説明

品質優先回路抽出装置、品質優先回路抽出方法、品質優先回路抽出プログラム、マスク作成システム、及びレイアウト制約作成システム

【課題】レイアウト上での素子配置の規則性情報と組み合わせて、差動対回路やカレントミラー回路のようなマスク検査品質を優先する部分回路の抽出を図ること。
【解決手段】品質優先回路ネットリスト抽出装置3で抽出した品質優先回路のネットリスト情報(差動対回路、カレントミラー回路)と品質優先回路レイアウト抽出装置5で抽出した品質優先回路のレイアウト情報(行/列/アレイ構造)から、レイアウトデータに含まれる素子図形に対してマスク検査精度の優先順位を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路の設計や検査において、回路品質の観点から優先すべき部分回路を抽出し、その部分回路の優先順位を決定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術の進歩に伴い、回路の集積規模が爆発的に増大し、マスクデータも膨大なものになっている。通常、マスクデータがレイアウトデータ通りに作成されたかを検査する必要があり、この検査をマスク検査と呼ぶ。マスク検査には、実際に作成されたマスクのマスク寸法を電子顕微鏡で測長し、製造性をチェックする工程がある。側長箇所はランダムに、膨大な箇所を行うために、検査工程の増大につながっている。
【0003】
マスク検査時に検査精度を優先すべき箇所が事前にわかっていれば、検査工数を短縮することが可能である。マスクの検査精度は、回路品質に基づいて定義される。例えば、アナログ回路の場合には、差動対回路、カレントミラー回路は、回路品質の観点から、回路に含まれるトランジスタ素子寸法の高い相対精度が要求され、対応するマスクも高い精度で検査する必要がある。
【0004】
従来、集積回路の回路ネットリストから差動対回路、カレントミラー回路を抽出する技術として、差動対回路とカレントミラーの接続情報をライブラリとして有し、回路ネットリストに現れる部分回路とライブラリのパターンマッチングにより、差動対回路とカレントミラー回路を抽出する方法が知られている(非特許文献1または2参照)。
【0005】
また、マスク検査時に回路ネットリストがない場合の方法として、ラベリング手法を用いて差動対やカレントミラー回路を抽出する方法が知られている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−140011号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】The Sizing Rules Method for CMOS and Bipolar Analog Circuit Sysnthesis Tobias Massier, Helmut Graeb, Ulf Schlichtmann, IEEE Transaction on CAD of ICs and Systems, Vol.27, No.12, Dec. 2008.
【非特許文献2】Hierarchical Extraction and Verification of Symmetry Constraints for Analog layout Automation Sambuddha Bhattacharya, Nuitorn Jangkrajarng, Roy Hartono, C−J. Richard Shi, IEEE/ACM Asia South Pacific Design Automation Conference 2004, pp. 400−405, Jan. 2004
【非特許文献3】Automated Analog Circuits Symmetrical Layout Constraint Extraction by Partition, Su Yi, Sheqin Dong, Qungsheng Hao, Xhangqing He, Xialong Hong, IEEE International Conference on ASIC 2003. pp.166−169, Oct. 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のライブラリとのパターンマッチングによる差動対回路とカレントミラー回路を抽出する方法では、事前に用意したライブラリ数が抽出できる回路種類に大きく依存し、またライブラリを多くなると処理時間が増大してしまうという欠点があった。また、ラベリング手法を用いて差動対やカレントミラー回路を抽出する方法では、差動対やカレントミラー以外の回路を抽出してしまったり、差動対やカレントミラー回路を抽出できなかったりするなどその抽出精度に問題があった。
【0009】
一方で、通常、品質を優先する回路は、レイアウト設計において、高い相対精度を実現するために、配置位置を近接させ、列や行を揃え、アレイ状になるように規則的に配置する必要がある。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、回路ネットリストとレイアウトデータが与えられたときに、ライブラリを利用せずに、レイアウト上での素子配置の規則性情報と組み合わせて、差動対回路やカレントミラー回路のようなマスク検査品質を優先する部分回路が抽出できる技術を提供することである。
