片35bが係止する凹部36bが設けられている。而して、前ケース35と後ケース36とは、爪片35bを凹部36bに係止させることによって互いに仮固定される。そして、後ケース36に設けた挿通孔(図示せず)に後方から通されたタッピングねじ45を、センサ基板10aの孔に通し、前ケース35のねじ穴(図示せず)にねじ込むことによって、後ケース36と前ケース35とが固定されるとともに、センサ基板10aが位置決めされる。尚、前ケース35及び後ケース36の左右両側壁には、組立時に突き合わされる部位に切欠46a,46bが形成されており、前ケース35と後ケース36とが組み立てられた状態では、これらの切欠46a,46bによってケースの内部と外部とを連通する通気孔46が形成される。また後ケース36には、センサ基板10aに実装されたコネクタCN1を露出させる切欠36cも形成されており、ケース31側に設けたコネクタCN2にコネクタCN1を接続した状態で、センサブロック34がケース31に装着される。
【0025】
前ケース35の前面には丸穴状に凹んだ凹部35aが設けられ、凹部35a内に円筒状のマウスピース37の後端部が差し込まれるようになっている。また凹部35aの底面には、マウスピース37内部の呼気流通路に連通する貫通孔35bが設けられている。
【0026】
一方、後ケース36には、前ケース35の貫通孔35bに対応する位置に丸孔状の排気口36aが開口している。
【0027】
センサ基板10aに実装されたガスセンサ2には、例えばABS樹脂のような合成樹脂成形品からなるキャップ部材38が装着される。キャップ部材38には、図6及び図7に示すように、ガスセンサ2のキャップ24の外径よりも若干大きな内径を有する丸穴状の収納凹部39が設けられ、この収納凹部39内にガスセンサ2のキャップ24が挿入される。収納凹部39の奥には段部39aが設けられ、段部39aにキャップ24の先端側が当たることによって、収納凹部39の底面との間に呼気溜まり空間43を設けた状態で、ガスセンサ2が収納凹部39内に収納されている。このキャップ部材38には、呼気溜まり空間43と外部と連通する換気孔42が開口している。
【0028】
またキャップ部材38には、前ケース35の貫通孔35bと後ケース36の排気口36aとの間を連通する通気流路40が設けられている。この通気流路40は、吹込側に比べて排気側の内径が細径に形成されており、大径孔40aの内周面において細径孔40bに近い部位には、大径孔40bから収納凹部39へと呼気を導入する導入孔41が形成されている。この導入孔41は、キャップ24の天井面の中央に設けられたガス導入用孔24aと位置をずらして形成されている。また、キャップ部材38には、細径孔40bの内周面と外部とを連通する保持孔44が、細径孔40bにおける排気口36a寄りの部位に設けられている。この保持孔44には外部からサーミスタ3が挿入され、サーミスタ3の感温部は細径孔40bの中心付近に配置されている。尚、図7中の点線で囲んだ位置Bは、サーミスタ3の感温部が配置される位置を示している。このサーミスタ3は、リード線3aを介してセンサ基板10aに電気的に接続されている。
【0029】
したがって、マウスピース37に吹き込まれた呼気は、キャップ部材38に設けた通気流路40の大径孔40aに流れ込み、その大部分は細径孔40bを通って排気口36aから外部に排出される。また呼気が大径孔40aから細径孔40bへと流入する際に、孔の内径が細径となることから圧損が生じ、呼気の一部が導入孔41を通って呼気溜まり空間43内に導入され、換気孔42からキャップ部材38の外部に排出される。また、呼気溜まり空間43に流入された呼気は、キャップ24に設けたガス導入用孔24aからキャップ24内部に入り込み、ガスセンサ2によって呼気中の検知対象ガス濃度が測定される。
【0030】
ここにおいて、呼気流路40からガスセンサ2内の感ガス体20にまで導入されることとなる呼気は、呼気流路40内を流れる方向と直交する方向に延びる導入孔41を通って、この導入孔41よりも大きな空間である呼気溜り空間43に導入され、呼気溜り空間43内でキャップ24のガス導入用孔24aを囲む外周縁部に当たる。そして、呼気溜り空間43内に呼気が一旦こもった後、呼気がガス導入用孔24aを通じてキャップ24の内部に導入されて、感ガス体20に接触するのである。したがって、使用者がマウスピース37に吹き込んだ呼気の流速や圧力が大きい場合であっても、感ガス体20に呼気が直接吹き掛けられないから、感ガス体20が呼気によって急激に冷やされることはなく、感ガス体20の温度変化を低減してより正確な測定を行うことができる。しかも、マウスピース37から吹き込まれた呼気は、呼気流路40及び導入孔41を通って呼気溜まり空間43に短時間で送り込まれ、この呼気溜まり空間43からガスセンサ2のキャップ24内部に導入されるから、感ガス体20の出力の応答速度を速めることができる。
