説明

品質が向上した燃焼灰およびその生成方法

ポゾラン用途またはセメントクリンカー製造に使用される改良された燃焼灰を生成する方法がここに説明され、クレームに記載される。当該方法は、約2mmの最大直径を有する1つ以上の研磨媒体を使用した音波処理によって、湿式または乾式供給原料が粉砕される一次処理を採用する。代替的に、媒体は、チャンバ体積に対する比率が少なくとも0.29である真の研磨媒体体積を有し得る。当該方法によって生成される改良された燃焼灰もここに説明され、クレームに記載され、改良された燃焼灰は、ポゾラン用途またはセメントクリンカー製造に特に好適とされる1つ以上の品質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼灰、より特定的には、混合セメントへのセメント質もしくはポゾラン添加剤またはセメントキルン原料として使用するための燃焼灰を改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポゾランは、水酸化カルシウムと化合させると、水の存在下でセメント質特性を示す材料である。ポゾラン灰は、ある品質仕様を満たすか、または十分に品質が向上されれば、混合セメントの成分として使用することができる。セメントクリンカー成分は、ポゾランをセメント質材料に変換するのに必要な水和化中に水酸化カルシウムを解放する。一部の灰、たとえば、亜瀝青または大部分のリグナイト炭灰は、それ自体がセメント質である。
【0003】
ポゾラン、または炭から得られるセメント質の灰、特に極めて微細な材料を含むこのような材料の添加で得られる技術的な利点は、コンクリートの単位体積当たりのポルトランドセメントの使用量の減少と、コンクリート生成物の強度の上昇および水透過性の低下とを含む。たとえば、微粒子を有するフライアッシュは、粗粒子を有するフライアッシュよりも迅速かつ完全に、混合セメントコンクリートのセメント質反応に関与すると一般的に認められている。ふるい分けられた灰によって、より高い圧縮強度がコンクリートに与えられ、当初の粗い灰より水需要量が減少した。(「粉砕された炭灰‐有用性のための要件("Pulverized Coal Ash-Requirements for Utilization")」、IEA Coal Research、1996年)。使用されるポルトランドセメントの量が減少することと、生成されるコンクリートの品質の上昇とによって、経済的な利点が生じる。セメント製造においてエネルギ使用量が減少する(たとえば、温室効果ガス排出が削減される)ことによって、環境的な利点が生じる。高炭素瀝青炭フライアッシュなどの廃棄物をポゾランとして使用すると、埋立地等で廃棄されるはずの材料の量が減少することによる、付加的な経済的および環境的な利点がもたらされる。
【0004】
ポゾランとしての瀝青炭フライアッシュの価値は、空気添加溶剤などの高価な有機コンクリート添加剤を吸着し、かつコンクリートの色に影響を及ぼす炭素含有量によって制限される。ポゾランとしての瀝青炭フライアッシュの価値は、その粒径を縮小することによって改良され、これにより表面積が増大し、ポルトランドセメントの水和化によって生成される遊離水酸化カルシウムに対するシリカおよびシリカ質材料の反応性が上昇するとともに、水多孔度が低下し、結果として生じるコンクリートの圧縮強度が上昇する。粒径の縮小は炭素単体分離(炭素とシリカ質灰とを分離させる)ももたらし、したがって鉱物灰からの炭素の分離を促進する。
【0005】
アルカリ性セメント(たとえばポルトランド)は、セメント質またはポゾラン材料中のアンモニアを望ましくない水準まで解放する水が添加されると高度にアルカリ性になるため、セメント質材料またはポゾラン中の高水準のアンモニアは、混合セメントおよびコンクリート用途には有害であることが周知である。フライアッシュを含むセメント質材料およびポゾランのアンモニア水準を低下させることが望ましい。
【0006】
上記の問題により、当該分野の個人および企業は、ポゾラン灰生成物の品質を改良することに取組んできた。たとえば、粒径の縮小によって、混合セメント用途およびセメントキルン原料入力の両方についてのポゾランまたはセメント質燃焼灰の価値が高まることが周知である。たとえば、より具体的には、灰の粒径縮小は、混合セメントの初期強度を高める。ASTM方法C618は、45ミクロンのふるいに残留する灰の量が混合セメントへの灰入力の34%未満であることを必要とする。一部の灰は、研磨なしにこの仕様を満たす。
【0007】
