説明

呼気採取容器

【課題】吹き込み力の弱い者でも確実に使用することができ、かつ、被験者が深呼吸により吸い込んだ外気がそのまま採取されるのを防止して呼気試料の正確な測定を可能とする呼気採取容器を提供する。
【解決手段】呼気採取容器1は、上端に口部3aを有するとともに下端を底部3bで閉塞して内側に呼気の収容空間Mを形成する容器本体3と、容器本体3の口部3aの上端開口を覆う天壁5および該天壁5の外周縁より垂下して口部3aを取り囲む周壁7を有し、天壁5に収容空間Mにつながる貫通開孔9を形成してなるベースキャップ11と、を備え、天壁5の裏面に、貫通開孔9と連通し先端が底部3bを指向するパイプ13を垂設するとともに、該天壁5に、貫通開孔9およびパイプ13を通って流入する呼気によって収容空間Mから押し出される気体を排出させる開孔14を形成してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被験者から呼気を採取するとともに、採取した呼気試料を、呼気分析装置等により分析を行うまでの間、内部に保持しておくための呼気採取容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
疾病の診断や健康状態の確認、飲酒に係る検査等においては、被験者の呼気を採取してその呼気中の含有成分を分析することがしばしば行われており、このような呼気の採取には従来、プラスチックフィルムおよびアルミホイル等の積層シートからなり、呼気を吹き込んだ際に膨張して内部に呼気試料を密閉、保持する袋状の呼気採取容器が用いられている(特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、被験者が呼気採取容器に呼気を吹き込むときには、先ず息を深く吸い込んでから呼気採取容器に呼気を吹き込むため、深呼吸により吸い込まれた外気がそのまま呼気採取容器の中に吹き込まれる結果、呼気試料を正確に測定できない場合もあって、これに鑑み、特許文献1には、呼気採取容器の吹き込み口内に呼気吹き込み時に所定の吹き込み抵抗を生じさせるフィルター等の抵抗要素を設けて、被験者が呼気を吹き込んだときにその吹き込み抵抗により腹式呼吸を生じさせて深呼吸により吸い込まれた外気が直接呼気採取容器内に吹き込まれるのを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−215675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような吹き込み抵抗を生じさせる呼気採取容器にあっては、健康な成人であれば問題なく呼気を吹き込むことができても、疾病を抱えた患者や体力的に劣る高齢者、肺活量が十分でない小さな子供では、その吹き込み抵抗に負けて十分な量の呼気を容器内に吹き込むことができないという問題がある。
【0006】
それゆえ、この発明は、吹き込み力の弱い者でも確実に使用することができ、かつ、被験者が深呼吸により吸い込んだ外気がそのまま採取されるのを防止して呼気試料の正確な測定を可能とする呼気採取容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の呼気採取容器は、上端に口部を有するとともに下端を底部で閉塞して内側に呼気の収容空間を形成する容器本体と、前記容器本体の前記口部の上端開口を覆う天壁および該天壁の外周縁より垂下して前記口部を取り囲む周壁を有し、前記天壁に前記収容空間につながる貫通開孔を形成してなるベースキャップと、を備え、前記ベースキャップの前記天壁の裏面に、前記貫通開孔と連通し先端が容器本体の前記底部を指向するパイプを垂設するとともに、該天壁に、前記貫通開孔および前記パイプを通って流入する呼気によって前記収容空間から押し出される気体を排出させる開孔を形成してなることを特徴とするものである。
【0008】
なお、この発明の呼気採取容器にあっては、前記収容空間への外気の導入を阻止する一方、呼気の吹き込みに伴い前記開孔を開放して該収容空間内の気体を排出させる排気弁を備えることが好ましく、前記貫通開孔に連通するノズル本体部を有し、該ノズル本体部の先端の吹き込み口から該貫通開孔に至る入口通路を通して該吹き込み口から吹き込まれる呼気を前記収容空間に導くノズル部材と、前記入口通路に配置され、呼気の吹き込み時のみ開放する吸気弁と、を備えることがより好ましい。
【0009】
