説明

咀嚼可能なゲル化エマルジョン

【課題】
【解決手段】各単位用量が単一の担体内に親油性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物であって、当該担体が、軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含む、経口医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤物質(好ましくは親油性薬剤物質であるが任意で親水性または両親媒性薬剤物質である)を含む軟質でありゲル化した水中油型エマルジョンを含む経口医薬組成物、その調製方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤物質、すなわち医薬組成物の生理活性成分は疎水性であり、その結果、胃腸管へ投与された場合、身体による取り込みは乏しい。これは、不経済なことに加えて、患者が多量または頻繁な投薬を受けなければならないこと、あるいは薬剤物質が注射されなくてはならないことを意味し得る。注射は、患者にとって、より不快であり、医師または看護師の協力を必要とする場合がある処置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、薬剤物質の単位用量が大きいと、経口単位剤形(例えば、錠剤、カプセル)も同様に大きくなり得、高齢患者または若年患者が嚥下することは困難であり、さらに成人健常者であっても嘔吐反応を引き起こし得る。したがって、多数の用量単位または複数の大きくて嚥下し難い用量単位の摂取を伴う治療的あるいは予防的な投薬レジメンはいずれも患者が服薬順守しない危険性が本質的にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかしながら、我々は、親油性薬剤物質が、軟質で咀嚼可能(チュアブル)なゲル化した水中油型エマルジョン内に含まれると、これらの問題を伴わずに投与できることを見出した。
【0005】
さらに、我々は、軟質でゲル化した水中油型エマルジョンの形態で親油性化合物を提供することにより、親油性化合物の取り込みが増加することを見出した。
【0006】
したがって、1つの態様では、本発明は、各単位用量が単一の担体内に親油性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物を提供し、当該担体は、軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、3種類の異なる投与形態で送達された、総血漿中のEPAのω−3脂肪酸濃度および組成を示すグラフである。
【図2】図2は、3種類の異なる投与形態で送達された、総血漿中のDHAのω−3脂肪酸濃度および組成を示すグラフである。
【図3】図3は、取り込まれたEPAの総量、すなわち、図1におけるグラフの曲線下面積を示すグラフである。
【図4】図4は、取り込まれたDHAの総量、すなわち、図2におけるグラフの曲線下面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
さらなる態様では、本発明は、単位用量形態の経口医薬組成物の調製方法を提供し、当該方法は、例えば、ω−3酸エステル、ω−6酸エステル、ω−9酸エステル、または植物油などの多価不飽和脂肪酸エステル、好ましくはω−3酸エステル、特にEPAエステル、ドコサヘキサエン酸(DHA)エステル、またはEPAエステルおよびDHAエステルの組み合わせを含むものなどの生理学的に許容される油に溶解または分散した親油性薬剤物質を含む油相を形成すること;生理学的に許容されるゲル化剤の水溶液を含む水相を形成すること;当該油相および当該水相を用いて水中油型エマルジョンを形成し、当該エマルジョンをゲル化させて軟質で咀嚼可能な塊を形成すること;および当該エマルジョンのゲル化前、ゲル化中、またはゲル化後に当該エマルジョンを用量単位に分割することを含む。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、各単位用量が単一の担体内に親水性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物を提供し、当該担体は軟質で咀嚼可能なゲル化した水−油−水型(water-in-oil-in-water)二重エマルジョンを含む。ここで、水相中に水溶性薬剤物質を含む油中水型エマルジョンが、生理学的に許容されるゲル化剤の水溶液を含む水相でさらに乳化される。これは、投与される親水性薬剤物質に不快な味が強い場合に特に有用である。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、単位用量形態の経口医薬組成物の調製方法を提供し、当該方法は、例えば、ω−3酸エステル、ω−6酸エステル、ω−9酸エステル、または植物油などの多価不飽和脂肪酸エステル、好ましくはω−3酸エステル、特にEPAエステル、ドコサヘキサエン酸(DHA)エステル、またはEPAエステルおよびDHAエステルの組み合わせを含むものなどの生理学的に許容される油を含む油相を形成すること;親水性薬剤物質が溶解または分散した水溶液を含む水相を形成すること;当該油相および当該水相を用いて油中水型エマルジョンを形成し、当該油中水型相および別の水相を用いて、生理学的に許容されるゲル化剤の水溶液を含む水中油型エマルジョンを形成し、当該エマルジョンをゲル化させて軟質で咀嚼可能な塊を形成すること;および当該エマルジョンのゲル化前、ゲル化中、またはゲル化後に当該エマルジョンを用量単位に分割することを含む。
【0011】