MinkaraおよびHeavilon(米国特許第5,840,179号)は、泡沫浮遊選鉱による炭素除去の前にフライアッシュ水スラリーを調整するための超音波エネルギの使用について記載している。当該特許は、フライアッシュ水スラリーが高強度超音波処理を受ける「調整」処理について記載している。「調整」すなわち表面活性剤は、親油性材料で炭素表面を選択的に湿らせる。浮遊選鉱による調整後に炭素を多く含む粒子が回収され、品質が向上したフライアッシュポゾラン生成物が得られる。本発明の目的は、炭素含有量を減少させ、および/または微粉度を上昇させ(粒径を縮小し)、表面積を増大させるために、フライアッシュをポゾランとして改良することである。当該特許は、炭素浮遊選鉱前の先行技術による灰の機械的な調整は、典型的に1時間半以上であって、フライアッシュポゾランのポゾラン品質を低下または劣化させると考えられると述べている(第2欄、第11〜43行目参照)。当該発明は、アメリカおよびコロンビアの瀝青炭フライアッシュについて31%および59%のメジアン粒径の縮小をそれぞれ達成した(第5欄、第1〜4行目参照)。最後に、当該発明は、65%という粒子表面積の最大増加を達成した(第9欄および第10欄の表参照)。
【0008】
有用なフライアッシュポゾランの改良にもかかわらず、MinkaraおよびHeavilonの処理は、超音波変換器およびホーンの高コストおよび制限された寿命、エネルギの非効率的使用、ならびに機器の周囲でスラリーが短絡する潜在的可能性を含むいくつかの欠点を有し、これらは事実上、重要汚染源である。
【0009】
Gray他(米国特許第6,126,014号)は、炭素担持材料をフライアッシュに凝縮させるための凝集/浮遊選鉱処理について記載している。この方法は適度な純度での高炭素回収をもたらすが、残余の灰組成およびポゾランの特性は明記されていない。Grayの処理の欠点は、回収が制限される高価な軽炭化水素溶剤の使用、空気の存在下での爆発の危険、および鉱物灰に付いた炭素粒子を解放する能力の制限を含む。
【0010】
ポゾラン用途に関して燃焼灰の品質を決定する重要な1つのパラメータは、灰粒子の寸法であり、比表面積を決定する。灰粒径を5μm以下に生成することができるパールミル(登録商標)などの処理および装置が当該分野で知られている。しかし、このような粉砕処理は何時間も必要とし、有用性と、一部の場合には生成物の品質とを著しく損なう。10分未満、好ましくは5分未満、より好ましくは3分以下、さらに1分という短い時間の粉砕を有するにもかかわらず、メジアン径が20μm未満であり、表面積が0.9m/g以上である灰粒子を生成する処理があれば、当該分野において極めて有意義な進歩となるであろう。
【0011】
セメントクリンカー生成において、粘土、頁岩、砂、および燃焼灰などの高シリカ材料をセメントキルンへの原料として使用することは周知であり、広く実施されている。Oates他の米国特許第6,391,105号は、キルンから回収されるセメントクリンカーの歩留まりがフライアッシュを高温のクリンカーに供給することによって改良されることと、一般に、粒子が小さいほど、所与の温度および露光時間にて、容易に部分的に高温のクリンカーに溶解することとを記載している。当該先行技術は、どのようにより小さい燃焼灰粒子を迅速に生成することができるかを明らかにしていない。
【0012】
従って、比表面積を増大させ、かつ粒径を縮小することによって急速に燃焼灰の品質を向上させることができる、実際的で、経済的で、大規模な処理が必要である。灰のアンモニア、硫黄、および/または炭素含有量の減少を含むかまたは寄与するような処理は、さらに大きな有用性を有するであろう。このような処理は、機器の費用、運転費用、および燃焼灰のポゾラン特性、またはセメントキルン原料としての価値を最小限に抑えるために粉砕時間を短縮しつつ、これらの改良を達成すべきである。理想的に、当該処理は、新規の機器を構築する必要なしに、容易に利用可能な機器によって行なうのに適するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
比表面積の大幅な増大、灰粒径の縮小、より有利な粒度分布、ならびにアンモニア、硫黄および炭素の著しい減少などの灰の多くの品質を改良するために、素早くかつ低価格で燃焼灰の品質を高めるための乾式法および湿式法の両方をここに開示する。また、灰の粉砕は、超音波処理なしに、典型的に先行技術よりはるかに短い処理時間、先行技術が要する10分〜数時間に対して、たとえば1〜3分で、乾式または湿式モードのいずれかで実現することができる。本発明によって粉砕された灰は、浮遊選鉱、摩擦電気分離、空気分級、ふるい分け、または特性をさらに改良するための他の方法などの二次処理により、容易にさらに処理することができる。
