説明

哺乳動物の身体における体温変化

本出願は、哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムおよび方法に関する。任意で、本システムおよび方法は哺乳動物対象の中核体温を低下または上昇させるために使用することができる。任意で、本システムおよび方法は、哺乳動物対象の無毛皮膚の温度を低下または上昇させるために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願関連の相互作用
本出願は、2009年9月16日に出願された米国特許仮出願第61/276,764号および2009年9月16日に出願された米国特許仮出願第61/276,787号の利益を主張するものであり、共に参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムおよび方法に関する。任意で、本システムおよび方法は哺乳動物対象の中核体温を低下または上昇させるために使用することができる。任意で、本システムおよび方法は、哺乳動物対象の無毛皮膚の温度を低下または上昇させるために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
恒温動物の温度調節系は、設定値のわずかな変動内に中核体温を維持する先天的な能力を有する。設定値から上下に逸脱が起きると身体機能障害、損傷を起こす可能性があり、死に至る場合もある。
【0004】
温度調節系の働きは、フィードバック制御信号の複雑な非線形回路網に基づき、身体中心部と環境間の熱抵抗の調節に対応し、体内のエネルギー発生の速度および分配を調節する。このシステムの働きは、生理学的状態および環境条件全体にわたって非常に効率的である。
【0005】
しかしながら、特定の状況では、温度調節系は中核体温を設定動作範囲内に維持することが不可能、あるいはそのシステムを変える治療的または予防的理由があり、正常な範囲を超える中核体温の変化を起こしていてもよい。身体中心部以外の身体部分の温度を変化させることが望ましい状況もある。例えば、対象の無毛皮膚の温度を変化させることが望ましくてもよい。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムおよび方法に関する。任意で、本システムおよび方法は哺乳動物対象の中核体温を低下または上昇させるために使用することができる。任意で、本システムおよび方法は、哺乳動物対象の無毛皮膚の温度を低下または上昇させるために使用することができる。
【0007】
例えば、対象の無毛組織の温度を上昇させるまたは維持する方法も提供される。また対象の中核体温を冷却する方法も提供される。さらに対象の中核体温を加温する方法も提供される。
【0008】
本方法は対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えることを含む。加えられた熱により無毛組織の血液潅流を増加または維持する。血液潅流を増加または維持することにより、無毛組織の温度を任意で上昇させられる。いくつかの態様において、血液潅流を増加または維持しながら冷却刺激を無毛組織に加えることができる。他の態様において、血液潅流を増加または維持しながら温刺激を無毛組織に加えることができる。冷却刺激が使用される場合、対象の中核体温を下げられる。温刺激が使用される場合、対象の中核体温を上昇させられる。
【0009】
任意で、末梢の温度調節制御組織が対象の頚椎領域または腰椎領域に位置する。無毛組織へ陰圧を加えることも可能である。陰圧は無毛組織の血液潅流を増加または維持するために使用することができる。
【0010】
身体中心部の冷却方法では、対象は心肺停止、虚血性発作、クモ膜下出血、肝性脳症、外傷、脳手術、周産期仮死、小児脳炎、体温上昇誘導事象、および急性脳損傷に罹患している場合がある。こうした症状がある場合、この方法により中核体温を下げ、対象の低体温を定着させることができる。加温方法では、対象は低体温症誘導事象に罹患している場合がある。
【0011】
対象の中核体温を下げるためのシステムもまた提供される。本システムは、対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えるように構成される加熱装置を備える。加えられた熱により無毛組織の血液潅流を増加または維持する。本システムは、無毛組織に冷却刺激を加えるように構成される冷却装置をさらに備え、任意で無毛組織に陰圧を加えるように適合される装置を備えてもよい。
【0012】
加熱装置は対象の頸椎領域および/また腰椎領域に熱を送達するように適合させることができる。任意で、加熱装置は対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚を加熱するように構成される。任意で、加熱装置は対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚の下にある組織を加熱するように構成される。加熱装置は、任意で抵抗加熱装置、電磁気による加熱装置、光による加熱装置、超音波による加熱装置、および発熱化学反応による加熱装置からなる群から選択できる。冷却装置は、対象の手掌および/または足底領域および/または顔面の無毛皮膚面に冷却刺激を供給するように適合させることができる。任意で、冷却装置は無毛組織よりも低い温度に冷却される液体を備える。
【0013】
対象の中核体温を加温するシステムもまた提供される。本システムは対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えるように構成される加熱装置を備える。加えられた熱により無毛組織の血液潅流を増加または維持する。本システムは、無毛組織に温刺激を加えるように構成される加温装置をさらに備え、任意で無毛組織に陰圧を加えるように構成される装置を備えていてもよい。
【0014】
加熱装置は、対象の頚椎および/または腰椎領域に熱を送達するように適合される。任意で、加熱装置は対象の末梢の温度調節制御組織を覆う皮膚を加熱するように構成される。任意で、加熱装置は対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚の下の組織を加熱するように構成される。加熱装置は、任意で抵抗加熱装置、電磁気による加熱装置、光による加熱装置、超音波による加熱装置、および発熱化学反応による加熱装置からなる群から選択できる。加温装置は対象の手掌および/または足底領域および/または顔面の無毛皮膚面に温刺激を提供するように適合され得る。任意で、加温装置は抵抗加熱装置、電磁気による加熱装置、光による加熱装置、超音波による加熱装置、および発熱化学反応による加熱装置からなる群から選択できる。
【0015】
これらおよびその他の本発明の利点と特徴は、本発明の好ましい実施形態および代替実施形態の双方を記載する、以下の詳細な説明および添付図から当業者にはより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】哺乳動物の身体における温度を変化させる例示的システムの略図である。
【図2A】哺乳動物の身体における温度を変化させる例示的システムの略図である。
【図2B】図2Aの冷却装置301の2B−2B断面図である。
【図3A】対象の頸椎にある温度調節組織に熱を加える略図である。
【図3B】対象の頸椎にある温度調節組織に熱を加える装置の略図である。
【図4】哺乳動物対象の中核温度を下げるまたは上昇させる例示的システムを示す略図である。
【図5】哺乳動物対象の温度を変化させる例示的方法を示すフローチャートである。
【図6A】図4の例示的システムの態様を示す略図である。
【図6B】図4の例示的システムの態様を示す略図である。
【図7】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図8】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図9】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図10】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図11】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図12】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図13】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図14】哺乳動物の身体における温度を変化させるシステムの態様の略図である。
【図15】手の血液潅流に加える陰圧の効果を表すグラフである。
【図16】時間に対する手の温度を表すグラフである
【図17】加えられた陰圧の関数として血液潅流の増加を表すグラフである。
【図18】時間に対する熱流束、圧力、および温度を表すグラフである。
【図19】頸部加熱による手掌の動静脈吻合(AVA)への血流の増加および対象の頸部の温度を表すグラフを示す。
【図20】頸部加熱による足底の動静脈吻合(AVA)への血流の増加および対象の頸部の温度を表すグラフを示す。
【図21】時間に対する脊椎皮膚の温度および手の温度を示すグラフである。
【図22】時間に対する脊椎皮膚の温度および足底の温度を示すグラフである。
【図23】時間に対する手の無毛組織を通る血流の増加による無毛皮膚の加温および無毛皮膚の血液潅流を表すグラフを示す。
【図24】手掌および足底の冷却と併せた頸部の加熱による身体中心部の冷却、時間に対する頸部の温度、ならびに時間に対する掌の温度を表すグラフを示す。
【0017】
各図面における同じ参照番号および名称は、同じ要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで本発明の特定の実施形態を参照して、本発明をより完全に説明する。実際、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここで述べる実施形態に制限されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示内容が適用される法的要求を満たすように提供されるものである。
【0019】
哺乳動物の身体温度は、中央制御装置と血液循環系に加えて、体内のエネルギー発生の速度および位置を調節する機序を含む、体内の自動調節システムによって厳密に調節されている。循環系は全身をカバーし、身体中心部からの熱を末梢に送達する、またはあまりない状況として、末梢から中核に熱を送達する。
【0020】
皮膚を通る血流の変化は、温度調節において重要な役割を果たす。例えば、非無毛皮膚において血管拡張(細動脈および小動脈の拡張)および血管収縮(細動脈および小動脈の収縮)は血流を増加または減少させ、温度調節の必要に合わせる。血管収縮および血管拡張の過程は双方共に局所、全身、および中央入力の組み合わせに応じた有効な手段によって調節されている。
【0021】
通常、身体および/または環境の温度が高い場合、血管拡張は熱交換に関わる表面への高血流に有利に働くので、環境へ熱損失が増加し、身体中心深部領域の温度が減少する。環境および/または身体の体温が下がるため、血管収縮によって皮膚表面への血流が減少し、環境への熱損失が最小限になる。
【0022】
温度調節系の重要な作動因子の1つは、両手の掌、足の足底の皮膚、ならびに耳、頬、額、ならびに鼻の領域または、循環血液と身体表面間での熱交換に影響をおよぼす効果のある特殊な血管構造をもついかなる皮膚面を含む、無毛皮膚とも呼ばれている無毛性皮膚表面での身体の特化した皮膚面への血流により制御されている。これらの部分の皮膚の基底は静脈叢と呼ばれる解剖学的に特殊な血管構造をしている。これらの構造は、血管拡張の条件下で皮膚表面に隣接した大量の血液を運搬するのに役立っている。この血液の送達により、機能的な温度範囲内に内臓器官を維持するために重要な伝熱が起こってもよい。
【0023】
