説明

哺乳動物の血糖値低下のためのジペプチジルペプチダーゼIVエフェクターの使用

【課題】糖尿病治療組成物の提供。
【解決手段】ジペプチジルペプチダーゼ(DPIVないしCD26)又はDPIV様酵素活性を抑制する組成物。これにより、内因性若しくは投与された向インスリン性((insulinotropic))ペプチド(インクレチン)、胃抑制性ポリペプチド/グルコース依存性向インスリン性ポリペプチド1−42(GIP1−42)及びグルカゴン様ペプチド−1 7−36アミド(GLP−17−36)(若しくはこれらのペプチドの類縁体)の分解が抑制をされる。内因性若しくは投与されたインクレチン又はその類縁体の安定性が増した結果、向インスリン効果が持続し、膵臓ランゲルハンス島からのインスリン分泌に対する強力な刺激となり、グルコースは血中からより迅速に除去される。酵素活性を抑制する阻害剤がアラニルピロリジド又はアミノアシルチアゾリジドである組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素ジペプチジルペプチダーゼIVの酵素活性と類似又は同一の活性を持つ酵素群の活性抑制エフェクター(基質、擬基質、阻害剤、結合蛋白質、抗体及び同様のもの)を投与することで血糖濃度を下げることを目的とした新規な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特異的蛋白質分解に含まれる蛋白質分解酵素の他に、内因性ペプチドの機能制御(活性化、失活化又は調節)に伴う蛋白質の特異的分解を起こす蛋白質分解酵素が知られている[KIRSCHKE,H.,LANGNER,J.,RIEMANN,S.,WIEDERANDERS,B.,ANSORGE.S.and BOHLEY,P.Lysosomal cysteine proteases.Excerpta Medica(Ciba Foundation Symposium 75),15(1980); KRAUSSLICH,H.G.and WIMMER,E.,Viral Proteinases.Ann.Rev.Biochem.57,701(1987)]。
【0003】
このような転化酵素、シグナルペプチダーゼ若しくはエンケファリナーゼは神経ペプチド研究の成果として免疫系に発見された[GOMEZ,S.,GLUSCHANKOF,P.,LEPAGE,A.,MARRAKCHI,N. and COHEN,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5468 (1988);ANSORGE,S.and SCHoN,E.,Histochem.82,41(1987) ]。
【0004】
多数のペプチドホルモンに豊富に存在するアミノ酸プロリンは、ペプチドの構造上の特性を決定することから、プロリン特異的ペプチダーゼが、生理活性ペプチドの制御においてシグナルペプチダーゼと類似の機能を持つと論じられている[YARON,A.,The Role of Proline in the Proteolytic Regulation of Biologically Active Peptides.Biopolymers 26,215(1987):WALTER,R.,SIMMONS,W.H.and YOSHIMOTO,T.,Proline Specific Endo-and Exopeptidases.Mol.Cell.Biochem. 30,111(1980);VANHOOF G.,GOOSSENS,F.,DE MEESTER,I.,HENDRIKS,D.and SCHARPE'S.,Proline motifs and their biological processing.FASEB Journal 9,736(1995) ]。プロリンは、例外的な構造をとるため、非特異的蛋白質分解酵素による分解を避けるような立体構造と安定性の両方をこのようなペプチドに付与している[KESSLER,H.,Conformation and biological activity.Angew.Chem.94,509(1982)]。一方で、プロリンを含んでいる配列(HIVプロテアーゼ,サイクロフィリンなどを含む)に非常に特異的に作用する酵素群は医薬品化学における重要な標的である。特に、プロリンエンドペプチダーゼ(PEP)やジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)のようなプロリン下流で切断するペプチダーゼ活性は、酵素による選択的分解や天然ペプチド基質の生理活性の調節と結び付けられてきた。PEPは記憶と学習活動に関与し、DPIVは免疫応答における情報伝達に関与しているということが示された[ISHIURA,S.,TSUKAHARA.T.,TABIRA.,SHIMIZU.T.,ARAHATA K.and SUGITA.H.,FEBS-Letters 260.131(1990);HEGEN.M.,NIEDOBITEK.G.,KLEIN,C.E.,STEIN,H.and FLEISCHER,B.,J.of Immunology 144,2908(1990)]。
【0005】