【0031】
さらにキャップ部材38には、呼気溜まり空間43と外部とを連通する換気孔42が設けられているので、測定時に呼気溜まり空間43やキャップ24の内部にこもった呼気は、換気孔42及び通気孔46と前ケース32に設けられたスリット32aとを通って測定後に素早く清浄な空気に置換される。したがって、連続的に呼気の測定を行った場合や、高濃度の呼気を測定した後で低濃度の呼気を測定する場合であっても、呼気溜まり空間43やキャップ24の内部に呼気がこもりにくいから、前回測定時の呼気の影響を低減して、正確な測定を行うことができる。
【0032】
上述のようにガスセンサ2は、測定器本体30の貫通孔35b(呼気吹込口)から吹き込まれる呼気の少なくとも一部が感ガス体20に接触するように、測定器本体30内部に収納されている。感ガス体20の抵抗値は、感ガス体20に接触する検知対象ガスのガス濃度に応じて変化するものであり、本センサでは、感ガス体20に一端が電気的に接続された検出電極22と、ヒータ兼用電極21のグランド側の端子21bとの間の抵抗値から、感ガス体20の抵抗値を測定している。なお本実施形態では、検出電極22と端子21bとの間に発生する電圧VSをマイコン7が取り込んでおり、感ガス体20の抵抗値を検出電圧VSとして測定している。
【0033】
ここで、ヒータ兼用電極21の高電位側の端子21aはコネクタCN1の1番ピンと2番ピンに接続され、ヒータ兼用電極21のグランド側の端子21bはコネクタCN1の4番ピンと5番ピンとにそれぞれ接続され、さらに検出電極22の他端側はコネクタCN1,CN2の3番ピンに接続されている。コネクタCN2の1番ピンはPNP型のトランジスタQ1を介して電池電源1の正極に、コネクタCN2の5番ピンは電池電源1の負極にそれぞれ接続されている。ヒータ駆動回路5は、上記のトランジスタQ1と、トランジスタQ1のベース−エミッタ間に接続された抵抗R1と、トランジスタQ1のベースとマイコン7の出力ポートPO1間に接続された抵抗R2とで構成される。マイコン7からの制御信号に応じて、トランジスタQ1がオンになると、電池電源1→トランジスタQ1→コネクタCN1,CN2の1番ピン→ヒータ兼用電極21→コネクタCN1,CN2の5番ピン→電池電源1の経路でヒータ電流(駆動電流)が流れ、ヒータ兼用電極21の発熱によって感ガス体20が加熱される。
【0034】
また、コネクタCN2の2番ピン、4番ピンは、それぞれ、マイコン7のA/D入力ポートPI2,PI3に接続されている。マイコン7は、A/D入力ポートPI2,PI3にそれぞれ入力された電圧をA/D変換することによって、ヒータ兼用電極21の両端21a,21bの電圧VH1,VH2を検出し、両者の差分(VH1−VH2)を演算することで、ヒータ兼用電極21に印加されるヒータ電圧VHを測定する。そして、ヒータ制御部としてのマイコン7は、ヒータ電圧VHが所望の電圧値となるように、トランジスタQ1のオンデューティを変化させており、感ガス体20の温度を所望の温度に制御している。
【0035】
ここで、貴金属線からなるヒータ兼用電極21の抵抗値は約3Ωであるのに対して、コネクタCN1,CN2間の接触抵抗は約0.2Ωと比較的大きいため、ヒータ兼用電極21(ヒータ)の駆動電流が流れるコネクタCN2の1番ピンと5番ピンの間でヒータ電圧を測定すると、コネクタCN1,CN2間の接触抵抗による電圧ドロップ分も含めてヒータ電圧が測定されることになり、ヒータ電圧VHを正確に測定できなくなる。
【0036】
そこで、本実施形態ではヒータ電圧VHを検出するために、ヒータ電流が流れる1番ピンと5番ピンの間の電圧ではなく、ヒータ兼用電極21の両端がそれぞれ接続される2番ピンと4番ピンの電圧VH1,VH2をそれぞれ測定している。2番ピン及び4番ピンには、電圧検出のための微少な電流しか流れず、この電流はヒータの駆動電流に比べて遙かに小さいため、コネクタCN1,CN2間の接触抵抗による電圧ドロップ分は無視できる程度に小さくなり、ヒータ電圧VH(=VH1−VH2)を正確に検出することができる。
【0037】
また、コネクタCN2の3番ピンは、負荷抵抗R3及びトランジスタQ2からなる直列回路を介して電池電源1の正極に接続されるとともに、マイコン7の入力ポートPI1に接続されている。感ガス体20の抵抗値を測定する場合、マイコン7は、ヒータ駆動回路5のトランジスタQ1がオフしている期間に、トランジスタQ2をオンさせて、負荷抵抗R3と感ガス体20との直列回路に電圧VCを印加し、ヒータ兼用電極21のグランド側の端子21bと検出電極22との間に発生する分圧電圧VSを検出電圧として入力ポートPI1から取り込む。そして、マイコン7では、この分圧電圧VSから抵抗R3との分圧比を求めて、分圧比と抵抗R3の抵抗値(既知)とを用いて、感ガス体20の抵抗値を求めており、感ガス体20の抵抗値に基づいてガス濃度の検出を行っている。
