品質評価方法および品質評価装置
【課題】作業時間の短縮が容易であり、かつ作業性に優れた品質評価方法および品質評価装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る品質評価方法は、鉄鋼材料からなる対象物10に打撃を付与する打撃付与工程100と、該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程310と、を具備する。
【解決手段】本発明に係る品質評価方法は、鉄鋼材料からなる対象物10に打撃を付与する打撃付与工程100と、該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程310と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼入れが施された対象物あるいは焼結された対象物の品質を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼入れが施された対象物の品質の評価(例えば焼入れ深さの算出や焼き割れの有無の判定)、あるいは焼結された対象物の品質の評価(例えば、密度の算出)の等を行う技術は公知となっている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
特許文献1および特許文献2に記載の品質評価装置は、対象物に所定の周波数の超音波を照射(送信)する送波手段と、対象物を透過した透過波または対象物により反射した反射波を受信する受波手段と、該受波手段が受信した透過波または反射波に基づいて焼入れ品質の評価を行う制御手段と、を具備するものである。
また、焼入れが施された対象物の焼入れ品質の評価を行う別の装置としては、渦流センサを用いて対象物の表層部に渦電流を発生させ、該渦電流の大きさや変化等に基づいて焼入れ品質の評価を行う装置も知られている。
【特許文献1】特開平6−18487号公報
【特許文献2】特開2004−177159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の品質評価装置は、効果的に超音波を対象物に送信し、あるいは効果的に透過波または反射波を対象物から受信するために対象物と送波手段との間、および対象物と受波手段との間を水またはゲル状の媒体(グリース等)で満たす必要がある。そのため、対象物を水槽に浸漬したり対象物の表面にグリースを塗布したりする等の煩雑な作業を行わねばならず、作業時間の短縮や工数の削減という観点からは好ましくない。
【0004】
また、渦流センサを用いた品質評価装置は、渦流センサを対象物に沿って走査する必要があるが、その走査速度を上昇させると一般的に検出精度が低下する。そのため、作業時間の短縮が困難であるという問題がある。さらに、渦流センサを用いた品質評価装置は一般的に高価であり、製造工程等に広く展開する場合には好ましくない。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑み、作業時間の短縮が容易であり、かつ作業性に優れた品質評価方法および品質評価装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程と、
を具備するものである。
【0008】
請求項2においては、
前記焼入れ深さ算出工程において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0009】
請求項3においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0010】
請求項4においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程と、
を具備するものである。
【0011】
請求項5においては、
前記焼き割れ判定工程において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0012】
請求項6においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0013】
請求項7においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出工程と、
を具備するものである。
【0014】
請求項8においては、
前記密度算出工程において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0015】
請求項9においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0016】
請求項10においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段と、
を具備するものである。
【0017】
請求項11においては、
前記焼入れ深さ算出手段は、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0018】
請求項12においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0019】
請求項13においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段と、
を具備するものである。
【0020】
請求項14においては、
前記焼き割れ判定手段は、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0021】
請求項15においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0022】
請求項16においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出手段と、
を具備するものである。
【0023】
請求項17においては、
前記密度算出手段は、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0024】
請求項18においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0026】
請求項1においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0027】
請求項2においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0028】
請求項3においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0029】
請求項4においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0030】
請求項5においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0031】
請求項6においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0032】
請求項7においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0033】
請求項8においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0034】
請求項9においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0035】
請求項10においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0036】
請求項11においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0037】
請求項12においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0038】
請求項13においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0039】
請求項14においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0040】
請求項15においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0041】
請求項16においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0042】
請求項17においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0043】
請求項18においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下では、図1、図9および図15を用いて本発明に係る品質評価装置の実施の一形態である品質評価装置1の構成について説明する。
【0045】
品質評価装置1は、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14等の品質の評価を行う装置である。
ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14は、それぞれ本発明に係る対象物の実施の一形態である。
なお、本発明に係る品質評価装置の対象物はドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に限定されない。
【0046】
図1に示す如く、ドライブシャフト10は略円柱形状の部材であり、その表層部には焼入れによる焼入れ層が形成されている。
【0047】
図9に示す如く、CVJアウターレース11はいわゆるボールジョイント型の等速ジョイント(Constant Velocity Joint;CVJ)を構成する部材の一つであり、その表層部には焼入れによる焼入れ層が形成されている。
CVJアウターレース11は、主としてカップ部12とジョイント部13とを具備する。
カップ部12は一方に開口した略カップ状の形状を有し、その内部に図示せぬCVJインナーレースおよび複数のボールを収容する。カップ部12の内周面には開口部から内周面の奥部に向かって延びたボール溝12a・12b・12c・12d・12e・12fが成形されている。ボール溝12a・12b・12c・12d・12e・12fには、使用時において図示せぬ複数のボールがそれぞれ嵌合する。
ジョイント部13はカップ部12の底部からカップ部12の開口方向と逆の方向に突出した略円柱状の部分であり、その先端部には図示せぬ駆動力伝達軸等に固定するための雄ネジ13aが形成される。
【0048】
図15に示す如く、焼結部材14は焼結により形成された背の低い略円柱形状の部材であり、その中央部には上下面を貫通する貫通孔が設けられ、外周面および貫通孔の内周面にはそれぞれ係合歯が設けられる。
【0049】
ここで、本出願における「対象物」は、品質評価装置が品質を評価する対象となるものである。本実施例の場合、対象物には焼入れが施されているか、あるいは焼結により形成される。
また、本出願における「焼入れ」は、対象物を所定の焼入れ温度に昇温した後、該対象物を所定の温度に急冷する(例えば、該対象物を油槽または水槽に浸漬する)ことにより、該対象物の表層部に微細な結晶組織を形成することを指すものとする。
さらに、本出願における「対象物の表層部」は、対象物の表面から所定の深さまでの領域を指すものとする。
また、本出願における「焼結」は、粉末状の材料(主として金属材料)を所定の型に収容して加圧し、所定の形状とした後加熱する、あるいは所定の型に収容して加圧した状態で加熱する成形方法を広く指すものとする。焼結の具体例としては、無加圧焼結法(雰囲気焼結法)、通電加熱焼結法、放電プラズマ焼結法等が挙げられる。
【0050】
また、本出願における「品質の評価」は、より具体的には、(1)焼入れが施された対象物の焼入れ深さの算出および焼き割れの有無の判定といった焼入れ品質の評価、あるいは(2)焼結された対象物の密度の算出等を指すものとする。
ここで、本出願における「焼入れ深さ」は、上記焼入れ層の厚さまたはこれに類する指標を指す。
また、本出願における「焼き割れ」は、焼入れを施した際に対象物に生じる割れ(欠陥)を指すものとする。
【0051】
本発明に係る対象物の実施の一形態であるドライブシャフト10は鉄鋼材料からなり、焼入れにより表層部に耐摩耗性に優れたマルテンサイト組織を主とする焼入れ層が形成される。ドライブシャフト10の焼入れ深さは、表面から表層部の焼入れ層を構成するマルテンサイト組織と対象物のバルクを構成する組織(例えばフェライト組織やパーライト組織等)との境界までの深さを指すものでも良く、JIS規格において定められている「有効硬化層深さ」でも良い。また、焼入れを行う前の浸炭の有無は限定されない。
なお、対象物の材質は鉄鋼材料に限定されず、焼入れにより表層部に焼入れ層が形成され得るもの、あるいは焼結により成形され得るものであれば、他の材質(例えば、チタン合金やアルミニウム合金等)にも適用可能である。
【0052】
品質評価装置1は、主として打撃付与装置2、載置台3、打撃音検出装置4、制御装置5等を具備する。
【0053】
打撃付与装置2は本発明に係る打撃付与手段の実施の一形態であり、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に打撃を付与するものである。