これらの酵素は、高いプロリン特異性に加え、典型的基質に含まれるアミノ酸アラニンを含むペプチド結合を選択的に認識して切断することができる。現在のところ、アラニン含有ペプチドは、構造的に相関のあるプロリン含有ペプチドと類似の立体構造をとるかどうかは議論中である。最近、このような特性が、蛋白質中のプロリンとアラニンを交換した点突然変異実験にて述べられた[DODGE.R.W.and SCHERAGA,H.A.,Folding and unfolding kinetics of the proline-to-alanine mutants of bovine pancreatic ribonuclease A.Biochemistry 35(5)1548(1996)]。
【0006】
血液中に存在するDPIV又はDPIV様活性(すなわち細胞質ゾルDPIIにはDPIVとほとんど同一の基質特異性がある。)は、非常に特異的に、N末端から2番目の位置にプロリン又はアラニンを持つ生理活性ペプチドのN末端からジペプチドを遊離する。以上のことから、本酵素は、体内においてポリペプチドの活性制御に関与していると結論づけられた[VANHOOF,G.,GOOSSENS,F.,DE MEESTER,I.,HENDRIKS,D.,and SCHARPE,S.,Proline motifs and their biological processing,FASEB Journal 9,736(1995)]。
【0007】
グルコース依存性向インスリン性ポリペプチド:胃抑制性ポリペプチド1−42(GIP1−42)及びグルカゴン様ペプチドアミド−17−36(GLP−17−36)は、膵臓からのグルコースによって誘導されるインスリン分泌を増加させるホルモン(インクレチン)であり、DPIVの基質である。本酵素は、生体内及び試験管内でこれらのペプチドのN末端からジペプチドであるチロシルアラニン及びヒスチジルアラニンをそれぞれ遊離する[MENTLEIN,R.,GALLWITZ,B.,and SCHMIDT,W.E.,Dipeptidyl Peptidase IV hydrolyzes gastric inhibitory polypeptide, glucagon-like peptide-1(7-36)amide,peptide histidine methionine and is responsible for their degradation in human serum.Eur.J.Biochem.214,829(1993) ]。
【0008】
体内でDPIV若しくはDPIV様酵素活性による基質の分解が減少すれば、実験室条件下でも哺乳類の病理学的な状態下でも、望ましくない酵素活性を効果的に抑制することに寄与することができる[DEMUTH,H.-U.,Recent developments in the irreversible inhibition of serine and cysteine proteases.J.Enzyme Inhibition 3,249-278(1990);DEMUTH,H.-U.and HEINS,J.,On the catalytic Mechanism of Dipeptidyl Peptidase IV.in Dipeptidyl Peptidase IV (CD 26)in Metabolism and the Immune Response(B.Fleischer,Ed.)R.G.Landes,Biomedical Publishers,Georgetown,1-35(1995) ]。手短に言えば、非インスリン依存性真性糖尿病は、インスリン抵抗性とインスリン分泌とに関連するが、この時のインスリン分泌は正常なグルコース濃度に対しては不適切な状態にあり、蛋白質分解酵素の関与している血中インクレチン濃度の以上と関わっている可能性がある[BROWN,J.C.,DAHL,M.,KWAWK,S.,MCINTOSH,C.H.S.,OTTE,S.C.and PEDERSON,R.A.Peptides 2,241(1981);SCHMIDT,W.E.,SIEGEL,E.G.,GALLWITZ,B.KUMMEL,H.,EBERT,R.and CREUTZFELDT,W.,Characterization of the insulinotropic activity of fragments derived from gastric inhibitory polypeptide.Diabetologia 29,591A(1986);ADELHORST,K.,HEDEGAARD,B.B.,KNUDSEN,L.B.and KIRK,O.,Structure-activity studies of glucagon-like peptide.J.Biol.Chem.296,6275(1994)]。
【0009】
