説明

哺乳動物の内耳及び外耳の感染症の治療に有用な耳科用組成物

本明細書に開示するのは、ヒトが含まれる哺乳動物の内耳、中耳、及び外耳の急性及び慢性の細菌、ウイルス、及び真菌感染症の治療に有用なポビドンヨード(PVP−I)が含まれる組成物である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 外耳炎(外耳の感染症)は、外耳及び外耳道の炎症である。それは、ヒトの耳痛の一般的な原因であり、イヌ、ネコ、及び他の哺乳動物に共通の問題である。それはまた、他の多くの種において発生する。この障害には、外耳道の皮膚の炎症が関与する。この炎症は、活動的な真菌、ウイルス、又は細菌の病原体によって引き起こされる可能性がある。外耳道の皮膚はしばしば腫脹して、触ると痛くて感じやすくなる場合がある。
【0002】
[0002] 中耳炎(中耳の感染症)は、耳管が含まれる、鼓膜と内耳の間の領域で生じる。中耳炎は、小児期においてごく一般的であり、平均的な幼児は、ほとんどいつもウイルスの上気道感染症(URI)、大抵は感冒に伴う、年に2〜3回のエピソードを経験する。多くの感冒症状の原因となるライノウイルス及びアデノウイルスは、内耳に腫脹及び鬱血を引き起こして、それは、中耳構造を永久的に傷害する可能性がある。中耳炎はまた、多様な細菌と他のウイルスによって頻繁に引き起こされる。
【0003】
[0003] さらに、耳の感染症(特に、小児における)は、抗生物質耐性菌と抗生物質耐性微生物のために、伝統的な抗生物質で治療することが難しくなった多くの疾患の1つである。ほとんどの中耳炎の症例は、例えば、いくつかの主要な病原体、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、又は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の1つによって引き起こされる。従って、これらの疾患を予防及び管理するための新しい非抗生物質アプローチを開発することへの喫緊のニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明には、耳の感染症を有する哺乳動物を治療する方法が含まれ、該方法は、0.01%〜5.0%の濃度でのポビドンヨード(PVP−I)と0.01%〜2.0%の濃度でのステロイドを含んでなる組成物と該哺乳動物の耳を接触させることを含んでなる。
【0005】
[0005] ある側面において、耳の状態は、細菌性外耳炎、悪性耳炎、真菌性外耳炎、耳真菌症、中耳炎、及び内耳炎からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである。ある側面において、PVP−Iは、1.0%〜3.0%の濃度で存在する。別の側面において、PVP−Iは、2.0%の濃度で存在する。
【0006】
[0006] ある側面において、ステロイドは、デキサメタゾン、フルロメタロン、ロトプレンドール、メドリゾン、プレドニゾロン、ジフルプレドナート、リメキソロン、及びヒドロコルチゾンからなる群より選択される。別の側面において、ステロイドは、デキサメサゾン又はその塩である。ある側面において、ステロイドは、0.05%〜0.1%の濃度で存在する。別の側面において、ステロイドは、0.1%の濃度で存在する。
【0007】
[0007] ある側面では、該組成物を点耳剤、酢酸亜鉛組成物、又は酢酸組成物の形態で耳へ接触させる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0008] 耳の感染症の治療には、現行では、有効な抗真菌薬、有効な抗ウイルス剤がなく、同じ剤形で抗炎症薬と組み合わされた唯一の抗菌薬が利用可能である。より希釈した濃度のPVP−Iがより強力な抗微生物効果を in vitro で発揮することがよく知られているが、臨床的に有効な希釈PVP−I耳科用溶液剤を産生する過去の試みは、これまで不成功であった。さらに、他の有効成分とPVP−Iの製剤には、他の不安定な化学部分とヨウ素分子種の反応性によって複雑化される可能性があることが注目される。このような反応性の分子種は、多くのステロイドや他の非ステロイド性抗炎症薬で一般的である。
【0009】
定義
[0009] 本明細書に使用するように、「耳」は、脊椎動物の聴覚及び平衡感覚にとりわけ責任がある生体構造を意味する。「耳」にはまた、哺乳動物の表面にしばしば存在するような、目に見える生体構造の部分が含まれる。
【0010】
[0010] 「耳の」という用語は、一般に、耳に関連する。