【0038】
また本実施形態では、上述のように呼気吹込口からの呼気の吹込を検知するためにサーミスタ3を備えており、このサーミスタ3は、呼気吹込口から吹き込まれた呼気の少なくとも一部が感温部に接触するように測定器本体内部に収納されている。サーミスタ3の一端はコネクタCN1,CN2の6番ピンに接続されており、コネクタCN1,CN2を介して電池電源1の正極に接続されている。またサーミスタ3の他端はコネクタCN1,CN2の13番ピンに接続されており、コネクタCN2の13番ピンには抵抗R4の一端側が接続されている。抵抗R4の他端側は電池電源1の負極に接続されており、サーミスタ3及び抵抗R4の直列回路に電池電源1が印加されている。サーミスタ3の抵抗値は温度上昇に応じて変化するので、分圧比が変化して、抵抗R4の両端電圧が変化し、この抵抗R4の両端電圧がオペアンプOP1を用いた微分回路4に入力される。
【0039】
微分回路4は、オペアンプOP1と、オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子の間に接続された抵抗R5及びコンデンサC1の並列回路と、オペアンプOP1の反転入力端子とグランドの間に接続されたコンデンサC2とで構成され、抵抗R4の高圧側端がオペアンプOP1の非反転入力端子に入力されている。ここで、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子の間、非反転入力端子と反転入力端子の間にはそれぞれスイッチSW2,SW3が接続されている。これらのスイッチSW2,SW3は、マイコン7の出力ポートPO3から出力される制御信号によって、オン/オフが制御される。スイッチSW2,SW3がオンになると、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子の間、非反転入力端子と反転入力端子の間がそれぞれ短絡されて、コンデンサC2が抵抗R4の両端電圧まで急速に充電されるので、微分回路4からの微分出力の初期値が過大な値となるのを防止することができる。
【0040】
また、測定開始スイッチSW1と抵抗R6との直列回路が電池電源1の両端間に接続されており、測定開始スイッチSW1と抵抗R6との接続点の電圧がマイコン7の入力ポートPI5に入力されている。
【0041】
ここで、本実施形態の動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。図示しない電源スイッチがオンされると、マイコン7は初期化動作を実行した後、メモリ8から各種の設定データや校正データを読み込み、待機モードに移行する。待機状態においてマイコン7は入力ポートPI5の電圧レベルを定期的にモニタしており、ユーザが測定開始スイッチSW1(以下、スイッチSW1と言う。)を押操作することによって、入力ポートPI5にHレベルのパルス信号が入力されると、マイコン7は待機モードを終了し、口臭要因ガスのガス濃度を測定するための制御処理をプログラムにしたがって開始する(図2のステップST1)。
【0042】
先ず、マイコン7は、出力ポートPO1から所定のオンデューティで所定の周期のパルス信号を出力して、トランジスタQ1をオン/オフさせており、トランジスタQ1のオン期間にトランジスタQ1を介してヒータ兼用電極21に電力が供給される。この時、ヒータ兼用電極21に印加される平均電圧はデューティ制御により約0.9Vとなり、ヒータ兼用電極21の発熱によって、感ガス体20が例えば400℃程度の温度まで加熱され、不使用時に感ガス体20の表面に接触した雑ガスなどを燃焼させてヒートクリーニングを行う。
【0043】
また測定開始時に、マイコン7は、出力ポートPO3からオン制御信号を出力し、スイッチSW2,SW3を1秒間オンさせる(ステップST2)。スイッチSW2,SW3が共にオンになると、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子の間、非反転入力端子と反転入力端子の間がそれぞれ短絡されることによって、帰還抵抗R5の両端間が短絡されるので、コンデンサC2は、サーミスタ3の抵抗値と抵抗R4の抵抗値との抵抗比で決定される分圧電圧V1(抵抗R4の両端電圧)まで急速に充電される。
【0044】
マイコン7は、スイッチSW2,SW3をオンさせてから1秒間が経過すると、入力ポートPI4から分圧電圧V1を取り込み、この分圧電圧V1からサーミスタ3の抵抗値を算出し、サーミスタ3の抵抗値をもとに測定開始時の検出温度Tpを算出する。そして、マイコン7は、検出温度Tpの算出を終了すると、出力ポートPO3からオフ制御信号を出力して、スイッチSW2,SW3をオフさせる。スイッチSW2,SW3がオフすると、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子の間の短絡状態、並びに、非反転入力端子と反転入力端子の間の短絡状態がそれぞれ解除され、分圧電圧V1が微分回路4に入力される(ステップST3)。
