説明

哺乳類における新生物の成長を阻害するための薬剤

【課題】肉腫、線維肉腫、膠芽腫、悪性腫瘍、黒色腫、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、白血病及び他の新生物症状を含む幅広いスペクトルの新生物疾患を治療する薬剤を提供すること。
【解決手段】プロラクチン変調剤及びプロラクチン増強剤を用いた哺乳類における新生物の成長を阻害するための薬剤であって、該プロラクチン変調剤は、該哺乳類の概日プロラクチンプロフィールを調整して同種同性の健康な哺乳類の概日プロラクチンプロフィールと一致させ又は近づけるように、24時間周期のうちの所定の時間に該哺乳類へ投与するものであり、該所定の時間は、24時間周期のうちの間隔をあけた複数の時点のそれぞれにおける前記哺乳類の血液プロラクチンレベルを、該哺乳類と同種同性の健康な哺乳類の日毎のベースラインプロラクチンプロフィールにおける対応する血液プロラクチンレベルと比較して決定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生物及びその転移を阻害するための薬剤に関する。より詳細には、本発明は、新生物及びその転移を阻害するか又は除くために概日プロラクチンリズムの変更を利用する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プロラクチンと概日リズム
研究は、概日リズムがプロラクチン活性の調節に重要な役割を果たし、またその逆もあることを示している。
非特許文献1〜6等の刊行物は、どのように概日リズムがプロラクチン活性を調節しているかを説明している。その結果としての、様々なタイプの細胞のプロラクチンに対する応答性における日毎(daily)の変化は、脂肪貯蔵、インスリンに対する脂肪新生応答、渡りの習性、変態、生殖、成長、ハトのそのうの発達及び乳房の発達を含む数多くの生理学的過程の調節において重要な役割を有している(非特許文献1、5、7)。前記の生理学的活性の一つの調節において、その活性に対しプロラクチンが刺激性又は阻害性の効果をもたらすか、又はそれに対し何の効果も示さないことが観察されうる。これらの変化する効果は、血漿プロラクチン濃度のリズムの日毎の内因性ピークの時間(即ち頂点位相)の働き、又は外因性ホルモン(又はプロラクチンレベルを増加させる物質)の日毎の注射の時間若しくは内因性ピークと誘導された何かのピークとの関係の働きであることが、最近動物において示されている。さらに、区別しうる日毎のインターバルに制限された高いレベルのプロラクチンは、動物において、一日を通じて一定の高レベルで行うよりさらに大きな生理学的(例えば代謝的)な効果を有する(非特許文献8及び9)。このような知見は、あるタイプの細胞による、プロラクチンへの日毎の応答リズムの存在を示す。
【0003】
何かのホルモンに対する生理学的応答における日毎の変化の第一の証拠は、白首スズメ(white-throated sparrow)におけるプロラクチンに対する肥満応答の劇的な多様性である(非特許文献10)。16時間の日毎の光周期の正午における注射は、3倍の体脂肪レベルの増加を刺激した一方、光周期の早いうちに与えられた注射は、脂肪貯蔵を50%減少させた。このような、プロラクチンに対する肥満応答における日毎的な多様性は、続いて、全ての主要な脊椎動物クラスの多くの種において示された(非特許文献5、6)。これらは、このような一時的な組織の基本的な特質を示している。肥満応答リズムは持続的な光条件下でも維持される(非特許文献11)。このことは、他の多くの内因性の日毎の変動と同様、これが概日リズムであることを示している。
【0004】
概日リズムは、脂質代謝及び体脂肪貯蔵等の多くの生理学的活性の調節において重要な役割を果たすことを、追加の研究が示している(非特許文献3、5、6、8、12、13、14)。これらの実験は、(標的細胞における)これらのホルモンに対する脂質調節ホルモン(刺激)の概日リズム及び概日応答の相互作用は、脂質新生及び脂肪貯蔵の量を決定することを示している。従って、太った動物において、プロラクチンに対し最大肥満応答する日毎のインターバルの間に、プロラクチンの高い血漿濃度(刺激として働く)が起こる。しかしやせた動物においては、一日のうちの応答しない他の時間において起こる(非特許文献5、6、15)。同様に、血漿インスリン(刺激として働く)レベルは、太ったハムスターにおいて、インスリンに対し最大肝臓脂質新生応答する日毎のインターバルの間に最大となるが、やせたハムスターでは一日のうちの異なる時間において最大になる(非特許文献16)。これらの刺激及び応答リズムの相関係は、太った又はやせた動物のいずれかを産生する、神経伝達物質剤及び(プロラクチンを含む)
ホルモン注射により順番にリセットされうる神経概日中枢の発現であると考えられる(非特許文献2〜4、17〜19)。従って、時間をきめたプロラクチンの投与又は増強は、ホルモンに対する応答性の概日リズムを受ける組織に直接(例えば脂質新生において肝臓に)働いて正味の生理学的効果の即座な変動をもたらし(非特許文献8)、また、多重振動概日ペースメーカーシステムの概日神経内分泌振動の一つをリセットすることによって間接的に働き、脂質代謝を制御する(神経、ホルモン及び組織の)多重概日発現間の異なる相関係を確立することが示されている(非特許文献2〜4、17〜19)。
【0005】
本発明者らは、これまで、プロラクチン又は循環するプロラクチンレベルに影響する物質が、概日リズムにも影響を与え、事実このようなリズムを(これらが同性のやせて健康で若い個体のリズムによりよく似るように)修正し、このようなリズムを(修正されたリズムが修正された条件を維持するよう)リセットするのに使用しうることを示してきた。特許文献1〜6等を参照。これらの本発明者らによる従来の研究は、さまざまな生理学的疾患(肥満、糖尿病、じゅく状硬化、高血圧、免疫不全その他)に苦しめられているヒトにおいて臨床的に試験を行い、良好な結果を得ている。
