説明

哺乳類細胞を刺激する方法及び哺乳類細胞

【課題】哺乳類細胞を刺激する方法及び哺乳類細胞の提供。
【解決手段】本発明は、哺乳類細胞を刺激して、該細胞の、血液脳関門を越え、脳内のβ−アミロイドプラークを貪食及び分解する能力を増強するための方法に関する。本発明はまた、本発明の方法により得られる細胞にも関する。本発明はまた、アミロイド蓄積障害の予防及び治療にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、骨髄、臍帯、造血幹細胞の何れかの供給源又は他の単球系統を由来とする刺激された哺乳類細胞の製造方法であって、脳内のβ−アミロイドプラーク及びβ−アミロイドペプチドを貪食し及び分解するための並びに血液脳関門を通過するためのそれらの能力を高めるための、製造方法に関する。本発明はまた、前記方法により得られる細胞にも関する。本発明はまた、アルツハイマー病等のような、アミロイド蓄積に関連する障害又は疾患の予防及び治療に有用な方法及び物質にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アミロイド蓄積に関連する障害は、ミスフォールドしたタンパク質が蓄積して身体のさまざまな臓器に押し込まれたプラーク様の沈着物であるアミロイドを形成したときに、結果として生じる。これらの疾患には、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、感染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病及び狂牛病等)、II型糖尿病及び家族性及び二次的なアミロイド症(アミロイドーシス)が含まれる。これらの疾患において、アミロイド繊維又はその可溶性前駆体は毒性であり、実験的証拠は、病変組織からのアミロイド又はその前駆体の予防及び/又は除去が治療になることを示唆する。全てのこれらの疾患において、アミロイドオリゴマーはこれらのタンパク質の3ないし200を含む塊であり、長繊維状アミロイドのビルディングブロックとして使用される(Kayed R.等,Science 300:486−9頁(2003);Klein WL等,Trends Neurosci.24:219−24頁(2001)参照のこと)。
【0003】
感染性海綿状脳症(TSE)は、クロイツフェルト・ヤコブ病、クール病、致死性家族性不眠症及びゲルスマン・ストロイスラー・シャインカー(GSS)症候群のようなヒトの障害を含む致死性の神経変性疾患である。TSEの動物型は、羊のスクレピー、鹿及びエルクの慢性消耗病及び牛の牛海綿状脳症を含む。これらの疾患は、脳内において正常なプロテアーゼ感受性のホストにコードされたプリオンタンパク質(PrP−sen)の異常なプロテイナーゼK抵抗性のアイソフォーム(PrP−res)の形成及び蓄積により特徴付けられる。PrP−resは、PrP−senが高いβ−シートの含有率を有するPrP−res凝集体へ転換する立体配座変化を含む翻訳後のプロセスによりPrP−senから形成される。これらのPrP−resの高分子凝集体の形成は、脳内でPrP−resのアミロイドが形成されるTSEを介する脳病変と密接に結び付いており、脳は最終的には“海綿状”になる。PrP−sen及びPrP−resの両方の存在がTSEの発症に必須である。現在TSEは治療不能である。神経増殖阻害ペプチド又はアミロイドの染色剤であるコンゴーレッドの使用は、PrP−resの形成及びスクレピー剤の複製を阻害するが、しかし感染が中枢神経系へ到達した場合、治療的価値を殆ど有さない。固有の毒性もあり、これら及び他の候補薬剤の有用性は非常に限定される。
【0004】
II型糖尿病において、膵島中のアミロイドは、特異な成分としてアミリン(膵島アミロイドポリペプチド、IAPP)を有すが、しかし、一般的及び局部的なアミロイドの他の形態において典型的に観られるアポリポタンパク質E及びヘパリン硫酸プロテオグリカンパールカンのような他のタンパク質を含む。膵島アミロイドは、病理学検査においてII型糖尿病患者の大部分において観察されるが、グルコース代謝の障害を伴わないヒトにおいては殆ど観察されない。ヒトのIAPPは、インビトロ(in vitro)においてアミロイド原繊維を形成し得、全てのヒトの被験者は、IAPPのアミロイド生成性形
態を産生し且つ分泌するが、しかし未だ、全てがアミロイドを発生するものではない。IAPPの発現プロセス及び/又は分泌における変化を生じさせるβ−細胞機能における変化は、ヒトの糖尿病における膵島アミロイド原繊維の初期形成に関与する。このアミロイド原繊維の形成はその後原繊維を含むIAPPの進行性蓄積をさせ得る。アミロイドによるβ−細胞の最終的な置換は高脂血症の進展の原因となる。現在、II型糖尿病患者は、症状及び合併症を減少させるために、食事又は運動療法で或いはインシュリン又はインシュリン放出促進剤により治療されている。有害なアミロイドを除去するための又は損傷した膵臓組織を治療するための治療法は未だ知られていない。
【0005】
アミロイド症は遺伝性の又は二次的なものであり得る。両タイプのアミロイド症の症状は同じである。遺伝性のアミロイド症は、細胞外マトリックス中の不溶性タンパク質原繊維の堆積により特徴付けられる、臨床的に及び遺伝的に異質の群の常染色体優性遺伝性疾患を含む。これらの疾患は、通常、時々硝子体混濁及び腎不全を伴う多発性神経障害、手根管症候群、自律神経不全症、心筋症及び胃腸機能の症状を示す。他の表現型は、腎症、胃潰瘍、脳神経障害及び角膜格子ジストロフィーにより特徴付けられる。まれに、軟髄膜又は脳の構造もまた、臨床像に含まれる。アミロイド原繊維の基本的な構成物は、遺伝的に決定された立体配座変化を介してアミロイド生成性となる生理的なタンパク質である。突然変異トランスサイレチンが遺伝性のアミロイド症における最もありがちな原因である。全身性のアミロイド症は、実質器官における繊維性タンパク質凝集の細胞外堆積により特徴付けられる。更に、神経幹及び神経節を含む如何なる抹消神経系の部分にも関連し得る。同所性肝移植は疾患を緩和し得るが、時間とともにアミロイド症は再び進展する。慢性炎症は二次的なアミロイド症の危険因子である。二次的な全身性アミロイド症は、多発性骨髄腫及び、関節リュウマチ、結核、長期対麻痺、気管支拡張症、嚢胞性線維症、慢性骨髄炎、再発性化膿性(膿汁を含む)皮膚感染症/膿瘍、褥瘡性潰瘍、慢性腎臓透析、若年性慢性関節炎、全身性エリテマトーデス、ライター症候群、強直性脊椎炎、ホジキン病、シェーグレン症候群及びヘアリー細胞白血病のような慢性症状(5年又はそれ以上続くもの)と関連して起こり得る。
【0006】
パーキンソン病は、震え、筋肉の硬直及び平衡と調整の障害により特徴付けられる進行性の神経障害である。化学物質ドーパミンを産生するニューロンの破壊がこれらの症状の根底にある。変性したドーパミン産生ニューロンはまた、レビー小体と呼ばれるタンパク質堆積物に関連する。神経変性におけるレビー小体の機構及び役割は知られていない。しかしながら、パーキンとα−シヌクレインと呼ばれる2種のタンパク質をコードする遺伝子における突然変異体は、別々の珍しい型の遺伝性パーキンソン病に関連し、全てのパーキンソン病患者の脳内に構築されたレビー小体中で観察される。更に、最近の知見は、パーキンが、α−シヌクレインとシンフィリンを含むレビー小体と結合したタンパク質の制御において重要な役割を演じることを示唆している。通常、パーキンは破壊のために他のタンパク質にタグを付けるために、ユビキチンと呼ばれる別のタンパク質を使用する。これらのタンパク質間の相互作用が阻害された場合、パーキンソン病における細胞死を誘導する過程が起きる。パーキンとα−シヌクレインはどちらも、レビー小体関連タンパク質のユビキチン化を含む一般的な発症機序において、シンフィリン−1と関係している。α−シヌクレインは、遺伝的な及び一般的形態のパーキンソン病の双方の核心であり得る。一般的に、パーキンソン病を有する患者は脳内のドーパミン濃度を増加させるか又はアセチルコリン濃度を減少させるかする薬剤で治療されるが、しかし、これらの薬剤は時間と共にその効果を失い、また、疾患の進行に対しては効果が無い。