[0011] 本明細書に使用する「治療する」という用語は、本発明の経口組成物と哺乳動物を接触させるとき、及び/又は本発明の方法による、不利な状態での検知可能な改善、及び/又はその状態の諸症状の軽減を意味する。「治療する」という用語には、不利な状態の一部改善とその状態の完全な根絶(即ち、「治癒」)がともに含まれる。ある側面では、感染症を治療する。別の側面では、炎症を治療する。別の側面では、感染症と炎症をともに治療する。
【0011】
耳の感染症の治療
[0012] 耳の感染症を治療することだけでなく、外耳道の中と周囲を清浄することは、耳垢、死んだ皮膚、及び他の有機物質が外耳道の中と周囲に貯まることによって、時々複雑になり得る。ヨウ素は、化学的に反応性であり、還元剤として活性であるので、このような物質と反応することが知られている。例えば、外耳道の中と周囲にあるこのような物質は、このような清浄化の目的に使用される10%ヨウ素溶液剤のヨウ素の濃度を減損させて、それによりこのヨウ素溶液剤の清浄及び抗微生物の有効性を減損させる可能性がある。
【0012】
[0013] 本明細書に開示するように、驚くべきことに、ポビドンヨードとステロイドを含んでなる組成物は、有利にも、耳科適応症の抗微生物剤として有効であることが見出された。加えるに、本発明の組成物は、先行技術において示される、及び/又は使用されるより低いヨウ素濃度で有効であることが見出された。
【0013】
[0014] 本明細書に開示する組成物及び製剤は、ヒトの耳において驚くほどに容認できることが今や確定している。また、本発明の製剤が多くの一般的な細菌、ウイルス、及び真菌の病原体に対して in vitro 活性を有することを本明細書に開示する。ある側面において、本発明には、哺乳動物の耳の治療が含まれる。ある側面において、哺乳動物は、ヒトである。
【0014】
[0015] ある態様において、本発明の組成物で治療可能な状態には、限定されないが、細菌性外耳炎、悪性耳炎、真菌性外耳炎、耳真菌症、中耳炎、及び内耳炎が含まれる。
抗微生物剤−ポビドンヨード
[0016] 1つの態様では、本明細書に開示するような耳の障害を、抗炎症薬と原因微生物に適した抗微生物薬の両方で治療することが望まれる。ポビドンヨードは、本発明に有用な抗微生物薬である。
【0015】
[0017] ポビドンヨード(PVP−I)は、乾燥ベースで計算して9.0%〜12.0%の利用可能なヨウ素がある、ポリビニルピロリドン(PVP)とヨウ素の水溶性の複合剤である。PVP−Iは、7.5%〜10%の濃度で、溶液剤(界面活性剤及び/又はアルコールを含む)、エアゾール剤、又は軟膏剤として局所消毒製品へさらに製剤化することができる。これらの製品は、処方箋なしで(OTC)販売されて、病院では、皮膚を清潔にして消毒すること、皮膚を術前に準備すること、そしてヨウ素に感受性の感染症を治療することのために使用されている。細胞構造中の膜タンパク質は、PVP−I溶液剤より発生する遊離ヨウ素によって酸化されて、引き続き変性されると考えられている。次いで、これにより、細胞境界の破壊とヨウ素の細胞中への自由通過がもたらされる。
【0016】
[0018] PVP−Iの10.0%(w/w,水性)までの濃度は、外耳での使用に安全であり、破裂した鼓膜を通って内耳へ曝露されても同様に安全であることが知られている。
【0017】
PVP−I+ステロイド組成物
[0019] 1つの態様において、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開公報番号:2007/0219170に示すように、ステロイドとPVP−Iの安定的で忍容性のある製剤を開発した。PVP−Iとステロイドを通常の医薬賦形剤とともに水溶液で調製すると、これは、ガラス瓶と高密度ポリウレタン(HDPE)プラスチックボトルにおいて室温と上昇温度で驚くほどに安定している。
【0018】
[0020] −OH、−SH、及び−NH官能基との反応への遊離ヨウ素の親和性については、文献に十分記載されていて、ヨウ素含有溶液剤の抗微生物活性の基礎となる(Rackur H. J. Hosp. Infect., 1985; 6: 13-23 とその中の参考文献)。デキサメタゾン(9−フルオロ−llβα,17,21−トリヒドロキシ−16α−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)は、3つのそのような部分(−OH)を11、17及び21位に、そして2つの二重結合を含有する。当業者は、これらのヒドロキシル基が、PVP−Iについて上記に記載した溶液平衡反応において発生する遊離ヨウ素による共役置換反応を受けやすいこと、そしてこの二重結合が求電子的ヨウ素化反応を受けやすいことを理解されよう。
【0019】