血液は、毛細血管を通過することなく静脈へ動脈血を直接別の血管に流す血管である、動静脈吻合(AVA)を通って動脈叢構造を通過することができる。血管拡張の場合、AVAは10倍または毛細血管より大きい直径を有しており、そのため心臓から循環する血液に低い流動抵抗経路を提供する。最大の血管拡張では、AVAは全循環系中で最小の流動抵抗を示し、そこを通る総心拍出量の流れの大部分となる。皮膚のAVAの身体表面への相対近接、および大きな血流速度で運べる可能性は、AVAを温度調節装置における非常に効果的な熱交換手段とする。AVAは、身体の伝熱系の不可欠な部分であり、重要な温度調節の制御を提供している。AVAの流動直径の調整は、非無毛皮膚における皮膚微小循環と比較して独自なものである。AVAを通る流動抵抗の調節は、血管収縮の活性および緩和によって制御される。
【0024】
末梢の温度調節制御組織の熱刺激は、AVA流動の平均値の増加を起こすことができ、血管輸送性の変動はより高い平均流動で重ねられる。末梢の温度調節制御組織の熱刺激を取り除くと、AVA血管収縮活性への緩和入力が縮小するため平均AVA流動を低下させることができる。この末梢の温度調節制御組織の熱刺激とAVAの潅流速度間の直接結合は、視床下部の温度調節制御組織からの入力に関連することなく、AVAに出入りする血流を通る身体表面と中核間のエネルギーの対流移動を含む、無毛皮膚に関わる対流伝熱過程を操作する有力な機会を提供する。
【0025】
このシステムの操作は、生理学的状態および環境条件の広い範囲にわたって著しく効果的である。しかしながら、特定の状況において、温度調節系は、設定動作範囲内の中核温度を維持することが不可能である。あるいはそのシステムを変える治療的または予防的理由があり、正常な範囲を超える中核体温の変化を起こしていてもよい。こうした場合、装置および方法は温度調節系を助けるか変えるか介在的に適合される。
【0026】
身体中心部温度を調節する別の試みは、心停止、脳卒中または外傷性脳損傷といった医療事象のために脳が酸素不足に陥る条件下で起こる。検査および臨床データは、身体中心部、特に脳の温度を、誘発事象が起きた約90分以内にわずか2℃下げることができた場合、死亡率および罹患率を制限する著しい治療効果が実現されることを示している。残念ながら、温度調節系の機能は、皮膚と中核間の熱抵抗を増加させる皮膚の血管収縮を通って正常体温の状態から中核温度を下げること、および震えによって体内代謝熱生産の速度を増加することに抵抗する。
【0027】
一実施例は、脳卒中によって起こる可能性のある脳虚血の症状に罹患している対象を治療する治療的低体温症の利用である。こうした対象はAVA血管収縮の初期状態でもよい。この時点では、治療的低体温症が短期間の内に有効性が適用される場合、本開示の方法によれば、要求に応じてAVA血管拡張が誘導される。例えば、記載されている方法、システムおよび装置を使用すると、治療的低体温症の恩恵を受けられる対象の損傷後、約90分以下で対象に治療的低体温症を引き起こすことができる。例えば、脳、心臓、または他の組織への損傷後、損傷から約90分以下で治療的低体温症を引き起こすことができる。
【0028】
皮膚の広い部分にわたる表面冷却は、血管収縮を引き起こし、それによって身体構造を介した寄生的な伝導よりもはるかに効果的な伝熱構造である、皮膚と中核との間の血液の直接の循環を排除するため、効果的ではない。あるいは、循環系に冷蔵した大量の食塩水を注入することによって中核を直接冷却する方法が開発されている。この技術に関連した付帯的な欠点には、無菌状態下で循環系にカニューレを挿入する、および血圧上昇を引き起こす可能性のある血液中への追加液体量の導入の必要があることが挙げられる。この技術は主に医療施設で実施されるため、治療の機会(約90分間)の間、誘発事象を引起こした後の医療施設への搬送および治療開始の間に貴重な時間が失われる。本明細書に記載されたシステムおよび方法は、脳虚血後90分以内に事象を生じさせる必要に応じて、治療的低体温症の状態を生じさせるために使用できる。
【0029】
他の温度調節の試みは、ある人物が皮膚の血液循環において血管拡張状態を引き起こす麻酔といった状態を欠く正常体温に復温する必要性があり、体温が低下している場合に起きる。最も有効な身体中心部を温める熱輸送機構は、皮膚と中核間の血流によるものである。しかしながら、低体温症を誘導する皮膚の血管収縮はこの機構を遮断する。本明細書に記載されたシステムおよび方法は、加温のため身体温度中核に対流接近する、この状態を回避する。
【0030】
ある人物が、特に手と足をAVAの血管収縮が生じるのに十分な時間、寒い環境にさらされた場合、さらなる必要が起こる。この標準的な温度調節反応は身体の中核エネルギーの温存であり、長期生存に重要ではあるが、短期的には冷たい手と足の強い感覚で不快な状態を作り出す。典型的な反応には、手および足を温めようという行動を取る、手および足を囲む断熱を提供する、および/または手または足を能動的に温める様々な装置を適用する。しかしながら、これらの方法は、冷感の源であるAVAの血管収縮に対処していないため、通常短期的には有効的ではない。
【0031】
記載された方法および装置は、要求に応じて血管収縮したAVAの拡張をもたらすために使用することができ、他の全ての制御信号を変える可能性のある極度の局地的な状態が存在しない場合、無毛皮膚を通る高いレベルの血液潅流をつくる。血管収縮の血管拡張、またはより機構的にはAVAの血管収縮緩和は、前述の温度の生理学的課題を全て解決することができる。
【0032】
図1を参照して例示的システム200を示す。システム200は、哺乳動物の中核温度を上昇または低下させるために使用することができる。本システムは哺乳動物の無毛組織を加熱または冷却するために使用することもできる。
【0033】
システム200は、加熱装置とも呼ばれる加熱体202を備える。加熱体202は、哺乳動物身体の皮膚および/または下層組織を加熱するために使用することができるあらゆる装置を備えることができる。例えば、加熱体は抵抗加熱体を備えていてもよく、そのため電流が供給される場合、従来の加熱パッドの機能を果たす。その際、加熱体202は電源232から電流を受け取ることができる。しかしながら加熱体202は、加熱パッドのように抵抗加熱装置に制限されるものではない。
【0034】
加熱体202は哺乳動物の皮膚および/または哺乳動物の身体の皮膚の下層組織の温度を上昇させることができる、いかなる装置でもよい。当業者は、そのため多くの代替加熱体が使用できるということを理解するであろう。いくつかの他の非制限例には、発熱化学反応、電磁波の適用、光、超音波、または皮膚/下層組織への他のエネルギー、が挙げられる。こうして、多くの異なる装置および過程は、無毛皮膚のAVAに血管収縮効果の緩和を起こすのに必要な限界に達する刺激レベルの段階に温度を上昇させる末梢の温度調節制御組織を加熱するために適用されてもよい。例示的加熱装置は皮膚へ熱の表面送達を使用している。他の例示的加熱装置は熱の深部組織送達を使用している。
【0035】
加熱体によって起きた温度上昇は、温度感知装置216によって測定および/またはモニタすることができる。温度感知装置216は、加熱体202に近接して位置づけられることができ、例えば、皮膚または下層組織の温度が増加した場合、そうした増加の範囲、および加熱体の隣接した皮膚または組織における温度の一時的変動、を含む温度情報を任意で決定することができる。任意で、温度情報はコンピュータ224の温度感知モジュール244へ通信することができる。例えば、温度情報は、プロセッサ226を使用して処理され、そうして処理された情報が、加熱体によって作り出される熱の強さおよび熱の継続時間を調節するために使用することができる。例えば、モジュール232の電源は、プロセッサ226と動作可能に連通していてもよく、温度情報は加熱体202へ電力供給を増加または減少するために使用することができきる。
【0036】
加熱体202からの熱は、要求に応じて、無毛皮膚におけるAVAの血管収縮緩和をもたらすために使用することができる。AVA潅流増加には、皮膚表面に位置する加熱および冷却源を用いて血液の対流伝熱のために皮膚血流に接近し、身体中心部と血流を通る身体表面間に効果的なエネルギー輸送を提供するといった多くの効果がある。血管収縮の状態からAVA潅流増加の他の効果は、身体中心部からの温かい血液循環から皮膚へ加えられた伝熱であり、それによって手と足の血液収縮した無毛皮膚で経験した不快と感じられ得る冷感覚を減少または取り除く。
【0037】
AVAに血管拡張を起こさせる方法は、視索前視床下部の末梢である温度調節制御の部位にある組織への熱源を適用することである。そのため、複数の代替手段による加熱を通じた末梢の温度調節制御組織の熱刺激には、これらに限定されないが、(a)皮膚表面に加えられる熱源、(b)赤外線源を通じた深部加熱、(c)ジアテルミー療法のような電磁波源を通じた深部加熱、および(d)超音波源を通じた深部加熱、が挙げられる。末梢温度調節の組織には、加熱された場合、AVAに制御させる組織を含み、脳と視床下部は含まない。
【0038】
図3Aおよび3Bは、末梢部分の内、本目的のために加熱することができる、副交感神経の神経分布が多い頸部および腰部を含む脊髄に隣接した組織を表している。図3Aは、加熱源202が皮膚表面または、浸透機序により、皮膚を通る深部組織に達し、これらの組織に昇温を作り出すために脊椎に向け適用される、動静脈吻合を通る血流を刺激するために加熱する間の脊椎および下層組織の断面図を示す。熱浸透は、頚椎および関連する組織の断面図を通る加熱パッドのような熱源から発せられる波動によって示されている。
【0039】
加熱される末梢部分が頚椎部分である場合、頚椎部分に動作可能に熱を加えることができる加熱体または加熱源202を装着型の装置へ組み込むことができる。例えば、加熱源202は装着枕の中に組み込むことができる。任意で、加熱源、および枕の部分は、加熱源および対象の皮膚間に適した熱的接触を提供するために対象の頸部構造の輪郭をつけて作ることができる。枕も任意で、加熱部分で、覆っている断熱を提供する。
【0040】
そのため、AVAを制御するための有効な戦略は、脳およびAVA血管収縮を制御する副交感神経の温度神経分布を有するAVAを含む無毛皮膚双方の末梢部分の皮膚へ局所的な加熱を加えることである。加熱部分は、身体への総伝熱を制限し、身体の総エネルギーの重要な増加および付随して起こる中核温度の上昇を起こすことを避けるために小さくすることができる。頸部および脊椎以外の部分もAVAの血管拡張をもたらすように加熱することができる。AVAを通る血流の増加は、例えば、ドップラー超音波技術を使用して容易に測定することができる。そのため、加熱された時、視索前視床下部の末梢部分は、AVAを通る血流の増加を起こすことを容易に決定することができる。
【0041】
皮膚表面の熱刺激の時間は、熱が内部に拡散し、内部または脊椎に隣接して位置する温度受容体の深さに到達するのに十分な時間がかけられる。AVA血管拡張を起こす刺激信号も、皮膚の内側表面からの温度勾配および/または温度上昇を起こす時間勾配上の大きさによって決定してもよい。刺激信号は、刺激位置での温度および温度勾配の組み合わせでもよい。
【0042】
加熱過程は、標的組織の温度が十分に上昇し、血管収縮したAVAの緩和を起こす方法で実行される。加熱の量および方法は、標的組織が少なくとも39℃への上昇を起こすのに十分である。他の実施形態において、少なくとも40℃である。他の実施形態において、少なくとも41℃である。他の実施形態において、少なくとも42℃である。他の実施形態において、少なくとも43℃である。全ての実施形態において、標的組織の温度は熱的に誘導される傷害が起きる安全の限界を超えない。ほとんどの組織において、この限界温度は43℃である。
【0043】
そのため、熱刺激のレベルはAVAの血管拡張を起こす限界を超え、熱傷を起こす限界を下回ることができる。刺激レベルは血管拡張を起こすために、身体の初期の熱状態によって、1分間以上で39℃〜43℃の温度範囲内でもよい。例えば、刺激レベルは血管拡張を起こすために、身体の初期の熱状態ならびに加熱の方法および強さによって、5分間以上で39℃〜43℃の温度範囲内でもよい。
【0044】