打撃付与装置2は、主としてドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14と衝突する部材であるハンマ部材21、ハンマ部材21をドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に向かって衝突させるアクチュエータ等からなる駆動ユニット22等を具備する。本実施例では、駆動ユニット22によりハンマ部材21が側方に突出し、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に衝突することによりドライブシャフト10に打撃が付与される。
なお、本発明に係る打撃付与手段は、本実施例の打撃付与装置2に限定されず、対象物に打撃を付与可能であれば別の構成でも良い。
【0054】
載置台3はドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置する台である。前記打撃付与装置2は載置台3に載置されたドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に打撃を付与する。
なお、載置台3の上面にはスポンジやゴム等の振動を減衰させることができる部材を敷いておき、その上にドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置することが好ましい。このようにすることにより、打撃が付与されたドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14が発する超音波が載置台3に伝播することを防止することが可能である。
また、本実施例の品質評価装置1をドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14の製造ラインにおけるドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14の搬送経路の中途部に設ける場合には、載置台3にドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置せず、搬送経路上のドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に直接打撃を付与する場合も想定される。このような場合には、載置台3を省略することも可能である。
【0055】
打撃音検出装置4は、本発明に係る打撃音検出手段の実施の一形態であり、打撃付与装置2が打撃を付与したドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14が発する超音波を検出するものである。
ここで、本出願における「超音波」は、人間が聴覚により知覚可能な周波数よりも高い周波数帯の音波を指し、より具体的には周波数が20kHz以上の音波を指す。
打撃音検出装置4は、主として所定の周波数帯の超音波を検出可能な音響センサ41と、該音響センサ41が検出した超音波の信号を、例えば図3に示す如き周波数と強度との関係を示すデータに変換するFFT(Fast Fourier Transform)アナライザ42と、該音響センサ41を所定の位置、例えばドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14において前記ハンマ部材21が打撃を付与する位置の近傍に支持する支持部材43と、を具備する。
なお、本発明に係る打撃音検出手段は、本実施例の打撃音検出装置4に限定されず、打撃が付与された対象物が発する超音波を検出可能であれば別の構成でも良い。
【0056】
制御装置5は品質評価装置1を構成する各部の動作を制御する装置である。
本実施例の制御装置5は、上記品質評価装置1を構成する各部の動作を制御する機能に加えて、焼入れ品質を評価する機能、より具体的にはドライブシャフト10、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段としての機能、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段としての機能、および焼結部材14の密度を算出する密度算出手段としての機能を兼ねている。
制御装置5は、制御部51、入力部52、表示部53等を具備する。
【0057】
制御部51は打撃付与装置2の駆動ユニット22に接続され、打撃付与装置2の動作を制御することが可能である。
また、制御部51は打撃音検出装置4の音響センサ41に接続され、音響センサ41が検出した所定の周波数帯の音(打撃音)に係る情報を取得することが可能である。
【0058】
制御部51は打撃付与装置2の動作を行うためのプログラム、および後述する品質の評価に係るプログラム(焼入れ深さの算出に係るプログラム、焼き割れの有無の判定に係るプログラム、および密度の算出に係るプログラム)を格納する格納手段、該プログラム等を展開する展開手段、該プログラム等に従って所定の演算を行う演算手段、後述する焼入れ品質の評価の結果等を記憶する記憶手段等を具備する。
制御部51は、より具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
また、制御部51は専用品でも良いが、市販のパソコンやワークステーション等を用いて達成することも可能である。
【0059】
入力部52は、作業者等が品質評価装置1の動作や品質の評価に係るデータ等を制御部51に入力するものである。
入力部52は専用品でも良いが、市販のキーボードやタッチパネル等を用いて達成することも可能である。
【0060】
表示部53は、入力部52により入力されたデータや品質の評価結果等を表示するものである。
表示部53は専用品でも良いが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いて達成することも可能である。
【0061】
以下では、図1、図2、図3、図4、図5および図6を用いて本発明に係る品質評価方法の第一実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する方法である。
【0062】
図2に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼入れ深さ算出工程310等を具備する。
【0063】
打撃付与工程100は、ドライブシャフト10に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程100において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21をドライブシャフト10に衝突させる。
打撃付与工程100が終了したら、打撃音検出工程200に移行する。
【0064】
打撃音検出工程200は、打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程200において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2がドライブシャフト10に打撃を付与することにより該ドライブシャフト10が発する超音波を検出する。次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータ(図3参照)に変換する。
図3に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波は、ある周波数においてピークを有している(以下、超音波の強度がピークとなる周波数を「ピーク周波数」という。)。
打撃音検出工程200が終了したら、焼入れ深さ算出工程310に移行する。
【0065】
焼入れ深さ算出工程310は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する工程である。
【0066】
焼入れ深さ算出工程310において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、ドライブシャフト10が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0067】
また、制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のドライブシャフトからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図4参照)を取得している。
【0068】
ここで、本実施例における「リファレンス」は、対象物と同一の材質からなる同一の形状の物体であって、焼入れ深さ(の分布)が予め分かっているもの、(2)打撃により発する超音波を取得後、断面について組織観察またはビッカース硬度測定を行うことにより焼入れ深さ(の分布)を測定したものを指す。
【0069】
図4に示す如く、リファレンスに打撃を付与することによりリファレンスが発する超音波のうち、所定の周波数帯におけるピーク周波数は、焼入れ深さが大きくなる程、低周波数側にシフトする。
一方、リファレンスに打撃を付与することにより、リファレンスは可聴域の音波(周波数が30Hz以上20kHz以下の音波)やそれ以下の周波数の音波も発するが、これらの音波については焼入れ深さが変化してもほとんどピーク周波数が変化しない。
これは、焼入れ層を構成するマルテンサイト組織が微細であるため、打撃により発する超音波のうち、波長が短い、すなわち周波数が高い成分の当該焼入れ層通過時の減衰が大きいことに起因する。
また、同一の焼入れ深さのリファレンスに複数回打撃を付与し、発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータを取得した場合、ピーク周波数の強度はハンマ部材21がリファレンスに衝突する際の速度や衝突位置の微妙なずれによって多少変化するが、ピーク周波数の値自体はほとんど変化しない。
【0070】
従って、図5に示す如く、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と焼入れ深さとの関係を求めることが可能である。
【0071】
制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータ(図5参照)と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する。
【0072】
なお、焼入れ深さ算出工程310は、制御装置5の制御部51に格納された焼入れ深さの算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼入れ深さの算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼入れ深さ算出手段の実施の一形態である。
【0073】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、
鉄鋼材料からなるドライブシャフト10に打撃を付与する打撃付与工程100と、
打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、
打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程310と、
を具備するものである。
【0074】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0075】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たるドライブシャフト10を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0076】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0077】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、
焼入れ深さ算出工程310において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0078】
なお、対象物の焼入れ深さを精度良く算出するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼入れ層を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼入れ層を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
【0079】
本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0080】
本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0081】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さの分布を精度良く算出することが可能である。
【0082】
図6はドライブシャフト10の焼入れ深さの分布の算出方法の一例を示す図である。
図6の(a)は、ドライブシャフト10へ打撃を付与する位置と当該位置の焼入れ深さを示す模式図である。
図6の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の外周面のP1からP10までの計10箇所を打撃付与位置とする。P1からP10までの打撃付与位置はライブシャフト10の外周面において一端から他端まで一直線上かつ略等間隔に配置される。