また、この発明の呼気採取容器にあっては、前記排気弁と前記吸気弁とが、前記ベースキャップと前記ノズル部材との相互間に設けられた連結体を介して一体成形されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の呼気採取容器にあっては、例えば深呼吸をした後に呼気を吹き込むと、吹き込まれた呼気は貫通開孔を通った後、パイプによって収容空間内の底部近傍まで導かれる。収容空間内に予め存在していた空気または気体は、パイプによって導入された呼気によって下から押し上げられて、開孔を通って外界に排出される。これにより、収容空間内に予め収容されていた気体と吹き込まれた呼気とが置換されて、収容空間内に呼気が採取される。
【0011】
したがって、この発明の呼気採取容器によれば、容器本体の収容空間内の気体を置換して呼気試料を採取する構成としたことから、吹き込み力の弱い者でも容易に吹き込むことができるとともに、被験者が深呼吸をした後に呼気を吹き込んでも深呼吸により吸い込んだ外気(検査対象成分が含まれていない可能性の高い呼気)がそのまま採取されるのを防止することができる。しかも、吹き込んだ呼気をパイプによって容器本体の底部に一旦導いてから収容空間内の気体と置換する構成としたことから、吹き込んだ呼気がすぐさま開孔を通って排出されてしないようにして、より確実に呼気試料を採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明にしたがう一実施形態の呼気採取容器の断面図である。
【図2】(a)は図1の呼気採取容器の上部を拡大して示す断面図であり、(b)は図2(a)中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の呼気採取容器において、呼気を吹き込んだときの呼気の流れを示す断面図である。
【図4】この発明にしたがう他の実施形態の呼気採取容器の断面図である。
【図5】図4の呼気採取容器において、呼気を吹き込んだときの呼気の流れを示す断面図である。
【図6】この発明にしたがうさらに他の実施形態の呼気採取容器の上部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明にしたがう実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は、この発明の一実施形態の呼気採取容器1を示しており、この呼気採取容器1は、被験者から呼気を採取するとともに、採取した呼気試料を、呼気分析装置等(図示省略)により分析を行うまでの間、内部に保持しておくためのものであって、上端に口部3aを有するとともに下端を底部3bで閉塞して内側に呼気の収容空間Mを形成する容器本体3と、容器本体3の口部3aの上端開口を覆う天壁5および該天壁5の外周縁より垂下して口部3aを取り囲む周壁7を有し、天壁5の中央部分に収容空間Mにつながる貫通開孔9を形成してなるベースキャップ11と、を備え、ベースキャップ11の天壁5の裏面(容器本体3の収容空間Mに向く面)に、貫通開孔9と連通し先端が容器本体3の底部3bを指向するパイプ13を垂設するとともに、該天壁5に貫通開孔9およびパイプ13を通って流入する呼気によって収容空間Mから押し出される気体を排出させる開孔14を形成してなるものである。
【0015】
より具体的には、図1の実施形態の呼気採取容器1では、容器本体3は、断面円形の胴部3cと、胴部3cの下端を閉塞するとともに容器本体3の内側に向けて凸状となる上記底部3bと、胴部3cの上端に連設されるとともに上記口部3aを立設する肩部3dとを有し、これらの胴部3c、底部3bおよび肩部3dで区画形成される収容空間Mに、後述するノズル部材15を通して導入される呼気等の各種気体を収容するものである。なお、容器本体3の収容空間M内には、予め空気を収容しておいてもよいし、必要に応じて不活性ガス等の各種気体を充填しておいてもよい。
【0016】
なお、容器本体3は、ここでは胴部3cの断面形状が円形である円形ボトルであるがこれに限定されず、胴部3cの断面形状が矩形である角型ボトルを採用してもよい。また、容器本体3は、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製であって保形性および自立性を有するが、材料としてはこれに限定されず既知の各種材料により製造してもよく、収容した呼気等の変質を防止するために、容器本体3にバリア層(図示省略)を設けてもよい。また、図1において符号17は、容器本体3の口部3aの外側壁に形成され、ベースキャップ11の後述するねじ19と嵌合してベースキャップ11を保持するねじであるが、アンダーカットのような係合手段を介してベースキャップ11を口部3aに装着、保持するようにしてもよい(図示省略)。
【0017】