【0007】
アルツハイマー病(AD)は、脳内の細胞を破壊するアミロイド障害である。該疾患は、認知症、段階的な記憶障害を含む状態、日常的な仕事の達成能力の低下、見当識障害、学習困難、語学力の喪失、判断力の低下及び人格変化の主な原因である。疾患が進行するにつれて、アルツハイマー病患者は自分自身を世話することが出来なくなる。脳細胞の損
失は最終的に身体の他の機序の損傷を導く。アルツハイマー病の進行速度は人によって違う。症状の開始から死亡までの時間は3ないし20年間の範囲である。平均の存続期間は約8年間である。診断は、脳内のβ−アミロイド含有プラーク及び神経原線維のもつれの存在により組織学的に確認される。β−アミロイド前駆タンパク質(APP)から誘導されたβ−アミロイドは、前記疾患において中心的な病因的役割を演じる。健全な脳において、これらの可溶性タンパク質断片は破壊され、排除される。アルツハイマー病において、該断片は蓄積されてオリゴマーを形成し、最終的には、硬い不溶性のプラークを形成する。疾患が病因学的に異質であっても、異なった形態のADで観察される病理組織学的特徴は著しく似ている。AD症例のごく一部は、β−アミロイドの高度に繊維形成性の形態の上昇を加える、APP又はプレセニリン遺伝子における常染色体優性突然変異により引き起こされる。該疾患は散発性事象として起き得るか又はAPP遺伝子含有染色体21のトリプリケーション(ダウン症候群)に起因し得る。更なる遺伝子の複雑性はアポリポタンパク質Eのε4対立遺伝子が遅発性のADの散発性形態の主の危険因子であるという事実により引き起こされる。APPがADにおいてニューロンの脆弱性を増加させる機構は完全には明確ではないが、鎖長において39ないし43残基のペプチドの収集物を構成するβ−アミロイドは多種のオリゴマー形態及び凝集形態を取り得る。β−アミロイドは凝集形態及び可溶形態の両方でニューロンに対して有毒である。現在の主な治療プロトコールは、アルツハイマー病の記憶症状を治療するために2種類の薬剤を含む。承認された最初の特定のアルツハイマー薬はコリンエステラーゼ阻害剤であった。それらは、アルツハイマーの脳中で足りなくなる学習及び記憶に関与する細胞間情報伝達化学物質であるアセチルコリンの脳の供給を一時的に増加させることにより作用する。もう一つの薬剤メマンチンは、別の細胞間情報伝達化学物質であるグルタメートの活性を制御することにより作用する。ある程度のグルタメートが学習及び記憶に必要であるが、多すぎると過剰刺激し及び神経細胞を損傷し得る。メマンチンは過剰のグルタメートの影響に対して脳細胞を保護する。しかしながら、コリンエステラーゼ阻害剤及びメマンチンの何れも疾患の進行の減速又は停止することが出来ず、従って、これらは特定の患者のための一時的な緩和のみを提供するものである。医師はまた、脳細胞傷害の一因である分子活性を減少し得ることからビタミンEをしばしば処方する。しかし、ビタミンEは疾患の進行又は症状における何らかの明確な効果を有することは示されていない。他の薬剤が、興奮、不安、鬱及び不眠のような症状を治療するために処方され得る。アルツハイマー病を治療するための幾つかの新しい戦略が提案されており、それらはα−セクレターゼを増加させること或いはβ−又はγ−セクレターゼ活性又は産生を減少させることの何れかによりβ−アミロイドペプチドの放出を減少するか又は防止することを含む。他の戦略はβ−アミロイド濃度の免疫学的制御を含む。しかしながらこれらのアプローチは脳出血及び脳障害のような重篤な副作用を有することが示されている。
【0008】
たまにルー・ゲーリック病と呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意筋の制御に関与するニューロンを攻撃する、急速に進行する、常に致命的な神経系疾患である。該疾患は、運動ニューロンの緩徐な変性及び死により特徴付けられる運動ニューロン疾患として知られる障害の1群に属する。運動ニューロンは、身体の神経系と随意筋間の制御ユニット及び生命情報伝達リンクとして働く、脳、脳幹及び脊髄中に分布する神経細胞である。脳内の運動ニューロン(上位運動ニューロンと呼ばれる)からのメッセージは脊髄内の運動ニューロン(下位運動ニューロンと呼ばれる)に伝達され、そこから特定の筋肉へ伝達される。ALSにおいて、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が変性又は死んで、筋肉へのメッセージの送付が停止する。機能することが出来ず、筋肉が徐々に弱り、衰弱し(萎縮)及び痙攣(線維束性攣縮)する。最終的には、随意運動を開始及び制御するための脳の能力が失われる。ALSは広範な能力的な障害を伴う衰弱を引き起こす。最終的には、随意調節下の全ての筋肉が影響され、そして患者は、腕、脚及び身体を動かすための体力及び能力を失う。横隔膜と胸壁における筋肉が機能しなくなる場合、患者は人工呼吸器なしでは呼吸する能力が失われる。多くのALS患者はALS症状の開始
から通常3ないし5年以内に呼吸不全で死亡する。ALSの原因は不明であるが、SOD1酵素を産生する遺伝子における突然変異が家族性ALSの幾つかのケースに関与している。この酵素は遊離ラジカルにより引き起こされる傷害から身体を保護する強力な抗酸化物質である。遊離ラジカルは通常の代謝の間に細胞により産生される非常に不安定な分子である。無効化されない場合、遊離ラジカルは蓄積されて細胞内のDNA及びタンパク質に無作為に傷害を起こし得る。未だ、どのようにしてSOD1遺伝子の突然変異が運動ニューロン変性を導くかは明確になっていないが、研究者はSOD1を含むタンパク質凝集物がこの遺伝子の機能不全の結果であり得る遊離ラジカルを蓄積すると説明している。SOD1含有凝集物の毒性はまた、脳内の化学伝達物質又は神経伝達物質の一つであるグルタメートに関係し得る。健常人との比較において、ALS患者は、血清及び髄液中に高濃度のグルタメートを有する。実験室での研究は、グルタメートの過剰量へ長期間にわたって暴露された場合、ニューロンが死んでゆくことを実証した。ALSの治療法は未だ見出されていない。グルタメートの放出減少により運動ニューロンへの傷害を減少すると信じられているリルゾールは、主に飲み込むことが困難な患者において数ヶ月生存期間を延長し得る。リルゾールは、既に傷害された運動ニューロンを回復させず、そして、該薬剤を服用する患者は肝傷害及び他の起こり得る副作用を監視されねばならない。ALSの他の治療法は症状を緩和するため及び患者の生活の質を改善するために設計される。
【0009】
ハンチントン病は、不随意運動(舞踏病)、認識衰退及び精神医学的兆候により特徴付けられる、進行性の、常染色体の、優性遺伝性の神経変性疾患である。これは、類似の生化学的基盤でも起こり得る伸張したグルタミンリピートにより起こされる多くの遅発性の神経変性疾患の一つである。免疫組織化学的な研究により、濃染ニューロン核、核周囲中における及びジストロフィーのニューロン過程中におけるニューロン含有物が同定されてきた。しかし、含有物の機能的重要性は知られていない。ハンチントン病(及び他のポリグルタミン障害)における疾患発生の機構は、非常に安定な逆平行ベータシート;より特にはアミロイド構造の形成を導き得るポリグルタミンの立体構造変化を受ける能力であることが示唆されてきた。ハンチントン病の脳組織中の幾つかの含有物は、アルツハイマー病及びプリオン病のような他のアミロイド関連疾患との類似性が示唆されるアミロイド様構造を示す。ハンチントン病のための治療法は存在せず、また、該障害の進行を停止する方法も知られていない。治療は進行を遅くすること及びできるだけ長く機能する能力を最大化することを目的とする。薬剤は症状に依存して異なる。ハロペリドールやフェノチアジン薬剤のようなドーパミン阻害薬は、異常な行動及び動作を減少させ得る。レセルピン及び他の薬剤は、効果がまちまちで使用されている。テトラベナジン及びアマンタジンのような薬剤は余分な動作を制御するための試みにおいて使用されている。コエンザイムQ10が疾患の進行を最小限に減少し得ることを示唆する幾つかの証拠が存在する。認知症の対症療法は器質脳症候群の何れにも用いられるものと同様である。