【0014】
ここに開示されかつ請求項に記載される処理は、Nyberg他の米国特許第5,005,773号に記載されている種類の音響周波数ソニケータなどの、容易に入手可能な機器で実行することができる。採用される音波処理装置は広く市販されている種類であるため、当該方法は、容易にかつ経済的に実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
当該方法を実施するために、チャンバは少なくとも1つの粉砕媒体で充填される。好ましくは、粉砕媒体は、最大径が約2mm以下の成分を含む。このような小径の媒体の使用は、当該分野でこれまで認識されていない、以下に開示される有益な結果をもたらす。チャンバも供給原料で充填される。供給原料は、乾燥またはスラリー状のポゾラン材料、たとえば燃焼灰であり得る。灰は、瀝青炭、亜瀝青炭、およびリグナイト炭などの多くの供給源から得られ得る。
【0016】
供給原料は、音波エネルギをチャンバに与えることで生じる音波処理によって粉砕される。90〜400Hzの周波数範囲の音波エネルギが好ましい。音波処理は、短時間適用され、先行技術の方法よりも著しく短い1〜10分、より好ましくは1〜3分であり得る。改良された燃焼灰は、任意に最終のふるい分けステップで回収することができる。
【0017】
代替的に、音波処理ステップ後、供給原料に1つ以上の二次処理を受けさせ得、二次処理は、たとえば、浮遊選鉱、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、およびふるい分けのうち少なくとも1つを含み得る。
【0018】
上記の方法によって生成された、改良された燃焼灰もここに開示され、かつ請求項に記載される。このような灰は、ポゾラン用途について優れた品質を有する。このような品質は、小粒径、大きな比表面積、ならびに炭素、硫黄およびアンモニアなどの汚染物質水準の低下を含む。このような灰は、大きな表面積および小粒径によって、セメントクリンカー生成、たとえばポルトランドセメントクリンカー生成のための原料としても優れた品質を有する。
【0019】
ここに使用される限りにおいて、「研磨」および「粉砕」という用語は同等であり、交換可能である。「音響研磨」および「音響粉砕」は、材料が粉砕され、同時に音響周波数振動を受ける処理を指す。「音波処理」、「音波調整」、および「音響音波処理」も同等であり、交換可能であり、材料が研磨を受けることなく、音響周波数振動を受ける処理を指す。特に限定または明記されない限り、「音響周波数」という用語は、約20Hz〜19,999Hzの音響周波数範囲を指す。音響周波数は、一般に約20,000Hz以上であると考えられる超音波周波数とはここでは区別される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】発明の処理の主要なステップを例示する流れ図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の処理は、図1を参照すれば容易に理解することができる。ステップの順序が方法に固有であるかまたは明記しない限り、発明のステップは、必ずしも行なわなければならない順序で図1に示されるとは限らない。
【0022】
ステップ100において、灰供給原料を粉砕するためのチャンバが、少なくとも1つの研磨媒体で充填される。チャンバはチャンバ体積(「CV」)を有し、通常、Nyberg他によって米国特許第5,005,773号に記載されているソニケータなどのソニケータ装置の一部である。これは通常使用されている装置であり、発明の好ましい実施形態の本開示において一例として好都合に使用される。しかし、採用される具体的な種類のソニケータによって発明が限定されないことは当業者によって認識されるであろう。さらに、Nybergの装置は、修正を行って効果的に使用され得る。たとえば、Nybergはソニケータの共振バーに取付けられた2つのチャンバを開示しているが、本発明は、一つのチャンバで容易に実行することができる。以下の実施例は約3リットルのCVを有する一つのチャンバを使用するが、より大きな、より小さな、および/または複数のチャンバを1つのソニケータ上で使用することが可能であろう。
【0023】
ステップ100でチャンバを充填するのに使用される研磨媒体の特性は、所望の特性を有する燃焼灰を所望の時間で生成する際の処理の成功を決定する。以下で実証されるように、最大成分直径が約2mm以下である研磨媒体を使用すると、これらの目的を達成することができることがわかった。