皮膚表面の加熱に関わる方法では、熱刺激の最小期間は、熱が内部に拡散し、AVAへの血流を制御する入力を提供する位置にある温度受容体の深さに到達するのに十分な時間がかけられることを必要とされてもよい。AVA血管拡張を起こす刺激信号も、皮膚内側の表面からの温度勾配および温度変化の時間速度の大きさによって決定されてもよい。
【0045】
加熱過程は、AVAの血管拡張の初期増加を起こすのに十分な継続時間を有し、より多くの血液が流れるようになる。任意で、加熱過程は、AVAの血管拡張が最大値に達するまで維持される。最大値は、例えばドップラー速度計測によって測定されることができる。
【0046】
任意で、加熱過程は、AVAを通る血流の増加が全期間維持されることが望ましい。加熱過程は、加熱の大きさは、増加と減少が交互に起こる時間的に振動的な方法で活性化することができる。加熱が増加および減少する周期性は、1秒未満〜10分超まで様々な周期を有する。任意で、加熱の周期性が適用される場合、1周期を1秒超〜10分未満にすることができる。
【0047】
加熱の増加と減少が交互に起こる状態が適用される実施形態には、より大きくそしてより小さい、または加熱のない相対的な期間は、同等または不等でもよい。より大きい加熱の期間かより小さい加熱の期間のどちらか、あるいはその時間が不等である場合加熱のない期間はより多くてもよい。全ての実施形態には、加熱の大きさは少なくとも1回は増加、減少し、いくつかの実施形態では1回超である。全ての実施形態には、加熱の増加速度および加熱の減少速度は、同等またはそうでなくてもよく、双方とも線形でもよくまたはそうでなくてもよい。加熱の継続時間が一定ではない実施形態には、減少、増加する加熱の大きさの速度および時間的なパターンは、血管収縮したAVAの緩和を調節する中心組織を制御する温度調節の末端における標的組織のシミュレーションを最大にするように計画、調整されてもよい。あらゆる所望の加熱手順を、コンピュータ224を使用して実装することができる。加熱手順は、利用者からの入力234によりプログラムを計画および/または変更することができる。
【0048】
記載されたシステムおよび方法は、AVAに、無毛皮膚を通る血液流動が対流伝熱体として働くことができるように基礎状態において血管拡張を起こすことができる。AVAが、身体中心部のエネルギーを保存する目的を有する状態で血管収縮した場合、中核からのエネルギーを受け付けない身体と一致する信号は、AVAが血管拡張を起こすために使用されてもよい。AVAへの初期の血管制御信号は視床下部に由来し、組織の温度に基づいている。治療的低体温、AVA血管拡張を起こす視床下部の加温といった医療目的のために脳を冷却する目的での適用は、逆効果である。
【0049】
ここで図5を参照して、生理学および熱力学を併せた作用機序を示す。例えば、602に表したように、血管拡張は温度調節制御604の加熱末梢入力位置によってもたらすことができる。加熱は無毛AVA606の活性血管収縮を緩和することができる。血管収縮606の緩和は無毛皮膚608における血液潅流の増加をもたらす。増加した血液潅流は、表面冷却610が存在しない場合、皮膚温度の上昇をもたらす。そのため、図1に表されたシステム200は、任意で無毛皮膚温度を上昇させるために使用することができる。この実施例では、無毛皮膚の追加加熱または冷却は任意である。
【0050】
そのため、無毛組織に位置するAVAの血管拡張を起こす対象の部分に熱を加えることを含む、哺乳動物対象の無毛皮膚を加熱する方法が提供される。この方法は、例えば、対象の手、足、または顔が冷たい場合といった、無毛皮膚の温度を上昇させることが望ましい場合、望ましくてもよい。この方法を実装するために、無毛組織に位置するAVAの血管拡張を起こす対象の部分に適用される加熱体を備えるシステムを使用することができる。例えば、こうしたシステムは、頚椎または腰椎領域の皮膚または組織を加熱するように構成される加熱体を備えることができる。
【0051】
他の実施形態において、記載されたシステムは対象の中核温度を上昇または下げるために使用することができる。再度図1を参照して、システム200は無毛皮膚を冷却または加熱する装置204を備えることができる。冷却操作には、装置204は冷蔵または冷却した流体あるいは導管208のガス槽を受け取ることができる。ポンプ210は、冷却した流体またはガスを、装置204を通して能動的に流入させることができる。装置を通る冷却した流体またはガスの移動は装置を冷却する。熱電冷却装置といった冷却装置206は、装置204および導管208を通して循環する流体またはガスを冷却するために使用することができる。ポンプ210および冷却装置は、双方とも装置の温度および装置の冷却手順がコンピュータおよび利用者入力234を通じて制御することができるコンピュータ224に動作可能に連通することができる。無毛皮膚の加熱が望ましい場合、装置204は冷却の代替えとして加熱を提供することができる。装置は、加熱体202に関連する上記に記載された機序のいずれかを使用して無毛皮膚および下層組織に熱を加えることができる。
【0052】
加えて、システムは、装置204の温度を検出する、または装置204に近接する無毛皮膚の温度を検出するように位置付けられた温度センサ220を備えることができる。この温度情報は、コンピュータ224に通信され、そこで無毛皮膚上の装置204の所望の冷却または加熱特徴を決定するために処理することができる。
【0053】
任意で、システム200は真空214をさらに備える。真空214は、真空ライン212を通って装置204に動作可能に連結している。真空は、装置204が冷却または加熱する無毛皮膚に陰圧をかけるために使用することができる。陰圧は、対象の無毛皮膚におけるAVAの拡張を促進するために使用することができる。システム200に表したように、真空およびそのために無毛皮膚に与える陰圧はコンピュータ224によって制御することができる。特に、真空は真空モジュール242を通ってコンピュータ224に動作可能に連通している。加えて、装置204は、圧力感知モジュール240を通ってコンピュータ224に連通している圧力センサ222を備えることができる。この方法では、コンピュータ224は圧力情報および温度情報を処理してもよく、この情報は、温度あるいは装置204を循環する冷却流体またはガスの一時的な特徴、あるいは陰圧またはその一時的な特徴、といった装置204の操作に作用する要素を調節するために使用されてもよい。
【0054】
システム200は、冷却または加熱装置204を用いて使用された場合、対象の身体の中核温度を変えるのに使用することができる。その際、温度センサ218は、任意で対象の中心温度を測るまたはモニタするために位置づけられることができる。温度センサ218は、対象からの1つまたは複数の中心温度測定値を得るのに適した方法で位置づけられることができる。例えば、温度センサは任意で対象の外耳道、口腔、または直腸に配置することができる。温度センサも、任意で対象の額または腋窩領域に配置することができる。
【0055】
いかなる特定の作用機序へのいかなる実施形態を制限することなく、皮膚への心拍出量の大部分の分流を起こす加熱体202を使用した加熱により血管拡張および/またはAVAを拡大する。皮膚は、AVAを通る血流と環境間の熱交換を調節し、次いで熱は身体温度の中核へ(加熱のため)または中核から(冷却のために)血流を通じて対流してもよい。
【0056】
そのため血管拡張AVAを通る促進された血流は、無毛皮膚表面も加熱または冷却を加えることにより身体表面および身体中心部間のエネルギー流動の増加を起こす機会を提供し、それによってAVAを通る加熱または冷却血液潅流は中核組織の加熱または冷却を誘導する温度で、中核に循環して戻る。
【0057】
図5を参照して、対象の中核温度は任意で冷却612になることができる。対象の中核温度を冷却する段階は、無毛皮膚614の冷却を含む。こうした冷却は、前述のように装置204を使用して達成することができる。無毛皮膚614の冷却は、皮膚構造深部から表面616への熱拡散を起こす。加えて、本方法は、段階602〜608に表されたように、無毛皮膚の血液潅流を増加することを含むことができる。
【0058】
無毛皮膚608の血液潅流増加と深部皮膚構造から表面616への熱の拡散の組み合わせは、無毛皮膚618のAVAを通る血流の対流冷却を引き起こす。冷却血液は、末梢AVAから身体中心部に最小限の熱交換620で循環される。このことは、中核温度622を低下させるために身体中心部の血液の対流加温を引き起こす。末梢熱刺激は、徐々に増加する治療的低体温症の状態を作り出す血管拡張AVAで無毛皮膚に冷却が加えられてもよい間の全期間まで、血管拡張が始まった初期時間を超えて維持されるために必要でもよい。任意で、無毛皮膚の一面に表面冷却と同時に、AVA血流を制御する温度の副交感神経分布が多い皮膚の小さい面へ加温が提供される。
【0059】
記載されたシステムおよび方法において、冷却は塊、および身体温度の中核温度において所望の低下を作り出すために初期温度のサイズを有する予め冷蔵した1つまたは複数のゲルパックの適用によって作り出されてもよく、あるいは加温は、身体温度の中核温度において必要な増加を作り出すために予め加温した1つあるいは複数のゲルパックの適用によって作り出されてもよい。予め冷蔵したゲルパックと予め加温したゲルパックは使用後、再利用しても使い捨ててもよい。
【0060】
冷却は、混合した場合それによって混合物の温度が下がる吸熱過程を経る弾力性のある容器内に含まれた化学成分の混合物により作り出されてもよい。混合物の成分は、冷却が作り出される時まで化学成分を分ける内部障壁のある1つのパックに予めパックされてもよい。冷却が作り出されるとすぐに障壁は、吸熱効果のある成分の混合ができるように裂けてもよい。
【0061】
図5も参照して、対象の中核温度は任意で加熱624となることができる。対象の中核温度の加熱段階は無毛皮膚626の加熱を含む。こうした加熱は、前述のように装置204を使用して行うことができる。無毛皮膚626の加熱は、皮膚表面から離れ、皮膚構造深部628へ向かい熱拡散を起こす。加えて、本方法は、段階602〜608で表わしたように、無毛皮膚の血液潅流を増加させることを含むことができる。無毛皮膚608の血液潅流増加と深部皮膚構造へ向かう熱の拡散の組み合わせは、無毛皮膚630のAVAを通る血流の対流加温を引き起こす。加温血液は末梢AVAから身体中心部へ最低限の熱交換632で循環する。このことは、中核温度634を上昇させるために身体中心部の血液の対流冷却を引き起こす。任意で、無毛皮膚の一面に表面加温と同時に、AVA血流を制御する温度の副交感神経分布が多い皮膚の小さい面へ加温が提供される。
【0062】
加温は、混合物の温度の上昇を起こす発熱過程を経る化学成分を混合することにより作り出されてもよい。いくつかの実施形態において、加温は、化学物質の封をされた容器を酸素または空気に曝露することによって作り出されてもよく、不浸透性の密封カバーを破ることで、パックの温度の持続上昇を引き起こす。膜または障壁またはカバーを破ることにより操作する化学物質混合パックは、一度使用した後に使い捨てる。
【0063】
予め冷蔵したゲルパックおよび予め加温したゲルパックと吸熱および発熱化学反応混合パックは、全て弾力性があり、無毛皮膚表面の形にパックを一致させることができ、それによって冷却または加温基盤が硬くてもより良い熱的接触を確保する。
【0064】
いくつかの実施形態において、冷蔵または加温パックは、無毛皮膚に接触して位置付けられる弾力性のある袋へのポンプの作用下で循環される液体を冷却または加温する無毛皮膚への末梢に配置してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、無毛皮膚に適用される加温または冷却パックは、パックと無毛皮膚間の効果的な熱的接触を維持するのに役立つ1つまたは複数の接続ストラップを備えていてもよい。これらの実施形態は、対象が治療プロセッサを意識せずに気付かない場合といったように、対象がパックと皮膚間で最適なレベルの伝熱が起こるように能動的にかかわることができない条件下で、特に有効になってもよい。
【0066】