【0010】
全てのアミロイド関連疾患の一つの一般的特徴は、ミクログリア細胞の活性化及び増殖として発現する脳内の炎症である。ミクログリアは脳の食細胞である(Neuroscience.第2版Purves,Dale;Augustine,George.J.;Fitzpatrick,David;Katz,Lawrence.C.;LaMantia,Anthony−Samuel.;McNamara,James.O.;Williams,S.Mark,編者Sunderland(MA),第1章:Sinauer Associates,Inc.2001;Cuadros and Navascues,Prog Neurobiol 56:173−189(1998))。ミクログリアは脳内の全ての非ニューロン細胞の少ないパーセンテージを構成し、それらは一般に正常な脳内で分化、休止状態にある。活性化された場合、それらはアメーバー形態を獲得し、炎症及び貪食作用に関与する種々の受容体及び他の分子を産生する。活性化されたミクログリアはアミロイド関連脳疾患においてアミロイドと会合して、変性脳領域においてミクログリアの総数及び活性は強力に増加される。アミロイド関連疾患の進行におけ
るミクログリアとアミロイド又はニューロン死の関係は未だ明らかではない。ミクログリアの活性化を阻害する特定の化合物が脳のアミロイド症の動物モデルにおいて疾患の進行を遅くすることが報告されている。加えて、同様にミクログリアの活性化を阻害するイブプロフェンのような特定の抗炎症剤の使用は、アルツハイマー病の特定の型の罹患率を減少させる。一方、アルツハイマー病の動物モデルにおいて、β−アミロイドに対する抗体及び腫瘍増殖因子−β遺伝子の過剰発現はアミロイドプラーク周囲のミクログリアを活性化し、結果としてβ−アミロイド貪食作用及びクリアランスを生じる(Janus,CNS Drugs 17:457−474(2003))。更に、インビトロにおいて、マクロファージコロニー因子又はリポ多糖類によるミクログリアの活性化は食細胞特性を誘発し、また、ミクログリアのリポ多糖類誘発の活性化は同様にβ−アミロイドのクリアランスと並行して起こる。しかしながら、インビボ(in vivo)において、ミクログリアがリポ多糖類の活性化後のβ−アミロイドクリアランスに関与することの証拠は何も提供されていない(Mitrasinovic O.M.等,Neurosci lett.344:185−188(2003);DiCarlo G.等,Neurobiol.Aging 22:1007−1012(2001);Abd−Basset & Federoff,J.Neurosci.Res. 41:222−237(1995))。Mentlein,R.等Journal of Neurochemistry,70:721−726(1998)。マックギール,P.等(McGeer,P.等)(Science of Aging Knowledge Environment 27.29頁(2004))はβ−アミロイドのワクチン接種がミクログリアのβ−アミロイド貪食作用の活性化を導くことを開示する。
【0011】
近年、骨髄由来細胞がアルツハイマー病のAPP−PS1ダブルトランスジェニックマウスの脳内に入り込むことが示されている(T.Lappetelainenn,M.Koistinaho,T.Vatanen,A.Okada,S.Karlsson,J.E.Koistinaho.BONE MARROW DERIVED CELL MIGRATE INTO THE BRAIN OF APP−PS1 DOUBLE TRANSGENIC MICE OF AZHEIMER´S DISEASE.Program 945号.4.2003 Abstract Viewer/Itinerary Planner.Washington,DC:Society for Neuroscience,2003.オンライン)。β−アミロイドと会合した細胞の幾らかが、疾患進行の間に補充された血液由来細胞かどうかを調査するために、21月齢のAPP−PS1ダブルトランスジェニックマウス(n=4)及びその野生型の対照(n=4)に致死的な放射線を照射し(550cGy2回、3時間間隔)、翌日、6ないし8週齢のeGFP過剰発現マウスから単離した骨髄を移植した。骨髄(BM)を移植生着する及び新しい血液細胞を産生する骨髄由来細胞の能力はフローサイトメトリーを用いて移植4週間後に解析された。異なった脳部位におけるeGFP陽性細胞の数及びそれらのβ−アミロイドプラークに対する分布が移植4週間後に解析された。
【0012】
BM細胞移植を介した全てのマウスが生き残った。フローサイトメトリー解析は、MAC−1陽性血液細胞の75%がeGFP蛍光を発したことを示した。脳に浸潤したBM細胞の数は、APP−PSIトランスジェニックマウス及び対照マウスで同じであった。APP−PSIマウスにおいて、eGFP陽性細胞の幾らかはβ−アミロイドプラークと会合するが、BM由来細胞が脳内へ連続的に浸潤してアルツハイマー病におけるβ−アミロイドプラーク病変の一因となることを示唆する。しかし、移植されたeGFP陽性BM由来細胞は血液脳関門を介する移行の増加を示さなかった。β−アミロイドプラークと会合したeGFP陽性BM細胞はβ−アミロイドプラークを貪食できるものでもなく、また、分解できるものでもないことが示された。
【0013】
国際公開第0204604 A2号パンフレットはヒトの未発達のミクログリアの特徴
を有する、遺伝子組み換え不死化ヒトミクログリア細胞系を記載する。該細胞系はインビトロにおいて実証可能な貪食作用特性を有し、細胞内発現のための外因性遺伝子をコードする少なくとも1種のDNA断片を有するウイルスベクターを含むために、遺伝子組み換えされたヒトゲノムDNAを含む。国際公開第0204604 A2号パンフレットはミクログリア細胞が血液脳関門を迂回して脳内に薬剤を輸送することが可能であると推察しているが、それを実施するためのデータを何ら提供していない。前記ヒト細胞系の貪食作用能はインビトロにおいてラテックスビーズ又は炭素粒子に曝すことにより実証されるが、その際、前記細胞はラッテクスビーズ又は炭素粒子を取り込む。アミロイドプラーク等における貪食作用能は全く実証されなかった。その代わりに、国際公開第0204604
A2号パンフレットは、炎症剤又はアミロイドプラークを用いた刺激で毒性分子の放出を実証し、これらの細胞が脳内においてニューロン傷害を誘発し得るとみなしている。重要なことは、これまでの調査は、国際公開第0204604 A2号パンフレットにおける請求項をサポートするためにも用いられたヒトミクログリアが、特にアミロイドを分解できるわけではないことを実証していることである(Bard et al.,Nat Med.6:916−919(2002)及びRogers 等,Glia.40:260−269(2002))。
【0014】
欧州特許公開第0949331号明細書は、脳に特異的な親和性及び貪食作用能を有するマウスからの確立されたミクログリアの細胞系を開示するが、該細胞系はIL−1及びIL−16のような神経毒性分子を放出することが示されている。更に、記載された該細胞系は脳組織由来である。これらの細胞の脳への移行は、肝臓への移行とのみ比較されているため、この細胞系が実際に脳に特異的な親和性を有するかどうかは不明である。加えて、注入後の評価された最も遅い時点は3週間であり、肝臓と脳間の組織浸潤における差異は、より長い追跡時間後に失われ得ることを示唆する。更に、例え欧州特許公開第0949331号明細書において確立された細胞系が一般的に貪食能を有していたとしても、これらの細胞がインビボにおいてアミロイドを貪食及び分解し得ることを示唆するものではない。