また、図6の(a)に示すドライブシャフト10には、両端部において薄く、略中央部において厚い焼入れ層10aが形成されていたものとする。
図6の(b)は、上記図6の(a)に示すドライブシャフト10のP1からP10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差を示す図である。
図6の(b)に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差は、ドライブシャフト10の両端部において小さく、ドライブシャフト10の略中央部において大きくなる。
すなわち、図6の(a)に示す焼入れ層10aの厚さの分布(焼入れ深さの分布)と、図6の(b)に示すドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていないリファレンスについてのピーク周波数との差の分布とは略同じ傾向を示す。
【0083】
なお、上記打撃を付与する位置の変更は専用の装置(例えば、打撃位置変更手段)を用いて行っても良く、作業者が対象物を手で持って移動させることにより行っても良い。
【0084】
以下では、図1、図7、図8および図9を用いて本発明に係る品質評価方法の第二実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する方法である。
【0085】
図7に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼き割れ判定工程320等を具備する。
なお、打撃付与工程100および打撃音検出工程200は本発明に係る品質評価方法の第一実施例と略同じであるため、説明を省略する。
【0086】
焼き割れ判定工程320は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を算出する工程である。
【0087】
焼き割れ判定工程320において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、ドライブシャフト10が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0088】
また、制御装置5の制御部51は、リファレンスについて予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図8の(b)の実線で示す)を取得している。
ここで、本実施例における「リファレンス」は、対象物と同一の材質からなる同一の形状の物体であって、焼き割れが無いことが他の測定方法(例えば、渦流センサを用いた方法等)により確認されているものを指す。
図8の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の内部に焼き割れ10bが存在している場合、当該ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数は、図8の(b)の点線で示す如く、低周波数側にずれる。
また、周波数が20kHz以下の可聴域の音波については、上記リファレンスと焼き割れが存在するドライブシャフト10とを比較してもほとんど差異が無い。
制御装置5の制御部51は、焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する。
【0089】
なお、焼き割れ判定工程320は、制御装置5の制御部51に格納された焼き割れの有無の判定に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼き割れの有無の判定に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼き割れ判定手段の実施の一形態である。
【0090】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、
鉄鋼材料からなる対象物に打撃を付与する打撃付与工程100と、
打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、
打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程320と、
を具備するものである。
【0091】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0092】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たるドライブシャフト10を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0093】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0094】
また、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、
焼き割れ判定工程320において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0095】
なお、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼入れ層を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼入れ層を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
【0096】
本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、例えば図8の(a)に示すP11の如くドライブシャフト10の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0097】
本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0098】
また、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、ドライブシャフト10の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの存在位置を精度良く検出することが可能である。
【0099】
図9はドライブシャフト10の焼き割れの存在位置の検出方法の一例を示す図である。
図9の(a)は、ドライブシャフト10へ打撃を付与する位置と焼き割れ10bの存在位置の関係を示す模式図である。
図9の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の外周面のN1からN15、およびこれらからドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置を打撃付与位置とする。従って、打撃付与位置は計60箇所となる。N1からN15までの打撃付与位置はドライブシャフト10の外周面において一端から他端まで一直線上かつ略等間隔に配置される。
図9の(b)は、上記図9の(a)に示すドライブシャフト10のN1からN15、およびドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスについてのピーク周波数との差を示す図である。
図9の(b)に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差は、焼き割れ10bが存在するN8、N9およびこれらからドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置において大きくなる。
【0100】
なお、上記打撃を付与する位置の変更は専用の装置(例えば、打撃位置変更手段)を用いて行っても良く、作業者が対象物を手で持って移動させることにより行っても良い。
【0101】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例および第二実施例は、いずれも、対象物の材質が異なる場合における当該対象物の検出を行うことも可能である。
【0102】
以下では、図1、図2、図10、図11、図12および図13を用いて本発明に係る品質評価方法の第三実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する方法であり、その基本的な構成は上記品質評価方法の第三実施例と略同じである。
【0103】
図2に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第三実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼入れ深さ算出工程310等を具備する。
【0104】
打撃付与工程100は、CVJアウターレース11に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程100において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21をドライブシャフト10に衝突させる。
このとき、ハンマ部材21がCVJアウターレース11に衝突する位置はカップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)である。
打撃付与工程100が終了したら、打撃音検出工程200に移行する。
【0105】
打撃音検出工程200は、打撃付与工程100において打撃を付与したCVJアウターレース11が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程200において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2がCVJアウターレース11に打撃を付与することによりCVJアウターレース11が発する超音波を検出する。
このとき、音響センサ41はCVJアウターレース11のカップ部12の開口部の開口方向に少し離れた位置(図10参照)に配置されている。
次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータに変換する。
打撃音検出工程200が終了したら、焼入れ深さ算出工程310に移行する。
【0106】
焼入れ深さ算出工程310は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する工程である。
【0107】
焼入れ深さ算出工程310において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、CVJアウターレース11が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0108】
また、制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のCVJアウターレースからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータを取得している。
【0109】
制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータと、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりCVJアウターレース11が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する。
本実施例の場合、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数がいずれも21240Hzから21280Hzの範囲内にある場合には当該CVJアウターレース11が良品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲である)と判定し、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数のいずれかが21240Hz未満である場合には当該CVJアウターレース11は上限外れ品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲よりも大きい方に外れている)と判定し、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数のいずれかが21280Hzよりも大きい場合には当該CVJアウターレース11は下限外れ品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲よりもちいさい方に外れている)と判定する。図13に良品、上限外れ品および下限はずれ品の判定結果の一例を示す。
【0110】
なお、図12に示す如く、カップ部12の開口部の周縁部の1箇所(位置A、図10および図11参照)にのみハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数とカップ部12のボール溝12aの表面における焼入れ深さとの関係は相関関係の良い直線関係となっており、これでも十分に判定可能であるが、最終的な判定結果(CVJアウターレース11の複数箇所の焼入れ深さをビッカース硬度等に基づいて算出し、当該算出結果に基づいて焼入れ深さが適正な範囲にあるか否かを判定したもの)により下限外れ品となったものの一部と良品となったものの一部とがオーバーラップしている。