本発明の軟質でゲル化した用量単位は、胃を通過する際はそのままであり、環境がそれほど過酷でなく取り込みが可能である胃腸管のさらに下流において、ゲルマトリックス内に含まれる薬剤物質を放出する。この構成では、マトリックスの周辺にある薬剤物質のいくらかは、胃を通過する際に胃液により分解され得る。とはいえ、本発明の軟質でゲル化した用量単位は、咀嚼可能であり、したがって、多量(例えば、1000mgより多い量、より具体的には1500〜5000mg)であっても、より容易に嚥下されるという利点を有する。多くの用量が必要な場合には、単一の咀嚼可能な用量単位による利点のほうが、胃を通過する際に、薬剤物質が、咀嚼された断片の周囲から比較的少量損失することに勝り得る。咀嚼可能なゲル単位は、さらに、錠剤やカプセルをそのまま嚥下すると嘔吐反応を起こす患者(特に子供または高齢の患者)が、より服薬遵守するという利点を有する。
【0012】
したがって、1つの態様では、本発明は、各単位用量が単一の担体内に親油性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物を提供し、当該担体は、胃を通過する際に実質的に無変化であり得る、軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含む。
【0013】
したがって、1つの態様では、本発明は、各単位用量が単一の担体内に親水性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物を提供し、当該担体は、胃を通過する際に実質的に無変化であり得る、軟質で咀嚼可能なゲル化した水−油−水型二重エマルジョンを含む。
【0014】
軟質で咀嚼可能であるとは、ゲル化エマルジョンは、硬いというよりはむしろ容易に変形可能ではあるが、同時に、自己支持性がある、すなわち、粘稠な液体のようには垂れず、咀嚼の際に容易に破片化し得る、すなわち、結果として、丸ごと嚥下する必要がないということを意味する。典型的には、このようなゲル化エマルジョンは、21℃、50%の相対湿度、および大気圧で0.1mm/sの力/変形勾配を加えた際に、少なくとも実質的に可逆的に、すなわち弾性的に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも40%圧縮され得る。
【0015】
好ましくは、本発明の軟質でゲル化した用量単位の圧縮破断強度は、500g/cm2より大きく、特に1000g/cm2より大きく、特に好ましくは2000g/cm2より大きく、例えば、2900〜3600g/cm2である。
【0016】
単一の担体とは、各用量単位がゲル化エマルジョンを1個含むということを意味する。このような1個1個を「コア」と呼ぶ場合がある。
【0017】
コアは、より大きなゲル化エマルジョンの小片から、例えば、ゲル化が不完全なエマルジョンの用量単位を切断することによるかまたはより好ましくは押出すかもしくは成型することにより形成されてもよい。
【0018】
薬剤物質とは、栄養分の他に、所望の治療的または予防的効果を有する物質、すなわち、例えば米国や欧州連合において、薬物として規制当局の認可を必要とする種類の物質を意味する。好ましさは劣るが、薬剤物質は、規制目的では薬剤物質として分類されるビタミン、例えば、ビタミンA、ビタミンK、またはビタミンD(例えば、エルゴカルシフェロール、アルファカルシドール、およびカルシトリオール)であってもよい。もちろん、これらが包含されるビタミンや、ミネラルおよび/またはハーブが、非ビタミン薬剤物質に加えて上記組成物に含まれてもよい。
【0019】
両親媒性薬剤物質とは、油滴表面に分布する薬剤物質を意味する。本発明の水中油型エマルジョンでは、両親媒性薬剤物質は油相と混合され、本発明の二重エマルジョンでは、両親媒性薬剤物質は、二重エマルジョンの油相または不連続な水相のいずれかと混合される。
【0020】
本発明に従って使用する適切な薬剤物質の分類の例としては、鎮痛剤;抗炎症剤;抗癌剤;心血管作動薬;生物学的薬剤;抗アレルギー剤(例えば、抗ヒスタミン剤);うっ血除去薬;制吐剤、胃腸の機能に影響を与える薬剤、血液および造血器官に作用する薬剤、腎機能および心血管機能に影響を与える薬剤、抗真菌剤、泌尿器系の薬剤、ホルモン剤、抗菌剤、抗てんかん剤、精神安定剤、抗精神病剤、精神賦活剤、抗コリンエステラーゼ薬、呼吸器に作用する薬剤、および目に作用する薬剤が挙げられる。
【0021】
本発明に従って使用する特定の親油性薬剤物質の例としては、テマゼパム;ジフェンヒドラミン;ゾルピデム;トリアゾラム;ニトラゼパム;テストステロン;エストラジオール;プロゲステロン;ベンゾジアゼピン;バルビツル酸塩;シクロスポリン;インスリン;カルシトニン;デキストロメトルファン;プソイドエフェドリン;フェニルプロパノールアミン;ブロモクリプチン;アポモルヒネ;セレギリン;アミトリプチリン;デキストロアンフェタミン;フェンテルミン;マジンドール;コンパジン;クロルプロマジン;ペルフェナジン;フルオキセチン、ブスピロン;クレマスチン;クロルフェニラミン;デクスクロルフェニラミン(dexochlorpheniramine);アステミゾール;ロラタジン;パラセタモール;ケトプロフェン;ナプロキセン;および特にイブプロフェンが挙げられる。
【0022】
本発明に従って使用する特定の親水性薬剤物質の例としては、ナトリウムアセタゾラミド、アセチルサリチル酸、アミノフィリン、塩酸アミオダロン、アスコルビン酸、アテノロール、ベンドロフルメチアジド、ホリナートカルシウム、カプトプリル、塩酸セチリジン(cetrizine hydrochloride)、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸クロルプロマジン、塩酸シメチジン、塩酸シプロフロキサシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸クロニジン、リン酸コデイン、塩酸シクリジン、シクロホスファミド、リン酸デキサメタゾンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、塩酸ジシクロミン(dicyclomide hydrochloride)、塩酸ジルチアゼム、塩酸ジフェンヒドラミン、リン酸ジソピラミド、塩酸ドキセピン、マレイン酸エナラプリル、エチルコハク酸エリスロマイシン、酢酸フレカイニド(flecanide acetate)、塩酸フルフェナジン、葉酸、塩酸グラニセトロン(granisteron