ベースキャップ11は、容器本体3の口部3aに装着されて呼気を容器本体3の収容空間M内に導入するものであって、図2(a)に示すように、天壁5上面に、上記貫通開孔9の周囲を囲繞するよう立設された内筒壁21と、この内筒壁21の外側(半径方向外側)に立設された外筒壁23とを有している。さらにベースキャップ11は、天壁5下面に、貫通開孔9の周囲を囲繞するとともに上記パイプ13を懸垂保持する環状の保持壁25と、該保持壁25の外側(半径方向外側)に垂設されて口部3aの内周面に嵌入されるインナーリング27とを有している。なお、環状の保持壁25に代えて、天壁5の下面に複数の爪部を形成してパイプ13の上端部を保持するようにしてもよい(図示省略)。
【0018】
また、天壁5の、内筒壁21とインナーリング27との間には、天壁5を貫通する少なくとも1つの上記開孔14が形成されるとともに、外筒壁23には、その一部を切り欠いて開孔14から排出された気体を外界に向けて排出する切り欠き部23aが形成されている。
【0019】
なお、ベースキャップ11に関し、符号19は、周壁7の内周面に形成され、口部3aのねじ17に螺合するねじであり、符号29は、周壁7の下端から半径方向外側に向けて延出し、後述するオーバーキャップ31の下端が当接するフランジである。
【0020】
そして、この呼気採取容器1は、上述したように、ベースキャップ11の保持壁25に保持され、ベースキャップ11の貫通開孔9を通った呼気を容器本体3の底部3bに導くためのパイプ13を有している。この例では、パイプ13はベースキャップ11の貫通開孔9の開口径と同じ内径を有しているがこれに限定されず、貫通開孔9の開口径よりも内径を小さくしてもよい。
【0021】
なお、この実施形態の呼気採取容器1はさらに、ベースキャップ11の上部に装着されるノズル部材15を備えている。ノズル部材15は、上端を呼気の吹き込み口とするとともに貫通開孔9と連通して該吹き込み口から該貫通開孔9に至る入口通路(吹き込まれた呼気を収容空間Mに導通する通路)Paを形成する管状のノズル本体部33と、該ノズル本体部33を起立するとともにベースキャップ11の外筒壁23に装着される装着部35であって、ベースキャップ11と協働して開孔14から切り欠き部23aを経て外界に至る出口通路(呼気の吹き込みに伴い収容空間M内の気体を排出する通路)Pbを形成する装着部35とからなる。
【0022】
装着部35は詳細には、ノズル本体部33の下端から半径方向外側に向けて延在する上面壁37と、上面壁37の縁部から垂下し、ベースキャップ11の外筒壁23に外側から嵌合する外側嵌合壁39と、外側嵌合壁39の半径方向内側で上面壁37から垂下してベースキャップ11の外筒壁23に内側から嵌合する内側嵌合壁41とを有している。なお、外側嵌合壁39の下端とベースキャップ11の天壁5との間には、開孔14および切り欠き部23aから排出された気体を通過させる所定の隙間gが形成されている。また、ノズル部材15は、上面壁37の下面から、ノズル本体部33と内側嵌合壁41との間の位置、より詳細には、ベースキャップ11の開孔14に対応する位置にて垂下し、ベースキャップ11の内筒壁21との間に後述の連結体43を保持する環状の垂下壁45を有している。連結体43は、ベースキャップ11の内筒壁21とノズル部材15の垂下壁45との相互間を密封する機能を有する。
【0023】
この実施形態の呼気採取容器1はさらに、出口通路Pb内に配置され、収容空間Mへの外気の導入(逆流)を阻止する一方、呼気の吹き込みに伴い排気口としての開孔14を開放して該収容空間M内の気体を排出させる排気弁47を備えている。ここでは排気弁47は、連結体43の下部を全周にわたって取り囲む円環状をなし、一端(半径方向内側端)にて上記連結体43に片持ち支持されるとともに他端(半径方向外側端)が自由端となって、通常は出口通路Pb(開孔14)を閉鎖する一方、収容空間Mの圧力が呼気の吹き込みに起因して高まるとその他端側が開孔14を開放する逆止弁として機能するものである。
【0024】
この実施形態の呼気採取容器1はさらに、入口通路Pa内に配置され、呼気の吹き込み時にのみ開放する吸気弁49を備えている。ここでは吸気弁49は、連結体43の上部に1箇所において一体連結された1点支持弁であり(図1のX−X断面参照)、通常はノズル本体部33の下端開口を閉塞するが、呼気の吹き込み時の圧力によって開放する逆止弁として機能するものである。なお、吸気弁49は1点支持弁に限られず、例えば3点支持弁であってもよく、あるいは、連結体43とは別体とするともに吸気弁49を上方付勢して弁座(ノズル本体部33の下端開口の周縁部)に着座させるばね部材を設けて逆止弁として機能させてもよい。
【0025】