[0021] 好適なステロイドの非限定的な例には、デキサメタゾンアルコール、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸フルロメタロン、フルロメタロンアルコール、エタボン酸ロテプレドノール、メドリゾン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ジフルプレドネート、リメキソロン、ヒドロコルチゾン、及び酢酸ヒドロコルチゾンが含まれる。ステロイドは、最終組成物の重量にして0.01%〜2.0%の濃度で、そして別の態様では、0.05%〜1.0%の濃度で使用される。ある側面において、ステロイド濃度は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.3%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、0.40%、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%、0.45%、0.46%、0.47%、0.48%、0.49%、又は0.5%である。
【0020】
[0022] ある態様では、米国特許出願公開公報番号:2007/0219170としてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号:11/636,293に示されるように、様々なPVP−I及びデキサメタゾンの溶液剤が、本明細書に開示する組成に従って調製されるとき、数ヶ月の間安定なままである。開示の安定性データに基づけば、このような組成物は、数年間安定であるかもしれない。デキサメタゾンとPVP−Iの反応は、室温で、明所又は暗所で、又は経時的に、明らかな程度には進行しない。8週後、この組合せにおいて利用可能なヨウ素(0.3% PVP−Iの出発濃度)は、20%減少した。
【0021】
[0023] これまで、デキサメタゾン/PVP−I組成物では、0.625% PVP−I溶液剤の利用可能なヨウ素は、5週の保存後に、25℃と4℃でそれぞれ91%と98%であると定量された(Iryo Yakugaku 2003, 29(1), 62-65)。本明細書に示すデキサメタゾン/PVP−I組成物は、安定した希釈PVP−I溶液剤であることが実証された。室温で8週後、0.5%及び1% PVP−Iの溶液剤において利用可能なヨウ素は、99%を超えていた。
【0022】
[0024] 故に、本発明には、ステロイド又は非ステロイド性抗炎症剤を含むか又は含まない、好適な薬物送達担体中0.01%〜10%(重量/重量又は重量/容量)の範囲にPVP−Iを含んでなる組成物が含まれる。ある態様において、PVP−Iは、その範囲内のあらゆる特定濃度を含めて、1.0〜5.0%の範囲にある。別の態様において、PVP−Iは、1.5〜4.0%の範囲にあり、そして別の態様において、2.0〜3.0%の範囲にある。ある態様において、PVP−I濃度は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、7.6%、7.7%、7.8%、7.9%、8.0%、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、又は10.0%である。ある態様では、ステロイドを医薬的に許容される濃度で使用する。
【0023】
[0025] 該組成物は、細菌、マイコバクテリウム、ウイルス、真菌、又はアメーバを起因菌とする活動性感染症の治療に、並びに、そのような感染症を適正な臨床施設において予防するための治療に有用である。ある態様において、本発明は、非反応性で安定している(即ち、PVP−Iとステロイドが適合可能である)PVP−I+ステロイド組成物を提供する。ある側面において、ステロイドは、デキサメタゾンである。
【0024】
PVP−I+非ステロイド性抗炎症化合物
[0026] PVP−Iがケトロラク(非ステロイド性抗炎症薬)と速やかに反応すること、そしてケトロラクが完全に消費されて、PVP−I複合剤中の利用可能なヨウ素がケトロラクとPVP−Iの間の比に依存して有意に低下することも示された。PVP−Iとリン酸デキサメタゾンナトリウムの組合せはまた、より安定してないが、過度に反応性ではないことが判明した(UVスペクトルでは、PVP−1複合体の未知のポリマー複合体への一部解離が観測されて、ヨウ素濃度は、12週後にほぼ5%低下した)。PVP−Iがプロパラカインと即座に反応して、遊離ヨウ素を速やかに放出することもさらに観測された。
【0025】
[0027] 本発明の組成物及び方法と一緒の使用に適した抗炎症薬には、限定されないが、フマル酸ケトチフェン、ジクロフェナクナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、フルルビプロフェンナトリウム、スプロフェン、セレコキシブ、ナプロキセン、ロフェコキシブ、又はロドキサミドトロメタミンが含まれる。