ここで図2Aおよび2Bを参照して、中核体温を冷却するための例示的システム300が表される。図1に関して記載したように、例示的システムはコンピュータ224および加熱体202を備えている。加熱体は、対象組織を加熱し、対象の無毛皮膚におけるAVAの拡張に導くように使用することができる。温度センサ216も前述したように、加熱体202に隣接する皮膚および/または組織の温度を検出することができる。温度センサ216がコンピュータ224に動作可能に連通しているので、温度センサからの温度測定値を、加熱体202から所望の加熱レベルを提供するために使用することができる。
【0067】
システム300は、冷却流体またはガスを含む導管208と連通している熱交換器をさらに備えている。熱交換器はコンプレッサ306およびR12といった冷却剤の源302を備えている。熱交換器は、導管208の前に冷却剤の温度を感知する温度センサ308、および導管に続く第2温度センサ310、をさらに備えている。冷却剤は導管208の流体を冷却する管304を通り循環することができる。
【0068】
導管208は、冷却スリーブ301を通して流入させることができる冷却流体またはガスを留めておくことができる。冷却スリーブ301は任意で手、足、または顔の無毛皮膚の表面上に設置することができる。図2Bは、スリーブの2B−2B断面図である。2つの追加温度センサは、導管中の流体またはガスの温度をモニタするために位置付けられることができる。第1温度センサ314はスリーブに入る流体またはガスの温度を検出/モニタすることができる。第2温度センサ312はスリーブから出る流体またはガスの温度を検出/モニタすることができる。
【0069】
温度センサ308、310、312および314は各自、温度センサモジュール244を通るコンピュータ224に動作可能に連通していてもよい。加えて、コンプレッサ306およびポンプ308も各自、コンプレッサ316を通るコンピュータ224およびポンプ240モジュールに動作可能に連通している。温度センサおよび熱交換器を通る流束から集められた情報は、導管208中の流体またはガスを冷却するために使用することができ、そのためスリーブ301は所望の温度になる。
【0070】
システム200および300に表されるように、本明細書に記載の方法は、コンピュータ224の形で多目的計算装置を通じて実装することができる。コンピュータ224の構成要素には、1つまたは複数のプロセッサまたはプロセシングユニット226、システム記憶装置228、およびプロセッサ226を備える様々なシステム構成要素とシステム記憶装置228を連結するシステムバスを備えるがこれに限定されない。
【0071】
システムバスは、記憶バスまたは記憶制御装置、末梢バス、加速グラフィックスポート、およびプロセッサまたは様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用しているローカルバスを含むいくつかの可能なバス構造タイプの1つまたは複数を表してもよい。例として、そうしたアーキテクチャには業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、拡張ISA(EISA)バス、ビデオエレクトロニクススタンダードアソシエーション(VESA)ローカルバス、およびメザニンバスという別名のあるペリフェラルコンポーネントインターコネクト(PCI)バス、が挙げられる。このバス、および本記述で特定される全てのバスは、プロセッサ226、大容量記憶装置230、基本ソフト、アプリケーションソフト、データ、ネットワークアダプタ、システムメモリ、I/Oインターフェース、ディスプレーアダプタ、ディスプレー装置、およびヒューマンマシンインターフェースを備える有線または無線ネットワーク接続およびそれぞれのサブシステムを通じて実装することができ、完全に分散されたシステムを事実上実装し、この形態のバスを通じて接続された物理的に離れた場所にある1つまたは複数の遠隔計算装置内に備えることができる。
【0072】
コンピュータ224は通常、様々なコンピュータ可読媒体を備える。こうした媒体は、コンピュータ224によってアクセス可能ないずれかの媒体であり、揮発性物質および非揮発性物質媒体ならびに可撤性および非可撤性媒体を備えることができる。システムメモリ228は、ランダムアクセスメモリ(RAM)といった揮発性物質メモリ、および/またはリードオンリーメモリ(ROM)といった非揮発性物質メモリの形態でコンピュータ可読媒体を備える。システムメモリ228は、通常、データおよび、および/または基本ソフトといったプログラムモジュール、即座にアクセス可能なアプリケーションソフト、および/またはプロセシングユニット226により現在操作されるといったデータを含んでいる。コンピュータ226は、他の可撤性/非可撤性、揮発性物質/非揮発性物質コンピュータ記憶媒体も備えていてもよい。大容量記憶装置230は、ハードディスク、可撤性磁気ディスク、可撤性光学ディスク、磁気カセットまたは他の磁気記憶装置、フラッシュメモリーカード、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または他の光学式記憶、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、電気的消去可能ROM(EEPROM)、等であり得る。
【0073】
様々なプログラムモジュールは、例として、基本ソフトおよびアプリケーションソフトを備える、大容量記憶装置230に格納することができる。基本ソフトおよびアプリケーションソフト(またはその組み合わせのいくつか)の各自はプログラミングおよびアプリケーションソフトの要素を備えていてもよい。データは大容量記憶装置に格納することもできる。データは、当業者に既知の1つまたは複数のデータベースのいずれかに格納できる。そうしたデータベースの例には、DB2(登録商標)、Microsoft(登録商標)Access、Microsoft(登録商標)SQL Server、Oracle(登録商標)、mySQL、Postgre SQL、等が挙げられる。データベースは、複数のシステムを通じて集中または分配することができる。
【0074】
利用者は、コマンドおよび情報を、入力装置を通してコンピュータ224に入力することができる。そうした入力装置の例には、キーボード、指示装置(「マウス」など)、マイクロホン、ジョイスティック、シリアルポート、スキャナ、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらと他の入力装置は、システムバスと連結しているヒューマンマシンインターフェースを通してプロセシングユニット226に接続することができるが、パラレルポート、ゲームポート、またはユニバーサルシリアルバス(USB)といった他のインターフェースおよびバス構造によって接続されてもよい。
【0075】
コンピュータ224は、ネットワーク化された環境で、1つまたは複数の遠隔計算装置に論理結合を使用して操作することができる。例として、遠隔計算装置は、パーソナルコンピュータ、携帯用コンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークコンピュータ、ピア装置、または他の共通ネットワークノード、などがあり得る。コンピュータ223および遠隔計算装置間の論理結合は、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびジェネラルワイドエリアネットワーク(WAN)を通じて行うことができる。こうしたネットワーク接続は、ネットワークアダプタを通すことができる。ネットワークアダプタは、有線および無線環境の双方で実装することができる。こうしたネットワーク環境は、オフィスの共有スペース、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットである。
【0076】
アプリケーションソフトの実装は、格納またはコンピュータ可読媒体のいくつかの形態にわたって送信されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセスできるあらゆる利用可能な媒体であり得る。例として、限定ではなく、コンピュータ可読媒体は「コンピュータ記憶媒体」および「通信媒体」を備えていてもよい。「コンピュータ記憶媒体」には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータといった情報を格納するための任意の方法または技術で実装された、揮発性および非揮発性の取り外し可能および取り外し不可能な媒体が含まれる。
【0077】
コンピュータ記憶媒体は、望ましい情報を格納するために使用され、コンピュータでアクセス可能な、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または他の光学式記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶、または他の磁気記憶装置、あるいは所望の情報を格納するために使用され、コンピュータによってアクセスできる他のあらゆる媒体、を備えるがこれらに限定されるものではない。開示された方法の実装は、格納またはコンピュータ可読媒体のいくつかの形態にわたって送信されてもよい。
【0078】
開示された方法の処理は、ソフトウェアコンポーネントによって実行することができる。開示された方法は、1つまたは複数のコンピュータまたは他の装置により実行される、プログラムモジュールといった、コンピュータ実行命令の一般状況に記載されてもよい。通常、プログラムモジュールには、計算機コード、ルーティン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、などが含まれ、特定のタスクを実行または特定の抽象データ型を実装する。開示された方法は、グリッドベースで実施され、通信ネットワークを通じてリンクされている遠隔処理装置によりタスクが実行されるコンピュータ環境に分散されてもよい。分散したコンピュータ環境において、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を備える局所および遠隔コンピュータ記憶媒体の双方に位置していてもよい。
【0079】
システム200および300に関して前述の実施形態は、本発明の態様に従って中核温度を冷却または加熱するために使用できるが、コンピュータ224を含めてこれらのシステムの特徴は任意であると注目すべきである。例えば、中核体温を冷却するシステムは、無毛皮膚におけるAVAの拡張を引き起こす対象の皮膚または組織を加熱するための加熱体を備えることができる。本システムは、対象の無毛皮膚に冷却刺激を提供する冷却装置をさらに備えることができる。こうした冷却装置は、任意で流体の冷却容器、冷却ゲルパック、角氷、またはガスの冷却源である。同様に、中核温度を上昇させるのに使用される装置は、無毛皮膚におけるAVAの拡張を引き起こし、対象の皮膚または組織を加熱するための加熱体を備えることができる。加熱のシステムは、対象の無毛皮膚に加熱刺激を提供する加熱装置をさらに備えることができる。
【0080】
ここで図4を参照して、制御装置が、中核(Tc)、脊椎(Ts)、手掌(Th)、足底(Tf)皮膚表面の温度入力の関数として、脊椎加熱(Ts)、および手掌(Th)加熱または冷却、および足底(Tf)加熱または冷却の大きさを調整するために適用される、例示的システムが示されている。制御装置のアルゴリズムは、利用者に安全と、利用者の中核温度が操作される適用に最適な伝熱能力を提供する。
【0081】
図6AおよびBは、手掌または足底の無毛皮膚をそれぞれ冷却または加熱するための例示的装置404および406を表す。こうした例示的装置は、任意でシステム体204としてシステム200および300において使用することができる。任意で、404および406は冷却に使用され、導管208は、手掌または足底の無毛皮膚に冷却刺激を提供するための装置を通る冷却流体またはガスの流動を導く。
【0082】
図6Aは、無毛の手掌の皮膚表面を加熱または冷却する方法および装置、ならびに動静脈吻合血管構造を含む手の指の腹側面を示し、本開示の特定の実施形態によれば、入口および出口部を通る制御された温度の流体の循環を通して特定の温度で、弾力性のある温または冷源袋に接触する面を定め、それにより無毛皮膚へまたは無毛皮膚からエネルギーを加えるまたは除去する温度機序を提供することを含むことができる。