従って、ハンマ部材21による打撃の付与を一箇所よりも複数箇所に行うことにより、」判定結果の精度をさらに向上させることが可能である。
【0111】
なお、焼入れ深さ算出工程310は、制御装置5の制御部51に格納された焼入れ深さの算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼入れ深さの算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼入れ深さ算出手段の実施の一形態である。
【0112】
以下では、図1、図14、図15、図16、図17および図18を用いて本発明に係る品質評価方法の第四実施例について説明する。
【0113】
図14に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、打撃付与工程140、打撃音検出工程240、密度算出工程340等を具備する。
【0114】
打撃付与工程140は、焼結部材14に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程140において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21を焼結部材14に衝突させる。
このとき、ハンマ部材21が焼結部材14に衝突する位置は、焼結部材14の外周面の周方向において略等間隔となっている8箇所である。
打撃付与工程140が終了したら、打撃音検出工程240に移行する。
【0115】
打撃音検出工程240は、打撃付与工程140において打撃を付与した焼結部材14が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程240において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2が焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波を検出する。
このとき、音響センサ41は焼結部材14の上方(図15参照)に配置されている。
次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータに変換する。
打撃音検出工程240が終了したら、密度算出工程340に移行する。
【0116】
密度算出工程340は、打撃音検出工程240において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、焼結部材14の密度を算出する工程である。
【0117】
密度算出工程340において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、焼結部材14が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0118】
また、制御装置5の制御部51は、異なる密度を有する複数のCVJアウターレースからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程140および打撃音検出工程240を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図16参照)を取得している。
ここで、図16に示す本実施例のリファレンスのデータは、体積および重量から算出された平均の密度が6.4g/cm3、6.6g/cm3、6.8g/cm3、7.0g/cm3であり、形状および材質が焼結部材14と同じである計4つのリファレンスを用いて求められた。その結果、周波数と密度との間には比較的相関の強い直線関係が得られた。
【0119】
制御装置5の制御部51は、異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータ(図16参照)と、焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、焼結部材14の密度を算出する。
また、制御部51は、焼結部材14の外周面の周方向において略等間隔となっている8箇所の発する超音波の周波数のばらつきを判定することにより、焼結部材14の密度の分布が略均一化否かを判定することが可能である。
すなわち、図17(a)に示す如く焼結部材14の密度の分布が略均一である場合には異なる複数の位置にハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数が略同じ値となり、図17(b)に示す如く焼結部材14の密度の分布が不均一である場合には異なる複数の位置にハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数が異なる値となる。
図18に本実施例における焼結部材14の密度の分布の算出結果の一例を示す。図18に示す如く、ハンマ部材21で複数箇所に打撃を付与することにより、焼結部材14の密度の分布が略均一か否かを容易に判定することが可能である。
【0120】
なお、密度算出工程340は、制御装置5の制御部51に格納された密度の算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、密度の算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る密度算出手段の実施の一形態である。
【0121】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、
焼結部材14に打撃を付与する打撃付与工程140と、
打撃付与工程140において打撃を付与した焼結部材14が発する超音波を検出する打撃音検出工程240と、
打撃音検出工程240において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて焼結部材14の密度を算出する密度算出工程340と、
を具備するものである。
【0122】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0123】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たる焼結部材14を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0124】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0125】
また、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、
密度算出工程340において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、焼結部材14の密度を精度良く算出することが可能である。
【0126】
なお、対象物の密度を精度良く算出するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼結された対象物の内部を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼結された対象物の内部を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に密度の算出に用いることが困難であることによる。
【0127】
本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0128】
本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0129】
また、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、焼結部材14の密度の分布を精度良く算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に係る品質評価装置の実施の一形態を示す図。
【図2】本発明に係る品質評価方法の第一実施例を示すフロー図。
【図3】対象物が発する超音波の周波数と強度との関係を示す図。
【図4】異なる焼入れ深さを有するリファレンスが発する超音波の周波数と強度との関係を示す図。
【図5】ピーク周波数と焼入れ深さとの関係を示す図。
【図6】対象物の焼入れ深さの分布の算出方法の一例を示す図。
【図7】本発明に係る品質評価方法の第二実施例を示すフロー図。
【図8】本発明に係る品質評価方法の第二実施例を示す図。
【図9】対象物の焼き割れの存在位置の検出方法の一例を示す図。
【図10】CVJアウターレースの斜視図。
【図11】CVJアウターレースの平面図。
【図12】CVJアウターレースに打撃を付与した場合のピーク周波数と焼入れ深さの関係を示す図。
【図13】CVJアウターレースの複数箇所に打撃を付与した場合のピーク周波数の分布を示す図。
【図14】本発明に係る品質評価方法の第四実施例を示すフロー図。
【図15】焼結部材の斜視図。
【図16】焼結部材に打撃を付与した場合のピーク周波数と密度との関係を示す図。
【図17】密度の分布とピーク周波数との関係を示す図。
【図18】焼結部材の密度の分布を示す図。
【符号の説明】
【0131】
10 ドライブシャフト(対象物)
11 CVJアウターレース(対象物)
14 焼結部材(対象物)
100 打撃付与工程
200 打撃音検出工程
310 焼入れ深さ算出工程
320 焼き割れ判定工程
340 密度算出工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼入れが施された対象物あるいは焼結された対象物の品質を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼入れが施された対象物の品質の評価(例えば焼入れ深さの算出や焼き割れの有無の判定)、あるいは焼結された対象物の品質の評価(例えば、密度の算出)の等を行う技術は公知となっている。例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
特許文献1および特許文献2に記載の品質評価装置は、対象物に所定の周波数の超音波を照射(送信)する送波手段と、対象物を透過した透過波または対象物により反射した反射波を受信する受波手段と、該受波手段が受信した透過波または反射波に基づいて焼入れ品質の評価を行う制御手段と、を具備するものである。
また、焼入れが施された対象物の焼入れ品質の評価を行う別の装置としては、渦流センサを用いて対象物の表層部に渦電流を発生させ、該渦電流の大きさや変化等に基づいて焼入れ品質の評価を行う装置も知られている。
【特許文献1】特開平6−18487号公報
【特許文献2】特開2004−177159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の品質評価装置は、効果的に超音波を対象物に送信し、あるいは効果的に透過波または反射波を対象物から受信するために対象物と送波手段との間、および対象物と受波手段との間を水またはゲル状の媒体(グリース等)で満たす必要がある。そのため、対象物を水槽に浸漬したり対象物の表面にグリースを塗布したりする等の煩雑な作業を行わねばならず、作業時間の短縮や工数の削減という観点からは好ましくない。
【0004】
また、渦流センサを用いた品質評価装置は、渦流センサを対象物に沿って走査する必要があるが、その走査速度を上昇させると一般的に検出精度が低下する。そのため、作業時間の短縮が困難であるという問題がある。さらに、渦流センサを用いた品質評価装置は一般的に高価であり、製造工程等に広く展開する場合には好ましくない。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑み、作業時間の短縮が容易であり、かつ作業性に優れた品質評価方法および品質評価装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程と、
を具備するものである。
【0008】
請求項2においては、
前記焼入れ深さ算出工程において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0009】
請求項3においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0010】
請求項4においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程と、
を具備するものである。
【0011】
請求項5においては、
前記焼き割れ判定工程において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0012】
請求項6においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0013】
請求項7においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出工程と、
を具備するものである。
【0014】
請求項8においては、
前記密度算出工程において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0015】
請求項9においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0016】