現在ではインスリン依存症真性糖尿病(IDDM)は、インスリン(子牛胎児又は豚の膵臓から単離されたものか若しくは組換え分子として生産されたもの)がさまざまな形態で患者へ投与され、治療されている。非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)は、節食若しくはスルホニル尿素を投与することでインスリン分泌を刺激するか又は、ビグアニドと共に使用してグルコースの摂取を増大させることで治療されている。近代的治療方法同様、IDDMの伝統的治療方法には、患者側の多大な努力、高額医療費、患者の生活の質の大幅な低下といった特徴がある。標準的治療法(毎日のインスリンの静脈注射)は、1930年代から実施されており、急性症状を治療するように指導されているが、投与が長期間になると血管疾患や神経損傷をもたらす[LACY,P.,Status of Islet Cell Transplantation,Diabetes Care 16(3)76(1993) ]。皮下デポー剤の点滴注入−インプラント(毎日の注射を必要とせず、投与量が少なく、蛋白質分解作用のないインスリン放出)のような最近の方法も、ランゲルハンス島の完全移植(又は移植)同様、試行中である。しかし、このような移植は高額である。その上、危険な外科的処置があり、移植の場合は免疫抑制又は免疫反応を回避することが必要となる[LACY,P.,Treating Diabetes with Transplanted Cells.Sci.Americ.273(1)40-46(1995)]。還元グルコースを除去する試みは未だ成功していない。NIDDMの場合、スルホニル尿素で内因性インスリンの分泌を刺激する治療を受けている患者の多くは、これらの薬剤に耐性を持つようになる。更に、ビグアニドを用いてグルコース除去を増加させた成功例は少ない。
【0010】
上記の治療方法とは対象的に、ここに提案する非常に効果的な低分子酵素阻害剤の投与は、対費用効果の高い代替手段である。このような、種々の蛋白分解酵素に対する阻害剤は、既に抗高血圧薬、免疫抑制剤そして抗ウイルス薬として用いられている。安定性、輸送、清掃値特性を考慮して分子を化学的に設計することで、薬効を変え、そしてまた、臓器間の個々の違いに化合物を適応さえさせてきた[SANDLER.M.and SMITH,H.J.,eds.,Design of Enzyme Inhibitors as Drugs.Oxford University Press,Oxford(1989);MUNROE,J.E.,SHEPHERD,T.A.,JUNGHEIM,L.N.,HORNBACK,W. J.,HATCH,S.D.,MUESING,M.A.,WISKERCHEN,M.A.,SU,K.S.,CAMPANALE,K.M.,BAXTER,A.J., and COLACINO,J.M.,Potent,orally biovailable HIV-1 protease inhibitors containing noncoded D-amino acids.Bioorg.Medicinal Chem. Letters 5(23)2897(1995) ]。
【0011】
酵素のエフェクターによって哺乳動物血中のジペプチジルペプチダーゼ(DPIV又はCD26)又はDPIV様酵素活性の抑制を誘導し、内因性向インスリン性ペプチド(若しくは対外から投与されたもの)である胃抑制性ポリペプチド1−42(GIP1−42)及びグルカゴン様ペプチドアミド−1 7−36(GLP−17−36)(若しくはこれらのペプチドの類縁体)の分解を抑制することで血糖値を下げるという簡便で新規な方法が本発明のねらいである。通常はDPIV及びDPIV様酵素に分解されて、これらのペプチド又はその類縁体濃度が低下するが、これが抑制されるか若しくは遅延されることが期待される。
【0012】
本発明は、哺乳動物血液中のジペプチジルペプチダーゼ(DPIV又はCD26)の酵素活性若しくはDPIV様酵素活性が抑制されることで耐糖能が改善される、という発見に基づくものである。
【0013】
本発明者は次のようなことを観察した。
1. ジペプチジルペプチダーゼ(DPIVまたはCD26)の酵素活性若しくはDPIV様酵素活性が抑制されることで、グルコースに刺激され内因的に放出されたか若しくは外部より投与されたインクレチン(又はそれらの類縁体)の安定性を相対的に上昇させる。つまり、DPIV若しくはDPIV様蛋白質のエフェクターを投与するということは、血液中のインクレチンの分解を制御することに利用でき得る。
2. インクレチン(若しくはそれらの類縁体)の生物学的安定性が増すことで、インスリン応答が変化する。
3. ジペプチジルペプチダーゼ(DPIV又はCD26)若しくはDPIV様酵素が減少することで、血液中のインクレチンの安定性が増し、それに続いてインスリンによるグルコース除去に変化が生じる。つまり、耐糖機能はDPIVエフェクターの投与により改善され得ることを示している。
よって、本発明は臨床的に不適切な基礎食後高血糖の状態にある哺乳動物で見られるような高血糖レベルを低下させることを目的としたジペプチジルペプチダーゼ(DPIV)の若しくはDPIV様酵素活性のエフェクターの効用に関するものである。本発明の特徴は、DPIV又はDPIV様酵素活性のエフェクターを投与することで、糖尿、高脂血症、代謝性アシドーシス及び真性糖尿病などの哺乳類の代謝系の病理学的な機能不全を予防又は遅延させるということである。
【0014】
より好ましい表現をするなら、本発明は、治療上有効な量のジペプチジルペプチダーゼ(DPIV)の又はDPIV様酵素活性のエフェクターを投与することで、臨床的に不適切な基礎食後高血糖を示している哺乳動物で見られるような高血糖レベルを下げるという方法に関する。
【0015】
別の表現をするなら、本発明は、臨床的に不適切な基礎食後高血糖を示している哺乳動物で見られるような高血糖レベルを下げることに使用する、ジペプチジルペプチダーゼ(DPIV)の又はDPIV様酵素活性のエフェクターに関する。
【0016】