【0015】
しかし、治療の発展のためのヒトの胚細胞の使用は、米国や多くの他の西欧諸国において合法的でないか又は倫理的に承認されてさえいず、ヒト新生児からの細胞の利用は同様の倫理的な問題を有する。同様に、治療のために利用される細胞の供給源としての脳組織は倫理的及び技術的の両方において非常に困難且つ複雑である。従って、容易に入手できてリスクを伴わない、成体個々に、特に成体(抹消)組織に由来する細胞への及びβ−アミロイドのようなアミロイドを貪食する能力を有する細胞への要求が存在する。好ましくは、前記細胞は脳内で作用し得るように血液脳関門を越えることができるべきである。ミクログリアはβ−アミロイド抗体で刺激した後しか脳由来アミロイドを貪食できないため、ミクログリア細胞の使用は避けるべきである。更に、ミクログリアは脳から精製されることを必要とし、これは、移植のために得られる細胞数を制限し、また、不純物(他の細胞集団のような)の危険性を包含する。更に、活性化されたミクログリアは非常に活性な神経毒を放出することが報告されている。
【特許文献1】国際公開第0204604 A2号パンフレット
【特許文献2】欧州特許公開第0949331号明細書
【非特許文献1】Kayed R.等,Science 300:p.486−9(2003)
【非特許文献2】Klein WL 等,Trends Neurosci.24:219−24頁(2001)
【非特許文献3】Neuroscience.第2版、Purves,Dale;Augustine,George.J.;Fitzpatrick,David;Katz,Lawrence.C.;LaMantia,Anthony−Samuel.;McNamara,James.O.;Williams,S.Mark,編者Sunderland(MA),Chapter1:Sinauer Associates,Inc.2001
【非特許文献4】Cuadros and Navascues,Prog Neurobiol 56:173−189(1998)
【非特許文献5】Janus,CNS Drugs 17:457−474(2003)
【非特許文献6】Mitrasinovic O.M.等,Neurosci lett.344:185−188(2003)
【非特許文献7】DiCarlo G.等,Neurobiol.Aging 22:1007−1012(2001)
【非特許文献8】Abd−Basset & Federoff,J.Neurosci.Res. 41:222−237(1995)
【非特許文献9】Mentlein,R.等Journal of Neurochemistry,70:721−726(1998)
【非特許文献10】マックギール,P.等(McGeer,P.等)Science of Aging Knowledge Environment 27.29頁(2004)
【非特許文献11】T.Lappetelainenn,M.Koistinaho,T.Vatanen,A.Okada,S.Karlsson,J.E.Koistinaho.BONE MARROW DERIVED CELL MIGRATE INTO THE BRAIN OF APP−PS1 DOUBLE TRANSGENIC MICE OF AZHEIMER´S DISEASE.Program 945号.4.2003 Abstract Viewer/Itinerary Planner.Washington,DC:Society for Neuroscience,2003.オンライン
【非特許文献12】Bard 等,Nat Med.6:916−919(2002)
【非特許文献13】Rogers 等,Glia.40:260−269(2002)
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
本発明の目的は組織内にアミロイドが蓄積する障害を治療するために有用な新規な方法及び物質を提供することである。本発明は、骨髄、臍帯、造血幹細胞の何れかの供給源又は他の単球系統を由来とする哺乳類細胞を、組織中のβ−アミロイド又はその構成物、例えば、β−アミロイドプラークを分解することが出来る貪食作用刺激形態へ変換するための方法を提供する。好ましくは、前記細胞は非胚由来のものである。更に、刺激された細胞は血液脳関門を越えることができ、脳組織又は神経組織のような組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解することが出来る。これらの細胞は更に障害の予防及び/又は治療のために使用され得、例えば、それらは、アルツハイマー病等のような、組織中にアミロイドが蓄積する、またそれらの分解又は除去が望まれる障害又は疾患を患った患者に注射することができる。
【0017】
細胞を刺激することは、前記細胞に食細胞応答を引き起こして前記細胞を組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解することが出来る貪食形態へ変換させる薬剤を用いて前記細胞を処理することにより達成される。前記応答は比較的早く、細胞を刺激した後3ないし7日以内に始まり、また、β−アミロイド病変により自然に増強されるが、β−アミロイドを含む脳部位のような疾患組織中へ骨髄細胞の移行が増加させる。加えて、刺激された細胞は脳内のニューロンを傷害しない。
【0018】
本発明の利点は、アミロイドを変化させるか又はβ−アミロイドの分解を引き起こして、毒性のアミロイドタンパク質から脳を保護することをしない現状の治療プロトコールと比べて、アミロイド蓄積障害を予防及び治療するための新規な効果的及び特異的な方法を提供する。脳内のβ−アミロイドレベルを減少させることにより、本発明はアミロイド蓄積の進行である主な組織病変を減速する。本発明で記載される治療は安価であり、比較的容易に実施される。
【0019】
本発明の更なる利点は、脳脊髄液への投与により刺激処理が中枢神経系の内部に与えられ得るので、本発明の細胞の移行が高い相対的な組織選択性を有することである。この組織選択性は、骨髄細胞等の全身性刺激により引き起こされる可能な副作用を防止する。
【0020】
本発明の更なる利点は、本発明の細胞が、拒絶の危険性の無い個々人自身の細胞を使用することを可能とする、同種由来又は自己由来の何れかであり得ることである。
【0021】
別の利点は、本発明の移植細胞が、本発明の細胞ほど効果的に貪食活性に応答せず、代わりに免疫的刺激における神経毒性分子を放出し得る内因性の脳ミクログリアとは異とする独特な性質を有することである。
【0022】
更なる別の利点は、本発明の細胞が、骨髄、臍帯、造血幹細胞のような非胚組織由来であり得、そのため倫理的又は技術的困難無しに使用できることである。
【0023】
ミクログリアのような脳由来細胞と比べて更なる別の利点は、本発明の細胞が移植を実施するに十分多量で入手できることである。
【0024】
本発明の一つの局面は、組織中のアミロイド又はその構成物を分解できる、刺激された骨髄細胞、臍帯細胞、造血幹細胞又は他の単球系統を由来とする細胞の製造方法に関する。
【0025】
本発明の別の局面は、前記方法により得られた刺激された細胞に関する。
【0026】
本発明の更なる別の局面は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、感染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病及び狂牛病等)、II型糖尿病及び家族性及び二次的なアミロイド症(アミロイドーシス)のようなアミロイド蓄積障害の治療のための医薬として使用するための本発明の前記刺激された細胞に関する。
【0027】
本発明の更なる別の局面は、アミロイド蓄積障害の治療のための本発明の前記細胞の使用に関する。
【0028】