hydrochloride)、グアイフェネシン(guafenesin)、乳酸ハロペリドール、塩酸ヒドラジン(hydralazin hydrochloride)、硫酸ヒドロキシクロロキン(hydrochloroquine sulfate)、塩酸ヒドロモルホン、塩酸ヒドロキシジン、インドメタシンナトリウム、イソニアジド、塩酸イソプレナリン、ケトロラクトロメタモール(ketorolac trometamol)、塩酸ラベタロール、リシノプリル、硫酸リチウム、ベンジル酸メソリダジン(mesoridazine benzylate)、塩酸メタドン、塩酸メチルフェニデート、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、酒石酸メトプロロール、塩酸メトロニダゾール、メチルドーパ、塩酸メキシレチン、塩酸モリドン(molidone hydrochloride)、硫酸モルヒネ、塩酸ナルトレキソン、硫酸ネオマイシン、塩酸オンダンセトロン、硫酸オルシプレナリン、オキサシリンナトリウム、塩化オキシブチニン、塩酸オキシコドン、パラセタモール、ペニシラミン、ペントキシフィリン、塩酸ペチジン、フェノバルビタールナトリウム、フェノキシメチルペニシリンカリウム、塩酸フェニレフリン、フェニトインナトリウム、ヨウ化カリウム、リン酸プリマキン、塩酸プロカインアミド、塩酸プロカルバジン、マレイン酸プロクロルペラジン、塩酸プロマジン、塩酸プロメタジン、塩酸プロプラノロール、塩酸プソイドエフェドリン、臭化ピリドスチグミン、塩酸ピリドキシン、塩酸ラニチジン、硫酸サルブタモール、エタクリン酸ナトリウム、塩酸ソタロール、コハク酸スマトリプタン(sumatripan)、塩酸テルビナフィン、硫酸テルブタリン、塩酸テトラサイクリン、塩酸チオリダジン、塩酸チオチキセン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸トリプロリジン、バルプロ酸ナトリウム、塩酸バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、塩酸ベラパミル、ワルファリンナトリウムが挙げられる。
【0023】
本発明の組成物の単位用量当たりの薬剤物質の量は、好都合には、薬剤物質の従来の処方における単位用量当たりの量の50〜200%、特に80〜120%、または通常推奨される1日の成人薬用量または小児薬用量の25、50、または100%の範囲である。イブプロフェンに関しては、例えば、単位用量当たりの量は、好ましくは、100〜1500mg、とりわけ200〜1200mg、特に400〜600mgである。
【0024】
本発明の組成物は、特に好ましくは、ゲル化エマルジョンのコアからなる。しかしながら、好ましさは劣るが、当該組成物は、生理学的に許容される被覆剤の被膜を備えたゲル化エマルジョンのコアを含んでもよい。このような被膜は、製薬業界で従来からある種類のものであってもよく、従来の手段、例えば噴霧または浸漬により塗布されてもよい。いくつかの用途、特に小児用途では、薄い糖衣(でなければ甘味をつけた)被膜が望ましい場合がある。しかしながら、口内で迅速に溶けるものでなければ硬い被膜は一般に望ましくなく、というのも軟質のゲル化コアが嚥下を促すように咀嚼可能であるということが本発明の主眼であるからである。
【0025】
咀嚼し易さのため、コアは球形でないのが好ましい。円盤状やレンズ状が適している一方で、コアは細長い、例えば、円筒状または同様の形状であることが好ましい(場合によっては当然丸い先端や、1つ以上の平たい側面を有する)。小児に投与する場合、コアは、子供の目を引く形状、例えば、幾何学的な形や、動物またはアニメのキャラクターの形であってもよい。このように、単位用量は、従来の錠剤またはカプセルを嚥下するのが困難な患者、例えば、若年患者、高齢患者、嘔吐反応がある患者、化学療法を受ける患者、その他口腔機能が低下した患者によって容易に摂取され得る。
【0026】
本発明の組成物の1つの大きな利点が、従来の錠剤またはカプセルと比べて摂取が容易なことであるので、コアは一般にかなり大きくなり、例えば、100〜3000mg、とりわけ400〜2000mg、特に600〜1500mgの質量を有する。単位当たりの薬剤物質の用量がかなり小さくかつ本発明の利点がバイオアベイラビリティーの向上である場合は、コアは、より小さい、例えば、50mgほどに小さくてもよいが、そのような場合であっても、より大きなコアを使用してもよく、この場合は、例えば、リン脂質、グリセリド、および低級アルキル(例えば、C1-6アルキル(特にエチル))エステルなどのポリ不飽和脂肪酸エステルなどの有益な油の供給源として上記組成物を使用してもよい。これに関して好ましい多価不飽和脂肪酸としては、ω−3酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物中の油相の油は、例えば、ω−3酸エステル、ω−6酸エステル、ω−9酸エステル、または植物油などの多価不飽和脂肪酸エステル、好ましくはω−3酸エステル、を含む任意の生理学的に許容される油であってもよいが、好ましくは、脂肪酸エステル(例えば、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド、および低級アルキルエステル)の1種または混合物である。このような物質は、天然物、合成物、または半合成物であってもよい。植物油および海産油(例えば、植物種子、藻類、魚(特に脂肪分の多い魚)、微生物、および海産無脊椎動物(特にオキアミ)由来の油)の使用が、DHAおよび/またはEPAのエチルエステルの使用と同様に特に好ましい。哺乳類油は一般に望ましくない。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、油相の油は、エチルEPAエステルとエチルDPAエステルとの90%混合物であってもよい。これは、ノルウェー国リサケル(Lysaker)のプロノバ・バイオケア社(Pronova Biocare AS)からのオマコール(登録商標)として入手可能である。