【0083】
図6Bは、無毛の手掌の皮膚表面を加熱または冷却する方法および装置、ならびに動静脈吻合血管構造を含む足の指の腹側面を示し、本開示の特定の実施形態によれば、入口および出口部を通る制御された温度の流体の循環を通して特定の温度で、弾力性のある温または冷源袋に接触する面を定め、それにより無毛皮膚へまたは無毛皮膚からエネルギーを加えるまたは除去する温度機序を提供することを含むことができる。
【0084】
システム200および300に関して記載されたように、いくつかの実施形態によれば、開示されたシステムおよび方法は、少なくとも対象の皮膚の一部に陰圧を加えることを含んでもよい。例えば、陰圧は手、足、および/または顔の無毛皮膚に加えられてもよい。いくつかの実施形態において、表面の真空システムは、加温または冷却が達成されるまで、つまり対象の身体中心部が所望の温度に達するまで、予め定められた陰圧で維持されてもよい。
【0085】
任意で、冷蔵または加温パックは、真空チャンバへの末梢およびに無毛皮膚に位置してもよく、無毛皮膚と接触する真空チャンバの内部に位置付けられた弾力性のある袋へのポンプの作用下で循環されている液体を冷却または加温する。
【0086】
陰圧は、任意で最高約25mmHg、最高約50mmHg、最高約75mmHg、および/または最高約100mmHgでもよい。いくつかの実施形態において、本開示の装置は、例えば、手動バルブポンプ装置、または手動線形ポンプ装置、または手動回転式ポンプ装置、または手動ヒンジポンプ装置、またはベローズポンプ装置、または内蔵型電池式真空ポンプによる手動の排出手段を備える可搬式表面真空システムにより陰圧を作り出してもよい。
【0087】
手動の真空発生システムは、片手、両手、片足、両足、両手両足の組み合わせの動きの適用、または他の身体部分の相対的な動きの適用によって操作されてもよい。手動の真空発生システムは、1人または複数の人の協力によって操作されてもよい。
【0088】
可搬式表面真空システムは、冷却または加熱される無毛皮膚表面のみを覆うように作られている不浸透性のカバーに操作可能に取り付けられていてもよい、真空ポンプを備えている。不浸透性のカバーは、真空ポンプに取り付けられている吸入口、および哺乳動物の無毛皮膚表面への真空ポンプによって作り出される真空内で密封するために操作可能な末梢密封を備えていてもよい。表面真空システムは、無毛表面に熱または冷気を送達するための加熱または冷却手段も備えてもよい。
【0089】
任意で、可搬式表面真空システムは、身体の肢を非可搬式および/または固定した真空チャンバ内に挿入することなく陰圧を加えるために使用される。これらの実施形態において、容積を制限する真空(真空チャンバまたは陰圧チャンバなど)の外表面は、不浸透性の弾力性のある材料で作られてもよい。冷却または加温パックは、そうした不浸透性の弾力性のある材料で覆われる前に無毛皮膚の治療部分に対して設置されてもよい。不浸透性の弾力性のある材料は、末梢周辺の無毛皮膚に対して密封されてもよい。不浸透性の弾力性のある材料に設置された部分は、密封された周囲への容量内部が所望のレベルの陰圧に排出されるように真空発生装置への接続を提供する。真空がその時に作り出された場合、不浸透性の弾力性のある材料の外表面に与える気圧の作用が、機械力を内側の無毛皮膚に対して設置された加熱パックまたは冷却パック上に変換し、皮膚へのパックの圧力を増加することによって、パックと皮膚間の熱抵抗を減少させ、パックと皮膚間に、より効果的な伝熱を作り出す。
【0090】
他の実施形態において、本開示の可搬式表面真空システムは、体肢を可搬式の固定した真空チャンバ内に挿入することによって陰圧の適用を可能にする。固定したチャンバは、真空が内側に作り出された場合、実際にその形状は変わらない。固定したチャンバは、密封が肢の末梢の周辺に作り出され、チャンバ内部の陰圧を支え維持するために体肢がチャンバ内に挿入された場所で密封体を組み込む。
【0091】
いくつかの実施形態において、本開示の可搬式表面真空装置の固定したチャンバは、冷却または加温パックの挿入を可能にする十分な大きさを有する密封カバーのある第2開口部を有していてもよく、操作者のために治療対象の体肢に接触する前記のパックを位置付ける。
【0092】
密封カバーは、容易に迅速に開閉することができ、閉鎖位置では固定したチャンバの内部の陰圧の発生を支える。密封カバーは、ヒンジを回転、またはねじを回すことによって、または留め金を緩め、留めることによって開閉してもよい。密封媒体は、陰圧が固定したチャンバへの内部に作り出された場合、カバーのあわせ面と空気流動を妨げる固定したチャンバ間に設置されている。固定したチャンバは、操作者が真空状態をモニタできるように設置した機械真空計を有してもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、表面真空システムは無毛皮膚の約50mm以下におよんでもよい。他の実施形態は、無毛皮膚の約500mmまでおよんでもよい。いくつかの実施形態において、総治療部分が個々の部分の追加となるように、無毛皮膚の複数部分は同時に治療されてもよい。実際の治療部分は、過程、場所の数、および対象の全体の大きさのため選択される無毛皮膚を有する身体部分によって大きく異なってもよい。
【0094】
ここで図7〜14を参照し、記載されたシステムおよび方法とともに使用するために例示的装置が提供される。図7は、無毛皮膚4の表面に接する加温または冷却パック5を備える可搬式陰圧装置の断面図を示す。弾力性のある不浸透性のカバー1は、末梢周辺の密封2のある適用部分を覆って位置付けられる。カバーへ陰圧3内部が形成され、無毛皮膚に適用される。計測器7は、陰圧のレベルをモニタするために使用することができ、不浸透性カバーの内部への接続6のあるポンプ8(真空)の源は、そこに陰圧を作り出すために使用される。例えば、図7に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用することができる。
【0095】
図8は、挿入に際して皮膚の周囲に圧力密封24と共に挿入されてもよい身体の肢23を挿入する固定した管20を有する可搬式表面真空装置を備える陰圧装置を示す。加温または冷却パック21は、管内部への陰圧の条件下で無毛皮膚の表面に接触して位置付けられる。管20の内部に陰圧27を作り出し、26が管内部へ連結するようにソースが提供され、計測器25は陰圧度をモニタするために使用される。例えば、図8に表される装置は、システム200および300の無毛皮膚の冷却装置204として使用することができる。
【0096】
図9は、挿入に際して皮膚の周囲に圧力密封と共に挿入されてもよい身体の肢を挿入する固定した管/チャンバ31を備える可搬式陰圧装置を示す。挿入されてもよい加温または冷却パックが通る第2開口部33は、管内部への陰圧条件下で無毛皮膚の表面に接触することができる。第2開口部は、固定した管の開口部の雌ねじ35と一致する雄ねじ34を有する可撤性体32を回転させることによって開閉することができる。テフロンテープ36のような密封用物質は、任意で、硬い管の内部に陰圧を収めるように第2体が取り付けられる場合、第2可撤性体と固定した容器間に封を提供するねじに適用される。可撤性体は、可搬式表面真空チャンバの硬い管から素子を設置または除去する素子を回転させるために握ることができる付属物37を有する。例えば、図9に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用される。
【0097】
図10は、挿入に際して皮膚の周囲に圧力密封と共に挿入されてもよい身体の肢を挿入する、硬い管41を有する可搬式表面真空チャンバを備える陰圧装置を示す。本装置は、管内部への陰圧条件下で、無毛皮膚の表面に接触するために加温または冷却パックを挿入し得る第2開口部44をさらに備えている。第2開口部は、固定した管の開口部の周辺部分にヒンジ43の1つによって取り付けられている第2体42を回転させることにより開閉することができる。ピボット49に取り付けられる1個以上のラッチ46および一致するピン47、または他の鍵締め装置は、固定した管の第2開口部に対して密封された位置で第2体の安全のために使用される。テフロンテープのような密封用物質は、第2体が固定した管の内部に陰圧を収められるように固定した管に対して閉鎖位置に回される場合、任意で、固定した管のあわせ面45および/または第2体に適用され、第2ヒンジ体と固定した容器間に封を提供する。ハンドル48は、第2体を開閉するために提供される。例えば、図10に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用することができる。
【0098】
図11は、挿入に際して皮膚の周囲に圧力密封と共に挿入されてもよい身体の肢を挿入する、固定した管61を有する可搬式真空チャンバを備える陰圧装置を示す。本装置は、管内部への陰圧条件下で、無毛皮膚の表面に接触するために加温または冷却パックを通す第2開口部63を備えている。第2開口部は、固定した管の開口部に一致するように形成される第2体62を除去することによって開閉することができる。ピボット66に取り付けられる1個以上のラッチ65および一致するピン67、または他の鍵締め装置は、固定した管の第2開口部に対して密封された位置で第2体の安全のために使用される。テフロンテープのような密封用物質は、第2体が固定した管の内部に陰圧を収めるように固定した管に対して閉鎖位置に位置付けられる場合、任意で、固定した管のあわせ面64および/または第2体に適用され、第2ヒンジ体と固定した容器間に封を提供する。例えば、図11に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用することができる。
【0099】
図12は、陰圧装置の真空発生装置を示している。本装置は、不浸透性のカバーの内部88に陰圧を作り出すための真空発生装置87に操作可能に取り付けられる86不浸透性のカバー91を備える。不浸透性のカバーは操作可能であり、無毛皮膚表面81を覆う。不浸透性のカバーは、無毛皮膚の周辺部分を密封する密封手段83を有する。不浸透性のカバーは、弾力性のある冷却または加温パック84を内部に含み、皮膚と熱交換ができるように無毛皮膚に対して位置付けられる。不浸透性のカバーは、任意で弾力性があり、不浸透性のカバーの表面部分82にかけて適用される場合、高い外部圧力89および低い内部圧力85の複合作用は、弾力性のある冷却または加熱パック上に適用される機械力90となり、その力を無毛皮膚に対して押し付け、接触面での温度の接触抵抗の低下およびパックと無毛皮膚間の改善された伝熱を提供する。例えば、図12に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用することができる。
【0100】
図13は、無毛皮膚の特定部分を密封するために適用されてもよく、皮膚からまたは皮膚へ熱を送達する冷却または加温パック103に設置されてもよい、陰圧容積抑制装置100を示す。末梢密封102は、無毛皮膚を含む身体肢101の周囲に形成される。圧力モニタ装置104は、陰圧装置内の圧力を継続的に測定するために使用される。本装置は、外部電源が存在しない場合、操作可能な真空発生源106への連結105も備える。操作は、限定された容積の手動圧縮(送風機またはバルブ、あるいは他の弾力性のある圧縮装置110)、線形ポンプ運動108、回転ポンプ運動109といった手動手段、あるいは電動真空ポンプといった可搬式の内蔵型エネルギー源107の動力手段によってもよい。例えば、図13に表された装置は、システム200および300の無毛皮膚冷却装置204として使用することができる。
【0101】
図14は、皮膚へまたは皮膚から伝熱する間、哺乳動物の無毛皮膚のトポロジーへ接触し、一致させる、先の図に表されたように陰圧容積の内部に挿入されてもよい弾力性のある冷却または加温パック120を示している。本開示の特定の実施例によれば、本パックは、予め冷却または予め加熱することによって、吸熱または発熱混合過程ができる治療時間で裂かれてもよい障壁により予め分けられた含有化学成分を混合することによって、当初密封した容器からパックが除去された後、含有化学成分を空気に曝露し発熱反応を起こすることによって、所望の治療温度にすることができる。