本発明の更なる別の局面は、アミロイド蓄積障害の治療のための方法に関する。
【0029】
本発明は今、添付された図及び実施例を参照して詳細に説明される。これらの実施例は態様の幾つかを示すためにのみ使用され、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は以下に詳細に記載される。記載は同封の図を参照するが、ここで
【図1A】図1のグラフ(A)は、健康な野生型(WT)と比較した場合、ADのトランスジェニック(TG)マウスモデルにおいて移植された骨髄細胞の脳内の移行がどのように増加されるかを示す。
【図1B】幾らかの緑色の蛍光を発したBM−由来細胞(矢印)はAβ(赤色の蛍光を発する)堆積物と会合していた(B)。スケールバーは50μMである。
【図2A】図2は、LPS、M−CSF又はSDF−1α処理後のBM細胞の移行、活性化及び貪食作用活性を示す。ADマウスが、LPS、M−CSF又はSDF−1α処理と一緒にBM移植を受けた場合、移植された骨髄細胞の脳内への移行は、約10倍増加し(A、蛍光発光領域=蛍光を発したBM細胞によりカバーされた脳領域)、
【図2B】結果としてADのトランスジェニックマウスモデルの脳内でβ−アミロイド(Aβ)の分解(クリアランス)が生じる(B、免疫反応性領域=Aβ免疫反応物質によりカバーされた脳領域)。
【図2C】MHCII−免疫反応性BM細胞の密度は、LPS又はSDF−1α処理の後に大幅に増加する(C、免疫反応性領域=MHCIIのための免疫反応性を示す脳領域)。
【図2D】同様に、Aβ堆積物と会合したBM由来細胞の数はLPS処理の後に増加した(D)。
【図2E】LPS、M−CSF又はSDF−1αで処理されたBM細胞の増加した貪食作用活性(E)。
【図3】図3は、Aβ−免疫反応性がLPS処理後にeGFP陽性BM細胞内に共局在されることの共焦点顕微鏡による実証を示し、これらの細胞の貪食活性の誘発を示唆する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
刺激される本発明の哺乳類細胞は、何れかの好適な単離方法で、ヒト、げっ歯類又は他の種のような如何なる好適な哺乳類種からも得られ得る。該細胞は、骨髄、臍帯、造血幹細胞の何れかの供給源又は他の単球系統のような如何なる好適な供給源をも起源とし得る。一般的に前記骨髄細胞は造血幹細胞である。組織内で観察されるミクログリア細胞又は他の十分に分化した骨髄由来細胞は本発明の範囲に含まれない。本発明の方法において、細胞は如何なる好適な方法においても刺激され得る。一つの例は、前記細胞の貪食形態への変換を引き起こす化学的又は生化学的な薬剤と接触させることによる前記細胞の処理である。活性化された細胞はアミロイド又はその構成物を分解することができ、また、脳血液関門を越えることができる。
【0032】
本発明は、刺激された哺乳類細胞の製造方法であって、
組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解できる貪食作用形態へ前記細胞を変換する応答を前記細胞上で引き起こすために、貪食作用刺激剤を用いて前記細胞を処理することにより前記細胞を刺激することを含む方法を提供する。
【0033】
本発明はまた、刺激された哺乳類細胞であって、
組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解できる貪食作用形態へ前記細胞を変換する応答を前記細胞上で引き起こすために、貪食作用刺激剤を用いて前記細胞を処理することにより刺激された細胞を提供する。
【0034】
ここで用いられた“細胞の貪食作用刺激”は化学的及び生化学的処理のような如何なる処理も言及するが、該処理はインビトロ又はインビボにおいて前記細胞に施され、前記細胞上又は内部に直接作用し、及び、明細書中に記載されたように、結果としてβ−アミロイド堆積物等に対するこの特定の細胞の免疫学的な貪食作用の活性化が生じる。
【0035】
一つの態様において、前記細胞は実質的に未分化である。ここで使用される“実質的に未分化である”細胞は、組織のマクロファージ、クプファー(Kuppfer)細胞、ミクログリア細胞等へ十分に分化していない細胞を言及する。そのような細胞の限定されない例は、上記のような骨髄細胞、臍帯細胞、造血幹細胞の何れかの供給源又は何れかの他の単球系統由来の細胞である。例えばミクログリア細胞が除かれる。
【0036】
一つの態様において、前記細胞は骨髄細胞又は骨髄由来細胞である。ここで用いられる“骨髄細胞”又は“骨髄由来細胞”は哺乳類由来の骨髄細胞、骨髄由来細胞又は他の造血幹細胞(HSC)を言及するが、この細胞は赤色骨髄又は身体の何れかの他の好適な組織由来であり、これらは、発生学的に同一の細胞起源である。好ましくは、前記細胞は実質的に未分化である。十分に分化したミクログリア細胞、マクロファージ、クプファー(Kuppfer)細胞等は、骨髄を起源とする骨髄性前駆細胞由来であるとはいえ、これらの単球系系統の特定の細胞は十分に分化し、また、未分化の骨髄由来細胞と同程度には組織に浸入しないため、それらは“骨髄由来細胞”の定義から除かれる。ミクログリアのようなこれらの分化された細胞が除かれる別の理由は、β−アミロイド堆積物が特異的且つ特定のβ−アミロイド抗体でオプソニン化されない限り、該細胞がイクスビボ(ex vivo)又はインビボ(in vivo)でβ−アミロイド堆積物(該形態においてそれらは組織中に存在する)を分解しないことである。更に、移植された骨髄細胞は十分に分化したミクログリア細胞とは異なり、移植後数ヶ月でも免疫学的及び貪食特性を維持する。
【0037】
一つの態様において、前記細胞は臍帯細胞である。更なる別の態様において、前記細胞は造血幹細胞又は何れかの単球系統由来の細胞である。発生学的に同一の起源、同一の細胞特性及び機能特性、及び類似の形態学的表現型のため、臍帯細胞と何れかの起源の造血幹細胞は、該明細書中の殆どの実施例で使用されている骨髄細胞に等しいと考えられる。全ての前記細胞は本発明において実質的に同じ効果及び挙動を有する、即ち、骨髄細胞においてここで述べられたことは、臍帯細胞又は造血幹細胞においてもまた同様である。
【0038】
一つの態様において、細胞の刺激はインビトロで行われる。別の態様において、刺激される前記細胞は患者に投与され、前記刺激剤の何れかが細胞と別々に又は一緒に投与される。
【0039】
一つの態様において、前記貪食作用刺激剤はリポ多糖類(LPS)を含む。ここで用いられる“リポ多糖類”はグラム陰性菌の細胞壁の主な構成物又は何れかの他の菌の内毒素をも言及する。リポ多糖類は、例えば、菌等から如何なる好適な純度にも単離及び精製するか又は合成することができ、最終的には、何れかの好適な濃度及び純度においても投与され得る。
【0040】
別の態様において、前記貪食作用刺激剤はマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)を含む。ここで用いられる“マクロファージコロニー刺激因子”は70kDの糖タンパク質ダイマーを言及するが、これは高親和性の受容体の単クラスに結合して、委任造血細胞を増殖及び成熟させて単球マクロファージ系の貪食細胞とする成長因子である。M−CSFは何れかの哺乳類又は他の種を起源とされ得、好適な純度に単離又は合成され得る。
【0041】
更なる別の態様において、前記貪食作用刺激剤は間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)を含む。ここで用いられる“間質細胞由来因子−1α”は7.9kDのタンパク質、ケモカイン受容体CXCR4に結合するCXCケモカインを言及する。SDF−1αは骨髄由来細胞の化学誘引物質である。SDF−1αは何れかの哺乳類又は他の種をも起源とされ得、好適な純度に単離又は合成され得る。更なる別の態様において、前記貪食作用刺激剤の2種以上の組み合わせが使用される。
【0042】