請求項10においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段と、
を具備するものである。
【0017】
請求項11においては、
前記焼入れ深さ算出手段は、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0018】
請求項12においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0019】
請求項13においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段と、
を具備するものである。
【0020】
請求項14においては、
前記焼き割れ判定手段は、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0021】
請求項15においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【0022】
請求項16においては、
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出手段と、
を具備するものである。
【0023】
請求項17においては、
前記密度算出手段は、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
【0024】
請求項18においては、
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0026】
請求項1においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0027】
請求項2においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0028】
請求項3においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0029】
請求項4においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0030】
請求項5においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0031】
請求項6においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0032】
請求項7においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0033】
請求項8においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0034】
請求項9においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0035】
請求項10においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0036】
請求項11においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0037】
請求項12においては、対象物の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0038】
請求項13においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0039】
請求項14においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0040】
請求項15においては、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0041】
請求項16においては、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。また、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0042】
請求項17においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【0043】
請求項18においては、対象物の密度を精度良く算出することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下では、図1、図9および図15を用いて本発明に係る品質評価装置の実施の一形態である品質評価装置1の構成について説明する。
【0045】
品質評価装置1は、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14等の品質の評価を行う装置である。
ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14は、それぞれ本発明に係る対象物の実施の一形態である。
なお、本発明に係る品質評価装置の対象物はドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に限定されない。
【0046】
図1に示す如く、ドライブシャフト10は略円柱形状の部材であり、その表層部には焼入れによる焼入れ層が形成されている。
【0047】
図9に示す如く、CVJアウターレース11はいわゆるボールジョイント型の等速ジョイント(Constant Velocity Joint;CVJ)を構成する部材の一つであり、その表層部には焼入れによる焼入れ層が形成されている。
CVJアウターレース11は、主としてカップ部12とジョイント部13とを具備する。
カップ部12は一方に開口した略カップ状の形状を有し、その内部に図示せぬCVJインナーレースおよび複数のボールを収容する。カップ部12の内周面には開口部から内周面の奥部に向かって延びたボール溝12a・12b・12c・12d・12e・12fが成形されている。ボール溝12a・12b・12c・12d・12e・12fには、使用時において図示せぬ複数のボールがそれぞれ嵌合する。
ジョイント部13はカップ部12の底部からカップ部12の開口方向と逆の方向に突出した略円柱状の部分であり、その先端部には図示せぬ駆動力伝達軸等に固定するための雄ネジ13aが形成される。
【0048】
図15に示す如く、焼結部材14は焼結により形成された背の低い略円柱形状の部材であり、その中央部には上下面を貫通する貫通孔が設けられ、外周面および貫通孔の内周面にはそれぞれ係合歯が設けられる。
【0049】
ここで、本出願における「対象物」は、品質評価装置が品質を評価する対象となるものである。本実施例の場合、対象物には焼入れが施されているか、あるいは焼結により形成される。
また、本出願における「焼入れ」は、対象物を所定の焼入れ温度に昇温した後、該対象物を所定の温度に急冷する(例えば、該対象物を油槽または水槽に浸漬する)ことにより、該対象物の表層部に微細な結晶組織を形成することを指すものとする。
さらに、本出願における「対象物の表層部」は、対象物の表面から所定の深さまでの領域を指すものとする。
また、本出願における「焼結」は、粉末状の材料(主として金属材料)を所定の型に収容して加圧し、所定の形状とした後加熱する、あるいは所定の型に収容して加圧した状態で加熱する成形方法を広く指すものとする。焼結の具体例としては、無加圧焼結法(雰囲気焼結法)、通電加熱焼結法、放電プラズマ焼結法等が挙げられる。
【0050】
また、本出願における「品質の評価」は、より具体的には、(1)焼入れが施された対象物の焼入れ深さの算出および焼き割れの有無の判定といった焼入れ品質の評価、あるいは(2)焼結された対象物の密度の算出等を指すものとする。
ここで、本出願における「焼入れ深さ」は、上記焼入れ層の厚さまたはこれに類する指標を指す。
また、本出願における「焼き割れ」は、焼入れを施した際に対象物に生じる割れ(欠陥)を指すものとする。
【0051】
本発明に係る対象物の実施の一形態であるドライブシャフト10は鉄鋼材料からなり、焼入れにより表層部に耐摩耗性に優れたマルテンサイト組織を主とする焼入れ層が形成される。ドライブシャフト10の焼入れ深さは、表面から表層部の焼入れ層を構成するマルテンサイト組織と対象物のバルクを構成する組織(例えばフェライト組織やパーライト組織等)との境界までの深さを指すものでも良く、JIS規格において定められている「有効硬化層深さ」でも良い。また、焼入れを行う前の浸炭の有無は限定されない。
なお、対象物の材質は鉄鋼材料に限定されず、焼入れにより表層部に焼入れ層が形成され得るもの、あるいは焼結により成形され得るものであれば、他の材質(例えば、チタン合金やアルミニウム合金等)にも適用可能である。
【0052】
品質評価装置1は、主として打撃付与装置2、載置台3、打撃音検出装置4、制御装置5等を具備する。
【0053】
打撃付与装置2は本発明に係る打撃付与手段の実施の一形態であり、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に打撃を付与するものである。
打撃付与装置2は、主としてドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14と衝突する部材であるハンマ部材21、ハンマ部材21をドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に向かって衝突させるアクチュエータ等からなる駆動ユニット22等を具備する。本実施例では、駆動ユニット22によりハンマ部材21が側方に突出し、ドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に衝突することによりドライブシャフト10に打撃が付与される。
なお、本発明に係る打撃付与手段は、本実施例の打撃付与装置2に限定されず、対象物に打撃を付与可能であれば別の構成でも良い。
【0054】
載置台3はドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置する台である。前記打撃付与装置2は載置台3に載置されたドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に打撃を付与する。
なお、載置台3の上面にはスポンジやゴム等の振動を減衰させることができる部材を敷いておき、その上にドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置することが好ましい。このようにすることにより、打撃が付与されたドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14が発する超音波が載置台3に伝播することを防止することが可能である。
また、本実施例の品質評価装置1をドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14の製造ラインにおけるドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14の搬送経路の中途部に設ける場合には、載置台3にドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14を載置せず、搬送経路上のドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14に直接打撃を付与する場合も想定される。このような場合には、載置台3を省略することも可能である。
【0055】
打撃音検出装置4は、本発明に係る打撃音検出手段の実施の一形態であり、打撃付与装置2が打撃を付与したドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14が発する超音波を検出するものである。
ここで、本出願における「超音波」は、人間が聴覚により知覚可能な周波数よりも高い周波数帯の音波を指し、より具体的には周波数が20kHz以上の音波を指す。
打撃音検出装置4は、主として所定の周波数帯の超音波を検出可能な音響センサ41と、該音響センサ41が検出した超音波の信号を、例えば図3に示す如き周波数と強度との関係を示すデータに変換するFFT(Fast Fourier Transform)アナライザ42と、該音響センサ41を所定の位置、例えばドライブシャフト10、CVJアウターレース11、焼結部材14において前記ハンマ部材21が打撃を付与する位置の近傍に支持する支持部材43と、を具備する。
なお、本発明に係る打撃音検出手段は、本実施例の打撃音検出装置4に限定されず、打撃が付与された対象物が発する超音波を検出可能であれば別の構成でも良い。
【0056】
制御装置5は品質評価装置1を構成する各部の動作を制御する装置である。
本実施例の制御装置5は、上記品質評価装置1を構成する各部の動作を制御する機能に加えて、焼入れ品質を評価する機能、より具体的にはドライブシャフト10、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段としての機能、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段としての機能、および焼結部材14の密度を算出する密度算出手段としての機能を兼ねている。
制御装置5は、制御部51、入力部52、表示部53等を具備する。
【0057】
制御部51は打撃付与装置2の駆動ユニット22に接続され、打撃付与装置2の動作を制御することが可能である。