【0011】
さらに、抽出した部分回路に回路品質の観点から優先順位を決定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る品質優先回路抽出装置は、回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、品質優先回路のネットリストと規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、を有する。
【0013】
また、本発明に係る品質優先回路抽出装置において、品質優先回路は、カレントミラー回路と差動対回路である。但し、品質優先回路を、カレントミラー回路と差動対回路以外の高い素子相対精度を要求する回路としても、本発明の本質には影響なく、適用が可能である。
【0014】
本発明に係るマスク作成システムは、回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、品質優先回路のネットリストと規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、レイアウトデータを用いて回路のマスクを作成するマスク作成装置と、優先順位を用いて検査優先順位を決定し、マスクを検査するマスク検査装置と、を有する。
【0015】
本発明に係るレイアウト制約作成システムは、回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、品質優先回路のネットリストと規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、優先順位を用いて、ネットリストとレイアウトデータから回路を異なる製造プロセス条件で再利用設計するレイアウト制約作成装置と、を有する。すなわち、レイアウトルールが異なる製造プロセスに対して、同じ回路ネットリストを用いる場合、レイアウト設計する際に、優先順位決定装置で決定した優先順位を用いて、レイアウト制約作成装置で品質優先箇所を指定する。これによりレイアウト設計を効率化することができる。
【0016】
本発明に係る品質優先回路抽出方法は、回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する工程と、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する工程と、品質優先回路のネットリストと規則情報から回路品質の優先順位を決定する工程と、からなる。
【0017】
本発明に係る品質優先回路抽出方法は、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する工程と、規則情報から回路品質の優先順位を決定する工程と、からなる。これにより、レイアウトデータのみが与えられた場合でも、規則情報を抽出し優先順位を決定することができる。
【0018】
本発明に係る品質優先回路抽出プログラムは、回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する工程と、回路のレイアウトデータから回路の規則情報を抽出する工程と、品質優先回路のネットリストと規則情報から回路品質の優先順位を決定する工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る品質優先回路抽出装置によれば、回路ネットリストとレイアウトデータが与えられたときに、ライブラリを利用せずに、レイアウト上での素子配置の規則性情報と組み合わせて、差動対回路やカレントミラー回路のようなマスク検査品質を優先する部分回路が従来方法よりも短時間で精度よく抽出できることができる。さらに、抽出した部分回路に回路品質の観点から優先順位を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る回路設計からマスク検査までのフローチャートである。
【図2】本発明に係るマスク作成システムの構成図である。
【図3】本発明に係るカレントミラー回路の模式図である。
【図4】本発明に係る差動対回路の模式図である。
【図5】本発明に係るカレントミラー回路・差動対回路ネットリストの抽出のフローチャートである。
【図6】本発明に係るレベル探索の模式図である。
【図7】本発明に係るカレントミラー回路の模式図である。
【図8】本発明に係る差動対回路の模式図である。
【図9】本発明に係る比較器回路の回路図である。
【図10】(a)本発明に係るカレントミラー回路必要条件により回路抽出した回路ネットリストである。(b)本発明に係る比較器回路の回路図である。
【図11】(a)本発明に係る差動対回路必要条件により回路抽出した回路ネットリストである。(b)本発明に係る比較器回路の回路図である。