特に、特許文献2及び1994年6月23日に出願されたその一部継続出願である特許文献7において、本発明者らは、脊椎動物又はヒトの被検者において体脂肪貯蔵を減少させ、インスリン耐性、高インスリン症及び高血糖症並びに他の代謝疾患、特に第II型糖尿病に関連するもののうち少なくとも1つを減少させる方法を開示する。より具体的には、前記出願は:(i)正常な(健康な)(肥満、疾患又は他の不全がない)ヒト又は脊椎動物の日毎のプロラクチンレベルのサイクルを評価し;(ii)ヒト又は脊椎動物の異常な日毎のプロラクチンレベルのサイクルを診断し;(iii)そのような異常なプロラクチンレベルのサイクルを正常化するためになされるために必要な適切な調整を決定するための方法を開示している。この方法は、プロラクチン減少剤及び/又はプロラクチン増強剤のうち少なくとも一つを、24時間の周期内の第1の所定の一つ以上の時間(プロラクチン減少剤のみが投与される場合)、及び/又は24時間の周期の第2の所定の一つ以上の時間(プロラクチン増強剤が投与される場合)に投与することを含む。この治療は、数日、数週間又は数か月続けられた場合、異常又は非正常なプロラクチンレベルのサイクルの長期的な調整をもたらし、それらが正常なプロラクチンレベルのサイクルに一致(又は近づけられ)る。多くの場合において、この利益は治療を停止した後でさえ長期間持続する。結果として、さまざまな代謝疾患に関連する異常な生理学的パラメーターは正常なレベルに修復されるか正常なレベルに近づくよう修正される。この方法は24時間周期の内少なくとも一部に異常なプロラクチンレベルを有している全てのヒトに適用されているが、重要なことに、新生物疾患を有するヒトにそれを適用する可能性の教示又はこの方法を新生物症状の治療に適用する可能性の教示は何もなかった。
【0006】
コルチコステロンと概日リズム
ヒトにおけるコルチコステロンの分泌速度は、早朝において大きいが夜更けには小さい。血漿コルチコステロンのレベルは朝の起床1時間前の0.2mcg/mlの高さから12AM頃の0.05mcg/mlの低さまでにわたる。この効果は、コルチコステロンの分泌をもたらす視床下部からのシグナルの24時間の周期的変化の結果である。ある哺乳類が睡眠習慣を変更した場合、この周期は対応して変化する。逆に、周期が変化した場合、睡眠習慣が変化する。従ってコルチコステロン投与は、後述されるいくつかの実施例において行われるように、持続的な光照射により光周期が奪われた多くの実験用哺乳類の概日リズムを同調させるのに使用することができる。コルチコステロンの分泌パターンは、種によって異なるが、光周期の暗い及び光照射された部分の間のさまざまな時間インターバルにおいてホルモンをアッセーすることにより容易に決定することができる。
プロラクチンリズムの調整で多くの代謝疾患を制御することは可能であることは当該技術においてよく知られていたが、新生物及び転移に苦しむ哺乳類におけるプロラクチンリズムを調整して同種同性の若く健康でやせた個体に見いだされるリズムと一致させ又は近づけると、新生物及び転移の成長が、非常に顕著な程度に阻害されたことを見いだしたことはまったく驚くべきことで予期しなかったものである。
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第08/158,153号明細書
【特許文献2】米国特許出願第07/995,292号明細書
【特許文献3】米国特許出願第07/719,745号明細書
【特許文献4】米国特許出願第07/999,685号明細書
【特許文献5】米国特許出願第08/171,569号明細書
【特許文献6】米国特許第5,344,832号明細書
【特許文献7】米国特許第08/264,558号明細書
【非特許文献1】Meier,A.H.,Gen.Comp.Endocrinol.3(Suppl 1):488-508,1972
【非特許文献2】Meier,A.H.,Trans.Am.Fish.Soc.113:422-431,1984
【非特許文献3】Meier,A.H.et al.,Current Ornithology II(ed Johnston R.E.)303-343,1984
【非特許文献4】Cincotta,A.H.et al.,J.Endocrinol.120: 385-391,1989
【非特許文献5】Meier,A.H.,Amer. Zool.15:905-916,1975
【非特許文献6】Meier,A.H.,Hormonal Correlates of Behavior(eds.Eleftherton and Sprott)469-549,1975
【非特許文献7】Meier,A.H.et al.,Science 173:1240-1242,1971
【非特許文献8】Cincotta,A.H.et al.,Horm.Metab.Res.21:64-68,1989
【非特許文献9】Borer,K.T.in The Hamster: Reproduction and Behavior(ed.Siegel,H.I.)363-408,1985
【非特許文献10】Meier,A.H.et al.,Gen.Comp.Endocrinol.8:110-114,1967
【非特許文献11】Meier,A.H.et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.137: 408-415,1971
【非特許文献12】Meier,A.H.et al.,J.Am.Zool.16: 649-659,1976
【非特許文献13】Cincotta et al.,Life Sciences 45: 2247-2254,1989
【非特許文献14】Cincotta et al.,Ann.Nutr.Metab.33:305-14,1989
【非特許文献15】Speiler,R.E.et al.,Nature 271: 469-471,1978
【非特許文献16】deSouza,C.J.et al.,Chronobiol.Int.4:141-151,1987; Cincotta,A.H.et al.,J.Endocr.103:141-146,1984
【非特許文献17】Emata,A.C.et al.,J.Exp.Zool.233:29-34,1985
【非特許文献18】Cincotta,A.H.et al.,Chronobiol.Int'l 10: 244-258,1993