【0045】
次に、吹込検出部としてのマイコン7が、ステップST3で算出した検出温度Tpと所定の基準温度(例えば33℃)との高低を比較し(ステップST4)、その比較結果に基づいて呼気の吹込判定にサーミスタ3の検出温度を使用するか否かを決定する。ここで、測定開始時の検出温度Tpが、人間の体温に対応して設定された温度範囲外であれば、呼気を吹き込んだ際にサーミスタ3の検出温度が大きく変化するため、サーミスタ3の検出温度の変化から呼気の吹込を検出しやすいが、上記温度範囲内であれば呼気の吹込時にもサーミスタ3の検出温度はあまり変化せず、呼気の吹込を検出しにくいと考えられる。そこで、マイコン7では、測定開始時における検出温度Tpが33℃よりも低ければ、呼気の吹込検知にサーミスタ3を使用することとし(ステップST5)、測定開始時における検出温度Tpが33℃以上であれば、呼気の吹込検知にサーミスタ3を使用せず、感ガス体20の抵抗値変化から呼気の吹込を検知することとする(ステップST6)。尚、本実施形態では、マイコン7が、測定開始時の検出温度Tpを、人間の体温に対応して設定した温度範囲(33℃以上)と比較し、測定開始時の検出温度Tpが上記温度範囲外であれば、つまり検出温度Tpが33℃未満であれば、吹込判定にサーミスタ3の検出温度Tpを使用しているが、上記の温度範囲に上限値を設けてもよい。すなわち、人間の体温に対応した温度範囲を例えば33℃以上且つ43℃以下の範囲とし、測定開始時の検出温度Tpが上記温度範囲外であれば(Tp<33℃、又は、Tp>43℃)、吹込判定にサーミスタ3の検出温度Tpを使用し、検出温度Tpが上記温度範囲内であれば、吹込判定にサーミスタ3の検出温度Tpを使用せず、感ガス体20の抵抗値変化から吹込検知を行うようにしてもよい。また、雰囲気温度が人間の体温以上である場合には、測定開始時の検出温度Tpを上記温度範囲の上限値のみと比較してもよく、検出温度Tpが上限値(例えば43℃)を越えていれば、吹込判定にサーミスタ3の検出温度Tpを使用し、検出温度Tpが上限値以下であれば、吹込判定にサーミスタ3の検出温度Tpを使用せず、感ガス体20の抵抗値変化から吹込検知を行えばよい。
【0046】
マイコン7では、サーミスタ3の温度判定を終了すると、スイッチSW1が操作されてから2.5秒目まで例えば0.1秒毎に、トランジスタQ1がオフしているタイミングで、トランジスタQ2をオンさせる信号を出力ポートPO3から出力させ、負荷抵抗R3を介して感ガス体20に通電するとともに、感ガス体20の両端電圧VSを入力ポートPI1から取り込み、メモリ8に逐次記憶させる。
【0047】
そして、マイコン7は、スイッチSW1の押操作時から2.5秒が経過した時点で、検出電圧VSの二次微分値VS”を求め(ステップST7)、二次微分値VS”の大きさに応じてヒートクリーニング時間(待機時間)を決定する。
【0048】
ところで、測定開始のためにスイッチSW1が押されると、感ガス体20の加熱を開始しており、加熱開始時より所定時間が経過するまでは、不使用時に感ガス体20の表面に接触した雑ガスなどを燃焼させてクリーニングを行うヒートクリーニング時間とし、このヒートクリーニング時間が経過した後に、呼気成分の測定を行うようになっている。ここで、口臭測定器A(呼気測定器)が使用されていない放置期間が長いほど、ヒートクリーニングに長い時間を要するので、従来はヒートクリーニング時間を長めに設定していたが、なるべく早く測定を行いたいというユーザの要望があり、この口臭測定器Aでは、前回の測定時からの放置期間が短い場合にはヒートクリーニング時間を短くして、測定までの時間を短縮している。前回測定時からの放置期間が短い場合は、感ガス体20の表面に接触している雑ガスなどの汚れは少なく、感ガス体20の抵抗値は短時間で急激に変動するのに対して、放置期間が長い場合は、感ガス体20の表面に接触している雑ガスなどの汚れが多いため、感ガス体20の抵抗値は長時間をかけてゆっくりと変動(漸増又は漸減)すると考えられる。そこで、マイコン7では、ステップST7で求めた検出電圧の二次微分値VS”が大きいほど、前回測定時からの放置期間が短いと判断して、ヒートクリーニング時間を短めに設定し、二次微分値VS”が小さいほど、前回の使用時から長期間放置されていたと判断して、ヒートクリーニング時間を長めに設定する。
【0049】
ここで、時刻(t1−Δt),t1,(t1+Δt)における検出電圧をそれぞれVS1,VS2,VS3とすると、時刻t1における検出電圧VSの二次微分値VS”は、VS1とVS3との平均値でVS2を除した値となり、次式で表される。