また、制御部51は打撃音検出装置4の音響センサ41に接続され、音響センサ41が検出した所定の周波数帯の音(打撃音)に係る情報を取得することが可能である。
【0058】
制御部51は打撃付与装置2の動作を行うためのプログラム、および後述する品質の評価に係るプログラム(焼入れ深さの算出に係るプログラム、焼き割れの有無の判定に係るプログラム、および密度の算出に係るプログラム)を格納する格納手段、該プログラム等を展開する展開手段、該プログラム等に従って所定の演算を行う演算手段、後述する焼入れ品質の評価の結果等を記憶する記憶手段等を具備する。
制御部51は、より具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
また、制御部51は専用品でも良いが、市販のパソコンやワークステーション等を用いて達成することも可能である。
【0059】
入力部52は、作業者等が品質評価装置1の動作や品質の評価に係るデータ等を制御部51に入力するものである。
入力部52は専用品でも良いが、市販のキーボードやタッチパネル等を用いて達成することも可能である。
【0060】
表示部53は、入力部52により入力されたデータや品質の評価結果等を表示するものである。
表示部53は専用品でも良いが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いて達成することも可能である。
【0061】
以下では、図1、図2、図3、図4、図5および図6を用いて本発明に係る品質評価方法の第一実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する方法である。
【0062】
図2に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼入れ深さ算出工程310等を具備する。
【0063】
打撃付与工程100は、ドライブシャフト10に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程100において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21をドライブシャフト10に衝突させる。
打撃付与工程100が終了したら、打撃音検出工程200に移行する。
【0064】
打撃音検出工程200は、打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程200において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2がドライブシャフト10に打撃を付与することにより該ドライブシャフト10が発する超音波を検出する。次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータ(図3参照)に変換する。
図3に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波は、ある周波数においてピークを有している(以下、超音波の強度がピークとなる周波数を「ピーク周波数」という。)。
打撃音検出工程200が終了したら、焼入れ深さ算出工程310に移行する。
【0065】
焼入れ深さ算出工程310は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する工程である。
【0066】
焼入れ深さ算出工程310において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、ドライブシャフト10が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0067】
また、制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のドライブシャフトからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図4参照)を取得している。
【0068】
ここで、本実施例における「リファレンス」は、対象物と同一の材質からなる同一の形状の物体であって、焼入れ深さ(の分布)が予め分かっているもの、(2)打撃により発する超音波を取得後、断面について組織観察またはビッカース硬度測定を行うことにより焼入れ深さ(の分布)を測定したものを指す。
【0069】
図4に示す如く、リファレンスに打撃を付与することによりリファレンスが発する超音波のうち、所定の周波数帯におけるピーク周波数は、焼入れ深さが大きくなる程、低周波数側にシフトする。
一方、リファレンスに打撃を付与することにより、リファレンスは可聴域の音波(周波数が30Hz以上20kHz以下の音波)やそれ以下の周波数の音波も発するが、これらの音波については焼入れ深さが変化してもほとんどピーク周波数が変化しない。
これは、焼入れ層を構成するマルテンサイト組織が微細であるため、打撃により発する超音波のうち、波長が短い、すなわち周波数が高い成分の当該焼入れ層通過時の減衰が大きいことに起因する。
また、同一の焼入れ深さのリファレンスに複数回打撃を付与し、発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータを取得した場合、ピーク周波数の強度はハンマ部材21がリファレンスに衝突する際の速度や衝突位置の微妙なずれによって多少変化するが、ピーク周波数の値自体はほとんど変化しない。
【0070】
従って、図5に示す如く、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と焼入れ深さとの関係を求めることが可能である。
【0071】
制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータ(図5参照)と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さを算出する。
【0072】
なお、焼入れ深さ算出工程310は、制御装置5の制御部51に格納された焼入れ深さの算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼入れ深さの算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼入れ深さ算出手段の実施の一形態である。
【0073】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、
鉄鋼材料からなるドライブシャフト10に打撃を付与する打撃付与工程100と、
打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、
打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程310と、
を具備するものである。
【0074】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0075】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たるドライブシャフト10を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0076】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0077】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、
焼入れ深さ算出工程310において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さを精度良く算出することが可能である。
【0078】
なお、対象物の焼入れ深さを精度良く算出するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼入れ層を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼入れ層を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
【0079】
本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0080】
本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0081】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、ドライブシャフト10の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、ドライブシャフト10の焼入れ深さの分布を精度良く算出することが可能である。
【0082】
図6はドライブシャフト10の焼入れ深さの分布の算出方法の一例を示す図である。
図6の(a)は、ドライブシャフト10へ打撃を付与する位置と当該位置の焼入れ深さを示す模式図である。
図6の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の外周面のP1からP10までの計10箇所を打撃付与位置とする。P1からP10までの打撃付与位置はライブシャフト10の外周面において一端から他端まで一直線上かつ略等間隔に配置される。
また、図6の(a)に示すドライブシャフト10には、両端部において薄く、略中央部において厚い焼入れ層10aが形成されていたものとする。
図6の(b)は、上記図6の(a)に示すドライブシャフト10のP1からP10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差を示す図である。
図6の(b)に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差は、ドライブシャフト10の両端部において小さく、ドライブシャフト10の略中央部において大きくなる。
すなわち、図6の(a)に示す焼入れ層10aの厚さの分布(焼入れ深さの分布)と、図6の(b)に示すドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていないリファレンスについてのピーク周波数との差の分布とは略同じ傾向を示す。
【0083】
なお、上記打撃を付与する位置の変更は専用の装置(例えば、打撃位置変更手段)を用いて行っても良く、作業者が対象物を手で持って移動させることにより行っても良い。
【0084】
以下では、図1、図7、図8および図9を用いて本発明に係る品質評価方法の第二実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する方法である。
【0085】
図7に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第一実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼き割れ判定工程320等を具備する。
なお、打撃付与工程100および打撃音検出工程200は本発明に係る品質評価方法の第一実施例と略同じであるため、説明を省略する。
【0086】
焼き割れ判定工程320は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を算出する工程である。
【0087】
焼き割れ判定工程320において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、ドライブシャフト10が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0088】
また、制御装置5の制御部51は、リファレンスについて予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図8の(b)の実線で示す)を取得している。
ここで、本実施例における「リファレンス」は、対象物と同一の材質からなる同一の形状の物体であって、焼き割れが無いことが他の測定方法(例えば、渦流センサを用いた方法等)により確認されているものを指す。
図8の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の内部に焼き割れ10bが存在している場合、当該ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数は、図8の(b)の点線で示す如く、低周波数側にずれる。
また、周波数が20kHz以下の可聴域の音波については、上記リファレンスと焼き割れが存在するドライブシャフト10とを比較してもほとんど差異が無い。
制御装置5の制御部51は、焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を判定する。
【0089】
なお、焼き割れ判定工程320は、制御装置5の制御部51に格納された焼き割れの有無の判定に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼き割れの有無の判定に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼き割れ判定手段の実施の一形態である。
【0090】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、
鉄鋼材料からなる対象物に打撃を付与する打撃付与工程100と、