【非特許文献19】Miller,L.J.et al.,J.Interdisc.Cycles Res.14:85-94,1983
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の要約
新生物疾患に苦しむ哺乳類(ヒトを含む)が非正常なプロラクチンプロフィールを有することは、長く知られている。ここに、哺乳類(ヒトを含む)の新生物及びそれらの転移が、新生物疾患に苦しむ哺乳類の非正常なプロラクチンプロフィールを修正し、プロフィールが同種同性のやせた、若い健康な哺乳類のプロラクチンプロフィールに近づくか一致するようにすることにより治療されうることが、意外にも発見された。罹患している哺乳類の非正常なプロラクチンプロフィールは、(i)プロラクチンの直接の投与(ii)プロラクチン変調剤即ちプロラクチン増強剤及び/又は減少剤の時間を決めた投与によるプロラクチンプロフィールの調整、又は(iii)(メラトニン等の)プロラクチン増強剤及び(ブロモクリプチン等の)プロラクチン減少剤の時間を決めた投与による、罹患している哺乳類の概日リズムの正常な相及び振幅へのリセットによって修正できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の1つの特徴は哺乳類における新生物及びそれらの転移の治療又は阻害剤であって、哺乳類への24時間の周期中の所定の1つ以上の時間におけるプロラクチン減少剤及び/又は増強剤の投与、又はプロラクチン増強剤及び減少剤の時間を決めた一連の投与による、哺乳類の非正常なプロラクチンプロフィールの、それが同種同性の若く健康な哺乳類のプロラクチンプロフィールに近づくか一致するような修正をもたらす。
本発明の他の特徴は、変化した被検者のプロラクチンリズムがリセットされこのリセットされた状態が治療終了後であっても延長した期間持続しその結果新生物の成長の阻害が持続するまで、プロラクチン減少剤及び/又は増強剤の前記時間を決めた投与を続けることによる、新生物及びそれらの転移を長期的基準で治療又は阻害する薬剤である。
従って、本発明はプロラクチンの概日リズムを調整することによる、哺乳類における新生物の成長の治療又は阻害に対するものである。本発明は、治療を受けた被検者のプロラクチンの概日リズムを健康な若い被検者のものと似るように正常化することにより新生物成長の阻害を達成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の利点は、以下のことを含む: −化学療法剤の衰弱効果なしに新生物に対抗する能力。
一次新生物塊の除去にしばしば伴う新生物の転移的成長を阻害する能力。
本発明の新生物成長阻害及び治療の利益は、プロラクチン変調剤の投与が中止されたあとであっても長期間持続しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付された図面と関連して理解される以下の記載から明白となる。
本明細書で述べられる全ての特許、特許出願及び文献は、参照によりここに組み込まれる。用語において不一致がある場合、その定義を含む本開示が制御する。
「プロラクチン減少剤」とは、哺乳類に投与された際、循環するプロラクチンレベルを減少させる能力を有する物質又は組成物を示し;「プロラクチン増強剤」とは、循環するプロラクチンレベルを上昇させる能力を有する物質又は組成物を示し、プロラクチン自身を含む。
プロラクチン減少剤及びプロラクチン増強剤は、合わせて「プロラクチン変調剤」と称される。
被検者の「プロラクチンプロフィール」とは、24時間の周期の全て又は一部分にわたる、循環するプロラクチンレベル及びそれらの変動の図示であり、従って被検者の血漿プロラクチンの日毎のリズムの全部又は一部の表現である。
【0012】
「健康」とは、悪性疾患、免疫系不全及び代謝の非正常を含む疾患を有しない若くやせた被検者である。健康な被検者とは、正常なプロラクチンプロフィール、即ち、被検者の種及び性のベースラインから1標準誤差(SEM)を超えて逸脱しないプロラクチンプロフィールを有する者である。健康な男及び女のヒトの正常即ちベースラインのプロラクチンプロフィールは図1に図示される。
「偽陽性」を回避するために、一般的に被検者は:(a)被検者の日中(daytime)の血液プロラクチンレベルが、日中の間の少なくとも1時間好ましくは少なくとも2時間間隔をおいた2つの(またはそれより多い)時点において少なくともベースラインよりISEM高い;又は(b)被検者の日中の血液プロラクチンレベルが日中の間の1つの時点において少なくともベースラインより2SEM高い;又は(c)被検者の夜間(night time)の血液プロラクチンレベルが((a)と同様に)間隔をおいた2つの(またはそれより多い)時点におけるベースラインの少なくとも1SEM下である;又は(d)被検者の夜間の血液プロラクチンレベルが夜間の1つの時点においてベースラインの少なくとも2SEM下である;又はでない限り非正常なプロラクチンプロフィールを有するとはされない。
【0013】
ヒトの男性及び女性のプロラクチンベースラインは図1に示される。起きている時間(07:00−22:00)の1つのSEMは、男性についてはおよそ1−2ng/mlであり女性についてはおよそ1−3ng/mlであり;夜間(22:00−07:00)の1つのSEMは男性についてはおよそ3ng/mlであり女性についてはおよそ3−6ng/mlである。
ヒトにおいて近づけられるか又は一致させられるべきプロラクチンレベルの日毎のリズム即ちプロフィールの特徴は、07:00と22:00との間のほとんど又は全ての時点の間の、低いプロラクチンレベル(男性については2−7ng/ml、女性については2−10ng/ml血漿)の達成を含む。
理想的には、ピークプロラクチンレベルもまた、22:00と07:00との時間の間(好ましくは1:00と4:00との間)に達成される(このピークは、男性については少なくとも10ng/ml及び最も好ましくは10−15ng/mlの間、女性については少なくとも15ng/ml及び最も好ましくは15と25ng/mlとの間である必要がある)。
【0014】
新生物疾患におけるプロラクチン変調剤の効果