ここで用いられる用語“哺乳類”は、げっ歯類(アレチネズミ、ラット、マウス等)、大型動物(牛、羊、馬等)、娯楽動物(犬及び猫を含む)及び霊長類(旧世界ザル、新世界ザル、類人猿、ヒト等を含む)を含む哺乳動物種の如何なる個体をも言及する。別の態
様において、前記哺乳類は、ヒト、マウス又はラットである。
【0043】
一つの態様において、前記組織は脳組織又は神経組織である。
【0044】
本発明はまた、医薬として使用するための前記刺激された細胞を提供する。更に、本発明はまた、前記医薬又は医薬組成物、前記細胞の使用、並びに、組織中のアミロイド又はその構成物の分解が望まれるアミロイド蓄積障害を治療又は予防する方法を提供する。一般に前記刺激された細胞の医薬的有効量がそれを必要とする患者に投与され得る。一つの態様において、該細胞は脊髄液へ投与するよう適応される。
【0045】
ここで用いられる“アミロイド蓄積障害”は何れかの組織においてアミロイド原線維として知られる安定で、高度に組織化されたタンパク質凝集物を蓄積することが知られている如何なるヒト又は他の哺乳類の障害又は疾患をも言及する。幾つかのアミロイド蓄積疾患は本明細書中で実施例を用いて記載されるが、しかしそれは、本発明の範囲を制限するものとして考慮すべきではない。そのような障害を予防又は治療するために、組織中の前記凝集物を分解することが望まれる。
【0046】
本発明に従った細胞は注射又は注入のような、本技術分野で公知の如何なる好適な方法によっても患者へ投与し得る。注射は、脊髄液、硬膜上、皮下、皮内、腹腔内、静脈内、動脈内又は脳組織のような如何なる組織中へも施され得る。治療される患者は、上述のような如何なる哺乳類でもあり得、好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、感染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病及び狂牛病等)、II型糖尿病及び家族性及び二次的なアミロイド症(アミロイドーシス)のようなアミロイド蓄積障害を患ったヒトである。投与される細胞の量は、医師のような当業者により容易に決定し得る。如何なる好適な医薬的に許容されるキャリア又は組成物も本発明の細胞と一緒に投与され得る。
【0047】
以下に示す実施例において、3種の異なった薬剤、リポ多糖類(LPS)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)及び間質細胞由来因子−1α(SDF−1α)は骨髄細胞のための貪食作用刺激剤として使用された。健全な対照マウスと比較した場合、3種の薬剤全てについて、骨髄細胞の顕著なそして類似の刺激が検出された。インビトロの実験は、LPS、M−CSF及びSDF−1αが骨髄細胞によるβ−アミロイド分解を増強することを示した。同様に、インビボの実験が、どのように刺激剤の組織特異的な注射が前記組織中の骨髄細胞の量を増加するかを示すために実施された。ここに含まれない実験もまた、同様の効果が、同じ刺激物質を用いることにより臍帯細胞又は造血細胞を用いて達成されたことを示した。
【0048】
キメラのマウス/ヒトベクターを発現させたトランスジェニックADマウスを用いて実施された実験において、骨髄細胞が血液脳関門を越え得ることがまた示された。同様に、β−アミロイド堆積物は前記細胞を該堆積物の近接近へ誘引する。
【0049】
以下に示す実施例及び結果は説明的な方法においてのみ本発明を実証するために提供されるものであり、それらは本発明の範囲を制限するものとして考慮されるべきではない。使用される刺激剤及び細胞の量は、単に例示的であり、細胞、薬剤又は治療される患者に依存し得る。当業者は本分野で周知の方法で適正量又は投与量を特定し得る。
【実施例】
【0050】
実施例1.トランスジェニックアルツハイマーマウスへのBM細胞の移植及びアルツハイマーマウスの脳に移植されたBM細胞の移植生着の増加
トランスジェニックマウス
使用したマウスは、どちらもそれら自身のマウスプリオンタンパク質プロモーター要素により制御された、キメラのマウス/ヒトAPPswe及びヒトPS1−dE9ベクターの共注入により生み出された(Jankowsky 等,Hum Mol Genet.13:159−170(2004)))。該ダブルトランスジェニックマウス(APPdE9)は6世代にわたって、C57BL/6J種と戻し交配された。本研究において、全部で2.5月齢の雌APPdE9トランスジェニック5匹及び年齢を適合させた野生型の対照5匹が使用された。強化GFP(eGFP)を過剰発現させたマウス(Okabe 等,FEBS Lett.407:313−319(1997))をジャクソンラボラトリー(米国、メイン州)から購入し、フィンランド国クオピオ国立保険所の動物施設(Animal Facilities of the National Public Health Institute in Kuopio,Finland)においてC57BL/6J種中に維持した。全ての動物実験は、国立衛生研究所(NIH)の実験動物の世話と使用のためのガイドラインに従って実施され、フィンランド国クオピオ大学国立研究所動物センター(National Laboratory Animal Center,University of Kuopio,Finland)の倫理委員会により承認された。
【0051】
骨髄移植
APP+PS1及びAPPdE9ダブルトランスジェニックマウス及びそれらと年齢を適合させた野生型の対照は、線量率2.37Gy/分で、3時間の間隔をおいて、550cGyの2つの線量で致死的な放射線が照射された(バリアン(Varian)600C放射線治療用加速器、4MV高エネルギーX線)。1cm厚の特注ポリメチルメタクリレートルーサイト光束スポイラー(散乱体)を十分な表面線量を確保するために使用した。照射されたマウスは翌日、尾静脈注射によりBM細胞(5×106細胞)が移植された(
Priller 等,Nat Med.7:1356−1361(2001))。BM細胞は、以前記載されたもの(Kennedy及びAbkowitz,Blood 90:986−993(1997))と同様のプロトコールにおいて、ウシ胎児血清10%を含むハンクの平衡塩溶液(Hank´s balanced salt solution)(バイオウィットテイカーヨーロッパ(Bio Whittaker Europe)、ベルギー)で大腿及び頸骨をフラッシングすることにより6ないし8週齢のドナーeGFP過剰発現マウスから単離された。全ての移植されたマウスは事後の期間を通して生き残り、BM細胞の移植生着が成功したことを示した。
【0052】
抹消血液細胞におけるeGFP発現のフローサイトメトリー解析
BMを移植生着させ及び新しい血液細胞を産生するBM細胞の能力は、二重レーザーフローサイトメーター(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、マウンテンビュー(Mountain View)、米国、カルフォルニア州)を使用して移植8週間後に解析した。血液試料が集められ、以下の抗体で染色された:顆粒球を検出するためのPE縮合Ly−6G、単球を検出するためのPE標識CD11b、T細胞を検出するためのPerCP標識CD3e及びB細胞を検出するためのPerCP標識CD45R/B220(全てBDバイオサイエンス(BD Bioscience)社製、米国、ニュージャージー州)。簡単に、血液試料は大腿静脈からヘパリン化されたエッペンドルフチューブへ集められた。血液50μLが氷上のブロックされたマウスIgG1抗体(シグマ(Signa);10μg/mL)の存在下で上記の抗体と30分間インキュベートされた。該細胞は遠心分離され、pH7.4のNH4Cl 150mM、KHCO3 10mM、EDTA 0.1mMで溶解された。2%FBS(ギブコ(Gibco)、BRL/ライフサイエンス(BRL/LifeScience))を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄された後、細胞はPBS/2%FBS中に再懸濁され、FACS解析のため2%ホルマリンで固定された。データはセルクエスト(登録商標:Cellquest)ソフトウェアを用いて評価された(BD イムノサイトメトリーシステムス