【0102】
全般にわたって記載されているように、皮膚の動静脈吻合を通る血液流動の制御は、温度調節機能に非常に重要である。AVAを通る血流を操作する能力は、特に血管収縮の初期状態から中核体温の調節に関わり、個人的な温度の不快感の問題を緩和するため医療適用に重大な影響をもつ。
【0103】
本明細書に記載の方法、過程、システムおよび装置は、AVAを通る血液流動の増加の要求に応じ、それによって身体中心部温度を上昇または低下させる能力を遂行するためのものである。いくつかの実施形態において、動静脈吻合(AVA)は、拡張および/または膨張してもよい。作用、拡張、および/または膨張の特定の機序へいかなる特定の実施形態を制限することなく、AVAは、皮膚へ心拍出量の大部分の分流を起こしてもよい。皮膚は、環境と熱交換を仲介してもよく、次いで身体の温度中核へ対流されてもよい。いくつかの実施形態において、AVA血管拡張および/または膨張促進が存在しない場合、中核温度変化の速度は従来の方法および装置を使用して予測より10倍速くてもよい。
【0104】
記載されたシステムおよび方法は、当初血管収縮してもしなくてもよい哺乳動物の中核温度を低下および/または上昇させるために使用することができる。温度調節制御の末梢位置の熱刺激とともに、無毛皮膚に大きな血液潅流を作り出し、身体中心部からの血流から熱を加えあるいは除去して無毛皮膚の表面がそれぞれ加熱または冷却されてもよい。開示された方法および装置は、皮膚表面と血液循環を通る身体中心部間の熱の対流流動を必要に応じて増加することができる。本方法および装置は、身体中心部の温度を正常温度状態から低体温症状態を作り出すため、高温状態から正常温度に向けて低下、ならびに身体中心部の温度を低体温状態から正常温度状態に向け、正常温度状態から高温状態に上昇させるために適用されてもよい。後半過程の例示的適用は、癌治療を促進するための人工発熱状態を作り出すことが望ましい事例になり得る。
【0105】
AVAが当初少なくとも血管収縮の部分状態であるいくつかの実施形態では、AVAの血管収縮を減少するために必要な入力信号を刺激するために、脳の末梢の温度調節制御センターにおける温度受容体を加熱する方法による部分では、少なくともAVAの血管収縮活動が緩和または減少される。AVA血管拡張増加の結果、AVAへの心拍出量の大部分の分流が存在するほどAVAの流動抵抗が大幅に減少する。
【0106】
AVAを通る血流の増加の結果として、無毛皮膚が温かい身体中心部からの血流による大きな対流伝熱によって温められる。記載されたシステムおよび方法は、温かい中核血液との対流熱交換の増加を通じて無毛皮膚を加温する過程を起こす末梢の温度調節制御組織を熱的に刺激することにより加熱のための様々な特定の装置および過程を実装できる。
【0107】
AVAを通る血流の増加のさらなる結果として、無毛皮膚は、その表面に加えられる加熱または冷却源と、AVAを通る血流間の熱送達媒体として使用することができる。この過程は、身体中心部の総血液量および組織と熱的につり合うまで、中間大直径で高い速度の管において最低限の熱交換で、身体中心部に循環して戻る心拍出量の一部の温度を調節する機会を作り出し、それによって身体中心部温度を外部から調節する直接輸送リンクを提供する。
【0108】
記載されたシステムおよび方法は、治療および他の使用のために哺乳動物の中核体温を急速に上昇または低下させるために使用することができる。例えば、低体温症の誘導は、心肺停止、虚血性脳卒中、くも膜下出血、肝性脳症、周産期仮死、小児ウイルス性脳炎、または急性外傷性脳傷害といった障害に罹患する可能性のある対象に虚血性事象から脳への保護を提供する。
【0109】
記載されたシステムおよび方法は、温熱誘発活性または事象に反応する利用者の身体を冷却するために使用されてもよい。温熱誘発活性のいくつかの非制限例には、運動行動、および/または高い温度環境での労働(鉱業、建設業、林業、金属処理業)、および/または高い熱ストレス環境への曝露、および/または軍事行動、といった持続制限活動が挙げられる。記載されたシステムおよび方法は、正常な動作範囲より高く、致命的に危険な温度まで身体温度を加温する効果を改善または除去するために使用されてもよい。
【0110】
記載されたシステムおよび方法は、低体温症誘導活動または事象に反応する利用者の身体を加温するために使用されてもよい。低体温症誘導活動の非制限例には、極寒環境での労働、および/または極寒環境への長期間の曝露、特に有意水準の身体活動が存在しない場合、および/または水への長期間の曝露、および/または冷/水性環境での持続運動、および/または低温条件下で乗り物に座った状態、が挙げられる。記載されたシステムおよび方法は、傷害および/または死に至る可能性のある身体中心部の温度を過度に下げる効果を改善または除去するために使用されてもよい。
【0111】
記載されたシステムおよび方法は、前述のタイプのいずれかの活動の行動限度を安全に拡大、および/または身体中心部の温度を調節することによって極端な温度への曝露期間を延長してもよい。いくつかの実施形態において、利用者は活動を続ける、あるいは利用者の運動性が妨げられないため極端な温度への曝露を続けてもよい。
【0112】
記載されたシステムおよび方法は、皮膚表面に侵入性がある、および/または滅菌状態を要する、および/または中央電源への接続を要するいかなる技術なしで2℃まで軽度の低体温症状態を誘導するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の装置または方法は、EMS医療職員に相当するレベルの訓練を受けた職員によって中央電源に接続なしの現場条件において実施することができる。
【0113】
記載されたシステムおよび方法は、対象の治療的低体温を誘導するため、または虚血性傷害を起こす危険性のある人々に使用されてもよい。例えば、局所的加熱は、無毛皮膚の大きな血液潅流を作り出す動静脈吻合の血管収縮の緩和を起こす温度調節の制御の末梢位置に適用されてもよく、ついで皮膚の対流伝熱を促進するために局所的に冷却することができ、治療的低体温症の状態へ急速な身体温度中核冷却を作り出す。このことは、心拍停止、脳卒中、外傷性脳傷害、血管系手術、新生児の脳損傷、およびその組み合わせといった医療症例の治療または神経防護作用を提供するために使用されてもよい。
【0114】
任意で、システム、装置、および方法は、外部のAC電源なしで操作または機能することができる。記載されたシステムまたはシステムの一部を、適用のための電動真空ポンプを操作する固定された電源に取り付けることは可能であり、この装置はそうした電源の物理的アクセス内に位置付けられる。
【0115】
任意で、記載されたシステムおよび装置は可搬式である。いくつかの実施形態において、本開示の装置は軽量でもよい。可搬性および/または、外部のAC電源なしに操作する能力、および/または軽量は、いくつかの適用において動作機能性を提供してもよい。例えば、可搬性および/または軽量は、EMS車両、医療ヘリコプター、民間航空機、軍事行動車の中で、工業現場、スポーツ競技場、および遠隔アクティビティ開催地での使用に利点がある。可搬性および軽量は、虚血性事象を罹患する対象に緊急救命治療を提供するために装置を宇宙船または航空機へ搭載するのに望ましい可能性がある。任意で、本システムおよび装置は救急キットに収納し運べるほど十分にコンパクトでもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、陰圧を無毛皮膚表面の一部に加える表面真空システムを使用し、固定した真空容器の中に無毛皮膚を含む肢を挿入する必要が取り除かれる。
【0117】
本開示のシステムおよび装置は、完全に可搬式でもよく、外部のAC電源は必要でなく、傷害または自動車事故の現場などの重篤な医療状況において、あるいは救急車またはヘリコプターに乗って搬送されている間に使用でき、心拍停止、脳卒中、外傷性脳損傷、あるいは新生児の脳損傷または障害の被害者に重要な緊急冷却治療を提供し、予想される虚血性傷害の防御を提供する。本開示は、いくつかの実施形態において、可搬式の加熱または冷却装置、当初機能していない場合、血液流動をAVAに誘導する方法、ならびに利用者にとっての可動性、例えば、完全な可動性を可能にしつつ、身体中心部温度を調節および/または調整および/または変更するための方法に関する。
【0118】
任意で、無毛皮膚表面は、改善したAVA血流に悪影響をおよぼすことなく身体中心部温度を調節するため、また身体中心部温度を調節する医学的利点が所望される、幅広い多様な場所および状況においての実装のために、加熱または冷却されてもよい。注目すべき、後者の場所および状況には、医療施設から遠隔地で虚血生成事象後すぐに軽度の低体温症の状態を生成することが含まれてもよい。
【0119】
システムまたは装置は、任意で、電動伝熱流体ポンプを操作している固定した電源に取り付けることができ、装置で適用の冷却システムはそうした電源の物理的アクセス内に位置付けられる。いくつかの実施形態において、開示の装置は可搬式でもよい。
【0120】
本開示は、末梢温度調節制御の重要な場所への重要な熱刺激を通って無毛皮膚のAVAへ血液潅流を起こす方法および装置を提供する。副交感神経の神経分布を有する末梢温度調節制御の位置への熱刺激は、緩和させるために血管収縮を起こす無毛皮膚のAVAに信号を送り、無毛皮膚への血流増加を作り出す。この刺激の1つの結果は、局所加熱または冷却が存在しない場合、無毛皮膚は血管収縮の以前の状態から温められるだろう。この結果は、事例の効果のために使用することができ、手および/または足の加温が熱的快適性の状態の増加を起こすであろう。
【0121】
この過程の適用の1つは、熱刺激を車のシートの後ろの上部と組み合わせ、それによって環境温度が不快感を起こすほどに低い場合、乗員の快適さを促進するために頸椎を加熱することができる。追加の適用には、ある人物が、冷環境への曝露と競技種目の観戦、狩猟の隠れ場所での待機、空の観測記録、および無数の他の状況のように長期間にわたる低いレベルの運動の組み合わせの状況で手掌および足底の皮膚の温覚を維持することが挙げられる。本発明は、日中または夜間いつでも、手および足が不快に冷たくなるあらゆる条件の住居環境において使用することができる。医療適用には、寒く不快感のある患者の加温が含まれてよい。必要に応じて、低体温症の状態から身体中心部を加温するために身体中心部に熱を循環させ、AVAを通る血流を加熱するために無毛皮膚表面の加温と組み合わせてもよい。
【0122】
熱刺激は、加熱表面との皮膚の直接接触、刺激部位上への温風の流動の指示、および/または表面適用、および/または制御された波長および強さでの電磁波エネルギーの貫通、を含む様々な方法によって誘導されてもよい。熱刺激の異なる方法は、快適性または医学的利点を達成する要件を満たすためにAVAの血管収縮を縮小する所要時間を変えることができる。熱刺激の強さは、刺激の間、熱傷防止を確保するためにフィードバック制御ループを通じて調節されてもよく、AVA血管拡張の最適制御を提供する。
【0123】
AVAの血管収縮を緩和させる脊椎加熱の適用によって、ならびにAVAを拡張する無毛皮膚への陰圧の適用によって促進されたように、無毛皮膚とAVAを通る対流の血流を通じた身体中心部間の伝熱を制御する生理学的機序が評価された。
【実施例】
【0124】
実施例1
【0125】
無毛皮膚への陰圧の適用は、AVA血管構造および関連静脈網を通る血液流動の著しい増加を起こすために使用された。レーザードップラー流動プローブは、加えられた陰圧の大きさの関数として、無毛皮膚の血流の変化を測定するために使用された。
【0126】
ヒトの手は、電子陰圧計が取り付けられた、密封し固定された真空チャンバの中に置かれた。レーザー光ドップラー流動プローブは、血流を継続的にモニタできるように中指の最も末端の肉趾の皮膚上に取り付けられた。指は、皮膚への能動冷却または加温適用なしで、環境の温度の空気に曝露された。制御測定は、当初の順応期間に続けて陰圧適用なしで行われた。陰圧は、予め定められたレベルまで増加され、15分間留められ、次いで0に戻った。