本発明は、実質的な新生物組織の負担を有する又は一時的な新生物組織塊の除去に続く転移成長の可能性を有する哺乳類において、新生物の成長及びそれらの転移を治療及び阻害する(例えば、新生物が固形の場合、新生物組織の量の減少、又は一次的な腫瘍の除去後の転移負担の減少)薬剤を提供する。これは、24時間の周期中の所定の時間でのプロラクチン変調剤の投与により達成される。プロラクチン変調剤の投与の時間は、治療を受ける哺乳類のプロラクチンプロフィールを調整し、同性同種の健康な哺乳類のプロラクチンプロフィールに一致させるか近づけるよう選択される。
哺乳類におけるプロラクチン増強剤の投与は、健康な哺乳類におけるプロラクチン分泌のピークに対応する24時間周期中の時間を決めたインターバルにおいて与えられた場合、新生物成長に対し阻害的であることが見いだされている。概日リズムを規定された光周期又はコルチコステロン注射と同調させた、新生物を有するマウスにおける、プロラクチンの時間を決めた注射は、時間を決めたプロラクチン注射を受容しなかった新生物を有するマウスに比べて、新生物組織負担の減少を発現することが示された。in vivo新生物組織及び転移の阻害応答におけるin vivoプロラクチン変調の効果は、一日のうちの時間に依存する(time-of-day dependent)ことも見いだされた。
【0015】
新生物疾患の阻害におけるプロラクチンの一日のうちの時間に依存する役割はまた、外因性プロラクチンに対する新生物成長阻害応答が欠如した特定の日毎のインターバル中において(プロラクチン減少剤の投与により)プロラクチン血液レベルを減少させるマウスについての実験結果によって示される。内因性プロラクチン分泌を阻害するD2ドパミンアゴニストであるブロモクリプチンを用いた時間−応答研究は、ブロモクリプチンは、健康な動物におけるプロラクチン分泌の最も低いときに対応する、24時間の周期のうちの所定の時間に投与された際、新生物及び転移の成長の阻害を増加させることを示す。これらの結果は実施例5に示される。
新生物成長阻害におけるプロラクチンの一日のうちの時間に依存する役割のさらなる確証は、実施例6に示される。この実験においてマウスのプロラクチン血液レベルは、前記実施例5に示される通りプロラクチンに対する新生物成長阻害活性の応答性が欠如する特定の日毎のインターバルの間の、プロラクチン減少剤であるブロモクリプチンの投与により減少し、また、プロラクチンレベルは、プロラクチンに対する新生物成長阻害活性の増加した応答性の、特定の日毎のインターバルを決定するためのプロラクチン増強剤であるメラトニンの投与により増加する。24時間の周期中の、健康なマウスにおいてプロラクチンレベルがピークとなる時間におけるプロラクチン増強剤の投与と、24時間の周期中の、プロラクチンレベルが最も低くなる時間におけるプロラクチン減少剤の投与との組み合わせが、新生物の成長に有効な阻害効果を発揮することが見いだされる。
【0016】
前記結果は、プロラクチンレベルの新生物成長阻害効果、及び外因性プロラクチン(又はプロラクチン増強剤又は減少剤)に対する新生物成長阻害とプロラクチン減少又は増強の1日のうちの時間との関係を示す。
前記実験はマウスにおいて行われたが、それらはヒトを含むプロラクチンの日毎のリズムを有する哺乳類に共通な生理の特徴に依存する。
これらの結果は、プロラクチンの血液レベルは、新生物の成長及びそれらの転移の阻害に関して望ましい結果をもたらすために所定のインターバル内で操作しうることを示す。
本発明によれば、一日のうちの特定の時間における被検者のプロラクチンレベルの変更は、被検者中の新生物の成長を阻害する又は被検者中の転移の成長を阻害する薬剤を提供する。これは、肉腫、悪性腫瘍(carcinomas)、膠芽腫(glioblastoma)、黒色腫、リンパ腫、アデノーマ、及び白血病を含むがこれらに限定されない全てのタイプの新生物について使用することができる。
【0017】
新生物及びそれらの転移を阻害するプロラクチン変調剤の使用 新生物及び/又は転移を有する被検者のプロラクチンリズムの調整
ある種(及び性)の若い成年の健康な哺乳類、例えば(ホルモン性若しくは代謝性疾患、若しくは癌、又は他の感染若しくは疾患のいずれにも苦しんでいない)ヒトは、高度に予想されうる日毎のプロラクチンレベルリズム即ちプロフィールを有していることが知られている。図1の健康なヒトの男性及び女性のベースライン曲線は、このような若く健康な個体に由来するものである。
刺激(血漿プロラクチン)リズムの日毎のピークとプロラクチンに対する応答(新生物成長阻害)との相関係が、新生物成長阻害活性において重要であることが見いだされている。これらのリズムのいずれかに影響する環境的な及び薬剤学的な因子が、新生物成長に打撃を与えることが期待されうる。
【0018】
乳癌等の新生物疾患を有するヒトは、プロラクチンリズムを乱しており、これは健康な女性のプロラクチンリズムの、乳癌を有する女性のリズムとの比較において明らかである。これらのリズムはそれぞれ図1及び3に示されている。従って新生物疾患を有するヒトは、(彼らのプロラクチンプロフィールとして表現される)彼らのプロラクチンの日毎のリズムを調整し、正常即ち図1のベースラインプロラクチン曲線と一致させ若しくは近づけることにより顕著な程度の利益を受けることができる。全ての又は一部の非正常なプロフィールが正しい方向に少なくとも2ng/ml動いた場合、調整されたプロラクチンプロフィールは正常な即ち健康なプロフィールに近づく。
この調節に先立ち、以下のことが達成されうる:(i)新生物を有するヒトのプロラクチンレベルは、新生物を有するヒトの血液試料を24時間の周期のうちの特定の間隔をおいたインターバルにおいてアッセイすることにより確かめられる必要があり、且つ(ii)得られる新生物を有するヒトのプロラクチンプロフィールは、同性の健康なヒトのプロラクチンプロフィールと比較される必要がある。
(i)及び(ii)の間の差異に応じて、調整はさらに以下のうちの1又は両方の投与を含む。