(BD immunocytometry systems)米国、カルフォルニア州)。CD11b陽性の末梢単球の90%以上がeGFP蛍光発光することが観察されたが、これは移植されたBM細胞による内因性単球細胞の置換が成功したことを示唆する。
【0053】
表1は、移植されたeGFP陽性骨髄細胞が受容マウスの骨髄に移植生着することができ、フローサイトメトリーで解析されたような種々の血液細胞を産生できることを示す。表は、3つの移植実験において、単球(CD11b)、顆粒球(Ly6G)、B細胞(CD45/B220)及びT細胞(CD3e)からのeGFP陽性細胞のパーセンテージを示す。値は、平均値±標準誤差(SEM)として示した。
【表1】

表1:移植生着解析:異なった血液細胞型からのeGFP陽性細胞のパーセンテージ
【0054】
eGFP陽性細胞及び脳の組織像の解析
移植後26週に、マウスはペントバルビタールで麻酔され、生理食塩水で経心臓的にフラッシュされ、続いて4%パラホルムアルデヒドでかん流された。脳は除去され、4℃で12時間同じ固定剤中に浸されることによりポストフィックス(postfixed)された。3日間30%ショ糖中での凍結防止の後、該脳は液体窒素中で凍結された。免疫組織化学のために、10μm厚の冠状低温切開片が使用された。異なった脳部位におけるeGFP陽性細胞の数及びAβに対するこれらの分布がヒトAβに対する抗体を用いて免疫組織化学的に解析され(クローン6E10、希釈1:1000、シグネットラボラトリーズ(Signet Laboratories)Inc.,米国、マサチューセッツ州)、蛍光入りの適当なフィルター(オリンパスAX70、オリンパス、米国、ニューヨーク州)又はレーザーシャープ(LaserSharp)2000ソフトウェア(Bio−Rad Microscience Ltd)を稼動する共焦点顕微鏡(BioRad Radiance Laser Scanning Systems 2100、Bio−Rad Microscience Ltd、英国、ハートフォードシャー州)で緑色蛍光細胞を視覚化した。蛍光でのヒトAβの検出のために、Alexa Fluor568−標識二次抗体(Molecular Probes、ユージーン(Eugene)、米国、オレゴン州)を使用した。光学顕微鏡での視覚化のために、ビオチン化ウサギ抗マウスIgG(Vector Laboratories Inc.,バーリンガム、米国、カルフォルニア州)続いてアビジン−ビオチン複合体(Vectastain Elite kit、Vector Laboratories Inc.,バーリンガム、米国、カルフォルニア州)でインキュベーションし、基質としてジアミノベンジジン(DAB)又はニッケル増強ジアミノベンジジン(NiDAB)(シグマアルドリッチケミー(Sigma Aldrich Chemie)ドイツ)を用いて免疫反応が視覚化された。eGFP発現細胞の集計は、10μm厚の冠状切開片中の体細胞の視感度に基づくマウスの遺伝的状態及び/又は処理状態が分からない観察者によって行われた。海馬の表面の200μm間隔の4ないし6冠状切開片が動物当りで評価され、細胞数が各切開片全体で数えられた。
【0055】
8.5月齢での解剖の時点までに全てのマウスが前脳中でAβ堆積を示すことが観察された。これらのトランスジェニックマウスの脳中で観察されたeGFP陽性細胞の数は、年齢を適合させた野生型対照群に比較して170%多かった(図1A)(反復測定ANO
VA、p<0.05)。これらのeGFP陽性のBM細胞はイソレクチンB4で陽性にラベルされた。更に、これらのトランスジェニックマウスにおいて、eGFP陽性細胞の約10%がAβ堆積物と会合していた(図1B)。これらの結果は、BM由来細胞が血液脳関門を越え、また、それらの脳への移行が、BM由来細胞を該堆積物の近接近に誘引するβ−アミロイド堆積物の存在により増加されることを示唆する。
【0056】
実施例2.脳への移植BM細胞の脳特異的生着の増加並びにアミロイドを貪食及び除去するための移植BM細胞の活性化
この実験において、キメラマウス/ヒトAPP695導入スウェーデン突然変異(K595N/M596L)及び家族性のAD結合A246E突然変異を伴うヒトPS1(Borchelt et al.,Neuron.19:939−945(1997))を有するダブルトランスジェニック雌マウスを使用した。親のAPP695swe及びPS1(A246E)マウスはC57BL/6種に13−14世代戻し交配され、その後それらはダブルトタンスジェニックマウス系(APP+PS1マウス)を創出するために異系交配された。この研究において、8匹の25月齢APP+PS1マウスと伴に各年齢群で8匹の年齢を適合させた野生型対照が使用された。
【0057】
抹消血液細胞におけるeGPF発現のフローサイトメトリー分析は実施例1の記載と同様に行われ、CD11b免疫反応性単球の約90%がGFP陽性であったことが示され、BM移植の生着が成功したことが示唆された。
【0058】
インビボにおけるLPS、M−CSF及びSDF−1αでのBM−由来細胞の刺激
25月齢のBM−由来細胞が移植されたAPP+PS1ダブルトランスジェニックマウスは、左側海馬中へ0.9%NaCl(生理食塩水)を、右側海馬中へLPS 4μg(生理食塩水中4μg/μL;ネズミチフス菌からのリポ多糖類、シグマ)1.0μg M−CSF(生理食塩水中1.0μg;R&DシステムズからのM−CSF)又はヒト組み換えSDF−1α(生理食塩水中0.1μg;R&DシステムズからのSDF−1α)を以下のコーディネートに従って注射された:移植16週後、M/L ±2.5mm、A/P −2.7mm、D/V −3mm。マウスはハロタンで麻酔され、定位固定装置(David Kopf、モデル940、タハンガ、米国、カルフォルニア州)に取り付けられた。海馬上の頭蓋中に2個の穴をドリルで開け、10分間の時間をかけて5μLの注射器(Hamilton、リーノー、ネバダ州)を用いて注射された。切開部は生理食塩水できれいにされ、絹縫合で閉じられた。
【0059】
LPS、M−CSF及びSDF−1αが注射されたマウスは注射1週間後に解剖され、脳は上述と同様に免疫組織化学のために処理された。以下の抗体が使用された:製造会社の指示に従ってTSA増幅システム(PerkinElmer、ボストン、米国、マサチューセッツ州)を用いた、ヒトAβを検出するためのAβパン(pan)抗体(Biosource、ベルギー)、CD−11b及びミクログリアを検出するためのMHCクラスIIアロ抗原を認識するI−A/I−E抗体。免疫反応性細胞数は、海馬の部分体である、錐体層、放線状層、網状分子層及び歯状回の分子層を含む領域から、マウス当り4ないし6海馬切開片において数えられた。
【0060】
Aβ負荷におけるLPS、M−CSF及びSDF−1α注射の効果を評価するために、切開片は解析ソフトウェア(AnalySIS software)(Soft Imaging System、マンスター、ドイツ)を稼動するデジタルカメラ(Color
View 12、Soft Imaging System、マンスター、ドイツ)を備えたオリンパスAX70顕微鏡(オリンパス、米国、ニューヨーク州)で撮像された。海馬中のAβパン(pan)免疫反応性領域は、イメージプロプラス(ImagePro
Plus)ソフトウェア(Media Cybernetics、シルバースプリング
、米国、メリーランド州)を用いて動物当り4ないし5の代表切開片から定量化された。データは、免疫反応性(Aβ負荷)により占有される海馬のパーセント領域として表現され、平均±SEM(標準誤差)として示された。
【0061】