【0029】
薬剤物質が酸化に弱くない場合、一般に、同様に酸化に弱くない油を使用することが好ましく、これは、この場合、調製または保存の際に酸化からエマルジョンを保護する必要が無いからである。その場合は、多価不飽和酸の含有量が低いかまたは無い油を使用してもよい。しかしながら、薬剤物質が酸化に弱い場合、多価不飽和脂肪酸エステル、特にω−3エステルであるか大部分が当該エステルである油を使用することが好ましく、これは当該エステルが部分的に薬剤物質の酸化を低減させ得、また当該エステルが摂取者にさらなる利益をもたらし得るからである。薬剤物質が酸化に弱くない場合であっても、多価不飽和脂肪酸エステルであるか大部分が当該エステルである油の使用が、特にこのようなエステルが薬剤の有益な効果に寄与する場合、例えば、薬剤物質が心血管治療剤または抗癌剤である場合には望ましい場合がある。
【0030】
典型的には、油相は、用量単位当たり0.05〜5g、好ましくは0.1〜3g、特に0.2〜2g、具体的には0.3〜1.25g、より具体的には0.4〜0.75gを占める。言い換えれば、油相は、好ましくは、用量単位の5〜75重量%、特に少なくとも35〜50重量%、例えば40〜50重量%を占める。
【0031】
エマルジョンの水相で使用するゲル化剤は、軟質で咀嚼可能な自己支持性のゲル化した水中油型エマルジョンを形成することができる、生理学的に許容される任意のゲル化剤(好ましくは糖類(例えば、オリゴ糖もしくは多糖)、タンパク質もしくは糖タンパク質)またはその組み合わせである。多くのこのような物質が、食品業界および製薬業界から公知であり、例えば、G.O.フィリップス(G O Phillips)およびP.A.ウィリアムス(P A Williams)(編者)、「親水コロイドハンドブック(Handbook of hydrocolloids)」、ウッドヘッド・パブリッシング(Woodhead Publishing)、ケンブリッジ、英国、2000年に記載されている。ゲル化剤は、好ましくは、例えば、温度、pH、金属イオン(例えば、1族または2族金属イオン)の存在といった生理化学的パラメータの変化に影響されて、ゾル・ゲル転換することのできる物質である。好ましいゲル化剤としては、ゼラチン、アルギン酸塩、およびカラギーナンが挙げられる。しかしながら、ゼラチンの使用が特に好ましい。というのも、ゼラチンを使用すれば、喉に詰まった断片が確実に崩壊し、かつ所望の特性を有するコアを容易に製造することができるからである。
【0032】
ここで、ゲル化エマルジョンは、自己支持性があり、軟質で、咀嚼した際に破片化し得るということが強調されなければならない。咀嚼せずにゲル化エマルジョンが口内で速やかに溶解することは望ましくない。というのも、上記組成物の投与が、薬物の油剤の投与とほとんど機能的に違わないことになるからである。ゼラチンは、ゲル化エマルジョンにこれら所望の特徴を付与するために使用することができる。
【0033】
本発明の組成物中のゲル化剤として使用されるゼラチンは、任意の哺乳動物のコラーゲンまたは任意の水生動物種のコラーゲンから製造されるものでもよいが、海水魚、特に冷水魚および温水魚由来のゼラチンの使用が好ましい。
【0034】
イミノ酸含有量が5〜25重量%のゼラチンが好ましく、より具体的にはイミノ酸含有量が10〜25重量%のものである。当該ゼラチンは、典型的には、重量平均分子量が10〜250kDa、好ましくは75〜220kDa、特に80〜200kDaの範囲内である。ブルーム値がゼロであるか、60〜300、特に90〜200という低ブルーム値のゼラチンが好ましい。ブルーム値がゼロであるゼラチン(例えば、冷水魚のゼラチン)を使用する場合、これは、典型的には、他のゼラチンまたは他のゲル化剤と共に使用する。冷水魚のゼラチンおよび温水魚のゼラチンの組み合わせが特に好ましい。ゼラチンは、典型的には、1〜50重量%、好ましくは2〜35重量%、特に5〜25重量%の濃度で水相中に存在することになる。ゼラチンと多糖類との混合物の場合は、水相におけるゼラチンと多糖類との重量比は、典型的には、50:1〜5:1、好ましくは40:1〜9:1、特に20:1〜10:1となる。
【0035】
多糖類、または多糖類とゼラチンとの混合物をゲル化剤として使用する場合、天然多糖類、合成多糖類、または半合成多糖類、例えば、植物、魚類、陸生哺乳類、藻類、細菌由来の多糖類、ならびにこれらの誘導体および断片化産物を使用するのが好ましい。典型的な海産多糖類としては、カラギーナン、アルギン酸塩、寒天、およびキトサンが挙げられる。典型的な植物多糖類としては、ペクチンが挙げられる。典型的な微生物多糖類としては、ジェランおよびスクレログルカンが挙げられる。海産多糖類、特にカラギーナンおよびアルギン酸塩、とりわけカラギーナンの使用と同様に、帯電し(例えば、静電的に帯電し)かつ/または硫酸化した多糖類の使用が好ましい。代表的な多糖類ゲル化剤として下記ではカラギーナンを使用する。
【0036】
イオタカラギーナンおよびカッパカラギーナンを含むカラギーナン群(family)は、紅藻類から産生される直鎖状硫酸化多糖類の一群である。カッパカラギーナン中の反復二糖類単位は、β−D−ガラクトース−4−スルファートおよび3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトースである一方、イオタカラギーナン中の反復二糖類単位は、β−D−ガラクトース−4−スルファートおよび3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトース−2−スルファートである。カッパカラギーナンおよびイオタカラギーナンはいずれも食品製剤に使用される。カラギーナンは、安定剤、乳化剤、ゲル化剤、および脂肪代替物として使用される。
【0037】