(a)日中(day time)のプロラクチンレベルが高すぎる場合における、1つの、第1の所定の時間(又は1つを超える第1の所定の時間)における、日中のプロラクチンレベルを減少させるのに効果的な第1の量のプロラクチン減少剤;及び(b)夜間のプロラクチンレベルが低すぎる場合における、1つの、第2の所定の時間(又は複数の第2の所定の時間)における、夜間のプロラクチンレベルを増加させるのに効果的な第2の量のプロラクチン増強剤。
【0019】
一般的に、プロラクチンレベルを変化させる物質が投与される場合、プロラクチンレベルが適切な一日のうちの時間の間修正されるようにその物質(その薬動力学特性に依存する)がプロラクチンレベルに影響を与えることを許容するために、投与時間に対する適切なアローワンス(allowance)が設けられる必要がある。従って、プロラクチンを変化させる物質は、以下の通り投与される:
(a)プロラクチンが投与される場合、それは、プロラクチンレベルが上げられる必要がある時間インターバルにおいて、好ましくは注射により投与される;
(b)プロラクチン以外のプロラクチン増強剤が投与される場合、それは、プロラクチンレベルが上げられる必要がある時間インターバルの間もしくはそれに多少先立って投与される(どのくらい先立つかは薬物動力学的特性に依存する:一般的に0−3時間先立つのが効果的であることが見いだされている);
(c)プロラクチン減少剤が投与される場合、それもまた、プロラクチンレベルが下げられる必要がある時間の間もしくはそれに多少先立って投与される(ここでも、一般的に0−3時間先立つのが効果的であることが見いだされている)。
【0020】
本発明において、「プロラクチン増強剤」は、プロラクチン並びに循環プロラクチンレベルを増加させる物質(例えばプロラクチン分泌を刺激することによって)を含む。プロラクチン増強剤の非限定的な例は、プロラクチン;メラトニン;ドーパミンアンタゴニスト例えばメトクロプラミド、ハロペリドール、ピモジド、フェノチアジン、ドムペリドン、スルピリド及びクロルプロマジン;
セロトニンアゴニスト即ちMAO−A阻害剤例えばパルジリン、合成モルヒネ類似物例えばメサドン;制吐剤例えばメトクロプラミド;エストロゲン;及び他の様々なセロトニンアゴニスト例えばトリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)、フルオキセチン(fluoxetine)、及びデキシフェンフルラミン(dexfenfluramine)を含む。さらに、薬剤学的に許容しうる酸から形成された前記プロラクチン増強化合物の非毒性の塩もまた本発明の実施に有用である。メラトニン及び5−HTPは本発明の実施に特に有用であることが見いだされている。
【0021】
プロラクチン減少剤の非限定的な例は、プロラクチン阻害ドーパミンアゴニスト(D2アゴニスト)例えばドーパミン及び特定の麦角関連プロラクチン阻害化合物を含む。ドーパミンアゴニストの非限定的な例は、2−ブロモ−α−エルゴクリプチン;6−メチル−8β−カルボベンジルオキシ−アミノエチル−10−α−エルゴリン;8−アシルアミノエルゴリンであり、6−メチル−8−α−(N−アシル)アミノ−9−エルゴリン及び6−メチル−8α−(N−フェニルアセチル)アミノ−9−エルゴリン;エルゴコルニン;9,10−ジヒドロエルゴコルニン;及びD−2−ハロ−6−アルキル−8−置換エルゴリン例えばD−2−ブロモ−6−メチル−8−シアノメチルエルゴリン;カルビードーパ及びL−ドーパ;及びリスリドである。さらに、薬剤学的に許容しうる酸から形成されたプロラクチン減少化合物の非毒性の塩もまた、本発明の実施に有用である。ブロモクリプチン、即ち2−ブロモ−α−エルゴクリプチンは、本発明の実施に特に有用であることが見いだされている。
【0022】
プロラクチン増強剤又は減少剤により誘導される新生物成長阻害の変調は、ある範囲の用量において用量依存的であることが期待される。
哺乳類の治療において、一般的に、プロラクチン減少剤及び/又は増強剤のそれぞれの用量は、一般的に1日1回、一般的に約1か月から約1年の範囲の期間にわたり、それぞれ与えられる。但し治療は(必要若しくは所望の場合)数か月から数年でも不定的に続けることができる。好ましいプロラクチン減少剤(加速放出ブロモクリプチン)は、体重kgあたり約3マイクログラムから約300マイクログラム、好ましくは約10マイクログラムから約100マイクログラムの範囲の日毎の用量レベルで与えられ、好ましいプロラクチン増強剤のメラトニンは、1日当り体重kgあたり約10マイクログラムから約800マイクログラム、好ましくは約10マイクログラムから約200マイクログラムの範囲の日毎の用量レベルで与えられ、プロラクチンプロフィールを修正又は変更する。他の好ましいプロラクチン増強剤である5−ヒドロキシトリプトファンは、体重kgあたり約500マイクログラムから約13ミリグラム、好ましくは体重kgあたり約1ミリグラムから約2.5ミリグラムの範囲の日毎の用量レベルで与えられる。それぞれの被検者に対する、これらの投与範囲内の正確な用量は特定のプロラクチン変調剤、被検者の年齢、疾患の段階、身体的条件及び治療への応答性に依存する。
【0023】
哺乳類のプロラクチンプロフィールを調整するために、プロラクチン変化物質のいずれか又は両方の投与は、概日血漿プロラクチンリズムを、同性同種の健康な被検者のものの相及び振幅にリセットするのに十分な時間続けることができ、その時点で治療を終了することができる。被検者が再発に苦しむ場合、被検者のプロラクチンプロフィールを調整し同性同種の健康な被検者のプロラクチンプロフィールと一致させまたは近づけるために治療を再開することができる。リセットに必要な時間は様々であるが、一般的には1か月から1年の範囲内である。ある患者(例えば特に弱い身体的条件の患者又は高齢のもの)では、彼らのプロラクチンリズムを前記期間内でリセットするのが不可能であることがあり、そのような患者はプロラクチン増強剤及び/又は減少剤を用いたより長い、又は持続的な治療が必要となるかもしれない。上記の用量及び時間決めの情報は、ブロモクリプチン、メラトニン、及び5−ヒドロキシトリプトファンのために設計されており、他の薬剤のためには、ここに開示される用量及び時間決めの方法論を用いて変更しなければならないであろう。
【0024】