【0127】
約40mmHgの陰圧でサンプル手順からのデータは、図15に表されている。図15は、血流のグラフを表し、内径が時間と共に変化し、それによって流動のインピーダンスおよび速度の双方を変える間のAVA血管活動性に特有である過渡変動を示す。この生理現象の基本メカニズムに関するいくつかの特徴は、データに反映されている。例えば、第一に、陰圧の作用下で平均血液潅流速度は、約30%増加する。これは陰圧技術の作用にとって重要である。第二に、圧力における変化が陽であろうと陰であろうと、加えられた陰圧における大きな変化と共にAVAの激しい一時的な血管収縮が存在する。この交換神経によって行われる作用は、身体への突然の環境入力への典型的な反応である。第三に、陰圧が除去された後、潅流速度は陰圧の適用前のおおよそのレベルに戻る。この作用は、直接原因および潅流の増加と加えられた陰圧間の有効な関係を示す。第四に、AVA血管収縮の初期の自然状態からの当初の順応期間の間、およそ3つの要素により大きな潅流の増加が存在する。
【0128】
レーザードップラープローブは、潅流測定の位置で皮膚表面温度の測定にも使用された。図16は、この実験中の温度履歴を示す。実験の開始時、当初の皮膚温度は24℃であり、これはAVA潅流の低値に応じて確認されたように血管収縮した状態を示す。図15は、血管拡張状態へ陰圧がかからない場合の、初めの11分間にわたる安定した推移を表す。図16は、皮膚表面の進行性の加温に移動した内部対流源を起こしたAVAを通る身体中心部からの温かい血液流動の増加として、新たな平衡値に対応する約8℃の皮膚温度の上昇を記録している。このデータは、AVA潅流レベルと皮膚伝熱間の結合および温度を表す。
【0129】
図15は、AVA潅流の比例した増加で、11分間での陰圧の適用をさらに表す。高い潅流速度は、温かい血液と皮膚組織間の大きい対流効果に変わり、表面温度のさらなる上昇が生じる。図16は、陰圧の適用の結果による表面温度が2℃さらなる上昇を記録している。AVA潅流の増加の結果、皮膚表面温度の純上昇は10℃であった。温度上昇の2つの段階は、潅流増加における2つの段階に対応し、2つの現象の機械的な結合を実証している。無毛皮膚における対流熱伝熱の血液潅流の機械的作用は、これらのデータによって検証される。
【0130】
実施例2
【0131】
前述および図15に表されたように、一連の試験は各自異なる陰圧値で実施された。その目的は、潅流の増加の大きさと加えられた陰圧の大きさの間に比例関係が存在するかどうかを測定することであった。これらの実験結果は、室温空気で様々な(段階)の陰圧値に曝露された場合、中指の最も末端のパッドのレーザードップラー速度計によって測定された血液潅流の増加量を示す図17に表されている。
【0132】
これらのデータは、加えられた陰圧と得られたAVA潅流の増加間の明確な比例関係を記録している。対象技術における血液潅流の陰圧の機械的作用は、これらのデータによって検証される。
【0133】
実施例3
【0134】
手の掌表面は、陰圧が内部から固定したチャンバに加えられたと同時に、循環された冷蔵水を通る弾力性のある袋に接触することによって冷却にさらされた。熱流束計および熱電温度計は、その袋に接する掌部分に取り付けられた。その手順は、室温での平衡期間、陰圧の適用に順次続いて、次いで17℃の水で袋の潅流、次いで陰圧の停止、陰圧の復活、および陰圧の最終停止、から構成された。
【0135】
図18は、23℃の温度を有する水が、手の掌に接触する袋を通って循環されたこの実験からのデータを表す。陰圧(図18の最低の線)が加えられた場合、皮膚の熱流束の重要な促進が起こり(図18の最高の線)、陰圧が除去された時減少した。熱流束測定の位置での皮膚温度は、最も変化のないグラフとして表される。
【0136】
11分間の平衡期間後、陰圧は40mmHg(一定の熱流束を留める)に増加し、21分、17℃で袋を通る水循環は熱流束の比例した増加によって開始された。30分で陰圧は0にセットされ、すぐに熱流束の下降を起こした。36分で陰圧は40mmHgに回復し、熱流束はすぐに上昇し戻り、最高値で留まった。41分で陰圧は再び除去され、熱流束も以前の低値に下降した。このデータは、陰圧と皮膚を通る熱流動の促進間の機械的な結合を明示している。この結合は、拡張したAVAの陰圧を通る血流と対流が増加することによって促進されているようである。対象技術の皮膚における伝熱への陰圧の機械的作用はこれらのデータによって検証される。
【0137】
実施例4
【0138】
AVA血流を生じさせる副交感神経の温度センサを多く含む末梢部分の加熱皮膚が、この結果を引き起こす。この結果は図21に表されている。対象の頸椎の加熱は、血液潅流の大きな増加を起こす対象の手の無毛皮膚の血管収縮したAVAを開くために使用され、それによって皮膚表面を加温した。
【0139】
図21は、強く血管収縮した状態が、脊椎に沿って選択された部分への局所的加熱の適用によって緩和された試験用の実施例データを表す。加熱された総表面積は、中核温度に作用できる総熱負荷を避けるためにかなり小さい。中核温度は継続的にモニタされ、その過程の間中、一定していた。表面の熱電温度計は、対象が実験前に1時間以上の強い血管収縮が続く状態にあった時、片手の掌に取り付けられた。熱電温度計は、加熱が加えられた位置の脊椎上の皮膚にも取り付けられた。
【0140】
このデータは、約40℃を超える狭い範囲に効果をもたらす温度を表す。この温度は、熱傷を起こす限界に近い、約44℃を下回るように制限された。そのため、温度範囲は約40℃〜約44℃未満であった。
【0141】
頸椎の皮膚への加熱の適用は、無毛皮膚のAVA血管拡張に直結する。血管拡張は、熱がAVA血管床から離れて拡散するので、身体中心部からの温かい血液の潅流促進、周辺組織への対流伝熱、および皮膚表面の加温を作り出した。対象技術へ血管収縮した状態からAVA血管拡張の末梢加熱の機械的作用は、これらのデータによって検証される。
【0142】
実施例5
【0143】
頸椎の加温は血管収縮したAVAの血流を増加する
【0144】
中央温度調節制御の特定の末梢部分への熱を通る熱刺激の適用は、AVA血管構造を通る血液流動、および関連静脈網の著しい増加を起こす。光ファイバーレーザードップラー流動プローブは、脊椎へ加えられた表面加熱の大きさの関数として、無毛皮膚の血流の変化を測定するために使用された。表面フィラメント熱電温度計は、電気加熱パッドが当てられた頸椎で皮膚表面の温度を測定するために使用された。
【0145】
図19および20は、頸椎で皮膚表面の加熱の適用に応じて、指先および第2趾を通るそれぞれの血液流動の増加を表す。データは、頸椎で皮膚温度の上昇に続いて潅流が直接増加する、無毛皮膚の両部分を表す。
【0146】
実施例6
【0147】
頸椎の加温は、当初血管収縮した手掌および足底皮膚の表面温度を上昇させる
【0148】
血管収縮の初期状態が存在する場合、副交感神経の温度センサを多く含む末梢部分の加熱皮膚が、無毛皮膚の温度上昇を作り出す。対象の頸椎の加熱は、血液潅流の大きな増加を起こす対象の手および足の無毛皮膚の血管収縮したAVAを開くために使用され、それによって皮膚表面を加温した。
【0149】
図21および22は、強く血管収縮した状態が、脊椎に沿って選択された部分への局所的加熱の適用によって緩和された試験用の実施例データを表す。加熱された総表面積は、中核温度に作用できる総熱負荷を避けるためにかなり小さい。中核温度は継続的にモニタされ、その過程の間中、一定していた。表面の熱電温度計は、対象が実験前に1時間以上の強い血管収縮が続く状態にあった時、片手の掌、図21、または片足の裏、図22、に取り付けられた。熱電温度計は、加熱が加えられた位置の脊椎上の皮膚にも取り付けられた。
【0150】
このデータは、表面上で約39℃を超える狭い範囲に効果をもたらす温度を表す。この温度は、熱傷を起こす限界に近い、約43℃を下回るように制限された。AVA血管拡張をもたらすように頸椎を覆う皮膚表面を加熱するのに効果的な温度範囲は、約39℃〜約43℃未満である。
【0151】
頸椎の皮膚への熱の適用は、無毛皮膚のAVA血管拡張に直接つながる。血管拡張は熱がAVA血管床から離れて拡散するので、身体中心部からの温かい血液の潅流増加、周辺組織への対流伝熱、および皮膚表面の加温を作り出した。対象技術へ血管収縮した状態からAVA血管拡張の末梢加熱の機械的作用は、これらのデータによって検証される。
【0152】
光ファイバー温度プローブは、指先の潅流測定の位置で、皮膚表面温度を測定するためにも使用された。図23は、この実験の間の温度履歴を示す。当初の皮膚温度は24℃であり、これはAVA潅流の低値に応じて確認されたように血管収縮した状態を示す。AVAを通る潅流速度のデータは、血管拡張状態への初めの11分間にわたる安定した推移を表し、新たな平衡値に対応する約8℃の皮膚温度の上昇にAVAを通る身体中心部からの温かい血液の流動が増加したため、皮膚表面の進行性の加温に移動した内部対流源を起こした。これらのデータは、AVA潅流レベルと皮膚伝熱間の結合を表す。11分での陰圧のさらなる刺激は、温かい血液と皮膚組織間の大きい対流効果を起こし、表面温度のさらなる上昇が生じる。図23は、陰圧の適用の結果による表面温度が2℃さらなる上昇を記録している。AVA潅流の増加の結果として、皮膚の表面温度の純増加は10℃であった。無毛皮膚における対流熱伝熱の血液潅流の機械的作用は、これらのデータによって検証される。
【0153】
実施例7
【0154】
手掌または足底の皮膚の冷却とともに頸椎を加温することは、身体中心部の温度の減少を起こす
【0155】
本開示の装置、システム、および方法の適用のために、AVAが血管収縮した開始の状態から、皮膚の循環促進の効用を実現するために血管拡張の状態が生じる。一例は、例えば、脳卒中、心停止、または外傷性脳傷害に起因する脳虚血の発症に罹患している患者を治療するための治療的低体温症の利用である。こうした対象は、AVA血管収縮の状態でもよい。この時点では、治療的低体温症が短期間の内に有効性が適用される場合、本開示の方法によれば、AVA血管拡張の状態が誘導され、中核冷却過程の間中、維持される。
【0156】
手の掌表面、および時々、足の足底表面は、加熱が頸椎を覆う皮膚へ加えられたと同時に循環された冷蔵水を通る袋に接触することによって冷却にさらされた。熱流束計および熱電温度計は、その袋に接触する掌/足の足裏部分に取り付けられた。その手順は、室温での平衡期間に続いて、20℃の水で袋の潅流から構成された。
【0157】
図24は、これらの試験からのデータを表す。実験の約80分後、頸部加熱および手掌の冷却は双方効果があった。続いて、おおよそ80分と110分の間の30分間、対象の身体中心部は約摂氏0.4度低下した。
【0158】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形の「a」、「an」、「the」という表現は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0159】
本明細書で使用するとき、用語「構成する」およびその変化形は、用語「含む」およびその変化形と同意語として使用され、開かれた、非制限用語である。
【0160】
前述の説明に提示した教示の利点を有する本発明に関連する当業者には、本発明の多くの修正および他の実施形態が想起されよう。したがって、本発明は開示した特定の実施形態に限定されることなく、修正および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれる。本明細書において特定の用語が用いられているが、これらは限定の目的のために用いられたのではなく、一般的かつ説明的な意味だけに用いられたものである。
【符号の説明】
【0161】
200 システム
202 加熱体
206 冷却装置
208 導管
21 ポンプ
212 真空源
214 真空
216 温度感知装置
218 温度センサ
222 圧力センサ
224 コンピュータ
226 プロセッサ