イオタカラギーナンおよびカッパカラギーナンはいずれも、水性環境中で塩硬化性または低温硬化性の可逆ゲルを形成する。コイル・ヘリックス転移やヘリックスの凝集によりゲルネットワークが形成される。カッパカラギーナンは、特定の一価陽イオンの結合部位を有し、その結果、Cs+>K+>>Na+>Li+の順で剛性率および弾性率が低いゲルが形成される。概して、塩濃度が増加すると、カッパカラギーナンゲルの弾性率ならびに硬化温度および溶融温度が上昇する。本発明により、例えば、100mMまで、より具体的には50mMまでの濃度でカッパカラギーナンを使用する場合、水溶性のカリウム、ルビジウム、またはセシウム化合物、特にカリウム化合物、特に天然の化合物(例えば、塩)を使用するのが好ましい。塩依存性の構造転移もイオタカラギーナンについて認められる。当該分子が、Ca2+のような多価陽イオンの存在下で強力なヘリックス安定化を伴うコイル・ヘリックス転移を受けることも公知である。本発明により、例えば、100mMまでの濃度でイオタカラギーナンを使用する場合、水溶性のカルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、またはアルミニウム化合物、とりわけカルシウム化合物、特に天然の化合物(例えば、塩)を使用するのが好ましい。
【0038】
本発明に従って使用される多糖類ゲル化剤の重量平均分子量は、典型的には、5kDa〜2MDa、好ましくは10kDa〜1MDa、最も好ましくは100kDa〜900kDa、特に200〜800kDaである。当該ゲル化剤は、典型的には、水相中で0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、特に0.2〜1重量%の濃度で使用される。一価または多価陽イオン、典型的には、1族または2族金属イオンが水相に含まれる場合、その濃度は、典型的には、2.5〜100mM、特に5〜50mMの範囲内である。
【0039】
ゲル化剤および水および必要とされる任意のゲル化開始剤に加えて、水相中には他の生理学的に許容される物質が存在していてもよく、例としては、乳化剤、乳化安定剤、pH調整剤、粘度調整剤、甘味料、賦形剤、ビタミン(例えば、ビタミンC、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、フォラシン、パントテン酸)、ミネラル、香味剤、風味剤、着色剤、生理活性剤などである。油相中にはビタミンEなどの親油性酸化防止剤が含まれるのが特に好ましい。油相中に含まれてもよい他のビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、およびビタミンKがある。このようなさらなる成分は、食品業界、製薬業界、および栄養補助食品業界において広く使用されている。乳化安定剤としてセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルプロピルセルロース)を使用するのが特に好ましい。
【0040】
エマルジョンの水相のpHは、好ましくは2〜9、特に3〜7.5の範囲内である。
【0041】
水相は、好ましくはゲル化温度が10〜30℃、より好ましくは15〜28℃の範囲内であり、溶融温度が20〜80℃、より好ましくは24〜60℃、特に28〜50℃の範囲内である。
【0042】
水相に甘味料が含まれる場合、甘味料は、典型的には、ショ糖、果糖、ブドウ糖、還元ブドウ糖、麦芽糖、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルト、エリスリトール、ポリグリシトール、ポリグルシトール、およびグリセロールなどの天然甘味料、ならびにアスパルテーム、アセスルファム・ケイ、ネオテーム、サッカリン、スクラロースなどの人工甘味料から選ばれる。非う蝕性甘味料を使用するのが好ましく、キシリトールの使用が特に好ましい。
【0043】
薬剤物質が、鎮痛剤、特にパラセタモールもしくはアセチルサリチル酸、または抗ヒスタミン剤である場合、ゼラチンを使用することおよび/または多価不飽和脂肪酸を実質的に含まない(すなわち酸化的に安定した)油を使用することが好ましい。
【0044】
親油性の薬剤物質に加えて、ゲル化エマルジョンは、骨粗鬆症の治療または予防で用いるカルシウム化合物、特に炭酸カルシウムの送達ベヒクルとして使用してもよい。この目的のため、カルシウム化合物(例えば、WO00/28973およびWO96/09036(当該文献は参照により本書に援用される)に記載のカルシウム塩(特に炭酸カルシウム))は、ゲル化前またはゲル化中に油相および水相の一方または両方に分散させてもよい。あるいは、水溶性または油溶性のカルシウム塩が水相または油相に溶解されてもよい。このような組成物では、組成物中にキシリトールおよびビタミンDのどちらかまたは両方を含む(例えば、水相および油相にそれぞれ)ことが特に望ましい。
【0045】
骨粗鬆症治療用のカルシウム錠は、約500mgのカルシウム用量を提供するように、典型的には、1グラムを優に超える大きくてかつパリパリと噛み砕くことができる円盤状のものである。当該錠剤は、丸ごと嚥下するのが非常に難しく、噛み砕くかまたは溶解すると、持続的で不快な食感を呈し得る炭酸カルシウム粒子を口内に放出する。このような錠剤は高齢者に日々必要である、そして、摂取が困難であるので患者の服薬遵守に関する問題が結果として存在する。本明細書に記載のタイプの軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョン内にカルシウムを提供することにより、多量の一日量を一般に二回または単回投与単位で患者が摂取するのが非常に容易になる。
【0046】
錠剤中に存在するカルシウム化合物の体積平均粒子径は、好ましくは、0.5〜25μm、とりわけ1〜20μm、特に2〜15μmである。
【0047】
本発明の組成物に関しては錠剤の大きさは問題ではないので、カルシウム化合物のうちの少なくともいくらかを溶解した形態で提供してもよい(固形であり噛み砕くことができる錠剤に関しては、摂取を促すために錠剤の大きさをできる限り小さくするということは、粒子状の炭酸カルシウムとしてカルシウム化合物を提供するということであると意味されてきた)。
【0048】