【0026】
医薬組成物及び製剤
[0028] 別の側面において、本発明は、限定されないが、内耳炎、中耳炎、及び外耳炎(急性と慢性の両方)が含まれる、耳の諸症状を治療及び緩和するのに使用の局所用医薬組成物を提供する。ある態様において、該組成物は、感染起因微生物の増殖を抑えるのに有効な量のPVP−Iとそのための医薬的に許容される担体を含む。ある態様において、
PVP−Iは、耳科用組成物において、0.1%〜10%の範囲で存在する。ある態様において、耳科用組成物は、限定されないが、デキサメタゾンのようなステロイドを追加的に含んでよい。
【0027】
[0029] 局所投与用の組成物において、この混合物は、好ましくは、3.5〜6.5のpHでの水溶液剤として製剤化される。好ましくは、pHは、4と5の間へ調整する。このpH範囲は、好適な酸/塩基の組成物中の包含によって達成してよい。
【0028】
[0030] ある側面において、組成物は、本明細書の他所で詳細に説明するような、賦形剤、抗微生物剤、保存剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、及び/又は生体接着剤の1以上を含んでよい。
【0029】
[0031] ある側面において、医薬調製物は、一部アルコール性の調製物である。当業者によって理解されるように、あるパーセンテージのアルコールを調製物に含めることで、、ステロイドとPVP−Iを含めて、この成分の溶解性に役立つ。アルコール成分はまた、この調製物が適用される表面の脱水成分として役立つ。本発明に有用なアルコールには、とりわけ、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが含まれる。
【0030】
滑沢剤
[0032] ある態様では、組成物が、限定されないが、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、デキストラン、混和ポリビニルアルコール類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、軽油(light mineral oil)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、カルボポール、カルボマー940(ポリアクリル酸)、ポリビニルピロリドン、白色ワセリン、大豆レシチン、及びナトリウムカルボキシルメチルセルロースが含まれる1以上の滑沢剤、並びに当業者に知られた他の薬剤、又はこれらのあらゆる組合せを含んでよい。典型的には、このような滑沢剤は、0.1〜2重量%のレベルで利用される。ある態様において、滑沢剤は、1.0%プロピレングリコール、0.3%グリセリン、2.7%混和ポリビニルアルコール類、1%ポリビニルアルコール、1%ポリエチレングリコール、軽油、0.3%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1.0%大豆レシチン、0.25%若しくは0.5%のナトリウムカルボキシルメチルセルロースである。別の態様において、PVP−I、人工涙液ベースの滑沢剤の全重量は、0.1%と4.5%の間にある。
【0031】
追加の抗微生物剤及び抗生物質
[0033] 好適な抗生物質/抗微生物剤には、限定されないが、フルオロキノロン(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、等);アミノグリコシド(トブラマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、等);ポリミキシンB複合剤(ポリミキシンB/トリメトプリム、ポリスポリンポリミキシンB/バシトラシン、ネオスポリンポリミキシンB/ネオマイシン/グラミシジン、等)、及び他の抗生物質(アジスロマイシン、イロチシン、エリスロマイシン、バシトラシン、等)が含まれる。
【0032】
局所麻酔薬
[0034] 本発明の組成物及び方法に適した局所麻酔薬には、限定されないが、リドカイン、テトラカイン、又はこれらの誘導体又は組合せが含まれる。
【0033】
抗アレルギー成分
[0035] 抗アレルギー成分には、限定されないが、エピナスチン、ジフマル酸エメダスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸オロパタジン、オロパタジン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム、ネドクロミル、ロドキサミド、クロモリン、及びクロモリン塩、並びに酢酸亜鉛が含まれる。
【0034】
保存剤