この実施形態の呼気採取容器1はさらに、ノズル部材15およびベースキャップ11の全体を覆うオーバーキャップ31を備えている。オーバーキャップ31はノズル本体部33の上端開口に対向する頂壁51と、この頂壁51の周縁から垂下して下端がベースキャップ11のフランジ29に当接する外側周壁53とからなる。頂壁51には、その下面壁から垂下されノズル本体部33の上端開口に嵌入されるシールリング55が形成されている。外側周壁53は、この例では、ベースキャップ11の周壁の下端部外面に圧接してオーバーキャップ31の内側空間を気密に保持する機能も有している。なお、外側周壁53の下端はベースキャップ11のフランジ29に当接させなくてもよい。
【0026】
このようになる呼気採取容器1を用いて被験者の呼気を採取するにあたってはまず、オーバーキャップ31を取り外し、例えば深呼吸をした後にノズル本体部33の先端を銜えて呼気を吹き込む。そうすると、図3に示すように、呼気の圧力によって、入口通路内の吸気弁49が開放され、吹き込まれた呼気は貫通開孔9を通った後、パイプ13によって収容空間M内の底部3b近傍まで導かれる。収容空間M内に予め存在していた空気または気体は、パイプ13によって導入された呼気によって下から押し上げられて、導入された呼気による圧力上昇により開放状態となった開孔14を通って出口通路Pbを経て外界に排出される。これにより、収容空間M内に予め収容されていた気体と吹き込まれた呼気とが置換されて、収容空間M内に呼気が採取される。
【0027】
したがって、この実施形態の呼気採取容器1によれば、容器本体3の収容空間M内の気体を置換して呼気試料を採取する構成としたことから、吹き込み力の弱い者でも容易に吹き込むことができるとともに、被験者が深呼吸をした後に呼気を吹き込んでも深呼吸により吸い込んだ外気(検査対象成分が含まれていない可能性の高い呼気)がそのまま採取されるのを防止することができる。しかも、吹き込んだ呼気をパイプ13によって容器本体3の底部3bに一旦導いてから収容空間M内の気体と置換する構成としたことから、吹き込んだ呼気がすぐさま開孔14を通って排出されてしないようにして、より確実に呼気試料を採取することができる。
【0028】
なお、この実施形態の呼気採取容器1によれば、収容空間Mへの外気の導入を阻止する一方、呼気の吹き込みに伴い開孔14を開放して該収容空間M内の気体を排出させる排気弁47を設けたことから、採取した呼気を収容空間M内に閉じ込めておくことができ、すなわち、呼気を吹き込んだ後、オーバーキャップ31等で収容空間Mを強固に密閉するまでの間に採取した呼気が開孔14を通って外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0029】
また、この実施形態の呼気採取容器1によれば、排気弁47に加えて、入口通路に配置され、呼気の吹き込み時のみ開放する吸気弁49を設けたことから、採取した呼気をより確実に収納空間内に閉じ込めておくことができる。
【0030】
さらに、この実施形態の呼気採取容器1によれば、排気弁47と吸気弁49とを、ベースキャップ11とノズル部材15との相互間に設けられた連結体43を介して一体成形したことから、ノズル部材15およびベースキャップ11への吸気弁49および排気弁47の組み付けを容易に行うことができるとともに、部品点数を削減することができる。また、連結体43を、内筒壁21と垂下壁45との相互間に気密に配設することで、連結体43を隔てて半径方向に隣接する入口通路Paと出口通路Pbとを遮断することができ、予め内部空間内に存在する気体と吹き込んだ呼気との置換をより確実に行うことができる。
【0031】
また、この実施形態の呼気採取容器1によれば、上記構成になるオーバーキャップ31を設けたことから、出口通路Pbにつながるオーバーキャップ31内の内側空間を気密に保持することができるので、容器の輸送中等に容器本体3に衝撃が加わった場合でも収容空間M内の呼気試料が外部に漏れ出るのを確実に防止することができる。
【0032】
次いで、この発明の他の実施形態の呼気採取容器1について図4および図5を参照して説明する。なお、図1〜図3を参照して説明した要素と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、この実施形態の呼気採取容器1は、まず、パイプ13を図1で示した実施形態の呼気採取容器1のパイプ13よりも細くし、パイプ13の長さの短縮化を図ったものである。すなわち、このようにパイプ13の径を小さくすることで吹き込まれた呼気の流速をパイプ13を通すことで増大させることができるので、パイプ13の長さを短くしても(図示例ではパイプ13の下端は概ね容器本体3の肩部上端に位置している。)、吹き込まれた呼気を容器本体3の底部3bまで導くことができる。
【0034】