打撃付与工程100において打撃を付与したドライブシャフト10が発する超音波を検出する打撃音検出工程200と、
打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて該対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程320と、
を具備するものである。
【0091】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0092】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たるドライブシャフト10を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0093】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0094】
また、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、
焼き割れ判定工程320において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの有無を精度良く判定することが可能である。
【0095】
なお、対象物の焼き割れの有無を精度良く判定するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼入れ層を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼入れ層を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
【0096】
本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、例えば図8の(a)に示すP11の如くドライブシャフト10の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0097】
本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、ドライブシャフト10の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0098】
また、本発明に係る品質評価方法の第二実施例は、ドライブシャフト10の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、ドライブシャフト10の焼き割れの存在位置を精度良く検出することが可能である。
【0099】
図9はドライブシャフト10の焼き割れの存在位置の検出方法の一例を示す図である。
図9の(a)は、ドライブシャフト10へ打撃を付与する位置と焼き割れ10bの存在位置の関係を示す模式図である。
図9の(a)に示す如く、ドライブシャフト10の外周面のN1からN15、およびこれらからドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置を打撃付与位置とする。従って、打撃付与位置は計60箇所となる。N1からN15までの打撃付与位置はドライブシャフト10の外周面において一端から他端まで一直線上かつ略等間隔に配置される。
図9の(b)は、上記図9の(a)に示すドライブシャフト10のN1からN15、およびドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置に打撃を付与することによりドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスについてのピーク周波数との差を示す図である。
図9の(b)に示す如く、ドライブシャフト10が発する超音波のピーク周波数と、焼入れを行っていない(すなわち、焼入れ深さがゼロの)リファレンスについてのピーク周波数との差は、焼き割れ10bが存在するN8、N9およびこれらからドライブシャフト10の外周面の周方向に90度ずつ回転した位置において大きくなる。
【0100】
なお、上記打撃を付与する位置の変更は専用の装置(例えば、打撃位置変更手段)を用いて行っても良く、作業者が対象物を手で持って移動させることにより行っても良い。
【0101】
また、本発明に係る品質評価方法の第一実施例および第二実施例は、いずれも、対象物の材質が異なる場合における当該対象物の検出を行うことも可能である。
【0102】
以下では、図1、図2、図10、図11、図12および図13を用いて本発明に係る品質評価方法の第三実施例について説明する。
本実施例の品質評価方法は、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する方法であり、その基本的な構成は上記品質評価方法の第三実施例と略同じである。
【0103】
図2に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第三実施例は、打撃付与工程100、打撃音検出工程200、焼入れ深さ算出工程310等を具備する。
【0104】
打撃付与工程100は、CVJアウターレース11に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程100において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21をドライブシャフト10に衝突させる。
このとき、ハンマ部材21がCVJアウターレース11に衝突する位置はカップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)である。
打撃付与工程100が終了したら、打撃音検出工程200に移行する。
【0105】
打撃音検出工程200は、打撃付与工程100において打撃を付与したCVJアウターレース11が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程200において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2がCVJアウターレース11に打撃を付与することによりCVJアウターレース11が発する超音波を検出する。
このとき、音響センサ41はCVJアウターレース11のカップ部12の開口部の開口方向に少し離れた位置(図10参照)に配置されている。
次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータに変換する。
打撃音検出工程200が終了したら、焼入れ深さ算出工程310に移行する。
【0106】
焼入れ深さ算出工程310は、打撃音検出工程200において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する工程である。
【0107】
焼入れ深さ算出工程310において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、CVJアウターレース11が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0108】
また、制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のCVJアウターレースからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程100および打撃音検出工程200を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータを取得している。
【0109】
制御装置5の制御部51は、異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータと、ドライブシャフト10に打撃を付与することによりCVJアウターレース11が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、CVJアウターレース11の焼入れ深さを算出する。
本実施例の場合、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数がいずれも21240Hzから21280Hzの範囲内にある場合には当該CVJアウターレース11が良品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲である)と判定し、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数のいずれかが21240Hz未満である場合には当該CVJアウターレース11は上限外れ品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲よりも大きい方に外れている)と判定し、カップ部12の開口部の周縁部の6箇所(図10および図11中の位置B1〜B6)にハンマ部材21を衝突させたときのピーク周波数のいずれかが21280Hzよりも大きい場合には当該CVJアウターレース11は下限外れ品である(CVJアウターレース11の焼入れ深さが適正な範囲よりもちいさい方に外れている)と判定する。図13に良品、上限外れ品および下限はずれ品の判定結果の一例を示す。
【0110】
なお、図12に示す如く、カップ部12の開口部の周縁部の1箇所(位置A、図10および図11参照)にのみハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数とカップ部12のボール溝12aの表面における焼入れ深さとの関係は相関関係の良い直線関係となっており、これでも十分に判定可能であるが、最終的な判定結果(CVJアウターレース11の複数箇所の焼入れ深さをビッカース硬度等に基づいて算出し、当該算出結果に基づいて焼入れ深さが適正な範囲にあるか否かを判定したもの)により下限外れ品となったものの一部と良品となったものの一部とがオーバーラップしている。
従って、ハンマ部材21による打撃の付与を一箇所よりも複数箇所に行うことにより、」判定結果の精度をさらに向上させることが可能である。
【0111】
なお、焼入れ深さ算出工程310は、制御装置5の制御部51に格納された焼入れ深さの算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、焼入れ深さの算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る焼入れ深さ算出手段の実施の一形態である。
【0112】
以下では、図1、図14、図15、図16、図17および図18を用いて本発明に係る品質評価方法の第四実施例について説明する。
【0113】
図14に示す如く、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、打撃付与工程140、打撃音検出工程240、密度算出工程340等を具備する。
【0114】
打撃付与工程140は、焼結部材14に打撃を付与する工程である。
打撃付与工程140において、制御装置5は打撃付与装置2の駆動ユニット22に信号を送信し、駆動ユニット22は当該信号に基づいてハンマ部材21を焼結部材14に衝突させる。
このとき、ハンマ部材21が焼結部材14に衝突する位置は、焼結部材14の外周面の周方向において略等間隔となっている8箇所である。
打撃付与工程140が終了したら、打撃音検出工程240に移行する。
【0115】
打撃音検出工程240は、打撃付与工程140において打撃を付与した焼結部材14が発する超音波を検出する工程である。
打撃音検出工程240において、打撃音検出装置4の音響センサ41は、打撃付与装置2が焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波を検出する。
このとき、音響センサ41は焼結部材14の上方(図15参照)に配置されている。
次に、FFTアナライザ42は、音響センサ41が検出した超音波に係る信号に基づき、当該超音波の周波数と強度との関係を示すデータに変換する。
打撃音検出工程240が終了したら、密度算出工程340に移行する。
【0116】
密度算出工程340は、打撃音検出工程240において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて、焼結部材14の密度を算出する工程である。
【0117】
密度算出工程340において、制御装置5の制御部51は、FFTアナライザ42から、焼結部材14が発する超音波の周波数と強度との関係を示すデータを取得する。
【0118】
また、制御装置5の制御部51は、異なる密度を有する複数のCVJアウターレースからなるリファレンスについて、予め上記打撃付与工程140および打撃音検出工程240を施し、該リファレンスが発する超音波についての周波数と強度との関係を示すデータ(図16参照)を取得している。
ここで、図16に示す本実施例のリファレンスのデータは、体積および重量から算出された平均の密度が6.4g/cm3、6.6g/cm3、6.8g/cm3、7.0g/cm3であり、形状および材質が焼結部材14と同じである計4つのリファレンスを用いて求められた。その結果、周波数と密度との間には比較的相関の強い直線関係が得られた。
【0119】
制御装置5の制御部51は、異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に関するデータ(図16参照)と、焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波のピーク周波数と、を比較することにより、焼結部材14の密度を算出する。