[0036] 保存剤には、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、EDTA、ソルビン酸、オナマー(Onamer)M、当業者に知られた他の薬剤、又はこれらの組合せが含まれる。典型的には、そのような保存剤は、最終組成物の0.001〜1.0重量%のレベルで利用される。
【0035】
共溶媒
[0037] 本発明の組成物は、1以上の共溶媒を含有してもよい。本組成物の諸成分の溶解性は、組成物中の界面活性剤又は他の適正な共溶媒によって高めることができる。このような共溶媒/界面活性剤には、ポリソルベート20、60、及び80、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(例、プルロニック(Pluronic)F−68、F−84、及びP−103)、シクロデキストリン、チロキサポール、当業者に知られた他の薬剤、又はこれらの組合せが含まれる。典型的には、このような共溶媒は、最終組成物の0.01〜2重量%のレベルで利用される。
【0036】
緩和剤(Soothing Agents)
[0038] さらに、本組成物は、PVP−I溶液剤を耳へ適用するときに、冷涼感を与えて軽度の耳刺激を緩和する、快適さを高める、清涼効果と感覚改善をもたらすのに有効な量の化学薬剤を含んでよい。このような薬剤には、限定されないが、メントール、メントール誘導体(メトングリセリンアセチル及びメンチルエステルが含まれる)、カルボキサミド、メンタングリセロールケタール、アルキル置換尿素、スルホンアミド、テルペン類似体、フラノン、及びホスフィンオキシドのような冷涼剤;又はカンファー、及びボルネオールを含めて、様々な化学品及びケミカル群が含まれる。
【0037】
増粘剤
[0039] 本発明の組成物は、増粘剤、即ち、粘度を高めることができる薬剤を含有してもよい。活性化合物の耳吸収を高める、製剤の調合時の変動性を減らす、製剤の懸濁又は乳化の諸成分の物理的な分離を減らす、及び/又は他のやり方で耳科用製剤を改善するには、単純な水溶液剤の粘度より高い粘度が望ましい場合がある。このような増粘剤には、例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、当業者に知られた他の薬剤、又はこれらの組合せが含まれる。このような薬剤は、典型的には、最終組成物の0.01〜2重量%のレベルで利用される。
【0038】
生体接着剤
[0040] 生体接着剤は、組成物において、生体基質上での薬物勾配の保持時間を高めるために使用することができる。生体接着剤には、限定されないが、ポリビニルピロリドン(PVP)、キサンタンゴム、ローカストビーンガム(Locust bean gum)、アカシアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ゼラチン、カルボマー、ポリビニルアルコール、ジェランガム、トラガカント、アカシア、及びナトリウムカルボキシメチルセルロースを含めてよい。
【0039】
製剤と有効性の評価
[0041] ある態様では、本発明の方法及び組成物により、さらなる進行が検出されないように、感染性外耳炎の進行を抑えることができる。外耳炎の症状の重症度やその進行速度が抑えられているかどうかを判定するために、どの方法も使用することができる。例えば、外耳炎を有するヒトに、疼痛や不快感に関して治療の前と後で問診して、外耳炎の症状(例、耳痛又は耳の痒み)が抑えられているかを判定することができる。ある症例では、哺乳動物について外耳炎の症状(例、耳漏、圧迫に対する耳の感受性、触れることに対する耳たぶの感受性、又は聴力低下)を抗感染化合物(例、PVP−I)とステロイドでの治療の前と後で観察又は検査して、症状の重症度が抑えられているかどうかを判定することができる。ある症例では、耳鼻科医が治療の前と後で外耳炎の重症度を評価して(例えば、当該技術分野で知られている諸特性について理学的検査を実施して、グレード1〜4のスコアを割り当てることによって)、症状の重症度が抑えられているかを判定することができる。外耳炎の進行が抑えられているかどうかを判定するために、異なる時点で理学的検査を実施して、外耳道の中及び周囲の紅斑及び/又は浮腫の量を決定することができる。異なる時点で観測される紅斑及び浮腫の量を比較して、進行速度を評価することができる。本明細書に記載のような治療の後で、この進行速度を別の時間間隔にわたり再び判定して、進行速度が減少したかどうかを判定することができる。
【0040】