本発明の実施において、プロラクチン減少化合物、及び/又はプロラクチン増強剤は、好ましくは経口で、又は皮下、経静脈又は筋肉内注射により、被検者に日毎に投与される。減少剤又は増強剤は、吸入により投与することもできる。経皮送達システム例えばスキンパッチ、並びに坐剤及び他のよく知られた薬剤の投与システムも用いることができる。治療は一般的にヒトにおいて平均約1月から約1年の間続く。この態様によるプロラクチン減少剤及び又はプロラクチン増強剤の投与は、かくして、新生物成長を阻害する身体の能力を制御する神経振動の相及び振幅をリセットし、新生物の成長の阻害を長期的基準(例えば数か月又は数年)において促進する。新生物の成長を阻害する能力の改善は、新生物又は一次的新生物の切除後の転移的再成長の部分的又は全ての切除の観察により評価することができる。新生物負担を直接測定する代わりに、よく知られた腫瘍負担のアッセイ(例えば新生物特異的抗原のアッセイ、核磁気共鳴イメージング、CATスキャンニング、X線、超音波、血液試料中の血液が運ぶ新生物細胞の計数等)を、プロラクチン変調剤の時間を決めた投与による治療の効果の評価に用いることができる。
【0025】
一般的には、ヒト被検者のためのおよそ26週の治療期間のためのプロラクチン変調剤投与の時間ぎめを最初に決定するために、以下のより具体的なガイドラインに従って行われる。
(i)0600時から1000時に、新生物疾患を有しないヒトにおいて見られる昼間の(diurnal)プロラクチンレベルの正常な範囲の1SEM以内に、昼間のプロラクチンレベルを減少させるのに十分な用量範囲においてプロラクチン減少剤を与える。
(ii)就寝時間前又は就寝時間において、少なくとも新生物疾患を有しない正常で健康なヒトのレベルまで血清プロラクチンレベルを増加させるのに十分な用量範囲においてプロラクチン増強剤を与える。
【0026】
異常なプロラクチンプロフィールを有する哺乳類の被検者(動物又はヒト)のプロラクチンプロフィールをリセットしプロラクチンプロフィールを同種同性の若く健康な者(例えば図1のベースライン)に一致させ又は近づけることによる新生物成長の阻害に対する本発明の特徴は、治療される被検者の(治療前の)異常なプロラクチンプロフィールにより決められる所定の用量及び時間におけるプロラクチン減少剤又はプロラクチン増強剤又は両方の投与を含む。この修正をもたらすのに要求されるプロラクチン減少剤及び/又は増強剤の量は前記と同じ範囲内であるが、これらのプロラクチン変調剤の投与時間は、どのくらい及びいつ異常なプロフィールが正常なプロラクチンプロフィール(ベースライン曲線)と異なっているかを参照して決定される。投与の量及び時間ぎめを決定する方法はまた、我々の共係属中の米国特許出願連続番号第07/995,292号及び1994年6月23日に出願されたその一部継続出願連続番号第08/264,558号に記載されており、これらの両方は参照により組み込まれる。他の方法は、4.8mg/日までのブロモクリプチンを以下の通り与える;始めの7日間のそれぞれにおいて0.8mg/日;第8日目に始まりそれから7日間、1.6mg/日を患者に投与し;第15日に始まりそれから7日間、2.4mg/日を投与し;第22日に始まりそれから7日間、3.2mg/日を投与し;第29日に始まりそれから7日間、4.0mg/日を投与し、第36日に始まりそれから7日間、日あたり4.8mgを連続7日間投与する。好ましい加速放出ブロモクリプチンの投与剤型は、共係属中の米国特許出願連続番号第08/171,897号に開示されており、また参照により組み込まれる。
【実施例】
【0027】
本発明は以下に記載される実施例を参照することにより、さらに説明され、よりよく理解される。これらの非限定的実施例は、本発明の原理の説明のみに考慮される。さらに、数多くの修正及び変更が当業者によって容易になしうるため、本発明を、示され及び説明された厳密な構成及び操作に限定することは望まれない。従って、全ての適切な修正及び均等物が使用でき、本発明及び添付された請求項の範囲内に入る。
【0028】
実施例1:正常及び腫瘍(EMT−6 線維肉腫)を有するマウスにおける血漿プロラクチン
12時間の日毎の光周期において飼育し飼料を自由に摂食させた成年(6−7週令)のBalb/Cマウス(平均体重20gms)に、線維肉腫細胞(EMT−6)を1.7×106個の用量で、後四半部で皮下的に注射した。対照群は、注射されずにおかれた。14から21日後、腫瘍半径が6−9mmの時、注射された及び注射されない対照の群からの動物を光照射開始後時間(HALO)0、4、8、12、16又は20において殺し(群当り時点当りn=6−8)、血漿プロラクチン分析のために血漿を回収した。血漿プロラクチン濃度(図2)を、Dr.A.F.Parlow,Torrance,CAからの、相同的(homologous)マウスプロラクチンRIAキットを用いたラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した。この実験の結果は、新生物を有する哺乳類は、同種同性の健康な、新生物を有しない哺乳類のものに比べて乱れたプロラクチンプロフィールを有することを示す。
【0029】
実施例2:Balb/Cマウス中の腫瘍成長(FMT−6線維肉腫)における時間を決めたプロラクチン注射の効果
成年(6−7週令)のBalb/Cマウス(平均体重20gms)に、1.7×106EMT−6細胞(線維肉腫)を、後四半部で注射し、(生後より)12時間の日毎の光周期中に維持した。接種の翌日、動物を2つの群(群当りn=10)に分け、日毎にヒツジプロラクチン(20μg/マウス)又はビヒクル(対照群)を10HALOに、10日間(実験1)又は14日間(実験2)注射し、腫瘍成長を、腫瘍サイズをカリパスで測定することによりモニターした。結果を以下の表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
*対照に対してp<0.05この実験の結果は、腫瘍を有するマウスへの10HALOにおけるプロラクチン投与は、得られる腫瘍のサイズの減少をもたらすことを示す。健康な、腫瘍を有しないBalb/Cマウスの血漿プロラクチンのピークは8−12HALOにおいて起こる。従って、健康で腫瘍を有しないマウスにおけるピーク血漿プロラクチンの時間の間のプロラクチンの投与は、腫瘍成長の減少をもたらす。