また、この実施形態の呼気採取容器1は、ノズル部材15の上面壁37に、図1〜3で示した切り欠き部23aに代えて、開孔14から排出された気体を外界に向けて排出する排出孔60を設けている。このようにすることで、図示のようにオーバーキャップ31の外側周壁53をベースキャップ11の周壁7まで延出させなくとも収容空間Mの密封が可能となるので、容器のコンパクト化を図ることができる他、材料を削減することができる。具体的には、ノズル部材15の上面壁37から高さの低い筒壁62を立設してその筒壁62の外周面にオーバーキャップ31の外側周壁53の下端部を気密に嵌合させるとともに、ノズル本体部33の外周面に、オーバーキャップ31の外側周壁53の内周面に圧接する環状突起33aを形成することにより、オーバーキャップ31の内側空間を気密に保持する構成としている。
【0035】
図5は、図4の呼気採取容器1につき、呼気を吹き込んだ際の呼気および容器本体3内の気体の流れを示している。この図に示すように、ノズル本体部33の上端開口から呼気を吹き込むと、吹き込まれた呼気は、入口通路Paおよびパイプ13を通って加速された後、収容空間M内の底部3b近傍に導かれ、収容空間M内の気体はこの呼気よって上方に押されて開孔14および排気孔60を通って外界に排出される。
【0036】
以上、図示例に基づきこの発明を説明したが、この発明は特許請求の範囲の記載範囲内で適宜に変更、改良することができ、例えば、上記実施形態では、パイプは、ベースキャップとは別体として形成されるものであったが、図6に示す例のように、貫通開孔9を囲繞するパイプ13’をベースキャップ11の天壁5に一体に形成してもよい。また、上記実施形態では、ベースキャップ11とノズル本体部33とは別体として説明したが、ベースキャップの内筒壁を図示例のものよりも上方に延長してノズルとしてもよい(図示省略)。また、排気弁および吸気弁は省略してもよく、あるいは、排気弁および吸気弁の何れか一方のみ設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくして、この発明により、吹き込み力の弱い者でも確実に使用することができ、かつ、被験者が深呼吸により吸い込んだ外気がそのまま採取されるのを防止して呼気試料の正確な測定を可能とする呼気採取容器を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0038】
1 呼気採取容器
3 容器本体
3a 口部
3b 底部
3c 胴部
3d 肩部
5 天壁
7 周壁
9 貫通開孔
11 ベースキャップ
13,13’ パイプ
14 開孔
15 ノズル部材
17,19 ねじ
21 内筒壁
23 外筒壁
23a 切り欠き部
25 保持壁
27 インナーリング
29 フランジ
31 オーバーキャップ
33 ノズル本体部
35 装着部
37 上面壁
39 外側嵌合壁
41 内側嵌合壁
43 連結体
45 垂下壁
47 排気弁
49 吸気弁
51 頂壁
53 外側周壁
55 シールリング
60 排気孔
62 筒壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に口部を有するとともに下端を底部で閉塞して内側に呼気の収容空間を形成する容器本体と、
前記容器本体の前記口部の上端開口を覆う天壁および該天壁の外周縁より垂下して前記口部を取り囲む周壁を有し、前記天壁に前記収容空間につながる貫通開孔を形成してなるベースキャップと、を備え、
前記ベースキャップの前記天壁の裏面に、前記貫通開孔と連通し先端が容器本体の前記底部を指向するパイプを垂設するとともに、該天壁に、前記貫通開孔および前記パイプを通って流入する呼気によって前記収容空間から押し出される気体を排出させる開孔を形成してなることを特徴とする呼気採取容器。
【請求項2】
前記収容空間への外気の導入を阻止する一方、呼気の吹き込みに伴い前記開孔を開放して該収容空間内の気体を排出させる排気弁を備える、請求項1に記載の呼気採取容器。
【請求項3】
前記貫通開孔に連通するノズル本体部を有し、該ノズル本体部の先端の吹き込み口から該貫通開孔に至る入口通路を通して該吹き込み口から吹き込まれる呼気を前記収容空間に導くノズル部材と、
前記入口通路に配置され、呼気の吹き込み時のみ開放する吸気弁と、を備える、請求項2に記載の呼気採取容器。
【請求項4】
前記排気弁と前記吸気弁とが、前記ベースキャップと前記ノズル部材との相互間に設けられた連結体を介して一体成形されたものである、請求項3に記載の呼気採取容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15327(P2013−15327A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146441(P2011−146441)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】