【図12】本発明に係る比較器回路のレイアウトデータである。
【図13】本発明に係る比較器回路のレイアウトデータである。
【図14】本発明に係る比較器回路のレイアウトデータである。
【図15】本発明に係るMOSトランジスタの模式図である。
【図16】本発明に係る品質優先回路条件の概念図である。
【図17】本発明に係るネットリストである。
【図18】本発明に係る比較器回路のレイアウトデータである。
【図19】本発明に係るMOSトランジスタの模式図である。
【図20】本発明に係るレイアウト制約作成システムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、回路設計からマスク検査までのフローチャートである。設計工程は、回路設計とレイアウト設計からなる。回路設計S1が終了した後、回路ネットリストが作成される。回路ネットリストに対するレイアウト設計S2を行い、終了した後でレイアウトデータが作成される。
【0022】
ここで、回路ネットリストとは、トランジスタ、抵抗、容量、ダイオードなど電子素子の電気特性情報、及び接続情報を示すリストである。例えば一般的に用いられているSPICE(Simulation Program of IC Evaluation)の書式では、回路上の素子は、素子名、入出力信号名、素子物理サイズ情報の形式で、1行で記述する。MOSトランジスタの場合、M 素子名 ドレイン端子ネット名 ゲート端子ネット名 ソース端子ネット名 バックゲート端子ネット名 チャネル幅サイズ チャネル長さサイズ 並列数の書式で定義される。
【0023】
また、レイアウトデータとは、集積回路チップ上での電子素子の位置、寸法、金属線による接続経路情報からなり、それぞれの情報やデバイスレイヤと図形のパターンにより表現されている。デバイスレイヤとは製造上の半導体や金属に物質に相当する。
【0024】
次に、レイアウトデータをもとに露光工程に合わせてマスクデータ作成S3を行う。そしてマスクデータをもとにマスク作成S4を行う。ここで、マスクデータとは、この露光工程に合わせて、それぞれの電子素子の寸法情報を有したものである。
最後にマスク検査S5を行い、集積回路設計は終了する。
【0025】
本実施形態のマスク作成システムは、図2に示すように、回路ネットリスト記憶装置1と、レイアウト設計装置2と、品質優先回路ネットリスト抽出装置3と、レイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置4と、品質優先回路レイアウト抽出装置5と、優先順位決定装置6と、マスク作成装置7と、マスクデータ及び検査品質優先図形座標記憶装置8と、マスク検査装置9とを備えている。回路設計から検査優先情報を伴うマスク検査まで、これらの構成間において、データ転送を伴う処理を実行する。
【0026】
処理の流れは次の通りである。まず、回路設計終了後、回路ネットリスト記憶装置1に回路ネットリストを格納する。次に、レイアウト設計装置2に回路ネットリストを転送し、レイアウト設計装置2上でレイアウトを生成する。
【0027】
(1)カレントミラー回路、及び差動対回路のネットリスト抽出
一方で、品質優先回路ネットリスト抽出装置3に回路ネットリストを転送し、カレントミラー回路、及び差動増幅回路(以下、差動対回路)のネットリストを抽出する。カレントミラー回路と差動対回路は、アナログ回路において回路特性上重要となる部分回路である。ここで、カレントミラー回路とは、図3に示すように、Iref側のトランジスタとIout側のトランジスタサイズが同じで同じ電流値を流したとき、ゲート・ソース間電圧が等しい場合、Iref=Ioutになることを利用して電流を複製する回路である。また、差動対回路とは、図4に示すように、2つの入力電圧(Vin+、Vin−)の差分を増幅し、2つの入力に共通な電圧を取り除く回路である。
【0028】
ここで、カレントミラー回路・差動対回路ネットリストの抽出の流れについて、図5のフローチャートを用いて説明する。まず回路ネットリストを入力し(S51)、電源から接地までの電流パス、接地から電源までの電流パス上での段数(レベル)を計算する(S52)。この電源から接地、接地から電源までのパスは、図6に示すように、回路ネットリスト中の素子からゲート接続の信号線(ネット)を取り除き、電源(Vdd)から接地(GND)に向けて、幅優先探索を行い、探索の順序がレベルに対応する。次に、ドレイン端子ネットが同じであるグループ集合{Gd}を作成する(S53)。同様に、ゲート端子ネットが同じであるグループ集合{Gg}、ソース端子ネットが同じであるグループ集合{Gs}を作成する(S54、S55)。このとき、カレントミラー回路の条件は、図7に示すように、回路に含まれるすべての素子が同じゲート端子を共有し、電源からのレベルが等しいことである。さらに、差動対回路の条件は、図8に示すように、回路に含まれるすべての素子が、同じゲート信号を共有せず、同じソース端子信号を共有し、電源に直接接続せず、接地に直接接続せず、pMOSの場合電源からのレベルが等しく、nMOSの場合接地からレベルが等しいことである。これらの必要条件に一致する部分回路を抽出し(S57)、出力する(S58)。