【0050】
VS”=VS2×2/(VS1+VS3)
そして、本実施形態では、VS1,VS2,VS3のそれぞれに、検出電圧VSの加算平均値を用いており、マイコン7では、以下の式(1)を用いて、スイッチSW1の押操作時から1.8秒目における二次微分値VS”を算出している。尚、VS(t)は、測定開始スイッチSW1の押操作時からt秒経過時の感ガス体20の検出電圧VSである。
【0051】
【数1】

【0052】
マイコン7は、スイッチSW1の押操作時から1.8秒目における二次微分値VS”を算出すると、二次微分値VS”を所定の定数で除して正規化した後、正規化された二次微分値VS”と所定の基準値(例えば1)との高低を比較する(ステップST8)。ステップST8の判断処理で、正規化された二次微分値VS”が1以上であれば、マイコン7は、放置期間が短いと判断してヒートクリーニング時間を5秒に設定する(ステップST9)。一方、ステップST8の判断処理で、正規化された二次微分値VS”が1未満であれば、マイコン7は、正規化後の二次微分値VS”と所定の基準値(例えば0.6)との高低を比較し(ステップST10)、正規化後の二次微分値VS”が0.6以上且つ1未満であれば、高濃度ガスの測定後に初めて測定する場合と判定して、ヒートクリーニング時間を15秒に設定する(ステップST11)。また、正規化後の二次微分値VS”が0.6未満であれば、マイコン7は、長期放置品であると判断してヒートクリーニング時間を20秒に設定する(ステップST12)。
【0053】
尚、図4は、3種類のサンプル(長期放置品A,Bと通常品C)について、各種雰囲気中(6種類の呼気と1mg/Lの基準ガス)での二次微分値の測定データを示しており、長期放置品A,Bは通常品に比べて二次微分値が大きくなっている。尚、図中の▲が長期放置品A、■が長期放置品B、◆が通常品のデータである。
【0054】
上述の判定処理によりヒートクリーニング時間(待機時間)が決定されると、マイコン7は、ヒートクリーニング時間が終了するまで、感ガス体20の表面に付着した雑ガスなどを燃焼させてヒートクリーニングを行い、検知対象ガスの測定開始に備える。
【0055】
そして、ヒートクリーニング時間が終了すると(ステップST13)、マイコン7は、図示しない表示ランプを点滅させたり、ブザーを鳴動させるなどして、ユーザに測定準備が完了したことを報知し、呼気の吹込を促すとともに、呼気の吹込に備える。
【0056】
ここで、呼気の吹込判定にサーミスタ3を使用するか否かで、以後の動作が異なっており、先ず、サーミスタ3を使用する場合の動作について説明する(ステップST14のYES)。
【0057】
マイコン7は、微分回路4から出力されるサーミスタ出力VTH(分圧電圧V1の微分出力)を入力ポートPI4から逐次(例えば0.1秒毎)取り込み、ヒートクリーニング期間の終了時におけるサーミスタ出力VTH0を基準値としてメモリ8に記憶させるとともに(ステップST15)、各取込時点におけるサーミスタ出力VTHもメモリ8に記憶させる。
【0058】
次にマイコン7は、現在のサーミスタ出力VTHと、基準値VTH0に0.3Vを加算した値(吹込判定値)との高低を比較する(ステップST16)。
【0059】
ここで、現在のサーミスタ出力VTHが、基準値VTH0に0.3Vを加算した値(吹込判定値)を上回る状態が0.5秒間続かなかった場合(ステップST16のNO)、マイコン7は、ヒートクリーニング期間の終了時から6秒が経過したか否かを判断し(ステップST18)、6秒が経過していれば(ステップST18のYES)、ヒートクリーニングの終了時から6秒が経過しても呼気の吹込が行われていないと判断して、LCD6に吹き掛けエラーを表示させる(ステップST25)。
【0060】
一方、現在のサーミスタ出力VTHが、基準値VTH0に0.3Vを加算した値(吹込判定値)を上回る状態が0.5秒間継続すると(ステップST16のYES)、マイコン7は、サーミスタ3の検出信号の微分出力が吹込判定値を上回ったことから、呼気が吹き込まれたと判断し、メモリ8から現在までのサーミスタ出力VTHの値を読み出して、サーミスタ出力VTHのピーク値VTHMを抽出した後(ステップST17)、現在のサーミスタ出力VTHが、ピーク値VTHMの60%の値(中断判定値)よりも高いか低いかを判定する(ステップST19)。
【0061】
ここで、ステップST19の判定の結果、現在のサーミスタ出力VTHがピーク値VTHMの60%の値(中断判定値)を下回っていれば(ステップST19のNO)、マイコン7は、呼気の吹込が早い段階(吹込検知から3秒以内)で中断されたためにサーミスタ3の検出温度が低下したと判断し、早期の吹込中断が発生したことをLCD6に表示させる(ステップST21)。
【0062】