カルシウムの一日量は、好ましくは、Caが500〜2000mg、特にCaが800〜1500mg、とりわけCaが約1000mgである。好ましいことであるが、ビタミンD(例えば、ビタミンD3)が併用される場合、一日量は、好ましくは、100〜1500IU、特に200〜1000IU、とりわけ400〜900IUである。カルシウム対ビタミンDの比としては、1gのCaに対してビタミンDが800〜900IUであるのが特に好ましい。本発明の組成物の用量単位当たりのこの用量の割合は、典型的には20〜100%、好ましくは約25%、約50%、または約100%、特に約50%または100%である。
【0049】
したがって、さらなる態様では、本発明は、単一の担体内に生理学的に許容されるカルシウム化合物を含む用量単位形態の経口医薬組成物を提供し、当該担体は軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含み、用量単位当たりのカルシウム含有量は、少なくともCaが125mg、例えばCaが125〜2000mg、特にCaが400〜1200mgである。
【0050】
本発明の組成物の用量単位は、従来の様式で形成されてもよく、例えば、エマルジョンを調製することおよびエマルジョンをゲル化した塊へ形成させることは、例えば、ゲル化が完了する前に型へ投入するかまたはゲル化した塊を個々の用量単位に切断し、所望であればゲル化した用量単位を被覆することによるものである。乳化工程および未包装のゲルに関連するその後の工程は、好ましくは、非酸化雰囲気(例えば、窒素雰囲気)下で行われる。
【0051】
特に好ましくは、用量単位はブリスターパックされ、したがって、型としてブリスター包装のブリスター層を使用することが特に望ましい。ブリスターパックは次にホイルで密封することができる。酸素不浸透性ホイル包装の使用は、例えば、ブリスターパックをラミネートしたものとしてまたは単一の投与単位を含む小袋としての両方で特に好ましい。酸素不浸透性ホイル(例えば、金属/プラスチックのラミネート)は、食品業界および製薬業界において周知である。
【0052】
別の態様によれば、本発明は、ヒトの治療方法で使用する本発明による組成物の製造のための薬剤物質の使用を提供する。
【0053】
別の態様によれば、本発明は、有効量の薬剤物質を用いたヒト対象者の治療方法を提供し、当該方法は、本発明による組成物において当該物質を当該対象者に経口投与することを含む。
【0054】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明による組成物がホイルで包まれたものを含む薬剤包装、好ましくはブリスターパックまたは小袋を提供する。
【0055】
本発明の実施形態を以下の非限定的な実施例および添付の図面で説明する。
【0056】
[図面の簡単な説明]
図1および図2は、それぞれ、3種類の異なる投与形態で送達された、総血漿中のEPAおよびDHAのω−3脂肪酸濃度および組成を示すグラフである。
【0057】
図3および図4は、それぞれ、取り込まれたEPAおよびDHAの総量、すなわち、それぞれ図1および図2におけるグラフの曲線下面積を示すグラフである。
【実施例1】
【0058】
<薬剤を含有しない組成物>
水相を下記の成分から形成する。
ゼラチン:7.5重量%
キシリトール:36重量%
ソルビトール:14重量%
50%クエン酸:1重量%
レモン香料:0.15重量%
水:総量が100重量%になる量。
【0059】
ヒマワリ油(あるいはω−3エステル(オマコール(登録商標)))を水相と45:55の重量比で乳化し、1.5gのアリコートでこのエマルジョンを金属/プラスチック積層体ブリスタートレーに並んだ細長い型に注ぎ、固化させる。このブリスタートレーを、金属/プラスチックホイルカバーシートで熱封止する。
【実施例2】
【0060】
<薬剤含有組成物>
下記表1に記載の薬剤を、表1に示す用量単位当たりの濃度で、実施例1で使用した油相または水相に(親油性の場合は油相中に、そうでない場合は水相中に)溶解させるか分散させた後、実施例1と同様にエマルジョンを製造し、注入し、固化する。固化したゲルの用量単位を実施例1と同様に包装する。
【0061】
用量単位当たりの薬剤濃度が100mg未満のものについては、用量単位が、250、500、または750mgであるのが好都合である。用量単位当たりの薬剤濃度が100mgを超えるものについては、用量単位が、500、1000、1500、2000、2500、または3000mgであるのが好都合である。油相の油としてω−3エステルを使用する場合、用量単位は好ましくは少なくとも1000mgである。
【0062】
【表1】

【0063】

【0064】
セレギリン、アポモルヒネ、インスリン、およびカルシトニンの用量単位は、咀嚼/嚥下されるよりもむしろ口内で溶解するのが好ましい。
【実施例3】
【0065】
<アラビアガム含有組成物>
水相を下記の成分を使用して調製する。
ゼラチン:5.7重量%
キシリトール:24.2重量%
ソルビトール:10.4重量%
50%クエン酸:0.6重量%
レモン香料:1.1重量%
アラビアガム3.7重量%
水:総量が100重量%になる量。
【0066】
実施例1および実施例2と同様に、この水相を使用して薬剤を含まない用量単位および薬剤を含む用量単位を調製する。
【実施例4】
【0067】
<カルシウム組成物>
さらにヒドロキシプロピルメチルセルロースを1重量%用いて水相を実施例1に従って調製する。1250mg/mLの炭酸カルシウム(フランス国スコラ社(Scora SA)からのスコラライト(Scoralite)1B)をこの水相に分散させ、その後、溶解したビタミンD3を含む鱈肝油(体積比1:1)を加えてエマルジョンを形成させる。ゲル化が始まるまでエマルジョンを撹拌し、その後、用量単位当たりCaCO3が1250mgおよびビタミンD3が400IUの用量単位で型へ投入する。実施例1と同様に用量単位を密封する。
【実施例5】
【0068】
<ランダム化対照試験>
2種類の異なる投与形態(ω−3栄養補助食品の2種類の異なる製剤)で投与したω−3脂肪酸の吸収を比較する。
【0069】