【0029】
抽出結果について、アナログ回路の比較器回路を例として説明する。図9は比較器回路の回路図である。この回路には素子M1からM30と、カレントミラー回路91、93、94と差動対回路92がある。比較器回路のネットリストに対して、カレントミラー回路91、93、94、差動対回路92のネットリスト抽出の上記手順を適用した結果を図10、図11にそれぞれ示す。図10(a)はカレントミラー回路必要条件により回路抽出した回路ネットリストで、図10(b)は対応する回路図である。また、図11(a)は差動対回路必要条件により回路抽出した回路ネットリストで、図11(b)は対応する回路図である。
【0030】
(2)レイアウトデータの規則構造抽出
次に、レイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置4から品質優先回路レイアウト抽出装置5へレイアウトデータを転送し、規則構造の抽出を行う。図12は比較器回路のレイアウトデータである。このレイアウトデータから図13に示すようにMOSトランジスタに対応する図形の抽出を行う。このMOS抽出は、レイアウトエディタ上でMOSトランジスタを構成する物理層(デバイスレイヤ)を指定することで処理できる。次に、LVS(Layout V.S. Schematic)を実行することにより、図14に示すように、レイアウト上のMOSトランジスタと回路ネットリスト上での素子名の対応付けが実現できる。LVSとは、作製したレイアウトデータもしくはマスクデータが、設計した回路図と一致しているかを検証するためのCADツール(プログラム)である。
【0031】
ここで、図14に示すように、回路ネットリストにおける複数のMOSトランジスタが一つの図形に対応することがある。これは、図15(a)に示すように、隣接する2つのMOSトランジスタ151a、151bがお互いの拡散領域が同電位である場合には、その領域を共有することができるためである。つまり図15(b)に示すように、MOSトランジスタ151aの拡散領域152aとMOSトランジスタ151bの拡散領域152bが同電位であれば、図15(c)に示すように、拡散領域を共有して拡散領域152cとして考えることができる。LVSでは、この拡散共有まで考慮して、回路図とレイアウトの対応付けが行われる。したがって、図14では、M1M2、M22M24、M9M10、M11M12、M13M15、M16M18はそれぞれ2つのMOSトランジスタが拡散共有して一つの図形になっていることを示している。
【0032】
次に、MOSトランジスタの配置情報をシンボル化し、MOSトランジスタの行構造、列構造、アレイ構造を抽出する。このシンボル化は、配置領域を格子状に分割し、MOSトランジスタの配置を格子座標で代表させることにより容易に実現できる。その格子座標において、Y座標が一致しているグループが行構造を構成しているとみなし、X座標が一致しているグループが列構造を構成しているとする。図14のシンボル化の場合、まず配置については、上から順にM28、(M26、M29)、(M27、M30)、(M21、M20、M23)、(M1M2、M3)、(M25、M22M24、M4M5)、M6、M7、M8、(M9M10、M11M12)、(M14、M17)、(M13M15、M16M18)、M19と分割できる。そして2×2のアレイ構造としてM26、M29、M27、M30、行構造としてM21、M20、M23と、M1M2、M3と、M25、M22M24、M4M5、列構造としてM6、M7、M8、行構造としてM9M10、M11M12、2×2のアレイ構造としてM14、M17、M13M15、M16M18のようにシンボル化することができる。
【0033】
さらに、複数の行構造を合わせて、その行構造の中心のX座標が等しいときに多段行構造が抽出できる。また複数の列構造をあわせて、その列構造の中心のY座標が等しいときに、多段列構造が抽出できる。特に、多段行構造と多段列構造を構成するグループ内の要素が一致する場合、そのグループはアレイ構造を構成しているとする。
【0034】
また、配置情報のシンボル化、及び行/列/アレイ構造の抽出方法については、前記以外の方法も利用可能である。特には、特許文献1及び非特許文献4で示した技術を利用することができる。この特許文献1及び非特許文献4では、配置情報のシンボル化にシーケンス・ペアと呼ぶ矩形配置の表現方法を利用している。シーケンス・ペアは矩形配置を矩形対の上下左右の位置関係で表現する手法であり、列、行、アレイ構造も、矩形対の上下左右の位置関係で表現する。
【0035】
したがって、行構造は左右関係のみを持つグループであり、複数の行構造が上下関係にあるときに、多段行構造を構成する。同様に、列構造は上下関係のみを持つグループであり、複数の列構造が左右関係にあるときに、多段列構造を構成する。特に、多段行構造と多段行構造に含まれるトランジスタグループが一致するとき、アレイ構造を構成する。
【0036】