【0024】
追加的に、または代替的に、発明の媒体は、CVに対する真の研磨媒体体積(「TMV」)の比率が少なくとも約0.29であるように特徴づけられ得る。TMVは、媒体の空隙を除いた体積を指し、重量を比重で割ることで算出することができる。「約」という修飾語は、媒体の直径および体積の測定値が完全に正確ではないという当該分野での周知の事実を確認するためにここで使用される。「約」は、特に指定しない限り、±30%の許容差内にあることを意味するように意図される。
【0025】
発明は、その範囲内に複数の異なる媒体の使用を含む。使用される媒体の実際の組成は、必要以上の実験なしに随時決定することができる設計特徴であろう。好ましい媒体は、比較的低価格および入手しやすさから、平均直径寸法が1.18mmの破砕鋼である。
【0026】
ステップ101において、一次処理として湿式または乾式粉砕を行うかについて決定が行われれる。ここでの重要点は、処理が両方の種類の一次処理に適する点である。また、Nyberg他は彼らの装置とともに、固体の湿式粉砕については記載していないが、ここに説明し、かつ請求項に記載する湿式粉砕方法は、Nybergの装置または同等の装置で実行することができることが分かった。
【0027】
湿式粉砕が使用される場合、灰および液体のスラリーがステップ102において作製される。多くの目的のため、水が適切で好ましい液体である。しかし、供給原料、所望の製品品質、および他の要因に依存して、溶剤または他の液体が好ましい場合がある。
【0028】
ステップ103において、乾燥灰またはスラリーがチャンバを充填するのに使用される。たとえば、乾式粉砕処理では、CVの約60%の媒体体積が使用される。CVの残りの40%は、供給原料、典型的には燃焼灰で満たされる。湿式粉砕処理では、媒体の体積は約62%〜65%であり、チャンバの残りの体積はスラリーで満たされ、水に対する固体の比は2.38:1であり得る。
【0029】
ステップ104において、燃焼灰供給原料を粉砕するために、音波エネルギがチャンバに与えられる。最大直径が約2mm未満の研磨媒体を使用する大きな予期せぬ利点のうちの1つは、粉砕時間を3分以下にすることができるため、処理に投入されるエネルギが大幅に削減される点である。より広範囲の約90〜400Hzが使用され得るが、好ましくは、約90〜120Hzの音響周波数が与えられる。音波処理の期間は、先行技術装置での時間ではなく、秒単位で測定される。3分未満の音波処理時間が一般に十分であり、典型的には、音波処理は、30キロワット以下の電力入力で約1〜3分である。以下で実証されるように、この予想外に短い音波処理の継続時間は、極めて小さい粒径、極めて大きな表面積を有し、窒素および硫黄成分が減少し、炭素および他の望ましくない不純物を除去するための二次処理により適する、改良された燃焼灰を生成するのに十分である。
【0030】
ステップ105は、方法が1つ以上の二次処理106に入るか、または、たとえば乾燥およびふるい分けなどの仕上げステップを含み得る灰107の収集を続ける分岐点である。
【0031】
採用される二次処理は、燃焼灰の品質を高めるいずれかの処理であり得る。「二次処理」という用語はここでは単数で使用されるが、当該用語は複数の処理を含み得ることに注目すべきである。第一相の粉砕方法と並行して有利に活用され得る二次処理は、泡沫浮遊選鉱、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、選択的凝集、およびふるい分けを含む。もちろん、供給原料がスラリーである場合、一部の二次処理を適用する前に供給原料を乾燥させることが必要である。このような乾燥ステップはここでは二次処理の一部と見なされ、別個に指定されない。
【0032】
炭素を除去するための泡沫浮遊選鉱は、我々の方法と共に使用される特に有用な二次処理である。部分的に埋設された炭素を有する原料灰を使用する先行技術の炭素分離方法とは異なり、本発明は、音響音波処理による灰の粉砕を伴い、音波調整は燃焼灰に溶解される埋設炭素を減少させるため、炭素は分離の影響を受けやすくなる。スラリーのpHを約4〜7の間の範囲内に調節することによって泡沫浮遊選鉱を著しく改良することができる。ただし、燃焼灰スラリーはこの範囲に固有のpHを有し得る。
【0033】
振動分離方法は、極めて微細な炭素および鉱物粒子の間に水分結合およびファンデルワールスの引力が存在し、これらの引力を物理的振動によって壊すことができると想定する。これらの方法は、密度、形状、または安息角によって異なる方向に炭素および鉱物成分を移動させようと試みる。フライアッシュにある炭素はもろく、容易に断片化するため、振動方法は、炭素の平均粒径を縮小し得、従来は炭素内に封入されていた超微細鉱物粒子を解放し得、逆もまた同様である。