本発明でいう、投与されるDPIV及びDPIV様酵素群のエフェクターは、酵素阻害剤、基質、擬基質、DPIV遺伝子発現阻害剤、結合蛋白質若しくは標的酵素蛋白質の抗体という製剤学的処方又は、哺乳動物内でDPIV及びDPIV様蛋白質濃度若しくは酵素活性を減少させるような別の化合物との組み合わせという製剤学的処方をとる。本発明でいうエフェクターは、例えばアラニルピロリジドやイソロイシルチアゾリジドのようなジペプチド誘導体若しくは模造ジペプチジドや、擬基質N−バリルブロリル−O−ベンゾイルヒドロキシルアミンのようなDPIV阻害剤である。このような化合物は文献に記載されているか[DEMUTH,H.-U.,Recent developments in the irreversible inhibition of serine and cysteine proteases.J.Enzyme Inhibition 3,249(1990)]、若しくはその文献中に記載されている方法に従って合成される。
【0017】
本発明でいう方法は、哺乳動物血液中の高い血糖濃度を下げる新規な方法である。
【0018】
本発明は、簡便で商業的に有用であり、不適切な高血糖血に起因するヒトの疾病の治療用として適切である。
【0019】
エフェクターは薬剤輸送用最先端素材と組み合わせた製剤の形で投与される。エフェクターは非経口(生理食塩水での静脈内投与)若しくは経腸(経口、一般的な抗体物質と処方されたもの)のどちらでも投与される。
【0020】
エフェクターの体内安定性及び生物学的利用能のために、単回若しくは複数回投与で期待される血糖濃度の正常化に達する。このようなエフェクターの投与量は、例えば、DPIV阻害剤としてのアミノアシルチアゾリジドの場合、キロ当たり1.0mgから10.0mgに変化する。
【0021】
実施例
実施例1:生体内でDPIVの触媒する、インクレチンGIP1−42及びGLP−17−36の加水分解の阻害
試験管内では、精製酵素若しくはヒト血清を使用したDPIV及びDPIV様酵素活性による加水分解を抑制することができる(図1)。
【0022】
本発明によれば、30mM GIP1−42若しくは30mM GLP−17−36及び可逆的DPIV阻害剤である20mMイソロイシルチアゾリジド(1a)を含む20%血清画分をpH7.6、30℃、24時間試験管で培養することで、酵素の触媒する両ペプチドホルモンの加水分解は完全に抑制される(1b及び1c、双方とも上段のスペクトル)。合成GIP1−42(5mM)及び合成GLP−17−36(15μM)を、ヒト血清(20%)を含む0.1mMトリシン緩衝液でpH7.6、30℃で24時間培養した。培養検定用サンプル(GIP1−42の場合は2.5pmolまた、GLP−17−36の場合は7.5pmol)を経時的に抜き取った。サンプルを2’,6’−ジヒドロキシアセトフェノンをマトリックスと共結晶化((cocrystallize))し、MALDI−TOF質量分析法にて分析した。スペクトル(図1)は、1サンプル当たり250回の単一レーザー照射((single laser shot))の累積値を示す。
【0023】
(1b)m/z4980±5.3のシグナルは、DPIVの基質であるGIP1−42(分子量4975.6)を、m/z4745.2±5.5のシグナルはDPIVから遊離した生産物GIP3−42(分子量4740.4)を示す。
【0024】
(1c)m/z3325.0±1.2のシグナルは、DPIVの基質であるGLP7−36(分子量3297.7)を、m/z3116.7±1.3のシグナルはDPIVから遊離した生産物GLP−19−36(分子量3089.6)を示す。
【0025】
阻害剤を含まない対照実験では、インクレチンはほとんど完全に消化された。(図1b及び1c、双方とも下段のスペクトル)
【0026】
実施例2:生体内でのDPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジドによるGLP−17−36の分解の阻害
ラット循環系におけるDPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジド(1.5M阻害剤を含む0.9%食塩水の静脈注射)の存在又は非存在下及び対照実験での天然インクレチン(この場合GLP−17−36)の代謝分析。
【0027】
被験動物(n=5)における阻害剤イソロイシルチアゾリジドの体内濃度が0.1mg/kgの時、向インスリン性ペプチドホルモンGLP−17−36は実験中分解されなかった(図2)。DPIV阻害剤の存在若しくは被存在下のインクレチンの代謝物を分析するために、被験及び対照動物に更に50−100pMの125 I−GLP−17−36(比放射能、約1[Ci/pM]。初回の阻害剤若しくは食塩又はその両方の静注後20分)を投与した。血液サンプルを2−5分培養後に回収し、20%アセトニトリルで血漿を抽出した。その後、ペプチド抽出物を逆相高速液体クロマトグラフィーで分離した。12−18分に溶出する画分を回収し、放射能を測定した。データを、1分間当たりのカウント数[cpm]で、最大値に対する相対値として記載した。
【0028】
実施例3:生体内におけるDPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジドの静脈内投与後のインスリン応答の変化と血糖値の低下