この品質優先回路レイアウト抽出装置5で抽出した行/列/アレイ構造の情報を優先順位決定装置6に転送する。
【0037】
(3)マスク検査精度の優先順位決定
優先順位決定装置6においては、品質優先回路ネットリスト抽出装置3で抽出した品質優先回路のネットリスト情報(差動対回路、カレントミラー回路)と品質優先回路レイアウト抽出装置5で抽出した品質優先回路のレイアウト情報(行/列/アレイ構造)から、レイアウトデータに含まれる素子図形に対してマスク検査精度の優先順位を決定する。
【0038】
優先順位決定装置6では、図16に示すように、品質優先回路ネットリストとしてアレイ構造を構成する素子集合(アレイ構造集合161)、差動対回路必要条件を満たす素子集合(差動対集合162)、品質優先回路レイアウトとして多段列/行構造を構成する素子集合((多段)列/行構造集合163)、カレントミラー必要条件を満たす素子集合(カレントミラー集合164)の4つに分類される集合を得る。これらの4集合をさらに10集合(集合160aから160j)に分割する。ここで、集合160aが最も品質を優先すべき、次が集合160b、その次が集合160cのように10段階の優先順位を素子に割り当てることができ、その結果をレイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置4にデータ転送する。つまり、品質優先回路である差動対回路であり、かつ、カレントミラー回路であり、かつ、規則性構造であるアレイ構造であるものを最優先とし、次に、差動対回路であり、かつ、アレイ構造であるものを第二位とし、カレントミラー回路であり、かつ、アレイ構造であるものを第三位とする優先順位を決定することができる。
【0039】
実際には、必要に応じて集合を組み合わせて、10段階未満の順位をもつ集合をつくることもできる。例えば、集合160aから160fをまとめて第1優先順位の集合(品質優先回路であり、かつ、規則性構造である集合)とし、集合160gから160jをまとめて第2優先順位の集合(品質優先回路または、規則性構造のどちらか一方である集合)とし、それ以外の素子を第3優先順位として利用する。図17(a)はカレントミラー回路のネットリスト、図17(b)は差動対回路のネットリスト、図17(c)はレイアウトから抽出した規則構造の素子のリストである。ここで、h−rowは行構造、v−rowは列構造、2x2 arrayは2行2列のアレイ構造を意味している。図17(c)の下線で示された素子M21、M23、M22M24、M7、M8、M14、M17、M13M15、M16M18が第1優先順位を割り当てられた素子である。この結果は、図18に示すように、実際の差動対回路181とカレントミラー回路182に対応している。
【0040】
次に、レイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置4からレイアウトデータをマスク作成装置7へ転送し、マスク作成装置7ではレイアウトデータから露光手順に合わせてマスクデータを作成し、マスクデータをマスクデータ及び検査品質優先図形座標記憶装置8へデータ転送する。
【0041】
マスクデータ及び検査品質優先図形座標記憶装置8では、レイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置4から品質優先回路の素子図形及び座標に関する情報とその優先順位のデータ転送を受け、マスク検査時の品質優先図形と検査精度レベルを決定し、その情報を格納し、マスク検査装置9へ品質優先図形をと検査精度レベルを転送する。
【0042】
検査品質優先図形は、検査時の操作手順が効率化できるように考慮して、品質優先素子の図形を囲む範囲で、できるだけ小さな矩形領域として定義する。
【0043】
(4)マスク検査
最後にマスク検査装置9のマスク検査では、図19に示すように、MOSトランジスタのアクティブ領域191aから191fのサイズ192aから191f、間隔193aから191eが厳密に等しくなっているかを検査する。ダミー素子がある場合には、ダミー素子のサイズは検査する必要はない。
【0044】
(5)レイアウトの再利用設計
品質優先回路抽出の技術は、マスク検査時におけるマスク検査優先箇所を決定する技術以外に、レイアウトの再利用設計に応用できる。通常、レイアウトは、電源電圧、ゲート長/配線幅の最小加工寸法、ゲート酸化膜厚、拡散層間距離などに関する様々な半導体製造プロセス条件から定まるレイアウト設計ルールに従って作成される。集積回路チップ開発では、回路ネットリストが同じ場合でもレイアウト設計はこのレイアウト設計ルールが異なる場合には、再設計がなされる。この再設計の際には、品質優先箇所が分かっている場合には、それらの箇所について、近接配置・対称配置・アレイ配置などを指定することによりレイアウト設計の効率化を図ることができる。これらの品質優先箇所の指定をレイアウト制約と呼ぶ。レイアウト制約は、レイアウト自動設計ツールで利用することで、さらなるレイアウト設計の効率化が可能となる。図20はレイアウト制約作成システムである。ネットリストと優先順位決定装置6で決定された優先順位より、レイアウト制約作成装置200でレイアウト制約を行う。これにより、回路のネットリストとレイアウトデータから、このレイアウト制約の作成装置に応用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…回路ネットリスト記憶装置