トリグリセリド形態のω−3脂肪酸を5g(エイコサペンタエン酸(EPA)を2.805g、ドコサヘキサエン酸(DHA)を1.87g)とビタミンEを13mgを、軟質でゲル化した水中油型エマルジョンまたは標準的なソフトゲルカプセルのいずれかの形態で18歳〜28歳の学生に投与した。血液試料を0、2、3、4、6、8、26時間後に採取した。総血漿中の脂肪酸濃度および組成を測定した。
【0070】
図1〜図4において、AおよびDは、それぞれ、EPAまたはDHAを含む本発明のソフトゲル化した水中油型エマルジョンの投与に対応し、BおよびEは、液体の海産リン脂質コアを含む標準的なω−3ソフトゲルカプセルの投与に対応し、CおよびFは、液体のトリグリセリドコアを含む標準的なω−3ソフトゲルカプセルの投与に対応する。
【0071】
図1および図2から、液体のコアを含む標準的なソフトゲルカプセルの形態で投与した場合よりもソフトゲル化した水中油型エマルジョンで投与した場合に親油性化合物(例えば、ω−3脂肪酸EPAおよびω−3脂肪酸DHA)はより迅速に吸収されることが分かる。
【0072】
図3および図4から、液体のコアを含む標準的なソフトゲルカプセルの形態で投与した場合よりもソフトゲル化した水中油型エマルジョンで投与した場合に、達成される親油性化合物(例えば、ω−3脂肪酸EPAおよびω−3脂肪酸DHA)の総血漿濃度がより高いことが分かる。
【実施例6】
【0073】
<イブプロフェン組成物(二重エマルジョン)>
水相を下記の成分から形成する。
イブプロフェン溶液(50(w/v)%)*:71.6重量%
香料:28.4重量%
*溶媒:
50(v/v)%水
25(v/v)%PEG(50(w/v)%)
25(v/v)%KOH(50(w/v)%)。
【0074】
セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquiolate)(または別の乳化剤)を、油(例えば、ω−3エステル(オマコール(登録商標)))と5:95の重量比で混合する。この油相を、ウルトラタラックス(登録商標)高性能分散機(IKA社から入手可能)を使用して、69:31の重量比で水相と乳化させる。
【0075】
別の水相を下記の成分から形成する。
ゼラチン:17.2重量%
アラビアガム:4.2重量%
ソルビトール:15.9重量%
キシリトール:29.6重量%
サッカリンナトリウム:0.1重量%
シクラミン酸ナトリウム:0.9重量%
クエン酸:0.9重量%
着色料:1.5重量%
水:総量が100重量%になる量。
【0076】
上記した油中水型エマルジョンを、ウルトラタラックス(登録商標)高性能分散機を使用して、上記した別の水相と69:31の重量比でさらに乳化し、水−油−水型エマルジョン(二重エマルジョン)を、1.5gのアリコートで金属/プラスチック積層体ブリスタートレーに並んだ細長い型に注ぎ、固化させる。このブリスタートレーを、金属/プラスチックホイルカバーシートで熱封止する。
【実施例7】
【0077】
<親水性薬剤含有組成物>
下記表2に記載の薬剤を、表2に示す用量単位当たりの濃度で、実施例6で使用した油相または水相に溶解させるか分散させた後、実施例6と同様にエマルジョンを製造し、注入し、固化する。固化したゲルの用量単位を実施例6と同様に包装する。
【0078】
【表2】

【0079】

【0080】

【実施例8】
【0081】
<ビタミンB組成物(二重エマルジョン)>
水相を下記の成分から形成する。
プレミックスビタミン粉末UF29278368*:11.8重量%
水:総量が100重量%になる量
*他のビタミンB1ベース(base、塩基)、ビタミンB2、ビタミンB6ベース(base、塩基)、ビタミンB9、およびビタミンB12を含むSupplemix Multivit−Tab。
【0082】
セスキオレイン酸ソルビタン(sorbitan sesquiolate)(または別の乳化剤)を、油(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(精留ココナッツ油))と5:95の重量比で混合する。この油相を、ウルトラタラックス(登録商標)高性能分散機を使用して50:50の重量比で水相と乳化させる。
【0083】
別の水相を下記の成分から形成する。
ゼラチン:17.2重量%
アラビアガム:4.2重量%
ソルビトール:15.9重量%
キシリトール:29.6重量%
サッカリンナトリウム:0.1重量%
シクラミン酸ナトリウム:0.9重量%
クエン酸:0.9重量%
着色料:1.5重量%
水:総量が100重量%になる量。
【0084】
上記した油中水型エマルジョンを、ウルトラタラックス(登録商標)高性能分散機を使用して、上記した別の水相と69:31の重量比でさらに乳化し、水−油−水型エマルジョン(二重エマルジョン)を、1.5gのアリコートで金属/プラスチック積層体ブリスタートレーに並んだ細長い型に注ぎ、固化させる。このブリスタートレーを、金属/プラスチックホイルカバーシートで熱封止する。
【実施例9】
【0085】
カルシウムおよびビタミンD組成物
水相を下記の成分を使用して調製する。
ゼラチン:9.1重量%
キシリトール:38.7重量%
ソルビトール:16.6重量%
クエン酸:0.9重量%
アラビアガム:5.9重量%
水:総量が100重量%になる量
油相を下記の成分を使用して調製する。
香料:25重量%
ビタミンD:0.03重量%
着色料:5重量%
ヒマワリ油*:総量が100重量%になる量
*あるいはω−3エステル(オマコール(登録商標))。
【0086】
油相を水相と7:93の重量比で乳化させる。エマルジョンを炭酸カルシウム粉末(Staubtechnik社からのEskal500、粒径:4〜14μm、約80容積%<10μm)と1:1の重量比で乳化させて均一溶液を形成し、1.5gのアリコートで金属/プラスチック積層体ブリスタートレーに並んだ細長い型に注ぎ、固化させる。このブリスタートレーを、金属/プラスチックホイルカバーシートで熱封止する。
【0087】