またステップST19の判定の結果、現在のサーミスタ出力VTHがピーク値VTHMの60%の値よりも高ければ(ステップST19のYES)、マイコン7は、呼気の吹込が継続していると判断して、吹込検知から3秒が経過したか否かの判定を行う(ステップST20)。
【0063】
ここで、吹込検知から3秒が経過していなければ(ステップST20のNO)、マイコン7はステップST17に戻って上記の処理を繰り返す。一方、吹込検知から3秒が経過していれば(ステップST20のYES)、マイコン7は、吹込検知から3秒目のセンサ電圧VSと4秒目のセンサ電圧VSとを測定し、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっているか否かの判定を行う(ステップST22)。
【0064】
そして、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっていれば(ステップST22のYES)、マイコン7は、ガス濃度の測定に必要な所定の吹込時間(例えば4秒)呼気が吹き込まれたと判断し、4秒目のセンサ電圧VSとメモリ8に登録された基準データとを用いて、検知対象ガスのガス濃度を算出し、LCD6にガス濃度の算出結果を表示させる(ステップST23)。
【0065】
一方、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっていなければ(ステップST22のNO)、マイコン7は、吹込検知から3秒が経過した後に、呼気の吹込が中断されたと判断して(ステップST24)、3秒後に吹込中断を検知したことをLCD6に表示させる。
【0066】
サーミスタ3の検出信号を呼気の吹込判定に使用する場合の動作は以上の通りであり、呼気の吹込判定にサーミスタ3を使用しない場合の動作について以下に説明を行う(ステップST14のNO)。
【0067】
この場合、マイコン7では、感ガス体20の抵抗値(すなわち検出電圧VS)に基づいて呼気の吹込判定を行う。マイコン7では、ヒートクリーニングの終了後もトランジスタQ1をオン/オフさせて、ヒータ兼用電極20への通電を継続しており、感ガス体20は測定期間においてもヒートクリーニング期間と略同じ温度に加熱される。またマイコン7では、トランジスタQ1をオフさせたタイミングで、例えば0.1秒毎にトランジスタQ2をオンさせる信号を出力ポートPO3から出力させ、負荷抵抗R3を介して感ガス体20に通電するとともに、感ガス体20の両端電圧VSを入力ポートPI1から取り込み、メモリ8に逐次記憶させている。そして、マイコン7では、ヒートクリーニング期間を終了すると、メモリ8から0.5秒前の感ガス体20の検出電圧VS(t−0.5)を読み出すとともに、入力ポートPI1から現在の検出電圧VS(t)を取り込み、下記の式(2)を用いて検出電圧VSの変化割合dVSを算出する。
【0068】
dVS=[VS(t)−VS(t−0.5)]/VS(t−0.5) …(2)
そして、マイコン7は、検出電圧VSの変化割合dVSが40%以上で、且つ、同一方向に変化する状態が3回(すなわち0.3秒)連続するか否かを判定する(ステップST26)。
【0069】
ここで、検出電圧VSの変化割合dVSが40%以上で、且つ、同一方向に変化する状態が3回(すなわち0.3秒)連続すれば(ステップST26のYES)、マイコン7は、呼気の吹込が開始されたと判断し、続いて、検出電圧VSの変化割合dVSが20%以上で、且つ、同一方向に変化する状態が5回(すなわち0.5秒)連続するか否かを判定する(ステップST27)。
【0070】
そして、変化割合dVSが20%以上で且つ同一方向に変化する状態が5回(0.5秒)連続すれば(ステップST27のYES)、マイコン7は、継続して吹込が行われていると判断し、3秒間待機する(ステップST28)。3秒間の待機後、マイコン7は、吹込検知から3秒目のセンサ電圧VSと4秒目のセンサ電圧VSとを測定し、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっているか否かの判定を行う(ステップST22)。
【0071】
ここで、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっていれば(ステップST22のYES)、マイコン7は、ガス濃度の測定に必要な所定の吹込時間(例えば4秒)呼気が吹き込まれたと判断し、4秒目のセンサ電圧VSとメモリ8に登録された基準データとを用いて、検知対象ガスのガス濃度を算出し、LCD6にガス濃度の算出結果を表示させる(ステップST23)。
【0072】
一方、4秒目のセンサ電圧VSが、3秒目のセンサ電圧VSの±20%以内に収まっていなければ(ステップST22のNO)、マイコン7は、吹込検知から3秒が経過した後に、呼気の吹込が中断されたと判断して(ステップST24)、3秒後に吹込中断を検知したことをLCD6に表示させる。