[0042] 故に、PVP−I及びステロイドを含んでなる組成物の有効量とは、哺乳動物へ有意な毒性をもたらすことなく、外耳炎の症状の重症度又はその進行を抑える量であると理解されよう。例えば、PVP−Iの有効量は、点耳製剤において約0.1%〜約10%(例、約2%)のポビドンヨードであり得る。ある態様において、デキサメタゾンのようなステロイドの有効量は、点耳製剤中約0.05%〜約1.0%(例、約0.1%)のデキサメタゾンであり得る。ある態様において,PVP−I及びデキサメタゾンを含んでなる組成物の有効量は、耳へ適用される、約2%ポビドンヨードと約0.10%デキサメタゾンを含有する点耳製剤の約2滴〜約8滴であり得る。
【0041】
[0043] ある側面において、耳科用組成物は、酢酸亜鉛の組成物である。別の側面において、耳科用組成物は、酢酸の組成物である。
[0044] 哺乳動物が本発明の組成物の特別な量へ応答するように見えなければ、PVP−I及びデキサメタゾンの1以上の量を、例えば、増加させることができる。このより高い濃度を受けた後で、その哺乳動物について治療に対する応答性と毒性症状をともにモニタリングして、それに従って調整を行うことができる。有効量は、治療に対する哺乳動物の応答に依存して、一定のままであっても、増減スケール(a sliding scale)又は可変用量として調整してもよい。特別な適応症に使用する実際の有効量には、様々な要因が影響を及ぼす可能性がある。例えば、投与の頻度、治療の期間、多数の治療薬剤の使用、投与の経路、哺乳動物の免疫能力、及び外耳炎の重症度により、投与される実際の有効量の増加又は減少が求められる場合がある。投与の頻度は、哺乳動物に対して有意な毒性をもたらすことなく外耳炎の症状の重症度又はその進行速度を抑える、どの頻度でもよい。例えば、投与の頻度は、1日約1回〜1日約4回(例、1日約2回)であり得る。投与の頻度は、一定のままであっても、治療の期間の間に変えてもよい。
【0042】
[0045] 別の側面において、抗感染化合物とステロイドでの治療のクールには、休薬期間を含めることができる。例えば、抗感染薬とステロイドを2週の期間にわたり投与して、2週の休薬期間を続けることができて、そのようなレジメンを数回繰り返すことができる。有効量と同じように、特別な適応症に使用する実際の投与頻度にも様々な要因が影響を及ぼす可能性がある。例えば、有効量、治療の期間、多数の治療薬剤の使用、投与の経路、哺乳動物の免疫能力、及び外耳炎の重症度により、投与頻度の増加又は減少が求められる場合がある。本発明で提供する組成物を投与するのに有効な期間は、哺乳動物に対して有意な毒性をもたらすことなく外耳炎の症状の重症度又はその進行速度を抑える、どの期間でもよい。このように、有効な期間は、数日〜数週、数ヶ月、又は数年へ変動する可能性がある。一般に、外耳炎の治療に有効な期間は、数日〜数週の期間に及ぶ可能性がある。ある症例では、有効な期間が個々の哺乳動物が生存しているほどに長い可能性がある。特別な治療に使用される実際の有効期間には、多数の要因が影響を及ぼす可能性がある。例えば、有効な期間は、投与の頻度、有効量、多数の治療薬剤の使用、投与の経路、哺乳動物の免疫能力、及び外耳炎の重症度に応じて変動する可能性がある。
【0043】
[0046] 上記の診断及び治療の考察事項は、中耳炎及び内耳炎の治療へ同様のやり方で適用することができる。
【実施例】
【0044】
実施例1
ある態様において、耳科用組成物は、以下の通りである:
1. 0.1%〜10.0%(w/w)ポリビニルピロリジノン−ヨウ素複合体(ポビドンヨード)[1−ビニル−2−ピロリジノンポリマー、ヨウ素複合体]、USP、CAS2565541−8
2. 0.05〜0.1%(w/w)デキサメタゾン[9−フルオロ−11β,17,21−トリヒドロキシ−16α−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン]、微粒子化、USP、CAS50−02−2
3. 賦形剤、企図される適応症に求められるもの
4. pH=4.0、0.1N水酸化ナトリウム溶液又は硫酸の添加によって調整
5. 滅菌水、USP、100%へ適量
実施例2
ある態様において、耳科用組成物は、以下の通りである:
1. 2.0%(w/w)ポリビニルピロリジノン−ヨウ素複合体(ポビドンヨード)、[1−ビニル−2−ピロリジノンポリマー、ヨウ素複合体]、USP、CAS2565541−8
2. 0.1%(w/w)デキサメタゾン[9−フルオロ−11β,17,21−トリヒドロキシ−16α−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン]、微粒子化、USP、CAS50−02−2
3. 0.01%(w/w)エデト酸二ナトリウム、二水和物、USP、CAS6381−92−6
4. 0.35%(w/w)塩化ナトリウム塩、粉末、USP、CAS7647−14−5