ビタミンDを使用せずに製造した類似の用量単位には、他の市販の錠剤のザラザラした、即ちほこりのような味が無く、代わりに当該用量単位は発泡性のキャンディーのような味がした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各単位用量が単一の担体内に親油性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物であって、前記担体が、軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含む、経口医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤物質がイブプロフェンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各単位用量が単一の担体内に親水性薬剤物質を含む、単位用量形態の経口医薬組成物であって、前記担体が、軟質で咀嚼可能なゲル化した水−油−水型二重エマルジョンを含む、経口医薬組成物。
【請求項4】
前記エマルジョンが、ゲル化剤としてゼラチンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記薬剤物質を含む前記ゲル化したエマルジョンからなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ホイルに包まれた請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を含む、薬剤パッケージ。
【請求項7】
ブリスターパックの形態である、請求項6に記載のパッケージ。
【請求項8】
単位用量形態の経口医薬組成物の調製方法であって、生理学的に許容される油に溶解または分散した親油性薬剤物質を含む油相を形成すること;生理学的に許容されるゲル化剤の水溶液を含む水相を形成すること;前記油相および前記水相を用いて水中油型エマルジョンを形成し、前記エマルジョンをゲル化させて軟質で咀嚼可能な塊を形成すること;および前記エマルジョンのゲル化前、ゲル化中、またはゲル化後に前記エマルジョンを用量単位に分割することを含む、方法。
【請求項9】
単位用量形態の経口医薬組成物の調製方法であって、生理学的に許容される油を含む油相を形成すること;親水性薬剤物質が溶解または分散した水溶液を含む水相を形成すること;前記油相および前記水相を用いて油中水型エマルジョンを形成し、前記油中水型相および別の水相を用いて、生理学的に許容されるゲル化剤の水溶液を含む水中油型エマルジョンを形成し、前記エマルジョンをゲル化させて軟質で咀嚼可能な塊を形成すること;および前記エマルジョンのゲル化前、ゲル化中、またはゲル化後に前記エマルジョンを用量単位に分割することを含む方法。
【請求項10】
単一の担体内に生理学的に許容されるカルシウム化合物を含む用量単位形態の経口医薬組成物であって、前記担体は、軟質で咀嚼可能なゲル化した水中油型エマルジョンを含み、用量単位当たりのカルシウム含有量は、少なくともCaが125mg、例えばCaが125〜2000mg、特にCaが400〜1200mgである、経口医薬組成物。
【請求項11】
粒子状の炭酸カルシウムを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
キシリトールを含む、請求項10または11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記エマルジョンが、ゲル化剤としてゼラチンを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬剤物質を含む前記ゲル化したエマルジョンからなる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ホイルに包まれた請求項10〜14のいずれか一項に記載の組成物を含む、薬剤パッケージ。
【請求項16】
ブリスターパックの形態である、請求項15に記載のパッケージ。
【請求項17】
有効量の薬剤物質を用いたヒト対象者の治療方法であって、請求項1〜5および請求項10〜14のいずれか一項に記載の組成物において前記物質を前記対象者に経口投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記薬剤物質が、親油性化学療法剤であり、前記対象者が抗癌化学療法を受けているヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
心血管機能に影響を与える有効量の親水性薬剤物質を、それを必要とする患者に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
有効量の親水性抗菌性薬剤物質を、それを必要とする患者に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
有効量の親水性ビタミンを、それを必要とする患者に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
有効量の親水性抗炎症剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
有効量の親水性鎮痛剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤物質が単一の担体内にあり、当該担体が軟質で咀嚼可能なゲル化した水−油−水型二重エマルジョンを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505189(P2012−505189A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530554(P2011−530554)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002404
【国際公開番号】WO2010/041015
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510303567)プロバイオ エーエスエー (3)
【Fターム(参考)】