LPS、M−CSF及びSDF−1α注射がBM由来細胞の数を約10倍増加し(図2A)、アミロイド負荷を40%以上減少した(反復測定ANOVA、p<0.05)(図2B)ことが観察された。BM由来細胞は、貪食細胞のマーカーであるMHC IIの免疫反応性により判定されるように、LPS、M−CSF及びSDF−1α注射後に活性状態にあった。一方、MHC II陽性細胞はeGFP陽性であり、活性細胞の大部分がBM由来であることが示された(図2C)。LPS、M−CSF及びSDF−1α注射後、BM由来細胞はアミロイドを含むか又はβ−アミロイドと密接に会合しており、LPS、M−CSF及びSDF−1αがアミロイドを貪食するためのBM由来細胞の能力を誘発することが示された(図2D)。
【0062】
実施例3.インビトロにおいてBM細胞により促進されたLPS、M−CSF及びSDF−1αのβ−アミロイド分解(除去)
成体eGFPトランスジェニックマウスからのBM細胞は、記載(Servet Delprat 等,BMC Immunol.3:15(2002))のようにして培養された。老化したダブルトランスジェニックAPP+PS1((2)参照))は生理食塩水でかん流され、ヒトβ−アミロイド堆積物を含む脳はドライアイスで凍結された。矢状断面(10μm)が低温保持装置(Leica)上で切断され、ポリ−L−リジンで覆われたカバースリップ上に載せられ、2−ウェルチャンバースライドへ移動され即座に使用されるか又は使用するまで−80℃で保存された。BM由来eGFP発現細胞はアッセイ培地(DMEM/F12、G5添加物、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)、ペニシリン及びストレプトマイシン)1mL中に5×105の密度でチャンバー中で播種され、培
養物は37℃で24時間又はそれ以上維持された(Wyss−Coray 等,Nat Med.9、453−457(2003))。アミロイド負荷は免疫組織化学及び画像解析を用いて解析された。β−アミロイドはパン(pan)−Aβ抗体を用いて検出された。蛍光Aβ染色(アミロイド負荷、それぞれ)により占有されたマウス海馬のパーセント領域は、処理(対照、10ng/mL LPS、500U/mL M−CSF、500ng/mL SDF−1α)当り少なくとも8切開片において測定された。切開片は、Color Viewデジタルカメラを備えたニコン顕微鏡(オリンパス、米国、ニューヨーク州)で撮像され、イメージ−プロプラス(Image−Pro Plus)ソフトウェアが閾値を越える画素の数の自動集計及び海馬領域中のAβ負荷の計算のために使用された。
【0063】
LPS、M−CSF及びSDF−1αがBM細胞の食細胞性質を刺激し、これらの刺激された細胞がβ−アミロイドを除去又は分解し得ることが見出された。BM細胞単独でもβ−アミロイドを除去することができるが、しかし該除去はLPS、M−CSF及びSDF−1αの処理後に倍以上に増えた(図2E、反復測定ANOVA、p<0.05)。共焦点顕微鏡は、刺激された細胞がβ−アミロイドと密接に会合すること、即ち、貪食作用を示唆することを提示した(図3)。
【0064】
この発明は、幾つかの好ましい態様及び用途に重点をおいて記載されている。しかし、以下に示された請求項の範囲内において、開示された態様の変形物が製造及び使用できること及び本発明がここで特定的に記載されたことと異なった方法で実施することができることは当業者において明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄、臍帯、造血幹細胞の何れかの供給源又は他の単球系統由来の刺激された哺乳類細胞の製造方法であって、
前記細胞を、組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解できる貪食作用形態に変換する応答を前記細胞上で引き起こすために、貪食作用刺激剤を用いて前記細胞を処理することにより前記細胞を刺激することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細胞は実質的に未分化であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記刺激剤はリポ多糖類を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記刺激剤はマクロファージコロニー刺激因子を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記刺激剤は間質細胞由来因子−1αを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記組織は脳組織又は神経組織であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳類はヒト、マウス又はラットであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
骨髄、臍帯、造血幹細胞の何れかの供給源又は他の単球系統由来の哺乳類細胞であって、
前記細胞は、前記細胞を組織中のβ−アミロイド又はその構成物を分解できる貪食作用形態に変換する応答を前記細胞上で引き起こすために、貪食作用刺激剤を用いて前記細胞を処理することにより刺激されていることを特徴とする細胞。
【請求項9】
前記細胞は実質的に未分化であることを特徴とする請求項8記載の細胞。
【請求項10】
前記刺激剤はリポ多糖類を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の細胞。
【請求項11】
前記刺激剤はマクロファージコロニー刺激因子を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の細胞。
【請求項12】
前記刺激剤は間質細胞由来因子−1αを含むことを特徴とする請求項8又は9記載の細胞。
【請求項13】
前記細胞は血液脳関門を通過し得ることを特徴とする請求項8ないし12の何れか1項に記載の細胞。
【請求項14】
前記組織は脳組織又は神経組織であることを特徴とする請求項8ないし13の何れか1項に記載の細胞。
【請求項15】
前記哺乳類はヒト、マウス又はラットであることを特徴とする請求項8ないし14の何れか1項に記載の細胞。
【請求項16】
医薬としての使用のための請求項8ないし15の何れか1項に記載の細胞。
【請求項17】
前記医薬は、組織中のβ−アミロイド又はその構成物の分解が望まれるアミロイド蓄積障害の治療又は予防のためのものであることを特徴とする請求項16記載の細胞。
【請求項18】
前記アミロイド蓄積障害は以下で示されるものの一つであることを特徴とする請求項17に記載の細胞。
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、感染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病及び狂牛病等)、II型糖尿病及び家族性及び二次的なアミロイド症(アミロイドーシス)。

【図1A】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505627(P2008−505627A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519822(P2007−519822)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050219
【国際公開番号】WO2006/005802
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(307026514)メデイア セラポイティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】