また、制御部51は、焼結部材14の外周面の周方向において略等間隔となっている8箇所の発する超音波の周波数のばらつきを判定することにより、焼結部材14の密度の分布が略均一化否かを判定することが可能である。
すなわち、図17(a)に示す如く焼結部材14の密度の分布が略均一である場合には異なる複数の位置にハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数が略同じ値となり、図17(b)に示す如く焼結部材14の密度の分布が不均一である場合には異なる複数の位置にハンマ部材21を衝突させた場合のピーク周波数が異なる値となる。
図18に本実施例における焼結部材14の密度の分布の算出結果の一例を示す。図18に示す如く、ハンマ部材21で複数箇所に打撃を付与することにより、焼結部材14の密度の分布が略均一か否かを容易に判定することが可能である。
【0120】
なお、密度算出工程340は、制御装置5の制御部51に格納された密度の算出に係るプログラムに基づいて行われる。従って、密度の算出に係るプログラムが格納された制御装置5の制御部51は、本発明に係る密度算出手段の実施の一形態である。
【0121】
以上の如く、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、
焼結部材14に打撃を付与する打撃付与工程140と、
打撃付与工程140において打撃を付与した焼結部材14が発する超音波を検出する打撃音検出工程240と、
打撃音検出工程240において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて焼結部材14の密度を算出する密度算出工程340と、
を具備するものである。
【0122】
このように構成することは、以下の如き効果を奏する。
【0123】
第一に、本実施例の品質評価方法は、従来の超音波を照射する形式の品質評価装置の如く、対象物たる焼結部材14を水に浸漬したり表面にグリース等を塗布したりするといった煩雑な作業を必要とせず、作業が簡便で作業性に優れるとともに作業時間を短縮することが可能である。
【0124】
第二に、本実施例の品質評価方法は、高価な装置や部品を必要としないため、安価に実施することが可能である。
【0125】
また、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、
密度算出工程340において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、焼結部材14に打撃を付与することにより焼結部材14が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較するものである。
このように構成することにより、焼結部材14の密度を精度良く算出することが可能である。
【0126】
なお、対象物の密度を精度良く算出するという観点から、本実施例における対象物またはリファレンスが発する超音波の「所定の周波数帯」は、20kHz以上40kHz以下であることが望ましい。
これは、周波数が20kHz以下の音波は可聴域の音波に属し、焼結された対象物の内部を通過する際の減衰が小さいために焼入れ深さの算出に用いることが困難であることによる。
また、周波数が40kHzを超える超音波は、焼結された対象物の内部を通過する際の減衰が大き過ぎるために一般的に検出強度が小さくなり、ノイズと分離不可能となって実質的に密度の算出に用いることが困難であることによる。
【0127】
本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の一箇所に一回の打撃を付与する場合だけでなく、一箇所に複数回の打撃を付与する場合や、異なる複数の箇所に一回または複数回の打撃を付与する場合も含まれる。
【0128】
本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の一箇所に複数回の打撃を付与し、それぞれの打撃に係る超音波のピーク周波数の平均値を当該打撃付与位置のピーク周波数とすることにより、超音波のピーク周波数の精度を向上させることが可能である。
【0129】
また、本発明に係る品質評価方法の第四実施例は、焼結部材14の異なる複数の箇所に打撃を付与することにより、焼結部材14の密度の分布を精度良く算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に係る品質評価装置の実施の一形態を示す図。
【図2】本発明に係る品質評価方法の第一実施例を示すフロー図。
【図3】対象物が発する超音波の周波数と強度との関係を示す図。
【図4】異なる焼入れ深さを有するリファレンスが発する超音波の周波数と強度との関係を示す図。
【図5】ピーク周波数と焼入れ深さとの関係を示す図。
【図6】対象物の焼入れ深さの分布の算出方法の一例を示す図。
【図7】本発明に係る品質評価方法の第二実施例を示すフロー図。
【図8】本発明に係る品質評価方法の第二実施例を示す図。
【図9】対象物の焼き割れの存在位置の検出方法の一例を示す図。
【図10】CVJアウターレースの斜視図。
【図11】CVJアウターレースの平面図。
【図12】CVJアウターレースに打撃を付与した場合のピーク周波数と焼入れ深さの関係を示す図。
【図13】CVJアウターレースの複数箇所に打撃を付与した場合のピーク周波数の分布を示す図。
【図14】本発明に係る品質評価方法の第四実施例を示すフロー図。
【図15】焼結部材の斜視図。
【図16】焼結部材に打撃を付与した場合のピーク周波数と密度との関係を示す図。
【図17】密度の分布とピーク周波数との関係を示す図。
【図18】焼結部材の密度の分布を示す図。
【符号の説明】
【0131】
10 ドライブシャフト(対象物)
11 CVJアウターレース(対象物)
14 焼結部材(対象物)
100 打撃付与工程
200 打撃音検出工程
310 焼入れ深さ算出工程
320 焼き割れ判定工程
340 密度算出工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項2】
前記焼入れ深さ算出工程において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項3】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の品質評価方法。
【請求項4】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項5】
前記焼き割れ判定工程において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項4に記載の品質評価方法。
【請求項6】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の品質評価方法。
【請求項7】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項8】
前記密度算出工程において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項7に記載の品質評価方法。
【請求項9】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の品質評価方法。
【請求項10】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項11】
前記焼入れ深さ算出手段は、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項10に記載の品質評価装置。
【請求項12】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の品質評価装置。
【請求項13】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項14】
前記焼き割れ判定手段は、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項13に記載の品質評価装置。
【請求項15】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の品質評価装置。
【請求項16】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項17】
前記密度算出手段は、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項16に記載の品質評価装置。
【請求項18】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項16または請求項17に記載の品質評価装置。
【請求項1】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項2】
前記焼入れ深さ算出工程において、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項3】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の品質評価方法。
【請求項4】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項5】
前記焼き割れ判定工程において、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項4に記載の品質評価方法。
【請求項6】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の品質評価方法。
【請求項7】
対象物に打撃を付与する打撃付与工程と、
該打撃付与工程において打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出工程と、
該打撃音検出工程において検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出工程と、
を具備することを特徴とする品質評価方法。
【請求項8】
前記密度算出工程において、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項7に記載の品質評価方法。
【請求項9】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の品質評価方法。
【請求項10】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼入れ深さを算出する焼入れ深さ算出手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項11】
前記焼入れ深さ算出手段は、
異なる焼入れ深さを有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項10に記載の品質評価装置。
【請求項12】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の品質評価装置。
【請求項13】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の焼き割れの有無を判定する焼き割れ判定手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項14】
前記焼き割れ判定手段は、
焼き割れが無いことが予め確認されたリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項13に記載の品質評価装置。
【請求項15】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の品質評価装置。
【請求項16】
対象物に打撃を付与する打撃付与手段と、
該打撃付与手段が打撃を付与した対象物が発する超音波を検出する打撃音検出手段と、
該打撃音検出手段が検出した超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数に基づいて対象物の密度を算出する密度算出手段と、
を具備することを特徴とする品質評価装置。
【請求項17】
前記密度算出手段は、
異なる密度を有する複数のリファレンスに打撃を付与することにより該リファレンスが発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、前記対象物に打撃を付与することにより該対象物が発する超音波の所定の周波数帯におけるピーク周波数と、を比較することを特徴とする請求項16に記載の品質評価装置。
【請求項18】
前記所定の周波数帯は20kHz以上40kHz以下であることを特徴とする請求項16または請求項17に記載の品質評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−284548(P2006−284548A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213108(P2005−213108)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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