5. 0.05%(w/w)チロキサポール[ホルムアルデヒド及びオキシランとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマー]CAS25301−02−4
6. 1.2%(w/w)硫酸ナトリウム、無水物、USP、EP、BP、CAS7757−82−6
7. 0.25%(w/w)ヒドロキシエチルセルロース、2000cps NF、CAS9004−62−0
8. pH=4.0、0.1N水酸化ナトリウム溶液又は硫酸の添加によって調整
5. 滅菌水、USP、100%へ適量
実施例3
ある態様では、耳科用製剤を以下のように調製する:
調合方法:
1. すべての粉末を量り分けて、重量を記録する。
【0045】
2. 適正なサイズのビーカーへ40%の注射用滅菌水を加える。
3. ホモジェナイザーを利用して、デキサメタゾンとチロキサポールを加える。
4. 上記の溶液を磁気撹拌棒入りの100ml血清バイアルへ注ぐ。
【0046】
5. 別の5%の水を使用して先のビーカーを濯いで、血清バイアルへ入れる。
6. 撹拌しながらヒドロキシエチルセルロースを加えて、均一になるまで撹拌を続ける。
【0047】
7. 上記組成物のpHを4.0へ調整する。
8. 適量を加えて50mlとする。
9. 上記を保持する容器を固定して、加熱滅菌する。
【0048】
10. 加熱滅菌サイクルの後で、冷えるまで中身を完全に撹拌する。
11. 別のビーカーに40%の注射用滅菌水を加える。
12. 以下の成分を1つずつ、以下の順序で、各成分が次の成分を加える前に完全に溶けていることを確認して加える:NaCl、EDTA、硫酸ナトリウム、ポビドンヨード。
【0049】
13. pHを4.0へ調整する。
14. 適量を加えて50mlとする。
15. 上記を濾過して滅菌する。
【0050】
16. この濾過した溶液を加熱滅菌した溶液へ注入して、均一になるまで撹拌する。
17. 琥珀色のガラス瓶へ分注する。
本発明について、本明細書において、ある好ましい態様を参照にして記載した。しかしながら、当業者には、これに対する明白な変更態様が明らかであるので、本発明がそれに限定されるとみなしてはならない。随所に引用したすべての特許、特許出願、及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.0.01%〜5.0%の濃度のポビドンヨード(PVP−I);及び
b.0.01%〜2.0%の濃度のステロイド;
を含んでなる組成物と哺乳動物の耳を接触させることを含んでなる、耳科感染症を有する哺乳動物を治療する方法。
【請求項2】
耳の状態が、細菌性外耳炎、悪性耳炎、真菌性外耳炎、耳真菌症、中耳炎、及び内耳炎からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステロイドが、デキサメタゾン、フルロメタロン、ロトプレンドール、メドリゾン、プレドニゾロン、ジフルプレドナート、リメキソロン、及びヒドロコルチゾンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステロイドが、デキサメサゾン又はその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物を、点耳剤又は酢酸亜鉛組成物の形態で耳へ接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PVP−Iが、1.0%〜3.0%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記PVP−Iが、2.0%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステロイドが、0.05%〜0.1%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステロイドが、0.1%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−519175(P2012−519175A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552132(P2011−552132)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025251
【国際公開番号】WO2010/099212
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510326599)フォーサイト・バイオセラピューティクス・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】