【0034】
空気分級方法は、しばしば市販の機器を利用する。分離は、流動化によるものであろうと遠心作用によるものであろうと、異なる粒子の空力抵抗および密度特性を操作しようと試みることによって行われる。極めて小さな粒子であれば、空気運搬される粒子の作用を空力抵抗が支配するように見えるため、広く異なる密度を有する粒子でさえも同様に動作する。
【0035】
炭素分離は、炭素とは平均粒径が異なる鉱物物質に依存する。ふるい分けは、最も頻繁に、スクリーンの何らかの形態の振動によって支援される。処理の性能は、振動運動(たとえば側方に対して円形状)および振動周波数によってしばしば影響される。最適なスクリーン構成、振動運動、および振動周波数を決定するための研究室試験は、最終的な機器選択または設置の前に行われる。ふるい分け中の炭素の破壊を最小限に抑えるには、振動振幅および露光継続時間も重要なパラメータである。微細粉末であれば、大きな粒子による微細格子の目詰まりを回避するために、最終ふるいの上流にふるいの積層を含むことが重要である。大容量で微細な工業用ふるい分け処理は通常ではない。
【0036】
選択的凝集は、第2の流体相が気体、たとえば窒素である場合の油凝集による炭素分離である。湿度は、非炭素質材料への油相収着を最小限に抑えるように調節され、引き続いて、微細な鉱物灰から比較的粗い炭素凝集体をふるい分け分離する。
【0037】
二次処理106に続いて、二次生成物が108で収集される。それらは、その後廃棄されるか、または商業的価値を有する場合は使用されるかもしくは販売される。改良された燃焼灰は、ポルトランドセメントなどのセメント、ポルトランドセメントを含む混合セメントを作製するのに使用するために、または他の有益な用途のために107で収集される。
【0038】
以下に示されるデータは、特定の実施例に関する本方法の利点を実証する。処理条件およびパラメータは、特に明記しない限り上記した通りであった。
【0039】
実施例1:先行技術の方法に関する媒体直径および灰粒径の比較
表1は、Nybergの種類の音響周波数ソニケータにおいて使用される研磨媒体を比較する。Macasはナトリウム金属を研磨し、Anthonyは、廃棄前の石灰含有量を減少させるために流動床燃焼灰を研磨した。これらのデータは、研磨媒体直径が減少し、TMV/CV比が増加するにつれて、特に水の存在下で、短い研磨時間でも、処理された灰の品質(つまり表面積)が向上することを明白に示す。TMV/CV比は、先行技術において実証されたものよりも高く、本発明の研磨媒体直径はより低い。音波処理チャンバ体積CVは表1中の本発明データについて3リットルであった。音波処理は、1つの音波処理チャンバについて30キロワットの入力電力で行われた。
【0040】
【表1】

【0041】
Anthony 2004‐「音波エネルギを使用したFBC灰の粉砕("Carbonation of FBC Ashes Using Sonic Energy")」、J. Solid Waste Technology and Management、第30巻、第4号、第212〜220ページ
Anthony 2008‐「低周波音波処理によるFBC灰の同時水和化/炭酸塩化("Simultaneous Hydration/Carbonation of FBC Ash by Low-Frequency Sonication")」、Chemical Engineering and Processing、第47巻、第9〜16ページ
Macas 1994‐米国特許第5,318,228号
*灰リットルは、灰空隙を含むバルクリットルである。
**総研磨媒体体積TMV=バルク媒体体積×(1−空隙率)
たとえば、1.18mmの破砕鋼についてTMV=2.2×(1−0.38)=1.36
9.53、6.35、2、および1.18mmの研磨媒体の空隙率はそれぞれ0.498、0.456、0.4、および0.38
/g=平方メートル/グラム
【0042】
実施例2:粒度分布および表面積を改良する亜瀝青炭フライアッシュの乾式粉砕
表2は、1.18mmの破砕鋼研磨媒体を使用し、水添加することなく、20〜25キロワットの入力電力でバッフル付き(3つのバッフル)3.2リットルの音波処理チャンバにおいて90〜120Hzの周波数で1分間音波処理した後の亜瀝青炭フライアッシュ品質を比較する。バルク研磨媒体体積およびバルク灰体積は、音波処理チャンバ体積のそれぞれおよそ60%および40%であった。