【0073】
またマイコン7は、ステップST26又はステップST27の判定が不成立になった場合、ヒートクリーニング終了時から6秒が経過したか否かを判定し(ステップST29)、6秒間が経過すれば、ヒートクリーニングの終了時から6秒が経過しても呼気の吹込が行われていないと判断して、LCD6に吹き掛けエラーを表示させる(ステップST25)。
【0074】
本実施形態の測定動作は以上の通りであり、測定開始時の雰囲気温度が、人間の体温に対応して設定された温度範囲外であれば、サーミスタ3の検出温度に基づいて呼気の吹込を判断している。本実施形態では、呼気吹込口から呼気が吹き込まれると、サーミスタ3の検出温度が呼気の温度に近づく方向に変化することを利用し、サーミスタ3の検出信号の微分出力が吹込判定値を超えると、呼気が吹き込まれたと判定し、また吹込判定時から所定の吹込時間が経過するまでの間に微分出力が中断判定値を下回ると、吹込が中断されたと判断しているので、感ガス体20の抵抗値変化から呼気の吹込を検知する場合に比べて、呼気の吹き掛け開始や吹込の中断を確実に判断して、ガス濃度の測定を開始させることができる。
【0075】
また、雰囲気温度が人間の体温に対応して設定された温度範囲内の場合、サーミスタ3の検出信号を用いて呼気の吹込を判断すると誤検出の虞があるが、本実施形態では測定開始時の検出温度が上記温度範囲内であれば、マイコン7が、感ガス体20の抵抗値変化から呼気の吹込を判断するので、呼気の吹込を誤検出する可能性を低減することができる。
【0076】
また更に、マイコン7は、吹込の中断を検出する際に、サーミスタ3の検出信号の微分出力だけではなく、感ガス体20の抵抗値が低濃度方向に変化することから、吹込の中断を検出しているので、より正確に吹込の中断を検出することができる。
【0077】
また、ヒータ兼用電極21を駆動するヒータ電流が流れる一対の通電用端子(コネクタCN2の1番ピン及び5番ピン)の電圧からヒータ電圧を検出すると、基板間接続コネクタCN1,CN2の接触抵抗による電圧ドロップ分も含んで検出されるため、ヒータ電圧の検出が不正確になるが、本実施形態では、ヒータ(ヒータ兼用電極21)の駆動電流が流れない電圧測定用端子(コネクタCN2の2番ピン及び4番ピン)の端子間電圧からヒータ電圧を測定しているので、ヒータ電圧を正確に測定でき、マイコン7及びヒータ駆動回路5によってヒータの発熱量、すなわち感ガス体20の温度を正確に制御することができ、ガス濃度の測定を正確に行うことができる。
【0078】
ところで、サーミスタ3の感温部は、呼気流路40の細径孔40b内で、排気口36aに近い場所に配置されている。マウスピース37に吹き込まれた呼気は、呼気流路40を通って排気口36aから外部へと排出されるので、呼気流路40内に配置されたサーミスタ3の感温部に呼気が接触し、サーミスタ3の出力が呼気温度に応じて変化する。ここで、排気口36aからサーミスタ3の感温部までの距離が長い場合、感温部の周りに残った呼気の影響で、サーミスタ3の出力が雰囲気温度に戻るのが遅れる可能性がある。そのため、連続して測定が行われると、サーミスタ3の出力変化が小さくなり、サーミスタ3の出力変化から呼気の吹き掛け開始や吹込の中断を検出しにくくなる。本実施形態では、サーミスタ3が、呼気流路40の細径孔40b内で、排気口36aに近い場所に配置されているので、呼気の吹き掛けが終了した後に、サーミスタ3の感温部の周りに滞留する呼気が排気口36aから短時間で排出されやすく、サーミスタ3の出力が雰囲気温度に対応した出力に短時間で戻りやすくなっている。
【0079】
したがって、連続して呼気の測定が行われた場合でも、サーミスタ3の出力変化を大きくでき、サーミスタ3の出力変化から呼気の吹き掛け開始や吹込の中断を検出しやすくできる。尚、サーミスタ3としては高速応答のものを用いるのが好ましく、熱時定数が5秒以上のものでは、吹き掛け検知や中断検知の感度が得られなかったが、熱時定数が2秒程度のサーミスタ3を用いることで、吹き掛け検知や中断検知の感度を十分に得ることができた。
【0080】
なお本実施形態では、細径孔40b内で中間位置よりやや排気口36a側にサーミスタ3の感温部が配置されているが、できるだけ排気口36aに近い位置にサーミスタ3の感温部が配置されるのが好ましく、排気口36aの出口付近にサーミスタ3の感温部が配置されていてもよい。但し、排気口36aの出口付近にサーミスタ3の感温部が配置されていると、サーミスタ3に異物が接触して、サーミスタ3が破損する可能性もあり、本実施形態では細径孔40bの内側で、排気口36aに近い位置にサーミスタ3の感温部が配置されている。例えば本実施形態では細径孔40bの内径が3mmで、センサブロック34の後面から約2mmの位置にサーミスタ3の感温部が配置されている。