2…レイアウト設計装置
3…品質優先回路ネットリスト抽出装置
4…レイアウトデータ及び品質優先部分回路情報記憶装置
5…品質優先回路レイアウト抽出装置
6…優先順位決定装置
7…マスク作成装置
8…マスクデータ及び検査品質優先図形座標記憶装置
9…マスク検査装置
61、62、63、64、65、66、67…素子
71、72、73、74…素子
81、82、83、84…素子
91、93、94…カレントミラー回路
92…差動対回路
151a、151b…MOSトランジスタ
152a、152b、152c…拡散領域
160a、160b、160c、160d、160e…集合
160f、160g、160h、160i、160j…集合
161…アレイ構造集合
162…差動対集合
163…(多段)列/行構造集合
164…カレントミラー集合
181…差動対回路
182…カレントミラー回路
191a、191b、191c、191d、191e、191f…アクティブ領域
192a、192b、192c、192d、192e、192f…サイズ
193a、193b、193c、193d、193e…間隔
200…レイアウト制約作成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、
前記回路のレイアウトデータから前記回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、
前記品質優先回路のネットリストと前記規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、を有する品質優先回路抽出装置。
【請求項2】
前記品質優先回路は、カレントミラー回路である請求項1に記載の品質優先回路抽出装置。
【請求項3】
前記品質優先回路は、差動対回路である請求項1に記載の品質優先回路抽出装置。
【請求項4】
回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、
前記回路のレイアウトデータから前記回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、
前記品質優先回路のネットリストと前記規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、
前記レイアウトデータを用いて前記回路のマスクを作成するマスク作成装置と、
前記優先順位を用いて検査優先順位を決定し、前記マスクを検査するマスク検査装置と、を有するマスク作成システム。
【請求項5】
回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する品質優先回路ネットリスト抽出装置と、
前記回路のレイアウトデータから前記回路の規則情報を抽出する品質優先回路レイアウト抽出装置と、
前記品質優先回路のネットリストと前記規則情報から回路品質の優先順位を決定する優先順位決定装置と、
前記優先順位を用いて、前記ネットリストと前記レイアウトデータから前記回路を異なる製造プロセス条件で再利用設計するレイアウト制約作成装置と、を有するレイアウト制約作成システム。
【請求項6】
回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する工程と、
前記回路のレイアウトデータから前記回路の規則情報を抽出する工程と、
前記品質優先回路のネットリストと前記規則情報から回路品質の優先順位を決定する工程と、からなる品質優先回路抽出方法。
【請求項7】
前記品質優先回路は、カレントミラー回路である請求項6に記載の品質優先回路抽出方法。
【請求項8】
前記品質優先回路は、差動対回路である請求項6に記載の品質優先回路抽出方法。
【請求項9】
前記優先順位は回路のマスク検査の優先順位である請求項6から8のいずれか一つに記載の品質優先回路抽出方法。
【請求項10】
回路のネットリストから品質優先回路のネットリストを抽出する工程と、
前記回路のレイアウトデータから前記回路の規則情報を抽出する工程と、
前記品質優先回路のネットリストと前記規則情報から回路品質の優先順位を決定する工程と、をコンピュータに実行させる品質優先回路抽出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−187590(P2011−187590A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49886(P2010−49886)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マスク設計・描画・検査総合最適化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】