図は、イソロイシルチアゾリジド(0.1mg/kg)の存在または欠乏下におけるラット十二指腸内へのグルコース投与に対する血糖及びインスリン応答を示す。DPIVエフェクターを投与された動物群では、比投与対照群に比べて血中グルコース濃度が急激に減少した。ここで認められた効果は容量依存性であり、ラット1キログラム当たりDPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジド0.05mg/minで輸液を終了した後でも可逆性である。十二指腸をグルコースで刺激された動物に対し、等量のグルコースを静注した阻害剤投与対照動物には効果が見られなかった。図3に、前述の関係を示した。これは、血漿パラメーターの阻害剤依存性変化を示している。A:DPIV活性、B:血漿インスリン値、C:血糖値
被験動物(n=5、雄ウェスターラット、200−225g)に、まず1.5Mイソロイシルチアゾリジドを含む0.9%食塩水(▲)又は等量の0.9%食塩水(■)を投与した(対照群n=5)。被験群には更に毎分0.75Mの阻害剤を30分間輸液し(*)、対照群には阻害剤を含まない0.9%食塩水を同一時間輸液した。開始時間t=0に、全動物に40%(w/v)グルコース溶液1g/kgを十二指腸に投与した。10分ごとに、全被験動物から採血した。全血を用いてグルコースを分析(Lifescan One Touch II analyzer)し、DPIV活性及びインスリン濃度は血漿を用いて分析した。インスリン標識免疫定量は、10〜160mU/mlの範囲で感度があった[REDERSON,R.A.,BUCHAN,A.M.J.,ZAHEDI-ASH,S,.CHEN,C.B.& BROWN,J.C.Reg.Peptides.3,53-63(1982) ]。DPIV活性を分光光度分析にて評価した[DEMUTH,H.-U.and HEINS,J.,On the catalytic Mechanism of Dipeptidyl Peptidase IV. in Dipeptidyl Peptidase IV (CD 26) in Metabolism and the Immune Response (B.Fleischer,Ed.)R.G.Landes,Biomedical Publishers.Georgetown.1-35(1995)]。全データを、平均±標準誤差で示した。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】GIP1−12(b)とGLP−17−36(C)のDPIVによる加水分解及びイソロイシルチアゾリジド(a)によるその阻害のMALDI−TOF分析
【図2】生体内におけるDPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジドの存在又は欠乏下でのGLP7−36代謝産物を含む血清のHPLC分析
【図3】DPIV阻害剤イソロイシルチアゾリジドの十二指腸をグルコースで刺激されたラットの種々の血液パラメーターに対する影響

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤を含む、高血糖により特徴付けられる疾病の治療において、GIP1−42及びGLP−17−36に対するジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を低下させることによって哺乳動物の血糖値を下げるための、経口投与用医薬組成物であって、前記阻害剤が、GIP1−42及びGLP−17−36に対するジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を低下させる、医薬組成物。
【請求項2】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性の阻害剤を含む、糖尿病の治療において、GIP1−42及びGLP−17−36に対するジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を低下させることによって哺乳動物の血糖値を下げるための、経口投与用医薬組成物であって、前記阻害剤が、GIP1−42及びGLP−17−36に対するジペプチジルペプチダーゼIV酵素活性を低下させる、医薬組成物。
【請求項3】
阻害剤がジペプチド誘導体又は模造ジペプチドである、請求項1−2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
阻害剤がアラニルピロリジド又はアミノアシルチアゾリジドである、請求項1−3のいずれか一項に記載の医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92136(P2012−92136A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284809(P2011−284809)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2008−320714(P2008−320714)の分割
【原出願日】平成9年4月24日(1997.4.24)
【出願人】(504326837)プロシディオン・リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Prosidion Limited
【Fターム(参考)】