【0081】
ところで、上記の実施形態では、本発明の技術思想を口臭測定器に適用した実施形態について説明したが、検知対象の呼気成分を口臭要因ガスに限定する趣旨のものではなく、例えば呼気に含まれるアルコール成分を検出するアルコールチェッカに本発明を適用しても良いし、アルコール以外の種々の呼気成分を検出するものに本発明を適用しても良い。
【0082】
また、本実施形態において、呼気の温度を検出するサーミスタ3に代えて、呼気を吹き込んだ際に呼気が流れる流路の圧力を検出する圧力センサを備え、圧力センサの検出出力を微分回路4に入力して、その微分出力をマイコン7に入力させるようにし、検出温度の微分値に代えて検出圧力の微分値から呼気の吹込状態を検出することも考えられる。
【符号の説明】
【0083】
1 電池電源
2 ガスセンサ
3 サーミスタ
4 微分回路
5 ヒータ駆動回路
6 LCD
7 マイコン
8 メモリ
10a センサ基板
10b 本体基板
20 感ガス体
21 ヒータ兼用電極
22 検出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹込口から吹き込まれた呼気を通過させる呼気流路及び当該呼気流路に吹き込まれた呼気を外部に排気させる排気口が設けられた測定器本体と、
検知対象ガスのガス濃度に応じて抵抗値が変化する金属酸化物半導体で形成された感ガス体及び感ガス体に埋設されたヒータを有し、呼気流路に吹き込まれた呼気の少なくとも一部が感ガス体に接触するように測定器本体内部に収納されたガスセンサと、
測定器本体の表面に露設された操作釦が押されると測定開始信号を発生する測定開始スイッチと、
測定開始スイッチから測定開始信号が入力されるとヒータへの通電を開始して、感ガス体のヒートクリーニングを所定の待機時間だけ行った後、ガス濃度の測定を行う測定期間を設けるヒータ制御部と、
呼気流路に吹き込まれた呼気の少なくとも一部が感温部に接触するように測定器本体内部に収納された温度センサと、
温度センサの検出信号の微分出力を発生する微分出力発生部と、
前記測定期間において微分出力発生部の微分出力が所定の吹込判定値を超えると、呼気が吹き込まれたと判定し、吹込判定時から前記吹込時間が経過するまでの間に、微分出力が所定の中断判定値を下回ると、呼気の吹込が中断されたと判断する吹込状態検出部と、
前記測定期間において、ガス濃度の測定に必要な所定の吹込時間呼気が吹き込まれたことを吹込状態検出部が検出すると、感ガス体の抵抗値変化に基づいて呼気に含まれる検知対象ガス成分のガス濃度を測定するガス濃度測定部とを備えたことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項2】
前記吹込状態検出部は、前記測定開始信号の入力時における前記温度センサの検出温度が、人間の体温に対応して設定された温度範囲外であれば、前記微分出力発生部の微分出力に基づいて呼気の吹込状態を検出し、前記測定開始信号の入力時における前記温度センサの検出温度が上記温度範囲内であれば、前記感ガス体の抵抗値変化から呼気の吹込状態を検出することを特徴とする請求項1記載の呼気成分測定装置。
【請求項3】
前記吹込状態検出部は、吹込判定時から前記吹込時間が経過するまでの間に、前記微分出力発生部の微分出力が所定の中断判定値を下回るか、或いは、前記感ガス体の抵抗値が低濃度方向に変化すると、呼気の吹込が中断されたと判断することを特徴とする請求項1記載の呼気成分測定装置。
【請求項4】
前記ガスセンサは、前記ヒータの両端が電気的に接続される一対のヒータ電極端子と、前記感ガス体に一端が電気的に接続された出力電極端子との3端子構造を有し、
少なくともガスセンサが実装されたセンサ基板と、少なくとも前記ヒータ制御部及び前記ガス濃度測定部の回路が形成された本体基板とを備え、
センサ基板と本体基板の間を電気的に接続する基板間接続コネクタが、一対のヒータ電極端子にそれぞれ接続されてヒータに通電するための一対の通電用端子と、一対のヒータ電極端子にそれぞれ接続されて各ヒータ電極端子の電圧値を測定するための一対の電圧測定用端子とを備え、ヒータ制御部は、一対の電圧測定用端子の端子間電圧からヒータ電圧を求め、ヒータ電圧が所望の電圧値となるようにヒータへの通電を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の呼気成分測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−232058(P2011−232058A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100301(P2010−100301)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】