232 モジュール
240 圧力感知モジュール
614 無毛皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の無毛組織の温度を上昇させるまたは維持する方法であって、前記対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えることを含み、前記加えられた熱により前記無毛組織の血液潅流を増加または維持し、それによって前記無毛組織の温度を上昇または維持する、方法。
【請求項2】
前記末梢の温度調節制御組織が、前記対象の頸椎領域に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記末梢の温度調節制御組織が、前記対象の腰椎領域に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無毛組織へ陰圧を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象の中核体温を下げる方法であって、前記対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えることであって、前記加えられた熱により前記対象の無毛組織の血液潅流を増加または維持する、熱を加えることと、前記無毛組織に冷却刺激を加え、それによって前記中核体温を下げることと、を含む、方法。
【請求項6】
前記無毛組織に陰圧を加えることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記末梢の温度調節制御組織が、前記対象の頸椎領域に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記末梢の温度調節制御組織が、前記対象の腰椎領域に位置する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、心肺停止、虚血性発作、クモ膜下出血、肝性脳症、外傷、脳手術、周産期仮死、小児脳炎、体温上昇誘導事象、および急性脳損傷からなる群から選択される傷害に罹患している、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の中核体温が、前記傷害に罹患後約90分以下で下がる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の中核体温が、前記傷害に罹患後約60、30、10分以下で下がる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱は、前記無毛組織に冷却刺激を加えると同時に前記末梢の温度調節制御組織に加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記温度調節制御組織の温度が、約39℃〜43℃に上昇する、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記上昇した温度が少なくとも約1分間維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記上昇した温度が約1〜5分間維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記上昇した温度が少なくとも約5分間維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
対象の中核体温を上昇させる方法であって、前記対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えることであって、前記加えられた熱により前記対象の無毛組織の血液潅流を増加または維持する、熱を加えることと、前記無毛組織に熱刺激を加え、それによって前記中核体温を上昇させることと、を含む、方法。
【請求項18】
前記無毛組織に陰圧を加えることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記末梢の温度調節制御組織が前記対象の頸椎領域に位置する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記末梢の温度調節制御組織が前記対象の腰椎領域に位置する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が低体温症誘導事象に罹患している、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
対象の中核体温を下げるシステムであって、
a.前記対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えるように構成される加熱装置であって、前記加えられた熱により前記対象の無毛組織の血液潅流を増加または維持する、加熱装置と、
b.前記無毛組織に冷却刺激を加えるように構成される冷却装置と、
を備える、システム。
【請求項23】
前記無毛組織に陰圧を加えるように適合される装置をさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記加熱装置が、前記対象の頸椎領域または腰椎領域に熱を送達するように適合される、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記冷却装置が、前記対象の手掌領域に冷却刺激を提供するように適合される、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記冷却装置が、前記対象の足底領域に冷却刺激を提供するように適合される、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記加熱装置が、前記対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚を加熱するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記加熱装置が、前記対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚の下にある組織を加熱するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
前記加熱装置が、抵抗加熱装置、電磁気による加熱装置、光による加熱装置、超音波による加熱装置、および発熱化学反応による加熱装置からなる群から選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記冷却装置が、前記無毛組織よりも低い温度に冷却される液体を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項31】
加熱装置および冷却装置は可搬式である、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記加熱装置が、前記対象によって運搬または着用されるように構成される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記冷却装置が、前記対象によって運搬または着用されるように構成される、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記冷却装置が、前記対象によって、前記対象の手掌または足底の無毛皮膚に冷却刺激を動作可能に供給する位置で着用される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記冷却装置が、前記対象の履く靴中に位置し、足底の無毛皮膚に前記冷却刺激を供給する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記冷却装置が、前記対象の着用する手袋内に位置し、前記対象の手掌の無毛皮膚に前記冷却刺激を供給する、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記対象の無毛皮膚、末梢の温度調節制御組織、または中核体温の温度を評価するために少なくとも1台の温度感知装置をさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項38】
対象の中核体温を温めるシステムであって、
a.前記対象の末梢の温度調節制御組織に熱を加えるように構成される加熱装置であって、前記加えられた熱により前記対象の無毛組織の血液潅流を増加または維持する、加熱装置と、
b.前記無毛組織に温刺激を加えるように構成される加温装置と、
を備える、システム。
【請求項39】
前記無毛組織に陰圧を加えるように適合される装置をさらに備える、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記加熱装置が、前記対象の頸椎領域または腰椎領域に熱を送達するように適合される、請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
前記加温装置が、前記対象の手掌領域に温刺激を提供するように適合される、請求項38に記載のシステム。
【請求項42】
前記加温装置が、前記対象の足底領域に温刺激を提供するように適合される、請求項38に記載のシステム。
【請求項43】
前記加熱装置が、前記対象の前記末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚を加熱するように構成される、請求項38に記載のシステム。
【請求項44】
前記加熱装置が、前記対象の末梢の温度調節制御組織を覆っている皮膚の下にある組織を加熱するように構成される、請求項38に記載のシステム。
【請求項45】
前記加熱装置が、抵抗加熱装置、電磁気による加熱装置、光による加熱装置、超音波による加熱装置、および発熱化学反応による加熱装置からなる群から選択される、請求項38に記載のシステム。
【請求項46】
前記加温装置が、抵抗加温装置、電磁気による加熱装置、光による加温装置、超音波による加温装置、および発熱化学反応による加温装置からなる群から選択される、請求項38に記載のシステム。
【請求項47】
加熱装置および加温装置は可搬式である、請求項38に記載のシステム。
【請求項48】
前記加熱装置が、前記対象によって運搬または着用されるように構成される、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記加温装置が、前記対象によって運搬または着用されるように構成される、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記加温装置が、前記対象によって、前記対象の手掌または足底の無毛皮膚に前記温刺激を動作可能に供給する位置で着用される、請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
前記加温装置が、前記対象の履く靴内に位置し、前記足底の無毛皮膚に前記温刺激を供給する、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記加温装置が、前記対象の着用する手袋内に位置し、前記対象の手掌の無毛皮膚に前記冷却刺激を供給する、請求項50に記載のシステム。
【請求項53】
前記対象の無毛皮膚の温度、末梢の温度調節制御組織、または中核体温を評価するために少なくとも1つの温度感知装置をさらに備える、請求項38に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2013−505068(P2013−505068A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529849(P2012−529849)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048774
【国際公開番号】WO2011/034852
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】