【0043】
【表2】

【0044】
上記の表中のD10、D50、およびD90の値は、原料灰について指定された値、たとえばそれぞれ0.9、9.3、および45.9マイクロメートル未満の平均直径を有する試料の10、50、および90重量%部分を指す。この実施例は、乾式粉砕によって、粒径が縮小し、粒度分布が向上し、かつ表面積が増大したセメント質フライアッシュを本発明が生成できることを示す。
【0045】
実施例3:粒度分布および表面積を改良する瀝青炭フライアッシュの乾式粉砕
表3は、1.18mmの破砕鋼研磨媒体を使用し、水添加することなく、20〜25キロワットの入力電力でバッフル付き(3つのバッフル)3リットルの音波処理チャンバにおいて90〜120Hzの周波数で1分間音波処理した後の亜瀝青炭フライアッシュ品質を比較する。バルク研磨媒体体積およびバルク灰体積は、音波処理チャンバ体積のそれぞれおよそ60%および40%であった。
【0046】
【表3】

【0047】
この実施例は、乾式粉砕によって、粒度分布および表面積が改良された瀝青フライアッシュを本発明が生成できることを示す。
【0048】
実施例4:粒度分布および表面積を改良する瀝青炭フライアッシュの湿式粉砕
実施例4においては、実施例3で使用したのと同じ瀝青灰の湿式粉砕が使用された。使用される装置は、実施例2および実施例3のものと同じであった。研磨媒体の充填は、反応チャンバの体積のおよそ62〜65%であった。体積の残り(38〜35%)は、瀝青灰および水の混合物によって(典型的に、水に対する固体が2.38:1の体積比で)満たされた。表4は、1.18のmmの破砕鋼研磨媒体を使用して、20〜25キロワットの入力電力で1分間音波処理した後で瀝青炭フライアッシュ品質を比較する。粉砕後、振動ふるいおよび水流を使用して媒体を分離させた。表4は、音波処理後に瀝青炭フライアッシュ品質を比較する。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例5:乾式対湿式粉砕の比較(実施例3対実施例4)
【0051】
【表5】

【0052】
この実施例は、本発明がポゾランフライアッシュを迅速に湿式粉砕できることと、研磨媒体の存在下での灰粉砕後の水の劇的な改良とを示す。
【0053】
実施例6および実施例7は、本発明にしたがって処理されたセメント質材料およびポゾラン材料の使用によって達成された圧縮強度の向上を示す。圧縮強度試験および試料調製はすべて、ASTM−C311およびASTM−C618基準および手順にしたがって行われた。モルタル混合物において使用される成分は、以下に示されるように、高純度シリカ砂(「オタワ砂」)、通常のポルトランドセメントI型、水、および適切な量のフライアッシュであった。使用されるセメント質材料およびポゾラン材料の総量は各試験について同じであった。
【0054】
実施例6:混合セメントにおいてポゾランとして使用される品質が向上した瀝青炭フライアッシュ
瀝青炭フライアッシュは、音響周波数ソニケータにおいて湿式粉砕され、次いでpH調整なしに一段階浮遊選鉱セルで処理され、炭素含有量を減少させた。その結果生じた灰は、次いで、セメントに対する水の重量比0.36で水およびセメントと化合させた。対照(ポルトランドセメント)およびシリカフュームが「そのまま」(つまり、音波調整、浮遊選鉱、または粉砕を施さずに)使用された。
【0055】
【表6】

【0056】
*メガパスカル(MPa)単位の圧縮強度、括弧内の値は100に正規化された対照値に対する比率で表される。
【0057】
この実施例は、同様の圧縮強度(たとえば28日)を達成するために、音波処理した低炭素粉砕ポゾランフライアッシュを、セメント組成中のポルトランドセメントまたはシリカフュームの代替物として使用することができることを示す。シリカフュームは高価であるため、本発明のはるかに低価格の生成物の使用には劇的な費用削減がある。
【0058】
実施例7:混合セメントにおいてポゾランとして使用される品質が向上した瀝青炭フライアッシュ
瀝青炭フライアッシュは、音響周波数ソニケータにおいて2分間湿式粉砕され、次いでpH調整なしに(つまり固有のpH7.0)一段階浮遊選鉱セルにおいて処理され、炭素含有量を減少させた。その結果生じた灰は、次いで、セメントに対する水の重量比0.36で水およびセメントと化合させた。様々な置換の程度および様々な時点で圧縮強度(メガパスカル単位)が測定された。
【0059】
【表7】

【0060】