【0032】
実施例3:Balb/Cマウス中の腫瘍成長における時間を決めたプロラクチン注射の効果
成年(6−7週令)の雄のBalb/Cマウスを、概日リズムを乱すために12時間の日毎の光周期から、10日間の持続的な光の下へ移し、その時点でEMT−6腫瘍細胞(1.7×106)を後四半部に注射した。腫瘍細胞の接種に続いて、マウスを7つの群(10マウス/群)に分け、10日間日毎にヒツジプロラクチン(20mcg/マウス)を、コルチコステロン注射後0、4、8、12、16又は20時間のいずれかにおいて注射した。対照群は、処理せずにおかれた。
処理の終わりに、動物を、処理期間中において動物がコルチコステロン注射を受けていた時間の2時間後に暗い期間が始まる、日毎14時間の光周期下に置いた。処理終了2週間後に、腫瘍体積をカリパス測定で決定した。結果を図4に示す。プロラクチン処理による腫瘍成長の阻害が、投与時間に依存することが見いだされた。腫瘍成長の最大の阻害は、8時プロラクチン/コルチコステロン群(即ちコルチコステロン注射8時間後にプロラクチン注射)においてであったことが確認された(8時プロラクチン/コルチコステロン処理マウスにおいて85±15mm3に対し、非処理マウスにおいて350±35mm3;P<0.01)。この実施例は、腫瘍の減少は、光周期不在時においてマウスの概日リズムをセットする誘導されたコルチコステロンピークに対しての、プロラクチンの投与時間に大きく依存することを示す。
【0033】
実施例4:腫瘍を有するマウス中の転移的蔓延における時間を決めたプロラクチン注射の効果
成年(6−7週令)のC57Blackの雄のマウスを、12時間光周期から7日間の持続的な光の下へ移し、その時点でLL−2即ちルイス肺悪性腫瘍細胞(Lewis lung carcinoma cell,1×104/マウス)を肉趾に注射した。マウスは処理期間中持続的な光周期に維持された。腫瘍細胞注射からおよそ3週後、一次腫瘍が半径5−7mmの時に、それを外科的に除去し、マウスを7つの群(5−7マウス/群)に分け、10日間、プロラクチン(20mcg/マウス)をコルチコステロン(20mcg/マウス)の、4、8、12、16又は20時間後に注射した。対照群は、処理せずにおかれた。処理完了後、暗い期間が動物が処理期間中にコルチコステロン投与を受けていた時間の2時間後に始まる12時間の日毎の光周期に動物を置いた。処理終了3日後、マウスを殺し、肺への転移的蔓延を決定した(肺重量により決定)。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
持続的な光周期下の健康なC57Blackマウスにおいては、プロラクチン分泌はコルチコステロンレベルのピークの0時間後にピークとなる。この実験の結果は、ピークコルチコステロンレベル後0−4時間の間、即ち持続的な光周期下の健康なC57Blackマウスにおいてコルチコステロン注射後のプロラクチンがピークとなる(正常なC57Blackプロラクチンプロフィール)のと同じ時間にプロラクチンを注射することにより、腫瘍成長の最大の阻害が達成されることを示す。
従って、同種同性の健康な動物においてプロラクチンレベルがピークとなる、概日サイクル中の同じ時点に行うプロラクチンの時間を決めた投与は、一次腫瘍除去後の転移成長の度合いを顕著に減少させうる。
【0036】
実施例5:Balb/Cマウス中の腫瘍成長(EMT−6線維肉腫)における時間を決めたブロモクリプチン投与の効果
12時間の日毎の光周期の下の成年(6−7週令)の雄のBalb/Cマウスに、後四半部においてEMT−6腫瘍細胞(1.7×106)を注射する。腫瘍細胞接種に続いてマウスを7つの群に分ける(10マウス/群)。3つの群に、日毎に10日間、光照射開始0、12及び20時間後にブロモクリプチン(50mcg/マウス)を注射する。3つの群(対照)は、同時間にビヒクル注射のみを受容する(0、12及び20HALO)。対照群は処理せずにおかれる。処理終了後2週後に、腫瘍体積をカリパス測定にて決定する。腫瘍成長はブロモクリプチン投与により阻害される。ブロモクリプチン処理による腫瘍成長の最大阻害は、光照射開始0時間後にブロモクリプチンを注射されたマウスにおいて起こる。最大プロラクチンレベルは、8−12HALOにおいて起こる。これは、図2に示される健康なBalb/Cマウスのプロラクチンプロフィールと対応する。
【0037】
実施例6:Balb/Cマウス中の腫瘍成長(EMT−6線維肉腫)における時間を決めたブロモクリプチン及びメラトニン投与の効果
成年(6−7週令)の雄のBalb/Cマウスに、後四半部においてEMT−6腫瘍細胞(1.7×106)を注射する。腫瘍細胞接種に続いて、マウスを8つの群に分け(10マウス/群)、日毎に10日間、実施例5において腫瘍成長の最大の阻害をもたらすと決定された時間である0 HALOにおいてブロモクリプチンを注射する(50mcg/マウス)。マウスにはまたメラトニン(40mcg)を、ブロモクリプチン注射後0、4、8、12、16又は20時間後のいずれかにおいて注射する。1つの対照群は処理されずにおかれ、もう1つの対照群はブロモクリプチンのみで処理される。処理終了後2週後に、腫瘍の体積をカリパス測定で決定する。腫瘍成長は、0HALOにおける時間を決めたブロモクリプチンとブロモクリプチン注射の12時間後におけるメラトニン投与の組み合わせによって、ブロモクリプチン単独の時間を決めた投与によるものより、より大きい程度阻害されることが分かる。またメラトニン処理による腫瘍成長阻害の増強は、メラトニン投与時間依存であることが分かる。メラトニンの最大効果は、12HALOにおいてである。なぜならば、これが、一日のうちのプロラクチンが新生物成長に対し最大の阻害活性を示す時間であり、健康な転移を有しないマウスにおけるピークメラトニンレベルの時間でもある時間のプロラクチン放出を刺激するからである。