この実施例は、1日でも同様またはより高い圧縮強度を達成するために、音波処理した低炭素粉砕ポゾランフライアッシュを、ポルトランドセメントの低価格代替物として使用することができることを示す。
【0061】
実施例8:炭素含有量および硫黄含有量を減少させるための瀝青炭フライアッシュの湿式粉砕および浮遊選鉱
この実験は、1.18mmの破砕鋼媒体によって2分間音響周波数湿式音波粉砕し、引続いて、瀝青炭フライアッシュについて一段階浮遊選鉱(pH調整なし)を行うことによる、それぞれ63%および56%の乾式炭素除去および硫黄除去を例示する。
【0062】
【表8】

【0063】
実験9:炭素含有量を減少させるための瀝青炭フライアッシュの湿式粉砕および浮遊選鉱
瀝青炭燃焼フライアッシュ(0.85kg)を、単一の3リットル容量の音響周波数音波処理チャンバにおいて、1.18mmの破砕鋼8.75kgおよび0.61リットルの水と混合させた。この混合物を、20キロワットのソニケータで3分間音波処理した。音波処理後、0.5mm孔径のふるいによって、粉砕されたフライアッシュを研磨媒体から分離させた。この手順を繰り返して、4.2kgの粉砕され、かつ研磨媒体のない燃焼灰を生成した。この粉砕された灰は、pHを4に減少させるための1.37g/Lの酢酸と、2.2gのDowfroth(登録商標)と、3gのケロシンとを含む水で満たされた77リットルの浮遊選鉱セルに添加した。この混合物を3分間混合させ、次いで10分間通気した。空気供給を停止させ、浮遊選鉱後灰を安定化させた。浮遊選鉱後灰から水がデカントされ、引続いて110°Cで灰を乾燥させた。この一段階浮遊選鉱は、8.0重量%から2.2重量%へと72.5%の炭素減少を達成した。
【0064】
実験10:アンモニア窒素含有量および硫黄含有量を減少させるための瀝青炭フライアッシュの湿式粉砕および浮遊選鉱
実施例4の装置および媒体を使用した3分間の湿式粉砕が使用され、192μg/gのアンモニア窒素および0.19重量%の硫黄を含む瀝青フライアッシュにおいて、アンモニア窒素および硫黄全体それぞれの99%および37%の減少を達成した。
【0065】
要約
上記の記載から、新規性、有用性、および我々の発明を作製し、実施し、使用する手段が容易に理解されるであろう。発明は上に開示された実施形態および実施例に限定されず、添付の請求項と、図を含む上記の開示との範囲内にあるいずれかおよびすべての実施形態を包含することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された燃焼灰を生成する方法であって、前記方法は、チャンバ体積(CV)を有するチャンバにおいて燃焼灰に一次処理を受けさせるステップを含み、前記一次処理は、
(a)チャンバをある量の燃焼灰で充填するステップと、
(b)前記チャンバを少なくとも1つの研磨媒体で充填するステップとを含み、前記研磨媒体は真の研磨媒体体積(TMV)を有し、前記研磨媒体の成分は約2mm以下の最大直径を有し、さらに、
(c)前記チャンバに音波エネルギを与えることによって前記燃焼灰を粉砕するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)において与えられる音波エネルギは、ある音響周波数にある、クレーム1に記載の方法。
【請求項3】
前記音波エネルギは3分間以下与えられる、クレーム1に記載の方法。
【請求項4】
TMVのCVに対する比率は、少なくとも0.29である、クレーム1に記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップをさらに含み、前記二次処理は、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、およびふるい分けのうち少なくとも1つである、クレーム1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバに液体を添加するステップをさらに含む、クレーム1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体は水である、クレーム6に記載の方法。
【請求項8】
TMVのCVに対する比率は、少なくとも0.29である、クレーム6に記載の方法。
【請求項9】
(d)粉砕された燃焼灰から前記液体を排出させるステップと、
(e)前記燃焼灰を乾燥させるステップと、
(f)前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップとをさらに含み、前記二次処理は、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、およびふるい分けのうち少なくとも1つである、クレーム6に記載の方法。
【請求項10】
前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップをさらに含み、前記二次処理は泡沫浮遊選鉱である、クレーム6に記載の方法。
【請求項11】
前記燃焼灰への前記液体の添加によって生成されるスラリーのpHを調節するステップをさらに含み、pHは約4〜約7の間に調節される、クレーム10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)において与えられる音波エネルギは、ある音響周波数にある、クレーム6に記載の方法。
【請求項13】
改良された燃焼灰を生成する方法であって、前記方法は、チャンバ体積を有するチャンバにおいて燃焼灰に一次処理を受けさせるステップを含み、前記一次処理は、
(g)チャンバ体積(CV)をある量の燃焼灰で充填するステップと、
(h)前記チャンバを研磨媒体で充填するステップとを含み、前記研磨媒体は真の体積(TMV)を有し、TMVのCVに対する比率は少なくとも0.29であり、さらに、
(j)前記チャンバに音波エネルギを与えることによって前記燃焼灰を粉砕するステップを含む、方法。
【請求項14】
前記ステップ(j)において与えられる音波エネルギは、ある音響周波数にある、クレーム13に記載の方法。
【請求項15】
前記音波エネルギは3分間以下与えられる、クレーム13に記載の方法。
【請求項16】
前記研磨媒体の成分は、約2mm以下の最大直径を有する、クレーム13に記載の方法。
【請求項17】
前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップをさらに含み、前記二次処理は、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、およびふるい分けのうち少なくとも1つである、クレーム13に記載の方法。
【請求項18】
前記チャンバに液体を添加して、前記燃焼灰のスラリーを生成するステップをさらに含む、クレーム13に記載の方法。
【請求項19】
前記液体は水である、クレーム18に記載の方法。
【請求項20】
前記研磨媒体の成分は、約2mm以下の最大直径を有する、クレーム18に記載の方法。
【請求項21】
(k)粉砕された燃焼灰から前記液体を排出させるステップと、
(l)前記燃焼灰を乾燥させるステップと、
(m)前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップとをさらに含み、前記二次処理は、摩擦電気分離、空気分級、振動分離、およびふるい分けのうち少なくとも1つである、クレーム18に記載の方法。
【請求項22】
前記燃焼灰に二次処理を受けさせるステップをさらに含み、前記二次処理は泡沫浮遊選鉱である、クレーム18に記載の方法。
【請求項23】
前記燃焼灰への前記液体の添加によって生成されるスラリーのpHを調節するステップをさらに含み、pHは約4〜約7の間に調節される、クレーム22に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(j)において与えられる音波エネルギは、ある音響周波数にある、クレーム22に記載の方法。
【請求項25】
前記液体は水である、クレーム22に記載の方法。
【請求項26】
クレーム1の方法およびクレーム12の方法から選択される方法によって生成される、改良された燃焼灰。
【請求項27】
前記燃焼灰は炭から得られる、クレーム26に記載の改良された燃焼灰。
【請求項28】
前記炭は、瀝青炭、亜瀝青炭、およびリグナイト炭のうちの1つである、クレーム26に記載の改良された燃焼灰。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529428(P2011−529428A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512669(P2011−512669)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/046315
【国際公開番号】WO2009/149298
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510320461)ソノアッシュ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】SONOASH LLC
【Fターム(参考)】