本発明は、非限定的な例として肉腫、線維肉腫、膠芽腫、悪性腫瘍、黒色腫、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、白血病及び他の新生物症状を含む幅広いスペクトルの新生物疾患を治療するのに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】健康な男又は女のヒトの正常即ちベースラインのプロラクチンプロフィールを図示する。
【図2】移植されたEMT−6腫瘍を有する又は有しないマウスのプロラクチンの日毎のリズム即ちプロフィール曲線である。
【図3】腫瘍を有する乳癌患者のプロラクチンの日毎のリズム即ちプロフィール曲線である。
【図4】コルチコステロン注射により概日リズムをセットされているBalb/CマウスのEMC−6腫瘍の成長における時間を決めた注射の効果を図示する棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における新生物の成長を阻害するための薬剤を製造するためのプロラクチン変調剤の使用であって、
該プロラクチン変調剤は、該哺乳類の概日プロラクチンプロフィールを調整して同種同性の健康な哺乳類の概日プロラクチンプロフィールと一致させ又は近づけるように、24時間周期のうちの所定の時間に該哺乳類へ投与するものであり、
該所定の時間は、24時間周期のうちの間隔をあけた複数の時点のそれぞれにおける前記哺乳類の血液プロラクチンレベルを、該哺乳類と同種同性の健康な哺乳類の日毎のベースラインプロラクチンプロフィールにおける対応する血液プロラクチンレベルと比較して決定するものであり、
前記使用がさらにプロラクチン増強剤の使用を含む、哺乳類における新生物の成長を阻害するための薬剤を製造するためのプロラクチン変調剤の使用。
【請求項2】
ヒトにおいて一致させられるか又は近づけられるべきプロラクチンレベルの日毎のリズム即ちプロフィールは、07:00と22:00との間のほとんど又は全ての時点の間における、男性については7ng/ml血漿、女性については10ng/ml血漿という低いプロラクチンレベルの達成を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
男性については少なくとも10ng/ml、女性については少なくとも15ng/mlのピークプロラクチンレベルが、22:00と07:00の間に達成される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記プロラクチン変調剤が、ドーパミンアゴニストである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記プロラクチン変調剤が、ブロモクリプチンである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記哺乳類の日中のプロラクチンレベルが、間隔をおいた二つの時点において、前記ベースラインプロラクチンプロフィールよりも1SEMを越えて高い、若しくは該哺乳類の日中のプロラクチンレベルが、一つの時点において、前記ベースラインプロラクチンプロフィールよりも2SEMを越えて高い場合に、該哺乳類の前記プロラクチンレベルを、前記プロラクチン変調剤を所定時間に投与することによって調整する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記所定時間が、略05:00と13:00との間である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記哺乳類がヒトであり、前記ブロモクリプチンの投与量が0.8〜8.0mg/日の範囲内である、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記所定時間が略05:00と10:30との間であり、前記ブロモクリプチンの投与量が患者一人当たり0.8〜3.2mg/日の範囲内である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記新生物が、肉腫、線維肉腫、悪性腫瘍(carcinomas)、膠芽腫(glioblastomas)及び黒色腫からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記プロラクチン増強剤が、24時間周期のうちの所定の時間に投与されるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記プロラクチン増強剤がメラトニンであり、前記所定の時間が夜間の略就寝時間である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記哺乳類がヒトであり、前記メラトニンの投与量が10〜800μg/kg/dgの範囲内である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ブロモクリプチンが、略05:00と略10:30との間に、0.8〜8.0mg/日の範囲内の投与量で投与されるものである、請求項5に記載の使用。
【請求項15】
前記プロラクチン増強剤がメラトニンであり、前記プロラクチン変調剤がブロモクリプチンである、請求項1に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−302701(P2007−302701A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215913(P2007−215913)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【分割の表示】特願平9−502286の分割
【原出願日】平成8年6月5日(1996.6.5)
【出願人】(507282130)ザ・ボート・オブ・スーパーバイザーズ・オブ・ルイジアナ・ステート・ユニバーシティー・アンド・アグリカルチュラル・アンド・メカニカル・カレッジ (2)
【出願人】(507247450)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレーション,ドゥーイング・ビジネス・アズ・マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタル (1)
【Fターム(参考)】